(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】注入外管
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20220805BHJP
【FI】
E02D3/12 101
(21)【出願番号】P 2018232693
(22)【出願日】2018-12-12
【審査請求日】2019-08-22
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596164652
【氏名又は名称】太洋基礎工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391003598
【氏名又は名称】富士化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 光洋
(72)【発明者】
【氏名】下坂 賢二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 孝芳
(72)【発明者】
【氏名】大野 康年
【合議体】
【審判長】森次 顕
【審判官】藤脇 昌也
【審判官】前川 慎喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-228207(JP,A)
【文献】特開2003-49420(JP,A)
【文献】特開2000-282556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の本体部と、
前記本体部の外周面に取り付けられた複数のパッカーと、
前記本体部のうち、隣接する2つの前記パッカーの間に設けられ、前記本体部の内側と外側とを連通する注入口と、
前記本体部のうち、前記パッカーが取り付けられた部分に設けられ、前記本体部の内側と外側とを連通する充填口と、
前記パッカーの端部を前記本体部にかしめるかしめユニットと、
前記本体部の外周面に固定され、前記本体部の軸方向において前記かしめユニットと並ぶストッパーと、
を備え
、
前記かしめユニットは、
第1のかしめ部材と、
前記第1のかしめ部材よりも、前記パッカーの軸方向における中央寄りに位置し、前記第1のかしめ部材よりも幅が狭い第2のかしめ部材と、
を備え、
前記第1のかしめ部材と前記第2のかしめ部材との間に隙間が存在する
注入外管。
【請求項2】
請求項1に記載の注入外管であって、
前記ストッパーは、前記本体部に外挿され、前記本体部の外周面に固定された筒状部材を備える注入外管。
【請求項3】
請求項2に記載の注入外管であって、
前記ストッパーは、前記筒状部材から前記本体部の径方向内側に突出した突出部をさらに備え、
前記突出部は前記本体部の端部に対し固定されている注入外管。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の注入外管であって、
前記筒状部材は、前記本体部の軸方向において、前記本体部の先端よりもさらに突出している注入外管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は注入外管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤改良を目的とする薬液注入工法が知られている(特許文献1参照)。薬液注入工法としては、ストレーナ工法、ダブルパッカー工法等がある。さらに、ダブルパッカー工法には、シールグラウト方式、地山パッカー方式がある。
【0003】
薬液注入工法では、まず、地盤に削孔を形成し、その削孔に注入外管を挿入する。さらに、注入外管の中に注入内管を挿入する。注入外管には注入口が形成されている。注入内管により、薬液を注入口に圧送する。圧送された薬液は、注入外管の注入口から吐出され、地盤に浸透する。地盤に浸透した薬液が固結し、改良体を形成することで、地盤が改良される。
【0004】
注入外管と地盤との間に隙間があると、注入外管の注入口から吐出された薬液がこの隙間を逸走してしまう。そこで、地山パッカー方式のダブルパッカー工法では、注入外管の外側に複数のパッカーを取り付けておく。薬液を注入する前に、パッカーに充填材を充填して膨出させ、地盤に密着させる。このパッカーにより、薬液の逸走を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かしめ部材を用いてパッカーの端部を注入外管の本体部にかしめることで、パッカーを注入外管に取り付けることができる。この場合、パッカーにおける充填材の充填圧力が高いと、かしめ部材が外れてしまうおそれがある。本開示の一局面は、かしめ部材が外れてしまうことを抑制できる注入外管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一局面は、筒状の本体部と、前記本体部の外周面に取り付けられた複数のパッカーと、前記本体部のうち、隣接する2つの前記パッカーの間に設けられ、前記本体部の内側と外側とを連通する注入口と、前記本体部のうち、前記パッカーが取り付けられた部分に設けられ、前記本体部の内側と外側とを連通する充填口と、前記パッカーの端部を前記本体部にかしめるかしめユニットと、前記本体部の外周面に固定され、前記本体部の軸方向において前記かしめユニットと並ぶストッパーと、を備える注入外管である。
【0008】
本開示の一局面である注入外管はストッパーを備える。ストッパーは、本体部の外周面に固定されている。ストッパーは、本体部の軸方向においてかしめユニットと並んでいる。パッカーの充填圧が高い場合でも、かしめユニットの位置がずれることをストッパーが抑制する。そのため、パッカーの充填圧が高くても、かしめユニットが本体部から外れにくい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】パッカー5及びその周辺の構成を表す説明図である。
【
図3】
図2におけるIII-III断面での断面図である。
【
図4】端部13、かしめ部材15、17、及びストッパー31の構成を表す説明図である。
【
図5】端部13、かしめ部材15、17、及びストッパー33の構成を表す説明図である。
【
図6】端部13、かしめ部材15、17、及びストッパー131の構成を表す説明図である。
【
図8】端部13における形態と、限界充填圧との関係を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
1.注入外管1の構成
注入外管1の構成を
図1~
図6に基づき説明する。
図1に示すように、注入外管1は、本体部3と、複数のパッカー5、6と、を備える。
【0011】
本体部3は筒状の形状を有する。本体部3は、
図3に示すように、充填口7を備える。充填口7の位置は、本体部3のうち、パッカー5、6が取り付けられる部分である。
図3では、本体部3のうち、パッカー5が取り付けられる部分が備える充填口7を示す。充填口7は本体部3の内側と外側とを連通する孔である。充填口7は、本体部3の周方向に沿って複数設けられている。
【0012】
本体部3のうち、充填口7が設けられている部分にスリーブ11が取り付けられている。スリーブ11は円環形状を有し、本体部3に外周側から装着されている。スリーブ11は、通常は充填口7を外側から覆う。スリーブ11はゴム等の弾性変形可能な材料から成る。後述するように、充填口7を通して充填材をパッカー5、6に充填するとき、充填材の圧力によってスリーブ11は外側に押し出され、充填口7とスリーブ11との間に隙間が生じる。その結果、充填材は充填口7を通り、さらに上記の隙間を通り、パッカー5、6に充填される。
【0013】
また、本体部3は、
図1に示すように、複数の注入口9を備える。注入口9は本体部3の内側と外側とを連通する孔である。一部の注入口9の位置は、隣接する2つのパッカー5、6の間である。他の注入口9の位置は、パッカー6と、注入外管1の一方の端部1Aとの間の位置である。
【0014】
パッカー5、6の間に位置する複数の注入口9は、本体部3の軸方向に沿って、所定の間隔をおいて配列されている。また、パッカー6と端部1Aとの間に位置する複数の注入口9も、本体部3の軸方向に沿って、所定の間隔をおいて配列されている。隣接する注入口9同士の間隔は、例えば、20~40cmが好ましく、25~35cmがさらに好ましく、30cmが特に好ましい。
【0015】
図1~
図3に示すように、パッカー5、6は、本体部3より径が一回り大きい筒状の基本形態を有する。本体部3はパッカー5、6の内部を通っている。本体部3の軸方向とパッカー5、6の軸方向とは一致する。パッカー5の軸方向での長さ、及びパッカー6の軸方向での長さは、それぞれ、本体部3の軸方向での長さより小さい。
【0016】
図2~
図5に示すように、パッカー5の軸方向における両方の端部13は縮径され、本体部3の外周面に接している。端部13は、1対のかしめ部材15、17により、本体部3にかしめられている。かしめ部材15、17は、それぞれ円環形状を有する。かしめ部材15、17は、それぞれ、端部13に外周側から接している。
図2に示すように、かしめ部材15は、かしめ部材17よりも、パッカー5の軸方向における中央C寄りに位置する。かしめ部材15とかしめ部材17との間には隙間19が存在する。
【0017】
図4に示すように、本体部3の軸方向におけるかしめ部材17の幅をW1とする。また、本体部3の軸方向におけるかしめ部材15の幅をW2とする。W1はW2より大きい。W1は、W2の1.1倍以上であることが好ましい。かしめ部材17は第1のかしめ部材に対応する。かしめ部材15は第2のかしめ部材に対応する。1対のかしめ部材15、17はかしめユニットに対応する。
【0018】
パッカー6も、パッカー5と同様の構成を有する。また、パッカー6も、パッカー5と同様に、1対のかしめ部材15、17によって本体部3に取り付けられている。
図3に示すように、パッカー5は、第1層21と、第2層23とを備える層構造を有する。第1層21はゴムから成る。第1層21は弾性変形可能であり、パッカー5に充填材が充填されたとき、本体部3の径方向外側に膨出する。第1層21は充填材を透過させず、気密性を有する。
【0019】
第2層23は第1層21よりも外側に位置し、第1層21に接している。第2層23は布から成る。第2層23は、パッカー5に充填材が充填されたとき、所定の形状に達するまでは本体部3の径方向外側に膨出する。所定の形状に達した後は、第1層21に比べて、さらなる膨出を行い難い。上記の所定の形状は、本体部3の中心軸を中心とする円筒形状である。パッカー6も、パッカー5と同様に、第1層21と、第2層23とを備える層構造を有する。
【0020】
図1に示すように、注入外管1は、ストッパー31、33、35、37を備える。ストッパー31は、本体部3のうち、パッカー5よりも、注入外管1の端部1B側の部分に固定されている。端部1Bは端部1Aの反対側の端部である。
図2~
図4に示すように、ストッパー31は、本体部3の軸方向において、かしめ部材17と並んでいる。
【0021】
ストッパー31は、有底筒状の形態を有する。さらに詳しくは、ストッパー31は、円筒状の筒状部材39と、底41とを備える。底41は、本体部3の径方向内側に突出した突出部に対応する。
【0022】
図3、
図4に示すように、筒状部材39は、本体部3のうち、端部3Bの側の部分に外挿されている。端部3Bは、端部1Bの側にある本体部3の端部である。底41のうち、本体部3の径方向外側の部分は端部3Bに当接している。
【0023】
筒状部材39は、接着剤により、本体部3の外周面に固定されている。底41のうち、本体部3の径方向外側の部分は、接着剤により、端部3Bに接着されている。よって、底41は、端部3Bに対し固定されている。
【0024】
仮に、ストッパー31に隣接するかしめ部材17の位置がストッパー31の方向にずれた場合、かしめ部材17はストッパー31の端部31Aに当接する。端部31Aは、ストッパー31のうち、隣接するかしめ部材17の側の端部である。ストッパー31の材質として、例えば、樹脂、金属等が挙げられる。金属として、例えば、鉄等が挙げられる。
【0025】
図1に示すように、ストッパー33は、本体部3のうち、パッカー5とパッカー6との間の位置であって、パッカー5寄りの位置に固定されている。
図2、
図3、
図5に示すように、ストッパー33は、本体部3の軸方向において、かしめ部材17と並んでいる。
【0026】
図3、
図5に示すように、ストッパー33は、底がない筒状部材である。ストッパー33は、本体部3に外挿されている。ストッパー33は、接着剤により、本体部3の外周面に固定されている。
【0027】
仮に、ストッパー33に隣接するかしめ部材17の位置がストッパー33の方向にずれた場合、かしめ部材17はストッパー33の端部33Aに当接する。端部33Aは、ストッパー33のうち、隣接するかしめ部材17の側の端部である。ストッパー33の材質として、ストッパー31の材質と同様のものが挙げられる。
【0028】
図1に示すように、ストーパー35は、本体部3のうち、パッカー5とパッカー6との間の位置であって、パッカー6寄りの位置に固定されている。ストーパー35は、ストッパー33と同様の構成を有する。
【0029】
図1に示すように、ストーパー37は、本体部3のうち、パッカー6と端部1Aとの間の位置であって、パッカー6寄りの位置に固定されている。ストーパー37は、ストッパー33と同様の構成を有する。
【0030】
注入外管1は、ストッパー31に代えて、
図6に示すストッパー131を備えていてもよい。ストッパー131は、筒状部材133と、突出部135とを備える。筒状部材133は、底がない筒状の形態を有する。突出部135は、筒状部材133の内面に、周方向の全周にわたって形成されている。突出部135は、本体部3の軸方向において、筒状部材133の中央に位置する。突出部135は、筒状部材133から、本体部3の径方向内側に突出している。
【0031】
ストッパー131のうち、突出部135から、一方の端部131Aまでの部分は、本体部3に外挿されている。ストッパー131のうち、突出部135から端部131Aまでの部分は、接着剤によって本体部3の外周面に固定されている。突出部135は端部3Bに当接している。突出部135は、接着剤によって端部3Bに対し固定されている。
【0032】
筒状部材133のうち、突出部135から端部131Bまでの部分は、本体部3の軸方向において、端部3Bよりもさらに突出している。端部131Bは、端部131Aとは反対側の端部である。
【0033】
筒状部材133のうち、突出部135から端部131Bまでの部分に、他の注入外管の本体部103を差し込むことができる。筒状部材133のうち、突出部135から端部131Bまでの部分を、接着剤によって本体部103の外周面に固定することができる。ストッパー131は、本体部3と本体部103とを接続するジョイントとして機能する。
【0034】
2.薬液注入工法
薬液注入工法を
図7に基づき説明する。STEP-1は、地盤100に削孔101が形成され、削孔101に注入外管1が挿入され、削孔101の孔壁105と注入外管1との間にシール剤107が充填された状態である。
【0035】
例えば、削孔101を形成し、次に、削孔101にシール剤107を充填し、次に、削孔101に注入外管1を挿入することで、STEP-1に表す状況を実現できる。
シール剤107は、水酸化アルミニウムのゲルを含み、比重が1.05~1.30の範囲内であり、pHが4~11.1の範囲内であるものである。シール剤107として、例えば、表1に示すS1~S14がある。シール剤S1~S8、S11~S14は、表1に示すA液及びB液を予め製造しておき、それらを使用直前に混合したものである。シール剤S9、S10は、表1に示すA液、B液、及びC液を予め製造しておき、それらを使用直前に混合したものである。
【0036】
【表1】
表1における配合量の単位は質量部である。表1における「Al
2 (SO
4)
3」は、硫酸アルミニウム (北陸化成(株)製、Al
2O
3:12%)を意味する。表1における「活性剤」は、界面活性剤を意味する。S11のA液に配合されている界面活性剤はカルボキシメチルセルロース(信越化学工業(株)製、製品名:アスカクリーン)である。S12のA液に配合されている界面活性剤はアルキルアリルスルホン酸塩である。S13のA液に配合されている界面活性剤はアルキルアンモニウム塩である。S14のA液に配合されている界面活性剤は、アルキルアリルスルホン酸塩(花王(株)、製品名:ビスコトップ100A)と、アルキルアンモニウム塩(花王(株)、製品名:ビスコトップ100B)とを質量比1:1で混合したものである。
【0037】
表1における「NaAlO2」は、アルミン酸ナトリウム (北陸化成(株)製、製品名:AS17、Al2O3:19%)を意味する。表1における「5号」は、5号ケイ酸ナトリウム(富士化学(株)製、SiO2:25.5%、Na2O:7%)を意味する。
【0038】
注入外管1は、前記「1.注入外管1の構成」の項で説明したものであり、
図7に示すように、注入口9と、複数のパッカー5、6とを備える。なお、
図7では、かしめ部材15、17、ストッパー31、33、35、37の記載は省略している。
【0039】
STEP-2では、図示しない注入内管を注入外管1に挿入し、注入内管、及び充填口7を通して充填材をパッカー5、6内に充填する。パッカー5、6は外側に膨出し、孔壁105に密着する。
STEP-3では、図示しない注入内管を注入外管1に挿入し、注入内管により薬液113を送り、注入口9から薬液113を吐出する。注入口9から吐出された薬液113は、注入口9付近のシール剤107を溶解する。薬液113は、以下の成分を混合したものである。
【0040】
コロイダルシリカ:44g
5号ケイ酸ナトリウム:274g
工業用希硫酸:約40g
水:736g
薬液113のpHは、工業用希硫酸の量を調整することにより、4以下又は9以上とした。
【0041】
STEP-4では、シール剤107を溶解した薬液113が地盤100に浸透する。STEP-5では、薬液113が地盤100において十分に広がり、固結して改良体115を形成する。
薬液注入工法において使用するシール剤は、例えば、高吸水性樹脂及び水を含むシール剤(以下では、高吸水性樹脂含有シール剤とする)であってもよい。高吸水性樹脂の少なくとも一部は、水を吸収し、膨潤した状態にある。
【0042】
高吸水性樹脂含有シール剤は、掘削孔の孔壁が崩落することを抑制する効果が高い。また、注入管から薬液が吐出されたとき、高吸水性樹脂含有シール剤は収縮し易い。高吸水性樹脂含有シール剤が収縮すると、注入管から吐出された薬液は、広い範囲にわたって地盤に浸透することができる。その結果、浸透源を拡大することができる。
【0043】
高吸水性樹脂として、合成ポリマー系の高吸水性樹脂が好ましい。合成ポリマー系の高吸水性樹脂として、ポリアクリル酸塩系の高吸水性樹脂が好ましい。ポリアクリル酸塩系の高吸水性樹脂として、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物が好ましい。
【0044】
高吸水性樹脂含有シール剤が合成ポリマー系の高吸水性樹脂を含む場合、掘削孔の孔壁が崩落することを抑制する効果が一層高い。また、高吸水性樹脂含有シール剤が合成ポリマー系の高吸水性樹脂を含む場合、注入管から薬液が吐出されたとき、高吸水性樹脂含有シール剤は一層収縮し易い。
【0045】
高吸水性樹脂含有シール剤がポリアクリル酸塩系の高吸水性樹脂を含む場合、掘削孔の孔壁が崩落することを抑制する効果が一層高い。また、高吸水性樹脂含有シール剤がポリアクリル酸塩系の高吸水性樹脂を含む場合、注入管から薬液が吐出されたとき、高吸水性樹脂含有シール剤は一層収縮し易い。
【0046】
高吸水性樹脂含有シール剤がアクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物を含む場合、掘削孔の孔壁が崩落することを抑制する効果が特に高い。また、高吸水性樹脂含有シール剤がアクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物を含む場合、注入管から薬液が吐出されたとき、高吸水性樹脂含有シール剤は特に収縮し易い。
【0047】
高吸水性樹脂含有シール剤は、1000質量部の水と、1~100質量部の高吸水性樹脂と、を含むことが好ましい。高吸水性樹脂含有シール剤は、1000質量部の水と、1.5~20質量部の高吸水性樹脂と、を含むことがさらに好ましい。
【0048】
高吸水性樹脂含有シール剤が、1000質量部の水に対し、1質量部以上の高吸水性樹脂を含む場合、掘削孔の孔壁が崩落することを抑制する効果が高い。
高吸水性樹脂含有シール剤が、1000質量部の水に対し、1.5質量部以上の高吸水性樹脂を含む場合、掘削孔の孔壁が崩落することを抑制する効果が一層高い。
【0049】
高吸水性樹脂含有シール剤が、1000質量部の水に対し、100質量部以下の高吸水性樹脂を含む場合、高吸水性樹脂含有シール剤の製造コストを低減することができる。
高吸水性樹脂含有シール剤が、1000質量部の水に対し、20質量部以下の高吸水性樹脂を含む場合、高吸水性樹脂含有シール剤の製造コストを一層低減することができる。
【0050】
高吸水性樹脂含有シール剤の剤型は、例えば、液状、スラリー状、懸濁液等である。高吸水性樹脂含有シール剤は、水及び高吸水性樹脂以外の成分をさらに含んでいてもよい。
3.注入外管1が奏する効果を確かめるための第1試験
試験体として注入外管1を用意した。この注入外管1が備えるパッカー5の膨張したときの直径は120mmであった。パッカー5の軸方向における長さは約83cmであった。W1は、W2の1.1倍以上であった。注入外管1のパッカー5に充填剤を充填し、かしめ部材15、17が外れるまで、充填圧を徐々に高めた。かしめ部材15、17が外れたときの充填圧(以下では限界充填圧とする)を測定した。n数を2として測定した限界充填圧は、1.22MPaと1.22MPaとであった。
【0051】
比較例として、注入外管1からストッパー31、33を取り外したものを用意した。比較例についても、同様に、限界充填圧を測定した。n数を2として測定した比較例の限界充填圧は、0.90MPaと0.94MPaとであった。
【0052】
4.注入外管1が奏する効果を確かめるための第2試験
図8に示すように、端部13における形態として、ケース1~5をそれぞれ作成した。ケース1では、W1はW2の1.1倍以上である。隙間19は存在する。
【0053】
ケース2では、W1とW2とは等しい。ケース2におけるW1、W2は、ケース1におけるW2と等しい。隙間19は存在する。
ケース3では、かしめ部材17を備えない。かしめ部材15の幅W2は、ケース1におけるW2と等しい。
【0054】
ケース4では、隙間19が存在しない。また、W1とW2とは等しい。ケース4におけるW1、W2は、ケース1におけるW2と等しい。
ケース5では、W2がW1の1.1倍以上である。ケース5におけるW1はケース1におけるW2に等しい。ケース5におけるW2はケース1におけるW1に等しい。隙間19は存在する。
【0055】
ケース1~5のそれぞれについて、パッカー5の限界充填圧を測定した。その結果を
図8に示す。ケース1では限界充填圧が1.0MPa以上であった。それに対し、ケース2~5では、限界充填圧が0.5MPa以下であった。
【0056】
5.注入外管1が奏する効果
(1A)注入外管1は、ストッパー31、33、35、37を備える。パッカー5、6の充填圧が高い場合でも、かしめ部材15、17の位置がずれることをストッパー31、33、35、37が抑制する。そのため、パッカー5、6の充填圧が高くても、かしめ部材15、17が本体部3から外れにくい。
【0057】
(1B)ストッパー31、33、35、37は、本体部3に外挿され、本体部3の外周面に固定された筒状部材を備える。そのため、ストッパー31、33、35、37は本体部3の外周面に一層強固に固定される。その結果、パッカー5、6の充填圧が高くても、かしめ部材15、17が本体部3から一層外れにくい。
【0058】
(1C)ストッパー31は底41を備える。底41は、筒状部材39から本体部3の径方向内側に突出している。底41は端部3Bに固定されている。そのため、ストッパー31は本体部3に一層強固に固定される。その結果、パッカー5の充填圧が高くても、パッカー5のかしめ部材15、17が本体部3から一層外れにくい。
【0059】
(1D)ストッパー131は筒状部材133を備える。筒状部材133は、本体部3の軸方向において、端部3Bよりもさらに突出している。そのため、筒状部材133のうち、突出部135から端部131Bまでの部分に、他の注入外管の本体部103を差し込むことができる。その結果、ストッパー131は、本体部3と本体部103とを接続するジョイントとして機能する。
【0060】
(1E)注入外管1は、かしめ部材15、17を備える。かしめ部材15、17は、端部13と本体部3とをかしめる。かしめ部材15は、かしめ部材17よりも、パッカー5、6の軸方向における中央C寄りに位置する。かしめ部材15とかしめ部材17との間には隙間19が存在する。かしめ部材15の幅W2は、かしめ部材17の幅W1よりも狭い。上記の構成により、パッカー5、6の充填圧が高くても、かしめ部材15、17が本体部3から外れにくい。
【0061】
6.他の実施形態
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0062】
(1)ストッパー31、33、35、37を本体部3に固定する方法は特に限定されない。例えば、ストッパー31、33、35、37と本体部3とが金属から成る場合、溶接により、ストッパー31、33、35、37を本体部3に固定することができる。
【0063】
また、ストッパー31、33、35、37の内周面と、本体部3の外周面とにそれぞれネジ溝を形成し、両者のネジ溝を噛み合わせることで、ストッパー31、33、35、37を本体部3に固定することができる。
【0064】
(2)パッカー5、6の間に設けられた注入口9の数は単数であってもよい。
(3)注入外管1を、上述した工法以外の工法に用いてもよい。例えば、注入外管1を、シール剤を使用しない工法に用いてもよい。
【0065】
(4)端部13には、かしめ部材15、17のうちの一方のみを設けてもよい。
(5)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0066】
(6)上述した注入外管他、当該注入外管を構成要素とする製品、薬液注入工法、地盤改良工法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0067】
1…注入外管、1A、1B…端部、3…本体部、3B…端部、5、6…パッカー、7…充填口、9…注入口、11…スリーブ、13…端部、15、17…かしめ部材、19…隙間、21…第1層、23…第2層、31、33、35、37、131…ストッパー、31A、33A、131A、131B…端部、39、133…筒状部材、41…底、100…地盤、101…削孔、103…本体部、105…孔壁、107…シール剤、135…突出部