(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】アレルギー性結膜炎治療剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/55 20060101AFI20220804BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220804BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220804BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
A61K31/55
A61K9/08
A61P27/02
A61P37/08
(21)【出願番号】P 2021173109
(22)【出願日】2021-10-22
(62)【分割の表示】P 2021151458の分割
【原出願日】2021-09-16
【審査請求日】2021-10-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第3回日本眼科アレルギー学会学術集会 プログラム・抄録集 発行日:令和2年10月1日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 アレジオンLX■点眼液0.1% 特定使用成績調査 中間集計結果のお知らせ(2020年1月~2020年7月) 発行日:令和2年12月1日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 アレジオン■点眼液0.05%に関する「再審査結果及び使用上の注意改訂のお知らせ」 発行日:令和3年2月1日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトのアドレスhttps://www.santen.co.jp/medical-channel/di/information/2021/DJ155_sdi527.pdf 掲載日:令和3年2月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000177634
【氏名又は名称】参天製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【氏名又は名称】水原 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100158414
【氏名又は名称】秦野 正和
(72)【発明者】
【氏名】島田 史規
(72)【発明者】
【氏名】大嵜 浩孝
(72)【発明者】
【氏名】野村 明生
(72)【発明者】
【氏名】角 祐美
【審査官】今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】CLINICAL THERAPEUTICS,2004年,Vol.26, No.1,p.29-34
【文献】ELESTAT_HIGHLIGHTS OF PRESCRIBING INFORMATION,2011年12月
【文献】JOURNAL OF AAPOS,2010年02月,Vol.14, No.1,p.68-77
【文献】アレジオンLX点眼液0.1%添付文書,2020年02月10日
【文献】オゼックス点眼液0.3% 医薬品インタビューフォーム,2020年10月,全文、特に「Vの3.」
【文献】Clinical Ophthalmology,2021年02月12日,Vol.15,p.559-564
【文献】Curr. Allergy Asthma Rep,2011年,Vol.11,p.212-219
【文献】National Journal of Physiology, Pharmacy and Pharmacology,2019年,Vol.9, Issue11,p.1098-1102
【文献】Current Allergy and Asthma Reports,2006年,Vol.6,p.306-311
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 31/00-31/80
A61K 33/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
12歳未満の小児患者に適用されるように用いられる、有効成分として0.1%(w/v)濃度のエピナスチン又はその塩を含有するアレルギー性結膜炎治療剤であって、
1眼あたり1滴を1回として1日2回点眼されるように用いられ、投与開始から2週間後に該小児患者が1.0以下の眼そう痒感スコアを達成することを特徴とする、アレルギー性結膜炎治療剤。
【請求項2】
投与開始から4週間後の眼そう痒感スコアが1.0以下である、請求項
1に記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
【請求項3】
該小児患者が、1.0以下の眼瞼結膜充血スコアをさらに達成することを特徴とする、請求項1
又は2に記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
【請求項4】
投与開始から2週間後の眼瞼結膜充血スコアが1.0以下である、請求項
3に記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
【請求項5】
投与開始から4週間後の眼瞼結膜充血スコアが1.0以下である、請求項
3に記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
【請求項6】
該小児患者が、0.5以下の眼球結膜充血スコアをさらに達成することを特徴とする、請求項1~
5のいずれか1項に記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
【請求項7】
投与開始から2週間後の眼球結膜充血スコアが0.5以下である、請求項
6に記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
【請求項8】
投与開始から4週間後の眼球結膜充血スコアが0.5以下である、請求項
6に記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
【請求項9】
12歳未満の小児患者に適用されるように用いられる、有効成分として0.1%(w/v)濃度のエピナスチン又はその塩を含有するアレルギー性結膜炎治療剤であって、
1眼あたり1滴を1回として1日2回点眼されるように用いられ、投与開始から2週間後に該小児患者が1.0以下の眼瞼結膜充血スコアを達成することを特徴とする、アレルギー性結膜炎治療剤。
【請求項10】
12歳未満の小児患者に適用されるように用いられる、有効成分として0.1%(w/v)濃度のエピナスチン又はその塩を含有するアレルギー性結膜炎治療剤であって、
1眼あたり1滴を1回として1日2回点眼されるように用いられ、投与開始から2週間後に該小児患者が0.5以下の眼球結膜充血スコアを達成することを特徴とする、アレルギー性結膜炎治療剤。
【請求項11】
該小児患者が、0歳以上11歳までの患者である、請求項1~
10のいずれか1項に記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
【請求項12】
該小児患者が、0歳の患者である、請求項1~
10のいずれか1項に記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
【請求項13】
該小児患者が、1歳以上3歳までの患者である、請求項1~
10のいずれか1項に記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
【請求項14】
該小児患者が、4歳以上6歳までの患者である、請求項1~
10のいずれか1項に記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
【請求項15】
該小児患者が、7歳以上11歳までの患者である、請求項1~
10のいずれか1項に記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
【請求項16】
エピナスチン又はその塩が、エピナスチン塩酸塩である、請求項1~
15のいずれか1項に記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
【請求項17】
12歳未満の小児患者用のアレルギー性結膜炎治療剤の製造における、0.1%(w/v)濃度のエピナスチン又はその塩の使用
であって、該アレルギー性結膜炎治療剤が、1眼あたり1滴を1回として1日2回点眼されるように用いられ、投与開始から2週間後に該小児患者が1.0以下の眼そう痒感スコアを達成することを特徴とするものである、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、12歳未満の小児患者に適用されるように用いられる、有効成分として0.1%(w/v)濃度のエピナスチン又はその塩を含有するアレルギー性結膜炎治療剤であって、該小児患者が1.0以下の眼そう痒感スコアを達成することを特徴とする、アレルギー性結膜炎治療剤(以下、「本発明のアレルギー性結膜炎治療剤」ともいう)に関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギー性結膜炎は、眼の表面に外部からのアレルゲン(アレルギー反応を引き起こす物質)が付着して、結膜に炎症を起こす症状であり、例えば、春先に飛ぶスギ花粉によるアレルギー性結膜炎は年齢に関わらず毎年非常に多くの人が発症すると言われている。アレルギー性結膜炎の治療は、薬物を用いた対症療法が知られており、例えば点眼液が用いられる。
【0003】
現在、有効成分としてエピナスチン又はその塩を含む、アレルギー性結膜炎を治療するための点眼液としては、通常1回1滴、1日4回点眼の用法・用量で使用されているエピナスチン塩酸塩を有効成分とするアレジオン(登録商標)点眼液0.05%、そして、通常1回1滴、1日2回点眼の用法・用量で使用されているアレジオン(登録商標)LX点眼液0.1%が知られている(非特許文献1及び2)。
非特許文献1には、小児等への投与について、低出生体重児、新生児、乳児、幼児に対する安全性は確立していない(低出生体重児、新生児に対しては使用経験がない。乳児、幼児に対しては使用経験が少ない)こと、そして、小児に対する使用例数1,100例中11例(1.00%)に副作用が認められたことが記載されている。また、非特許文献2には、12歳未満の小児等を対象とした臨床試験は実施していないことが記載されている。
【0004】
小児への薬物療法においては、年齢による体組織の大きさによって薬物動態が異なることから、年齢ごとに薬剤の有効性・安全性を保証するための臨床試験を実施し、その年齢に適した製剤設計、配合する有効成分及び添加剤、それらの投与量の調整等が必要となる。
しかしながら、小児に使用されている医薬品の多くは、安全性及び有効性に関する十分なデータがなく、添付文書に小児の用法・用量は明記されていない。そのため、それらの医薬品は、臨床での必要性に迫られ、医師の裁量でやむを得ずに使用されるのが現状である。
また、成人と同様に多くの領域において小児用製剤が必要であるにも関わらず、小児用にデザインされた製剤や剤形は非常に少なく、成人用の製剤を粉砕等して用量を調製し使用することが多く、小児用製剤の開発は十分に行われていない。
したがって、臨床現場において、小児患者のために適切に評価され小児患者に対する適応を持つ医薬品の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】アレジオン(登録商標)点眼液0.05%添付文書
【文献】アレジオン(登録商標)LX点眼液0.1%添付文書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1及び2によれば、エピナスチン又はその塩を有効成分とする小児用の点眼剤は存在していない。経口剤であれば小児の体重に合わせて服薬する量を調整することが可能であるが、点眼剤においては小児の年齢や体に合わせて点眼時の1滴量を調節することは困難である。そのため、小児用の点眼剤を開発する上で、小児患者に対し安全に使用できるように、有効成分の濃度や点眼剤の用法用量の検討は非常に重要である。
【0007】
また、小児患者では、1日に何度も投与を必要とすること、通園・通学により日中の点眼治療を保護者が十分に管理できないことから自身で投与する必要があり、指示通りに点眼剤を投与することが困難な場合が多い。さらに、治療を続けることができたとしても、例えば、目をこすることで症状が悪化する目の痒みの症状がある小児患者では、目の痒みを我慢できずに無意識に目を掻いてしまい、症状がなかなか改善しないといった問題もある。そのため、小児患者においては、有効性及び安全性に優れ、かつ、投与回数を可能な限り減らすことができる利便性の高い点眼剤を提供することが必要である。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、有効成分として0.1%(w/v)濃度のエピナスチン又はその塩を含有する12歳未満の小児用アレルギー性結膜炎治療剤であって、有効性及び安全性に優れ、かつ、利便性の高いアレルギー性結膜炎治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、小児患者においても有効性及び安全性に優れ、かつ、利便性の高いアレルギー性結膜炎治療剤について鋭意研究を行ったところ、12歳未満の小児患者に有効成分として0.1%(w/v)濃度のエピナスチン又はその塩を含有する点眼液を所定の用法用量で適用することによって、小児患者の目の痒みを劇的に改善し、高い治療効果をもたらし、さらに効果及び使用感に対する患者の高い満足度が得られることを見出した。さらに、当該点眼液が小児患者において副作用を発現した症例は認められず、安全性にも優れた治療剤であることも見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
具体的に、本発明は以下を提供する。
(1)12歳未満の小児患者に適用されるように用いられる、有効成分として0.1%(w/v)濃度のエピナスチン又はその塩を含有するアレルギー性結膜炎治療剤であって、該小児患者が1.0以下の眼そう痒感スコアを達成することを特徴とする、アレルギー性結膜炎治療剤。
(2)1眼あたり1滴又は2滴を1回として1日1回又は2回点眼されるように用いられることを特徴とする、(1)に記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
(3)1眼あたり1滴又は2滴を1回として1日2回点眼されるように用いられることを特徴とする、(1)又は(2)に記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
(4)投与開始から2週間後の眼そう痒感スコアが1.0以下である、(2)又は(3)に記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
(5)投与開始から4週間後の眼そう痒感スコアが1.0以下である、(2)又は(3)に記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
(6)該小児患者が、1.0以下の眼瞼結膜充血スコアをさらに達成することを特徴とする、(1)~(5)のいずれか1記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
(7)投与開始から2週間後の眼瞼結膜充血スコアが1.0以下である、(6)に記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
(8)投与開始から4週間後の眼瞼結膜充血スコアが1.0以下である、(6)に記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
(9)該小児患者が、0.5以下の眼球結膜充血スコアをさらに達成することを特徴とする、(1)~(8)のいずれか1記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
(10)投与開始から2週間後の眼球結膜充血スコアが0.5以下である、(9)に記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
(11)投与開始から4週間後の眼球結膜充血スコアが0.5以下である、(9)に記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
(12)12歳未満の小児患者に適用されるように用いられる、有効成分として0.1%(w/v)濃度のエピナスチン又はその塩を含有するアレルギー性結膜炎治療剤であって、該小児患者が1.0以下の眼瞼結膜充血スコアを達成することを特徴とする、アレルギー性結膜炎治療剤。
(13)12歳未満の患者に適用されるように用いられる、有効成分として0.1%(w/v)濃度のエピナスチン又はその塩を含有するアレルギー性結膜炎治療剤であって、眼球結膜充血スコアを0.5以下に改善するための、アレルギー性結膜炎治療剤。
(14)12歳未満の小児患者に適用されるように用いられる、有効成分として0.1%(w/v)濃度のエピナスチン又はその塩を含有するアレルギー性結膜炎治療剤であって、使用感に対する満足度調査において、満足である患者が70%以上又は満足とやや満足を合わせた患者が90%以上を示すことを特徴とする、アレルギー性結膜炎治療剤。
(15)12歳未満の小児患者に適用されるように用いられる、有効成分として0.1%(w/v)濃度のエピナスチン又はその塩を含有するアレルギー性結膜炎治療剤であって、効果に対する満足度調査において、満足である患者が60%以上又は満足とやや満足を合わせた患者が90%以上を示すことを特徴とする、アレルギー性結膜炎治療剤。
(16)該小児患者が、0歳以上11歳までの患者である、(1)~(15)のいずれか1記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
(17)該小児患者が、0歳の患者である、(1)~(15)のいずれか1記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
(18)該小児患者が、1歳以上3歳までの患者である、(1)~(15)のいずれか1記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
(19)該小児患者が、4歳以上6歳までの患者である、(1)~(15)のいずれか1記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
(20)該小児患者が、7歳以上11歳までの患者である、(1)~(15)のいずれか1記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
(21)エピナスチン又はその塩が、エピナスチン塩酸塩である、(1)~(20)のいずれか1記載のアレルギー性結膜炎治療剤。
なお、前記(1)から(21)の各構成は、任意に2以上を選択して組み合わせることができる。
【0011】
さらに、本発明は以下も提供する。
(22)治療が必要な12歳未満の小児患者に、治療上の有効量の0.1%(w/v)濃度のエピナスチン又はその塩を含有するアレルギー性結膜炎治療剤を投与することを特徴とする、アレルギー性結膜炎の治療方法。
(23)治療が必要な12歳未満の小児患者に、治療上の有効量の0.1%(w/v)濃度のエピナスチン又はその塩を含有するアレルギー性結膜炎治療剤を投与することを特徴とする、アレルギー性疾患の治療方法。
(24)12歳未満の小児患者用のアレルギー性結膜炎治療剤を製造するための、0.1%(w/v)濃度のエピナスチン又はその塩の使用。
(25)12歳未満の小児患者用のアレルギー性疾患治療剤を製造するための、0.1%(w/v)濃度のエピナスチン又はその塩の使用。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、小児患者用のアレルギー性結膜炎治療剤を提供することができる。より具体的には、有効成分として0.1%(w/v)濃度のエピナスチン又はその塩を含有する点眼液を、12歳未満の小児患者に適用することによって、目の痒みを劇的に改善し、高い治療効果をもたらし、さらに効果及び使用感に対する患者の高い満足度を得ることができ、また、懸念される副作用の発現を抑え、優れた安全性をもたらすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明において、「エピナスチン」とは、化学名(±)-3-Amino-9,13b-dihydro-1H-dibenz[c,f]imidazo[1,5-a]azepineで表される化合物であり、また下記式:
【化1】
で表される化合物である。
【0015】
本発明のアレルギー性結膜炎治療剤において、含有されるエピナスチンはラセミ体であってもよく、光学異性体であってもよい。
【0016】
本発明のアレルギー性結膜炎治療剤において、含有されるエピナスチンは塩であってもよく、医薬として許容される塩であれば特に制限はない。塩としては例えば、無機酸との塩、有機酸との塩等が挙げられる。
無機酸との塩としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩が挙げられる。
有機酸との塩としては、酢酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、グルコヘプト酸、グルクロン酸、テレフタル酸、メタンスルホン酸、アラニン、乳酸、馬尿酸、1,2-エタンジスルホン酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、オレイン酸、没食子酸、パモ酸、ポリガラクツロン酸、ステアリン酸、タンニン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、硫酸ラウリル、硫酸メチル、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸等との塩が挙げられる。
エピナスチンの塩としては、一塩酸塩(エピナスチン塩酸塩)が特に好ましい。
【0017】
本発明のアレルギー性結膜炎治療剤において、含有されるエピナスチン又はその塩は、水和物又は溶媒和物の形態をとってもよい。
【0018】
本発明のアレルギー性結膜炎治療剤において、エピナスチン又はその塩の含有量は、眼科製剤として許容される濃度であればよく、例えば、その含有量は0.1%(w/v)である。
なお、本発明において、「%(w/v)」は、本発明のアレルギー性結膜炎治療剤100mL中に含まれる対象成分の質量(g)を意味する。本発明においてエピナスチンの塩が含有される場合、その値はエピナスチンの塩の含有量である。また、本発明においてエピナスチン又はその塩が、水和物又は溶媒和物の形態をとって配合される場合、その値はエピナスチン又はその塩の、水和物又は溶媒和物の含有量である。以下、特に断りがない限り同様とする。
【0019】
本発明において、「小児」とは、12歳以下の新生児、乳児、幼児及び小児を指し、0歳、1歳、2歳、3歳、4歳、5歳、6歳、7歳、8歳、9歳、10歳、11歳、12歳のいずれかの年齢である。小児は、好ましくは12歳未満であり、0歳、1歳、2歳、3歳、4歳、5歳、6歳、7歳、8歳、9歳、10歳、11歳のいずれかの年齢である。さらに好ましくは、1歳から11歳であり、1歳、2歳、3歳、4歳、5歳、6歳、7歳、8歳、9歳、10歳、11歳のいずれかの年齢である。
【0020】
本発明において、アレルギー性結膜炎は、季節性、通年性、又は季節性と通年性の両方のいずれの病型であってもよい。アレルゲンとしては、花粉が挙げられるが、特に花粉に限らずその他のもの、例えばハウスダスト、ダニなども含まれる。アレルゲンは、好ましくは花粉、ハウスダスト及びダニであり、より好ましくはスギ、ヒノキ及びその他の花粉である。
【0021】
本発明における「患者」は、アレルギー性結膜炎の初発患者、罹病2年未満、2から5年未満、5から10年未満又は10年以上の患者であってもよく、アレルギー性結膜炎の罹病期間は特に限定されるものではない。本発明における「小児患者」は、12歳未満の患者であり、例えば0歳以上11歳までの患者である。また、小児患者は、0歳の患者、1歳以上3歳までの患者、4歳以上6歳までの患者又は7歳以上11歳までの患者であってもよい。
【0022】
本発明のアレルギー性結膜炎治療剤の投与期間は、患者の年齢、症状の程度など種々の要因によって適宜選択することができる。投与期間は、例えば、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、10週間又は12週間である。
【0023】
本発明において、「眼そう痒感スコア」とは、アレルギー性結膜炎患者における眼そう痒感の自覚症状の重症度に基づいて数値化したものである。本スコアは、抗原誘発試験及び環境試験のいずれの試験法によっても算出することができる。本発明における眼そう痒感スコアは、環境試験により算出することが好ましい。
眼そう痒感スコアは、数値が低い方が好ましく、例えば、投与開始から2週間後のスコアは2.5未満であり、2.4以下、2.3以下、2.2以下、2.1以下、2.0以下、1.9以下、1.8以下、1.7以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1.0以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下又は0.1以下であってもよい。投与開始から2週間後の眼そう痒感スコアは、0が特に好ましい。また投与開始から4週間後のスコアは、例えば2.5未満であり、2.4以下、2.3以下、2.2以下、2.1以下、2.0以下、1.9以下、1.8以下、1.7以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1.0以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下又は0.1以下であってもよい。投与開始から4週間後の眼そう痒感スコアは、0が特に好ましい。
【0024】
本発明において、「眼瞼結膜充血スコア」とは、アレルギー性結膜炎患者における眼瞼結膜充血の症状の重症度に基づいて他覚所見を数値化したものである。本スコアは、抗原誘発試験及び環境試験のいずれの試験法によっても算出することができる。本発明における眼そう痒感スコアは、環境試験により算出することが好ましい。又はその症状の重症度の判断基準は、例えば、公益財団法人日本眼科学会・日本眼科アレルギー研究会が提唱するガイドライン「アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第2版)」に準じることができる。
眼瞼結膜充血スコアは、数値が低い方が好ましく、例えば、投与開始から2週間後のスコアは1.6未満であり、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1.0以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下又は0.1以下であってもよい。投与開始から2週間後の眼瞼結膜充血スコアは、0が特に好ましい。また投与開始から4週間後のスコアは、例えば1.6未満であり、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1.0以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下又は0.1以下であってもよい。投与開始から4週間後の眼瞼結膜充血スコアは、0が特に好ましい。
【0025】
本発明において、「眼球結膜充血スコア」とは、眼球結膜充血の症状の重症度に基づいて他覚所見を数値化したものである。本スコアは、抗原誘発試験又は環境試験のどちらでも良いが環境試験の方が好ましい。その症状の重症度の判断基準は、例えば、公益財団法人日本眼科学会・日本眼科アレルギー研究会が提唱するガイドライン「アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第2版)」に準じることができる。
眼球結膜充血スコアは、数値が低い方が好ましく、例えば、投与開始から2週間後のスコアは1.2未満であり、1.1以下、1.0以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下又は0.1以下であってもよい。投与開始から2週間後の眼球結膜充血スコアは、0が特に好ましい。また投与開始から4週間後のスコアは、例えば1.2未満であり、1.1以下、1.0以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下又は0.1以下であってもよい。投与開始から4週間後の眼球結膜充血スコアは、0が特に好ましい。
【0026】
本発明において、「抗原誘発試験」とは、無症状期のアレルギー性結膜炎患者を対象に、抗原溶液を点眼することにより誘発させたアレルギー性結膜炎の一連の症状に対するアレルギー性結膜炎治療剤の薬効を評価する試験法を指す。抗原誘発試験では、例えば、無症状期のアレルギー性結膜炎患者に対し、片眼に本発明のアレルギー性結膜炎治療剤、他眼に対照薬又はプラセボを点眼し、アレルギー性結膜炎の症状を発現する至適濃度の抗原溶液(例えば、スギ花粉抗原溶液)を点眼し、その後の症状、所見を左右眼で比較することによって、本発明のアレルギー性結膜炎治療剤の有効性を評価する。
【0027】
本発明において、「環境試験」とは、アレルギー性結膜炎患者を対象に、日常の花粉飛散下でアレルギー性結膜炎治療剤の薬効を評価する試験法を指す。環境試験では、例えば、アレルギー性結膜炎患者に対し、花粉が飛散する日常の環境下で本発明のアレルギー性結膜炎治療剤をある一定期間(例えば、1週間、2週間又は4週間)点眼し、その後の症状、所見を確認することによって、本発明のアレルギー性結膜炎治療剤の有効性を評価する。
【0028】
本発明における「使用感に対する満足度」は、アンケートによる満足度調査において満足と回答した患者が70%以上であれば満足度が高いことを示し、70%未満であれば満足度が低いことを示す。本発明において、満足と回答した患者は、70%以上であればよく、好ましくは71.2%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。また、満足とやや満足と回答した患者を合わせた場合、患者は90%以上であればよく、好ましくは93.5%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。
【0029】
本発明における「効果に対する満足度」は、アンケートによる満足度調査において満足と回答した患者が60%以上であれば満足度が高いことを示し、60%未満であれば満足度が低いことを示す。本発明において、満足と回答した患者は、60%以上であればよく、好ましくは68.8%以上であり、さらに好ましくは75%以上である。また、満足とやや満足と回答した患者を合わせた場合、患者は90%以上であればよく、好ましくは92.3%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。
【0030】
本発明において、「治療」とは、アレルギー性結膜炎又はそれに伴う症状のあらゆる治療、例えば、アレルギー性結膜炎を治癒又は改善すること、アレルギー性結膜炎に伴う症状を軽減又は抑制することを指す。また、アレルギー性結膜炎以外のアレルギー性疾患の治療も含まれる。
【0031】
本発明において、「治療上の有効量」とは、未治療対象と比べて、アレルギー性結膜炎及びその症状の治癒、改善及び/又は軽減をもたらす量を指す。
【0032】
本発明のアレルギー性結膜炎治療剤は、医薬品の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム水和物、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウム水和物などの緩衝剤、ヒドロキシエチルセルロースなどの粘稠化剤、ポリソルベート80などの界面活性化剤、塩化ナトリウム等の等張化剤、エデト酸ナトリウム等の安定化剤、ホウ酸等の防腐剤、亜硫酸ナトリウム等の抗酸化剤、塩酸又は水酸化ナトリウム等のpH調節剤が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、また、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよく、適量を配合することができる。
【0033】
本発明のアレルギー性結膜炎治療剤は、本発明の効果を妨げない範囲であれば、エピナスチン又はその塩以外の医薬品活性成分、例えば他の点眼剤に用いられる有効成分を含んでいてもよい。
【0034】
本発明のアレルギー性結膜炎治療剤は、汎用される方法により調製することができる。例えば、蒸留水に各成分を溶解又は懸濁させ、浸透圧、pH等を所定の範囲に調整し、濾過滅菌又は加熱滅菌処理することにより調製することができる。
【0035】
本発明のアレルギー性結膜炎治療剤は、眼への局所投与(例えば、点眼投与)に適している。また、本発明のアレルギー性結膜炎治療剤は、眼以外の部位(例えば、鼻、耳)に局所投与することができる。
【0036】
本発明のアレルギー性結膜炎治療剤は、特に断りのない限り、眼以外のアレルギー疾患を有する患者に使用することができる。眼以外のアレルギー疾患としては、例えばアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、喘息などが挙げられる。
【0037】
本発明のアレルギー性結膜炎治療剤を眼に投与する場合、患者の眼合併症の治療にも用いることができる。眼合併症として、例えば、角膜・結膜疾患、眼瞼・涙器疾患、白内障・水晶体疾患、緑内障・高眼圧症、網膜・硝子体疾患などが挙げられる。
【0038】
本発明のアレルギー性結膜炎治療剤を眼に投与する場合、1眼あたり1滴又は2滴を1回として1日2回に分けて点眼することが好ましく、1眼あたり1滴を1回として1日2回に分けて点眼することがさらに好ましい。なお、本発明のアレルギー性結膜炎治療剤を1日2回に分けて点眼する場合には、朝と夕方に点眼することが好ましい。1滴は、通常、約0.01~約0.1mLであり、約0.015~約0.07mLが好ましく、約0.02~約0.05mLがより好ましく、約0.03mLが特に好ましい。
【0039】
本発明のアレルギー性結膜炎治療剤を眼に投与する場合、コンタクトレンズ装用眼あってもコンタクトレンズ非装用眼であっても投与することができる。本発明において使用されるコンタクトレンズは、ソフトコンタクトレンズであってもハードコンタクトレンズであってもよく、その種類は限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
以下に、製剤例及び試験例を示すが、これらは本発明をより良く理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0041】
製剤例
以下に本発明の代表的な製剤例を示す。なお、下記製剤例において各成分の配合量は製剤1mL中の含量である。リン酸二水素ナトリウム水和物、リン酸水素ナトリウム水和物及び塩化ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂、濃グリセリンは、その範囲内で配合量を調整することができる。
【0042】
製剤例1(点眼剤(0.1%(w/v)))
エピナスチン塩酸塩 1mg
リン酸二水素ナトリウム水和物 0.0001~100mg
リン酸水素ナトリウム水和物 0.0001~100mg
塩化ナトリウム 0.0001~20mg
希塩酸(pH調節剤) 適量
水酸化ナトリウム(pH調節剤) 適量
精製水 適量
pH 6~8
【0043】
製剤例2(点眼剤(0.1%(w/v)))
エピナスチン塩酸塩 1mg
リン酸二水素ナトリウム水和物 0.0001~100mg
塩化ナトリウム 0.0001~20mg
希塩酸(pH調節剤) 適量
水酸化ナトリウム(pH調節剤) 適量
精製水 適量
pH 6~8
【0044】
製剤例3(点眼剤(0.1%(w/v)))
エピナスチン塩酸塩 1mg
ホウ酸 0.0001~100mg
ホウ砂 0.0001~100mg
濃グリセリン 0.0001~100mg
希塩酸(pH調節剤) 適量
水酸化ナトリウム(pH調節剤) 適量
精製水 適量
pH 6~8
【0045】
上記点眼剤は、精製水にエピナスチン塩酸塩及びそれ以外の成分を加え、これらを十分に混合することによって調製することができる。
【0046】
試験例1:薬効評価試験
12歳未満のヒトに対する日常診療下でのアレルギー性結膜炎に対する抗アレルギー作用の有効性及び安全性を検証した。治療薬には、有効成分として0.1%(w/v)濃度のエピナスチン塩酸塩を含有する点眼液(以下、「治療薬1」ともいう)を用いた。
【0047】
(1)試験方法
アレジオンLX(登録商標)点眼液0.1%の使用歴がない12歳未満のアレルギー性結膜炎小児患者(329人)を対象とした。年齢構成は0歳の患者が1例、1~3歳の患者が33例、4~6歳の患者が117例、7~11歳の患者が178例である。対象とする小児患者に1回1滴、1日2回(朝、夕方)の点眼を行った。
【0048】
(2)アレルギー症状の評価方法
アレルギー性結膜炎によって引き起こされる症状のうち、眼そう痒感、眼瞼結膜充血及び眼球結膜充血について、それぞれの症状の重症度を下記の判定基準によってスコアをつけることにより評価した。なお、眼そう痒感のスコアは0~4の5段階、眼瞼結膜充血及び眼球結膜充血のスコアは0~3の4段階である。
<眼そう痒感のスコア基準>
0:眼そう痒感なし
1:時々かゆみがある
2:持続的にかゆみがある
3:持続的にかゆみがあり、眼をこすりたい、但し、日常作業は妨げられていない
4:我慢できない程度、日常作業が妨げられるようなかゆみ
【0049】
<充血(眼瞼結膜)スコア基準>
0:所見なし
1:数本の血管拡張
2:多数の血管拡張
3:個々の血管の識別不能
【0050】
<充血(眼球結膜)スコア基準>
0:所見なし
1:数本の血管拡張
2:多数の血管拡張
3:全体の血管拡張
【0051】
(3)試験結果及び考察
投与前(ベースライン)、投与開始から2週間後及び投与開始から4週間後の眼そう痒感スコア、眼瞼結膜充血スコア及び眼球結膜充血スコアの平均値を表1に示す。(なお、平均値は汎用的な統計処理により算出されるものであり、また「N」はサンプル数を表す。)
【表1】
【0052】
表1に示されるように、投与開始から2週間後及び4週間後の眼そう痒感スコアは、投与前の2.4から1.0以下に改善された。また、投与開始から2週間後及び4週間後の眼瞼結膜充血スコアは、投与前の1.5から1.0以下に改善され、そして、投与開始から2週間後及び4週間後の眼球結膜充血スコアは、投与前の1.2から0.5以下に改善された。これらの結果より、治療薬1は12歳未満のヒトでのアレルギー性結膜炎に対して高い治療効果をもたらすことが示された。
【0053】
また、治療効果の確認とともに、投薬による副作用の有無についても確認したところ、副作用を発現した症例は認められなかった(小児に対する使用例数329例中0例(0%))。一方、アレルギー性結膜炎治療剤である「アレジオン(登録商標)点眼液0.05%」(以下、治療薬2ともいう)では、小児に対する使用例数1,100例中11例(1.00%)に副作用が認められている(非特許文献1)。治療薬1は、治療薬2の2倍の濃度のエピナスチン塩酸塩を含有するのにも関わらず、小児の副作用の発現症例が見られなかったことは驚くべき結果である。
【0054】
試験例2:満足度調査
12歳未満のヒトを対象に、上記試験例1で用いた治療薬1についての使用感及び効果に対する満足度を日常診療下で調査した。また、対照として、アレルギー性結膜炎治療剤である「アレジオン(登録商標)点眼液0.05%」(以下、治療薬2とする)を用いた。
【0055】
(1)試験方法
アレジオンLX(登録商標)点眼液0.1%の使用歴がない、12歳未満のアレルギー性結膜炎小児患者を対象として、治療薬1を329人、治療薬2を923人に点眼した後にアンケートによる満足度調査を行った。1回1滴、1日2回(朝、夕方)点眼をおこなった。また、治療薬2の使用歴がないアレルギー性結膜炎患者を対象として、治療薬2を点眼した後に同様に満足度調査を行ったうち、12歳未満の患者は923人であった。
【0056】
(3)評価方法
治療薬1及び治療薬2のそれぞれを使用した際の使用感及び効果に対する満足度について、「満足」、「やや満足」、「どちらでもない」、「やや不満足」、「不満足」の5段階で評価を行い、その結果を集計した。
【0057】
(4)試験結果及び考察
使用感及び効果に対する満足感の結果を表2に示す。表2中の「N」はサンプル数を表す。
【表2】
【0058】
治療薬1の使用感に対する満足度は、71.2%(220人)が「満足」と回答し、「満足」と「やや満足」を合わせると93.5%(289人)であった。一方、治療薬2の使用感に対する満足度は、51.4%(458人)が「満足」と回答し、「満足」と「やや満足」を合わせると88.0%(784人)であった。
治療薬1の効果に対する満足度は、68.8%(214人)が「満足」と回答し、「満足」と「やや満足」を合わせると92.3%(287人)であった。一方、治療薬2の効果に対する満足度は、51.8%(468人)が「満足」と回答し、「満足」と「やや満足」を合わせると88.2%(797人)であった。
以上より、治療薬1の使用感及び効果に対する満足度は、治療薬2よりも向上していることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、小児患者用のアレルギー性結膜炎治療剤を提供することができる。より具体的には、有効成分として0.1%(w/v)濃度のエピナスチン又はその塩を含有する点眼液を、12歳未満の小児患者に適用することによって、目の痒みを劇的に改善し、高い治療効果をもたらし、さらに効果及び使用感に対する患者の高い満足度を得ることができ、また、懸念される副作用の発現を抑え、優れた安全性をもたらすことができる。
【要約】
【課題】12歳未満の小児患者における、有効性及び安全性に優れ、かつ、利便性の高いアレルギー性結膜炎治療剤の提供。
【解決手段】12歳未満の小児患者に適用されるように用いられる、有効成分として0.1%(w/v)濃度のエピナスチン又はその塩を含有するアレルギー性結膜炎治療剤であって、該小児患者が1.0以下の眼そう痒感スコアを達成することを特徴とする、アレルギー性結膜炎治療剤。
【選択図】なし