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特許7117219無線給電装置およびこれを用いた多軸ロボット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】無線給電装置およびこれを用いた多軸ロボット
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/05 20160101AFI20220804BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220804BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
H02J50/05
H02J7/00 301D
B25J19/00 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018208116
(22)【出願日】2018-11-05
(65)【公開番号】P2020078106
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】杉野 正芳
(72)【発明者】
【氏名】田中 聡史
(72)【発明者】
【氏名】大平 孝
(72)【発明者】
【氏名】塚本 悟司
(72)【発明者】
【氏名】坂井 尚貴
(72)【発明者】
【氏名】阿部 晋士
(72)【発明者】
【氏名】馬場 涼一
(72)【発明者】
【氏名】宮地 啓輔
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/196424(WO,A1)
【文献】特開2017-184563(JP,A)
【文献】特開2010-154592(JP,A)
【文献】特開2015-042088(JP,A)
【文献】国際公開第2014/010057(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H02J 50/00-50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータ(11)で生成された高周波の電力で励振する送電電極部(12)と、
受電部(21、23)および送電部(22)を有する複数の送受電ユニット(13、14)と、を備え、
前記送電電極部(12)の励振によって出力される高周波の電力、または隣り合う前記送受電ユニット(13、14)の前記送電部(22)の励振によって出力される高周波の電力を、前記受電部(21、23)において電界結合によって非接触で受け取るとともに受け取った電力で前記送電部(22)を励振可能な無線給電装置であって、
複数の前記送受電ユニット(13、14)にそれぞれ接続され、前記受電部(21、23)で受け取った電力を蓄える蓄電部(41、51)と、
前記蓄電部(41、51)を挟んで前記送受電ユニット(13、14)に接続する負荷部(42、52)と、
前記送受電ユニット(13、14)と前記負荷部(42、52)との間に設けられ、前記送受電ユニット(13、14)と前記負荷部(42、52)との間を断続するスイッチ部(43、53)と、
前記スイッチ部(43、53)の断続を制御するスイッチ制御部(44、54)と、
前記インバータ(11)を予め設定した比率でオンまたはオフするとともに、前記スイッチ制御部(44、54)を通して前記スイッチ部(43、53)を制御する主制御部(16)と、
を備え
前記主制御部(16)は、前記インバータ(11)がオフされているとき前記スイッチ部(43、53)を駆動する無線給電装置。
【請求項2】
インバータ(11)で生成された高周波の電力で励振する送電電極部(12)と、
受電部(21、23)および送電部(22)を有する複数の送受電ユニット(13、14)と、を備え、
前記送電電極部(12)の励振によって出力される高周波の電力、または隣り合う前記送受電ユニット(13、14)の前記送電部(22)の励振によって出力される高周波の電力を、前記受電部(21、23)において電界結合によって非接触で受け取るとともに受け取った電力で前記送電部(22)を励振可能な無線給電装置であって、
複数の前記送受電ユニット(13、14)にそれぞれ接続され、前記受電部(21、23)で受け取った電力を蓄える蓄電部(41、51)と、
前記蓄電部(41、51)を挟んで前記送受電ユニット(13、14)に接続する負荷部(42、52)と、
前記送受電ユニット(13、14)と前記負荷部(42、52)との間に設けられ、前記送受電ユニット(13、14)と前記負荷部(42、52)との間を断続するスイッチ部(43、53)と、
前記スイッチ部(43、53)の断続を制御するスイッチ制御部(44、54)と、
前記受電部(21、23)で受け取った高周波の電力を整流する整流部(45、55)と、
を備え、
前記スイッチ部(43、53)は、前記整流部(45、55)と前記蓄電部(41、51)との間に設けられ、前記整流部(45、55)で整流された電流を断続する無線給電装置。
【請求項3】
前記スイッチ制御部(44、54)は、隣り合う複数の前記送受電ユニット(13、14)の前記スイッチ部(43、53)を時分割で断続する請求項1または2記載の無線給電装置。
【請求項4】
前記スイッチ制御部(44、54)は、隣り合う複数の前記送受電ユニット(13、14)の前記スイッチ部(43、53)を相反して断続する請求項3記載の無線給電装置。
【請求項5】
前記主制御部(16)は、
複数の前記送受電ユニット(13、14)に接続する前記スイッチ部(43、53)がいずれもオフされているとき、前記インバータ(11)をオフする請求項1記載の無線給電装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項記載の無線給電装置(10)を備える多軸ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線給電装置およびこれを用いた多軸ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁誘導、磁界共鳴あるいは電界結合などを用いて非接触で電力を供給する無線給電装置が公知である。例えば、特許文献1は、電界結合を用いた無線給電装置を開示している。このような電界結合では、送電電極部から受電電極部への電力の伝送に高周波が用いられる。そのため、電界結合の場合、送電側と受電側との間で高い精度のインピーダンスの整合が要求される。ところで、受電側に接続される負荷で消費される電力が刻々と変化したり、負荷の数が変化したりする場合、受電側のインピーダンスはこれらにあわせて変化する。そのため、受電側では、負荷の変動に追従してインピーダンスを変化する必要があり、大規模な可変整合回路が求められる。
【0003】
しかしながら、可変整合回路の搭載は、伝送する電力が大きくなるほど、機器の大型化や構成の複雑化を招く。そのため、負荷が変動する小型の機器において、電界結合による非接触の電力の供給は困難であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-68079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、伝送する電力が大きく、負荷が変動する場合でも、大型化や構成の複雑化を招くことなく、電界結合により非接触で電力を供給する無線給電装置およびこれを用いた多軸ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明では、送電電極部から出力された高周波の電力は、電界結合による非接触で複数の送受電ユニットへ伝送される。複数の送受電ユニットは、それぞれ電力を消費する負荷部に接続し、負荷部と送受電ユニットとの間にはスイッチ部および蓄電部が接続している。これにより、送受電ユニットの受電部から得られた電力は、蓄電部に貯えられ、負荷部の負荷の変動による影響を受けない。そのため、送電電極部と複数の送受電ユニットとの間では、負荷部における負荷の変動にあわせてインピーダンスの整合を図る必要がない。すなわち、蓄電部に電力を貯えることにより、負荷部における負荷が変動しても、インピーダンスの変化は生じない。その結果、インピーダンスを可変する可変整合回路は不要となる。したがって、伝送する電力が大きく、負荷が変動する場合でも、大型化や構成の複雑化を招くことなく、電界結合により非接触で電力を供給することができる。
【0007】
請求項3記載の発明では、スイッチ制御部は、隣り合う送受電ユニットにおけるスイッチ部を時分割で開閉する。すなわち、スイッチ制御部は、隣り合う送受電ユニットにおいて、それぞれ異なる時期にスイッチ部をオンにする。これにより、1つの送電電極部に対して、複数の送受電ユニットが直列に連なる場合でも、1つの送電電極部から高周波の電力を受け取る送受電ユニット、およびこの送受電ユニットで受け取った電力を蓄える蓄電部は1つとなる。そのため、複数の送受電ユニットにおいて各蓄電部の特性が均一であれば、インピーダンス特性も均一となる。その結果、送電電極部から電力を受け取る送受電ユニットが変化しても、受電側のインピーダンス特性は変化しない。したがって、送電側においても可変整合回路が不要となり、送電先となる送受電ユニットが変化する場合でも、大型化や構成の複雑化を招くことなく、電界結合により非接触で電力を供給することができる。
【0008】
請求項6記載の発明では、請求項1から5のいずれか一項記載の無線給電装置を備えている。これにより、固定部と可動部との間は、ケーブルや配線を用いることなく非接触で電力や信号が電送される。したがって、ケーブルや配線による重量の増加を抑えることができるとともに、ケーブルや配線の切断による機器の停止を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態による無線給電装置の電気的な構成を示すブロック図
図2】第1実施形態による無線給電装置を適用した多軸ロボットを示す模式的な斜視図
図3】第1実施形態による無線給電装置の作動の流れを示すタイムチャートの概略図
図4】第2実施形態による無線給電装置の電気的な構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、無線給電装置の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による無線給電装置10を示している。無線給電装置10は、インバータ11、送電電極部12、および複数の送受電ユニット13、14を備えている。インバータ11は、例えばE級インバータであり、高周波を生成する。インバータ11で生成した高周波は、整合回路部15を通して送電電極部12に供給される。整合回路部15は、例えばコイルやコンデンサなどを有し、特定のインピーダンスに設定されたLC回路を含んでいる。送電電極部12は、例えば金属板などで構成され、インバータ11で生成された高周波を後述する受電電極部21へ非接触で伝える。
【0011】
無線給電装置10は、主制御部16および通信部17を有している。主制御部16は、例えばマイクロコンピュータを有しており、インバータにおける高周波の生成を制御する。具体的には、主制御部16は、インバータ11を予め設定した比率Dでオンまたはオフする。インバータ11は、主制御部16による制御によって、高周波の生成をオンまたはオフする。通信部17は、主制御部16に接続されており、主制御部16からの指示によって通信する。これらインバータ11、送電電極部12、整合回路部15、主制御部16および通信部17は、送電側ユニットを構成している。
【0012】
無線給電装置10は、複数の送受電ユニット13、14を備えている。図1に示す第1実施形態の場合、無線給電装置10は、送受電ユニット13および送受電ユニット14の2つの送受電ユニットを備えている。図1に示す第1実施形態では、2つの送受電ユニット13、14を備える無線給電装置10について説明する。なお、無線給電装置10は、2つに限らず、3つ以上の送受電ユニットを備えていてもよい。
【0013】
第1実施形態の場合、送受電ユニット13および送受電ユニット14は、直列に配置されている。送受電ユニット13は、受電部21および送電部22を有している。また、送受電ユニット14は、受電部23を有している。図1に示す第1実施形態のように2つの送受電ユニット13、14を備える無線給電装置10の場合、末端側に位置する送受電ユニット14は送電部を省略することができる。送受電ユニット13の受電部21と送電部22とは、電気的に接続されている。送受電ユニット13の受電部21および送電部22、ならびに送受電ユニット14の受電部23は、いずれも例えば板状のアンテナによって構成されている。
【0014】
送受電ユニット13の受電部21は、送電電極部12と対向している。また、送受電ユニット14の受電部23は、送受電ユニット13の送電部22と対向している。これら送電電極部12、受電部21、送電部22および受電部23は、いずれも例えば板状のアンテナなどによって平面的に対向している。これら対向する送電電極部12と受電部21との間、および送電部22と受電部23との間は、空気が存在する状態で非接触となっている。そのため、送電電極部12に高周波を印加することにより、送電電極部12と送受電ユニット13の受電部21との間には、電界結合によって非接触で電力が伝送される。また、受電部21と送電部22とは電気的に接続されていることから、送受電ユニット13の送電部22と送受電ユニット14の受電部23との間においても、電界結合によって非接触で電力が伝送される。すなわち、インバータ11で生成した高周波で送電電極部12を励振すると、送受電ユニット13の受電部21は電界結合によって送電電極部12から非接触で電力を受け取る。送受電ユニット13は、受電部21で受け取った高周波で送電部22を励振することができる。これにより、送受電ユニット14の受電部23は、電界結合によって送受電ユニット13の送電部22から非接触で電力を受け取る。
【0015】
上記のような無線給電装置10は、例えば多軸ロボットに適用される。図2は、無線給電装置10を適用する多軸ロボットの一例として3軸のロボット30を示している。無線給電装置10をロボット30に適用する場合、インバータ11や送電電極部12などで構成される送電側ユニットは設備などに固定されている。無線給電装置10の送電電極部12は、X軸方向へ延びるレール31に設けられている。ロボット30は、レール31に沿って移動する可動部32を有している。可動部32は、このレール31に沿ってX軸方向へ往復移動する。送受電ユニット13の受電部21は、可動部32に設けられ、レール31に設けられている送電電極部12と対向している。また、送受電ユニット13の送電部22は、ロボット30の可動部32に設けられている。送受電ユニット13の送電部22は、ロボット30の可動部32においてX軸と垂直なY軸方向へ延びている。送受電ユニット14の受電部23は、この送電部22と対向している。送受電ユニット14の受電部23は、送電部22に対して移動可能または固定のいずれであってもよい。
【0016】
このようなロボット30の構成により、ロボット30は、無線給電装置10によって非接触で電力の供給を受ける。具体的には、ロボット30の可動部32は、受電部21によってレール31に沿った送電電極部12から電力を受け取る。可動部32の送電部22は、受電部21で受け取った電力で励振される。送電部22が励振されることによって、電力は送受電ユニット14の受電部23に伝送される。
【0017】
次に、ロボット30に適用する無線給電装置10の構成の詳細について説明する。
図1に示すように無線給電装置10は、蓄電部41、負荷部42、スイッチ部43およびスイッチ制御部44を備えている。また、無線給電装置10は、整流回路部45、電源回路部46、負荷駆動部47および通信部48を備えている。これら、蓄電部41、負荷部42、スイッチ部43、スイッチ制御部44、整流回路部45、電源回路部46、負荷駆動部47および通信部48は、送受電ユニット13に接続している。送受電ユニット13の受電部21において受け取られた高周波の電力は、整流回路部45において整流される。すなわち、交流である高周波の電力は、整流回路部45において直流に整流される。スイッチ部43は、この整流回路部45と送受電ユニット13との間に設けられており、これらの間を断続する。整流回路部45で整流された直流の電力は、電源回路部46を通して蓄電部41に供給される。蓄電部41は、例えばキャパシタや二次電池を有している。電源回路部46は、これらキャパシタおよび二次電池などの蓄電部41へ供給される電力を制御する。すなわち、電源回路部46は、蓄電部41における容量を検出しつつ、蓄電部41へ適切な電力を提供する。負荷部42は、例えば可動部32を駆動するモータなどを有している。負荷部42は、ドライバである負荷駆動部47を通して、蓄電部41に蓄えられた電力によって駆動される。このように、負荷部42は、送受電ユニット13において受け取られて蓄電部41に蓄えられた電力を消費する。
【0018】
スイッチ制御部44は、電源回路部46で検出する蓄電部41の容量に基づいてスイッチ部43の断続を制御する。通信部48は、スイッチ制御部44に接続し、送電側ユニットの通信部17と通信可能である。通信部48は、スイッチ制御部44で取得したスイッチ部43のオンまたはオフの状態を、通信部17を通して主制御部16へ出力する。また、通信部48は、主制御部16が出力する制御信号を通信部17から受け取る。スイッチ制御部44は、通信部48を通して主制御部16から受け取った制御信号を用いてスイッチ部43のオンまたはオフを制御する。
【0019】
また、無線給電装置10は、蓄電部51、負荷部52、スイッチ部53、スイッチ制御部54、整流回路部55、電源回路部56、負荷駆動部57および通信部58を備えている。これら、蓄電部51、負荷部52、スイッチ部53、スイッチ制御部54、整流回路部55、電源回路部56および負荷駆動部57は、送受電ユニット14に接続している。送受電ユニット14の受電部23において受け取られた高周波の電力は、整流回路部55において整流される。すなわち、交流である高周波の電力は、整流回路部55において直流に整流される。スイッチ部53は、この整流回路部55と送受電ユニット14との間に設けられており、これらの間を断続する。整流回路部55で整流された直流の電力は、電源回路部56を通して蓄電部51に供給される。蓄電部51は、例えばキャパシタや二次電池を有している。電源回路部56は、これらキャパシタおよび二次電池などの蓄電部51へ供給される電力を制御する。すなわち、電源回路部56は、蓄電部51における容量を検出しつつ、蓄電部51へ適切な電力を提供する。負荷部52は、例えばモータなどを有している。負荷部52は、これらに加え、機能部であるロボットハンド59などを有していてもよい。負荷部52は、ドライバである負荷駆動部47を通して、蓄電部51に蓄えられた電力によって駆動される。また、ロボットハンド59は、図示しない制御部を通して、蓄電部51に蓄えられた電力によって駆動される。このように、負荷部52は、送受電ユニット14において受け取られて蓄電部51に蓄えられた電力を消費する。
【0020】
スイッチ制御部54は、電源回路部56で検出する蓄電部51の容量に基づいてスイッチ部53の断続を制御する。通信部58は、スイッチ制御部54に接続し、送電側ユニットの通信部17と通信可能である。通信部58は、スイッチ制御部54で取得したスイッチ部53のオンまたはオフの状態を、通信部17を通して主制御部16へ出力する。また、通信部58は、主制御部16が出力する制御信号を通信部17から受け取る。スイッチ制御部54は、通信部58を通して主制御部16から受け取った制御信号を用いてスイッチ部53のオンまたはオフを制御する。通信部17と通信部48および通信部58との間は、有線の伝送経路、無線の伝送経路または非接触の電力伝送経路を通して通信可能である。
【0021】
次に、無線給電装置10の作動について詳細に説明する。
主制御部16は、通信部17および通信部48を通してスイッチ制御部44へ制御信号を出力する。これとともに、スイッチ制御部44は、電源回路部46を通して蓄電部41の電圧、つまり蓄電部41の蓄電容量を検出する。スイッチ制御部44は、検出した蓄電部41の電圧Vc1、または主制御部16から出力された制御信号に基づいてスイッチ部43をオンまたはオフする。具体的には、スイッチ制御部44は、電源回路部46から蓄電部41の電圧Vc1を取得する。蓄電部41の電圧Vc1は、蓄電部41における蓄電容量に相関する。そのため、スイッチ制御部44は、電源回路部46を通して蓄電部41の電圧Vc1を検出することにより、蓄電部41において蓄電可能な電力の残量を検出する。そして、スイッチ制御部44は、蓄電部41における電圧Vc1が予め設定した設定電圧Vdを超えたことを電源回路部46から取得すると、スイッチ部43をオフする。そして、スイッチ制御部44は、通信部48を通してスイッチ部43がオンまたはオフのいずれの状態にあるかを主制御部16へ出力する。また、スイッチ制御部44は、主制御部16から出力される制御信号によってもスイッチ部43をオンまたはオフすることができる。
【0022】
同様に、主制御部16は、通信部17および通信部58を通してスイッチ制御部54へ制御信号を出力する。これとともに、スイッチ制御部54は、電源回路部56を通して蓄電部51の電圧、つまり蓄電部51の蓄電容量を検出する。スイッチ制御部54は、検出した蓄電部51の電圧Vc2、または主制御部16から出力された制御信号に基づいてスイッチ部53をオンまたはオフする。具体的には、スイッチ制御部54は、電源回路部56から蓄電部51の電圧Vc2を取得する。蓄電部51の電圧Vc2は、蓄電部51における蓄電容量に相関する。そのため、スイッチ制御部54は、電源回路部56を通して蓄電部51の電圧Vc2を検出することにより、蓄電部51において蓄電可能な電力の残量を検出する。そして、スイッチ制御部54は、蓄電部51における電圧Vc2が予め設定した設定電圧Vdを超えたことを電源回路部56から取得すると、スイッチ部53をオフする。そして、スイッチ制御部54は、通信部58を通してスイッチ部53がオンまたはオフのいずれの状態にあるかを主制御部16へ出力する。また、スイッチ制御部54は、主制御部16から出力される制御信号によってもスイッチ部53をオンまたはオフすることができる。
【0023】
図3に基づいて、インバータ11、スイッチ部43およびスイッチ部53の作動、ならびに蓄電部41の電圧Vc1および蓄電部51の電圧Vc2の変化を説明する。
無線給電装置10がT0において起動すると、主制御部16はインバータ11を予め設定された比率Dでオンまたはオフする。すなわち、主制御部16は、インバータ11を駆動する。主制御部16は、通信部48を通してスイッチ制御部44の状態つまりスイッチ部43のオンまたはオフを取得するとともに、通信部58を通してスイッチ制御部54の状態つまりスイッチ部53のオンまたはオフを取得する。ここで、蓄電部41の電圧Vc1および蓄電部51の電圧Vc2のいずれも設定電圧Vd以下であるとする。このとき、スイッチ部43がオンされることにより蓄電部41は充電され、スイッチ部53がオンされることにより蓄電部51は充電される。
【0024】
第1実施形態の場合、スイッチ部43とスイッチ部53とは、互いに相反してオンまたはオフされる。すなわち、主制御部16は、スイッチ部43がオンであるときスイッチ部53をオフする。一方、主制御部16は、スイッチ部43がオフであるときスイッチ部53をオンする。このように、スイッチ部43とスイッチ部53とは、同時にオンになることなく、時分割によってオンされる。スイッチ部43とスイッチ部53とを時分割によってオンすることにより、インバータ11から出力される高周波の電力は2つのうちいずれか1つの蓄電部41または蓄電部51だけに供給される。すなわち、2つの送受電ユニット13、14が配置されている場合でも、インバータ11から出力される高周波の電力は送受電ユニット13に接続する蓄電部41、または送受電ユニット14に接続する蓄電部51のいずれか一方のみに供給される。
【0025】
蓄電部41および蓄電部51は、充電時における電気的な特性がおおむね一定である。そのため、蓄電部41に接続する電源回路部46または蓄電部51に接続する電源回路部56は、いずれも対応する蓄電部41または蓄電部51にあわせてインピーダンス整合を図ればよい。すなわち、送受電ユニット13の場合、刻々と負荷が変化する負荷部42と異なり、蓄電部41は充電時における電気的な特性の変化が小さい。そのため、電源回路部46は、蓄電部41にあわせてインピーダンス整合を図れば足りる。また、送受電ユニット14の場合も同様に、刻々と負荷が変化する負荷部52と異なり、蓄電部51は充電時における電気的な特性の変化が小さい。そのため、電源回路部56は、蓄電部51にあわせてインピーダンス整合を図れば足りる。これにより、電源回路部46および電源回路部56は、負荷部42および負荷部52などのインピーダンスの変化にあわせた可変性が要求されず、小型化かつ簡略化が図られる。
【0026】
第1実施形態の場合、送受電ユニット13に接続する蓄電部41と送受電ユニット14に接続する蓄電部51とは、充電時における電気的な特性が概ね同一のものが用いられる。すなわち、インバータ11から出力される高周波の電力は、みかけ上の電気的な特性が同一の送受電ユニット13の蓄電部41、または送受電ユニット14の蓄電部51のいずれか一方に供給される。そのため、出力側の整合回路部15は、送受電ユニット13または送受電ユニット14のいずれか一方にあわせて整合を図ればよい。つまり、2つの送受電ユニット13および送受電ユニット14は、同時にオンされることがない。そのため、整合回路部15は、同一の電気的な特性を有する蓄電部41または蓄電部51にあわせて1種類のインピーダンス整合を図ればよい。その結果、負荷部42と負荷部52との間に電気的な特性の差がある場合でも、送電側の整合回路部15の特性は変更する必要がない。
【0027】
主制御部16は、スイッチ部43およびスイッチ部53におけるオンまたはオフの切り替えを、予め設定された比率Dでオンまたはオフするインバータ11においてオフつまりインバータ11のデッドタイムの間に実行する。このようにインバータ11がオフされている期間にスイッチ部43およびスイッチ部53のオンまたはオフを切り替えることにより、電圧や電流のサージが緩和される。これにより、送電側および受電側のインピーダンスの急変は低減される。そのため、素子の耐性向上や容量の向上が不要となり、機器の小型化が図られる。
【0028】
主制御部16は、比率Dでオンまたはオフするインバータ11のデッドタイムの時期に合わせてスイッチ部43およびスイッチ部53のオンまたはオフを切り替える。これにより、蓄電部41は、スイッチ部43がオンの期間に充電される。すなわち、送受電ユニット13において送電電極部12から受け取った高周波の電力は、整流回路部45において直流に整流される。直流に整流された電力は、電源回路部46を通して蓄電部41に充電される。電源回路部46は、蓄電部41の電圧Vc1を検出することにより、蓄電部41の充電が完了したか否かを監視する。同様に、蓄電部51は、スイッチ部53がオンの期間に充電される。すなわち、送受電ユニット14において送受電ユニット13から受け取った高周波の電力は、整流回路部55において直流に整流される。直流に整流された電力は、電源回路部56を通して蓄電部51に充電される。電源回路部56は、蓄電部51の電圧Vc2を検出することにより、蓄電部51の充電が完了したか否かを監視する。
【0029】
スイッチ制御部44は、電源回路部46から蓄電部41の電圧Vc1が設定電圧Vdを超えたことを取得すると、スイッチ部43をオフにする。これにより、送受電ユニット13で受電した電力の蓄電部41への充電は終了する。そして、スイッチ制御部44は、電源回路部46から取得した蓄電部41の電圧Vc1が設定電圧Vd以下になると、再びスイッチ部43をオンにして、蓄電部41の充電を実行する。この間、通信部48は、スイッチ部43のオンまたはオフの状態を主制御部16へ出力する。同様に、スイッチ制御部54は、電源回路部56から蓄電部51の電圧Vc2が設定電圧Vdを超えたことを取得すると、スイッチ部53をオフにする。そして、スイッチ制御部54は、電源回路部56から取得した蓄電部51の電圧Vc2が設定電圧Vd以下になると、再びスイッチ部53をオンにして、蓄電部51の充電を実行する。この間、通信部58は、スイッチ部53のオンまたはオフの状態を主制御部16へ出力する。これらの場合、主制御部16は、スイッチ部43およびスイッチ部53が同時にオンにならないようにスイッチ制御部44およびスイッチ制御部54に指示を出力する。
【0030】
主制御部16は、通信部48からスイッチ部43の状態、および通信部58からスイッチ部53の状態を取得する。そして、主制御部16は、スイッチ部43およびスイッチ部53のいずれもがオフになると、インバータ11を停止する。スイッチ部43およびスイッチ部53がオフのとき、送電電極部12から出力された電力は蓄電部41または蓄電部51のいずれにおいても受け取られない。すなわち、出力された高周波を受け取る対象は存在しない。そこで、無用なエネルギーの消費および高周波の出力ともなうノイズの影響を低減するために、主制御部16はインバータ11を停止する。
【0031】
以上説明した第1実施形態では、送電電極部12から出力された高周波の電力は、電界結合による非接触で複数の送受電ユニット13、14へ伝送される。送受電ユニット13の受電部21で受け取られた電力は、蓄電部41に貯えられ、負荷部42の負荷の変動による影響を受けない。また、送受電ユニット14の受電部23で受け取られた電力は、蓄電部51に蓄えられ、負荷部52の負荷の変動による影響を受けない。そのため、送電電極部12と複数の送受電ユニット13および送受電ユニット14との間では、負荷部42における負荷の変動または負荷部52における負荷の変動にあわせてインピーダンスの整合を図る必要がない。すなわち、蓄電部41または蓄電部51に電力を貯えることにより、負荷部42または負荷部52における負荷が変動しても、インピーダンスの変化は生じない。その結果、インピーダンスを可変する可変整合回路は不要となる。したがって、伝送する電力が大きく、負荷が変動する場合でも、大型化や構成の複雑化を招くことなく、電界結合により非接触で電力を供給することができる。
【0032】
また、第1実施形態では、スイッチ制御部44およびスイッチ制御部54は、隣り合う送受電ユニット13と送受電ユニット14との間において、スイッチ部43またはスイッチ部53を時分割でオンまたはオフする。これにより、1つの送電電極部12に対して、送受電ユニット13と送受電ユニット14とが直列に連なる場合でも、1つの送電電極部12から高周波の電力を受け取る蓄電部41または蓄電部51は1つとなる。蓄電部41および蓄電部51の特性が均一であれば、インピーダンス特性も均一となる。そのため、送電電極部12から電力を受け取る対象が送受電ユニット13または送受電ユニット14に変化しても、受電側のインピーダンス特性は変化しない。したがって、送電側の整合回路部15が簡略化され、送電先が送受電ユニット13または送受電ユニット14に変化する場合でも、大型化や構成の複雑化を招くことなく、電界結合により非接触で電力を供給することができる。
【0033】
具体的には、第1実施形態では、スイッチ部43とスイッチ部53とは、互いに相反してオンまたはオフされる。すなわち、主制御部16は、スイッチ部43がオンであるときスイッチ部53をオフする。一方、主制御部16は、スイッチ部43がオフであるときスイッチ部53をオンする。このように、スイッチ部43とスイッチ部53とは、同時にオンになることなく、時分割によってオンされる。スイッチ部43とスイッチ部53とを時分割によってオンすることにより、インバータ11から出力される高周波の電力は2つのうちいずれか1つの蓄電部41または蓄電部51だけに供給される。蓄電部41および蓄電部51は、電力を蓄える充電時における電気的な特性がおおむね一定である。そのため、蓄電部41に接続する電源回路部46または蓄電部51に接続する電源回路部56は、それぞれ対応する蓄電部41または蓄電部51に整合を図ればよい。したがって、電源回路部46および電源回路部56は、インピーダンスの変化にあわせた可変性が要求されず、小型化かつ簡略化が図られる。
【0034】
第1実施形態では、主制御部16は、スイッチ部43およびスイッチ部53におけるオンまたはオフの切り替えを、予め設定された比率Dでオンまたはオフするインバータ11がデッドタイムにある間に実行する。このようにインバータ11がオフされている期間にスイッチ部43およびスイッチ部53のオンまたはオフを切り替えることにより、電圧や電流のサージが緩和される。これにより、送電側および受電側のインピーダンスの急変は低減される。したがって、素子の耐性向上や容量の向上が不要となり、機器の小型化や簡略化を図ることができる。
【0035】
第1実施形態では、主制御部16は、比率Dでオンまたはオフするインバータ11のオンおよびオフの時期に合わせてスイッチ部43およびスイッチ部53のオンまたはオフを切り替える。これにより、蓄電部41はスイッチ部43がオンの期間に充電され、蓄電部51はスイッチ部53がオンの期間に充電される。したがって、インバータ11のオンおよびオフの時期にあわせて、蓄電部41または蓄電部51を時分割で充電することができる。
【0036】
第1実施形態では、主制御部16は、通信部48からスイッチ部43の状態、および通信部58からスイッチ部53の状態を取得する。そして、主制御部16は、スイッチ部43およびスイッチ部53のいずれもがオフになると、インバータ11を停止する。スイッチ部43およびスイッチ部53がオフのとき、送電電極部12から出力された高周波の電力は蓄電部41または蓄電部51のいずれにおいても受け取られない。すなわち、出力された高周波を受け取る対象は存在しない。したがって、無用なエネルギーの消費および励振にともなうノイズの影響を低減することができる。
【0037】
第1実施形態による無線給電装置10を備えるロボット30は、レール31などの固定部と可動部32との間が、ケーブルや配線を用いることなく非接触で電力や信号が電送される。したがって、ケーブルや配線による重量の増加を抑えることができるとともに、ケーブルや配線の切断による機器の停止を低減することができる。また、ロボット30の可動部32やロボットハンド59などのように消費電力の大きな負荷部42および負荷部52に電力を供給する場合でも、電源回路部46および電源回路部56の小型化および簡略化を図ることができ、軽量化によるロボット30の消費電力の低減など性能の向上を図ることができる。
【0038】
(第2実施形態)
第2実施形態による無線給電装置を図4に示す。
図4に示す第2実施形態による無線給電装置10は、スイッチ部43およびスイッチ部53の接続位置が第1実施形態と異なる。第2実施形態の場合、送受電ユニット13に接続しているスイッチ部43は、整流回路部45と蓄電部41との間に設けられている。また、送受電ユニット14に接続しているスイッチ部53は、整流回路部55と蓄電部51との間に設けられている。これらのように、第2実施形態の場合、スイッチ部43は整流回路部45で整流された電力を断続するとともに、スイッチ部53は整流回路部55で整流された電力を断続する。
【0039】
整流回路部45は、送受電ユニット13で受け取った高周波の電力を直流に整流する。そのため、スイッチ部43は、整流回路部45から蓄電部41へ供給される直流の電力を断続する。同様に、整流回路部55は、送受電ユニット14で受け取った高周波の電力を直流に整流する。そのため、スイッチ部53は、整流回路部55から蓄電部51へ供給される直流の電力を断続する。高周波の電力を断続する場合、スイッチ部43は、送受電ユニット13の受電部21から出力される高周波の周波数にあわせた性能を有する必要がある。同様に、スイッチ部53は、送受電ユニット14の受電部23から出力される高周波にあわせて性能を有する必要がある。そのため、第1実施形態の場合、スイッチ部43およびスイッチ部53は駆動周波数の高いスイッチング素子などを用いる必要がある。一方、第2実施形態の場合、スイッチ部43またはスイッチ部53は、整流された直流を断続する。そのため、スイッチ部43またはスイッチ部53は、高周波の周波数や位相にあわせる必要がなく、単純な構造のスイッチの適用が可能となる。
【0040】
第2実施形態では、スイッチ部43およびスイッチ部53は、負荷部42または負荷部52に供給される直流の経路を断続する。したがって、スイッチ部43およびスイッチ部53の構造を簡略化することができ、安価な素子を用いることができる。また、スイッチ部43およびスイッチ部53の制御も簡略化することができる。
【0041】
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0042】
図面中、10は無線給電装置、11はインバータ、12は送電電極部、13、14は送受電ユニット、16は主制御部、21、23は受電部、22は送電部、30はロボット、41、51は蓄電部、42、52は負荷部、43、53はスイッチ部、44、54はスイッチ制御部、45、55は整流回路部を示す。
図1
図2
図3
図4