(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】空中像結像装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 30/60 20200101AFI20220804BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20220804BHJP
G02B 5/12 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
G02B30/60
G02B5/08 C
G02B5/12
(21)【出願番号】P 2022534306
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2022010679
【審査請求日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2021121746
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598033848
【氏名又は名称】株式会社アスカネット
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【氏名又は名称】中前 富士男
(72)【発明者】
【氏名】大坪 誠
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/021497(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/139035(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/198499(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0017089(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/00-30/60
G02B 5/00-5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行配置された入光面と出光面とを有する平板状に形成され、前記入光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第1の光反射面と、前記出光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第2の光反射面とを有し、前記第1の光反射面と前記第2の光反射面が、平面視して直交配置される空中像結像装置の製造方法であって、
透明樹脂が成型されることにより、一面側に、(a)一方の側面を垂直面とし他方の側面を傾斜面として一面側に拡開する断面三角形又は断面台形の複数の第1の直線溝が所定間隔で平行配置され、(b)隣り合う前記第1の直線溝の間に、一面側に第1の帯状平面部を有する断面台形の第1の凸条が形成され、他面側に、(c)一方の側面を垂直面とし他方の側面を傾斜面として他面側に拡開する断面三角形又は断面台形の複数の第2の直線溝が所定間隔で平行配置され、(d)隣り合う前記第2の直線溝の間に、他面側に第2の帯状平面部を有する断面台形の第2の凸条が形成され、前記各第1の直線溝の前記垂直面と、前記各第2の直線溝の前記垂直面が、平面視して直交配置された板状の成型体が形成される第1工程と、
前記成型体の前記各第1、第2の直線溝の内表面の少なくとも前記垂直面及び前記傾斜面が
層状の第1、第2の光反射材料で覆われて中間体が製造される第2工程と、
前記中間体
の前記各第1の直線溝
の前記第1の光反射材料
を含む内表面を覆う第1の反射防止層が形成され、前記中間体
の前記各第2の直線溝
の前記第2の光反射材料
を含む内表面を覆う第2の反射防止層が形成されて、前記各第1の直線溝の前記垂直面を覆う前記第1の光反射材料の前記垂直面側の表面を前記第1の光反射面とし、前記各第2の直線溝の前記垂直面を覆う前記第2の光反射材料の前記垂直面側の表面を前記第2の光反射面とする空中像結像装置が製造される第3工程とを有することを特徴とする空中像結像装置の製造方法。
【請求項2】
請求項
1記載の空中像結像装置の製造方法において、前記第2工程で、前記成型体の少なくとも前記各第1、第2の帯状平面部の表面に剥離可能な第1、第2の被覆層が形成された後、少なくとも前記各第1、第2の直線溝の前記垂直面及び前記傾斜面が前記第1、第2の光反射材料で覆われて前記中間体が製造され、前記第3工程で、前記中間体の少なくとも前記各第1、第2の直線溝の内表面を覆う前記第1、第2の光反射材料が第1、第2の反射防止材料で覆われた後、前記各第1、第2の帯状平面部に形成された前記第1、第2の被覆層と、該各第1、第2の被覆層上に付着した不要な第1、第2の光反射材料及び不要な第1、第2の反射防止材料が除去されて、前記第1、第2の反射防止層が形成されることを特徴とする空中像結像装置の製造方法。
【請求項3】
平行配置された入光面と出光面とを有する平板状に形成され、前記入光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第1の光反射面と、前記出光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第2の光反射面とを有し、前記第1の光反射面と前記第2の光反射面が、平面視して直交配置される空中像結像装置の製造方法
であって、
透明樹脂が成型されることにより、一面側に、(a)一方の側面を垂直面とし他方の側面を傾斜面として一面側に拡開する断面三角形又は断面台形の複数の第1の直線溝が所定間隔で平行配置され、(b)隣り合う前記第1の直線溝の間に、一面側に第1の帯状平面部を有する断面台形の第1の凸条が形成され、他面側に、(c)一方の側面を垂直面とし他方の側面を傾斜面として他面側に拡開する断面三角形又は断面台形の複数の第2の直線溝が所定間隔で平行配置され、(d)隣り合う前記第2の直線溝の間に、他面側に第2の帯状平面部を有する断面台形の第2の凸条が形成され、前記各第1の直線溝の前記垂直面と、前記各第2の直線溝の前記垂直面が、平面視して直交配置された板状の成型体が形成される第1工程と、
前記成型体の前記各第1、第2の直線溝の内表面の少なくとも前記垂直面及び前記傾斜面が第1、第2の光反射材料で覆われて中間体が製造される第2工程と、
前記中間体の一面側に前記各第1の直線溝及び前記各第1の帯状平面部を覆う非透光性の第1のカバー材が配置され、
前記中間体の他面側に前記各第2の直線溝及び前記各第2の帯状平面部を覆う非透光性の第2のカバー材が配置され
て、前記第1のカバー材の前記各第1の帯状平面部と重なる領域及び前記第2のカバー材の前記各第2の帯状平面部と重なる領域が、加圧されて前記各第1、第2の帯状平面部と接合され透明化することにより、前記第1のカバー材の前記各第1の直線溝と重なる領域及び前記第2のカバー材の前記各第2の直線溝と重なる領域にそれぞ
れ第1、第2の反射防止層が形成され
、前記各第1の直線溝の前記垂直面を覆う前記第1の光反射材料の前記垂直面側の表面を前記第1の光反射面とし、前記各第2の直線溝の前記垂直面を覆う前記第2の光反射材料の前記垂直面側の表面を前記第2の光反射面とする空中像結像装置が製造される第3工程とを有することを特徴とする空中像結像装置の製造方法。
【請求項4】
請求項
3記載の空中像結像装置の製造方法において、前記第3工程の前に、前記第2工程で、前記成型体の少なくとも前記各第1、第2の帯状平面部の表面に剥離可能な第1、第2の被覆層が形成され、少なくとも前記各第1、第2の直線溝の前記垂直面及び前記傾斜面が前記第1、第2の光反射材料で覆われた後、前記各第1、第2の帯状平面部に形成された前記第1、第2の被覆層と、該各第1、第2の被覆層上に付着した不要な第1、第2の光反射材料が除去されて、前記中間体が製造されることを特徴とする空中像結像装置の製造方法。
【請求項5】
平行配置された入光面と出光面とを有する平板状に形成され、前記入光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第1の光反射面と、前記出光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第2の光反射面とを有し、前記第1の光反射面と前記第2の光反射面が、平面視して直交配置される空中像結像装置の製造方法であって、
透明樹脂が成型されることにより、一面側に、(a)一方の側面を垂直面とし他方の側面を傾斜面として一面側に拡開する断面三角形又は断面台形の複数の直線溝が所定間隔で平行配置され、(b)隣り合う前記直線溝の間に、一面側に帯状平面部を有する断面台形の凸条が形成された板状の成型体が製造される第1工程と、
前記成型体の前記各直線溝の内表面の少なくとも前記垂直面及び前記傾斜面が
層状の光反射材料で覆われて中間体が製造される第2工程と、
前記中間体
の前記各直線溝
の前記光反射材料
を含む内表面を覆う反射防止層が形成されて光制御パネルが製造される第3工程と、
2つの前記光制御パネルが用いられ、一方の前記光制御パネルの前記各直線溝の前記垂直面と他方の前記光制御パネルの前記各直線溝の前記垂直面が、平面視して直交するように、一方の前記光制御パネルの一面側又は他面側と、他方の前記光制御パネルの一面側又は他面側が向かい合わせに配置され、一方の前記光制御パネルの前記各直線溝の前記垂直面を覆う前記光反射材料の前記垂直面側の表面を前記第1の光反射面とし、他方の前記光制御パネルの前記各直線溝の前記垂直面を覆う前記光反射材料の前記垂直面側の表面を前記第2の光反射面とする空中像結像装置が製造される第4工程とを有することを特徴とする空中像結像装置の製造方法。
【請求項6】
請求項
5記載の空中像結像装置の製造方法において、前記第2工程で、前記成型体の少なくとも前記各帯状平面部の表面に剥離可能な被覆層が形成された後、少なくとも前記各直線溝の前記垂直面及び前記傾斜面が前記光反射材料で覆われて前記中間体が製造され、前記第3工程で、前記中間体の少なくとも前記各直線溝の内表面を覆う前記光反射材料が反射防止材料で覆われた後、前記各帯状平面部に形成された前記被覆層と、該各被覆層上に付着した不要な光反射材料及び不要な反射防止材料が除去されて、前記反射防止層が形成されることを特徴とする空中像結像装置の製造方法。
【請求項7】
平行配置された入光面と出光面とを有する平板状に形成され、前記入光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第1の光反射面と、前記出光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第2の光反射面とを有し、前記第1の光反射面と前記第2の光反射面が、平面視して直交配置される空中像結像装置の製造方法
であって、
透明樹脂が成型されることにより、一面側に、(a)一方の側面を垂直面とし他方の側面を傾斜面として一面側に拡開する断面三角形又は断面台形の複数の直線溝が所定間隔で平行配置され、(b)隣り合う前記直線溝の間に、一面側に帯状平面部を有する断面台形の凸条が形成された板状の成型体が製造される第1工程と、
前記成型体の前記各直線溝の内表面の少なくとも前記垂直面及び前記傾斜面が光反射材料で覆われて中間体が製造される第2工程と、
前記中間体の一面側に前記各直線溝及び前記各帯状平面部を覆う非透光性のカバー材が配置され、該カバー材の前記各帯状平面部と重なる領域が、加圧されて前記各帯状平面部と接合され透明化することにより、該カバー材の前記各直線溝と重なる領域
に反射防止層が形成され
て光制御パネルが製造される第3工程と、
2つの前記光制御パネルが用いられ、一方の前記光制御パネルの前記各直線溝の前記垂直面と他方の前記光制御パネルの前記各直線溝の前記垂直面が、平面視して直交するように、一方の前記光制御パネルの一面側又は他面側と、他方の前記光制御パネルの一面側又は他面側が向かい合わせに配置され、一方の前記光制御パネルの前記各直線溝の前記垂直面を覆う前記光反射材料の前記垂直面側の表面を前記第1の光反射面とし、他方の前記光制御パネルの前記各直線溝の前記垂直面を覆う前記光反射材料の前記垂直面側の表面を前記第2の光反射面とする空中像結像装置が製造される第4工程とを有することを特徴とする空中像結像装置の製造方法。
【請求項8】
請求項
7記載の空中像結像装置の製造方法において、前記第3工程の前に、前記第2工程で、前記成型体の少なくとも前記各帯状平面部の表面に剥離可能な被覆層が形成され、少なくとも前記各直線溝の前記垂直面及び前記傾斜面が前記光反射材料で覆われた後、前記各帯状平面部に形成された前記被覆層と、該各被覆層上に付着した不要な光反射材料が除去されて、前記中間体が製造されることを特徴とする空中像結像装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれが例えば所定間隔で平行配置される複数の帯状の第1、第2の光反射面(鏡面)が、平面視して直交配置される空中像結像装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体表面(対象物)から発せられる光(散乱光)を用いて、空中にその物体の立体像(空中像=実像)を結像させるものとして、例えば、特許文献1に記載の立体像結像装置(光学結像装置)が知られている。この結像装置は、2枚の透明平板の内部に、この透明平板の一方の面に垂直に多数かつ帯状の金属反射面からなる光反射面を一定のピッチで並べて形成した第1、第2の光制御パネルを有し、この第1、第2の光制御パネルのそれぞれの光反射面が直交するように、第1、第2の光制御パネルの一面側を向い合わせて密着させたものである。
しかし、特許文献1の光制御パネルの製造に際しては、金属反射面が一面側に形成された一定厚みの板状の透明合成樹脂板やガラス板を、金属反射面が一方側に配置されるように多数枚積層して積層体を作製し、この積層体から各金属反射面に対して垂直な切り出し面が形成されるように切り出す必要があり、作業性や製造効率が悪かった。
そこで、特許文献2では、透明板材の表側に、傾斜面と垂直面とを有する断面三角形の溝、及び隣り合う溝によって形成される断面三角形の凸条がそれぞれ平行配置された成型母材をプレス成型等で製造し、各溝の垂直面のみに選択的に鏡面を形成して、第1、第2の光制御パネルを製造する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2009/131128号
【文献】国際公開第2018/138940号
【文献】国際公開第2018/138932号
【文献】特開2021-81451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2のように、各溝の垂直面のみに選択的に鏡面を形成することは簡単ではなく、傾斜面に沿った方向から傾斜面が影になるようにして、垂直面に向けてスパッタリング、金属蒸着、金属微小粒子の吹き付け、又はイオンビームの照射を行っても、溝の傾斜面及び底部(角部)の微小平面部、さらには凸条の頂部(角部)の微小平面部にも鏡面となる金属反射膜(金属被膜)が形成されることがある。そして、対象物から発せられて結像装置に入射する光の一部が、溝の垂直面以外に形成された金属反射膜で反射されると、結像に寄与する光の量が減少し、空中像が暗く、不鮮明になるという問題があった。また、観察者が空中像を観察する際に、結像装置の出光面側から結像装置に入射した光(太陽光、室内照明光等)の一部が、溝の垂直面以外に形成された金属反射膜で散乱又は反射することにより、空中像が白っぽくなり、鮮明性及び視認性が低下するという問題があった。これに対し、特許文献3では、溝の垂直面及び傾斜面に金属被膜を形成した後、傾斜面にレーザー光を照射して傾斜面に形成された金属被膜を除去することが提案されている。また、特許文献4では、凸条の頂部の微小平面部に付着した不要金属(金属被膜)を、剥離処理、研磨処理、又は溶解処理によって除去することが提案されている。
【0005】
しかし、特許文献3では、除去することを前提として傾斜面に金属被膜を形成しており、材料の無駄が多く、製造工程も煩雑で製造コストが増大し、量産性に欠けるという課題があった。また、特許文献4では、微小平面部の面積が小さいため、不要金属の除去作業に手間が掛かる割に、空中像の鮮明化における改善効果が少なく、却ってコストアップに繋がるという課題があった。また、特許文献2~4のように、断面三角形の溝の垂直面を利用して光反射面(鏡面)を形成する場合、溝を残したままでは、溝の内部(空間部)に存在する空気の屈折率と、光制御パネルの基材となる透明樹脂の屈折率との違いから、溝の内部の空気と透明樹脂との界面(=境目、主に溝の傾斜面)で、光の散乱、光の屈折及び分光が発生し、空中像の結像が妨げられる。そのため、特許文献2~4では、溝の垂直面に光反射面を形成した後に、光制御パネルの基材となる透明樹脂の屈折率と同等の屈折率を有する透明樹脂を溝の内部に充填する必要があり、製造工程が増加し、量産性が低下するという課題があった。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、製造工程が簡素で、量産性に優れ、製造コストが安価でありながら、鮮明な空中像を得ることが可能な空中像結像装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る空中像結像装置の製造方法は、平行配置された入光面と出光面とを有する平板状に形成され、前記入光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第1の光反射面と、前記出光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第2の光反射面とを有し、前記第1の光反射面と前記第2の光反射面が、平面視して直交配置される空中像結像装置の製造方法であって、
透明樹脂が成型されることにより、一面側に、(a)一方の側面を垂直面とし他方の側面を傾斜面として一面側に拡開する断面三角形又は断面台形の複数の第1の直線溝が所定間隔で平行配置され、(b)隣り合う前記第1の直線溝の間に、一面側に第1の帯状平面部を有する断面台形の第1の凸条が形成され、他面側に、(c)一方の側面を垂直面とし他方の側面を傾斜面として他面側に拡開する断面三角形又は断面台形の複数の第2の直線溝が所定間隔で平行配置され、(d)隣り合う前記第2の直線溝の間に、他面側に第2の帯状平面部を有する断面台形の第2の凸条が形成され、前記各第1の直線溝の前記垂直面と、前記各第2の直線溝の前記垂直面が、平面視して直交配置された板状の成型体が形成される第1工程と、
前記成型体の前記各第1、第2の直線溝の内表面の少なくとも前記垂直面及び前記傾斜面が層状の第1、第2の光反射材料で覆われて中間体が製造される第2工程と、
前記中間体の前記各第1の直線溝の前記第1の光反射材料を含む内表面を覆う第1の反射防止層が形成され、前記中間体の前記各第2の直線溝の前記第2の光反射材料を含む内表面を覆う第2の反射防止層が形成されて、前記各第1の直線溝の前記垂直面を覆う前記第1の光反射材料の前記垂直面側の表面を前記第1の光反射面とし、前記各第2の直線溝の前記垂直面を覆う前記第2の光反射材料の前記垂直面側の表面を前記第2の光反射面とする空中像結像装置が製造される第3工程とを有する。
【0008】
ここで、空中像には平面画像(二次元像)及び立体像(三次元像)が含まれ、対象物が、例えばディスプレイ等の画像表示手段に表示された画像であれば、その実像となる平面画像(二次元像)が空中像として結像し、対象物が、各種立体であれば、その実像となる立体像(三次元像)が空中像として結像する(以上、第2~第4の発明において同じ)。
【0009】
【0010】
第1の発明に係る空中像結像装置の製造方法において、前記第2工程で、前記成型体の少なくとも前記各第1、第2の帯状平面部の表面に剥離可能な第1、第2の被覆層が形成された後、少なくとも前記各第1、第2の直線溝の前記垂直面及び前記傾斜面が前記第1、第2の光反射材料で覆われて前記中間体が製造され、前記第3工程で、前記中間体の少なくとも前記各第1、第2の直線溝の内表面を覆う前記第1、第2の光反射材料が第1、第2の反射防止材料で覆われた後、前記各第1、第2の帯状平面部に形成された前記第1、第2の被覆層と、該各第1、第2の被覆層上に付着した不要な第1、第2の光反射材料及び不要な第1、第2の反射防止材料が除去されて、前記第1、第2の反射防止層が形成されることが好ましい。
【0011】
前記目的に沿う第2の発明に係る空中像結像装置の製造方法は、平行配置された入光面と出光面とを有する平板状に形成され、前記入光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第1の光反射面と、前記出光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第2の光反射面とを有し、前記第1の光反射面と前記第2の光反射面が、平面視して直交配置される空中像結像装置の製造方法であって、
透明樹脂が成型されることにより、一面側に、(a)一方の側面を垂直面とし他方の側面を傾斜面として一面側に拡開する断面三角形又は断面台形の複数の第1の直線溝が所定間隔で平行配置され、(b)隣り合う前記第1の直線溝の間に、一面側に第1の帯状平面部を有する断面台形の第1の凸条が形成され、他面側に、(c)一方の側面を垂直面とし他方の側面を傾斜面として他面側に拡開する断面三角形又は断面台形の複数の第2の直線溝が所定間隔で平行配置され、(d)隣り合う前記第2の直線溝の間に、他面側に第2の帯状平面部を有する断面台形の第2の凸条が形成され、前記各第1の直線溝の前記垂直面と、前記各第2の直線溝の前記垂直面が、平面視して直交配置された板状の成型体が形成される第1工程と、
前記成型体の前記各第1、第2の直線溝の内表面の少なくとも前記垂直面及び前記傾斜面が第1、第2の光反射材料で覆われて中間体が製造される第2工程と、
前記中間体の一面側に前記各第1の直線溝及び前記各第1の帯状平面部を覆う非透光性の第1のカバー材が配置され、前記中間体の他面側に前記各第2の直線溝及び前記各第2の帯状平面部を覆う非透光性の第2のカバー材が配置されて、前記第1のカバー材の前記各第1の帯状平面部と重なる領域及び前記第2のカバー材の前記各第2の帯状平面部と重なる領域が、加圧されて前記各第1、第2の帯状平面部と接合され透明化することにより、前記第1のカバー材の前記各第1の直線溝と重なる領域及び前記第2のカバー材の前記各第2の直線溝と重なる領域にそれぞれ第1、第2の反射防止層が形成され、前記各第1の直線溝の前記垂直面を覆う前記第1の光反射材料の前記垂直面側の表面を前記第1の光反射面とし、前記各第2の直線溝の前記垂直面を覆う前記第2の光反射材料の前記垂直面側の表面を前記第2の光反射面とする空中像結像装置が製造される第3工程とを有する。
【0012】
第2の発明に係る空中像結像装置の製造方法において、前記第3工程の前に、前記第2工程で、前記成型体の少なくとも前記各第1、第2の帯状平面部の表面に剥離可能な第1、第2の被覆層が形成され、少なくとも前記各第1、第2の直線溝の前記垂直面及び前記傾斜面が前記第1、第2の光反射材料で覆われた後、前記各第1、第2の帯状平面部に形成された前記第1、第2の被覆層と、該各第1、第2の被覆層上に付着した不要な第1、第2の光反射材料が除去されて、前記中間体が製造されることが好ましい。
【0013】
前記目的に沿う第3の発明に係る空中像結像装置の製造方法は、平行配置された入光面と出光面とを有する平板状に形成され、前記入光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第1の光反射面と、前記出光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第2の光反射面とを有し、前記第1の光反射面と前記第2の光反射面が、平面視して直交配置される空中像結像装置の製造方法であって、
透明樹脂が成型されることにより、一面側に、(a)一方の側面を垂直面とし他方の側面を傾斜面として一面側に拡開する断面三角形又は断面台形の複数の直線溝が所定間隔で平行配置され、(b)隣り合う前記直線溝の間に、一面側に帯状平面部を有する断面台形の凸条が形成された板状の成型体が製造される第1工程と、
前記成型体の前記各直線溝の内表面の少なくとも前記垂直面及び前記傾斜面が層状の光反射材料で覆われて中間体が製造される第2工程と、
前記中間体の前記各直線溝の前記光反射材料を含む内表面を覆う反射防止層が形成されて光制御パネルが製造される第3工程と、
2つの前記光制御パネルが用いられ、一方の前記光制御パネルの前記各直線溝の前記垂直面と他方の前記光制御パネルの前記各直線溝の前記垂直面が、平面視して直交するように、一方の前記光制御パネルの一面側又は他面側と、他方の前記光制御パネルの一面側又は他面側が向かい合わせに配置され、一方の前記光制御パネルの前記各直線溝の前記垂直面を覆う前記光反射材料の前記垂直面側の表面を前記第1の光反射面とし、他方の前記光制御パネルの前記各直線溝の前記垂直面を覆う前記光反射材料の前記垂直面側の表面を前記第2の光反射面とする空中像結像装置が製造される第4工程とを有する。
【0014】
【0015】
第3の発明に係る空中像結像装置の製造方法において、前記第2工程で、前記成型体の少なくとも前記各帯状平面部の表面に剥離可能な被覆層が形成された後、少なくとも前記各直線溝の前記垂直面及び前記傾斜面が前記光反射材料で覆われて前記中間体が製造され、前記第3工程で、前記中間体の少なくとも前記各直線溝の内表面を覆う前記光反射材料が反射防止材料で覆われた後、前記各帯状平面部に形成された前記被覆層と、該各被覆層上に付着した不要な光反射材料及び不要な反射防止材料が除去されて、前記反射防止層が形成されることが好ましい。
【0016】
前記目的に沿う第4の発明に係る空中像結像装置の製造方法は、平行配置された入光面と出光面とを有する平板状に形成され、前記入光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第1の光反射面と、前記出光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第2の光反射面とを有し、前記第1の光反射面と前記第2の光反射面が、平面視して直交配置される空中像結像装置の製造方法であって、
透明樹脂が成型されることにより、一面側に、(a)一方の側面を垂直面とし他方の側面を傾斜面として一面側に拡開する断面三角形又は断面台形の複数の直線溝が所定間隔で平行配置され、(b)隣り合う前記直線溝の間に、一面側に帯状平面部を有する断面台形の凸条が形成された板状の成型体が製造される第1工程と、
前記成型体の前記各直線溝の内表面の少なくとも前記垂直面及び前記傾斜面が光反射材料で覆われて中間体が製造される第2工程と、
前記中間体の一面側に前記各直線溝及び前記各帯状平面部を覆う非透光性のカバー材が配置され、該カバー材の前記各帯状平面部と重なる領域が、加圧されて前記各帯状平面部と接合され透明化することにより、該カバー材の前記各直線溝と重なる領域に反射防止層が形成されて光制御パネルが製造される第3工程と、
2つの前記光制御パネルが用いられ、一方の前記光制御パネルの前記各直線溝の前記垂直面と他方の前記光制御パネルの前記各直線溝の前記垂直面が、平面視して直交するように、一方の前記光制御パネルの一面側又は他面側と、他方の前記光制御パネルの一面側又は他面側が向かい合わせに配置され、一方の前記光制御パネルの前記各直線溝の前記垂直面を覆う前記光反射材料の前記垂直面側の表面を前記第1の光反射面とし、他方の前記光制御パネルの前記各直線溝の前記垂直面を覆う前記光反射材料の前記垂直面側の表面を前記第2の光反射面とする空中像結像装置が製造される第4工程とを有する。
【0017】
第4の発明に係る空中像結像装置の製造方法において、前記第3工程の前に、前記第2工程で、前記成型体の少なくとも前記各帯状平面部の表面に剥離可能な被覆層が形成され、少なくとも前記各直線溝の前記垂直面及び前記傾斜面が前記光反射材料で覆われた後、前記各帯状平面部に形成された前記被覆層と、該各被覆層上に付着した不要な光反射材料が除去されて、前記中間体が製造されることが好ましい。
【0018】
第1、第2の発明に係る空中像結像装置の製造方法で製造される空中像結像装置は、平行配置された入光面と出光面とを有する平板状に形成され、前記入光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第1の光反射面と、前記出光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第2の光反射面とを有し、前記第1の光反射面と前記第2の光反射面が、平面視して直交配置される空中像結像装置であって、
透明樹脂で成型され、一面側に、一方の側面を垂直面とし他方の側面を傾斜面として一面側に拡開し、所定間隔で平行配置される断面三角形又は断面台形の複数の第1の直線溝と、隣り合う前記第1の直線溝の間に形成され、一面側に第1の帯状平面部を有する断面台形の第1の凸条とを有し、他面側に、一方の側面を垂直面とし他方の側面を傾斜面として他面側に拡開し、所定間隔で平行配置される断面三角形又は断面台形の複数の第2の直線溝と、隣り合う前記第2の直線溝の間に形成され、他面側に第2の帯状平面部を有する断面台形の第2の凸条とを有する成型体と、該成型体の前記各第1、第2の直線溝の内表面の少なくとも前記垂直面及び前記傾斜面を覆う第1、第2の光反射材料と、前記成型体の一面側から平面視して前記各第1の直線溝と重なる領域及び前記成型体の他面側から平面視して前記各第2の直線溝と重なる領域で、前記第1、第2の光反射材料を覆う第1、第2の反射防止層とを備え、前記各第1の直線溝の前記垂直面と、前記各第2の直線溝の前記垂直面が、平面視して直交配置され、前記各第1の直線溝の前記垂直面を覆う前記第1の光反射材料の前記垂直面側の表面が前記第1の光反射面とされ、前記各第2の直線溝を覆う前記第2の光反射材料の前記垂直面側の表面が前記第2の光反射面とされている。
【0019】
第2の発明に係る空中像結像装置の製造方法で製造される空中像結像装置において、前記成型体の一面側で前記各第1の直線溝及び前記各第1の帯状平面部を覆う第1のカバー材と、前記成型体の他面側で前記各第2の直線溝及び前記各第2の帯状平面部を覆う第2のカバー材とを有し、前記第1のカバー材の前記各第1の帯状平面部と重なる領域及び前記第2のカバー材の前記各第2の帯状平面部と重なる領域にそれぞれ第1、第2の透光層が形成され、前記第1のカバー材の前記各第1の直線溝と重なる領域及び前記第2のカバー材の前記各第2の直線溝と重なる領域にそれぞれ前記第1、第2の反射防止層が形成されている。
【0020】
前記目的に沿う第3、第4の発明に係る空中像結像装置の製造方法で製造される空中像結像装置は、平行配置された入光面と出光面とを有する平板状に形成され、前記入光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第1の光反射面と、前記出光面に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第2の光反射面とを有し、前記第1の光反射面と前記第2の光反射面が、平面視して直交配置される空中像結像装置であって、
透明樹脂で成型され、一面側に、一方の側面を垂直面とし他方の側面を傾斜面として一面側に拡開し、所定間隔で平行配置される断面三角形又は断面台形の複数の直線溝と、隣り合う前記直線溝の間に形成され、一面側に帯状平面部を有する断面台形の凸条とを有する成型体と、該成型体の前記各直線溝の内表面の少なくとも前記垂直面及び前記傾斜面を覆う光反射材料と、前記成型体の一面側から平面視して前記各直線溝と重なる領域で、前記光反射材料を覆う反射防止層とをそれぞれ備えた2つの光制御パネルで構成され、一方の前記光制御パネルの前記各直線溝の前記垂直面と他方の前記光制御パネルの前記各直線溝の前記垂直面が、平面視して直交するように、一方の前記光制御パネルの一面側又は他面側と、他方の前記光制御パネルの一面側又は他面側が向かい合わせに配置され、一方の前記光制御パネルの前記各直線溝の前記垂直面を覆う前記光反射材料の前記垂直面側の表面が前記第1の光反射面とされ、他方の前記光制御パネルの前記各直線溝の前記垂直面を覆う前記光反射材料の前記垂直面側の表面が前記第2の光反射面とされている。
【0021】
第4の発明に係る空中像結像装置の製造方法で製造される空中像結像装置において、前記各光制御パネルの一面側で前記各直線溝及び前記各帯状平面部を覆うカバー材を有し、該各カバー材の前記各帯状平面部と重なる領域にそれぞれ透光層が形成され、該各カバー材の前記各直線溝と重なる領域にそれぞれ前記反射防止層が形成されている。
【発明の効果】
【0022】
第1、第2の発明に係る空中像結像装置の製造方法では、成型体の各第1、第2の直線溝の内表面が光反射材料で覆われる際に、各第1、第2の直線溝の内表面のうち、垂直面以外が光反射材料で覆われないように工夫する必要及び各直線溝の内表面のうち、垂直面以外を覆う光反射材料を除去する必要がなく、製造工程を簡素化することができる。また、第3、第4の発明に係る空中像結像装置の製造方法では、成型体の各直線溝の内表面が光反射材料で覆われる際に、各直線溝の内表面のうち、垂直面以外が光反射材料で覆われないように工夫する必要及び各直線溝の内表面のうち、垂直面以外を覆う光反射材料を除去する必要がなく、製造工程を簡素化することができる。
【0023】
第1、第2の発明に係る空中像結像装置の製造方法で製造される空中像結像装置では、各第1、第2の直線溝の少なくとも垂直面及び傾斜面を覆う第1、第2の光反射材料と重なるように第1、第2の反射防止層が形成されることにより、観察者が空中像を観察する際に、空中像結像装置の出光面側から各第1又は第2の直線溝に向かう光(太陽光、室内照明光等)は第1又は第2の反射防止層で吸収又は拡散され、第1又は第2の直線溝の内表面では光反射材料による光の反射(正反射、鏡面反射)が発生することがなく、空中像の鮮明性及び視認性に優れる。また、第3、第4の発明に係る空中像結像装置の製造方法で製造される空中像結像装置では、各直線溝の少なくとも垂直面及び傾斜面を覆う光反射材料と重なるように反射防止層が形成されることにより、観察者が空中像を観察する際に、空中像結像装置の出光面側から各直線溝に向かう光(太陽光、室内照明光等)は反射防止層で吸収又は拡散され、各直線溝の内表面では光反射材料による光の反射(正反射、鏡面反射)が発生することがなく、空中像の鮮明性及び視認性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】(A)、(B)はそれぞれ本発明の第1の実施例に係る空中像結像装置の製造方法で製造された空中像結像装置を示す正断面図及び側断面図である。
【
図2】同空中像結像装置の製造方法の第1工程を示す断面図である。
【
図3】(A)、(B)は同空中像結像装置の製造方法の第2工程を示す断面図である。
【
図4】同空中像結像装置の製造方法の第3工程を示す断面図である。
【
図5】(A)、(B)はそれぞれ同空中像結像装置の製造方法の第3工程で製造された光制御パネルを示す断面図及び平面図である。
【
図6】(A)、(B)はそれぞれ同空中像結像装置の製造方法で製造された空中像結像装置の変形例を示す正断面図及び側断面図である。
【
図7】(A)、(B)はそれぞれ本発明の第2の実施例に係る空中像結像装置の製造方法で製造された空中像結像装置を示す正断面図及び側断面図である。
【
図8】(A)、(B)はそれぞれ同空中像結像装置の製造方法の第1工程を示す正断面図及び側断面図である。
【
図9】(A)、(B)は同空中像結像装置の製造方法の第2工程を示す正断面図及び側断面図である。
【
図10】(A)、(B)は同空中像結像装置の製造方法の第3工程を示す正断面図及び側断面図である。
【
図11】(A)、(B)はそれぞれ本発明の第3の実施例に係る空中像結像装置の製造方法で製造された空中像結像装置を示す正断面図及び側断面図である。
【
図12】(A)、(B)はそれぞれ同空中像結像装置の製造方法の第2工程を示す正断面図及び側断面図である。
【
図13】(A)、(B)はそれぞれ同空中像結像装置の製造方法の第2工程で製造された中間体を示す正断面図及び側断面図である。
【
図14】(A)、(B)は同空中像結像装置の製造方法の第3工程を示す正断面図及び側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の第1の実施例に係る空中像結像装置の製造方法及び空中像結像装置について、図面を参照しながら説明する。
図1(A)、(B)に示すように、本発明の第1の実施例に係る空中像結像装置の製造方法で製造された空中像結像装置10は、平行配置された入光面11と出光面12とを有する平板状に形成され、入光面11に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第1の光反射面13と、出光面12に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第2の光反射面14とを有し、第1の光反射面13と第2の光反射面14が、平面視して直交配置されたものである。
【0026】
この空中像結像装置10の製造にあっては、透明樹脂が成型(例えば、インジェクション成型、プレス成型又はロール成型等)されることにより、
図2に示すように、一面側に、一方の側面を垂直面16とし他方の側面を傾斜面17として一面側に拡開する断面台形の複数の直線溝18が所定間隔で平行配置され、隣り合う直線溝18の間に、一面側に帯状平面部19を有する断面台形の凸条20が形成された板状の成型体21が製造される。直線溝18の一面側の開口部の幅(台形断面の上底の長さ)をa、直線溝18の底面22の幅(台形断面の下底の長さ)をb、直線溝18の深さ(台形断面の高さ)をh、直線溝18のピッチ(=凸条のピッチ)をpとすると、aはbの1.5~2倍程度、pはaの3~5倍程度、hはpの1~2倍程度であることが好ましい。例えば、a=70μmの場合、b=40μm、p=250~300μm、h=300~400μmとすれば上記の関係を満たすが、これらに限定されるものではない。なお、ピッチpは全ての領域で均一(等間隔)である必要はなく、不均一(場所によって間隔がばらばら)でもよい。また、直線溝18の垂直面16に対する傾斜面17の傾斜角度(垂直面16と傾斜面17とのなす角度)θは、例えば1~10度程度であるが、成型体21の脱型性を考慮して、適宜、選択される。
なお、本実施例では、直線溝18を断面台形としたが、底面22は空中像結像装置10に必須の構成ではないため、底面22の寸法が厳密に管理される必要はなく、直線溝が、一方の側面を垂直面とし他方の側面を傾斜面として一面側に拡開する断面三角形に形成されてもよい(以下の実施例においても同様)。
【0027】
この成型体21の成型には、比較的融点が高く、透明度の高い熱可塑性樹脂が好適に使用される。具体的には、例えば、ゼオネックス(ZEONEX:登録商標、ガラス転移温度Tg=100~160℃、屈折率η1=1.535のシクロオレフィンポリマー)が用いられるが、この他に、例えばポリメチルメタルクレート(アクリル系樹脂)、非晶質フッ素樹脂、PMMA、光学用ポリカーボネイト、フルオレン系ポリエステル、ポリエーテルスルホン等の熱可塑性樹脂が使用可能である。なお、この成型体21に対しては、成型後、アニーリング処理が行われ、残留応力等が除去されることが好ましい(以上、第1工程)。
【0028】
次に、
図3(A)に示すように、成型体21の各帯状平面部19の表面に剥離可能な被覆層24が形成される。被覆層24は、例えば液状、ゲル状又はジェル状の被覆材料が刷毛、ローラー又はスタンプ等で各帯状平面部19の表面に塗布又は転写されて固化されたり、フィルム又はシート等の基材表面に形成された粘着性の被覆膜が各帯状平面部19の表面に押し当てられ転写されたりして形成される。例えば、液状の被覆材料がスプレー等で噴射されて被覆層が形成される場合は、各帯状平面部に垂直な方向から液状の被覆材料が噴射されることにより、直線溝の内表面(特に垂直面)に被覆材料が付着することを防止できる。
その後、
図3(B)に示すように、成型体21の各直線溝18の内表面(少なくとも垂直面16及び傾斜面17)が光反射材料25で覆われて中間体26が製造される。直線溝18の内表面については、少なくとも垂直面16及び傾斜面17が光反射材料25で覆われていればよく、底面22は光反射材料25で覆われていても覆われていなくてもよい(直線溝が断面三角形に形成されている場合は、当然のことながら垂直面及び傾斜面が光反射材料で覆われることになる)。
【0029】
光反射材料25は、その表面で光を正反射(鏡面反射=均等拡散反射)するものであればよく、例えばアルミニウム等の金属を原料とし、スパッタリング、金属蒸着、金属微小粒子の吹き付け、イオンビームの照射、金属ペーストの塗布又はメッキ等の方法により直線溝18の内表面を覆うものである。各帯状平面部19を覆う被覆層24上に付着した不要な光反射材料25’は後工程で付着物として除去されるので、帯状平面部19に光反射材料を付着させないための特別な工夫は必要なく、作業工程が簡素化される。本実施例では、被覆層24の表面全体に不要な光反射材料25’が付着しているが、不要な光反射材料の付着量及び付着範囲は、光反射材料の種類等によって異なり、被覆層24の表面の一部のみに不要な光反射材料が付着する場合もある。光反射材料の無駄を削減するためには、なるべく被覆層上に光反射材料を付着させないことが好ましく、直線溝の内表面のみに選択的に光反射材料を付着させることが可能であれば、被覆層の形成工程は省略されてもよい。(以上、第2工程)。
【0030】
次に、
図4に示すように、中間体26の各直線溝18の光反射材料25を含む内表面を覆う反射防止層27が形成される。従って、各直線溝18の内表面のうち、先に光反射材料25で覆われている部分は、その上から反射防止層27で覆われるが、光反射材料25で覆われていない部分があれば、その部分は、反射防止層27で直接、覆われることになる。反射防止層27は、空中像結像装置10の使用時に、外部から各直線溝18の内部に入射する光を遮蔽してその光が光反射材料に到達することを防止する(非透光性を有する)と共に、その光を吸収又は拡散して、光の反射(正反射、鏡面反射)を防止できる(光吸収性又は光拡散性を有する)ものであればよい。この反射防止層27としては、例えば、非透光性及び光吸収性を有する不透明塗料(黒色が好ましい)等の液状の反射防止材料が、各直線溝18の内部に噴霧又は塗布され、乾燥されて形成されるものが好適に用いられるが、これに限定されない。なお、帯状平面部上(被覆層上及び光反射材料上を含む)に付着した不透明塗料等の液状の反射防止材料は溶剤(例えば水)で除去されてもよい。
【0031】
反射防止層27は、最初から、平面視して、中間体26の一面側の各直線溝18と重なる領域、つまり、各直線溝18の内表面のみに光反射材料25を覆うように形成されることが好ましいが、本実施例のように、各帯状平面部19の表面に被覆層24が形成されている場合は、反射防止層の形成時に、被覆層24上(ここでは、被覆層24に付着した不要な光反射材料25’の表面上)に不要な反射防止材料(図示せず)が付着しても、後工程で、被覆層24上の付着物として不要な光反射材料25’と共に、粘着テープ等により、除去される。このとき、被覆層と帯状平面部(成型体)との密着力が、被覆層と光反射材料との密着力より小さければ、被覆層上の不要な光反射材料及び不要な反射防止材料は、被覆層と共に除去(剥離)される。そして、被覆層と帯状平面部(成型体)との密着力が、被覆層と光反射材料との密着力より大きく、被覆層の一部又は全てが除去(剥離)されずに残った場合は、別途、除去(剥離)される。なお、被覆層の表面に不要な光反射材料が付着していない領域が存在していれば、不要な反射防止材料は被覆層に直接、付着するが、その場合も、不要な反射防止材料は、被覆層上の付着物として除去される。
【0032】
反射防止層27が形成された後に、各被覆層24と各被覆層24上に付着した付着物(不要な光反射材料及び不要な反射防止材料)が除去されることにより、
図5(A)に示すように、各直線溝18の光反射材料25を含む内表面のみを覆う反射防止層27が形成されて光制御パネル28が製造される。この光制御パネル28を平面視すると、
図5(B)に示すように、平面視して、一面側の各直線溝18と重なる領域(ハッチング部)に光反射材料25を覆う反射防止層27が形成されている。なお、反射防止層は、ゲル状又はジェル状の反射防止材料(例えば、黒色に着色された半溶融状態の合成樹脂)が、各直線溝の内部(空間部)に充填され、固化されて、形成されてもよい(以上、第3工程)。
【0033】
次に、
図1(A)、(B)に示したように、2つの光制御パネル28が用いられ、一方(ここでは下側)の光制御パネル28の各直線溝18の垂直面16と他方(ここでは上側)の光制御パネル28の各直線溝18の垂直面16が、平面視して直交するように、一方の光制御パネル28の一面側と、他方の光制御パネル28の一面側が向かい合わせに配置される。ここで、一方の光制御パネル28の一面側と他方の光制御パネル28の一面側は、透明接着層30を介して接合され一体化される。
透明接着層30は、透明度が高く、成型体21の成型に用いられる透明樹脂の屈折率η1と同等の屈折率η2を有する透明接着剤により形成される。成型体21の成型に前述のゼオネックスが用いられた場合、透明接着剤としては、例えば、ガラス転移温度Tg=49~67℃で、屈折率η2=1.45~1.57に調整された低Tgエポキシ系の光学用接着剤が好適に用いられるが、これに限定されるものではない。この他にも、成型体21の成型に用いられる透明樹脂の材質に応じて、光(UV)硬化型、加熱硬化型、又は二液混合型(常温硬化型)等の各種の透明接着剤が、適宜、選択され使用される(以上、第4工程)。
【0034】
以上の工程により、
図1(A)、(B)に示したように、透明樹脂で成型され、一面側に、一方の側面を垂直面16とし他方の側面を傾斜面17として一面側に拡開し、所定間隔で平行配置される断面台形の複数の直線溝18と、隣り合う直線溝18の間に形成され、一面側に帯状平面部19を有する断面台形の凸条20とを有する成型体21と、成型体21の各直線溝18の内表面の少なくとも垂直面16及び傾斜面17を覆う光反射材料25と、成型体21の一面側から平面視して各直線溝18と重なる領域で、光反射材料25を覆う反射防止層27とをそれぞれ備えた2つの光制御パネル28で構成され、一方の光制御パネル28の各直線溝18の垂直面16と他方の光制御パネル28の各直線溝18の垂直面16が、平面視して直交するように、一方の光制御パネル28の一面側と、他方の光制御パネル28の一面側が向かい合わせに配置され、一方の光制御パネル28の各直線溝18の垂直面16を覆う光反射材料25の垂直面16側の表面が第1の光反射面13とされ、他方の光制御パネル28の各直線溝18の垂直面16を覆う光反射材料25の垂直面16側の表面が第2の光反射面14とされた空中像結像装置10が得られる。
【0035】
以下、空中像結像装置10の動作について説明する。
図1(A)、(B)において、図示しない対象物から発せられる光のうち、光L1は、入光面11(ここでは、下側の光制御パネル28の他側の表面)上のP1から空中像結像装置10(下側の光制御パネル28)の内部に入射し、第1の光反射面13上のP2で反射して、下側の光制御パネル28から上側の光制御パネル28に進入し、第2の光反射面14上のP3で反射して、出光面12(ここでは、上側の光制御パネル28の他側の表面)上のP4から空中に出て行く。
ここで、光L1は、P2で反射した後、Q1で透明接着層30を通過するが、光制御パネル28の基材(成型体21)となる透明樹脂の屈折率η1と透明接着層30の屈折率η2が同等であり、透明接着層30の厚さが薄い(5~50μm程度)ため、透明接着層30による屈折の影響は極めて小さく、無視できる。また、光制御パネル28の基材(成型体21)となる透明樹脂と透明接着層30との界面で全反射や分光等の現象も起こらない。
このようにして、対象物から発せられ、空中像結像装置10の第1の光反射面13及び第2の光反射面14で1回ずつ反射する無数の光が空中で結像することにより、空中像結像装置10を挟んで対象物と対称となる位置に、対象物の実像となる空中像(図示せず)が得られる。なお、光L1は、入光面11のP1及び出光面12のP4で屈折しているが、上下(一方及び他方)の光制御パネル28の基材となる透明樹脂(成型体21)は同一で均質であり、空中像の結像に関与する全ての光が、入射位置及び出射位置によらず、光L1と同様に、入光面11及び出光面12において一定(同一)の角度で屈折するため、これらの屈折が結像に影響を与えることはない。
【0036】
先に説明したように、第2工程で帯状平面部19の表面に形成される被覆層24は、第3工程で剥離されるため、透光性(透明)でも非透光性(不透明)でもよいが、被覆層の形成に用いられる被覆材料が、直線溝の垂直面を含む内表面にも付着する可能性がある場合は、透光性の(透明な)被覆層が形成されるように被覆材料が選択されることにより、被覆材料が付着した(被覆層が形成された)垂直面の表面が光反射材料で覆われても、空中像結像装置の使用時に、光が被覆層で遮られることがなく、光反射材料の垂直面側の表面を第1、第2の光反射面として機能させることができる。
【0037】
また、本実施例では、
図1(A)、(B)に示したように、一方の光制御パネル28の一面側と他方の光制御パネル28の一面側が向かい合わせに配置され、接合されたが、
図6(A)、(B)に示す変形例の空中像結像装置10aのように、一方の光制御パネル28の他面側と他方の光制御パネル28の他面側が向かい合わせに配置され、接合されてもよいし、一方の光制御パネルの一面側と、他方の光制御パネルの他面側が向かい合わせに配置され、接合されてもよい。いずれの場合も、空中像結像装置10と同様の動作により、空中像を結像させることができる。
【0038】
続いて、本発明の第2の実施例に係る空中像結像装置の製造方法及び空中像結像装置について、図面を参照しながら説明する。
図7(A)、(B)に示すように、本発明の第2の実施例に係る空中像結像装置の製造方法で製造された空中像結像装置10bは、平行配置された入光面11と出光面12とを有する平板状に形成され、入光面11に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第1の光反射面13と、出光面12に直角に形成され所定間隔で平行配置される複数の第2の光反射面14とを有し、第1の光反射面13と第2の光反射面14が、平面視して直交配置されたものである。この空中像結像装置10bが空中像結像装置10、10aと異なる点は、透明樹脂で成型された1枚の板状の成型体21aの一面側に、複数の第1の光反射面13が形成され、他面側に、複数の第2の光反射面14が形成されている点である。
【0039】
以下、空中像結像装置10bの製造方法について説明する。
透明樹脂が成型されることにより、
図8(A)、(B)に示すように、一面側に、一方の側面を垂直面16とし他方の側面を傾斜面17として一面側に拡開する断面台形の複数の第1の直線溝18aが所定間隔で平行配置され、隣り合う第1の直線溝18aの間に、一面側に第1の帯状平面部19aを有する断面台形の第1の凸条20aが形成され、他面側に、一方の側面を垂直面16とし他方の側面を傾斜面17として他面側に拡開する断面台形の複数の第2の直線溝18bが所定間隔で平行配置され、隣り合う第2の直線溝18bの間に、他面側に第2の帯状平面部19bを有する断面台形の第2の凸条20bが形成され、各第1の直線溝18aの垂直面16と、各第2の直線溝18bの垂直面16が、平面視して直交配置された形成された板状の成型体21aが形成される。この成型体21aは、空中像結像装置10aを構成する2枚の光制御パネル28の成型体21を一体成型したものに相当し、各第1の直線溝18aの底面22と各第2の直線溝18bの底面22との間隔dは20~3000μm程度である。なお、第1、第2の直線溝18a、18b及び第1、第2の凸条20a、20bの形状及び配置は、空中像結像装置10aの入光面11側と出光面12側の直線溝18及び凸条20と同様なので説明を省略する。また、この成型体21aの成型に使用される透明樹脂は第1の実施例と同様なので、説明を省略する(以上、第1工程)。
【0040】
次に、
図9(A)、(B)に示すように、成型体21aの各第1、第2の直線溝18a、18bの内部に金属ペースト等の第1、第2の光反射材料25a、25bが充填されることにより、垂直面16及び傾斜面17を含む各第1、第2の直線溝18a、18bの内表面(ここでは、垂直面16、傾斜面17及び底面22からなる各第1、第2の直線溝18a、18bの内表面)が第1、第2の光反射材料25a、25bで覆われ、中間体26aが製造される。第1、第2の光反射材料25a、25bは、同一の材料であり、各第1、第2の直線溝18a、18bの内部に選択的に充填されることが好ましいが、各第1、第2の帯状平面部19a、19bの表面に不要な第1、第2の光反射材料が付着した場合は、後工程で、剥離、研磨又は溶解等の方法により除去可能である。なお、この中間体26aが製造される前(各第1、第2の直線溝18a、18bの内部に第1、第2の光反射材料25a、25bが充填される前)に、仮想線で示すように、各第1、第2の帯状平面部19a、19bの表面に剥離可能な第1、第2の被覆層24a、24bが形成されていれば、各第1、第2の帯状平面部19a、19bの表面に不要な第1、第2の光反射材料が付着することを防止でき、第1、第2の被覆層24a、24bと第1、第2の被覆層24a、24b上に付着した不要な第1、第2の光反射材料は、後工程で、除去される。(以上、第2工程)。
【0041】
次に、
図10(A)、(B)に示すように、各第1の直線溝18aに充填された第1の光反射材料25aの一面側の表面及び各第2の直線溝18bに充填された第2の光反射材料25bの他面側の表面にそれぞれ第1、第2の反射防止層27a、27bが形成される。第1、第2の反射防止層27a、27bの形成に用いられる第1、第2の反射防止材料は、第1の実施例の反射防止層27の形成に用いられる反射防止材料と同様であり、第1の光反射材料25aの一面側及び第2の光反射材料25bの他面側の表面に選択的に形成されることが好ましいが、第1、第2の反射防止層27a、27bの形成時に、不要な第1、第2の反射防止材料が、各第1、第2の帯状平面部19a、19bの表面に付着した場合は、剥離、研磨又は溶解等の方法により除去可能である。なお、先に説明したように、予め、各第1、第2の帯状平面部19a、19bの表面に剥離可能な第1、第2の被覆層24a、24bが形成されていれば、各第1、第2の帯状平面部19a、19bの表面に不要な第1、第2の反射防止材料が付着することを防止でき、第1、第2の反射防止層27a、27bが形成された後に、各第1、第2の被覆層24a、24bと各第1、第2の被覆層24a、24b上に付着した不要な第1、第2の光反射材料及び不要な第1、第2の反射防止材料(付着物)が、粘着テープ等により、剥離されて除去される。この結果、平面視して、中間体26aの一面側の各第1の直線溝18aと重なる領域及び他面側の各第2の直線溝18bと重なる領域に、第1、第2の光反射材料25a、25bを覆う第1、第2の反射防止層27a、27bが形成される(以上、第3工程)。
【0042】
以上の工程により、
図7(A)、(B)に示したように、透明樹脂で成型され、一面側に、一方の側面を垂直面16とし他方の側面を傾斜面17として一面側に拡開し、所定間隔で平行配置される断面台形の複数の第1の直線溝18aと、隣り合う第1の直線溝18aの間に形成され、一面側に第1の帯状平面部19aを有する断面台形の第1の凸条20aとを有し、他面側に、一方の側面を垂直面16とし他方の側面を傾斜面17として他面側に拡開し、所定間隔で平行配置される断面台形の複数の第2の直線溝18bと、隣り合う第2の直線溝18bの間に形成され、他面側に第2の帯状平面部19bを有する断面台形の第2の凸条20bとを有する成型体21aと、成型体21aの各第1、第2の直線溝18a、18bの内表面の少なくとも垂直面16及び傾斜面17を覆う第1、第2の光反射材料25a、25bと、成型体21aの一面側から平面視して各第1の直線溝18aと重なる領域及び成型体21aの他面側から平面視して各第2の直線溝18bと重なる領域で、第1、第2の光反射材料25a、25bを覆う第1、第2の反射防止層27a、27bとを備え、各第1の直線溝18aの垂直面16と、各第2の直線溝18bの垂直面16が、平面視して直交配置され、各第1の直線溝18aの垂直面16を覆う第1の光反射材料25aの垂直面16側の表面が第1の光反射面13とされ、各第2の直線溝18bを覆う第2の光反射材料25bの垂直面16側の表面が第2の光反射面14とされた空中像結像装置10bが得られる。
この空中像結像装置10bの第1、第2の光反射面13、14の形状及び配置は、
図6(A)、(B)の空中像結像装置10aと同様であるので、空中像結像装置10bは、
図7(A)、(B)に示すように、空中像結像装置10aと同様の動作を行って、空中像を結像させることができる。
【0043】
続いて、本発明の第3の実施例に係る空中像結像装置の製造方法及び空中像結像装置について、図面を参照しながら説明する。
図11(A)、(B)に示す本発明の第3の実施例に係る空中像結像装置の製造方法で製造された空中像結像装置10cが、空中像結像装置10b(
図7(a)、(b)参照)と異なる点は、各第1、第2の直線溝18a、18bの内部全体に第1、第2の光反射材料25a、25bが充填され、第1の光反射材料25aの一面側の表面及び第2の光反射材料25bの他面側の表面にそれぞれ第1、第2の反射防止層27a、27bが形成される代わりに、各第1、第2の直線溝18a、18bの内表面(ここでは、垂直面16、傾斜面17及び底面22)が第1、第2の光反射材料25c、25dで覆われ、各第1の直線溝18a及び各第1の帯状平面部19aを覆う第1のカバー材31aと、各第2の直線溝18b及び各第2の帯状平面部19bを覆う第2のカバー材31bとを有し、第1のカバー材31aの各第1の帯状平面部19aと重なる領域及び第2のカバー材31bの各第2の帯状平面部19bと重なる領域にそれぞれ第1、第2の透光層33a、33bが形成され、第1のカバー材31aの各第1の直線溝18aと重なる領域及び第2のカバー材31bの各第2の直線溝18bと重なる領域にそれぞれ第1、第2の反射防止層34a、34bが形成されている点である。
【0044】
以下、空中像結像装置10cの製造方法について説明する。
まず、空中像結像装置10bの製造方法(実施例2)と同様の第1工程により、
図8(A)、(B)に示した成型体21aが形成される。
次に、
図12(A)、(B)に示すように、成型体21aの各第1、第2の帯状平面部19a、19bの表面に剥離可能な第1、第2の被覆層24a、24bが形成された後、各第1、第2の直線溝18a、18bの垂直面16、傾斜面17及び底面22が第1、第2の光反射材料25c、25dで覆われる。このとき、各第1、第2の被覆層24a、24b上にも不要な第1、第2の光反射材料25c’、25d’が付着する。その後、各第1、第2の帯状平面部19a、19bに形成された第1、第2の被覆層24a、24bと、各第1、第2の被覆層24a、24b上に付着した不要な第1、第2の光反射材料25c’、25d’が除去されて、
図13(A)、(B)に示す中間体26bが製造される。第1、第2の被覆層24a、24b及び第1、第2の光反射材料25c、25dは、それぞれ空中像結像装置10の製造方法(実施例1)の第2工程で説明した被覆層24及び光反射材料25と同様であるので、詳細な説明は省略する(以上、第2工程)。
【0045】
次に、
図14(A)、(B)に示すように、中間体26bの一面側に各第1の直線溝18a及び各第1の帯状平面部19aを覆う非透光性の第1のカバー材31aが配置され、他面側に各第2の直線溝18b及び各第2の帯状平面部19bを覆う非透光性の第2のカバー材31bが配置される。非透光性の第1、第2のカバー材31a、31bは、それぞれ透光性の基材(例えば透明なPET等の合成樹脂製シート)32の裏面に初期状態で非透光性の(不透明な)接着層32aが形成されたものである。接着層として、初期状態では例えば黒色(不透明)で非透光性及び光吸収性を有しているが、加圧されることにより接着(硬化)が進行すると共に透明化する性質を備えたものが好適に用いられる。例えば、硬化剤が封入されたマイクロカプセルが主剤の中に分散した状態で形成された接着層は、加圧された領域のマイクロカプセルが割れ、主剤と硬化剤が反応して接着(硬化)が進行することにより、加圧された領域のみが透明化する。従って、
図14(A)、(B)の中間体26bが、第1、第2のカバー材31a、31bと積層された状態で両面からローラー等で挟まれて加圧されると、
図11(A)、(B)に示したように、第1のカバー材31aの各第1の帯状平面部19aと重なる領域及び第2のカバー材31bの各第2の帯状平面部19bと重なる領域が、それぞれ各第1、第2の帯状平面部19a、19bと接合され透明化して第1、第2の透光層33a、33bが形成されることにより、第1のカバー材31aの各第1の直線溝18aと重なる領域及び第2のカバー材31bの各第2の直線溝18bと重なる領域がそれぞれ第1、第2の反射防止層34a、34bとなり、空中像結像装置10cが製造される。なお、第1、第2のカバー材は初期状態で非透光性及び光吸収性又は光拡散性を有し、加圧された領域のみが選択的に透明化する機能を有するものであればよく、その構成は、本実施例の構成に限定されることなく、適宜、選択される。例えば、第1、第2のカバー材として、透光性の基材の裏面に、初期状態では例えば白色若しくは乳白色で非透光性及び光拡散性を有する接着層が形成されており、加圧された領域の接着層のみが選択的に透明化するものが用いられてもよい。この場合、表面及び/又は裏面に凹凸が形成され、初期状態では光が拡散されて白色若しくは乳白色に見える接着層が、選択的に加圧され凹凸が潰されて平坦状になることにより透明化して透光層が形成され、接着層の加圧されなかった領域は初期状態の非透光性及び光拡散性を維持して第1、第2の反射防止層として機能する(以上、第3工程)。
【0046】
以上のようにして製造された
図11(A)、(B)の空中像結像装置10cの第1、第2の光反射面13、14の形状及び配置は、
図6(A)、(B)の空中像結像装置10a及び
図7(A)、(B)の空中像結像装置10bと同様であるので、
図11(A)、(B)に示すように、空中像結像装置10a、10bと同様の動作を行って、空中像を結像させることができる。
【0047】
以上、実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は何ら上記の実施例の構成に限定されるものではなく、請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施例や変形例も含むものであり、それぞれの実施例に係る空中像結像装置の製造方法(各工程)が組み合わされて空中像結像装置が製造される場合も本発明に含まれる。
例えば、第1の実施例の第2工程及び第3工程の代わりに、第2の実施例の第2工程及び第3工程と同様の工程が適用されてもよいし、第2の実施例の第2工程及び第3工程の代わりに、第1の実施例の第2工程及び第3工程と同様の工程が適用されてもよい。また、第1の実施例の第2工程及び第3工程の代わりに、第3の実施例の第2工程及び第3工程と同様の工程が適用されてもよいし、第3の実施例の第2工程及び第3工程の代わりに、第1の実施例の第2工程及び第3工程と同様の工程が適用されてもよい。第1の実施例の第2工程及び第3工程の代わりに、第3の実施例の第2工程及び第3工程と同様の工程が適用される場合、中間体の一面側にカバー材が積層され反射防止層が形成されて光制御パネルが製造されてから、第4工程で2つの光制御パネルが組合されて空中像結像装置が製造される。なお、第1の実施例の成型体に第3の実施例の第2工程と同様の工程が適用されて製造される2つの中間体に対し、各中間体の一面側に各直線溝及び各帯状平面部を覆うようにカバー材が積層された状態で加圧が行われることによって、光制御パネルが製造される工程と2つの光制御パネルが接合される工程が同時に行われて空中像結像装置が製造され、工程が簡素化される。
また、いずれの空中像結像装置も、上下(表裏)を反転させ、入光面と出光面を入れ替えても、上記実施例と同様に、空中像を結像させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る空中像結像装置の製造方法によれば、簡素な製造工程で、製造コストが安価でありながら、鮮明な空中像を得ることができる空中像結像装置を量産することができる。また、本発明に係る空中像結像装置の製造方法で製造される空中像結像装置は、例えば、医療機器、電化製品、自動車、航空機、船舶、遊戯機器、広告塔等の表示部に空中像を表示することができ、非接触型の入力装置等にも応用できる。
【符号の説明】
【0049】
10、10a、10b、10c:空中像結像装置、11:入光面、12:出光面、13:第1の光反射面、14:第2の光反射面、16:垂直面、17:傾斜面、18:直線溝、18a、18b:第1、第2の直線溝、19:帯状平面部、19a、19b:第1、第2の帯状平面部、20:凸条、20a、20b:第1、第2の凸条、21、21a:成型体、22:底面、24:被覆層、24a、24b:第1、第2の被覆層、25:光反射材料、25’:不要な光反射材料、25a、25b:第1、第2の光反射材料、25c、25d:第1、第2の光反射材料、25c’、25d’:不要な第1、第2の光反射材料、26、26a、26b:中間体、27:反射防止層、27a、27b:第1、第2の反射防止層、28:光制御パネル、30:透明接着層、31a、31b:第1、第2のカバー材、32:基材、32a:接着層、33a、33b:第1、第2の透光層、34a、34b:第1、第2の反射防止層
【要約】
一面側に、一方の側面を垂直面16として一面側に拡開する断面台形の複数の直線溝18が平行配置され、隣り合う直線溝18の間に、一面側に帯状平面部を有する断面台形の凸条20が形成された透明樹脂からなる成型体21の各直線溝18の内表面が光反射材料25で覆われ、光反射材料25の表面に反射防止層27が形成された2つの光制御パネル28が、それぞれの直線溝18の垂直面16同士が平面視して直交するように対向配置され、一方の光制御パネル28の各直線溝18の垂直面16を覆う光反射材料25の表面を第1の光反射面13とし、他方の光制御パネル28の各直線溝18の垂直面16を覆う光反射材料25の表面を第2の光反射面14とする空中像結像装置10が製造される。