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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】自動車安全装置のための開始剤
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/264 20060101AFI20220804BHJP
   F42B 3/12 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
B60R21/264
F42B3/12
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021549488
(86)(22)【出願日】2020-02-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-05
(86)【国際出願番号】 US2020017775
(87)【国際公開番号】W WO2020176247
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-08-23
(31)【優先権主張番号】16/287,844
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598122843
【氏名又は名称】オートリブ エー・エス・ピー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】ウェイメント、メイソン チャペル
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/166720(WO,A1)
【文献】特開昭51-041668(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第0618424(EP,A1)
【文献】国際公開第2007/054530(WO,A1)
【文献】英国特許出願公告第404335(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/264
F42B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車安全装置のための開始剤アセンブリ(300)であって、
第1の端部(306)及び第2の端部(308)を有する管状ハウジング(302)と、
前記管状ハウジング(302)の前記第2の端部(308)に形成された十字形部(310)と、
前記第2の端部(308)において前記管状ハウジング(302)内に配置された火薬装填物(320)であって、開放端(334)と先端(332)とを含む空隙(330)を画定するように形成されており、前記空隙(330)は、前記開放端(334)から前記先端(332)まで延びる側面(336)であって、前記管状ハウジング(302)の前記第2の端部(308)に向かって、かつ前記管状ハウジング(302)の長手方向軸線(A1)に向かって角度をなす側面(336)を更に含み、前記空隙(330)の前記側面は、前記空隙(330)の、前記側面とは異なる幾何学的形状を含む先端部分(380)へと移行する、火薬装填物(320)と、を含む、開始剤アセンブリ(300)。
【請求項2】
前記第1の端部(306)において前記管状ハウジング(302)内に配置され、かつ前記火薬装填物(320)から離隔された一次火薬装填物(319)を更に含む、請求項1に記載の開始剤アセンブリ(300)。
【請求項3】
前記空隙(330)の前記先端(332)は、前記十字形部(310)の中心(316)と位置合わせされている、請求項1又は2に記載の開始剤アセンブリ(300)。
【請求項4】
前記空隙(330)の前記先端部分(380)は、円錐形状を含み、前記円錐形状の頂点は、前記空隙(330)の前記先端(332)であり、かつ前記十字形部(310)の中心(316)と位置合わせされている、請求項1~3のいずれか一項に記載の開始剤アセンブリ(300)。
【請求項5】
前記空隙(330)の前記先端部分(380)は、ドーム形状を含み、前記ドームの頂点は、前記空隙(330)の前記先端(332)であり、かつ前記十字形部(310)の中心(316)と位置合わせされている、請求項1~4のいずれか一項に記載の開始剤アセンブリ(300)。
【請求項6】
前記火薬装填物(320)は、前記空隙(330)のうちの、それぞれが別個の幾何学的形状を含む少なくとも2つの部分を画定している、請求項1~5のいずれか一項に記載の開始剤アセンブリ(300)。
【請求項7】
前記空隙(330)の前記少なくとも2つの部分は、前記火薬装填物(320)の第1の端部で始まる開口部(340)であって、前記管状ハウジング(302)の前記第2の端部(308)に向かって、かつ前記管状ハウジング(302)の前記長手方向軸線(A1)に向かって角度をなしている側面を含む開口部分(340)、を含む、請求項6に記載の開始剤アセンブリ(300)。
【請求項8】
前記空隙(330)の前記少なくとも2つの部分は、半径方向内側に延び、かつ前記管状ハウジング(302)の前記長手方向軸線(A1)に対して直交している平坦部分(350)を含む、請求項6又は7に記載の開始剤アセンブリ(300)。
【請求項9】
前記空隙(330)の前記少なくとも2つの部分は、前記管状ハウジング(302)の前記長手方向軸線(A1)に向かって、かつ前記管状ハウジング(302)の前記第2の端部(308)に向かって内側に弧を描く側面を含む湾曲部分(360)を含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の開始剤アセンブリ(300)。
【請求項10】
前記空隙(330)の前記少なくとも2つの部分は、錐台形状を画定する主要部分(370)を含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の開始剤アセンブリ(300)。
【請求項11】
前記空隙(330)の頂点から前記十字形部(310)までの距離は、前記火薬装填物(320)の全長の5パーセント未満である、請求項1~10のいずれか一項に記載の開始剤アセンブリ(300)。
【請求項12】
前記空隙(330)の頂点から前記十字形部(310)までの距離は、5mm未満である、請求項1~11のいずれか一項に記載の開始剤アセンブリ(300)。
【請求項13】
前記火薬装填物(320)は、気泡を含んでいない、請求項1~12のいずれか一項に記載の開始剤アセンブリ(300)。
【請求項14】
前記火薬装填物(320)は、水素化チタン・過塩素酸カリウムである、請求項1~13のいずれか一項に記載の開始剤アセンブリ(300)。
【請求項15】
前記火薬装填物(320)の点火は、前記十字形部(310)を外向きに開放するために、前記空隙(330)の前記先端(332)を通って前記十字形部(310)の中心(316)の方へ初期圧力波を向けることによって、前記十字形部(310)を一貫して開放するように構成されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の開始剤アセンブリ(300)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2019年2月27日付けで出願された「INITIATOR FOR AN AUTOMOTIVE SAFETY DEVICE」と題する米国特許出願第16/287,844号の優先権を主張するものであり、この米国特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、自動車保護システムの分野に関する。より具体的には、本開示は、衝突事象に応答して展開するように構成された自動車安全システムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0003】
本実施形態は、添付図面と併せて、以下の説明及び添付の特許請求の範囲から、より完全に明らかとなるであろう。添付図面は、典型的な実施形態のみを図示しており、したがって、本開示の範囲を限定するものと見なされるべきではないことを理解した上で、実施形態は、添付図面を参照して、具体的にかつ詳細に、記載され説明される。
【0004】
図1図1は、一実施形態による膨張式エアバッグモジュールを示す自動車内部の側面図である。
【0005】
図2図2は、一実施形態によるインフレータの断面図である。
【0006】
図3A図3Aは、一実施形態による開始剤アセンブリの等角図である。
【0007】
図3B図3Bは、誘電体層を有する図3Aの開始剤アセンブリの等角図である。
【0008】
図4図4は、一実施形態による開始剤アセンブリの断面図である。
【0009】
図5図5は、別の実施形態による開始剤アセンブリの断面図である。
【0010】
図6図6は、開始剤アセンブリが発火し、開始剤アセンブリの十字形部を開放した後の、開始剤アセンブリの等角図である。
【0011】
図7図7は、開示する実施形態の特定の特徴を欠いた開始剤アセンブリの、発火後の等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書の図面において全体的に記載され図示されている実施形態の構成要素が、多種多様な異なる構成で配置及び設計され得ることは、容易に理解されよう。よって、図面に示すような様々な実施形態に関する以下のより詳細な説明は、特許請求されるような本開示の範囲を限定することを意図したものではなく、単に様々な実施形態を表すものである。実施形態の様々な態様が図面に示されているが、図面は、特段に示されない限り、必ずしも縮尺どおりに描かれているわけではない。
【0013】
車両衝突事象の際には、多数のセンサは、エンジン制御ユニット(「ECU」)及び/又はエアバッグ制御ユニット(「ACU」)にデータを提供し、ECU/ACUは、エアバッグ(又は、複数のエアバッグ)などの自動車安全装置の展開のためのしきい値条件が満たされたかどうかを判定する。ECU/ACUは、エアバッグのインフレータの開始剤などの、自動車安全装置の開始剤に対して、電気パルスを送信させてもよい。
【0014】
開始剤は、発熱又は燃焼する火薬リレー装填物を含む。エアバッグアセンブリの場合、開始剤は、エアバッグアセンブリのインフレータ内の化合物を点火してもよい。化合物は、急速に燃焼し、エアバッグ自体を充填するように向けられる大量の不活性ガスを生成する。他のエアバッグアセンブリの実施形態では、開始剤は、圧縮空気チャンバ内の圧力を増加させる大量のガスを生成してもよく、これにより、チャンバを破裂させて、より大量の膨張ガスを放出して、エアバッグを充填する。
【0015】
取付時には、エアバッグは、典型的には、パッケージ化された状態で(例えば、巻かれた状態で、折り畳まれた状態で、及び/又は、他のやり方で圧縮された状態で)、すなわち、コンパクトな構成で、ハウジングの内部に配置され、カバーの背後にパッケージ化された状態で保持され得る。衝突事象時には、電流が開始剤に送られ、これがインフレータをトリガーし、インフレータは、膨張ガスによってエアバッグを急速に充填する。エアバッグは、パッケージ化された状態(例えば、コンパクトな構成)から、展開状態へと、すなわち膨張した構成へと、急速に移行することができる。例えば、膨張するエアバッグは、エアバッグカバーを開放することにより(例えば、破裂シームを引き裂くことにより、あるいは、ドア状構造体を開放することにより)、ハウジングから飛び出すことができる。電流は、任意の適切な装置又はシステムによって開始剤に送られてもよく、また、1つ以上の車両センサに応答するもの及び/又はそのような車両センサによって影響されるものであってもよい。
【0016】
本開示は、例えば、フロントエアバッグ、膨張式カーテン、助手席用エアバッグ、サイドエアバッグ、などを含めた、様々なタイプのエアバッグインフレータ及びエアバッグアセンブリとの動作における開始剤アセンブリの実施形態について説明する。開示する開始剤アセンブリの実施形態は、また、膨張式エアバッグモジュールに加えて、膝ボルスタ、シートベルトプレテンショナ、テザーカッタ、又は、火薬技術を使用し得る任意の他の安全装置、を含むがこれらに限定されない、任意の様々な自動車安全装置と併せて利用されてもよい。
【0017】
図1は、一実施形態による膨張式エアバッグモジュールを含む自動車の内部の側面図である。本開示の様々な態様は、膨張式エアバッグモジュールと共に使用するように適合されたインフレータの開始剤を含む。このような膨張式エアバッグモジュールは、自動車内の様々な位置において採用されてもよい。例えば、図1は、少なくとも1つの例による、膨張式エアバッグモジュール100を示す自動車10の内部の側面図を示している。膨張式エアバッグモジュール100は、インフレータ102と、展開された膨張式カーテンとして図示した膨張式エアバッグクッション104と、を含む。膨張式エアバッグモジュール100及びエアバッグクッション104は、自動車10内のシート20に座っている乗員に対する保護を提供するように位置決めされて構成されている。いくつかの実施形態では、エアバッグクッション104は、エアバッグクッション104を自動車のルーフ12に対して固定するためのブラケット80を含んでもよい。自動車10が減速される事故では、乗員は、インストルメントパネル30に向かって前向きに移動する傾向があり得るが、シートベルト及び/又はエアバッグによって拘束されてもよい。側面衝撃(例えば、側面衝突、ロールオーバー)の場合、人は、乗員の横にあるドア40、50のウィンドウに、又は車両のBピラーに、又はその両方にぶつかる可能性がある。
【0018】
膨張式クッションとも称され得るものであって図1においては動作状態(例えば、展開された状態)で図示されているエアバッグクッション104は、初期的には、自動車10のドア40、50の上方に位置するドアフレーム内に設けられた凹部内に、保持されている。凹部は、凹部の2つの端部が凹部の主要部と位置合わせされることがないように、単にドアフレームの直線部分を超えて延びてもよい。インフレータ102は、エアバッグクッション104の膨張のために、エアバッグクッション104に対して膨張流体を提供するように適合されている。
【0019】
インフレータ102は、側面衝撃状況を感知して、インフレータ102を適切な瞬間に起動するセンサ(図示せず)に関連付けられてもよい。インフレータ102は、ホースによって、エアバッグクッション104の一部を形成するダクトに接続することができる。
【0020】
側面衝撃などの事故が発生した時には、インフレータ102は、膨張流体を生成し、形成し、又は他のやり方で供給し、この膨張流体が、ホース内へと送り込まれ、次いでダクト内へと送り込まれ、これにより、エアバッグクッション104を膨張させる。エアバッグクッション104は、よって、ドアフレーム又はルーフ12内の凹部内の初期的格納位置から、図1に示す動作状態へと、移動する。つまり、エアバッグクッション104は、ドアフレームの頂部又はルーフ12から下向きに延び、これにより、人の少なくとも一部と、自動車10のある部分と、の間(例えば、人の頭部と、隣接するウィンドウ又はBピラーと、の間)に位置する全体的に平坦な構造を形成する。
【0021】
図1を参照して説明した例は、膨張式カーテンとして使用するように適合されたエアバッグクッション104を含んでいるが、本開示の開始剤に関する他の実施形態は、他の側面衝撃(例えば、頭胸郭、複合)エアバッグクッション、膝エアバッグクッション、及び、自動車で使用するための他のエアバッグクッション、を含む他のタイプのエアバッグクッションに採用されてもよいが、これらに限定されない。
【0022】
更に、開始剤アセンブリに関して開示する実施形態は、膨張式エアバッグモジュールに加えて、フロントエアバッグ、膨張式カーテン、サイドエアバッグ、助手席用エアバッグ、膝エアバッグ、膝ボルスタ、シートベルトプレテンションナ、テザーカッタ、又は、火薬技術を使用した任意の他の安全装置、を含む任意の様々な自動車安全装置と併せて利用されてもよいが、これらに限定されない。
【0023】
図2は、一実施形態によるインフレータ200の側面図を示している。インフレータ200は、一般に、その内部にある量の流体を封入するためのチャンバ204を画定する細長い中空管202を含む。流体は、加圧膨張性流体などの貯蔵された流体を含んでもよい。しかしながら、インフレータ200の他の例は、展開時に膨張流体の供給に変換されるように適合されたある量のガス発生剤を封入するように適合されてもよく、また、一般に「ハイブリッド」と称される、貯蔵された流体とガス発生剤との組み合せを封入するように適合されてもよい。インフレータ200が、ある量のガス発生剤を単独で、又は貯蔵された流体と組み合わせて封入しているいくつかの実施形態では、ガス発生剤は、後述するように、圧力波が少なくとも実質的に妨害されずに通過し得るように適合された開口を提供するような方法で、チャンバ204内に配置されてもよい。
【0024】
中空管202は、鋼やマグネシウム合金などの金属又は金属合金から構成されてもよく、スタンピング、機械加工、鋳造、押出、などの任意の適切な方法によって形成されてもよい。中空管202は、互いに反対側の第1の長手方向端部206及び第2の長手方向端部208を含む。
【0025】
開始剤アセンブリ300は、インフレータ200内に配置されてもよい。開始剤アセンブリ300は、第1の長手方向端部206に位置決めされてもよい。いくつかの実施形態では、開始剤アセンブリ300は、例えば慣性溶接部によって、第1の長手方向端部206に対して結合されてもよい。他の実施形態では、開始剤アセンブリ300の少なくとも一部は、インフレータ200の中空管202と一体的に形成されてもよい。開始剤アセンブリ300は、衝突の感知時にセンサ(図示せず)によって生成され得る電気信号などの、電気信号を受信した際には、インフレータ200内の貯蔵された流体を、膨張させる(例えば、点火する)ように及び/又は放出させるように、適合されている。
【0026】
開始剤アセンブリ300は、ベースドーム又はハウジング216によって、チャンバ204から分離されていてもよい。ベースドーム216は、開始剤アセンブリ300とチャンバ204との間に位置決めされ得る任意の破裂可能装置又は他の一時的閉鎖装置を含んでもよい。ベースドーム216は、開始剤アセンブリ300が発火した後にベースドーム216が容易に破裂するように、1つ以上の切り込み線付きシームを含んでもよい。
【0027】
中空管202の第2の長手方向端部208は、破裂ディスク218によって包囲されていてもよい。破裂ディスク218は、中空管202の第2の長手方向端部208の出口上に位置決めされ得る任意の破裂可能デバイス又は他の一時的閉鎖デバイスを含んでもよい。いくつかの実例では、破裂ディスク218は、破裂ディスク218が容易に破裂するように、1つ以上の切り込み線付きシームを含んでもよい。破裂ディスク218は、一般に、開放するために破裂可能であってもよく、圧縮ガスをチャンバ204から出すことができてもよく、例えば図1におけるエアバッグクッション104などの膨張式エアバッグクッションを膨張させることができてもよい。
【0028】
インフレータ200は、中空管202の第2の長手方向端部208に配置された拡散アセンブリ220を、更に含んでもよい。拡散アセンブリ220は、第2の長手方向端部208と一体的に形成されてもよく、又は、第2の長手方向端部208に適切に結合されてもよい。例えば、拡散アセンブリ220は、慣性溶接部によって第2の長手方向端部208に対して結合されてもよく、又は、拡散アセンブリ220は、中空管202と一体的に形成されてもよい。拡散材料222は、ガスがインフレータ200からエアバッグクッション104へと排出される際にガスを拡散させるために、拡散アセンブリ220内に配置されてもよい。
【0029】
図3A及び図3Bは、一実施形態による開始剤アセンブリ300の等角図を示している。開始剤アセンブリ300は、中空管状ハウジング302(例えば、開始剤カップ)を含む。管状ハウジング302は、互いに反対側の第1の長手方向端部306及び第2の長手方向端部308をそれぞれ含む。第1の長手方向端部306は、また、開始剤アセンブリ300の近位端と称されてもよく、第2の長手方向端部308は、開始剤アセンブリ300の遠位端と称されてもよい。いくつかの実施形態では、電気絶縁層318が、図3Bに示すように、管状ハウジング302のある部分(例えば、大部分)と、第2の長手方向端部308と、を包囲している。電気絶縁層318は、静電気の蓄積によって生じ得るように偶発的な電荷などによって開始剤アセンブリ300が偶発的に展開されることを防止するのに役立つように、高誘電性プラスチック層であってもよい。いくつかの実施形態では、管状ハウジング302は、図3Aに示すように、電気絶縁層318を含まない。
【0030】
図3A及び図3Bに示すように、十字形部310が、管状ハウジング302の第2の長手方向端部308に形成されてもよい。十字形部310は、図3Bにおいては破線で図示されているが、これは、十字形部310が、電気絶縁層318の下に配置されているからである。十字形部310は、パターンを形成する複数の脆弱ライン312を含んでもよい。脆弱ライン312は、パターンに基づく所定の方法で開放するように設計されている。図示の実施形態では、十字形部310は、一対の十字を形成しつつ第2の長手方向端部308にわたって半径方向に延びる4本の脆弱ライン312を含む。十字の対は、図4及び図5に見られるように、管状ハウジング302の長手方向軸線A1と位置合わせされた脆弱中心316を有する複数の部分314を形成する。図3A及び図3Bは、単一のパターンを図示しているだけに過ぎないが、十字形部310は、多数の異なるパターンを有してもよく、それらのすべては、本開示の範囲内である。
【0031】
図4は、開始剤アセンブリ300の一実施形態の断面図を示している。開始剤アセンブリ300は、チャンバ304を含む。開始剤アセンブリ300は、チャンバ304内に配置された一次火薬装填物319と、二次火薬装填物320と、を含んでもよい。いくつかの実施形態では、二次火薬装填物320は、高密度であり、かつ/又は圧縮されていてもよく、他のやり方で内部空隙、ポケット、又は空洞、を実質的に含まないものであってもよい。一次火薬装填物319及び二次火薬装填物320は、チャンバ304の第1の端部306に配置された一次火薬装填物319と、チャンバ204の第2の端部308に配置された二次火薬装填物320とによって、互いに長手方向に離隔されてもよい。開始剤アセンブリ300は、衝突事象に起因して電気信号が受信された時に、一次的火薬装填物319を点火するように構成された導電体307(例えば、ピン)を、更に含んでもよい。電気信号は、一次火薬装填物319を点火するように、電気導体307の遠位端を横切るブリッジワイヤを通過してもよい。その後、一次火薬装填物319は、二次火薬装填物320を点火してもよく、これにより、十字形部310を外向きに開放するのに充分な圧力波が生成される。二次火薬装填物320の点火は、十字形部310を外向きに開放するために、空隙330の先端332(二次火薬装填物320内に形成されている)を通って十字形部310の脆弱中心316の方へ初期圧力波を向けることによって、十字形部310を開放するように構成されている。いくつかの実施形態では、開始剤アセンブリ300は、組み合わされた一次火薬装填物319と二次火薬装填物320を含んでもよい。
【0032】
一次火薬装填物319及び二次火薬装填物320は、1つ以上の様々な異なる火薬材料であってもよい。例えば、一実施形態では、一次火薬装填物319は、ジルコニウム・過塩素酸カリウム(ZPP)であってもよく、二次火薬装填物320は、水素化チタン・過塩素酸カリウム(THPP)、ホウ素・硝酸カリウム(BKNO)、酸化第二銅(CuO)、あるいは、任意の他の適切な組成物、であってもよい。
【0033】
二次火薬装填物320は、二次火薬装填物320内に空隙330(例えば、空洞、空間、孔、クレータ)を画定するように、形成又は成形されてもよい。二次火薬装填物320に形成された空隙330は、管状ハウジング302の長手方向軸線A1と位置合わせされた先端332と、開放端334と、を含む。空隙330の形状は、開始剤アセンブリ300に関するいくつかの利点を達成する。空隙330の1つの利点は、空隙330が、二次火薬装填物320が点火された時に、開始剤アセンブリの十字形部310の開放の変動を低減するのに役立つことである。具体的には、火薬装填物310及び320が点火された後に十字形部310を開放する時間の長さの変動が低減される。変動は、二次火薬装填物320の燃焼が、十字形部310の脆弱中心316を想定通りに破壊する一貫した初期圧力波を生成又は作製するために、低減される。本開示の実施形態によれば、この圧力波の生成のこの予測可能性は、各開始剤によって一貫して再現することができる。空隙330は、初期圧力波を先端332の方へ向けるように構成することができる。空隙330の先端332が、二次火薬装填物320内の任意の他の場所よりも先に、先端332のところに配置された二次火薬装填物320を通して、管状ハウジング302へと燃焼する傾向があることのために、そしてこれにより、管状ハウジング内で生成された圧力が、十字形部310の脆弱中心316に力を及ぼすことを可能とすることのために、先端332と十字形部310の脆弱中心316との位置合わせは、一貫した初期圧力波を生成するのに役立つ。二次火薬装填物320内の空隙330は、また、燃焼表面積の増大をもたらす。
【0034】
空隙330は、複数の異なる幾何学的形状を含んでもよい。本明細書において説明する様々な異なる幾何学的形状は、多くの異なる組み合せで組み合わされてもよく、それらもなお本開示の範囲内である。図4に図示した実施形態では、空隙300は、5個の異なる幾何学的形状を含む。しかしながら、いくつかの実施形態では、空隙330は、2つの別個の幾何学的形状のみを含んでもよい。いくつかの実施形態では、空隙330は、3つの別個の幾何学的形状のみを含んでもよい。
【0035】
空隙330は、開放端334から先端332にまで延びる側面336を含む。側面336は、いくつかの実施形態では、空隙330を画定する(かつ、例えば境界を画定する)二次火薬装填物320の壁であってもよい。いくつかの実施形態では、側面は、単一の壁(例えば、円筒形状を有する単一の壁であってもよく、その結果、空隙330は、円形の断面(例えば、長手方向軸線A1に対して垂直な横断面内において円形の断面)を有してもよい。断面形状の直径は、開放端334から先端332まで、空隙330の長さにわたって減少してもよい。いくつかの実施形態では、空隙330は、様々なタイプの断面形状を含んでもよく、例えば、円形、三角形、正方形、矩形、などの断面形状を含んでもよい。いくつかの実施形態では、空隙330の断面形状は、開放端334から先端332へと移行してもよい。別個の幾何学的形状に関して後述するように、各幾何学的形状は、それ自体の別個の断面形状を含んでもよい。
【0036】
空隙330の側面336は、管状ハウジング302の第2の端部308に向かって、かつ、管状ハウジング302の長手方向軸線に向かって、角度をなしている。空隙330の側面336は、側面336とは異なる幾何学的形状を含む先端部分380へと移行する。
【0037】
図4に図示した実施形態では、空隙330は、火薬装填物320の第1の端部で始まる開口部分340であって、管状ハウジング302の第2の端部308に向かって、かつ管状ハウジング302の長手方向軸線A1に向かって一定角度で角度をなしている側面を含む開口部分340、を含む。開口部分340は、円形の断面を有してもよい。開口部分340は、平坦部分350へと移行するように構成されている。
【0038】
平坦部分350は、半径方向内側に延び、管状ハウジング302の長手方向軸線A1に対して直交している。平坦部分350は、円形の断面を有してもよい。平坦部分350は、湾曲部分360へと移行するように構成されている。
【0039】
湾曲部分360は、管状ハウジング302の長手方向軸線A1に向かって、かつ管状ハウジング302の第2の端部308に向かって内側に延びる弧又は曲線を含む側面を含む。いくつかの実施形態では、湾曲部分360の弧は、一定の半径又は面取りを有してもよい。いくつかの実施形態では、湾曲部分360をなす弧は、指数曲線を有してもよい。湾曲部分360は、円形の断面(例えば、長手方向軸線A1に対して垂直な横断面)を有してもよい。湾曲部分360は、主要部分370へと移行するように構成されている。
【0040】
空隙330の主要部分370は、円形の断面形状(例えば、長手方向軸線A1に対して垂直な横断面)を有する錐台形状を含んでもよい。主要部分370は、先端部分380へと移行するように構成されている。
【0041】
図4の実施形態では、先端部分380は、円形断面を有する円錐形状を含む。円錐形状の頂点(先端332と一致する)は、十字形部310の脆弱中心316に対して位置合わせされている。他の実施形態では、先端部分380は、円形断面を有するドーム形状を含んでもよい。ドームの頂点は、空隙の先端332と一致し、かつ十字形部310の脆弱中心316に対して位置合わせされている。
【0042】
空隙330の先端332と、十字形部310の脆弱中心316と、の間の距離D1は、所定の距離であってもよい。空隙330の先端332と、十字形部310の脆弱中心316と、の間の距離D1は、先端332が、二次火薬装填物320の任意の他の領域よりも先に、先端332におけるすべての二次的火薬装填物320を通して燃焼することにより、二次火薬装填物320によって生成される圧力波を方向付けるのに役立つように構成されてもよい。図4に図示した実施形態では、二次火薬装填物320の一部分(例えば、距離D1に沿った部分)は、先端332と十字形部310の脆弱中心316との間に配置される。
【0043】
空隙330の先端332と十字形部310の脆弱中心316との間の距離D1は、0mm~5mmである。いくつかの実施形態では、空隙330の先端332と十字形部310の脆弱中心316との間の距離は、4mm未満、3mm未満、2mm未満、及び1mm未満、のいずれかである。いくつかの実施形態では、空隙330の先端332と十字形部310の脆弱中心316との間の距離は、長手方向軸線A1に対して平行な方向における二次火薬装填物320の全長の5%未満であってもよい。
【0044】
上述したように、空隙330は、図4に示す実施形態に限定されるものではない。空隙330は、複数の異なる幾何学的形状を含んでもよく、及び/又は、それぞれが異なる幾何学的形状へと移行する異なる幾何学的形状を含む複数の部分を含んでもよい。
【0045】
図5は、特定の点において上述した開始剤アセンブリ300に類似する開始剤アセンブリ300’の実施形態を示している。したがって、同様の特徴点は、アポストロフィ付きの同様の参照符号によって指定されている。例えば、図5に示す実施形態は、いくつかの点において図4の二次火薬装填物320に類似し得る二次火薬装填物320’を含む。よって、同様に識別された特徴点に関して上述した関連する開示は、以下においては繰り返されなくてもよい。その上、図4に示す開始剤アセンブリ300及び関連構成要素に関する特定の特徴点は、図面中の参照符号によって図示されたり識別されたりしなくてもよく、また、以下の説明において具体的に説明されなくてもよい。しかしながら、それらの特徴点は、他の実施形態において図示した特徴点及び/又はそのような実施形態に関して説明した特徴点と、明らかに同じであってもよく、又は実質的に同じであってもよい。したがって、そのような特徴点に関連する説明は、図5に示す開始剤アセンブリ300’及び関連構成要素に関する特徴点に対して、同等に適用される。図4に示す開始剤アセンブリ300及び関連構成要素に関して説明した特徴点及びその変形についての任意の適切な組み合せは、図5の開始剤アセンブリ300’及び関連構成要素に対して、採用することができ、逆もまた同様である。
【0046】
図5は、開始剤アセンブリ300’の一実施形態の断面図である。空隙330’の先端332’は、十字形部310’の中心316’の隣に(すぐ隣接して)、かつ、長手方向軸線A1’に沿って、配置されている。
【0047】
上述したように、二次火薬装填物320内に配置された空隙330は、開始剤アセンブリ300の点火の変動、及び、開始剤アセンブリの点火によって生成される初期圧力波の変動、を低減するのに役立つ。空隙330は、二次火薬装填物320が点火されて開始剤アセンブリ300の十字形部310を開放する際に、二次火薬装填物320によって生成される圧力波を方向付けるのに役立つ。
【0048】
図6は、十字形部310が開放するように設計された通りに十字形部310の領域314が外向きに開放された開いた構成で、開始剤アセンブリ300を示している。二次火薬装填物の点火によって生成された一貫した圧力波は、十字形部310の脆弱部分又は脆弱ラインを破壊し、十字形部310の領域314は、外向きに破裂して開放する。領域314は、完全に無傷のままであってもよく、開始剤アセンブリ300のハウジング302又はカップに対して接続されたままであってもよい。電気絶縁層318は、十字形部310の開放に対してほとんど抵抗を示さないものであってもよく、十字形部が外向きに開放する時には、領域314と同様の方法で開放されてもよく、又は、十字形部310の開放によって開始剤アセンブリ300から完全に若しくは部分的に係合解除されてもよい。
【0049】
図7は、十字形部310が設計通りには開放しなかった場合の、開始剤アセンブリ300を示している。例えば、二次火薬装填物320に配置される空隙330を含んでいない開始剤では、二次火薬装填物320の点火によって生成された圧力波は、十字形部310の開放を起こすのではなく、図7に示すように開始剤アセンブリ300の第2の端部308を完全に吹き飛ばす(又は、分離させる)傾向がある。開始剤アセンブリ300の第2の端部308が吹き飛ばされる場合には、十字形部310の開放の再現性が損なわれ、これは、インフレータ200の点火からの一貫しない圧力波特性を引き起こし、これは、インフレータ200の一貫しないタイミング及び性能に影響を及ぼし得、その結果、エアバッグクッション104の膨張性能に影響を及ぼし得る。十字形部310の一貫した開放特性は、インフレータ200のベースドーム216における同様の一貫した開放を提供してもよく、これはその後、上述したように、破裂ディスク218を一貫して破裂させるのに充分な特性を有する圧力波を提供する。
【0050】
本明細書全体を通して、「結合された」という語句は、機械的な、電気的な、磁気的な、電磁的な、流体的な、及び熱的な相互作用を含めて、2つ以上の物体間の、任意の形態での相互作用を指す。2つの構成要素は、互いに直接接していなくても、互いに結合され得る。
【0051】
「a」及び「an」という用語は、単数として記載し得るが、単数に限定されるものではない。例えば、本開示は、「1つの縫い目ライン」を有するタブを記載し得るが、本開示は、また、タブが、2つ以上の縫い目ラインを有し得ることも想定している。
【0052】
特に明記しない限り、すべての範囲は、端点と、端点の間のすべての数値と、の双方を含む。
【0053】
本明細書全体を通して「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、その実施形態に関連して説明する特定の特徴、構造、又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。よって、本明細書全体を通して記載される引用語句、又はその変形は、必ずしもすべてが同じ実施形態に言及しているわけではない。
【0054】
同様に、上記の実施形態の説明において、本開示を合理化する目的で、様々な特徴が単一の実施形態、図面、又はその説明に一緒にグループ化されることがあることは、理解されるべきである。しかしながら、この開示の方法は、任意の請求項がその請求項に明示的に記載された特徴よりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものと解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、本発明の態様は、任意の単一の上記に開示した実施形態のすべての特徴よりも少ない特徴の組み合せにある。よって、この発明を実施するための形態に続く特許請求の範囲は、この発明を実施するための形態の中に明示的に組み込まれており、各請求項は、それ自体が別個の実施形態として成立している。本開示は、独立請求項とそれらの従属請求項とのすべての並べ替えを含む。
【0055】
特徴又は要素に関する「第1の」という用語の特許請求の範囲における記載は、第2の若しくは追加的なそのような特徴又は要素の存在を必ずしも示唆するものではない。本発明の根底にある原理から逸脱することなく、上記の実施形態の詳細に対して変更を行い得ることは、当業者には明らかであろう。排他的な所有権又は特権が請求される本発明の実施形態は、以下の通りである。

図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7