(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/05 20160101AFI20220805BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20220805BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20220805BHJP
B60L 50/40 20190101ALI20220805BHJP
【FI】
H02J50/05
H02J50/40
B60M7/00 X
B60L50/40
(21)【出願番号】P 2018054351
(22)【出願日】2018-03-22
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】崎原 孫周
(72)【発明者】
【氏名】坂井 尚貴
(72)【発明者】
【氏名】大平 孝
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-186062(JP,A)
【文献】特開2011-072176(JP,A)
【文献】特開2013-162625(JP,A)
【文献】特開2016-046951(JP,A)
【文献】特開2017-034919(JP,A)
【文献】特開2016-131447(JP,A)
【文献】特開2017-184561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00-50/90
B60M 7/00
B60L 50/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両にワイヤレスで電力供給を行う電力伝送システム
部が複数所定間隔で配置された電力伝送システムであって、
前記電力伝送システム部は、
走行路に沿って配置され、かつ
高周波電力を伝送する
導体からなる送電電極と、
前記送電電極の入力端に給電を行う給電装置と、
前記
送電電極の出力端に設けられ、前記
送電電極の特性インピーダンスと同値の入力インピーダンスを有する
整流回路からなる負荷と
、を有し、
前記給電装置は、
高周波電力給電用の直流電源と、
直流電力を高周波電力に変換し、前記高周波電力を前記送電電極に入力する高周波インバータと、
前記整流回路から出力される直流電力と、前記直流電源から出力される直流電力とを合成し、前記高周波インバータに出力する電力合成回路と、
前記高周波インバータと前記送電電極との間でのインピーダンス整合を行って、高周波電力を前記送電電極に出力する整合回路と、
を備え
、
複数の前記電力伝送システム部のうちの第一の電力伝送システム部が備える前記電力合成回路に入力される前記直流電力は、複数の前記電力伝送システム部のうちの第二の電力伝送システム部が備える前記整流回路の出力を含むことを特徴とする
電力伝送システム。
【請求項2】
前記第一の電力伝送システム
部は、前記第二の電力伝送システム
部が備える前記
送電電極の出力端側に配置されていることを特徴とする請求項
1に記載の電力伝送システム。
【請求項3】
車両にワイヤレスで電力供給を行う電力伝送システム部が複数所定間隔で配置された電力伝送システムであって、
前記電力伝送システム部はそれぞれ、入力端に入力される高周波電力を伝送する導体からなる送電電極と、
前記送電電極の出力端に設けられ、前記送電電極の特性インピーダンスと同値の入力インピーダンスを有する整流回路からなる負荷と、を有し、
直流電力を高周波電力に変換し、前記高周波電力を複数の前記電力伝送システム
部に含まれる前記送電電極それぞれに入力する高周波インバータと、
入力される複数の直流電力を合成して前記高周波インバータに出力する電力合成回路と、を備え、
前記電力合成回路に入力される前記複数の直流電力は、複数の前記電力伝送システム
部に含まれる前記整流回路それぞれの出力を含むことを特徴とする電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に車両に対して、ワイヤレスで給電を行う電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車や、無人搬送車等、電動モータを用いた移動体として、電池に蓄えられたエネルギを使用して走行するようにしたものが知られている。このように電池に蓄えられたエネルギを使用して走行する移動体は、移動距離に限界があり、また、電池への充電に時間を要するため再稼動に時間がかかる、等といった電池に起因する課題がある。
【0003】
この課題を解決する方法として、移動体へのワイヤレス給電技術が注目されている。
このワイヤレス給電技術は、路面下に埋設された送電電極としての導体からなる電力伝送路から、移動体に搭載された受電電極へRF電力(高周波電力)を非接触で送電する技術である。
この技術により、移動体は電池からのエネルギに頼ることなく、路面からの送電電力だけで走行することができる。すなわち、路面からの送電電力を受電することができれば充電無しに走行することができるという、これまでにない新しい移動体と言える。
【0004】
この移動体へのワイヤレス給電技術における課題の一つに、「電力伝送路に生じる定在波が、移動体への電力伝送効率を低下させる。」という課題がある。具体的には、
図8に示すように、送電電極102に立つ定在波の節の位置に移動体の受電電極105が重なるとき、受電電極105はRF電力を受電できないという課題である。なお、
図8において、103aは電源101から送電電極102の出力端に向かう進行波、103bは送電電極102の出力端から電源101に向かう反射波であり、これら進行波及び反射波が合成された波動が定在波103となる。
【0005】
図8に示すように定在波103は、振幅が最大となる腹103maxの部分と、最小となる節103minの部分とを備える。移動体としての車両104は、道路の表層材106の下に埋設された導体からなる送電電極102からRF電力を受電電極105で受電し、受電したRF電力を利用して電動モータMを駆動している。そのため、
図8に示すように、受電電極105と節103minの部分とが対向する地点では、RF電力を受電することができない。つまり、安定してRF電力を受電することができない。
【0006】
この課題を解決するために、例えば、電力伝送路をRF電力の波長よりも充分短い長さまで分割し、分割した電力伝送路間を左手系回路と呼ばれるLC回路で接続する、右手左手複合系電極線路が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このような構成とすることにより、電力伝送路に生じる定在波をなくすことができる。そのため、走行路上のどの位置においても、車両(移動体)は高い伝送効率でRF電力を受電することができる。
また、例えば、電力伝送路の出力端に可変リアクタンス回路を装荷し、可変リアクタンス回路を制御することで定在波の腹の位置を受電電極の位置に常に追従させるようにした給電システムも提案されている(例えば、特許文献2参照。)。このような構成とすることにより、どの位置においても車両(移動体)は高い伝送効率でRF電力を受電することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-227025号公報
【文献】特開2017-034919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、右手左手複合系電極線路にあっては、複数の電力伝送路をLC回路で接続しているため、RF電力の波長よりも十分に短い間隔で複数のLC回路を路面下に埋設する必要があり、敷設コストが高いという課題がある。
また、可変リアクタンス回路を装荷した給電システムにあっては、車両の位置を検出し、検出した車両の位置に応じて可変リアクタンスを制御している。そのため、常時車両の位置を把握して可変リアクタンスを制御する必要があり、装置の複雑化につながるという課題がある。
【0009】
そこで、この発明は上記従来の未解決の課題に着目してなされたものであり、敷設コストの増加や装置の複雑化を伴うことなく、受電側の車両が高効率で送電電力を受電することの可能な電力伝送システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明の一態様によれば、車両にワイヤレスで電力供給を行う電力伝送システム部が複数所定間隔で配置された電力伝送システムであって、電力伝送システム部は、走行路に沿って配置され、かつ高周波電力を伝送する導体からなる送電電極と、送電電極の入力端に給電を行う給電装置と、送電電極の出力端に設けられ、送電電極の特性インピーダンスと同値の入力インピーダンスを有する整流回路からなる負荷と、を有し、給電装置は、高周波電力給電用の直流電源と、直流電力を高周波電力に変換し、高周波電力を送電電極に入力する高周波インバータと、整流回路から出力される直流電力と、直流電源から出力される直流電力とを合成し、高周波インバータに出力する電力合成回路と、高周波インバータと送電電極との間でのインピーダンス整合を行って、高周波電力を送電電極に出力する整合回路と、を備え、複数の電力伝送システム部のうちの第一の電力伝送システム部が備える電力合成回路に入力される直流電力は、複数の電力伝送システム部のうちの第二の電力伝送システム部が備える整流回路の出力を含む電力伝送システムが提供される。
【0012】
また、本願発明の他の態様によれば、車両にワイヤレスで電力供給を行う電力伝送システム部が複数所定間隔で配置された電力伝送システムであって、電力伝送システム部はそれぞれ、入力端に入力される高周波電力を伝送する導体からなる送電電極と、送電電極の出力端に設けられ、送電電極の特性インピーダンスと同値の入力インピーダンスを有する整流回路からなる負荷と、を有し、直流電力を高周波電力に変換し、高周波電力を複数の電力伝送システムに含まれる送電電極それぞれに入力する高周波インバータと、入力される複数の直流電力を合成して高周波インバータに出力する電力合成回路と、を備え、電力合成回路に入力される複数の直流電力は、複数の電力伝送システム部に含まれる整流回路それぞれの出力を含む電力伝送システムが提供される。
【発明の効果】
【0013】
埋設コストの増加や装置の複雑化を伴うことなく低コストで、受電電極での高効率な受電を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る電力伝送システムの一例を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す電力伝送システムの等価回路モデルの一例である。
【
図3】電力伝送効率特性の一例を示す特性図である。
【
図4】
図1に示す電力伝送システムの等価回路モデルの他の例である。
【
図5】電力伝送効率特性の一例を示す特性図である。
【
図6】本発明に係る電力伝送システムの他の例である。
【
図7】本発明に係る電力伝送システムの他の例である。
【
図8】従来の給電システムの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の詳細な説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するように多くの特定の具体的な構成について記載されている。しかしながら、このような特定の具体的な構成に限定されることなく他の実施態様が実施できることは明らかであろう。また、以下の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴的な構成の組み合わせの全てを含むものである。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明を適用した電力伝送システムの一例を示す概略構成図であり、電気自動車や電動カート、電動フォークリフト、電動自動運搬装置等の車両に対して非接触で給電を行う。
車両104は、
図1に示すように、送電電極102から、RF電力(高周波電力)を、例えば車輪に設けられた受電電極105で受電し、受電したRF電力を利用して電動モータMを駆動する。そして、走行路に沿って送電電極102を所定間隔で配置することによって、車両104は、走行路から受電を行って継続して走行できるようになっている。
【0017】
電力伝送システム1は、
図1に示すように、道路の表層材106の下に埋設された送電電極102と、送電電極102の一端に給電を行う給電装置2と、送電電極102の他端に接続されたRF整流回路3と、を備える。
送電電極102は、例えば一対の帯状の導体で形成され、車両104の左右の車輪間の幅相当だけ離して平行に配置される。そして、車両104の左右の車輪がそれぞれ送電電極102と対向するように車両104が走行することによって、車両104は送電電極102から受電するようになっている。
【0018】
給電装置2は、高周波電力給電用の直流電源11と、電力合成回路12と、RFインバータ13と、整合回路14と、を備える。
電力合成回路12は、RF整流回路3から出力される直流電力と、直流電源11から出力される直流電力とを合成し、RFインバータ13に出力する。
RFインバータ13は、電力合成回路12で合成された直流電力を高周波電力に変換して、整合回路14に出力する。整合回路14は、RFインバータ13と送電電極102との間でのインピーダンス整合を行って、高周波電力を送電電極102に出力する。
【0019】
RF整流回路3は、送電電極102を介して伝送される交流電力を入力し、入力した交流電力を直流電力に変換して電力合成回路12に出力する。また、RF整流回路3の入力インピーダンスZrecは、送電電極102の特性インピーダンスZ0と同一値に設定されている。そのため、RF整流回路3が設けられていなければ反射波となるはずであった、送電電極102を介して伝達される高周波電力は、RF整流回路3の出力である直流電力に変換されることになり、送電電極102の出力端からの反射波が零となるように調整されたことと同等となる。
【0020】
このように、RF整流回路3を設けることによって、送電電極102の出力端からの反射波が零であることと同等となる。そのため、送電電極102上に反射波が存在しないことから、定在波103が存在しないことになる。
前述のように、定在波103が生じる要因は、送電電極102上に存在する進行波と反射波とが合成されることにある。そして、本発明の一実施形態では、RF整流回路3を設け、RF整流回路3の入力インピーダンスZrecと送電電極102の特性インピーダンスZ0とを同一値に設定している。そのため、送電電極102に反射波が存在せず、すなわち、定在波103が存在しない。その結果、送電電極102から受電電極105に給電されるRF電力は略一定となり、送電電極102から車両104に対して安定した電力供給を行うことができる。
【0021】
また、RF整流回路3を一つ設ければよく、このRF整流回路3は必ずしも表層材106の下に埋設する必要はない。そのため、敷設コストの増加を伴うことなく実現することができる。また、RF整流回路3の入力インピーダンスZrecを送電電極102の特性インピーダンスZ
0と同一値に設定すればよく、給電中においても、複雑な制御を必要としないため、給電装置2の装置の煩雑化を回避することができる。
ここで、
図1に示す電力伝送システム1を、等価回路モデルに置き換えてシミュレーションを行い、回路解析を行ったところ、次の結果を得た。
【0022】
〔回路解析1〕
図2は、
図1に示す電力伝送システム1を置き換えた等価回路モデルの一例である。
図2において、交流電源21はRFインバータ13を模擬し、抵抗22は整合回路14を模擬している。また、伝送線路23及び24は送電電極102を模擬し、抵抗25が送電電極102から車両104を見たインピーダンスを模擬している。さらに、抵抗26がRF整流回路3の入力インピーダンスZrecを模擬している。
図2に示す等価回路モデルにおいて、送電電極102から見た車両104は50Ωの負荷(抵抗25に対応)、RF整流回路3は50Ωの負荷(抵抗26に対応)とした。また、送電電極102は、全長10m、特性インピーダンスZ
0は50Ω、実効比誘電率は“2”とした。
【0023】
図2に示す等価回路モデルを用いてシミュレーションを行った結果得られた、RFインバータ13(交流電源21に対応)から車両104(抵抗26に対応)までの電力伝送効率の車両位置特性を
図3(a)に示す。同様にして得た、RFインバータ13からRF整流回路3(抵抗26に対応)までの電力伝送効率の車両位置特性を
図3(b)に示す。
また、比較例として、
図3(c)に、送電電極102の出力端を開放した従来のワイヤレス給電装置における、電力伝送効率の車両位置特性を示す。
【0024】
RFインバータ13から車両104までの電力伝送効率(
図3(a))は、送電電極102上の車両104の位置に関わらず、約44.4%となることが確認された。同様に、RFインバータ13からRF整流回路3までの電力伝送効率(
図3(b))は、送電電極102上の車両104の位置に関わらず、約44.4%となることが確認された。
これに対し、従来のワイヤレス給電装置では、
図3(c)に示すように、定在波の影響によって、送電電極102上の車両104の位置に応じて電力伝送効率が大きく変化し、車両104が送電電極102上の入力端から2.2m程度の位置にあるときには電力伝送効率は最大100%となり、同様に入力端から6.1m程度の位置にあるときには電力伝送効率が最小0%となっている。
【0025】
図3から、本発明の一実施形態に係る
図1に示す電力伝送システム1によれば、送電電極102上の車両104の位置に関係なく、略一定の電力伝送効率で車両104に対して給電を行うことができ、また、RF整流回路3は略一定の入力電力を得られることが推測される。
言い換えれば、RF整流回路3への入力電力を再利用した場合、RFインバータ13の出力電力のうち、約88.8%の電力を常に有効利用することができることが推測される。
【0026】
〔回路解析2〕
図4は、
図1に示す電力伝送システム1を置き換えた等価回路モデルの他の例であって、
図2に示す等価回路モデルにおいて、RF整流回路3をより詳細に模擬したものである。
図2と同様に、交流電源21はRFインバータ13を模擬し、抵抗22は整合回路14を模擬している。また、伝送線路23及び24は送電電極102を模擬し、抵抗25が送電電極102から車両104を見たインピーダンスを模擬している。さらに、インダクタンス31及び容量32で模擬される高調波フィルタと、容量33と、ダイオード34と、インダクタンス35とで、RF整流回路3を模擬している。なお、抵抗36は、RF整流回路3に接続される直流負荷を模擬している。
【0027】
図4に示す等価回路モデルにおいて、送電電極102から見た車両104は、50Ωの負荷(抵抗25に対応)、RF整流回路3はシングルシャント整流回路に高調波フィルタを設けた回路とした。このとき、RF整流回路3の入力インピーダンスZrecが、送電電極102の特性インピーダンスZ
0(=50Ω)と同一値である“50Ω”となるように、RF整流回路3に接続される直流負荷としての抵抗36を45Ωに設定した。また、送電電極102は、全長10m、特性インピーダンスZ
0は、50Ω、実効比誘電率は“2”とした。
【0028】
図4に示す等価回路モデルを用いてシミュレーションを行った結果得られた、RFインバータ13(交流電源21に対応)から車両104(抵抗25に対応)までの電力伝送効率の車両位置特性を
図5(a)に示す。同様にして得た、RFインバータ13からRF整流回路3(抵抗26に対応)までの電力伝送効率の車両位置特性を
図5(b)に示す。
車両104までの電力伝送効率(
図5(a))は、送電電極102上の車両104の位置に応じて、40%以上50%以下の範囲で変動することが推測される。同様に、RF整流回路3までの電力伝送効率(
図5(b))は、送電電極102上の車両104の位置に関わらず、約41%前後で変動することが推測される。
【0029】
言い換えれば、RF整流回路3への入力電力を再利用した場合、RFインバータ13の出力電力のうち、約80%の電力を常に有効利用することができることが推測される。
図5から、本発明の一実施形態に係る電力伝送システム1によれば、送電電極102上の車両104の位置に関係なく、略一定の電力伝送効率で車両104に対して給電を行うことができ、また、RF整流回路3は略一定の入力電力を得られることが推測される。
【0030】
なお、上記実施形態においては、RF整流回路3から出力される直流電力を、自電力伝送システム1内の電力合成回路12に戻す場合について説明したがこれに限るものではない。例えば
図6に示すように、
図1に示す単体の電力伝送システム1を複数配置し、複数の電力伝送システム1を結合した結合電力伝送システム41を構成する。そして、この結合電力伝送システム41に含まれる複数の電力伝送システム1のうちの、例えば電力伝送システム1aに含まれるRF整流回路3の出力を、電力伝送システム1aの出力端側に配置された電力伝送システム1bの電力合成回路12に供給し、電力伝送システム1bに含まれるRF整流回路3の出力を、電力伝送システム1bの出力端側に配置された電力伝送システム1cの電力合成回路12に供給し、というように、結合電力伝送システム41のうちの一の電力伝送システム1に含まれるRF整流回路3から出力される直流電力を、この一の電力伝送システム1の出力端側に配置された次の電力伝送システム1に含まれる電力合成回路12に供給するようにしてもよい。
【0031】
RF整流回路3は送電電極102の出力端に設けられ、電力合成回路12は送電電極102の入力端側に設けられているため、
図1に示すように、自電力伝送システム1内で、RF整流回路3の出力を電力合成回路12に戻す場合には、送電電極102の出力端側から入力端側まで、RF整流回路3の出力を伝送するためのケーブルLを設ける必要がある。そのため、電力伝送システム1の中で、RF整流回路3の出力を、電力合成回路12に戻すのではなく、
図6に示すように、一の電力伝送システム1aに含まれるRF整流回路3の出力を、一の電力伝送システム1aの出力端側に配置された次の電力伝送システム1bに含まれる電力合成回路12に供給することにより、RF整流回路3の出力を電力合成回路12に伝送するためのケーブルLはより短くてすむ。したがって、RF整流回路3の出力を電力合成回路12に戻す場合には、他の電力伝送システム1に含まれる電力合成回路12に供給することが好ましい。
【0032】
また、上記実施形態においては、電力伝送システム1毎に直流電源11を備える場合について説明したが、これに限るものではなく、共通の直流電源11から複数の電力伝送システム1に対して直流電力を供給するようにしてもよい。
また、
図7に示すように、
図1に示す電力伝送システム1において、複数の電力伝送システム1間で、直流電源11、電力合成回路12及びRFインバータ13を共通化した結合電力伝送システム42を形成するようにしてもよい。すなわち、
図1に示す電力伝送システム1の構成要素のうち、直流電源11、電力合成回路12及びRFインバータ13を除く、残りの構成要素、つまり整合回路14、送電電極102、及びRF整流回路3を備えたシステムを電力伝送システム1′とすると、この電力伝送システム1′を複数配置した結合電力伝送システム42を形成する。
【0033】
具体的には、
図7に示すように、結合電力伝送システム42は、直流電源11と電力合成回路12とRFインバータ13と、複数の電力伝送システム1′(
図7では3つの電力伝送システム1a′~1c′)と、を含む。
RFインバータ13は、電力合成回路12から出力される直流電力を高周波電力に変換し、複数の電力伝送システム1a′~1c′それぞれに含まれる整合回路14に出力する。整合回路14は、RFインバータ13と送電電極102との間でのインピーダンス整合を行って、高周波電力を送電電極102に出力する。
【0034】
RF整流回路3は、送電電極102を介して伝送される交流電力を入力し、入力した交流電力を直流電力に変換して電力合成回路12に出力する。また、RF整流回路3の入力インピーダンスZrecは、送電電極102の特性インピーダンスZ0と同一値に設定されている。
そして、電力合成回路12は、各電力伝送システム1a′~1c′に含まれるRF整流回路3それぞれから出力される直流電力と、直流電源11から出力される直流電力とを合成し、RFインバータ13に出力する。
このように、直流電源11、電力合成回路12及びRFインバータ13を共通化するこ4によって、部品点数を削減することができる。
【0035】
また、上記実施形態においては、RF整流回路3の出力を、電力合成回路12に戻しているが、これに限るものではない。例えば、道路脇に設置されている街灯や、道路に設置されている装置、例えば、融雪装置に対して動作電力として供給するようにしてもよい。要はRF整流回路3の出力を消費することの可能な設備に対して動作電力として供給するようにしてもよい。
RF整流回路3の出力を自電力伝送システム1内に戻さない場合には、電力合成回路12を設けなくともよい。
【0036】
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。
さらに、本発明の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0037】
1、1′ 電力伝送システム
2 給電装置
3 RF整流回路
11 直流電源
12 電力合成回路
13 RFインバータ
14 整合回路
41、42 結合電力伝送システム
102 送電電極
103 定在波
104 車両
105 受電電極