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  • 特許-廃プラスチック油化システム 図1
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  • 特許-廃プラスチック油化システム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】廃プラスチック油化システム
(51)【国際特許分類】
   C10G 1/10 20060101AFI20220805BHJP
   C08J 11/12 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
C10G1/10
C08J11/12
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018134538
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020002333
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】518254230
【氏名又は名称】株式会社RTA
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 和行
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-247874(JP,A)
【文献】特開平06-226233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
C08J 11/00-28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料の廃プラスチックを分解蒸発槽で熱分解し、蒸発した分解ガスを冷却して分解油を生成する廃プラスチック油化システムにおいて、
前記分解蒸発槽から蒸発して来た分解ガスを中和する中和槽を備え、
この中和槽内は、仕切り板により上流室と下流室とが仕切り形成されているともに、この仕切り板により上流室の流入口と下流室の流出口も仕切られ、さらに仕切り板の下側には流れの反転室となる下側空間が形成され、
これら上流室と下流室の上側にはアルカリ液を下向きに噴霧する噴霧ノズルが設置されており、
前記流入口から前記上流室に流入した分解ガスが、前記仕切り板により下降流となって前記噴霧ノズルから噴霧されるアルカリ液を浴びて流速を増し、
前記下側空間では分解ガスが反転流となり、
前記下流室では、分解ガスが上昇流となってそれに逆らうように前記噴霧ノズルから噴霧されるアルカリ液を浴びることにより、減速されて前記流出口から流出する構成となっていることを特徴とする廃プラスチック油化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料の廃プラスチックを分解蒸発槽で熱分解し、蒸発した分解ガスを冷却して分解油を生成する廃プラスチック油化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、この種の廃プラスチック油化システムとして特許文献1記載のものを提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-75294号公報
【文献】特許第3435399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
廃プラスチックには、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチロール(PS)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)などが混在している。そのうち、酸性分を含むもの、特に廃棄量の比率が増える傾向にあるPETはテレフタール酸を含み、PVCは塩素系プラスチックであるため、上記のような廃プラスチック油化システムにおける配管や機器などを腐食ないし閉塞させる問題がある。また、分解ガスに含まれるタール分や熱分解処理過程で混入する触媒成分も同じような問題がある。
【0005】
特許文献2に記載の技術では、廃プラスチックの熱分解で生じるガス中の酸性分(PETの場合は安息香酸、PVCの場合は塩化水素)による腐食を防止するために、粉砕した廃プラスチックに対して熱分解処理以前に消石灰や生石灰などのアルカリ性物質を添加している。しかし、アルカリ性物質添加を事前に行うことから、加熱脱塩素装置内で脱塩素処理をしてから熱分解処理をする必要があり、また廃プラスチック中のPETおよびPVCの含有量に応じてアルカリ性物質の添加量を調整する必要もある。
本発明の目的は、熱分解で生じた分解ガスに含まれるテレフタール酸や塩化水素などの酸性分を簡単に中和できるとともに、分解ガスに含まれるタール分や触媒成分も同時に分離できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため本発明の廃プラスチック油化システムでは、
分解蒸発槽から蒸発して来た分解ガスを中和する中和槽を備え、
この中和槽内は、仕切り板により上流室と下流室とが仕切り形成されているともに、この仕切り板により上流室の流入口と下流室の流出口も仕切られ、さらに仕切り板の下側には流れの反転室となる下側空間が形成され、
これら上流室と下流室の上側にはアルカリ液を下向きに噴霧する噴霧ノズルが設置されており、
前記流入口から前記上流室に流入した分解ガスが、前記仕切り板により下降流となって前記噴霧ノズルから噴霧されるアルカリ液を浴びて流速を増し、
前記下側空間では分解ガスが反転流となり、
前記下流室では、分解ガスが上昇流となってそれに逆らうように前記噴霧ノズルから噴霧されるアルカリ液を浴びることにより、減速されて前記流出口から流出する構成となっている。
【発明の効果】
【0007】
このような構成とすると、中和槽の上流室の入口から流入して来た分解ガスは仕切り板により下降流となり、下向きに噴霧されているアルカリ液を浴びるとともに、その下向きの噴霧により派生する下向きの気流も受けるため、分解ガスの下降流は速度を増していく。この下降中、分解ガスの酸性分は中和されるとともに、タール分や触媒成分などの液体又は固体の混入物は自重による落下力を強められ、仕切り板の下の下側空間で分解ガスが反転流となることにより、ガス分から分離される。
反転流となった分解ガスは向きを変えて下流室へと上昇するが、下流室にもアルカリ液が下向きに噴霧されているとともに、それにより派生する気流が下向きに流れているので、下流室に入った途端に強い乱流が生じ、中和作用が一層促進されるとともに、液体又は固体の混入物の分離も一層促進される。そして、下流室では、下向きに噴霧されているアルカリ液と、それにより派生している下向きの気流とに逆らって分解ガスが上昇することにより、流れの速度を弱められることでアルカリ液との混合時間が長くなり、しかも上昇中にも乱流を生じる。それにより、分解ガスの酸性分の中和は上流室よりも満遍なく行われるとともに、液体又は固体の混入物はその自重により落下してガス分と分離されるので、下流室から流出する分解ガスは酸性分を中和されているとともに、タール分や触媒成分などの液体又は固体の混入物も分離されたクリーンなガスとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明を適用した廃プラスチック油化システムの一例の全体構成図である。
図2】本発明の要部となるアルカリスプレー装置の一実施例の正面図である。
図3】同じく側面図である。
図4】アルカリスプレー装置の機能説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
先ず、本発明による廃プラスチック油化システムの一例の全体構成について、図1を参照して説明する。
ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチロール(PS)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、発泡スチロールなどが混在した廃プラスチックは、破砕、減容、冷却などの前処理をされてから、本発明の廃プラスチック投入装置1へパイプ中をエアー輸送されて来るので、これを「粉砕原料」と称する。
【0010】
粉砕原料はサイクロン2にて捕集され、廃プラスチック投入装置1の原料投入ホッパ3に一時貯溜されるとともに、パイプ中を別途輸送されて来た触媒も触媒投入ホッパ4に一時貯溜される。原料投入ホッパ3中の粉砕原料は、パドルスクリューコンベア5にて送り出され、その先端部から下側に配管接続した廃プラスチック投入装置1の電動式ロータリーバルブ6に入り、これにて定量ずつ投入管7を通じて廃プラスチック分解装置8のドラム形分解蒸発槽9へ投入される。
一方、エアー輸送されて来た触媒投入ホッパ4内の触媒も、触媒搬送スクリュー10にて投入管7の途中からその中へ送り込まれ、粉砕原料と共に分解蒸発槽9へ投入される。
【0011】
分解蒸発槽9内では、特許文献1に記載されているように、粉砕原料と触媒とが縦軸の投入用撹拌機11により混合されながら、二重壁構造の分解蒸発槽9の周壁近くで底壁上へと送り込まれ、その底壁内部及び周壁内部を循環する熱媒体により間接的に加熱されながら、分解用撹拌機12の第1の撹拌部により周壁に沿って撹拌されることにより熱分解される。さらに、分解用撹拌機12の第2の撹拌部により分散されてから、底壁上をその中央の残渣排出口へ寄って行くように撹拌されることにより熱分解が進み、熱分解を終えた残渣として残渣排出装置13により排出される。
【0012】
分解蒸発槽9内での熱分解で蒸発した分解ガスは、この分解蒸発槽9の上方に設置して配管接続したアルカリスプレー装置14の中和槽15へ送られ、ここで分解ガス中のテレフタール酸などの酸性分がアルカリ液の噴霧によって中和される。中和槽15での噴霧回収液は、沈殿分離槽16に流れ落ちてタール分や触媒成分などを分離され、中和槽15へと返戻されて循環利用される。従って、ここでのアルカリ液噴霧による中和処理によって、原料のPETに含まれていたテレフタール酸やタール分や触媒成分などによる配管の閉塞を防止できるとともに、油化処理製品のpH調整を行うことができる。
【0013】
アルカリ中和された分解ガスは、中和槽15に配管接続した第1のコンデンサ17で冷却される。このコンデンサ17は一次分解油生成装置として機能し、ここでの冷却によって一次分解油が生成される。この一次分解油は、コンデンサ17の下方に設置して配管接続した蒸留安定装置18の蒸留槽19内へ落入する。
【0014】
蒸留安定装置18は、分解蒸発槽9と同様に、二重壁構造の空洞に熱媒体を循環させて蒸留槽19を間接加熱する。蒸留槽19内で蒸発したガス分は、その上方に設置して配管接続した第2のコンデンサ20にて冷却される。このコンデンサ20は二次分解油生成装置として機能し、ここでの冷却によって二次分解油が生成される。
【0015】
第2のコンデンサ20にて生成された二次分解油は、その下方に設置して配管接続した分離タンク21にいったん流入し、不純物などを沈殿分離してから、その下方に設置した引火点調整装置22の定温加熱槽23へ入り、ここで再び熱媒体にて間接加熱される。引火点調整装置22では、定温加熱槽23内の二次分解油を撹拌しながらほぼ一定温度で加熱することにより、引火点が低いものは蒸発させる。蒸発しなかった油分は目的とする生成油として製品貯溜タンク24に貯溜される。
【実施例
【0016】
上述のようにアルカリスプレー装置14は、分解蒸発槽9より蒸発して来る分解ガスの酸性分を中和槽15内で中和するものであるが、その実施例を図2図3及び図4を参照して説明する。
【0017】
中和槽15は水平な支持管25に垂設され、この支持管25を、分解蒸発槽9の排出口に接続されてこれから垂直に立ち上がる接続管26の先端にエルボ27にて接続することにより、中和槽15は垂直に架設された状態となっている。従って、分解蒸発槽9で蒸発した分解ガスは、接続管26とエルボ27と支持管25とを通じて中和槽15内に流れ込むことができる。
【0018】
中和槽15は、その上端部15aが支持管25に沿った長方形の角筒形、そこから次第に変形して下端部15bが円筒形となるように曲げ加工され、上端部15aを支持管25内に突入させてこれに支持されている。
中和槽15内には、その中心線に沿って仕切り板28が垂設されている。この仕切り板28の上端は支持管25の内周面まで達しているが、下端は中和槽15内の途中までとなっている。これにより中和槽15内は、分解ガスの流れから見て上流室29aと下流室29bとに仕切られているとともに、上流室29aの流入口29dと下流室29bの流出口29eも仕切られてはいるが、これら両室29a・29bは仕切り板28の下側空間29cでは連通してここが流れの反転室となっている。
【0019】
一方、中和槽15の円筒形の下端には手動開閉弁31が接続され、またこれより少し上の円筒形部分に噴霧回収液取り出し口部32が突設されている。この噴霧回収液取り出し口部32には、下方に設置した沈殿分離槽16へ至る回収管34が接続されている。
【0020】
沈殿分離槽16内は、沈殿部と撹拌部とに二分、すなわち仕切り壁35により沈殿室36aと撹拌室36bとに仕切られている。沈殿室36a内の液は、仕切り壁35の途中に設けられた越流管37から撹拌室36bへ流れると、この撹拌室36b内で撹拌機38により撹拌されるようになっている。撹拌室36bには新たなアルカリ液が随時補充される。
撹拌室36b内の液は、循環経路となる配管39に設けられたフィルタ40による濾過を経てポンプ41にて吸い上げられ、それから2つの分岐配管33に分かれて2つの噴霧ノズル30a・30bへ同時に返戻される。2つの分岐配管33のそれぞれにはストップバルブ42a・42bが配置されている。
【0021】
このように構成されたアルカリスプレー装置14の機能について図4を参照して説明する。
中和槽15の上流室29aと下流室29bには、それぞれの噴霧ノズル30a・30bから苛性ソーダ水等のアルカリ液が下向きに噴霧されている。分解蒸発槽9より蒸発して来た分解ガスは、支持管25に入ると、すなわち流入口29dから上流室29aに入ると、仕切り板28によって上流室29a中で下降流となり、噴霧ノズル30aから下向きに噴霧されているアルカリ液を浴びるとともに、その下向きの噴霧により派生する下向きの気流も受けるため、分解ガスの下降流は速度を増していく。この下降中、分解ガスの酸性分は中和されるとともに、タール分や触媒成分などの液体又は固体の混入物は自重による落下力を強められ、仕切り板の下の下側空間で分解ガスが反転流となることにより、ガス分から分離される。
反転流となった分解ガスは向きを変えて下流室29bへと上昇するが、下流室29bにも噴霧ノズル30bからアルカリ液が下向きに噴霧されているとともに、それにより派生する気流が下向きに流れているので、下流室29bに入った途端に強い乱流が生じ、中和作用が一層促進されるとともに、液体又は固体の混入物の分離も一層促進される。そして、下流室29bでは、下向きに噴霧されているアルカリ液と、それにより派生している下向きの気流とに逆らって分解ガスが上昇することにより、流れの速度を弱められることでアルカリ液との混合時間が長くなり、しかも上昇中にも乱流を生じる。それにより、分解ガスの酸性分の中和は上流室29aよりも満遍なく行われるとともに、液体又は固体の混入物はその自重により落下してガス分と分離され、酸性分を中和されしかも液体又は固体の混入物も分離されたクリーンな分解ガスとなって流出口29eから流出する。
このような分解ガスの流れ方向を変えてのアルカリ液噴霧により、中和処理が満遍なく均等に行われるとともに、分解ガス中のタール分や触媒成分などの液体又は固体の混入物も、噴霧されたアルカリ液によって効果的に捕集される。
【0022】
中和槽15の下部に溜まって来る噴霧回収液は、沈殿分離槽16の沈殿室36aに流れ落ち、ここで比重の重いタール分や触媒成分などは沈殿物43として沈殿し、中和された比重の軽い液やピッチ44は浮上する。これらの中間のところの液はほとんどがアルカリ液で、それは越流管37から撹拌室36bへ流れ、ここに随時補充される新たなアルカリ液と撹拌機38にて撹拌されながら、フィルタ40による濾過を経てポンプ41にて噴霧ノズル30a・30bへ返戻され、再び噴霧される。アルカリ液の補充量を調整することにより、分解ガスのpHを任意に調整することができる。沈殿室36aに沈殿した沈殿物43は取り出されて汚泥処理される。
【符号の説明】
【0023】
8 廃プラスチック分解装置
9 分解蒸発槽
14 アルカリスプレー装置
15 中和槽
16 沈殿分離槽
28 仕切り板
29a 上流室
29b 下流室
30a・30b 噴霧ノズル
図1
図2
図3
図4