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特許7117296金属窒化物および金属炭化物を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】金属窒化物および金属炭化物を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/04 20060101AFI20220804BHJP
   C30B 29/36 20060101ALI20220804BHJP
   C30B 29/38 20060101ALI20220804BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20220804BHJP
   B01J 27/24 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
B01J37/04 101
C30B29/36 Z
C30B29/38 Z
B01J37/08
B01J27/24 M
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019517957
(86)(22)【出願日】2017-09-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 US2017051054
(87)【国際公開番号】W WO2018067276
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-08-26
(31)【優先権主張番号】62/404,318
(32)【優先日】2016-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16201323.9
(32)【優先日】2016-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509004675
【氏名又は名称】エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ナンディ パーサ
(72)【発明者】
【氏名】ニザミ カダス エイ
(72)【発明者】
【氏名】クリワー クリスティーン イー
(72)【発明者】
【氏名】ステラ アンドリュー ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ダッカ ジハード エム
(72)【発明者】
【氏名】グプタ ヒマンシュ
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-281768(JP,A)
【文献】特開平03-270203(JP,A)
【文献】特開昭62-156264(JP,A)
【文献】特開2016-001538(JP,A)
【文献】特開2001-096163(JP,A)
【文献】特開平06-277515(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0176990(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0284289(US,A1)
【文献】MIURA, Akira et al,Non-stoichiometric FexWN2: Leaching of Fe from layer-structured FeWN2,J. Solid State Chem.,米国,Elsevier Inc.,2009年11月14日,Vol. 183, No. 2,pp. 327-331,DOI: 10.1016/j.jssc.2009.11.014
【文献】APARICIO, Claudia et al,Thermal decomposition of Prussian blue under inert atmosphere,J. Therm. Anal. Calorim. ,NL,Springer,2012年11月,Vol. 110, No. 2,pp. 661-669,DOI: 10.1007/s10973-011-1890-1
【文献】BEM, David S. et al.,Synthesis and Structure of Two New Ternary Nitrides: FeWN2 and MnMoN2,Inorg. Chem.,米国,American Chemical Society,1996年01月31日,Vol.35, No. 3,pp. 581-585,DOI: 10.1021/ic9512338
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C01G 41/00
C01G 49/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属窒化物および/または金属炭化物を製造する方法であって、
i)少なくとも1種の第1の金属M1を含む少なくとも1種の金属酸化物を、少なくとも1種の第2の金属M2を含むシアノメタレートと接触させて、反応混合物を形成する工程であって、シアノメタレートが、ジシアノメタレート、テトラシアノメタレート、ヘキサシアノメタレート、および/または、オクタシアノメタレートを含む、工程、ならびに
ii)反応混合物を少なくとも600℃の温度にある反応時間供する工程、
を含む、方法。
【請求項2】
1が、元素周期表の第5、6または7族から選択される遷移金属である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1が、W、Re、NbおよびMoからなるリストから、特にWおよびReから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
金属酸化物がWO3を含み、且つ/または金属酸化物がRe27を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
シアノメタレートが、テトラシアノメタレートおよび/またはヘキサシアノメタレートである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
シアノメタレートが、式M3 x[M2(CN)yz(式中、M2およびM3は同一または異なる金属であり、xは1~4の整数であり、yは4または6であり、zは1~3の整数である)を有する材料を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
xが1であり、zが1であり、yが6である、または、xが4であり、zが3であり、yが6である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
2が、元素周期表の第8および9族から選択される遷移金属である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
2が、Fe(II)、Fe(III)およびCo(III)からなるリストから選択される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
3が、K(I)、Fe(III)、Co(III)、Y(III)、Al(III)、Ga(III)、La(III)、Pr(III)およびDy(III)からなるリストから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
3が、Fe(III)およびCo(III)からなるリストから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
シアノメタレートが、Fe4[Fe(CN)63、K3[Fe(CN)6]、Y[Fe(CN)6]、Al[Fe(CN)6]、La[Fe(CN)6]、Pr[Fe(CN)6]、Dy[Fe(CN)6]、Co[Co(CN)6]、Y[Co(CN)6]、Al[Co(CN)6]、La[Co(CN)6]および/またはK3[Co(CN)6]を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
シアノメタレートが、Fe4[Fe(CN)63および/またはCo[Co(CN)6]を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
接触させる工程i)での金属酸化物とシアノメタレートとのモル比が、10:1~1:10である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
シアノメタレートおよび金属酸化物が溶媒の存在下で混ぜ合わされ、シアノメタレートが、a)シアノメタレートとb)溶媒の少なくとも一部との混合物を含むシアノゲルの形態で提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
シアノメタレートおよび金属酸化物が固体形態で提供され、接触させる工程i)が、乾式混合法を使用して金属酸化物をシアノメタレートと混ぜ合わせることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
反応混合物が600~1000℃の温度に10分~48時間の反応時間供される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
a)窒化鉄、炭化鉄、窒化コバルトおよび炭化コバルトからなるリストから選択される第1の金属窒化物および/または炭化物、ならびに
b)窒化タングステン、炭化タングステン、窒化レニウムおよび炭化レニウムからなるリストから選択される第2の金属窒化物および/または炭化物
を含む金属窒化物および/または炭化物を使用する方法であって、金属窒化物および/または炭化物が、水素化処理、水素添加、水素化脱窒素および/または水素化脱硫触媒として使用される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2016年10月5日に出願された米国特許仮出願第62/404,318号、および2016年11月30日に出願された欧州特許出願番号16201323.9の利益および優先権を主張し、これらの開示はそのすべてが参照により組み込まれる。
本発明は、金属窒化物および/または金属炭化物を製造する方法、そのように製造された金属窒化物および/または炭化物、ならびにこうした金属窒化物および/または炭化物の触媒作用での使用に関する。より詳細には、限定されるものではないが、本発明は少なくとも1種の金属酸化物および少なくとも1種のシアノメタレート(cyanometallate)から、金属窒化物および/または金属炭化物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属窒化物および金属炭化物は、様々な用途で需要の多い材料である。特に、金属窒化物および金属炭化物は触媒水素化処理に有用である。Alexander and Hargreaves, Chem. Soc, Rev., 2010, 39, 4388-4401は、モリブデンおよびタングステンを含有する金属窒化物および炭化物の触媒挙動が、それらの触媒挙動と貴金属の触媒挙動との類似性のために、多くの注目の焦点となってきたことを開示している。窒化タングステン(W2N)は、水素化処理触媒作用(J. G. Chen, Chem. Rev. 1996, 96, 1477-1498)、触媒酸化および触媒酸素還元反応(ORR)(H. J. Yan, C. G. Tian, L. Sun, B. Wang, L. Wang, J. Yin, A. P. Wu, H. G. Fu, Energy Environ. Sci., 2014, 7, 1939-1949、Y. Liu, W. E. Mustain, ACS Catal. 2011, 1, 212-220、D. Braga, I. G. Lezama, H. Berger, A. F. Morpurgo, Nano Lett., 2012, 12, 5218-5223、J. S. Jang, D. J. Ham, E. Ramasamy, J. Lee, J. S. Lee, Chem. Commun. 2010, 46, 8600-8602)で適用されてきた。金属窒化物および炭化物は、触媒作用以外の分野でも有用な用途を有している。例えば、Xiao et al., ACS Nano, 2014, 8, 7846-7857は、遷移金属炭化物が、傑出した特性、例えば高融点、高い電気的および熱的伝導性、例外的な硬さ、優れた機械的安定性、ならびに反応条件下での高い耐食性とともに化学的安定性などの普通でない組み合わせを示すことを開示している。スチール缶上への窒化タングステンコーティングは、その並外れた機械的強さに起因して、腐食および摩耗を著しく低減することができる(Wear, 2007, 262, 655-665)。窒化タングステンは、窒化タングステンの炭化物への変換(transformation)がトポタクティック(topotactic)であるので、独特の動力学的に安定な炭化タングステン相への有用な前駆体としても作用することができる(Chem. Soc. Rev., 2010, 39, 4388-4401)。金属窒化物は独特の反応性も提供し、例えば、窒化物の格子窒素の反応性種としての可能性が、Co3Mo3Nなどの混合金属窒化物について示されており(S. M. Hunter, D. Mckay, R. I. Smith, J. S. J. Hargreaves and D. H. Gregory, Chem. Mater., 2010, 22, 2898-2907、D. Mckay, D. H. Gregory, J. S. J. Hargreaves, S. M. Hunter and X.-L. Sun, Chem. Commun., 1997, 3051-3053)、ここでは、50%以下の窒素が可逆的に添加され、格子から失われ得る。窒化物中の窒素のこの可逆的な添加は、組成および相に非常に依存している。例えば、Fe3Mo3NおよびNi2Mo3Nは、N原子キャリアほど効果的ではない (J. S. J. Hargreaves and D. Mckay, J. Mol. Catal. A: Chem., 2009, 305, 125-129)。したがって、これらの混合金属窒化物の組成および相に関して、総合的に制御することが望ましい。
【0003】
窒化物を作る従来の合成法は、気固反応を介したまたは金属塩前駆体の蒸着による、金属前駆体とアンモニアとの高温反応(典型的には、800℃以上)を含む。Wriedt, Bull. of Alloy Phase Diagr., 1989, 10(4), 358-67は、タングステン膜をアンモニアと高温で接触させることによって、窒化タングステンを作る方法を開示している。Nandi et al. ACS Appl. Mater. Interfaces, 2014, 6, 6606-6615は、窒化モリブデン膜の原子層堆積(atomic layer deposition)を開示している。窒化タングステン膜の原子層堆積は、Chem. Mater, 2003, 15, 2969-2976、国際公開第00/41404号(Gelest)および Phys. Chem. Chem. Phys., 2015, 17, 17445-17453に開示されている。反応性マグネトロンスパッタリング(reactive magnetron sputtering)による窒化タングステンコーティングの堆積は、Wear, 2007, 262, 655-665に開示されている。こうした方法は典型的には材料に比較的低い表面積を提供し、厳しい条件によって粒径の正確な制御が妨げられる。そのうえ、こうした方法によって混合金属窒化物を作ることはしばしば困難または不可能である。最近、Xiao et al., ACS Nano, 2014, 8, 7846-7857は、窒素雰囲気下、600℃の温度でのZn3[Co(CN)62/ポリビニルピロリドンのナノ球体前駆体をアニールすることによって、多孔質Co3ZnCナノ粒子を作る方法を開示した。炭化鉄を作る方法は、「プルシアンブルー」(Fe4[Fe(CN)63)の熱分解による(Aparicio, C., Machala, L. & Marusak, Z., J. Therm. Anal. Calorim. 2012, 110, 661、Mohamed B. Zakaria, RSC Adv., 2016, 6, 10341)。金属窒化物を作る類似の手法は知られていない。ある特定の金属窒化物は、超臨界的アンモニアの使用によって低温で調製されている(J. Mater. Chem., 2004, 14, 228-32)が、プロセスは非常に高い圧力および特殊な装置を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
専門家の使用および/または複雑なプロセス装置を必要としない、様々な金属窒化物および炭化物を作るための、低温、低コスト、且つ一般化された合成経路に対する必要性が依然として存在する。より具体的には、容易に入手可能な出発材料から、金属窒化物および炭化物を作る簡便な経路の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様によれば、本発明は、金属窒化物および/または金属炭化物を製造する方法であって、i)少なくとも1種の第1の金属M1を含む少なくとも1種の金属酸化物を、少なくとも1種の第2の金属M2を含むシアノメタレートと接触させて、反応混合物を形成する工程、およびii)反応混合物を少なくとも300℃の温度にある反応時間供する工程を含む、方法を提供する。該方法は金属窒化物を製造する方法であってもよい。該方法は金属炭化物を製造する方法であってもよい。
【0006】
本発明者らは、驚くべきことに、金属酸化物とシアノメタレートの混合物を少なくとも300℃の温度に熱することが、容易に入手可能で比較的安価な前駆体から、金属窒化物および/または金属炭化物を作る、特に簡便で効率的な方法を提供することを見出した。特に、本発明者らは、比較的穏やかな反応条件下で金属窒化物および/または金属炭化物を製造するために、本発明の方法を使用することができることを見出した。そのうえ、本発明の第1の態様の方法は、例えば異なる金属酸化物およびシアノメタレートの前駆体の使用によって、様々な異なる金属窒化物および/または金属炭化物を作る調整可能な方法を提供する。
【0007】
第2の態様によれば、本発明は、a)窒化鉄、炭化鉄、窒化コバルトおよび炭化コバルトからなるリストから選択される第1の金属窒化物および/または炭化物、ならびにb)窒化タングステン、炭化タングステン、窒化レニウムおよび炭化レニウムからなるリストから選択される第2の金属窒化物および/または炭化物を含む金属窒化物および/または炭化物を提供する。金属窒化物および/または金属炭化物は、窒化タングステン、ならびに窒化鉄および炭化鉄の少なくとも1つ、例えば窒化タングステン、窒化鉄および炭化鉄、例えばW2N、Fe4NおよびFe3Cを含んでもよい。こうした金属窒化物および/または炭化物は、触媒として特に有用であり、且つ/または容易に入手可能で比較的低コストの出発物質から特に簡便な経路によって調製することができる可能性がある。
第3の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様による方法によって調製された金属窒化物および/または金属炭化物を提供し、ここで金属窒化物および/または金属炭化物は、本発明の第2の態様による金属窒化物および/または金属炭化物であってもよい。
第4の態様によれば、本発明は、第2または第3の態様の金属窒化物および/または金属炭化物の、触媒としての使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】シアノメタレートおよび金属酸化物の前駆体、ならびに様々な温度で様々な時間加熱した後の反応混合物の赤外(IR)スペクトルを示す図である。
図2】シアノメタレートおよび金属酸化物の前駆体、ならびに様々な温度で加熱した後の反応混合物の粉末X線回折図形を示す図である。
図3】600℃の温度に3時間供した、シアノメタレート前駆体と金属酸化物前駆体との混合物の反応生成物の、走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。
図4図3の画像の拡大した部分を示す図である。
図5】600℃の温度に2時間供した、シアノメタレート前駆体と金属酸化物前駆体との混合物の反応生成物の、透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明では、金属酸化物は少なくとも1種の第1の金属M1を含む。好都合には、M1は遷移金属である。本明細書で使用する場合、「遷移金属」という用語は元素周期表のd-ブロックまたはf-ブロックの元素を意味し、元素周期表の第3~12族の元素、ならびにランタン系列およびアクチニド系列の元素を含む。M1は、例えば元素周期表のd-ブロックから選択される遷移金属であってもよく、好ましくは、元素周期表の第5、6または7族から選択され、例えば、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)およびレニウム(Re)からなるリストから選択される。第5、6または7族から選択される遷移金属である、少なくとも1種の第1の金属M1を含む金属酸化物は、本発明の方法でシアノメタレートと特によく反応し得る。M1は、例えばニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、およびレニウム(Re)からなるリストから選択され得る。M1がNb、Mo、WまたはReである場合、金属酸化物とシアノメタレートとの反応は、特に効率的に進行し得る。特定の実施形態では、M1はタングステン(W)またはレニウム(Re)、より具体的にはタングステン(W)であり得る。M1がWまたはReである場合、結果として得られる金属窒化物および/または炭化物は、例えば触媒作用で特に有用であり得る。その特定の実施形態では、金属酸化物はWO3、特にタングステン酸、および/またはRe27、特に過レニウム酸を含み得る。WO3、特にタングステン酸、およびRe27、特に過レニウム酸は、シアノメタレートと容易に反応し、タングステンおよび/またはレニウムを含有する金属窒化物および/または金属炭化物を製造し得る。さらに特定の実施形態では、金属酸化物は、WO3、特にタングステン酸を含み得る。
【0010】
本発明で使用するシアノメタレートは、ジシアノメタレート、テトラシアノメタレート、ヘキサシアノメタレート、および/またはオクタシアノメタレート、好ましくはテトラシアノメタレートおよび/またはヘキサシアノメタレートを含み得る。好ましくは、シアノメタレートはヘキサシアノメタレートである。ジシアノメタレートは2つのシアン化物配位子に配位した金属中心を含み、テトラシアノメタレートは4つのシアン化物配位子に配位した金属中心を含み、ヘキサシアノメタレートは6つのシアン化物配位子に配位した金属中心を含み、オクタシアノメタレートは8つのシアン化物配位子に配位した金属中心を含むと認識されるであろう。テトラシアノメタレートおよび/またはヘキサシアノメタレート、例えばことにヘキサシアノメタレートは、本発明の方法で使用するのに特に効率的で簡便なシアノメタレート前駆体を提供し得る。好ましくは、シアノメタレートがジシアノメタレートを含む場合、ジシアノメタレートは銅(Cu)、銀(Ag)または金(Au)を含む。好ましくは、シアノメタレートがテトラシアノメタレートを含む場合、テトラシアノメタレートはニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)および/または白金(Pt)を含む。好ましくは、シアノメタレートがヘキサシアノメタレートを含む場合、ヘキサシアノメタレートはチタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、および/またはコバルト(Co)を含む。好ましくは、シアノメタレートがオクタシアノメタレートを含む場合、オクタシアノメタレートはモリブデン(Mo)を含む。
【0011】
好ましくは、シアノメタレートは、式M3 x[M2(CN)yz(式中、M2およびM3は同一または異なる金属であり、特にxは1~4の整数、特に1または4であり、好ましくはyは4または6であり、好ましくはzは1~3の整数、特に1または3である)を有する材料を含む。xは1であり、zは1であり、yは6であってもよい。xは4であり、zは3であり、yは6であってもよい。好都合には、M2は遷移金属である。M2は、例えば元素周期表の第8および9族から、例えば鉄(Fe)およびコバルト(Co)からなるリストから、特にFe(II)、Fe(III)およびCo(III)から選択され得る。特に有利なシアノメタレートアニオンは、式[Fe(II)(CN6)]4-、[Fe(III)(CN)63-、および[Co(III)(CN)63-である。理論によって拘束されることを望むものではないが、本発明の方法は、例えば、M3がアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、希土類金属(すなわち、ランタンまたはアクチニド系列からの金属)、または元素周期表の第13~16族のポスト遷移金属(post-transition metal)であるシアノメタレート、好ましくは金属M3がアルカリ金属、遷移金属、ランタン系列からの希土類金属または元素周期表の第13族のポスト遷移金属であるシアノメタレートを含む、金属M3として多種多様な異なる金属を含むシアノメタレートでよく機能すると本発明者らは信じている。ポスト遷移金属は、元素周期表の遷移金属と半金属との間に位置する金属元素であり、例えば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)およびビスマス(Bi)を含むと認識されるであろう。M3は、例えばカリウム(K)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、イットリウム(Y)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)およびジスプロシウム(Dy)からなるリストから選択され得る。好ましくは、M3は、K(I)、Fe(III)、Co(III)、Y(III)、Al(III)、Ga(III)、La(III)、Pr(III)またはDy(III)である。好ましくは、M3は3価の金属カチオンである。本明細書で使用する場合、「3価の金属カチオン」という用語は、3+酸化状態の金属カチオンである。好都合には、M3は遷移金属である。M3は、例えば元素周期表の第3族、8族、9族またはランタン系列から選択され得る。特定の実施形態では、M3はFe(III)またはCo(III)であり得る。本出願では、M2およびM3は同一または異なることができ、有利には同一である。シアノメタレートの好適な例は、Fe4[Fe(CN)63、K3[Fe(CN)6]、Y[Fe(CN)6]、Al[Fe(CN)6]、La[Fe(CN)6]、Pr[Fe(CN)6]、Dy[Fe(CN)6]、Co[Co(CN)6]、Y[Co(CN)6]、Al[Co(CN)6]、La[Co(CN)6]および/またはK3[Co(CN)6]、特にFe4[Fe(CN)63および/またはCo[Co(CN)6]を含む。
【0012】
本発明の方法では、接触させる工程i)での金属酸化物とシアノメタレートとのモル比は、20:1~1:20、例えば10:1~1:10、例えば10:1~1:5、特に10:1~1:1の範囲であってもよい。さらにまたは代わりに、接触させる工程i)での比 M1:M2+M3のモル比は、5:1~1:5、例えば3:1~1:3、例えば2:1~1:2の範囲であってもよく、特に約1:1である。限られたモル比は、過剰材料の不必要な浪費を回避するのを助け得る。
【0013】
金属酸化物をシアノメタレートと接触させて反応混合物を形成する工程は、金属酸化物とシアノメタレートとの均質混合物(intimate mixture)を形成することを含んでもよい。金属酸化物とシアノメタレートとの均質混合物の形成は、反応効率を増加し、したがって、前記前駆体の所望の金属窒化物および/または金属炭化物へのより良好な転化(conversion)を提供し得る。少なくとも1種の金属酸化物とシアノメタレートとの接触は、溶媒の存在下または不在下で行われ得る。溶媒が存在する場合、それは典型的には水、有機溶媒、およびこれらの混合物、ことに水から選択され得る。溶媒の少なくとも一部として水を使用する、または溶媒を使用しないことにより、例えばより少ない有機溶媒の使用を通して、金属窒化物および/または金属炭化物を作るための、特に環境に優しく比較的安全な方法を提供できることが認識されるであろう。
【0014】
例えば、一実施形態では、シアノメタレートおよび金属酸化物を固体形態で提供してもよく、例えばシアノメタレートおよび金属酸化物を、結晶または粉末の形態で提供して、シアノメタレートおよび金属酸化物を乾式混合することによって、反応混合物形成の接触させる工程i)を実行してもよい。「乾式混合」という用語は、実質的に溶媒を使用することなく材料を一緒に混合する方法を意味することが、認識されるであろう。「乾式混合」という用語が、液体溶媒を使用せず2つの固体を混ぜ合わせる(combine)任意の混合方法を含み、したがって、例えば溶媒和物と共結晶化した(co-crystallise)化合物を含む固体材料の使用を除外しないことも、認識されるであろう。乾式混合法の好適な例としては、粉砕(例えば、ボールミル粉砕)、ならびに基本的方法、例えば、乳棒および乳鉢を使用する固体-固体混合が挙げられる。
【0015】
別の実施形態では、シアノメタレートと金属酸化物とを溶媒の存在下で混ぜ合わせてもよい。特に、本発明の方法で使用するシアノメタレートは、シアノゲル(cyanogel)の形態で提供されてもよく、シアノゲルは以下の混合物:a)シアノメタレート、およびb)溶媒の少なくとも一部、を含む。本明細書で使用する場合、「シアノゲル」という用語は、シアノメタレートと溶媒との混合物を意味し、例えば溶媒とシアノメタレート(例えば粉末の形態)とを混ぜ合わせ、結果として得られる混合物を撹拌することによって形成される。混合は、任意の好適な方法、例えば、撹拌プレート上で磁気撹拌子を使用して達成することができる。シアノゲルは、溶液、ゲルまたは固体(例えば、溶媒が収着(sorption)によってシアノメタレートに吸収された固体粉末または結晶材料)の形態であり得る。シアノメタレートが、シアノメタレートと溶媒の少なくとも一部とを含むシアノゲルの形態で提供される場合、金属酸化物とシアノメタレートとの反応混合物を形成する工程は、特に効率的で単純な様式で実行され得る。例えば、シアノゲルの使用は、反応混合物を形成する工程で、ことにシアノメタレートと金属酸化物との均質混合物の形成を可能にし得る。シアノメタレートおよび水を含むシアノゲルの使用によって、例えばより少ない有機溶媒の使用を通して、金属窒化物および/または金属炭化物を作るための、特に環境に優しく比較的安全な方法を提供できることが認識されるであろう。この特定の実施形態では、金属酸化物をシアノメタレートと接触させて反応混合物を形成する工程が、金属酸化物とシアノメタレートとの均質混合物を形成することを含む場合、シアノメタレートはシアノゲル、好ましくはシアノメタレートと溶媒との混合物を含むシアノゲルの形態で提供され、金属酸化物は好ましくは固体、例えば結晶または粉末の形態で提供される。シアノゲルと金属酸化物との混合は、任意の好適な方法、例えば、反応混合物の粘度に応じて、ボールミル粉砕および撹拌プレート上の磁気撹拌子を使用して達成することができる。シアノゲルが溶媒の一部しか含まない場合、前記混合をさらなる量の溶媒の存在下で行ってもよい。
【0016】
本発明の第1の態様の方法は、反応混合物を少なくとも300℃の温度に、好ましくはシアノメタレートの分解温度以上の温度に供することを含む。本明細書で使用する場合、物質の「分解温度」は、物質が分解して1種以上の化学的に異なる種を形成する温度である。例えば、反応混合物は少なくとも400℃、例えば少なくとも500℃、特に少なくとも600℃の温度に供され得る。好適な温度範囲は、300~1000℃、例えば400~900℃、特に500~800℃、例えば600~700℃の温度を含み得る。より高い温度は、シアノメタレートと金属酸化物との間のより速い反応を促進し得る。反応混合物を供する温度は、効率的な反応速度を提供することと、窒化物および/または炭化物生成物の不要な熱分解を回避することとのバランスであり得る。反応混合物を供する温度は、効率的な反応速度を提供することと、高価な特殊装置の必要性を回避することとのバランスでもあり得る。
【0017】
反応時間は典型的には48時間以下、例えば24時間以下、特に12時間以下である。例えば、反応時間は10分~48時間、例えば20分~24時間、特に30分~12時間であり得る。反応時間は、妥当な量の所望の金属窒化物および/または金属炭化物を形成する十分な時間を可能にすることと、所望の金属窒化物および/もしくは金属炭化物生成物、ならびに/または金属酸化物および/もしくはシアノメタレートの前駆体の不要な熱分解を防ぐまたは減少させることとのバランスであり得る。
【0018】
本発明の第3の態様の好ましい実施形態では、金属窒化物および/または金属炭化物は、窒化タングステン、窒化モリブデン、窒化ニオブ、窒化レニウム、炭化タングステン、炭化モリブデン、炭化ニオブおよび炭化レニウム、特に窒化タングステンまたは炭化レニウムからなるリストから選択される材料を含む。例えば、金属窒化物および/または金属炭化物は金属窒化物、好ましくは窒化タングステン、例えばW2Nである。金属窒化物および/または炭化物は金属炭化物、好ましくは炭化レニウムであってもよい。本発明の第3の態様の金属窒化物および/または金属炭化物は、少なくとも2種の異なる金属、例えば本発明の第1の態様で規定される第1の金属M1、特にW、Mo、NbおよびReからなるリストから選択される第1の金属、ならびに本発明の第1の態様で規定される第2の金属M2、特にFeおよびCoからなるリストから選択される第2の金属も含んでもよい。例えば、本発明の第3の態様の金属窒化物および/または金属炭化物は、a)鉄の窒化物および/もしくは炭化物、またはコバルトの窒化物および/もしくは炭化物、特に鉄の窒化物および/または炭化物の少なくとも1つ;ならびにb)タングステン、モリブデン、ニオブもしくはレニウムの窒化物および/または炭化物、ことに窒化タングステンもしくは炭化レニウム、特に窒化タングステンの少なくとも1つを含んでもよい。さらに特定の実施形態では、本発明の第2もしくは第3の態様の金属窒化物および/または金属炭化物は、窒化タングステン、ならびに窒化鉄および炭化鉄の少なくとも1つ、例えば窒化タングステン、窒化鉄および炭化鉄、例えばW2N、Fe4NおよびFe3Cを含む。こうした金属窒化物および/または炭化物は、触媒として特に有用であり、且つ/または容易に入手可能で比較的低コストの出発物質から特に簡便な経路によって調製し得る。
本発明の第2または第3の態様の金属窒化物および/または金属炭化物は、典型的には結晶材料または粉末の形態をしている。
【0019】
金属窒化物および/または金属炭化物はFe4Nを含んでもよく、金属窒化物および/または炭化物の粉末X線回折パターンは、以下の2θ値:23.45、33.36、41.17、47.91、53.99、59.64、70.06、75.02、79.87、84.65、94.03、98.87および108.52を有するピークを含み、粉末X線回折パターンは、CuKα、λ=1.5405Å、0.02°のステップサイズを使用する5°≦2θ≦70°の範囲内の放射線源、1秒/ステップのカウント時間、1/4角度入射スリット(1/4 angle incident slit)、45kv、および40mAの電流を使用する回折計で収集される。
【0020】
さらにまたは代わりに、金属窒化物および/または金属炭化物はFe3Cを含んでもよく、金属窒化物および/または炭化物の粉末X線回折パターンは、以下の2θ値:26.19、31.36、33.93、35.89、41.78、43.92、47.05、50.08、53.89、55.66、59.18、60.46、61.80、63.20、67.31、76.81、79.87、83.22、86.90、91.00および95.57を有するピークを含み、粉末X線回折パターンは、CuKα、λ=1.5405Å、0.02°のステップサイズを使用する5°≦2θ≦70°の範囲内の放射線源、1秒/ステップのカウント時間、1/4角度入射スリット、45kv、および40mAの電流を使用する回折計で収集される。
さらにまたは代わりに、金属窒化物および/または金属炭化物はW2Nを含み、金属窒化物および/または炭化物の粉末X線回折パターンは、以下の2θ値:37.73、43.85、63.73、76.51、80.59、96.68、108.86および113.14を有するピークを含み、粉末X線回折パターンは、CuKα、λ=1.5405Å、0.02°のステップサイズを使用する5°≦2θ≦70°の範囲内の放射線源、1秒/ステップのカウント時間、1/4角度入射スリット、45kv、および40mAの電流を使用する回折計で収集される。
【0021】
本発明の第4の態様によれば、本発明の金属窒化物および/または金属炭化物は、水素化処理触媒を形成するために(または水素化処理触媒として)使用され得る。水素化処理触媒は、例えば、様々な異なる水素化処理用途、例えば水素化分解、水素化脱窒素、水素化脱硫、水素化精製、ハイドロホーミング、水素添加および/または水素処理(hydrotreating)で使用され得ると認識されるであろう。好ましくは、触媒は水素添加、水素化脱窒素および/または水素化脱硫触媒である。窒化タングステン含有金属窒化物触媒は、水素化処理触媒として、例えば水素添加、水素化脱窒素および/または水素化脱硫触媒として特に有用であり得る。例えば、触媒はシクロパラフィンの水添分解(hydrogenolysis)用の触媒であり得る。
本発明の1つの態様に関連して記述された特徴が、本発明の他の態様へ組み込まれ得ることは、当然認識されるであろう。例えば、本発明の第2または第3の態様の金属炭化物および/または窒化物は、本発明の第1の態様の方法に関して記述する任意の特徴を組み込んでもよく、逆もまた同様である。
【実施例
【0022】
以下の例は本発明を説明する。多数の修正および変化は可能であり、添付の特許請求の範囲内で、本発明は本明細書に具体的に記述された以外の方法で実施され得ることを理解すべきである。粉末XRDデータを、CuKα(λ=1.5405Å)放射線を装備したその場(in situ)PANalytical X線回折計を使用し、窒素および酸素フロー下で、5°≦2θ≦70°範囲内(ステップサイズ:0.02°、カウント時間:1秒/ステップ、1/4角度入射スリット、45kv、および40mAの電流)で収集した。
IRデータは、Vertex 80、Praying Mentis IR分光計を使用し、128バックグラウンドスキャン、128試料スキャン、64良好(good)FWスキャンおよび64良好BWスキャンによるドリフトモードで収集した。
「プルシアンブルー」(Fe4[Fe(CN)63)を濃青色/紫色の結晶性粉末としてSigma-Adrich(登録商標)から入手し、そのまま使用した。Fe4[Fe(CN)63の赤外スペクトルを、図1にトレースDとして示す。Fe4[Fe(CN)63の粉末X線回折パターンを、図2にトレースDとして示す。
【0023】
タングステン酸(H2WO4)を黄色-オレンジ色の粉末(純度99%)としてSigma-Aldrich(登録商標)から入手し、そのまま使用した。H2WO4の赤外スペクトルを、図1にトレースEとして示す。H2WO4の粉末X線回折パターンを、図2にトレースEとして示す。
硝酸イットリウム(III)水和物(Y(NO33.xH2O)およびヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム(K3[Fe(CN)6])をSigma-Aldrich(登録商標)から入手した。
【0024】
混合遷移金属シアノメタレート調製の典型的な手順は、以下のとおりである:Y(NO33.xH2O(10mmol)を水(50mL)中K3[Fe(CN)6](10mmol)溶液に添加し、黄色がかった茶色の沈殿物をもたらす。沈殿物をろ過によって収集し、副産物KNO3を除去するために水(20mL)で洗浄した。結果として得られる固体を120℃で終夜乾燥し、約75%の収率でY[Fe(CN)6]を得た。Y[Fe(CN)6]生成物の試料を、その正体を確認するために粉末X線回折によって試験した。
特に断らない限り、以下の例で使用するシアノゲルは、シアノメタレートと溶媒(典型的には、Fe4[Fe(CN)63および水)とをビーカー中で混ぜ合わせ、手動で混合物を撹拌することによって調製した。
特に断らない限り、以下の例で製造する金属窒化物/炭化物試料は結晶材料の形態で得た。
Ce/ZrO2(セリア-ジルコニア)、硫酸化ZrO2(硫酸化ジルコニア)およびW/ZrO2(タングステン酸ジルコニア)は、商業的サプライヤーから入手したブレンステッド酸性担体であり、修正せずに使用した。
【0025】
(例1)
2WO4(5g)とFe4[Fe(CN)63(2.4g)とを、7:1のH2WO4とFe4[Fe(CN)63とのモル比(1:1のW:Feモル比を与える)で、乳棒および乳鉢を使用する固体-固体混合によって一緒に混ぜ合わせ、均質な固体混合物を形成した。結果として得られる混合物の試料(2g)を窒素雰囲気下で600℃の温度に1時間供し、金属窒化物/炭化物試料X1aを形成した。試料X1aの赤外スペクトルを、図1にトレースCとして示す。次に試料X1aを窒素雰囲気下で600℃の温度にさらに12時間供し、金属窒化物/炭化物試料X1bを形成した。試料X1bの赤外スペクトルを、図1にトレースBとして示す。混合物のさらなる試料(2g)を、窒素雰囲気下で750℃の温度に1時間供し、金属窒化物/炭化物試料X2を形成した。試料X2の赤外スペクトルを、図1にトレースAとして示す。
図1に提示するIRデータは、固体-固体混合の後にFe4[Fe(CN)63をH2WO4とともに加熱するにつれて、CN伸縮振動数(CN伸張振動数は約2100cm-1である)およびW=O伸縮振動数(WO伸縮振動数は約950cm-1である)の欠如を示し、その結果として、CNおよびWOのピークの少なくとも部分的な消失を通して、シアノメタレートおよび金属酸化物の前駆体が所望の金属窒化物/炭化物へ変換したことを示している。形成された新しい材料は、概してIR不活性であると考えられる。
【0026】
(例2)
2WO4(5g)とFe4[Fe(CN)63(2.4g)とを、7:1のH2WO4とFe4[Fe(CN)63とのモル比(1:1のW:Feモル比を与える)で、乳棒および乳鉢を使用する固体-固体混合によって一緒に混ぜ合わせ、均質な固体混合物を形成した。結果として得られる混合物の試料(2g)を、窒素雰囲気下で450℃の温度に1時間供し、金属窒化物/炭化物試料X3を形成した。試料X3の粉末X線回折パターンを、図2にトレースCとして示す。混合物のさらなる試料(2g)を窒素雰囲気下で600℃の温度に1時間供し、金属窒化物/炭化物試料X4を形成した。試料X4の赤外スペクトルを、図2にトレースBとして示す。混合物のさらなる試料(0.1g)を窒素雰囲気下で750℃の温度に1時間供し、金属窒化物/炭化物試料X5を形成した。試料X5の赤外スペクトルを、図2にトレースAとして示す。
【0027】
窒化タングステン(W2N)にインデックス付けしたピークを、(J. Mater. Chem., 2011, 21, 10761-66に公表されたデータを参照して)図2に100、101、102、220および201のラベルを付けた線によって示し、試料X3~X5にW2Nが存在することを示している。試料X3~X5は他の金属窒化物および金属炭化物、例えば、Fe4N、C34、Fe3CおよびFe23も含有している。W2N、Fe4NおよびFe3Cに対する2θピークのインデックスを表1に列挙する(生成物および副生物は、各個々の種に対する文献値との比較によって特定される-W2N:Fiala, Central Research Institute, SKODA, Czechoslovakia, Private Communication (1973)、Fe4N:Jack. Proc. R. Soc. London, Ser. A 195, 34 (1948)、Fe3C:Konobejewski. Z. Kristallogr., Kristallgeom., Kristallphys., Kristallchem. 72, 386 (1929))。表1に列挙されたピークのすべてが、図2に示される粉末X線回折パターンの分解能で目視可能だとは限らない。
【0028】
【表1】

図2の粉末X線回折パターンは、金属酸化物およびシアノメタレートの前駆体が、適度な温度で比較的短時間加熱した後に、金属窒化物および炭化物へ変換したことを示している。
【0029】
(例3)
2WO4(2.5g)ならびにシアノゲル(Fe4[Fe(CN)63(1.2g)および水(50mL)を含む)(1:1のW:Feモル比を与える)を、7:1のH2WO4とFe4[Fe(CN)63とのモル比(1:1のW:Feモル比を与える)で、250mLビーカー中で一緒に混合し、均質混合物を形成した。結果として得られる混合物の試料(3g)を窒素雰囲気下で600℃の温度に3時間供し、金属窒化物/炭化物試料X6を形成した。プレート様の形態を示す、試料X6の走査電子顕微鏡(SEM)画像を得た(SEM画像の概観を図3および4に示す)。
【0030】
(例4)
2WO4(2.5g)ならびにシアノゲル(Fe4[Fe(CN)63(1.2g)および水(50mL)を含む)を7:1のH2WO4とFe4[Fe(CN)63とのモル比(1:1のW:Feモル比を与える)で、250mLビーカー中で一緒に混合し、均質混合物を形成した。結果として得られる混合物の試料(3g)を窒素雰囲気下で600℃の温度に3時間供し、金属窒化物/炭化物試料X7を形成した。明白な相偏析(phase segregation)を示さない試料X7の透過型電子顕微鏡画像を得た(画像の概観を図5に示す)。
【0031】
(例5)
未処理のFe4[Fe(CN)63(P1)およびH2WO4(T1)の試料を、X線光電子分光法を使用して別々に分析し、その結果を表2に提示する。Fe4[Fe(CN)63のさらなる試料を600℃の温度に1時間供し、試料P2を得た。試料P2もX線光電子分光法を使用して分析し、その結果を表2に提示する。
2WO4(5g)とFe4[Fe(CN)63(2.4g)とを、7:1のH2WO4とFe4[Fe(CN)63とのモル比(1:1のW:Feモル比を与える)で、乳棒および乳鉢を使用する固体-固体混合によって一緒に混ぜ合わせ、均質な固体混合物を形成した。結果として得られる混合物の試料(2g)を窒素雰囲気下で350℃の温度に1時間供し、金属窒化物/炭化物試料X8を形成した。混合物のさらなる試料(1g)を窒素雰囲気下で450℃の温度に1時間供し、金属窒化物/炭化物試料X9を形成した。混合物のさらなる試料(1g)を窒素雰囲気下で600℃の温度に1時間供し、金属窒化物/炭化物試料X10を形成した。混合物のさらなる試料(1g)を窒素雰囲気下で600℃の温度に2時間供し、金属窒化物/炭化物試料X11を形成した。混合物のさらなる試料(1g)を窒素雰囲気下で600℃の温度に3時間供し、金属窒化物/炭化物試料X12を形成した。混合物のさらなる試料(1g)を窒素雰囲気下で750℃の温度に1時間供し、金属窒化物/炭化物試料X13を形成した。X8~X13の各試料をX線光電子分光法を使用して分析し、その結果を表2に提示する。
【0032】
【表2】
【0033】
表2に提示するX線光電子分光法の結果は、金属酸化物前駆体とシアノメタレート前駆体との混合物を加熱するとともに、混合物からの金属窒化物の形成を実証している。XPSは、試料の比較的小さな部分の表面に何の材料が存在するかについてのみ表示を与える、表面に限定された技法であることを留意すべきである。したがって、それは、試料全材料の組成の表示を与えず、したがって、窒化物生成物の形成が完全であるかまたはそうでないかの量的推計を提供しない。
【0034】
(例6)
例3で調製した試料X6の生成物を、シクロパラフィン水添分解での触媒として、以下に提示する触媒ランによって試験した。
【0035】
ラン1
試料X6(0.2g)とEHC-50(約80%のナフテン環および約20%の芳香環を含むAPI Group IIベースストック(base stock))(3g)とを混ぜ合わせ、オートクレーブ中で600RPMに撹拌しながら、H2圧力下(900psig、62barg)で300°Cに6時間加熱した。
ラン2
試料X6(0.2g)、約10%Ce/ZrO2(0.2g)およびEHC-50(約80%のシクロパラフィンおよび約20%の芳香環を含むAPI Group IIベースストック)(3g)を混ぜ合わせ、オートクレーブ中で600RPMに撹拌しながら、H2圧力下(900psig、62barg)で300°Cに6時間加熱した。
ラン3
試料X6(0.2g)、硫酸化ZrO2(約2.3%のS)(0.2g)およびEHC-50(約80%のシクロパラフィンおよび約20%の芳香環を含むAPI Group IIベースストック)(3g)を混ぜ合わせ、オートクレーブ中で600RPMに撹拌しながら、H2圧力下(900psig、62barg)で300°Cに6時間加熱した。
ラン4
試料X6(0.2g)、約15%W/ZrO2(0.2g)およびEHC-50(約80%のシクロパラフィンおよび約20%の芳香環を含むAPI Group IIベースストック)を混ぜ合わせ、オートクレーブ中で600RPMに撹拌しながら、H2圧力下(900psig、62barg)で300°Cに6時間加熱した。
【0036】
ラン1~4の生成物を、GCMSおよびSFC(超臨界流体クロマトグラフィー)によって分析した。GCMSからのデータは、供給原料ではより高いナフテンおよび生成物ではより低いことを示す点で、SFCデータと一致している。データは、パラフィンが生成物ではより高く、供給原料ではより低いことも示した。触媒ランの結果は、X6触媒がシクロパラフィンのイソ-パラフィンへの転化に効果的であることを示している。
【0037】
前の記述で、既知、明白または予測可能な等価物を有する整数または要素が述べられている場合、こうした等価物は個々に述べられたかのように本明細書に組み込まれる。本発明の真の範囲を決定するために特許請求の範囲を参照すべきであり、それはいかなるこうした等価物も包含するように解釈されるべきである。好ましい、有利な、簡便なまたはこれに類するものと記述される本発明の整数または特徴は任意であり、独立した特許請求の範囲を限定しないことも読者によって認識されるであろう。そのうえ、こうした任意の整数または特徴は、本発明のいくつかの実施形態では有益であり得る一方、他の実施形態では望ましくない可能性があり、したがって存在しない可能性があることを理解すべきである。
【0038】
さらにまたは代わりに(alternately)、本発明は以下に関する。
実施形態1:金属窒化物および/または金属炭化物を製造する方法であって、
i)少なくとも1種の第1の金属M1を含む少なくとも1種の金属酸化物を、少なくとも1種の第2の金属M2を含むシアノメタレートと接触させて、反応混合物を形成する工程、および
ii)反応混合物を少なくとも300℃の温度にある反応時間供する工程、
を含む、方法。
実施形態2:M1が遷移金属であり、好ましくはM1は元素周期表の第5、6または7族から選択される、実施形態1による方法。
実施形態3:M1が、W、Re、NbおよびMoからなるリストから、特にWおよびReから選択される、実施形態1または2による方法。
実施形態4:金属酸化物がWO3、特にタングステン酸を含み、且つ/または金属酸化物がRe27、特に過レニウム酸を含む、前述の実施形態のいずれかによる方法。
実施形態5:シアノメタレートが、ジシアノメタレート、テトラシアノメタレート、ヘキサシアノメタレート、および/またはオクタシアノメタレート、好ましくはテトラシアノメタレートおよび/またはヘキサシアノメタレートを含む、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0039】
実施形態6:シアノメタレートが、式M3 x[M2(CN)yz(式中、M2およびM3は同一または異なる金属であり、好ましくはxは1~4の整数であり、好ましくはyは4もしくは6であり、好ましくはzは1~3の整数であり、より好ましくはxは1であり、zは1であり、yは6である、または、xは4であり、zは3であり、yは6である)を有する材料を含む、前述の実施形態のいずれかによる方法。
実施形態7:M2が遷移金属であり、好ましくはM2が元素周期表の第8族および9族から選択される、前述の実施形態のいずれかによる方法。
実施形態8:M2が、Fe(II)、Fe(III)およびCo(III)からなるリストから選択される、前述の実施形態のいずれかによる方法。
実施形態9:M3が遷移金属であり、好ましくはM3が元素周期表の第3族、8族、9族またはランタン系列から選択される、実施形態6~8のいずれか1つによる方法。
実施形態10:M3が、K(I)、Fe(III)、Co(III)、Y(III)、Al(III)、Ga(III)、La(III)、Pr(III)およびDy(III)からなるリストから、好ましくはFe(III)およびCo(III)からなるリストから選択される、実施形態6~8のいずれか1つによる方法。
【0040】
実施形態11:シアノメタレートが、Fe4[Fe(CN)63、K3[Fe(CN)6]、Y[Fe(CN)6]、Al[Fe(CN)6]、La[Fe(CN)6]、Pr[Fe(CN)6]、Dy[Fe(CN)6]、Co[Co(CN)6]、Y[Co(CN)6]、Al[Co(CN)6]、La[Co(CN)6]および/またはK3[Co(CN)6]、好ましくはFe4[Fe(CN)63および/またはCo[Co(CN)6]を含む、前述の実施形態のいずれかによる方法。
実施形態12:接触させる工程i)での金属酸化物とシアノメタレートとのモル比が、10:1~1:10、好ましくは10:1~1:5、より好ましくは10:1~1:1である、前述の実施形態のいずれかによる方法。
実施形態13:工程i)で金属酸化物をシアノメタレートと接触させて反応混合物を形成する工程が、溶媒が存在してもよい状態下で、金属酸化物とシアノメタレートとの均質混合物を形成することを含む、前述の実施形態のいずれかによる方法。
実施形態14:溶媒が水、有機溶媒およびそれらの混合物から選択され、より好ましくは溶媒が水である、実施形態13による方法。
実施形態15:シアノメタレートおよび金属酸化物が溶媒の存在下で混ぜ合わされ、シアノメタレートが、a)シアノメタレートとb)溶媒の少なくとも一部との混合物を含むシアノゲルの形態で提供される、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0041】
実施形態16:シアノメタレートおよび金属酸化物が固体形態で提供され、接触させる工程i)が、乾式混合法、特にボールミル粉砕を使用して、金属酸化物をシアノメタレートと混ぜ合わせることを含む、実施形態1~13のいずれか1つによる方法。
実施形態17:反応混合物が少なくとも400℃、例えば少なくとも500℃、特に少なくとも600℃の温度に供される、前述の実施形態のいずれかによる方法。
実施形態18:反応混合物が300~1000℃、例えば400~900℃、特に500~800℃の温度に供される、前述の実施形態のいずれかによる方法。
実施形態19:反応時間が48時間以下、例えば24時間以下、特に12時間以下である、前述の実施形態のいずれかによる方法。
実施形態20:反応時間が10分~48時間、例えば20分~24時間、特に30分~12時間である、前述の実施形態のいずれかによる方法。
【0042】
実施形態21:
a)窒化鉄、炭化鉄、窒化コバルトおよび炭化コバルトからなるリストから選択される第1の金属窒化物および/または炭化物、ならびに
b)窒化タングステン、炭化タングステン、窒化レニウムおよび炭化レニウムからなるリストから選択される第2の金属窒化物および/または炭化物
を含む金属窒化物および/または金属炭化物。
実施形態22:窒化タングステン、ならびに窒化鉄および炭化鉄の少なくとも1つを含む、実施形態21による金属窒化物および/または金属炭化物。
実施形態23:実施形態1~20のいずれか1つによる方法によって調製された、実施形態21もしくは実施形態22による金属窒化物および/または金属炭化物。
実施形態24:実施形態1~20のいずれか1つによる方法によって調製された、金属窒化物および/または金属炭化物。
実施形態25:金属窒化物および/または金属炭化物が、少なくとも2種の異なる金属、特に:W、Mo、NbおよびReからなるリストから選択される第1の金属M1;ならびにFeおよびCoからなるリストから選択される第2の金属M2を含む、実施形態24による金属窒化物および/または金属炭化物。
【0043】
実施形態26:窒化タングステン、窒化モリブデン、窒化ニオブ、窒化レニウム、炭化タングステン、炭化モリブデン、炭化ニオブおよび炭化レニウム、好ましくは窒化タングステンおよび炭化レニウムからなるリストから選択される材料を含む、実施形態24または実施形態25による金属窒化物および/または金属炭化物。
実施形態27:窒化タングステン、ならびに窒化鉄および炭化鉄の少なくとも1つを含む、実施形態24~26のいずれか1つによる金属窒化物および/または金属炭化物。
実施形態28:金属窒化物および/または金属炭化物がFe4Nを含み、金属窒化物および/または炭化物の粉末X線回折パターンが以下の2θ値:23.45、33.36、41.17、47.91、53.99、59.64、70.06、75.02、79.87、84.65、94.03、98.87および108.52を有するピークを含み、粉末X線回折パターンが、CuKα、λ=1.5405Å、0.02°のステップサイズを使用する5°≦2θ≦70°範囲内の放射線源、1秒/ステップのカウント時間、1/4角度入射スリット、45kv、および40mAの電流を使用する回折計で収集される、実施形態21~27のいずれか1つによる金属窒化物および/または金属炭化物。
【0044】
実施形態29:金属窒化物および/または金属炭化物がFe3Cを含み、金属窒化物および/または炭化物の粉末X線回折パターンが、以下の2θ値:26.19、31.36、33.93、35.89、41.78、43.92、47.05、50.08、53.89、55.66、59.18、60.46、61.80、63.20、67.31、76.81、79.87、83.22、86.90、91.00および95.57を有するピークを含み、粉末X線回折パターンが、CuKα、λ=1.5405Å、0.02°のステップサイズを使用する5°≦2θ≦70°範囲内の放射線源、1秒/ステップのカウント時間、1/4角度入射スリット、45kv、および40mAの電流を使用する回折計で収集される、実施形態21~28のいずれか1つによる金属窒化物および/または金属炭化物。
【0045】
実施形態30:金属窒化物および/または金属炭化物がW2Nを含み、金属窒化物および/または炭化物の粉末X線回折パターンが、以下の2θ値:37.73、43.85、63.73、76.51、80.59、96.68、108.86および113.14を有するピークを含み、粉末X線回折パターンが、CuKα、λ=1.5405Å、0.02°のステップサイズを使用する5°≦2θ≦70°範囲内の放射線源、1秒/ステップのカウント時間、1/4角度入射スリット、45kv、および40mAの電流を使用する回折計で収集される、実施形態21~28のいずれか1つによる金属窒化物および/または金属炭化物。
【0046】
実施形態31:実施形態21~30のいずれか1つの金属窒化物および/または炭化物の、触媒としての使用。
実施形態32:触媒が水素化処理触媒、好ましくは水素添加、水素化脱窒素および/または水素化脱硫触媒である、実施形態31の使用。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕金属窒化物および/または金属炭化物を製造する方法であって、
i)少なくとも1種の第1の金属M 1 を含む少なくとも1種の金属酸化物を、少なくとも1種の第2の金属M 2 を含むシアノメタレートと接触させて、反応混合物を形成する工程であって、シアノメタレートが、ジシアノメタレート、テトラシアノメタレート、ヘキサシアノメタレート、および/または、オクタシアノメタレートを含む、工程、ならびに
ii)反応混合物を少なくとも300℃の温度にある反応時間供する工程、
を含む、方法。
〔2〕M 1 が、元素周期表の第5、6または7族から選択される遷移金属である、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕M 1 が、W、Re、NbおよびMoからなるリストから、特にWおよびReから選択される、前記〔2〕に記載の方法。
〔4〕金属酸化物がWO 3 を含み、且つ/または金属酸化物がRe 2 7 を含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔5〕シアノメタレートが、テトラシアノメタレートおよび/またはヘキサシアノメタレートである、前記〔1〕に記載の方法。
〔6〕シアノメタレートが、式M 3 x [M 2 (CN) y z (式中、M 2 およびM 3 は同一または異なる金属であり、xは1~4の整数であり、yは4または6であり、zは1~3の整数である)を有する材料を含む、前記〔4〕に記載の方法。
〔7〕xが1であり、zが1であり、yが6である、または、xが4であり、zが3であり、yが6である、前記〔6〕に記載の方法。
〔8〕M 2 が、元素周期表の第8および9族から選択される遷移金属である、前記〔1〕から〔6〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔9〕M 2 が、Fe(II)、Fe(III)およびCo(III)からなるリストから選択される、前記〔1〕から〔6〕までのいずれか1項に記載の方法。
〔10〕M 3 が、K(I)、Fe(III)、Co(III)、Y(III)、Al(III)、Ga(III)、La(III)、Pr(III)およびDy(III)からなるリストから選択される、前記〔6〕に記載の方法。
〔11〕M 3 が、Fe(III)およびCo(III)からなるリストから選択される、前記〔6〕に記載の方法。
〔12〕シアノメタレートが、Fe 4 [Fe(CN) 6 3 、K 3 [Fe(CN) 6 ]、Y[Fe(CN) 6 ]、Al[Fe(CN) 6 ]、La[Fe(CN) 6 ]、Pr[Fe(CN) 6 ]、Dy[Fe(CN) 6 ]、Co[Co(CN) 6 ]、Y[Co(CN) 6 ]、Al[Co(CN) 6 ]、La[Co(CN) 6 ]および/またはK 3 [Co(CN) 6 ]を含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔13〕シアノメタレートが、Fe 4 [Fe(CN) 6 3 および/またはCo[Co(CN) 6 ]を含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔14〕接触させる工程i)での金属酸化物とシアノメタレートとのモル比が、10:1~1:10である、前記〔1〕に記載の方法。
〔15〕シアノメタレートおよび金属酸化物が溶媒の存在下で混ぜ合わされ、シアノメタレートが、a)シアノメタレートとb)溶媒の少なくとも一部との混合物を含むシアノゲルの形態で提供される、前記〔1〕に記載の方法。
〔16〕シアノメタレートおよび金属酸化物が固体形態で提供され、接触させる工程i)が、乾式混合法を使用して金属酸化物をシアノメタレートと混ぜ合わせることを含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔17〕反応混合物が300~1000℃の温度に10分~48時間の反応時間供される、前記〔1〕に記載の方法。
〔18〕a)窒化鉄、炭化鉄、窒化コバルトおよび炭化コバルトからなるリストから選択される第1の金属窒化物および/または炭化物、ならびに
b)窒化タングステン、炭化タングステン、窒化レニウムおよび炭化レニウムからなるリストから選択される第2の金属窒化物および/または炭化物
を含む金属窒化物および/または金属炭化物。
〔19〕前記〔1〕の方法によって調製された、前記〔18〕に記載の金属窒化物および/または金属炭化物。
〔20〕窒化タングステン、ならびに窒化鉄および炭化鉄の少なくとも1つを含む、金属窒化物および/または金属炭化物。
〔21〕前記〔18〕に記載の金属窒化物および/または炭化物を使用する方法であって、金属窒化物および/または炭化物が、水素化処理、水素添加、水素化脱窒素および/または水素化脱硫触媒として使用される、方法。
図1
図2
図3
図4
図5