(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】換気部材
(51)【国際特許分類】
E04B 1/70 20060101AFI20220805BHJP
E04B 1/64 20060101ALI20220805BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20220805BHJP
E04B 9/02 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
E04B1/70 E
E04B1/64 C
E04B1/94 G
E04B9/02 300
(21)【出願番号】P 2017156718
(22)【出願日】2017-08-15
【審査請求日】2020-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2016185257
(32)【優先日】2016-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】595133736
【氏名又は名称】株式会社トーコー
(73)【特許権者】
【識別番号】595106969
【氏名又は名称】大東建託株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【氏名又は名称】辻田 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】森村 匡弘
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-073829(JP,A)
【文献】実開昭57-178606(JP,U)
【文献】特開2003-027652(JP,A)
【文献】特開2006-144496(JP,A)
【文献】実開平05-042414(JP,U)
【文献】特開2009-243121(JP,A)
【文献】特開2015-059355(JP,A)
【文献】特開平08-218579(JP,A)
【文献】実開昭60-077647(JP,U)
【文献】英国特許出願公開第02124266(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/64,1/70,1/94
E04B 9/00-9/02
E04D 13/152,13/158
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軒天有りの建造物の鼻隠し又は破風板の内方に設置される換気部材であって、
奥行きの方向が幅の方向より長い長孔である換気孔が前記幅方向に複数形成され、前記幅の方向を長辺とする換気孔形成板材と、
前記換気孔形成板材の一方の前記長辺から立ち上げた外方取付板材と、
前記換気孔形成板材の他方の前記長辺か
ら前記外方取付板材に向けて延出させ
、前記換気孔形成板材と平行に形成されている第1延出板材と、
前記第1延出板材の延出端から
前記外方取付板材に向けて斜めに立ち上げた第2延出板材と、
前記第2延出板材の上端から延出させた内方取付板材と、
前記換気孔形成板材の他方の前記長辺から立ち下げた内方水切り板材と
を備え、
前記第1延出板材、前記第2延出板材、及び前記内方取付板材とで囲まれる空間に、前記建造物の軒天板の端部を配置し
、
前記内方取付板材を、前記換気孔の上方に位置させ、
前記内方取付板材の上面に、熱膨張材を配置した
ことを特徴とする換気部材。
【請求項2】
前記鼻隠しの屋内側面に配置される鼻隠し下地又は前記破風板の屋内側面に配置される破風板下地の下端に配置される下地位置決め板材を有し、
前記下地位置決め板材は、前記外方取付板材に対して垂直に配置される底板と、前記外方取付板材に対して水平に配置される側板とによりL型形状を成し、
前記熱膨張材の上方に、不燃断熱材を前記下地位置決め板材の前記底板の上面に配置した
ことを特徴とする
請求項1に記載の換気部材。
【請求項3】
前記下地位置決め板材は、前記外方取付板材と分離して成形され、固定具によって前記外方取付板材に取り付けられる
ことを特徴とする
請求項2に記載の換気部材。
【請求項4】
前記換気孔の上方を、ブリッジ材で覆っている
ことを特徴とする請求項1から
請求項3のいずれかに記載の換気部材。
【請求項5】
軒天有りの建造物の鼻隠し又は破風板の内方に設置される換気部材であって、
奥行きの方向が幅の方向より長い長孔である換気孔が前記幅方向に複数形成され、前記幅の方向を長辺とする換気孔形成板材と、
前記換気孔形成板材の一方の前記長辺から立ち上げた外方取付板材と、
前記換気孔形成板材の他方の前記長辺から前記外方取付板材に向けて延出させ、前記換気孔形成板材と平行に形成されている第1延出板材と、
前記第1延出板材の延出端から前記外方取付板材に向けて斜めに立ち上げた第2延出板材と、
前記第2延出板材の上端から延出させた内方取付板材と、
前記換気孔形成板材の他方の前記長辺から立ち下げた内方水切り板材と
を備え、
前記第1延出板材、前記第2延出板材、及び前記内方取付板材とで囲まれる空間に、前記建造物の軒天板の端部を配置し、
前記外方取付板材は、前記建造物の鼻隠し下地又は破風板下地の下端に対応する位置に、内方へ突出したリブを有する
ことを特徴とす
る換気部材。
【請求項6】
請求項1から
請求項5のいずれかに記載の換気部材の施工方法であって、
前記内方水切り板材の下端を、前記鼻隠し又は前記破風板の下端以上に位置させて施工する
ことを特徴とする換気部材の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の鼻隠し又は破風板の内方に設置される換気部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1では、上下方向に所定間隔を空けて対向するように配置された2つの矩形板状部を有し、各矩形板状部は、複数の凹部を有し、凹部の側面には、換気孔が形成されている軒天井換気用縁材が提案されている。
特許文献2では、換気孔が形成された金属板を備え、換気孔から木造建物の屋根裏に至る通気路を有し、少なくとも通気路と接触する位置にセラミック部材が配置されている軒裏換気用部材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-144497号公報
【文献】特開2006-144496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1及び特許文献2では、軒天板に沿って流れる雨水や外壁材から吹き上げられる雨水が、換気孔が形成された板に伝わりやすく、換気孔から雨水が浸入しやすい。
【0005】
本発明は、特に水平方向から吹き込む雨水が換気孔から浸入することを防止できる換気部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の換気部材は、軒天有りの建造物の鼻隠し又は破風板の内方に設置される換気部材であって、奥行きの方向が幅の方向より長い長孔である換気孔が前記幅方向に複数形成され、前記幅の方向を長辺とする換気孔形成板材と、前記換気孔形成板材の一方の前記長辺から立ち上げた外方取付板材と、前記換気孔形成板材の他方の前記長辺から前記外方取付板材に向けて延出させ、前記換気孔形成板材と平行に形成されている第1延出板材と、前記第1延出板材の延出端から前記外方取付板材に向けて斜めに立ち上げた第2延出板材と、前記第2延出板材の上端から延出させた内方取付板材と、前記換気孔形成板材の他方の前記長辺から立ち下げた内方水切り板材とを備え、前記第1延出板材、前記第2延出板材、及び前記内方取付板材とで囲まれる空間に、前記建造物の軒天板の端部を配置し、前記内方取付板材を、前記換気孔の上方に位置させ、前記内方取付板材の上面に、熱膨張材を配置したことを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の換気部材において、前記鼻隠しの屋内側面に配置される鼻隠し下地又は前記破風板の屋内側面に配置される破風板下地の下端に配置される下地位置決め板材を有し、前記下地位置決め板材は、前記外方取付板材に対して垂直に配置される底板と、前記外方取付板材に対して水平に配置される側板とによりL型形状を成し、前記熱膨張材の上方に、不燃断熱材を前記下地位置決め板材の前記底板の上面に配置したことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載の換気部材において、前記下地位置決め板材は、前記外方取付板材と分離して成形され、固定具によって前記外方取付板材に取り付けられることを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の換気部材において、前記換気孔の上方を、ブリッジ材で覆っていることを特徴とする。
請求項5記載の本発明の換気部材は、軒天有りの建造物の鼻隠し又は破風板の内方に設置される換気部材であって、奥行きの方向が幅の方向より長い長孔である換気孔が前記幅方向に複数形成され、前記幅の方向を長辺とする換気孔形成板材と、前記換気孔形成板材の一方の前記長辺から立ち上げた外方取付板材と、前記換気孔形成板材の他方の前記長辺から前記外方取付板材に向けて延出させ、前記換気孔形成板材と平行に形成されている第1延出板材と、前記第1延出板材の延出端から前記外方取付板材に向けて斜めに立ち上げた第2延出板材と、前記第2延出板材の上端から延出させた内方取付板材と、前記換気孔形成板材の他方の前記長辺から立ち下げた内方水切り板材とを備え、前記第1延出板材、前記第2延出板材、及び前記内方取付板材とで囲まれる空間に、前記建造物の軒天板の端部を配置し、前記外方取付板材は、前記建造物の鼻隠し下地又は破風板下地の下端に対応する位置に、内方へ突出したリブを有することを特徴とする。
請求項6記載の本発明の換気部材の施工方法は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の換気部材の施工方法であって、前記内方水切り板材の下端を、前記鼻隠し又は前記破風板の下端以上に位置させて施工することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の換気部材によれば、換気孔形成板材の内方に内方水切り板材を設けているため、特に水平方向から吹き込む雨水が換気孔から浸入することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施例による換気部材の斜視図及び断面図
【
図2】本発明の第2実施例による換気部材の斜視図及び断面図
【
図3】第1実施例による換気部材を軒天有りの建造物の軒裏に設置した状態を示す断面図
【
図4】第2実施例による換気部材を軒天無しの建造物の軒裏に設置した状態を示す断面図
【
図5】第1実施例による換気部材を軒天有りの建造物のけらばに設置した状態を示す断面図
【
図6】第1実施例による換気部材を軒天有りの建造物のけらばに設置した状態を示す断面図
【
図7】第2実施例による換気部材を軒天無しの建造物のけらばに設置した状態を示す断面図
【
図9】第3実施例による換気部材を軒天有りの建造物の軒裏に設置した状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による換気部材は、奥行きの方向が幅の方向より長い長孔である換気孔が幅方向に複数形成され、幅の方向を長辺とする換気孔形成板材と、換気孔形成板材の一方の長辺から立ち上げた外方取付板材と、換気孔形成板材の他方の長辺から外方取付板材に向けて延出させ、換気孔形成板材と平行に形成されている第1延出板材と、第1延出板材の延出端から外方取付板材に向けて斜めに立ち上げた第2延出板材と、第2延出板材の上端から延出させた内方取付板材と、換気孔形成板材の他方の長辺から立ち下げた内方水切り板材とを備え、第1延出板材、第2延出板材、及び内方取付板材とで囲まれる空間に、建造物の軒天板の端部を配置し、内方取付板材を、換気孔の上方に位置させ、内方取付板材の上面に、熱膨張材を配置したものである。本実施の形態によれば、換気孔形成板材の内方に内方水切り板材を設けているため、特に水平方向から吹き込む雨水が換気孔から浸入することを防止できる。また、熱膨張材を換気孔の上方に位置させることで、換気孔から流れ込む熱風に対して感度良く膨張し、空気通路を塞ぐことができる。また、内方取付板材の上面に熱膨張材を配置することで、膨張した熱膨張材が垂れ下がりにくくなり、より確実に空気通路を塞ぐことができる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による換気部材において、鼻隠しの屋内側面に配置される鼻隠し下地又は破風板の屋内側面に配置される破風板下地の下端に配置される下地位置決め板材を有し、下地位置決め板材は、外方取付板材に対して垂直に配置される底板と、外方取付板材に対して水平に配置される側板とによりL型形状を成し、熱膨張材の上方に、不燃断熱材を下地位置決め板材の底板の上面に配置したものである。本実施の形態によれば、膨張した熱膨張材の熱エネルギーが建造物の鼻隠し下地又は破風下地等に伝わらないように断熱することができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態による換気部材において、下地位置決め板材は、外方取付板材と分離して成形され、固定具によって外方取付板材に取り付けられるものである。本実施の形態によれば、下地位置決め板材と外方取付板材を分離して成形することで成形時の部材形状が単純化し、ロール成形等による換気部材の量産化が容易となる。また、不燃断熱材の下方に熱膨張材を取り付けやすくなる。また、不燃断熱材が配置された下地位置決め板材を、要求される耐火性能が高い場合は外方取付板材に取付け、低い場合は取付けないというように、建築物の要求仕様に応じて不燃断熱材の採否を容易に選択できるため、不要なコスト増加を防止できる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3のいずれかの実施の形態による換気部材において、換気孔の上方を、ブリッジ材で覆っているものである。本実施の形態によれば、換気孔から上方に吹き上げられる雨水を、ブリッジ材で遮ることができる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態による換気部材は、奥行きの方向が幅の方向より長い長孔である換気孔が幅方向に複数形成され、幅の方向を長辺とする換気孔形成板材と、換気孔形成板材の一方の長辺から立ち上げた外方取付板材と、換気孔形成板材の他方の長辺から外方取付板材に向けて延出させ、換気孔形成板材と平行に形成されている第1延出板材と、第1延出板材の延出端から外方取付板材に向けて斜めに立ち上げた第2延出板材と、第2延出板材の上端から延出させた内方取付板材と、換気孔形成板材の他方の長辺から立ち下げた内方水切り板材とを備え、第1延出板材、第2延出板材、及び内方取付板材とで囲まれる空間に、建造物の軒天板の端部を配置し、外方取付板材は、建造物の鼻隠し下地又は破風板下地の下端に対応する位置に、内方へ突出したリブを有するものである。本実施の形態によれば、換気孔形成板材の内方に内方水切り板材を設けているため、特に水平方向から吹き込む雨水が換気孔から浸入することを防止できる。また、鼻隠し下地、破風板下地、又は下地位置決め板材の下端をリブに当接させて位置決めを行うことができる。これにより、施工現場で採寸等による位置決めを行うことなく、鼻隠し下地又は破風板下地の下方の開口寸法を確保することができる。
【0014】
本発明の第6の実施の形態による換気部材の施工方法は、第1から第5の実施の形態のいずれかの換気部材を用い、内方水切り板材の下端を、鼻隠し又は破風板の下端以上に位置させて施工するものである。本実施の形態によれば、特に外方から水平方向に吹き込む雨水を、鼻隠し又は破風板によって下方へ落下させることで、換気孔から雨水が浸入することを防止できると共に、外装材に吹き当たった雨水を、内方水切り板材によって下方へ落下させることで、換気孔から雨水が浸入することを防止できる。
【実施例】
【0015】
以下本発明の第1実施例による換気部材について説明する。
図1は第1実施例による換気部材の斜視図及び断面図である。
図1(a)は同換気部材の斜視図、
図1(b)は
図1(a)の状態での断面図、
図1(c)は
図1(a)とは異なる方向とした斜視図、
図1(d)は
図1(c)の状態での断面図を示している。
【0016】
第1実施例による換気部材10Xは、換気孔形成板材11と、外方取付板材12と、立上板材13と、第1延出板材14と、第2延出板材15と、内方取付板材16と、外方水切り板材17と、内方水切り板材18とを備えている。
換気孔形成板材11には、複数の換気孔11aが形成されている。換気孔11aは、奥行きBの方向が幅Hの方向より長い長孔であり、幅H方向に複数形成されている。換気孔11aの上方は、ブリッジ材11bで覆っている。ブリッジ材11bは、換気孔11aの切り起こしによって形成している。換気孔11aの上方をブリッジ材11bで覆うことで、換気孔11aから上方に吹き上げられる雨水を、ブリッジ材11bで遮ることができる。
【0017】
換気孔形成板材11の一方の長辺(幅Hの方向の辺)には、外方取付板材12を立ち上げるとともに、外方水切り板材17を立ち下げている。外方取付板材12及び外方水切り板材17は、換気孔形成板材11に垂直に形成される。
換気孔形成板材11の他方の長辺(幅Hの方向の辺)には、立上板材13を立ち上げるとともに、内方水切り板材18を立ち下げている。立上板材13及び内方水切り板材18は、換気孔形成板材11に垂直に形成される。
【0018】
立上板材13の上端には、第1延出板材14の一端が接続されている。第1延出板材14は、外方取付板材12に向けて延出させている。第1実施例では、第1延出板材14は換気孔形成板材11に平行に形成している。第1延出板材14の他端(延出端)は、換気孔11aの上方に位置させている。第1延出板材14の他端は、換気孔11aの奥行きBの中心付近に位置させることが好ましい。
第1延出板材14の他端には、第2延出板材15の一端が接続されている。第2延出板材15は、第1延出板材14の他端から立ち上げられており、外方取付板材12に向かい合って形成される。第1実施例では、第2延出板材15は外方取付板材12に平行に形成している。第2延出板材15は、換気孔11aの上方に位置させている。第2延出板材15は、換気孔11aの奥行きBの中心付近に位置させることが好ましい。
第2延出板材15の他端には、内方取付板材16の一端が接続されている。内方取付板材16は、第2延出板材15の他端から延出させており、第1延出板材14に向かい合って形成される。第1実施例では、内方取付板材16は第1延出板材14に平行に形成している。
【0019】
換気孔形成板材11、外方取付板材12、立上板材13、第1延出板材14、第2延出板材15、内方取付板材16、外方水切り板材17、及び内方水切り板材18の幅H方向の寸法はすべて同じである。
第2延出板材15には、幅H方向に熱膨張材20を配置している。熱膨張材20は、外方取付板材12に対向する面に取り付けられ、熱膨張した状態では、外方取付板材12と第2延出板材15との間の空間を閉塞する。熱膨張材20を換気孔11aの上方に位置させることで、換気孔11aから流れ込む熱風に対して感度良く膨張し、空気通路を塞ぐことができる。
内方取付板材16には、幅H方向に防水パッキン30を配置している。第1実施例では、熱膨張材20の幅H方向の寸法は第2延出板材15と同じとし、防水パッキン30の幅H方向の寸法は内方取付板材16と同じとしている。
【0020】
本発明の第2実施例による換気部材について説明する。
図2は第2実施例による換気部材の斜視図及び断面図である。
図2(a)は同換気部材の斜視図、
図2(b)は
図2(a)の状態での断面図、
図2(c)は
図2(a)とは異なる方向とした斜視図、
図2(d)は
図2(c)の状態での断面図を示している。なお、第1実施例と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0021】
第2実施例による換気部材10Yは、第1実施例による換気部材10Xにおける内方取付板材16の延出端側を、立上板材13に対向するように折り曲げることで、第1内方取付板材16aと、第2内方取付板材16bとを形成している。
第1内方取付板材16aは、第1延出板材14に向かい合って形成され、第2内方取付板材16bは、立上板材13及び内方水切り板材18に向かい合って形成される。第2実施例では、第1内方取付板材16aは第1延出板材14に平行に形成し、第2内方取付板材16bは立上板材13及び内方水切り板材18に平行に形成している。
防水パッキン30は、第1内方取付板材16aと第2内方取付板材16bとの内方であり、第1内方取付板材16aと第2内方取付板材16bとに接する位置に配置している。
【0022】
図3は、第1実施例による換気部材を軒天有りの建造物の軒裏に設置した状態を示す断面図である。
図3に示す建造物は、柱51の上端に軒桁52を設け、軒桁52の上部には垂木53を傾斜して設けている。垂木53の上部には野地板54を設け、野地板54の上面には屋根材55が敷設されている。垂木53の端面には鼻隠し下地56を設けている。鼻隠し下地56の屋外側面には、鼻隠し57が配置される。柱51には外壁下地58を設けている。外壁下地58の屋外側面には、外装材59が配置される。野縁60には軒天板61が取り付けられ、立上板材13と外装材59との間には空間70が形成されている。
【0023】
図3に示す建造物では、第1実施例による換気部材10Xを用いる。
外方取付板材12は、鼻隠し57の内面に配置し、鼻隠し下地56にビス又は釘等の固定具62によって固定する。
第1延出板材14、第2延出板材15、及び内方取付板材16とで囲まれる空間に、建造物の軒天板61の端部を配置し、内方取付板材16を野縁60にビス又は釘等の固定具63によって固定する。
【0024】
図3に示すような建造物が軒を有する場合には、換気部材10Xは、立上板材13及び内方水切り板材18と建造物の外装材59との間に空間70を有し、更に内方水切り板材18に加えて立上板材13を備えているために、外装材59に吹き当たった後に軒天板61下面に沿って軒先方向に吹き戻される雨水を、立上板材13と建造物の外装材59との間に形成した空間70によって縁切りし、内方水切り板材18によって下方に落下させることで、換気孔11aから雨水が浸入することを防止できる。
【0025】
図4は、第2実施例による換気部材を軒天無しの建造物の軒裏に設置した状態を示す断面図である。なお、
図3と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
図4に示す建造物では、第2実施例による換気部材10Yを用いる。
立上板材13、第1延出板材14、第2延出板材15、及び内方取付板材16とで囲まれる空間に、建造物の外装材59の端部を配置し、第2内方取付板材16bを外壁下地58にビス又は釘等の固定具64によって固定する。立上板材13と外装材59との間には空間70が形成されている。
【0026】
図4に示すような建造物が軒天を有しない場合には、換気部材10Yは、立上板材13、第1延出板材14、第2延出板材15、及び内方取付板材16とで囲まれる空間に、建造物の外装材59の端部を配置し、立上板材13及び内方水切り板材18と建造物の外装材59との間に空間70を有し、更に内方水切り板材18に加えて立上板材13を備えているために、外装材59に吹き当たった雨水を、立上板材13と建造物の外装材59との間に形成した空間70によって縁切りし、内方水切り板材18によって下方に落下させることで、換気孔11aから雨水が浸入することを防止できる。
【0027】
図5及び
図6は、第1実施例による換気部材を軒天有りの建造物のけらばに設置した状態を示す断面図である。
図5及び
図6に示す建造物は、垂木53の上部には野地板54を設け、野地板54の上面には屋根スレート65が敷設されている。野地板54の端部には登りよど66を設け、登りよど66を覆うようにけらば水切67を設けている。
垂木53の端面には破風板下地68を設けている。破風板下地68の屋外側面には、破風板69が配置される。野縁60に軒天井61が取り付けられ、立上板材13及び内方水切り板材18と外装材(図示を省略)との間には空間70が形成されている。
【0028】
図5及び
図6に示す建造物では、第1実施例による換気部材10Xを用いる。
外方取付板材12は、破風板69の内面に配置する。
第1延出板材14、第2延出板材15、及び内方取付板材16とで囲まれる空間に、建造物の軒天井61の端部を配置し、内方取付板材16を野縁60にビス又は釘等の固定具72によって固定する。
図5では、外方取付板材12は破風板下地68にビス又は釘等の固定具71によって固定している。
図6では、外方取付板材12は野縁60にビス又は釘等の固定具71によって固定している。
【0029】
図5及び
図6に示すような建造物が軒を有する場合には、換気部材10Xは、立上板材13及び内方水切り板材18と建造物の外装材59との間に空間70を有し、更に内方水切り板材18に加えて立上板材13を備えているために、外装材59に吹き当たった後に軒天井61下面に沿って軒先方向に吹き戻される雨水を、立上板材13と建造物の外装材59との間に形成した空間70によって縁切りし、内方水切り板材18によって下方に落下させることで、換気孔11aから雨水が浸入することを防止できる。
【0030】
図7は、第2実施例による換気部材を軒天無しの建造物のけらばに設置した状態を示す断面図である。なお、
図4から
図6と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
図7に示す建造物では、第2実施例による換気部材10Yを用いる。
立上板材13、第1延出板材14、第2延出板材15、及び内方取付板材16とで囲まれる空間に、建造物の外装材59の端部を配置し、第2内方取付板材16bを外壁下地58にビス又は釘等の固定具73によって固定する。立上板材13及び内方水切り板材18と外装材59との間には空間70が形成されている。
図7に示すような建造物が軒天を有しない場合には、換気部材10Yは、立上板材13、第1延出板材14、第2延出板材15、及び内方取付板材16とで囲まれる空間に、建造物の外装材59の端部を配置し、立上板材13及び内方水切り板材18と建造物の外装材59との間に空間70を有し、更に内方水切り板材18に加えて立上板材13を備えているために、外装材59に吹き当たった雨水を、立上板材13と建造物の外装材59との間に形成した空間70によって縁切りし、内方水切り板材18によって下方に落下させることで、換気孔11aから雨水が浸入することを防止できる。
【0031】
本発明の第3実施例による換気部材について説明する。
図8は第3実施例による換気部材の断面図である。
なお、第1実施例及び第2実施例と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0032】
第3実施例による換気部材10Zは、第1延出板材14が、換気孔形成板材11の他方の長辺から外方取付板材12に向けて延出している。第1延出板材14は、換気孔形成板材11と平行に形成されており、第1延出板材14の下面は、換気孔形成板材11の上面に接している。第2延出板材15は、第1延出板材14の他端(延出端)から外方取付板材12に向けて斜めに立ち上げられている。第1延出板材14と第2延出板材15の成す角αは、鈍角である。
熱膨張材20は、内方取付板材16の上面に配置されている。内方取付板材16の上面に熱膨張材20を配置することにより、熱膨張材20が膨張したときに垂れ下がりにくくなり、より確実に空気通路を塞ぐことができる。熱膨張材20は換気孔11aの上方に位置させることが好ましい。これにより、換気孔11aから流れ込む熱風に対して感度良く膨張し、空気通路を塞ぐことができる。
また、換気部材10Zは、鼻隠し下地56又は破風板下地68の下端位置の目安となる下地位置決め板材90を有する。下地位置決め板材90は、外方取付板材12に対して垂直に配置される底板91と、外方取付板材12に対して水平に配置される 側板92とによりL型形状を成している。側板92は、底板91の長辺の片側にのみ設けられている。鼻隠し下地56又は破風板下地68の下端を下地位置決め板材90に配置することで、鼻隠し下地56又は破風板下地68の位置決めを行うことができる。これにより、施工現場で採寸等による位置決めを行うことなく鼻隠し下地56又は破風板下地68の下方の開口寸法を確保することができる。
下地位置決め板材90の底板91の上面には、不燃断熱材80が設けられている。よって、不燃断熱材80の上面に鼻隠し下地56又は破風板下地68の下面が当接させることで、不燃断熱材80を鼻隠し下地56又は破風板下地68の下方に確実に配置できる。
また、外方取付板材12のうち、鼻隠し下地56又は破風板下地68の下端に対応する位置には、内方へ突出したリブ12aが設けられている。リブ12aは、外方取付板材12の強度を補強すると共に、鼻隠し下地56又は破風板下地68の下端位置決めの目安となる。
【0033】
第3実施例において下地位置決め板材90は、外方取付板材12と分離して成形され、外方取付板材12に後付けできるようになっている。
図8(a)は、下地位置決め板材90を外方取付板材12に取り付けた後の状態を示し、
図8(b)は、下地位置決め板材90を外方取付板材12に取り付ける前の状態を示している。
外方取付板材12には小孔12bが形成され、側板92には小孔92aが形成されている。外方取付板材12に側板92をあてがって小孔12bと小孔92aの位置を合わせ、ビス又は釘等の固定具74で留めることで、下地位置決め板材90を外方取付板材12に取り付けることができる。
下地位置決め板材90は、外方取付板材12と一体的に形成することもできるが、本実施例のように外方取付板材12とは別ピースとして成形することで、成形時における換気部材10Zの個々の部材の形状を単純化でき、ロール成形等による換気部材10Zの量産化が容易になるなど生産性が向上する。また、製造過程、輸送又は梱包において同一部材を重ねた場合の所要スペースを小さくすることができる。また、熱膨張材20を取り付けた後に下地位置決め板材90を外方取付板材12に取り付けることができるため、熱膨張材20を取り付けやすくなる。また、熱膨張材20又は不燃断熱材80の少なくとも一方を、要求される耐火性能が高い場合は用い、低い場合は用いないというように、建築物の要求仕様に応じて熱膨張材20及び不燃断熱材80の採否を選択できるため、不要なコスト増加を防止できる。
【0034】
外方取付板材12には、建造物の鼻隠し下地56又は破風板下地68の下端に対応する位置にリブ12aが設けられているため、下地位置決め板材90を設ける場合は、下地位置決め板材90をリブ12aに当接させることで、鼻隠し下地56又は破風板下地68の位置決めを行うことができる。これにより、施工現場で採寸等による位置決めを行うことなく、鼻隠し下地56又は破風板下地68の下方の開口寸法を確保することができる。
なお、下地位置決め板材90を設けない場合には、鼻隠し下地56又は破風板下地68の下端を直接リブ12aに当接させることで、位置決めを行うことができる。
【0035】
図9は第3実施例による換気部材を軒天有りの建造物の軒裏に設置した状態を示す断面図である。なお、
図3及び
図4と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
図9に示す建造物では、第3実施例による換気部材10Zを用いる。
第1延出板材14、第2延出板材15、及び内方取付板材16とで囲まれる空間に、建造物の軒天板61の端部を配置し、内方取付板材16を野縁60にビス又は釘等の固定具63、65によって固定する。固定具65は、軒天板61の留め付けも兼ねている。野縁60に軒天板61を固定具65によって内方取付板材16と共に留め付けることで、軒天板61がより一層強固に固定され、火災時に軒天板61が焼け落ちにくくなるなど、耐火性能が向上する。
また、換気部材10Zの第2延出板材15は外方取付板材12に対して傾斜しているため、第2延出板材15が外方取付板材12と平行な場合よりも、換気孔11aから小屋裏内に至る通気経路の幅が絞られている。これにより、換気孔11aから小屋裏内に侵入する熱気を低減できる。また、軒天板61は耐火性能の等級によって厚みが異なるが、第2延出板材15を傾斜させることで、様々な厚みの軒天板61を第2延出板材15で支持することができる。
図9(a)は、
図9(b)に示す軒天板61よりも厚い軒天板61を用いた場合を示している。なお、
図9(b)では、
図9(a)の軒天板61よりも薄い軒天板61と第1延出板材14との間をシーリング剤100で塞いでいる。
【0036】
熱膨張材20の上方には、不燃断熱材80が配置されている。不燃断熱材80の上方には、建造物の鼻隠し下地56が配置される。鼻隠し下地56と熱膨張材20の間に不燃断熱材80を配置することで、膨張した熱膨張材20の熱エネルギーが鼻隠し下地56に伝わらないように断熱することができる。
【0037】
なお、本発明による換気部材10X、10Y、10Zは、内方水切り板材18の下端を、鼻隠し57又は破風板69の下端以上に位置させて施工することが好ましい。内方水切り板材18の下端を、鼻隠し57又は破風板69の下端と同等かそれよりも上方に位置させて施工することで、特に外方から水平方向に吹き込む雨水を、鼻隠し57又は破風板69によって下方へ落下させることができ、換気孔11aから雨水が浸入することを防止できると共に、外装材59に吹き当たった雨水を、内方水切り板材18によって下方へ落下させることで、換気孔11aから雨水が浸入することを防止できる。
【0038】
本発明によれば、換気孔形成板材11の内方に内方水切り板材18を設けているため、特に水平方向から吹き込む雨水が換気孔11aから浸入することを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、軒裏やけらばに取り付ける換気部材として適している。
【符号の説明】
【0040】
10X、10Y、10Z 換気部材
11 換気孔形成板材
11a 換気孔
11b ブリッジ材
12 外方取付板材
12a リブ
12b 小孔
13 立上板材
14 第1延出板材
15 第2延出板材
16 内方取付板材
17 外方水切り板材
18 内方水切り板材
20 熱膨張材
30 防水パッキン
51 柱
52 軒桁
53 垂木
54 野地板
55 屋根材
56 鼻隠し下地
57 鼻隠し
58 外壁下地
59 外装材
60 野縁
61 軒天板
62、63、64、65 ビス又は釘(固定具)
65 屋根スレート
66 登りよど
67 けらば水切
68 破風板下地
69 破風板
70 空間
71、72、73、74 ビス又は釘(固定具)
80 不燃断熱材
90 下地位置決め板材
91 底板
92 側板
92a 小孔
100 シーリング剤