(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】医療経営支援システム、医療経営支援方法、および医療経営支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/60 20180101AFI20220804BHJP
【FI】
G16H10/60
(21)【出願番号】P 2022049872
(22)【出願日】2022-03-25
(62)【分割の表示】P 2018043983の分割
【原出願日】2018-03-12
【審査請求日】2022-04-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599126800
【氏名又は名称】株式会社エムティーアイ
(72)【発明者】
【氏名】吉村 宏
【審査官】小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-137698(JP,A)
【文献】特開2016-99978(JP,A)
【文献】特開昭61-42078(JP,A)
【文献】特開2000-293585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのプロセッサを備え、
前記少なくとも一つのプロセッサが、
1以上の患者に対応する1以上の診療記録を含むレセプトデータを取得し、
前記1以上の診療記録のそれぞれについて、前記患者を一意に特定する患者IDを決定し、該患者IDと該診療記録の少なくとも一部とを含む患者診療データをデータベースに格納し、
前記1以上の診療記録のそれぞれにおいて、前記患者の個人情報の少なくとも一部が隠されており、
前記1以上の診療記録のそれぞれが、カルテを一意に特定するカルテ番号を含み、
前記少なくとも一つのプロセッサが、第1診療記録の少なくとも一部を含む第1患者診療データを前記データベースに格納しようとする際に、該第1診療記録と前記カルテ番号が一致する第2患者診療データが既に前記データベース内に存在する場合には、該第1患者診療データの前記患者IDを該第2患者診療データの前記患者IDと同じにし、
前記1以上の診療記録のそれぞれが診療日を含み、
前記少なくとも一つのプロセッサが、
前記診療日を含む患者診療データを前記データベースに格納し、
モニタ上に表示される前記1以上の患者の受診状況の時系列データを、前記データベース内の前記患者診療データに基づいて生成する、医療経営支援システム。
【請求項2】
前記時系列データが、前記1以上の患者のそれぞれの各月の受診回数を示す、請求項1に記載の医療経営支援システム。
【請求項3】
少なくとも一つのプロセッサを備え、
前記少なくとも一つのプロセッサが、
1以上の患者に対応する1以上の診療記録を含むレセプトデータを取得し、
前記1以上の診療記録のそれぞれについて、前記患者を一意に特定する患者IDを決定し、該患者IDと該診療記録の少なくとも一部とを含む患者診療データをデータベースに格納し、
前記1以上の診療記録のそれぞれにおいて、前記患者の個人情報の少なくとも一部が隠されており、
前記1以上の診療記録のそれぞれが、カルテを一意に特定するカルテ番号を含み、
前記少なくとも一つのプロセッサが、第1診療記録の少なくとも一部を含む第1患者診療データを前記データベースに格納しようとする際に、該第1診療記録と前記カルテ番号が一致する第2患者診療データが既に前記データベース内に存在する場合には、該第1患者診療データの前記患者IDを該第2患者診療データの前記患者IDと同じにし、
前記1以上の診療記録のそれぞれが診療日を含み、
前記少なくとも一つのプロセッサが、
前記診療日を含む患者診療データを前記データベースに格納し、
モニタ上に表示される医療機関の各月の営業日数を、前記データベース内の前記患者診療データに基づいて算出する、医療経営支援システム。
【請求項4】
少なくとも一つのプロセッサを備える医療経営支援システムにより実行される医療経営支援方法であって、
1以上の患者に対応する1以上の診療記録を含むレセプトデータを取得する取得ステップと、
前記1以上の診療記録のそれぞれについて、前記患者を一意に特定する患者IDを決定し、該患者IDと該診療記録の少なくとも一部とを含む患者診療データをデータベースに格納する格納ステップとを含み、
前記1以上の診療記録のそれぞれにおいて、前記患者の個人情報の少なくとも一部が隠されており、
前記1以上の診療記録のそれぞれが、カルテを一意に特定するカルテ番号を含み、
前記格納ステップでは、第1診療記録の少なくとも一部を含む第1患者診療データを前記データベースに格納しようとする際に、該第1診療記録と前記カルテ番号が一致する第2患者診療データが既に前記データベース内に存在する場合には、該第1患者診療データの前記患者IDを該第2患者診療データの前記患者IDと同じにし、
前記1以上の診療記録のそれぞれが診療日を含み、
前記格納ステップでは、前記診療日を含む患者診療データを前記データベースに格納し、
モニタ上に表示される前記1以上の患者の受診状況の時系列データを、前記データベース内の前記患者診療データに基づいて生成するステップを含む、医療経営支援方法。
【請求項5】
少なくとも一つのプロセッサを備える医療経営支援システムにより実行される医療経営支援方法であって、
1以上の患者に対応する1以上の診療記録を含むレセプトデータを取得する取得ステップと、
前記1以上の診療記録のそれぞれについて、前記患者を一意に特定する患者IDを決定し、該患者IDと該診療記録の少なくとも一部とを含む患者診療データをデータベースに格納する格納ステップとを含み、
前記1以上の診療記録のそれぞれにおいて、前記患者の個人情報の少なくとも一部が隠されており、
前記1以上の診療記録のそれぞれが、カルテを一意に特定するカルテ番号を含み、
前記格納ステップでは、第1診療記録の少なくとも一部を含む第1患者診療データを前記データベースに格納しようとする際に、該第1診療記録と前記カルテ番号が一致する第2患者診療データが既に前記データベース内に存在する場合には、該第1患者診療データの前記患者IDを該第2患者診療データの前記患者IDと同じにし、
前記1以上の診療記録のそれぞれが診療日を含み、
前記格納ステップでは、前記診療日を含む患者診療データを前記データベースに格納し、
モニタ上に表示される医療機関の各月の営業日数を、前記データベース内の前記患者診療データに基づいて算出するステップを含む、医療経営支援方法。
【請求項6】
1以上の患者に対応する1以上の診療記録を含むレセプトデータを取得する取得ステップと、
前記1以上の診療記録のそれぞれについて、前記患者を一意に特定する患者IDを決定し、該患者IDと該診療記録の少なくとも一部とを含む患者診療データをデータベースに格納する格納ステップとをコンピュータに実行させる医療経営支援プログラムであって、
前記1以上の診療記録のそれぞれにおいて、前記患者の個人情報の少なくとも一部が隠されており、
前記1以上の診療記録のそれぞれが、カルテを一意に特定するカルテ番号を含み、
前記格納ステップでは、第1診療記録の少なくとも一部を含む第1患者診療データを前記データベースに格納しようとする際に、該第1診療記録と前記カルテ番号が一致する第2患者診療データが既に前記データベース内に存在する場合には、該第1患者診療データの前記患者IDを該第2患者診療データの前記患者IDと同じにし、
前記1以上の診療記録のそれぞれが診療日を含み、
前記格納ステップでは、前記診療日を含む患者診療データを前記データベースに格納し、
モニタ上に表示される前記1以上の患者の受診状況の時系列データを、前記データベース内の前記患者診療データに基づいて生成するステップを含む、医療経営支援プログラム。
【請求項7】
1以上の患者に対応する1以上の診療記録を含むレセプトデータを取得する取得ステップと、
前記1以上の診療記録のそれぞれについて、前記患者を一意に特定する患者IDを決定し、該患者IDと該診療記録の少なくとも一部とを含む患者診療データをデータベースに格納する格納ステップとをコンピュータに実行させる医療経営支援プログラムであって、
前記1以上の診療記録のそれぞれにおいて、前記患者の個人情報の少なくとも一部が隠されており、
前記1以上の診療記録のそれぞれが、カルテを一意に特定するカルテ番号を含み、
前記格納ステップでは、第1診療記録の少なくとも一部を含む第1患者診療データを前記データベースに格納しようとする際に、該第1診療記録と前記カルテ番号が一致する第2患者診療データが既に前記データベース内に存在する場合には、該第1患者診療データの前記患者IDを該第2患者診療データの前記患者IDと同じにし、
前記1以上の診療記録のそれぞれが診療日を含み、
前記格納ステップでは、前記診療日を含む患者診療データを前記データベースに格納し、
モニタ上に表示される医療機関の各月の営業日数を、前記データベース内の前記患者診療データに基づいて算出するステップを含む、医療経営支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、医療経営を支援するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関の経営を支援するためのコンピュータシステムが従来から知られている。例えば、特許文献1には、レセプト情報、退院サマリー、給与データ、損益計算データ、オーダリングデータ、電子カルテデータなどの医療機関の実績情報を分析して医療機関の経営を支援するための医療機関向けの経営支援システムが記載されている。このシステムは、複数の医療機関から収集した医療機関の実績情報を記憶し、このシステムを利用する医療機関からの要求に基づいてベンチマーク手法によるデータ分析を行い、そのデータ分析の結果を該要求した医療機関に対し提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の経営支援システムでは多種類の電子データを用意する必要があるので、これらのデータを簡単に提供できない多くの医療機関(例えば中小規模の医院や個人経営の診療所など)にとってはその経営支援システムは使い勝手が悪い。そこで、多くの医療機関にとって使い易い医療経営支援の仕組みが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面に係る医療経営支援システムは、少なくとも一つのプロセッサを備え、少なくとも一つのプロセッサが、1以上の患者に対応する1以上の診療記録を含むレセプトデータを取得し、1以上の診療記録のそれぞれについて、患者を一意に特定する患者IDを決定し、該患者IDと該診療記録の少なくとも一部とを含む患者診療データをデータベースに格納し、1以上の診療記録のそれぞれにおいて、患者の個人情報の少なくとも一部が隠されており、1以上の診療記録のそれぞれが、カルテを一意に特定するカルテ番号を含み、少なくとも一つのプロセッサが、第1診療記録の少なくとも一部を含む第1患者診療データをデータベースに格納しようとする際に、該第1診療記録とカルテ番号が一致する第2患者診療データが既にデータベース内に存在する場合には、該第1患者診療データの患者IDを該第2患者診療データの患者IDと同じにし、1以上の診療記録のそれぞれが診療日を含み、少なくとも一つのプロセッサが、診療日を含む患者診療データをデータベースに格納し、モニタ上に表示される1以上の患者の受診状況の時系列データを、データベース内の患者診療データに基づいて生成する。好ましくは、時系列データが、1以上の患者のそれぞれの各月の受診回数を示す。
【0006】
本発明の一側面に係る医療経営支援システムは、少なくとも一つのプロセッサを備え、少なくとも一つのプロセッサが、1以上の患者に対応する1以上の診療記録を含むレセプトデータを取得し、1以上の診療記録のそれぞれについて、患者を一意に特定する患者IDを決定し、該患者IDと該診療記録の少なくとも一部とを含む患者診療データをデータベースに格納し、1以上の診療記録のそれぞれにおいて、患者の個人情報の少なくとも一部が隠されており、1以上の診療記録のそれぞれが、カルテを一意に特定するカルテ番号を含み、少なくとも一つのプロセッサが、第1診療記録の少なくとも一部を含む第1患者診療データをデータベースに格納しようとする際に、該第1診療記録とカルテ番号が一致する第2患者診療データが既にデータベース内に存在する場合には、該第1患者診療データの患者IDを該第2患者診療データの患者IDと同じにし、1以上の診療記録のそれぞれが診療日を含み、少なくとも一つのプロセッサが、診療日を含む患者診療データをデータベースに格納し、モニタ上に表示される医療機関の各月の営業日数を、データベース内の患者診療データに基づいて算出する。
【0007】
本発明の一側面に係る医療経営支援方法は、少なくとも一つのプロセッサを備える医療経営支援システムにより実行される医療経営支援方法であって、1以上の患者に対応する1以上の診療記録を含むレセプトデータを取得する取得ステップと、1以上の診療記録のそれぞれについて、患者を一意に特定する患者IDを決定し、該患者IDと該診療記録の少なくとも一部とを含む患者診療データをデータベースに格納する格納ステップとを含み、1以上の診療記録のそれぞれにおいて、患者の個人情報の少なくとも一部が隠されており、1以上の診療記録のそれぞれが、カルテを一意に特定するカルテ番号を含み、格納ステップでは、第1診療記録の少なくとも一部を含む第1患者診療データをデータベースに格納しようとする際に、該第1診療記録とカルテ番号が一致する第2患者診療データが既にデータベース内に存在する場合には、該第1患者診療データの患者IDを該第2患者診療データの患者IDと同じにし、1以上の診療記録のそれぞれが診療日を含み、格納ステップでは、診療日を含む患者診療データをデータベースに格納し、モニタ上に表示される1以上の患者の受診状況の時系列データを、データベース内の患者診療データに基づいて生成するステップを含む。
【0008】
本発明の一側面に係る医療経営支援方法は、少なくとも一つのプロセッサを備える医療経営支援システムにより実行される医療経営支援方法であって、1以上の患者に対応する1以上の診療記録を含むレセプトデータを取得する取得ステップと、1以上の診療記録のそれぞれについて、患者を一意に特定する患者IDを決定し、該患者IDと該診療記録の少なくとも一部とを含む患者診療データをデータベースに格納する格納ステップとを含み、1以上の診療記録のそれぞれにおいて、患者の個人情報の少なくとも一部が隠されており、1以上の診療記録のそれぞれが、カルテを一意に特定するカルテ番号を含み、格納ステップでは、第1診療記録の少なくとも一部を含む第1患者診療データをデータベースに格納しようとする際に、該第1診療記録とカルテ番号が一致する第2患者診療データが既にデータベース内に存在する場合には、該第1患者診療データの患者IDを該第2患者診療データの患者IDと同じにし、1以上の診療記録のそれぞれが診療日を含み、格納ステップでは、診療日を含む患者診療データをデータベースに格納し、モニタ上に表示される医療機関の各月の営業日数を、データベース内の患者診療データに基づいて算出するステップを含む。
【0009】
本発明の一側面に係る医療経営支援プログラムは、1以上の患者に対応する1以上の診療記録を含むレセプトデータを取得する取得ステップと、1以上の診療記録のそれぞれについて、患者を一意に特定する患者IDを決定し、該患者IDと該診療記録の少なくとも一部とを含む患者診療データをデータベースに格納する格納ステップとをコンピュータに実行させる医療経営支援プログラムであって、1以上の診療記録のそれぞれにおいて、患者の個人情報の少なくとも一部が隠されており、1以上の診療記録のそれぞれが、カルテを一意に特定するカルテ番号を含み、格納ステップでは、第1診療記録の少なくとも一部を含む第1患者診療データをデータベースに格納しようとする際に、該第1診療記録とカルテ番号が一致する第2患者診療データが既にデータベース内に存在する場合には、該第1患者診療データの患者IDを該第2患者診療データの患者IDと同じにし、1以上の診療記録のそれぞれが診療日を含み、格納ステップでは、診療日を含む患者診療データをデータベースに格納し、モニタ上に表示される1以上の患者の受診状況の時系列データを、データベース内の患者診療データに基づいて生成するステップを含む。
【0010】
本発明の一側面に係る医療経営支援プログラムは、1以上の患者に対応する1以上の診療記録を含むレセプトデータを取得する取得ステップと、1以上の診療記録のそれぞれについて、患者を一意に特定する患者IDを決定し、該患者IDと該診療記録の少なくとも一部とを含む患者診療データをデータベースに格納する格納ステップとをコンピュータに実行させる医療経営支援プログラムであって、1以上の診療記録のそれぞれにおいて、患者の個人情報の少なくとも一部が隠されており、1以上の診療記録のそれぞれが、カルテを一意に特定するカルテ番号を含み、格納ステップでは、第1診療記録の少なくとも一部を含む第1患者診療データをデータベースに格納しようとする際に、該第1診療記録とカルテ番号が一致する第2患者診療データが既にデータベース内に存在する場合には、該第1患者診療データの患者IDを該第2患者診療データの患者IDと同じにし、1以上の診療記録のそれぞれが診療日を含み、格納ステップでは、診療日を含む患者診療データをデータベースに格納し、モニタ上に表示される医療機関の各月の営業日数を、データベース内の患者診療データに基づいて算出するステップを含む。
【0011】
このような側面においては、カルテ番号に基づく照合により、個人情報が隠されたレセプトデータから個々の患者についての診療記録(患者診療データ)が生成され、その患者診療データがデータベースに格納される。この患者診療データは患者IDを含むので、そのデータベースを参照することで、個々の患者の診療記録を医療経営支援のために自由に集計することが可能になる。レセプトデータを用いてそのデータベースを構築することで、多くの医療機関にとって使い易い医療経営支援の仕組みを提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面によれば、多くの医療機関にとって使い易い医療経営支援の仕組みを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る医療経営支援システムの適用の一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る医療経営支援システムの構成の一例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る医療経営支援システムで用いられるコンピュータの一般的なハードウェア構成を示す図である。
【
図4】実施形態に係る医療経営支援システムによるデータ格納処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態に係る医療経営支援システムにより取得されるレセプトデータの例を示す図である。
【
図6】患者医療データを生成する処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図7】患者医療データの集計処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】患者医療データの集計結果の一例を示す図である。
【
図9】患者医療データの集計結果の別の例を示す図である。
【
図10】患者医療データの集計結果のさらに別の例を示す図である。
【
図11】患者医療データの集計結果のさらに別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本開示の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
[システムの構成]
実施形態に係る医療経営支援システム1は、医療機関の経営を支援するためのコンピュータシステムである。医療機関とは、患者に対して医療を提供する施設のことをいう。医療機関の例として任意の規模の病院、診療所、および薬局が挙げられるが、医療機関の種類はこれらに限定されない。「医療機関の経営を支援する」とは、医療機関の経営に貢献し得る任意の情報を提供することをいう。医療経営支援システム1は1以上の医療機関の経営を支援することができる。本実施形態では医療経営支援システム1のユーザは医療機関であるとする。しかし、ユーザはこれに限定されず、例えば、医療機関に対して助言または指導を行う医療コンサルタントであってもよい。
【0016】
図1は医療経営支援システム1の全体構成を示す図である。医療経営支援システム1はサーバ10、1以上の医療機関端末20、およびデータベース30を備える。サーバ10は通信ネットワーク41を介して各医療機関端末20とデータを送受信することができる。また、サーバ10は通信ネットワーク42を介してデータベース30に対するデータの読み出しまたは書き込みを実行できる。通信ネットワーク41,42の構成はいずれも何ら限定されるものでなく、例えば、それぞれの通信ネットワークはインターネット、イントラネットなどの任意の通信網を用いて構築されてよい。
【0017】
サーバ10は、医療機関の経営を支援するための主たる機能を実行するコンピュータである。サーバ10は1以上の医療機関から提供されたレセプトデータを取得し、そのレセプトデータに基づいて患者診療データを生成し、その患者診療データをデータベース30に格納する。また、サーバ10は、端末(例えば医療機関端末20)からの要求に応じて、データベース30内の患者診療データを集計し、その集計結果を端末に送信する。例えば、この集計結果は医療機関の経営の支援に用いられる。
【0018】
レセプトデータはレセプトを示すデータである。レセプトとは、医療機関が保険者などの公的機関に請求する医療報酬の明細書である。各医療機関は医療機関端末20を介して毎月そのレセプトデータを公的機関に向けて送信する。サーバ10はそのレセプトデータを任意の手法で取得して患者診療データを生成する。レセプトデータの構成は、行政機関による取り決めや、データフォーマットに関する規定などにより定められる。
【0019】
患者診療データは、医療機関で患者が受けた診療の記録を示すデータである。診療とは、医師や看護師などの医療従事者が患者の健康状態の改善を意図して行う行為のことをいい、例えば、診察、診断、治療、および処方から選択される任意の1以上の行為である。患者診療データは、個々の患者の診療の履歴を示すデータであるともいえる。
【0020】
医療機関端末20は、医療機関のコンピュータである。医療機関端末20として用いられるコンピュータの種類は限定されない。例えば、医療機関端末20は携帯型または据置型のパーソナルコンピュータであってもよいし、サーバであってもよい。あるいは、医療機関端末20は、高機能携帯電話機(スマートフォン)、携帯電話機、携帯情報端末(PDA)、タブレットなどの携帯端末でもよい。あるいは、一または複数のコンピュータで構成される医療機関のコンピュータシステムの少なくとも一部が医療機関端末20として機能してもよい。医療経営支援システム1における医療機関端末20の台数は何ら限定されない。
【0021】
データベース30は、患者診療データを記憶する装置(記憶部)である。データベース30の実装方法は限定されず、例えばリレーショナル・データベースでもよい。データベース30の管理主体は限定されず、例えば、サーバ10の管理主体と同じでもよいし異なってもよい。
【0022】
個々の患者診療データは、一の医療機関で一人の患者が受けた一回の診療を示す。一人の患者が一または複数の医療機関で一回または複数回の診療を受けることがあり得るので、データベース30は一人の患者について複数レコードの患者診療データを記憶し得る。
【0023】
本実施形態では、個々の患者診療データは、医療機関情報、患者情報、カルテ情報、保険情報、傷病情報、および診療情報を含むものとする。医療機関情報は医療機関に関する情報である。患者情報は一人の患者に関する情報である。カルテ情報は、その患者に対する一連の診療の記録であるカルテに関する情報である。保険情報は、その患者が加入している保険に関する情報である。傷病情報はその患者の傷病に関する情報である。診療情報は、その患者に施された診療の内容(例えば、診察、診断、治療、または処方)を示す情報である。本実施形態では、個々の患者診療データは医療機関ID、患者ID、カルテ番号、および診療日を含むものとする。医療機関IDは、医療機関を一意に特定する識別子であり、医療機関情報の一種である。患者IDは、患者を一意に特定する識別子であり、患者情報の一種である。カルテ情報は、カルテを一意に特定する識別子であり、カルテ情報の一種である。診療日は、患者に対する診療が行われた日(患者が医療機関で受診した日)であり、診療情報の一種である。
【0024】
患者診療データの構成は任意に決められてよく、例えば、求められる集計に合わせて決定されてよい。データベース30内での患者診療データの記憶方法は限定されず、患者診療データに対して任意の正規化または冗長化が施されてもよい。例えば、患者診療データは複数の論理テーブルに分けられた態様でデータベース30に記憶されてもよい。
【0025】
図2はサーバ10の構成の一例を示す図である。サーバ10は機能要素として取得部11、格納部12、および集計部13を備える。取得部11はレセプトデータを取得する機能要素である。格納部12は、そのレセプトデータに基づいて患者診療データを生成し、その患者診療データをデータベース30に格納する機能要素である。集計部13は、データベース30内の患者診療データを集計して、その集計結果を提供する機能要素である。
【0026】
サーバ10は、患者診療データ以外のデータを取得して、該他のデータをデータベース30に格納してもよい。例えば、取得部11は医療機関が医療機関端末20を介して入力した各患者の郵便番号データ、および各月の自費診療データを取得し、格納部12がこれらのデータをデータベース30に格納してもよい。格納部12はこれらの郵便番号データおよび自費診療データを、患者診療データと関連付けた態様でデータベース30に格納する。これらのデータは特定のデータ項目(例えば、患者ID、カルテ番号など)により互いに関連付けられる。
【0027】
図3はサーバ10を構成するコンピュータ100の一般的なハードウェア構成を示す。例えば、コンピュータ100はプロセッサ101、主記憶部102、補助記憶部103、通信制御部104、入力装置105、および出力装置106を備える。プロセッサ101はオペレーティングシステムおよびアプリケーション・プログラムを実行する。主記憶部102は例えばROMおよびRAMで構成される。補助記憶部103は例えばハードディスクまたはフラッシュメモリで構成され、一般に主記憶部102よりも大量のデータを記憶する。補助記憶部103は、少なくとも1台のコンピュータをサーバ10として機能させるための医療経営支援プログラムPを記憶する。通信制御部104は例えばネットワークカードまたは無線通信モジュールで構成される。入力装置105は例えばキーボード、マウス、タッチパネルなどで構成される。出力装置106は例えばモニタおよびスピーカで構成される。
【0028】
サーバ10の各機能要素は、プロセッサ101または主記憶部102の上に医療経営支援プログラムPを読み込ませてその医療経営支援プログラムPを実行させることで実現される。医療経営支援プログラムPは取得部11、格納部12、および集計部13を実現するためのコードを含む。プロセッサ101は医療経営支援プログラムPに従って、通信制御部104、入力装置105、または出力装置106を動作させ、主記憶部102または補助記憶部103におけるデータの読み出しおよび書き込みを行う。この処理によりサーバ10の各機能要素が実現される。処理に必要なデータまたはデータベースは主記憶部102または補助記憶部103内に格納されてもよい。
【0029】
医療経営支援プログラムPは、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの有形の記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、医療経営支援プログラムPは、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。提供された医療経営支援プログラムPは補助記憶部103に格納される。
【0030】
サーバ10は1台のコンピュータで構成されてもよいし、複数台のコンピュータで構成されてもよい。複数台のコンピュータを用いる場合には、これらのコンピュータがインターネットやイントラネットなどの通信ネットワークを介して接続されることで、論理的に一つのサーバ10が構築される。
【0031】
[システムの動作]
図4~
図7を参照しながら、サーバ10の動作を説明するとともに本実施形態に係る医療経営支援方法について説明する。
図4は、医療経営支援システム1によるデータ格納処理の一例を示すフローチャートである。
図5は、医療経営支援システム1により取得されるレセプトデータの例を示す図である。
図6は、患者医療データを生成する処理の詳細を示すフローチャートである。
図7は、患者医療データの集計処理の一例を示すフローチャートである。
【0032】
まず、
図4~
図6を参照しながらデータ格納処理について説明する。ステップS11では、取得部11が、暗号化され且つ患者の個人情報の少なくとも一部が隠されたレセプトデータを医療機関端末20から受診する(取得ステップ)。「個人情報」とは、特定の個人を識別することが可能な情報である。個人情報は少なくとも一つのデータ項目で構成される。例えば、個人情報は氏名、住所、電話番号、メールアドレス、個人識別番号(例えば保険証番号)から任意に選択される少なくとも一つのデータ項目で構成されてもよいし、他のデータ項目を用いて構成されてもよい。「個人情報の少なくとも一部が隠された」とは、その部分を人が認識できないようにデータを加工することをいう。この加工方法は限定されず、例えば消去、変換でもよい。レセプトデータ内の個人情報は、そのすべてが隠されてもよいし、その一部のみが隠されてもよい。
【0033】
例えば、取得部11は
図5に示すようなレセプトデータ50を取得する。なお、レセプトデータ50の内容はあくまでも一例であり、レセプトデータの具体的な構成および値はこの例に限定されないことに留意されたい。レセプトデータ50では、人が読解可能な文字列(人が言葉の意味を認識できる文字列)の少なくとも一部が暗号化により数字列に変換されている。レセプトデータ50の各レコード(各行)は、先頭に位置するレコード識別情報(アルファベット2文字)と、そのレコード識別情報に続いて記述される各種のデータ項目とを含む。
図5の例における、レコード識別情報と、データの種類と、データ項目との対応は以下の通りである。
・IR:医療機関に関するデータ。医療機関のコード、名称、および電話番号を含む。
・RE:患者に関するデータ。患者の氏名および生年月日と、カルテ番号とを含む。
・HO:保険に関するデータ。保険者番号および被保険者番号を含む。
・SY:傷病に関するデータ。傷病の名称を含む。
・SI:診療に関するデータ。診療日および診療の詳細を示す。
【0034】
レセプトデータ50は1以上の診療記録を含む。レセプトデータ50に含まれる「診療記録」は、一の医療機関で一人の患者が受けた一回の診療を示す記録のことをいう。
図5の例では、一つの診療記録は、一つのREレコード(患者に関するデータ)、一つのHOレコード(保険に関するデータ)、1以上のSYレコード(傷病に関するデータ)、および1以上のSIレコード(診療に関するデータ)で構成される。
図5は、一つの診療記録51と、もう一つの診療記録52とを含むレセプトデータ50を示す。
【0035】
レセプトデータ50では、IRレコード(医療機関に関するデータ)、REレコード(患者に関するデータ)、およびHOレコード(保険に関するデータ)に対して、患者の個人情報を隠すための処理が施される。例えば、医療期間の名称および電話番号が削除され、医療機関コードが暗号化され、患者の氏名が削除され、被保険者番号が削除されることで、患者の個人情報が隠されている。個人情報の隠蔽方法はこれに限定されず、任意に定められてよい。個人情報のうちどのデータ項目を削除または暗号化するかも任意に定められてよい。
【0036】
ステップS12では、取得部11が、そのレセプトデータを逆解析することで元の文字列(人が読解可能な文字列)を特定する。逆解析の具体的な手法は限定されず、任意の手法が用いられてよい。ただし、逆解析は、隠された個人情報を認識可能にする処理ではなく、したがって、個人情報はこの逆解析後も隠されたままである。
【0037】
ステップS13では、格納部12がレセプトデータから一つの診療記録を処理対象として選択する。
【0038】
ステップS14では、格納部12が、選択された診療記録に基づいて患者診療データを生成する。本実施形態では、これから生成および格納しようとする患者診療データを「第1患者診療データ」ともいう。
【0039】
図6を参照しながら、第1患者診療データを生成する処理(ステップS14)の一例を示す。ステップS141では、格納部12がデータベース30を参照して、選択された診療記録のカルテ番号を含む患者診療データがデータベース30内に既に存在するか否かを判定する。本実施形態では、検索対象である患者診療データを「第2患者診療データ」ともいう。
【0040】
第2患者診療データが既にデータベース30内に存在する場合には(ステップS142においてYES)、格納部12は第2患者診療データの患者IDをデータベース30から抽出する(ステップS143)。
【0041】
一方、第2患者診療データがデータベース30内に存在しない場合には(ステップS142においてNO)、格納部12は新たな患者IDを生成する(ステップS144)。患者IDの表現方法は限定されず、例えば、数字または英数字により表現されてもよい。格納部12はカルテ番号を用いて患者IDを生成してもよく、例えば、カルテ番号をそのまま患者IDとして設定してもよい。
【0042】
ステップS145において、格納部12は、選択された診療記録の少なくとも一部と、抽出または生成した患者IDとを含む第1患者診療データを生成する。したがって、第2患者診療データ(選択された診療記録と同じカルテ番号を含む患者診療データ)が既にデータベース30内に存在する場合には、格納部12は第1患者診療データの患者IDを該第2患者診療データの患者IDと同じにする。一方、その第2患者診療データがデータベース30内に存在しない場合には、格納部12は、これまで医療経営支援システム1に存在してない新たな患者IDを含む第1患者診療データを生成する。
【0043】
図4に戻り、ステップS15では、格納部12が、生成した第1患者診療データをデータベース30に格納する。この結果、個人情報が隠されているために患者を特定できない一つの診療記録が、患者を一意に識別する患者IDを含む一つの患者診療データに変換され、その患者診療データがデータベース30に登録される。
【0044】
サーバ10はレセプトデータ内のすべての診療記録についてステップS13~S15の処理を実行する(ステップS16を参照)。この結果、レセプトデータで示される個々の患者の個々の診療の記録がデータベース30に登録される。
【0045】
サーバ10は、個人情報の少なくとも一部が隠されたレセプトデータを取得する度に、ステップS11~S15の処理を実行する。
【0046】
図7を参照しながら、集計処理について説明する。ステップS21では、集計部13が医療機関端末20から集計要求を受信する。この集計要求は、サーバ10に患者診療データの集計を指示するための信号である。例えば、集計要求は、集計の対象となる医療機関IDと、集計の条件を示す情報とを含む。
【0047】
ステップS22では、集計部13がその集計要求に基づいて患者診療データを集計する。集計部13は集計の条件に従って、患者診療データをデータベース30から抽出してその患者診療データを集計する。
【0048】
ステップS23では、集計部13が集計結果を医療機関端末20に送信する。集計結果は、集計要求に対する応答信号であるといえる。医療機関端末20はその集計結果を受信してモニタ上に表示する。
【0049】
図8~
図11を参照しながら、医療機関端末20上に表示される集計結果の例を説明する。これらの例はいずれも、ある一つの医療機関についての集計結果である。
【0050】
図8は、複数種類の集計を表すトップページ200を示す。このトップページ200は、収益の推移201、延患者数の推移202、診療単価203、新患数(新規の患者の数)204、初再診割合205、傷病毎の診療件数206、年齢層毎の延患者数207、リピート率208などを含む。個々の患者診療データは患者IDおよび診療日を含むので、集計部13は、各患者について初診日および再診日を特定することができる。したがって、集計部13は新患数と、各患者のリピート率(患者が再び医療機関で受診する確率)とを算出することもできる。患者医療データが患者の生年月日を含む場合には、集計部|は年齢層毎の患者数を集計することができる。
【0051】
図9は、毎月の収益の推移を表す収益画面210を示す。この収益画面210は、医療機関の各月の営業日数(診療日数)の実績211および前年比212を含む。個々の患者診療データは診療日を含むので、データベース30内の患者診療データを集計することで各月の日にちのリストを得ることができ、その日にちの個数を数えることで各月の営業日数を算出できる。したがって、集計部13は、医療機関に自己の営業日を登録させなくても、営業日数(診療日数)を含む集計結果を提供することができる。
【0052】
図10は、医療機関に来た患者数を表す来院状況画面220を示す。この来院状況画面220は、来院に関する特定の条件を満たす患者の人数を示すサマリー221と、個々の患者の各月の診療回数(来院回数)を示す患者リスト222とを含む。患者リスト222は、患者の受診状況の時系列データの一例である。「患者の受診状況の時系列データ」とは、患者の受診状況の変化を連続的に(より具体的には、一定間隔をおいて不連続に)集計して得られる値の系列を示すデータである。個々の患者診療データは患者IDおよび診療日を含むので、集計部13は各患者来院回数を特定してその時系列データを生成することができる。
図10における患者リスト222は時系列データの一例であり、2016年12月から2017年12月にかけての1以上の患者のそれぞれの各月の受診回数を示すものである。時系列データは各月の受診回数以外の情報を示してもよく、例えば、各週または各年の受診状況を示してもよい。受診状況は回数以外の指数を用いて表されてもよい。このように、サーバ10は、診療の事実を示す患者診療データを参照して、診療の有無の双方を示す連続性のあるデータを生成することができる。
【0053】
図11は、患者の大凡の居住地の分布を表す地
図230を示す。この地
図230上には、医療機関を表すマーク231と、各地域の患者数の多さを表すピン232とが描画されている。
図11の例では、ピン232の図柄および色が患者数の多さに応じて3種類用意されている。医療機関端末20のユーザは、プロット条件(来院期間、患者の属性、傷病)、患者数、診療科などの条件を変えることができ、この条件変更に応じて、地
図230上に表示されるピン232の表示が変わる。この地
図230は、医療機関が診療を実施している範囲(診療圏)を示す情報であるといえる。ユーザはこの地
図230を参照して、患者がどこから来院しているかを簡単に把握することができる。
【0054】
当然ながら、集計部13により提供される画面の種類および構成は
図8~
図11の例に限定されず、任意の画面が提供されてよい。例えば、集計部13は複数の医療機関の患者診療データを集計してもよい。
【0055】
[効果]
以上説明したように、本発明の一側面に係る医療経営支援システムは、少なくとも一つのプロセッサを備え、少なくとも一つのプロセッサが、1以上の患者に対応する1以上の診療記録を含むレセプトデータを取得し、1以上の診療記録のそれぞれについて、患者を一意に特定する患者IDを決定し、該患者IDと該診療記録の少なくとも一部とを含む患者診療データをデータベースに格納し、1以上の診療記録のそれぞれにおいて、患者の個人情報の少なくとも一部が隠されており、1以上の診療記録のそれぞれが、カルテを一意に特定するカルテ番号を含み、少なくとも一つのプロセッサが、第1診療記録の少なくとも一部を含む第1患者診療データをデータベースに格納しようとする際に、該第1診療記録とカルテ番号が一致する第2患者診療データが既にデータベース内に存在する場合には、該第1患者診療データの患者IDを該第2患者診療データの患者IDと同じにする。
【0056】
本発明の一側面に係る医療経営支援方法は、少なくとも一つのプロセッサを備える医療経営支援システムにより実行される医療経営支援方法であって、1以上の患者に対応する1以上の診療記録を含むレセプトデータを取得する取得ステップと、1以上の診療記録のそれぞれについて、患者を一意に特定する患者IDを決定し、該患者IDと該診療記録の少なくとも一部とを含む患者診療データをデータベースに格納する格納ステップとを含み、1以上の診療記録のそれぞれにおいて、患者の個人情報の少なくとも一部が隠されており、1以上の診療記録のそれぞれが、カルテを一意に特定するカルテ番号を含み、格納ステップでは、第1診療記録の少なくとも一部を含む第1患者診療データをデータベースに格納しようとする際に、該第1診療記録とカルテ番号が一致する第2患者診療データが既にデータベース内に存在する場合には、該第1患者診療データの患者IDを該第2患者診療データの患者IDと同じにする。
【0057】
本発明の一側面に係る医療経営支援プログラムは、1以上の患者に対応する1以上の診療記録を含むレセプトデータを取得する取得ステップと、1以上の診療記録のそれぞれについて、患者を一意に特定する患者IDを決定し、該患者IDと該診療記録の少なくとも一部とを含む患者診療データをデータベースに格納する格納ステップとをコンピュータに実行させる医療経営支援プログラムであって、1以上の診療記録のそれぞれにおいて、患者の個人情報の少なくとも一部が隠されており、1以上の診療記録のそれぞれが、カルテを一意に特定するカルテ番号を含み、格納ステップでは、第1診療記録の少なくとも一部を含む第1患者診療データをデータベースに格納しようとする際に、該第1診療記録とカルテ番号が一致する第2患者診療データが既にデータベース内に存在する場合には、該第1患者診療データの患者IDを該第2患者診療データの患者IDと同じにする。
【0058】
このような側面においては、カルテ番号に基づく照合により、個人情報が隠されたレセプトデータから個々の患者についての診療記録(患者診療データ)が生成され、その患者診療データがデータベースに格納される。この患者診療データは患者IDを含むので、そのデータベースを参照することで、個々の患者の診療記録を医療経営支援のために自由に集計することが可能になる。レセプトデータを用いてそのデータベースを構築することで、多くの医療機関にとって使い易い医療経営支援の仕組みを提供することができる。
【0059】
他の側面に係る医療経営支援システムでは、1以上の診療記録のそれぞれが診療日を含み、少なくとも一つのプロセッサが、診療日を含む患者診療データをデータベースに格納し、モニタ上に表示される1以上の患者の受診状況の時系列データを、データベース内の患者診療データに基づいて生成してもよい。個々の診療を示す患者診療データからその時系列データを生成および表示することで、患者の受診状況を時間軸に沿って連続的にユーザに提示できる。
【0060】
他の側面に係る医療経営支援システムでは、時系列データが、1以上の患者のそれぞれの各月の受診回数を示してもよい。この場合には各患者の月毎の受診状況をユーザに提示できる。
【0061】
他の側面に係る医療経営支援システムでは、1以上の診療記録のそれぞれが診療日を含み、少なくとも一つのプロセッサが、診療日を含む患者診療データをデータベースに格納し、モニタ上に表示される医療機関の各月の営業日数を、データベース内の患者診療データに基づいて算出してもよい。患者診療データから営業日数を求めることで、医療機関に自己の営業日を登録させなくても営業日数をユーザに提示できる。
【0062】
他の側面に係る医療経営支援システムでは、少なくとも一つのプロセッサが、1以上の患者の居住地に関連する居住地情報を取得し、モニタ上に表示される、患者の居住地の分布を示す地図を、居住地情報とデータベース内の患者診療データとに基づいて生成してもよい。この地図を生成および表示することで、患者がどこから来院しているかを分かりやすくユーザに示すことができる。
【0063】
[変形例]
以上、本開示をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。本開示は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0064】
上記実施形態では集計部13が医療機関端末20に集計結果を送信するが、医療経営支援システムは医療機関以外の人または組織に集計結果を提供してもよい。例えば、医療経営支援システムは医療コンサルタントに向けて集計結果を提供してもよい。
【0065】
上記実施形態では、取得部11が、暗号化されたレセプトデータを取得するが、レセプトデータの暗号化は必須ではない。
【0066】
上記実施形態では、取得部11が、患者の個人情報の少なくとも一部が隠されたレセプトデータを受信するが、医療機関端末ではなくサーバまたは他のコンピュータが、レセプトデータ内の個人情報を隠す処理を実行してもよい。いずれにしても、取得部は、患者の個人情報の少なくとも一部が隠されたレセプトデータを取得する。上記実施形態では、取得部11が医療機関端末20からレセプトデータを受信するが、レセプトデータの取得方法も限定されない。例えば、取得部は、図示しない別のデータベースからそのレセプトデータを受信してもよい。
【0067】
上記実施形態ではサーバ10が集計部13を備えるが、患者診療データの生成および格納を実行するコンピュータ(またはシステム)と、患者診療データを集計するコンピュータ(またはシステム)とは別々に設けられてもよい。
【0068】
少なくとも一つのプロセッサにより実行される医療経営支援方法の処理手順は上記実施形態での例に限定されない。例えば、上述したステップ(処理)の一部が省略されてもよいし、別の順序で各ステップが実行されてもよい。また、上述したステップのうちの任意の2以上のステップが組み合わされてもよいし、ステップの一部が修正又は削除されてもよい。あるいは、上記の各ステップに加えて他のステップが実行されてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…医療経営支援システム、10…サーバ、11…取得部、12…格納部、13…集計部、20…医療機関端末、30…データベース、50…レセプトデータ、51…診療記録、52…診療記録、200…トップページ、210…収益画面、220…来院状況画面、230…地図、P…医療経営支援プログラム。