(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】重力下で液相が流れる装置で使用するのに適した液体二重分配装置
(51)【国際特許分類】
B01D 3/32 20060101AFI20220804BHJP
B01D 3/26 20060101ALI20220804BHJP
B01D 3/42 20060101ALI20220804BHJP
B01D 53/18 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
B01D3/32 A
B01D3/26 A
B01D3/42
B01D53/18 130
(21)【出願番号】P 2019555597
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(86)【国際出願番号】 FR2018050773
(87)【国際公開番号】W WO2018189447
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-02-08
(32)【優先日】2017-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516208282
【氏名又は名称】サイペム エスピーアー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】デュパルク、ベルトラン
(72)【発明者】
【氏名】ロディエ、バンジャマン
(72)【発明者】
【氏名】ボロシエ、ボリス
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-523541(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0332090(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0251127(US,A1)
【文献】特開2016-120485(JP,A)
【文献】特開2009-101334(JP,A)
【文献】国際公開第2012/167888(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D1/00-8/00
B01D53/14-53/18
B01J4/00-4/04
B01J10/00-10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重力下で液相
が流れる垂直装置で使用するのに適した二重液体分配装置(1)であって、
液相は、二重液体分配装置の下に配置され、且つ前記
垂直装置の垂直軸に直交する少なくとも1つの断面にわたって広がる少なくとも1つの領域(9)にわたって均一な方式で分配される必要があり、
二重液体分配装置(1)は、少なくとも2つの長手方向液体流下ダクト(5、6)を介してマニホルド支持体(7)に接続され
た収集トレイ(2)を含み、
前記マニホルド支持体(7)は、少なくとも2つの系列の横管状マニホルド(8、8a~8b)を支持し、且つそれぞれ第1の長手方向液体流下ダクト(5)を介して前記第1の系列のマニホルド(8a)に、及び第2の長手方向液体流下ダクト(6)を介して前記第2の系列のマニホルド(8b)に液体を供給する役割を果たし、
各マニホルド(8、8a~8b)は、二重液体分配装置(1)の前記マニホルドの下に位置する前記領域にわたって液体を分配するのに適している、前記マニホルドの下面における分配オリフィス(8c)を有し、
前記収集トレイ(2)の形状は、前記収集トレイ上の液体を前記第1の長手方向液体流下ダクト(5)の上部開口(5a)と、前記収集トレイの上に位置する高さに達する前記第2の長手方向液体流下ダクトの上部開口(6a)とに向かって誘導するのに適している、二重液体分配装置(1)において、
前記2つの長手方向液体流下ダクト(5、6)は、液体が該2つの長手方向液体流下ダクト間において制御された方式で移動できるように制御式開口を有する弁(12)を装備された連通装置(11)により、低位部分(5b、6b)で互いに接続され、
前記弁の開放及び閉鎖は、前記第1及び第2の長手方向液体流下ダクトの液位を測定することに基づいてのみ始動されることを特徴とする、二重液体分配装置(1)。
【請求項2】
前記連通装置(11)は、前記第1及び第2の長手方向液体流下ダクトの底端部において、該第1のダクト(5)及び該第2のダクト(6)のそれぞれの低位部分(5b、6b)内に開放することを特徴とする、請求項1に記載の二重液体分配装置。
【請求項3】
前記弁(12)の開放又は閉鎖の始動は、前記第1及び第2の長手方向液体流下ダクトの液位を測定することのみに基づき、それにより、
a)前記第1の長手方向液体流下ダクト(5)のみで流量が増大する場合、前記弁は、前記第1の長手方向液体流下ダクトの液位が最大閾値Hmaxに達するときに自動的に開放し、及び
b)前記第1の長手方向液体流下ダクト(5)及び前記第2の長手方向液体流下ダクト(6)の両方で流量が減少する場合、前記弁は、開放している弁を介して連通している前記第1及び第2の長手方向液体流下ダクトの同じ液位がHmin以上の最小閾値まで落ちるときに自動的に閉鎖し、Hminは、前記第1及び第2の長手方向液体流下ダクトが、前記第1及び第2の系列のマニホルドの様々なオリフィス間で液体の均一な分配を得るために前記弁(12)を介して互いに連通している間、前記第1及び第2のダクトの液体に必要とされる最小高さであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の二重液体分配装置。
【請求項4】
第1及び第2の分配器は、
a)Q
2minがQ
1max-Q
1min以下であり、
・前記第1及び第2の分配器が、
- 前記第1の分配器のための前記第1の長手方向液体流下ダクト(5)及び前記第1の系列のマニホルドのオリフィス(8c)と、
- 前記第2の分配器のための前記第2の長手方向液体流下ダクト(6)及び前記第2の系列のマニホルドのオリフィス(8c)と
、を含むとして規定され、且つ
・Q
1min及びQ
2minが、液体が前記第1及び第2の系列のマニホルドによって均一に分配されることを可能にする、それぞれ前記第1及び第2の系列のマニホルドのオリフィス(8c)を通る統合最小流量としてそれぞれ規定され、且つ
・Q
1maxが、前記第1の長手方向液体流下ダクトの液体高さが最大値Hmaxであるときの前記第1の分配器の最大流量として規定され、及び
b)前記弁(12)が開放され、及び前記2つの長手方向液体流下ダクト(5、6)が互いに連通されるとき、値Hmaxであった前記第1のダクトの液体の液位が、前記第1の長手方向液体流下ダクトの液位と同じである前記第2の長手方向液体流下ダクトの液位H
0まで下がるように構成され、H
0は、Hmin以上であり、Hminは、前記第1及び第2の系列のマニホルドの様々なオリフィス間で液体の均一な分配を得るために前記弁を介して連通している第1及び第2の長手方向液体流下ダクトの液体に必要とされる共通最小高さであることを特徴とする、請求項3に記載の二重液体分配装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の分配器は、該第1の分配器のみが作動する運転モードから、前記第1及び第2の分配器の両方が作動する二重分配運転モードに移行するように流量が増大している間の、前記弁の開放を始動させるための閾値に対応する流量が、前記第1及び第2の分配器の両方が作動する二重分配運転モードから、前記第1の分配器のみが作動する運転モードに移行するように流量が減少している間の、前記弁の閉鎖を始動させるための閾値に対応する流量よりも大きくなるように構成されることを特徴とする、請求
項4に記載の二重液体分配装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の分配器は、
a)Q
2minがQ
1max-Q
1min未満であり、及び
b)H
0がHmin超であるが、Hmax未満であるように構成されることを特徴とする、請求項4又は5に記載の二重液体分配装置。
【請求項7】
前記横管状マニホルド(8、8a~8b)は、二重液体分配装置(1)の長手軸方向ZZ’に垂直な横方向に平行に延び、両方の系列のマニホルド(8a、8b)は、二重液体分配装置(1)の長手軸方向(ZZ’)において同じ高さに配置され、前記第1の系列のマニホルド(8a)は、前記第2の系列のマニホルド(8b)間に平行に挿入されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の二重液体分配装置。
【請求項8】
船舶又は浮遊支持体であって、
重力下で液相が流れる垂直装置(10)
と、請求項1~7のいずれか一項に記載の少なくとも1つの二重液体分配装置であって、
前記垂直装置(10)の円筒壁(10a)の内部において、液体を均一な方式で噴霧される必要がある前記領域(9)の上
に配置された少なくとも1つの二重液体分配装置
と、を含み、前記領域は、前記円筒壁の長手軸方向(ZZ’)に対して垂直な前記
垂直装置の断面にわたって広がり、
前記収集トレイは、前記円筒壁に対して横方向に且
つ前記円筒壁に隣接して配置される、船舶又は浮遊支持体。
【請求項9】
前記
垂直装置は、
該垂直装置の断面にわたって広がり、且つ前記
垂直装置の長手軸方向(ZZ’)に互いに離間された複数の領域(9)を有し、前記二重液体分配装置の複数は、それぞれ2つの充填物層間に挿入されることを特徴とする、請求項8に記載の船舶又は浮遊支持体。
【請求項10】
前記
垂直装置は、分留塔又は洗浄塔(10)であって、前記領域において、前記塔の長手軸方向ZZ’に垂直な該塔の断面にわたって広がる少なくとも1つの充填物層(9)を収容する分留塔又は洗浄塔(10)であることを特徴とする、請求項8又は9に記載の船舶又は浮遊支持体。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一項に記載の二重液体分配装置又は請求項8~10のいずれか一項に記載の船舶若しくは浮遊支持体を使用することによって液体を分配し、液体
を収集トレイに受け入れる方法において、以下のステップ、
e.1)第1の長手方向液体流下ダクト(5)に液体を充填するステップと、
e.2)前記第1の長手方向液体流
下ダクトの液位が最大閾値に達するとき、弁(12)を開放し、2つの長手方向液体流下ダクト(5、6)を互いに連通させ、それにより第2の長手方向液体流下ダクトを前記第1の長手方向液体流下ダクトと同じ液位まで充填するステップと、
e.3)前記第1及び第2の長手方向液体流下ダクトの同じ液位が最小閾値未満まで下がる場合に前記弁を再度閉鎖するステップと
、が実施されることを特徴とする、方法。
【請求項12】
前記弁の開放又は閉鎖は、
a)ステップe.2)において、前記第1の長手方向液体流下ダクト(5)のみで流量が増大する場合、前記弁が、前記第1の長手方向液体流下ダクトの液位が最大閾値Hmaxに達するときに自動的に開放し、
b)ステップe.3)において、前記第1の長手方向液体流下ダクト(5)及び前記第2の長手方向液体流下ダクト(6)の両方で流量が減少する場合、前記弁が、開放している弁を介して連通している前記第1及び第2の長手方向液体流下ダクトの同じ液位がHmin以上の最小閾値まで落ちるときに自動的に閉鎖するように、前記第1及び第2の長手方向液体流下ダクトの液位を測定することに応じて自動的に始動され、Hminは、前記第1及び第2の長手方向液体流下ダクトが、前記第1及び第2の系列のマニホルドの様々なオリフィス間で液体の均一な分配を得るために前記弁を介して互いに連通している間、前記第1及び第2の長手方向液体流下ダクトの液体に必要とされる最小共通高さであることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップe.2)において、前記弁(12)は、開放され、前記2つの長手方向液体流下ダクト(5、6)は互いに連通され、それにより、最大値Hmaxであった前記第1の長手方向液体流下ダクトの液体の液位(H
1)は、前記第1の長手方向液体流下ダクトの液位と同じである前記第2の長手方向液体流下ダクトの液位H
0まで下がり、H
0は、Hmin以上であり、且つQ
2min以上である第2の分配器の流量に対応し、第1及び第2の分配器は、
a)Q
2minがQ
1max-Q
1min以下であり、
・前記第1及び第2の分配器が、
- 前記第1の分配器のための前記第1の長手方向液体流下ダクト(5)及び前記第1の系列のマニホルドのオリフィス(8c)と、
- 前記第2の分配器のための前記第2の長手方向液体流下ダクト(6)及び前記第2の系列のダクトのオリフィス(8c)と
、を含むとして規定され、且つ
・Q
1min及びQ
2minが、液体が前記第1及び第2の系列のマニホルドによって均一に分配されることを可能にする、それぞれ前記第1及び第2の系列のマニホルドのオリフィス(8c)を通る統合最小流量としてそれぞれ規定され、
・Q
1maxが、前記第1の長手方向液体流下ダクトの液体高さが最大値Hmaxであるときの前記第1の分配器の最大流量として規定され、
b)前記弁(12)を開放し、且つ前記2つの長手方向液体流下ダクト(5、6)を互いに連通させるとき、最大値Hmaxである前記第1の長手方向液体流下ダクトの液位が、前記第1の長手方向液体流下ダクトの液位と同じである前記第2の長手方向液体流下ダクトの液位H
0まで下がるように構成され、H
0は、Hmin以上であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップe.2)において、前記弁(12)は、開放され、及び前記2つの長手方向液体流下ダクト(5、6)は、互いに連通され、それにより、最大値Hmaxであった前記第1の長手方向液体流下ダクトの液位(H
1)は、前記第1の長手方向液体流下ダクトの液位と同じである前記第2の長手方向液体流下ダクトの液位H
0まで下がり、H
0は、Hminよりも大きく、且つQ
2minよりも大きい前記第2の分配器の流量に対応し
、前記第1及び第2の分配器は、
a)Q
2minがQ
1max-Q
1min未満であり、
b)前記弁(12)を開放し、且つ前記2つの長手方向液体流下ダクト(5、6)を互いに連通させるとき、最大値Hmaxである前記第1の長手方向液体流下ダクトの液体の液位が、前記第1の長手方向液体流下ダクトの液位と同じである前記第2の長手方向液体流下ダクトの液位H
0まで下がるように構成され、H
0は、Hmin以上であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の分配器のみが作動する運転モードから、前記第1及び第2の分配器の両方が作動する二重分配運転モードに移行するように流量が増大している間の、前記弁の開放を始動させるための閾値(Hmax)に対応する流量は、前記第1及び第2の分配器の両方が作動する二重分配運転モードから、前記第1の分配器のみが作動する運転モードに移行するように流量が減少している間の、前記弁の閉鎖を始動させるための閾値(Hmin)に対応する流量よりも大きいことを特徴とする、請求項
13又は1
4に記載の方法。
【請求項16】
1)前記第1の長手方向液体流下ダクトのみの液位を上げるステップと、
2)液位が、前記第1の分配器の最大均一流量Q
1maxに対応する前記第1の長手方向液体流下ダクトの最大高さ閾値Hmaxに達するとき、前記弁(12)を開放し、且つ前記2つの長手方向液体流下ダクト(5、6)を連通させるステップであって、それにより、最大値Hmaxであった前記第1の長手方向液体流下ダクトの液体の液位は、前記第1の長手方向液体流下ダクトの液位と同じである前記第2の長手方向液体流下ダクトの液位H
0まで下がり、H
0は、前記閾値Hminよりも大きい、ステップと、
3)液位は、前記第1の長手方向液体流下ダクト及び前記第2の長手方向液体流下ダクトの両方でH
0から上がる、ステップであって、二重液体分配装置は、このとき、前記第1及び第2の分配器の両方が作動する二重分配運転モードであり、両方の分配器の統合流量は、Q
1maxからQ
1max+Q
2maxに増大し、Q
2maxは、前記第1及び第2の長手方向液体流下ダクトの同じ液体高さが最大値Hmaxであるときの前記第2の分配器の最大流量として規定される、ステップと、
4)二重液体分配装置が、前記第1及び第2の分配器の両方が作動する二重分配運転モードであるとき、流量は、Q
1max~Q
1max+Q
2maxの範囲であり、流量が減少する場合、前記弁(12)は、両方の長手方向液体流下ダクト(5、6)の液体の液位Hminで流量がQ
1min~Q
1maxの範囲の最小閾値Q
0に達する場合にのみ閉鎖される、ステップであって、Q
0は、Q
1min+Q
2min以上であ
る、ステップと、
5)前記弁(12)を閉鎖した後、前記第1の長手方向液体流下ダクトの液位は、Hmin超であるが、Hmax未満の値H
1まで上昇する、ステップであって、流量は、Q
1min~Q
1maxの範囲であり、前記装置は、前記第1の長手方向液体流下ダクトの液位がHmaxを超えない限り、前記第1の分配器のみが作動する単一分配運転モードのままである、ステップと
、を含むことを特徴とする、請求項14又は15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体分配器の全般的分野に関し、液体分配器は、浮遊支持体に搭載され、且つ分留塔又は溶剤洗浄塔若しくは「スクラバ」及びまた関連する再生塔又は天然ガスを液化するために使用される垂直コイル熱交換器、並びにさらにより一般的には、任意のタイプの垂直装置であって、液体分配装置の下に配置され、且つ重力流装置の水平断面にわたって広がる領域に均一な方式で分配される必要がある液相の重力流の拠点であり、重力流装置は、浮遊産出物貯蔵庫及び積み出しユニット(FPSO)又は浮遊液化天然ガスユニット(FLNG)などの浮遊支持体上に設置される。
【背景技術】
【0002】
図1に示す分留塔又は洗浄塔10は、重力による加速効果により上昇する気相と下降する液相との間での材料及びエネルギーの伝達の拠点である。これらの伝達は、液相の表面で行われる。液相と気相との間の境界領域を最大にするために、塔10は、塔の円形断面全体を占有する「かん液層」又は充填物層9を充填される。これらの充填物層は、液体との接触面積を大きくする多孔質固体媒体によって構成される。表面張力の効果により、液体は、固体を濡らすように固体の周りに広がり、それにより蒸気との接触面積を大きくする薄膜を形成する。
【0003】
塔10は、軸を有する円筒の形態の壁を成し、この軸は、浮遊支持体が静止している間、垂直であり、場合により垂直位置に対して傾斜するように動く。これらの塔は、複数の液体分配器1を収容し、各分配器は、分配器の下に配置された充填物層9と協働する。これらの2つの相を接触させるには、液体が液体分配器によって噴霧され、充填物層の表面で可能な限り均一に拡散する必要があり、さらに、蒸気が充填物層及び分配器を通って上昇すると共に液体が充填物層のベース部から出て行くまで、液体が流れるときに浮遊支持体が動く場合でも液体流の均一性が維持される必要がある。
【0004】
コイル熱交換器は、
図1の分留塔の構成とほとんど同一の構成を成し、垂直軸コイルとして巻かれたチューブの束が充填物層の代わりに設置され、充填物層の役割を果たすことが理解される。
【0005】
本発明の液体分配器の機能は、前記領域にわたり、特に塔の充填物層にわたり、又は熱交換器のコイルとして巻かれたチューブの束にわたり、又は垂直装置の任意の水平断面にわたり、液体流を可能な限り均一に拡散させることであり、特に分配器を有する重力流塔、熱交換器又は垂直装置が液体のこの拡散を妨害する動きをした場合、重力流塔、熱交換器又は垂直装置の断面にわたって液体流の不均一性が生じる。
【0006】
動くFPSO又はFLNGに設置されたこれらの重力流垂直装置に特有の問題は、液体流が受ける加速度ベクトルがもはや塔の軸と一致せず、そのため、重力流装置の断面にわたる流れの分配に不均一性が生じることである。複数の分配器及び複数の前記領域、特に複数の充填物層をそのような重力流装置に設けて、2つの前記領域間で液体を再分配することができるようにし、それにより、分配の不均一性が、過度に高い高さを超えた流れによって広まり且つ増幅することを防止して、これらの不均一性の大きさを制限する。設計者が(塔の)充填物層又は(熱交換器の)コイル状チューブ束の数量を増やさないことを望む場合、提案される液体分配装置は、それにもかかわらず、従来のタイプの重力液体分配器を用いた場合よりも良好な液体の分配が達成されることを可能にする。これらの分配器の高さは、きわめて重要である(最大で4メートル(m))。単一塔は、最大で3つの分配器を含むことができ、単一のコイル状熱交換器は、最大で3つのチューブ束を含むことができる。
【0007】
(特許文献1)は、浮遊支持体上で動くこの種の塔用分配器の例について記載している。この特許文献に記載された分配器の構成は、本明細書において「モノ分配器」という用語で下記に説明されている。
【0008】
このモノ分配器版では、従来の分配器は、
・分配器の高い部分にある(高い方の充填物層9又は塔の供給装置から落下した液体を収集する)水平液体収集トレイ2と、
・分配器の低い部分で水平に且つ互いに平行に配置され、下面でオリフィスが貫通し、液体流を均一な方式で下の充填物層9に噴霧及び分配する役割を果たす系列の直線管状分配マニホルド8と、
・収集トレイ2と分配マニホルド8との間にある、分配マニホルド8に液体を供給する垂直中央液体流下ダクト5と
を含む。
【0009】
分配マニホルド8のオリフィス8cを通る液体の流量は、オリフィスの入口における液体の静圧の関数であり、この静圧は、オリフィスより上の液体の高さに比例し、したがって垂直ダクト5の液体の高さに比例する。
【0010】
中央ダクト5の液体の高さにより、オリフィスを通る流量が決まり、オリフィスは、マニホルド8にあり、分配器のマニホルド8の中心から両端までマニホルド8に沿って分布する。実際に、分配器は、様々なオリフィス間で共有する均一性の点で満足のいく液体の分配を保証する、最小高さHmin~最大高さHmaxの高さの範囲に対応する最小流量Qmin~最大流量Qmaxの流量の範囲を得るように、中央ダクト5の高さ及び直径と、マニホルド8及びマニホルド8のオリフィス8cの数量及び大きさとの観点から構築される。単一ダクト5の場合、流量比Qmax/Qminの二乗に比例する比率Hmax/Hminを有することが必要である。
【0011】
浮遊支持体が動く場合、マニホルドの中央に位置するオリフィスに対する液体高さと、分配器のマニホルドの端部に位置するオリフィスに対する液体高さとは異なる。様々なオリフィス間で液体の分配における良好な均一性を保証するために、分配器は、分配器の中心での基準液位が、中央に位置するオリフィス及び分配器のマニホルドの端部に位置するオリフィスからそれぞれ見た液体高さ間の差に対して十分な高さであるように構成される(分配器を「液圧で調整する」とも言われる)ことが必要である。この調整は、分配器の最小運転流量を考慮に入れる必要があり、なぜなら、浮遊支持体が傾いた場合、様々なオリフィス間での分配の不均一性が最大であるのは、最小流量Qminの状態であるからである。
【0012】
図2A~2C及び
図3A~3Cに示すように、動く塔10内での分配の品質を運転流量の全範囲にわたって向上させるために「溢流を伴う二重分配器」が提案された。より正確には、二重液体分配を用いたこれらの分配器1は、それぞれが特定の系列のマニホルド8a、8bに液体を供給する2つの中央ダクト5及び6を有し、第2のダクト6は、第1のダクト5が溢流した場合にのみ液体の充填を開始し、液体の超過流れが上部開口6aから第2のダクト6に流入するように収集トレイ2より上に突出する。したがって、第1のマニホルド8aのオリフィス8c間で共有される液体の全流量が均一流れに対する最大値Q
1maxを超えた場合、第1のダクト5の液体高さH
1は、最大値Hmaxに達し、超過流れは、溢流して第2のダクト6に入り、それにより第2のマニホルド8bが動作し始める。
【0013】
この場合、「二重液体分配」を用いた分配器と称されるこの二重システムは、液圧分配容量を増やす役割を果たす。例えば、第1の分配器が、最小流量Q1minと最大流量Q1maxとの間の比率が1対5である流量の範囲を割り当てられた場合、これは、分配器が1つのダクトのみを有する場合、H1min対H1maxの比率が1対25である必要があることを意味する一方、二重分配器は、第2のダクトが液圧分配容量を増大させるため、第1のダクトに必要とされる最大高さH1maxを低くすることを可能にする。
【0014】
それにもかかわらず、
図5Aを参照して下記に説明するように、溢流を伴う公知の二重システムは、満足のいくものではない。具体的には、第2のダクト6及び第2のマニホルド8bを含むアセンブリが過渡領域(すなわち第1の分配器のみを使用する運転モードから、両方の分配器が作動する二重運転モードへの移行時)にある間のアセンブリの運転状態は、第2のダクトを通る超過流れが特定の最小流量Q
2min未満のままであり、そのため、第2のダクト6の液体の高さは、第2のマニホルド8bのオリフィス8c間の良好な分配均一性を保証するのに必要とされる高さH
2min未満に留まる限り満足のいくものではない。第1のダクト5及び第1のマニホルド8aを含む第1の分配器を飽和させる最大均一流量Q
1maxよりもごくわずかにのみ大きい流量で運転する場合、第2のダクト6及び第2のダクト8bを含む第2の分配器は、Q
2min未満の低すぎる流量のまま、したがって第2の分配器を通る流量が均一であることを保証するのに必要とされる液体高さ未満の液体高さのまま不完全な状態下で動作している。
【0015】
本発明者らにより実施された綿密な技術解析は、「溢流を伴う二重システム」のこの欠点を明確にした。具体的には、この「溢流を伴う二重システム」は、流量が、第1の分配器(第1のダクト及び第1のマニホルド)が調整される流量を超え始めたとき、運転流量のかなりの部分(約10%)にわたって「仕様から外れる」品質の分配をもたらす。例えば、第1の分配器が標準最大流量(Q1max+Q2max)の65%の最大均一流量(Q1max)に調整され、第2の分配器(第2のダクト及び第2のマニホルド)が65%~100%で最大均一流量(Q2max)のバランスを取るように調整される場合、第2の分配器による分配の品質は、分配する流量が実質的に最大流量の65%~75%の範囲である間、「仕様から外れる」。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の主な目的は、液相の重力流の拠点である分留塔若しくは洗浄塔、又はコイル状熱交換器、又は任意のタイプの垂直装置で使用するのに適した二重液体分配装置を提供することであり、液相は、前記液体分配装置の下の領域の装置の水平断面にわたって均一な方式で分配される必要があり、この液体分配装置は、溢流を伴う二重液体分配装置の欠点を解決し、特に塔が動いている間でも塔の断面全体にわたって液体の均一な分配を保証し、十分な流量の範囲にわたって液体の均一な分配を保証し、流量分配は、運転流量の全範囲にわたって期待される基準を満たす均一性を示し、これは、過渡領域にある間に溢流を伴う既存のシステムに当てはまらない。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、この目的は、液相の重力流の拠点である任意のタイプの垂直装置で使用するのに適した二重液体分配装置であって、液相は、二重液体分配装置の下に位置する少なくとも1つの領域にわたって均一な方式で分配される必要があり、前記領域は、重力流装置の垂直軸に直交する少なくとも1つの断面にわたって広がり、液体分配装置は、少なくとも2つの長手方向液体流下ダクトを介してマニホルド支持体に接続された高収集トレイを含み、マニホルド支持体は、少なくとも2つの系列の横管状マニホルドを支持し、且つそれぞれ第1の長手方向ダクトを介して第1の系列のマニホルドに、及び第2の長手方向ダクトを介して第2の系列のマニホルドに液体を供給する役割を果たし、各マニホルドは、二重液体分配装置のマニホルドの下に位置する前記領域にわたって液体を分配するのに適している、マニホルドの下面における分配オリフィスを有し、収集トレイの形状は、収集トレイ上の液体を第1の長手方向ダクトの上部開口と、収集トレイの上に位置する高さに達する第2の開口とに向かって誘導するのに適している、二重液体分配装置において、2つの長手方向液体流下ダクトは、液体が2つの長手方向ダクト間において制御された方式で移動されることを可能にするのに適している制御式開口を有する弁を装備された連通装置により、低位部分で互いに接続され、前記弁の開放及び閉鎖は、第1及び第2のダクトの液位を測定することに基づいてのみ始動されることを特徴とする二重液体分配装置を提供することで達成される。
【0019】
特に、重力流装置は、分留塔又は洗浄塔であって、前記領域において、前記塔の長手軸方向ZZ’に垂直な前記塔の断面にわたって広がる少なくとも1つの充填物層を収容する分留塔又は洗浄塔である。
【0020】
公知の方式において、充填物層は、充填物層を構成する固体要素が、流れ流体とのきわめて広い接触面積を提供する多孔質固体媒体であり、充填物層の機能は、気相と液相との間の熱化学平衡にできるだけ達しやすくなるようにこれらの2つの相間の接触面積を最大限にすることである。この固体媒体の構造は、組織化することができ(「構造化充填物」と称される)、通常、流体流れに対して大きい空隙率を提供すると共に、比較的大きい表面積が得られることを可能にするモジュール化金属構造によって構成される。充填物の構造は、ランダム化することもでき(「ランダム充填物」と称される)、例えば範囲が1センチメートル(cm)~2cmの特別な形状の小固体要素によって構成され、充填物空間をランダム構成で埋めるために使用される。
【0021】
「横方向」という用語は、本明細書において、例えば塔又はコイル熱交換器などの装置及び重力流垂直装置に共通の長手軸方向ZZ’に垂直な方向を示すために使用される。
・両方のダクトは、装置の長手軸方向ZZ’に平行な共通長手方向に平行に延びる点で「長手方向」であるとされ、
・高収集トレイは、重力流装置、特に前記塔の断面にわたって広がり、
・高収集トレイの液位が第2のダクトの上部開口の高さ未満のままである限り、高収集トレイは、第1のダクトのみに液体を供給し、第2のダクトに液体を供給しないような役割を果たし、
・分配オリフィスのレイアウト及びマニホルドの配置は、液体を規則的且つ均一な方式で前記領域における装置の断面の面全体にわたって、したがって特に前記塔の充填物層の上面にわたって分配する役割を果たし、
・第1のダクト及び第1のマニホルドは、第1の分配器を形成し、第2のダクト及び第2のマニホルドは、第2の分配器を形成する
ことが理解され得る。
【0022】
本発明の液体分配装置は、分配マニホルドの2つの直径方向両側の点からそれぞれ見た油圧負荷の相対差が限定されることを可能にし、負荷間の相対差のこの限定は、2つの負荷の平均がその差と比較して十分に大きいことを保証することで得られる。したがって、液体の分配の均一性は、静的な負荷の差を最小にするという原理に依存する。さらに、装置が2つの系列のマニホルドを有する場合、各系列は、垂直装置(塔又は熱交換器)の断面全体に広がる。
【0023】
より詳細には、分配器の系列のマニホルドの一連のオリフィスについて、均一性に関する許容量は、均一性因子k=(Q’-Q”)/(Q’+Q”)の値によって定量化することができ、ここで、kは、所与の限界値k0以下であり、k0は、通常、4%~10%の範囲であることが好ましく、k0の値は、塔によって提供されるサービスによって決まり、Q’は、最大量を供給する分配器のマニホルドの半分のオリフィスを通る統合流量であり(なぜなら、これらのオリフィスには、分配器の中心に位置するオリフィスの液体高さを超える液体高さが作用するからである)、Q”は、最小量を供給する分配器のマニホルドの半分のオリフィスの統合流量である(なぜなら、これらのオリフィスには、分配器の中心に位置するオリフィスの液体高さ未満の液体高さが作用するからである)。
【0024】
本発明では、従来の「溢流」装置と異なり、最大まで充填されたときに第1のダクトから溢流し、第2のダクトの上部開口に達した液体は、緊急装置のように、弁の制御式開口が誤動作した場合にのみ供給される。
【0025】
より詳細には、本発明の分配装置の、制御式開口を有する弁を含む連通装置は、それぞれHmin未満の高さで動作する各第1及び第2のダクトの低位の部分につながり、ここで、Hminは、第1及び第2の系列のマニホルドの様々なオリフィス間で液体を均一に分配するために前記弁を介して連通している第1及び第2のダクトの液体に必要とされる最小高さであり、連通装置は、好ましくは、第1及び第2のダクトの底端部内にそれぞれ開放する制御式開口を含む弁を有する。
【0026】
実施形態では、連通装置は、第1及び第2のダクトの底端部で第1及び第2のダクト内に開放する。
より詳細には、弁の開放又は閉鎖の始動は、第1及び第2のダクトの液位を測定することのみに基づき(測定流量に基づかない)、それにより、
a)第1のダクトのみで流量が増大する場合、前記弁は、第1のダクトの液位が最大閾値Hmaxに達するときに自動的に開放し、及び
b)第1及び第2のダクトで流量が減少する場合、前記弁は、開放している弁を介して連通している第1及び第2の弁の同じ液位が、上記に定義した前記最小高さHmin以上の最小閾値まで落ちるときに自動的に閉鎖する。
【0027】
第1のダクトから溢流した液体が第2のダクトの上部開口に入る任意のリスクを回避するために、Hmaxは、第2のダクトの高さ未満であることが理解され得る。
これらのパラメータHmin、Hmaxは、仕様(特に液体の分配の必要とされる均一性又は許容できる分配ばらつき量)、動きの程度、すなわち見込まれる動きの振幅及び/又は対象とする流量範囲の大きさに応じて設計者によって計算される分配器の容量特性である。したがって、運転時、パラメータHmin、Hmaxは、前記弁を始動させるための閾値になる。
【0028】
好ましくは、本発明の装置では、第1及び第2の分配器は、
a)Q2minがQ1max-Q1min以下であり、
・第1及び第2の分配器が、
- 第1の分配器のための第1のダクト及び第1の系列のマニホルドのオリフィスと、
- 第2の分配器のための第2のダクト及び第2の系列のマニホルドのオリフィス(8c)と
を含むとして規定され、且つ
・Q1min及びQ2minが、液体が第1及び第2の系列のマニホルドによって均一に分配されることを可能にする、それぞれ第1及び第2の系列のマニホルドのオリフィスを通る統合最小流量としてそれぞれ規定され、且つ
・Q1maxが、第1のダクトの液位が最大値Hmaxであるときの第1の分配器の最大流量として規定され、及び
b)前記弁が開放され、及び2つの長手方向ダクトが互いに連通されるとき、最大値Hmaxであった第1のダクトの液体の液位が、第1のダクトの液位と同じである第2のダクトの液位H0まで下がるように構成され、H0は、Hmin以上であり、Hminは、第1及び第2の系列のマニホルドの様々なオリフィス間で液体の均一な分配を得るために前記弁を介して連通している第1及び第2のダクトの液体に必要とされる共通最小高さである。
【0029】
対応する液体高さに関係するこれらの流量パラメータQxmin、Qxmaxは、製造時に液体分配マニホルドに形成されるオリフィスの数量及び大きさにつながる、各用途に特有の特性であり、仕様(液体分配の必要とされる均一性、分配のばらつきの許容可能な範囲、動きの見込まれる程度/振幅、対象となる流量範囲の大きさなど)に応じて設計者によって計算される。
【0030】
さらに好ましくは、第1及び第2の分配器は、第1の分配器のみが作動する運転モードから、第1及び第2の分配器の両方が作動する二重分配運転モードに移行するように流量が増大している間、前記弁の開放を始動させるための閾値Hmaxに対応する流量、好ましくは上記に定義したQ1maxが、第1及び第2の分配器の両方が作動する二重分配運転モードから、第1の分配器のみが作動する運転モードに移行するように流量が減少している間、弁の閉鎖を始動させるための閾値Hminに対応する流量、好ましくは上記に定義したQ1mix+Q2minよりも大きいように構成される。この実施形態では、特にこの方法の結果として、2つのマニホルドの流量は、調整され、装置は、下記に説明するように、それぞれ弁を開放及び閉鎖するための2つの制御始動閾値Hmax及びHminに対応する流量が、「モノ分配器」運転モードと「二重分配器」運転モードとの間で不時の振動現象を回避するために異なることを特徴とするヒステリシスを伴って動作する。
【0031】
より詳細には、そのようなヒステリシスを得るために、第1及び第2の分配器は、
a)Q2minがQ1max-Q1min未満であり、及び
b)H0がHmin超であるが、Hmax未満であるように構成される。
【0032】
さらにより好ましくは、収集トレイは、液体を第1の垂直ダクトの上部開口に向かって誘導するためのチャネルを含む。
より詳細には、横管状マニホルドは、二重分配装置の長手軸方向ZZ’に垂直な横方向に平行に延びる。それにもかかわらず、マニホルドは、例えば、同心リングの形態のマニホルドなど、何らかの他の方法で配置することができる。
【0033】
より詳細には、両方の系列のマニホルドは、二重分配装置の長手軸方向(ZZ’)において同じ高さに配置され、第1の系列のマニホルドは、第2の系列のマニホルド間に平行に挿入される。
【0034】
本発明は、船舶又は浮遊支持体に搭載された分留塔、洗浄塔、コイルタイプの垂直熱交換器又は任意のタイプの垂直装置に適用可能であり、これらの垂直装置は、装置の円筒壁の内部において、前記装置の断面上に同軸に且つ前記円筒壁の長手軸方向(ZZ’)に対して垂直に配置された本発明の少なくとも1つの二重液体分配装置を含む。
【0035】
より詳細には、収集トレイは、装置の円筒壁に対して横方向に且つ同軸に配置される。収集トレイの外形は、前記円筒壁の断面の外形に従うことが理解され得る。
さらにより詳細には、装置は、特に前記塔の断面にわたって広がり、且つ前記塔の長手軸方向(ZZ’)に互いに離間された複数の充填物層を有し、複数の二重液体分配装置がそれぞれ2つの充填物層間に挟み込まれた塔に適用する場合、同様に、複数の束状構造を有するコイル状熱交換器について、各束状構造上に複数の二重分配装置があり得る場合、液相の分配を(複数の液位で)数回繰り返して行う必要を含み得る。
【0036】
本発明は、本発明の二重液体分配装置を使用して液体を分配し、液体を高収集トレイに受け入れる方法において、以下のステップ、
e.1)第1の長手方向ダクトに液体を充填するステップと、
e.2)第1のダクトの液位が最大閾値に達するとき、前記弁を開放し、且つ2つの長手方向ダクトを互いに連通させ、それにより第2のダクトを第1のダクトと同じ液位まで充填するステップと、
e.3)第1及び第2のダクトの同じ液位が最小閾値未満まで下がる場合に前記弁を再度閉鎖するステップと
が実施されることを特徴とする方法も提供する。
【0037】
これらの液位閾値は、仕様(必要とされ且つ/又は許容される液体の分配の均一性及び/又はばらつきの範囲、動きの程度及び/又は振幅、対象とする流量範囲の大きさ)に応じて設計者によって計算される分配器の容量特性である。
【0038】
より詳細には、弁の開放又は閉鎖は、
a)ステップe.2)において、第1のダクトにおいてのみ流量が増大する場合、前記弁が、第1のダクトの液位が最大閾値Hmaxに達するときに自動的に開放し、及び
b)ステップe.3)において、第1及び第2のダクトの両方で流量が減少する場合、弁が、開放している弁を介して連通している第1及び第2のダクトの同じ液位がHmin以上の最小閾値まで落ちるときに自動的に閉鎖するように、第1及び第2のダクトの液位を測定することに応じて自動的に始動され、Hminは、第1及び第2のダクトが、第1及び第2の系列のマニホルドの様々なオリフィス間で液体の均一な分配を得るために前記弁を介して互いに連通している間、第1及び第2のダクトの液体に必要とされる最小共通高さである。
【0039】
この高さHminは、それぞれ第1の系列のマニホルドのオリフィスを通り、第2の系列のマニホルドのオリフィスを通る統合最小均一流量Q1min及びQ2minによって定まる。
【0040】
好ましくは、ステップe.2)において、前記弁は、開放され、及び2つの長手方向ダクトは、互いに連通され、それにより、最大値Hmaxであった第1のダクトの液体の液位は、第1のダクトの液位と同じである第2のダクトの液位H0まで下がり、H0は、Hmin以上であり、且つQ2min以上である第2の分配器の流量に対応し、第1及び第2の分配器は、
a)Q2minがQ1max-Q1min以下であり、
・第1及び第2の分配器が、
- 第1の分配器のための第1のダクト(5)及び第1の系列のマニホルドのオリフィス(8c)と、
- 第2の分配器のための第2のダクト(6)及び第2の系列のマニホルドのオリフィス(8c)と
を含むとして規定され、且つ
・Q1min及びQ2minが、液体が第1及び第2の系列のマニホルドによって均一に分配されることを可能にする、それぞれ第1及び第2の系列のマニホルドのオリフィスを通る統合最小流量としてそれぞれ規定され、且つ
・Q1maxが、第1のダクトの液体高さが最大値Hmaxであるときの第1の分配器の最大流量として規定され、及び
b)前記弁を開放し、且つ2つの長手方向ダクトを互いに連通させるとき、最大値Hmaxである第1のダクトの液位が、第1のダクトの液位と同じである第2のダクトの液位H0まで下がるように構成され、H0は、上記に定義したHmin以上である。
【0041】
さらに好ましくは、ステップe.2)において、前記弁は、開放され、及び2つの長手方向ダクト(5、6)は、互いに連通され、それにより、最大値Hmaxであった第1のダクトの液位H1は、第1のダクトの液位と同じである第2のダクトの液位H0まで下がり、H0は、Hminよりも大きく、且つQ2minよりも大きい第2の分配器の流量に対応し、第1及び第2の分配器は、
a)Q2minがQ1max-Q1min未満であり、及び
b)前記弁を開放し、且つ2つの長手方向ダクトを互いに連通させるとき、最大値Hmaxである第1のダクトの液体の液位は、第1のダクトの液位と同じである第2のダクトの液位H0まで下がるように構成され、H0は、Hmin以上である。
【0042】
H0がHminよりも大きい場合、有利には、下記に説明するように、「モノ分配器」運転モードと「二重分配器」運転モードとの間での不時の振動現象を回避するために、連通弁を開放及び閉鎖するための2つの異なる液位閾値を特徴とするヒステリシスを伴って装置を動作させることが可能である。
【0043】
好ましくは、第1の分配器のみが作動する運転モードから、第1及び第2の分配器の両方が作動する二重分配運転モードに移行するように流量が増大している間、前記弁の開放を始動させるための閾値での流量は、第1及び第2の分配器の両方が作動する二重分配運転モードから、第1の分配器のみが作動する運転モードに移行するように流量が減少している間、弁の閉鎖を始動させるための閾値での流量よりも大きい。
【0044】
そのような環境下において、本発明の方法は、以下のステップ、
1)第1のダクトのみの液位を上げるステップと、
2)液位が、第1の分配器の最大均一流量Q1maxに対応する第1のダクトの最大高さ閾値Hmaxに達するとき、前記弁を開放し、且つ2つの長手方向ダクトを連通させるステップであって、それにより、最大値Hmaxであった第1のダクトの液体の液位は、第1のダクトの液位と同じである第2のダクトの液位H0まで下がり、H0は、前記値Hminよりも大きい、ステップと、
3)液位は、第1のダクト及び第2のダクトの両方でH0から上がる、ステップであって、装置は、このとき、第1及び第2の分配器の両方が作動する二重分配運転モードであり、両方の分配器の統合流量は、Q1maxからQ1max+Q2maxに増大し、Q2maxは、第1及び第2のダクトの同じ液体高さが最大値Hmaxであるときの第2の分配器の最大流量として規定される、ステップと、
4)装置が、第1及び第2の分配器の両方が作動する二重分配運転モードであるとき、流量は、Q1max~Q1max+Q2maxの範囲であり、流量が減少する場合、前記弁は、両方のダクトの液体の液位Hminで流量がQ1min~Q1maxの範囲の最小閾値Q0に達する場合にのみ閉鎖される、ステップであって、Q0は、Q1min+Q2min以上であり、好ましくはQ1min+Q2minに等しい、ステップと、
5)前記弁を閉鎖した後、第1のダクトの液位は、Hmin超であるが、Hmax未満の値H1まで上昇する、ステップであって、流量は、Q1min~Q1maxの範囲であり、装置は、第1のダクトの液位がHmaxを超えない限り、第1の分配器のみが作動する単一分配運転モードのままである、ステップと
を含むことができる。
【0045】
本明細書では、図に示すように、第1及び第2のダクトの液体高さH1、H2、Hmin及びHmaxは、ダクト及びマニホルドの底面を通る水平面によって画定される分配器のベース部に対する高さとして理解すべきである。
【0046】
Hmax及びHminは、動きの程度の所与の条件及び仕様によって定まる流量範囲について、液体分配の均一性の観点から特定の性能度を達成するために算出される分配器の容量特性である。
【0047】
運転時、弁を制御するために分配器の垂直ダクトの液位が測定されるが、このように、弁のための始動閾値Hmin及びHmaxは、設備に特有の特性である。
したがって、本発明の流量及び液体高さパラメータは、設備のための調整特性である。特に、このタイプの装置は、必然的に、均一な液体分配を保証する流量範囲Qmin及びQmaxの特定に関係する特性を満たすように特徴付けられた構造物であることが当業者に公知であり、この液体分配は、特に分配マニホルドに形成された穴の数量及び大きさ又は分配マニホルドの直径に応じて行われる。これらの特性を求める技術は、当業者にとって公知であり、これらの技術は、技術革新の対象ではない。
【0048】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照してなされる以下の説明から明らかになり、添付図面は、限定性を有さない実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】複数の充填物層9と協働する複数の液体分配器1を有する分留塔10の図であり、充填物層9は、上部分配器の下の上部破線から、下方に(下側分配器のチムニートレイの上に)ある破線対まで延びている。
【
図2A】中心軸ZZ’に近接して且つ中心軸ZZ’に関して対称に並んで配置された2つの垂直ダクト5及び6を有する、溢流を伴う先行技術の二重液体分配装置の斜視図である。
【
図2B】中心軸ZZ’に近接して且つ中心軸ZZ’に関して対称に並んで配置された2つの垂直ダクト5及び6を有する、溢流を伴う先行技術の二重液体分配装置の側面図である。
【
図2C】中心軸ZZ’に近接して且つ中心軸ZZ’に関して対称に並んで配置された2つの垂直ダクト5及び6を有する、溢流を伴う先行技術の二重液体分配装置の平面図である。
【
図3A】二重液体分配器の概略図であり、互いに関連する2つの系列のマニホルド8a及び8bに対する2つの異なる構成を有する2つの分配システム間の協働を示す。
【
図3B】二重液体分配器の概略図であり、互いに関連する2つの系列のマニホルド8a及び8bに対する2つの異なる構成を有する2つの分配システム間の協働を示す。
【
図3C】二重液体分配器の概略図であり、互いに関連する2つの系列のマニホルド8a及び8bに対する2つの異なる構成を有する2つの分配システム間の協働を示す。
【
図4A】2つのダクト5及び6間の連通を制御するための装置11を含む本発明の二重液体分配器の側面図である。
【
図4B】2つのダクト5及び6間の連通を制御するための装置11を含む本発明の二重液体分配器の平面図である。
【
図5A】均一性パラメータkが先行技術の二重分配器の第1のダクトの流量に応じてどのように変わるかを示すグラフである。
【
図5B】均一性パラメータkが本発明の二重分配器の第1のダクトの流量に応じてどのように変わるかを示すグラフである。
【
図6】単一の弁開放又は閉鎖閾値(ヒステリシスなし、曲線A、B及びC)の場合と、それぞれ開放及び閉鎖のための2つの異なる弁閾値(ヒステリシスあり、曲線A’、B’1/B’2及びC’)の場合との両方において、流量に応じた液体高さの変動をプロットし、本発明の装置の動作を示すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、円筒壁10aを有し、3つのそれぞれの充填物層9の上に軸方向に配置された3つの液体分配装置1を収容する分留塔又は相分離塔10を示し、3つの充填物層9は、それぞれが塔の円形断面全体を占有している。これらの層の充填物は、製造業者スルザー(SULZER)(スイス)製の「メラパック(Mellapak)(商標)」構造化充填物、又は製造業者コークグリッチ(KOCH GLITSCH)(米国)製の「フレキシパック(FLEXIPAC)(登録商標)」充填物、又は製造業者コークグリッチ(KOCH GLITSCH)(米国)製の「インタロックス(INTALOX)(登録商標)」若しくは「IMTP(登録商標)」ランダム充填物などの「構造化」タイプとすることができる。
【0051】
図2A~2C並びにまた
図3A~3C及び
図4A~4Bは、前記塔の長手軸方向ZZ’に垂直な前記塔の断面にわたって広がる少なくとも1つの充填物層9を収容する分留塔又は洗浄塔10での使用に適した二重液体分配装置1を示す。底部から上部まで、液体分配装置1は、
・円形外形であり、円筒壁10aの直径に等しい直径の高収集トレイ2であって、液体を捕捉し、液体を第1の液体流下ダクト5に向かって下方に送出するための、交差する構成で直径方向に配置された傾斜底面付きの2つのチャネル3a及び3bを含む(ZZ’に垂直な)水平面を有し、さらに、気相が上昇することを可能にする煙突4を支持する高収集トレイ2(この煙突は、図示していない帽子状部を有する)と、
・トレイ2及び塔10の軸ZZ’に近接して対称に配置され、トレイ2をマニホルド支持体7に接続する2つの平行な長手方向液体流下ダクト5及び6であって、第1の長手方向ダクト5の上部開口5aは、チャネル3a~3bの底面と同じ高さである一方、第2のダクトの上部開口6aは、収集トレイ2から高さh0にある高さ位置に達する、長手方向液体流下ダクト5及び6と
を含み、
・マニホルド支持体7は、直径方向に配置され、軸ZZ’に垂直に(水平に)且つ互いに平行に配置された2つの系列の横管状マニホルド8、8a~8bを支持し、
・第1の系列のマニホルド8aは、第1の長手方向ダクト5によってのみ液体を供給され、第2の系列のマニホルド8bは、それぞれ第2の長手方向ダクト6によって排他的に液体を供給され、各マニホルド8、8a~8bは、マニホルドの下面に配置され、二重液体分配装置の下の充填物層9の上面に液体8dを噴霧するのに適した分配オリフィス8cを有する。
【0052】
好ましい実施形態の
図3Aでは、第1のダクト5のマニホルド8aは、第1のダクトよりも高い高さまで延びる第2のダクト6の空のマニホルド8b間に同じ高さで挿入されている。
【0053】
図3B及び3Cは、2つの系列のマニホルドを動作させる原理をより明瞭に示し、且ついずれのマニホルドがいずれのダクトに対応するかをより良好に特定するように、第2のダクト6のマニホルド8b間に千鳥状に配置され、マニホルド8bよりもごくわずかにのみ高い高さ位置に配置された第1のダクト5のマニホルド8aを示し、各マニホルドは、垂直ダクトの一方のみを介して排他的に液体を供給される。ただし、実際には、二重分配器のマニホルドは、すべて同じ高さにある。
【0054】
図3Bでは、装置は、単一又は「モノ分配器」モードで動作しており、オリフィス8cから噴霧するために、第1のダクト5及び第1のマニホルド8aのみが液体8dで満たされている。
図3Cでは、装置は、二重モードで動作しており、液体で完全に満たされ、最大流量を伴う両方のダクト5及び6並びに両方の系列のマニホルド8a及び8bが示されている。
【0055】
図4A及び
図4Bは、
図2及び
図3に示すものと同様であるが、2つのダクト5及び6間を連通し、開放及び閉鎖を制御される弁12を含む連通装置11も装備された本発明の二重液体分配器を示す。連通装置11は、弁12と共に、複数の曲げ部13及び14を有する2つの角度付きダクトを含む。2つの角度付きダクト13及び14は、壁10aの外に配置された弁12と、第1のダクト5及び第2のダクト6のそれぞれの底部部分との間を接続している。2つの角度付きダクト13及び14は、弁12に関して対称に配置され、ダクト5及び6に接続された部分13a及び14aは、壁10a内に配置され、弁12に接続された部分13b及び14bは、壁10aの外に配置されている。
【0056】
弁12は、保守を実施するために壁10aの外に配置されている。しかし、前記弁を壁10aの内部に残すことを想定することも完全に可能である。さらに、ダクト13及び14は、本発明の原理を変えることなく、何らかの別の形状とすることができる。対照的に、弁12は、分配器が極低温液体と共に使用される場合、液体がデッドアームで蒸発することで発生した蒸気泡が塔の内部に向かって自然に放出され得ることを保証するために、ダクト13及び14の要素がたどる接続路に沿って任意の「ポケット」がない状態で低い地点に配置されなければならない。さらに、流れを誘導しないリスクを回避するために、液体が泡立ち点にある場合、ダクト13及び14の要素は、Hminよりも低い高さに留まらなければならず、すなわち、この例では、部分13a及び14aは、液位Hminに対応する高さよりも低い高さに留まる接続路をたどらなければならない。
【0057】
第2のダクトの高さH3は、第1のダクトの高さH2+h0に等しく、この場合、h0は、第2のダクトの付加的な高さであり、実際にはH2の約10%である。
2つの系列のマニホルド8a及び8bのオリフィスのすべてに液体を供給するため、両方のダクト5及び6に必要とされる最小液体高さHminは、実際には、約5°~20°の傾きの振幅と、マニホルドの大きさ(長さ及び直径)と、最小流量Qmin~最大流量Qmaxの必要とされる範囲又は比率とに依存する。したがって、穴8cの数量及び大きさと、第1のダクト5及び第2のダクト6の高さとは、前記最小液体高さHminにおける所望の最小均一流量Q1min、Q2minと、最大液体高さHmaxにおける所望の最大均一流量Q1max、Q2maxとを供給するように定められる。
【0058】
最小高さHminは、マニホルドの長さを決める塔の直径Dと、マニホルドの中心オリフィスと「最端」オリフィスとの間の差である、浮遊体の動きによる流量の相対差の基準Eと、加速度ベクトルと船舶の基準フレームの軸ZZ’との間に形成される扇角によって画定される角度「動的α」とから計算することができる。したがって、Hmin=D×0.5×tan(α)×(1/((1+E)2-1)である。オリフィスの数量及び大きさは、分配器が十分な均一性を保証しながら、高さHminで流量Qminを通過させることができるように計算される。こうして、意図された均一性(因子k0)により、必要とされる比率Hmin/Dが決まる。
【0059】
分配器の最大液体高さHmaxは、最小流量Qminと比率Qmax/Qminとから得られ、すなわちHmax/D=(Qmax/Qmin)2×Hmin/D)である。通常、比率Qmax/Qminは、100/40である。実例として、8.5%の最大差E及び10°の角度αに対して、Hminは、0.5×Dである。通常、Hmax/Dは、0.5~1.5の範囲である。通常、Dは、4m~5mであり、E=5%~15%である。
【0060】
意図された均一性(因子k0)により、必要とされる比率Hmin/Dが決まる。しかし、有効比Hmin/Dは、引き続き塔が運転される有効流量に依存し、均一性基準は、設計時に考慮した最小流量Qmin以上である流量に対してのみ、設計時に考慮した傾き角に対応することが可能である。
【0061】
図5A及び
図5Bでは、分配器は、k
0が4.5%であるように、最大長さ4.15mのマニホルドと、Q
1min/(Q
1max+Q
2max)=40%とに対して調整される。
【0062】
図5Aにおいて、溢流を伴う先行技術の二重分配器では、傾きが最大の状況で第1のダクトの液体高さが高くなっているとき、以下の様々な一連の段階が起こることが分かる。
・曲線A:分配器の流量は、第1のダクトの液位がHminからHmaxに移行するとき、42%のQ
1minから65%のQ
1maxに移行し、分配器の様々なオリフィス間の分配均一性が高まり、なぜなら、kがk
0未満まで小さくなるからであり、次いで、
・曲線B及びC:液体は、第1のダクトから溢流して第2のダクトに入り、両方の分配器を通る統合流量は、Q’=66.58%~Q”=75.7%の範囲まで増大し(曲線C)、この範囲では、第2のダクトにおいて、必要とされる最小高さHminが達成されず、その結果として、分配が十分に均一ではなく、非均一性が高まり、kは、k
0=4.5%を超えて最大で7%まで達し、次いで、
・曲線D:第2のダクトの液体高さは、Hminよりも大きく、統合流量は、増大し、統合最大流量が(Q
1max+Q
2max)に達すると、kは、最小値1.5%まで小さくなる。
【0063】
先行技術の実施形態では、このように、Q1min~Q1max+Q2maxの範囲である運転流量に関して、運転流量範囲のまさに中央にあり、必要とされる均一性許容値から外れた、Q’とQ”との間の(Q1max+Q2max=100%と仮定した場合の)ほぼ10%の流量幅がある。
【0064】
図5B及び
図6において(ヒステリシスのない、細線で示す曲線A、B及びC)、制御式開口を含む弁12を有する連通装置11を含む本発明の二重分配器では、最大に傾いた状況において、第1のダクトの液体高さが高くなると、第2の分配器は、液圧で調整されて、流量差Q
2min=Q
1max-Q
1minを供給し、液体高さがHminになり、以下の様々な段階が起こる。
【0065】
・曲線A:流量は、0からQ1maxに移行し、モノ分配器として動作する第1の分配器において、液位が0から(Q1minに対応するHminを経由して)Hmax1に移行し、第1の分配器の様々なオリフィス間の分配均一性が高まり、なぜなら、kがk0未満まで小さくなるからであり、次いで、点P1において、
・曲線B:2つのダクト間の低位連通弁12は、開放され、液体は、点P2に至るまで第1のダクトからこの弁を通って第2のダクトに入り、液体高さは、ほとんど瞬間的に変化して、両方のダクトにおいてH0=Hminで等しくなり、流量は、第1の分配器でQ1max=Q1max1からQ1minに移行し、第2の分配器で0からQ2min=Q1max1-Q1minに移行し、両方の分配器を通る統合流量は、P2において変わらないままであり、実際にはQ1max=Q1max1であり、次いで、
・曲線C:両方の分配器を通る統合流量がQ1max1から(Q1max+Q2max)まで増大すると、両方のダクトの液体高さは、HminからHmax1まで同様に且つ同時に増大し、統合最大流量に達すると、kは、最小値1.5%まで小さくなる。
【0066】
Hmax=H2+h1であり、ここで、h1は、収集トレイ2で許容される最大液体高さであり、h1は、弁12が開放される前に液体が不時に溢流して第2のダクトに入ることを回避するためにh0よりも小さい。
【0067】
本発明によるこの実施形態では、流量を増減させるために、弁をそれぞれ開放及び閉鎖するサイクルにはヒステリシスがなく、弁の始動閾値は、P1で弁を開放する一方、B1からC1への方向に流量が増大する場合と、P2で弁を閉鎖する一方、C2からB2への方向に流量が減少する場合とで同一である。
【0068】
図6は、ヒステリシスをもたらす、本発明の二重分配器のための有利な異なる調整運転も示す。この有利な変形形態では、弁を開放/閉鎖して「モノ分配器」モードと「二重分配器」モードとを切り換えるための流量付近において運転が不安定になる任意のリスクを回避するために、装置は、流量が増大している間、弁を開放するための始動閾値Hmax
2に対応する流量Q
1max=Q
1max
2が、流量が減少している間、弁を閉鎖するための始動閾値Hminに対応する流量(Q
1min+Q
2min)よりも大きいようにヒステリシスを実施することができる構成とされる。連通弁を制御するためのこれらの2つの閾値Hmin及びHmaxが2つの異なる流量Q
1max及び(Q
1min+Q
2min)に対応することは、「モノ分配器」運転モードと「二重分配器」運転モードとの間での不時の振動現象を回避するのに寄与する。
【0069】
このために、第2の分配器は、流量Q2min=Q1max-Q1minに対してではなく、Q1max-Q1minの一部、すなわちQ2min=r×(Q1max-Q1min)に対して液位Hminを保証するように液圧で調整され、ここで、rは、1未満である。
【0070】
図6では、以下の段階が起こる。
・方向A’1の曲線A’:流量は、0からQ
1max
2に移行し、モノ分配器として動作する第1の分配器において、液位が0から(Q
1minに対応するHminを経由して)Hmax
2に移行し、第1の分配器の様々なオリフィス間の分配均一性が高まり、なぜなら、kがk
0未満まで小さくなるからであり、次いで点P’1に至り、
・曲線B’1:2つのダクト5及び6間の低位連通弁12は、開放され、液体は、両方のダクトにおいて液体高さが、Hminを超えるH
0でほとんど瞬間的に等しくなるまで、第1のダクトから弁を通って第2のダクトに流れ、流量は、第1の分配器においてQ
1max
2からQ
1(H
0)に移行し(Q
1(H
0)>Q
1min)、第2の分配器において0からQ
2(H
0)=(Q
1max
2-Q
1(H
0))に移行し((Q
1max
2-Q
1(H
0))<(Q
1max
2-Q
1min))、そのため、両方の分配器を通る統合流量は、最初に変わらず、実質的にQ
1max=Q
1max
2であり、次いで点P’2において、
・方向C’1の曲線C’:装置は、両方の分配器において二重分配モードで動作する。両方の分配器を通る統合流量がQ
1max
2から(Q
1max+Q
2max)まで増大すると、両方のダクトの液体高さは、H
0からHmax
2まで同様に且つ同時に増大し、統合最大流量に達すると、kは、最小値1.5%まで小さくなる。
【0071】
・方向C’2及び次いで方向B’2の曲線C’:装置が、第1及び第2の分配器の両方が作動する二重分配運転モードで動作している間、流量は、Q1max2~Q1max+Q2maxの範囲であり、流量が減少する場合、前記弁12は、液位がHminに達し、流量が両方のダクト5及び6でQ0である場合にのみP3で閉鎖され、
・曲線B’2:弁12が閉鎖したとき、装置は、P3において、第1の分配器のみが作動する単一分配運転モードに移行し、第1のダクトの液位は、Hmax2未満の値H1まで上昇し、流量Q0=(Q1min+Q2min)は、Q1min~Q1max2の範囲であり、
・方向A’2の曲線A’:流量がQ0から0にさらに減少するか、又は流量がQ1max2未満のままである限り、第1の分配器は、モノ分配器モードでの運転のままである。
【0072】
(ヒステリシスのある及びヒステリシスのない)
図6に示す両方の実施形態では、装置は、同じ最大飽和流量Q
1max
1+Q
2max
1(ヒステリシスなし)=Q
1max
2+Q
2max
2(ヒステリシスあり)に対して調整される。さらに、Q
1max
2>Q
1max
1、Q
2max
2<Q
2max
1である。
【0073】
それにもかかわらず、ヒステリシスがある場合、第1の分配器は、弁を開放する前により大きい液体負荷で動作しなければならない(Hmax2は、Hmax1よりも大きい)。また、第2の分配器は、「ヒステリシスのない」状況でより少ない流量に対して調整され、rが0<r<1であるように選択された場合、Q2min=r×(Q1max-Q1min)(ヒステリシスあり)<Q2min=Q1max-Q1min(ヒステリシスなし)である。特に全流量が100%、すなわち(Q1max+Q2max)から減少する場合、弁の閉鎖に対応する(高さHminの)P3での流量閾値は、P2での「ヒステリシスのない」状況におけるよりも小さくなければならない。
【0074】
(ヒステリシスのある及びヒステリシスのない)
図6の両方の実施形態において、分配の均一性は、必要とされる均一性許容値を満たしたままであり、kは、Q
1min~(Q
1max+Q
2max)の全運転流量範囲にわたってk
0未満である。同じ飽和流量(Q
1max+Q
2max)に対して、高さHmaxは、溢流を伴う二重分配器の同じ高さよりも若干高い。特に、制御式弁が本発明に従って開放し、このように調整される二重分配器の場合、比率Hmax/Hminは、流量比Qmax/Qminに等しく、それに対してモノ分配器の場合、同じ比率Hmax/Hminは、最大及び最小流量の比の二乗に等しい。
【0075】
図6において、ヒステリシスの「ある」及びヒステリシスの「ない」それぞれの構成に対して、2つの構成間で変わるのは、ダクト5及び6の長さ並びにしたがってマニホルド8の上の収集トレイ2の高さである一方、トレイ2上の液体の厚さh1は、両方の状況で同じであり、例えば0.2mである。制御式開口を有する装置では、液体は、弁が誤動作した場合にのみオーバフロー管6aの上部まで上昇する。本発明では、オーバフロー管6aは、緊急装置である。
【0076】
すべての環境下において、弁12の開放又は閉鎖は、(流量を測定することではなく)液位を測定することに基づいてのみ始動される。ダクト5の液位が閾値Hmaxに達すると、弁12は、開放し、両方のダクト5又はダクト6の液位が閾値Hminまで下がると、弁12は、閉鎖する。
【0077】
ヒステリシスを有するシステムの特有の特徴は、第1に、第1の分配器の最大液体高さを高くし、且つしたがってQ1maxを超える値Q1max2を得るためにダクト5及び6が長くされることにあり、第2に、第2のサブミッタのマニホルドの系列がどのように調整されるかにあり、この系列は、弁を開放する前に、第1の分配器で自然に達成された流量Q1maxが、その後、弁が開放されると、Hminを超える(両方のダクト5及び6で同一の)液体高さH0になるように調整される。ヒステリシスのないシステムでは、弁の開放直後に達する液位H0は、Hminである。
【0078】
H0がHminよりも大きい場合、装置は、実際には、ヒステリシスありで動作し、このヒステリシスは、弁12を開放するための閾値Hmax2に対応する流量Q1max2が、「モノ分配器」運転モードと「二重分配器」運転モードとの間での不時の振動現象を回避するために、液位Hminで同じ弁12を再度閉鎖するための閾値に対応する流量Q1min+Q2minと異なり、Q1min+Q2minを超える値であることを特徴とする。