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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20220804BHJP
   B60C 9/02 20060101ALI20220804BHJP
   B60C 15/00 20060101ALI20220804BHJP
   B60C 9/08 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
B60C13/00 E
B60C9/02 A
B60C15/00 G
B60C9/08 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019091240
(22)【出願日】2019-05-14
(65)【公開番号】P2020185871
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】本田 真悟
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-148682(JP,A)
【文献】特開2013-67183(JP,A)
【文献】特開平8-113007(JP,A)
【文献】特開2016-107725(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0295946(US,A1)
【文献】国際公開第2008/074337(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/043377(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/02-9/17
B60C 13/00-13/02
B60C 15/00
B60C 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に接するトレッド部と、
前記トレッド部に連なり、前記トレッド部のタイヤ径方向内側に位置するタイヤサイド部と、
前記タイヤサイド部に連なり、前記タイヤサイド部のタイヤ径方向内側に位置するビード部と、
タイヤ骨格を形成するカーカスと
を備えるタイヤであって、
前記ビード部は、ビードコアと、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に設けられるビードフィラーとを含み、
前記カーカスは、
本体部と、
前記本体部に連なり、ビードコアを介してタイヤ幅方向外側に折り返された折り返し部と
を有し、
前記本体部及び折り返し部の一部は、少なくとも複数枚のプライによって構成され、
前記ビードコア及び前記ビードフィラーを覆うようにタイヤ幅方向内側から前記ビードコアを介してタイヤ幅方向外側に折り返された第1補強部材と、
前記ビードフィラーと、タイヤ幅方向外側に折り返された前記第1補強部材との間に設けられる第2補強部材と
を備え、
前記第2補強部材が設けられている少なくとも一部の領域において、前記カーカスのタイヤ幅方向外側に設けられているサイドゴムの厚さは、複数枚のプライによって構成される前記本体部及び前記折り返し部を合わせたプライ厚さと略同一であるタイヤ。
【請求項2】
前記タイヤの最大幅位置における前記サイドゴムの厚さは、前記最大幅位置における前記タイヤサイド部の断面幅の40%以上である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記タイヤのリムラインの位置における前記サイドゴムの厚さは、前記リムラインの位置における前記ビード部の断面幅の30%以上である請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記タイヤの最大幅位置における前記サイドゴムの厚さは、4枚の前記プライの厚さと略同一である請求項1乃至3の何れか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第1補強部材は、
前記ビード部のタイヤ幅方向内側に位置する内側部分と、
前記ビード部のタイヤ幅方向外側に位置する外側部分と
を含み、
前記外側部分のタイヤ径方向外側端は、前記内側部分のタイヤ径方向外側端よりもタイヤ径方向外側に位置するとともに、前記タイヤのセクション高さの50%の位置よりもタイヤ径方向外側に位置する請求項1乃至4の何れか一項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記第2補強部材のタイヤ径方向外側端は、前記セクション高さの50%の位置よりもタイヤ径方向内側に位置する請求項5に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いコーナリング性能を有するタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、四輪自動車に装着される空気入りタイヤ(以下、タイヤ)では、コーナリング性能の向上を目的として、タイヤサイド部に複数本のコードのゴム引きした布によって構成されたサイド補強層を設ける構造が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このようなサイド補強層は、トレッド部のタイヤ径方向内側に設けられるベルト層のタイヤ幅方向外側端からビード部のタイヤ径方向外側端に亘って設けられる。これにより、タイヤサイド部の剛性が向上するため、車両のコーナリング中におけるグリップ力及び応答性を向上し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-274799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両の性能向上に伴って、さらなるコーナリング性能の向上、特に、コーナリング中のタイヤ性能(グリップ力など)の限界領域における操縦性(以下、限界域操縦性)の向上が求められている。
【0006】
一般的に、コーナリング開始時の小舵角領域での軸力向上を図り、コーナーに進入した後の大舵角領域でのトレッド部のせん断変形の適正化を図ることによって、グリップ力及び応答性などの性能向上が期待できる。
【0007】
さらに、限界域操縦性を向上させるためには、トレッド部の接地面を有効に機能させることが不可欠である。特に、軸力を向上させるため、トレッド部のせん断変形を促進させることがポイントとなる。このようなトレッド部のせん断変形を促進させる方法として、タイヤのケース剛性を高めることが挙げられる。
【0008】
しかしながら、タイヤのケース剛性が高くなると、コーナリング中におけるタイヤの減衰性(タイヤ径方向のタイヤの撓み易さ)が低下するため、コーナリング中におけるタイヤに荷重が負荷された状態での車両の姿勢を維持することが難しくなる。このため、横力(Fy)の時間依存性が低下する。
【0009】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、コーナリング中における軸力向上と車両の姿勢維持の容易性とを高い次元で両立し得るタイヤの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、路面に接するトレッド部(トレッド部20)と、前記トレッド部に連なり、前記トレッド部のタイヤ径方向内側に位置するタイヤサイド部(タイヤサイド部30)と、前記タイヤサイド部に連なり、前記タイヤサイド部のタイヤ径方向内側に位置するビード部(ビード部60)と、タイヤ骨格を形成するカーカス(カーカス40)とを備えるタイヤ(空気入りタイヤ10)であって、前記ビード部は、ビードコア(ビードコア61)と、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に設けられるビードフィラー(ビードフィラー62)とを含み、前記カーカスは、本体部(本体部41)と、前記本体部に連なり、ビードコアを介してタイヤ幅方向外側に折り返された折り返し部(折り返し部42)とを有し、前記本体部及び折り返し部の一部は、少なくとも複数枚のプライ(プライ41a, プライ41b, プライ42a, プライ42b)によって構成され、前記ビードコア及び前記ビードフィラーを覆うようにタイヤ幅方向内側から前記ビードコアを介してタイヤ幅方向外側に折り返された第1補強部材(フリッパー70)と、前記ビードフィラーと、タイヤ幅方向外側に折り返された前記第1補強部材との間に設けられる第2補強部材(インサート80)とを備え、前記第2補強部材が設けられている少なくとも一部の領域において、前記カーカスのタイヤ幅方向外側に設けられているサイドゴム(サイドゴム31)の厚さ(厚さD1, 厚さD2)は、複数枚のプライによって構成される前記本体部及び前記折り返し部を合わせたプライ厚さと略同一である。
【発明の効果】
【0011】
上述したタイヤによれば、コーナリング中における軸力向上と車両の姿勢維持の容易性とを高い次元で両立し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、空気入りタイヤ10の断面図である。
図2図2は、空気入りタイヤ10の一部断面図である。
図3図3は、空気入りタイヤ10の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0014】
(1)タイヤの全体概略構成
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ10の断面図である。具体的には、図1は、空気入りタイヤ10のタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面図である。なお、図1では、断面ハッチングの表示は省略されている。
【0015】
図1に示すように、空気入りタイヤ10は、トレッド部20、タイヤサイド部30、カーカス40、ベルト層50及びビード部60を備える。
【0016】
本実施形態では、空気入りタイヤ10、四輪自動車、具体的には、乗用自動車に装着されることを前提としたタイヤである。特に、空気入りタイヤ10は、コーナリング性能を重視したスポーツタイプなどの四輪自動車に好適に用い得る。
【0017】
トレッド部20は、路面と接する部分である。トレッド部20には、空気入りタイヤ10の使用環境や装着される車両の種別に応じたパターン(不図示)が形成される。
【0018】
タイヤサイド部30は、トレッド部20に連なり、トレッド部20のタイヤ径方向内側に位置する。タイヤサイド部30は、トレッド部20のタイヤ幅方向外側端からビード部60の上端までの領域である。タイヤサイド部30は、サイドウォールなどと呼ばれることもある。
【0019】
カーカス40は、空気入りタイヤ10の骨格(タイヤ骨格)を形成する。本実施形態では、カーカス40は、タイヤ径方向に沿って放射状に配置されたカーカスコード(不図示)がゴム材料によって被覆されたラジアル構造である。カーカス40は、本体部41と、折り返し部42とを有する。
【0020】
本体部41は、トレッド部20、タイヤサイド部30及びビード部60に亘って設けられ、ビード部60において折り返されるまでの部分である。
【0021】
折り返し部42は、本体部41に連なり、ビードコア61を介してタイヤ幅方向外側に折り返された部分である。折り返し部42のタイヤ径方向における外側端42eは、ベルト層50のタイヤ径方向内側まで延びている。すなわち、カーカス40には、エンベロープ構造が採用されている。
【0022】
但し、カーカス40は、必ずしもエンベロープ構造でなくてもよく、例えば、外側端42eがベルト層50まで到達せず、ベルト層50よりもタイヤ径方向内側に位置、具体的には、最大幅位置Wmax(図1において不図示、図2参照)付近に位置するハイターンナップ構造でも構わない。
【0023】
カーカスコードは、一般的な四輪自動車向けのタイヤと同様に、ナイロンなどの有機繊維を用いて形成される。なお、本実施形態では、カーカス40は、複数枚のプライ(カーカスプライ)を用いて構成される。カーカス40の構成については、さらに後述する。
【0024】
ベルト層50は、トレッド部20のタイヤ径方向内側に設けられる。本実施形態では、ベルト層50は、スチールのコードが交錯する一対の交錯ベルトを含む。なお、ベルト層50は、交錯ベルトのタイヤ幅方向における端部などに設けられる補強ベルトを含んでもよい。
【0025】
ビード部60は、タイヤサイド部30に連なり、タイヤサイド部30のタイヤ径方向内側に位置する。ビード部60は、タイヤ周方向に延びる円環状であり、リムホイール(不図示)に係止される。
【0026】
ビード部60は、ビードコア61と、ビードフィラー62とを含む。
【0027】
ビードコア61は、複数の金属コードが撚られることによって形成される。例えば、ビードコア61は、スチールのコードによって形成できる。コード本数(芯数)は、特に限定されないが、本実施形態では、24芯程度である。
【0028】
ビードフィラー62は、ビードコア61のタイヤ径方向外側に設けられる。ビードフィラー62は、ゴムを用いて形成される他の部分よりも硬質なゴムを用いて形成される。ビードフィラー62は、カーカス40の本体部41と折り返し部42とによって形成された断面形状が楔形の空間を埋めるように設けられる。
【0029】
また、本実施形態では、セカンドビードフィラー65が設けられる。セカンドビードフィラー65は、カーカス40の折り返し部42のタイヤ幅方向外側に設けられる。セカンドビードフィラー65も、ビードフィラー62と同様の部材によって形成される。
【0030】
また、空気入りタイヤ10は、フリッパー70及びインサート80を備える。
【0031】
フリッパー70は、ビード部60の周囲を覆うように設けられる。具体的には、フリッパー70は、ビードコア61及びビードフィラー62を覆うようにタイヤ幅方向内側からビードコア61を介してタイヤ幅方向外側に折り返される。
【0032】
フリッパー70は、タイヤ径方向に対して傾斜して配置される複数のコードをゴムで被覆した構造である。当該コードとしては、アラミド繊維などの有機繊維を用い得る。
【0033】
フリッパー70は、ビード部60を補強する。本実施形態において、フリッパー70は、第1補強部材を構成する。
【0034】
インサート80は、ビードフィラー62のタイヤ幅方向外側に設けられる。具体的には、インサート80は、ビードフィラー62と、タイヤ幅方向外側に折り返されたフリッパー70との間に設けられる。
【0035】
インサート80も、タイヤ径方向に対して傾斜して配置される複数のコードをゴムで被覆した構造である。当該コードとしては、アラミド繊維などの有機繊維、またはスチールなどの金属を用い得る。
【0036】
インサート80は、タイヤサイド部30及びビード部60を補強する。本実施形態において、インサート80は、第2補強部材を構成する。
【0037】
フリッパー70及びインサート80は、サイド補強層などと呼ばれても良い。
【0038】
ビード部60のタイヤ幅方向外側面には、リムライン90が設けられる。リムライン90は、ビード部60がリムホイールに正しく装着されているかを確認するために、タイヤ周方向に沿って形成される凸部である。本実施形態では、リムライン90は、リムフランジ110のタイヤ径方向外側端よりも6mm程度、タイヤ径方向外側に設けられている。
【0039】
(2)タイヤサイド部30及びビード部60の構成
図2は、空気入りタイヤ10の一部断面図である。なお、図2では、識別を容易にするため、一部の部材のみ断面ハッチングが表示されている。
【0040】
図2に示すように、本実施形態では、カーカス40は、複数枚のプライ(カーカスプライ)によって構成される。具体的には、本体部41は、2枚のプライによって構成される。
また、折り返し部42の一部は、2枚のプライによって構成されている。
【0041】
より具体的には、本体部41は、プライ41a及びプライ41bによって構成される。また、折り返し部42は、プライ42a及びプライ42bによって構成される。プライ42bは、ビードフィラー62のタイヤ径方向における中央付近で終端する。
【0042】
フリッパー70は、内側部分71及び外側部分72を有する。内側部分71は、ビード部60のタイヤ幅方向内側に位置する部分である。外側部分72は、ビード部60のタイヤ幅方向外側に位置する部分である。
【0043】
また、タイヤサイド部30は、空気入りタイヤ10のタイヤ幅、つまり、タイヤ幅方向に沿った幅が最大となる最大幅位置Wmaxを有する。本実施形態では、最大幅位置Wmaxとは、リム組みされていない空気入りタイヤ10において、タイヤ幅方向に沿った幅が最大となる位置である。
【0044】
(3)タイヤサイド部30及びビード部60の詳細構成
図3は、空気入りタイヤ10の一部拡大断面図である。なお、図3でも、図2と同様に、識別を容易にするため、一部の部材のみ断面ハッチングが表示されている。
【0045】
上述したように、カーカス40の本体部41及び折り返し部42は、複数枚、具体的には、2枚のプライによって構成されているが、インサート80が設けられている少なくとも一部の領域において、カーカス40のタイヤ幅方向外側に設けられているサイドゴム31の厚さは、複数枚のプライによって構成される本体部41及び折り返し部42を合わせたプライ厚さと略同一である。
【0046】
具体的には、サイドゴム31の厚さD1は、プライ41a、プライ41bと、プライ42a、プライ42bを合わせたプライ厚さと略同一である。本実施形態では、プライ41a、プライ41b、プライ42a及びプライ42bのプライ厚さは、それぞれ1mm程度である。従って、厚さD1は、4mm程度である。「略同一」とは、厚さD1が、当該複数枚のプライの合計厚さの±10%内であることを意味する。
【0047】
厚さD1は、最大幅位置Wmaxにおけるサイドゴム31の厚さである。厚さD1、つまり、最大幅位置Wmaxにおけるサイドゴム31の厚さは、最大幅位置Wmaxにおけるタイヤサイド部30の断面幅(図中のD1+D1’)の40%以上である。なお、断面幅とは、図3のようなタイヤ断面視において、タイヤサイド部30のタイヤ幅方向外側面に直交する直線に沿ったタイヤサイド部30全体の厚さである。
【0048】
つまり、本実施形態では、最大幅位置Wmaxにおけるサイドゴム31の厚さは、カーカス40を構成する4枚のプライ(プライ41a、プライ41b、プライ42a及びプライ42b)の厚さと略同一である。
【0049】
また、リムライン90の位置におけるサイドゴム31の厚さD2も、プライ41a、プライ41bと、プライ42a、プライ42bを合わせたプライ厚さと略同一である。厚さD2は、リムライン90の位置におけるビード部60の断面幅(図中のD2+D2’)の30%以上である。
【0050】
なお、断面幅とは、図3のようなタイヤ断面視において、ビード部60のタイヤ幅方向外側面に直交する直線に沿ったビード部60全体の厚さである。また、図3に示すように、リムライン90は、複数設けられる場合があるが、このような場合には、最もタイヤ径方向外側に設けられるリムライン90を基準とする。なお、厚さD2には、ビード部60のタイヤ幅方向外側面から突出したリムライン90の部分は含まれない。
【0051】
本実施形態では、厚さD1及び厚さD2は、セカンドビードフィラー65の厚さを含まない。つまり、厚さD1(厚さD2)は、セカンドビードフィラー65のタイヤ幅方向外側面からカーカス40の折り返し部42(プライ42a)のタイヤ幅方向外側面までの距離である。
【0052】
また、タイヤ径方向における厚さD1及び厚さD2の位置は、フリッパー70(外側部分72)及びインサート80が設けられている。
【0053】
また、フリッパー70の外側部分72のタイヤ径方向における外側端72aは、フリッパー70の内側部分71のタイヤ径方向における外側端71aよりもタイヤ径方向外側に位置する。さらに、外側端72aは、空気入りタイヤ10のセクション高さSHの50%の位置よりもタイヤ径方向外側に位置する。
【0054】
セクション高さSHとは、リム組みされていない空気入りタイヤ10のビード部60のタイヤ径方向内側端からトレッド部20のタイヤ径方向外側端までの高さである。本実施形態では、外側端72aは、セクション高さSHの54%の位置に設けられる。なお、セクション高さSHの54%の位置とは、ビード部60のタイヤ径方向内側端を基準とする(以下同)。
【0055】
また、フリッパー70の内側部分71のタイヤ径方向における外側端71aは、セクション高さSHの20%の位置に設けられる。
【0056】
インサート80のタイヤ径方向における外側端80aは、セクション高さSHの50%の位置よりもタイヤ径方向内側に位置する。本実施形態では、外側端80aは、セクション高さSHの46%の位置に設けられる。
【0057】
セカンドビードフィラー65のタイヤ径方向における外側端65aは、最大幅位置Wmaxに接近しているが、最大幅位置Wmaxよりもタイヤ径方向内側に位置する。
【0058】
(4)作用・効果
上述した実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。具体的には、空気入りタイヤ10のビード部60には、フリッパー70(第1補強部材)が設けられ、ビードフィラー62とフリッパー70の外側部分72との間には、インサート80(第2補強部材)が設けられる。
【0059】
また、インサート80が設けられている少なくとも一部の領域において、サイドゴム31の厚さD1は、複数枚のプライによって構成されるカーカス40の本体部41及び折り返し部42を合わせたプライ厚さと略同一である。
【0060】
サイドゴム31の厚さは、従来の同種の空気入りタイヤと比較して厚くなっている。具体的には、最大幅位置Wmaxからリムライン90にかけて、ゴムの厚さ(厚さD1及び厚さD2)が厚くなっている。つまり、サイドゴム31の厚さは、タイヤ径方向においてフリッパー70及びインサート80が設けられている部分の少なくとも一部で厚くなっている。
【0061】
このようなサイドゴム31の厚さ増大(厚ゲージ化)、及びフリッパー70とインサート80との配置によって、ケース剛性を高くすることなく、空気入りタイヤ10の縦ばね性及び減衰性を向上し得る。
【0062】
より具体的には、サイドゴム31の厚ゲージ化によって縦ばね性が向上するが、これにより、タイヤサイド部30よりも相対的に変形し易いトレッド部20のせん断変形が促進される。また、カーカス40の形状(タイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面形状)が変形し難いため、コーナリング中における空気入りタイヤ10の軸力向上を図り得る。
【0063】
また、サイドゴム31の厚ゲージ化によってコーナリング中におけるタイヤの減衰性(タイヤ径方向のタイヤ(カーカス40)の撓み易さ)が適正化できるため、コーナリング中における車両の姿勢維持が容易になる。
【0064】
すなわち、空気入りタイヤ10によれば、コーナリング中における軸力向上と車両の姿勢維持の容易性とを高い次元で両立し得る。また、このようなコーナリング中における軸力向上と車両の姿勢維持の容易性とを高い次元で両立は、コーナリング中のタイヤ性能(グリップ力など)の限界領域における限界域操縦性の向上に貢献し得る。
【0065】
なお、ケース剛性とは、タイヤ骨格(ケース)を形成するカーカス40自体の剛性(stiffness)を意味する。
【0066】
本実施形態では、最大幅位置Wmaxにおけるサイドゴム31の厚さは、最大幅位置Wmaxにおけるタイヤサイド部30の断面幅の40%以上である。また、リムライン90の位置におけるサイドゴム31の厚さD2は、リムライン90の位置におけるビード部60の断面幅の30%以上である。このため、タイヤサイド部30からビード部60に亘ってのサイドゴム31の相対的な厚さが厚くなる。これにより、空気入りタイヤ10の縦ばね性及び減衰性をより適切に向上でき、コーナリング中における軸力向上と車両の姿勢維持の容易性とをさらに高い次元で両立し得る。
【0067】
本実施形態では、最大幅位置Wmaxにおけるサイドゴム31の厚さは、カーカス40を構成する4枚のプライ(プライ41a、プライ41b、プライ42a及びプライ42b)の厚さと略同一である。このため、カーカス40のケース剛性とのバランスを確保しつつ、空気入りタイヤ10の縦ばね性及び減衰性をより適切に向上できる。これにより、コーナリング中における軸力向上と車両の姿勢維持の容易性とをさらに高い次元で両立し得る。
【0068】
本実施形態では、フリッパー70の外側部分72のタイヤ径方向における外側端72aは、フリッパー70の内側部分71のタイヤ径方向における外側端71aよりもタイヤ径方向外側に位置する。
【0069】
また、インサート80のタイヤ径方向における外側端80aは、セクション高さSHの50%の位置よりもタイヤ径方向内側に位置する。さらに、セカンドビードフィラー65のタイヤ径方向における外側端65aは、最大幅位置Wmaxに接近しているが、最大幅位置Wmaxよりもタイヤ径方向内側に位置する。
【0070】
このため、タイヤ径方向におけるタイヤサイド部30の広い範囲に亘って、空気入りタイヤ10の縦ばね性及び減衰性の適切な向上に貢献する特性をタイヤサイド部30に付与し得る。これにより、コーナリング中における軸力向上と車両の姿勢維持の容易性とをさらに高い次元で両立を図り得る。
【0071】
(5)その他の実施形態
以上、実施例に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0072】
例えば、上述した実施形態では、セカンドビードフィラー65が設けられていたが、セカンドビードフィラー65は、必ずしも設けられていなくても構わない。この場合、サイドゴム31の厚さD1(厚さD2)は、タイヤサイド部30(ビード部60)のタイヤ幅方向外側面からカーカス40の折り返し部42(プライ42a)のタイヤ幅方向外側面までの距離である。
【0073】
上述した実施形態では、インサート80のタイヤ径方向における外側端80aは、セクション高さSHの50%の位置よりもタイヤ径方向内側に位置し、セカンドビードフィラー65のタイヤ径方向における外側端65aは、最大幅位置Wmaxに接近しつつ、最大幅位置Wmaxよりもタイヤ径方向内側に位置していたが、このような位置関係も必須ではない。
【0074】
また、上述した実施形態では、フリッパー70の外側部分72のタイヤ径方向における外側端72aは、フリッパー70の内側部分71のタイヤ径方向における外側端71aよりもタイヤ径方向外側に位置していたが、このような位置関係も必須ではない。
【0075】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0076】
10 空気入りタイヤ
20 トレッド部
30 タイヤサイド部
31 サイドゴム
40 カーカス
41 本体部
41a プライ
41b プライ
42 折り返し部
42a プライ
42b プライ
42e 外側端
50 ベルト層
60 ビード部
61 ビードコア
62 ビードフィラー
65 セカンドビードフィラー
65a 外側端
70 フリッパー
71 内側部分
71a 外側端
72 外側部分
72a 外側端
80 インサート
80a 外側端
90 リムライン
図1
図2
図3