(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】一体型の取付けループを備えた織物スリーブおよびその構築方法
(51)【国際特許分類】
D03D 1/00 20060101AFI20220804BHJP
【FI】
D03D1/00 Z
(21)【出願番号】P 2019562242
(86)(22)【出願日】2018-02-01
(86)【国際出願番号】 US2018016328
(87)【国際公開番号】W WO2018144656
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2021-01-29
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503170721
【氏名又は名称】フェデラル-モーグル・パワートレイン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL-MOGUL POWERTRAIN LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン,アリス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,パトリック
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-209753(JP,A)
【文献】特表2005-506492(JP,A)
【文献】特公昭50-206347(JP,B1)
【文献】特表2011-513600(JP,A)
【文献】特表2008-507636(JP,A)
【文献】登録実用新案第3214172(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0073169(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107815778(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D1/00-27/18
A44B13/00-18/00
D02G1/00-3/48
D02J1/00-13/00
H02G1/00-7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長部材を保護するための巻付け可能な織物スリーブであって、
互いに織り合わされた複数の縦糸フィラメントと少なくとも1本の横糸フィラメントとを含む壁を含み、前記壁は、対向端部同士の間に中心長手方向軸に対してほぼ平行な関係で長手方向に延在する対向側部を有し、前記対向側部は、前記スリーブのキャビティ内において前記細長部材と境を接するように、互いに部分的に重なり合った関係となるように前記中心長手方向軸を中心として巻付け可能であり、
前記縦糸フィラメントおよび/または前記横糸フィラメントのうち少なくとも1つは、2本以上の横糸および/または縦糸上にわたって延在する少なくとも1つの浮き部を形成するように織られた嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントとして設けられており、前記少なくとも1つの浮き部は、標準の面ファスナのフックに取付けるのに適したループを備える、巻付け可能な織物スリーブ。
【請求項2】
互いに隣り合う前記嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントとして設けられている複数の前記縦糸フィラメントをさらに含み、隣り合う前記嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントは、前記ループの別個のファスナ・パッチを形成するように互いに隣り合う浮き部を有する、請求項1に記載の巻付け可能な織物スリーブ。
【請求項3】
互いに隣り合う前記嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントとして設けられている複数の前記横糸フィラメントをさらに含み、隣り合う前記嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントは、前記ループの別個のファスナ・パッチを形成するように互いに隣り合う浮き部を形成する、請求項1に記載の巻付け可能な織物スリーブ。
【請求項4】
少なくとも1つの前記浮き部は綾織りパターンを有するように形成される、請求項1に記載の巻付け可能な織物スリーブ。
【請求項5】
少なくとも1つの前記浮き部は、朱子織りパターンを有するように形成される、請求項1に記載の巻付け可能な織物スリーブ。
【請求項6】
少なくとも1つの前記浮き部は、前記壁の長さの一部分のみにわたって延在するように形成される、請求項1に記載の巻付け可能な織物スリーブ。
【請求項7】
複数の少なくとも1つの前記浮き部は前記壁の長さ全体に沿って連続して延在している、請求項1に記載の巻付け可能な織物スリーブ。
【請求項8】
前記浮き部は、前記壁の円周の一部分のみにわたって延在するように形成することができる、請求項2に記載の巻付け可能な織物スリーブ。
【請求項9】
前記浮き部は、前記壁の円周全体のまわりに延在するように形成することができる、請求項2に記載の巻付け可能な織物スリーブ。
【請求項10】
前記縦糸フィラメントのうち少なくともいくつかがモノフィラメントとして設けられる、請求項2に記載の巻付け可能な織物スリーブ。
【請求項11】
前記横糸フィラメントのうち少なくともいくつかは、ヒートセットされて前記対向側部を付勢して前記対向側部を互いに対して部分的に重なり合った関係にするためのヒートセット可能なモノフィラメントとして設けられている、請求項1に記載の巻付け可能な織物スリーブ。
【請求項12】
前記横糸フィラメントの各々は、ヒートセットされて前記対向側部を付勢して前記対向側部を互いに対して部分的に重なり合った関係にするためのヒートセット可能なモノフィラメントとして設けられている、請求項11に記載の巻付け可能な織物スリーブ。
【請求項13】
前記縦糸フィラメントは複数の窪みにわたって織り合わされており、前記複数の窪みは各々、複数のフィラメントを含み、前記複数のフィラメントのうち少なくとも1つは前記嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントを含む、請求項1に記載の巻付け可能な織物スリーブ。
【請求項14】
前記複数のフィラメントのうち少なくとも1つは、前記嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントのデニールよりも高いデニールを有する標準マルチフィラメントである、請求項13に記載の巻付け可能な織物スリーブ。
【請求項15】
前記嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントは朱子織りパターンで織られており、前記標準マルチフィラメントは平織りパターンで織られている、請求項14に記載の巻付け可能な織物スリーブ。
【請求項16】
前記嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントの線形質量は約210tex~約250texである、請求項14に記載の巻付け可能な織物スリーブ。
【請求項17】
前記標準マルチフィラメントの線形質量は約133tex~約147texである、請求項
14に記載の巻付け可能な織物スリーブ。
【請求項18】
細長部材を保護するための巻付け可能な織物スリーブを構築する方法であって、
織り壁を形成するように、複数の縦糸フィラメントと少なくとも1本の横糸フィラメントとを互いに織り合わせるステップと、
対向端部間において長手方向に延在する対向側部を有する前記壁を織るステップとを含み、前記対向側部は、互いに対して部分的に重なり合った関係となるように、中心長手方向軸を中心として巻付け可能であり、前記方法はさらに、
少なくとも1本の縦糸フィラメントおよび/または横糸フィラメントを嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントとして織り合わせて、毛羽のあるマルチフィラメントで2本以上の横糸および/または縦糸上にわたって延在する少なくとも1つの浮き部を形成するステップを含み、前記少なくとも1つの浮き部は、標準の面ファスナのフックへの固定のために構成された複数のループを形成している、方法。
【請求項19】
隣り合う嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントが互いに隣り合う浮き部を形成して、前記ループの少なくとも1つの別個のファスナ・パッチを形成するように、複数の前記縦糸フィラメントを、互いに隣り合う前記嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントとして織り合わせるステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記壁の長さの一部分のみにわたって延在するように前記少なくとも1つの別個のパッチを形成するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記壁の前記長さに沿って複数の前記別個のパッチを形成するステップをさらに含み、複数の前記パッチは、互いに対して軸方向に位置合わせされており、前記壁のうちパッチのない部分によって互いから軸方向に間隔を空けて配置されている、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記壁の円周の一部分のみにわたって延在するように前記パッチを形成するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記壁の円周の全体のまわりに延在するように前記パッチを形成するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
互いに直接隣り合うとともに前記壁の長さ全体に沿って互いに軸方向に位置合わせされた複数の別個のパッチを形成するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
隣り合う嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントが互いに隣り合う浮き部を形成して前記ループの少なくとも1つの別個のファスナ・パッチを形成するように、複数の前記横糸フィラメントを互いに隣り合う前記嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントとして織り合わせるステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記壁の長さの一部分のみにわたって延在するように前記少なくとも1つの別個のパッチを形成するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記壁の前記長さに沿って複数の前記別個のパッチを形成するステップをさらに含み、前記複数のパッチは、互いに対して軸方向に位置合わせされており、前記壁のうちパッチのない部分によって互いから軸方向に間隔を空けて配置されている、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記壁の円周の一部分のみにわたって延在するように前記パッチを形成するステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記壁の円周の全体のまわりに延在するように前記パッチを形成するステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
互いに直接隣り合う複数の前記別個のパッチを形成するステップをさらに含み、複数の前記別個のパッチは、前記壁の円周の全体のまわりに延在するように互いに対して円周方向に位置合わせされている、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記縦糸フィラメントのうち少なくともいくつかをモノフィラメントとして織り合わせるステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記横糸フィラメントのうち少なくともいくつかを、ヒートセット可能なモノフィラメントとして織り合わせるステップをさらに含み、前記ヒートセット可能なモノフィラメントは、ヒートセットされて前記対向側部を付勢して前記対向側部を互いに対して部分的に重なり合った関係にするためのものである、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
複数の窪み上にわたって前記縦糸フィラメントを織り合わせるとともに、各々が複数のフィラメントを含む前記複数の窪みを設けるステップを含み、前記複数のフィラメントのうち少なくとも1つは前記嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項34】
前記複数のフィラメントのうち少なくとも1つを、前記嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントのデニールよりも高いデニールを有する標準マルチフィラメントとして設けるステップをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントを朱子織りパターンで織るとともに、前記標準マルチフィラメントを平織りパターンで織るステップをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
線形質量が約210tex~約250texである前記嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントを設けるステップをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
線形質量が約133tex~約147texである前記標準マルチフィラメントを設けるステップをさらに含む、請求項
34に記載の方法。
【請求項38】
線形質量が約210tex~約250texである前記嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントを設けるステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年2月1日に提出された米国仮出願連続番号第62/453,143号および2018年1月31日に提出された米国実用出願連続番号第15/885,638号の利益を主張するものであって、それらの全体が引用により本願に援用されている。
【0002】
発明の背景
1.技術分野
本発明は、概して、細長部材を保護するための織物スリーブに関し、より特定的には、支持部材に取付けられるように構成された織物スリーブに関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
一般に、ワイヤはまとめて束ねられて、ワイヤハーネス形状の織物スリーブによって保護されている。ワイヤハーネスは、車両フレーム部材または他の何らかの車両構成要素などの外部支持部材に固定されて、固定位置で維持されることが多い。典型的には、クリップ、接着剤、プラスチック留め具および別個に設けられた面ファスナなどの補助部材は、ワイヤハーネスとは別個であって、ワイヤハーネスを適所に固定するために用いられている。この場合、フック部分またはループ部分のうちの一方は、フック部分またはループ部分のうち所望の支持部材に固定される他方の部分に固定するために、縫い目または接着剤などを用いる二次的動作によってスリーブの外表面に固定される。これらの機構はワイヤハーネスを適所に固定するのに有用であることを証明することができるが、二次的製品および二次的動作に関連する費用を伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この明細書中の開示に従って構築されるスリーブは、少なくとも上述の欠点を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
細長部材を保護するための巻付け可能な織物スリーブは、織り壁を形成するように互いに織り合わされた複数の縦糸フィラメントおよび少なくとも1本の横糸フィラメントを含む。織り壁は、対向端部間に長手方向に延在する対向側部を有する。対向側部は、スリーブのキャビティ内において細長部材と境を接するように、互いに部分的に重なり合った関係となるように中心長手方向軸を中心として巻付け可能である。織り壁を支持部材に容易に固定できるようにするために、少なくとも1本の縦糸フィラメントおよび/または横糸フィラメントは嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントとして設けられる。嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントは、2本以上の横糸および/または縦糸の上にわたって延在する少なくとも1つの浮き部を形成するように織られている。少なくとも1つの浮き部は、標準の面ファスナのフックに容易に固定するのに十分なループを備える。
【0006】
本発明のさらなる局面に従うと、複数の縦糸フィラメントは、互いに隣り合う嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントとして設けられている。隣り合う嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントは互いに隣り合う浮き部を形成している。
【0007】
本発明のさらなる局面に従うと、複数本の横糸フィラメントは、互いに隣り合う嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントとして設けられている。隣り合う嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントは互いに隣り合う浮き部を形成している。
【0008】
本発明のさらなる局面に従うと、当該浮き部は綾織りパターンを有するように形成することができる。
【0009】
本発明のさらなる局面に従うと、当該浮き部は朱子織りパターンを有するように形成することができる。
【0010】
本発明のさらなる局面に従うと、当該浮き部は、壁の長さの一部分のみにわたって延在するように形成することができる。
【0011】
本発明のさらなる局面に従うと、当該浮き部は、壁の円周の一部分のみにわたって延在するように形成することができる。
【0012】
本発明のさらなる局面に従うと、当該浮き部は、壁の長さ全体にわたって延在するように形成することができる。
【0013】
本発明のさらなる局面に従うと、当該浮き部は、壁の円周全体にわたって延在するように形成することができる。
【0014】
本発明のさらなる局面に従うと、縦糸フィラメントのうち少なくともいくつかはモノフィラメントとして設けることができる。
【0015】
本発明のさらなる局面に従うと、横糸フィラメントのうち少なくともいくつかは、細長部材のまわりでのスリーブの組立てを容易にするために、ヒートセットされて対向側部を付勢して当該対向側部を互いに部分的に重なり合った関係にするためのヒートセット可能なモノフィラメントとして設けることができる。
【0016】
本発明のさらなる局面に従うと、縦糸フィラメントは複数の窪み上にわたって織り合わされている。複数のくぼみは各々、複数のフィラメントを含んでおり、複数のフィラメントのうち少なくとも1つは嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントを含んでいる。
【0017】
本発明のさらなる局面に従うと、複数の窪みの各々における複数のフィラメントのうち少なくとも1つは、嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントのデニールよりも高いデニールを有する標準マルチフィラメントである。
【0018】
本発明のさらなる局面に従うと、嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントは朱子織りパターンで織ることができるとともに、嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントと同じ窪み内にある標準マルチフィラメントは平織りパターンで織ることができる。
【0019】
本発明のさらなる局面に従うと、嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントのデニールは約210tex~約250texである。
【0020】
本発明のさらなる局面に従うと、標準マルチフィラメントのデニールは約1400Dtexである。
【0021】
本発明のさらなる局面に従うと、細長部材を保護するための巻付け可能な織物スリーブを構築する方法は、織り壁を形成するように複数の縦糸フィラメントと少なくとも1本の横糸フィラメントとを互いに織り合わせるステップを含む。当該方法はさらに、対向端部間において長手方向に延在する対向側部を有する壁を織るステップを含む。対向側部は、スリーブのキャビティ内において細長部材と境を接するように、互いに部分的に重なり合った関係となるように中心長手方向軸を中心として巻付け可能である。織り壁を支持部材に容易に固定できるようにするために、当該方法は、少なくとも1本の縦糸フィラメントおよび/または横糸フィラメントを嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントとして織るとともに、2本以上の横糸および/または縦糸上にわたって延在する少なくとも1つの浮き部を形成するように嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントを織るステップを含む。少なくとも1つの浮き部は、標準の面ファスナのフックに容易に固定するのに十分なループを備える。
【0022】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法は、複数の縦糸フィラメントを互いに隣り合う嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントとして織り合わせるとともに、互いに隣り合う浮き部を有する隣り合う嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントを織り合わせて、面ファスナとしてフックと噛み合うように構成されて広い表面積を有する複数ループを設けるステップを含む。
【0023】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法はさらに、複数本の横糸フィラメントを互いに隣り合う嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントとして織り合わせるとともに、隣り合う嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントを織り合わせて、互いに隣り合う浮き部を形成するステップを含む。
【0024】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法はさらに、浮き部を綾織りパターンで織るステップを含み得る。
【0025】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法はさらに、朱子織りパターンを有する浮き部を織るステップを含み得る。
【0026】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法はさらに、壁の長さの一部分のみにわたって延在するように浮き部を織るステップを含み得る。
【0027】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法はさらに、壁の円周の一部分のみにわたって延在するように浮き部を織るステップを含み得る。
【0028】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法はさらに、壁の長さ全体にわたって延在するように浮き部を織るステップを含み得る。
【0029】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法はさらに、壁の円周全体にわたって延在するように浮き部を織るステップを含み得る。
【0030】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法はさらに、スリーブの耐摩耗性を高めるために縦糸フィラメントのうち少なくともいくつかをモノフィラメントとして織り合わせるステップを含み得る。
【0031】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法はさらに、横糸フィラメントのうち少なくともいくつかをヒートセットして、対向側部を付勢して当該対向側部を互いに部分的に重なり合った関係にするステップを含み得る。
【0032】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法はさらに、複数の窪みにわたって縦糸フィラメントを織り合わせるとともに、各々が複数のフィラメントを含む複数の窪みを設けるステップを含み得る。窪みのうち少なくともいくつかの内部にある複数のフィラメントのうち少なくとも1本は、嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントを含む。
【0033】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法はさらに、複数のフィラメントのうち少なくとも1本を、複数の窪みの各々の内部において、嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントのデニールよりも高いデニールを有する標準マルチフィラメントとして設けるステップを含み得る。
【0034】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法はさらに、嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントを朱子織りパターンで織るとともに、同じ窪み内において標準マルチフィラメントを平織りパターンで織るステップを含み得る。
【0035】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法はさらに、デニールが約210tex~約250texである嵩張った毛羽のあるマルチフィラメントを設けるステップを含み得る。
【0036】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法はさらに、デニールが約140tex+/-5%である標準マルチフィラメントを設けるステップを含み得る。
【0037】
図面の簡単な説明
これらおよび他の特徴および利点は、現在好ましい実施形態および最良の形態についての以下の詳細な説明、添付の特許請求の範囲および添付の図面を考慮すると、当業者にとって容易に明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】保護すべき細長部材のまわりに巻き付けられるとともに支持部材に取付けられている、図示される開示の一局面に従って構築される巻付け可能な保護織物スリーブを示す概略斜視図である。
【
図1A】支持部材に取付けられるべき、開示の一局面に従って構築される巻付け可能な保護織物スリーブを、スリーブが巻き付けられていない状態で示す概略平面図である。
【
図2】支持部材に取付けられるべき、開示の別の局面に従って構築される巻付け可能な保護織物スリーブを、スリーブが巻き付けられていない状態で示す概略平面図である。
【
図3】支持部材に取付けられるべき、開示のさらに別の局面に従って構築される巻付け可能な保護織物スリーブを、スリーブが巻き付けられていない状態で示す概略平面図である。
【
図4】開示の一局面に従ってスリーブを構築するために用いられる織物組織図である。
【
図5】開示の一局面に従って構築される巻付け可能な保護織物スリーブの壁を示す部分的な概略端面図である。
【
図6】開示の別の局面に従って構築される巻付け可能な保護織物スリーブの壁を示す部分的な概略端面図である。
【
図7】開示のさらに別の局面に従って構築される巻付け可能な保護織物スリーブの壁を示す部分的な概略端面図である。
【
図8】開示のさらなる局面に従って構築される巻付け可能な保護織物スリーブの壁を示す部分的な概略端面図である。
【
図9】保護すべき細長部材のまわりに巻き付けられるとともに支持部材に取付けられている、図示される開示の一局面に従って構築される巻付け可能な保護織物スリーブを示す概略斜視図である。
【
図10】
図9の巻付け可能な保護織物スリーブを巻き付けられていない状態で示す概略平面図である。
【
図11】
図9の巻付け可能な保護織物スリーブを示す概略断面図である。
【
図12】
図9の巻付け可能な保護織物スリーブを構築するために用いられる織物組織図である。
【
図13】
図12の織物組織図などによって、開示の一局面に従って巻付け可能な保護織物スリーブを構築するのに用いられる縦糸端部フィラメントの種類を示す図である。
【
図14】開示の別の局面に従って巻付け可能な保護織物スリーブを構築するために用いられる
図13と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
好ましい実施形態の詳細な説明
添付の図面をより詳細に参照すると、
図1および
図1Aは、開示の現在好ましい非限定的な一実施形態に従って構築される巻付け可能な保護スリーブ(以降、単にスリーブ10と称する)を概略的に示す。
図1に示されるように、壁16は、支持部材32に解放可能に固定されるように構築される。スリーブ10は、縦糸フィラメント12とも称される複数の縦糸と、横糸フィラメント14とも称される少なくとも1本または複数本の横糸とを含む。複数の縦糸と少なくとも1本または複数本の横糸とは互いに織り合わされて、単に壁16とも称される織り合わされた下地を形成する。壁16は対向側部18および20を有する。対向側部18および20は、スリーブ10のうち円周方向に囲まれたキャビティ30内において保護されるべき細長部材28と境を接するように、互いに部分的に重なり合った関係になるように中心長手方向軸22を中心として巻き付けられるように構成されている。対向側部18および20は、対向する開口端部24と26との間において中心長手方向軸22に対してほぼ平行に長手方向に延在するように示されている。スリーブ10を支持部材32に容易に固定できるようにするために、少なくとも1本の縦糸フィラメント12および/または横糸フィラメント14(さらには、
図1および
図1Aの非限定的な実施形態において複数の縦糸フィラメント12として示されている)は、嵩張った毛羽のあるマルチフィラメント33として設けられる。嵩張った毛羽のあるマルチフィラメント33は各々、2本(
図5)またはそれ以上(
図6)の横糸および/または縦糸12、14上にわたって延在する少なくとも1つの浮き部34を形成するように織られている。少なくとも1つの浮き部34は、しばしばベルクロ(Velcro)(登録商標)といった商品名で購入されるような標準の面ファスナのフック部分40のフック38に容易に固定するのに十分なループ36を備えている。したがって、スリーブ10は、壁16に別個のループ・ファスナ部分を固定する必要なしに、支持部材32に解放可能に固定することができる。なぜなら、スリーブ10の壁16に一体的に織り込まれたループ36が、織り込まれる際に、スリーブ10と一体的となったループ・ファスナ部分(ファスナ・パッチPとも称される)を既に形成しているからである。
【0040】
開示のさらなる局面に従うと、スリーブ10は、壁16が自動的に付勢されて中心長手方向軸22を中心として丸まることで対向側部18および20が互いに部分的に重なり合った関係となるように、自己巻付きスリーブとして構築することができる。自己巻付きのための付勢は、少なくとも1本の横糸フィラメント14または複数本の横糸フィラメント14をヒートセットすることによってスリーブ10の壁16の内部に与えることができる。したがって、少なくとも1本または複数本の横糸フィラメント14は、ヒートセット可能な1本の重合体フィラメントまたは複数本の重合体フィラメントとして設けることができる。ヒートセット可能な1本の横糸フィラメントまたは複数本の横糸フィラメント14は、これらのうちいくつかまたはすべてが、好ましくは、ポリエステル(一例であってこれに限定されない)などのヒートセット可能な熱可塑性物質からなるモノフィラメントであり、これにより、スリーブ10をヒートセットするかまたは付勢して管状にすることができる。
【0041】
図1および
図1Aに示される非限定的な一実施形態に従うと、複数の縦糸フィラメント12は嵩張った毛羽のあるマルチフィラメント33として設けられている。浮き部34同士を互いに隣り合って連続させた状態で、複数の縦糸マルチフィラメント33を互いに直接隣り合うとともに連続した関係となるように織り合わせることができるので、浮き部34が円周方向に沿って互いに位置合わせされることとなる。このため、ループ36のファスナ・パッチPが、フック部分40への取付けのために、嵩張った毛羽のある単一のマルチフィラメント33によって形成されるであろうものに比べて大きめに形成される。上述のように、縦糸の浮き部34は複数の隣り合う横糸フィラメント上にわたって延在しており、本発明の一局面に従うと、綾織りパターン(
図5)または朱子織りパターン(
図6)を有する浮き部34を形成することができる。この場合、織物技術の熟練工によって理解され得るように、朱子織りパターンは、ループ36のうち長手方向に延在するファスナ・パッチPを綾織りパターンよりも長く形成するだろう。当然ながら、それぞれのパッチPを互いに直接連続して形成することで大きなサイズのパッチPを形成できることが認識されるはずである。縦糸の浮き部34およびこれによって形成されるファスナ・パッチPは、壁16のうち支持部材32に取付けられるべき選択された所望の位置において、壁16の長さの一部分のみにわたって延在するように形成することができるか、または、以下に図示および説明されるように、パッチPは、フック部分40の用途と、ループ36が取付けられることとなるフック部分40のサイズおよび位置とに応じて、壁14の長さ全体にわたって延在するように互いに直接隣り合う関係に形成することができる。
【0042】
図1および
図1Aの実施形態においては、1対のファスナ・パッチPは、互いから予め定められた軸方向に間隔を開けて配置された関係で、かつ、互いに軸方向および長手方向に位置合わせされた状態で、壁16の選択領域上にわたって形成されており、これにより、ファスナ・パッチPは、同様に間隔を空けて配置された1対またはそれ以上の対応するフック部分40と位置合わせされるとともに解放可能に固定されるように自動的に配置されることとなる。1対のファスナ・パッチPが図示されているが、スリーブ10の長さに沿って任意の所望の数のファスナ・パッチPが形成され得ることが認識されるはずである。ファスナ・パッチPは別個の島として形成されるものとして示されており、これら別個の島は、互いに長手方向に位置合わせされた状態で互いから間隔を空けて配置されるとともに、対向側部18、20および対向端部24、26から間隔を空けて配置されている。各々のファスナ・パッチPのサイズおよび位置は製造時に正確に制御することができ、これにより、ファスナ・パッチPを後でフック部分40に解放可能に固定できるようにサイズ決めおよび位置決めすることが確実にされる。ファスナ・パッチPは縦糸の浮き部34で形成されているが、壁16の残りの部分は、必要に応じて、平織りパターンなどの任意の所望の織りパターンによって織ることができる。さらに、モノフィラメントおよび/またはマルチフィラメントを含む任意のタイプの毛羽のない縦糸がファスナ・パッチPを含まない領域において使用可能であり、このため、ファスナ・パッチPの対向側部上の壁16の物理的性質が、使用される縦糸12および横糸14の種類に応じて所望の通りに提供され得ることが認識されるはずである。
【0043】
図2においては、スリーブ110は開示の別の非限定的な実施形態に従って示されており、上述で用いられるのと同じ参照番号を、同様の特徴を識別するために100の係数ずつずらして用いている。
図1および
図1Aのスリーブ10とは異なり、浮き部134、ループ136およびこれらによって形成されるそれぞれのファスナ・パッチP′は、一方の側部118から反対側の側部120にまで延在するように形成されており、このため、側部118および120が互いに部分的に重なり合った関係になるように巻き付けられると、別個のファスナ・パッチP′がスリーブ110の壁116の円周全体のまわりに延在することとなる。このため、ユーザは、支持部材32に対するスリーブ110の円周方向の向きについて考慮することなく、スリーブ110を支持部材32に固定することができ、これにより、支持部材32へのスリーブ110の取付けを簡略化することができる。さらに、これにより、ユーザが、必要に応じて、部分的に重ね合わされた側部118と側部120との間に延在する(便宜上、
図1に示される)継ぎ目42を支持部材32の方に方向付けることも可能となり、これにより継ぎ目42を遮蔽することで、継ぎ目42が意図せず開口してそこが汚染混入の入口となるのを防ぐことが可能となる。1対のファスナ・パッチPが互いから軸方向に間隔を空けて配置された関係で図示されているが、任意の所望の数のファスナ・パッチPがスリーブ110の長さに沿って形成され得ることが認識されるはずである。ファスナ・パッチPを含まない壁116の領域において、縦糸フィラメント112と横糸フィラメント114とを互いに織り交ぜるために平織りなどの任意の所望の織りパターンが使用可能であることがさらに認識されるはずである。
【0044】
図3においては、開示の別の非限定的な実施形態に従ったスリーブ210が示される。この場合、上記において用いられるのと同じ参照番号を、同様の特徴を識別するために200の係数ずつずらして用いている。
図1および
図1Aのスリーブ10とは異なり、浮き部234、ループ236およびこれらによって形成されるそれぞれのファスナ・パッチP′′は、壁216の長さ全体に沿って連続して互いに直接隣り合って延在するように形成されている。直接隣り合うパッチP′′は、横糸フィラメント214(
図3A)によって互いから分割されている。このため、ユーザは、スリーブ110のパッチP′′を支持部材32と軸方向に位置合わせすることを考慮することなく、スリーブ210の長さ全体を支持部材32に固定することができ、これにより、支持部材32へのスリーブ210の取付けを簡略化することができる。
【0045】
開示の別の局面に従うと、上述の実施形態の各々においては、パッチP、P′、P′′を形成する浮き部34、134、234を対応する縦糸フィラメント12、112および212と織り合わせるのではなく、パッチP、P′、P′′を形成する浮き部34、134、234が、この明細書中の開示を閲覧することによって当業者によって理解され得るように、必要に応じて、対応する横糸フィラメント14、114、214(
図7および
図8)で形成され得る。
【0046】
開示のさらなる局面に従うと、縦糸フィラメント12、112、212のうちの少なくともいくつかは、モノフィラメントとして、および/または、ループ36、136、236を形成する嵩張った毛羽のあるマルチフィラメント33と比べてさほど嵩張っていないマルチフィラメントとして、設けることができる。したがって、スリーブ壁16、116、216の大部分は意図した用途のために所望のとおりに形成することができ、壁16、116、216の比較的わずかな部分が、必要に応じて、ループ36、136および236のパッチP、P′、P′′を有するように形成されている。
【0047】
図9においては、開示の別の非限定的な実施形態に従ったスリーブ310が示される。この場合、上記において用いられるのと同じ参照番号を、同様の特徴を識別するために300の係数ずつずらして用いている。
図1および
図1Aのスリーブ10とは異なり、浮き部334、ループ336、およびこれらによって形成されるそれぞれのファスナ・パッチP′′′は、スリーブ310のうち一方の端部324から反対側の端部326までの外側に露出された表面の全体または実質的に全体(全体よりもわずかに小さい可能性があることを意味している)にわたって延在するように形成されるものとして示されている。スリーブ310が中心長手方向軸322を中心として巻付け可能な状態であれば、部分的に重なり合った領域(OR)は、壁316のうち、互いに部分的に重なり合った関係にある対向側部318および320から延在する領域によって形成されている。この場合、
図10および
図11に最も良く示されているように、下側の側部318に直接隣り合うとともに下側の側部318から延在している部分的に重なり合った領域ORは、浮き部334を形成する嵩張った毛羽のある糸333を含んでおらず、これにより、部分的な重なりを密にすることが可能となり、さらに、対向側部318と対向側部320との所望の量の重なりについての視覚的な指標をもたらす。さらに、部分的に重なり合った領域ORにおいて嵩張った毛羽のある糸333を含む必要がないことにより、より費用のかかる可能性のある嵩張った毛羽のある糸333を壁316全体にわたって含む必要がなくなることによって、スリーブ310のコストが下げられる。
【0048】
図12においては、織物組織図が開示の一局面に従って例示されている。この場合、織物組織図は、1~10の番号が付された水平軸に沿って縦糸フィラメント312の端部を示しており、縦糸フィラメント312は、列1~10に沿って垂直な縦糸方向に延在している。図においては、縦糸フィラメント312は、対応する横糸フィラメント314上を通る白スペースによって識別され、横糸フィラメント314は、対応する縦糸フィラメント312上を通る黒スペースによって識別される。したがって、列1~8における垂直に延在する縦糸フィラメント312は、平織りパターン(一例であってこれに限定されない)で、水平に延在する対応する横糸フィラメント314と織り合わされるとともに、列9~10における垂直に延在する毛羽があり嵩張った縦糸マルチフィラメント333は、朱子織りパターン(一例であってこれに限定されない)として示される浮き部334を形成するのに十分なパターンで、水平に延在する対応する横糸フィラメント314と織り合わされる。開示の一局面に従った
図12の織りパターンは、
図13の縦糸端部の図において識別される縦糸フィラメント312および333を用いて追従される。
図13においては、約13mm(一例であってこれに限定されない)の直径を有する
図9のスリーブなどの非限定的なスリーブを構築するために38個の窪みが用いられている。38個の窪みの各々は、1本の縦糸端部フィラメントまたは複数の縦糸端部フィラメントで織られており、下側の側部318から延在する重なり領域(OR)に対応する縦糸窪み1~11が、窪み毎に2本の縦糸端部フィラメント312だけで織られており、一実施形態においては、白い円(〇)によって識別される2本の縦糸端部フィラメント312が、非限定的な実施形態において、約133tex~約147texの線形質量を有する標準マルチフィラメントとして設けられている。対照的に、重なり領域(OR)から上側の側部320にまで延在するとともに非重なり領域に対応する残りの縦糸窪み12~38の各々は、同じ2本の縦糸端部フィラメント312で織られており、加えて、黒丸(●)によって識別される嵩張った毛羽のある1本のマルチフィラメント333が、非限定的な実施形態において、約230tex+/-20texの線形質量を有するマルチフィラメントとして設けられている。したがって、窪み1~38の各々は複数の縦糸フィラメント312を含み、窪みのうちのいくつかはさらに、嵩張った毛羽のあるマルチフィラメント333を含む。嵩張った毛羽のあるマルチフィラメント333は、
図12の列9および列10において示される織りパターンで織られており、このため、隣り合う窪みにおける嵩張った毛羽のあるマルチフィラメント333の朱子織りループ336は、互いに対して互い違いにずらした配置関係で形成されている。これにより、ループ336のない空いた空間または隙間の形成が回避され、ループ336による外表面の被覆が向上する。こうして、スリーブ310の外表面の全体を標準の面ファスナのフック部分40のうち対応するフック38に固定する機能が最大限にされる。
図13のチャートにおいては、当業者によって理解され得るように、各々の窪み1~38内における各々のフィラメントは、対応する記号(〇)および(●)の下にある対応する番号1~10によって
図12の列1~10に関連付けられたパターンのうちの1つで織られているものとして識別される。先の実施形態で述べたように、嵩張った毛羽のあるマルチフィラメント333が、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate:PET)12×167FR(一例であってこれに限定されない)の規格で購入することができるような非常に軽量で高さのあるマルチフィラメントから形成されている場合、上述のように、標準の面ファスナのフック部分40のフック38への固定用に、多数の小さくて毛羽のあるループ336が設けられている。したがって、上述した実施形態のいずれにおいても、上述の嵩張った毛羽のあるマルチフィラメント333を使用できることが認識されるはずである。
【0049】
横糸フィラメント314は、上述のとおり、モノフィラメントおよび/またはマルチフィラメントから提供することができ、現在好ましい一実施形態においては、約0.18mm~約0.26mm、より好ましくは約0.20mm~約0.24mm(一例であってこれらに限定されない)の直径を有するヒートセット可能なポリエステルモノフィラメントなどのヒートセット可能なフィラメントの少なくとも一部または全体から提供することができる。ヒートセット可能な横糸フィラメント314は、嵩張った毛羽のあるマルチフィラメント333のループ336の毛羽立ちが平坦にならないような温度でヒートセットすることができるとともに、一局面に従うと、壁316は、約3.75m/minで、約205°C+/-5°Cでヒートセットすることができる。その結果、壁316は、
図9および
図11に示されるように管状のヒートセット構成を保持する。
【0050】
縦糸フィラメントおよび横糸フィラメント312、314、333の各々は、25%を超える限界酸素指数(limit oxygen index:LOI(LOIは、ポリマーの燃焼を支援するであろう(百分率として表わされる)酸素の最小濃度である))を有する難燃特性を備えたものとして提供することができ、これにより、スリーブ310を高温環境における使用に適したものにすることができる。上述の実施形態ごとに上で説明された縦糸フィラメントおよび横糸フィラメントが難燃特性を有するものとして提供され得ることが認識されるはずである。上述のスリーブを構築するために用いられるフィラメントがハロゲンフリーのフィラメントとして提供され得ることがこの明細書においてさらに企図されている。
【0051】
上述の13mm直径のスリーブよりも大きな直径または小さい直径を有するスリーブが上述の同様のパターンを用いて、より多くの縦糸フィラメントまたはより少ない縦糸フィラメントで作成され得ることがこの明細書中においてさらに企図されている。たとえば、約5mmの直径を有するスリーブがこの明細書中において企図されており、この場合、約19個の縦糸窪みを有するスリーブが作成可能であり、縦糸窪みのうち15個は各々、3個の縦糸端部を含むように形成されている。3個の縦糸端部は、2本の縦糸フィラメント312と、毛羽があり嵩張った1本の縦糸マルチフィラメント333とを含む。2本の縦糸フィラメント312は、対応する横糸フィラメント314と平織りで織り合わされており、嵩張った縦糸マルチフィラメント333は、外側に面する浮き部を形成するように朱子織りパターンなどで織られている。一方で、残りの4つの窪みは各々、2本の縦糸フィラメント312を含むように形成することができる。4つの窪みのうちの2つは、互いに部分的に重なり合った関係となるように構成された、長手方向に延在する対向する側部に直接隣り合って延在している。このような例が
図14に示されている。関連する横糸がヒートセット可能なフィラメントなどから上述のように設けられ得ることが認識されるはずである。
【0052】
明らかに、上記の教示に鑑みて本発明の多くの変形例および変更例が可能である。全ての請求項および全ての実施形態の全ての特徴は、互いに矛盾しない限り、互いに組合わされ得ると考えられる。したがって、添付の特許請求の範囲内であれば、本発明が具体的に記載されている以外の態様で実施され得ることが理解されるはずである。