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特許7117415(4S)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-3,6-ジメチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボニトリルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】(4S)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-3,6-ジメチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボニトリルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 239/22 20060101AFI20220804BHJP
   C07D 453/04 20060101ALI20220804BHJP
   A61K 31/513 20060101ALN20220804BHJP
   A61P 9/00 20060101ALN20220804BHJP
   A61P 9/12 20060101ALN20220804BHJP
   A61P 11/00 20060101ALN20220804BHJP
   A61P 11/16 20060101ALN20220804BHJP
   A61P 17/02 20060101ALN20220804BHJP
【FI】
C07D239/22 CSP
C07D453/04
A61K31/513
A61P9/00
A61P9/12
A61P11/00
A61P11/16
A61P17/02
【請求項の数】 3
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021081100
(22)【出願日】2021-05-12
(62)【分割の表示】P 2017549057の分割
【原出願日】2016-03-15
(65)【公開番号】P2021138711
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2021-06-08
(31)【優先権主張番号】15159570.9
(32)【優先日】2015-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519337927
【氏名又は名称】ピーエイチ・ファーマ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PH PHARMA CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ハイコ・シルマー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ルーベンバウアー
(72)【発明者】
【氏名】ビルギット・カイル
(72)【発明者】
【氏名】ブリッタ・オレニク
【審査官】谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-506503(JP,A)
【文献】特開2000-351740(JP,A)
【文献】特表2009-518416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 239/22
A61K 31/513
C07D 453/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(XXVII)
【化1】
〔式中、Rは水素またはメチルである〕
のキニジン塩。
【請求項2】
が水素である、請求項1に記載のキニジン塩。
【請求項3】
がメチルである、請求項1に記載のキニジン塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(4S)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-3,6-ジメチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボニトリルの改善された製造方法及びその結晶形態(A)に関し、この化合物は、医薬の製造に使用される。
【0002】
(4S)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-3,6-ジメチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボニトリルは、WO2009/080199 A1で知られるようになった化合物であり、以下の式(I)に該当する。
【化1】
【0003】
式(I)の化合物は、ヒト好中球エラスターゼ(HNE、hNE)としても知られる、ヒト白血球エラスターゼ(HLE、EC3.4.21.37)の阻害剤である。ヒト白血球エラスターゼは、セリンプロテアーゼファミリーに属する。このタンパク質分解酵素は、多形核白血球(PMN白血球)のアズール親和性顆粒で見つかる。細胞内エラスターゼは、ファゴサイトーシスを通じて取り込まれた外来粒子を破壊することにより、病原に対する防御において重要な役割を果たす。活性化好中球は、顆粒から細胞外空間にHNEを放出し(細胞外HNE)、遊離したHNEの一部は、好中球細胞膜の外側に残存する(膜結合HNE)。非常に活性な酵素は、複数の結合組織タンパク質、例えば、タンパク質エラスチン、コラーゲン、及びフィブロネクチンなどを破壊することができる。エラスチンは、肺中及び動脈中など高い弾力を示す組織型全てにおいて高濃度で生じる。複数の病理過程において(例えば、組織損傷)、HNEは、組織の破壊及びリモデリングで役割を担っている。そのうえさらに、HNEは、炎症過程の重要な修飾因子である。例えば、HNEは、インターロイキン-8(IL-8)の遺伝子発現増加を誘導する。
【0004】
したがって、HNEは、起源及び/または進行が炎症の発生及び/または組織及び血管の増殖性ならびに肥大性リモデリングと関連する多くの疾病、傷害、及び病理学的変化において重要な役割を担っていると推定される。これらは、特に肺または心臓血管系の疾患及び/または損傷の場合もあるし、敗血症、癌疾病、または他の炎症性疾患が関与する場合もある。HNE阻害剤は、特に、肺及び心臓血管系の疾患の治療及び/または予防で使用される。
【0005】
WO2009/080199 A1では、式(I)の化合物の製造についても記載されており、最も近接する先行技術と見なされる。この場合、3-フルオロ-4-メチルベンゾニトリルから出発して、標的化合物(I)を、10工程で、理論値の4.45%の合計収率で製造する。化合物は、クロマトグラフィー画分の濃縮により、非晶質固体として得られる;定義された結晶形を確立する定義された最終段階の結晶化方法は、まだ記載されたことがない。
【0006】
以下のスキームは、WO2009/080199 A1で行われた中間工程を詳細に示す。
スキーム1
【化2】
【0007】
上記に示した反応スキームは、WO2009/080199 A1で以下の通り記載される:スキーム6ならびに実施例1A、実施例2Aの方法B、実施例3Aの方法B、及び実施例4Aの方法Bの、式(II)の化合物から式(III)、(IV)、及び(V)の化合物を経由して式(VI)の化合物に至る反応順序;スキーム1ならびに実施例3及び実施例4の、式(VI)の化合物から式(IX)の化合物を経由して式(X)の化合物に至る反応順序;ならびに、スキーム2ならびに実施例5A、実施例5、及び実施例6の式(X)の化合物から式(XI)及び(XII)の化合物を経由して式(XIII)の化合物に至る反応順序。式(I)の化合物の合成は、実施例33の方法Bに記載される。
【0008】
鏡像異性体(IX)を分離するために、4回のクロマトグラフィー精製を、1回のキラルクロマトグラフィー工程と併せて使用する。
【0009】
WO2009/080199 A1から知られることになったこの方法は、反応の管理に様々な欠点を有し、それらの欠点は、特に、工業規模での式(I)の化合物の製造に望ましくない影響を及ぼす。
【0010】
理論値の4.45%前後の合計収率は、非常に低い。多くの工程で、非常に大がかりな希釈が行われ、また非常に大量の試薬が余剰となる。すなわち、詳細には、この合成で中心的役割を担うニトリルアルデヒド中間体4-ホルミル-3-(メチルスルホニル)ベンゾニトリル(VI)の製造順序が、原子の効率性という観点から許容されない。
【0011】
WO2009/080199 A1による合成では、式(IX)のラセミアリルエステルが、キラルクロマトグラフィーにより分離されて鏡像異性体になり、S鏡像異性体(X)は、収率35%で単離される。ラセミ体のそのようなクロマトグラフィー分離は、費用も時間も非常に必要となり、したがって、巨大な工業規模での合成には不利である。
【0012】
そのうえさらに、WO2009/080199に記載されるとおりのこの方法は、工業規模に移すことができない。なぜなら、一方では、無水トリフルオロ酢酸及びO-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム-ヘキサフルオロホスファート(HATU)などの非常に高価な試薬が使用されているからである。無水トリフルオロ酢酸は、式(XII)の化合物を式(XIII)の化合物へと変換するのに使用され、HATUは、式(XI)の化合物を式(XII)の化合物へと変換するのに使用される。さらに、工業規模でのプロセスは、どのような毒性試薬の使用も許容されない。このことは、それ自体が不利であるが、その上さらに、こうした毒性物質は、規制上の理由から、最終生成物(I)から除去されて製品の最大許容限度未満にならなければならず、このことは追加費用がかかることを意味する。これは、特に、合成順序の最終工程で5倍過剰のヨウ化メチルを用いたアルキル化についてあてはまる。なぜなら、アルキル化試薬のヨウ化メチルは、発癌性があると認識されており、完全に精製除去されることが保証されなければならないからである。HATUなどのベンゾトリアゾールの使用も、毒性の理由から、巨大な工業規模では禁止される。さらに、多くの中間体のクロマトグラフィー精製は、WO2009/080199に記載の方法により行われるが、それらは概して非常に費用がかかる。したがって、高い合計収率、低い製造費用、及び高純度の再現可能な様式で式(I)の化合物を提供し、かつその物質が臨床試験及びその後の公的申請に使用可能であるように従うべき規制上の要件を全て満たす、実用的な巨大な工業規模合成が必要とされていた。望ましくない鏡像異性体を異性化し、得られるラセミ体をもう一度プロセスに戻すことも、有利になると思われる。
【0013】
驚いたことに、今回、式(I)の化合物の製造に非常に効率的な方法が見出され、この方法は、上記の必要条件を満たす。本発明による新規方法(変形方法(A))は、中間体のクロマトグラフィー精製なしに、理論値の17%超の合計収率で、標的化合物(I)を8工程で提供する(以下のスキーム7、2、及び3を参照)。本発明による代替変形方法(B)(以下のスキーム7、4、5、及び6を参照)は、標的化合物(I)を9工程で提供し、これも同様に中間体のクロマトグラフィー精製を行わず、その合計収率は、以下に記載のとおり、反応の管理に依存する。
【0014】
本発明の対象は、式(I)の化合物の製造方法であり、
【化3】
本方法は、式(IX)の化合物を
【化4】
a-1)メチル化剤及び塩基の存在下、反応させて、式(XVI)の化合物を形成させ;
【化5】
次いで
a-2)式(XVI)の化合物を、パラジウム触媒及び第二級アミン塩基の存在下、反応させて、式(XXVI)の化合物を形成させ
【化6】
式中、Rは、メチルであり、
【0015】
あるいは
b-1)パラジウム触媒及び第二級アミン塩基の存在下、反応させて、式(XXVI)の化合物を形成させ、式中、Rは水素であり;
次いで
c)式中Rが水素またはメチルである式(XXVI)の化合物を、キナアルカロイド及び溶媒の存在下、反応させて、式(XXVIII)及び(XXIX)の化合物を形成させ
【化7】
式中、式(XXVIII)及び式(XXIX)のRは水素であるか、式中、式(XXVIII)及び式(XXIX)のRはメチルであり;次いで
d)式(XXVIII)の化合物を単離し;次いで
e)式(XXVIII)の化合物を、強酸の存在下、反応させて、式(XXVII)の化合物を形成させ
【化8】
式中、Rは、水素またはメチルであり;次いで
b-2)式(XXVII)の化合物のRが水素である場合、式(XXVII)の化合物を、ハロゲン化アリルまたはスルホン酸アリルの存在下、反応させて、式(X)の化合物を形成させ
【化9】
次いで
b-3)式(X)の化合物を、メチル化剤及び塩基の存在下、反応させて、式(XXIII)の化合物を形成させ
【化10】
【0016】
次いで
b-4)式(XXIII)の化合物を、パラジウム触媒及び塩基の存在下、反応させて、式(XXVII)の化合物を形成させ
【化11】
式中、Rは、メチルであり;次いで
f)式中Rがメチルである式(XXVII)の化合物を、活性化試薬の存在下、反応させて、式(XIX)の化合物を形成させ
【化12】
次いで
g)式(XIX)の化合物を、脱水剤の存在下、反応させて、式(I)の化合物を形成させ;
及び必要であれば、反応工程c)後、式(XXIX)の化合物を単離し、
【化13】
式中、Rは水素であり、これを工程e)に従って、強酸の存在下、反応させて、式(XXX)の化合物を形成させ
【化14】
【0017】
次いで、式(XXX)の化合物を、反応工程b-2)に従って、ハロゲン化アリルまたはスルホン酸アリル及び塩基の存在下、反応させて、式(XXXI)の化合物を形成させ
【化15】
次いで
h)式(XXXI)の化合物を、溶媒中、強い非求核塩基の存在下で、同時に加熱しながら、反応させて、式(IX)のラセミ体を形成させ
【化16】
次いで、式(IX)の化合物を、上記の反応工程b-1)、c)、d)、e)、b-2)、b-3)、b-4)、f)、及びg)に従って反応させて、式(I)の化合物を形成させ;
及び必要であれば、式(XXIX)の化合物を単離する反応工程、反応工程e)による、強酸の存在下でのその反応により、式(XXX)の化合物を形成する反応工程、式(XXX)の化合物からその後、反応工程b-2)により、ハロゲン化アリルまたはスルホン酸アリル及び塩基の存在下、式(XXXI)の化合物を形成させる反応工程、ならびに次いで、反応工程h)、b-1)、c)、d)、e)、b-2)、b-3)、b-4)、f)、及びg)の実行を、1回または複数回、繰り返し行うことを特徴とする。
【0018】
本発明による方法は、2つの変形方法で記載される。変形方法(A)は、上記の工程a-1)、a-2)、c)、d)、e)、f)、及びg)を含む。合成の重要工程であるラセミ体分割は、変形方法(A)では、式(XXVI)の化合物の段階で行われ、式中、Rはメチルである。変形方法(B)は、上記の工程b-1)、c)、d)、e)、b-2)、b-3)、b-4)、f)、及びg)を含む。合成の重要工程であるラセミ体分割は、変形方法(B)では、式(XXVI)の化合物の段階で行われ、式中、Rは水素である。
【0019】
本発明の1つの実施形態に従って、式(XXVI)、(XXVII)、(XXVIII)、及び(XXIX)のRはメチルであり、本方法は、上記の反応工程a-1)、a-2)、c)、d)、e)、f)、及びg)を含む。
【0020】
本発明の1つの実施形態に従って、式(XXVI)、(XXVII)、(XXVIII)、及び(XXIX)のRは水素であり、本方法は、上記の反応工程b-1)、c)、d)、e)、b-2)、b-3)、b-4)、f)、及びg)を含む。
【0021】
本発明の1つの実施形態に従って、式(XXVI)、(XXVII)、(XXVIII)、及び(XXIX)のRは水素であり、本方法は、上記の反応工程b-1)、c)、d)、e)、b-2)、b-3)、b-4)、f)、及びg)を含み、反応工程c)後に、式(XXIX)化合物を単離し、これを、反応工程e)により、強酸の存在下で反応させて、式(XXX)の化合物を形成させ;次いで、式(XXX)の化合物を、反応工程b-2)により、ハロゲン化アリルまたはスルホン酸アリル及び塩基の存在下、反応させて、式(XXXI)の化合物を形成させ;次いで
h)式(XXXI)の化合物を、溶媒中、強い非求核塩基の存在下で、同時に加熱しながら、反応させて、式(IX)のラセミ体を形成させ;次いで
式(IX)の化合物を、上記の反応工程b-1)、c)、d)、e)、b-2)、b-3)、b-4)、f)、及びg)により反応させて、式(I)の化合物を形成させ;
及び必要であれば、式(XXIX)の化合物を単離する反応工程、反応工程e)による、強酸の存在下でのその反応により、式(XXX)の化合物を形成する反応工程、式(XXX)の化合物からその後、反応工程b-2)により、ハロゲン化アリルまたはスルホン酸アリル及び塩基の存在下、式(XXXI)の化合物を形成させる反応工程、ならびに次いで、上記反応工程h)、b-1)、c)、d)、e)、b-2)、b-3)、b-4)、f)、及びg)を、1回または複数回、繰り返し行う。
【0022】
反応工程a-1)及びb-3)で使用可能なメチル化剤は、例えば、ヨウ化メチル、硫酸ジメチル、炭酸ジメチル、トルエンスルホン酸メチルエステル、またはメタンスルホン酸メチルエステルであり、ヨウ化メチル及び硫酸ジメチルが好ましい。反応工程a-1)及びb-3)で使用可能な塩基は、例えば、水素化ナトリウム、ヘキサメチルジシラザンナトリウム、及びヘキサメチルジシラザンリチウムであり、ヘキサメチルジシラザンナトリウム及びヘキサメチルジシラザンリチウムが好ましい。反応工程a-1)の溶媒として、テトラヒドロフラン(THF)が、式(IX)の化合物の重量に関して、4~6倍過剰で使用される。反応温度は、-70~40℃、好ましくは0~30℃である。
【0023】
本発明の1つの実施形態に従って、反応工程a-1)及びb-3)は、2当量の硫酸ジメチル(MeSO)をメチル化剤として使用し、ビス(トリメチルシリル)アミドナトリウム(NaHMDS)を塩基として使用する。
【0024】
WO2009/080199 A1は、アリルエステル工程(X)の段階で早くもメチル基を導入することを可能にする合成経路も記載する。LiHMDSを用いて、-78℃の温度で脱プロトン化を行い、次いで、5当量のヨウ化メチルを加えることにより、メチル基を導入した。処理及びクロマトグラフィー精製後に、メチル化S-アリルエステルが、収率59%で得られた(実施例122)。対応する酸(XVIII)への鹸化を同様に記載する(実施例35A)。しかしながら、さらなる反応によるアミド(XIX)を介した式(I)の最終生成物の形成は、本明細書では記載しない。
【0025】
最終工程でのヨウ化メチルを用いたアルキル化を回避するという目的で、本発明の方法の1つの実施形態により、式(IX)のラセミアリルエステルを、WO2009/080199 A1に記載される合成(実施例122)と同様にしてメチル化する。WO2009/080199 A1に記載される合成とは異なり、本発明の方法でのアリルエステルのメチル化は、ラセミ体の段階で行われる。本発明による反応は、先行技術と比較して大幅な改善をもたらす。塩基にNaHMDSを使用するおかげで、反応は、式(IX)の化合物の重量に対して4~6倍過剰のTHF中、20℃の温度で行うことができる。これは、巨大な工業規模での合成に顕著となる。なぜなら、これで、費用のかかる低温反応装置が必要ではなくなるからである。その上さらに、かなり高価なメチル化剤であるヨウ化メチルを、経済的なアルキル化試薬である硫酸ジメチルで置き換えることができる。2当量の硫酸ジメチルが使用される。過剰なメチル化剤は、反応終了後、アンモニア水溶液を加えることにより除去される。生成物(XVI)は、水沈殿により、反応混合物から直接単離することができる。単離後、真空乾燥を行う。この反応の収率は、概して、理論値の>80%である。
【0026】
反応工程a-2)、b-1)、及びb-4)による式(XVI)、(IX)、または(XXIII)のアリルエステルの鹸化に使用可能なパラジウム触媒は、例えば、パラジウム-(O)-ホスファン錯体、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh)及び酢酸パラジウム/トリフェニルホスフィン(PdOAc/PPh)などであり、酢酸Pd/トリフェニルホスフィンが好ましい。反応工程a-2)に使用可能な第二級アミン塩基は、例えば、モルホリン、ピペリジン、ジイソプロピルアミン、及びN-メチルピペラジンであり、モルホリン及びN-メチルピペラジンが好ましい。反応工程a-2)、b-1)、及びb-4)の溶媒として、テトラヒドロフラン(THF)が、例えば、式(XVI)、(IX)、または(XXIII)の化合物の重量に対して3~5倍過剰で使用される。
【0027】
本発明の1つの実施形態に従って、反応工程a-2)、b-1)、及びb-4)において、酢酸パラジウム(PdOAc)が、パラジウム触媒として使用され、トリフェニルホスフィン(PPh)がリガンドとして、及びモルホリンが塩基として使用される。
【0028】
ラセミアリルエステル(XVI)の鹸化による遊離酸(XVII)の形成は、WO2009/080199 A1に公開されるとおりのプロトコルを頼りに行われる(実施例5A、本明細書では、S鏡像異性体の段階)。本発明による反応は、先行技術に勝る大幅な改善をもたらす。
【0029】
例えば、比較的高価であり、かつ空気に敏感な触媒であるテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムが、安定な酢酸パラジウムにリガンドとしてトリフェニルホスフィンが付加したものにより置き換えられる。その上さらに、触媒量も、0.05当量から0.003当量に減らすことができる。パラジウム触媒によるアリルエステルの開裂は、(XVI)の化合物の重量に対して3~5倍過剰のTHF中、40~60℃の温度で、1~3時間、塩基としてモルホリンを加えて行われる。生成物(XVII)は、THF溶媒和物として生じ、これは、水沈殿により反応混合物から直接単離することができる。単離後、これを真空乾燥させる。この反応の収率は、概して、理論値の>95%である。
【0030】
式中Rが水素またはメチルである式(XXVI)の酸のラセミ体混合物を、本発明の反応工程c)に従って分割することは、式(I)の化合物の製造に関して本発明の方法の重要な工程である。反応工程c)(ラセミ体分割)に使用可能なキナアルカロイドは、キニーネ、キニジン、シンコニン、及びシンコニジンからなる群より選択される。好適なのは、キニーネ及びキニジンである。反応工程c)に使用可能な溶媒は、例えば、水性アルコール系、好ましくはイソプロパノール/水、特に好ましくは、9:1の比率のイソプロパノール/水である。その上さらに、酢酸エステルを、反応工程c)の溶媒として使用することができ、好ましくは酢酸C-Cアルキル、特に好ましくは、酢酸n-ブチルである。
【0031】
本発明の1つの実施形態に従って、反応工程c)のキナアルカロイドは、キニーネ及びキニジンからなる群より選択される。
【0032】
本発明の1つの実施形態に従って、反応工程c)の溶媒は、酢酸のC-Cアルキルエステル、C-Cアルコール、及びC-Cアルコールと水の混合物から選択される。
【0033】
本発明の1つの実施形態に従って、式中Rがメチルである式(XXVI)の化合物の反応の場合の反応工程c)について、キナアルカロイドとしてキニジン及び溶媒として酢酸n-ブチルの組み合わせが用いられる。式中Rがメチルである式(XXVI)の化合物のジアステレオマーキニジン塩は、本発明の方法により、酢酸エステル、好ましくはC-C置換エステル、特に好ましくは酢酸n-ブチルなどの溶媒中、互いに分離させることができる。例えば、式中Rがメチルである式(XXVI)のラセミ化合物を、式(XXVI、式中R=メチル)の化合物の重量に対して4~6倍過剰の酢酸ブチル中、40℃~60℃で1.0~1.1当量のキニジンを加えながら、反応させる。この場合、S酸(式(XX)の化合物)のジアステレオマーキニジン塩が、優先的に晶出し、一方R形(式(XXI)の化合物)は、溶解したままである。
【0034】
反応工程d)での、式中Rが水素またはメチルである式(XXVIII)の化合物の単離については、固体を濾別し、反応工程c)で用いた溶媒で洗い、真空乾燥させる。
【0035】
反応工程e)で使用可能な強酸は、例えば、水性塩酸、水性臭化水素酸、及び水性硫酸である。
【0036】
本発明の1つの実施形態に従って、pH1への酸性化は、反応工程e)で水性塩酸を用いて行われる。
【0037】
本発明の1つの実施形態に従って、反応工程e)では、ジアステレオマーとして純粋なキニジン塩(式(XX)の化合物)を、水に懸濁させて、酸を放出させる。水性塩酸で酸性にした後(pH=1まで下げる)、キニジン補助塩基は、塩酸塩として溶解したままであるが、鏡像異性体として純粋な酸(式(XXVII)の化合物、式中Rは、メチルである)は、析出する。単離後、真空乾燥を行う。このラセミ体分割及びS酸(式(XXVII)の化合物、式中Rは、メチルである)を形成する遊離の収率は、概して、理論値の>40%であり、鏡像異性体過剰率は>98%である。
【0038】
他方の異性体も、同様に、濃縮し、続いて酸性処理することにより、ラセミ体分割の母液から得ることができる。
【0039】
本発明の別の実施形態に従って、式中Rが水素である式(XXVI)の化合物の反応の場合の反応工程c)について、キナアルカロイドとしてキニーネ及び溶媒としてイソプロパノールと水の混合物の組み合わせが用いられる。式中Rが水素である式(XXVI)の化合物の酸のジアステレオマーキニーネ塩は、水性アルコール系、好ましくはイソプロパノール/水、特に好ましくは9:1の比率のイソプロパノール/水中、互いに分離させることができる。この実施形態に従って、式中Rが水素である式(XXVI)の化合物のラセミ酸を、式(XXVI)の化合物の重量に対して6~10倍過剰のイソプロパノール/水中、40℃~60℃で1.0~1.1当量のキニーネを加えながら、反応させる。このプロセスでは、主にS酸(式(XXIV)の化合物)のジアステレオマーキニーネ塩が、結晶化し、一方R形(式(XXV)の化合物)は、溶解したままである。
【0040】
反応工程d)による式(XXIV)の化合物の単離については、固体を濾別し、イソプロパノール/水で洗い、真空乾燥させる。
【0041】
工程e)に従って、式中Rが水素である式(XXVII)の酸を遊離させる目的で、ジアステレオマーとして純粋なキニン塩(XXIV)を、水に懸濁させる。水性塩酸で酸性にした後(pH=1まで下げる)、キニーネ補助塩基は、塩酸塩として溶解したままであるが、鏡像異性体として純粋な酸は、析出する。単離後、真空乾燥を行う。このラセミ体分割及び式中Rが水素である式(XXVII)のS酸を形成する遊離の収率は、概して、理論値の>45%であり、鏡像異性体過剰率は>98%である。この反応順序の合計収率は、18%である。
【0042】
他方の異性体も、同様に、濃縮し、続いて酸性水溶液処理することにより、ラセミ体分割の母液から得ることができる。
【0043】
そのようなラセミ体分割の成功は、物質によるところが大きく、予想することができない。したがって、反応工程c)で記載されるとおりのラセミ体分割のための本発明による方法は、驚くべきものである。
【0044】
式中Rが水素である式(XXVII)の化合物のメチル化は、式(XXVII、R=水素)の遊離カルボン酸で直接行うことはできない。したがって、式(XXVII、R=水素)のカルボン酸を、最初に、対応するエステルに変換、好ましくは式(X)のアリルエステルに戻さなければならない。これは、本発明の反応工程b-2)により、アセトンなどの溶媒中、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、または水素化ナトリウムなどの塩基の存在下、ハロゲン化アリルまたはスルホン酸アリル、例えば、臭化アリル、塩化アリル、ヨウ化アリル、メタンスルホン酸アリル、またはトルエンスルホン酸アリルなどを用いたアルキル化により、基本的に当業者に既知の方法で行われる。このようにして、カルボン酸(XI)は、収率95%で、対応するアリルエステル(X)に変換することができる。標的化合物(I)に向かうその後の工程は、変形(A)に記載される方法と同様にして行われる。
【0045】
1つの実施形態に従って、反応工程b-2)について、炭酸カリウムの存在下、臭化アリルが使用される。
【0046】
酸からのアミド形成は、WO2009/080199 A1による合成では、非常に高価なアミドカップリング試薬であるO-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム-ヘキサフルオロホスファート(HATU)を用いて行われた。アミドは、クロマトグラフィー精製をして初めて得ることができた。そのような方法を、巨大な工業規模で実現することは不可能であり、したがって、代替手順が必要であったことは明らかである。
【0047】
驚いたことに、THF中での式(XXVII、R=メチル)のカルボン酸の反応中、式(XIX)のアミドが水沈殿後に反応溶液から直接晶出し、高収率かつ高純度で得ることができることがわかった。これに関して、本発明による反応工程f)では、式(XXVII、R=メチル)のカルボン酸が、最初に活性化試薬と反応して、イミダゾリドを形成する。活性化試薬は、例えば、1,1’-カルボニルジイミダゾールとアンモニアの併用、または1,1’-カルボニルジイミダゾールとヘキサメチルジシラザンの併用が可能である。
【0048】
本発明の1つの実施形態に従って、式(XXVII、R=メチル)のカルボン酸を、最初に、THF中、20~50℃の温度で、1.2~1.7当量、好ましくは1.4~1.5当量の1,1’-カルボニルジイミダゾールと反応させて、イミダゾリドを形成させる。最初に20℃で1~2時間撹拌し、次いで50℃でさらに2~3時間撹拌することが、好適な技法であることがわかった。活性化終了後、5~20当量、好ましくは10当量のアンモニア水溶液を加え、16~24時間、好ましくは16時間、室温で撹拌する。手短に加熱することにより、過剰なアンモニアを反応混合物から気体として放出させることができる。処理するため、反応溶液を水にゆっくりと加える。この処理では、生成物が沈殿するので、濾過または遠心により単離することができる。次いで、これを水で洗い、高温(30~100℃、好ましくは40℃~70℃)で真空乾燥させる。収率は非常に高く、概して、理論値の>90%になる。
【0049】
アミドからのニトリル形成は、WO2009/080199 A1による合成では、THF中、アミドを2当量の無水トリフルオロ酢酸で脱水することにより行われた。ニトリルは、クロマトグラフィー精製をして初めて得ることができた。そのような方法を、巨大な工業規模で実現することは不可能であり、したがって、代替手順が大いに必要とされていたことは明らかである。
【0050】
本発明の方法の反応工程g)に従って、アミドを脱水してニトリルを形成させるのに適した脱水剤は、例えば、無水1-プロパンホスホン酸(T3P)及び無水トリフルオロ酢酸である。詳細には、無水1-プロパンホスホン酸(T3P)が、この反応工程で上手く働くことが証明されている。この試薬は、酢酸エチルの50%溶液として得ることができる。これは、極度に加水分解に敏感な無水トリフルオロ酢酸よりもはるかに扱いやすい。このため、式(XIX)のアミドを、最初に、ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)と混合し、次いで、無水1-プロパンホスホン酸(T3P)と混合する。反応を完了させるため、これを簡単に加熱還流させる。反応終了後、混合物を水と混合し、抽出する。この後、有機相を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗い、式(I)の化合物を含有する有機相を分離する。
【0051】
式(I)の化合物は、錠剤の形に加工されることになるため、再現可能な生体利用度が保証され得るように、単離される式(I)の化合物が、定義された結晶形態で再現可能な様式で単離されることに大きな需要がある。
【0052】
本発明の1つの実施形態は、7.5、12.4、15.1、18.5、18.7、22.9、24.7、及び26.5で2シータ角度のピーク最大値を示す化合物のX線回折パターンを特徴とする、結晶形態(A)の式(I)の化合物にも関する。
【0053】
本発明の1つの実施形態に従って、本発明による方法は、7.5、12.4、15.1、18.5、18.7、22.9、24.7、及び26.5で2シータ角度のピーク最大値を示す式(I)の化合物のX線回折パターンを特徴とする、結晶形態(A)の式(I)の化合物を提供する。
【0054】
本発明の1つの実施形態は、3075、2928、2918、2236、2216、1646、1605、1195、及び1004cm-1でバンド最大値を示す化合物のラマンスペクトルを特徴とする、結晶形態(A)の式(I)の化合物にも関する。
【0055】
本発明の1つの実施形態に従って、本発明による方法は、3075、2928、2918、2236、2216、1646、1605、1195、及び1004cm-1でバンド最大値を示す化合物のラマンスペクトルを特徴とする、結晶形態(A)の式(I)の化合物を提供する。
【0056】
本発明の1つの実施形態は、1種または複数の結晶形態でまたは溶媒和物として存在する式(I)の化合物を、アルコール、好ましくはエタノールから晶出させ、その後、得られる結晶ペーストを、50~80℃に加熱し、この温度でさらに2~5時間撹拌することを特徴とする、結晶形態(A)の式(I)の化合物の製造方法である。
【0057】
本発明の1つの実施形態は、疾病の治療用の、結晶形態(A)の式(I)の化合物である。
【0058】
本発明の1つの実施形態は、肺及び心臓血管系の疾患の治療及び/または予防のための、ならびに創傷治癒、特に慢性創傷の治癒を促進するための、結晶形態(A)の式(I)の化合物である。
【0059】
本発明の1つの実施形態は、肺動脈性肺高血圧症(PAH)及び他の形の肺高血圧症(PH)の、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の、急性肺損傷(ALI)の、急性呼吸促迫症候群(ARDS)の、肺気腫の、アルファ-1-アンチトリプシン欠損症(AATD)の、嚢胞性線維症(CF)の、気管支拡張症の治療及び/または予防のための、ならびに創傷治癒、特に慢性創傷の治癒を促進するための方法で使用するための、結晶形態(A)の式(I)の化合物である。
【0060】
本発明の1つの実施形態は、含有される式(I)の化合物の合計量に対して90wtパーセント超で結晶形態(A)の式(I)の化合物を含有する医薬である。
【0061】
本発明の1つの実施形態は、肺及び心臓血管系の疾患の治療用ならびに創傷治癒、特に慢性創傷の治癒の促進用の医薬を製造するための結晶形態(A)の式(I)の化合物の使用である。
【0062】
本発明の1つの実施形態は、結晶形態(A)の式(I)の化合物を有効量で投与することによる、肺及び心臓血管系の疾患の治療、ならびに創傷治癒、特に慢性創傷の治癒の促進方法である。
【0063】
本発明の別の実施形態は、本発明の方法に従って式(I)の化合物を製造し、本発明の方法の反応工程g)由来の有機相から、アルコール中、好ましくはエタノール中で式(I)の化合物を結晶化させ、次いで得られる結晶ペーストを50~80℃に加熱し、これをこの温度でさらに2~5時間撹拌することを特徴とする、結晶形態(A)の式(I)の化合物の製造方法である。
【0064】
最終結晶化方法について、GMPの技術的な理由から、生成物のエチルエステル溶液を、最初に、粒子濾過に供し、次いでエタノールと、好ましくはトルエンで変性したエタノールを用いて、還流温度(60℃~80℃)で反応させる。エタノール(トルエン変性したもの)を連続追加しながら、エチルエステルを留去する。式(I)の化合物が晶出する。濾過性をよりよくするため、結晶ペーストを60~80℃に加熱し、この温度でさらに4時間撹拌する。これを20℃に冷却した後、次いで結晶を単離して、40~50℃で真空乾燥させる。収率は、概して理論値の>80%である。達成される化学純度>99.2%及び含有量ほぼ100%は、ICH指針による商品基準を満たす。残存溶媒の量は、エタノールの場合、<0.1%である。光学純度は、>>99%e.e.である。
【0065】
結晶化方法は、非常に堅固であり、再現可能な様式で、所望の結晶形態(A)(融点232℃)を提供する。式(I)の化合物は、一般に、薬局でミクロン化されて錠剤に配合される。結晶形態(A)は、高湿度であっても非常に良好な安定性を有し、安定性を失うことなく3年超の貯蔵が可能であることがわかっている。
【0066】
上記のとおり、式(XXXI)のNH-アリルエステルは、式(XXIX)の化合物を単離し、それを反応工程e)により強酸の存在下、反応させることにより、式(XXX)の化合物を形成させ、次いで式(XXX)の化合物を反応工程b-2)によりハロゲン化アリルまたはスルホン酸アリル及び塩基の存在下、反応させることにより製造することができる。驚いたことに、この式(XXXI)のNH-アリルエステルを、ラセミ化することができることが発見された。すなわち、望ましくない鏡像異性体が大量に生じるが、これを変換してラセミ形に戻すことができ、したがってこれをプロセスに戻すことが可能である。これに関して、ラセミ体分割の母液から得られるカルボン酸は、主にR体を含んでいるが、これを最初に、本発明に従って工程b-2)と同様な上記の条件下、アリルエステルに変換する。主にR体を含有する混合物は、THFなどの溶媒中、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)などの強い非求核塩基で処理することにより、数時間加熱還流することでほぼ完全にラセミ化することができる。反応混合物を水に加えると、式(IX)のラセミアリルエステルが沈殿するので、これを単離して乾燥させる。次いで、式(IX)のアリルエステルを、反応工程b-1)により、上記の条件下、もう一度鹸化して、式(XXVI、R=水素)の酸を形成させる。この方法を用いて、ラセミ体分割に使用した式(XXVI、R=水素)の酸の量のうち40%の回収が可能となった。回収サイクルを用いることで、反応順序の合計収率を、元の18%から25%へと上昇させることができた。
【0067】
本発明の別の実施形態は、式(XXVII)の化合物の製造方法であり、
【化17】
本方法は、
c)式(XXVI)の化合物を、
【化18】
キナアルカロイド及び溶媒の存在下、反応させて、式(XXVIII)及び(XXIX)の化合物を形成させ
【化19】
d)次いで、式(XXVIII)の化合物を単離し;次いで、
e)式(XXVIII)の化合物を、強酸の存在下、反応させて、式(XXVII)の化合物を形成させ、
式中、式(XXVI)、(XXVII)、(XXVIII)、及び(XXIX)の化合物のRは、水素またはメチルである
ことを特徴とする。
【0068】
この反応順序の反応条件は、上記のとおりである。
【0069】
本発明の別の実施形態は、式(VI)の化合物の製造方法であり、
【化20】
本方法は、式(XV)の化合物を、
【化21】
NaSOMe及びDMSOまたはスルホランの存在下、40~60℃で反応させて、式(VI)の化合物を形成させることを特徴とする。
【0070】
本発明の1つの実施形態に従って、式(XV)の化合物の反応による式(VI)の化合物の形成は、式(XV)の化合物の重量に対して、3~5倍過剰のDMSOまたはスルホラン中で行われる。
【0071】
反応バッチで式(XV)の化合物がこのような高濃度であることの1つの利点は、本方法の経済性が高まることである。
【0072】
式(VI)の4-ホルミル-3-(メチルスルホニル)ベンゾニトリルの出発物質として、式(XIV)の4-ブロモ-2-フルオロベンズアルデヒドを使用するが、これを、最初に、当業者に馴染みある方法により既知の様式で、式(XV)の3-フルオロ-4-ホルミルベンゾニトリルへと変換する(Synth. Commun. 1994, 887-890, Angew. Chemie 2003, 1700-1703, Tetrahedron Lett. 2007, 2555-2557, Tetrahedron Lett. 2004, 1441-1444, JACS 2003, 125, 2890-2891, Journal of Organometallic Chemistry 689 (2004), 4576-4583)。シアニド源としてヘキサシアノ鉄酸カリウム・3HOを用いてパラジウム触媒反応を行うことが特に有利であることが証明されている(Tetrahedron Lett. 48(2007), 1087-1090)。このため、4-ブロモ-2-フルオロベンズアルデヒド(XIV)をDMF(式(XIV)の化合物の重量に対して4~6倍過剰)に入れ、0.22当量のヘキサシアノ鉄酸カリウム・3HO及び1当量の炭酸水素ナトリウムを加え、次いで0.005当量の酢酸パラジウムを加える。これを、3時間、120℃で加熱する。溶液を20℃に冷却し、次いで、水及びMtBEを加える。有機相を分離させ、水相を再度MtBEで洗い、次いで、MtBE相を1つにまとめて、水を加えながら濃縮する。生成物が沈殿する。単離後、生成物を真空乾燥させる。この反応の収率は、概して、理論値の>75%である。一方で、3-フルオロ-4-ホルミルベンゾニトリル(XV)は、市販もされている。
【0073】
2-フルオロ置換ベンズアルデヒドへのメチルスルホニル基の導入は、例えば、WO2004/52858(ELI LILLY)に記載されている。2-フルオロベンズアルデヒドをメタンスルフィン酸ナトリウムと、DMSO中、100℃で16時間反応させると、所望の生成物が得られるが、ただし収率は50%にすぎない。驚いたことに、3-フルオロ-4-ホルミルベンゾニトリル(XV)は、比較的穏やかな条件下(40~60℃、好ましくは50℃、4時間)であってさえ、式(XV)の化合物の重量に対して3~5倍過剰のDMSO中、メタンスルフィン酸ナトリウムと反応させることにより、所望の4-ホルミル-3-(メチルスルホニル)ベンゾニトリル(VI)へと完全に変換されることが発見された。生成物は、水沈殿により反応混合物から直接単離することができた。単離後、生成物を真空乾燥させる。この反応の収率は、概して、理論値の>90%である。
【0074】
すなわち、中間体4-ホルミル-3-(メチルスルホニル)ベンゾニトリル(VI)に非常に効率的なアプローチが見つかった。
【0075】
WO2009/080199 A1に公開されるとおりの合成プロトコルを頼りに、4-ホルミル-3-(メチルスルホニル)ベンゾニトリル(VI)、1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]尿素(VII)、及びアリル-3-オキソブタノアート(VIII)から、ビギネリ反応の縮合生成物である(rac)-アリル-4-(4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル)-6-メチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボキシラート(IX)を製造することができた。この場合も同様に、収率を64%から87%へと大幅に上昇させることができた。
【0076】
本発明の対象は、式(XXVII)の化合物
【化22】
式中、Rは水素またはメチルであり、
ならびにその塩及び溶媒和物でもある。
【0077】
以下のスキーム2は、変形方法(A)の中間段階を詳細に示す。
スキーム2
【化23】
【0078】
本発明の1つの実施形態に従って、以下のスキーム3に示す工程を、変形方法(A)の流れにおいて、ラセミ体分割中に、行う。
スキーム3
【化24】
【0079】
以下のスキーム4は、変形方法(B)の中間工程を詳細に示す
スキーム4
【化25】
【0080】
本発明の1つの実施形態に従って、以下のスキーム5に示す工程を、変形方法(B)の流れにおいて、ラセミ体分割中に行う。
スキーム5
【化26】
【0081】
本発明の1つの実施形態に従って、以下のスキーム6に示す工程を、変形方法(B)の流れにおいて、ラセミ体分割中に行い、この中で、望ましくないR異性体は、ラセミ化して、プロセスに戻す。この反応順序は、望み通り、1回または複数回行うことができる。
スキーム6
【化27】
【0082】
式(XIV)の4-ブロモ-2-フルオロベンズアルデヒドから式(IX)の化合物を形成する合成の反応順序を以下のスキーム7に示す:
スキーム7
【化28】
【0083】
本発明による新規合成を用いると、標的化合物(I)を非常に効率的な様式で製造することができる。本方法は、規模及び工業手順の点で、先行技術に勝る実質的利点を提供する。合計収率は、公開されているデータより大幅に高く、その上、非常に高純度の活性物質を得ることができる。新規方法は、定義された結晶形態(A)の再現可能で経済的な調製を可能にし、これは、今まで先行技術で記載されたことがなかったものである。本明細書中提示する本発明の方法を用いて、臨床試験用に数kgの材料を製造することに既に成功している。
【0084】
略号:
【表1】
【表2】
【実施例
【0085】
実施例1
4-ホルミル-3-フルオロベンゾニトリル(XV)
4-ブロモ-2-フルオロベンズアルデヒド(XIV)400g(1.97mol)を2.0lのDMFに溶解させた溶液を、ヘキサシアノ鉄酸カリウム(K[Fe(CN)])183g(0.433mol)及び炭酸水素ナトリウム165.5g(1.97mol)と混合し、酢酸パラジウム2.2g(9.85mmol)を加えた。得られる混合物を、120℃で2.5時間撹拌した。これを、20℃に冷却し、次いで水2.0lをバッチに加えた。4.0lのMtBEで抽出し、水相を1.5lのMtBEで再度洗った。有機相を1つにまとめ、水2lと混合した。MtBEの大部分を、30℃でやや減圧して留去した。生成物が晶出した。これを3℃に冷却し、この温度で1時間撹拌した。生成物を濾別し、水で洗った(2回、毎回0.8l)。40℃で真空乾燥させた。収率:241g(理論値の80%)のベージュ色固体。
MS(EIpos):m/z=150[M+H]
H-NMR (400 MHz, DMSO-d): δ = 7.87 (d, 1H), 7.01 (s, 1H), 8.10 (d, 1H), 10.25 (s, 1H).
【0086】
実施例2
4-ホルミル-3-メチルスルホニルベンゾニトリル(VI)
4-ホルミル-2-フルオロベンゾニトリル(XV)200g(1.34mol)を0.8lのDMSOに溶解させて溶液とし、メタンスルフィン酸ナトリウム塩192g(1.88mol)を加えた。これを、50℃で4時間撹拌した。得られる混合物を、20℃に冷却した。反応混合物を水8.0lに加えた。生成物が晶出した。これを、室温で1時間撹拌した。生成物を濾別し、水で洗った(2回、毎回0.1l)。40℃で真空乾燥させた。収率:256g(理論値の91%)のベージュ色固体。
MS(ESIpos):m/z(%)=191.1(15)[M-18], 161.0(100).
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d): δ = 3.57 (s, 3H), 8.10 (d, 1H), 8.38 (d, 1H), 8.45 (s, 1H), 10.62 (s, 1H).
【0087】
実施例3
(rac)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-6-メチル-2-オキソ-1-[3-トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸アリルエステル(IX)
リン酸トリエチルエステル(124.3g、683mmol)に、20℃で、五酸化二リン(64.6g、455mmol)を3回に分けて加え、得られる混合物を、40℃で3時間撹拌した。次いで、これをTHF(115ml)で希釈し、20℃で30分間撹拌し、4-ホルミル-3-(メチルスルホニル)ベンゾニトリル(VI)(119g、569mmol)及び1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]尿素(VII)(116g、569mmol)を加えた。この後、アセト酢酸アリル(VIII)(121g、852mmol)を20分間かけて加えると、温度は60℃前後に上昇した。混合物を80℃で4時間撹拌した。処理するため、水(115ml)を40℃で加え、これを25℃で30分間撹拌した。生成物を濾別し、水(280ml)で洗った。残渣をMtBE(280ml)ともに20分間撹拌し、再び濾別して、MtBE(220ml)で洗った。40℃で真空乾燥させた。収率:259g(理論値の87%)のベージュ色固体。
MS(ESIpos):m/z(%)=520.2(100)[M+H]
H-NMR (400 MHz, DMSO-d): δ = 2.15 (s, 3H), 3.45 (s, 3H), 4.45 (m, 2H), 4.95 (d, 1H), 5.05 (d, 1H), 5.65 (m, 1H), 6.40 (d, 1H), 7.20 (d, 1H), 7.70 (m, 2H), 7.80 (m, 1H), 7.85 (br.s, 1H), 8.10 (br.d, 1H), 8.25 (d, 1H), 8.35 (s, 1H).
【0088】
実施例4
(rac)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-3,6-ジメチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸アリルエステル(XVI)
(rac)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-6-メチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸アリルエステル(IX)(500g、0.962mol)を、20℃でTHF(2.5l)に加え、ヘキサメチルジシラザンナトリウム(NaHMDS)をTHF(203g;1.107mol)に溶解させた1M溶液と混合した。撹拌して10分後、硫酸ジメチル(243g;1.925mol)を加え、混合物をRTで2時間撹拌した。反応混合物を、26%アンモニア水溶液(315g;4.812mol)を水3lに溶解させた溶液に加え、250mlのTHFですすいだ。これを一晩撹拌し、次いで5℃に冷却した。生成物を濾別し、水(1l)で洗った。40℃で真空乾燥させた。
収率:443g(理論値の86%)のベージュ色固体。
MS(ESIpos):m/z(%)=534.1(100)[M+H];MS(ESIneg):m/z(%)=532.1(100)[M-H]
H-NMR (400 MHz, DMSO-d): δ = 2.05 (s, 3H), 2.79 (s, 3H), 3.51 (s, 3H), 4.55 (m, 2H), 5,03 (d, 1H), 5.12 (d, 1H), 5.72 (m, 1H), 6.80 (s, 1H), 7.70 (m, 2H), 7.80 (m, 1H), 7.95 (br.s, 1H), 8.15 (br.d, 1H), 8.25 (d, 1H), 8.52 (s, 1H).
【0089】
実施例5
(rac)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-3,6-ジメチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸THF溶媒和物(XXVI)
(rac)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-3,6-ジメチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸アリルエステル(XVI)(485.6g、0.910mol)を、20℃でTHF(2.275l)に加え、モルホリン(118.9g;1.365mol)と混合した。反応混合物に、窒素を1時間導入した。次いで、混合物を50℃で加熱し、混合物を、酢酸パラジウム(II)(511mg;2.275mmol)及びトリフェニルホスフィン(2388mg;9.102mmol)と混合して、50℃で2時間撹拌した。冷却後、反応混合物を水4.5lに入れた。2N塩酸を用いてpH=2に調整し、生じる結晶化物を一晩撹拌した。生成物を濾別し、水(1.8l)で洗った。40℃で真空乾燥させた。収率:504g(モノTHF溶媒和物に対して理論値の98%)のベージュ色固体。
MS(ESIpos):m/z(%)=494.0(100)[M+H]
H-NMR (400 MHz, DMSO-d): δ = 1.76 (m, 4H; THF), 2.08 (s, 3H), 2.77 (s, 3H), 3.48 (s, 3H), 3.60 (m, 4H, THF), 6.72 (s, 1H), 7.75 (m, 2H), 7.82 (m, 1H), 7.92 (br.s, 1H), 8.11 (br.d, 1H), 8.27 (d, 1H), 8.46 (s, 1H), 12.75 (br.s, 1H).
【0090】
実施例6
(S)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-3,6-ジメチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸キニジン塩(XXVIII)
(rac)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-3,6-ジメチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸THF溶媒和物(XXVI)(555g、0.910mol)を、20℃で酢酸ブチル(2.22L)に加え、(+)-キニジン(334.3g;1.03mol)と混合した。次いで、これを50℃に加熱し、50℃で1時間撹拌した。5℃に冷却した後、濾過し、濾過ケーキを酢酸ブチル(1.2l)とともに撹拌し、再び濾過し、酢酸ブチル(0.7L)で洗った。40℃で真空乾燥させた。収率:361g(理論値の45%)のクリーム色固体。
H-NMR (400 MHz, DMSO-d): δ = 1.58 (m, 2H), 1.79 (m, 1H), 2.04 (m, 1H), 2.07 (s, 3H), 2.33 (m, 1H), 2.77 (s, 3H), 2.79 (m, 1H), 2.90 (m, 2H), 3.21 (m, 1H), 3.33 (m, 2H), 3.51 (s, 3H), 3.90 (s, 3H), 5.11 (d, 1H), 5.14 (d, 1H), 5.53 (br.s, 1H), 6.09 (ddd, 1H), 6.72 (s, 1H), 7.75 (m, 2H), 7.82 (m, 1H), 7.92 (br.s, 1H), 8.11 (br.d, 1H), 8.27 (d, 1H), 8.46 (s, 1H), 12.75 (br.s, 1H).
【0091】
実施例7
(S)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-3,6-ジメチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸(XXVII)
(S)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-3,6-ジメチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸キニジン塩(XXVIII)(360g、0.405mol)を、60℃で、水(3.9l)とイソプロパノール(0.4l)の混合液に懸濁させ、2N塩酸でpH=1に調整し、60℃で1時間撹拌した。20℃に冷却した後、得られる混合物を濾過し、水(0.6l)で洗い、濾過ケーキを水(1.2l)とともに撹拌し、再び濾過し、水(1.2l)で洗った。40℃で真空乾燥させた。収率:196g(理論値の92%)のクリーム色固体。
MS(ESIpos):m/z(%)=494.0(100)[M+H]
H-NMR (400 MHz, DMSO-d): δ = 2.08 (s, 3H), 2.77 (s, 3H), 3.48 (s, 3H), 6.72 (s, 1H), 7.75 (m, 2H), 7.82 (m, 1H), 7.92 (br.s, 1H), 8.11 (br.d, 1H), 8.27 (d, 1H), 8.46 (s, 1H), 12.75 (br.s, 1H).
【0092】
実施例8
(S)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-3,6-ジメチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルバミド(XIX)
(S)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-3,6-ジメチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸(XXVII)(390.5g、0.791mol)をTHF(3.9l)に溶解させた。残存する痕跡量の水を除去するため、2lのTHFを、浴温80℃で留去した。これを、0℃で、1,1-カルボニルジイミダゾール(192.5g、1.187mol)と混合し、20℃で1時間そして50℃で2時間撹拌した。次いで、26%アンモニア溶液(518g、7.91mol)を25℃で加え、得られる混合物を16時間撹拌した。反応混合物を、2時間50℃に加熱し、過剰のアンモニアを揮発させた。冷却後、反応混合物を、水7.8lに少しずつ加え、生じる結晶化物を一晩撹拌した。生成物を濾別し、水(2.4l)で洗った。40℃で真空乾燥させた。収率:361g(理論値の92%)のクリーム色固体。
MS(ESIpos):m/z(%)=493.0(100)[M+H]
H-NMR (400 MHz, DMSO-d): δ = 1.73 (s, 3H), 2.73 (s, 3H), 3.45 (s, 3H), 6.55 (s, 1H), 7.34 (br.s, 1H), 7.48 (br.s, 1H), 7.73 (m, 2H), 7.80 (m, 2H), 8.11 (d, 1H), 8.43 (d, 1H), 8.47 (s, 1H).
【0093】
実施例9
(S)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-3,6-ジメチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボニトリル(I)
(S)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-3,6-ジメチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルバミド(XIX)(400g、0.812mol)を、酢酸エチル(1.6l)に溶解させた。これを、20℃で、N-エチルジイソプロピルアミン(262.4g、2.031mol)と混合し、20℃で15分間撹拌した。次いで、無水1-プロパンホスホン酸を酢酸エチルに溶解させた50%溶液(1.137kg、1.79mol)を2℃、26%で加え、加熱還流させ、2時間撹拌した。これを20℃に放冷し、水3.4lをバッチに加えた。相を分離させた後、有機相を飽和炭酸水素ナトリウム溶液(1.2l)で洗った。有機相を60℃に加熱し、やや減圧にして留去しながら、同時にエタノール(トルエン変性したもの)を加えた。生成物が晶出した。結晶化終了後、得られる混合物を、4時間、加熱還流させて撹拌した。これを20℃に冷却した後、この温度で1時間撹拌した。生成物を濾別し、水(1.2l)で1回、そしてエタノール(トルエン変性したもの)(0.4l)で1回洗った。50℃で真空乾燥させた。収率:344g(理論値の89%)安定な結晶形態(A)の白色結晶、融点232℃、純度:99.4%、含有量:99.3%
MS(ESIpos):m/z(%)=475.1(100)[M+H]
H-NMR (400 MHz, DMSO-d): δ = 1.81 (s, 3H), 2.70 (s, 3H), 3.52 (s, 3H), 6.48 (s, 1H), 7.65-8.40 (m, 6H), 8.46 (s, 1H).
【0094】
実施例10
(rac)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-6-メチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸(XXII)
(rac)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-6-メチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸アリルエステル(IX)(420g、0.808mol)を、20℃で、THF(2.1l)に加え、モルホリン(105.6g;1.213mol)と混合した。反応混合物に、窒素を1時間導入した。次いで、これを、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(284mg;0.404mmol)及びトリフェニルホスフィン(424mg;1.617mmol)と混合し、混合物をRTで2時間撹拌した。次いで、これをもう一度、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(284mg;0.404mmol)及びトリフェニルホスフィン(424mg;1.617mmol)と混合し、混合物をRTで2時間撹拌した。反応混合物を、水4lに加えた。これを、2N塩酸でpH=2に調整し、生じる結晶化物を一晩撹拌した。生成物を濾別し、水(1.7l)で洗った。40℃で真空乾燥させた。
収率:575g(理論値の97%)のベージュ色固体。
MS(ESIpos):m/z(%)=480.0(100)[M+H]
H-NMR (400 MHz, DMSO-d): δ = 2.12 (s, 3H), 3.48 (s, 3H), 6.32 (s, 1H), 7.12 (s, 1H), 7.72 (m, 2H), 7.80 (m, 1H), 7.88 (br.s, 1H), 8.13 (br.d, 1H), 8.27 (d, 1H), 8.37 (s, 1H), 12.62 (br.s, 1H).
【0095】
実施例11
(S)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-6-メチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸キニーネ塩(XXIV)
(rac)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-6-メチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸(XXII)(563.7g、1.176mol)を、20℃で、イソプロパノール/水(9:1;4.2l)の混合液に加え、(-)-キニーネ(381.4g;1.176mol)と混合した。次いで、これを50℃に加熱し、50℃で1時間撹拌した。5℃に冷却した後、これを濾別し、濾過ケーキをイソプロパノール/水(9:1;1.2l)で洗った。40℃で真空乾燥させた。
収率:432g(理論値の46%)のクリーム色固体。
H-NMR (400 MHz, DMSO-d): δ = 1.58 (m, 2H), 1.79 (m, 1H), 2.04 (m, 1H), 2.10 (s, 3H), 2.33 (m, 1H), 2.79 (m, 1H), 2.90 (m, 2H), 3.21 (m, 1H), 3.33 (m, 2H), 3.46 (s, 3H), 3.90 (s, 3H), 5.11 (d, 1H), 5.14 (d, 1H), 5.53 (br.s, 1H), 6.09 (m, 1H), 6.33 (s, 1H), 7.10 (s, 1H), 7.73 (m, 2H), 7.82 (m, 1H), 7.90 (br.s, 1H), 8.11 (br.d, 1H), 8.27 (d, 1H), 8.44 (s, 1H), 12.70 (br.s, 1H).
【0096】
実施例12
(S)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-6-メチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸(XI)
(S)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-6-メチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸キニーネ塩(XXIV)(430g、0.535mol)を、60℃で、水(4.2l)とイソプロパノール(0.4l)の混合液に懸濁させ、2N塩酸でpH=1に調整し、60℃で1時間撹拌した。20℃に冷却した後、濾過し、濾過ケーキを水(0.6l)で3回洗った。40℃で真空乾燥させた。
収率:251g(理論値の98%)のクリーム色固体。
MS(ESIpos):m/z(%)=480.0(100)[M+H]
H-NMR (400 MHz, DMSO-d): δ = 2.12 (s, 3H), 3.48 (s, 3H), 6.32 (s, 1H), 7.12 (s, 1H), 7.72 (m, 2H), 7.80 (m, 1H), 7.88 (br.s, 1H), 8.13 (br.d, 1H), 8.27 (d, 1H), 8.37 (s, 1H), 12.62 (br.s, 1H).
【0097】
実施例13
(S)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-6-メチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸アリルエステル(X)
(S)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-6-メチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸(XI)(250g、0.521mol)を、20℃で、アセトン(1.5l)に加え、炭酸カリウム(72g;0.521mol)と混合した。10分撹拌後、臭化アリルを加え(79g;652mol)、混合物を6時間還流下で撹拌した。冷却後、反応混合物に水1.4lを加え、60分間撹拌した。生成物を濾別し、水(0.6l)で2回、そしてMtBE(0.6l)で2回洗った。40℃で真空乾燥させた。
収率:258g(理論値の95%)のクリーム色固体。
MS(ESIpos):m/z(%)=534.1(100)[M+H]
H-NMR (400 MHz, DMSO-d): δ = 2.05 (s, 3H), 2.79 (s, 3H), 3.51 (s, 3H), 4.55 (m, 2H), 5.03 (d, 1H), 5.12 (d, 1H), 5.72 (m, 1H), 6.80 (s, 1H), 7.70 (m, 2H), 7.80 (m, 1H), 7.95 (br.s, 1H), 8.15 (br.d, 1H), 8.25 (d, 1H), 8.52 (s, 1H).
【0098】
実施例14
(S)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-3,6-ジメチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸アリルエステル(XXIII)
(S)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-6-メチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸アリルエステル(X)(250g、0.481mol)を、20℃で、THF(1.25l)に加え、ヘキサメチルジシラザンナトリウム(NaHMDS)をTHFに溶解させた1M溶液(102g;0.554mol)と混合した。10分撹拌後、硫酸ジメチルを加え(122g;0.964mol)、混合物をRTで2時間撹拌した。反応混合物を、26%アンモニア水溶液(178g;2.4mol)を水1.5lに溶解させた溶液に加え、200mlのTHFですすいだ。これを、一晩撹拌し、5℃に冷却した。生成物を濾別し、水(0.6l)で洗った。40℃で真空乾燥させた。
収率:230g(理論値の89%)のベージュ色固体。
MS(ESIpos):m/z(%)=534.1(100)[M+H]
H-NMR (400 MHz, DMSO-d): δ = 2.05 (s, 3H), 2.79 (s, 3H), 3.51 (s, 3H), 4.55 (m, 2H), 5.03 (d, 1H), 5.12 (d, 1H), 5.72 (m, 1H), 6.80 (s, 1H), 7.70 (m, 2H), 7.80 (m, 1H), 7.95 (br.s, 1H), 8.15 (br.d, 1H), 8.25 (d, 1H), 8.52 (s, 1H).
【0099】
実施例15
(R)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-6-メチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸(XXX)
(R)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-6-メチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸(XXV)のキニーネ塩を含有する実施例11の母液と洗液を1つにまとめ、濃縮して、結晶ペーストとした。これを水(5.0l)に入れ、2N塩酸でpH=1に調整し、60℃で1時間撹拌した。20℃に冷却後、濾過し、濾過ケーキを水(1.0l)で3回洗った。40℃で真空乾燥させた。
収率:293g(XXIIの使用量に対して理論値の52%)のクリーム色固体。R鏡像異性体対S鏡像異性体の比:88:12。
MS(ESIpos):m/z(%)=480.0(100)[M+H]
H-NMR (400 MHz, DMSO-d): δ = 2.12 (s, 3H), 3.48 (s, 3H), 6.32 (s, 1H), 7.12 (s, 1H), 7.72 (m, 2H), 7.80 (m, 1H), 7.88 (br.s, 1H), 8.13 (br.d, 1H), 8.27 (d, 1H), 8.37 (s, 1H), 12.62 (br.s, 1H).
【0100】
実施例16
(R)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-6-メチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸アリルエステル(XXXI)
(R)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-6-メチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸(XXX)(292g、0.609mol)を、20℃で、アセトン(1.6l)に加え、炭酸カリウム(84g;0.609mol)と混合した。10分撹拌後、臭化アリルを加え(92g;761mol)、混合物を6時間還流下で撹拌した。冷却後、反応混合物に水1.5lを加え、これを60分間撹拌した。生成物を濾別し、水(0.6l)で2回、そしてMtBE(0.6l)で2回洗った。40℃で真空乾燥させた。
収率:301g(理論値の95%)のクリーム色固体。
MS(ESIpos):m/z(%)=534.1(100)[M+H]
H-NMR (400 MHz, DMSO-d): δ = 2.05 (s, 3H), 2.79 (s, 3H), 3.51 (s, 3H), 4.55 (m, 2H), 5.03 (d, 1H), 5.12 (d, 1H), 5.72 (m, 1H), 6.80 (s, 1H), 7.70 (m, 2H), 7.80 (m, 1H), 7.95 (br.s, 1H), 8.15 (br.d, 1H), 8.25 (d, 1H), 8.52 (s, 1H).
【0101】
実施例17
(R)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-6-メチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸アリルエステル(XXXI)から(rac)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-6-メチル-2-オキソ-1-[3-トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸アリルエステル(IX)への異性体化
(R)-4-[4-シアノ-2-(メチルスルホニル)フェニル]-6-メチル-2-オキソ-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸アリルエステル(XXXI)(292g、0.609mol)を、20℃で、アセトン(1.6l)に加え、炭酸カリウム(84g;0.609mol)と混合した。10分撹拌後、臭化アリルを加え(92g;761mol)、混合物を6時間還流下で撹拌した。冷却後、反応混合物に水1.5lを加え、得られる混合物を60分間撹拌した。生成物を濾別し、水(0.6l)で2回、そしてMtBE(0.6l)で2回洗った。40℃で真空乾燥させた。
収率:301g(理論値の95%)のクリーム色固体。
MS(ESIpos):m/z(%)=534.1(100)[M+H]
H-NMR (400 MHz, DMSO-d): δ = 2.05 (s, 3H), 2.79 (s, 3H), 3.51 (s, 3H), 4.55 (m, 2H), 5.03 (d, 1H), 5.12 (d, 1H), 5.72 (m, 1H), 6.80 (s, 1H), 7.70 (m, 2H), 7.80 (m, 1H), 7.95 (br.s, 1H), 8.15 (br.d, 1H), 8.25 (d, 1H), 8.52 (s, 1H).
【0102】
実施例18
結晶形態(A)の式(I)の化合物の物理化学特性
結晶形態(A)の式(I)の化合物に関するX線回折測定のパラメーター:
装置:透過型回折計PANalytical X’Pert PROにPIXcelカウンター(マルチチャンネル)を装備
【表3】
【0103】
表1:結晶形態(A)の式(I)の化合物のX線回折のピーク最大値[2シータ]
【表4】
【0104】
結晶形態(A)の式(I)の化合物の測定に関するラマン分光法の測定条件:
【表5】
【0105】
表2:結晶形態(A)の化合物(I)のラマンスペクトルのバンド最大値
【表6】
【図面の簡単な説明】
【0106】
図1】結晶形態(A)の式(I)の化合物のX線回折パターン
図2】結晶形態(A)の式(I)の化合物のラマンスペクトル
図1
図2