(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】トンネル補助工法管理システム
(51)【国際特許分類】
E21D 9/04 20060101AFI20220804BHJP
【FI】
E21D9/04 F
E21D9/04 A
(21)【出願番号】P 2019207343
(22)【出願日】2019-11-15
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】坂根 一聡
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-025994(JP,A)
【文献】特開2011-027471(JP,A)
【文献】特開2018-003277(JP,A)
【文献】特開2005-213937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工中のトンネルの周辺地山に形成された複数の注入孔から前記周辺地山に注入材を注入する補助工法を管理する管理システムであって、
前記注入を行う注入機の操作パネルに設けられ、前記補助工法の種別の指定を受け付ける工法種別指定受付部と、
前記注入機に搭載され、前記工法種別指定受付部によって指定された工法種別情報及び前記注入材の注入情報を取得するプログラマブルロジックコントローラ(以下「PLC」)と、
前記PLCから前記工法種別情報及び前記注入情報を受け取り、作業帳票を作成する作成手段と、を備え、
前記作成手段が、前記工法種別情報に応じて前記作業帳票の書式を選定する書式選定部を含むことを特徴とするトンネル補助工法管理システム。
【請求項2】
前記工法種別指定受付部が、AGF工法の指定位置と、フォアポーリング工法の指定位置と、鏡ボルト工法の指定位置を含む複数の指定位置を有し、これら指定位置の1つを選択的に指定可能な工法種別指定ツマミを含むことを特徴とする請求項1に記載のトンネル補助工法管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工中のトンネルの周辺地山に注入材を注入するトンネル補助工法を管理するシステムに関し、特に注入作業状況を帳票化する管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
NATM(New Austrian Tunneling Method)トンネルなどの山岳トンネルの施工においては、補助工法として、掘削したトンネルの周辺地山に中空のロックボルトや鋼管を打ち込み、これらロックボルトや鋼管の内部空間を注入孔として、注入材を周辺地山に注入することで地山を改良している(特許文献1等参照)。前記補助工法は、AGF(All Ground Fasten)工法、フォアポーリング工法、鏡ボルト工法などの工法種別に細分される。
【0003】
施工現場の注入作業者は、注入機を操作して注入作業を行ないながら、注入孔ごとの注入量、注入圧などの注入情報を作業日誌に手書きで記録する。追って作業管理者が、その手書き情報を管理用パソコン(以下、適宜「PC」)に入力して管理する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業内容を手書きで記録し、それをPCに入力し直すのは手間がかかり、書き間違いや入力間違いも起こり得る。そこで、注入機のプログラマブルロジックコントローラで得られる注入ポンプの制御情報を利用して、作業帳票を自動作成可能にすれば効率的であると考えられる。一方、作業帳票の書式(フォーマット)は、分かり易さの観点からは、AGF工法、フォアポーリング工法、鏡ボルト工法などの工法種別、注入本数に合わせて個別に設定することが好ましい。しかし、現状の注入機には工法種別を判別する機能が付いていない。このため、作業管理者が、管理用PCに工法種別を入力する必要が生じ、煩雑である。注入作業者に不慣れなPC操作を委ねるのも難しい。
本発明は、かかる事情に鑑み、トンネル施工の補助工法における注入情報を自動的に帳票化するとともに、作業管理者が管理用PC等の作業帳票の作成手段に工法種別を入力しなくても、かつ注入作業者が管理用PC等の操作をしなくても、工法種別に適応した作業帳票を作成できる管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、施工中のトンネルの周辺地山に形成された複数の注入孔から前記周辺地山に注入材を注入する補助工法を管理する管理システムであって、
前記注入を行う注入機の操作パネルに設けられ、前記補助工法の種別の指定を受け付ける工法種別指定受付部と、
前記注入機に搭載され、前記工法種別指定受付部によって指定された工法種別情報及び前記注入材の注入情報を取得するプログラマブルロジックコントローラ(以下「PLC」)と、
前記PLCから前記工法種別情報及び前記注入情報を受け取り、作業帳票を作成する作成手段と、を備え、
前記作成手段が、前記工法種別情報に応じて前記作業帳票の書式を選定する書式選定部を含むことを特徴とする。
当該システムによれば、トンネル施工の補助工法における注入情報を自動的に帳票化することができ、効率的である。
【0007】
前記工法種別指定受付部が、AGF工法の指定位置と、フォアポーリング工法の指定位置と、鏡ボルト工法の指定位置を含む複数の指定位置を有し、これら指定位置の1つを選択的に指定可能な工法種別指定ツマミを含むことが好ましい。
実施する工法種別に対応する指定位置を選択することで、指定の工法種別に対応する作業帳票が自動作成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、トンネル施工の補助工法における注入情報を自動的に帳票化できるだけでなく、作業管理者などが管理用PC等の作業帳票の作成手段に工法種別を入力しなくても、工法種別に適応した作業帳票を作成できる。注入作業者は、注入機の操作パネルを操作すればよく、不慣れな管理用PC等の操作をする必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(a)は、AGF工法で施工中のトンネルを示し、同図(b)のIa-Ia線に沿う正面図である。
図1(b)は、同図(a)のIb-Ib線に沿う側面断面図である。
図1(c)は、フォアポーリング工法で施工中のトンネルを示し、同図(d)のIc-Ic線に沿う正面図である。
図1(d)は、同図(c)のId-Id線に沿う側面断面図である。
図1(e)は、鏡ボルト工法で施工中のトンネルを示し、同図(f)のIe-Ie線に沿う正面図である。
図1(f)は、同図(e)のIf-If線に沿う側面断面図である。
【
図2】
図2は、
図1(b)、(d)及び(f)に示されたトンネル補助工法管理システムのブロック図である。
【
図3】
図3(a)は、AGF工法用の作業帳票の一例を示す正面図である。
図3(b)は、フォアポーリング工法用の作業帳票の一例を示す正面図である。
図3(c)は、鏡ボルト工法用の作業帳票の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、施工中のトンネル1の周辺地山2を安定化させる補助工法の概要を工法種別ごとに図示したものである。同図(a)及び(b)はAGF工法、同図(c)及び(d)はFp(フォアポーリング)工法、同図(e)及び(f)は鏡ボルト工法である。
【0011】
<AGF工法>
図1(a)及び同図(b)に示すように、AGF工法においては、トンネル1の切羽1eの前方の地山2に複数の長尺の先受け鋼管3が斜めに打ち込まれる。複数の先受け鋼管3は、切羽1eと正対する方向から見て、切羽1eの外周に沿って放射状に配列されている。先受け鋼管3の全長は例えば9~22メートル程度である。
各先受け鋼管3の内部空間を注入孔3eとして、注入材4が地山2に注入される。注入材4としては、シリカレジンなどのA液及びB液を混合して発泡させるウレタン系発泡樹脂、又はセメント系注入材等が用いられている。
【0012】
注入は、注入作業者Aが注入機5を操作して行なわれる。注入機5には、1又は複数(
図1では6台)の注入ポンプ6が設けられている。
注入材4がウレタン系注入材である場合の注入ポンプ6は、2台で1組になっている。前記2台の注入ポンプのうち一方はA液用であり、他方はB液用である。管理上、各組の注入ポンプに機番が付され、2台1組ごとに「1号機」、「2号機」、「3号機」と称されている。
注入材4がセメント系注入材である場合の注入ポンプ6は、1台1組になっており、管理上1組ごとに「1号機」、「2号機」と称されている。
【0013】
注入材4がウレタン系注入材である場合、各注入孔3eには延び方向に3つ(複数)の注入領域R1,R2,R3が設定されている。注入領域ごとに対応する注入ポンプ6の機番が決められている。例えば、1号機は端末側注入領域R1用、2号機は中間注入領域R2用、3号機は先頭側注入領域R3用である。詳細な図示は省略するが、各注入ポンプ6からの注入管7が、対応する注入領域まで延びている。
なお、注入材4がセメント系注入材である場合、複数の注入領域に分けられておらず、注入孔3eの全域が1つの注入領域であるが、必ずしもこれに限らず、セメント系注入材の場合も複数の注入領域に分けられていてもよい。
施工管理上、注入孔3eには、例えば切羽1eと正対する方向から見て左端のものから順次1番、2番、3番…等のように孔番号が付されている。
【0014】
<Fp工法>
図1(c)及び同図(d)に示すように、Fp工法においては、AGFにおける長尺先受け鋼管3に代えて、例えば3~6メートル程度の中空のロックボルト3Bが用いられている。注入機5の1組(例えば1号機)の注入ポンプ6だけで注入が行われる。
なお、ロックボルト3Bと同程度の長さの鋼管を用いてもよい。
【0015】
<鏡ボルト工法>
図1(e)及び同図(f)に示すように、鏡ボルト工法においては、長尺先受け鋼管3と同程度の長さの長尺鏡ボルト用鋼管3Cが用いられている。複数の鋼管3Cが切羽1eから前方の地山2(周辺地山)にほぼ水平に打ち込まれる。AGF工法と同様に、1号機から3号機までの注入ポンプ6がそれぞれ対応する領域R1~R3に注入を行う。
なお、鏡ボルト工法において、長尺鏡ボルト用鋼管3Cに代えて、Fp工法用と同程度の長さの鏡ボルト用鋼管を用い、1組(例えば1号機)の注入ポンプ6だけで注入を行なってもよい。
なお、鏡ボルト工法においても、AGF工法と同様に、注入材4がセメント系注入材である場合は、複数の注入領域に分けられておらず、注入孔3eの全域が1つの注入領域であるが、必ずしもこれに限らず、セメント系注入材の場合も複数の注入領域に分けられていてもよい。
【0016】
<その他工法>
図示は省略するが、補助工法のその他工法としては、例えばロックボルトや鋼管をトンネル1の真横や真下方向などに打ち込んで注入材を注入する工法が挙げられる。
【0017】
<トンネル補助工法管理システム9>
図2に示すように、トンネル補助工法管理システム9は、注入機5の操作パネル10と、注入機5のPLC20と、管理用PC30(作成手段)によって構成されている。
【0018】
操作パネル10には、注入ポンプ6の運転開始ボタン11、運転停止ボタン12、注入流速設定ボリューム13、定量/増量ツマミ16などの注入ポンプ操作用ツマミに加えて、注入対象の注入孔3eの孔番号指定ツマミ14及び工法種別指定ツマミ15(工法種別指定受付部)が設けられている。
工法種別指定ツマミ15には、例えば4つの指定位置15a,15b,15c,15dが設定されている。工法種別指定ツマミ15を回して、複数の指定位置15a~15dの何れか1つを選択できる。詳しくは、工法種別指定ツマミ15は、AGF工法指定位置15aと、Fp工法指定位置15bと、鏡ボルト工法指定位置15cと、その他工法指定位置15dの1つを選択的に指定可能である。
【0019】
定量/増量ツマミ16は、各注入孔3eへの注入量が定量に達したら注入を停止するよう設定する定量位置16a,16bと、定量を越えて定量の2倍まで注入可能とする増量位置16cと、その他位置16dを選択的に指定可能である。しかも、前記定量位置として、奇数の孔番号の注入孔3e用の定量位置16aと、偶数の孔番号の注入孔3e用の定量位置16bとが設定されている。奇数孔定量位置16aには「奇数」の表示が付され、偶数孔定量位置16bには「偶数」の表示が付されている。通常、奇数の孔番号への注入量は定量であり、増量が有り得るのは偶数の孔番号だけであるために、増量位置16cには「偶数」の表示が付されている。
操作パネル10の操作情報は、アナログ信号もしくは接点信号でPLC20に入力される。
【0020】
PLC20は、演算処理部21と、入出力部22と、記憶部23と、タッチモニター24を含む。演算処理部21は、マイクロプロセッサーやマイクロコントロールユニットによって構成されている。入出力部22には、操作パネル10、各注入ポンプ6(
図2では1つだけ図示)、該注入ポンプ6による注入圧を検出する注入圧センサ8、管理用PC30などが接続されている。
【0021】
PLC20によって、注入ポンプ6が制御されるとともに、注入材4の注入情報及び工法種別情報が取得される。記憶部23には、前記制御及び前記情報取得を実行するためのプログラム及びデータが格納されている。
注入情報としては、注入対象の注入孔3eの孔番号、注入孔3e又は注入領域R1~R3ごとの注入材4の注入量(kg)、初期注入圧、最終注入圧、注入開始時刻、注入終了時刻が含まれる。
【0022】
孔番号は、孔番号指定ツマミ14の指定による。
注入量(kg)は注入流速と注入時間とによって算出される。
注入流速としては、注入流速設定ボリューム13で設定した値が用いられる。注入流速の単位は、ウレタン系注入材4の場合は「kg/min」を使い、セメント系注入材4の場合は「L/min」を使う。
注入管7に流量計を設けて注入流速を検知してもよい。該注入流速の時間積分によって注入量(kg)を算出してもよい。注入ポンプ6の1回転あたりの吐出流量と回転回数とによって注入量(kg)を算出してもよい。
初期注入圧及び最終注入圧は、注入圧センサ8から入力される。
【0023】
工法種別情報は、工法種別指定ツマミ15によってどの位置15a~15dが指定されているかを示す。
なお、PLC20のタッチモニター24に前記工法種別指定ツマミ15を含む操作パネル10と同じ機能のタッチボタンが表示されるようになっていてもよい。
【0024】
管理用PC30は、ノートパソコンによって構成されているが、デスクトップパソコンであってもよく、タブレットやスマートフォンで構成されていてもよい。
管理用PC30は、注入機5の収容スペースに配置されているが、注入機5から離して配置されていてもよく、トンネル1の外部に配置されていてもよい。
管理用PC30は、CPU31と、入出力部32と、記憶部33と、ディスプレイ34を含む。入出力部32と各種の外部入出力機器とは有線接続されていてもよく無線接続されていてもよい。外部入出力機器としては、前記PLC20の他、プリンタ(図示省略)などの帳票出力手段が挙げられる。
【0025】
管理用PC30は、PLC20の前記取得情報すなわち注入情報及び工法種別情報をPLC20から受け取り、注入日報などの作業帳票を作成する機能を有している。
記憶部33には、前記作業帳票の作成を実行するための帳票作成プログラム35及び帳票作成データ36が格納されている。
【0026】
帳票作成プログラム35は、例えばC#などのプログラミング言語で記述されたコンピュータ実行可能なプログラムであり、工法種別情報に応じて作業帳票の書式を選定し、選定した書式で作業帳票を作成する処理を管理用PC30に実行させる。前記選定時の管理用PC30は「書式選定部」を構成する。
帳票作成データ36は、前記作業帳票書式データとして、AGF工法用の作業帳票の書式データ36a、Fp工法用の作業帳票の書式データ36b、鏡ボルト工法用の作業帳票の書式データ36c、その他工法用の作業帳票の書式データ36dを含む。
更に、記憶部33には、PLC20から送信された注入情報を記憶する注入情報記憶領域37、及び同じくPLC20から送信された工法種別情報を記憶する工法種別情報記憶領域38が設けられている。
書式データ36a~36dは、工法種別に合わせて個別に設定されている。
【0027】
図3(a)に示すように、AGF注入日報41(AGF工法用の作業帳票)は、一覧表41a、注入量グラフ41b、注入圧グラフ41c、孔配置
図41dを含む。一覧表41aには、注入孔3e(孔番号)の注入領域R1~R3(注入機の機番)ごとの注入量、注入圧(初期圧、最終圧)、注入時刻、終了条件(設定量/圧力上昇)が一覧表示される。
注入量グラフ41bには、注入孔3eごとの注入量(kg)がグラフ表示される。更に各注入孔3eの注入量に占める注入領域R1~R3ごとの注入量が着色や模様などによって判別可能である。
【0028】
注入圧グラフ41cには、注入孔3eの注入領域R1~R3ごとの最終注入圧(MPa)がグラフ表示される。
図示は省略するが、さらに、注入孔3eの注入領域R1~R3ごとの最終注入圧と初期注入圧との差圧をグラフ表示してもよい。
孔配置
図41dは、AGF工法による注入孔3eの配置を表した図であり、切羽1eを表す半円部の外周に沿って注入孔3eを表す複数の小円が配列されている。詳細な図示は省略するが、各小円には、対応する注入孔3eの孔番号が付されることが好ましい。また、各小円は、対応する注入孔3eへの注入量が定量未満であるか、定量以上であるか、最大注入量であるかによって色分け又は模様分けされている。
AGF注入日報41の各項目41a~41d中の注入孔の表記部分(例えば一覧表41aの孔No欄の数、孔配置
図41dの小円の数、グラフ41b,41cの横軸の目盛り数など)は、注入孔3eの本数に応じて変更される。
【0029】
図3(b)に示すように、Fp注入日報42(Fp工法用の作業帳票)は、一覧表42a、注入量グラフ42b、注入圧グラフ42c、孔配置
図42dを含む。一覧表42aは、注入量等が注入孔3e(孔番号)ごとに一覧表示されており、注入領域R1~R3ごとではない点でAGF注入日報41と異なる。注入量グラフ42b及び注入圧グラフ42cについても、注入孔3eごとの表示のみである点でAGF注入日報41と異なる。
Fp注入日報42の各項目42a~42d中の注入孔の表記部分は、注入孔3eの本数に応じて変更される。
【0030】
図3(c)に示すように、鏡ボルト注入日報43(鏡ボルト工法用の作業帳票)は、一覧表43a、注入量グラフ43b、注入圧グラフ43c、孔配置
図43dを含む。孔配置
図43dの注入孔3eの配置が、鏡ボルト工法の配置になっている点で、AGF注入日報41と異なっている。
鏡ボルト注入日報43の各項目43a~43d中の注入孔の表記部分は、注入孔3eの本数に応じて変更される。
【0031】
トンネル施工における補助工法は、次のようにして実施されて管理される。
図1(a)~(f)に示すように、実施すべき補助工法の種別に応じて、複数の鋼管3,3C又はロックボルト3Bを周辺地山2に打ち込んだ後、これら鋼管3,3C又はロックボルト3Bの内部空間を注入孔3eとして、周辺地山2に注入材4を注入する。
【0032】
注入作業は、注入作業者Aが注入機5を操作して行う。
注入作業者Aは、操作パネル10の工法種別指定ツマミ15を、実施する補助工法の種別に応じた何れか1つの位置15a~15dにする。これによって、操作パネル10によって工法種別の指定が受け付けられる。
何れの工法種別においても、所定の順番にしたがって複数の注入孔3eに順次注入を行う。一般に、AGF工法及びFp工法の場合は、先ず奇数番の数字順に注入し、次に、偶数番の数字順に注入する。鏡ボルト工法の場合は、奇数、偶数を区別せずに単純に数字順に注入する。
注入作業者Aは、作業対象の注入孔3eが変わる度に、孔番号指定ツマミ14によって、注入しようとする注入孔3eの孔番号を指定する。さらに運転開始ボタン11などを押下して注入を行う。
【0033】
注入作業者Aによる操作パネル10の操作情報、注入ポンプ6の作動情報、センサ8の検知情報は、PLC20に入力されて、記憶部23に注入材4の注入情報及び工法種別情報として記憶される。更に、該注入情報及び工法種別情報が、PLC20から管理用PC30へ送信されて、記憶部33の記憶領域37,38に記憶される。
【0034】
管理用PC30は、作業管理者からの要求入力などに応じて、注入作業帳票などの帳票を作成する。
詳しくは、管理用PC30のCPU31が記憶領域38から工法種別情報を読み込む。読み込んだ工法種別情報に基づいて、対応する1つの書式データ36a~36dを選定する。つまり、工法種別情報がAGF工法を表すものであれば、AGF工法用書式データ36aを選定する。同様に、Fp工法を表すものであれば、Fp工法用書式データ36bを選定し、鏡ボルト工法を表すものであれば、鏡ボルト工法用書式データ36cを選定し、その他工法を表すものであれば、その他工法用書式データ36dを選定する。
さらに管理用PC30のCPU31は、記憶領域37から注入情報を読み込み、前記選定した1つの書式データ36a~36dに注入孔番号、注入量、注入圧、注入開始時刻、注入終了時刻などを書き込む。
【0035】
これによって、
図3に示すように、工法種別に合わせた作業帳票が作成されてディスプレイ34に表示される。プリンタで印刷出力してもよい。
図3(a)に示すように、指定に工法種別がAGF工法であれば、AGF注入日報41が作成される。
図3(b)に示すように、工法種別がFp工法であれば、Fp注入日報42が作成される。
図3(c)に示すように、工法種別が鏡ボルト工法であれば、鏡ボルト注入日報43が作成される。各注入日報41~43は、対応する工法種別に合わせた書式になっているから、作業状況を的確に把握して管理できる。
注入孔3eの本数に応じて、注入日報41~43中の注入孔の表記部分を自動変更できる。
注入作業に際して、作業管理者が管理用PC30に工法種別を入力しなくても、工法種別に適応した作業帳票41~43を作成できる。かつ注入作業者Aは、注入機5の操作パネル10を操作すればよく、不慣れな管理用PC30を操作する必要はない。
【0036】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、注入機5の操作パネルがタッチパネルディスプレイになっていてもよい。該タッチパネルディスプレイに、工法種別指定ツマミ15に相当するタッチボタン(工法種別指定受付部)が表示され、工法種別を指定できるようになっていてもよい。更に指定した工法種別がタッチパネルディスプレイに文字表示されるようになっていてもよい。
注入機5が実体の操作パネル10と前記タッチパネルディスプレイの両方を備えていてもよい。
PLC20のタッチモニター24が、操作パネル10の機能を兼ねていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、例えば山岳トンネルの構築に際し周辺地山を安定化させる補助工法の管理システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
A 注入作業者
1 トンネル
2 周辺地山
3e 注入孔
4 注入材
5 注入機
6 注入ポンプ
9 トンネル補助工法管理システム
10 操作パネル
15 工法種別指定ツマミ(工法種別指定受付部)
15a AGF工法指定位置
15b Fp工法指定位置
15c 鏡ボルト工法指定位置
15d その他工法指定位置
20 プログラマブルロジックコントローラ(PLC)
30 管理用パソコン(作成手段)
36 帳票作成データ
36a AGF工法用の作業帳票の書式データ
36b Fp工法用の作業帳票の書式データ
36c 鏡ボルト工法用の作業帳票の書式データ
36d その他工法用の作業帳票の書式データ
41 AGF注入日報(AGF工法用の作業帳票)
42 Fp注入日報(Fp工法用の作業帳票)
43 鏡ボルト注入日報(鏡ボルト工法用の作業帳票)