(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び成形フィルム
(51)【国際特許分類】
C08L 27/06 20060101AFI20220804BHJP
C08L 33/18 20060101ALI20220804BHJP
C08L 33/08 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
C08L27/06
C08L33/18
C08L33/08
(21)【出願番号】P 2018110806
(22)【出願日】2018-06-11
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】堀田 瑛
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 英樹
(72)【発明者】
【氏名】池原 雄治
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-145450(JP,A)
【文献】特開平03-134044(JP,A)
【文献】特開平11-060863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル樹脂100質量部とアクリロニトリル-スチレン共重合体20質量部以上300質量部以下とを含
み、80℃での貯蔵弾性率(E’)が、1100MPa以上2600MPa以下であり、140℃での貯蔵弾性率(E’)が、1MPa以上7MPa以下であり、180℃での貯蔵弾性率(E’)が、0.2MPa以上5MPa以下である樹脂組成物から成り、厚さ100μm以上300μm以下の樹脂層
を備える
ことを特徴とする三次元形状を有する成形品の表面に被覆させるための成形フィルム。
【請求項2】
前記樹脂組成物は、前記アクリロニトリル-スチレン共重合体を66質量部以上含む
ことを特徴とする請求項1に記載の
三次元形状を有する成形品の表面に被覆させるための成形フィルム。
【請求項3】
前記樹脂組成物は、前記アクリロニトリル-スチレン共重合体を150質量部以上含む
ことを特徴とする請求項1に記載の三次元形状を有する成形品の表面に被覆させるための成形フィルム。
【請求項4】
前記樹脂組成物は、重量平均分子量が28万以上310万以下のアクリル樹脂からなるアクリル系加工助剤を
1質量部以上6質量部以下含む
ことを特徴とする請求項1
から3のいずれか1項に記載の
三次元形状を有する成形品の表面に被覆させるための成形フィルム。
【請求項5】
前記塩化ビニル樹脂の重合度が800以上1000以下である
ことを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の
三次元形状を有する成形品の表面に被覆させるための成形フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び成形フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の外装や看板等のように屋外で使用される物の表面に付されるフィルムは、長期にわたる耐候性や耐熱性等が求められる。例えば、塩化ビニル樹脂からなるフィルムは、一般的には耐候性や耐熱性に加えて印刷性も優れており、上記のような種々の用途で使用されている。
【0003】
下記特許文献1には、塩化ビニル樹脂を含む樹脂組成物が開示されている。具体的には、塩化ビニル樹脂にアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)やアクリロニトリル-スチレン樹脂(AS樹脂)あるいはエチレン-ビニルアセテート樹脂等を混合し、安定剤としてラウリル錫メルカプトカルボキシレートを使用した樹脂組成物が開示されている。また、下記特許文献2には、塩化ビニル樹脂にα-メチルスチレンおよびN-フェニルマレイミドまたは無水マレイン酸を共重合させてなる耐熱樹脂を添加した成形用化粧シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭62-290749号公報
【文献】特開平5-4309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、塩化ビニル樹脂から成るフィルムは、一般的には耐候性や耐熱性等が優れている。しかし、塩化ビニル樹脂から成るフィルムは、高温での形状安定性が劣る傾向にある。そのため、塩化ビニル樹脂から成るフィルムは、三次元形状を有する成形品の表面に被せられると収縮し、当該成形品の一部が露出したり、当該成形品から剥がれたりする場合がある。例えば、上記特許文献2の成形用化粧シートは、70℃~80℃で軟化するため、建材や自動車の装飾等の分野で用いる場合には形状安定性が不十分である。
【0006】
また、上記特許文献1の実施例には、190℃に設定されたロールで樹脂組成物を混練した際の黄変指数は5分後に17となることが示されている。よって、上記特許文献1の樹脂組成物は高温で成膜することが困難である。このように従来の塩化ビニル樹脂を含む樹脂組成物は高温製膜性が不十分である。
【0007】
また、三次元形状を有する成形品の表面に成形フィルムを被覆させる場合、当該成形フィルムはその表面の形状に追従して変形し得るように、追従性が要求される。
【0008】
そこで本発明は、高温製膜性を有し、形状安定性及び追従性を有するフィルムとされ得る樹脂組成物及び当該樹脂組成物からなる樹脂層を有する成形フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂100質量部とアクリロニトリル-スチレン共重合体20質量部以上300質量部以下とを含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の樹脂組成物は、前記アクリロニトリル-スチレン共重合体を66質量部以上含むことが好ましい。
【0011】
また、本発明の樹脂組成物は、重量平均分子量が28万以上310万以下のアクリル樹脂からなるアクリル系加工助剤を更に含むことが好ましい。
【0012】
また、前記塩化ビニル樹脂の重合度が800以上1000以下であることが好ましい。
【0013】
また、上記課題を解決するため、本発明の成形フィルムは、上記本発明の樹脂組成物からなる樹脂層を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高温製膜性を有し、形状安定性及び追従性を有するフィルムとされ得る樹脂組成物及び当該樹脂組成物からなる樹脂層を有する成形フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る成形フィルムの断面を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。
【0017】
[成形フィルム]
図1は、本発明の実施形態に係る成形フィルムの断面を概略的に示す図である。本実施形態の成形フィルム1は、樹脂層2と当該樹脂層2の一方の面側に積層される粘着剤層3とを備える。
【0018】
粘着剤層3は、成形フィルム1を種々の被着体に貼り付けるために設けられる粘着剤からなる層である。粘着剤層3を構成する粘着剤は特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル樹脂系粘着剤等が挙げられる。なお、(メタ)アクリルとは、アクリルおよびメタクリルの一方または両方を意味する。
【0019】
粘着剤層3は、例えば樹脂層2の一方の面に粘着剤が塗工されることによって形成される。
【0020】
樹脂層2は、後述する樹脂組成物からなる層である。また、樹脂層2の厚さは特に制限されない。樹脂層2の厚さは、例えば50μm以上500μm以下とされ、100μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0021】
樹脂層2は、後述する樹脂組成物を硬化させることで形成される。樹脂層2は、例えばカレンダー製膜によって形成される。
【0022】
樹脂層2は、透明であってもよく、着色されていてもよい。このような本実施形態の樹脂層2を備える成形フィルム1は、例えば、車両の内装品や外装品または屋外に設置される物体の表面に貼り付けるためのフィルム、ステッカー等として好適である。
【0023】
なお、成形フィルム1は、樹脂層2のみを備える単層のフィルムであってもよく、樹脂層2及び粘着剤層3以外の層を備えたフィルムであってもよい。例えば、樹脂層2と粘着剤層3との間や、樹脂層2の粘着剤層3側とは反対側の面に、単層または複層の印刷層等が設けられてもよい。当該印刷層の形成方法は特に制限されない。印刷層は、例えば、樹脂、着色剤、溶剤等を含む樹脂組成物がスクリーン印刷等の方法で塗工されることによって形成される。
【0024】
[樹脂組成物]
本実施形態の樹脂層2を構成する樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体、及びアクリル系加工助剤を含む。
【0025】
樹脂層2を構成する樹脂組成物に含まれる塩化ビニル樹脂は、重合度が800以上1000以下であることが好ましい。塩化ビニル樹脂の重合度が800以上であることによって、樹脂層2に適切な抗張力を付与し得る。また、塩化ビニル樹脂の重合度が1000以下であることによって、樹脂層2を製膜する際に、樹脂層2を構成する樹脂組成物の粘度を適正な範囲とするための温度が過度に高まることが抑制され得る。そのため、樹脂層2の製膜過程において樹脂層2を構成する樹脂組成物に過度に熱が加わることが抑制され、樹脂層2の黄変が抑制され得る。
【0026】
樹脂層2を構成する樹脂組成物に含まれるアクリロニトリル-スチレン共重合体は、一般的に塩化ビニル樹脂よりガラス転移温度が高い。したがって、樹脂層2を構成する樹脂組成物がアクリロニトリル-スチレン共重合体を含むことによって、塩化ビニル樹脂のみの場合に比べて当該樹脂組成物のガラス転移温度が上がり、成形後の樹脂層2の形状安定性が向上し得る。なお、ガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置DMAを使用して測定したtanδのピークの値である。
【0027】
また、樹脂層2を構成する樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂100質量部に対してアクリロニトリル-スチレン共重合体を20質量部以上300質量部以下含む。このようにアクリロニトリル-スチレン共重合体が添加されることによって、塩化ビニル樹脂単独で形成されるフィルムに比べて、樹脂層2が脆くなることが抑制され、成形フィルム1を強靱なフィルムとし得る。また、樹脂層2を構成する樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂100質量部に対してアクリロニトリル-スチレン共重合体を66質量部以上300質量部以下含むことが好ましい。このようにアクリロニトリル-スチレン共重合体が添加されることによって、塩化ビニル樹脂が熱によって分解することが抑制され、樹脂層2の熱による黄変が抑制され得る。
【0028】
樹脂層2を構成する樹脂組成物に含まれるアクリル系加工助剤は、重量平均分子量が28万以上310万以下の(メタ)アクリル樹脂を指す。アクリル系加工助剤として、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を用いることができる。(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、アクリル酸エステル同士、メタクリル酸エステル同士、またはアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとを共重合してなる共重合体である。アクリル酸エステル、または、メタクリル酸エステルとしては、アルキル基の炭素数が1~18であるものが好ましい。具体例としては、アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル等のアクリル酸エステルが挙げられる。また、メタアクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル等のメタクリル酸エステルが挙げられる。
【0029】
樹脂層2を構成する樹脂組成物に含まれるアクリル系加工助剤の含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して1質量部以上6質量部以下であることが好ましい。アクリル系加工助剤の含有量が1質量部以上であることによって、樹脂層2に適切な抗張力を付与し得る。そのため、樹脂層2の形状安定性を向上し得る。また、アクリル系加工助剤の含有量が6質量部以下であることによって、樹脂層2の表面光沢の低下や製膜時のフローマークの発生を抑制し得る。
【0030】
アクリル系加工助剤の重量平均分子量は、28万以上310万以下であることが好ましい。アクリル系加工助剤の重量平均分子量が28万以上であることによって、樹脂層2に適切な抗張力を与え、樹脂層2が成形で延伸される際に破断もしく伸びすぎることが抑制され得る。また、アクリル系加工助剤の重量平均分子量が310万以下であることによって、成形後の樹脂層2に残留応力が生じることが抑制され得る。
【0031】
<その他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、顔料、可塑剤、滑剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0032】
例えば、樹脂層2を構成する樹脂組成物が滑剤や安定剤等を含むことによって、樹脂層2をカレンダー製膜で形成する際にカレンダーロールとの摩擦によって樹脂層2が黄変することが抑制され得る。また、樹脂層2を構成する樹脂組成物がBa/Zn系やZn系の安定剤を含むことによって、樹脂層2の製膜時に塩化ビニル樹脂の熱分解が抑制され得る。
【0033】
(樹脂組成物の性質)
樹脂層2を構成する樹脂組成物のガラス転移温度は、配合が調整されることによって、80℃以上とされることが好ましく、100℃以上とされることがより好ましい。樹脂層2を構成する樹脂組成物のガラス転移温度が80℃以上とされることによって、樹脂層2の形状安定性が向上し得ることに加えて、樹脂層2が真空成形される場合にはドローダウンが抑制され得る。また、樹脂層2を構成する樹脂組成物のガラス転移温度は、130℃以下であることが好ましい。当該樹脂組成物のガラス転移温度が130℃以下とされることによって、樹脂層2の成膜時の温度を塩化ビニル樹脂が分解し始める温度より低くすることができる。そのため、樹脂層2の黄変が抑制され得る。
【0034】
また、樹脂層2を構成する樹脂組成物の貯蔵弾性率は、配合が調整されることによって、以下の範囲に調整されることが好ましい。
【0035】
樹脂層2を構成する樹脂組成物の80℃での貯蔵弾性率(E’)は、1100MPa以上2600MPa以下であることが好ましい。樹脂組成物の80℃での貯蔵弾性率(E’)が1100MPa以上とされることによって、成形後の樹脂層2の形状安定性が向上し得る。また、樹脂組成物の80℃での貯蔵弾性率(E’)が2600MPa以下とされることによって、樹脂層2が硬くなり過ぎることが抑制され、樹脂層2と、粘着剤層3や他のフィルム等とを積層する際の取扱性が向上し得る。
【0036】
また、樹脂層2を構成する樹脂組成物の140℃での貯蔵弾性率(E’)は、1MPa以上7MPa以下であることが好ましい。樹脂層2を構成する樹脂組成物の140℃での貯蔵弾性率(E’)が1MPa以上とされることによって、高温で樹脂層2を成形する際に樹脂層2の強度や柔軟性が不足したりして樹脂層2が破損することが抑制され得る。また、樹脂層2を構成する樹脂組成物の140℃での貯蔵弾性率(E’)が7MPa以下とされることによって、樹脂層2の成形時の追従性が向上し得る。
【0037】
また、樹脂層2を構成する樹脂組成物の180℃での貯蔵弾性率(E’)は、0.2MPa以上5MPa以下であることが好ましい。樹脂組成物の180℃での貯蔵弾性率(E’)が0.2MPa以上とされることによって、樹脂層2をカレンダー製膜で形成する際にカレンダーロールから樹脂層2の剥離が容易になり得る。また、樹脂組成物の180℃での貯蔵弾性率(E’)が5MPa以下とされることによって、樹脂層2をカレンダー製膜で形成する際に摩擦熱の発生を抑制できる。そのため、180℃以上の高温で樹脂組成物を混練しても塩化ビニル樹脂の熱分解による樹脂層2の変色を抑制し得る。同様の観点から、樹脂層2を構成する樹脂組成物の180℃での貯蔵弾性率(E’)は3MPa以下であることがより好ましい。
【0038】
上記実施形態を例に本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の樹脂組成物は、少なくとも塩化ビニル樹脂100質量部とアクリロニトリル-スチレン共重合体20質量部以上300質量部以下とを含んでいればよく、他の成分は必須成分ではない。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
(実施例1~13及び比較例1~7)
表1及び表2に記載の配合で各材料をリボンブレンダーにて混合し、実施例1~13及び比較例1~7に係る樹脂組成物を得た。
【0041】
上記のように混合して得られた樹脂組成物を、加圧ニーダーを用いて150℃にて10分間予備混練した後、得られた予備混練物を160℃に設定された2本ロールを用いて10分間溶融混練し、溶融混練物を得た。次いで、カレンダー製膜によって溶融混練物を厚み約250μmのフィルムとし、実施例1~13及び比較例1~7に係る成形フィルムを形成した。これらの成形フィルムの形成には、ロール温度が185℃以上195℃以下の逆L型に配列された4本カレンダーロールを用いた。
【0042】
なお、表1及び表2に商品名で記されている各材料の詳細は下記の通りである。
カネビニールS1001N:塩化ビニル樹脂、重合度が1000、株式会社カネカ製
カネビニールS1008:塩化ビニル樹脂、重合度が800、株式会社カネカ製
XM-25:アクリル樹脂、株式会社カネカ製
メタブレンH-602:アクリル樹脂、三菱ケミカル株式会社製
クララスチックK-2540A:ABS樹脂、日本エイアンドエル株式会社製
クララスチックS-3811:ABS樹脂、日本エイアンドエル株式会社製
クララスチックS-1200B:ABS樹脂、日本エイアンドエル株式会社製
テルアロイA-15X:AS樹脂、株式会社カネカ製
アデカサイザーPN-1430:ポリエステル可塑剤、株式会社ADEKA製
メタブレンP-551A:アクリル系加工助剤、ガラス転移温度が71℃、重量平均分子量が145万、三菱ケミカル株式会社製
メタブレンP-530A:アクリル系加工助剤、ガラス転移温度が70℃、重量平均分子量が310万、三菱ケミカル株式会社製
メタブレンP-570A:アクリル系加工助剤、ガラス転移温度が59℃、重量平均分子量が28万、三菱ケミカル株式会社製
CR-90-2:酸化チタンからなる白色顔料、石原産業株式会社製
アデカスタブLS-16:アクリル系滑剤、株式会社ADEKA製
BU-ST:ブチルステアレート、川研ファインケミカル株式会社製
AC-6A:ポリオレフィンワックス、ハネウェル社製
アデカスタブSP-2002:Zn系+ハイドロタルサイト安定剤、株式会社ADEKA製
アデカスタブCPS-1:Ba/Zn系+ハイドロタルサイト安定剤、株式会社ADEKA製
アデカスタブSP-83:β-ジケトン、株式会社ADEKA製
アデカスタブRX-406:Zn系安定剤、株式会社ADEKA製
QP-1845:安定剤、株式会社ADEKA製
アデカスタブSC-1001:Zn系+ホスファイト安定剤、株式会社ADEKA製
アデカスタブCPL-46:液状過塩素酸塩系安定剤、株式会社ADEKA製
アデカスタブAC-400:Ba/Zn系安定剤、株式会社ADEKA製
アデカスタブAC-292:Zn系安定剤、株式会社ADEKA製
アデカスタブCPL-1563:ホスファイト+ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、株式会社ADEKA製
アデカスタブC:ホスファイト、株式会社ADEKA製
【0043】
【0044】
【0045】
<評価方法>
以下に説明する方法で、上記実施例及び比較例に係るフィルムを評価した。評価結果は表1及び表2に示す通りである。
【0046】
(高温製膜性)
上記のようにして形成した実施例1~13及び比較例1~7に係る成形フィルムについて、形成直後(初期)の色と、180℃の環境下で1時間静置した後の色とを、コニカミノルタ製測色機CM-3600dで測色し、色彩値(b*)及び黄色度(YI)を以下の基準で評価した。なお、通常のフィルムの製造過程において樹脂組成物は1時間も高温環境下に置かれないが、樹脂組成物が再利用される場合を考慮して長時間加熱されたときの色を確認した。樹脂組成物が高温環境下に長く置かれると、塩化ビニル樹脂が分解されることで生じる塩化水素によってアクリル樹脂やポリエステル等の加水分解が促進され、黄変し易くなる。
A:5未満
B:5以上7未満
C:7以上10未満
D:10以上15未満
E:15以上
【0047】
(追従性)
上記実施例1~13及び比較例1~7に係る成形フィルムのそれぞれに、以下に説明するように作製した粘着剤層をラミネートし、23℃50%RHにて1週間静置した。その後、半径30mmの半球状であり、且つ、球の頂点に直径10mm、深さ30mmの窪みを有するABS樹脂からなる立体構造物の表面に、成光産業株式会社製の真空成形機フォーミング480を用いて成形温度140℃でそれぞれの成形フィルムを被覆させ、成形体とした。そして、窪みの深さ方向への成形フィルムの追従性を確認し、以下の基準で評価した。
A:25mm以上
B:20mm以上25mm未満
C:18mm以上20mm未満
D:18mm未満
【0048】
(粘着剤層の作製)
ニッセツKP-3075(日本カーバイド工業株式会社製)100質量部にエポキシ系架橋剤TETRAD-C(三菱ガス化学株式会社製)0.1質量部を添加して粘着剤を調製した。この粘着剤を剥離処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(PET75GS、リンテック株式会社製)に乾燥後の厚みが40μmになるように塗工し、80℃で乾燥した。このようにして、PETフィルム上に粘着剤層を形成した。
【0049】
(形状安定性)
上記実施例1~13及び比較例1~7に係る成形フィルムのそれぞれに、上記粘着剤層をラミネートし、23℃50%RHにて1週間静置した。その後、成光産業株式会社製の真空成形機フォーミング480を用いて成形温度140℃にて、面延伸率300%でそれぞれの成形フィルムを7cm角のABS板に被覆した後、中央部を5cm角で切り取った。切り取った部分を80℃の乾燥機に48時間投入し、成形フィルムの収縮量を測定し、以下の基準で評価した。
A:1%未満
B:1%以上1.5%未満
C:1.5%以上2%未満
D:2%以上
【0050】
(ガラス転移温度、貯蔵弾性率)
上記実施例1~13及び比較例1~7に係る成形フィルムをそれぞれ10mm×20mmの大きさに切り出し、動的粘弾性測定装置DMA(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いてにてガラス転移温度及び貯蔵弾性率(E’)を測定した。なお、貯蔵弾性率(E’)は、80℃、140℃、180℃で測定し、それぞれの場合において測定長さは10mm、昇温速度は2℃/min、周波数は10HzAとした。また、ガラス転移温度及び貯蔵弾性率(E’)は、以下の基準で評価した。
ガラス転移温度の評価基準:
A:110℃以上、B:100℃以上、C:80℃以上、D:80℃未満
80℃における貯蔵弾性率(E’)の評価基準:
A:1800MPa以上、B:1400MPa以上、C:1100MPa以上、D1100MPa未満
140℃における貯蔵弾性率(E’)の評価基準:
A:1MPa以上3MPa未満、B:3MPa以上5MPa未満、C:5MPa以上7MPa未満、D8MPa以上
180℃における貯蔵弾性率(E’)の評価基準:
A:0.2MPa以上1MPa未満、B:1MPa以上3MPa未満、C:3MPa以上5MPa未満、D5MPa以上
【0051】
表1及び表2に示す通り、実施例に係る樹脂組成物は高温製膜性に優れ、実施例に係る樹脂組成物は追従性及び形状安定性を有する成形フィルムとされる。一方、比較例では、高温製膜性、追従性及び形状安定性のいずれかが劣る。
【0052】
以上のように、本発明の樹脂組成物は、高温製膜性を有し、形状安定性及び追従性を有するフィルムを形成とされ得る。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上説明したように、本発明によれば、高温製膜性を有し、形状安定性及び追従性を有するフィルムを形成し得る樹脂組成物及び当該樹脂組成物からなる樹脂層を有する成形フィルムが提供され、自動車等の車両の装飾等の分野で利用することが期待される。
【符号の説明】
【0054】
1・・・成形フィルム
2・・・樹脂層
3・・・粘着剤層