(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】レーザ素子及びレーザダイオード
(51)【国際特許分類】
H01S 5/10 20210101AFI20220805BHJP
H01S 5/323 20060101ALI20220805BHJP
H01S 5/022 20210101ALI20220805BHJP
【FI】
H01S5/10
H01S5/323 610
H01S5/022
(21)【出願番号】P 2018096556
(22)【出願日】2018-05-18
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599002043
【氏名又は名称】学校法人 名城大学
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恒輔
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 素顕
(72)【発明者】
【氏名】岩山 章
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 雄太
(72)【発明者】
【氏名】池田 隼也
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-277684(JP,A)
【文献】特開2002-335052(JP,A)
【文献】特開2011-181604(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0081118(US,A1)
【文献】特開昭61-168985(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0259982(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に配置された発光層と、
前記発光層を挟んで前記基板の上方に配置されたガイド層と、
前記基板と前記ガイド層との間に形成された下部クラッド層と、
前記ガイド層の上に形成された上部クラッド層と、
前記発光層で発光した光が出射される光出射側の前記発光層の側面、前記ガイド層の側面、前記下部クラッド層の側面及び前記上部クラッド層の側面を有する共振器端面と
を備え、
前記共振器端面は、斜面部を含む凹凸部を有し、
前記光出射側の前記基板の側面に平行な仮想面に前記共振器端面を投影した投影面に
おいて、前記ガイド層の前記斜面部を
前記仮想面に投影した
ときの投影面の
数は、前記下部クラッド層の前記斜面部を前記仮想面に投影したときの投影面の数及び前記上部クラッド層の前記斜面部を前記仮想面に投影したときの投影面の数の少なくとも一方より少ない
レーザ素子。
【請求項2】
前記発光層は、Al
x1Ga
y1Nで形成されており、
前記上部クラッド層は、Al
x2Ga
y2N層と、前記Al
x2Ga
y2N層の上層に設けられたAl
x3Ga
y3N層とを含み、
前記発光層、前記Al
x2Ga
y2N層及び前記Al
x3Ga
y3N層の組成は、x1+y1=1,x2+y2=1,x3+y3=1,x2<x1及びx2<x3の関係を満たす
請求項1に記載のレーザ素子。
【請求項3】
前記上部クラッド層の上方の一部又は全部に絶縁保護膜を備え、
前記絶縁保護膜の少なくとも一部は、前記上部クラッド層よりも前記基板の前記側面の側に飛び出ている
請求項1又は2に記載のレーザ素子。
【請求項4】
前記斜面部は、m面及びa面のいずれか一方の面で構成されている
請求項1から3までのいずれか一項に記載のレーザ素子。
【請求項5】
前記ガイド層、前記下部クラッド層及び前記上部クラッド層の少なくとも1つは、AlGaN混晶を含んでいる
請求項1から4までのいずれか一項に記載のレーザ素子。
【請求項6】
前記ガイド層における前記
投影面に対する、前記仮想面に前記斜面部を投影した投影面の面積比は、前記下部クラッド層における前記面積比及び前記上部クラッド層における前記面積比
の少なくとも一方より小さい
請求項1から4までのいずれか一項に記載のレーザ素子。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載のレーザ素子と、
前記レーザ素子で発光した光を検出する光検出部と、
前記レーザ素子及び前記光検出部を内包するパッケージと
を備えるレーザダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体層を有するレーザ素子及びレーザダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、結晶面を利用した劈開方法を用いて基板から半導体層まで水平垂直に切断した構造のレーザダイオードが開示されている。また、特許文献2及び3には、ドライエッチングとウェットエッチングを組み合わせたエッチング方法により水平垂直な共振器面を有する構造のレーザダイオードが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭51-97390号公報
【文献】特開平10-41585号公報
【文献】特開2008-108844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1から3に開示されたレーザダイオードの構造では、パッケージ化した後にレーザダイオードの出力が瞬間的に高くなる光ノイズが発生する場合がある。
【0005】
本発明の目的は、光出力ノイズを低減させることができるレーザダイオードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によるレーザ素子は、基板と、前記基板の上方に配置された発光層と、前記発光層を挟んで前記基板の上方に配置されたガイド層と、前記基板と前記ガイド層との間に形成された下部クラッド層と、前記ガイド層の上に形成された上部クラッド層と、前記発光層で発光した光が出射される光出射側の前記発光層の側面、前記ガイド層の側面、前記下部クラッド層の側面及び前記上部クラッド層の側面を有する共振器端面とを備え、前記共振器端面は、斜面部を含む凹凸部を有し、前記光出射側の前記基板の側面に平行な仮想面に前記共振器端面を投影した投影面において、前記ガイド層の前記斜面部を前記仮想面に投影したときの投影面の数は、前記下部クラッド層の前記斜面部を前記仮想面に投影したときの投影面の数及び前記上部クラッド層の前記斜面部を前記仮想面に投影したときの投影面の数の少なくとも一方より少ないことを特徴とする。
【0007】
また、上記目的を達成するために、本発明の一態様によるレーザダイオードは、上記本発明のレーザ素子と、前記レーザ素子で発光した光を検出する光検出部と、前記レーザ素子及び前記光検出部を内包するパッケージとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、光出力ノイズを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態によるレーザ素子1の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるレーザ素子1の仮想面BPを説明する図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるレーザ素子1及びレーザダイオード100の効果を説明する図である。
【
図4】本発明の一実施形態の変形例によるレーザ素子1の概略構成を示す要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態によるレーザ素子及びレーザダイオードについて
図1から
図4を用いて説明する。まず、本実施形態によるレーザ素子1の概略構成について
図1を用いて説明する。
図1では、レーザ素子1が模式的に図示されている。
【0011】
図1に示すように、レーザ素子1は、基板11と、基板11の上方に配置された発光層12と、発光層12を挟んで基板11の上方に配置されたガイド層13と、基板11とガイド層13との間に形成された下部クラッド層14と、ガイド層13の上に形成された上部クラッド層15とを備えている。
【0012】
下部クラッド層14、ガイド層13及び上部クラッド層15は、この順に基板11上に積層されている。ガイド層13は、上下方向から発光層12を挟んで配置されている。発光層12は、ガイド層13の層厚方向のほぼ中央に配置されている。なお、発光層12は、下部クラッド層14及び上部クラッド層15のいずれか一方の側に片寄って配置されていてもよい。下部クラッド層14、ガイド層13、発光層12及び上部クラッド層15によって積層体10が構成されている。
【0013】
基板11は、薄板の四角形状を有している。基板11は、下部クラッド層14、ガイド層13及び上部クラッド層15が積層される積層面11bを有している。
【0014】
下部クラッド層14は、n型半導体で形成され、基板11の積層面11b上に積層されている。下部クラッド層14は、基板11よりも一回り小さい大きさに形成されている。これにより、下部クラッド層14の周囲には、積層面11bが露出されている。下部クラッド層14は、発光層12で発光した光が出射される光出射側の側面14aを有している。下部クラッド層14は、ガイド層13が積層される第一領域141と、積層面11bからの高さが第一領域141よりも低い第二領域142とを有している。下部クラッド層14は、第一領域141及び第二領域142の境界に段差を有している。第二領域142上には、n型電極161が形成されている。n型電極161は、発光層12に注入される電流の負極側の電極となる。下部クラッド層14には、n型電極161を介して電子が供給される。
【0015】
ガイド層13は、下部クラッド層14の第一領域141上に積層されている。ガイド層13は、光の吸収を抑制するため、ドーパントを添加しないアンドープ層である。ガイド層13は、発光層12で発光した光が出射される光出射側の側面13aを有している。ガイド層13の側面13aはハーフミラーを構成し、側面13aに対向するガイド層13の対向側面10bはミラーを構成する。ガイド層13は、発光層12で発光した光を閉じ込めて光増幅する共振器としての機能を発揮する。
【0016】
上部クラッド層15は、p型半導体で形成され、ガイド層13上に積層されている。上部クラッド層15は、発光層12で発光した光が出射される光出射側の側面15aを有している。上部クラッド層15は、リッジ構造を有している。すなわち、上部クラッド層15は、ガイド層13に全体が接触する平板部151と、平板部151のほぼ中央で上に突出して形成された土手状の突起部152とを有している。突起部152は、平板部151の中央ではなくn型電極161が配置されている側に片寄らせて設けられてもよい。突起部152がn型電極161に近付くことによって、積層体10中を流れる電流経路が短くなるので、積層体10中に形成される電流経路の抵抗値を下げることができる。突起部152はできるだけn型電極に近づけることが好ましい。それによって,半導体中を流れる電流経路を短くし,抵抗を下げることができる。突起部152上には、p型電極162が形成されている。p型電極162は、発光層12に注入される電流の正極側の電極となる。上部クラッド層15には、p型電極162を介して正孔が供給される。
【0017】
上部クラッド層15がリッジ構造を有すると、レーザ発振に必要な反転分布を形成するための閾値電流を下げることができる。レーザダイオード1におけるリッジ構造は、
図1に示すように上部クラッド層15の一部を突出させた突起部とこの突起部の上に配置された電極とで構成されてもよい。また、レーザダイオード1におけるリッジ構造は、発光層12の上層の領域のガイド層13上の一部に
図1に示す突起部152のような土手状の上部クラッド層と、この上部クラッド層の上に配置された電極とで構成されてもよい。レーザダイオード1は、このようなリッジ構造を有することにより、上部クラッド層15における電流の経路を電極直下の領域に制限できる。これにより、上部クラッド層15中での水平方向の電流拡散が抑制されるので、発光層12内に流れる電流を上部クラッド層15の突起部分(本実施形態では突起部152)直下に集中させることができる。その結果、この突起部分の領域において効率よく反転分布状態を形成することができ、レーザ発振の閾値を低く保つことが可能になる。
【0018】
発光層12に反転分布状態の領域が形成された後に、上部クラッド層15に注入されたホールと下部クラッド層14に注入された電子が発光層12で再結合することにより、発光層12で光が生じる。ガイド層13より上部クラッド層15及び下部クラッド層14の屈折率が大きい。このため、発光層12で発光した光は、ガイド層13と接する上部クラッド層15及び下部クラッド層14の表面で反射されるので、ガイド層13に閉じこめられる。ガイド層13の側面13aと側面13aに対向する対向側面10bがミラー(反射鏡)としての機能を発揮するので、発光層12で発光した光は、ガイド層13内で増幅されながら往復して誘導放出を生じてレーザ発振が生じる。ガイド層13内で増幅された光がガイド層13内での内部ロスより大きくなると、外部に光が出射される。
【0019】
次に、レーザ素子1の光出射側の側面の構成について
図1を参照しつつ
図2を用いて説明する。
図2中の上方には、レーザ素子1に備えられた上部クラッド層15の側面15a、ガイド層13の側面13a及び下部クラッド層14の側面14aが模式的に図示されている。
図2では、理解を容易にするため、側面13a,14a,15aは、基板11(
図2では不図示)の積層面11bに直交する方向に見た状態であり、かつ互いにずらして図示されている。また、
図2中の下方には、仮想面BPが図示されている。
【0020】
図1に示すように、レーザ素子1は、発光層12で発光した光が出射される光出射側の発光層12の側面12a、ガイド層13の側面13a、下部クラッド層14の側面14a及び上部クラッド層15の側面15aを有する共振器端面10aを備えている。共振器端面10aは、斜面部103aを含む凹凸部103と、斜面部104a(
図2参照)を含む凹凸部104と、斜面部105a(
図2参照)を含む凹凸部105とを有している。
【0021】
図2に示すように、ガイド層13の凹凸部103は、斜面部103aの他に平坦部103b及び平坦部103cを有している。平坦部103bは、凹凸部103の凸部分の平坦部である。平坦部103cは、凹凸部103の凹部分の平坦部である。斜面部103aは、平坦部103b及び平坦部103cの間に配置され、平坦部103b及び平坦部103cを繋ぐ平面である。ガイド層13の側面13aは、斜面部103a、平坦部103b及び平坦部103cによって構成される。本実施形態では、ガイド層13の凹凸部103は、2つの斜面部103aを含む1つの凸部分を有している。しかしながら、凹凸部103は、2つの斜面部103aを含む凸部分を複数個、有していてもよい。また、凹凸部103は、後述する下部クラッド層14の凹凸部104のように、1つの斜面部103aを含む凸部分を有していてもよい。
【0022】
下部クラッド層14の凹凸部104は、斜面部104aの他に平坦部104b及び平坦部104cを有している。平坦部104bは、凹凸部104の凸部分の平坦部である。平坦部104cは、凹凸部104の凹部分の平坦部である。斜面部104aは、平坦部104b及び平坦部104cの間に配置され、平坦部104b及び平坦部104cを繋ぐ平面である。下部クラッド層14の側面14aは、斜面部104a、平坦部104b及び平坦部104cによって構成される。本実施形態では、下部クラッド層14の凹凸部104は、1つの斜面部104aを含む凸部分を有している。しかしながら、凹凸部104は、ガイド層13の凹凸部103や後述する上部クラッド層15の凹凸部105のように、2つの斜面部104aを含む凸部分を1個又は複数個、有していてもよい。
【0023】
上部クラッド層15の凹凸部105は、斜面部105aの他に平坦部105b及び平坦部105cを有している。平坦部105bは、凹凸部105の凸部分の平坦部である。平坦部105cは、凹凸部105の凹部分の平坦部である。斜面部105aは、平坦部105b及び平坦部105cの間に配置され、平坦部105b及び平坦部105cを繋ぐ平面である。上部クラッド層15の側面15aは、斜面部105a、平坦部105b及び平坦部105cによって構成される。本実施形態では、上部クラッド層15の凹凸部105は、2つの斜面部105aを含む2つの凸部分を有している。しかしながら、凹凸部105は、2つの斜面部105aを含む凸部分を1個又は3個以上、有していてもよい。また、凹凸部105は、下部クラッド層14の凹凸部104のように、1つの斜面部105aを含む凸部分を有していてもよい。
【0024】
図1に示すように、光出射側の基板11の側面11aに平行な仮想面BPに共振器端面10aを投影した投影面10apに対する、仮想面BPに斜面部103a、斜面部104a及び斜面部105a(
図2参照)を投影した投影面103ap(
図1では、ガイド層13の側面13aの投影面のみが図示されている)の面積比は、0より大きく1以下である。
【0025】
より具体的に、
図2に示すように、仮想面BPで囲まれた内側領域の全体が、共振器端面10aが投影された投影面10apとなる。投影面10apは、ガイド層13の側面13aに設けられた凹凸部103を仮想面BPに投影した投影面103pと、下部クラッド層14の側面14aに設けられた凹凸部104を仮想面BPに投影した投影面104pと、上部クラッド層15の側面15aに設けられた凹凸部105を仮想面BPに投影した投影面105pとを有している。本実施形態では、下部クラッド層14の第二領域142及び上部クラッド層15の突起部152を除いた領域の共振器端面10aが投影される面を仮想面BPとしている。しかしながら、第二領域142及び突起部152含む共振器端面10aが投影される面を仮想面としてもよい。
【0026】
投影面103pは、凹凸部103の斜面部103aを仮想面BPに投影した投影面103apと、凹凸部103の平坦部103bを仮想面BPに投影した投影面103bpと、凹凸部103の平坦部103cを仮想面BPに投影した投影面103cpとを有している。発光層12は、ガイド層13と比較して膜厚が極めて薄い。このため、発光層12の側面12aに設けられた凹凸部を仮想面BPに投影した投影面の面積と投影面103apの面積とを合算した面積は、投影面103apの面積とほぼ同じである。したがって、本実施形態では、側面12aの凹凸部の投影面は、投影面103apの一部と看做す。
【0027】
投影面104pは、凹凸部104の斜面部104aを仮想面BPに投影した投影面104apと、凹凸部104の平坦部104bを仮想面BPに投影した投影面104bpと、凹凸部104の平坦部104cを仮想面BPに投影した投影面104cpとを有している。投影面105pは、凹凸部105の斜面部105aを仮想面BPに投影した投影面105apと、凹凸部105の平坦部105bを仮想面BPに投影した投影面105bpと、凹凸部105の平坦部105cを仮想面BPに投影した投影面105cpとを有している。
【0028】
このように、仮想面BPに共振器端面10aを投影した投影面10apは、ガイド層13の側面13aに設けられた凹凸部103の斜面部103a及び平坦部103b,103cと、下部クラッド層14の側面14aに設けられた凹凸部104の斜面部104a及び平坦部104b,104cと、上部クラッド層15の側面15aに設けられた凹凸部105の斜面部105a及び平坦部105b,105cのそれぞれの投影面103ap,103bp,103cp,104ap,104bp,104cp,105ap,105bp,105cpで構成される。
【0029】
ここで、斜面部103a,104a,105aの投影面103ap,104ap,105apの面積を合計した総面積をSsとする。また、平坦部103b,103c,104b,104c,105b,105cの投影面103bp,103cp,104bp,104cp,105bp,105cpの面積を合計した総面積をSfとする。レーザ素子1では、斜面部103a,104a,105aの投影面103ap,104ap,105apと、平坦部103b,103c,104b,104c,105b,105cの投影面103bp,103cp,104bp,104cp,105bp,105cpとの間には、以下の式(1)に示す関係が成り立つ。
0<Ss/(Ss+Sf)≦1 ・・・(1)
ここで、「Ss+Sf」は、共振器端面10aを仮想面BPに投影した投影面10apの面積に相当する。
【0030】
レーザ素子1は、平坦部103b,103cを有する凹凸部103と、平坦部104b,104cを有する凹凸部104と、平坦部105b,105cを有する凹凸部105とを備えている。しかしながら、レーザ素子1は、平坦部103b,103cを有さない凹凸部103と、平坦部104b,104cを有さない凹凸部104と、平坦部105b,105cを有さない凹凸部105とを備えていてもよい。この場合、ガイド層13の側面13aは、斜面部103aが連続する鋸歯状の凹凸部103を有する。同様に、下部クラッド層14の側面14aは、斜面部104aが連続する鋸歯状の凹凸部104を有し、上部クラッド層15の側面15aは、斜面部105aが連続する鋸歯状の凹凸部105を有する。凹凸部103,104,105が斜面部103a,104a,105aのみで形成されていると、投影面10apは、投影面103ap,104ap,105apのみで構成される。この場合、投影面10apには、平坦部を仮想面BPに投影した投影面が含まれないため、総面積Sfは0になるので、式(1)は、Ss/(Ss+Sf)=1となる。
【0031】
本実施形態では、斜面部103a,104a,105aは、1平面で形成されているが、多面、曲面及び多面と曲面が混在した面のいずれかで形成されている場合があってもよい。斜面部103a,104a,105aがどのような形状の面で形成されていても、仮想面BPに投影された投影面103ap,104ap,105apは、いずれも1平面の四角形状となる。
【0032】
次に、本実施形態によるレーザ素子1及びレーザダイオード100の効果について
図3を用いて説明する。
図3に示すように、本実施形態によるレーザダイオード100は、レーザ素子1と、レーザ素子1で発光した光を検出する光検出部3と、レーザ素子1及び光検出部3を内包するパッケージ5とを備えている。
図3では、パッケージ5の一部が模式的に示されている。パッケージ5は、金や鉛が母体となる支持体が主構造となり、レーザ素子1の発光層12から出射される放射光Leが入射する領域にガラスで形成された窓51を有している。
【0033】
レーザ素子1の積層体10は、ガイド層13、下部クラッド層14及び上部クラッド層15のそれぞれの屈折率の差によって発光層12で発光した光を閉じ込める光閉じ込め構造を有している。積層体10は、発光層12で発光した光をガイド層13で導光し、共振器端面10a(主にガイド層13の側面13a)と、共振器端面10aに対向する積層体10の対向端面(主にガイド層13の対向側面10b)とで繰り返し反射する。このように、レーザ素子1は、発光層12で発光した光を共振器端面10a及び対向端面で繰り返し反射して共振させる構造を有している。さらに、レーザ素子1は、ガイド層13で共振した光を共振器端面10a側から出射する際に凹凸部103,104,105で散乱させる構造を有している。レーザダイオード100は、レーザ素子1の凹凸部103で散乱された光を光検出部3で拾う(すなわち検出する)構造を有している。
【0034】
より具体的には、
図3に示すように、レーザダイオード100は、レーザ素子1から出射された光のうち凹凸部103,104,105で散乱されずに直進する照射光Leをパッケージ5に設けられた窓51から外部に出射する。また、レーザダイオード100は、レーザ素子1から出射された光のうち凹凸部103,104,105で散乱した散乱光Lsを窓51以外のパッケージ5の内側面で反射し、反射光Lrを光検出部3で検出する。照射光Leは、ガイド層13の側面13aに形成された凹凸部103の平坦部103bに配置された発光層12の側面12aから出射される光である。散乱光Lsは、凹凸部103の斜面部103aに配置された発光層12の側面12aから出射される光である。また、散乱光Lsには、凹凸部103の平坦部103c、下部クラッド層14の側面14aに形成された凹凸部104及び上部クラッド層15の側面15aに形成された凹凸部105から出射される漏れ光も含まれる。光検出部3は、例えばpn接合を利用した光起電力型のフォトダイオードである。光検出部3は、レーザ素子1とは個別に形成され、レーザ素子1とともにパッケージ5内に配置される。光検出部3は、レーザ素子1が紫外レーザを出射するように構成されている場合には、例えば紫外レーザ光が出射されているか否かを判定するための素子として用いられる。また、光検出部3は、レーザ素子1が紫外レーザあるいは可視光レーザを出射するように構成されている場合には、例えばレーザ素子1の出力強度を制御するために用いられる。
【0035】
共振器端面10aの投影面10apの総面積(Ss+Sf)に対する、凹凸部103,104,105の斜面部103a,104a,105aの投影面103ap,104ap,105apの総面積Ssの面積比Sr(=Ss/(Ss+Sf))は、式(1)に示すように、0より大きく1以下の範囲内であれば任意の値を取り得る。例えば、面積比Srは、0より大きく0.5よりも小さく(0<Sr<0.5)てもよい。また例えば、面積比Srは、0より大きく0.2よりも小さく(0<Sr<0.2)てもよい。さらに例えば、面積比Srは、0より大きく0.05よりも小さく(0<Sr<0.05)てもよい。面積比Srが0.5より小さいと、凹凸部の斜面部の総面積が平坦部の総面積より小さくなる。これにより、レーザダイオード100は、共振器端面10aから光を出射する際に凹凸部で散乱される光が少なくなり、共振器端面10aの凹凸部103,104,105でのロスが小さくなるので、高出力のレーザとなる。さらに、面積比Srが0.2、さらに0.05より小さいと、凹凸部103,104,105で散乱させるレーザ光が少なくすむので、レーザダイオード100は、パッケージ5内部の部材へのダメージを小さくできる。共振器端面10aの凹凸部103,104,105でのロスが小さくなって散乱光Lsの光強度が弱くなっても、光検出部3で検出可能な光強度が維持されていればよい。
【0036】
共振器端面10aの凹凸の確認方法は、共振器端面10a側からのレーザ素子1の像を撮像し、斜面部103a,104a,105aの像と、平坦部103b,103c,104b,104c,105b,105cの像とを比較しながら斜面部及び平坦部のそれぞれの面積を画像上で計算することにより面積比Srを算出できる。ここで、斜面部103a,104a,105aの像が斜面部103a,104a,105aを仮想面BPに投影した投影面103ap,104ap,105ap(
図2参照)に相当し、平坦部103b,103c,104b,104c,105b,105cの像が平坦部103b,103c,104b,104c,105b,105cを仮想面BPに投影した投影面103bp,103cp,104bp,104cp,105bp,105cp(
図2参照)に相当する。凹凸の観察はまず,半導体の積層方向軸に対して端面が観察できる方向に45°傾けた軸方向から25000倍の倍率で端面をSEM観察(傾斜SEM観察)した際に凹凸構造に相当する段差コントラスト差が確認されない箇所を平坦であると推定する。そして,SEMで平坦であると推定した箇所について上部クラッド層15の突起部152(
図1参照)が延在する方向と平行な方向に積層体10を切断した断面を断面SEMで確認する。この時、共振器端面10aにおいて20nm以下の高低差であれば、傾斜SEMで平坦であると推定した面は平坦であると定義する。なお,断面SEMで20nmより大きい凹凸があれば凹凸部と定義する。
【0037】
つまり、突起部152が延在する方向と平行な方向に積層体10を切断した断面において、ガイド層13の側面13aに形成された凹凸部103の平坦部103bと平坦部103cとの間の距離が20nm以下の場合には、当該平坦部103b及び当該平坦部103cによって形成される凹凸は、本実施形態においては凹凸部103と看做さず、当該平坦部103b及び当該平坦部103cによって連続する平坦部と看做す。同様に、下部クラッド層14の当該断面において、平坦部104bと平坦部104cとの間の距離が20nm以下の場合には、当該平坦部104b及び当該平坦部104cによって形成される凹凸は、本実施形態においては凹凸部104と看做さず、当該平坦部104b及び当該平坦部104cによって連続する平坦部と看做す。同様に、上部クラッド層15の当該断面において、平坦部105bと平坦部105cとの間の距離が20nm以下の場合には、当該平坦部105b及び当該平坦部105cによって形成される凹凸は、本実施形態においては凹凸部105と看做さず、当該平坦部105b及び当該平坦部105cによって連続する平坦部と看做す。
【0038】
ガイド層13の側面13aが連続する斜面部103aで構成された鋸歯状の凹凸部103を有する場合に、突起部152が延在する方向と平行な方向に積層体10を切断した断面において、凹凸部103の凸部の先端と凹部の先端との間の距離が20nmより長いと、当該凹凸は、本実施形態においては凹凸部103と看做す。一方、ガイド層13の側面13aが連続する斜面部103aで構成された鋸歯状の凹凸部103を有する場合に、当該断面において凹凸部103の凸部の先端と凹部の先端との間の距離が20nm以下であると、当該凹凸は、本実施形態においては凹凸部103と看做さずに平坦部と看做す。下部クラッド層14の側面14aが連続する斜面部104aで構成された鋸歯状の凹凸部104を有する場合、及び、上部クラッド層15の側面15aが連続する斜面部105aで構成された鋸歯状の凹凸部105を有する場合も、凹凸部と看做すか否かが同様の方法にて判断される。
【0039】
レーザ素子1では、斜面部103a,104a,105aは、m面及びa面のいずれか一方の面で構成されていてもよい。この場合、斜面部103a,104a,105aの全てがm面及びa面のいずれか一方の面で構成されている必要はなく、斜面部103a,104a,105aのうちのいずれかの斜面部はm面及びa面の一方で構成され、斜面部103a,104a,105aのうちの残余の斜面部はm面及びa面の他方で構成されていてもよい。また、ガイド層13の側面13aに複数の斜面部103aが設けられている場合、複数の斜面部103aのうちの一部がm面及びa面の一方で構成され、残部がm面及びa面の他方で構成されていてもよい。同様に、下部クラッド層14の側面14aに複数の斜面部104aが設けられている場合、複数の斜面部104aのうちの一部がm面及びa面の一方で構成され、残部がm面及びa面の他方で構成されていてもよい。同様に、上部クラッド層15の側面15aに複数の斜面部105aが設けられている場合、複数の斜面部105aのうちの一部がm面及びa面の一方で構成され、残部がm面及びa面の他方で構成されていてもよい。
【0040】
斜面部103a,104a,105aがm面及びa面の一方で構成されて平面であることで、共振器端面10aから出射される光の散乱方向が決まるので、光検出部3の搭載位置を正確に決められる。斜面部103a,104a,105aがm面及びa面で構成されているか否かは、X線回折により六回対称の面を確認することで特定できる。
【0041】
レーザ素子1では、ガイド層13、下部クラッド層14及び上部クラッド層15の少なくとも1つは、AlGaN混晶を含んでいてもよい。つまり、積層体10は、AlGaN混晶を含んでいてもよい。AlGaNは、エッチング(特にウエットエッチング)でm面やa面を出しやすい。このため、レーザ光の出射方向や光検出の精度が高いレーザ素子1を形成できる。
【0042】
レーザ素子1では、ガイド層13の側面13aにおける面積比Srは、ガイド層13以外の積層体10の側面における面積比Sr(すなわち下部クラッド層14における面積比Sr及び上部クラッド層15における面積比Sr)より小さくてもよい。より具体的に、凹凸部103の斜面部103a及び平坦部103b,103cの投影面103ap,103bp,103cpに対する斜面部103aの投影面103apの面積比13Sr(ガイド層13における面積比Sr)は、凹凸部104の斜面部104a及び平坦部104b,104cの投影面104ap,104bp,104cpに対する斜面部104aの投影面104apの面積比14Sr(下部クラッド層14における面積比Sr)よりも小さくてよい。さらに、面積比13Srは、凹凸部105の斜面部105a及び平坦部105b,105cの投影面105ap,105bp,105cpに対する斜面部105aの投影面105apの面積比15Sr(上部クラッド層15における面積比Sr)よりも小さくてもよい。面積比13Srは、面積比14Sr及び面積比15Srのいずれよりも小さくてもよいし、面積比14Sr及び面積比15Srのいずれか一方より小さくてもよい。
【0043】
共振器端面10aのうちのレーザに最も重要なガイド層13における面積比13Srを下部クラッド層14の面積比14Sr及び上部クラッド層15における面積比15Srよりも小さくすることにより、レーザダイオード100の透過光Ltの高出力化を図るとともに、「漏れ光」のみを散乱させて光検出部3でセンシングすることができる。
【0044】
レーザダイオード100は、窒化物半導体チップである積層体10が搭載されたパッケージ品であり、パッケージ内部に積層体10の発光を検出する光検出部3が搭載された状態でも使用できる。レーザダイオード100は、例えば積層体10から光が出射する際に生じる散乱光を光検出部3で検出し出力モニター可能な素子を形成できる。
【0045】
本発明は様々な発光波長のレーザで使用できる。可視光発振でも紫外光発振でもよい。特に、目視で発振が観察できない紫外レーザはセンサでの出力モニターへの要請が高い。このため、光検出部3を備えたレーザダイオード100は、紫外レーザに好適である。
【0046】
次に、本実施形態の変形例によるレーザ素子1について
図4を用いて説明する。
図4に示すように、本変形例によるレーザ素子1は、発光層12がAl
x1Ga
y1Nで形成されており、上部クラッド層15は、Al
x2Ga
y2N層15bと、Al
x2Ga
y2N層15bの上層にAl
x3Ga
y3N層15cとを含んでいる。発光層12、Al
x2Ga
y2N層15b及びAl
x3Ga
y3N層15cの組成は、x1+y1=1、x2+y2=1、x3+y3=1、x2<x1及びx2<x3の関係を満たしていてもよい。これにより、Al
x2Ga
y2N層15bがサイドエッチングストップ層となり、Al
x2Ga
y2N層15bより下部領域の上部クラッド層15以下の層が、積層体10の形成時のウェットエッチングにおいてサイドエッチングされることを抑制することが可能である。サイドエッチングが抑制されるのは、ウェットエッチングは、上部クラッド層15の側面からだけではなく、上部クラッド層15の上面からも進行するが、Al
x3Ga
y3N層15cよりもエッチングレートの遅いAl
x2Ga
y2N層15bが上部クラッド層15の上面からのエッチングを抑制するためである。上部クラッド層15の積層構造は、断面TEMとEDXを取ることで薄膜構造を特定可能である。Al
x2Ga
y2N層15bの厚さは、0nmより大きく200nmより小さくてもよい。
【0047】
図4に示すように、本変形例によるレーザ素子1は、上部クラッド層15の上方の一部又は全部に絶縁保護膜18を備えていてもよい。絶縁保護膜18の少なくとも一部は、上部クラッド層15よりも基板11の側面11a側に飛び出ていてもよい。レーザ素子1が絶縁保護膜18を備える構造は、断面のSEMとEDXを行うことで特定が可能である。レーザ素子1が絶縁保護膜18を備えることで、共振器端面10aに誘電体多層膜(不図示)やAlGaNO膜(不図示)を積層する際の「引っかかり」となる。つまり、絶縁保護膜18は、誘電体多層膜やAlGaNO膜を積層する際にアンカー効果を奏する。これにより、誘電体多層膜とガイド層13の側面13aとの密着性、AlGaNO膜と下部クラッド層14の側面14aとの密着性及びAlGaNO膜と上部クラッド層15との側面15aとの密着性をそれぞれ向上させることができる。絶縁保護膜18は、SiO
2で形成されていてよく、その他にAl
2O
3、SiN、SnO
2、ZrO、HfO
2等で形成されていてもよい。
【0048】
当該誘電体多層膜は、発光層12を含んで共振器端面10a上に形成された場合には、ハーフミラー及び絶縁保護層としての機能を発揮する。これにより、レーザ素子1の使用中に共振器端面10aが腐食することが抑制される。また、当該AlGaNO膜は、共振器端面10a上に形成された場合には、絶縁保護層としての機能を発揮する。これにより、レーザ素子1の使用中に共振器端面10aが腐食することが抑制される。
【0049】
(製法)
次に、本実施形態によるレーザ素子1及びレーザダイオード100の製造方法について説明する。レーザ素子1を形成するために、例えば厚さが50μmより長く10000μmより短い範囲内の所定厚さのウェハを準備する。レーザ素子1は、このウェハ上に、最終的に下部クラッド層14となる半導体層、最終的に発光層12よりも下方の領域のガイド層13となる半導体層、最終的に発光層12となる半導体層、最終的に発光層12よりも上方の領域のガイド層13となる半導体層、及び最終的に上部クラッド層15となる半導体層を積層した半導体積層物を形成する。その後、この半導体積層物の一部を所定形状にドライエッチング及びウェットエッチングすることにより、ウェハ上に複数の積層体10を形成する。詳細は後述するが、本実施形態では、積層体10、すなわちガイド層13、上部クラッド層15及び下部クラッド層14を形成する際にポジレジストが用いられる。その後、ウェハを所定位置で切断して積層体10を個片化し、基板11上に積層体10が形成されたレーザ素子1を形成する。レーザ素子1とは別に、個片化された光検出部3を形成する。レーザ素子1及び光検出部3をパッケージ5で覆って固定することによりパッケージ化されたレーザダイオード100が完成する。
【0050】
共振器端面10a(
図1参照)の形成方法について説明する。
パターン端が凹凸になるように設計・作製したフォトマスクを用いてレジストを露光、現像処理することで凹凸のあるレジストマスクを形成する。その後、上部クラッド層15の厚さ(あるいは上部クラッド層15の厚さ以下)だけドライエッチング(例えば、Cl
2やBCl
3等のガスを使用)することで凹凸のある共振器端面10aが形成される。
【0051】
Alx2Gay2N層15b及びAlx3Gay3N層15cを有する上部クラッド層15を備えるレーザ素子1の共振器端面10aの形成方法について説明する。
発光層12をAlx1Gay1Nで形成し、発光層12の上層にAlx2Gay2N層を積層し、さらにAlx2Gay2N層の上層にAlx3Gay3N層を積層する。その後、上述の方法で半導体積層物をドライエッチングすることにより、Alx2Gay2N層15b及びAlx3Gay3N層15cを有する上部クラッド層15を備えるレーザ素子1の共振器端面10aが形成される。
【0052】
絶縁保護膜18(
図4参照)の形成方法について説明する。
最終的に積層体10となる半導体積層物上に絶縁層を形成し、共振器端面10aを形成する方法でドライエッチングした後に、アルカリ薬液(例えば、水酸化カリウム(KOH)水溶液や水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)溶液)でウェットエッチングによって上部クラッド層15の一部をサイドエッチングすることにより、上部クラッド層15よりも基板11の側面11a側に飛び出した絶縁保護膜18が形成される。なお、絶縁保護膜18は、p型電極162の少なくとも一部を露出するように形成される。
【0053】
m面又はa面の斜面部の形成方法について説明する。
共振器端面10aに凹凸を形成する際に、斜面部をm面又はa面に揃えてパターニングし、ドライエッチングの後にアルカリ薬液(例えば、KOH水溶液やTMAH溶液)でウェットエッチングによって積層体10をサイドエッチングすることにより、m面又はa面で構成された斜面部を有する共振器端面10aが形成される。
【0054】
AlGaN混晶を含む積層体10の形成方法について説明する。
ガイド層13、下部クラッド層14及び上部クラッド層15のうち、AlGaN混晶を含める層を形成するための半導体層にAlGaN混晶を用いることにより、ガイド層13、下部クラッド層14及び上部クラッド層15のうちの所望の層にAlGaN混晶を含む積層体10を形成することができる。
【0055】
凹凸部の投影面に対する斜面部の投影面の面積比の制御方法について説明する。
凹凸のあるフォトマスクを用いてレジストを露光、現像処理することで凹凸のあるレジストマスクを形成する。その後、このレジストマスクをマスクとして、最終的に積層体10となる半導体積層物の1つの側面を上部クラッド層15の厚さ(あるいは上部クラッド層15の厚さ以下)だけドライエッチングし、当該側面の上部に凹凸を形成して上部クラッド層15の側面15aの凹凸部105を形成する。次に、このレジストマスクを除去した後に、再度別の凹凸形状を有するフォトマスクを形成する。このフォトマスクを用いて、半導体積層物の凹凸部105が形成された側面を再度ドライエッチングすることにより、上部クラッド層15の下層にガイド層13の側面13aの凹凸部103を形成する。次に、このレジストマスクを除去した後に、再度別の凹凸形状を有するフォトマスクを形成する。このフォトマスクを用いて、半導体積層物の凹凸部103,105が形成された側面を再度ドライエッチングすることにより、ガイド層13の下層に下部クラッド層14の側面14aの凹凸部104を形成する。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によるレーザ素子1は、基板11と、基板11の上方に配置された発光層12と、発光層12を挟んで基板11の上方に配置されたガイド層13と、基板11とガイド層13との間に形成された下部クラッド層14と、ガイド層13の上に形成された上部クラッド層15と、発光層12で発光した光が出射される光出射側の発光層12の側面12a、ガイド層13の側面13a、下部クラッド層14の側面14a及び上部クラッド層15の側面15aを有する共振器端面10aとを備えている。共振器端面10aは、斜面部103a,103a,103aを含む凹凸部103,104,105を有し、光出射側の基板11の側面11aに平行な仮想面BPに共振器端面10aを投影した投影面10apに対する、仮想面BPに斜面部103a,103a,103aを投影した投影面103ap,103ap,103apの面積比は、0より大きく1以下である。
【0057】
当該構成を備えたレーザ素子1によれば、共振器端面10aから照射した照射光Leを外部利用光としてパッケージ5の窓51を介してパッケージ5の外部に出射することができる。また、レーザ素子1は、共振器端面10aで散乱した散乱光Lsがパッケージ5の内側面で反射しても反射光Lrが発光層12に再入射しないように構成されている。つまり、レーザ素子1は、反射光Lrが発光層12に再入射しないように照射光を散乱することができる凹凸部103,104,105を共振器端面10aに有している。これにより、レーザ素子1は、発光層12の光励起を抑制することができ、出力ノイズを低減することができる。
【0058】
また、本実施形態によるレーザダイオード100は、レーザ素子1と、レーザ素子1で発光した光を検出する光検出部3と、レーザ素子1及び光検出部3を内包するパッケージ5とを備えている。
【0059】
当該構成を備えたレーザダイオード100によれば、パッケージ5の内側面で反射した反射光Lrを光検出部3で検出し、光検出部3で検出した光をレーザ光が出力されているか否かの判断などに利用することができる。このように、レーザダイオード100は、レーザ素子1の共振器端面10aで散乱した散乱光Lsを内部利用光として利用することができる。
【0060】
本発明は、上記実施形態に限られず、種々の変形が可能である。
上記実施形態では、ガイド層13は、アンドープ層であるが、本発明はこれに限られない。ガイド層13は、例えばドーパントが添加されて、発光層12よりも下層の領域がn型半導体で形成され、発光層12よりも上層の領域がp型半導体で形成されていてもよい。この場合、積層体10は、発光層12よりも上層がp型半導体で形成され、発光層12よりの下層がn型半導体で形成される。
【0061】
上記実施形態では、突起部152及びp型電極162の端面は、側面15a及び側面15aに対向する対向側面(対向側面10b側の側面)と面一に形成されているが、本発明はこれに限られない。突起部152は、側面15a及び対向側面よりも内側(例えば5μmから10μm)の位置に両端面を有していてもよい。また、p型電極162は、突起部152の端面よりも内側(例えば2μmから10μm)の位置に端面を有していてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 レーザ素子
3 光検出部
5 パッケージ
10 積層体
10a 共振器端面
10ap,103p,103ap,103bp,103cp,104p,104ap,104bp,104cp,105p,105ap,105bp,105cp 投影面
10b 対向側面
11 基板
11a,12a,13a,14a,15a 側面
11b 積層面
12 発光層
13 ガイド層
14 下部クラッド層
15 上部クラッド層
15b Alx2Gay2N層
15c Alx3Gay3N層
18 絶縁保護膜
51 窓
100 レーザダイオード
103,104,105 凹凸部
103a,104a,105a 斜面部
103b,103c,104b,104c,105b,105c 平坦部
141 第一領域
142 第二領域
151 平板部
152 突起部
161 n型電極
162 p型電極
BP 仮想面
Le 照射光
Lr 反射光
Ls 散乱光
Lt 透過光