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特許7117247型内発泡成形体ユニット、および型内発泡成形体ユニットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】型内発泡成形体ユニット、および型内発泡成形体ユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/14 20060101AFI20220804BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20220804BHJP
   A47C 7/20 20060101ALI20220804BHJP
   B29C 44/12 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
A47C27/14 A
B60N2/90
A47C7/20
B29C44/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018557673
(86)(22)【出願日】2017-12-08
(86)【国際出願番号】 JP2017044151
(87)【国際公開番号】W WO2018116868
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2016248305
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(73)【特許権者】
【識別番号】596006536
【氏名又は名称】カネカフォームプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】岡田 勇也
(72)【発明者】
【氏名】梅谷 剛
【審査官】小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-136851(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152530(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/14
B60N 2/90
A47C 7/20
B29C 44/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる型内発泡成形体と、
上記型内発泡成形体に対して埋め込まれており、略四角形の枠状に形成されたインサート材とを備えており、
上記インサート材は、上記略四角形における2組の対辺の一方と対応する第1延伸領域と、上記略四角形における2組の対辺の他方と対応する第2延伸領域とを有しており、
上記第1延伸領域の略全体が、上記型内発泡成形体に対して埋め込まれており、
上記第2延伸領域は、上記型内発泡成形体の外部に露出しており、上記型内発泡成形体の収縮および膨張に追従する露出部を有しており、
上記露出部の少なくとも一部における上記インサート材の太さは、上記第1延伸領域における上記インサート材の太さより小さいことを特徴とする型内発泡成形体ユニット。
【請求項2】
上記露出部は、上記インサート材の折り曲げ部分を3つ以上有していることを特徴とする請求項に記載の型内発泡成形体ユニット。
【請求項3】
掛け止め具をさらに備えており、
上記掛け止め具の全体が、上記型内発泡成形体の外部に露出していることを特徴とする請求項1または2に記載の型内発泡成形体ユニット。
【請求項4】
上記略四角形における2組の対辺の一方は、上記型内発泡成形体ユニットの長手方向と対応しており、
上記略四角形における2組の対辺の他方は、上記型内発泡成形体ユニットの短手方向と対応していることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の型内発泡成形体ユニット。
【請求項5】
熱可塑性樹脂からなる型内発泡成形体と、
上記型内発泡成形体に対して埋め込まれており、略四角形の枠状に形成されたインサート材とを備えており、
上記インサート材は、上記略四角形における2組の対辺の一方と対応する第1延伸領域と、上記略四角形における2組の対辺の他方と対応する第2延伸領域とを有している型内発泡成形体ユニットの製造方法であって、
上記インサート材を埋め込むように、上記型内発泡成形体を形成する工程を含んでおり、当該工程において、
上記第1延伸領域の略全体を、上記型内発泡成形体に対して埋め込み、
上記型内発泡成形体の収縮および膨張に追従する上記第2延伸領域の部分を、上記型内発泡成形体の外部に露出させ
上記露出させた部分の少なくとも一部における上記インサート材の太さは、上記第1延伸領域における上記インサート材の太さより小さいことを特徴とする型内発泡成形体ユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型内発泡成形体ユニット、および型内発泡成形体ユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートは、ポリウレタンフォームからなるシート本体に、形状を安定化させるためのインサート材としての金属ワイヤーを埋設状に一体成形して生産されることが一般的であった。近年では、車両の軽量化、コスト削減等の視点から、ポリウレタンフォームとオレフィン系樹脂(熱可塑性樹脂)型内発泡成形体ユニットとを組み合わせた構成が提案されている。型内発泡成形体ユニットは、オレフィン系樹脂の発泡ビーズからなる型内発泡成形体に、インサート材(例えば、金属ワイヤー)をインサート成形して得られたものである。型内発泡成形体ユニットは、車両用シート芯材として使用される。型内発泡成形体ユニットとポリウレタンフォームとを一体成形し、それらをシートカバーで覆うことで、車両用シートとなる。
【0003】
上記型内発泡成形体ユニットにおいては、上記インサート材の一部、および/または、上記型内発泡成形体に埋め込まれた掛け止め具が露出されている構成が知られている(特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-16458号公報
【文献】特開2016-22292号公報
【文献】特開2016-60064号公報
【文献】国際公開2016/152530号公報
【文献】特開2017-113053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したインサート成形して得られる型内発泡成形体は、成形直後は一旦収縮するものの、これを養生乾燥することによる膨張(寸法回復)を経て、所望の形状となる。本願発明者らは、このとき、型内発泡成形体に埋め込まれたインサート材は、型内発泡成形体の収縮および膨張に追従せずに留まることにより、型内発泡成形体の収縮および膨張を阻害して型内発泡成形体が想定外に変形する虞があるという問題点に注目した。そしてこの問題点に鑑み、本願発明者らは、型内発泡成形体を所望の形状とすることが難しいという課題が発生することを独自に見出した。また、これに伴い、当該逸脱を予め想定し、金型における転写形状に反映させることが難しいため、金型の製作が難しいという付随的な課題も存在する。
【0006】
その一方、型内発泡成形体ユニットにおいて、インサート材の一部、および/または、掛け止め具の露出量が多過ぎる場合、型内発泡成形体ユニットの強度が不十分となる虞があるという課題もある。
【0007】
つまり、本願発明者らは、型内発泡成形体を所望の形状としつつ、かつ十分な強度を担保するという二律相反的な課題が存在することを独自に見出した。
【0008】
特許文献1~4に開示されている技術においては、これらの課題を解決するために十全とはいえない。
【0009】
本発明の一態様は、型内発泡成形体を所望の形状とすることが容易であって、かつ、十分な強度を有している型内発泡成形体ユニット、および型内発泡成形体ユニットの製造方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る型内発泡成形体ユニットは、熱可塑性樹脂からなる型内発泡成形体と、上記型内発泡成形体に対して埋め込まれており、略四角形の枠状に形成されたインサート材とを備えており、上記インサート材は、上記略四角形における2組の対辺の一方と対応する第1延伸領域と、上記略四角形における2組の対辺の他方と対応する第2延伸領域とを有しており、上記第1延伸領域の略全体が、上記型内発泡成形体に対して埋め込まれており、上記第2延伸領域は、上記型内発泡成形体の外部に露出しており、上記型内発泡成形体の収縮および膨張に追従する露出部を有していることを特徴としている。
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る型内発泡成形体ユニットの製造方法は、熱可塑性樹脂からなる型内発泡成形体と、上記型内発泡成形体に対して埋め込まれており、略四角形の枠状に形成されたインサート材とを備えており、上記インサート材は、上記略四角形における2組の対辺の一方と対応する第1延伸領域と、上記略四角形における2組の対辺の他方と対応する第2延伸領域とを有している型内発泡成形体ユニットの製造方法であって、上記インサート材を埋め込むように、上記型内発泡成形体を形成する工程を含んでおり、当該工程において、上記第1延伸領域の略全体を、上記型内発泡成形体に対して埋め込み、上記型内発泡成形体の収縮および膨張に追従する上記第2延伸領域の部分を、上記型内発泡成形体の外部に露出させることを特徴としている。
【0012】
上記の構成によれば、第1延伸領域の略全体が、型内発泡成形体に対して埋め込まれているため、型内発泡成形体に対してインサート材が十分強固に固定されている。これにより、型内発泡成形体ユニットの強度が不十分となる虞を低減することができる。
【0013】
また、上記の構成によれば、第2延伸領域が型内発泡成形体の収縮および膨張に追従する露出部を有している。これにより、第2延伸領域付近に位置する型内発泡成形体の収縮および膨張が、インサート材によって阻害される虞を低減することができる。これにより、型内発泡成形体を所望の形状とすることが容易である。また、型内発泡成形体の変形量が予め想定されていた量から逸脱することを抑制することができるため、インサート成形用の金型の製作も容易となる。
【0014】
従って、上記の構成によれば、型内発泡成形体を所望の形状とすることが容易であることによってインサート成形用の金型の製作が容易であり、かつ、十分な強度を有している型内発泡成形体ユニットを実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、型内発泡成形体を所望の形状とすることが容易であって、かつ、十分な強度を有している型内発泡成形体ユニットを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る型内発泡成形体ユニットの概略構成を示す斜視図である。
図2図1の型内発泡成形体ユニットの第1応用例に係る型内発泡成形体ユニットの概略構成を示す斜視図である。
図3図1の型内発泡成形体ユニットの第2応用例に係る型内発泡成形体ユニットの概略構成を示す斜視図である。
図4図1の型内発泡成形体ユニットの第3応用例に係る型内発泡成形体ユニットの概略構成を示す斜視図である。
図5図1の型内発泡成形体ユニットの第4応用例に係る型内発泡成形体ユニットの概略構成を示す斜視図である。
図6図1の型内発泡成形体ユニットの第5応用例に係る型内発泡成形体ユニットの概略構成を示す斜視図である。
図7図1の型内発泡成形体ユニットの第6応用例に係る型内発泡成形体ユニットの概略構成を示す斜視図である。
図8図1の型内発泡成形体ユニットの第7応用例に係る型内発泡成形体ユニットの概略構成を示す斜視図である。
図9図1の型内発泡成形体ユニットの第8応用例に係る型内発泡成形体ユニットの概略構成を示す斜視図である。
図10図1の型内発泡成形体ユニットの第9応用例に係る型内発泡成形体ユニットの概略構成を示す斜視図である。
図11図1の型内発泡成形体ユニットの第10応用例に係る型内発泡成形体ユニットの概略構成を示す斜視図である。
図12図1の型内発泡成形体ユニットの第11応用例に係る型内発泡成形体ユニットの概略構成を示す斜視図である。
図13図1の型内発泡成形体ユニットの第12応用例に係る型内発泡成形体ユニットの概略構成を示す斜視図である。
図14図1の型内発泡成形体ユニットの第13応用例に係る型内発泡成形体ユニットの概略構成を示す斜視図である。
図15図1の型内発泡成形体ユニットの第14応用例に係る型内発泡成形体ユニットの概略構成を示す斜視図である。
図16】本発明の比較例に係る型内発泡成形体ユニットの概略構成を示す斜視図である。
図17】型内発泡成形体ユニットの長手方向における、型内発泡成形体の変形量の分布を示す平面図であり、(a)は図1に示す型内発泡成形体ユニットにおける分布を示しており、(b)は図16に示す型内発泡成形体ユニットにおける分布を示している。
図18】型内発泡成形体ユニットの短手方向における、型内発泡成形体の変形量の分布を示す平面図であり、(a)は図1に示す型内発泡成形体ユニットにおける分布を示しており、(b)は図16に示す型内発泡成形体ユニットにおける分布を示している。
図19図2に示す型内発泡成形体ユニットにおける、型内発泡成形体の変形量の分布を示す平面図であり、(a)は短手方向における分布を示しており、(b)は長手方向における分布を示しており、(c)は鉛直方向における分布を示している。
図20図3に示す型内発泡成形体ユニットにおける、型内発泡成形体の変形量の分布を示す平面図であり、(a)は短手方向における分布を示しており、(b)は長手方向における分布を示しており、(c)は鉛直方向における分布を示している。
図21】本発明の別の比較例に係る型内発泡成形体ユニットの概略構成を示す斜視図である。
図22図21に示す型内発泡成形体ユニットにおける、型内発泡成形体の変形量の分布を示す平面図であり、(a)は短手方向における分布を示しており、(b)は長手方向における分布を示しており、(c)は鉛直方向における分布を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態について、図1図22を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る型内発泡成形体ユニット100の概略構成を示す斜視図である。型内発泡成形体ユニット100は、型内発泡成形体1、インサート材2、および掛け止め具3を備えている。型内発泡成形体ユニット100は、型内発泡成形体1に、インサート材2をインサート成形して得られたものである。
【0019】
型内発泡成形体1は、熱可塑性樹脂からなる。型内発泡成形体1は、本発明の効果が顕著になること、さらには、緩衝性、耐薬品性、耐熱性、および圧縮後の歪回復率に優れ、かつ、リサイクルが容易となる点から、オレフィン系樹脂からなることが好ましい。さらに、型内発泡成形体1は、これらの点から、ポリオレフィン系樹脂の発泡ビーズを型内発泡成形したものであることがより好ましい。
【0020】
例えば、型内発泡成形体1を構成する熱可塑性樹脂は、オレフィン系単量体75重量%以上含んでなる重合体である。
【0021】
オレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、ブテン-1、イソブテン、ペンテン-1、3-メチル-ブテン-1、ヘキセン-1、4-メチル-ペンテン-1、3,4-ジメチル-ブテン-1、ヘプテン-1、3-メチル-ヘキセン-1、オクテン-1、デセン-1等の炭素数2~12のα-オレフィン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
また、上記オレフィン系単量体と共重合性を有するその他の単量体としては、シクロペンテン、ノルボルネン、1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,8,8a,6-オクタヒドロナフタレン等の環状オレフィン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、1,4-ヘキサジエン、メチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン等のジエン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のエチレンを主成分とするポリエチレン系樹脂、プロピレンを主成分とするポリプロピレン系樹脂が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
特に、α-オレフィンがエチレンおよび/またはブテン-1である、エチレンおよび/またはブテン-1を共重合単量体成分として含有するポリプロピレン系樹脂が、入手容易であり、加工成形性に優れていることから、型内発泡成形への使用が好まれる。ポリエチレン系樹脂の中でも、エチレン-α-オレフィンブロック共重合体であってエチレン以外のコモノマーが1~10重量%である場合、または直鎖状低密度ポリエチレンである場合に、良好な発泡性を示し、型内発泡成形に好適に使用し得る。
【0025】
ポリプロピレン系樹脂としては、単量体の主成分としてプロピレンを含んでいれば、特に限定はなく、プロピレンホモポリマー、α-オレフィン-プロピレンランダム共重合体、α-オレフィン-プロピレンブロック共重合体等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明の実施の形態において用いられるポリオレフィン系樹脂は、さらに必要に応じて、タルク等のセル造核剤をはじめ、酸化防止剤、金属不活性剤、リン系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸等の安定剤、または架橋剤、連鎖移動剤、滑剤、可塑剤、充填剤、強化剤、無機系顔料、有機系顔料、導電性改良剤、難燃性改良剤、界面活性剤型もしくは高分子型の帯電防止剤等の添加物が添加されたポリオレフィン系樹脂組成物として使用され得る。
【0027】
本発明の実施の形態において用いられるポリオレフィン系樹脂組成物は、通常、予備発泡に利用されやすいように予め押出機、ニーダー、バンバリミキサー、ロール等を用いてポリオレフィン系樹脂を、必要に応じて前記添加剤と共に溶融混合し、円柱状、楕円状、球状、立方体状、直方体状等のような所望の粒子形状のポリオレフィン系樹脂粒子に成形加工される。
【0028】
なお、本発明の実施の形態において用いられるポリオレフィン系樹脂の発泡ビーズは、例えば、耐圧容器内に、ポリオレフィン系樹脂粒子を二酸化炭素等の発泡剤と共に水系分散媒に分散させ、ポリオレフィン系樹脂粒子の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧した後、一定時間保持した後、次いで耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出する発泡工程を経て得ることができる。ただし、ポリオレフィン系樹脂の発泡ビーズを得る手法は、上記の手法に限定されるものではない。より具体的には、国際公開特許公報WO2009/075208や特開2006-117842号公報等に開示されている製造方法を用いることができる。
【0029】
このようなポリオレフォン系樹脂の発泡ビーズは、例えば、(株)カネカ製エペラン-PP、エペラン-XL等として市販されており、容易に入手可能である。
【0030】
さらに、オレフィン系樹脂以外の熱可塑性樹脂として、例えば、スチレン系樹脂、スチレン改質オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂およびポリ乳酸系樹脂等が挙げられる。そして、スチレン系樹脂発泡ビーズであれば特開2003-201360号公報、特開2014-118474号公報や国際公開特許公報WO2015/137363等に開示されている製造方法により得ることが可能である。また、スチレン改質オレフィン系樹脂発泡ビーズであれば特開2008-239794号公報や国際公開特許公報WO2016/152243等に開示されている製造方法により得ることが可能である。
【0031】
インサート材2は、型内発泡成形体1に対して埋め込まれている。インサート材2は、少なくとも1本の線状部材からなる。インサート材2としては、型内発泡成形体1より、破断に対する強度(引張強度)が高ければ、種々の材質のものを用いることができる。つまり、インサート材2は、型内発泡成形体1より硬いか、または型内発泡成形体1より柔らかい材質であっても千切れにくければ、種々の材質のものを用いることができる。インサート材2の一例として、金属、無機繊維(炭素繊維、ガラス繊維等)、繊維強化プラスチック(炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック等)、繊維強化金属、木材、コンクリートを挙げることができる。中でも、インサート材2の材質は、金属のワイヤーであることが好ましい。インサート材2を構成する金属の一例として、鉄、ステンレス、亜鉛、アルミ等が挙げられる。
【0032】
インサート材2は、略四角形の枠状に形成されている。具体的に、インサート材2は、仮想の四角形2sを構成する4辺に沿って引き廻されているという前提の下、折り曲げられたり湾曲されたりすることによって、対応する四角形2sの辺から離れ得るように形成されている。図1においては、四角形2sにおける2組の対辺の一方と対応するインサート材2の部分を第1延伸領域21としており、四角形2sにおける2組の対辺の他方と対応するインサート材2の部分を第2延伸領域22としている。第1延伸領域21と対応する四角形2sの対辺は、概ね型内発泡成形体ユニット100の長手方向に沿っており、第2延伸領域22と対応する四角形2sの対辺は、概ね型内発泡成形体ユニット100の短手方向に沿っている。なお、型内発泡成形体ユニット100が車両に取り付けられた状態において、型内発泡成形体ユニット100の長手方向は、車両の幅方向と対応し、型内発泡成形体ユニット100の短手方向は、車両の前後方向と対応する。
【0033】
第1延伸領域21は、その略全体が、型内発泡成形体1に対して埋め込まれている。具体的に、第1延伸領域21は、何らかの理由によって、型内発泡成形体1に対して埋め込むことが相応しくない部分を除けば、その全体が、型内発泡成形体1に対して埋め込まれている。型内発泡成形体1に対して埋め込むことが相応しくない第1延伸領域21の部分の一例として、型内発泡成形体1の外形に起因して、型内発泡成形体1に対して埋め込むことが困難である位置に配置された第1延伸領域21の部分が挙げられる。
【0034】
型内発泡成形体ユニット100においては、第1延伸領域21の略全体が、型内発泡成形体1に対して埋め込まれているため、型内発泡成形体1に対してインサート材2が十分強固に固定されている。これにより、型内発泡成形体ユニット100において、その強度が不十分となる虞を低減することができる。
【0035】
一方、第2延伸領域22は、型内発泡成形体1の外部に露出しており、型内発泡成形体1の収縮および膨張に追従する露出部23を有している。露出部23は、第2延伸領域22の少なくとも一部である(一部であっても全部であってもよい)。ここで、「露出部23が型内発泡成形体1の収縮に追従する」こととは、型内発泡成形体1の収縮により生じる力を露出部23が受け、当該収縮に伴う型内発泡成形体1の変形を追うように、露出部23が変形することを意味している。同様に、「露出部23が型内発泡成形体1の膨張に追従する」こととは、型内発泡成形体1の膨張により生じる力を露出部23が受け、当該膨張に伴う型内発泡成形体1の変形を追うように、露出部23が変形することを意味している。各第2延伸領域22に関し、全体に対する露出部23の割合は、10%以上90%以下であることが好ましく、30%以上80%以下であることがより好ましく、55%以上65%以下であることがさらに好ましい。
【0036】
これにより、第2延伸領域22付近に位置する型内発泡成形体1の収縮および膨張が、インサート材2によって阻害される虞を低減することができる。これにより、型内発泡成形体1を所望の形状とすることが容易である。また、型内発泡成形体1の変形量が予め想定されていた量から逸脱することを抑制することができるため、インサート成形用の金型の製作も容易となる。
【0037】
従って、型内発泡成形体1を所望の形状とすることが容易であることによってインサート成形用の金型の製作が容易であり、かつ、十分な強度を有している型内発泡成形体ユニット100を実現することが可能となる。
【0038】
なお、露出部23において、インサート材2は、型内発泡成形体1に形成された溝に嵌め込まれていてもよいし、型内発泡成形体1上に配置されていてもよい。
【0039】
また、型内発泡成形体ユニット100において、四角形2sにおける2組の対辺の一方は、型内発泡成形体ユニット100の長手方向と対応しており、四角形2sにおける2組の対辺の他方は、型内発泡成形体ユニット100の短手方向と対応している。これにより、インサート材2が型内発泡成形体1に対して埋め込まれている領域を十分大きくすることができるため、十分な強度を有している型内発泡成形体ユニット100の実現が容易となる。
【0040】
インサート材2は、直径(太さ)が例えば4.0mmΦである太線部2fと、直径が例えば2.5mmΦである細線部2tとを有している。なお、インサート材2において太線部2fと細線部2tとを混在させるために、1本の線状部材を加工してインサート材2を作成してもよいし、2本以上の線状部材を接いでインサート材2を作成してもよい。
【0041】
より具体的に、第1延伸領域21は、強度を十分に大きくするという観点から、太線部2fのみによって構成されている。一方、第2延伸領域22については、太線部2fと細線部2tとが混在している。そして、露出部23を構成するインサート材2の一部には、インサート材2が撓み易いように、細線部2tが採用されている。なお、露出部23を構成するインサート材2の全部に、細線部2tが採用されていてもよい。各第2延伸領域22に関し、第2延伸領域22に対する細線部2tの割合は、30%以上70%以下であることが好ましく、40%以上60%以下であることがより好ましく、40%以上50%以下であることがさらに好ましい。
【0042】
以上のことをまとめると、露出部23の少なくとも一部におけるインサート材2の太さは、第1延伸領域21におけるインサート材2の太さより小さくてもよいと言える。
【0043】
さらに、露出部23は、インサート材2の折り曲げ部分として、3つの折り曲げ部分24a~折り曲げ部分24cを有している。折り曲げ部分24a~折り曲げ部分24cにおいては、それぞれ、折り曲げ角度θa~折り曲げ角度θcにて、インサート材2が折り曲げられている。折り曲げ角度θa~折り曲げ角度θcはいずれも、図1に示すように鋭角であることが好ましいが、直角または鈍角であってもよい。また、露出部23は、インサート材2の折り曲げ部分を4つ以上有していてもよい。
【0044】
上記の構成によれば、露出部23におけるインサート材2が動き易いため、第2延伸領域22付近に位置する型内発泡成形体1の収縮および膨張が、インサート材2によって阻害される虞をさらに低減することができる。またこれにより、型内発泡成形体ユニット100の短手方向における、型内発泡成形体1の変形量を小さくすることができる。なぜなら、収縮および膨張が極めて小さいインサート材2の影響を受けることなく、型内発泡成形体1が収縮および膨張をすることができるからである。具体的には、収縮および膨張が極めて小さいインサート材2がたわむことにより、型内発泡成形体1の収縮および膨張に追従することができるからである。
【0045】
また、折り曲げ部分24a~折り曲げ部分24cの存在により、折り曲げ部分24a~折り曲げ部分24cの各々が起点となりインサート材2が変形しやすく、型内発泡成形体1の収縮および膨張に追従し易くなる。このため、型内発泡成形体1の変形量を小さくすることができる。折り曲げ部分を多数設け、露出部23をバネ構造とすれば、より変形量を小さくすることを可能とし易い。
【0046】
なお、図1において、露出部23は、型内発泡成形体ユニット100における長手方向両端の各々に設けられているが、当該長手方向両端のいずれか一方のみに設けられていてもよい。また、露出部23を型内発泡成形体1の縁に沿わせることによって、型内発泡成形体ユニット100の強度を確保することが容易となる。
【0047】
掛け止め具3は、例えば鉄製の板状部材31に対して固定されている。なお、板状部材31は、例えばインサート材2に対して固定されている。掛け止め具3は、車両側のフックに引っ掛かることによって、型内発泡成形体ユニット100を車両に固定する機能を有している。掛け止め具3の材質として、インサート材2の材質と同じものを用いることができる。
【0048】
掛け止め具3は、板状部材31に対して固定されている台座部32、および本体部33を有している。台座部32と本体部33とは、掛け止め具3の側面視においてL字型に連結されている。図1において、本体部33は、U字型のフックである。但し、本体部33は、車両側のフックに引っ掛かることが可能な形状であれば、その形状は特に限定されず、例えばコの字型のフックであってもよい。また、インサート材2が、掛け止め具3および/または板状部材31と連結されていてもよいし、連結されていなくてもよい。
【0049】
ここで、型内発泡成形体ユニット100においては、掛け止め具3の全体が、型内発泡成形体1の外部に露出している。板状部材31については、板状部材31を型内発泡成形体ユニット100に対して所望の強度にて固定するために必要な程度に、型内発泡成形体1に対して埋め込まれていればよく、型内発泡成形体1の外部に露出した部分を有していても有していなくてもよい。
【0050】
掛け止め具3は、インサート材2と同様の原理によって、型内発泡成形体1の収縮および膨張を阻害する虞がある。上記の構成によれば、掛け止め具3付近に位置する型内発泡成形体1の収縮および膨張が、掛け止め具3によって阻害される虞を低減することができる。これにより、型内発泡成形体1を所望の形状とすることが容易である。また、型内発泡成形体1の変形量が予め想定されていた量から逸脱することを抑制することができるため、インサート成形用の金型の製作も容易となる。
【0051】
型内発泡成形体ユニット100の用途としては、車両用シート芯材が挙げられ、具体例を挙げると、当該シートにおける座面の芯材、または当該シートにおける背もたれ部分の芯材が挙げられる。
【0052】
〔応用例〕
図2は、図1の型内発泡成形体ユニット100の第1応用例に係る型内発泡成形体ユニット101の概略構成を示す斜視図である。型内発泡成形体ユニット101と型内発泡成形体ユニット100との相違点は、以下のとおりである。
【0053】
型内発泡成形体ユニット101は、第2延伸領域22が、太線部2fのみによって構成されている。また、型内発泡成形体ユニット101には、型内発泡成形体ユニット100の折り曲げ部分24a~折り曲げ部分24cに対応する、インサート材2の折り曲げ部分が設けられていない。
【0054】
図3は、図1の型内発泡成形体ユニット100の第2応用例に係る型内発泡成形体ユニット102の概略構成を示す斜視図である。型内発泡成形体ユニット102と型内発泡成形体ユニット100との相違点は、以下のとおりである。
【0055】
型内発泡成形体ユニット102は、第2延伸領域22が、細線部2tのみによって構成されている。また、型内発泡成形体ユニット102には、型内発泡成形体ユニット100の折り曲げ部分24a~折り曲げ部分24cに対応する、インサート材2の折り曲げ部分が設けられていない。
【0056】
図4は、図1の型内発泡成形体ユニット100の第3応用例に係る型内発泡成形体ユニット103の概略構成を示す斜視図である。型内発泡成形体ユニット103と型内発泡成形体ユニット100との相違点は、以下のとおりである。
【0057】
型内発泡成形体ユニット103は、第2延伸領域22が、太線部2fのみによって構成されている。
【0058】
図5は、図1の型内発泡成形体ユニット100の第4応用例に係る型内発泡成形体ユニット104の概略構成を示す斜視図である。型内発泡成形体ユニット104と型内発泡成形体ユニット100との相違点は、以下のとおりである。
【0059】
型内発泡成形体ユニット104は、インサート材2における型内発泡成形体1から露出した部分の全てが、細線部2tのみによって構成されている。
【0060】
図6は、図1の型内発泡成形体ユニット100の第5応用例に係る型内発泡成形体ユニット105の概略構成を示す斜視図である。型内発泡成形体ユニット105と型内発泡成形体ユニット100との相違点は、以下のとおりである。
【0061】
型内発泡成形体ユニット105と、型内発泡成形体ユニット100とは、インサート材2における型内発泡成形体1から露出した部分において、太線部2fの配置と細線部2tの配置とが逆になっている。
【0062】
図7は、図1の型内発泡成形体ユニット100の第6応用例に係る型内発泡成形体ユニット106の概略構成を示す斜視図である。型内発泡成形体ユニット106と型内発泡成形体ユニット100との相違点は、以下のとおりである。
【0063】
型内発泡成形体ユニット106は、折り曲げ部分24bと折り曲げ部分24cとの間が、太線部2fによって構成されている。
【0064】
図8は、図1の型内発泡成形体ユニット100の第7応用例に係る型内発泡成形体ユニット107の概略構成を示す斜視図である。型内発泡成形体ユニット107と型内発泡成形体ユニット100との相違点は、以下のとおりである。
【0065】
型内発泡成形体ユニット107は、折り曲げ部分24aと折り曲げ部分24bとの間、ならびに折り曲げ部分24cと第2延伸領域22の端部(図8中、左下)との間が、太線部2fによって構成されている。
【0066】
図9は、図1の型内発泡成形体ユニット100の第8応用例に係る型内発泡成形体ユニット108の概略構成を示す斜視図である。図10は、図1の型内発泡成形体ユニット100の第9応用例に係る型内発泡成形体ユニット109の概略構成を示す斜視図である。型内発泡成形体ユニット108および型内発泡成形体ユニット109のそれぞれと型内発泡成形体ユニット100との相違点は、以下のとおりである。
【0067】
型内発泡成形体ユニット108および型内発泡成形体ユニット109のそれぞれは、インサート材2の全体が、太線部2fのみによって構成されている。また、型内発泡成形体ユニット108および型内発泡成形体ユニット109のそれぞれは、第1延伸領域21´の略全体が、型内発泡成形体1に対して埋め込まれており、第2延伸領域22´が、型内発泡成形体1の外部に露出しており、型内発泡成形体1の収縮および膨張に追従する露出部23´を有している。なお、第1延伸領域21´は、型内発泡成形体ユニット100の第2延伸領域22に対応する領域であり、第2延伸領域22´は、型内発泡成形体ユニット100の第1延伸領域21に対応する領域である。
【0068】
露出部23´は、型内発泡成形体ユニット108において第2延伸領域22´(図9中、上)の中央部分を避けるように配置されており、型内発泡成形体ユニット109において第2延伸領域22´(図10中、上)の中央部分に配置されている。
【0069】
図11は、図1の型内発泡成形体ユニット100の第10応用例に係る型内発泡成形体ユニット110の概略構成を示す斜視図である。図12は、図1の型内発泡成形体ユニット100の第11応用例に係る型内発泡成形体ユニット111の概略構成を示す斜視図である。図13は、図1の型内発泡成形体ユニット100の第12応用例に係る型内発泡成形体ユニット112の概略構成を示す斜視図である。型内発泡成形体ユニット110~型内発泡成形体ユニット112のそれぞれと型内発泡成形体ユニット100との相違点は、以下のとおりである。
【0070】
型内発泡成形体ユニット110~型内発泡成形体ユニット112のそれぞれは、インサート材2の全体が、太線部2fのみによって構成されている。また、型内発泡成形体ユニット110~型内発泡成形体ユニット112のそれぞれは、第1延伸領域21´の略全体が、型内発泡成形体1に対して埋め込まれており、第2延伸領域22´が露出部23´を有している。
【0071】
露出部23´は、型内発泡成形体ユニット110において第2延伸領域22´における対辺の一方に設けられており、型内発泡成形体ユニット111において同対辺の他方に設けられており、型内発泡成形体ユニット112において同対辺の両方に設けられている。
【0072】
図14は、図1の型内発泡成形体ユニット100の第13応用例に係る型内発泡成形体ユニット113の概略構成を示す斜視図である。図15は、図1の型内発泡成形体ユニット100の第14応用例に係る型内発泡成形体ユニット114の概略構成を示す斜視図である。型内発泡成形体ユニット113および型内発泡成形体ユニット114のそれぞれと型内発泡成形体ユニット100との相違点は、以下のとおりである。
【0073】
型内発泡成形体ユニット113および型内発泡成形体ユニット114のそれぞれは、第1延伸領域21´の略全体が、型内発泡成形体1に対して埋め込まれており、第2延伸領域22´がその中央部分に露出部23´を有している。また、型内発泡成形体ユニット113の露出部23´は、インサート材2の折り曲げ部分として、3つの折り曲げ部分24a´~折り曲げ部分24c´を有している。型内発泡成形体ユニット113の露出部23´は、折り曲げ部分24b´と折り曲げ部分24c´との間が細線部2tによって構成されており、その他の部分が太線部2fによって構成されている。一方、型内発泡成形体ユニット114は、露出部23´の全体が細線部2tによって構成されている。
【0074】
〔まとめ〕
本発明の一態様に係る型内発泡成形体ユニットは、熱可塑性樹脂からなる型内発泡成形体と、上記型内発泡成形体に対して埋め込まれており、略四角形の枠状に形成されたインサート材とを備えており、上記インサート材は、上記略四角形における2組の対辺の一方と対応する第1延伸領域と、上記略四角形における2組の対辺の他方と対応する第2延伸領域とを有しており、上記第1延伸領域の略全体が、上記型内発泡成形体に対して埋め込まれており、上記第2延伸領域は、上記型内発泡成形体の外部に露出しており、上記型内発泡成形体の収縮および膨張に追従する露出部を有している。
【0075】
本発明の一態様に係る型内発泡成形体ユニットの製造方法は、熱可塑性樹脂からなる型内発泡成形体と、上記型内発泡成形体に対して埋め込まれており、略四角形の枠状に形成されたインサート材とを備えており、上記インサート材は、上記略四角形における2組の対辺の一方と対応する第1延伸領域と、上記略四角形における2組の対辺の他方と対応する第2延伸領域とを有している型内発泡成形体ユニットの製造方法であって、上記インサート材を埋め込むように、上記型内発泡成形体を形成する工程を含んでおり、当該工程において、上記第1延伸領域の略全体を、上記型内発泡成形体に対して埋め込み、上記型内発泡成形体の収縮および膨張に追従する上記第2延伸領域の部分を、上記型内発泡成形体の外部に露出させる。
【0076】
上記の構成によれば、第1延伸領域の略全体が、型内発泡成形体に対して埋め込まれているため、型内発泡成形体に対してインサート材が十分強固に固定されている。これにより、型内発泡成形体ユニットの強度が不十分となる虞を低減することができる。
【0077】
また、上記の構成によれば、第2延伸領域が型内発泡成形体の収縮および膨張に追従する露出部を有している。これにより、第2延伸領域付近に位置する型内発泡成形体の収縮および膨張が、インサート材によって阻害される虞を低減することができる。これにより、型内発泡成形体を所望の形状とすることが容易である。また、型内発泡成形体の変形量が予め想定されていた量から逸脱することを抑制することができるため、インサート成形用の金型の製作も容易となる。
【0078】
従って、上記の構成によれば、型内発泡成形体を所望の形状とすることが容易であることによってインサート成形用の金型の製作が容易であり、かつ、十分な強度を有している型内発泡成形体ユニットを実現することが可能となる。
【0079】
また、本発明の別の態様に係る型内発泡成形体ユニットにおいて、上記露出部の少なくとも一部における上記インサート材の太さは、上記第1延伸領域における上記インサート材の太さより小さいことが好ましい。
【0080】
また、本発明の別の態様に係る型内発泡成形体ユニットにおいて、上記露出部は、上記インサート材の折り曲げ部分を3つ以上有していることが好ましい。
【0081】
上記の構成によれば、露出部におけるインサート材が動き易いため、第2延伸領域付近に位置する型内発泡成形体の収縮および膨張が、インサート材によって阻害される虞をさらに低減することができる。またこれにより、上記略四角形における2組の対辺の他方の延伸方向に略沿った方向における型内発泡成形体の変形量を小さくすることができる。なぜなら、収縮および膨張が極めて小さいインサート材の影響を受けることなく、型内発泡成形体が収縮および膨張をすることができるからである。
【0082】
また、本発明の別の態様に係る型内発泡成形体ユニットは、掛け止め具をさらに備えており、上記掛け止め具の全体が、上記型内発泡成形体の外部に露出していることが好ましい。
【0083】
掛け止め具は、インサート材と同様の原理によって、型内発泡成形体の収縮および膨張を阻害する虞がある。上記の構成によれば、掛け止め具付近に位置する型内発泡成形体の収縮および膨張が、掛け止め具によって阻害される虞を低減することができる。これにより、型内発泡成形体を所望の形状とすることが容易である。また、型内発泡成形体の変形量が予め想定されていた量から逸脱することを抑制することができるため、インサート成形用の金型の製作も容易となる。
【0084】
また、本発明の別の態様に係る型内発泡成形体ユニットにおいて、上記略四角形における2組の対辺の一方は、上記型内発泡成形体ユニットの長手方向と対応しており、上記略四角形における2組の対辺の他方は、上記型内発泡成形体ユニットの短手方向と対応していることが好ましい。
【0085】
上記の構成によれば、インサート材が型内発泡成形体に対して埋め込まれている領域を十分大きくすることができるため、十分な強度を有している型内発泡成形体ユニットの実現が容易となる。
【0086】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例
【0087】
図16は、本発明の比較例に係る型内発泡成形体ユニット200の概略構成を示す斜視図である。型内発泡成形体ユニット200と、図1に示した型内発泡成形体ユニット100との相違点は、下記(A)~(D)のとおりである。
【0088】
(A)型内発泡成形体ユニット100は、露出部23を有しているが、型内発泡成形体ユニット200は、露出部23を有していない。なお、図16においては、型内発泡成形体ユニット200の左右上端部の各々にてインサート材4がむき出しになっているが、これは単に型内発泡成形体1に対して埋め込むことが困難なインサート材4部分に過ぎず、露出部23とは異なるものである(型内発泡成形体1の収縮および膨張に追従するものではない)。
【0089】
(B)型内発泡成形体ユニット100は、太線部2fと細線部2tとからなるインサート材2を有しているが、型内発泡成形体ユニット200は、インサート材2の代わりに、太線部2fのみからなるインサート材4を有している。
【0090】
(C)型内発泡成形体ユニット100のインサート材2は、露出部23に折り曲げ部分24a~折り曲げ部分24cを有しているが、型内発泡成形体ユニット200のインサート材4は、折り曲げ部分24a~折り曲げ部分24cを有していない。
【0091】
(D)型内発泡成形体ユニット100の掛け止め具3は、その全体が露出しているが、型内発泡成形体ユニット200の掛け止め具3は、台座部32の下方が型内発泡成形体1に対して埋め込まれている(露出していない)。
【0092】
実施例として、シミュレーションによって、型内発泡成形体ユニット100における、型内発泡成形体1の変形量の分布と、型内発泡成形体ユニット200における、型内発泡成形体1の変形量の分布とを対比した。
【0093】
図17は、型内発泡成形体ユニットの長手方向における、型内発泡成形体1の変形量の分布を示す平面図である。図17の(a)は、型内発泡成形体ユニット100における分布を示しており、図17の(b)は、型内発泡成形体ユニット200における分布を示している。
【0094】
図18は、型内発泡成形体ユニットの短手方向における、型内発泡成形体1の変形量の分布を示す平面図である。図18の(a)は、型内発泡成形体ユニット100における分布を示しており、図18の(b)は、型内発泡成形体ユニット200における分布を示している。
【0095】
なお、図17および図18の右隅に記載されている-10~10の表記は、変形量の数値(単位:mm)を示しており、図17において右側から中央に向かって変形すると正の値、左側から中央に向かって変形すると負の値を示し、図18において上側に向かって変形すると正の値、下側に向かって変形すると負の値を示している。また、上記の各分布を測定するための機器として、ダッソー・システムズ株式会社製のCATIAを用いた。
【0096】
型内発泡成形体ユニット200の長手方向における、型内発泡成形体1の変形量の分布は、図17の(b)に示すとおり、等高線が型内発泡成形体ユニット200上を斜め方向に伸びている。一方、型内発泡成形体ユニット100の長手方向における、型内発泡成形体1の変形量の分布は、図17の(a)に示すとおり、等高線が概ね型内発泡成形体ユニット100の短手方向に沿って伸びるように整理されている。以上のことから、型内発泡成形体ユニット100は、その長手方向に関し、型内発泡成形体ユニット200に対して、等高線(図17の(a)参照)が整理されているため、型内発泡成形体1を所望の形状とすることが容易であるということが分かった。
【0097】
型内発泡成形体ユニット200の短手方向における、型内発泡成形体1の変形量の分布は、図18の(b)に示すとおり、等高線が型内発泡成形体ユニット200上を放射状に伸びている。一方、型内発泡成形体ユニット100の短手方向における、型内発泡成形体1の変形量の分布は、図18の(a)に示すとおり、等高線が概ね型内発泡成形体ユニット100の長手方向に沿って伸びるように整理されている。以上のことから、型内発泡成形体ユニット100は、その短手方向に関し、型内発泡成形体ユニット200に対して、等高線(図18の(a)参照)が整理されているため、型内発泡成形体1を所望の形状とすることが容易であるということが分かった。
【0098】
加えて、図18の(a)に示す分布は、図18の(b)に示す分布と比較して、変形量の数値が+2mm以上である領域が無くなっている。このことから、型内発泡成形体ユニット100は、その短手方向に関し、型内発泡成形体ユニット200に対して、型内発泡成形体1の変形量が小さくなっているということが分かった。
【0099】
図19図20、および図22の右隅に記載されている-10~10の表記は、変形量の数値(単位:mm)を示しており、右側から中央に向かって変形すると正の値、左側から中央に向かって変形すると負の値を示し、上側に向かって変形すると正の値、下側に向かって変形すると負の値を示し、紙面表側に向かって変形すると正の値、紙面裏側に向かって変形すると負の値を示している。また、上記の各分布を測定するための機器として、ダッソー・システムズ株式会社製のCATIAを用いた。
【0100】
図19は、図2に示す型内発泡成形体ユニット101における、型内発泡成形体1の変形量の分布を示す平面図である。図19の(a)は短手方向における分布を示しており、図19の(b)は長手方向における分布を示しており、図19の(c)は鉛直方向(短手方向および長手方向の両方と垂直な方向)における分布を示している。図19の(a)~(c)から、型内発泡成形体ユニット101は、型内発泡成形体1を所望の形状とすることが容易であるということが分かる。
【0101】
図20は、図3に示す型内発泡成形体ユニット102における、型内発泡成形体1の変形量の分布を示す平面図である。図20の(a)は短手方向における分布を示しており、図20の(b)は長手方向における分布を示しており、図20の(c)は鉛直方向における分布を示している。図20の(a)および(c)のそれぞれにおいて、+2mm以上の変形量の領域は無く、図20の(a)~(c)において、規則的な変形量となっていることから、型内発泡成形体ユニット102は、型内発泡成形体1を所望の形状とすることが容易であるということが分かる。
【0102】
図21は、本発明の別の比較例に係る型内発泡成形体ユニット201の概略構成を示す斜視図である。型内発泡成形体ユニット201と型内発泡成形体ユニット102との相違点は、以下のとおりである。
【0103】
型内発泡成形体ユニット201は、第2延伸領域22が、細線部2tのみによって構成されている。また、型内発泡成形体ユニット201には、露出部23が設けられていない。なお、図21においては、型内発泡成形体ユニット201の左右上端部の各々にてインサート材2がむき出しになっているが、これは単に型内発泡成形体1に対して埋め込むことが困難なインサート材2部分に過ぎず、露出部23とは異なるものである(型内発泡成形体1の収縮および膨張に追従するものではない)。
【0104】
図22は、図21に示す型内発泡成形体ユニット201における、型内発泡成形体1の変形量の分布を示す平面図である。図22の(a)は短手方向における分布を示しており、図22の(b)は長手方向における分布を示しており、図22の(c)は鉛直方向における分布を示している。図22の(a)および(c)のそれぞれにおいて、最大で10mmの変形量の領域が見られ、図22の(a)~(c)において、不規則な変形量となっていることから、型内発泡成形体ユニット201は、型内発泡成形体ユニット102と比較して、型内発泡成形体1を所望の形状とすることが困難であるということが分かる。
【符号の説明】
【0105】
1 型内発泡成形体
2 インサート材
2f 太線部
2s 仮想の四角形
2t 細線部
3 掛け止め具
21、21´ 第1延伸領域
22、22´ 第2延伸領域
23、23´ 露出部
24a~24c 折り曲げ部分
100~114 型内発泡成形体ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図20
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