(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】転写装置及び転写方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20220804BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20220804BHJP
H01L 21/50 20060101ALI20220804BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
H01L21/52 F
H01L21/50 C
H01L21/68 N
(21)【出願番号】P 2022528060
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 JP2021017228
【審査請求日】2022-05-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190105
【氏名又は名称】信越エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 義和
(72)【発明者】
【氏名】横田 道也
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 亮一
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-141188(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125683(WO,A1)
【文献】特開2016-062928(JP,A)
【文献】特開2016-060675(JP,A)
【文献】特開2013-021251(JP,A)
【文献】特開2012-221642(JP,A)
【文献】特開2009-295853(JP,A)
【文献】特開2013-211290(JP,A)
【文献】特表2021-510233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60 -21/607
H01L 21/301
H01L 21/50 -21/52
H01L 21/67 -21/687
H01L 33/32
H01L 33/48 -33/64
B23K 26/53
C09J 7/20 - 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一板状部材に取り付けられた微小構造物を前記第一板状部材から剥離し、前記第一板状部材と対向する第二板状部材に接合させて移し替えられる転写装置であって、
前記微小構造物が仮接着層を介して着脱自在に保持される前記第一板状部材と、
前記第一板状部材と対向して厚み方向へ弾性変形可能な粘着層を有する前記第二板状部材と、
前記第一板状部材又は前記第二板状部材のいずれか一方を他方に向けて前記仮接着層及び前記粘着層が少なくとも局所的に平行になるように厚み方向へ押し込む加圧部と、
前記仮接着層に向け照射される光により前記仮接着層の接着力が低下するように変質させる変性剥離部と、
前記加圧部及び前記変性剥離部を作動制御する制御部と、を備え、
前記加圧部は、塑性変形した前記第一板状部材が前記第二板状部材に沿って形状修正されるように押動する押圧部位を有し、
前記制御部は、前記加圧部の前記押圧部位により前記微小構造物の表面が前記粘着層に対して食い込むように押し込まれ、前記粘着層に前記微小構造物の前記表面を食い込ませた状態で、前記光の照射により前記仮接着層が変質されるように制御することを特徴とする転写装置。
【請求項2】
前記第一板状部材に前記仮接着層を介して複数の前記微小構造物が並列状に整列配置されることを特徴とする請求項1記載の転写装置。
【請求項3】
前記変性剥離部が、前記光として
のレーザ光線の照射機構であることを特徴とする請求項1又は2記載の転写装置。
【請求項4】
前記第一板状部材は、前記仮接着層が設けられる第一対向面を有し、
前記第二板状部材は、前記粘着層が設けられる平滑な第二対向面を有し、前記加圧部で前記平滑な第二対向面に倣うように前記第一対向面の面形状が修正されることを特徴とする請求項1、2又は3記載の転写装置。
【請求項5】
前記第一板状部材及び前記第二板状部材が気密状に収容される空間部を備え、
前記押圧部位が、前記空間部の内側と外側の圧力差により、前記第一板状部材又は前記第二板状部材のいずれか一方を他方に向けて厚み方向へ押し込むことを特徴とする請求項1、2又は3記載の転写装置。
【請求項6】
第一板状部材に取り付けられた微小構造物を前記第一板状部材から剥離し、前記第一板状部材と対向する第二板状部材に接合させて移し替えられる転写装置であって、
前記微小構造物が仮接着層を介して着脱自在に保持される前記第一板状部材と、
前記第一板状部材と対向して厚み方向へ弾性変形可能な粘着層を有する前記第二板状部材と、
前記第二板状部
材を前記第一板状部材に向けて前記仮接着層及び前記粘着層が少なくとも局所的に平行になるように厚み方向へ押し込む加圧部と、
前記仮接着層に向け照射される光により前記仮接着層の接着力が低下するように変質させる変性剥離部と、
前記加圧部及び前記変性剥離部を作動制御する制御部と、を備え、
前記第一板状部材は、前記仮接着層が設けられる第一対向面を有し、
前記第二板状部材は、変形可能な材料からなり、前記粘着層が設けられる第二対向面を有し、
前記加圧部は、前記第一板状部材の塑性変形に沿って前記第二対向面が変形するように押動する押圧部位を有し、
前記制御部は、前記加圧部の前記押圧部位により前記微小構造物の表面が前記粘着層に対して食い込むように押し込まれ、前記粘着層に前記微小構造物の前記表面を食い込ませた状態で、前記光の照射により前記仮接着層が変質されるように制御することを特徴とする転写装置。
【請求項7】
第一板状部材に取り付けられた微小構造物を前記第一板状部材から剥離し、前記第一板状部材と対向する第二板状部材に接合させて移し替えられる転写方法であって、
前記微小構造物が仮接着層を介して着脱自在に保持される前記第一板状部材が、厚み方向へ弾性変形可能な粘着層を有する前記第二板状部材と対向するように配置されるセット工程と、
加圧部の押圧部位により前記第一板状部材又は前記第二板状部材のいずれか一方を他方に対して前記仮接着層及び前記粘着層が少なくとも局所的に平行になるように厚み方向へ押し込む加圧工程と、
前記仮接着層に向け照射される光により前記仮接着層の接着力が低下するように変質させる変性工程と、を含み、
前記加圧工程では、前記押圧部位による押し込みで、塑性変形した前記第一板状部材を前記第二板状部材に沿って形状修正させることにより、前記微小構造物の表面が前記粘着層に対して食い込むように厚み方向へ押し込まれ、
前記変性工程では、前記微小構造物の前記表面が前記粘着層に食い込んだ状態で、前記光の照射により前記仮接着層を変質させることを特徴とする転写方法。
【請求項8】
第一板状部材に取り付けられた微小構造物を前記第一板状部材から剥離し、前記第一板状部材と対向する第二板状部材に接合させて移し替えられる転写方法であって、
前記微小構造物が仮接着層を介して着脱自在に保持される第一対向面を有する前記第一板状部材が、厚み方向へ弾性変形可能な粘着層が設けられる第二対向面を有する前記第二板状部材と対向するように配置されるセット工程と、
加圧部の押圧部位により
前記第二板状部
材を前記第一板状部材に対して前記仮接着層及び前記粘着層が少なくとも局所的に平行になるように厚み方向へ押し込む加圧工程と、
前記仮接着層に向け照射される光により前記仮接着層の接着力が低下するように変質させる変性工程と、を含み、
前記加圧工程では、前記押圧部位による押し込みで、前記第一板状部材の塑性変形に沿って前記第二対向面を変形させることにより、前記微小構造物の表面が前記粘着層に対して食い込むように厚み方向へ押し込まれ、
前記変性工程では、前記微小構造物の前記表面が前記粘着層に食い込んだ状態で、前記光の照射により前記仮接着層を変質させることを特徴とする転写方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロLEDやマイクロチップなどの微小素子を含む微小構造体,ガラス小片を含む微小絶縁片などからなる微小構造物を移し替えるために用いられる転写装置、及び、転写装置を用いた転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の転写装置及び転写方法として、円形の基板と、光を透過する支持体とを、接着層と、光が吸収されることで変質する分離層とを介して積層してなる円形の積層体において、基板の半径方向の所定領域に積層される分離層の少なくとも一部に、支持体を介して光を照射する光照射工程と、光を照射した積層体に力を加え、積層体から支持体を分離する分離工程と、を包含する支持体分離方法がある(例えば、特許文献1参照)。
基板の半径方向の所定領域とは、基板の内周部における回路形成領域の全周を囲い、かつ、回路形成領域よりも外側の非回路形成領域の半径方向における幅の65%以上、100%未満の領域を占める(環状の)領域である。さらに所定領域は、積層体の中心点を中心とした所定の角度で所定領域を(周方向へ)等分割した分割所定領域(扇形の分割領域)からなる。
光照射工程では、レーザ照射装置から分割領域ごとにレーザ光を照射する光照射段階と、積層体を周方向へ所定の角度ずつ回動させる回動段階とを交互に繰り返すことにより、分割領域の全域にレーザ光を照射して分離層の一部を環状に変質させるか、又は周方向へ等間隔に配置された複数の分割領域の一部のみにレーザ光を照射して分離層の一部を扇形に変質させている。
分離工程では、積層体から支持体(サポートプレート)を分離して、変質した分離層の一部に力を集中させることにより、変質した分離層の一部が破壊された後、レーザ光を照射されていない領域における分離層の他部に対して力を集中させ、積層体からサポートプレートを分離可能にしている。
また、レーザリフトオフとして、サファイア基板とセクションとの間の界面にレーザ光が照射されることにより、サファイア基板からGaN層を分離させる材料層の分離方法には、ビームホモジェナイザーによりビームスポット(レーザビーム)の形状を制約するものがある(例えば、特許文献2参照)。
レーザビームの形状制約は、LEDダイ(チップ)に対応して分離されたセクションを囲むような照射とすることにより、実質的にレーザビームが均一に形成される。このため、レーザ光の照射による衝撃波が緩和され、リフトオフ工程中におけるLEDチップやGaN層の割れを低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-084910号公報
【文献】特表2007-534164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光照射部から積層体に照射される光としてレーザ光を用いた場合には、反りや凹凸などの塑性変形が生じた積層体の分離層に対して、レーザ光の焦点位置を合わせる調整が容易ではなく、分離層の全面に対してレーザ光を均一に照射して分離(剥離)させることが非常に困難であった。
しかし乍ら、特許文献1に記載のものでは、基板において半径方向の分割所定領域からなる所定領域に積層される分離層の少なくとも一部のみに支持体を介してレーザ光が照射されるため、分離層の全部にはレーザ光が照射されない。
このため、積層体の分離層に対するレーザ光の照射ムラが部分的に発生し易くなって、分離層においてレーザ出力の不足した部位や未照射部位が部分的に剥離不良を起こすことや、逆にレーザ出力の強過ぎた部位は基板に搭載されたチップの回路基板に形成されているデバイスにダメージを起こすことや、レーザ光の過照射による煤の発生を起こすなどの問題があった。
特に、積層体が僅かでも反りや凹凸などの塑性変形がある場合には、積層体の端から連続的にレーザ光を照射して順次剥離させると、連続した広範囲な領域では反りや凹凸などの塑性変形による内部の応力が局部的に解放されるため、未だ照射されない領域との界面でクラックが入ることや、基板に搭載されたチップの回路基板に形成されているデバイスにダメージを与えることや、最悪の場合には積層体が割れる可能性もあるという問題があった。
また、特許文献2に記載のものでは、LEDチップのサイズや配置に応じたビームホモジェナイザーを用いるため、レーザビームの形状が制約されてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために本発明に係る転写装置は、第一板状部材に取り付けられた微小構造物を前記第一板状部材から剥離し、前記第一板状部材と対向する第二板状部材に接合させて移し替えられる転写装置であって、前記微小構造物が仮接着層を介して着脱自在に保持される前記第一板状部材と、前記第一板状部材と対向して厚み方向へ弾性変形可能な粘着層を有する前記第二板状部材と、前記第一板状部材又は前記第二板状部材のいずれか一方を他方に向けて前記仮接着層及び前記粘着層が少なくとも局所的に平行になるように厚み方向へ押し込む加圧部と、前記仮接着層に向け照射される光により前記仮接着層の接着力が低下するように変質させる変性剥離部と、前記加圧部及び前記変性剥離部を作動制御する制御部と、を備え、前記加圧部は、塑性変形した前記第一板状部材が前記第二板状部材に沿って形状修正されるように押動する押圧部位を有し、前記制御部は、前記加圧部の前記押圧部位により前記微小構造物の表面が前記粘着層に対して食い込むように押し込まれ、前記粘着層に前記微小構造物の前記表面を食い込ませた状態で、前記光の照射により前記仮接着層が変質されるように制御することを特徴とする。
また、本発明に係る転写装置は、第一板状部材に取り付けられた微小構造物を前記第一板状部材から剥離し、前記第一板状部材と対向する第二板状部材に接合させて移し替えられる転写装置であって、前記微小構造物が仮接着層を介して着脱自在に保持される前記第一板状部材と、前記第一板状部材と対向して厚み方向へ弾性変形可能な粘着層を有する前記第二板状部材と、前記第二板状部材を前記第一板状部材に向けて前記仮接着層及び前記粘着層が少なくとも局所的に平行になるように厚み方向へ押し込む加圧部と、前記仮接着層に向け照射される光により前記仮接着層の接着力が低下するように変質させる変性剥離部と、前記加圧部及び前記変性剥離部を作動制御する制御部と、を備え、前記第一板状部材は、前記仮接着層が設けられる第一対向面を有し、前記第二板状部材は、変形可能な材料からなり、前記粘着層が設けられる第二対向面を有し、前記加圧部は、前記第一板状部材の塑性変形に沿って前記第二対向面が変形するように押動する押圧部位を有し、前記制御部は、前記加圧部の前記押圧部位により前記微小構造物の表面が前記粘着層に対して食い込むように押し込まれ、前記粘着層に前記微小構造物の前記表面を食い込ませた状態で、前記光の照射により前記仮接着層が変質されるように制御することを特徴とする。
このような課題を解決するために本発明に係る転写方法は、第一板状部材に取り付けられた微小構造物を前記第一板状部材から剥離し、前記第一板状部材と対向する第二板状部材に接合させて移し替えられる転写方法であって、前記微小構造物が仮接着層を介して着脱自在に保持される前記第一板状部材が、厚み方向へ弾性変形可能な粘着層を有する前記第二板状部材と対向するように配置されるセット工程と、加圧部の押圧部位により前記第一板状部材又は前記第二板状部材のいずれか一方を他方に対して前記仮接着層及び前記粘着層が少なくとも局所的に平行になるように厚み方向へ押し込む加圧工程と、前記仮接着層に向け照射される光により前記仮接着層の接着力が低下するように変質させる変性工程と、を含み、前記加圧工程では、前記押圧部位による押し込みで、塑性変形した前記第一板状部材を前記第二板状部材に沿って形状修正させることにより、前記微小構造物の表面が前記粘着層に対して食い込むように厚み方向へ押し込まれ、前記変性工程では、前記微小構造物の前記表面が前記粘着層に食い込んだ状態で、前記光の照射により前記仮接着層を変質させることを特徴とする。
また、本発明に係る転写方法は、第一板状部材に取り付けられた微小構造物を前記第一板状部材から剥離し、前記第一板状部材と対向する第二板状部材に接合させて移し替えられる転写方法であって、前記微小構造物が仮接着層を介して着脱自在に保持される第一対向面を有する前記第一板状部材が、厚み方向へ弾性変形可能な粘着層が設けられる第二対向面を有する前記第二板状部材と対向するように配置されるセット工程と、加圧部の押圧部位により前記第二板状部材を前記第一板状部材に対して前記仮接着層及び前記粘着層が少なくとも局所的に平行になるように厚み方向へ押し込む加圧工程と、前記仮接着層に向け照射される光により前記仮接着層の接着力が低下するように変質させる変性工程と、を含み、前記加圧工程では、前記押圧部位による押し込みで、前記第一板状部材の塑性変形に沿って前記第二対向面を変形させることにより、前記微小構造物の表面が前記粘着層に対して食い込むように厚み方向へ押し込まれ、前記変性工程では、前記微小構造物の前記表面が前記粘着層に食い込んだ状態で、前記光の照射により前記仮接着層を変質させることを特徴とする。
ここで、「少なくとも局所的に平行」とは、押し込まれる仮接着層及び粘着層の一部が部分的に平行であるという意味であり、仮接着層及び粘着層の全部が全体的に平行であることも含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の実施形態(第一実施形態)に係る転写装置の全体構成を示す説明図であり、(a)が横断平面図、(b)が同一部切欠正面図、(c)が要部を部分拡大した一部切欠正面図である。
【
図2】本発明の実施形態(第一実施形態)に係る転写方法を示す説明図であり、(a)が搬入工程の一部切欠正面図、(b)がセット工程及び加圧工程の一部切欠正面図である。
【
図3】(a)が変性工程の一部切欠正面図、(b)が解除工程の一部切欠正面図である。
【
図4】(a)が一次搬出工程の一部切欠正面図、(b)が二次搬出工程の一部切欠正面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態(第二実施形態)に係る転写装置の全体構成を示す説明図であり、要部を部分拡大した一部切欠正面図である。
【
図6】本発明の他の実施形態(第三実施形態)に係る転写装置の全体構成を示す説明図であり、要部を部分拡大した一部切欠正面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態(第四実施形態)に係る転写装置の全体構成を示す説明図であり、要部を部分拡大した一部切欠正面図である。
【
図8】本発明の他の実施形態(第五実施形態)に係る転写装置の全体構成を示す説明図であり、要部を部分拡大した一部切欠正面図である。
【
図9】本発明の他の実施形態(第六実施形態)に係る転写装置の全体構成を示す説明図であり、要部を部分拡大した一部切欠正面図である。
【
図10】本発明の他の実施形態(第七実施形態)に係る転写装置の全体構成を示す説明図であり、要部を部分拡大した一部切欠正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る転写装置A及び転写方法は、
図1~
図10に示すように、互いに対向する第一板状部材1又は第二板状部材2のいずれか一方に取り付けられた微小構造物Mを剥離し、他方へ接合して移し替えるための微小構造物製造装置と、微小構造物製造装置を用いた微小構造物製造方法である。
このような転写装置A及び転写方法は、厚さが極めて薄い半導体ウエハ(極薄ウエハ)の処理工程や、WLP(wafer level packaging)やPLP(panel level packaging)のような半導体パッケージなどを製造することのために用いられる。
なお、第一板状部材1と第二板状部材2は、空間部Sに収容され、空間部Sの内側で微小構造物Mの剥離及び接合を行って微小構造物Mが移し替えられる。通常は、第一板状部材1と第二板状部材2が上下方向へ対向するように配置され、第一板状部材1及び第二板状部材2の厚み方向を以下「Z方向」という。Z方向と交差する第一板状部材1及び第二板状部材2に沿った方向を以下「XY方向」という。
図1~
図9に示される例の場合には、上方に転写元となる第一板状部材1が配置され、下方に転写先となる第二板状部材2を配置している。つまり、転写元の第一板状部材1に微小構造物Mが着脱自在に接合して保持される。
また、
図10に示される例の場合には、転写元の第一板状部材1が下方に配置され、第二板状部材2を上方に配置している。
【0008】
詳しく説明すると、本発明の実施形態に係る転写装置Aは、微小構造物Mを仮接着層11で着脱自在に保持するように設けられる第一板状部材1と、第一板状部材1と対向するように設けられる第二板状部材2と、第一板状部材1又は第二板状部材2のいずれか一方を他方に向けて厚み方向(Z方向)へ押圧するように設けられる加圧部3と、仮接着層11を変質(変性)させるように設けられる変性剥離部4と、を主要な構成要素として備えている。
さらに加えて、転写装置Aは、装置本体Bに対して第一板状部材1や第二板状部材2を搬送する搬送機構(図示しない)と,装置本体Bに向けて搬送された第一板状部材1及び第二板状部材2を支える支持部5と、加圧部3や変性剥離部4などを作動制御する制御部6と、を備えている。
微小構造物Mは、マイクロLEDやマイクロチップなどの微小素子を含む微小構造体M1,ガラス小片を含む微小絶縁片,これらに類似する微小部品などからなる。特に、微小構造体M1などは図示されるように、第一板状部材1に対して複数個それぞれ所定間隔毎に並列状に搭載された整列配置とすることが多い。
【0009】
第一板状部材1は、透明や半透明なガラス,セラミック,アクリル系樹脂などの硬質合成樹脂又は不透明な硬質合成樹脂などの剛性材料などで板状に形成されたドナー基板などからなる。
第一板状部材1の全体形状は、円形のウエハ形状や、矩形(長方形及び正方形を含む角が直角の四辺形)のパネル形状に形成される。
第一板状部材1において第二板状部材2と厚み方向(Z方向)へ対向する第一対向面1aは、全体的に平滑状な面として形成され、微小構造物Mが着脱自在に接合される仮接着層11を有する。
【0010】
仮接着層11は、適度な接着力を有し且つ仮接着層11の接着力が制御可能に変性(変質)する変性材料からなり、第一板状部材1の第一対向面1aに沿って均等な厚みで形成される。
仮接着層11の変性材料は、光反応樹脂などで構成される。変性材料の接着力を制御する方法としては、光Lの吸収などにより接着力が低下して微小構造物Mを剥離可能に変性させるものが用いられる。仮接着層11の変性材料を変質させる光Lとしては、レーザ光線L1,熱線(赤外線),その他の光線が挙げられ、その中では対象物に高エネルギー密度の光線が照射可能となるため、レーザ光線L1を用いることが好ましい。さらに仮接着層11の変性材料として微小構造物Mの剥離後には、容易に洗浄除去できるものを用いることが好ましい。
ところで、微小構造物M(微小構造体M1)となるマイクロLEDの作製方法には、透過性部材(サファイア基板)に積層されたデバイス層(窒化ガリウム系化合物結晶層)に対し、透過性部材からレーザ光線L1を照射して、透過性部材とデバイス層との界面部分を剥離するレーザリフトオフ(LLO)がある。
仮接着層11の具体例としてLLOを用いた場合には、サファイア基板(第一板状部材1)に窒化ガリウム層(仮接着層11)が成長された後、サファイア基板側からのレーザ光線L1の照射により、窒化ガリウム層がレーザ光線L1を吸収して、ガリウム(Ga)と窒素(N2)に分解され、窒化ガリウム層とサファイア基板との界面部分が剥離して、サファイア基板から窒化ガリウム系化合物結晶層(微小構造物M)が分離可能になる。この場合には、第一板状部材1が図示例のような円形のウエハ形状に形成される。
また、仮接着層11の他の例としては、第一板状部材1の第一対向面1aに対して仮接着層11を挟んで微小構造物M(微小構造体M1や微小絶縁片や微小部品)が仮止めされ、仮接着層11に対するレーザ光線L1,熱線(赤外線),その他の光線などからなる光Lの照射により、仮接着層11が変質して、第一対向面1aから微小構造物Mを分離可能にしたものなどが挙げられる。
【0011】
第二板状部材2は、不透明な硬質合成樹脂又は透明や半透明の軟質合成樹脂などで板状に形成されたリリース基板などからなる。さらに、透明や半透明な第二板状部材2としては、環状オレフィン開環重合/水素添加体(COP)や超薄型ガラス(UTG)などの薄く剛性が低いて変形可能な軟質材料からなるものも含まれる。
第二板状部材2の全体形状は、円形のウエハ形状や、矩形のパネル形状に形成される。第二板状部材2のサイズは、幅方向・長さ方向(XY方向)及び厚み方向(Z方向)が第一板状部材1のサイズと略同じ、又は第一板状部材1のサイズよりも大きくすることが好ましい。
第二板状部材2において第一板状部材1とZ方向へ対向する第二対向面2aは、全体的に平滑面として形成され、微小構造物Mの表面Maと対向する粘着層21を有する。
粘着層21は、粘着性を有し且つZ方向へ弾性変形可能な材料で、第二対向面2aに沿って均一な厚みとなるように形成される。粘着層21の厚みは、微小構造物Mの表面Maが粘着層21の外表面から所定深まで食い込み可能に設定される。
【0012】
加圧部3は、第一板状部材1の第一対向面1aに仮接着層11を介して着脱自在に接合された微小構造物Mを、第二板状部材2の第二対向面2aの粘着層21に向けて厚み方向(Z方向)へ押し込んで相対的に接近させるプレス機である。
加圧部3は、第一板状部材1又は第二板状部材2のいずれか一方に当接して他方へ押し込む押圧部位3aを有する。
押圧部位3aは、第一板状部材1の第一非対向面1b
の全面又は一部や、第二板状部材2の第二非対向面2bの全面又は一部に当接して、第一板状部材1の第一対向面1a及び仮接着層11と、第二板状部材2の第二対向面2a及び粘着層21と、が少なくとも局所的(全面的又は部分的)に平行となるようにZ方向へ押動する。
なお、押圧部位3aによる押し込みに際し、微小構造物Mが仮接着層11を介して接合される第一板状部材1は、反りや凹凸などにより第一対向面1aの全面又は一部
が曲面などの非平滑に塑性変形を生じることがある。この場合には、押圧部位3aで仮接着層11及び粘着層21の全面又は一部が平行となるように押動することにより、平滑な第二対向面2aに沿って第一板状部材1の塑性変形を形状修正(矯正)させることや、第一板状部材1の塑性変形に沿って第二対向面2aを変形させるようにしている。
このような押圧部位3aの作動により、第一板状部材1の第一対向面1aに仮接着層11を介して着脱自在に接合した微小構造物Mは、少なく
とも表面Maが全体的に同じ加圧状態で粘着層21に押し込まれ、表面Maを粘着層21に食い込ませた状態で粘着される。
粘着層21に対する微小構造物Mの押し込み方法、すなわち押圧部位3aの具体例としては、
図1~
図7に示される面状押圧部位31を有する全面加圧方式,
図8に示される枠状押圧部位35を有する一部加圧方式,
図9~
図10に示される移動押圧部位36,37を有する移動加圧方式などが挙げられる。また、
図1~
図5,
図8~
図10示される押圧部位3aを機械的に移動させて加圧する機械的加圧タイプと、
図6及び
図7に示される押圧部位3aを空間部Sの内側と外側に生じる圧力差で移動させて加圧する差圧タイプに分けられる。
【0013】
変性剥離部4は、レーザ光線L1,熱線(赤外線),その他の光線などの光Lの照射などにより、仮接着層11を接着力が低下するように変質(変性)させて、仮接着層11から微小構造物Mを剥離可能にするための剥離機構である。
変性剥離部4は、透明又は半透明の第一板状部材1や第二板状部材2を透過して仮接着層11に向け光Lを照射する光照射部位41と、仮接着層11の全面に対する光照射部位41からの光照射位置Pを相対的にXY方向へ移動させる相対移動部位42と、を有する。
光照射部位41は、光Lとしてレーザ光線L1の照射により、僅かな外力で仮接着層11を剥離し得るように変質させることが好ましい。この場合には、光源となるレーザ発振器(図示しない)からレーザ光線L1を仮接着層11に対して厚み方向(Z方向)へ向けて導く光学系(図示しない)の一部として光照射部位41が設けられる。
相対移動部位42は、仮接着層11又は光照射部位41のいずれか一方、若しくは仮接着層11及び光照射部位41の両方を移動させる光軸移動機構であり、少なくとも光照射部位41からの光Lの照射方向(Z方向)と交差する二方向(XY方向)へ相対的に移動させるように構成される。
図1~
図5などに示される例の場合には、光照射部位41が固定して配置され、相対移動部位42として第一板状部材1をXYθ方向へ相対的に移動させるXYステージなどが用いられる。
また、その他の例として図示しないが、レーザ光線L1に代えて、熱線(赤外線)やその他の光線の照射により仮接着層11を剥離可能に変質させることや、相対移動部位42として光照射部位41のみを相対的に移動させるなど、図示例以外の構造に変更することも可能である。さらに、光照射部位41としてレーザ光線L1の光軸(主軸)を動かすレーザスキャナが用いられ、相対移動部位42となるXYステージなどとの併用で、光照射部位41からの光照射位置Pを相対的にXY方向へ移動させることも可能である。
【0014】
支持部5は、後述する搬送機構(図示しない)で装置本体Bに向け搬送された第一板状部材1と第二板状部材2を厚み方向(Z方向)へ対向するように支える支持機構である。
支持部5の近傍(図示例では上方)には、第一板状部材1及び第二板状部材2を収容するために必要な空間部Sが形成される。
支持部5は、第一板状部材1及び第二板状部材2の支持台51を有する。支持台51は、装置本体Bに設けられ、その外表面に凹部52を有して、第一板状部材1や第二板状部材2がXY方向へ位置ズレ不能に載置される凹部52を有することが好ましい。
図1~
図5に示される例の場合には、搬入された転写前の第一板状部材1と第二板状部材2を受け取って凹部52へ誘導するリフトピンなどからなるリフト機構53が、支持台51を貫通して設けられる。凹部52は、下方の転写先となる第二板状部材2がXY方向へ移動不能に載置されるように形成される。装置本体Bに対して支持台51をXYステージなどの相対移動部位42でXYθ方向へ移動可能にしている。
また、その他の例として図示しないが、支持部5を図示例以外の構造に変更することも可能である。
【0015】
制御部6は、加圧部3,変性剥離部4,支持部5などとそれぞれ電気的に接続した制御回路(図示しない)を有するコントローラである。
さらに制御部6は、それ以外にも転写前の第一板状部材1と第二板状部材2を支持部5に向け搬入し、且つ転写後の第一板状部材1と第二板状部材2を支持部5から搬出するための搬送機構(図示しない)などとも電気的に接続している。
制御部6となるコントローラは、制御回路に予め設定されたプログラムに従って、予め設定されたタイミングで順次それぞれ作動制御している。
【0016】
そして、制御部6の制御回路に設定されたプログラムを、転写装置Aによる転写方法として説明する。
本発明の実施形態に係る転写装置Aを用いた転写方法は、第一板状部材1を第二板状部材2に対し厚み方向(Z方向)へ対向させて配置するセット工程と、第一板状部材1又は第二板状部材2のいずれか一方を他方に対して厚み方向(Z方向)へ押し込む加圧工程と、仮接着層11を仮接着層11の接着力が低下するように変質させる変性工程と、を主要な工程として含んでいる。
さらに、セット工程の前工程として第一板状部材1及び第二板状部材2の搬入工程と、変性工程の後工程として第一板状部材1及び第二板状部材2の搬出工程を含むことが好ましい。
搬入工程から搬出工程までを
図1(b)(c)及び
図2(a)~
図4(b)に基づいて説明すると、搬入工程よりも前の初期状態で、
図2(a)に示されるように、加圧部3を非加圧の待機位置に移動させて、第一板状部材1及び第二板状部材2の収容に必要な空間部Sが形成されている。
【0017】
搬入工程では、搬送ロボットなどからなる搬送機構(図示しない)の作動により、図示例の場合には、転写前の第一板状部材1と第二板状部材2を重ね合わせた状態で空間部Sに向け搬入している。
また、図示例の他に、第一板状部材1と第二板状部材2を別々に空間部Sに向けて搬入することも可能である。
セット工程では、
図2(b)に示されるように、転写前の第一板状部材1と第二板状部材2をリフト機構53で受け取り、支持台51の凹部52に向け導かれる。
図示例の場合には、下方の転写先となる第二板状部材2が凹部52に入ることで、XY方向へ移動不能に位置決めされる。
加圧工程では、
図1(b)(c)及び
図2(b)に示されるように、押圧部位3aにより第一板状部材1又は第二板状部材2のいずれか一方に当接して、仮接着層11及び粘着層21が少なくとも局所的に平行になるように他方へ押し込む。
この際、
図2(b)の一点鎖線に示されるように、カメラなどの位置検出器Cにより、第一板状部材1や微小構造物Mなどの位置を検出し、この検出値に基づいて相対移動部位42により微調整することが好ましい。
これにより、第一板状部材1の第一対向面1aに仮接着層11を介して着脱自在に接合した微小構造物Mの表面Maが、全体的に同じ加圧状態で粘着層21に押し込まれ、粘着層21に食い込んで粘着される。
図示例の場合には、微小構造物M(微小構造体M1)として整列配置されたマイクロLEDチップの表面Maとなる接続端子を、粘着層21に食い込むように粘着している。
【0018】
変性工程では、
図1(b)及び
図3(a)に示されるように、変性剥離部4による光Lの照射などで、仮接着層11を接着力が低下するように変質(変性)させて、仮接着層11から微小構造物Mの裏面Mbが剥離される。
この際、図示例の場合には、光照射部位41からレーザ光線L1が、透明又は半透明な第一板状部材1を透過して仮接着層11に照射されると同時に、相対移動部位42となるXYステージで支持台51を介して第一板状部材1及び第二板状部材2がXYθ方向へ相対的に移動されることで、仮接着層11の全面にレーザ光線L1を照射している。
これにより、微小構造物Mの表面Maを粘着層21に食い込ませた状態で、仮接着層11から微小構造物Mが第二板状部材2の粘着層21に移し替えられる。
変性工程の完了後は、
図3(b)に示されるように、押圧部位3aによる押し込みが解除される。
搬出工程では、
図4(a)及び
図4(b)に示されるように、転写後の第一板状部材1と第二板状部材2が、空間部Sから順次搬出される。
その後は、上述した作動が繰り返される。
【0019】
次に、本発明の第一実施形態~第七実施形態に係る転写装置Aについて説明する。
図1~
図4に示される第一実施形態の転写装置A1は、加圧部3の押圧部位3aが面状押圧部位31を有する全面加圧方式であり、面状押圧部位31で第一板状部材1を全面的に押圧して仮接着層11と粘着層21を相対的に接近させている。
面状押圧部位31は、変形不能な剛性材料で第一板状部材1とほぼ同じ又はそれよりも大きいサイズに成形した板状体3bの先端面に沿って平滑に形成され、第一非対向面1bと全面的に当接して加圧する。
面状押圧部位31の具体例として
図1(a)(b)(c)~
図4(a)(b)に示される例の場合には、石英ガラスなどの透明又は半透明な剛性材料からなる板状体3bと、板状体3bをZ方向へ押圧する押さえ部材3cと、を有する。光照射部位41からの光L(レーザ光線L1)は、透明又は半透明な板状体3b及び第一板状部材1を透過して仮接着層11に照射される。
押さえ部材3cは、板状体3bで第一板状部材1を第二板状部材2に向けてZ方向へ機械的に加圧する機械的加圧タイプの治具である。
図示例では、板状体3bの外周部に加圧枠3dが取付けられ、加圧枠3dに対して複数の押さえ部材3cをそれぞれ周方向へ所定間隔毎に配置することが好ましい。
図示例の押さえ部材3cは、加圧枠3dと支持部5の支持台51とに亘り揺動自在に設けられたクランプ3c1である。クランプ3c1は、その駆動部(図示しない)の作動又は作業者による事前作業で、クランプ3c1を加圧枠3dに係合されることにより、板状体3bが第一板状部材1の全面を第二板状部材2に向けZ方向へ押圧するように接近移動させる。
押さえ部材3c(クランプ3c1)の作動により板状体3bの面状押圧部位31で、第一板状部材1を第二板状部材2に向けて仮接着層11及び粘着層21が全面的に平行となるように押し込むことが可能になる。このため、第一板状部材1に仮接着層11で着脱自在に保持した微小構造物Mの表面Maを、全体的に同じ加圧状態で粘着層21に押し込むことができる。
また、図示例では、加圧部3の板状体3bや加圧枠3dを非加圧の待機位置に移動させるために、リフトピンなどからなる加圧解放機構3eを有している。
【0020】
図5に示される第二実施形態の転写装置A2は、加圧部3の押さえ部材3cとして昇降杆3c2を加圧枠3dと支持部5の支持台51とに亘り設けた構成が、前述した第一実施形態とは異なり、それ以外の構成は第一実施形態と同じものである。
昇降杆3c2は、加圧枠3dの昇降手段として螺子が刻設され、その駆動部(図示しない)の作動又は作業者による事前作業で、昇降杆3c2を回転させることにより、板状体3bが第一板状部材1を第二板状部材2に向けZ方向へ押圧するように接近移動させる。
昇降杆3c2の作動により板状体3bの面状押圧部位31で、第一板状部材1を第二板状部材2に向けて仮接着層11及び粘着層21が全面的に平行となるように押し込むことが可能になる。
【0021】
図6に示される第三実施形態の転写装置A3は、加圧部3の押圧部位3aが空間部Sの内側と外側に生じる圧力差を利用した差圧タイプである構成が、前述した第一実施形態や第二実施形態とは異なり、それ以外の構成は第一実施形態や第二実施形態と同じものである。
差圧タイプの押圧部位3aは、第一板状部材1及び第二板状部材2を気密状に収容する密閉構造の空間部Sと、空間部Sの内圧を圧力調整する調圧部33と、を有する。
密閉構造の空間部Sは、少なくとも加圧工程において第一板状部材1が第二板状部材2に向けてZ方向へ移動可能となるように構成される。空間部Sには、第一板状部材1及び第二板状部材2を収容する気密な内側領域と、空間部Sの外側に形成される外部空間Tに亘って連通するように通路34が形成される。
調圧部33は、例えば真空ポンプやコンプレッサなどの調圧用駆動源(図示しない)を有し、調圧用駆動源の作動で空間部S内の気体(空気)を吸引して外部空間Tに排気することにより、空間部Sの内圧が減圧されて大気雰囲気から真空又は真空に近い低圧雰囲気や所定の高圧雰囲気まで設定可能になる。また、これと逆の調圧部33の作動などで、空間部Sの内圧を上昇させることも可能である。
図示例では、第一実施形態や第二実施形態と同様に、面状押圧部位31を有する全面加圧方式が用いられ、面状押圧部位31が形成される板状体3bの先端面と支持部5の支持台51との間に、Oリングなどの弾性変形可能なシール部材54を挟み込で密閉させている。
このため、調圧部33の作動による空間部Sの減圧で板状体3bを支持台51に向けてZ方向へ接近移動されることにより、板状体3bの面状押圧部位31で第一板状部材1が全面的に押圧されて仮接着層11と粘着層21を相対的に接近させている。
これにより、差圧タイプの押圧部位3aは、機械的加圧タイプと同様に、第一板状部材1を第二板状部材2に向けて仮接着層11及び粘着層21が全面的に平行に押し込むことが可能になる。このため、第一板状部材1に仮接着層11で着脱自在に保持した微小構造物Mの表面Maを、全体的に同じ加圧状態で粘着層21に押し込むことができる。
さらに、光L(レーザ光線L1)の照射による仮接着層11の変質に伴ってガスが発生しても、空間部S内の気体を通路34から吸引して外部空間Tに排気して除去することが可能になる。このため、第二板状部材2に対する第一板状部材1の押し込み圧力が変化し難くなるとともに、汚染の少ない剥離を行うことができる。
【0022】
図7に示される第四実施形態の転写装置A4は、加圧部3の押圧部位3aが肉厚の薄い板状体3b′の面状押圧部位31を有する全面加圧方式である構成が、前述した第三実施形態とは異なり、それ以外の構成は第三実施形態と同じものである。
肉厚の薄い板状体3b′の面状押圧部位31は、第三実施形態の転写装置A3で説明した差圧タイプを用いることにより、厚みの薄い板状体3b′の面状押圧部位31であっても、第一板状部材1を全面的に押圧して仮接着層11と粘着層21を相対的に接近させることが可能になる。
厚みが薄い板状体3b′としては、COPやUTGなどの剛性が低い透明又は半透明な軟質材料で成形された薄型樹脂板や超薄型ガラスなどを用いることが可能になる。このような厚みの薄い板状体3b′の外周部には、補強用の枠状部材3fが固着され、補強用の枠状部材3fで変形不能となった板状体3b′の外周部を、シール部材54が配置される支持台51の台表面51aと対向させて確実に密閉している。
光照射部位41からの光L(レーザ光線L1)は、透明又は半透明な厚みの薄い板状体3b′と第一板状部材1を透過して仮接着層11に照射される。
これにより、光L(レーザ光線L1)が肉厚の厚い板状体3b及び第一板状部材1を透過して仮接着層11に照射される第一実施形態~第三実施形態に比べ、光L(レーザ光線L1)のエネルギー損失を減少させて効率が良いレーザ照射が可能になる。
【0023】
図8に示される第五実施形態の転写装置A5は、加圧部3の押圧部位3aが枠状押圧部位35を有する一部加圧方式であり、枠状押圧部位35で第一板状部材1を部分的に押圧して仮接着層11と粘着層21を相対的に接近させる構成が、前述した第一実施形態~第四実施形態とは異なり、それ以外の構成は第一実施形態~第四実施形態と同じものである。
枠状押圧部位35は、変形不能な剛性材料で第一板状部材1よりも大きなサイズに成形した枠状体3gの内側先端面に沿って平滑に形成され、第一非対向面1bの外周部と部分的に当接して加圧する。
枠状押圧部位35の具体例として図示例の場合には、枠状体3gで第一板状部材1を第二板状部材2に向けてZ方向へ機械的に加圧する機械的加圧タイプの昇降部材3hを有する。光照射部位41からの光L(レーザ光線L1)は、枠状体3gの中央に開設された開口部3g1を通過するとともに、透明又は半透明な第一板状部材1のみを透過して仮接着層11に照射される。
これにより、光L(レーザ光線L1)は、第一板状部材1のみを透過して仮接着層11に照射されるため、肉厚の薄い板状体3b′及び第一板状部材1を透過して仮接着層11に照射する第四実施形態に比べ、光L(レーザ光線L1)のエネルギー損失を更に減少させて照射ができる。
【0024】
昇降部材3hは、枠状体3gを介して第一板状部材1が第二板状部材2に向けてZ方向へ押圧するように構成される昇降機構であり、枠状に形成された昇降部材3hと枠状体3gとを、板バネなどの弾性材料からかるダイヤフラム3iで連結している。昇降部材3hは、その駆動部(図示しない)の作動又は作業者による事前作業で、昇降部材3hを昇降移動されることにより、ダイヤフラム3iを介して枠状体3gが第一板状部材1を第二板状部材2に向けZ方向へ押圧するように接近移動させる。
昇降部材3hの作動により枠状体3gの枠状押圧部位35で、第一板状部材1を第二板状部材2に向けて仮接着層11及び粘着層21が全面的に平行となるように押し込むことが可能になる。
さらに、第五実施形態の転写装置A5では、第三実施形態や第四実施形態と同様に、第一板状部材1及び第二板状部材2を収容する空間部Sが密閉構造に構成されている。図示例の枠状体3gは、ダイヤフラム3iと支持部5の支持台51との間に、第一板状部材1が第二板状部材2の周りを囲むように形成されるとともに、Oリングなどのシール材3jで密閉し、空間部Sと外部空間を連通させる通孔3kが開穿される。このため、第二板状部材2に対する第一板状部材1の押し込み圧力が変化し難くなるとともに、汚染の少ない剥離を行うことができる。
【0025】
図9に示される第六実施形態の転写装置A6は、加圧部3の押圧部位3aが移動押圧部位36を有する移動加圧方式(機械的加圧タイプ)であり、移動押圧部位36で第一板状部材1を部分的に押圧して仮接着層11と粘着層21を相対的に接近させる構成が、前述した第一実施形態~第五実施形態とは異なり、それ以外の構成は第一実施形態~第五実施形態と同じものである。
移動押圧部位36は、第一板状部材1のXY方向のいずれか一方の幅よりも大きなサイズの杆状に成形した棒状体3mの先端に沿って平滑に形成され、第一非対向面1bと部分的に当接して加圧する。
移動押圧部位36の具体例として図示例の場合には、第一板状部材1の幅よりも長い円柱状(ロール状)や角柱状に形成される棒状体3mと、棒状体3mで第一板状部材1を第二板状部材2に向けてZ方向へ機械的に加圧する機械的加圧タイプの押圧構造(図示しない)と、を有する。棒状体3mの押圧構造は、第一板状部材1の第一非対向面1bに対して棒状体3mをXY方向のいずれか一方と交差する方向へ相対的に移動させることにより、棒状体3mの自重で第一板状部材1の全面が第二板状部材2に向けZ方向へ押圧されるように接近移動する。
図示例では、棒状体3mが変形不能な剛性材料からなる支軸の外周面をゴムなどの弾性変形可能な材料からなる表皮層で覆ったローラであり、第一板状部材1に対する光照射部位41からの光L(レーザ光線L1)の相対的な照射移動と同期して棒状体3mを移動させることで、仮接着層11の全面に光L(レーザ光線L1)が照射される。
棒状体3mの作動により移動押圧部位36で、第一板状部材1を第二板状部材2に向けて仮接着層11及び粘着層21が部分的に平行となるように押し込むことが可能になる。
これにより、第一板状部材1や第二板状部材2のサイズが大型(大面積)であっても、棒状体3mによる粘着層21への微小構造物Mの押し込みと、光L(レーザ光線L1)の照射による仮接着層11から微小構造物Mの剥離と、を同時進行させることが可能になる。このため、第一板状部材1や第二板状部材2のサイズが大型(大面積)であっても、微小構造物Mの粘着状態及び剥離状態にムラが発生し難くなる。
特に、光照射部位41からの光L(レーザ光線L1)を挟むように一対の棒状体3mが設けられ、一対の棒状体3mを光L(レーザ光線L1)の光照射位置Pと接近するように配置することが好ましい。
この場合には、光L(レーザ光線L1)の照射タイミングで微小構造物Mの押し込みを近傍位置で行えるため、第一板状部材1に反り変形や凹凸変形があっても、微小構造物Mの粘着状態及び剥離状態にムラが更に発生し難くなる。
【0026】
図10に示される第七実施形態の転写装置A7は、加圧部3の押圧部位3aで、変形可能な第二板状部材2の粘着層21′を、仮接着層11′に向けて厚み方向(Z方向)へ押し込むようにした構成が、前述した第六実施形態とは異なり、それ以外の構成は第六実施形態と同じものである。
第一板状部材1は、仮接着層11′が設けられる第一対向面1a′を有し、第二板状部材2は、粘着層21′が設けられる第二対向面2a′を有している。
図示例では、転写元の第一板状部材1が下方に配置され、COPやUTGなどの薄くて剛性が低い軟質材料からなる第二板状部材2を上方に配置している。
さらに、第七実施形態の押圧部位3aは、第六実施形態の移動押圧部位36と同様な構造である第二の移動押圧部位37を有する移動加圧方式(機械的加圧タイプ)が用いられ、第二板状部材2の第二非対向面2b′に対して棒状体3mを相対的に移動させることにより、棒状体3mの自重で第二板状部材2の全面が第一板状部材1に向けZ方向へ押圧されるように接近移動する。
棒状体3mの作動により第二の移動押圧部位37で、第二板状部材2を第一対向面1a′に向けて粘着層21′及び仮接着層11′が部分的に平行となるように押し込むことが可能になる。
第七実施形態の変性剥離部4は、光照射部位41などからの光L(レーザ光線L1)が、透明又は半透明な第一板状部材1を透過して仮接着層11に照射される。
また、その他の例として図示しないが、加圧部3の押圧部位3a
として面状押圧部位31を有する全面加圧方式や、枠状押圧部位
35を有する一部加圧方式に変更することも可能である。
【0027】
このような本発明の実施形態に係る転写装置A及び転写方法によると、先ず加圧部3によって、第一板状部材1又は第二板状部材2のいずれか一方が他方に向け、仮接着層11及び第二板状部材2の粘着層21が少なくとも局所的に平行になるように厚み方向(Z方向)へ押し込まれる。
これにより、第一板状部材1に仮接着層11を介して着脱自在に保持した微小構造物Mの表面Maが、全体的に同じ加圧状態で粘着層21に押し込まれ、粘着層21に食い込んで粘着される。
その次に微小構造物Mの食い込み状態を保持しながら、変性剥離部4で仮接着層11を変質させることにより、仮接着層11から微小構造物M(の裏面Mb)が剥離される。これと同時に、微小構造物Mの表面Maが粘着層21に食い込んだ状態で第二板状部材2に移し替えられる。
したがって、第一板状部材1の反りや凹凸などの塑性変形と関係なく仮接着層11から微小構造物Mを第二板状部材2の粘着層21に対して姿勢崩れせずに移し替えることができる。
その結果、積層体の分離層に対してレーザ光の照射ムラが部分的に発生し易い従来のものに比べ、第一板状部材1反りや凹凸などの塑性変形があっても、微小構造物Mの粘着状態にムラが生じず、微小構造物Mの剥がれ不良を防止できる。
さらに、微小構造物Mの表面Maを第二板状部材2の粘着層21に食い込ませているため、変性剥離部4による仮接着層11の変質に伴う微小構造物Mの剥離時に位置ずれが発生せず、高精度な移し替えを実現できる。このため、歩留まりの向上が図れる。
【0028】
特に、第一板状部材1に仮接着層11を介して複数の微小構造物Mを並列状に整列配置することが好ましい。
この場合には、加圧部3による第一板状部材1の押圧で、第一板状部材1に整列配置された複数の微小構造物Mの表面Maが、第二板状部材2の粘着層21に対してそれぞれ平行となるように押し込まれる。このため、複数の微小構造物Mの表面Maがそれぞれ粘着層21に食い込んで粘着される。
これに続き変性剥離部4で仮接着層11を変質させることにより、仮接着層11から複数の微小構造物M(の裏面Mb)がそれぞれ剥離される。これと同時に、複数の微小構造物Mの表面Maが粘着層21に食い込んだ状態で第二板状部材2にそれぞれ移し替えられる。
したがって、仮接着層11から複数の微小構造物Mを第二板状部材2の粘着層21に対して均一に移し替えることができる。
その結果、複数の微小構造物Mの粘着状態にムラが生じず、複数の微小構造物Mの剥がれ不良をそれぞれ防止できる。
さらに、複数の微小構造物Mの表面Maを第二板状部材2の粘着層21に食い込ませているため、変性剥離部4による仮接着層11の変質に伴う複数の微小構造物Mの剥離時に位置ずれが発生せず、高精度な移し替えを実現できる。このため、歩留まりの更なる向上が図れる。
【0029】
さらに、変性剥離部4は、レーザ光線L1を含む光Lの照射機構であることが好ましい。
この場合には、変性剥離部4から照射したレーザ光線L1などの光Lが、透明や半透明な第一板状部材1又は第二板状部材2を透過して仮接着層11に照射される。
これにより、仮接着層11が変質して微小構造物Mが仮接着層11から剥離されると同時に、微小構造物Mの表面Maが粘着層21に食い込んだ状態で第二板状部材2に移し替えられる。
したがって、レーザ光線L1を含む光Lの照射で仮接着層11から微小構造物Mを確実に剥離して第二板状部材2の粘着層21に移し替えることができる。
その結果、積層体の分離層に対してレーザ光の照射ムラが部分的に発生し易い従来のものに比べ、レーザ光線L1などの光Lの出力が強くなり過ぎず、微小構造物Mに形成されているデバイスにダメージを起こすことや、部分的な過照射により煤の発生を起こすこともない。
このため、第一板状部材1から微小構造物Mを第二板状部材2へ高精度な移し替えが実現できて、高性能で且つクリーンな製品の製造が図れる。
さらに、LEDチップのサイズや配置に応じたビームホモジェナイザーを用いる従来のものに比べ、ホモジナイザを用意する必要がなく、レーザ光線L1などの光L(レーザビーム)の照射位置決め精度の緩和が可能とともに、照射タクトの高速化が可能になる。
また、微小構造物Mの表面Maを第二板状部材2の粘着層21に食い込ませる際、その押込み量に応じてレーザ光線L1などの光Lの照射による衝撃波の緩和度合いを制御することができる。
【0030】
図1~
図9に示される例では、加圧部3が仮接着層11を第二板状部材2の粘着層21に向けて厚み方向(Z方向)へ押し込むように構成され、第一板状部材1は、仮接着層11が設けられる第一対向面1aを有し、第二板状部材2は、粘着層21が設けられる平滑な第二対向面2aを有している。
このような第一実施形態~第六実施形態の転写装置A1,A2,A3,A4,A5,A6によると、加圧部3で第一板状部材1の第一対向面1aを第二板状部材2の平滑な第二対向面2aに向けて押圧することにより、平滑な第二対向面2aに倣うように第一対向面1aの面形状が修正され、仮接着層11を介して着脱自在に保持した微小構造物Mが、平滑な第二対向面2aに沿った粘着層21と少なくとも局所的に平行になるように押し込まれる。
このため、第一板状部材1に反りや凹凸などの塑性変形があっても、加圧部3による押し込みで第一板状部材1の反りや凹凸などの塑性変形を、平滑な第二対向面2aの粘着層21に沿って矯正し、平滑な第二対向面2aの粘着層21に倣うように微小構造物Mが食い込んで粘着される。
これに続く変性剥離部4による仮接着層11の変質で微小構造物M(の裏面Mb)が剥離されると同時に、微小構造物Mの表面Maが平滑な第二対向面2aの粘着層21に食い込んだ状態で第二板状部材2に移し替えられる。
したがって、第一板状部材1の第一対向面1aの仮接着層11から微小構造物Mを、第二板状部材2の平滑な第二対向面2aを基準面として粘着層21に移し替えることができる。
その結果、第一板状部材1に反りや凹凸などの塑性変形があっても、第二板状部材2の平滑な第二対向面2aに沿って矯正でき、反りや凹凸などの塑性変形の影響が無い微小構造物Mの移し替えを行うことができる。
特に、第一板状部材1に仮接着層11を介して複数の微小構造物Mが並列状に整列配置される場合には、反りや凹凸などの塑性変形の影響が無く整列配置された複数の微小構造物Mを移し替えることができる。
【0031】
図6や
図7に示される例では、第一板状部材1及び第二板状部材2が気密状に収容される空間部Sを備え、加圧部3は、空間部Sの内側と外側の圧力差により、第一板状部材1又は第二板状部材2のいずれか一方が他方に向けて厚み方向(Z方向)へ押し込む押圧部位3aを有している。
このような第三実施形態の転写装置A3や第四実施形態の転写装置A4によると、空間部Sの内側と外側の圧力差で、押圧部位3aが第一板状部材1又は第二板状部材2のいずれか一方を他方に向けて厚み方向(Z方向)へ押し込む。
これにより、第一板状部材1に仮接着層11を介して着脱自在に保持した微小構造物Mの表面Maが、全体的に同じ加圧状態で粘着層21に押し込まれ、粘着層21に食い込んで粘着される。
したがって、差圧で仮接着層11から微小構造物Mを粘着層21に倣って均一に押し込むことができる。
その結果、第一板状部材1に反りや凹凸などの塑性変形があっても、微小構造物Mの粘着状態を均一にして、微小構造物Mの剥がれ不良を防止できる。
【0032】
図10に示される例では、加圧部3が、仮接着層11′に向けて第二板状部材2の粘着層21′を厚み方向(Z方向)へ押し込むように構成され、第一板状部材1は、仮接着層11′が設けられる第一対向面1a′を有し、第二板状部材2は、変形可能な材料からなり、粘着層21′が設けられる第二対向面2a′を有している。
このような第七実施形態の転写装置A7によると、加圧部3で第一板状部材1の第一対向面1a′に向けて第二板状部材2の第二対向面2a′を押圧することにより、第一対向面1a′に倣うように第二対向面2a′の面形状が修正され、仮接着層11′を介して着脱自在に保持した微小構造物Mが、第二対向面2a′に沿った粘着層21と少なくとも局所的に平行になるように押し込まれる。
このため、第一板状部材1に反りや凹凸などの塑性変形があっても、加圧部3による押し込みで第一対向面1a′及び仮接着層11′の反りや凹凸などの塑性変形に合わせて、第二対向面2a′及び粘着層21′を変形させ、仮接着層11′の反りや凹凸などの塑性変形に倣うように微小構造物Mが食い込んで粘着される。
これに続く変性剥離部4による仮接着層11′の変質で微小構造物M(の裏面Mb)が剥離されると同時に、微小構造物Mの表面Maが第二対向面2a′の粘着層21′に食い込んだ状態で第二板状部材2に移し替えられる。
したがって、第一板状部材1の第一対向面1a′を基準面として仮接着層11′から微小構造物Mを、第二板状部材2の第二対向面2a′の粘着層21′に移し替えることができる。
その結果、第一板状部材1の反りや凹凸などの塑性変形があっても、第一板状部材1の反りや凹凸などの塑性変形に倣って第二板状部材2の第二対向面2a′を変形でき、反りや凹凸などの塑性変形の影響が無い微小構造物Mの移し替えを行うことができる。
【0033】
なお、前示の実施形態(第一実施形態~第七実施形態)において図示例では、転写元を第一板状部材1とし、転写先を第二板状部材2としたが、これに限定されず、逆に転写元を第二板状部材2とし、転写先を第一板状部材1に変更してもよい。
さらに、粘着層21に対する微小構造物Mの押し込み方法として、
図1~
図7の全面加圧方式,
図8の一部加圧方式,
図9~
図10の移動加圧方式を例示したが、これに限定されず、図示例以外の加圧方式を用いてもよい。また、
図6及び
図7のみを差圧タイプとしたが、
図1~
図5や
図8~
図10に示される機械的加圧タイプを差圧タイプに変更してもよい。
特に、第一実施形態~第二実施形態の全面加圧方式では、板状体3b及び加圧枠3dを押さえ部材3c(クランプ3c1,昇降杆3c2)で押圧したが、これに限定されず、第五実施形態に記載の昇降部材3hやダイヤフラム3iで板状体3b及び加圧枠3dを押圧してもよい。
また、第三実施形態~第五実施形態で空間部Sを密閉構造としたが、これに限定されず、第一実施形態~第二実施形態及び第六実施形態~第七実施形態でも、第三実施形態~第五実施形態と同様に空間部Sを密閉構造としてもよい。
【符号の説明】
【0034】
A 転写装置 1 第一板状部材
1a,1a′ 第一対向面 11,11′ 仮接着層
2 第二板状部材 2a,2a′ 第二対向面
21,21′ 粘着層 3 加圧部
3a 押圧部位 4 変性剥離部
6 制御部 L 光
L1 レーザ光線 M 微小構造物
Ma 表面
【要約】
第一板状部材の反りや凹凸などの塑性変形と関係なく仮接着層から微小構造物を第二板状部材の粘着層に対して姿勢崩れせずに移し替える。
微小構造物が仮接着層を介して着脱自在に保持される第一板状部材と、第一板状部材と対向して厚み方向へ弾性変形可能な粘着層を有する第二板状部材と、第一板状部材又は第二板状部材のいずれか一方を他方に向けて仮接着層及び粘着層が少なくとも局所的に平行になるように厚み方向へ押し込む加圧部と、仮接着層をその接着力が低下するように変質させる変性剥離部と、加圧部及び変性剥離部を作動制御する制御部と、を備え、制御部は、加圧部により微小構造物の表面が粘着層に押し込まれ、粘着層に微小構造物の表面を食い込ませた状態で、変性剥離部により仮接着層が変質されるように制御することを特徴とする転写装置。