(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】鋼、亜鉛めっき鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウムおよび/または亜鉛-マグネシウム合金を含む金属表面を腐食保護前処理するための改善された方法
(51)【国際特許分類】
C23C 22/34 20060101AFI20220804BHJP
C23C 22/44 20060101ALI20220804BHJP
C23C 22/83 20060101ALI20220804BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20220804BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20220804BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220804BHJP
B05D 3/10 20060101ALI20220804BHJP
C23C 22/80 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
C23C22/34
C23C22/44
C23C22/83
B05D5/00 Z
B05D7/14 P
B05D7/24 303A
B05D7/24 302P
B05D3/10 A
C23C22/80
(21)【出願番号】P 2019514730
(86)(22)【出願日】2017-09-06
(86)【国際出願番号】 EP2017072316
(87)【国際公開番号】W WO2018050506
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-09-04
(31)【優先権主張番号】102016217574.2
(32)【優先日】2016-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517284496
【氏名又は名称】ケメタル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ビルケンホイアー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ヒミーレヴスキ,ディートマール
(72)【発明者】
【氏名】ヘッカー,カリナ
(72)【発明者】
【氏名】ザウアー,オリファー
(72)【発明者】
【氏名】シャッツ,ダニエル
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-067828(JP,A)
【文献】特表2013-504687(JP,A)
【文献】特開2003-013252(JP,A)
【文献】特開2007-138264(JP,A)
【文献】特表2006-526710(JP,A)
【文献】特開2013-213282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 22/00-22/86
C23C 28/00-30/00
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼、亜鉛めっき鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウムおよび/または亜鉛-マグネシウム合金を含む金属表面を防食前処理するための方法であって、前記金属表面を、
i)a1)チタン化合物、ジルコニウム化合物およびハフニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む酸性水性組成物A、ならびに
ii)b1)少なくとも1種の(メタ)アクリレート樹脂およびb2)少なくとも1種のフェノール樹脂を含む水性組成物B
と接触させ、
前記金属表面を、
i)第一に前記組成物Aと、次いで、前記組成物Bと、
ii)第一に前記組成物Bと、次いで、前記組成物Aと、または
iii)前記組成物Aおよび前記組成物Bと同時に
接触させる、方法であって、
前記少なくとも1種の(メタ)アクリレート樹脂b1)が、メタクリル酸エステルおよびアクリル酸のコポリマーである、方法。
【請求項2】
金属表面を、第一に前記組成物Aと、次いで、前記組成物Bと接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種の(メタ)アクリレート樹脂b1)が、メタクリル酸メチルおよびアクリル酸のコポリマーである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種の(メタ)アクリレート樹脂b1)が、80~98質量%のメタクリル酸メチルおよび2~20質量%のアクリル酸(合計:100質量%)を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種の(メタ)アクリレート樹脂b1)が、ヒドロキシル基、シリル基、アルキル基、アリール基、ヘテロアルキル基、ヘテロアリール基、チオ基、アミノ基、アミド基、ニトリル基、エポキシ基、メルカプト基、ウレイド基、ニトロ基、ハロ基および/またはシアノ基をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種の(メタ)アクリレート樹脂b1)が、1000~500000g/molの範囲内の質量平均分子量を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種のフェノール樹脂b2)がレゾールである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種のフェノール樹脂b2)が、100~5000g/molの範囲内の質量平均分子量を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物Bが、1:1~10:1の質量比の前記成分b1)およびb2)を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物B中のb1)およびb2)合計の濃度が、(固体添加として計算された)20~400mg/lの範囲内である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物Bが、式I:
PEOx-PPOy-PEOz(I)
(式中、xおよびzは、それぞれの場合において、4~12の範囲内の整数であり、yは、35~65の範囲内の整数である)
の少なくとも1種のトリブロックコポリマーを安定剤b3)として含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物B中の前記安定剤b3)の(固体添加として計算された)質量濃度が、(メタ)アクリレート樹脂b1)およびフェノール樹脂b2)の総濃度の1.5~2.5倍である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物Bが、式II
R
1O-(CH
2)
x-Z-(CH
2)
y-OR
2(II)
(式中、R
1およびR
2は、それぞれの場合において、互いに独立してHまたはHO-(CH
2)
w-基(式中、w≧2)であり、xおよびyは、それぞれの場合において、互いに独立して1~4であり、Zは、硫黄原子またはC-C三重結合である)
の少なくとも1種の化合物b4)をさらに含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物Bが、さらなる成分b5)として少なくとも1種のモリブデン化合物を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物A中の前記成分a1)が、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムの錯フッ化物からなる群から選択される少なくとも1種の錯フッ化物である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物Aが、a2)オルガノアルコキシシラン、オルガノシラノール、ポリオルガノシラノール、オルガノシロキサンおよびポリオルガノシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物をさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
成分a2)が、オルガノアルコキシシラン/オルガノシラノール単位あたり少なくとも1個のアミノ基、尿素基、イミド基、イミノ基および/またはウレイド基をそれぞれの場合において有する少なくとも1種のオルガノアルコキシシラン、オルガノシラノール、ポリオルガノシラノール、オルガノシロキサンおよび/またはポリオルガノシロキサンである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物Aが、成分a3)として、0.1~5g/lの亜鉛カチオン、5~50mg/lの銅カチオンおよび/または5~50mg/lのセリウムカチオンおよび/または(モリブデンとして計算された)10~100mg/lの少なくとも1種のモリブデン化合物をさらに含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
金属表面が、鋼および/または亜鉛めっき鋼を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載の方法により塗装された金属基材を、自動車産業にお
ける、鉄道車両用に
おける、航空宇宙産業にお
ける、家庭用電気機器、制御装置または試験装置の装置構成にお
ける、機械工学にお
ける、建築産業にお
ける、
または家具産業にお
ける、個々の構成部品、あらかじめ取り付けられた要素または連結された要素の生産用に使用する
か、
ガードレール、ランプ、
またはクラッディン
グの生産用に
使用するか、
ボディーワークまたはボディーワーク部
品の生産用に使用する
、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼、亜鉛めっき鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウムおよび/または亜鉛-マグネシウム合金を含む金属表面を防食前処理するための改善された方法に関する。さらに本発明は、そのような金属表面の防食前処理を改善するための組成物、この組成物を生成するための濃縮物、それに対応して塗装された金属表面、ならびにそれに対応して塗装された金属基材を使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
チタンの化合物、ジルコニウムの化合物およびハフニウムの化合物、オルガノアルコキシシラン、その加水分解生成物および/または縮合生成物ならびにさらなる成分を含む水性組成物による金属表面の塗装が既知である。
【0003】
塗料またはワニスなどのさらなる層の接着においてある一定の改善を実現することができるように、処理された金属基材のための腐食保護を、形成された塗膜により実現することができる。
【0004】
前述の組成物に対する酸に安定な特定のポリマーの添加も、先行技術において開示されている。形成される層の特性は、この方法で改善することができる。
【0005】
しかし、上述のポリマーを使用してもこれまで満足のいくように解決することができなかった腐食剥離に関する問題は、特に、鋼、亜鉛めっき鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウムおよび/または亜鉛-マグネシウム合金を含む表面の場合、依然として発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、先行技術の不利な点を克服すること、ならびに鋼、亜鉛めっき鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウムおよび/または亜鉛-マグネシウム合金を含み、特に亜鉛めっき鋼上の腐食保護を有する金属表面のために防食前処理するための改善された方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載の方法、請求項21に記載の水性組成物、請求項22に記載の濃縮物、請求項23に記載の金属表面、ならびに請求項24に記載の金属基材を使用する方法により達成される。
【0008】
鋼、亜鉛めっき鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウムおよび/または亜鉛-マグネシウム合金を含む金属表面を防食前処理するための本発明の方法では、金属表面を、
i)a1)チタン化合物、ジルコニウム化合物およびハフニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む酸性水性組成物A、ならびに
ii)b1)少なくとも1種の(メタ)アクリレート樹脂およびb2)少なくとも1種のフェノール樹脂を含む水性組成物B
と接触させ、
金属表面を、
i)第一に組成物Aと、次いで、組成物Bと、
ii)第一に組成物Bと、次いで、組成物Aと、かつ/または
iii)組成物Aおよび組成物Bと同時に
接触させる。
【0009】
定義:
本発明において、「水性組成物」は、溶媒/分散媒としての水だけでなく、溶媒/分散媒の総量に対して50質量%未満の他の有機溶媒/分散媒も含む組成物を含む。
【0010】
本発明において、「ヘキサフルオロジルコン酸として計算された」は、組成物A中の成分a1)のすべての分子がヘキサフルオロジルコン酸分子、すなわちH2ZrF6であるという仮定を意味する。
【0011】
「錯フッ化物」は、脱プロトン化した形だけでなく、それぞれ1個または複数個プロトン化した形も包含する。
【0012】
本発明において、成分b1)中の「(メタ)アクリレート樹脂」は、モノマー単位として、少なくとも1種のアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを含むコポリマーを指す。
【0013】
「金属表面を、
i)第一に組成物Aと、次いで、組成物Bと、
ii)第一に組成物Bと、次いで、組成物Aと、かつ/または
iii)組成物Aおよび組成物Bと同時に接触させる」
という表現は、以下の実施形態も包含されることを意味すると解釈されるべきである:
【0014】
金属表面を、第1の組成物B(前すすぎ剤)と、組成物Aと、および第2の組成物B(後すすぎ剤)と次々に接触させ、第1および第2の組成物Bは化学的に同一にすることもできる。
【0015】
金属表面を、組成物Aおよび組成物Bと接触させる前、後および/または間に、1種または複数種のさらなる組成物-特にすすぎ組成物-と接触させ、かつ/または完全に、もしくは部分的に乾燥させる。
【0016】
「金属表面を、[…]組成物Aおよび組成物Bと同時に接触させる」という表現は、金属表面を、すべての成分a1、b1)およびb2)ならびに組成物AおよびB(下記参照)の任意にさらなる成分を含む水性組成物である単一の組成物と接触させることもできることを意味すると解釈されるべきである。
【0017】
i)組成物B:
好ましい1種の実施形態によれば、金属表面を、第一に組成物Aと、次いで、組成物Bと接触させ、これは、組成物Bが後すすぎ剤として使用されることを意味する。
【0018】
本発明によれば、組成物Bへの少なくとも1種の(メタ)アクリレート樹脂b1)の添加および少なくとも1種のフェノール樹脂b2)の添加により、得られる塗膜の特性、特に、亜鉛めっき鋼上の腐食保護を顕著に改善することが可能である。
【0019】
本明細書において、組成物B中、(メタ)アクリレート樹脂b1)は、少なくとも1種のアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルだけでなく、(メタ)アクリル酸、ビニルホスホン酸およびビニルスルホン酸、好ましくは(メタ)アクリル酸からなる群から選択されるモノマー単位も含む。
【0020】
「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸および/またはメタクリル酸ならびにそれぞれの脱プロトン化した形を指す。
【0021】
特に好ましくは、(メタ)アクリレート樹脂b1)は、メタクリル酸エステルおよびアクリル酸のコポリマー、特に好ましくはメタクリル酸メチルおよびアクリル酸のコポリマーであり、前記コポリマーは、好ましくは80~98質量%のメタクリル酸メチルおよび2~20質量%のアクリル酸(合計:100質量%)、より好ましくは85~95質量%のメタクリル酸メチルおよび5~15質量%のアクリル酸(合計:100質量%)を含む。
【0022】
少なくとも1種の(メタ)アクリレート樹脂b1)は、好ましくは、ランダムコポリマーである。
【0023】
さらに、少なくとも1種の(メタ)アクリレート樹脂b1)は、好ましくは、ヒドロキシル基、シリル基、アルキル基、アリール基、ヘテロアルキル基、ヘテロアリール基、チオ基、アミノ基、アミド基、ニトリル基、エポキシ基、メルカプト基、ウレイド基、ニトロ基、ハロ基および/またはシアノ基、より好ましくはヒドロキシル基、シリル基、アルキル基、アミノ基および/またはエポキシ基をさらに含む。
【0024】
特に好ましくは、少なくとも1種の(メタ)アクリレート樹脂b1)は、ヒドロキシル基および/またはシリル基をさらに含む。さらなる基は、(メタ)アクリレートモノマー単位のアルコール残基上に好ましく位置し、かつ金属表面との、ならびに/またはさらなる塗膜の成分、とりわけ塗料およびワニスの成分との共有結合を形成することができる利点を有する。
【0025】
少なくとも1種の(メタ)アクリレート樹脂b1)は、好ましくは1000~500000g/mol、より好ましくは3000~250000g/molの範囲内、特に好ましくは5000~20000、より好ましくは8000~17000g/mol、特に好ましくは10000~15000g/molの範囲内の質量平均分子量を有する。
【0026】
組成物B中の少なくとも1種のフェノール樹脂b2)は、ホルムアルデヒドおよびフェノールを酸性縮合することにより好ましく製造されており、好ましくは、1:1未満のホルムアルデヒド対フェノールのモル比(ノボラック)を有し、かつ/または好ましくは、ホルムアルデヒドおよびフェノールを塩基性縮合することにより製造されており、好ましくは、反応性メチロール基を含み、そのベンゼン環は、メチレン基ならびにエーテル架橋(レゾール)を介して互いに結合されている。
【0027】
特に好ましくは、少なくとも1種のフェノール樹脂b2)はレゾールである。
【0028】
少なくとも1種のフェノール樹脂b2)は、好ましくは100~5000g/mol、より好ましくは130~3000g/mol、より好ましくは145~1000g/molの範囲内、特に好ましくは160~600g/mol、特に好ましくは190~300g/molの範囲内の質量平均分子量を有する。
【0029】
特に好ましい実施形態によれば、組成物Bは、b1)として、85~95質量%のメタクリル酸メチルおよび5~15質量%のアクリル酸(合計:100質量%)を含み、かつ8000~17000g/molの範囲内の質量平均分子量を有するメタクリル酸メチルおよびアクリル酸のコポリマーを含み、さらに、b2)として、145~1000g/molの範囲内の質量平均分子量を有するレゾールを含む。
【0030】
組成物Bは、好ましくは1:1~10:1、より好ましくは2:1~6:1の質量比、特に好ましくは3.1:1~4.6:1の質量比の成分b1)およびb2)を含む。
【0031】
組成物B中のb1)およびb2)合計の濃度は、(固体添加として計算された)好ましくは20~400mg/lの範囲内、特に好ましくは50~200mg/lの範囲内である。
【0032】
組成物BのpHは、好ましくは3~9、特に好ましくは3~6の範囲内であり、特に好ましくは4~5の範囲内である。4~5のpHは、組成物Bが化成処理浴を含む場合、特に有利である。
【0033】
驚くべきことに明らかになったように、組成物Bに含まれるある特定のイオン種は、ある特定の状況下で、組成物B中の少なくとも1種の(メタ)アクリレート樹脂b1)および少なくとも1種のフェノール樹脂b2)を不安定にする場合があり、これらの成分を凝集および沈殿させる場合がある。
【0034】
組成物Bは、安定剤b3)を有利に含むことができる。この安定剤は、驚くべきことに、特定のイオン種に対する組成物Bの感受性を低下させ、さらに、より広いpH範囲にわたる組成物Bの操作を可能にする。
【0035】
特に、金属表面を、成分a1)、b1)およびb2)のすべてを含む単一の水性組成物と接触させる場合、すなわち、本発明による樹脂混合物b1)+b2)が化成処理浴に添加される場合、この種類の安定剤は有利である。それ以外の場合、-例えば、pH4.8を有する-化成処理浴の酸性環境内で、樹脂混合物は凝集する傾向があり、経時的に使用不能になる浴になる。
【0036】
前記安定剤b3)は、好ましくは、式I:
PEOx-PPOy-PEOz(I)
(式中、PEOはポリエチレンオキシドであり、PPOはポリプロピレンオキシドであり、xおよびzは、それぞれの場合において、4~12の範囲内の整数であり、yは、35~65の範囲内の整数である)
の少なくとも1種のトリブロックコポリマーを含む。
【0037】
好ましくは、xおよびzは、それぞれの場合において、6~10の範囲内の整数であり、yは、40~60の範囲内の整数である。より好ましくは、xおよびzは、それぞれの場合において、7~9の範囲内の整数であり、yは、45~55の範囲内の整数である。
【0038】
特に好ましい実施形態によれば、Pluronic(登録商標)PE 9200(BASF、ドイツ)が安定剤b3)として使用される。これはPEO8-PPO50-PEO8を含む。
【0039】
組成物B中の安定剤b3)の(固体添加として計算された)質量濃度は、好ましくは、(メタ)アクリレート樹脂b1)およびフェノール樹脂b2)の総濃度の1.5~2.5倍、より好ましくは1.8~2.2倍である。
【0040】
好ましい実施形態によれば、組成物Bは、式II
R1O-(CH2)x-Z-(CH2)y-OR2(II)
(式中、R1およびR2は、それぞれの場合において、互いに独立してHまたはHO-(CH2)w-基(式中、w≧2)であり、xおよびyは、それぞれの場合において、互いに独立して1~4であり、Zは、硫黄原子またはC-C三重結合である)
の少なくとも1種の化合物b4)をさらに含む。
【0041】
式IIの少なくとも1種の化合物b4)は、この場合、物理的腐食抑制剤として作用し、双極子-双極子相互作用およびファンデルワールス力により金属表面に吸着され、したがって、金属表面への腐食攻撃を防ぐ。
【0042】
少なくとも1種の化合物b4)が、(ブタ-2-イン-1,4-ジオールとして計算された)好ましくは10~300mg/l、特に好ましくは50~180mg/lの範囲内の濃度で存在する。
【0043】
そのような腐食抑制剤の添加は、組成物Bが前すすぎ剤として使用される場合に特に有利であることが判明している。
【0044】
特に好ましい実施形態によれば、組成物Bは、成分b1)およびb2)だけでなく、成分b3)およびb4)も含む。
【0045】
組成物Bは、決して組成物Bの安定性に悪影響を及ぼさないさらなる成分b5)として、好ましくは少なくとも1種のモリブデン化合物、より好ましくはヘプタモリブデン酸塩を含む。この場合、少なくとも1種のモリブデン化合物の濃度は、(モリブデンとして計算された)好ましくは10~100mg/lの範囲内である。
【0046】
そのようなモリブデン化合物の添加は、組成物Bが後すすぎ剤として使用される場合に特に有利であることが判明している。
【0047】
第1の特に好ましい実施形態によれば、組成物Bは、成分b1)およびb2)だけでなく、成分b3)およびb5)も含む。
【0048】
第2の特に好ましい実施形態によれば、組成物Bは、成分b1)およびb2)だけでなく、成分b4)およびb5)も含む。
【0049】
特に好ましい実施形態によれば、組成物Bは、成分b1)およびb2)だけでなく、成分b3)、b4)およびb5)も含む。
【0050】
ii)組成物A:
組成物Aは、好ましくは、成分a1)としてチタン、ジルコニウムおよびハフニウムの錯フッ化物からなる群から選択される少なくとも1種の錯フッ化物を含む。
【0051】
ジルコニウム錯フッ化物が本明細書においてさらに好ましい。本明細書において、ジルコニウムを硝酸ジルコニル、炭酸ジルコニウム、酢酸ジルコニルまたは硝酸ジルコニウムとして、好ましくは硝酸ジルコニルとして添加することもできる。これは、チタンおよびハフニウムの場合も同様にあてはまる。
【0052】
少なくとも1種の錯フッ化物の含有量は、(ヘキサフルオロジルコン酸として計算された)好ましくは0.05~4g/l、より好ましくは0.1~1.5g/l、特に好ましくは約0.25g/lの範囲内である。
【0053】
好ましい実施形態において、組成物Aは、成分a1)として少なくとも2種の異なる錯フッ化物、特に2種の異なる金属カチオンの錯フッ化物、特に好ましくはチタンの錯フッ化物およびジルコニウムの錯フッ化物を含む。
【0054】
組成物A中、a1)の濃度は、(ヘキサフルオロジルコン酸として計算された)好ましくは0.05~4g/l、より好ましくは0.1~1.5g/l、より好ましくは0.15~0.57g/l、特に好ましくは0.20~0.40g/l、特に非常に好ましくは約0.25g/lの範囲内である。
【0055】
成分a1)の含有量ならびに任意に成分a2)およびa3)(下記参照)の含有量を、金属表面の処理時、ICP-OES(誘導結合プラズマを使用した発光分析)により、または光度的に近似で監視することができるため、追加量の個々の成分または複数種の成分を必要に応じて導入することができる。
【0056】
組成物Aは、好ましくは、a2)オルガノアルコキシシラン、オルガノシラノール、ポリオルガノシラノール、オルガノシロキサンおよびポリオルガノシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物をさらに含む。
【0057】
組成物A中の成分a2)の少なくとも1種の化合物に関して、接頭語「オルガノ」は、炭素原子を介してケイ素原子に直接結合されているため後者から加水分解的に分離されない少なくとも1個の有機基を指す。
【0058】
本発明において、「ポリオルガノシロキサン」は、少なくとも2個のオルガノシラノールから縮合することができる、ポリジメチルシロキサンを生成しない化合物である。
【0059】
組成物Aは、好ましくは、成分a2)として、オルガノアルコキシシラン/オルガノシラノール単位あたり少なくとも1個のアミノ基、尿素基、イミド基、イミノ基および/またはウレイド基をそれぞれの場合において有する少なくとも1種のオルガノアルコキシシラン、オルガノシラノール、ポリオルガノシラノール、オルガノシロキサンおよび/またはポリオルガノシロキサンを含む。オルガノアルコキシシラン/オルガノシラノール単位あたり少なくとも1個、特に1個または2個のアミノ基をそれぞれの場合において有する少なくとも1種のオルガノアルコキシシラン、オルガノシラノール、ポリオルガノシラノール、オルガノシロキサンおよび/またはポリオルガノシロキサンである成分a1)がさらに好ましい。
【0060】
オルガノアルコキシシラン/オルガノシラノール単位として2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンもしくはビス(トリエトキシシリルプロピル)アミンまたはこれらの組み合わせが特に好ましい。オルガノアルコキシシラン/オルガノシラノール単位として2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランもしくはビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンまたはこれら2種の組み合わせが特に非常に好ましい。
【0061】
組成物A中、a2)の濃度は、(ケイ素として計算された)好ましくは1~200mg/l、より好ましくは5~100mg/l、特に好ましくは20~50mg/l、特に非常に好ましくは25~45mg/lの範囲内である。
【0062】
有利には、組成物Aは、ランタニドを含む第1~3および第5~8遷移族の金属ならびに元素周期表の第2主族ならびにリチウム、ビスマスおよびスズのカチオンからなる群から選択される少なくとも1タイプのカチオンであり、かつ/または少なくとも1種の対応する化合物である成分a3)をさらに含む。
【0063】
成分a3)は、好ましくは、セリウムならびにさらなるランタニド、クロム、鉄、カルシウム、コバルト、銅、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニッケル、ニオブ、タンタル、イットリウム、バナジウム、リチウム、ビスマス、亜鉛およびスズのカチオンからなる群から選択される少なくとも1タイプのカチオンであり、かつ/または少なくとも1種の対応する化合物である。
【0064】
組成物Aは、成分a3)として、より好ましくは亜鉛カチオン、銅カチオンおよび/もしくはセリウムカチオンならびに/または少なくとも1種のモリブデン化合物を含む。
【0065】
組成物Aは、成分a3)として、特に好ましくは亜鉛カチオン、特に非常に好ましくは亜鉛カチオンおよび銅カチオンを含む。
【0066】
組成物A中の濃度は、好ましくは以下の通りである:
- 亜鉛カチオン:0.1~5g/l
- 銅カチオン:5~50g/l
- セリウムカチオン:5~50mg/l
- モリブデン化合物:10~100mg/l(モリブデンとして計算)。
【0067】
特に好ましい実施形態によれば、組成物Aは、成分a1)だけでなく、成分a2)およびa3)も含む。
【0068】
組成物Aは、特定の要件および状況に応じて、さらなる成分a4)を任意に含む。これは、pH、有機溶媒、水溶性フッ素化合物およびコロイドに影響する物質からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
【0069】
組成物Aは、本明細書において好ましくは、0.1~20g/lの範囲内の成分a4)の含有量を有する。
【0070】
pHに影響する物質は、好ましくは、硝酸、硫酸、酢酸、メタンスルホン酸、フッ化水素酸、アンモニウム/アンモニア、炭酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムからなる群から選択される。硝酸、アンモニウムおよび/または炭酸ナトリウムを使用してpHを設定することが本明細書においてさらに好ましい。
【0071】
組成物Aは、好ましくは、0.5~5.5、より好ましくは2~5.5、特に好ましくは3.5~5.3、特に非常に好ましくは4.0~5.0の範囲内のpHを有する。
【0072】
有機溶媒は、好ましくは、メタノールおよびエタノールからなる群から選択される。実際には、メタノールおよび/またはエタノールは、処理浴中でオルガノアルコキシシラン加水分解の反応生成物として存在する。
【0073】
水溶性フッ素化合物は、好ましくは、フッ化物含有化合物およびフッ化物アニオンからなる群から選択される。
【0074】
組成物A中の遊離フッ化物の含有量は、好ましくは0.015~0.15g/l、より好ましくは0.025~0.1g/lの範囲内、特に好ましくは0.03~0.05g/lの範囲内である。
【0075】
コロイドは、好ましくは金属酸化物粒子、より好ましくはZnO、SiO2、CeO2、ZrO2およびTiO2からなる群から選択される金属酸化物粒子である。
【0076】
組成物Aは、好ましくは、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオンからなる群から選択される少なくとも1タイプのカチオンおよび対応する化合物をさらに含む。組成物Aは、特に好ましくは、ナトリウムイオンおよび/またはアンモニウムイオンを含む。
【0077】
組成物Aは、リン酸塩および/またはホスホン酸塩などのリン含有ならびに酸素含有化合物を含むこともできる。さらに、組成物Aは硝酸塩を含むことができる。
【0078】
しかし、硫黄含有化合物、特に硫酸塩の含有量は、好ましくは、できるだけ少なく保つべきである。硫黄含有化合物の含有量は、特に好ましくは、(硫黄として計算された)100mg/l未満である。
【0079】
任意に事前に洗浄および/または酸洗された処理される金属表面は、それぞれの場合において、組成物Aおよび/または組成物Bを吹き付けたり、これらに浸漬したり、これらを溢流させたりすることができる。それぞれの組成物を、拭き取りもしくははけ塗りによる手作業で、またはロールもしくはローラー(コイル塗装法)により、処理される金属表面に塗布することもできる。さらに、それぞれの組成物を処理される金属表面に電解析出させることも可能である。
【0080】
部品の処理における処理時間は、好ましくは15秒~20分、より好ましくは30秒~10分の範囲内、特に好ましくは45秒~5分の範囲内である。処理温度は、好ましくは5~50℃、より好ましくは15~40℃の範囲内、特に好ましくは25~30℃の範囲内である。
【0081】
本発明の方法は、帯板(コイル)の塗装にも適している。処理時間は、この場合、好ましくは数秒~数分の範囲内、例えば、1~1000秒の範囲内である。
【0082】
本発明の方法は、(マルチメタル性能として既知の)塗装される様々な金属材料の同じ浴内での混合を可能にする。
【0083】
処理される金属表面は、好ましくは鋼、亜鉛めっき鋼、マグネシウムおよび/または亜鉛-マグネシウム合金を含み、より好ましくは鋼および/または亜鉛めっき鋼を含み、特に好ましくは亜鉛めっき鋼を含む。
【0084】
特に、亜鉛めっき鋼を含む金属表面の場合、本発明の方法により塗装した後、陰極電着塗装(CEC)後に大幅に改善された腐食保護が観察された。
【0085】
これは、例えば、ポリアクリレートを使用し、組成物B中の少なくとも1種の(メタ)アクリレート樹脂b1)および少なくとも1種のフェノール樹脂b2)の組み合わせを使用しないという点でのみ本発明による方法とは異なる方法による処理と比較して明らかである。
【0086】
本発明は、上述の通り、鋼、亜鉛めっき鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウムおよび/または亜鉛-マグネシウム合金を含む金属表面の防食前処理を改善するための水性組成物Bも提供する。
【0087】
さらに、本発明は、水で希釈し、かつpHを任意に設定することにより、本発明による組成物Bをそれから生成することができる濃縮物を提供する。
【0088】
本発明の組成物Bを含む処理浴は、好ましくは1:50000~1:10、より好ましくは1:10000~1:10、特に好ましくは1:8000~1:10の倍率で、特に非常に好ましくは約1:5000の倍率で濃縮物を水および/または水性溶液で希釈することにより得ることができる。
【0089】
さらに、本発明は、鋼、亜鉛めっき鋼、マグネシウムおよび/または亜鉛-マグネシウム合金を含み、本発明の方法により塗装された金属表面であって、形成された塗膜が、XRF(蛍光X線分析)により決定された、
i)(ジルコニウムとして計算された)成分a1)のみに対して5~500mg/m2、好ましくは10~200、特に好ましくは30~120mg/m2、および任意に
ii)(ケイ素として計算された)成分a2)のみに対して0.5~50mg/m2、好ましくは1~30、特に好ましくは2~10mg/m2
の層質量を有する、金属表面を提供する。
【0090】
本発明の方法により生成された塗膜は、腐食保護として、さらにさらなる塗膜の結合剤として役立つ。
【0091】
したがって、これらの塗膜は、少なくとも1種のプライマー、塗料、ワニス、接着剤および/または塗料状の有機組成物で容易にさらに塗装することができる。この場合、これらのさらなる塗膜のうちの少なくとも1種を加熱および/または照射により好ましく硬化させることができる。
【0092】
本発明の方法により生成された塗膜は、好ましくは、さらに処理する前に過剰なポリマーおよび妨害イオンを金属表面から除去するためにすすがれる。第1のさらなる塗膜は、ウェットオンウェット法により塗布することができる。
【0093】
塗料/ワニスとして、エポキシドおよび/または(メタ)アクリレートに基づく陰極電着塗装(CEC)を施すことが好ましい。
【0094】
最後に、本発明は、本発明の方法により塗装された金属基材を、自動車産業において、鉄道車両用に、航空宇宙産業において、装置構成において、機械工学において、建築産業において、家具産業において、ガードレール、ランプ、異形材、クラッディングまたは小部品の生産用に、好ましくは自動車産業または航空産業において、ボディーワークまたはボディーワーク部品の、個々の構成部品、あらかじめ取り付けられた要素または連結された要素の生産用に、装置またはプラント、特に家庭用電気機器、制御装置、試験装置または建築要素の生産用に使用する方法も提供する。
【0095】
塗装された金属基材を、自動車産業において、ボディーワークまたはボディーワーク部品の、個々の構成部品の、およびあらかじめ取り付けられた要素または連結された要素の生産用に使用することが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0096】
本発明を以下の実施例により説明するが、これらは制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0097】
i)基材および前処理:
基材:
溶融亜鉛めっき鋼(HDG)でできたシート(10.5×19cm)および冷間圧延鋼(CRS)でできたその他を基材として使用した。
【0098】
洗浄:
すべての実施例において、Gardoclean(登録商標)S 5176(Chemetall製;リン酸塩、ホウ酸塩および界面活性剤を含む)を穏やかなアルカリ浸漬洗浄剤として使用した。この目的のために、15g/lを50l浴中で調製し、60℃まで加熱し、10.0~11.0の範囲内のpHで3分間吹き付けることにより基材を洗浄した。続いて、基材を水道水および脱イオン水ですすいだ。
【0099】
(本発明による)前すすぎ剤:
異なる量の樹脂混合物(表1:「Resin mix.」参照)を本発明にしたがって任意に添加した脱イオン水を使用して、前すすぎを実施した。この樹脂混合物は、質量平均分子量160g/molを有する以下のレゾール(例示的な式)
【化1】
と、質量比1:3.7の90mol%メタクリル酸メチルおよび10mol%アクリル酸から重合した、(GPCにより決定された)質量平均分子量9630g/molを有する(メタ)アクリレート樹脂とを含んでいた。
【0100】
合計で112.5mg/lの腐食抑制剤になる62.5mg/lのブタ-2-イン-1,4-ジオールおよび50mg/lの1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ブチンを前すすぎ剤が含むように、腐食抑制剤の混合物(表1:「Corr. inh.」参照)を本発明による前すすぎ剤にさらに任意に添加した。
【0101】
【0102】
基材の前すすぎを、穏やかに撹拌しながら20℃で120秒間実施した。
【0103】
(本発明による)化成処理浴:
化成処理浴については、Oxsilan(登録商標)添加剤9936(Chemetall(ドイツ)製;フッ化物およびジルコニウム化合物を含む)および任意にOxsilan(登録商標)9810/3(Chemetall(ドイツ)製;アミノシランを含む。表3:「シラン」参照)を、ジルコニウム濃度100~130mg/lおよび(Siとして計算された)シラン濃度20~30mg/lになるような量で50lバッチに加えた。浴温度は30℃に設定した。希薄炭酸水素ナトリウム溶液および希薄フッ化水素酸(5%強度)を添加することにより、pHおよび遊離フッ化物含有量をそれぞれpH=4.8および30~40mg/lに設定した。
【0104】
希硝酸を添加することにより、pHを絶えず補正した。
【0105】
本発明による前すすぎ剤に関連して既に説明した様々な量の樹脂混合物(表3:「Resin mix.」参照)を、本発明にしたがって任意に浴に添加した。
【0106】
様々な量の特定のトリブロックコポリマーPEO8-PPO50-PEO8(Pluronic(登録商標)PE 9200;BASF(ドイツ)製、表3:「Stabil.」参照)を、本発明による化成処理浴にさらに添加した。
【0107】
(本発明による)浴は、400mg/lの亜鉛も常に含んでいた。8~10mg/lの銅を硝酸銅の形態で(本発明による)浴に任意に添加した。
【0108】
基材を通過させる前に、浴内の化学平衡を成立させられるように、完成した浴を少なくとも12時間エージングさせた。化成処理を、穏やかに撹拌しながら120秒間実施した。続いて、水道水および脱イオン水によるすすぎを実施した。
【0109】
本発明による後すすぎ剤:
後すすぎ剤については、本発明にしたがって任意に、本発明による前すすぎ剤に関連して既に説明した様々な量の樹脂混合物(表2:「Resin mix.」参照)、ならびに任意に、本発明による化成処理浴に関連して既に説明した100mg/lの特定のトリブロックコポリマー(表2:「Stabil.」参照)を添加した脱イオン水を使用した。
【0110】
20mg/lまたは50mg/lのモリブデンもヘプタモリブデン酸アンモニウムの形態で後すすぎ剤に任意に添加した。
【0111】
【0112】
穏やかに撹拌しながら20℃で90秒間、基材に後すすぎを実施した。
【0113】
様々な前すすぎ剤、化成処理浴および後すすぎ剤の組み合わせにより、以下の表3に記載の実施例および比較例を生成した:
【0114】
【0115】
ii)分析、塗装、結合力および腐食保護:
蛍光X線分析:
前処理した基材上の層質量(LW)(mg/m2)を蛍光X線分析(XRF)により決定した。本明細書では、塗布されたジルコニウムの量を測定した。
【0116】
表面塗装:
前処理した基材をCECにより塗装した。Cathoguard(登録商標)800(BASF(ドイツ)製)をこの目的のために使用した。続いて、重ね塗りを施した。これはDaimler Blackであった。DIN EN ISO 2808(2007 version)にしたがって、層厚測定器により塗装層の厚さを決定した。厚さは90~110μmの範囲内であった。
【0117】
腐食試験:
さらに、4種の異なる腐食試験を実施した:
1.)60回を超えるVolkswagen仕様PV 1210(2010-02 version)による腐食サイクル試験、
2.)10回を超えるVDA試験シート621-415およびDIN EN ISO 20567-1(1982 version;method C)による腐食サイクル試験、
3.)DIN EN ISO 4628-8(2013-03 version)による腐食サイクル試験Meko S test c、および
4.)FFM_C-AN_01941(2.0 version)によるカソード分極
【0118】
剥離:
DIN EN ISO 4628-8(2012 version)にしたがって、腐食性剥離(mm)をそれぞれの場合において決定した(表4:「Cd」参照)。報告値は、それぞれの場合における3枚のシートの平均値である。
【0119】
実施した腐食試験の結果を以下の表4にまとめる:
【0120】
【0121】
iii)結果と考察:
表4は、前すすぎ剤、化成処理浴および後すすぎ剤に本発明による樹脂混合物を添加することにより、腐食性剥離の減少が確認できることを示す(実施例の値と、比較例CE1、CE8およびCE27の値とを比較されたい)。
【0122】
シランを添加することにより、この場合も改善する(E18とE17とを比較されたい)。銅を添加すると、層質量が増加する(E15およびE16を参照されたい)。
【0123】
特定のトリブロックコポリマーを添加することにより、本発明による樹脂混合物を含む化成処理浴の有効寿命の明らかな延びが示された(結果は示さず)。酸性環境における樹脂の凝集はかなり防止された(E3~E7対E2;E9およびE10)。
【0124】
本発明による前すすぎ剤に腐食抑制剤を添加すると、本発明による後すすぎ剤へのモリブデンの添加(E29、E30とE29とを比較されたい)のように、同じくさらに改善した(E22とE20とを比較されたい)。