(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】高輝度反射型X線源
(51)【国際特許分類】
H01J 35/08 20060101AFI20220804BHJP
H01J 35/24 20060101ALI20220804BHJP
H05G 1/52 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
H01J35/08 C
H01J35/08 B
H01J35/24
H01J35/08 E
H05G1/52 Z
(21)【出願番号】P 2021504298
(86)(22)【出願日】2019-07-22
(86)【国際出願番号】 US2019042867
(87)【国際公開番号】W WO2020023408
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-03-17
(32)【優先日】2018-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516065870
【氏名又は名称】シグレイ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ウェンビン
(72)【発明者】
【氏名】ルイス,シルビア・ジア・ユン
(72)【発明者】
【氏名】カーズ,ヤーノシュ
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン,ウィリアム・ヘンリー
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05148462(US,A)
【文献】特表2016-537797(JP,A)
【文献】特開平06-188092(JP,A)
【文献】特開2006-164819(JP,A)
【文献】特開2013-157269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 35/00
H05G 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線ターゲットであって、
表面を含む熱伝導性基板と、
互いに別個であり、前記表面の少なくとも一部の上の、または前記表面の少なくとも一部に埋め込まれた、複数の構造とを備え、前記複数の構造のうちの少なくとも2つの構造の各々は、
前記基板と熱的に連通する熱伝導性の第1の材料と、
前記第1の材料の上の少なくとも1つの層とを備え、前記少なくとも1つの層は前記第1の材料とは異なる少なくとも1つの第2の材料を含み、前記少なくとも1つの第2の材料は、電子を照射するとX線を発生させるように構成され、前記少なくとも2つの構造の前記第1の材料は互いに別個であり、前記少なくとも2つの構造の前記少なくとも1つの
第2の材料は互いに別個
かつ異なり、
前記少なくとも2つの構造の各々はさらに、
前記第1の材料と前記少なくとも1つの第2の材料との間に少なくとも1つの第3の材料を備え、前記少なくとも1つの第3の材料は前記第1の材料および前記少なくとも1つの第2の材料とは異なり、
前記少なくとも1つの第3の材料は2ナノメートル~50ナノメートルの範囲の厚みを有する、および/または、前記少なくとも1つの第3の材料は、窒化チタン、イリジウム、クロム、ベリリウム、および酸化ハフニウム、のうちの少なくとも1つを含む、X線ターゲット。
【請求項2】
前記第1の材料はダイヤモンドおよび/または炭化ケイ素を含む、請求項1に記載のX線ターゲット。
【請求項3】
前記少なくとも1つの層は1ミクロン~20ミクロンの範囲の厚みを有する、請求項1に記載のX線ターゲット。
【請求項4】
前記少なくとも2つの構造の前記第1の材料は互いに同一であり、前記少なくとも2つの構造の前記少なくとも1つの第2の材料は互いに異なる、請求項1に記載のX線ターゲット。
【請求項5】
前記少なくとも2つの構造のうちの第1の構造は第1のエネルギースペクトルを有するX線を発生させるように構成され、前記少なくとも2つの構造のうちの第2の構造は第2のエネルギースペクトルを有するX線を発生させるように構成され、前記第2のエネルギースペクトルは前記第1のエネルギースペクトルとは異なる、請求項1に記載のX線ターゲット。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第2の材料は、タングステン、クロム、銅、アルミニウム、ロジウム、モリブデン、金、白金、イリジウム、コバルト、タンタル、チタン、レニウム、炭化ケイ素、炭化タンタル、炭化チタン、炭化ホウ素、およびそれらの1つ以上を含む合金または組み合わせ、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のX線ターゲット。
【請求項7】
X線源であって、
X線ターゲットを備え、前記X線ターゲットは、
表面を含む熱伝導性基板と、
互いに別個であり、前記表面の少なくとも一部の上の、または前記表面の少なくとも一部に埋め込まれた、複数の構造とを備え、前記複数の構造のうちの少なくとも2つの構造の各々は、
前記基板と熱的に連通する熱伝導性の第1の材料と、
前記第1の材料の上の少なくとも1つの層とを備え、前記少なくとも1つの層は前記第1の材料とは異なる少なくとも1つの第2の材料を含み、前記少なくとも2つの構造の前記第1の材料は互いに別個であり、前1215記少なくとも2つの構造の前記少なくとも1つの
第2の材料は互いに別個
かつ異なり、
前記少なくとも2つの構造の各々はさらに、
前記第1の材料と前記少なくとも1つの第2の材料との間に少なくとも1つの第3の材料を備え、前記少なくとも1つの第3の材料は前記第1の材料および前記少なくとも1つの第2の材料とは異なり、
前記少なくとも1つの第3の材料は2ナノメートル~50ナノメートルの範囲の厚みを有する、および/または、前記少なくとも1つの第3の材料は、窒化チタン、イリジウム、クロム、ベリリウム、および酸化ハフニウム、のうちの少なくとも1つを含み、前記X線源はさらに、
少なくとも1本の電子ビームにおける電子を発生させ、前記少なくとも1本の電子ビームを前記少なくとも1つの構造に当たるように方向付けるように構成された電子源を備える、X線源。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第2の材料は、前記少なくとも1つの第2の材料の内部の前記電子の電子侵入深さよりも小さい厚みを有する、請求項7に記載のX線源。
【請求項9】
前記少なくとも1本の電子ビームは前記複数の構造の上の電子ビームスポットを有し、前記電子ビームスポットは、前記表面の前記一部に平行な第1の方向における5ミクロン~20ミクロンの範囲の第1の寸法と、前記表面の前記一部に平行であり前記第1の方向に垂直な第2の方向における20ミクロン~200ミクロンの範囲の第2の寸法とを有する、請求項7に記載のX線源。
【請求項10】
前記少なくとも1本の電子ビームは前記複数の構造の上の電子ビームスポットを有し、前記電子ビームスポットは4:1~10:1の範囲のアスペクト比を有する、請求項7に記載のX線源。
【請求項11】
前記少なくとも1本の電子ビームは、前記少なくとも1本の電子ビームの中心線が前記表面の前記一部に垂直な方向に対して非ゼロの角度であるように、前記複数の構造に当たる、請求項7に記載のX線源。
【請求項12】
前記非ゼロの角度は50度~70度の範囲である、請求項11に記載のX線源。
【請求項13】
方法であって、
複数の構造のうちの第1の選択された構造に少なくとも1本の電子ビームを当てることを備え、前記複数の構造は、互いに別個であり、熱伝導性基板の表面の少なくとも一部の上にあり、または前記表面の少なくとも一部に埋め込まれており、前記複数の構造のうちの少なくとも2つの構造の各々は、
前記基板と熱的に連通する熱伝導性の第1の材料と、
前記第1の材料の上の少なくとも1つの層とを備え、前記少なくとも1つの層は前記第1の材料とは異なる少なくとも1つの第2の材料を含み、前記少なくとも1つの第2の材料は、前記少なくとも1本の電子ビームが当たったことに応答してX線を発生させるように構成され、
前記少なくとも2つの構造の各々はさらに、
前記第1の材料と前記少なくとも1つの第2の材料との間に少なくとも1つの第3の材料を備え、前記少なくとも1つの第3の材料は前記第1の材料および前記少なくとも1つの第2の材料とは異なり、
前記少なくとも1つの第3の材料は2ナノメートル~50ナノメートルの範囲の厚みを有する、および/または、前記少なくとも1つの第3の材料は、窒化チタン、イリジウム、クロム、ベリリウム、および酸化ハフニウム、のうちの少なくとも1つを含み、前記方法はさらに、
前記基板および/または前記少なくとも1本の電子ビームを制御可能に互いに動かすことと、
前記複数の構造のうちの第2の選択された構造に前記少なくとも1本の電子ビームを当てることとを備える、方法。
【請求項14】
前記第1の選択された構造に当てることに応答して発生する前記X線は、第1のエネルギースペクトルを有し、前記第2の選択された構造に当てることに応答して発生する前記X線は、前記第1のエネルギースペクトルとは異なる第2のエネルギースペクトルを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記複数の構造は密閉された領域の中にあり、前記基板および前記少なくとも1本の電子ビームのうちの少なくとも1つを制御可能に動かすことは、前記複数の構造が前記密閉された領域の中に残っている間に起こる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記基板および/または前記少なくとも1本の電子ビームを制御可能に互いに動かすことは、前記表面に平行な方向に沿って前記基板を動かすことを備える、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
X線ターゲットであって、
表面を含む熱伝導性基板と、
互いに別個であり、前記表面の少なくとも一部の上の、または前記表面の少なくとも一部に埋め込まれた、複数の構造とを備え、前記複数の構造は、
前記基板と熱的に連通する熱伝導性の第1の材料を含み、前記第1の材料は、前記表面の前記一部に平行な第1の方向に沿った、1ミリメートル超の範囲の長さと、前記表面の前記一部に平行であり前記第1の方向に垂直な第2の方向に沿った幅とを有し、前記幅は0.2ミリメートル~3ミリメートルの範囲であり、前記複数の構造はさらに、
前記第1の材料の上の少なくとも1つの層を備え、前記少なくとも1つの層は前記第1の材料とは異なる少なくとも1つの第2の材料を含み、前記少なくとも1つの層は2ミクロン~50ミクロンの範囲の厚みを有し、前記少なくとも1つの第2の材料は、0.5keV~160keVのエネルギー範囲のエネルギーを有する電子を照射するとX線を発生させるように構成され
、
前記少なくとも1つの層は、前記第1の材料と前記少なくとも1つの第2の材料との間に少なくとも1つの第3の材料をさらに含み、前記少なくとも1つの第3の材料は前記第1の材料および前記少なくとも1つの第2の材料とは異なり、前記少なくとも1つの第3の材料は、窒化チタン、イリジウム、および酸化ハフニウム、のうちの少なくとも1つを含む、X線ターゲット。
【請求項18】
前記表面は銅を含む、請求項17に記載のX線ターゲット。
【請求項19】
前記少なくとも1つの第2の材料は、タングステン、クロム、銅、アルミニウム、ロジウム、モリブデン、金、白金、イリジウム、コバルト、タンタル、チタン、レニウム、炭化ケイ素、炭化タンタル、炭化チタン、炭化ホウ素、およびそれらの1つ以上を含む合金または組み合わせ、のうちの少なくとも1つを含む、請求項17に記載のX線ターゲット。
【請求項20】
前記構造のうちの2つ以上によって発生する前記X線は、互いに異なるエネルギーの関数としての強度分布を有する、請求項17に記載のX線ターゲット。
【請求項21】
前記少なくとも1つの第2の材料は導電性であり、電位と電気的に連通し、前記少なくとも1つの第2の材料は、電子照射による前記少なくとも1つの第2の材料の充電を防止するように構成される、請求項17に記載のX線ターゲット。
【請求項22】
X線源であって、
X線ターゲットを備え、前記X線ターゲットは、
表面を含む熱伝導性基板と、
互いに別個であり、前記表面の少なくとも一部の上の、または前記表面の少なくとも一部に埋め込まれた、複数の構造とを備え、前記複数の構造は、
前記基板と熱的に連通する熱伝導性の第1の材料を含み、前記第1の材料は、前記表面の前記一部に平行な第1の方向に沿った、1ミリメートル超の範囲の長さと、前記表面の前記一部に平行であり前記第1の方向に垂直な第2の方向に沿った幅とを有し、前記幅は0.2ミリメートル~3ミリメートルの範囲であり、前記複数の構造はさらに、
前記第1の材料の上の少なくとも1つの層を備え、前記少なくとも1つの層は前記第1の材料とは異なる少なくとも1つの第2の材料を含み、前記少なくとも1つの層は2ミクロン~50ミクロンの範囲の厚みを有し、前記少なくとも1つの第2の材料は、0.5keV~160keVのエネルギー範囲のエネルギーを有する電子を照射するとX線を発生させるように構成され、
前記少なくとも1つの層は、前記第1の材料と前記少なくとも1つの第2の材料との間に少なくとも1つの第3の材料をさらに含み、前記少なくとも1つの第3の材料は前記第1の材料および前記少なくとも1つの第2の材料とは異なり、前記少なくとも1つの第3の材料は、窒化チタン、イリジウム、および酸化ハフニウム、のうちの少なくとも1つを含み、前記X線源はさらに、
少なくとも1本の電子ビームにおける電子を発生させ、前記少なくとも1本の電子ビームを前記複数の構造に当たるように方向付けるように構成された電子源を備える、X線源。
【請求項23】
前記少なくとも1本の電子ビームは、15ミクロン以下の最大値を有する、前記複数の構造の上の半値全幅スポットサイズを有する、請求項
22に記載のX線源。
【請求項24】
請求項
22に記載のX線源を備える、X線システム。
【請求項25】
前記表面の前記一部に対する取り出し角度を有する伝搬方向に沿って伝搬する前記X線源からのX線を受けるように構成された少なくとも1つのX線光学部品をさらに備え、前記取り出し角度は0度~40度の範囲である、請求項
24に記載のX線システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本願は、2018年7月26日に出願された米国仮出願第62/703,836号に対する優先権の利益を主張し、その全体を本明細書に引用により援用する。
【0002】
背景
分野
本願は、概してX線源に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
実験用のX線源は、一般に、電子によって金属ターゲットに衝撃を与え、これらの電子の減速により、ゼロから電子の運動エネルギーまでのすべてのエネルギーの制動放射X線が生成される。さらに、金属ターゲットはターゲット原子の内側コア電子軌道に正孔を作ることによってX線を生成し、正孔はその後、内側コア電子軌道よりも低い結合エネルギーを有するターゲットの電子で充填され、ターゲット原子に特徴的なエネルギーを有するX線が付随して発生する。ターゲットを照射する電子のパワーの大半は熱(たとえば約60%)および後方散乱電子(たとえば約39%)に変換され、X線に変換される入射パワーは約1%に過ぎない。この熱に起因するX線ターゲットの溶融は、X線源が達成可能な最終輝度(たとえば、光子/秒/面積/ステラジアン)の制限因子となり得る。
【0004】
マイクロフォーカスまたはナノフォーカスX線ビームを発生させるように構成された透過型X線源は、一般に、熱伝導性の低密度基板材料(たとえばダイヤモンド)の上の薄いスパッタ金属層(たとえばタングステン)を含むターゲットを利用する。ターゲットの片側の金属層に電子を照射し、X線ビームはターゲットの反対側から放出されるX線を含む。X線のスポットサイズは電子ビームのスポットサイズに依存し、さらに、ターゲット内の電子ブルームのために、発生しターゲットから放出されるX線は、入射電子ビームの焦点サイズよりも大きい有効焦点サイズを有する。この結果、マイクロフォーカスまたはナノフォーカスX線ビームを発生させる透過型X線源は、一般に、非常に薄いターゲットおよび非常に良好な電子ビーム集束を必要とする。
【0005】
従来の反射型X線源は、バルクターゲット金属(たとえばタングステン)の表面を照射し、照射したターゲット表面からの透過X線を照射したターゲット表面に対する取り出し角度(たとえば6~30度)で集光し、取り出し角度は、ターゲット内に生成されるX線の自己吸収とのバランスを取りつつX線の蓄積を最適化するように選択される。反射型X線源では、ターゲットにおける電子ビームスポットは事実上傾斜して見えるので、X線源スポットサイズを透過型X線源における電子ビームスポットサイズよりも小さくすることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
本明細書に記載の特定の実施形態は、X線ターゲットを提供する。上記X線ターゲットは、表面を含む熱伝導性基板と、上記表面の少なくとも一部の上の、または上記表面の少なくとも一部に埋め込まれた少なくとも1つの構造とを含む。上記少なくとも1つの構造は、上記基板と熱的に連通する熱伝導性の第1の材料を含む。上記第1の材料は、上記表面の上記一部に平行な第1の方向に沿った、1ミリメートル超の範囲の長さと、上記表面の上記一部に平行であり上記第1の方向に垂直な第2の方向に沿った幅とを有する。上記幅は0.2ミリメートル~3ミリメートルの範囲である。上記少なくとも1つの構造はさらに、上記第1の材料の上の少なくとも1つの層を含む。上記少なくとも1つの層は上記第1の材料とは異なる少なくとも1つの第2の材料を含む。上記少なくとも1つの層は2ミクロン~50ミクロンの範囲の厚みを有する。上記少なくとも1つの第2の材料は、0.5keV~160keVのエネルギー範囲のエネルギーを有する電子を照射するとX線を発生させるように構成される。
【0007】
本明細書に記載の特定の実施形態は、X線源を提供する。上記X線源は、表面を含む熱伝導性基板と、上記表面の少なくとも一部の上の、または上記表面の少なくとも一部に埋め込まれた少なくとも1つの構造とを含むX線ターゲットを含む。上記少なくとも1つの構造は、上記基板と熱的に連通する熱伝導性の第1の材料を含む。上記第1の材料は、上記表面の上記一部に平行な第1の方向に沿った、1ミリメートル超の範囲の長さと、上記表面の上記一部に平行であり上記第1の方向に垂直な第2の方向に沿った幅とを有する。上記幅は0.2ミリメートル~3ミリメートルの範囲である。上記少なくとも1つの構造はさらに、上記第1の材料の上の少なくとも1つの層を含む。上記少なくとも1つの層は上記第1の材料とは異なる少なくとも1つの第2の材料を含む。上記少なくとも1つの層は2ミクロン~50ミクロンの範囲の厚みを有する。上記少なくとも1つの第2の材料は、0.5keV~160keVのエネルギー範囲のエネルギーを有する電子を照射するとX線を発生させるように構成される。上記X線源はさらに、少なくとも1本の電子ビームにおける電子を発生させ、上記少なくとも1本の電子ビームを上記少なくとも1つの構造に当たるように方向付けるように構成された電子源を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本明細書に記載の特定の実施形態に従う例示的なX線ターゲットの一部を概略的に示す図である。
【
図1B】本明細書に記載の特定の実施形態に従う例示的なX線ターゲットの一部を概略的に示す図である。
【
図1C】本明細書に記載の特定の実施形態に従う例示的なX線ターゲットの一部を概略的に示す図である。
【
図2A】本明細書に記載の特定の実施形態に従う互いに別個の複数の構造を有する例示的なX線ターゲットの一部を概略的に示す図である。
【
図2B】本明細書に記載の特定の実施形態に従う互いに別個の複数の構造を有する例示的なX線ターゲットの一部を概略的に示す図である。
【
図3】本明細書に記載の特定の実施形態に従う例示的なX線システムの例示的なX線源を概略的に示す図である。
【
図4A】本明細書に記載の特定の実施形態に従うX線源の他の例を概略的に示す図である。
【
図4B】本明細書に記載の特定の実施形態に従うX線源の他の例を概略的に示す図である。
【
図5A】本明細書に記載の特定の実施形態に従う例示的なX線ターゲットを概略的に示す図である。
【
図5B】
図5Aの例示的なX線ターゲットの一種からの輝度のシミュレーション結果を概略的に示す図である。
【
図5C】
図5Aの例示的なX線ターゲットの一種からの輝度のシミュレーション結果を概略的に示す図である。
【
図5D】
図5Aの例示的なX線ターゲットの一種からの輝度のシミュレーション結果を概略的に示す図である。
【
図5E】
図5Aの例示的なX線ターゲットの一種からの輝度のシミュレーション結果を概略的に示す図である。
【
図5F】
図5Aの例示的なX線ターゲットの一種からの輝度のシミュレーション結果を概略的に示す図である。
【
図5G】
図5Aの例示的なX線ターゲットの一種からの輝度のシミュレーション結果を概略的に示す図である。
【
図5H】
図5Aの例示的なX線ターゲットの一種からの輝度のシミュレーション結果を概略的に示す図である。
【
図5I】
図5Aの例示的なX線ターゲットの一種からの輝度のシミュレーション結果を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
本明細書に記載の特定の実施形態は、透過型X線源で用いられる電子ビームスポットサイズよりも大きい電子ビームスポットサイズを用いつつ(たとえば、透過型X線源で用いられる電子ビーム集束ほど厳密でない電子ビーム集束を利用しつつ)小さいX線スポットサイズを有利に達成する反射型X線源を提供する。
【0010】
本明細書に記載の特定の実施形態は、ターゲットの過度の加熱の有害な影響を回避しつつ、X線の高輝度を有する反射型X線源を有利に提供する。冷却された基板と、当該基板と熱的に連通し、第2の材料のターゲット層が上に堆積されている高熱伝導率の第1の材料(たとえばダイヤモンド)とを用いることによって、バルクターゲット材料を介して熱を除去することにより達成される速度よりも速い速度でターゲット層から熱を有利に除去することができる。
【0011】
本明細書に記載の特定の実施形態は、「密閉管」源の内部に複数のターゲット材料を有する反射型X線源を有利に提供する。電子ビームを用いて複数のターゲット材料のうちの選択されたターゲット材料を照射するようにX線源を構成し、各ターゲット材料が、異なる特徴的なX線エネルギーを有する対応するX線スペクトルを有するX線を発生させることによって、反射型X線源は、毎回X線源を開けてターゲットを変更する、およびX線源をポンプダウンする必要なしにX線源を異なる用途に最適化できるように、複数の選択可能なX線スペクトルを有利に提供することができる。
【0012】
図1A~
図1Cは、本明細書に記載の特定の実施形態に従う例示的なX線ターゲット10の一部を概略的に示す。
図1A~
図1Cの各々において、X線ターゲット10は、表面22を含む熱伝導性基板20と、表面22の少なくとも一部の上の、または表面22の少なくとも一部に埋め込まれた少なくとも1つの構造30とを含む。少なくとも1つの構造30は、基板20と熱的に連通する熱伝導性の第1の材料32を含む。第1の材料32は、表面22の一部に平行な第1の方向34に沿った長さLを有し、長さLは1ミリメートル超の範囲である。第1の材料32はまた、表面22の一部に平行であり第1の方向34に垂直な第2の方向36に沿った幅Wを有し、幅Wは0.2ミリメートル~3ミリメートル(たとえば0.2ミリメートル~1ミリメートル)の範囲である。少なくとも1つの構造30は、第1の材料32の上に少なくとも1つの層40をさらに含み、少なくとも1つの層40は、第1の材料32とは異なる少なくとも1つの第2の材料42を含む。少なくとも1つの層40は、1ミクロン~50ミクロンの範囲の厚みT(たとえば、1ミクロン~20ミクロンの範囲;1ミクロン~4ミクロンの範囲のタングステン層の厚み;2ミクロン~7ミクロンの範囲の銅層の厚み)を有し、少なくとも1つの第2の材料42は、0.5keV~160keVのエネルギー範囲のエネルギーを有する電子を照射するとX線を発生させるように構成される。
【0013】
特定の実施形態では、ターゲット10は少なくとも1つの構造30から熱を逃がすように構成される。たとえば、基板20の表面22は、少なくとも1つの熱伝導性材料を含むことができ、基板20の残部は、同一の少なくとも1つの熱伝導性材料および/または別の1つ以上の熱伝導性材料を含むことができる。少なくとも1つの熱伝導性材料の例としては、金属(たとえば、銅、ベリリウム、ドープグラファイト)、金属合金、金属複合物、および電気絶縁性であるが熱伝導性の材料(たとえば、ダイヤモンド、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン、シリコン、窒化ホウ素、炭化ケイ素、サファイア)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、少なくとも1つの熱伝導性材料は、20W/m-K~2500W/m-K(たとえば、150W/m-K~2500W/m-K、200W/m-K~2500W/m-K、2000W/m-K~2500W/m-K)の範囲の熱伝導率を有し、14以下の原子番号の元素を含む。基板20の表面22は、特定の実施形態では導電性を有し、電位(たとえば電気的な接地)と電気的に連通するように構成され、ターゲット10の電子照射による表面22の充電を防止するように構成される。特定の実施形態では、ターゲット10は、基板20と熱的に連通してターゲット10から熱を逃がすように構成された伝熱構造を含む。伝熱構造の例としては、ヒートシンク、ヒートパイプ、および、流体冷却液(たとえば、液体、水、脱イオン水、空気、冷媒、ベルギーのブリュッセルのSolvay社が販売するガルデン(登録商標)パーフルオロポリエーテルフッ素系流体などの伝熱流体)を自身に流して、(たとえば、電子照射からのターゲット10のパワーローディング速度と同様の速度で)基板20から熱を逃がすように構成された流体流導管が挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
特定の実施形態では、熱伝導性の第1の材料32は、第1の材料32が基板20と熱的に連通するように、基板20の表面22に接着される(たとえば、接合される、固定される、ろう付けされる、はんだ付けされる)ように構成される。たとえば、第1の材料32を、熱伝導性のはんだ付けまたはろう付け材料を用いて表面22上にはんだ付けまたはろう付けすることができ、当該材料の例としては、イギリスのバークシャーのウィンザーのMorgan Advanced Materials社が販売するCuSil-ABA(登録商標)またはNioro(登録商標)ろう付け用合金;金/銅ろう付け合金が挙げられるが、これらに限定されない。
図1Aおよび
図1Bに概略的に示されるように、特定の実施形態では、第1の材料32は表面22の上にあり、第1の材料32の少なくとも一部に沿って延在して第1の材料32および表面22の両方に機械的に結合されるはんだ付けまたはろう付け材料(図示せず)によって表面22に接着される。はんだ付けまたはろう付け材料は、第1の材料32と表面22との間の熱伝導率を高める(たとえば、改善する、促進する)ことができる。特定の他の実施形態では、第1の材料32は表面22の上にあり、はんだ付けまたはろう付け材料は、第1の材料32の少なくとも一部に沿って第1の材料32と表面22との間に延在し、第1の材料32および表面22の両方に機械的に結合され、第1の材料32と表面22との間の熱伝導率を高める(たとえば、改善する、促進する)。特定の実施形態では、
図1Cに概略的に示されるように、表面22は凹部24を含み、凹部24は、構造30が表面22の少なくとも一部に埋め込まれるように第1の材料32を凹部24に部分的に挿入するように構成される。第1の材料32の少なくとも一部に沿って延在し、第1の材料32および表面22の両方に機械的に結合され、第1の材料32と表面22との間の熱伝導率を高める(たとえば、改善する、促進する)はんだ付けまたはろう付け材料(図示せず)によって、第1の材料32を表面22に接着することができる。
【0015】
第1の材料32の例としては、ダイヤモンド、炭化ケイ素、ベリリウム、およびサファイア、のうちの少なくとも1つが挙げられるが、これに限定されない。
図1Aは、実質的に真っ直ぐな辺を有する半円筒状、角柱状、または平行六面体状の第1の材料32(たとえば、リボン、バー、ストリップ、ストラット、フィンガー、スラブ、プレート)を概略的に示しているが、真っ直ぐな、湾曲した、および/または不規則な辺を有するその他の形状(たとえば、規則的、不規則的、幾何学的、非幾何学的)も本明細書に記載の特定の実施形態と適合する。特定の実施形態では、第1の材料32の長さLは、第1の方向34における第1の材料32の最大の大きさであり、第1の材料32の幅Wは、第2の方向36における第1の材料32の最大の大きさである。長さLは、1ミリメートル超、5ミリメートル超、1ミリメートル~4ミリメートル、1ミリメートル~10ミリメートル、または1ミリメートル~20ミリメートルの範囲であり得る。幅Wは、0.2ミリメートル~3ミリメートル、0.2ミリメートル~1ミリメートル、0.4ミリメートル~1ミリメートル
、0.2ミリメートル~0.8ミリメートル、または0.2ミリメートル~0.6ミリメートルの範囲であり得る。特定の実施形態では、第1の材料32の厚みTは、表面22の一部に垂直な方向における第1の材料32の最大の大きさであり、0.2ミリメートル~1ミリメートル、0.4ミリメートル~1ミリメートル
、0.2ミリメートル~0.8ミリメートル、または0.2ミリメートル~0.6ミリメートルの範囲であり得る。
【0016】
特定の実施形態では、少なくとも1つの層40の少なくとも1つの第2の材料42は、0.5keV~160keVのエネルギー範囲のエネルギーを有する電子を照射すると予め定められたエネルギースペクトル(たとえば、X線エネルギーの関数としてのX線強度分布)を有するX線を発生させるように選択される。少なくとも1つの第2の材料42の例としては、タングステン、クロム、銅、アルミニウム、ロジウム、モリブデン、金、白金、イリジウム、コバルト、タンタル、チタン、レニウム、炭化ケイ素、炭化タンタル、炭化チタン、炭化ホウ素、およびそれらの1つ以上を含む合金または組み合わせ、のうちの少なくとも1つが挙げられるが、これに限定されない。特定の実施形態では、第2の材料42の厚みtは、表面22の一部に垂直な方向38における第2の材料42の最大の大きさであり、2ミクロン~50ミクロン、2ミクロン~20ミクロン、2ミクロン~15ミクロン、4ミクロン~15ミクロン、2ミクロン~10ミクロン、または2ミクロン~6ミクロンの範囲であり得る。特定の実施形態では、少なくとも1つの第2の材料42の厚みtは層40の全領域にわたって実質的に均一であるが、特定の他の実施形態では、少なくとも1つの第2の材料42の厚みtは層40の領域にわたって変化する(たとえば、層40の第1の端は少なくとも1つの第2の材料42の第1の厚みを有し、層40の第2の端は少なくとも1つの第2の材料42の第2の厚みを有し、第2の厚みは第1の厚みよりも大きい)。
【0017】
特定の実施形態では、少なくとも1つの第2の材料42の厚みtは、少なくとも1つの構造30を照射する少なくとも1本の電子ビームの運動エネルギーの関数として選択される。材料の内部の電子の電子侵入深さは、材料および電子の運動エネルギーに依存し、特定の実施形態では、少なくとも1つの第2の材料42の厚みtは、少なくとも1つの第2の材料42の内部の電子の電子侵入深さよりも小さいように選択され得る。たとえば、連続減速近似(CSDA)は、少なくとも1つの第2の材料42に入射する選択された運動エネルギーの電子の電子侵入深さの推定値を提供することができ、少なくとも1つの第2の材料42の厚みtはCSDA推定値の50%~70%の範囲であるように選択され得る。
【0018】
特定の実施形態における少なくとも1つの第2の材料42は、電位(たとえば電気的な接地)と電気的に連通するように構成され、電子照射による少なくとも1つの第2の材料42の充電を防止するように構成される。たとえば、導電性のはんだ付けまたはろう付け材料(
図1A~
図1Cには図示せず)を用いて構造30を表面22に接着する(たとえば、接合する、固定する、ろう付けする、はんだ付けする)ことができ、このはんだ付けまたはろう付け材料の少なくとも一部は、第1の材料32の辺のうちの1つの少なくとも一部に沿って表面22から少なくとも1つの第2の材料42まで延在することによって、少なくとも1つの第2の材料42と表面22との間に導電性を提供することができる。
【0019】
特定の実施形態では、
図1Bに概略的に示されるように、少なくとも1つの層40は、第1の材料32と少なくとも1つの第2の材料42との間に少なくとも1つの第3の材料44をさらに含み、少なくとも1つの第3の材料44は第1の材料32および少なくとも1つの第2の材料42とは異なる。少なくとも1つの第3の材料44の例としては、窒化チタン(たとえば、ダイヤモンドを含む第1の材料32およびタングステンを含む第2の材料42とともに用いられる)、イリジウム(たとえば、ダイヤモンドを含む第1の材料32ならびにモリブデンおよび/またはタングステンを含む第2の材料42とともに用いられる)、クロム(たとえば、ダイヤモンドを含む第1の材料32および銅を含む第2の材料42とともに用いられる)、ベリリウム(たとえば、ダイヤモンドを含む第1の材料32とともに用いられる)、ならびに酸化ハフニウム、のうちの少なくとも1つが挙げられるが、これに限定されない。特定の実施形態では、第3の材料44の厚みは、表面22の一部に垂直な方向における第2の材料44の最大の大きさであり、2ナノメートル~50ナノメートル(たとえば2ナノメートル~30ナノメートル)の範囲であり得る。特定の実施形態では、少なくとも1つの第3の材料44は、少なくとも1つの第2の材料42(たとえばタングステン)が第1の材料32(たとえばダイヤモンド)内に拡散するのを回避する(たとえば、防止する、減少させる、抑制する)ように構成された拡散バリア層を提供するように選択される。たとえば、拡散バリア層を、ダイヤモンドの第1の材料32との界面における炭化物材料から少なくとも1つの第3の材料44に向かって傾斜させることができる。特定の実施形態では、少なくとも1つの第3の材料44は、少なくとも1つの第2の材料42と第1の材料32との間の接着力を高める(たとえば、改善する、促進する)ように、および/または、少なくとも1つの第2の材料42と第1の材料32との間の熱伝導率を高める(たとえば、改善する、促進する)ように構成される。
【0020】
特定の実施形態では、第1の材料32の長さLおよび幅Wは、異種の第1の材料32と少なくとも1つの第2の材料42との間の、異種の第1の材料32と少なくとも1つの第3の材料44との間の、および/または異種の少なくとも1つの第2の材料42と少なくとも1つの第3の材料44との間の界面応力を回避する(たとえば、防止する、減少させる、抑制する)ことができるほど小さいように選択され得る。たとえば、第1の材料32の長さLおよび幅Wの各々は2ミリメートル未満であり得る。
【0021】
特定の実施形態では、第1の材料32(たとえばダイヤモンド)をウェハまたは他の構造から(たとえば細片に)切断(たとえばレーザー切断)することができる。
図1A~
図1Cは、第1の材料32が互いに直角の真っ直ぐで滑らかな頂面、底面、および側面を有する特定の実施形態を概略的に示しているが、特定の他の実施形態では、第1の材料32の頂面、底面、および/または側面は、粗く、不規則であり、もしくは湾曲しており、および/または互いに非直角である。特定の実施形態では、少なくとも1つの第2の材料42および/または少なくとも1つの第3の材料44を、(たとえば、マグネトロンスパッタリングなどのスパッタリング処理によって)第1の材料32の頂面の上に堆積することができる。
図1A~
図1Cは、少なくとも1つの第2の材料42および少なくとも1つの第3の材料44が、真っ直ぐで滑らかな頂面、底面、および側面
を有し、側面が第1の材料32の辺と面一である特定の実施形態を概略的に示しているが、特定の他の実施形態では、少なくとも1つの第2の材料42および/または少なくとも1つの第3の材料44は、粗い、不規則な、もしくは湾曲した表面であり、および/または側面は第1の材料32の頂面を越えて延在し(たとえば、第1の材料32の頂面の下方で第1の材料32の辺に沿って下向きに延在し)、および/または第1の材料32の側面のうちの1つ以上を越えて延在する(たとえば、少なくとも1つの第2の材料42および/または少なくとも1つの第3の材料44の長さおよび/または幅が第1の材料32よりも大きいように、表面22の一部に平行な1つ以上の方向において外向きに延在する)。
図1A~
図1Cは、少なくとも1つの第2の材料42の頂面が表面22の一部に平行である特定の実施形態を概略的に示しているが、特定の他の実施形態では、少なくとも1つの第2の材料42の頂面は表面22の一部に非平行である。
【0022】
図2Aおよび
図2Bは、本明細書に記載の特定の実施形態に従う互いに別個の複数の構造30を有する例示的なX線ターゲット10の一部を概略的に示す。
図2Aでは、ターゲット10は、互いに分離して直線構成で配置された3つの構造30a、30b、30cを含み、当該構造の各々は、対応する第1の材料32a、32b、32cと、対応する第1の材料32a、32b、32cの上の少なくとも1つの対応する層40a、40b、40cとを含み、かつ、対応する第1の材料32a、32b、32cとは異なる少なくとも1つの対応する第2の材料42a、42b、42cを含む。
図2Bでは、ターゲット10は、互いに分離して直線的なアレイ構成で配置された12個の構造30を含み、当該構造の各々は、対応する第1の材料32と、対応する第1の材料32の上の少なくとも1つの対応する層40とを含み、かつ、対応する第1の材料32とは異なる少なくとも1つの対応する第2の材料42を含む。他の数の構造30(たとえば、2個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、またはそれ以上)も本明細書に記載の特定の実施形態と適合する。
【0023】
特定の実施形態では、構造30のうちの2つ以上の第1の材料32は互いに同一であってもよく(たとえば、すべての第1の材料32は互いに同一であってもよく)、構造30のうちの2つ以上の第1の材料32は互いに異なっていてもよく、構造30のうちの2つ以上の第2の材料42は互いに同一であってもよく、および/または構造30のうちの2つ以上の第2の材料42は互いに異なっていてもよい(たとえば、すべての第2の材料42は互いに異なっていていてもよい)。構造30のうちの少なくとも2つによって発生するX線は、互いに異なるスペクトル(たとえば、X線エネルギーの関数としての強度分布)を有してもよい(たとえば、異なる構造30からのすべてのスペクトルは互いに異なっていてもよい)。特定の実施形態では、構造30の一部またはすべては、第1の材料32と第2の材料42との間に少なくとも1つの第3の材料44を含んでもよく、構造30のうちの2つ以上の第3の材料44は互いに同一であってもよく、および/または構造30のうちの2つ以上の第3の材料44は互いに異なっていてもよい。
【0024】
特定の実施形態では、構造30の各々は、表面22の一部に平行な第1の方向34a、34b、34cに沿った対応する長寸法(たとえば、長さLa、Lb、Lc)と、第1の方向34a、34b、34cに垂直であり表面22の一部に平行な第2の方向36a、36b、36cに沿った対応する短寸法(たとえば、幅Wa、Wb、Wc)とを有する。構造30のうちの2つ以上の長寸法は互いに等しくてもよく(たとえば、すべての長寸法は互いに等しくてもよく)、構造30のうちの2つ以上の長寸法は互いに等しくなくてもよく、構造30のうちの2つ以上の短寸法は互いに等しくてもよく(たとえば、すべての短寸法は互いに等しくてもよく)、および/または構造のうちの2つ以上の短寸法は互いに等しくなくてよい。特定の実施形態では、層40の各々は、表面22の一部に垂直な方向38において対応する厚み(たとえば、ta、tb、tc)を有する。構造30のうちの2つ以上の厚みは互いに等しくてもよく(たとえば、すべての厚みは互いに等しくてもよく)、および/または構造30のうちの2つ以上の厚みは互いに等しくなくてもよい(たとえば、すべての厚みは互いに等しくなくてもよい)。特定の実施形態の隣接する構造30同士は、表面22の一部に平行な方向において分離距離だけ互いに離間しており、分離距離は、0.02ミリメートル超、0.02ミリメートル~4ミリメートル、0.2ミリメートル~4ミリメートル、0.4ミリメートル~2ミリメートル、0.4ミリメートル~1ミリメートル、または1ミリメートル~4ミリメートルの範囲である。第1の2つの隣接する構造30同士の間の分離距離、および第2の2つの隣接する構造30同士の間の分離距離は、互いに等しくてもよいし、互いに等しくなくてもよい。
【0025】
図2Aに概略的に示されるように、例示的な構造30は直線構成で配置され、構造30は互いに位置合わせされる(たとえば、第1の方向34a、34b、34cに沿ったそれらの長寸法は互いに平行であり、第2の方向36a、36b、36cに沿ったそれらの短寸法は互いに平行である、および/または一致する)。特定の他の実施形態では、構造30は互いに位置合わせされない(たとえば、第1の方向34a、34b、34cに沿ったそれらの長寸法は互いに非平行であり、ならびに/または第2の方向36a、36b、36cに沿ったそれらの短寸法は互いに非平行および/もしくは不一致である)。
図2Bに概略的に示されるように、例示的な構造30は直線的なアレイ構成で配置され、第1の組の構造30は互いに位置合わせされ(たとえば、第1の方向34に沿ったそれらの長寸法は互いに平行であり、第2の方向36に沿ったそれらの短寸法は互いに平行である、および/または一致する)、第2の組の構造30は互いに、かつ第1の組の構造30と位置合わせされる(たとえば、第1の方向34に沿ったそれらの長寸法は第1の組の構造30の長寸法に平行である、および/または一致する)。特定の他の実施形態では、アレイの構造30は互いに位置合わせされない(たとえば、非平行のおよび/または不一致の長寸法および/または短寸法)。構造30のアレイのさまざまな他の構成も本明細書に記載の特定の実施形態と適合する(たとえば、非直線的である、位置合わせされない、等しくない分離距離、等)。たとえば、第1の組の構造30は第1の周期性を有してもよく、第2の組の構造30は第1の周期性とは異なる(たとえば、表面22の一部に平行な1方向または2方向において異なる)第2の周期性を有してもよい。別の例として、第1の組および第2の組の一方または両方は、(たとえば、表面22の一部に平行な1方向または2方向において)非周期的であってもよい。
【0026】
図3は、本明細書に記載の特定の実施形態に従う例示的なX線システム200の例示的なX線源100を概略的に示す。X線源100は、本明細書に記載のようなX線ターゲット10と、少なくとも1本の電子ビーム52における電子を発生させ、少なくとも1本の電子ビーム52を、スポットサイズを有する電子ビームスポット54においてX線ターゲット10の少なくとも1つの構造30に当たるように方向付けるように構成された電子源50とを含む。電子源50は、少なくとも1つの構造30に当たるように方向付けられる電子を(たとえば、熱電子放出または電界放出を介して)放出するように構成されたディスペンサーカソード(たとえば、タングステンまたは六ホウ化ランタンを含む)を有する電子エミッタを含むことができる。特定の実施形態のディスペンサーカソードは、少なくとも1つの構造30に当たる電子ビームスポット54のアスペクト比に等しいアスペクト比を有する。本明細書に記載の特定の実施形態に従う例示的なディスペンサーカソードは、カリフォルニア州ワトソンビルのSpectra-Mat社が販売している(たとえば、アルミン酸バリウムを含浸させた多孔質タングステンマトリックスを含む熱電子エミッタ)。
【0027】
電子源50は、電子エミッタから放出された電子を受け取り、当該電子を(たとえば0.5keV~160keVの範囲の)予め定められた電子運動エネルギーまで加速し、少なくとも1本の電子ビーム52を形成し(たとえば、成形し、および/または集束させ)、少なくとも1本の電子ビーム52をターゲット10上に方向付けるように構成された電子光学部品(たとえば、偏向電極、グリッド、等)をさらに含む。本明細書に記載の特定の実施形態に従う電子光学部品の例示的な構成は2グリッド構成および3グリッド構成を含むが、これらに限定されない。特定の実施形態では、X線ターゲット10は、電子ビーム52を加速する、および/またはそうでなければ修正するためのアノード(たとえば、電子源50に対して正の電圧に設定される)として用いられるように構成される。
【0028】
特定の実施形態では、少なくとも1本の電子ビーム52の運動エネルギーは、少なくとも1つの第2の材料42の内部の少なくとも1本の電子ビーム52の電子の電子侵入深さが少なくとも1つの第2の材料42の厚みtよりも大きいように選択される。たとえば、少なくとも1本の電子ビーム52の運動エネルギーは、少なくとも1つの第2の材料42の厚みtよりも大きい電子侵入深さのCSDA推定値(たとえば、少なくとも1つの第2の材料42の厚みtの1.5倍~2倍の範囲の電子侵入深さのCSDA推定値)に対応するように選択され得る。
【0029】
特定の実施形態では、電子源50は、少なくとも1本の電子ビーム52の中心が、表面22の一部に垂直なまたは構造30の少なくとも1つの層40に垂直な方向38に対して20度超(たとえば、20度~50度の範囲、30度~60度の範囲、40度~70度の範囲)の非ゼロの角度θ(たとえば衝突角度)で少なくとも1つの構造30に当たるように、X線源10に対して位置決めされる。少なくとも1本の電子ビーム52の中心線56は、方向38および第1の方向34によって規定される平面内に、方向38および第2の方向36によって規定される平面内に、または表面22の一部に実質的に垂直な別の平面内にあり得る。少なくとも1本の電子ビーム52は、矩形型のビームプロファイル、楕円型のビームプロファイル、または別の型のビームプロファイルを有し得る。
【0030】
特定の実施形態では、
図3に概略的に示されるように、少なくとも1本の電子ビーム52は、電子ビームスポット54が、表面22の一部に平行な方向において層40の最小寸法よりも小さい半幅全幅スポットサイズ(たとえば、少なくとも1本の電子ビーム52が少なくとも1本の電子ビーム52の最大強度の少なくとも半分の強度を有する電子ビームスポット54の領域の幅)を少なくとも1つの構造30上に有するように、少なくとも1つの構造30の少なくとも1つの層40の上に集束される。たとえば、少なくとも1つの構造30上の電子ビームスポット54の半幅全幅スポットサイズは、表面22の一部に平行な方向における、100ミクロン以下、75ミクロン以下、50ミクロン以下、30ミクロン以下、または15ミクロン以下の最大幅を有し得る。特定の実施形態では、半幅全幅スポットサイズは、表面22の一部に平行な方向における(たとえば第1の方向34における)5ミクロン~20ミクロンの範囲の第1の寸法と、その方向に垂直であり表面22の一部に平行な別の方向における(たとえば第2の方向36における)20ミクロン~200ミクロンの範囲の第2の寸法とを有する(たとえば、第2の寸法は第1の寸法の4倍~10倍の範囲であり、電子ビームスポット54は4:1~10:1の範囲のアスペクト比を有する)。
【0031】
特定の実施形態では、X線システム200は、本明細書に記載のようなX線源100と、0度~40度の範囲(たとえば、0度~3度の範囲、2度~5度の範囲、4度~6度の範囲、5度~10度の範囲)の取り出し角度Ψ(たとえば、少なくとも1つのX線光学部品60の受光円錐の中心線64の角度であり、当該角度は表面22の一部に平行な方向に対して定義される)を有する伝搬方向に沿って伝搬するX線源100からのX線62を受けるように構成された少なくとも1つのX線光学部品60とを含む。たとえば、少なくとも1つのX線光学部品60は、(たとえば、X線62を実質的に透過させる窓を通って)X線源100から放出されたX線62を受けるように構成され得、取り出し角度Ψは、電子ビーム52の中心線56および方向38によって規定される平面に垂直な平面内にあり得る。特定の実施形態では、取り出し角度Ψは、電子ビームスポット54を取り出し角度Ψで中心線64に沿って見ると電子ビームスポット54が短縮される(たとえば、実質的に対称であるように見える、1:1のアスペクト比を有するように見える)ように選択される。たとえば、X線62が少なくとも1つのX線光学部品60によって集光される焦点は、20ミクロン未満、15ミクロン未満、または10ミクロン未満の半幅全幅焦点サイズ(たとえば、X線62がX線62の最大強度の少なくとも半分の強度を有する焦点の領域の幅)を有し得る。
【0032】
少なくとも1つのX線光学部品60およびX線システム200のさまざまな構成が本明細書に記載の特定の実施形態と適合する。たとえば、少なくとも1つのX線光学部品60は、ポリキャピラリー型またはシングルキャピラリー型光学部品のうちの少なくとも一方を含むことができ、内側反射面は二次関数の1つ以上の部分(たとえば、長円体の一部、および/または互いに対向する放物鏡面の部分)の形状を有する。X線システム200は複数のX線光学部品60を含むことができ、各X線光学部品は、対象となる特定のX線エネルギーの効率のために最適化され、X線ターゲット10からX線62を選択的に受けるように構成され得る(たとえば、各X線光学部品60はX線ターゲット10の対応する構造30と対になっている)。本明細書に記載の特定の実施形態に従って本明細書に開示されるX線源100とともに使用可能なさまざまな例示的なX線光学部品60およびX線システム200が、米国特許第9,570,265号、第9,823,203号、第10,295,486号、および第10,295,485号に開示されており、その各々の全体を本明細書に引用により援用する。
【0033】
図4Aおよび
図4Bは、本明細書に記載の特定の実施形態に従うX線源300の他の例を概略的に示す。X線源300は、表面22を含む熱伝導性基板20と、基板20の表面22の少なくとも一部の上の、または表面22の少なくとも一部に埋め込まれた少なくとも1つの構造30とを含む、X線ターゲット10を含む(たとえば
図1A~
図1Cおよび
図2A~
図2B参照)。X線源300は、電子源50(たとえば
図3参照)と、領域312を含む筐体310とをさらに含み、領域312は真空状態にあり(たとえば1Torr未満のガス圧を有し)、筐体310を取り囲む雰囲気から密閉されている。領域312は少なくとも1つの構造30を含み、電子源50からの少なくとも1本の電子ビーム52は、領域312の一部を通って伝搬して少なくとも1つの構造30のうちの選択された1つに当たるように構成される。
【0034】
特定の実施形態では、少なくとも1つの構造30は互いに別個の複数の構造30(たとえば
図2A~
図2B参照)を含み、ターゲット10および少なくとも1本の電子ビーム52のうちの少なくとも一方は、複数の構造30が密閉領域312に残っている間に複数の構造30のうちの選択された1つに少なくとも1本の電子ビーム52が当たるように、制御可能に動かされるように構成される。
図2A~
図2Bに関して本明細書に記載されるように、構造30のうちの2つ以上の第2の材料42は、構造30のうちの少なくとも2つによって発生するX線が互いに異なるスペクトルを有する(たとえば、すべてのスペクトルが互いに異なる)ことによって、異なるX線スペクトルの中からの選択能力を有利に提供することができるように、互いに異なっていてもよい(たとえば、すべての第2の材料42は互いに異なっていてもよい)。さらに、
図2A~
図2Bに関して本明細書に記載されるように、構造30のうちの2つ以上の第2の材料42は、互いに同一であることによって、冗長性を有利に提供することができる(たとえば、構造30のうちの1つが損傷または劣化した場合、構造30のうちの別の1つを代わりに用いることができる)。
図4Aおよび
図4Bは、第1の方向34a、34b、34cに沿った長寸法が少なくとも1つのX線光学部品60に向かう方向に垂直に向けられている構造30を概略的に示しているが、構造30のうちの1つ以上(たとえばすべて)は、これに代えて、(たとえば、少なくとも1つのX線光学部品60に向かう方向と、少なくとも1本の電子ビーム52の軌道方向とによって規定される平面内で)少なくとも1つのX線光学部品60に向かう方向に対してその他の向きを有することもできる。少なくとも1本の電子ビーム52は、
図4Aに概略的に示されるように、表面22に垂直な、もしくは構造30の少なくとも1つの層40に垂直な方向において(たとえば0度の衝突角度)、または、表面22に垂直な、もしくは構造30の少なくとも1つの層40に垂直な方向に対して非ゼロの衝突角度θ(たとえば、10度~80度の範囲、10度~30度の範囲、20度~40度の範囲、30度~50度の範囲、40度~60度の範囲、50度~70度の範囲、60度~80度の範囲、70度超の範囲)の方向において、構造30に当たることができる。
【0035】
図4Aに概略的に示されるように、電子源50は、少なくとも1本の電子ビーム52を、(たとえば、偏向電極などの電子光学部品を利用して)複数の構造30のうちの選択された1つに当たるように選択された軌道に沿って選択的に方向付ける(たとえば偏向させる)ように構成される。
図4Aに示されるように、少なくとも1本の電子ビーム52が表面22に垂直なまたは構造30の少なくとも1つの層40に垂直な方向において構造30に当たるように、X線ターゲット10を向けることができる。
図4Aでは、少なくとも1本の電子ビーム52の動きは両方向矢印によって概略的に示されており、複数の構造30のうちの選択された1つに当たる少なくとも1本の電子ビーム52に対応する少なくとも1本の電子ビーム52の軌道の各々は、少なくとも1本の電子ビーム52の対応する中心線56a、56b、56c、56dによって概略的に示されている。照射された構造30から放出されて筐体310のX線透過窓314を透過したX線62は、少なくとも1つのX線光学部品60によって集光される。
図4Aでは、複数の構造30のうちの選択された1つに当たる少なくとも1本の電子ビーム52に対応する集光されたX線62の軌道の各々は、X線62の対応する中心線64a、64b、64c、64dによって概略的に示されている。特定の実施形態では、少なくとも1つのX線光学部品60の位置および/または向きを、異なる位置にあるX線62の焦点に対処するように調整することができる。
【0036】
図4Bに概略的に示されるように、X線源300は、複数の構造30のうちの選択された1つに少なくとも1本の電子ビーム52が当たるようにX線ターゲット10を電子源50に対して動かすように構成されたステージ320をさらに含む。
図4Bに示されるように、少なくとも1本の電子ビーム52が表面22に垂直なまたは構造30の少なくとも1つの層40に垂直な方向に対して非ゼロの衝突角度θで構造30に当たるように、X線ターゲット10を向けることができる。
図4Bでは、基板20の表面22に平行な方向に沿ったステージ320によるターゲット10の平行移動が両方向矢印によって概略的に示されている。特定の実施形態のステージ320は、構造30を1方向に、(たとえば互いに垂直な)2方向に、3方向(たとえば互いに垂直な3方向)に平行移動させることができ、および/または、1つ以上の回転軸(たとえば互いに垂直な2つ以上の軸)の周りでX線ターゲット10を回転させることができる。特定の実施形態では、ステージ320によるターゲット10の平行移動の方向のうちの1つ以上は、少なくとも1本の電子ビーム42に垂直な方向にあり得る。特定の実施形態では、ステージ320は、領域312の内部の構成要素(たとえば、アクチュエータ、センサ)と、少なくとも一部が領域312の外部にある他の構成要素(たとえば、コンピュータコントローラ、フィードスルー、モータ)とを含む。ステージ320は、構造30の各々を少なくとも1本の電子ビーム52が当たる位置に配置するのに十分な移動量を有する。
【0037】
照射された構造30から放出されて筐体310のX線透過窓314を透過したX線62は、少なくとも1つのX線光学部品60によって集光される。特定の実施形態では、X線62の源の位置は、異なる構造30の中からの選択時に変化しないままであり、それによって、X線焦点の異なる位置に対処するための少なくとも1つのX線光学部品60の位置および/または向きの調整を有利に回避する。特定の実施形態では、選択的に方向付けられた電子ビーム52と選択的に可動なステージ320との組み合わせを用いることができる。
【0038】
従来の密閉管X線源は、典型的に、約1ミリメートルの焦点サイズおよび低輝度を提供するが、本明細書に記載の特定の実施形態は、それよりもはるかに小さい焦点サイズおよびはるかに高い輝度を有するX線源を提供することができる。本明細書に記載の特定の実施形態は、0.5μm~100μmの範囲(たとえば、2μm、5μm、10μm、20μm、50μm)のスポットサイズ(たとえば半値全幅直径)、5W~1kWの範囲(たとえば、10W、30~80W、100W、200W)の全パワー、および0.2W/μm2~100W/μm2の範囲(たとえば、0.3~0.8W/μm2、2.5W/μm2、8W/μm2、40W/μm2)のパワー密度で、構造30上に集束されて入射する少なくとも1本の電子ビーム52を利用し、X線輝度(たとえば電子ビームパワー密度に比例する)は、0.5×1010光子/mm2/mrad2~5×1012光子/mm2/mrad2の範囲(たとえば、1~3×1010光子/mm2/mrad2、1×1011光子/mm2/mrad2、3×1011光子/mm2/mrad2、2×1012光子/mm2/mrad2)である。
【0039】
さらに、少なくとも1本の電子ビーム52が選択的に当たる複数の構造30を有することによって、本明細書に記載の特定の実施形態は、真空状態にありながら(たとえば、真空を破壊する必要なしに、1つのX線ターゲットを別のX線ターゲットと交換する必要なしに、およびポンプダウンして真空状態に戻る必要なしに)、少なくとも1本の電子ビーム52および/またはX線ターゲット10のコンピュータ制御された動きによって複数のX線スペクトルからX線スペクトルを選択できる柔軟性とともに、そのような小さい焦点サイズおよび高輝度を提供することができる。X線ターゲット10を1ミクロンまたはサブミクロンの精度で動かすことによって、特定の実施形態は、少なくとも1つのX線光学部品60および/またはX線システム200の他の構成要素の再位置合わせを有利に回避する。
【0040】
複数の選択可能なX線スペクトルを提供することによって、本明細書に記載の特定の実施形態を、X線顕微鏡法、X線蛍光(XRF)、X線回折(XRD)、X線断層撮影法、X線散乱(たとえば、SAXS、WAXS)、X線吸収分光法(たとえば、XANES、EXAFS)、およびX線放出分光法を含むがこれらに限定されない、マイクロフォーカスX線スポットを利用するさまざまな種類のX線計測に有利に用いることができる。
【0041】
図5Aは、本明細書に記載の特定の実施形態に従う個別の構造30を有する例示的なX線ターゲット10を概略的に示し、
図5B~
図5Iは、本明細書に記載の特定の実施形態に従う
図5Aの例示的なX線ターゲット10のさまざまな種類からのさまざまな輝度のシミュレーション結果を概略的に示す。各構造30は、銅基板20に少なくとも部分的に埋め込まれたダイヤモンドの第1の材料32の上に金属層40(たとえば、タングステン、銅)を有する。
図5B~
図5Iでは、これらの輝度のシミュレーション結果を、銅基板上の連続的なダイヤモンド層の上に堆積された連続的な金属薄膜(たとえば、タングステン、銅)を有する例示的な従来のX線ターゲットに対応するシミュレーション結果と比較している。
図5B~
図5Iの輝度は、入射電子当たりの単位面積および単位立体角当たりの放出光子の数(たとえば、光子/電子/μm
2/ステラジアン(ph/e/μm
2/sr))と定義される。
【0042】
図5B、
図5C、
図5E、
図5F、
図5G、および
図5Iのシミュレーションでは、各構造30の幅は1μmであり、
図5Aに示されるように、構造30は(たとえば隣接する縁同士の間が)互いに2μm離間している(たとえば、ピッチが3μmであり、デューティサイクルが1:2である)。
図5Dおよび
図5Hのシミュレーションでは、各構造30の幅は1μmであり、構造30は(たとえば隣接する縁同士の間が)互いに1μm離間している(たとえば、ピッチが2μmであり、デューティサイクルが1:1である)。熱モデリング計算によれば、
図5AのX線ターゲット10は、同じ最大温度で固体銅アノード上の電子パワー密度よりも4倍高い電子パワー密度に耐えることができる(たとえば65W対12.5W)。
図5B~
図5Iのシミュレーション結果では、より高い衝突角度でのより大きな割合の散乱電子に対処するために、60度の衝突角度での電子ビーム52のパワーを0度の衝突角度と比べて1.3倍増加させている。
【0043】
図5Bでは、25kVの電子ビームによって発生し、(i)従来のタングステンターゲットから、および(ii)デューティサイクルが1:2の本明細書に記載の特定の実施形態に従うタングステン層40を有する構造30を有する例示的なターゲット10から放出されたX線の輝度を、取り出し角度の関数として、3つの衝突角度(0度、30度、および60度)について比較している。
図5Bの左側には8~10keVのエネルギーを有するX線の輝度が示されており、
図5Bの右側には3~25keVのエネルギーを有するX線の輝度が示されている。
【0044】
図5Cでは、35kVの電子ビームによって発生し、(i)従来のタングステンターゲットから、および(ii)デューティサイクルが1:2の本明細書に記載の特定の実施形態に従うタングステン層40を有する構造30を有する例示的なターゲット10から放出されたX線の輝度を、取り出し角度の関数として、3つの衝突角度(0度、30度、および60度)について比較している。
図5Cの左側には8~10keVのエネルギーを有するX線の輝度が示されており、
図5Cの右側には3~35keVのエネルギーを有するX線の輝度が示されている。
【0045】
図5Dでは、35kVの電子ビームによって発生し、デューティサイクルが1:1の本明細書に記載の特定の実施形態に従うタングステン層40を有する構造30を有する例示的なターゲット10から放出されたX線の輝度を、取り出し角度の関数として、3つの衝突角度(0度、30度、および60度)について比較している。
図5Dの左側には8~10keVのエネルギーを有するX線の輝度が示されており、
図5Dの右側には3~35keVのエネルギーを有するX線の輝度が示されている。
【0046】
図5Eでは、50kVの電子ビームによって発生し、(i)従来のタングステンターゲットから、および(ii)デューティサイクルが1:2の本明細書に記載の特定の実施形態に従うタングステン層40を有する構造30を有する例示的なターゲット10から放出されたX線の輝度を、取り出し角度の関数として、3つの衝突角度(0度、30度、および60度)について比較している。
図5Eの左側には8~10keVのエネルギーを有するX線の輝度が示されており、
図5Eの右側には3~50keVのエネルギーを有するX線の輝度が示されている。
【0047】
図5Fでは、25kVの電子ビームによって発生し、(i)従来の銅ターゲットから、および(ii)デューティサイクルが1:2の本明細書に記載の特定の実施形態に従う銅層40を有する構造30を有する例示的なターゲット10から放出されたX線の輝度を、取り出し角度の関数として、3つの衝突角度(0度、30度、および60度)について比較している。
図5Fの左側には7~9keVのエネルギーを有するX線の輝度が示されており、
図5Fの右側には3~25keVのエネルギーを有するX線の輝度が示されている。
【0048】
図5Gでは、35kVの電子ビームによって発生し、(i)従来の銅ターゲットから、および(ii)デューティサイクルが1:2の本明細書に記載の特定の実施形態に従う銅層40を有する構造30を有する例示的なターゲット10から放出されたX線の輝度を、取り出し角度の関数として、3つの衝突角度(0度、30度、および60度)について比較している。
図5Gの左側には7~9keVのエネルギーを有するX線の輝度が示されており、
図5Gの右側には3~35keVのエネルギーを有するX線の輝度が示されている。
【0049】
図5Hでは、35kVの電子ビームによって発生し、デューティサイクルが1:1の本明細書に記載の特定の実施形態に従う銅層40を有する構造30を有する例示的なターゲット10から放出されたX線の輝度を、取り出し角度の関数として、3つの衝突角度(0度、30度、および60度)について比較している。
図5Hの左側には7~9keVのエネルギーを有するX線の輝度が示されており、
図5Hの右側には3~35keVのエネルギーを有するX線の輝度が示されている。
【0050】
図5Iでは、50kVの電子ビームによって発生し、(i)従来の銅ターゲットから、および(ii)デューティサイクルが1:2の本明細書に記載の特定の実施形態に従う銅層40を有する構造30を有する例示的なターゲット10から放出されたX線の輝度を、取り出し角度の関数として、3つの衝突角度(0度、30度、および60度)について比較している。
図5Iの左側には7~9keVのエネルギーを有するX線の輝度が示されており、
図5Iの右側には3~50keVのエネルギーを有するX線の輝度が示されている。
【0051】
これらのシミュレーション結果によって示されるように、本明細書に記載の特定の実施形態に従う例示的なターゲット10は従来のターゲットよりも高い輝度を示す。衝突角度が60度で取り出し角度が5度のタングステン層について、かつ、3つの電子ビームエネルギー(25kV、35kV、50kV)について、表1Aは8~10keVのエネルギーを有するX線の輝度(光子/電子/μm2/ステラジアン)を示し、表1Bは3keV超のエネルギーを有するX線の輝度(光子/電子/μm2/ステラジアン)を示す。これらの結果は、例示的なターゲット10が従来のターゲットの4倍の放熱を示すと仮定し、0度と比べて60度の入射角でのより高い電子散乱に対処するために1.3倍の補正を行なってなされた。
【0052】
【0053】
【0054】
衝突角度が60度で取り出し角度が5度の銅層について、かつ、3つの電子ビームエネルギー(25kV、35kV、50kV)について、表2Aは7~9keVのエネルギーを有するX線の輝度(光子/電子/μm2/ステラジアン)を示し、表2Bは3keV超のエネルギーを有するX線の輝度(光子/電子/μm2/ステラジアン)を示す。これらの結果は、例示的なターゲット10が従来のターゲットの4倍の放熱を示すと仮定し、0度と比べて60度の入射角でのより高い電子散乱に対処するために1.3倍の補正を行なってなされた。
【0055】
【0056】
【0057】
さまざまな構成を上記に説明した。これらの具体的な構成を参照して本発明を説明したが、その説明は本発明を例示するものとして意図しており、限定するものとして意図していない。当業者は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなくさまざまな変更および応用を想起し得る。したがって、たとえば、本明細書に開示される任意の方法またはプロセスにおいて、当該方法/プロセスを構成する行為または動作は任意の適切な順序で実行することができ、いずれかの特定の開示された順序に必ずしも限定されない。上記に述べたさまざまな実施形態および実施例からの特徴または要素を互いに組み合わせて、本明細書に開示される実施形態と適合する代替的な構成を生成してもよい。実施形態のさまざまな局面および利点を適宜説明した。そのような局面または利点のすべてがいずれかの特定の実施形態に従って必ずしも達成され得るわけではないことが理解されねばならない。したがって、たとえば、さまざまな実施形態は、本明細書で教示または示唆され得る他の局面または利点を必ずしも達成しなくとも、本明細書で教示される1つの利点または一連の利点を達成または最適化するように実行され得ることが認識されねばならない。