(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】低干渉光源とマルチパターン照明を利用した3次元光回折断層撮影方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20220805BHJP
【FI】
G01N21/17 620
(21)【出願番号】P 2020150853
(22)【出願日】2020-09-08
【審査請求日】2020-09-08
(31)【優先権主張番号】10-2020-0093713
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517065149
【氏名又は名称】トモキューブ, インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】パク ヨングン
(72)【発明者】
【氏名】エルベ ジェローム ウゴネ
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-223348(JP,A)
【文献】特開2017-026596(JP,A)
【文献】特表2018-508741(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0209604(US,A1)
【文献】Juan M. Soto,Label-free quantitative 3D tomographic imaging for partially coherent light microscopy,Optics Express,2017年,Vol.25 No.14,pp.15699-15712
【文献】Jose A.Rodrigo,Fast label-free optical diffraction tomography compatible with conventional wide-field microscopes,Proc.of SPIE,2019年06月,Vol.11060,pp.1-10
【文献】Ting Zhang,Tomographic Diffractive Microscopy: A Review of Methods and Recent Developments,Appl.Sci.,2019年09月,Vol.9 No.3834,pp.1-18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/958
G02B 21/00-21/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元光回折断層撮影装置を利用した低干渉光源とマルチパターン照明を利用した3次元光回折断層撮影方法であって、
複数のパターンを利用して試験片に光源
からの光を入射する段階、
イメージ測定部で前記試験片の異なる深さ(depth)位置上で異なる位置を測定するように構成され、前記試験片の2次元映像を測定する段階、および
互いに異なる前記パターンと互いに異なる前記深さ(depth)位置で測定した前記2次元映像に基づいて前記試験片の3次元屈折率情報を復元する段階
を含
み、
前記複数のパターンを利用して試験片に光源からの光を入射する段階は、
少なくとも2つ以上の光照明パターンを使用し、光の強度は、空間周波数の座標系を基準として最外郭に位置し、前記最外郭として定義された地点で空間周波数が中心に移動しながら光の強度は減少する条件を満たすパターンを組み合わせて最終的な光学伝達関数(Optical Transfer Function:OTF)を生成するときに、各空間周波数の位置で光学伝達関数(OTF)値が最大限均一となるようにパターンを決定すること
を含む、
3次元光回折断層撮影方法。
【請求項2】
前記試験片と前記イメージ測定部との間に光伝播部が位置して前記試験片と前記イメージ測定部との間に光の伝播を起こす段階
をさらに含む、請求項1に記載の3次元光回折断層撮影方法。
【請求項3】
前記複数のパターンを利用して試験片に光源を入射する段階は、
透過型または反射型ディスプレイ装置を使用するかパターンが記録された装置を使用して入射パターンを制御することにより、前記複数のパターンを利用して試験片に光源を入射すること
を特徴とする、請求項1に記載の3次元光回折断層撮影方法。
【請求項4】
前記複数のパターンを利用して試験片に光源を入射する段階は、
固定された器具に異なる角度で入射する前記光源を使用して入射パターンを制御することにより、前記複数のパターンを利用して試験片に光源を入射すること
を特徴とする、請求項1に記載の3次元光回折断層撮影方法。
【請求項5】
前記複数のパターンを利用して試験片に光源を入射する段階は、
前記光源と前記パターンを制御する入射パターン制御部が一体型で構成されたLEDアレイ(Light Emitting Device array)またはマイクロLEDアレイ(micro LED array)を使用することにより、前記複数のパターンを利用して試験片に光源を入射すること
を特徴とする、請求項1に記載の3次元光回折断層撮影方法。
【請求項6】
前記2次元映像に基づいて前記試験片の3次元屈折率情報を復元する段階は、
振幅(amplitude)および位相(phase)による3D点拡がり関数(Point Spread Function:PSF)を計算し、それぞれ異なるz位置で測定された2次元映像i(x、y、z)情報に基づいてv(x、y、z)=amplitude(x、y、z)+i×phase(x、y、z)を再構成する方式により、前記試験片の3次元屈折率情報を復元すること
を特徴とする、請求項1に記載の3次元光回折断層撮影方法。
【請求項7】
低干渉光源とマルチパターン照明を利用した3次元光回折断層撮影装置であって、
複数のパターンを利用して試験片に光源
からの光を入射する入射パターン制御部、
前記試験片の異なる深さ(depth)位置上で異なる位置を測定するように構成され、前記試験片の2次元映像を測定するイメージ測定部、および
互いに異なる前記パターンと互いに異なる前記深さ(depth)位置で測定した前記2次元映像に基づいて前記試験片の3次元屈折率情報を復元する計算部
を備
え、
前記入射パターン制御部は、
少なくとも2つ以上の光照明パターンを使用し、光の強度は、空間周波数の座標系を基準として最外郭に位置し、前記最外郭として定義された地点で空間周波数が中心に移動しながら光の強度は減少する条件を満たすパターンを組み合わせて最終的な光学伝達関数(Optical Transfer Function:OTF)を生成するときに、各空間周波数の位置で光学伝達関数(OTF)値が最大限均一となるようにパターンを決定する、
3次元光回折断層撮影装置。
【請求項8】
前記試験片と前記イメージ測定部との間に位置して前記試験片と前記イメージ測定部との間に光の伝播を起こす光伝播部
をさらに備える、請求項
7に記載の3次元光回折断層撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の実施形態は、低干渉光源とマルチパターン照明を利用した3次元光回折断層撮影方法および装置に関し、より詳細には、低干渉性の光源を利用して3次元屈折率映像を復元する3次元光回折断層撮影方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光回折断層撮影法(Optical Diffraction Tomography:ODT)は、非侵襲的測定によってサンプルの3次元屈折率(Refractive Index:RI)分布を定量的に復旧することができる方法であって、バクテリア、細胞、組職などのような生物学的研究はもちろん、プラスチックレンズの欠陥確認や、微細な3次元温度分布測定などの多様な分野に適用されている(非特許文献1)。
【0003】
既存のODT技術は、干渉性が高い光源(coherent illumination)によって試験片で散乱する信号と参照光(reference light)を干渉させて発生するパターンを干渉計(interferometry)で測定して分析することを基本とする。しかし、このような場合には、光源の高い干渉性によってスペックル雑音(speckle noise)のような映像品質の低下が発生することがあり、干渉計を構成して維持する過程において弱点(例えば、振動による雑音、複雑なメカニズム、精密な装備維持の要求など)が発生することがある。
【0004】
このような問題を解決するために、干渉性が低い光源を利用して試験片の屈折率情報を測定する理論が開発され(非特許文献2および非特許文献3)、最近は実験的に実現されたりもした(非特許文献4)。しかし、既存の方式によって測定された3次元屈折率映像は、試験片の3次元構造を正確に測定することができず、映像歪曲が多発した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Park,YongKeun,Christian Depeursinge,and Gabriel Popescu.“Quantitative phase imaging in biomedicine.”Nature Photonics 12.10(2018):578-589.
【文献】Streibl,Norbert.“Three-dimensional imaging by a microscope.”JOSA A 2.2(1985):121-127.
【文献】Bao,Yijun,and Thomas K.Gaylord.“Quantitative phase imaging method based on an analytical nonparaxial partially coherent phase optical transfer function.”JOSA A 33.11(2016):2125-2136.
【文献】Soto,Juan M.,Jose A.Rodrigo,and Tatiana Alieva.“Label-free quantitative 3D tomographic imaging for partially coherent light microscopy.”Optics express 25.14(2017):15699-15712.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実施形態は、低干渉光源とマルチパターン照明を利用した3次元光回折断層撮影方法および装置に関し、より具体的には、干渉性が低い光源(low coherence light or partially coherent light)を使用し、参照光(reference beam)のない単純な光学測定装備で、正確な3次元屈折率映像を取得するための技術を提供することを目的とする。
【0007】
実施形態は、複数枚の最適化されたパターンを利用して試験片に光源を入射し、これに基づき、3次元映像の歪曲のない、正確な値と形状を有する屈折率トモグラフィを構成する、低干渉光源とマルチパターン照明を利用した3次元光回折断撮影方法および装置を提供することを目的とする。
【0008】
実施形態は、干渉性が低い一般的な光源を利用し、干渉計などを使用しない簡単な映像測定装置を利用し、小さな試験片の3次元屈折率情報を正確に測定することができる、低干渉光源とマルチパターン照明を利用した3次元光回折断層撮影方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態に係る、3次元光回折断層撮影装置を利用した低干渉光源とマルチパターン照明を利用した3次元光回折断層撮影方法は、複数のパターンを利用して試験片に光源を入射する段階、イメージ測定部で前記試験片の異なる深さ(depth)位置上で異なる位置を測定するように構成され、前記試験片の2次元映像を測定する段階、および互いに異なる前記パターンと互いに異なる前記深さ(depth)位置で測定した前記2次元映像に基づいて前記試験片の3次元屈折率情報を復元する段階を含んでよい。
【0010】
前記試験片の2次元映像を測定する前に、前記試験片と前記イメージ測定部との間に光伝播部が位置して前記試験片と前記イメージ測定部との間に光の伝播を起こす段階をさらに含んでよい。
【0011】
前記複数のパターンを利用して試験片に光源を入射する段階は、少なくとも3つ以上の光照明パターンを使用し、光の強度は、空間周波数の座標系を基準として最外郭に位置し、前記最外郭として定義された地点で空間周波数が中心に移動しながら光の強度は減少する条件を満たすパターンを組み合わせて最終的な光学伝達関数(Optical Transfer Function:OTF)を生成するときに、各空間周波数の位置で光学伝達関数(OTF)値が最大限均一となるようにパターンを決定してよい。
【0012】
前記複数のパターンを利用して試験片に光源を入射する段階は、透過型または反射型ディスプレイ装置を使用するかパターンが記録された装置を使用して入射パターンを制御することにより、前記複数のパターンを利用して試験片に光源を入射してよい。
【0013】
前記複数のパターンを利用して試験片に光源を入射する段階は、固定された器具に他の角度で入射する前記光源を使用して入射パターンを制御することにより、前記複数のパターンを利用して試験片に光源を入射してよい。
【0014】
前記複数のパターンを利用して試験片に光源を入射する段階は、前記光源と前記パターンを制御する入射パターン制御部が一体型で構成されたLEDアレイ(Light Emitting Device array)またはマイクロLEDアレイ(micro LED array)を使用し、前記複数のパターンを利用して試験片に光源を入射してよい。
【0015】
前記2次元映像に基づいて前記試験片の3次元屈折率情報を復元する段階は、振幅(amplitude)および位相(phase)による3D点拡がり関数(Point Spread Function:PSF)を計算し、それぞれ異なるz位置で測定された2次元映像i(x、y、z)情報に基づいてv(x、y、z)=amplitude(x、y、z)+i×phase(x、y、z)を再構成する方式により、前記試験片の3次元屈折率情報を復元してよい。
【0016】
他の実施形態に係る、低干渉光源とマルチパターン照明を利用した3次元光回折断層撮影装置は、複数のパターンを利用して試験片に光源を入射する入射パターン制御部、前記試験片の異なる深さ(depth)位置上で異なる位置を測定するように構成され、前記試験片の2次元映像を測定するイメージ測定部、および互いに異なる前記パターンと互いに異なる前記深さ(depth)位置で測定した前記2次元映像に基づいて前記試験片の3次元屈折率情報を復元する計算部を備えてよい。
【0017】
前記試験片と前記イメージ測定部との間に位置し、前記試験片と前記イメージ測定部との間に光の伝播を起こす光伝播部をさらに備えてよい。
【0018】
前記入射パターン制御部は、少なくとも3つ以上の光照明パターンを使用し、光の強度は、空間周波数座標系を基準として最外郭に位置し、前記最外郭として定義された地点で空間周波数が中心に移動しながら光の強度は減少する条件を満たすパターンを組み合わせて最終的な光学伝達関数(Optical Transfer Function:OTF)を生成するときに、各空間周波数の位置で光学伝達関数(OTF)値が最大限均一となるようにパターンを決定してよい。
【発明の効果】
【0019】
実施形態によると、干渉性が低い一般的な光源を利用し、干渉計などを使用しない簡単な映像測定装置で、小さな試験片の3次元屈折率情報を正確に測定することができる、低干渉光源とマルチパターン照明を利用した3次元光回折断層撮影方法および装置を提供することができる。
【0020】
また、実施形態によると、従来の技術では正確な測定が困難であった生物学細胞などの透明な物体の3次元屈折率情報を簡単かつ精密に測定することができるため、これを活用することにより、標識を加える必要なく、生物学研究と医学診断分野において幅広く活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1a】一般的な低干渉性3次元顕微鏡映像の復元例を示した図である。
【
図1b】
図1aの実験的に測定した微細ポリエチレンビーズの3次元復元映像を示した図である。
【
図2a】一実施形態における、複数枚の入射パターンの特徴を示した図である。
【
図2b】一実施形態における、3種類の入射パターンを使用する例を示した図である。
【
図2c】一実施形態における、4種類の入射パターンを使用する例を示した図である。
【
図2d】一実施形態における、計算した複数枚の入射パターンで測定した3次元屈折率映像の結果を示した図である。
【
図3a】一実施形態における、提案する条件を満たさない入射パターンの特徴を示した図である。
【
図3b】一実施形態における、提案する条件を満たさない入射パターンで測定した3次元屈折率映像の結果を示した図である。
【
図4】一実施形態における、3次元光回折断層撮影方法を示したフローチャートである。
【
図5】一実施形態における、3次元光回折断層撮影装置を示したブロック図である。
【
図6】一実施形態における、測定したがん細胞の3次元屈折率映像を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。しかし、記載する実施形態は、多様な他の形態に変形可能であるため、本発明の範囲が以下で説明される実施形態に限定されてはならない。また、記載する実施形態は、当技術分野において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供するものである。なお、図に示した要素の形状および大きさなどは、説明をより明らかにするために誇張して示すこともある。
【0023】
以下の実施形態は、干渉性が低い光源(low coherence light or partially coherent light)を使用し、参照光(reference beam)のない単純な光学測定装備で、正確な3次元屈折率映像を取得するための技術を提供する。
【0024】
研究によって把握した従来技術の問題点は、3次元映像を構成するための2次元情報を取得する過程において、映像システムの光学伝達関数(Optical Transfer Function:OTF)を正確に反映することができないという点にある。これにより、測定して構成した3次元映像情報に深刻な歪曲が発生することがある。より具体的に、既存の方式では、試験片に入射する光源としてケーラー照明(Kohler illumination)という一般的な顕微鏡光源を利用するのであるが、この場合、構成される3次元空間周波数(spatial frequency)ごとに転送効率(transfer efficiency)が異なり、これによって3次元映像に歪曲が発生するようになる。
【0025】
このような限界を克服するために、本実施形態では、複数枚の最適化されたパターンを利用して試験片に光源を入射し、これに基づき、3次元映像の歪曲のない、正確な値と形状を有する屈折率トモグラフィを構成することを目的とする。
【0026】
実施形態は、低干渉性の光源を利用して3次元屈折率映像を復元する技術に関し、より具体的には、複数の2次元パターン光源を利用し、光学伝達関数(OTF)の歪曲発生を最小化することのできる特殊なパターン光源を使用することを核心とする。
【0027】
3次元映像の生成理論によると(非特許文献2および非特許文献3)、3次元物体は、3次元光の吸収度と関連する分布amplitude(x、y、z)と3次元屈折率と関連する分布phase(x、y、z)とで構成され、3次元物体は、複素数としてv(x、y、z)=amplitude(x、y、z)+i×phase(x、y、z)で表現される。このような3次元物体を顕微鏡のような映像装備を利用してカメラで記録すれば、測定された光の強度分布は、以下の式のように表現されてよい。
【0028】
【0029】
【0030】
3次元映像の復元は、それぞれ異なるz位置で測定した複数枚の2次元強度分布映像を利用することでなされるが、具体的には、数式(1)をフーリエ変換した数式(2)を利用して3次元空間上でなされてよい。数式(1)をフーリエ変換すれば、次の式のように表現されてよい。
【0031】
【0032】
ここで、B(k_x、k_y、k_z)、Amplitude(k_x、k_y、k_z)、およびPhase(k_x、k_y、k_z)はそれぞれ、b(x、y、z)、amplitude(x、y、z)、およびphase(x、y、z)を3次元フーリエ変換したものであり、大文字および小文字で区分して表現されてよい。
【0033】
光学顕微鏡システムが準備されれば、光学顕微鏡システムの光源と映像取得部の構成によってPSF_A(x、y、z)およびPSF_P(x、y、z)を計算して入れ、それぞれ異なるz位置で測定されたi(x、y、z)情報に基づき、数式(2)でv(x、y、z)=amplitude(x、y、z)+i×phase(x、y、z)を再構成する方式によって3次元復元過程を行ってよい。このとき、PSF_A(x、y、z)およびPSF_P(x、y、z)の形態によって3次元映像復元の品質が決定されることは、数式(1)と数式(2)で確認することができる。
【0034】
図1aは、一般的な低干渉性3次元顕微鏡映像の復元例を示した図である。また、
図1bは、
図1aの実験的に測定した微細ポリエチレンビーズの3次元復元映像を示した図である。
【0035】
図1aは、従来の一般的な低干渉性3次元顕微鏡映像の復元例を示しており、それぞれの入射条件による3次元光学伝達関数(OTF)の形態を示している。ここで、振幅(amplitude)および位相(phase)は、すべての図面で反転してよい。
【0036】
一般的な入射光を利用した場合のシミュレーション(simulation)と実験結果を示しており、
図1aの1番目の場合(“#1.half NA”)は、試験片に入射する光源が一般的な顕微鏡で使用されるケーラー照明(Kohler illumination)であり、対物レンズ(objective lens)の開口数(numerical aperture:NA)を基準として半分に該当するNAで入射した場合である。振幅(Amplitude)光学伝達関数(OTF)と位相(Phase)光学伝達関数(OTF)を見ると、空間周波数ごとに情報を測定することができない場合と、情報が歪曲されて復元される場合が多いことを確認することができる。また、
図1aの2番目の場合(“#2.full NA with gradient”)は、対物レンズ(objective lens)の開口数(numerical aperture:NA)を基準としてfullに該当するNAで入射した場合である。
【0037】
これに基づいて映像を測定すると、
図1bのような結果が得られるようになる。すなわち、
図1bを参照すると、実験的に測定した微細なポリエチレンビーズの3次元復元映像を確認することができ、3次元映像に相当な歪曲が発生することを確認することができる。このとき、3um直径の微細なポリエチレンビーズ(polystyrene bead)をオイル(oil)に入れて測定してよい。
【0038】
図2aは、一実施形態における、複数枚の入射パターンの特徴を示す図である。また、
図2bは、一実施形態における、3種類の入射パターンを使用する例を示した図であり、
図2cは、一実施形態における、4種類の入射パターンを使用する例を示した図である。さらに、
図2dは、一実施形態における、計算した複数枚の入射パターンで測定した3次元屈折率映像の結果を示した図である。
【0039】
本実施形態の核心は、振幅(amplitude)および位相(phase)による3D点拡がり関数(PSF)PSF_A(x、y、z)およびPSF_P(x、y、z)が理想的な状況になるように、特別に計算された複数枚の入射パターンを利用して3次元映像を構成することにある。本実施形態において提案された複数枚の入射パターンの特徴は、
図2aに示すとおりである。最小3つ以上の光パターンを使用するが、空間周波数の座標系(k_x、k_y)を基準として次のような特性がある。
【0040】
(1)屈折率の実数部分と虚数部分を同時に測定するために、最小3つ以上の光照明パターンを使用する。屈折率の実数部分だけを測定するために(すなわち、試験片で光の吸収を無視することができる場合)、最小2つ以上の光照明パターンを使用する。
【0041】
(2)光の強度が最も高い位置は、空間周波数の座標系を基準として最外郭または中央に位置する。
【0042】
(3)(2)で定義された地点で空間周波数が(0、0)である位置(中心)に移動しながら光の強度は減少する。このとき、減少の傾向性は、線形減少よりも速くなければならない。
【0043】
(4)(1)、(2)、(3)の条件を満たすパターンを組み合わせて最終的な光学伝達関数(OTF)を生成するときに、各空間周波数の位置で光学伝達関数(OTF)値が最大限均一となるようにパターンを決定する。
【0044】
ここで、複数枚の入射パターンは、
図2bに示すように3種類の入射パターンを使用してもよく、
図2cに示すように4種類の入射パターンを使用してもよい。
図2dは、本実施形態において提案した方式によって計算した複数枚の入射パターンで測定した3次元屈折率映像結果を示している。図に示したパターンは、本発明を適用したパターンの一例に過ぎず、実際に適用する場合には、上述した条件を満たす他のパターンの組み合わせも使用可能である。
【0045】
既存の方式によって測定した結果で問題視されていた映像の歪曲とアーティファクト(artifact)などは、新たな方式によって測定した結果では、その大部分が解決されることを確認することができる。特に、側面ビュー(side view)(x-zまたはx-y断面図)で確認できるように、試験片の3次元復元で重要となる光軸方向映像の歪曲は、ほぼ消えたことを確認することができる。
【0046】
図3aは、一実施形態における、提案する条件を満たさない入射パターンの特徴を示した図である。また、
図3bは、一実施形態における、提案する条件を満たさない入射パターンで測定した3次元屈折率映像の結果を示した図である。
【0047】
図3aおよび
図3bは、本実施形態における、提案する条件を満たさない他の入射パターンで測定した3次元屈折率映像を示しており、映像の歪曲が確然としている。
【0048】
本実施形態において提案する方式と、これによって得られる3次元屈折率映像の結果は、単に複数の光パターンを使用するからといって達成できるものではない。一例として、光を半分ずつ遮る複数枚のパターンを使用して3次元屈折率を復元する場合は、むしろより深刻な映像歪曲が発生することを確認することができる。これは、複数枚のパターンを使用したとしても、単純なパターンを使用する場合には、3次元光学伝達関数(OTF)空間を均一に満たすことができないためである。
【0049】
図4は、一実施形態における、3次元光回折断層撮影方法を示したフローチャートである。
【0050】
図4を参照すると、一実施形態における、3次元光回折断層撮影装置を利用した低干渉光源とマルチパターン照明を利用した3次元光回折断層撮影方法は、複数のパターンを利用して試験片に光源を入射する段階110、イメージ測定部で試験片の異なる深さ(depth)位置上で異なる位置を測定するように構成され、試験片の2次元映像を測定する段階130、および互いに異なるパターンと互いに異なる深さ(depth)位置で測定した2次元映像に基づいて試験片の3次元屈折率情報を復元する段階140を含んでよい。
【0051】
試験片の2次元映像を測定する前に、試験片とイメージ測定部との間に光伝播部が位置し、試験片とイメージ測定部との間に光の伝播を起こす段階120をさらに含んでよい。
【0052】
以下では、一実施形態に係る3次元光回折断層撮影方法の各段階についてより詳しく説明する。
【0053】
一実施形態に係る3次元光回折断層撮影方法は、一実施形態に係る3次元光回折断層撮影装置を用いながらより具体的に説明する。
【0054】
図5は、一実施形態における、3次元光回折断層撮影装置を示したブロック図である。
【0055】
図5を参照すると、一実施形態に係る3次元光回折断層撮影装置500は、入射パターン制御部510、イメージ測定部530、および計算部540を備えてよい。実施形態によって、3次元光回折断層撮影装置500は、光伝播部520をさらに備えてよい。
【0056】
段階110で、入射パターン制御部510は、複数のパターンを利用して試験片に光源を入射してよい。入射パターン制御部510は、入射パターンを制御するための装置である。ここで、試験片は、透過型または反射型構造で構成されてよい。
【0057】
入射パターン制御部510は、少なくとも3枚以上の光照明パターンを使用し、光の強度は、空間周波数の座標系を基準として最外郭に位置し、最外郭として定義された地点で空間周波数が中心に移動しながら光の強度は減少する条件を満たすパターンを組み合わせて最終的な光学伝達関数(Optical Transfer Function:OTF)を生成するときに、各空間周波数の位置で光学伝達関数(OTF)値が最大限均一となるようにパターンを決定してよい。
【0058】
入射パターン制御部510は、透過型または反射型ディスプレイ装置を使用して入射パターンを制御することにより、複数のパターンを利用して試験片に光源を入射してよい。例えば、LCD(Liquid Crystal Display)を使用して透過型制御部を構成してよい。他の例として、デジタル・マイクロミラー・デバイス(Digital Micromirror Device:DMD)を使用して反射型制御部を構成してよい。また他の例として、空間光変調器(Spatial Light Modulator)を使用して透過型または反射型制御部を構成してよい。
【0059】
入射パターン制御部510は、パターンが記録された装置を使用して入射パターンを制御することにより、複数のパターンを利用して試験片に光源を入射してよい。例えば、上述したパターン条件を満たす少なくとも1つ以上の2次元吸光パターンを回転させるか移送させることにより、入射パターンを制御してよい。
【0060】
入射パターン制御部510は、固定された器具に他の角度で入射する光源を使用して入射パターンを制御することにより、複数のパターンを利用して試験片に光源を入射してよい。すなわち、入射パターンを制御するために、固定された器具に入射光を制御して構成してよい。例えば、半球型に固定された器具に他の角度で入射する光源を使用し、上述したパターン条件を満たすように構成してよい。
【0061】
また、入射パターン制御部510は、光源とパターンを制御する入射パターン制御部510が一体型で構成されたLEDアレイ(Light Emitting Device array)またはマイクロLEDアレイ(micro LED array)などを使用し、複数のパターンを利用して試験片に光源を入射してよい。
【0062】
段階120で、光伝播部520は、試験片とイメージ測定部530との間に位置して試験片とイメージ測定部530との間に光の伝播を起こしてよい。光伝播部520は、試験片とイメージ測定部530との間に光の伝播を起こすことができる装置、または焦点距離を変えることができる器具である。
【0063】
段階130で、イメージ測定部530は、試験片の異なる深さ(depth)位置上で異なる位置を測定するように構成され、試験片の2次元映像を測定してよい。例えば、試験片で散乱する情報を取得する対物レンズを試験片方向に近づけたり遠ざけたりすることによって構成してよい。または、試験片の位置をレンズ方向に近づけたり遠ざけたりすることによって構成してよい。または、レンズの焦点距離を変える方式によって構成してよい。
【0064】
段階140で、計算部540は、複数枚で測定された2次元映像から3次元屈折率映像を復元してよい。このような計算部540は、互いに異なるパターンと互いに異なる深さ(depth)位置で測定した2次元映像に基づき、数式(2)を用いて試験片の3次元屈折率情報を復元してよい。
【0065】
より具体的に、2次元映像に基づいて試験片の3次元屈折率情報を復元する段階は、振幅(amplitude)および位相(phase)による3D点拡がり関数(Point Spread Function:PSF)を計算し、それぞれ異なるz位置で測定された2次元映像i(x、y、z)情報に基づき、数式(2)でv(x、y、z)=amplitude(x、y、z)+i×phase(x、y、z)を再構成する方式により、試験片の3次元屈折率情報を復元してよい。
【0066】
図6は、一実施形態における、測定したがん細胞の3次元屈折率映像を示した図である。
図6は、一実施形態によって測定したがん細胞の3次元屈折率映像の例を示している。
【0067】
実施形態によると、干渉性が低い一般的な光源を利用し、干渉計などを使用しない簡単な映像測定装置を利用することで、小さな試験片の3次元屈折率情報を正確に測定することができる。
【0068】
また、実施形態によると、従来の技術では正確な測定が困難であった生物学細胞などの透明な物体の3次元屈折率情報を簡単かつ精密に測定することができるため、これを活用することにより、標識を加える必要なく、生物学研究と医学診断分野において幅広く活用することができる。
【0069】
上述した装置は、ハードウェア構成要素、ソフトウェア構成要素、および/またはハードウェア構成要素とソフトウェア構成要素との組み合わせによって実現されてよい。例えば、実施形態で説明された装置および構成要素は、例えば、プロセッサ、コントローラ、ALU(arithmetic logic unit)、デジタル信号プロセッサ、マイクロコンピュータ、FPA(field programmable array)、PLU(programmable logic unit)、マイクロプロセッサ、または命令を実行して応答することができる様々な装置のように、1つ以上の汎用コンピュータまたは特殊目的コンピュータを利用して実現されてよい。処理装置は、オペレーティングシステム(OS)および前記OS上で実行される1つ以上のソフトウェアアプリケーションを実行してよい。また、処理装置は、ソフトウェアの実行に応答し、データにアクセスし、データを格納、操作、処理、および生成してもよい。理解の便宜のために、1つの処理装置が使用されるとして説明される場合もあるが、当業者は、処理装置が複数個の処理要素および/または複数種類の処理要素を含んでもよいことが理解できるであろう。例えば、処理装置は、複数個のプロセッサまたは1つのプロセッサおよび1つのコントローラを含んでよい。また、並列プロセッサのような、他の処理構成も可能である。
【0070】
ソフトウェアは、コンピュータプログラム、コード、命令、またはこれらのうちの1つ以上の組み合わせを含んでもよく、所望の動作を実行するように処理装置を構成したり、独立的または集合的に処理装置に命令したりしてよい。ソフトウェアおよび/またはデータは、処理装置に基づいて解釈されたり、処理装置に命令またはデータを提供したりするために、いかなる種類の機械、コンポーネント、物理装置、仮想装置、コンピュータ格納媒体または装置に具現化されてよい。ソフトウェアは、ネットワークによって接続されたコンピュータシステム上に分散され、分散された状態で格納されても実行されてもよい。ソフトウェアおよびデータは、1つ以上のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されてよい。
【0071】
実施形態に係る方法は、多様なコンピュータ手段によって実行可能なプログラム命令の形態で実現されてコンピュータ読み取り可能な媒体に記録されてよい。前記コンピュータ読み取り可能な媒体は、プログラム命令、データファイル、データ構造などを単独でまたは組み合わせて含んでよい。前記媒体に記録されるプログラム命令は、実施形態のために特別に設計されて構成されたものであっても、コンピュータソフトウェアの当業者に公知な使用可能なものであってもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体の例としては、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、および磁気テープのような磁気媒体、CD-ROM、DVDのような光媒体、フロプティカルディスク(floptical disk)のような光磁気媒体、およびROM、RAM、フラッシュメモリなどのようなプログラム命令を格納して実行するように特別に構成されたハードウェア装置が含まれる。プログラム命令の例は、コンパイラによって生成されるもののような機械語コードだけではなく、インタプリタなどを使用してコンピュータによって実行される高級言語コードを含む。
【0072】
以上のように、実施形態を、限定された実施形態と図面に基づいて説明したが、当業者であれば、上述した記載から多様な修正および変形が可能であろう。例えば、説明された技術が、説明された方法とは異なる順序で実行されたり、かつ/あるいは、説明されたシステム、構造、装置、回路などの構成要素が、説明された方法とは異なる形態で結合されたりまたは組み合わされたり、他の構成要素または均等物によって対置されたり置換されたとしても、適切な結果を達成することができる。
【0073】
したがって、異なる実施形態であっても、特許請求の範囲と均等なものであれば、添付される特許請求の範囲に属する。
【符号の説明】
【0074】
500:3次元光回折断層撮影装置
510:入射パターン制御部
520:光伝播部
530:イメージ測定部
540:計算部