(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】回転電機用フレームの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/14 20060101AFI20220804BHJP
【FI】
H02K15/14 Z
(21)【出願番号】P 2018107732
(22)【出願日】2018-06-05
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597034440
【氏名又は名称】川俣精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】荒木 貴志
(72)【発明者】
【氏名】望月 資康
(72)【発明者】
【氏名】後藤 賢
(72)【発明者】
【氏名】田村 亮
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-315246(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0048031(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/06
H02K 15/14
H02K 5/20
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の芯材の外周面に複数の保持部材を固定する工程と、
冷却管を、前記保持部材に嵌着固定しつつ、前記芯材の外周に巻回させる工程と、
前記芯材の外周に、前記冷却管を内包する鋳型を設ける工程と、
前記鋳型内に金属の溶湯を注湯する工程と、
前記芯材を切削除去する工程と、を備える回転電機用フレームの製造方法。
【請求項2】
前記芯材は金属製である請求項
1に記載の回転電機用フレームの製造方法。
【請求項3】
前記保持部材の下端部は、前記芯材を切削除去して形成された面に露出する請求項
1に記載の回転電機用フレームの製造方法。
【請求項4】
前記保持部材は、複数のU字部を備える嵌着部を一体的に備えており、保持部材の両端に設けられたリング部材に固定されている請求項
1から
3の何れか一項に記載の回転電機用フレームの製造方法。
【請求項5】
前記保持部材は、複数の嵌着部を一体的に備え、前記芯材の外周面に固定されている請求項
1から
3の何れか一項に記載の回転電機用フレームの製造方法。
【請求項6】
複数の嵌着部を一体的に備える長方形の平板形状である複数の保持部材の両端に、リング形状のリング部材を固定することにより、全体として無底円筒形状のかご状構造物を形成する工程と、
冷却管を、前記保持部材の嵌着部に嵌着固定しつつ、かご状構造物の外周に巻回させる工程と、
前記かご状構造物の内側と外側から前記かご状構造物を内包する鋳型を設ける工程と、
前記鋳型内に金属の溶湯を注湯する工程と、
前記鋳型を取り除いたのちに、不要部を切削除去する工程と、を備える回転電機用フレームの製造方法。
【請求項7】
前記鋳型は、前記かご状構造物の内側に配置される無底円筒形状の内型と、前記かご状構造物の外側から前記内型の端部に当接する外型とを備え、前記内型と外型により前記かご状構造物を含む鋳込み空間を構成可能な請求項
6に記載の回転電機用フレームの製造方法。
【請求項8】
前記保持部材の下端部は、前記フレームの内面に露出しない請求項
6又は
7に記載の回転電機用フレームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機用フレーム、回転電機、及び回転電機用フレームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機の鋳物製フレームに例えばフレキシブルな水冷管を鋳込む場合は、溶湯の注湯時の湯流れや熱膨張に対して、水冷管の位置がずれてしまう等の弊害が生じる。
等の弊害が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-79136号公報
【文献】実開昭6-44378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、上記課題に鑑みたものであり、鋳物製フレームに鋳込み形成され、位置ずれが抑制された水冷管を備える回転電機用フレーム及びこれを用いた回転電機、及び、鋳物製フレームに水冷管を鋳込む場合に、水冷管の位置ずれを抑制可能な回転電機用フレームの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る回転電機用フレームは、内側にステータを固着保持可能に構成された略円筒形状の回転電機用フレームであって、前記フレーム内部に埋設して設けられた複数の保持部材及び冷却管を備え、前記保持部材は前記フレームの内部を巻回する前記冷却管を保持するように配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る回転電機用フレームの概略構成を示す斜視図
【
図2】実施形態に係る回転電機用フレームの概略構成を示す断面図
【
図3】実施形態に係る回転電機用フレームの概略構成を示す一部縦断面図
【
図4A】実施形態に係る回転電機用フレームの製造工程を示す図であり、
図4BのX-X線における概略的な縦断面図
【
図4B】実施形態に係る回転電機用フレームの製造工程を示す側面図
【
図5A】実施形態に係る回転電機用フレームの製造工程を示す図であり、
図5BのX-X線における概略的な縦断面図
【
図5B】実施形態に係る回転電機用フレームの製造工程を示す側面図
【
図6A】実施形態に係る回転電機用フレームの製造工程を示す図であり、6BのX-X線における概略的な縦断面図
【
図6B】実施形態に係る回転電機用フレームの製造工程を示す図であり、
図6AのY-Y線における概略的な縦断面図
【
図7A】実施形態に係る回転電機用フレームの製造工程を示す図であり、
図7BのX-X線における概略的な縦断面図
【
図7B】実施形態に係る回転電機用フレームの製造工程を示す図であり、
図7AのY-Y線における概略的な縦断面図
【
図9B】保持部材の概略構成を示す図であり、冷却管を保持部材に嵌着した状態を示す図
【
図10】第2実施形態に係る回転電機用フレームの製造工程の一部を示す概略的な斜視図
【
図11】第3実施形態に係る回転電機用フレームの製造工程の一部を示す概略的な斜視図
【
図12A】第3実施形態に係る回転電機用フレームの製造工程を示す図であり、
図12BのX-X線における概略的な縦断面図
【
図12B】第3実施形態に係る回転電機用フレームの製造工程を示す側面図
【
図13A】第3実施形態に係る回転電機用フレームの製造工程を示す図であり、
図13BのX-X線における概略的な縦断面図
【
図13B】第3実施形態に係る回転電機用フレームの製造工程を示す側面図
【
図14A】第3実施形態に係る回転電機用フレームの製造工程を示す図であり、
図14BのX-X線における概略的な縦断面図
【
図14B】第3実施形態に係る回転電機用フレームの製造工程を示す図であり、
図14AのY-Y線における概略的な縦断面図
【
図15A】第3実施形態に係る回転電機用フレームの製造工程を示す図であり、
図15BのX-X線における概略的な縦断面図
【
図15B】第3実施形態に係る回転電機用フレームの製造工程を示す図であり、
図15AのY-Y線における概略的な縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態について図面に基づいて説明する。実施形態の説明において実質的に同一の要素には同一の符号を付し、説明を省略する。なお、以下の説明において、回転電機1の回転中心O方向を内径方向と、その逆方向を外径方向と称し、回転電機用フレーム(以下、フレームと称する)10、芯材13等の円筒形状の外周に沿った方向(
図2に、外周を時計回り方向に指向する矢印Y1、及びその逆方向の反時計回り方向に指向する矢印Y2で示す)を周方向と称する。また、芯材13の長さ方向を軸方向と称する。
【0008】
(第1実施形態)
図1~
図3に示すように、回転電機1の外殻を構成するフレーム10の内部には冷却管12が埋設して備えられている。
図5A、
図5B等に示されるように、冷却管12はフレーム10の周方向に沿って螺旋状に巻回配置されており、図の上部と下部に出入口12aを備えている。回転電機1は、そのフレーム10の内側に図示しないステータを固着保持可能に構成され、さらにその内部にロータを配置可能に構成される。
【0009】
フレーム10は例えばアルミ鋳造で略円筒形状となるように形成されており、その内部に冷却管12が鋳込みで埋設されている。冷却管12は、フレーム10の内部において、保持部材11によって嵌着されているとともに、フレーム10を構成する金属、例えばアルミニウムにより外面が覆われている。
【0010】
保持部材11もフレーム10の内部に埋設されて設けられている。保持部材11は、フレーム10の周方向に千鳥配置に配列されている。また、保持部材11は嵌着部11aを備えており、冷却管12は嵌着部11aにより嵌着されて保持部材11に保持されている。冷却管12は保持部材11の嵌着部11aにより嵌着された状態で鋳込まれて、フレーム10の内部に設けられている。冷却管12には冷却媒体を通じることが可能であり、冷却管12は回転電機1を冷却する機能を有する。
【0011】
次に、フレーム10の製造方法について工程ごとに順に説明する。まず、
図4A及び
図4Bに示すように、円筒形状の芯材13を準備する。芯材13は金属製であって、内部空洞の円筒形状に構成されており、アルミニウムよりも溶融温度が高く、切削性の良好な材料、例えば鉄により形成されている。
【0012】
芯材13の外周面13aには、保持部材11が点付け溶接により固定されている。保持部材11は外周面13aの周方向に千鳥配置となるように配置されているとともに、これに保持される冷却管12が芯材13の外周を螺旋状に巻回するように配列されている。
【0013】
次に、
図5A、
図5B、及び
図8に示すように、冷却管12は、保持部材11に保持されて、芯材13の周りを周方向に巻回されて固定される。
図9A及び
図9Bに示すように、保持部材11にはその上部にU字部11bを備える嵌着部11aを備えており、冷却管12はこのU字部11bによって案内されるように載置される。冷却管12は、嵌着部11aを内方向に折り曲げて冷却管12の外周を押圧するように加締めることにより、保持部材11に嵌着固定される。冷却管12を保持部材11にセットする際、巻き始め位置から順に保持部材11を加締めることにより冷却管12のゆるみやたるみを抑制することができる。
【0014】
この時、保持部材11の下端部11cからU字部11b底部までは所定の距離を有しているため、冷却管12は外周面13aから所定距離だけ離間して少し中空に保持されるようにして固定される。
【0015】
次に、
図6A及び
図6Bに示すように、冷却管12が巻回固定された芯材13の外側面にその端部が当接するように鋳型14が配置され、芯材13と鋳型14によって鋳込み金属が注湯される空間が形成される。鋳型14の内面はフレーム10の外殻を構成する形状となっている。鋳型14には湯口14aが設けられている。これらを準備した後、湯口14aから鋳型14内に、金属として例えばアルミニウム溶湯が鋳型14内に注湯される。これにより、内部に冷却管12が鋳込まれたフレーム10が製造される。
【0016】
次に、
図7A及び
図7Bに示すように、鋳型14を外した後、フレーム10の内径側に存在する芯材13、及び、フレーム10からはみ出た部分の芯材13を機械加工により切削除去する。
図1に示すように、芯材13の切削除去により現れたフレーム10の内面16には保持部材11の下端部11cが露出している。
このようにして、内部に冷却管12が鋳込まれたフレーム10を作成することができる。
【0017】
第1実施形態にかかる回転電機用フレーム10、これを用いた回転電機1、及び回転電機用フレーム10の製造方法によれば以下の効果を得る。
【0018】
芯材13に溶接固定された保持部材11に冷却管12を固定して巻回し、その後、鋳型14で覆った後に、鋳込むことによりフレーム10を製造する。これにより、鋳込み中に冷却管12が移動することが抑制されるため、冷却管12のフレーム10内での位置が安定し、製造不良を削減し、冷却の安定性を向上させることができる。
【0019】
冷却管12を鋳込んでフレーム10を形成した後、芯材13は機械加工で切削除去する。これにより、フレーム10を構成する鋳物母材の面積が最大限に確保できるため、フレーム10の冷却効率を向上させることができる。また、フレーム10の内面16に露出した下端部11cの近傍を確認することで、鋳込みの状況が確認できる。例えば、下端部11c周りにおける巣の有無などを確認できるため、保持部材11の固定位置の改善、鋳込み方法の改善に役立てることができる。
【0020】
保持部材11を芯材13の外周面13aに千鳥に配置するため、注湯時の湯流れが良好となり、鋳物巣の発生を低減することができる。
冷却管12を保持部材11に固定する際に、冷却管12を嵌着部11aによって加締めるだけで位置決め保持可能となるため、クランプ等のように冷却管12を押さえ付ける部品が不要となる。これにより、フレーム10を作成する際の部品点数が少なくなるため、作業効率の向上、コスト削減に貢献する。
【0021】
冷却管12を保持部材11にセットする際、巻き始めから順に加締めるため、冷却管12の巻き付け具合の微調整が可能となり、冷却管12の巻回弛みを抑制することができる。また、保持部材11の芯材13への固定は、個々の保持部材11の点付け溶接により行うので保持部材11の位置を自由に設定可能となり、冷却管12の多様な巻きピッチ等に対応できる。
【0022】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。
図10に示すように、第2実施形態における保持部材17は長方形の板状であり、長手方向の一方の辺に複数のU字部17aを備えて一体に形成されている。複数の保持部材17が芯材13の外周面13aの円周方向に所定ピッチに位置して配置されており、保持部材17の下端部17cは芯材13の外周面13aに溶接固定されている。U字部17aは冷却管12を嵌着する嵌着部17bを備えている。U字部17aは冷却管12を保持する保持部として機能する。
【0023】
複数の保持部材17の長手方向長さは、芯材13の軸方向長さよりやや短く設定されており、その下端部17cが芯材13の外周面13aに所定ピッチに溶接固定されている。その他の構成は第1実施形態と同じである。
【0024】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得る。第2実施形態によれば、第1実施形態における一つ一つの嵌着部11aを外周面13aに溶接する作業に比較して、複数のU字部17aを備える保持部材17を用いるため、溶接作業が効率化できる。また、冷却管12の固定部として機能する複数のU字部17aが一体的に構成されているため、第1実施形態の保持部材11に比較して、フレーム10の機械的強度を高くすることができる。
【0025】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。以下に、第3実施形態に係るフレーム10の製造方法及び構成について説明する。
【0026】
図11、
図12A及び
図12Bに示すように、第3実施形態における保持部材20は長方形の平板形状であり、長手方向の一方の辺に複数のU字部20aを備えて一体に形成されている。U字部20aは冷却管12を嵌着する嵌着部20bを備えている。U字部20aは冷却管12を保持する保持部として機能する。
【0027】
リング部材18は軸方向に所定の厚さを有したリング形状すなわち円環形状に構成されている。リング部材18は例えば金属により構成されており、金属として例えば鉄を用いることができる。
【0028】
複数の保持部材20は所定距離間隔もしくは所定角度間隔を有するようにして配置され、その両端が軸方向に対向するように配置された二つのリング部材18の対向する面に溶接固定されている。2つのリング部材18と複数の保持部材20は、全体として無底円筒形状のかご形状のかご状構造物19を構成している。
【0029】
この時、保持部材20はリング部材18のやや径方向外側にずらして固定される。これにより、保持部材20の下端部20cは、かご状構造物19の内側方向に向いて配置されるとともに、リング部材18の径方向内側端よりもやや外側にずれて配置される。
【0030】
図13A及び
図13Bに示すように、冷却管12は、保持部材20のU字部20aにガイドされるように周方向に巻回される。次に、
図14A及び
図14Bに示すように、リング部材18と保持部材20で構成されたかご状構造物19の外周に冷却管12が巻回されたものに、鋳込みを行うための鋳型15である外型15aと内型15bが配置される。内型15bは無底円筒形状であり、かご状構造物19の内側からリング部材18に当接するように配置される。この外型15aは、かご状構造物19を内部に含んで内型15bの外側面及び切断面が当接するようにして配置される。
【0031】
このようにして、外型15aと内型15bによって形成された鋳型15の内部空間にかご状構造物19が内包配置される状態を構成する。その後、湯口15cから鋳型15内に溶湯を注湯することにより冷却管12が鋳込まれたフレーム10を形成することができる。溶湯金属としては例えばアルミニウムを用いることができる。
【0032】
その後、
図15A及び
図15Bに示すように、鋳型15すなわち外型15aと内型15bを外し、リング部材18を含んだフレーム10の不要部を切削除去することにより、第3実施形態に係るフレーム10を製造することができる。第3実施形態に係るフレーム10においては、保持部材20の下端部20cはフレーム10の内面16に露出していない。また、芯材13を用いていないため、鋳込み後に芯材13を切削除去する必要が無い。
【0033】
第3実施形態にかかるフレーム10によれば以下の効果を得る。
第1実施形態における一つ一つの保持部材11を芯材13の外周面13aに溶接する作業に比較して、複数のU字部20aを備える保持部材20をリング部材18に溶接するため、部品点数を大幅に減らすことができ、これにより溶接作業が効率化できる。また、冷却管12の固定部として機能する複数のU字部20aが一体的に構成されているため、第1実施形態の保持部材11に比較して、機械的強度を高く構成することができる。また、芯材13がないため、鋳込み後に芯材13を切削除去する必要がなく、フレーム10の製造工程を簡略化することができることから、製造性が向上する。
【0034】
以上のように、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
1…回転電機、10…回転電機用フレーム、11、17、20…保持部材、11a、17b、20b…嵌着部、11b、17a、20a…U字部、11c、17c、20c…下端部、12…冷却管、13…芯材、13a…外周面、14、15…鋳型、15a…外型、15b…内型、16…内面、18…リング部材、19…かご状構造物