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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】医療用診療装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 15/14 20060101AFI20220804BHJP
   A61C 19/00 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
A61G15/14
A61C19/00 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019161341
(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公開番号】P2021037155
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000138185
【氏名又は名称】株式会社モリタ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】古田 美一
(72)【発明者】
【氏名】木下 和也
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-196240(JP,A)
【文献】特開2000-296157(JP,A)
【文献】特開平4-231043(JP,A)
【文献】特開2004-159998(JP,A)
【文献】特開2006-425(JP,A)
【文献】特開2006-122127(JP,A)
【文献】特開2013-190766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 15/14
A61C 19/00
A61G 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
術者が患者に歯科診療を行う際に使用される医療用診療装置であって、
前記歯科診療に関わる物品を載置するためのトレーテーブルを含み、前記術者が前記歯科診療に関わる作業を行うために前記術者の側方近傍に配置される術者用作業部と、
前記トレーテーブルに取り付けられ、前記術者の身体の一部から識別用情報を取得するセンサと、
前記センサが取得した前記識別用情報に基づいて前記術者を識別する術者識別部と、を備え
前記トレーテーブルは、前記術者によって操作される操作面を含む操作部を有し、
前記センサは、前記トレーテーブルの前記操作面上に取り付けられるか、又は、前記トレーテーブルの前記操作部内に内蔵される、医療用診療装置。
【請求項2】
記術者用作業部は、少なくとも1つの歯科用インスツルメントを保持するインスツルメントホルダを有する、請求項1に記載の医療用診療装置。
【請求項3】
前記操作面は、水平方向に対して斜め上方に傾斜して設けられている、請求項1又は2に記載の医療用診療装置。
【請求項4】
前記術者用作業部は、前記歯科診療に関する情報または前記術者に関する情報を表示するディスプレイを有する、請求項1~のいずれか一項に記載の医療用診療装置。
【請求項5】
前記患者を支持する診療台を備え、
前記トレーテーブルは、前記診療台の周囲における所定の範囲を移動自在に構成され、
前記センサは、前記トレーテーブルを基準として斜め上方に向けられた視野を有する顔認証用カメラ、または虹彩認証用カメラ、である、請求項1~のいずれか一項に記載の医療用診療装置。
【請求項6】
前記トレーテーブルは、前記操作部の一部をなすメンブレンスイッチを有し、
前記顔認証用カメラ、または前記虹彩認証用カメラは入光面を有し、
前記入光面および前記メンブレンスイッチが面一に配置される、請求項に記載の医療用診療装置。
【請求項7】
前記センサは、広角レンズを含む顔認証用カメラである、請求項に記載の医療用診療装置。
【請求項8】
前記顔認証用カメラ、または前記虹彩認証用カメラは、前記視野に、術者用椅子に着座した前記術者の頭部が含まれるように設置されている、請求項のいずれか一項に記載の医療用診療装置。
【請求項9】
前記センサは、そのセンサの入光面が前記トレーテーブルの表面に露出するように設けられた指紋認証センサ、静脈認証センサ、指紋認証センサ用カメラまたは静脈認証センサ用カメラである、請求項1~のいずれか一項に記載の医療用診療装置。
【請求項10】
前記トレーテーブルは、前記操作部の一部をなすメンブレンスイッチを有し、
前記センサの前記入光面および前記メンブレンスイッチが面一に配置される、請求項に記載の医療用診療装置。
【請求項11】
前記患者を支持する診療台と、
前記術者識別部によって識別された前記術者に応じて前記診療台を駆動制御する駆動制御部と、を備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の医療用診療装置。
【請求項12】
なくとも1つの歯科用インスツルメントと、
前記術者識別部によって識別された前記術者に応じて前記歯科用インスツルメントを駆動制御する駆動制御部と、を備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の医療用診療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用診療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されるように、術者または患者を識別するためのカメラを備えた歯科診療システムが知られている。特許文献1に記載されたシステムでは、カメラによって得られた術者の顔画像と、記録された術者画像情報の顔画像とが比較され、パターンマッチングによって術者が識別される。また、カメラによって得られた患者の顔画像と、記録された患者画像情報の顔画像とが比較され、パターンマッチングによって患者が識別される。患者または術者の位置が治療ポジションエリアの周辺であると判別されたときに患者または術者の識別が行われ、歯科診療ユニットの各部が最適なポジションに自動配置される。
【0003】
特許文献1に記載されたシステムでは、第1のカメラ、第2のカメラ、および第3のカメラが設けられる。第1のカメラは、診療エリアの天井または支柱に設けられ、診療エリアを水平視する。第2のカメラは、無影灯などの支持ポールに設けられ、診療エリアを正面視する。第3のカメラは、壁面または歯科診療ユニットの側面を水平に視認できる位置に設けられる。患者の顔画像または術者の顔画像は、第2のカメラによって認識される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4653822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたシステムでは、第2のカメラは、無影灯などの支持ポールに設けられている。無影灯の支持ポールにカメラを設ける場合、支持ポールと術者との間には診療台に横たわる患者が居る為にカメラと術者との距離が離れ過ぎたり患者を術者と間違えて識別したりという支障がある。
【0006】
本発明は、カメラを術者の直ぐ近くに配置でき、それによって、術者を容易に識別することができる医療用診療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、術者が患者に診療を行う際に使用される医療用診療装置であって、術者が診療に関わる作業を行うために術者の側方近傍に配置される術者用作業部と、術者用作業部に取り付けられ、術者の身体の一部から識別用情報を取得するセンサと、センサが取得した識別用情報に基づいて術者を識別する術者識別部と、を備える。
【0008】
この医療用診療装置によれば、診療が行われる際、術者は、術者用作業部を用いて診療に関わる作業を行う。本明細書において、術者用作業部とは、術者が診療に関する作業(診療器具を置く、又は診療台に係る操作を行う等といった作業)を行うための部分である。術者用作業部は、術者の側方近傍に配置される。すなわち、術者は、術者用作業部に近寄ることになる。場合によっては、術者は、術者用作業部に触れることもある。術者用作業部には、術者の身体の一部から識別用情報を取得するセンサが取り付けられているので、術者の直ぐ近くに配置された(又は術者によって触れられた)センサは、術者から識別用情報を取得することができる。そして、術者識別部が、識別用情報に基づいて術者を識別する。このように、術者を直ぐ近くで識別するため、診療の際の自然な行動または作業の間に、術者が確実に識別される。したがって、術者を容易に識別することができる。
【0009】
術者用作業部は、術者によって操作される操作部を有してもよい。この場合、術者が診療に必要な何らかの操作を行うときに、術者が自動的に識別される。よって、確実かつ自然に、術者を識別することができる。
【0010】
術者用作業部は、診療に関わる物品を載置するためのテーブル部を有してもよい。この場合、術者が、診療に必要な何らかの物をテーブル部上に置くとき、またはその物をテーブル部上から取るときに、術者が自動的に識別される。よって、確実かつ自然に、術者を識別することができる。
【0011】
術者によって行われる診療は歯科診療であり、術者用作業部は、少なくとも1つの歯科用インスツルメントを保持するインスツルメントホルダを有してもよい。この場合、歯科診療を行う術者が、インスツルメントホルダから歯科用インスツルメントを取り出すとき、またはインスツルメントホルダに歯科用インスツルメントを保持させるときに、術者が自動的に識別される。よって、確実かつ自然に、術者を識別することができる。
【0012】
術者用作業部は、術者によって操作される操作面を含む操作部を有し、センサは、操作面上に取り付けられるか、又は、操作部内に内蔵されてもよい。この場合、術者が診療に必要な何らかの操作を行うときに、より確実に、センサ部によって識別用情報が取得される。
【0013】
操作面は、水平方向に対して鋭角をなすように傾斜して設けられてもよい。術者用作業部は、診療を行う術者の手の付近に設置されることが多い。言い換えれば、術者用作業部は、診療を行う術者の頭部の斜め下方に設置されることが多い。操作面が水平方向に対して鋭角をなすように傾斜していると、術者は操作面にアクセスしやすい。さらに、センサを術者の方に向けやすく、センサは、術者の身体の一部から識別用情報を取得しやすい。
【0014】
術者用作業部は、診療に関する情報または術者に関する情報を表示するディスプレイを有してもよい。術者は、診療を行う際、ディスプレイを視認することが多い。この構成によれば、術者がディスプレイを視認したときに、術者が自動的に識別される。よって、確実かつ自然に、術者を識別することができる。
【0015】
歯科診療装置は患者を支持する診療台を備え、術者用作業部は、診療台の周囲における所定の範囲を移動自在に構成され、センサは、術者用作業部を基準として斜め上方に向けられた視野を有する顔認証用カメラまたは虹彩認証用カメラであってもよい。この場合、術者は、術者用作業部を身体の近くに引き寄せる。そうすると、顔認証用カメラまたは虹彩認証用カメラの視野に、術者の頭部(顔、目等)が入る可能性が高くなる。これにより、顔画像または虹彩画像といった識別用情報を取得することができる。よって、診療台と移動自在な術者用作業部とを備えた医療用診療装置において、術者を確実かつ自然に識別することができる。
【0016】
術者用作業部は、術者によって操作される操作部の一部をなすメンブレンスイッチを有し、顔認証用カメラまたは虹彩認証用カメラは入光面を有し、入光面およびメンブレンスイッチが面一に配置されてもよい。この場合、顔認証用カメラまたは虹彩認証用カメラが目立たず、術者は無意識のうちに識別用情報を取得され、識別される。よって、術者は診療に専念でき、装置の使用感に優れる。また、入光面およびメンブレンスイッチの上に、フィルム等のシート状体を平面状に設置することで、操作部の表面(操作面)の清掃等のメンテナンスが容易となる。
【0017】
センサは、広角レンズを含む顔認証用カメラであってもよい。この場合、顔認証用カメラの視野に、術者の頭部(顔など)が確実に入る。
【0018】
顔認証用カメラまたは虹彩認証用カメラは、その視野に、術者用椅子に着座した術者の頭部が含まれるように設置されていてもよい。この場合、術者用椅子に着座した術者の頭部(顔、目等)から、識別用情報を取得することができる。
【0019】
センサは、そのセンサの入光面が術者用作業部の表面に露出するように設けられた指紋認証センサ、静脈認証センサ、指紋認証センサ用カメラまたは静脈認証センサ用カメラであってもよい。この場合、術者が、術者用作業部の表面に露出するセンサ面に触れることで、指紋または静脈といった識別用情報を取得することができる。
【0020】
術者用作業部は、術者によって操作される操作部の一部をなすメンブレンスイッチを有し、センサの入光面およびメンブレンスイッチが面一に配置されてもよい。この場合、指紋認証センサまたは静脈認証センサが目立たず、術者は無意識のうちに識別用情報を取得され、識別される。よって、術者は診療に専念でき、装置の使用感に優れる。また、センサ面およびメンブレンスイッチの上に、フィルム等のシート状体を平面状に設置することで、操作部の表面(操作面)の清掃等のメンテナンスが容易となる。
【0021】
医療用診療装置は、患者を支持する診療台と、術者識別部によって識別された術者に応じて診療台を駆動制御する駆動制御部と、を備えてもよい。この場合、駆動制御部によって、術者に応じて診療台が駆動制御される。したがって、術者は、診療台上の患者に対して、診療を行いやすい。術者が自動的に識別されているので、術者に応じて、診療台に関する好みの設定等が実現される。
【0022】
医療用診療装置は、術者によって行われる診療は歯科診療であり、少なくとも1つの歯科用インスツルメントと、術者識別部によって識別された術者に応じて歯科用インスツルメントを駆動制御する駆動制御部と、を備えてもよい。この場合、駆動制御部によって、術者に応じて歯科用インスツルメントが駆動制御される。したがって、術者は、患者に対して、歯科用インスツルメントを用いた歯科診療を行いやすい。術者が自動的に識別されているので、術者に応じて、歯科用インスツルメントに関する好みの設定等が実現される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、確実かつ自然に術者を容易に識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る医療用診療装置を示す斜視図である。
図2図1の医療用診療装置を示す平面図である。
図3図1の医療用診療装置の概略構成を示すブロック図である。
図4】術者用作業部の一例としての操作テーブルを示す斜視図である。
図5】操作部を示す図である。
図6図6(a)は図5のVIA-VIA線に沿って切断した断面図、図6(b)は図6(a)の一部拡大図である。
図7】操作部の操作面が水平方向に対してなす角度を示す断面図である。
図8】制御部における術者識別に関する処理フローの一例を示す図である。
図9図9(a)は着座する術者と操作テーブルの位置の一例を示す平面図、図9(b)は着座する術者と操作テーブルの位置の別の例を示す平面図である。
図10】術者に対する操作テーブルの位置関係を側方から見て示す図である。
図11】本発明の他の実施形態に係る医療用診療装置を示す斜視図である。
図12】本発明の更に他の実施形態に係る医療用診療装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0026】
図1および図2を参照して、本実施形態に係る歯科診療装置(医療用診療装置)1について説明する。歯科診療装置1は、術者A(図9(a),(b)参照)が、患者(図示せず)に対して歯科診療を行う際に使用される装置である。歯科診療装置1は、患者を支持する診療台2と、診療台2の側方に設けられ患者が口をゆすぐためのスピットン3と、診療台2の上方に配置されて患者の口腔を照らす無影灯4と、診療台2等を駆動させるために術者Aによって操作されるフットペダル8と、を備える。なお、歯科診療とは、歯科に関する診察および治療を包含する概念である。
【0027】
診療台2は、ベース部9上に設置されている。診療台2は、患者が着座する座面シート2aと、座面シート2aに対して回動自在に構成された背もたれ2bと、背もたれ2bの上端部に連結されたヘッドレスト2cとを有する。ヘッドレスト2cは、背もたれ2bに対して回動自在である。背もたれ2bおよびヘッドレスト2cは、後述する油圧サーボ71および油圧モータ72(図3参照)によって移動させられ、所定の位置および角度で停止するように構成されている。スピットン3は、スピットン鉢およびコップ台を有する。スピットン3には、給水栓5等の機器が取り付けられている。無影灯4は、診療台2および給水栓5の側方に立設された支柱6と、支柱6に連結された複数のアーム部7とによって支持されている。無影灯4の側部を術者Aが把持して移動させることで、複数のアーム部7が自在に動き、無影灯4を所定の位置で停止させることができるようになっている。フットペダル8は、診療台2内の駆動機構に対して電気的に接続されている。
【0028】
歯科診療装置1は、術者Aが歯科診療を行うために、術者Aの側方近傍に配置されたトレーテーブル(術者用作業部)10を備える。トレーテーブル10は、診療台2の周囲における所定の範囲を移動自在に構成されている。トレーテーブル10は、たとえばベース部9に対して取付けられている。歯科診療装置1は、一例としてフロアマウント式の装置であるが、トレーテーブル10の取付け形態は、フロアマウント式に限定されない。
【0029】
トレーテーブル10は、ベース部9に水平移動可能に連結された第1アーム部12と、関節部14を介して第1アーム部12に垂直方向に移動可能に連結された第2アーム部13と、第2アーム部13に連結され水平に平衡を保って保持されたテーブル部11とを有する。テーブル部11の側部に取り付けられたハンドル16を術者Aが把持してテーブル部11を移動させ、第1アーム部12および第2アーム部13等が自在に動くことで、テーブル部11を所定の位置で停止させることができるようになっている。テーブル部11の可動範囲は、第1アーム部12および第2アーム部13のそれぞれの長さと回動範囲等によって決まる。テーブル部11の可動範囲は、術者Aの可動範囲(たとえば図9(a),(b)参照)に十分に追随するように設定されている。テーブル部11は、術者Aが歯科診療に関わる物品を載置するために使用される。テーブル部11は、水平な姿勢を維持する載置面11aを含む。
【0030】
図2および図4に示されるように、トレーテーブル10は、テーブル部11の筐体と一体的に設けられた操作部20と、操作部20の下方に取り付けられたインスツルメント部30とを有する。操作部20は、術者Aによって操作される部分である。操作部20の操作により、例えば、診療台2の昇降、背板の傾動及びこれらの2つの制御を組み合わせて記憶させた位置や姿勢を呼び出す診療台2の位置制御、又は無影灯の制御等を行える。本実施形態の操作部20は、術者Aによって操作される操作パネル21を含むが、この操作パネル21以外にも、たとえば歯科診療に関する情報を表示するディスプレイ(表示部)22を含む。歯科診療に関する情報は、後述する歯科用インスツルメント32における水および空気の設定流量に関する情報を含む。
【0031】
操作部20は、1つの平面からなり操作部20の表面を構成する操作面20aを有する。この操作面20aは、操作パネル21を含む。ディスプレイ22は、操作面20aに沿って設けられている。ディスプレイ22の表示面(表面)は、操作パネル21に隣接しており、操作パネル21と面一である。なお、トレーテーブル10では、操作部20の側方にハンドル16が設けられているが、ハンドル16の形態(取付け位置等)はこれに限定されない。ハンドル16が省略されてもよい。
【0032】
図4に示されるように、インスツルメント部30は、操作部20の下面に取り付けられている。インスツルメント部30は、複数の歯科用インスツルメント32と、歯科用インスツルメント32を保持する複数のインスツルメントホルダ31とを有する。より詳細には、インスツルメント部30は、1本のエアタービンハンドピース32Aと、1本のマイクロモータハンドピース32Bと、1本のスケーラハンドピース32Cと、1本のスリーウェイシリンジ32Dとを有する。各歯科用インスツルメント32の未使用時において、エアタービンハンドピース32Aは第1ホルダ31Aに保持され、マイクロモータハンドピース32Bは第2ホルダ31Bに保持され、スケーラハンドピース32Cは第3ホルダ31Cに保持され、スリーウェイシリンジ32Dは第4ホルダ31Dに保持される。本明細書において、4種類の歯科用インスツルメントを総称して歯科用インスツルメント32と呼ぶことがある。また、4つのホルダを総称してインスツルメントホルダ31と呼ぶことがある。なお、歯科用インスツルメント32の本数およびインスツルメントホルダ31の個数は、上記の例に限られない。インスツルメント部30は、1本のみの歯科用インスツルメント32および1つのみのインスツルメントホルダ31を有してもよいし、これらの組が2つ、3つ又は5つ以上備えられてもよい。
【0033】
複数の歯科用インスツルメント32とテーブル部11とは、歯科用インスツルメント32と同数のチューブによって接続されている。これらのチューブ内には、水の配管、空気の配管、および電源供給または信号のやり取りに関わる配線が収納されている。なお、トレーテーブル10に設けられた1つ又は複数の歯科用インスツルメント32は、チューブ式に限られず、その他の公知の形態をもって、テーブル部11に接続されていてもよい。
【0034】
各インスツルメントホルダ31には、各歯科用インスツルメント32が取り出されたことを検出する検出センサ33が設けられている。図4に示す例では、第1ホルダ31Aに設けられた検出センサ33のみが示されているが、その他の第2ホルダ31B、第3ホルダ31C、および第4ホルダ31Dにも、同様の検出センサ33が設けられている。これらの図示は省略されている。各検出センサ33は、たとえば、マイクロスイッチ又はフォトセンサによって、歯科用インスツルメント32の取出しを検出できるように構成されている。
【0035】
各歯科用インスツルメント32は、術者Aによって使用されて、所定の設定流量で水(流体)を噴射するように構成されている。各歯科用インスツルメント32には、空気(エア)も供給される場合がある。
【0036】
複数の歯科用インスツルメント32に水を供給するための元の流路(上流側)には、比例制御弁62(図3参照)が設けられている。この元の流路から分岐した複数の流路であって、複数の歯科用インスツルメント32に接続された複数の水の流路には、それぞれ注水電磁弁61(図3参照)が設けられている。比例制御弁62は、供給される電流値を変えることによって、対応する歯科用インスツルメント32における注水量を調整(制御)可能である。注水電磁弁61は、水のON/OFF制御を行う。注水電磁弁61がONの場合にのみ、水が供給される。
【0037】
複数の歯科用インスツルメント32に空気を供給するための元の流路(上流側)には、比例制御弁が設けられてもよいが、空気管路には比例制御弁が設けられなくてもよい。この元の流路から分岐した複数の流路であって、複数の歯科用インスツルメント32に接続された複数の水の流路には、それぞれ注水電磁弁が設けられている。
【0038】
図3に示されるように、歯科診療装置1は、油圧サーボ71と、油圧モータ72と、オペライトLED73とを備える。油圧サーボ71は、座面シート2aの昇降や背もたれ2bの傾動を行う油圧管路を流れる油量を調整する。これにより、油圧サーボ71は、診療台2における各可動部の動作スピードの制御を行う。油圧モータ72は、上記の油圧管路に油を流すための動力源である。一方、オペライトLED73は、無影灯4に内蔵されている。オペライトLED73は、術者Aが歯科診療を行いやすいように、患者の口腔内を照らす。供給される電流値によって光量の調整が可能になっている。
【0039】
図5および図6に戻り、操作部20の機能および構造について説明する。図5に示されるように、操作パネル21には、診療台2の操作等に係る各種のスイッチ(記号)が設けられている。ディスプレイ22には、歯科診療に関する情報に対応する各種の記号が表示される。操作パネル21およびディスプレイ22の詳細な構成については、何ら限定されるものではないが、たとえば特開2018-149382号公報に記載されたのと同様の構成が適用されてもよい。
【0040】
歯科診療装置1では、術者Aの身体の一部から、術者を識別するための識別用情報を取得するカメラ(センサ)26が設けられている。カメラ26は、たとえば、広角レンズを含む顔認証用カメラであり、生体認証センサの一種である。カメラ26として、公知の顔認証技術に用いられる顔認証カメラが適用され得る。光学器械であるカメラ26は、撮影によって取得したデータを制御部50の画像処理部51に送付する。本実施形態では、カメラ26は、トレーテーブル10の操作部20に取り付けられている。より詳細には、カメラ26は、操作部20内に内蔵されている。カメラ26は、トレーテーブル10のいずれかの箇所に取り付けられていればよい。カメラ26が操作部20内に内蔵されていることで、後述する種々の利点が得られる。
【0041】
図5に示されるように、カメラ26は、例えば操作面20aを正面から見て右側の部分に取り付けられている。カメラ26は、操作パネル21およびディスプレイ22との干渉を避けた位置に設けられる。カメラ26の配置は、この例に限られない。カメラ26は、操作パネル21およびディスプレイ22の表示面(表面)の両方に隣接している。
【0042】
図6(a)および図6(b)を参照して、操作部20の構造について詳細に説明する。操作部20の筐体20b内には、カメラ26を含むカメラモジュール28と、メンブレンスイッチ25と、液晶タッチパネル27と、制御基板29とが内蔵されている。板状のメンブレンスイッチ25は、操作パネル21とディスプレイ22の両方の領域にわたって設けられている。メンブレンスイッチ25の裏面側は、操作パネル押さえ23によって支持されている。液晶タッチパネル27の裏面側は、液晶押さえ27aによって支持されている。制御基板29は、液晶押さえ27aおよびカメラモジュール28の裏面側に配置されている。液晶タッチパネル27が配置された領域において、液晶押さえ27aと制御基板29との間には1つ又は複数のスペーサ29bが取り付けられている。またカメラモジュール28が配置された領域において、操作パネル押さえ23と制御基板29との間には、1つ又は複数のスペーサ29cが取り付けられている。制御基板29の裏面側には、複数の電子部品29aが実装されている。
【0043】
操作パネル押さえ23のうち、メンブレンスイッチ25が設けられた領域の外部に、カメラ用の円形の開口が形成されている。この開口に、カメラモジュール28のカメラ26が嵌め込まれている。メンブレンスイッチ25の表面と、メンブレンスイッチ25が設けられた領域の外部における操作パネル押さえ23の表面となる表面シート24の塗装部24aと、レンズ面26aの表面となるメンブレンスイッチ25の表面シート24の透明部24bと、液晶タッチパネル27の表面シート24の透明部24bは、面一に配置されている。これら全体を覆うようにして、たとえばハードコートポリエステル(硬質性透光部材)からなる表面シート24が設置されている。表面シート24は、カメラ26の表面および液晶タッチパネル27に対面する透明部24b(入光面)、メンブレンスイッチ25に対面する塗装部24aを有して、それらの表面領域にわたって一体で平面状に形成されている。なお、液晶タッチパネル27の表示は、表面シート24の表面の透明部24bおよび透明なメンブレンスイッチ25の一部を介して視認できる。
【0044】
図6(b)に示されるように、カメラ26のレンズ面26aおよび操作部20の一部をなすメンブレンスイッチ25の表面には、1枚の表面シート24が全面を覆って面一に形成されている。したがって、それらを覆う表面シート24は、操作面20aの全面にわたって一体で平坦な形状を有し、しかも1枚の表面シート24が全面を覆って面一に形成されているので、切れ目等はなく、段差も存在しない。このような構成になっているので、表面シート24の表面を清掃する際にも段差が障害となることなく容易に清掃できる。
【0045】
なお、メンブレンスイッチ25として、平面状の押圧スイッチ、タッチスイッチ、タッチパネル、タッチセンサであってもよい。また、上記実施例では、ディスプレイの例として液晶タッチパネル27を挙げて説明したが、ディスプレイとしては単に表示機能のみを有するフラットパネルディスプレイ(FPD)でもよい。フラットパネルディスプレイ(FPD)としては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、発光ダイオード(LED)が並んで平板状にディスプレイを構成しているものであってもよい。
【0046】
図7に示されるように、操作面20aは、水平方向に対して鋭角である角度θをなすように、傾斜して設けられている。角度θは、たとえば、20°以上70°以下の範囲内の角度であってよい。角度θは、テーブル部11の高さ及び移動範囲と、術者用椅子Cの高さ及び位置等に基づいて、術者Aの頭部Aaが視野Bに含まれやすいように設定され得る。これにより、カメラ26は、トレーテーブル10のテーブル部11を基準として斜め上方に向けられた視野B(図9および図10参照)を有する。さらには、カメラ26は、その視野Bに、術者用椅子Cに着座した術者Aの頭部Aaが含まれるように設置されている。上記した角度θ、カメラ26の位置および高さ、視野角等が考慮されて、カメラ26の視野Bに、術者用椅子Cに着座した術者Aの頭部Aaが含まれる。
【0047】
なお、図6図7においては、表面シート24が1枚のシートで構成され、カメラ26、メンブレンスイッチ25、液晶タッチパネル27の全ての表面を覆っているが、別々の表面シートで覆っていてもよいし、また、カメラ26のレンズ面26aは、表面シート24で覆われていなくて表面に露出していてもよい。これらの表面が面一になるように構成しておればよく、面一な表面に構成してあれば、払拭等スムーズな清掃を支障なく行える。従って、面一となるカメラ入光面とは、レンズ面26aの場合もあれば表面シート24の透明部24bである場合もある。面一となるメンブレンスイッチ25についてもメンブレンスイッチ25のみが表面に露出している場合もあれば、表面シート24がメンブレンスイッチ25の表面を覆っている場合も含まれる。さらに、面一となるディスプレイ22として液晶タッチパネル27のようなフラットパネルディスプレイのみが表面に露出している場合もあれば、表面が表面シートで覆われている場合もある。本明細書における「面一」とは、「各部の最外層が面一」であることを意味し、これらを含む概念である。
【0048】
図3に戻り、歯科診療装置1は、カメラ26によって取得された識別用情報に基づいて所定の処理を実行し、インスツルメント部30の歯科用インスツルメント32および診療台2を駆動制御する制御部50と、術者Aの顔画像情報を含む術者情報56および術者Aに対応する水および空気の設定流量を記憶する治療設定情報57を含む記憶部55とを備えている。制御部50および記憶部55は、CPU(プロセッサ)、ROM、RAM、メモリ、ハードディスク等を備えたコンピュータとして構成されている。制御部50は、カメラ26が取得した識別用情報に基づいて画像処理を実行する画像処理部51と、画像処理部51によって生成された顔画像情報と術者情報56に記憶された顔画像情報とを比較することにより、たとえばパターンマッチング等を行って術者Aを識別する術者識別部52と、術者識別部52によって識別された術者Aに応じて診療台2および/または歯科用インスツルメント32を制御する駆動制御部53と、を有する。
【0049】
画像処理部51は、撮影によって取得した画像情報(画像データ)から人データを抽出する。画像処理部51は、人データ、より詳細には顔画像情報を術者識別部52へ送付する。術者識別部52は、画像処理部51より送付された人データと、術者情報56に記憶された術者情報とを比較照合することで、術者Aの識別を行う。駆動制御部53は、識別された術者に係る情報を用いて、治療設定情報57より、治療設定情報を読み出す。駆動制御部53は、読み出した治療設定情報を用いて、アクチュエータを制御する。
【0050】
駆動制御部53は、より詳細には、術者識別部52によって識別された術者Aに応じて比例制御弁62を制御することで、術者Aに対応する設定流量で歯科用インスツルメント32から水および空気を噴射させる。
【0051】
術者情報56は、登録された複数の術者A(歯科医)の人データで構成されるライブラリである。また治療設定情報57は、たとえば、注水量設定、チェアポジション設定、チェア動作スピード設定、モータ回転数設定、スケーラパワー設定、オペライト光量設定等を含む。注水量設定は、術者A毎に、および、歯科用インスツルメント32毎に設定された注水量の設定である。チェアポジション設定は、術者A毎に設定されている診療台2の姿勢(高さや傾き)のオート位置設定である。チェア動作スピード設定は、術者A毎に設定されている診療台2の動作時のスピードの設定である。モータ回転数設定は、術者A毎に設定されているマイクロモータハンドピース32Bの回転数の設定である。スケーラパワー設定は、術者A毎に設定されているスケーラハンドピース32Cの駆動パワーの設定である。オペライト光量設定は、術者A毎に設定された、術者Aが診療しやすいような無影灯4の明るさの設定である。
【0052】
続いて、図8を参照して、制御部50における術者識別に関する処理フローについて説明する。まず、カメラ26が撮影を実行する(ステップS01)。カメラ26は、歯科診療装置1の電源がオンされたことをトリガとして、一定時間ごとに撮影を行ってもよいが、たとえば術者Aが腰かける術者用椅子(図10の符号C参照)への着座を検出する検出信号のトリガとしてもよいし、術者Aによるフットペダル8または操作パネル21への操作が行われたことをトリガとして、一定時間ごとに撮影を行ってもよい。次に、画像処理部51が、画像処理を実行し(ステップS02)、生成された画像データに基づいて、術者識別部52が術者Aを識別する。術者識別部52が術者Aを識別した場合であって(ステップS03:YES)、術者情報56に当該術者Aの登録情報があった場合は(ステップS04:YES)、駆動制御部53が、ディスプレイ22に術者Aの名前を表示させる(ステップS05)。
【0053】
このとき、ディスプレイ22には、術者Aに対し、ディスプレイ22の表示を確認することを促すメッセージ等が表示されてもよい。たとえば、駆動制御部53は、ディスプレイ22に、「術者名は正しいですか?」等のメッセージを表示させ、術者Aに対して「YES/NO」または「正しい/誤っている」等の入力を促す(ステップS06)。続いて、術者Aによって、術者名が正しいことを確認した旨の操作が行われる(ステップS07)。駆動制御部53は、ディスプレイ22に、術者Aに応じた治療設定情報を表示させる(ステップS08)。具体的には、水および/または空気の設定流量がディスプレイ22に表示される。
【0054】
このとき、ディスプレイ22には、術者Aに対し、ディスプレイ22の表示を確認することを促すメッセージ等が表示されてもよい。たとえば、駆動制御部53は、ディスプレイ22に、「設定流量は適切ですか?」等のメッセージを表示させ、術者Aに対して「YES/NO」または「適切/不適」等の入力を促す(ステップS09)。続いて、術者Aによって、設定流量が適切であることを確認した旨の操作が行われると(ステップS09;YES)、駆動制御部53は、術者Aに応じた設定流量(治療設定情報)を設定する(ステップS10)。一方、術者Aによって、設定流量が不適切である旨の操作が行われると(ステップS09;NO)、駆動制御部53は、術者Aに対し、ディスプレイ22を通じて設定流量(治療設定情報)の訂正を促す(ステップS11)。
【0055】
本実施形態の歯科診療装置1によれば、歯科診療が行われる際、術者は、トレーテーブル(術者用作業部)10のテーブル部11を用いて診療に関わる作業を行う。テーブル部11は、術者の側方近傍に配置される。すなわち、術者は、テーブル部11に近寄ることになる。テーブル部11の位置は、人間光学を考慮して、術者A(歯科医)の利き腕が自然にストレスなく延びる位置に配置される。テーブル部11には、術者の頭部Aaから識別用情報を取得するカメラ26が取り付けられているので、術者の直ぐ近くに配置されたカメラ26は、術者から識別用情報を取得することができる。たとえば、図9(a)に示される位置、いわゆる12時の位置に術者Aが着座している場合でも、図9(b)に示される位置、いわゆる9時の位置に術者Aが着座している場合でも、カメラ26の視野Bの中に術者Aの頭部Aaが入っている。そして、術者識別部が、識別用情報に基づいて術者を識別する。このように、術者を直ぐ近くで識別するため、診療の際の自然な行動または作業の間に、術者が確実に識別される。したがって、術者を容易に識別することができる。術者にとって、最適な診療スタイル実現される。
【0056】
術者用作業部は、術者Aによって操作される操作部20を有する。術者Aが診療に必要な何らかの操作を行うときに、術者Aが自動的に識別される。よって、確実かつ自然に、術者Aを識別することができる。
【0057】
術者用作業部は、診療に関わる物品を載置するためのテーブル部11を有する。術者Aが、診療に必要な何らかの物をテーブル部11上に置くとき、またはその物をテーブル部11上から取るときに、術者Aが自動的に識別される。よって、確実かつ自然に、術者Aを識別することができる。
【0058】
術者Aによって行われる診療は歯科診療であり、術者用作業部は、少なくとも1つの歯科用インスツルメント32を保持するインスツルメントホルダ31を有する。歯科診療を行う術者Aが、インスツルメントホルダ31から歯科用インスツルメント32を取り出すとき、またはインスツルメントホルダ31に歯科用インスツルメント32を保持させるときに、術者Aが自動的に識別される。よって、確実かつ自然に、術者Aを識別することができる。
【0059】
術者用作業部は、術者Aによって操作される操作面20aを含む操作部20を有し、センサは、操作面20a上に取り付けられるか、又は、操作部20内に内蔵される。この場合、術者Aが診療に必要な何らかの操作を行うときに、より確実に、センサによって識別用情報が取得される。
【0060】
操作面20aは、水平方向に対して鋭角をなすように傾斜して設けられる。術者用作業部は、診療を行う術者Aの手の付近に設置されることが多い。言い換えれば、術者用作業部は、診療を行う術者Aの頭部Aaの斜め下方に設置されることが多い。操作面20aが水平方向に対して鋭角をなすように傾斜していると、術者Aは操作面にアクセスしやすい。さらに、センサを術者Aの方に向けやすく、センサは、術者Aの身体の一部から識別用情報を取得しやすい。
【0061】
術者用作業部は、診療に関する情報または術者Aに関する情報を表示するディスプレイ22を有する。術者Aは、診療を行う際、ディスプレイ22を視認することが多い。この構成によれば、術者Aがディスプレイ22を視認したときに、術者Aが自動的に識別される。よって、確実かつ自然に、術者Aを識別することができる。
【0062】
歯科診療装置は患者を支持する診療台2を備え、術者用作業部は、診療台2の周囲における所定の範囲を移動自在に構成され、センサは、術者用作業部を基準として斜め上方に向けられた視野を有する顔認証用カメラである。術者Aは、術者用作業部を身体の近くに引き寄せる。そうすると、顔認証用カメラの視野に、術者Aの頭部(顔、目等)が入る可能性が高くなる。これにより、顔画像といった識別用情報を取得することができる。よって、診療台と移動自在な術者用作業部とを備えた医療用診療装置において、術者Aを確実に識別することができる。
【0063】
術者用作業部は、術者Aによって操作される操作部の一部をなすメンブレンスイッチ25を有し、顔認証用カメラは入光面(入光レンズ又は入光レンズの前に配置した表面シート)を有し、入光面およびメンブレンスイッチ25が面一に配置されている。顔認証用カメラが目立たず、術者Aは無意識のうちに識別用情報を取得され、識別される。よって、術者Aは診療に専念でき、装置の使用感に優れる。また、入光面およびメンブレンスイッチ25の上に、フィルム等のシート状体を平面状に設置することで、操作部の表面(操作面)の清掃等のメンテナンスが容易となる。
【0064】
センサは、広角レンズを含む顔認証用カメラである。顔認証用カメラの視野に、術者Aの頭部(顔など)が確実に入る。
【0065】
顔認証用カメラは、その視野Bに、術者用椅子Cに着座した術者Aの頭部Aaが含まれるように設置されている。術者用椅子Cに着座した術者Aの頭部(顔、目等)から、識別用情報を取得することができる。
【0066】
術者用作業部は、術者Aによって操作される操作部の一部をなすメンブレンスイッチ25を有し、センサ面、特にセンサの入光面およびメンブレンスイッチ25が面一に配置されている。指紋認証センサまたは静脈認証センサが目立たず、術者Aは無意識のうちに識別用情報を取得され、識別される。よって、術者Aは診療に専念でき、装置の使用感に優れる。また、センサ面およびメンブレンスイッチ25の上に、フィルム等のシート状体を平面状に設置することで、操作部の表面(操作面)の清掃等のメンテナンスが容易となる。更に、センサの入光面および操作パネル21(タッチパネル)に合わせてディスプレイ22が平面状に面一に配置されているので、ディスプレイ22の表面もあわせて清掃等のメンテナンスが容易となる。
【0067】
医療用診療装置は、患者を支持する診療台2と、術者識別部52によって識別された術者Aに応じて診療台2を駆動制御する駆動制御部53と、を備えている。駆動制御部53によって、術者Aに応じて診療台2が駆動制御される。したがって、術者Aは、診療台2上の患者に対して、診療を行いやすい。術者Aが自動的に識別されているので、診療台2に関する好みの設定等が実現される。
【0068】
医療用診療装置は、術者Aによって行われる診療は歯科診療であり、少なくとも1つの歯科用インスツルメント32と、術者識別部52によって識別された術者Aに応じて歯科用インスツルメント32を駆動制御する駆動制御部53と、を備えている。駆動制御部53によって、術者Aに応じて歯科用インスツルメント32が駆動制御される。したがって、術者Aは、患者に対して、歯科用インスツルメント32を用いた歯科診療を行いやすい。術者Aが自動的に識別されているので、煩わしさを感じることなく、歯科用インスツルメント32に関する好みの設定等が実現される。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。たとえば、センサは、虹彩認証用カメラであってもよい。センサは、そのセンサ面が術者用作業部の表面に露出するように設けられた指紋認証センサまたは静脈認証センサであってもよい。この場合、術者Aが、術者用作業部の表面に露出するセンサ面に触れることで、指紋または静脈といった識別用情報を取得することができる。センサとして、上述した各種のカメラまたはセンサを含め、あらゆる生体認証センサが適用され得る。指紋認証センサにおいては、顔認証用カメラ26と同様に指紋認証センサ用カメラの入光面(不図示)が操作部20の操作面20aに露出して構成されていてもよいし、表面シート24を介して備えられていてもよい。また、静脈認証用センサにおいては、操作部20に指を入れる指挿入部(不図示)を設けて指挿入部に設けた赤外光照射部(不図示)から指に赤外光を照射して操作部内部に設けた静脈認証センサ用カメラで指を透過した静脈像を検出する検出部(不図示)を備えるので、指を置くまたは挿入する箇所にこれらのカメラの入光面が設けられる。これらセンサの入光面はメンブレンスイッチと面一となって構成することができる。
【0070】
また、図11に示されるように、スピットン3に連結されて診療台2の上方に水平に延びる第1アーム部12A、第2アーム部13A、および第3アーム部15Aを備えて連結されたトレーテーブル10Aとされた所謂オーバーアーム式の歯科診療装置1Aに、本発明が適用されてもよい。トレーテーブル10Aには、たとえばインスツルメント部30Aが設けられてもよい。トレーテーブル10Aに、操作部および/または表示部が設けられてもよいし、操作部および表示部が設けられなくてもよい。あるいは、従者用操作テーブルが昇降自在な患者用椅子の上部側面から延びるアーム部に備わるチェアマウント式の歯科診療装置に、本発明が適用されてもよい。あるいは、図12に示されるように、トレーテーブル10Bが診療台2からは独立して配置されて、台車19の下部にキャスター19aが設けられた可動式すなわちモービル式の歯科診療装置1Bに、本発明が適用されてもよい。トレーテーブル10Bに、たとえばインスツルメント部30Bが設けられてもよい。トレーテーブル10Bに、操作部および/または表示部が設けられてもよいし、操作部および表示部が設けられなくてもよい。往診または訪問診療等に用いられるポータブルユニットに、本発明が適用されてもよい。その場合、操作面上または操作部内に、センサが取り付けられてもよい。
【0071】
表示部は、上記実施形態のような操作部20に一体化されたディスプレイ22である形態に限られない。表示部は、たとえば、操作部20から独立して設けられた液晶ディスプレイ等であってもよい。
【0072】
センサは、操作面上に取り付けられてもよい。センサが、テーブル部上に取り付けられてもよい。テーブル部に操作部が一体化されておらず、テーブル部のみが移動自在であってもよい。操作部またはテーブル部に、センサ用を取り付けるためのマウント(台)が設置されてもよい。その場合でも、センサ面が、水平方向に対して鋭角をなすように傾斜して設けられてもよい。
【0073】
本発明は、歯科診療装置に限られず、耳鼻咽喉科用診療装置や口腔外科用診療装置等の他の医療用診療装置に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…歯科診療装置(医療用診療装置)、2…診療台、10…トレーテーブル(術者用作業部)、11…テーブル部、20…操作部、20a…操作面、21…操作パネル、22…ディスプレイ(表示部)、24…表面シート、24b…透明部(入光面)、25…メンブレンスイッチ、26…カメラ(センサ)、26a…レンズ面(入光面)、28…カメラモジュール、31…インスツルメントホルダ、50…制御部、51…画像処理部、52…術者識別部、53…駆動制御部、55…記憶部、56…術者情報、57…治療設定情報、61…注水電磁弁、62…比例制御弁、A…術者、B…視野、C…術者用椅子。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
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図9
図10
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図12