(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】シート構造、仮設テント
(51)【国際特許分類】
E04G 21/32 20060101AFI20220805BHJP
E04H 15/54 20060101ALI20220805BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20220805BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
E04G21/32 B
E04H15/54
B32B7/027
B32B5/26
(21)【出願番号】P 2018097815
(22)【出願日】2018-05-22
【審査請求日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2017251514
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504059544
【氏名又は名称】株式会社トータル環境
(73)【特許権者】
【識別番号】596077488
【氏名又は名称】今泉テント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000200666
【氏名又は名称】泉株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】511131103
【氏名又は名称】IMSテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108604
【氏名又は名称】村松 義人
(72)【発明者】
【氏名】川添 栄一
(72)【発明者】
【氏名】今泉 義春
(72)【発明者】
【氏名】片山 竜太
(72)【発明者】
【氏名】竹中 友章
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-519181(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0343575(KR,Y1)
【文献】特開2016-030888(JP,A)
【文献】国際公開第2008/146485(WO,A1)
【文献】特開2017-100341(JP,A)
【文献】特開2013-010233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/32
E04G 21/28
E04G 5/00
E04H 15/54
E04H 15/64
B32B 7/027
B32B 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材と、その間に張り渡されたシートとを有してなる仮設テントにおいて用いられる、外側に位置する外シートと、内側に位置する内シートとの二重のシートからなる、仮設テントのシート構造であって、
前記外シートとして、前記内シートよりも高い難燃性を有するものが配されるとともに、
前記内シートとして、前記外シートよりも高い防音性を有するものが配される
ようになっており、
前記外シートは、繊維を織った織布でできている基材である外基材を備えているとともに、前記外基材の両面に、透光性を有する樹脂でできている外シート透明層を備えており、且つ外側の前記外シート透明層は、紫外線を遮断する機能を与えるため、紫外線を反射する顔料と紫外線を吸収する紫外線吸収剤との少なくとも一方を含むことにより、紫外線を遮断する機能を有する紫外線遮断層を兼ね、内側の外シート透明層は前記紫外線遮断層を兼ねないようになっており、
前記内シートは、繊維を織った織布でできている基材である内基材を備えているとともに、前記内基材の少なくとも一方の面に、透光性を有する樹脂でできている内シート透明層を備えており、
前記外シートの透光率は4%以上とされ、前記内シートの透光率は20%以上とされている、
シート構造。
【請求項2】
前記外シートの前記外基材を構成する織布を構成する前記繊維は、ガラス繊維である、
請求項
1記載のシート構造。
【請求項3】
前記内シートの前記
内基材を構成する織布を構成する前記繊維は、合成繊維である、
請求項1記載のシート構造。
【請求項4】
前記内シートの単位面積あたりの重さは、前記外シートの単位面積あたりの重さよりも大きくされている、
請求項
1記載のシート構造。
【請求項5】
前記内シート透明層は、前記内シートの両面に設けられている、
請求項
1記載のシート構造。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれかに記載のシート構造を、前記仮設テントの屋根部分に張り渡される前記シートに採用するとともに、一重のシートを前記仮設テントの壁部分に採用した、
仮設テント。
【請求項7】
前記仮設テントの壁部分に張り渡される前記シートの外部に露出する外面には、光の反射率を低減させるための艶消し機能層が設けられている、
請求項6記載の仮設テント
。
【請求項8】
前記仮設テントの壁部分に張り渡される前記シートの外部に露出する外面は、前記仮設テントの屋根部分に張り渡される前記シートの外部に露出する外面よりも、光の反射率が小さくなるようにされている、
請求項
7記載の仮設テント。
【請求項9】
前記仮設テントの屋根部分に張り渡される前記
外シートの外部に露出する外面には、光の反射率を低減させるための艶消し機能層が設けられている、
請求項
7記載の仮設テント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設テントにおいて用いられる、二重シートにおけるシート構造に主に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、建築物などを解体するには、解体現場においてバックホーなどの重機を用いて建築物を破砕し、細分化し、それによって生じた廃棄物を適当な方法で分別して廃棄する。
このような解体作業を、行う場合には、外部に音が漏れることを防ぐ必要がある。特に、解体作業を行う現場の近くに、住宅、病院、或いは学校等がある場合には、音の漏れがあると、近隣の住民との間で軋轢を生みかねない。
【0003】
建築物の解体作業を行うときに、その作業によって生じる騒音の外部への漏れ出しを防止するための技術の1つとして、仮設テントにより解体の対象となる建築物の全体を覆うという技術が採用されている。
かかる仮設テントは、例えば、柱、梁等の骨材と、その少なくとも一部を覆うシートとによって構成される。シートは、粉塵や騒音の外部への漏れ出しを防止する目的をより強調するために二重とされる場合もある。
なお、近年の普及にしたがって、仮設テントは、建築物の解体を行うときのみならず、建築物の建築を行う場合にも利用される場合が生じてきている。したがって、本願における仮設テントは、建築物の解体を行う場合に用いられるものに限らず、その用途は問わない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
仮設テントのシートを二重にすると、音の外部への漏れ出しがシートが一重のときに比して少なくはなる。
しかしながら、音の外部への漏れ出しを防止することに対する要求は年々厳しくなっている。また、音の漏れ出しを防止するために仮設テントを用いる場合にデメリットが生じることも考えられるから、それを低減する必要がある。
【0005】
本願発明は、仮設テントを音の外部への漏れ出しをより効果的に防止できるように改良すること等、仮設テントを改良することのできる技術を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本願発明者は以下の発明を提案する。
本願発明は、骨材と、その間に張り渡されたシートとを有してなる仮設テントにおいて用いられる、外側に位置する外シートと、内側に位置する内シートとの二重のシートからなる、仮設テントのシート構造である。かかるシート構造を有する仮設テントの特に骨材は、従前のものと同じで良い。
上述のように、本願発明のシート構造は、外側に位置する外シートと、内側に位置する内シートとの二重のシートからなる。ここで、前記外シートとして、前記内シートよりも高い難燃性を有するものが配されるとともに、前記内シートとして、前記外シートよりも高い防音性を有するものが配される。
本願発明のシート構造は、従来から存在したものと同じく、二重構造を採用する。従来のシート構造は、同じシートを二重に配したものとされている。他方、本願発明のシート構造における外シートは、内シートよりも高い難燃性を有するものとされ、内シートは、外シートよりも高い防音性を有するものとされる。このように各々の役割を両シートに割り振ることにより、このシート構造は、防音性が高いのに加えて、火災に強いものとなる。難燃性の高い外シートを内シートの外側に位置させるのは、仮に内シートが燃えたとしても、外シートにより火災が仮設テントの外側に広がるのを防止するのに有利なためである。他方、防音性の高い内シートを外シートの内側に位置させるのは、仮設テントで覆われた現場から出る音をまず内シートで効果的に減衰させることで、仮設テントからの音漏れを効果的に防止するためである。本願における「防音性」は、結果的に透過音が少なくなればその機序は問わない。
2枚のシートの性格を上述のようにすることの利点は、防音性と難燃性とを、1枚のシートで両立させるのが難しいのに対して、2枚のシートを用いれば比較的容易に、それら2つの性質を両立させることができるということである。一般的に、シートの防音性を増すには、シートの重さを重くする必要があるところ、そのためには、シートの厚さを厚くするのが簡単である。しかしながら、シートの厚さを厚くすると、例えば、シートに含まれる単位面積あたりの樹脂の量を多くすると、シートが燃焼するときに生じる熱量が増えるため、難燃性が低下する。このような事情から、2枚のシートを用いるのである。
なお、本願発明における「難燃性」の文言は、単に燃えにくいという程度の意味であり、例えば建築基準法、消防法における難燃、防炎、不燃等の定義とは一致しない。
【0007】
本願発明におけるシート構造は、繊維を織った織布でできている基材である外基材を備えているとともに、前記外基材の外側に、紫外線を遮断する機能を有する紫外線遮断層が設けられていても構わない。
外シート、内シートはともに、仮設テントの一部をなすが、それらはいずれも屋外で使用される。上述したように、外シートは主に、シート構造が難燃性を得るためのものであり、内シートは主に、シート構造が防音性を得るためのものであるが、そのための工夫(実際上は、外シート及び内シートの少なくとも一部に使用された素材がその工夫に該当するであろう。)は、太陽光に含まれる紫外線により劣化するおそれがある。
シート構造の外側に位置する外シートの外基材よりも外、例えば、外シートの最外面に紫外線遮断層が設けられていれば、そのような外シート及び内シートの劣化を効果的に防止することが可能となる。
なお、外基材の構成については追って述べる。
【0008】
本願発明におけるシート構造において、外シートと内シートとはともに、透光性を有するのが良い。本願発明におけるシート構造は、上述したように、外シートと内シートという二重のシートを備えている。かかる二重のシートは、ともあれば太陽光を遮ってしまい、仮設テントの中を暗くしてしまう。もちろん夜間の工事を行う場合には仮設テントの中に照明設備を設けるのは必須であるが、昼間の工事を行う場合にも照明が必要であるというのであれば、例えば電気代や発電機に用いる燃料代がかさむ。外シートと内シートとがともに透光性を有するのであれば、このような不具合を抑制することができる。なお、外シートと内シートとは、透光性を有するとは言っても、完全な透明である必要はなく、例えば、半透明とすることができる。また、透明は、無色透明ではなく、有色透明でもよく、有色半透明でもよい。外シートと内シートはいずれも、厚さも考慮して、ある程度の透光性があればよく、不透明であっても構わない。内シートの透光率は、外シートの透光率よりも高くすることが可能である。外シートと内シートを重ねた場合、内シートの透光率を大きくすべきである。その理由は、後述するように、外シートには、例えばそのこれも後述する外シート透明層に顔料が含められることがある。そうすると、外シートの透光率を大きくすることが難しくなることがあるので、内シートの透光率を大きくすることが、外シートと内シートとを重ねた場合の合計の透光率を大きくするのに有利となるからである。外シートの透光率は例えば、4%以上で、5%程度或いはそれ以上とするのが好ましい。内シートの透光率は例えば、20%以上で、30%程度或いはそれ以上とするのが好ましい。
本願発明におけるシート構造において、前記外シートは、繊維を織った織布でできている基材である外基材を備えているとともに、その少なくとも一方の面に、透光性を有する材料でできている外シート透明層を備えていてもよい。
外シートが上述の如き外シート透明層と外基材とをその基本的構成としているのであれば、本願発明によるシート構造の透光性を上げるに役立つ。なお、外シート透明層は、外基材の内側、外側の一方に存在してもよく、双方に存在しても良い。また、例えば、上述の紫外線遮断層を、外側の外シート透明層が兼ねても良い。また、外シート透明層のうち、特に外基材のうちの外側に位置するものには、紫外線反射及び美観向上の観点から、着色用の顔料が含まれていてもよい。
外シート透明層は、樹脂でできている。樹脂としては、天然ゴム、合成ゴム(例えば、ネオプレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、ハイパロン)、合成樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂)を用いることが出来る。樹脂は、難燃性、透光性に加え、外シートが備えるべき他の性質(防水性、機械的強度、耐候性)等を考慮して選択可能である。外シート透明層の厚さも同様に選択することができる。外シート透明層の厚さは、技術的には5mm程度まで厚くすることができるが、例えば、150~200μmとすることができる。
外基材を構成する織布を構成する繊維は、外シートの難燃性を高めるようなものであるのが良く、また、可能であればその透光性を高めるものがよい。もっとも、外シートの基材を構成する繊維は例えば、天然繊維(例えば、木綿繊維、麻繊維)、無機繊維(例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維)、再生繊維(例えば、ビスコースレーヨン、キュプラ)、半合成繊維(例えば、トリアセテート繊維)、合成繊維(例えば、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)繊維、ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、ポリオレフィン繊維などから選択することができる。難燃性を高めるためには、外基材を構成する織布を構成する繊維は無機繊維とすることができ、更には透光性まで考慮すると、ガラス繊維とすることができる。
前記内シートは、繊維を織った織布でできている基材である内基材を備えているとともに、その少なくとも一方の面に、透光性を有する材料でできている内シート透明層を備えていてもよい。
内シートが上述の如き内シート透明層と内基材とをその基本的構成としているのであれば、本願発明によるシート構造の透光性を上げるに役立つ。前記内シート透明層は、前記内シートの両面に設けられていてもよい。
内シート透明層は、外シート透明層と同様に、樹脂により構成することができる。内シート透明層を構成する樹脂は、外シート透明層を構成する既に例示した樹脂から選択することができる。
内基材を構成する織布を構成する繊維は、内シートの防音性能を高めるようなものであるのが良く、また、可能であればその透明性を高めるものがよい。内基材を構成する繊維としては、外基材を構成する繊維として選択することのできる既述の多数例示された繊維を用いることができる。外基材を構成する繊維と、内基材を構成する繊維は同じでも良いしそうでなくても良い。内基材を構成する織布を構成する繊維は、合成繊維、中でもポリエステル繊維とすることができる。ポリエステル繊維は、コスト、加工性能に優れる他、難燃性の面でも優れている。
【0009】
本願発明におけるシート構造において、前記内シートの単位面積あたりの重さは、前記外シートの単位面積あたりの重さよりも大きくされていてもよい。
そうすることによって、内シートの防音性を向上させることが可能となる。
内シートの単位面積あたりの重さを大きくするには、シート全体の厚さを増す、上述した内シート透明層の中に比重の大きな粒子或いは顔料を混ぜる等の工夫を行えば良い。もっとも、比重の大きな粒子、例えば、硫酸バリウムを添加すると、その色彩が内シートに現れ、透光性に影響が生じる可能性があるので、その点に留意すべきである。
【0010】
以上で説明した、二重のシートである外シート及び内シートを有する本願発明によるシート構造は、仮設テントのシートのすべての部分で採用されても構わないし、そうでなくても構わない。例えば、本願発明による二重のシート構造を、前記仮設テントの屋根部分に張り渡される前記シートに採用するとともに、一重のシートを前記仮設テントの壁部分に採用することもできる。このような仮設テントをも本願発明の一態様として本願発明者は提案する。
【0011】
本願発明者は、また、骨材と、その間に張り渡されたシートとを有してなる仮設テントにおけるシートの構造であるシート構造であって、前記仮設テントの壁部分に張り渡される前記シートの外部に露出する外面には、光の反射率を低減させるための艶消し機能層が設けられている、シート構造をも、本願発明の他の態様として提案する。
仮設テントは、壁と屋根とを備えている。壁は地表に対して鉛直な部位であり、一般的には仮設テントの側面を構成する。屋根は、壁の上側に設けられ、平面視した場合に壁で囲まれた開口を閉じる。建築物の解体、或いは建築物の建設に用いられる仮設テントは、その工事の規模にもよるが、平面視した場合に矩形である場合のその長辺が100m以上、その高さが50m以上にも及ぶものがある大規模なものである。したがって、仮設テントの特に壁の部分のシートの外面が光を良く反射するようなものとなっていると、仮設テントの壁の部分のシートによって反射された太陽光を、仮設テントの近隣の住民等が眩しく感じる可能性がある。
上述の如き艶消し機能層が存在すれば、そのような不具合を抑制することができる。
前記仮設テントの壁部分に張り渡される前記シートの外部に露出する外面は、前記仮設テントの屋根部分に張り渡される前記シートの外部に露出する外面よりも、光の反射率が小さくなるようにされていてもよい。もちろん前記仮設テントの屋根部分に張り渡される前記シートの外部に露出する外面には、光の反射率を低減させるための艶消し機能層が設けられていても良い。しかしながら、シートに艶消し機能層を形成するには一般に費用がかかる。仮設テントの近隣住民に影響を与える太陽光の反射光は主に、仮設テントの屋根の外面でなく壁に由来する。その部分にのみ艶消し機能層を設けることとすれば、上述の不具合を抑制するという効果を略維持しつつ、コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態で構築される仮設テントを示す斜視図。
【
図2】
図1に示した仮設テントに含まれる骨部材を示す斜視図。
【
図3】
図1に示した仮設テントに含まれるシートの(A)平面図と、(B)側面図と、(C)他の場合の側面図。
【
図4】
図1に示した仮設テントに含まれるシート取付用金具の正面図。
【
図5】
図1に示した仮設テントに含まれるシート取付用金具が梁部に取付けられた状態を梁部の長さ方向の延長線上から見た図。
【
図6】
図1に示した仮設テントに含まれるシート取付用金具にシートが取付けられた状態を梁部の長さ方向の延長線上から見た図。
【
図7】
図1に示した仮設テントに含まれる外シートと内シートの断面図。
【
図8】
図1に示した仮設テントに含まれるシート取付用金具にシートが取付けられた状態で降雨があった場合の雨水の動きを説明するための図。
【
図9】変形例1の仮設テントに含まれる壁シートの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい一実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
この実施形態では、
図1に示したような仮設テントを建築する場合について説明することとする。
仮設テントは、簡単に言うと巨大なテントである。これには限られないが、この実施形態における仮設テントは、ビルディング、清掃工場等の既存の建築物を解体するために用いられるものであり、既存の建築物の全体をすっぽりと覆うようなものとされる。仮設テントは、建築物の建築の例えば一部の工程を施工する際に用いられる場合もある。仮設テントは、これには限られないがこの実施形態では平面視矩形であり、大きい場合にはその長辺が100mに及ぶことがあり、その高さは50mに及ぶことがある。
【0015】
この実施形態による仮設テントは、
図1、
図2に示すようにして複数の骨部材10を備えている。
図2は、骨部材10のみを示した図である。骨部材10は、従来の仮設テントにおけるそれらと基本的に同じ構造で構わない。
各骨部材10は、これには限られないがこの実施形態では等間隔で、且つ平面視した場合に平行になるようにして立てられている。
【0016】
これには限られないが、この実施形態における各骨部材10は同じものとされている。骨部材10は仮設テントの骨材となるものであり、それに必要な剛性を有するものとなっている。骨部材10は、これには限られないがこの実施形態では金属製の角パイプで構成されている。
骨部材10は、いずれも棒状の2本の柱部11と、これもいずれも棒状の2本の梁部12とを備えて構成されている。柱部11は仮設テントの柱となり壁の一部を構成するものであり、梁部12は仮設テントの梁となり屋根の一部を構成するものである。柱部11と梁部12とは全体として一体となっていても構わないが、この実施形態における2つの柱部11と2つの梁部12とは別部材とされており、それらが組合せられ、後述の状態で固定されることにより、一体の骨部材10となるようにされている。もちろん、柱部11と梁部12との少なくとも一方が、更に複数の部材で構成されていることもあり得る。巨大な仮設テントの柱部11と梁部12とはともに、複数の棒状の部材をトラス状に組上げたものとされるのが通常である。
柱部11は、所定の間隔を空けて、地面に対して事実上垂直に立てられるものである。柱部11の下端は地面に固定されるが、その固定の方法は、周知又は公知技術に倣えばよい。
2つの梁部12の一端は、2つの柱部11の上端にそれぞれ固定されている。また2つの梁部12の他端は互いに接続されるようになっている。平面視した場合における2つの梁部12は一直線上になるようにされている。梁部12の互いに接続される他端は、梁部12の一端よりもその高さが高くなるようになっている。かかる梁部12の構成により、仮設テントの屋根は、これには限られないが、いわゆる切妻型となる。
【0017】
次に、仮設テントを構成するシート材について説明する。
シート20は、従来のものとその構成は同じでよく、具体的には
図3に示されたように構成される。後述するようにしてシート20は、隣接する骨部材10の間に張り渡される。
シート20は、シート材21を備えている。シート材21の詳細については追って説明する。シート20は、巻取り又は折畳みが可能とされているが、この実施形態ではその双方が可能とされており、少なくとも骨部材10に沿って曲折可能な程度の柔軟性を有している。
シート20は
図3(A)に示したように長尺の矩形である。シート20の幅は隣り合う骨部材10の間の間隔と同じかそれよりも若干長い長さとされている。シート20の長手方向の長さは、骨部材10の長さ、即ち2つの柱部11と2つの梁部12の長さを合わせた長さに対応したものとされている。シート20或いはシート材21は、複数枚のシート材料を熱融着などによって貼り合わせたものであってももちろん構わない。
シート20の幅方向の両端部には、肉厚部22が設けられている。肉厚部22の厚さはシート20を構成するシート材21の厚さよりも大きくされている。かかる肉厚部22は、シート20を骨部材10の間に後述するような方法で固定するために用いられる構成である。その固定の方法をこの実施形態と異ならせることも可能であり、その場合には、肉厚部22がシート20に設けられない場合もあり得る。
肉厚部22は、例えば、シート20の両端部を
図3(B)に示したように折り返して、その先端をシート20のやや内側よりに溶着、接着、或いは縫製等により固定することで作られた、シート20の幅方向の両端部におけるシート20の長さ方向の全長にわたる筒状の空間の内部に、骨部材10に沿って曲折可能な程度に柔軟なロープ23を配することによって構成される。或いは、肉厚部22は、
図3(C)に示したように、シート20の両端部の表裏両面に、長尺で矩形であり且つその中央を長さ方向に沿って曲折させたシート(例えば、シート材21と形状を除いて同じように構成されたシートである。)である追加シート片24の両端の内側面を溶着、接着、或いは縫製等により固定することで作られた、シート20の幅方向の両端部におけるシート20の長さ方向の全長にわたる筒状の空間の内部に、柔軟なロープ23を配することによって構成される。
いずれにせよ、シート20の肉厚部22は、シート材21の厚さよりも厚くなる。かかる肉厚部22の厚さは、後述する外係止溝及び内係止溝に挿入することができ、且つ外係止溝及び内係止溝の開口から抜け出さないような厚さとされる。なお、シート20の肉厚部22以外の部分の厚さは当然に、肉厚部22を構成するために2重又は3重になっている部分を含めて、外係止溝及び内係止溝の開口の幅よりも薄くなっている。
シート20は、シート取付用金具を用いて骨部材10に取付けられる。
【0018】
次に、シート20を骨部材10に取付けるために用いられるシート取付用金具について説明する。
なお、以下に説明するシート取付用金具は、骨部材10のうち梁部12にシート20を固定するために用いられるが、この実施形態では柱部11へのシート20の固定にも、同様のシート取付用金具が用いられる。つまり、この実施形態の仮設テントでは、その壁の部分でも屋根の部分でも、シート20が二重構造をなす。
【0019】
シート取付用金具100の正面図を
図4に示す。
シート取付用金具100は、
図4に示したような正面形状をしており、長尺であり、その
図4における縦断面形状は、その長さ方向のすべての部分で同じである。これには限られないが、シート取付用金具100は金属製であり、例えば押出成形によって製造される。
シート取付用金具100は、その幅方向の両側にそれぞれ、外係止溝111Aをその内側に有する断面略C字形状の外係止部材111と、内係止溝112Aをその内側に有する断面略C字形状の内係止部材112とを備えている。
2つの外係止部材111同士は、板状体である外接続板113によって互いに接続されており、2つの内係止部材112同士は、板状体である内接続板114によって互いに接続されている。
また、シート取付用金具100の幅方向の同じ側にある外係止部材111と内係止部材112とは、その一部で、より詳細には前者の
図4における内側より下方と後者の外側より上方で、互いに一体化されている。
上述した外係止溝111Aは、後述する外側のシート20の肉厚部22を係止するためのものである。外係止溝111Aにはシート20の肉厚部22を挿入することができるようになっている。またシート20の肉厚部22以外の部分は外係止溝111Aの開口を通過できるようになっている。上述した内係止溝112Aは、後述する内側のシート20の肉厚部22を係止するためのものである。内係止溝112Aにはシート20の肉厚部22を挿入することができるようになっている。またシート20の肉厚部22以外の部分は内係止溝112Aの開口を通過できるようになっている。
外係止溝111A乃至外係止部材111は、内係止溝112A乃至内係止部材112よりも外側に位置するようになっている。
外係止部材111の外側下方、或いは別の言葉で言うなら外係止溝111Aの開口の下側には、突起である案内突起115が設けられている。案内突起115は、後述するようにして垂れ落ちる雨水を案内するものである。
内係止部材112の下方には、固定脚116が設けられている。固定脚116は、シート取付用金具100を骨部材10に対して固定するために用いられるものである。固定脚116はその下方で外側に曲折されており、その先端に上方に突出した係止爪116Aを備えている。係止爪116Aの機能については後述する。
【0020】
以上の如きシート取付用金具100は、
図5に示したようにして、骨部材10に対して取付けられる。
図5の上側が、仮設テントの外側である。
骨部材10の梁部12に対するシート取付用金具100の取付け方は以下の通りである。シート取付用金具100はその長さ方向が梁部12の長さ方向に沿うようにして、梁部12に対して固定される。シート取付用金具100を梁部12に取付ける際には、固定用金具180が用いられる。
固定用金具180は、
図5に示したような正面形状を持つ、2つで1組とされた金具である。固定用金具180は、
図5における奥行き方向に、後述するボルトの直径の例えば数倍程度の長さを持つ。つまり、固定用金具180は長尺ではない。固定用金具180は、梁部12の左右のどちらか半分の外周に沿わせて用いられるものであり、その上方に、まず内向きにそして
図5における下向きに曲折して形成された係止部181を備えている。また、固定用金具180はその下方に、
図5における下方に伸びる固定部182を備えている。固定部182には、図示を省略の孔が穿たれている。
2つの固定用金具180における上述した係止部181はそれぞれ、シート取付用金具100の2つの固定脚116における係止爪116Aに対して外側上方から係止することができるようになっている。その状態で、2つの固定用金具180の固定部182にそれぞれ穿たれた上述の孔を貫通させたボルト191に対してナット192を螺合させることにより、固定用金具180を介してシート取付用金具100は梁部12に対して固定されるようになっている。各シート取付用金具100は、その長さ方向の複数の適宜の位置で、固定用金具180を用いて梁部12に対して固定される。
結果として、シート取付用金具100は、梁部12の全長にわたるようにして梁部12に対して固定されることになる。なお、通常はそうであるが、梁部12の長さよりもシート取付用金具100が短ければ、1つの梁部12には、その長さ方向で連ねられた複数のシート取付用金具100が固定されることになる。
シート取付用金具100が梁部12に取付けられたとき、シート取付用金具100の外接続板113と内接続板114はいずれも、その断面が水平になるようにする。シート取付用金具100は各梁部12に取付けられるので、隣り合う骨部材10における梁部12に取付けられたシート取付用金具100の互いに相手側のシート取付用金具100に近い側の外係止溝111A同士、及び内係止溝112A同士は、互いに対向することになる。外係止溝111Aは、仮設テントを基準とした場合に、内係止溝112Aより外側に位置することになる。
同様にして、骨部材10の柱部11に対しても、柱部11の全長にわたるようにしてシート取付用金具100が取付けられる。シート取付用金具100が柱部11に取付けられたとき、シート取付用金具100の外接続板113と内接続板114はいずれも、仮設テントの
図1における長手方向と一致するようにする。シート取付用金具100は各柱部11に取付けられるので、隣り合う骨部材10における柱部11に取付けられたシート取付用金具100の互いに相手側のシート取付用金具100に近い側の外係止溝111A同士、及び内係止溝112A同士は、互いに対向することになる。外係止溝111Aは、仮設テントを基準とした場合に、内係止溝112Aより外側に位置することになる。また、柱部11と梁部12との接続部分においては、柱部11と梁部12とがなす角度と同じ角度で、それらにそれぞれ固定されたシート取付用金具100の端部同士が殆ど接触した状態となる。このとき、両シート取付用金具100における外係止溝111A同士と内係止溝112A同士は連続した状態となるが、外係止溝111A同士の間、或いは内係止溝112A同士の間に隙間が生じるようであれば、適当な部材を配することによりその隙間を埋めるようにすることも可能である。
【0021】
このようにして骨部材10に対して取付けられたシート取付用金具100に対して、シート20が取付けられる。
シート20は、隣り合う骨部材10の間に張り渡される。一の骨部材10に取付けられたシート取付用金具100における外係止溝111A及び内係止溝112Aは、隣り合う骨部材10に取付けられたシート取付用金具100における上記一の骨部材10に取付けられたシート取付用金具100に近い側の外係止溝111A及び内係止溝112Aとそれぞれ対向した状態となっている。その対向した外係止溝111A同士を対になる外係止溝111Aとして、それら2つの外係止溝111Aに、それぞれ一枚のシート20の幅方向の両端の肉厚部22を、
図2の手前側に位置する柱部11の下端からか、又は奥側に位置する柱部11の下端から挿入する。そして、シート20の先端を2本の柱部11に取付けられたシート取付用金具100の対向する外係止溝111Aにその幅方向の両端の肉厚部22を案内させながら、当該柱部11の上端まで引き上げる。次いで、2本の梁部12に取付けられたシート取付用金具100の外係止溝111Aと、反対側の柱部11に取付けられたシート取付用金具100の外係止溝111Aとにその肉厚部22を案内させながら、シート20の先端を、上記反対側の柱部11の下端に至るまで移動させる。
これにより、シート20は、隣接する2つの骨部材10の間の一対の外係止溝111Aによってその両端の肉厚部22を係止された状態で、隣接する2つの骨部材10の間に張り渡された状態となる。
かかる作業を、隣接する2つの骨部材10の間のすべてにおいて行う。
また、同様の作業を、隣接する2つの骨部材10の間の一対の内係止溝112Aの間で行う。これにより、シート20は、隣接する2つの骨部材10の間の一対の内係止溝112Aによってその両端の肉厚部22を係止された状態で、隣接する2つの骨部材10の間に張り渡された状態となる。もちろんこの作業は、隣接する2つの骨部材10の間の一対の内係止溝112Aの間のすべてで行われる。
シート20が張り渡された状態を
図6に示す。
【0022】
これにより、
図1における仮設テントの4つの側面のうちの2つの矩形の側面と、2つの矩形の屋根面にはシート20が張り渡される。
他方、
図1における2つの五角形の側面は未だ開放された状態である。2つの五角形の側面には、周知又は公知の手法を用いて適当にシートを張り渡す。必要に応じて当該側面に開閉が可能な扉40を設けて、仮設テントが完成する。
【0023】
シート20の構成について説明する。
図7において上側に位置するシートが、相対的に仮設テントの外側に位置する外シート200で、
図7において下側に位置するシートが、相対的に仮設テントの内側に位置する内シート300である。それらのそれぞれの構成について説明する。
【0024】
まず、外シート200の構成について説明する。
外シート200は、内シート300に比して高い難燃性を有し、二重に配されたシート20を含むシート構造における難燃性を担保する機能を有する。また、外シート200は、透光性を有するのが好ましく、これには限られないがこの実施形態ではそうされている。外シート200は、全体として透明又は半透明とすることができる。無色でも良いが、有色透明又は有色半透明でも構わない。不透明であっても、厚さも考慮して全体として透光性があれば少なくとも足りる。外シート200の透光率は例えば、4%以上で、5%程度或いはそれ以上とするのが好ましい。これには限られないが、この実施形態では、外シート200の透光性は、5%とされている。
この実施形態における外シート200は、これには限られないが、外基材210を有している。外基材210は、これには限られないが、この実施形態では、繊維を織って作られた織布である。外基材210を構成する繊維は例えば、天然繊維(例えば、木綿繊維、麻繊維)、無機繊維(例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維)、再生繊維(例えば、ビスコースレーヨン、キュプラ)、半合成繊維(例えば、トリアセテート繊維)、合成繊維(例えば、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)繊維、ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、ポリオレフィン繊維)などから選択することができる。難燃性を高めるためには、外基材210を構成する織布を構成する繊維を無機繊維とするのが好ましい。また、外シート200の透光性を確保することまで考慮すると、外基材210を構成する繊維はガラス繊維とするのが好ましい。この実施形態における外基材210は、これには限られないが、ガラス繊維を織って構成されている。これには限られないが、この実施形態における外基材210の厚さは、300μm程度である。もっとも、外基材210を構成する織布は、その目の大きさを適切に選択することにより、繊維が不透明なものであっても外シート200が透光性を得られるようにすることが可能である。
【0025】
外シート200は、外シート透明層221、222を備えている。外シート透明層221、222のうち、外シート透明層221は、外基材210の内側に、外シート透明層222は外基材210の外側にそれぞれ位置している。
外シート透明層221、222はいずれも透明であることが好ましいが、半透明でも良い。また、無色で無くてもよく、有色透明、有色半透明であっても良い。それらはいずれも、厚さも考慮して、ある程度の透光性があればよく、不透明であっても構わない。
これには限られないが、この実施形態における外シート透明層221、222はともに、樹脂でできている。樹脂としては、天然ゴム、合成ゴム(例えば、ネオプレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、ハイパロン)、合成樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂)を用いることが出来る。この実施形態では、これには限られないが、外シート透明層221、外シート透明層222ともに、PVC樹脂により構成されている。樹脂は、難燃性、透光性に加え、外シート200が備えるべき他の性質(防水性、機械的強度、耐候性)等を考慮して選択可能である。外シート透明層221、222の厚さも同様に選択することができる。一般に、外シート透明層221の厚さは、例えば150~450μmとすることができ、この実施形態ではこれには限られないが180μmとされている。一般に、外シート透明層222の厚さは、例えば200~400μmとすることができ、この実施形態ではこれには限られないが240μmとされている。外シート透明層221と、外シート透明層222の成分と厚さは、ともに同じでも良いし、同じで無くても良い。
外シート透明層221と、外シート透明層222とはともに、公知の方法(例えば、トッピング、カレンダリング、コーティング、ディッピングなど)によって外基材210上に形成することが出来る。これらの樹脂中には、公知のように、可塑剤、安定剤が含まれても良く、この実施形態ではそうされている。外シート透明層221と、外シート透明層222の少なくとも一方には、外シート200を難燃化するために、防炎性を上げる機能を有する公知の防炎剤が添加されるべきであり、この実施形態ではこれには限られないが、外シート透明層221と、外シート透明層222の双方に防炎剤が配合されている。外側に位置する外シート透明層222には、紫外線反射及び美観向上の観点から、着色用の顔料が含まれていてもよい。また、外シート透明層222には、これには限られないが、紫外線を遮断する紫外線遮断層としての機能を与えることができ、紫外線を吸収する機能を有する公知の紫外線吸収剤が配合されていても良い。これには限られないが、この実施形態では、外シート透明層222には紫外線吸収剤が配合されている。
なお、外シート透明層221、外シート透明層222は、それらのうち少なくとも外シート透明層221が存在すれば足りるが、この実施形態では、それらの双方が存在するものとする。
【0026】
外基材210の外側に位置する外シート透明層222には、上述したように、紫外線吸収剤を加えることが可能である。
また、この実施形態では、外シート透明層222の更に外側に、艶消し機能層240が設けられている。艶消し機能層240は、太陽光の特に可視領域の波長の光の反射を低減する機能を有している。艶消し機能層240は、その機能上、外シート200の最外面に存在する。艶消し機能層240は、外シート200の防汚性を増す機能を兼ね揃えていてもよい。艶消し機能層240は、樹脂に公知のつや消し剤を配合したものである。例えば、艶消し機能層240は、フッ素樹脂とアクリル樹脂とを混合した樹脂やアクリル樹脂と塩ビ樹脂とを混合した樹脂(艶消し+防汚性の機能を有する。)を塗工して形成することができる。この場合の樹脂の塗工量は、固形分で2~5g/m2である。樹脂でできている場合、艶消し機能層240の製法は、外シート透明層221、222の製法と同じものから選択できる。なお、艶消し機能層240は、外シート200の最外面を粗化することによって形成することも可能である。もっとも、粗化による場合には防汚性能を確保するために何らかの工夫を要する可能性がある。
なお、艶消し機能層240は、仮設テントの少なくとも壁部分を構成する外シート200の外面に設けられていれば良い。この実施形態では、仮設テントの壁部分と屋根部分を構成する外シート200の全ての部分に艶消し機能層240が設けられているものとするが、屋根部分に配される外シート200には艶消し機能層240が設けられていなくても構わない。
【0027】
次に、内シート300の構成について説明する。
内シート300は、外シート200に比して高い防音性を有し、二重に配されたシート20を含むシート構造における防音性を担保する機能を有する。また、内シート300は、透光性を有するのが好ましく、これには限られないがこの実施形態ではそうされている。内シート300は、全体として透明又は半透明とすることができる。無色でも良いが、有色透明又は有色半透明でも構わない。不透明であっても、厚さも考慮して全体として透光性があれば少なくとも足りる。内シート300の透光率は、外シート200の透光率よりも高くすることができ、またそうするのが好ましい。内シート300の透光率は例えば、20%以上で、30%程度或いはそれ以上とするのが好ましい。これには限られないが、この実施形態では、内シート300の透光性は、30%とされている。
この実施形態における内シート300は、これには限られないが、内基材310を有している。内基材310は、これには限られないが、この実施形態では、繊維を織って作られた織布である。内基材310を構成する織布を構成する繊維は、内シート300の難燃性を高めるようなものであるのが良く、また、可能であればその透明性を高めるものがよい。内基材310を構成する繊維は例えば、外基材210を構成する繊維として既に例示したものから選択することができる。その中でも、内基材310を構成する織布を構成する繊維としては、合成繊維、中でもポリエステル繊維を選択するのが好ましく、この実施形態ではそうしている。これには限られないが、この実施形態における内基材310の厚さは、300μm程度である。
もっとも、内基材310を構成する織布は、その目の大きさを適切に選択することにより、繊維が不透明なものであっても内シート300が透光性を得られるようにすることが可能である。
【0028】
内シート300は、内シート透明層321、322を備えている。内シート透明層321、322のうち、内シート透明層321は、内基材310の内側に、内シート透明層322は内基材310の外側にそれぞれ位置している。
内シート透明層321、322はいずれも透明であることが好ましいが、半透明でも良い。また、無色で無くてもよく、有色透明、有色半透明であっても良い。それらはいずれも、厚さも考慮して、ある程度の透光性があればよく、不透明であっても構わない。
これには限られないが、この実施形態における内シート透明層321、322はともに、樹脂でできている。内シート透明層321、322を構成する樹脂は、外シート透明層221、222を構成する樹脂として既に例示したものから選択することができる。これには限られないが、この実施形態では、内シート透明層321と、内シート透明層322とを構成する樹脂はともに、PVCである。一般に、内シート透明層321の厚さは、例えば150~450μmとすることができ、この実施形態ではこれには限られないが450μmとされている。一般に、内シート透明層322の厚さは、例えば200~400μmとすることができ、この実施形態ではこれには限られないが380μmとされている。。この実施形態における内シート300は、これには限られないが、防音性を確保する目的で、単位面積あたりの重さが外シート200よりも厚くされている。内基材310の単位面積あたりの重さを外基材210の単位面積あたりの重さより大きくすることによりこれを達成することも可能であるが、内シート透明層321、322の合計の厚さを、外シート透明層221、222の合計の厚さよりも大きくすることでこれを達成するのが簡単である。内シート透明層321と、内シート透明層322の成分と厚さは、ともに同じでも良いし、同じで無くても良い。
内シート透明層321と、内シート透明層322とはともに、外シート透明層221と、外シート透明層222と同様に、公知の方法によって内基材310上に形成することが出来る。これらの樹脂中には、公知のように、可塑剤、安定剤が含まれても良く、この実施形態ではそうされている。内シート透明層321と、内シート透明層322とには、紫外線吸収剤を含めるには及ばない。
なお、内シート透明層321、内シート透明層322は、それらのうちの少なくとも一方が存在すれば足りるが、この実施形態では、それらの双方が存在するものとする。
【0029】
仮設テントが完成した後、降雨があったとする。梁部12を構成する部分の傾斜したシート20に雨水が付着する。
この場合、外側のシート20の外面に雨水が付着する。かかる雨水の一部は、
図8における矢印Wで示したように、外側のシート20の外面を伝わって外係止溝111Aの中に入り込み、外側のシート20の肉厚部22を回り込んで、外側のシート20の内面側に至り、そして、再び外係止溝111Aから漏れ出すことがある。このとき、雨水は外側のシート20の内面側に位置している。かかる雨水は、更に矢印Wで示したように外係止部材111における外係止溝111Aの開口の下方の部分を伝わって垂れる。外係止溝111Aから出た雨水は、そのまま内側のシート20に垂れるか、或いは少なくとも案内突起115にまで及んだら、そこで水滴W1となって内側のシート20に垂れ落ちる。
いずれにせよ、雨水が垂れ落ちる内側のシート20の外側面上における位置は、内係止溝112Aからは離れたところ、言い換えれば内側のシート20の幅方向における中央寄りの位置となる。かかる位置に落ちた雨水は、内側のシート20の最大傾斜線に沿う方向、つまりシート取付用金具100の長さ方向に沿って流れていくことになるから、内係止溝112Aの方向に近づき内係止溝112Aの中に入ることはない。これにより、内係止溝112Aを介して、内側のシート20の更に内側、つまり仮設テントの内部に雨水が侵入することがなくなる。
仮設テントの側面を構成するシート20に対応する部分では以上のような効果は生じないが、少なくともシート取付用金具100によって構成される以上の取付構造が、雨水の仮設テントへの侵入を促進することはない。
【0030】
また、上述の如き二重のシート20を有するシート構造は、外シート200によって難燃性が担保され、また、内シート300によって防音性が担保される。防音性は、外シート200によっても担保されるが、外シート200は防音性については補助的な役割を担う。
また、上述のシート構造は、外シート200の最外面或いはその近くにある紫外線遮断層としても機能する外シート透明層222によって、外シート200と内シート300の双方が紫外線から守られるようになっている。
また、上述のシート構造は、外シート200の最外面にある艶消し機能層240によって、太陽光の反射が抑制されるので、仮設テントの近隣住民に光害を与えることを抑制することができる。艶消し機能層240が防汚性能を備えていれば、防汚の効果も得られる。
また、上述のシート構造は、外シート200と内シート300がともに透光性を有することにより、仮設テント内で工事を行う場合、少なくとも昼間においては、仮設テント内で照明が不要になるか、少なくとも照明で明るさを補う必要性を小さくすることができる。
また、上述のシート構造は、外シート200の外シート透明層222に着色用の顔料を含めることにより、紫外線反射及び美観を向上させることができる。
【0031】
<変形例1>
変形例1による仮設テントについて説明する。変形例1による仮設テントは、上述の実施形態における仮設テントと概ね同じである。
異なるのは、上述の仮設テントにおけるシート構造は、仮設テントの屋根部分と壁部分の双方においてシート20が二重の二重構造であったが、変形例1の仮設テントにおけるシート構造は、屋根部分では二重構造ではあるが、仮設テントの壁部分では一重構造である、という点である。
【0032】
変形例1における仮設テントの屋根部分におけるシート構造は、実施形態と完全に同一でも良い。シート20が二重構造であるので、変形例1において二重のシート20を骨部材10に固定するために用いられるシート取付用金具100の構成も、上述の実施形態と同じで良い。
【0033】
他方、変形例1による仮設テントの壁部分におけるシート構造は、上述のように一重である。したがって、屋根部分のシート20と、壁部分のシート20とは、別部材とするのが現実的であり、変形例1ではこれには限られないがそうしている。また、変形例1において二重のシート20を骨部材10に固定するために用いられる、例えば柱部11に取付けられるシート取付用金具100の構成は、上述の実施形態と異なるものとすることができる。具体的には、変形例1のシート取付用金具100は、実施形態によるシート取付用金具100から、外係止部材111と、外接続板113とを省略したものとすることができる。壁部分を構成するシートを壁シートと称することとすると、この場合、壁シートは、シート取付用金具100の内係止部材112を用いてその幅方向の両端を固定されることになる。もっとも、屋根部分に用いられるものと、壁部分に用いられるシート取付用金具100の双方を上述の実施形態で説明したものと同じものとして、壁シートを固定する場合には、内係止部材112と外係止部材111との一方のみを用い、他方を遊ばせることにより、壁シートを一重とするという方法も採用しうる。
【0034】
まず、壁シート400の構成について
図9を用いて説明する。
壁シート400は、外シート200及び内シート300の機能を、それらを組合せた場合よりは多少は劣るものの、概ね1枚で担保するものとなっている。
壁シート400は、難燃性と防音性をある程度のレベルで備える。壁シート400は、透光性を有するのが好ましく、これには限られないが変形例1ではそうされている。壁シート400は、全体として透明又は半透明とすることができる。無色でも良いが、有色透明又は有色半透明でも構わない。不透明であっても、厚さも考慮して全体として透光性があれば少なくとも足りる。
変形例1における壁シート400は、これには限られないが、壁基材410を有している。壁基材410は、内シート300における外基材310と同じように構成可能である。変形例1における壁基材410は、これには限られないが、ポリエステル繊維を織って構成されている。壁シート基材410は、これには限られないが、その厚さが300μm程度である。
壁シート400は、壁シート透明層421、422を備えている。壁シート透明層421と、壁シート透明層422とはそれぞれ、外シート200における外シート透明層221と、外シート透明層222と、製法まで含めて同じように構成可能である。
壁シート透明層421、422はいずれも透明であることが好ましいが、半透明でも良い。また、無色で無くてもよく、有色透明、有色半透明であっても良い。それらはいずれも、厚さも考慮して、ある程度の透光性があればよく、不透明であっても構わない。
壁シート透明層421と、壁シート透明層422の少なくとも一方には、壁シート400を難燃化するために、防炎性を上げる機能を有する公知の防炎剤が添加されるべきであり、この変形例1ではこれには限られないが、壁シート透明層421と、壁シート透明層422の双方に防炎剤が配合されている。外側に位置する壁シート透明層422には、紫外線反射及び美観向上の観点から、着色用の顔料が含まれていてもよい。また、壁シート透明層422には、外シート透明層222の場合と同様の理由により、紫外線吸収剤が配合されていてもよい。壁シート透明層421、壁シート透明層422の一方を省略可能なのも、外シート透明層221と、外シート透明層222の場合と同じである。
一般に壁シート透明層421の厚さは、例えば150~450μmとすることができ、この実施形態ではこれには限られないが390μmとされている。一般に、壁シート透明層422の厚さは、例えば200~400μmとすることができ、この実施形態ではこれには限られないが350μmとされている。 壁基材410の外側、この変形例1では壁シート透明層422の更に外側には、、艶消し機能層440が設けられている。艶消し機能層440の機能、構成、製法は、外シート200における艶消し機能層240に同じである。
【0035】
変形例1における仮設テントの使用方法は、上述の実施形態の場合と同じである。
【0036】
<変形例2>
変形例2による仮設テントについて説明する。変形例2による仮設テントは、変形例1における仮設テントと概ね同じである。
異なるのは、変形例1の仮設テントにおけるシート構造は、屋根部分では二重構造ではあるが、仮設テントの壁部分では一重構造であったが、変形例2のシート構造は、屋根部分と壁部分の双方で、一重構造である、という点である。
変形例2では、壁部分のみならず、屋根部分においても、変形例1における壁部分のシート構造と同じものを採用する。
なお、屋根部分のシート構造における壁シート(本来なら、屋根シートと呼ぶのが適切であろうが)には、艶消し機能層440を設けなくても良い。
【0037】
変形例2における仮設テントの使用方法は、上述の実施形態の場合と同じである。
【符号の説明】
【0038】
10 骨部材
11 柱部
12 梁部
20 シート
21 シート材
22 肉厚部
23 ロープ
100 シート取付用金具
200 外シート
210 外基材
221 外シート透明層
222 外シート透明層
240 艶消し機能層
300 内シート
310 内基材
321 内シート透明層
322 内シート透明層