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特許7117165防眩膜付基材、画像表示装置、及びデジタルサイネージ
<図1A>
  • 特許-防眩膜付基材、画像表示装置、及びデジタルサイネージ 図1A
  • 特許-防眩膜付基材、画像表示装置、及びデジタルサイネージ 図1B
  • 特許-防眩膜付基材、画像表示装置、及びデジタルサイネージ 図2A
  • 特許-防眩膜付基材、画像表示装置、及びデジタルサイネージ 図2B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】防眩膜付基材、画像表示装置、及びデジタルサイネージ
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20220804BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220804BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20220804BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220804BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20220804BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20220804BHJP
   G09F 19/00 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
G02B5/02 C
H05B33/14 A
H05B33/02
H01L27/32
G02F1/1335
G09F9/00 313
G09F19/00 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018112649
(22)【出願日】2018-06-13
(65)【公開番号】P2019215448
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】籔田 武司
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/043538(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/015039(WO,A1)
【文献】特開2009-42499(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0168757(US,A1)
【文献】特開2016-18068(JP,A)
【文献】特開2018-24240(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021388(WO,A1)
【文献】特開2013-83795(JP,A)
【文献】特開2011-112964(JP,A)
【文献】特開2018-63419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00- 5/136
G02F 1/1335
G09F 9/00
G09F19/00
H01L27/32
H01L51/50
H05B33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部が露出している第一主面を有する基材と、
前記第一主面の別の一部を覆う防眩膜と、を備え、
前記第一主面及び前記防眩膜の表面によって形成された凹凸のある第二主面を有し、
前記第二主面を平面視したときに、前記防眩膜の面積は、前記第二主面の面積の10~90%を占めており、
前記第二主面において、日本工業規格JIS B 0601-2001に定められた、算術平均粗さRa、最大高さRz、及び粗さ曲線要素の平均長さRSmは、下記(i)、(ii)、及び(iii)の条件を満たし、
前記防眩膜は、0.5~15μmの一次粒子径を有する粒子と、平面視において前記粒子を取り囲むバインダとを含む、
防眩膜付基材。
(i)前記算術平均粗さRaが0.08~2μmである。
(ii)前記最大高さRzが0.5~15μmである。
(iii)前記粗さ曲線要素の平均長さRSmが15~50μmである。
【請求項2】
前記粗さ曲線要素の平均長さRSmが31.82μm以上である、請求項1に記載の防眩膜付基材。
【請求項3】
前記粒子は、互いに離れている、請求項に記載の防眩膜付基材。
【請求項4】
前記防眩膜は、前記粒子の少なくとも一部が集合して形成され、かつ、10μm以下の粒子径を有する二次粒子を含む、請求項に記載の防眩膜付基材。
【請求項5】
前記バインダの厚みは、前記バインダによって取り囲まれた前記粒子の前記バインダの厚み方向における寸法よりも小さい、請求項1~4のいずれか1項に記載の防眩膜付基材。
【請求項6】
前記防眩膜における前記粒子の体積に対する前記バインダの体積の比が5/3~9である、請求項1~5のいずれか1項に記載の防眩膜付基材。
【請求項7】
前記防眩膜における前記粒子の質量に対する前記バインダの質量の比が5/3~9である、請求項1~6のいずれか1項に記載の防眩膜付基材。
【請求項8】
前記粒子の主成分は二酸化シリコンであり、かつ、前記バインダの主成分は二酸化シリコンである、請求項1~7のいずれか1項に記載の防眩膜付基材。
【請求項9】
前記粒子に含まれる二酸化シリコン以外の成分の含有量は質量基準で1%以下であり、かつ、前記バインダは10質量%以下の有機成分を含有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の防眩膜付基材。
【請求項10】
JIS Z 8741-1997に定められた60度鏡面光沢の鏡面光沢度GS(60°)が40~110であり、かつ、JIS K 7136:2000に定められたヘーズが5~30%である、請求項1~のいずれか1項に記載の防眩膜付基材。
【請求項11】
前記基材は、ガラスを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の防眩膜付基材。
【請求項12】
前記ガラスは、ソーダライムシリケートガラス及びアルミノシリケートガラスからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項11に記載の防眩膜付基材。
【請求項13】
前記ガラスは、前記ガラスの表面をなす圧縮応力層を有する、請求項11又は12に記載の防眩膜付基材。
【請求項14】
前記基材は、前記第一主面をなす被膜と、前記被膜を支持する前記ガラス製の支持体とを備えた、請求項11~13のいずれか1項に記載の防眩膜付基材。
【請求項15】
画面を有する画像表示ユニットと、
前記画面と前記防眩膜との間に前記基材が位置するように配置された、請求項1~14のいずれか1項に記載の防眩膜付基材と、を備えた、
画像表示装置。
【請求項16】
画面を有する画像表示ユニットと、
前記画面と前記防眩膜との間に前記基材が位置するように配置された、請求項1114のいずれか1項に記載の防眩膜付基材と、を備えた、
デジタルサイネージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩膜付基材、画像表示装置、及びデジタルサイネージに関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置及びデジタルサイネージに用いられる基材には、その表面に蛍光灯等の照明機器又は背景が映り込むことを防止して、表示画像の視認性を向上させることが求められる。このような観点から、基材の表面に防眩膜を形成することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、基材の表面に防眩膜を有する物品が記載されている。物品のヘーズは15%以上であり、防眩膜の表面における60゜鏡面光沢度は25%以下である。防眩膜の表面の算術平均粗さRaは0.17μm以上である。防眩膜は、例えば、シリカ前駆体等のマトリックス前駆体を焼成して形成されたマトリックスの中に無機粒子が存在する、表面に凹凸を有する膜である。
【0004】
特許文献2には、表面に微細凹凸形状を有し、該表面における平均傾斜角θaが0.2°~1.5°であり、かつ、算術平均粗さRaが0.05~0.4である防眩性フィルムが記載されている。微細凹凸形状は、微粒子の凝集により形成されている。また、微細凹凸形状は、例えば、べナードセル形成法によって形成されている。
【0005】
特許文献3には、透明基材上に粒子とバインダマトリックスを含む防眩層を備える防眩フィルムが記載されている。防眩層は、所定のカットオフ波長(λc)に対して所定の十点平均粗さ(Rz1)を示す凹凸構造を備えている。
【0006】
特許文献4には、良好なアンチグレア効果を得ることができる反射防止膜が記載されている。この反射防止膜は、微粒子をゾルゲル法による調整後のゾル液に混合し、それを基板上にコーティング、焼成することにより形成されている。反射防止膜において、微粒子の凝集により反射防止膜の表面が所定ピッチの凹凸状に形成されている。例えば、約150~300個の粒子が集合して凝集体が形成されている。
【0007】
特許文献5には、ガラス基板と、ガラス基板の表面に形成された透明層とを備える防眩性ガラス基板が記載されている。ガラス基板の表面である第一凹凸面及び透明層の表面である第二凹凸面が所定の算術平均粗さ(Ra)及びピッチ(Sm)を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-158537号公報
【文献】特開2008-304638号公報
【文献】特開2009-58862号公報
【文献】特開平10-133002号公報
【文献】特開2013-136496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1~5に記載の技術によれば、基材の主面の全体が防眩膜等によって覆われており、透過光線が基材のみを透過することは想定されていない。そこで、本発明は、防眩性を有するとともに、透過光線の一部が基材のみを透過可能である防眩膜付基材を提供する。加えて、本発明は、このような防眩膜付基材を備えた画像表示装置及びデジタルサイネージを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
一部が露出している第一主面を有する基材と、
前記第一主面の別の一部を覆う防眩膜と、を備え、
前記第一主面及び前記防眩膜の表面によって形成された凹凸のある第二主面を有し、
前記第二主面を平面視したときに、前記防眩膜の面積は、前記第二主面の面積の10~90%を占めている、
防眩膜付基材を提供する。
【0011】
また、本発明は、
画面を有する画像表示ユニットと、
前記画面と前記防眩膜との間に前記基材が位置するように配置された、上記の防眩膜付基材と、を備えた、
画像表示装置を提供する。
【0012】
また、本発明は、
画面を有する画像表示ユニットと、
前記基材がガラスを含む上記の防眩膜付基材であって、前記画面と前記防眩膜との間に前記基材が位置するように配置された、防眩膜付基材と、を備えた、
デジタルサイネージを提供する。
【発明の効果】
【0013】
上記の防眩膜付基材は防眩膜によって防眩性を有する。加えて、基材の第一主面の一部が露出しているので、透過光線の一部が基材のみを透過可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A図1Aは、本発明の一例に係る防眩膜付基材を模式的に示す平面図である。
図1B図1Bは、図1AのIB-IB線に沿って見た防眩膜付基材の断面図である。
図2A図2Aは、本発明の別一例に係る防眩膜付基材を模式的に示す平面図である。
図2B図2Bは、図2AのIIB-IIB線に沿って見た防眩膜付基材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明は、本発明の一例に関するものであり、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0016】
所定の凹凸形状を有する防眩構造により良好な防眩性能を実現するためには、凹凸形状をもたらす防眩膜が基材の主面の全体を覆っていることが望ましいように思われる。一方、本発明者は、このような防眩膜が基材の主面の全体を覆っていると、良好な防眩性能を実現できるものの、防眩膜付基材の光沢感を広い範囲で調整しにくく、透過像の鮮明さを向上させにくいことに新たに気付いた。そこで、本発明者は、良好な防眩性能、光沢感の調整のしやすさ、及び透過像の鮮明さの観点から有利な防眩膜付基材を新規に開発すべく、多大な試行錯誤を重ねた。その結果、本発明者は、基材の主面の一部を露出させつつ、基材の主面を覆う防眩膜の面積を所定の範囲に調整することが有利であることを新たに見出し、本発明に係る防眩膜付基材を案出した。
【0017】
図1A及び図1Bに示す通り、防眩膜付基材1aは、基材10と、防眩膜20とを備えている。基材10は第一主面11を有し、第一主面11の一部は露出している。これにより、基材10は露出部12を有する。防眩膜20は、第一主面11の別の一部を覆っている。換言すると、防眩膜20は、露出部12とは異なる第一主面11の一部を覆っている。第一主面11及び防眩膜20の表面によって凹凸のある第二主面25が形成されている。第二主面25を平面視したときに、防眩膜20の面積は、第二主面25の面積の10~90%を占めている。
【0018】
露出部12をなす第一主面11は、典型的には、入射光を正反射させる。このため、防眩膜付基材1aの光沢感は、平面視における第二主面25の面積に対する露出部12の面積の比の影響を受けやすい。防眩膜20の面積が上記の範囲で調整されることによって、防眩膜付基材1aの光沢感を広い範囲で調整しやすい。一方、防眩膜20の表面は、典型的には、第一主面11に対して傾斜して第二主面25に凹凸をもたらしているので、防眩膜20の表面に入射した光は、露出部12をなす第一主面11において正反射した光の進行方向とは異なる方向へ反射する。このように、入射光の反射位置ごとに反射像が形成される位置がずれるので、第二主面25から反射された光を合成した反射像は、不鮮明であり、防眩膜付基材1aが所望の防眩性を発揮できる。
【0019】
防眩膜20の表面は、第一主面11に対し傾斜しており、防眩膜20を透過する透過光線は、進路を変えて進みやすい。しかし、防眩膜付基材1aにおいて、露出部12によって、透過光線の一部は基材1aのみを透過可能である。基材1aのみを透過する透過光線は、進路を変えずに進みやすい。このことは、透過像の鮮明さが保つうえで有利である。
【0020】
第二主面25において、日本工業規格JIS B 0601-2001に定められた算術平均粗さRa、最大高さRz、及び粗さ曲線要素の平均長さRSmは、例えば、下記の(i)、(ii)、及び(iii)の条件を満たしている。これにより、防眩膜付基材1aが良好な防眩性を発揮できる。
(i)算術平均粗さRaが0.08~2μmである。
(ii)最大高さRzが0.5~15μmである。
(iii)粗さ曲線要素の平均長さRSmが15~50μmである。
【0021】
第二主面25において、算術平均粗さRaは0.08~1.5μmであってもよいし、0.08~1μmであってもよい。第二主面25において、最大高さRzは、0.8~13μmであってもよいし、0.7~1.2μmであってもよい。第二主面25において、粗さ曲線要素の平均長さRSmは、17~48μmであってもよいし、20~45μmであってもよい。
【0022】
第一主面11の露出部12における算術平均粗さRaは、例えば0~1nmであり、望ましくは0.1~0.5nmであり、より望ましくは0.1~0.3nmである。これにより、第一主面11の露出部12において入射光が正反射しやすく、基材1aのみを透過する透過光線が進路を変えずに進みやすい。
【0023】
防眩膜20は、例えば、粒子21と、バインダ22とを含んでいる。粒子21は、例えば0.5~15μmの一次粒子径を有する。バインダ22は、平面視において粒子21を取り囲んでいる。粒子21及びバインダ22によって、第二主面25が所望の凹凸を有しやすい。
【0024】
防眩膜20において、粒子21は、互いに離れていてもよいし、粒子21の少なくとも一部が集合して二次粒子を形成していてもよい。二次粒子の粒子径は、例えば10μm以下である。本明細書において、粒子21に関し、一次粒子径及び二次粒子径は、防眩膜20を平面視したときの最大径である。
【0025】
防眩膜20において、バインダ22の厚みは、例えばバインダ22によって取り囲まれた粒子21のバインダ22の厚み方向における寸法よりも小さい。このように、粒子21の厚み方向における寸法よりも小さい厚みを有するバインダ22によって粒子が取り囲まれているので、第二主面25が所望の凹凸を有しやすい。バインダ22の厚み方向は、第一主面11に垂直な方向でありうる。
【0026】
粒子21を取り囲むバインダ22は、望ましくは、第一主面11に対して傾斜している傾斜面を形成している。この傾斜面において、粒子21の近傍において粒子21からの距離が減少するとバインダ22の厚みがなだらかに増加している。バインダ22がこのような傾斜面を形成していることにより、第二主面25が所望の凹凸を有しやすい。
【0027】
防眩膜20において、粒子21の体積(Vp)に対するバインダ22の体積(Vb)の比(Vb/Vp)は、例えば、5/3~9である。これにより、第二主面25が所望の凹凸を有しやすい。
【0028】
防眩膜20において、粒子21の質量(Mp)に対するバインダ22の質量(Mb)の比(Mb/Mp)は、例えば、5/3~9である。これにより、第二主面25が所望の凹凸を有しやすい。
【0029】
粒子21は、有機材料、無機材料、又は有機材料と無機材料とのハイブリッド材料によって形成されうる。バインダ22は、有機材料、無機材料、又は有機材料と無機材料とのハイブリッド材料によって形成されうる。粒子21の主成分は、例えば、二酸化シリコン(SiO2)である。また、バインダ22の主成分は、例えば、二酸化シリコンである。粒子21の主成分が二酸化シリコンであり、かつ、バインダ22の主成分が二酸化シリコンであってもよい。この場合、粒子21及びバインダ22が所望の機械的強度を有しやすい。加えて、粒子21とバインダ22との密着性が良好である。本明細書において、「主成分」は質量基準で最も多く含まれる成分を意味する。
【0030】
粒子21は、実質的に二酸化シリコンからなっていてもよい。本明細書において「実質的に二酸化シリコンからなる」とは、製造上の理由等により不可避的に混入する不純物を除き、意図的に二酸化シリコン以外の成分が含有されていないことを意味する。粒子21が実質的に二酸化シリコンからなる場合、粒子21に含まれる二酸化シリコン以外の成分の含有量は、質量基準で、例えば1%以下であり、望ましくは0.1%以下であり、より望ましくは0.01%以下である。バインダ22は、10質量%以下の有機成分を含有していてもよい。粒子21は、実質的に二酸化シリコンからなり、かつ、バインダ22は10質量%以下の有機成分を含有していてもよい。
【0031】
バインダ22は、例えば、官能性アルコキシシランの加水分解縮重合物を含む。この場合、例えば、ゾルゲル法によってバインダ22を形成できる。
【0032】
基材10は、可視光に対して透明な基材である限り特に制限されない。基材10は、例えば、ガラスを含む。ガラスは、ソーダライムシリケートガラスであってもよいし、アルミノシリケートガラスであってもよい。基材10は樹脂製の基材であってもよい。
【0033】
基材10がガラスを含む場合、そのガラスは、ガラスの表面をなす圧縮応力層を有していてもよい。圧縮応力層は、例えば、風冷強化及び化学強化等の公知の強化処理をガラスに適用することによって形成できる。
【0034】
基材10は、第一主面11をなす被膜と、その被膜を支持するガラス製の支持体とを備えていてもよい。基材10は、第一主面11の表面粗さの調整、基材11と防眩膜20との密着性の向上、基材11と防眩膜20との間の物質移動の抑制、又は基材11の対候性の向上などの所定の目的のために被膜を備えている。被膜は、例えば、有機材料、無機材料、又は有機材料と無機材料とのハイブリッド材料によって形成されている。
【0035】
基材10は、例えば、シート状である。この場合、基材10は、ガラス板又は樹脂板を含みうる。
【0036】
図1A及び図1Bに示す通り、防眩膜20は、例えば、平面視したときに防眩膜20と露出部12とが相互に交錯している相互連結構造を有している。換言すると、防眩膜20と露出部12とがジグソーパズルのピースのように互いに入り組んでいる。この場合、防眩膜20の面積を大きくしやすい。
【0037】
防眩膜付基材1aにおいて、JIS Z 8741-1997に定められた60度鏡面光沢の鏡面光沢度GS(60°)は、例えば、40~110である。このように、防眩膜付基材1aの光沢度を広い範囲で調整できる。加えて、防眩膜付基材1aにおいて、JIS K 7136:2000に定められたヘーズは、例えば、5~30%である。このように、防眩膜付基材1aによれば、ヘーズが適切な範囲に調整される。なお、平滑な表面を有するガラス基板の鏡面光沢度GS(60°)は通常150~160である。
【0038】
防眩膜付基材1aを用いて所定の画像表示装置を提供できる。例えば、画像表示装置は、画面を有する画像表示ユニットと、防眩膜付基材1aとを備えている。画像表示装置において、画像表示ユニットの画面と防眩膜20との間に基材10が位置するように防眩膜付基材1aが配置されている。画像表示ユニットは、例えば、液晶ディスプレイ及び有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイでありうる。
【0039】
防眩膜付基材1aを用いて所定のデジタルサイネージを提供できる。例えば、デジタルサイネージは、画面を有する画像表示ユニットと、防眩膜付基材1aとを備えている。この場合、基材10は、典型的にはガラスを含んでいる。デジタルサイネージにおいて、画像表示ユニットの画面と防眩膜20との間に基材10が位置するように防眩膜付基材1aが配置されている。画像表示ユニットは、例えば、液晶ディスプレイ及び有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイでありうる。
【0040】
防眩膜付基材1aは、例えば、図2A及び図2Bに示す防眩膜付基材1bに変更されてもよい。防眩膜付基材1bは、特に説明する場合を除き、防眩膜付基材1aと同様に構成されている。防眩膜付基材1aの構成要素と同一又は対応する防眩膜付基材1bの構成要素には、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。防眩膜付基材1aに関する説明は、技術的に矛盾しない限り防眩膜付基材1bにも当てはまる。
【0041】
図2A及び図2Bに示す通り、防眩膜20は、例えば、平面視したときに粒状に分散している海島構造を有している。この場合、露出部12の面積が大きくなりやすい。
【0042】
防眩膜付基材1a及び防眩膜付基材1bの製造方法の一例について説明する。まず、基材10として、例えば、ガラス板又は樹脂板を準備する。このとき、ガラス板の主面又は樹脂板の主面が第一主面11をなしてもよいし、必要に応じて、ガラス板又は樹脂板の一方の主面に研磨及びコーティング等の所定の処理を施して第一主面11を形成してもよい。
【0043】
次に、基材10の第一主面11に、例えば、防眩膜20の原料を含むコーティング液を用いてゾルゲル法によって防眩膜20を形成する。コーティング液は、粒子21及びバインダ22の前駆体を含有している。バインダ22の前駆体は、例えば、官能性アルコキシシランである。コーティング液は、例えば、ゲル化反応の触媒となる酸及び水をさらに含有し、必要に応じて界面活性剤等の所定の添加剤をさらに含有していてもよい。コーティング液は、官能性アルコキシシランの代わりに、又は、官能性アルコキシシランとともに、官能性アルコキシシランの加水分解物を含有していてもよい。なお、コーティング液の調製において、粒子21の分散液を用いてもよい。粒子21の分散液の分散媒は、水又はアルコール等の液体有機化合物でありうる。
【0044】
コーティング液を基材10の第一主面11に塗布して塗膜を形成する。乾燥及び加熱により塗膜を硬化させて、防眩膜20が形成される。このようにして、防眩膜付基材1a又は防眩膜付基材1bが得られる。コーティング液を基材10の第一主面11に塗布する方法は、例えば、ロールコーティング、スプレイコーティング、及び吹き付け法等の方法である。量産性の観点から、コーティング液を基材10の第一主面11に塗布する方法は、望ましくは、ロールコーティングである。塗膜の加熱における塗膜の環境温度は、例えば、100~500℃である。
【実施例
【0045】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されない。まず、実施例及び比較例に係るサンプルの評価方法を説明する。
【0046】
(光学特性)
光沢計(堀場製作所社製、製品名:ハンディ光沢計 IG-320)を用いて、実施例及び比較例に係るサンプルについて、JIS Z 8741-1997に定められた60度鏡面光沢の鏡面光沢度GS(60°)を測定した。結果を表1に示す。ヘーズメータ(日本電色工業社製、製品名:NDH 2000)を用いて、実施例及び比較例に係るサンプルに対し、JIS K 7136:2000に定められたヘーズ及び全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0047】
(表面形状)
レーザーマイクロスコープ(Lasertec社製、製品名:OPTELICS HYBRID)を用いて、実施例及び比較例に係るサンプルの表面形状を測定し、JIS B 0601-2001に定められた、算術平均粗さRa、最大高さRz、及び粗さ曲線要素の平均長さRSmを求めた。結果を表1に示す。
【0048】
(防眩膜の光学顕微鏡観察)
光学顕微鏡を用いて、実施例及び比較例に係るサンプルの防眩膜を平面視した画像を得た。この画像を画像処理することによって、防眩膜の面積及び基材の露出部の面積を求め、防眩膜の面積及び基材の露出部の面積の和(St)に対する防眩膜の面積(Sa)の比(Sa/St)を求めた。結果を表1に示す。
【0049】
(防眩性)
実施例及び比較例に係るサンプルの基材を黒色のプラスチック板に貼り付けた状態で、蛍光灯の光をサンプルの防眩膜に映り込ませて目視した。このとき、蛍光灯などが映りこんだ像の鮮明さを目視により下記の基準に従って評価した。結果を表1に示す。
A:蛍光灯の像が全く気にならない
G:蛍光灯の像が鮮明であり気になる
【0050】
<実施例1>
正珪酸エチル52.01g、プロピレングリコールモノメチルエーテル20.94g、精製水26.05g、及び1規定硝酸水溶液1.00gを混合して、40℃で8時間反応させ、原液Aを得た。原液Aにおける固形分の濃度は、15質量%であった。
【0051】
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、ポリカプロラクトントリオール(PCL)の希釈液(PCLの濃度:50質量%)、シリカ粒子(デンカ社製、製品名:FB-3SDC、シリカ粒子のメディアン径:3.1μm)を水に分散させた分散液A(シリカの濃度:69質量%)、原液A、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)、及びシリコーン界面活性剤(信越化学工業社製、製品名:KP-341)を表2に示す分量で混合して、実施例1に係るコーティング液を調製した。なお、メディアン径とは、体積基準の粒度分布の累積分布が50%となる粒径(d50)を意味する。
【0052】
一般的なソーダライムシリケート組成のガラス板を所定の寸法に切断して、基材を準備した。このガラス板は入射光の正反射が可能な平滑な主面を有していた。基材の主面にロールコーティングによって実施例1に係るコーティング液を塗布して、塗膜を形成した。ロールコーティングにおいて、基材の搬送速度を10m/分に調節し、アプリケーションロールの回転速度を10m/分に調節し、搬送ロールとアプリケーションロールとのギャップを3.5mmに調節した。その後、オーブンを用いて300℃の環境に4分間置いて、塗膜を硬化させ、防眩膜を形成した。このようにして、実施例1に係るサンプルを得た。
【0053】
<実施例2~7>
下記の点以外は、実施例1と同様にして、実施例2~7に係るサンプルを作製した。実施例2において、シリカ粒子の分散液Aの代わりに、シリカ粒子(日本触媒社製、製品名:KE-P150、シリカ粒子の公称粒子径:1.5μm)を水に分散させた分散液B(シリカの濃度:54質量%)を用い、表2に示す分量で各原料を混合して実施例2に係るコーティング液を調製した。実施例3において、シリカ粒子の分散液Aの代わりに、シリカ粒子の分散液C(日本触媒社製、製品名:KE-W50、シリカ粒子の公称粒子径:0.5μm、シリカの濃度:20質量%)を用い、表2に示す分量で各原料を混合して実施例3に係るコーティング液を調製した。シリカ粒子の分散液として、シリカ粒子の分散液Aを用いて、表2に示す分量で各原料を混合して実施例4~7に係るコーティング液を調製した。防眩膜の形成において、実施例1に係るコーティング液の代わりに、実施例2~7に係るコーティング液を用いて、それぞれ、実施例2~7に係るサンプルを作製した。
【0054】
<比較例>
実施例1において基材として使用されたガラス板と同一種類のガラス板を所定の寸法に切断して、比較例に係るサンプルを得た。比較例に係るサンプルの表面形状を測定した結果、算術平均粗さRaは数nm~数十nmのオーダーであった。最大高さRzはほぼ0μmであり、粗さ曲線要素の平均長さRSmは測定可能範囲外であった。
【0055】
表1に示す通り、各実施例に係るサンプルは、防眩性を有していた。加えて、実施例に係るサンプルによれば、鏡面光沢度GS(60°)が広い範囲で調整できることが示唆された。また、実施例に係るサンプルのヘーズは30%以下という低さであった。このように、実施例に係るサンプルは、防眩性、光沢性、及びヘーズの観点で有利な特性を有していた。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【符号の説明】
【0058】
1a、1b 防眩膜付基材
10 基材
11 第一主面
12 露出部
20 防眩膜
21 粒子
22 バインダ
25 第二主面
図1A
図1B
図2A
図2B