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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】時計、および情報伝達システム
(51)【国際特許分類】
   G04G 21/00 20100101AFI20220804BHJP
   G04R 20/08 20130101ALI20220804BHJP
   G04G 5/00 20130101ALI20220804BHJP
   G04R 20/26 20130101ALI20220804BHJP
【FI】
G04G21/00 L
G04R20/08
G04G21/00 D
G04G5/00 J
G04R20/26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018184113
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020051992
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000115773
【氏名又は名称】リズム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片野 広大
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-246548(JP,A)
【文献】特開2017-053558(JP,A)
【文献】特開2017-098742(JP,A)
【文献】特開昭62-015485(JP,A)
【文献】特開2006-052946(JP,A)
【文献】特開平04-294413(JP,A)
【文献】特開2008-180535(JP,A)
【文献】特開2006-197452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04G 3/00-99/00
G04R 20/00-60/14
H04L 7/00- 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信機能を有する時計であって、
各種プログラムおよび通信機能を実現するためのプロトコルを格納する記憶部と、
前記時計の動作を制御するプロセッサと、を備え、
前記記憶部は、携帯端末と1対1通信を可能とし、親時計として機能させるための第1プロトコルと、前記親時計との通信を可能とし、子時計として機能させるための第2プロトコルと、を格納し、
スイッチによって前記第1プロトコルと前記第2プロトコルを切り替え、前記親時計として機能させるか、前記子時計として機能させるか選択可能に構成され
前記第1プロトコルは、さらに、定期的に標準電波を受信することを可能にするプロトコルと、複数の前記子時計に対して1対多通信により第1情報を送受信することを可能にするプロトコルと、を含み、
前記第2プロトコルは、前記親時計からの1対多通信によって送信される情報を受信し、前記親時計に対して第2情報を送信するプロトコルと、他の子時計との間でリレー通信を可能とするプロトコルと、を含む、時計。
【請求項2】
請求項において、
前記親時計から前記複数の子時計に対して1対多通信によって送信される前記第1情報は、時刻情報を含み、
前記複数の子時計から前記親時計に対して1対多通信によって送信される前記第2情報は、前記複数の子時計のそれぞれの電池残量情報と、前記複数の子時計が取得した温湿度情報と、を含む、時計。
【請求項3】
携帯端末と、親時計と、複数の子時計と、を含み、
前記親時計は、請求項1または2に記載の時計であって、前記第1プロトコルに切り替えられて親時計として機能するように設定された時計であり、
前記複数の子時計のそれぞれは、請求項1または2に記載の時計であって、前記第2プロトコルに切り替えられて子時計として機能するように設定された時計であり、
前記親時計に電源が投入されると、前記親時計と前記携帯端末との間で1対1通信が可能となり、
前記複数の子時計のうち少なくとも1つの時計に電源が投入されると、前記携帯端末と前記少なくとも1つの子時計とがペア設定モードに移行し、前記携帯端末が、前記少なくとも1つの子時計の固有識別情報を取得し、前記親時計に、前記少なくとも1つの子時計の前記固有識別情報を送信し、情報伝達先として登録するように指示し、
前記ペア設定モードのときのみ、前記少なくとも1つの子時計と前記携帯端末との間で1対1通信が可能となるように構成された、情報伝達システム。
【請求項4】
請求項において、
ペア設定完了後、前記親時計は、所定のタイミングで、Mesh通信を行い、Mesh通信可能範囲内にある前記子時計に時刻情報を送信し、前記親時計と前記子時計との間で時刻を同期させる、情報伝達システム。
【請求項5】
請求項において、
前記Mesh通信可能範囲内にある前記子時計は、Mesh通信可能範囲外にある前記子時計に対してリレー通信を実行し、前記時刻情報を送信し、前記親時計と設置された全ての前記複数の子時計との間で時刻を同期させる、情報伝達システム。
【請求項6】
請求項またはにおいて、
前記親時計および前記複数の子時計はそれぞれ、それぞれの電池残量を検知する電池残量検知部と、温湿度を測定する温湿度センサ部と、を備え、
前記所定のタイミングで、前記子時計は、前記電池残量の情報と前記温湿度の情報を前記親時計に送信し、
前記親時計は、前記電池残量の情報と前記温湿度の情報を前記携帯端末に送信し、
前記携帯端末は、前記親時計および前記子時計の前記電池残量の情報と前記温湿度の情報を表示部に表示する、情報伝達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、時計、および情報伝達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、それぞれ通信機能を備える親時計と子時計を設置し、親時計と子時計が互いに通信を行い、子時計の時刻を親時計の時刻に一致させるシステムが考案されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、第1の無線装置が微弱な電波しか出力することができなくても第2の無線装置を自由に配置することができ、時刻情報を受信しているかどうかの確認も多数の第2の無線装置について簡単且つ省電力で行なえる、無線式時刻情報伝達システムについて開示する。具体的に、当該特許文献1には、「無線式親子時計システム1は、第1の無線装置の例として親時計2と、第2の無線装置の例として複数の子時計3A、3B及び3Cと、子時計の間に配された中継器41及び42とを備える。ランク制御手段37Aはデコーダ32からの情報に基づき、送信する時刻情報が第1の参照時刻情報であることを表すデータをエンコーダ36に送る。エンコード36は計時手段34からの第1の参照時刻情報に、ランク制御手段37Aからの第1の参照時刻情報であることを示すデータと、個体識別番号制御手段37からの特定の子時計を示すデータと、を付け加えて、送信器38に送る。」(特許文献1の要約参照)と記載されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2は、時刻同期させる無線通信装置が複数であっても時刻同期を実現可能な無線通信装置等について開示する。具体的に、当該特許文献2には、「ペリフェラル201、202は、時刻情報を取得するタイミングを示すタイミング情報をセントラル100に送信する。セントラル100は、ペリフェラル202から受信したタイミング情報が示すタイミングが、すでに受信した他のペリフェラル201のタイミング情報が示すタイミングと重複しないように、その受信したタイミング情報のタイミングを変更する。セントラル100は、変更したタイミング情報に基づいてそのペリフェラル202に、タイミング情報を設定変更させる。」(特許文献2の要約参照)と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4664018号公報
【文献】特許第6131987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の従来技術においては、親時計と複数の子時計との間で1対1通信を行うことにより親時計の時刻情報を子時計に通知するか、あるいは親時計から複数の子時計との間でリレー方式の通信を行うことにより全ての子時計に親時計の時刻情報を行き渡らせるようにしている。
【0007】
しかしながら、従来技術においては、親時計と子時計の仕様が異なり、専用の親時計(マスター無線装置)とそれに従って動作する子時計(スレーブ無線装置)とを設置しなければならない。従って、親時計と子時計を別々に設計して製造しなければならず、製品の管理が煩雑であり、コスト高を招く状況であった。
【0008】
本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、ユーザが時計を設置する際に親時計として機能させるか子時計として機能させるか決定することができる時計およびそれを用いた情報伝達システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(i)上記課題を解決するために、本実施形態は、通信機能を有する時計であって、各種プログラムおよび通信機能を実現するためのプロトコルを格納する記憶部と、時計の動作を制御するプロセッサと、を備え、記憶部は、携帯端末と1対1通信を可能とし、親時計として機能させるための第1プロトコルと、親時計との通信を可能とし、子時計として機能させるための第2プロトコルと、を格納し、スイッチによって第1プロトコルと第2プロトコルを切り替え、親時計として機能させるか、子時計として機能させるか選択可能に構成されている、時計について開示する。
【0010】
(ii)本実施形態において、第1プロトコルは、さらに、定期的に標準電波を受信することを可能にするプロトコルと、複数の子時計に対して1対多通信により第1情報を送受信することを可能にするプロトコルと、を含む。第2プロトコルは、親時計からの1対多通信によって送信される情報を受信し、親時計に対して第2情報を送信するプロトコルと、他の子時計との間でリレー通信を可能とするプロトコルと、を含む。
【0011】
(iii)本実施形態において、親時計から複数の子時計に対して1対多通信によって送信される第1情報は、時刻情報を含み、複数の子時計から親時計に対して1対多通信によって送信される第2情報は、複数の子時計のそれぞれの電池残量情報と、複数の子時計が取得した温湿度情報と、を含む。
【0012】
(iv)本実施形態は、情報伝達システムについて開示する。当該情報伝達システムは、携帯端末と、親時計と、複数の子時計と、を含む。親時計は、上記第1プロトコルに切り替えられて親時計として機能するように設定された時計であり、複数の子時計のそれぞれは、上記第2プロトコルに切り替えられて子時計として機能するように設定された時計である。そして、親時計に電源が投入されると、親時計と携帯端末との間で1対1通信が可能となり、複数の子時計のうち少なくとも1つの時計に電源が投入されると、携帯端末と少なくとも1つの子時計とがペア設定モードに移行する。ペア設定モードでは、携帯端末が、少なくとも1つの子時計の固有識別情報を取得し、親時計に、少なくとも1つの子時計の固有識別情報を送信し、情報伝達先として登録するように指示する。上記少なくとも1つの子時計は、ペア設定モードのときのみ、携帯端末と1対1で通信することができるように構成されている。
【0013】
(v)本実施形態において、ペア設定完了後、親時計は、所定のタイミングで、Mesh通信を行い、Mesh通信可能範囲内にある子時計に時刻情報を送信する。これにより、親時計と子時計との間で時刻が同期するようになる。
【0014】
(vi)本実施形態において、Mesh通信可能範囲内にある子時計は、Mesh通信可能範囲外にある子時計に対してリレー通信を実行し、時刻情報を送信する。これにより、親時計と設置された全ての複数の子時計との間で時刻が同期するようになる。
【0015】
(vii)親時計および複数の子時計はそれぞれ、それぞれの電池残量を検知する電池残量検知部と、温湿度を測定する温湿度センサ部と、を備える。親時計がMesh通信を行うとき、所定のタイミングで、子時計は、電池残量の情報と温湿度の情報を親時計に送信する。そして、親時計は、親時計および子時計の電池残量の情報と温湿度の情報を携帯端末に送信する。これにより、携帯端末は、親時計および子時計の電池残量の情報と温湿度の情報を表示部に表示することが可能となる。
【0016】
本開示に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになる。また、本開示の態様は、要素及び多様な要素の組み合わせ及び以降の詳細な記述と添付される特許請求の範囲の様態により達成され実現される。
本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではないことを理解する必要がある。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、ユーザが時計を設置する際に親時計として機能させるか子時計として機能させるか任意に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態による情報伝達システム1の概略構成例を示す図である。
図2】本実施形態による親機20および子機30_1から30_9(以下、便宜上、子機30とする)の概略内部構成例を示す図である。
図3】本実施形態によるペア設定モードの動作内容を説明するためのフローチャートである。
図4】親機20と子機30_1から30_9・・・との間で時刻同期処理が行われる様子を示す図である。
図5】当該時刻同期処理(時刻情報伝達処理)を説明するためのフローチャートである。
図6】各時計(親機/子機)を携帯端末10に登録するときの通信情報の例を示す図である。
図7】携帯端末10に親機20および各子機30_1から30_9・・・の登録が済んでいる場合の通信情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った具体的な実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。
【0020】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0021】
(1)第1の実施形態
<情報伝達システムの構成例>
図1は、本実施形態による情報伝達システム1の概略構成例を示す図である。情報伝達システム1は、ユーザが所有する携帯端末(携帯端末)10と、親機(通信機能を有する親時計)20と、複数の子機(通信機能を有する子時計)30_1から30_9と、を備えている。
【0022】
携帯端末10は、少なくともブルートゥース(登録商標)などの近距離通信機能を備える端末であり、例えば、スマートフォンなどの携帯端末などが該当する。
【0023】
親機(親時計)20は、電波通信機能と近距離通信機能とを備える、時計である。親機20は、近距離通信機能を用いて、携帯端末10と1対1で通信をすることができるように構成されている。また、親機20は、Mesh通信により、複数の子機30_1から30_9・・・の少なくとも一部(Mesh通信可能範囲に含まれる子機)に対して所定の情報(例えば、親機20が取得した時刻情報など)を送信することができる。
【0024】
子機30_1から30_9のうち、親機20のMesh通信可能範囲に含まれる子機30_m(例えば、子機30_1から30_3の何れか)は、親機20から送信されてきた上記所定の情報を取得し、かつ、親機20の指示に応答して、親機20のMesh通信可能範囲外の子機30_n(例えば、子機30_4から30_6の何れか)に対して、上記近距離通信を用いたリレー通信により、上記情報を送信する。リレー通信によって上記情報を受信した子機30_nは、さらにリレー通信によって、親機20からさらに遠距離の位置にある子機30_k(例えば、子機30_7から30_9の何れか)に対して上記所定の情報を送信する。
【0025】
なお、後述するように、親機20と子機30とは同一構成をなし、ユーザがスイッチ(機械的な切り替えスイッチ、あるいはGUI(Graphical User Interface)のメニュー選択による切り替え制御)によって、親機20として機能させるか、子機30として機能させるか選択することが可能である。
【0026】
<親機(親時計)および子機(子時計)の内部構成例>
図2は、本実施形態による親機20および子機30_1から30_9(以下、便宜上、子機30とする)の概略内部構成例を示す図である。
【0027】
親機20および子機30は、プロセッサ(CPU(Central Processor Unit)やMPU(Microprocessor Unit)など)101と、計時部102と、温度センサ103と、湿度センサ104と、通信部105と、記憶部106と、入力部107と、出力部108と、を備える。
【0028】
プロセッサ101は、装置内の全体の動作を制御する。プロセッサ(制御部)101は、記憶部106あるいは他のメモリ(図示せず)から各種プログラム(図4のフローチャートに対応するプログラムを含む)を読み込み、内部メモリ(図示せず)に各種プログラムを展開して実行する。例えば、通信部105が時刻情報を受信した場合、プロセッサ101が、計時部102に対して時刻を調整するように指示する。
【0029】
計時部102は、クロック信号のパルス数をカウントする機能を有し、カウントしたパルス数に基づいて時刻を計時する。プロセッサ101は、計時部102がカウントするパルス数に基づいたタイミングで各種制御を実行する。なお、計時部102の計時時刻は、親機20の場合には受信する標準電波による時刻に同期することにより、あるいは携帯端末10から取得した時刻に同期によって定期的に補正される。
【0030】
温度センサ103は、周囲の温度(環境温度)を測定する。測定された温度の情報は、定期的にあるいは随時プロセッサ101によって取得される。湿度センサ104は、周囲の湿度(環境湿度)を測定する。測定された湿度の情報は、定期的にあるいは随時プロセッサ101によって取得される。本実施形態では、親機20および子機30に搭載するセンサの種類として、温度センサ103と湿度センサ104のみが示されているが、これらに限定される趣旨ではなく、別のセンサ(例えば、明暗センサや音センサなど)や電池残量を監視して測定する電池残量検知部を備えていてもよい。
【0031】
通信部105は、ブルートゥース(登録商標)通信、ローカルネットワーク(LAN:Local Area Network)あるいはインターネット(WAN:Wide Area Network)を介して、他の機器と通信し、所定の情報を送受信する。親機20の場合、携帯端末10とはブルートゥース(登録商標)などの近距離通信によって通信したり、電波通信により電波時刻を受信したりする。子機30の場合、親機20から時刻情報などの所定の情報を受信したり、他の子機30に取得した所定の情報(親機20や他の子機30から取得した情報)をリレー通信により送信したりする。また、親機20や子機30の設置箇所付近(近距離通信が可能な範囲)に空調機器がある場合には、所定の情報(この場合、設定温度を変更するなど空調の動作を制御する空調制御情報)を受信した親機20や子機30は、当該空調機器の動作を制御する。また、時刻情報や空調制御情報の他に、例えば、周辺エリアの天気予報、光化学スモッグなど注意警報、電車遅延などの交通情報、地震・津波・ミサイルによる避難警報、特定の子機30に対しての修正プログラムなどを配信し、各子機30の表示部に文字として表示したり、スピーカから音声報知したり、プログラム修正が必要な特定の子機30のプログラムを更新したりしてもよい。
【0032】
記憶部106は、各種プログラムや各種パラメータを格納する。また、例えば、記憶部106は、親機20として動作するための第1プロトコルと、子機30として動作するための第2プロトコルと、を格納する。第1プロトコルは、携帯端末10と1対1で通信するための近距離通信(例えば、ブルートゥース(登録商標)の1対1通信)対応のプロトコル)と、通信可能範囲に含まれる複数の子機30_m(例えば、上記子機30_1から30_3)に対してMesh通信により情報を送信するための近距離通信(例えば、ブルートゥース(登録商標)の1対多通信)対応のプロトコルと、電波時計として機能するためのプロトコルと、を含む。第2プロトコルは、親機20から所定の情報を受信するためのプロトコルと、リレー通信によって他の子機に受信した所定の情報を送信するためのプロトコルと、ペア設定モード時のみ携帯端末10との通信を可能とするプロトコルと、を含む。時計を親機20として機能するものとユーザが設定した場合(スイッチによって切り替え)、当該時計は第1プロトコルのみを用いる。一方、時計を子機30として機能するものとユーザが設定した場合(スイッチによって切り替え)、当該時計は第2プロトコルのみを用いる。
【0033】
入力部106は、各種スイッチやボタン、キーボード(簡易的なキーボード)、タッチパネル、マイクなどの入力手段の何れかあるいはこれらの組み合わせによって構成される。出力部108は、音声を出力するスピーカやディスプレイ部などによって構成される。
【0034】
<ペア設定モード>
携帯端末10および複数の時計(親機20や子機30に相当する機器)を本実施形態による情報伝達システム1として機能させるためには、携帯端末10において、親機20と子機30_1から30_9を登録しなければならない。この親機20と子機30_1から30_9を携帯端末10に登録するモードをペア設定モードという。
【0035】
図3は、本実施形態によるペア設定モードの動作内容を説明するためのフローチャートである。ペア設定モードを動作させる前提として、ユーザは、各時計に対して、親機20として動作させるか、子機30として動作させるか設定しなければならない。上述のように、当該設定は、各時計に設けられたスイッチによって決定される。例えば、各時計に設けられた機械スイッチによって親機あるいは子機に切り替えたり、あるいは時計の表示部(入力部107)に表示されるGUIのメニューによって親機あるいは子機を選択したりすることにより、当該設定は実現される。親機20に設定された場合、上述のように、該当する時計は、第1プロトコルを使用する。子機30に設定された場合、上述のように、該当する時計は、第2プロトコルを使用する。
【0036】
(i)ステップ301
親機20あるいは子機30の電源を投入すると、親機20あるいは子機30は、ペア設定モードに移行する。ペア設定モードが有効となる期間は、電源投入後一定の期間内とすることが可能である。
【0037】
(ii)ステップ302
親機20がペア設定モードになると、携帯端末10から親機20に対して通信することが可能となる。また、各子機30もペア設定モード中のみ携帯端末10と1対1で通信することができる。
【0038】
(iii)ステップ303
携帯端末10は、ペア設定モード中の子機30の固有識別情報(ID番号)を取得し、図示しないメモリに子機30として登録する。携帯端末10による固有識別情報の取得に関しては、例えば、ユーザが、携帯端末10を操作し、各子機30_1から30_9・・・の固有識別情報を入力したり、あるいはペア設定モード中のみ携帯端末10が各子機30_1から30_9・・・と1対1で通信することを可能とし、互いに通信することによりそれぞれの固有識別情報を取得したりする。なお、後者の場合、ペア設定が完了すると、各子機30は、携帯端末10と1対1での通信ができなくなるように構成されている(子機としてそのようなプロトコルとなっている)。
【0039】
(iv)ステップ304
携帯端末10は、親機20と1対1で近距離通信(ブルートゥース(登録商標)通信)を実行し、登録された子機30_1から30_9・・・の固有識別情報を親機20に送信する。また、携帯端末10は、このタイミング(ペア設定モード中)でも、親機20に時刻情報を送信し、携帯端末10と親機20の時刻を同期させることができる。
【0040】
(v)ステップ305
親機20は、子機30_1から30_9・・・の固有識別情報を受信し、それらを記憶部106にMesh通信による情報送信先として登録する。
そして、同時に、親機20は、時刻情報を子機30にMesh通信により送信する。Mesh通信可能範囲外の子機30については、Mesh通信可能範囲内の子機30からリレー通信によって親機20からの時刻情報が送信される。これにより、携帯端末10、親機20、および子機30_1から30_9・・・の時刻が同期する。
【0041】
(vi)ステップ306
電源投入から一定期間経過後に、親機20および子機30_1から30_9・・・において、ペア設定モードは終了する。
【0042】
<時刻情報伝達処理(時刻同期処理)>
図4は、親機20と子機30_1から30_9・・・との間で時刻同期処理が行われる様子を示す図である。図5は、当該時刻同期処理(時刻情報伝達処理)を説明するためのフローチャートである。
【0043】
図4に示されるように、時刻同期処理を実行する際、親機20は、Mesh通信をONにし、Mesh通信可能範囲内にある子機30_1から30_3に対して、自身が持つ時刻情報(標準電波を介して取得した時刻情報あるいは携帯端末10から受信した時刻情報)を送信する。その他の子機30_4から30_9・・・はMesh通信可能範囲外に設置されているため、親機20がそれらに直接時刻情報を送信することはできない。従って、例えば、時刻情報を受信した子機30_1は子機30_4に、子機30_4は子機30_7にリレー通信により時刻情報を送信する。また、例えば、時刻情報を受信した子機30_2は子機30_5に、子機30_5は子機30_8にリレー通信により時刻情報を送信する。さらに、例えば、時刻情報を受信した子機30_3は子機30_6に、子機30_6は子機30_9にリレー通信により時刻情報を送信する。このように、親機20と一部の子機30_1から30_3との間のMesh通信、および子機30_1から30_3とその他の子機30_4から30_9・・・との間のリレー通信により、全ての時計を親機20の時刻に同期させることができる。以下、図5のフローチャートに基づいて、時刻同期処理について説明する。
【0044】
(i)ステップ501
親機20が情報を送信するタイミングが来るまでは、親機20および子機30_1から30_9・・・は省電力モード(電源投入から所定時間経過すると自動的に省電力モードに入る)となっている。
【0045】
親機20に予め設定(登録)されている時刻同期タイミングになった場合(例えば、電波通信により時刻情報を受け取ったタイミング)、あるいはユーザが携帯端末10を操作して時刻通信開始要求を送信し、それを親機20が受信した場合、親機20は、省電力モードから通常モードに変わる。そして、親機20が計時する時刻情報を、電波通信により取得した時刻情報あるいは携帯端末10から取得した時刻情報に書き換える。また、子機30_1から30_9も、予め設定されている時刻同期タイミングになると省電力モードから通常モードに変わる。一方、時刻通信開始要求を親機20が携帯端末10から受信した場合には、子機30_1から30_9は省電力モードのままである。そこで、この場合、親機20は、Mesh通信により、Mesh通信可能範囲内の子機30_1から30_3に対して、省電力モードから通常モードに変わるように指示する(例えば、親機20が子機30_1から30_3に対して時刻通信開始要求を送信することにより指示する)。なお、親機20は、子機30_1から30_3がMesh通信可能範囲にあることを認識していなくてもよく、結果的に子機30_1から30_3に指示が送信される。そして、Mesh通信可能範囲内の子機30_1から30_3は、リレー通信により、Mesh通信可能範囲外の子機30_4から30_9・・・に対して省電力モードから通常モードに変わるように指示する。
以上の動作により、親機20および子機30_1から30_9は、省電力モードから通常モードに入ることが可能となる。
【0046】
(ii)ステップ502
親機20は、Mesh通信を実行し、Mesh通信可能範囲内の子機30_1から30_3に対して時刻情報を送信する。時刻情報を受信した子機30_1から30_3は、自身が保持する(計時する)時刻を、当該受信時刻情報と一致させる(時刻補正/調整処理)。
そして、時刻情報を更新させた子機30_1から30_3は、親機20に対して時刻情報を受信したことを通知する(例えば、Ackを返信する)。
【0047】
(iii)ステップ503
親機20は、記憶部106に保持する子機の登録情報とAckが返送されてきた子機30_1から30_3の固有識別情報とから登録されている全ての子機に対して時刻情報を送信できたか否か判断する。全ての子機に対して時刻情報が送信された場合(ステップ503でYesの場合)、処理はステップ505に移行する。全ての子機に対して時刻情報が送信されていない場合(ステップ503でNoの場合)、処理はステップ504に移行する。
【0048】
(iv)ステップ504
親機20は、Mesh通信可能な子機30_1から30_3であってAckの返信があった子機(一部の子機からのAck返信が無い場合もある)に対して、リレー通信によって、子機として登録されている他の子機30_4から30_9などに時刻情報を送信するように指示する。例えば、子機30_3からAckの返信が無い場合(親機20が、子機30_3がMesh通信可能範囲内にあるか否かについては認識していない場合を含む)、Ackの返信があった子機30_1および30_2に対して、リレー通信によって他の子機30_3から30_9・・・に時刻情報を送信するように指示する。各子機30_3から30_9・・・は、再度リレー通信によって(子機30_3の場合は、親機20との直接通信によって)、時刻情報を取得したことを示すAckを返信するようにしてもよい。これにより、親機20は、全ての子機30_1から30_9が時刻情報を取得したことを確認することが可能となる。
【0049】
(v)ステップ505
時刻同期が完了すると、親機20および子機30_1から30_9・・・は、再度省電力モードに入る。
なお、親機20は、省電力モードの間でも携帯端末10と時刻同期することが可能となっている。また、上述の説明では、任意のタイミング(携帯端末10からの時刻通信開始要求がなされたタイミング)でも親機20と各子機30_1から30_9・・・との間で時刻同期処理を実行するようにしているが、親機20が携帯端末10から時刻通信開始要求を受信したタイミングではなく、予め決められたMesh通信時間になったタイミングで各子機30_1から30_9・・・との間の時刻同期処理を実行するようにしてもよい。
【0050】
(2)第2の実施形態
第2の実施形態は、携帯端末接続用暗号情報を使った通信について開示する。第1の実施形態では、ペア設定モード時における通信情報とペア設定後の通信情報については明示していないが、第2の実施形態では、ペア設定モード時とペア設定後の通信情報とは異なっている。以下、相違点を示す。
【0051】
(i)ペア設定モード時
図6は、各時計(親機/子機)を携帯端末10に登録するときの通信情報の例を示す図である。上述のように、各時計は、親機/子機のスイッチ設定に従い、親機/子機の設定識別子、各時計の固有識別情報(ID番号)、および時刻等(その他、温湿度等の測定情報を含めてもよい)を携帯端末(例えば、スマートフォン)10に向けて送信する。このとき、携帯端末接続用暗号は使用されず、どの携帯端末10からも親機20を発見可能なようにしておく。
【0052】
携帯端末10に各時計を登録するときには、携帯端末10は、設定識別子の親機/子機情報と固有識別情報(ID番号)とを1セットにして記憶し、次回以降の通信先として登録する。同時に、親機20も、携帯端末10から各子機30_1から30_9の固有識別情報を取得し、記憶部106に登録する。この処理動作は、第1の実施形態と同様である。
【0053】
さらに、携帯端末10は、接続用暗号データを登録する時計(親機20となるべき時計)に送信し、携帯端末接続用暗号を以降の通信の際に、対象の携帯端末10のグループに入っているか否かの判定基準とすることができる。
【0054】
(ii)ペア設定後
図7は、携帯端末10に親機20および各子機30_1から30_9・・・の登録が済んでいる場合の通信情報の例を示す図である。
【0055】
一旦携帯端末10への登録が完了した時計(親機20および子機30_1から30_9・・・)は、通信時に以下に示す情報を送信する。つまり、親機20は、同一の暗号情報を持った携帯端末10および子機30に対して通信を行うことが可能となる。一方、子機30は、同一の暗号情報を持った親機20および他の子機30に対して通信を行うことが可能となる。また、携帯端末10は、同一暗号情報を持った親機20に対してのみ通信することが可能となる。
【0056】
第2の実施形態によれば、携帯端末接続用暗号を使用することにより、最初にペア設定をした携帯端末(例えば、スマートフォン)10と別の携帯端末(別のスマートフォン)10とを接続しないようにすることができる。また、データ内容識別子に従って受信情報を処理し、任意の表示に反映することができるようになる。例えば、携帯端末10のディスプレイ上に、各時計(親機20および各子機30_1から30_9・・・)によって取得された温湿度情報、それらの電池残量および最終同期時刻等を表示することが可能となる。そして、上述のように、時計(親機20および子機30_1から30_9・・・)は、同期した時刻情報に従って運針を行うことが可能となる。
【0057】
(3)まとめ
(i)本開示による情報伝達システム1においては、親機20と携帯端末10との間では1対1の近距離通信(例えば、ブルートゥース(登録商標)通信)が用いられ、親機20から少なくとも一部の子機30(例えば、子機30_1から30_3)との間では近距離通信(例えば、ブルートゥース(登録商標)通信)を用いたMesh通信を実行する。このように、1対1通信とMesh通信を併用することにより、消費電流を抑えることが可能となる。また、親機20は、Mesh通信を行う際に、時刻情報をMesh通信範囲内の子機30_1から30_3に送信するとともに、それらから各子機30_1から30_9・・・の電池残量や測定温湿度情報などを取得する。上述のように、Mesh通信範囲外の子機30_4から30_9・・・からはリレー通信(1対1通信)によってMesh通信範囲内の子機30_1から30_3に上記電池残量や測定温湿度情報などが送信されることになる。従って、Mesh通信範囲内の子機30_1から30_3が親機20との間の中継機器として機能することになる。そして、親機20は、各子機30_1から30_9・・・の電池残量や温湿度情報などを1対1通信によって携帯端末10に送信し、携帯端末10の表示画面上では、その情報を確認することができる。よって、携帯端末10から、特定の子機30が設置された部屋(例えば、ホテルやイベントホールなどの特定の部屋、会社の特定の会議室)の空調を調整するための指示を、親機20を介して送信(Mesh通信およびリレー通信によって)するが可能となる。
【0058】
(ii)本実施形態では、子機30からフィードバックされる情報の例として各種センサで入手した情報(温度、湿度、明暗など)や電池残量について説明したが、これに限定されない。例えば、各子機30の製品のロット情報や時刻修正量を親機20にフィードバックしてもよい。これらの情報を親機20にフィードバックすることにより、何らかの原因で時刻がズレやすくなっている(時刻同期した直後は正しい時刻だが、すぐに針が遅れたり、早まったりする)子機30を可視化することが可能となり、またその原因がロット(製造不良)なのか、使用環境(使用推奨温度の範囲外、標準電波受信を受信しにくい場所)なのか等も分かるようになる。また、このような特定の子機30だけに上記修正プログラムを親機20から送信して適用(プログラム書き換え)することも可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1 情報伝達システム
10 携帯端末
20 親機(親時計)
30 子機(子時計)
30_1~30_9 子機
101 プロセッサ
102 計時部
103 温度センサ
104 湿度センサ
105 通信部
106 記憶部
107 入力部
108 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7