(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】法面工事用の作業足場及びその組立方法
(51)【国際特許分類】
E04G 1/15 20060101AFI20220805BHJP
E04G 1/24 20060101ALI20220805BHJP
E04G 5/14 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
E04G1/15
E04G1/24 302F
E04G5/14 302A
(21)【出願番号】P 2017225501
(22)【出願日】2017-11-24
【審査請求日】2020-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000227146
【氏名又は名称】日綜産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【氏名又は名称】石川 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【氏名又は名称】天野 泉
(73)【特許権者】
【識別番号】518019743
【氏名又は名称】株式会社鉞組
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】鉞 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 暁伸
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-176951(JP,A)
【文献】特開2011-038352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の前側支柱と、
上記前側支柱より長い複数の後側支柱と、
上記前側支柱間に架設した前側大引きフレームと、
上記後側支柱間に架設した後側大引きフレームと、
上記前側大引きフレームと上記後側大引きフレームとの間に架設され
て支持されると共にトラスで補強された複数の根太フレームと、
上記根太フレーム上に敷設した作業床と、
左右両端に配置された上記前側支柱に起立させた前側手摺支柱と、
上記各後側支柱に起立させた後側手摺支柱と、
左右両端に配置された上記前側手摺支柱と左右両端に配置された上記後側手摺支柱との間にそれぞれ着脱自在に架設した左右一対の側部手摺と、
上記後側手摺支柱間に架設した背部手摺とを備え、
上記前側大引きフレームと上記後側大引きフレームは、それぞれ、
上弦材と、
下弦材と、
上記上弦材と上記下弦材との間に架設したハの字状の補強材及び垂直な補強材と
、
上記上弦材と上記下弦材の両端にそれぞれ設けた楔挿入用のブラケットとで構成され、
上記前側支柱は上記前側大引
きフレーム側の上記ブラケットを介して上記前側大引
きフレームに結合され、
上記後側支柱は上記後側大引
きフレーム側の上記ブラケットを介して上記後側大引
きフレームに結合される
ことを特徴とする法面工事用の作業足場。
【請求項2】
複数の前側支柱と、
上記前側支柱より長い複数の後側支柱と、
上記前側支柱間に架設した前側大引きフレームと、
上記後側支柱間に架設した後側大引きフレームと、
上記前側大引きフレームと上記後側大引きフレームとの間に架設されると共にトラスで補強された複数の根太フレームと、
上記根太フレーム上に敷設した作業床とを有する複数の作業足場ユニットを備え、
複数の上記作業足場ユニットは階段状に重ねて配置されており、
少なくとも最上段に配置される上記作業足場ユニットは、
左右両端に配置された上記前側支柱に起立させた前側手摺支柱と、
上記各後側支柱に起立させた後側手摺支柱と、
左右両端に配置された上記前側手摺支柱と左右両端に配置された上記後側手摺支柱との間にそれぞれ着脱自在に架設した左右一対の側部手摺と、
上記後側手摺支柱間に架設した背部手摺とを有する
ことを特徴とする法面工事用の作業足場。
【請求項3】
上記前側大引きフレームと上記後側大引きフレームは、それぞれ、上記上弦材の上部に起立した筒状のソケットを有し、
上記根太フレームは、ビーム梁と、上記ビーム梁の下部に結合した上記トラスからなり、
上記トラスは、柱状の下弦材と、上記ビーム梁と上記下弦材との間に取付けた複数のV字状の束材とで構成され、
上記ビーム梁は、後端に垂設した突起を介して上記後側大引
きフレーム側の上記ソケットに着脱自在に嵌合され、また先端に取付けた筒状の取付け部材を介して上記前側大引きフレーム側の上記ソケットに着脱自在に嵌合されている
ことを特徴とする請求項1に記載の法面工事用の作業足場。
【請求項4】
上記作業床は、上記ビーム梁上に締結部材を介して結合して並べた複数のパネルからなり、
上記締結部材は、隣同士の上記パネル間に下方に向けて差し込むコ字状の支持板と、上記支持板の上端に互いに反対方向に向けて取付けた水平な一対の押え片と、上記支持板に垂設した一対の楔取付け片と、上記楔取付け片に着脱自在に差し込む楔とで構成され、
上記ビーム梁上に並べた上記パネルに上記押え片を当接させながら上記支持板を上記ビーム梁上にかぶせ、上記楔の上面と上記支持板の下面とで上記ビーム梁を挟持する
ことを特徴とする請求項3に記載の法面工事用の作業足場。
【請求項5】
上記前側手摺支柱と上記後側手摺支柱とに上記作業床の左右側部と背部でそれぞれ起立する巾木を取付けている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の法面工事用の作業足場。
【請求項6】
上記前側支柱と上記後側支柱との間に一つ又は複数のブレースを架設し、上記各後側支柱間に後側ブレースを架設している
ことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の法面工事用の作業足場。
【請求項7】
複数の前側支柱と、
上記前側支柱より長い複数の後側支柱と、
上記前側支柱間に架設した前側大引きフレームと、
上記後側支柱間に架設される後側大引きフレームと、
上記前側大引きフレームと上記後側大引きフレームとの間に架設されると共にトラスで補強された複数の根太フレームと、
上記根太フレーム上に敷設される作業床とを備えてユニット化された組み立て式の作業足場を複数用意し、
地上に法面に対向する最下段の上記作業足場を起立させる工程と、
最下段の上記作業足場上で二段目の上記作業足場を組み立てて二段目の上記作業足場を法面の下方の工事位置に対向させながら最下段の上記作業足場上にスライド自在に起立させる工程と、
同様にして更に上方の法面の工事位置に対応して三段目以降の上方の上記作業足場を順次下段側の上記作業足場上に階段状に連続して起立させる工程と、
上方の法面の工事位置の工事終了後から下方の法面の工事位置の工事に順次切り換える際には上段の上記作業足場を解体し、次段の上記作業足場をそのまま使用する工程とからなる
ことを特徴とする法面工事用の作業足場の組立方法。
【請求項8】
最下段の上記作業足場の上記前側支柱と上記後側支柱とを直接又はジャッキベースを介して地上に起立させ、
二段目以降の上記作業足場の上記前側支柱を直接又はジャッキベースを介して法面に形成した水平面上に起立させ、
上記後側支柱を下側の上記作業足場の上記作業床上に直接又はジャッキベースを介して起立させている
ことを特徴とする請求項7に記載の法面工事用の作業足場の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面工事用の作業足場及びその組立方法に関し、特に傾斜地の斜面部分である法面の補強工事や復旧工事に使用する作業足場と、この作業足場を法面に沿って組み付ける作業足場の組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、山や丘の傾斜地、或いは道路脇の傾斜地の斜面部分である法面にはコンクリート等によって補強して土砂の崩落を防止する補強工事、或いは破損した部分の復旧工事を行う場合、この法面に沿って足場を組み立て、この足場上で上記の工事を行っている。
上記の足場では、例えば、多数の単管支柱と足場板とをクランプ等で結合したパイプ構造物の櫓状足場を利用したものが知られているが、このようなパイプ構造物の足場では、多数の単管支柱やクランプ等の資材や部品が必要で、その組立、取付け作業や解体作業が面倒であり、部品点数が多く経済性にも不利である。
そこで、資材や部品を削減し、組立時や解体時の作業性の向上を図れる特許文献1に示すような法面工事用の作業床構築システムが開発されている。
この法面工事用の作業床構築システムは、法面に対向して多数の支柱を縦横に継ぎ足して起立させ、次いで隣同士の支柱間に床付き布材を架設して櫓状の足場を構築し、更にこの足場の上端に法面の工事個所に対応してトラス大引きを架設し、またこのトラス大引き上にトラスで補強された複数のユニット化された作業床パネルを取付けたものである。
そして、この連続したパネルを作業路として利用すると共にパネルの背部に手摺と巾木を配置し、この状態で作業路上において作業者が重機を操作して所定の工事を行うものである。
又、法面の工事位置を下方に変えて作業路を下方に盛替える場合は、下段の床付き布材上で上記の手摺と、巾木と、トラス大引きと、作業床パネルとを取外し、更に上部の支柱の抜き取り作業を行う。
次いで、更に下段の床付き布材上で再度法面の工事位置に対応して上記と同じ手順で作業路と手摺と巾木とを取付けるものである。
この法面工事用の作業床構築システムでは、多数の支柱を継ぎ足した後で床付き布材を架設して足場を組み立て、更に足場の上端にユニット化された作業床パネルによる作業路を取付けるだけであるから上記単管足場やクランプで組み立てた足場に比べて資材やクランプ等の部品点数が少なく、足場の構築作業、解体作業の向上が図れるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1に示す作業床構築システムでは機能上欠陥があるわけでは無いが、依然として次のような不具合の改善が望まれている。すなわち、法面の工事位置に対応して足場を構築する場合、法面に沿って多数の支柱を縦横に起立しているので依然として支柱自体の本数や布材の本数が多くその搬送、格納が困難であるばかりでなく多数の支柱同士の継ぎ足し作業が面倒で困難であり、経済性、作業性に不利である。更に、法面の工事を法面の上方工事位置から順次下方の工事位置に移行する場合、工事位置に対応して作業路を下方へ順次盛替える必要があるが、この場合には下段の床付き布材上で手摺、巾木、トラス大引き、作業床パネル、及び上段の支柱等の撤去等の操作を行い、次いで、下方の工事位置に対応して再度下段の布材上で作業路や手摺、巾木等を取付ける操作が必要であるから上方から下方への組み立て、盛替え作業が面倒である。同様に下方から上方に組み立て、盛替える作業の場合も作業が面倒である。
【0005】
又、上記の作業床構築システムは縦横に継ぎ足した多数の支柱で櫓状の足場を構築していることが必要であるからこの櫓状の足場を構築しない限り作業路を単独で使用できない不具合もある。そこで、本発明の目的は、単一でも使用可能な法面工事用の作業足場を提供すると共に法面の工事位置に対応して簡単且つスムースに組み付け、解体又は盛替えが容易であり、作業性や経済性に優れた法面工事用の作業足場の組立方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の法面工事用の作業足場は、複数の前側支柱と、上記前側支柱より長い複数の後側支柱と、上記前側支柱間に架設した前側大引きフレームと、上記後側支柱間に架設した後側大引きフレームと、上記前側大引きフレームと上記後側大引きフレームとの間に架設されて支持されると共にトラスで補強された複数の根太フレームと、上記根太フレーム上に敷設した作業床と、左右両端に配置された上記前側支柱に起立させた前側手摺支柱と、上記各後側支柱に起立させた後側手摺支柱と、左右両端に配置された上記前側手摺支柱と左右両端に配置された上記後側手摺支柱との間にそれぞれ着脱自在に架設した左右一対の側部手摺と、上記後側手摺支柱間に架設した背部手摺とを備え、上記前側大引きフレームと上記後側大引きフレームは、それぞれ、上弦材と、下弦材と、上記上弦材と上記下弦材との間に架設したハの字状の補強材及び垂直な補強材と、上記上弦材と上記下弦材の両端にそれぞれ設けた楔挿入用のブラケットとで構成され、上記前側支柱は上記前側大引きフレーム側の上記ブラケットを介して上記前側大引きフレームに結合され、上記後側支柱は上記後側大引きフレーム側の上記ブラケットを介して上記後側大引きフレームに結合されることを特徴とする。また、本発明の他の法面工事用の作業足場は、複数の前側支柱と、上記前側支柱より長い複数の後側支柱と、上記前側支柱間に架設した前側大引きフレームと、上記後側支柱間に架設した後側大引きフレームと、上記前側大引きフレームと上記後側大引きフレームとの間に架設されると共にトラスで補強された複数の根太フレームと、上記根太フレーム上に敷設した作業床とを有する複数の作業足場ユニットを備え、複数の上記作業足場ユニットは階段状に重ねて配置されており、少なくとも最上段に配置される上記作業足場ユニットは、左右両端に配置された上記前側支柱に起立させた前側手摺支柱と、上記各後側支柱に起立させた後側手摺支柱と、左右両端に配置された上記前側手摺支柱と左右両端に配置された上記後側手摺支柱との間にそれぞれ着脱自在に架設した左右一対の側部手摺と、上記後側手摺支柱間に架設した背部手摺とを有することを特徴とする。同じく、法面工事用の作業足場の組立方法は、複数の前側支柱と、上記前側支柱より長い複数の後側支柱と、上記前側支柱間に架設した前側大引きフレームと、上記後側支柱間に架設される後側大引きフレームと、上記前側大引きフレームと上記後側大引きフレームとの間に架設されると共にトラスで補強された複数の根太フレームと、上記根太フレーム上に敷設される作業床とを備えてユニット化された組み立て式の作業足場を複数用意し、地上に法面に対向して最下段の上記作業足場を起立させる工程と、最下段の上記作業足場上で二段目の上記作業足場を組み立てて二段目の上記作業足場を法面の下方の工事位置に対向させながら最下段の上記作業足場上にスライド自在に起立させる工程と、同様にして更に上方の法面の工事位置に対応して三段目以降の上方の上記作業足場を順次下段側の上記作業足場上に階段状に連続して起立させる工程と、上方の法面の工事位置の工事終了後から下方の法面の工事位置の工事に順次切り換える際に上段の上記作業足場を解体し、次段の上記作業足場をそのまま使用する工程とからなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る法面工事用の作業足場は、複数の前側支柱と、この前側支柱より長い複数の後側支柱と、前側大引きフレームと、後側大引きフレームと、前側大引きフレームと後側大引きフレームとの間に架設されると共にトラスで補強された根太フレームと、根太フレーム上に敷設した作業床と、左右一対の側部手摺と、背部手摺と、でユニット化されているものであるから、単一の作業足場として組立でき、法面の工事位置が低い場合はこの工事位置に対応して単独で起立して使用できる。
【0008】
また、法面の工事位置が傾斜面に沿って長くて広い場合は、下側の作業足場上に上側の作業足場を階段状に重ねて複数起立させ、しかも短い前側支柱を法面上に起立させることで作業床を水平に保持できる。この際、作業床はトラスで補強されているから、作業床を支える余分な支柱等の支え部材が不要となる。本発明の法面工事用の作業足場の組立方法によれば、単一のユニット化された作業足場を法面の工事位置に対応して複数階段状に起立するから多数の支柱を縦横に継ぎ足して櫓状の足場を構築する必要が無く、足場の組立作業が容易であり、スピードアップを図れる。さらに多数の支柱やクランプ等の資材や部品を使用しなくても作業足場の構築ができるから部品点数が少なく、資材や部品の省力化が図れ、作業性、経済性の向上を図れる。また、上方の法面の工事位置から下方の工事位置に工事を切り換える場合は上方の工事に使用していた上方の作業足場を撤去するだけで直ちに下方の作業足場を下方の工事用に使用できるので足場の切り替え作業が容易で、作業性の向上を図れ、スピードアップも図れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(A)は三組の作業足場を法面に対向して起立
させた状態の一部切欠き平面図であり、(B)は
法面に対向して起立させた三組の作業足場の側面図である。
【
図2】三組の作業足場を法面に対向して起立
させた状態の一部切欠き斜視図である。
【
図4】(A)は根太フレームの拡大平面図であり、(B)は
根太フレームの側面図である。
【
図5】(A)は前側大引きフレームの平面図であり、(B)は
前側大引きフレームの正面図である。
【
図6】(A)はビーム梁の先端に設けた
取付け部材の拡大縦断正面図であり、(B)は
取付け部材の側面図である。
【
図7】(A)は補助ジャッキの拡大平面図であり、(B)は
補助ジャッキの側面図である。
【
図8】(A)は締結部材の拡大平面図であり、(B)は
締結部材の正面図であり、(C)は
締結部材の左側面図であり、(D)は
締結部材の右側面図である。
【
図9】(A)は後側
手摺支柱の正面図であり、(B)は
後側手摺支柱の側面図であり、(C)は
後側手摺支柱の底面図である。
【
図10】(A)はブレースの拡大平面図であり、(B)は
ブレースの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、傾斜地の斜面部分である法面の補強工事や復旧工事に使用するのに適する作業足場と、この作業足場を法面に沿って組み付ける作業足場の組立方法に関するものである。
【0011】
本発明の作業足場Sは単独でも使用可能であるが、複数階段状に起立させることにより縦方向に長い法面の工事の使用に適するものである。単一の作業足場Sは
図1から
図2に示すように、複数の前側支柱1と、前側支柱1より長い複数の後側支柱2と、前側支柱1間に架設した水平な前側大引きフレーム3と、後側支柱2間に架設した水平な後側大引きフレーム4と、前側大引きフレーム3と後側大引きフレーム4との間に架設されると共にトラス
6で補強された複数の根太フレーム5と、根太フレーム5上に敷設した作業床8と、左右両端
に配置された前側支柱1、1に起立させた前側手摺支柱10、10と、各後側支柱2に起立させた後側手摺支柱11と、左右の前側手摺支柱10、10と左右両端
に配置された後側手摺支柱11、11との間にそれぞれ着脱自在に架設した左右一対の側部手摺12、12と、後側手摺支柱11、11間に架設した背部手摺13とからなるものである。
【0012】
この単一の作業足場Sは
図1(B)に示すように、傾斜する法面Hの縦方向の工事位置の面積長さに対応して複数階段状に起立して使用するのに適するが、縦方向の工事
位置が地上Bに近い低い位置の場合は最下段の作業足場Sのみ
を単独で使用することも可能である。
【0013】
また、法面Hの工事
箇所が横方向に広い場合は前側大引きフレーム3と後側大引きフレーム4を水平方向に長く延ばし、横方向に長い作業床8を使用すればよく、或いは複数の作業足場Sを横方向に並べて使用しても対応できる。前側支柱1と後側支柱2とは下端にジャッキベースJを介して起立するが、前側支柱1
を後側支柱2より短くして後側支柱2の起立位置より高い位置である法面Hに成形した水平面Ha(
図7参照)に起立できるようにしている。従って、前側支柱1の長さを他の支柱を継ぎ足して後側支柱2の長さと同じにすれば水平な地上等に水平に起立できるので、法面の工事用以外の単独の普通の作業足場として転用することが可能である。
図1、
図2は法面Hの工事位置に対応して
作業足場Sを階段状に三段組立てた状態を示しているが、工事面積に応じて一つ又は複数
の作業足場Sを起立するものである。
図1、
図2に示す作業足場Sの組立は、先ず地上Bに最下段の作業足場Sを法面Hの最下段の工事位置に対応して直接又はジャッキベースJを介して起立
させる。次に、この最下段の作業足場S上で二段目の作業足場Sを組立て、次いで後側支柱2を最下段の作業足場Sの作業床8上に起立
させ、前側支柱1を法面Hの水平面Ha上に起立
させ、二段目の法面Hの工事位置に対応させる。同様にして順次上方の工事位置に対応して上段の作業足場Sを階段状に起立させる。次に、最上段の工事位置の工事が終了し、次段の工事位置の工事を始める場合
は最上段の作業足場
Sの次の下側
の作業足場
Sを使用する。この場合、例えば、
図1(B)の三段目の作業足場Sの使用で三段目の工事が終了した場合は、二段目の作業足場S上で三段目の作業足場Sを解体して撤去し、次いでこの二段目の作業足場
Sを二段目の工事用の足場として使用するものである。次に単一の法面工事用の作業足場Sの構造を図面に基づいてさらに詳しく説明する。この作業足場Sの基本構造は上記の通りであるが、更に次の構成を備えている。すなわち、最上段に起立する作業足場Sは直接法面工事を行うものであるから側部手摺12と背部手摺13を備えている。下段の作業足場Sは最上段の作業足場Sを支えるものであるから、これらの側部手摺12と背部手摺13は取付けなくても使用可能である。側部手摺12と背部手摺13はブラケットを介してそれぞれ前側手摺支柱10と後側手摺支柱11に取付けた横材で構成されている。
下段の作業足場
S、例えば、
図2に示すように、
一段目、
二段目の作業足場Sの側部には補助手摺Tを設けても良い。背部手摺13を構成する後側手摺支柱11は、
図1、
図9に示すように垂直に起立する支柱本体11Aと、支柱本体11Aの下部に連結したL字状の張出支柱11Bとから構成されている。支柱本体11Aの外周には多孔のフランジFAが設けられている。張出支柱11Bの内側には上側のブラケット30を介して取付け部材32と係止ピンP1が取り付けられており、また、下側のブラケット31を介して係止ピンP2が取り付けられている。フランジFAには
図2に示すように背部手摺13を構成する横材の端部がブラケットと楔を介して取付けられている。張出支柱11Bは
図2に示すように後側支柱2の外周に設けた多孔のフランジ
Fに係止ピンP1、P2を介して着脱自在に取付けられ、更に、作業床8を構成するパネル9の後端を迂回して上方に起立し、これにより支柱本体11Aを上段側の作業足場Sのパネル9上に起立して背部手摺13を構成するようにしている。さらに、
図1~
図3に示すように左右両端の前側支柱1と左右両端の後側支柱2との間に一つ又は複数のブレース14A、14Bを架設して各支柱1、2を補強している。各後側支柱2、2間に後側ブレース14Cを架設している。更に、前側
手摺支柱
10と後側
手摺支柱
11とに作業床8の左右側部と背部
でそれぞれ起立する巾木15、16を取付け、作業床8から工具や資材が落下す
るのを防止している。上下のブレース14A、14Bは同じ構造の取付け部材を介してそれぞれ前側支柱1と後側支柱2に着脱自在に結合されている。例えば、下側のブレース14Aは
図10に示すように、前側支柱1と後側支柱2にそれぞれ取付けた多孔のフランジFに二股のブラケット22とこのブラケット22に着脱自在に差し込んだ楔23とからなる取付け部材、例えば、3Sシステム(日綜産業株式会社の登録商標)を介して取付けている。フランジFは公知のように、円板とこの円板に円周方向に沿って形成した複数の孔とで構成され、ブラケット22は円板に差し込む溝と楔を差し込む孔とを備え、ブラケット22をフランジFに差し込んだ後にブラケット22の孔とフランジFの孔とに楔23を嵌合させ、フランジFにブラケット22を取付けることにより結果的にブレース14Aの両端がそれぞれ前側支柱1と後側支柱2に結合される。
【0014】
前側大引きフレーム3と後側大引きフレーム4とは同じ構造であり、これは
図5に示すように、それぞれ上弦材17と、下弦材18と、上弦材17と下弦材18との間に架設したハの字状の補強材19及び垂直な補強材20とからなり、更に上弦材17の上部に起立した筒状のソケット21と、上弦材17と下弦材18の両端にそれぞれ設けた楔挿入用のブラケット22とを備えている。そして、
前側大引きフレーム3と後側大引きフレーム4は、上記のブレース14Aと同じようにブラケット22とフランジFと楔23とからなる取付け部材を介して前側支柱1と後側支柱2にそれぞれ結合されている。
【0015】
根太フレーム5は
図1~
図4に示すように、上側ビーム梁5Aと、ビーム梁5Aの下部に結合したトラス6から構成されている。トラス6は柱状の下弦材6aと、ビーム梁5Aと下弦材6aとの間に取付けた複数のV字状の束材6bとで構成されている。さらに、ビーム梁5Aは後端に垂設した突起5Bを介して後側大引
きフレーム4側のソケット21に着脱自在に嵌合され、また
図6に示すように、先端に取付けた筒状の取付け部材27を介して前側大引きフレーム3側のソケット21に着脱自在に嵌合されている。取付け部材27は筒体27Aと、筒体27Aから起立する二股の耳片27Bと、耳片27Bに差し込むボルト28及びナットとから構成され、耳片27Bに差し込んだビーム梁5Aをボルト28とナットで耳片27Bに結合し、次いで筒体27Aを前側大引きフレーム3のソケット21に嵌合し、これによりビーム梁5Aの前側先端が前側大引きフレーム3に取付けられる。作業床8は
図1~
図3に示すように、ビーム梁5A上に締結部材24を介して結合して並べた複数のパネル9から構成されている。締結部材24は
図8に示すように、隣同士のパネル9、9間に下方に向けて差し込むコ字状の支持板24Cと、支持板24Cの上端に互いに反対方向に向けて取付けた水平な一対の押え片24A、24Bと、支持板24Cの両側に垂設した一対の楔取付け片25、25と、各楔取付け片25に着脱自在に差し込む楔26とで構成されている。そして、ビーム梁5A上に並べた両側のパネル9の上面に押え片24A、24Bをそれぞれ当接させながら支持板24Cをビーム梁5A上にかぶせながら楔取付け片25、25をビーム梁5Aの両側に対向させ、この状態で楔26を楔取付け片25、25の孔に水平方向から差し込むことによりこの楔26の上面と支持板24Cの下面24Dとでビーム梁5Aを挟持する。その結果、押え片24A、24Bが下方に引っ張り込まれてパネル9、9をビーム梁5Aの上面に圧接してパネル9の緩みを防止させている。次に、上段側の作業足場Sの前側支柱1が法面Hの水平面Haに届かない場合は、
図1(B)と
図7(B)に示すように、前側支柱1に補助ジャッキKを連結し、この補助ジャッキKを法面Hの水平面Haに起立するようにしても良い。補助ジャッキKは
図7に示すように、縦方向に起立する補助支柱K1と、補助支柱K1に水平に結合した一つ又は複数の横支柱K2と、横支柱K2の端部に設けた二股ブラケット22及びこのブラケット22に差し込まれる楔23とで構成されている。補助支柱K1は単独でも使用可能であるが、図示のようにジャッキベースJを継ぎ足しても良い。そして、前側支柱1に設けた多孔のフランジFにブラケット22を差し込み、次いで、ブラケット22に形成した孔とフランジFに設けた孔に楔23を打ち込むことによりブラケット22を前側支柱1に結合し、これにより前側支柱1に補助ジャッキKが連結され、
図1(B)、
図7(B)に示すように前側支柱1が補助ジャッキKを介して法面Hに成形した水平面Ha上に起立される。上記の法面工事用の作業足場Sは法面Hの工事位置の高さに応じて一つ又は複数階段状に起立し、工事を最上方の工事位置から順次下方の工事位置に切り換えるものである。
【0016】
本発明の法面工事用の作業足場の組立方法は次の工程からなるものである。即ち、複数の前側支柱1と、前側支柱1より長い複数の後側支柱2と、前側支柱1間に架設した前側大引きフレーム3と、後側支柱2間に架設した後側大引きフレーム4と、前側大引きフレーム3と後側大引きフレーム4との間に架設されると共にトラス6で補強された複数の根太フレーム5と、根太フレーム5上に敷設する作業床8とを備えてユニット化された組み立て式の作業足場を複数用意する工程(第一工程)と、地上Bに法面Hに対向する最下段の作業足場Sを起立させる工程(第二工程)と、最下段の作業足場S上で二段目の作業足場Sを組み立てて当該二段目の作業足場Sを法面Hの下方の工事位置に対向させながら最下段の作業足場S上にスライド自在に起立させる工程(第三工程)と、同様にして更に上方の法面Hの工事位置に対応して三段目以降の上方の作業足場Sを順次下段側の作業足場S上に階段状に連続して起立させる工程(第四工程)と、上方の法面の工事位置の工事終了後から下方の法面の工事位置の工事に順次切り換えるに際には上段の作業足場を解体し、次段の作業足場をそのまま使用する工程(第五工程)と、からなるものである。
【0017】
この場合、最下段の作業足場Sの前側支柱1と後側支柱2とを直接又はジャッキベースJを介して地上Bに起立させ、二段目以降の作業足場Sの前側支柱1を直接又はジャッキベースJを介して法面Hに形成した水平面Ha上に起立させ、後側支柱2を下側の作業足場Sの作業床8上に直接又はジャッキベースJを介して起立させている。
【0018】
上段の作業足場Sは下段の作業足場S上にスライド自在に起立させた後に法面H方向にスライドさせて前側支柱1を法面Hの水平面Haに起立させても良い。
【0019】
本発明の法面工事用の作業足場Sはユニット化されているものであるから、単一の作業足場Sとして組立でき、法面Hの工事位置が低い場合はこの工事位置に対応して単独で起立させて使用できる。
【0020】
また、法面Hの工事位置が傾斜面に沿って長くて広い場合は、下側の作業足場S上に上側の作業足場Sを階段状に重ねて複数起立させ、しかも短い前側支柱1を法面H上に起立させることで作業床8を水平に保持できる。この際、作業床8はトラス6で補強されているから、作業床8を支える余分な支柱等の支え部材が不要となる。更に、本発明の法面工事用の作業足場の組立方法によれば、単一のユニット化された作業足場Sを法面Hの工事位置に対応して複数階段状に起立するから多数の支柱を縦横に継ぎ足して櫓状の足場を構築する必要が無く、足場の組立作業が容易であり、スピードアップを図れる。さらに多数の支柱やクランプ等の資材や部品を使用しなくても作業足場の構築ができるから部品点数が少なく済み、資材や部品の省力化が図れ、作業性、経済性の向上を図れる。
【0021】
また、上方の法面の工事位置から下方の工事位置に工事を切り換える場合は上方の工事に使用していた上方の作業足場を撤去するだけで直ちに下方の作業足場を下方の工事用に使用できるので足場の切り替え作業が容易で、作業性の向上を図れ、スピードアップも図れる。
【符号の説明】
【0023】
1 前側支柱
2 後側支柱
3 前側大引きフレーム
4 後側大引きフレーム
5 根太フレーム
5A ビーム梁
5B 突起
6 トラス
6a 下弦材
6b 束材
8 作業床
9 パネル
10 前側手摺支柱
11 後側手摺支柱
13 背部手摺
14A、14B ブレース
15、16 巾木
17 上弦材
18 下弦材
19 補強材
20 補強材
21 ソケット
22 ブラケット
24 締結部材
24A、24B 押え片
24C 支持板
25 楔取付け片
26 楔
27 取付け部材
H 法面
Ha 水平面
J ジャッキベース