(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】吸湿材
(51)【国際特許分類】
B01D 53/28 20060101AFI20220805BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20220805BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
B01D53/28
B01D53/26 200
B01J20/26 A
(21)【出願番号】P 2019538930
(86)(22)【出願日】2018-01-22
(86)【国際出願番号】 JP2018001797
(87)【国際公開番号】W WO2019043979
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】P 2017168510
(32)【優先日】2017-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】崎川 伸基
(72)【発明者】
【氏名】宮田 隆志
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-189900(JP,A)
【文献】国際公開第2016/035403(WO,A1)
【文献】特開2000-142816(JP,A)
【文献】国際公開第2016/068129(WO,A1)
【文献】特開平06-055070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26- 53/28
B01J 20/20- 20/34
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化する温度応答性高分子を含む高分子ゲルと、熱伝導性フィラーとを含む吸湿材であって、
前記吸湿材に対する、前記熱伝導性フィラーの含有率は、0.1重量%~30重量%であ
り、前記熱伝導性フィラーは、熱源からの熱を受ける前記吸湿材の面に対して垂直方向に配向していることを特徴とする吸湿材。
【請求項2】
温度刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化する温度応答性高分子を含む高分子ゲルと、熱伝導性フィラーとを含む吸湿材であって、前記熱伝導性フィラーは、熱源からの熱を受ける前記吸湿材の面に対して垂直方向に配向していることを特徴とする吸湿材。
【請求項3】
前記熱伝導性フィラーは、炭素質材料、金属粒子、金属酸化物、金属水酸化物、窒素化合物、炭素化合物、セラミック類、及び、セルロースからなる群より選択される少なくとも1種の熱伝導性フィラーであることを特徴とする請求項1
または2に記載の吸湿材。
【請求項4】
前記高分子ゲルは、下記(a)~(d)のいずれかであることを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載の吸湿材。
(a) 前記温度応答性高分子と親水性高分子との混合物
(b) 前記温度応答性高分子と親水性高分子との共重合体
(c) 前記温度応答性高分子と親水性高分子との相互浸入高分子網目構造体
(d) 前記温度応答性高分子と親水性高分子とのセミ相互浸入高分子網目構造体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸湿材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸湿性材料として、刺激応答性高分子を含む吸湿材が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複合多孔質繊維除湿材料が開示されている。当該複合多孔質繊維除湿材料は、可逆性ヒドロゲル材料を表面に固定化した複数の繊維からなり、可逆性ヒドロゲル材料は温度変化、pH変化、電場、光の強度や波長等を刺激として位相変化を起こし、吸収した水を放出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2013/309927号明細書(2013年11月21日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術において、可逆性ヒドロゲル材料が温度変化を刺激として位相変化を起こす材料である場合は、可逆性ヒドロゲル材料を加熱することにより可逆性ヒドロゲル材料の位相変化が起こり、吸収した水が放出される。しかしながら、このとき、加えた熱が、可逆性ヒドロゲル材料内に効率よく伝わらないという問題があった。その結果、位相変化が効率的に起こらないため、吸収した水の放出が十分ではなかった。
【0006】
本発明の一態様は、温度応答性高分子を含む吸湿材であって、熱を効率的に伝えることができ、それゆえ、吸湿した水の放水性を備えた優れた吸湿材を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る吸湿材は、前記課題を解決するために、温度刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化する温度応答性高分子を含む高分子ゲルと、熱伝導性フィラーとを含み、前記吸湿材に対する、前記熱伝導性フィラーの含有率は、0.1重量%~30重量%であり、前記熱伝導性フィラーは、熱源からの熱を受ける前記吸湿材の面に対して垂直方向に配向していることを特徴とする。
さらに、本発明の一態様に係る吸湿材は、前記課題を解決するために、温度刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化する温度応答性高分子を含む高分子ゲルと、熱伝導性フィラーとを含む吸湿材であって、前記熱伝導性フィラーは、熱源からの熱を受ける前記吸湿材の面に対して垂直方向に配向していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様に係る吸湿材は、以上のように、温度刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化する温度応答性高分子を含む高分子ゲルと、熱伝導性フィラーとを含む構成を備えているので、熱を効率的に伝えることができ、それゆえ、吸湿した水の放水性を備えた優れた吸湿材を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る吸湿材における、熱伝導性フィラーの配向を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の実施例において、吸湿材の熱伝導を測定した装置の概略図である。
【
図3】本発明の実施例において、吸湿材の熱伝導を評価した結果を示す図である。
【
図4】本発明の実施例において、吸湿材の吸湿挙動を評価した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書においては特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。また、「質量」と「重量」は同義語であると見なす。また、「アクリル」または「メタアクリル」のいずれをも意味する場合「(メタ)アクリル」と表記する。
【0011】
〔実施の形態1:吸湿材〕
本発明者らは、前記課題に鑑み鋭意検討した結果、温度刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化する温度応答性高分子を含む高分子ゲルに、熱伝導性フィラーを配合することにより、意外にも、吸湿材の吸湿性の低下をわずかに留めつつ、熱を効率的に伝えることができることを初めて見出した。従来、高分子材料の熱伝導性を向上させるために、高分子材料に、熱伝導性フィラーを添加することは知られている。しかし、熱導電性フィラーは疎水性であるため、吸湿材に添加すると吸湿性が低下する。そのため、吸湿材に熱伝導性フィラーを添加するとの発想はこれまでなかった。しかし、本発明者らが、温度刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化する温度応答性高分子を含む高分子ゲルに、熱伝導性フィラーを配合したところ、意外にも吸湿材の吸湿性の低下はわずかであり、吸湿材中に熱を効率よく伝えることができることが見出された。さらには、熱伝導性フィラーを配合したところ、吸湿速度が向上することも見出された。かかる知見に基づき、本発明は完成された。
【0012】
すなわち、本発明の一実施形態に係る吸湿材は、温度刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化する温度応答性高分子を含む高分子ゲルと、熱伝導性フィラーとを含む構成を備えている。
【0013】
(I)熱伝導性フィラー
本発明の一実施形態に係る吸湿材では、前記熱伝導性フィラーは、前記高分子ゲルよりも高い熱伝導性を有すれば特に限定されるものではなく、通常熱伝導性向上のためにフィラーとして用いられるものを使用することができる。
【0014】
前記熱伝導性フィラーとしては、例えば、炭素質材料、金属粒子、金属酸化物、金属水酸化物、窒素化合物、炭素化合物、セラミック類、及び、セルロースからなる群より選択される少なくとも1種の熱伝導性フィラーを好適に用いることができる。より具体的には、前記熱伝導性フィラーとしては、例えば、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)、カーボンナノホーン(CNH)、炭素繊維、カーボンブラック(CB)、フラーレン、グラファイト、グラフェン等の炭素質材料;金、白金、銀、銅、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、鉄、コバルト、ビスマス、アルミニウム、ステンレス、チタン等の金属粒子;酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ケイ素、酸化ベリリウム、酸化ジルコニウム、酸化銅、亜酸化銅等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化クロム、水酸化ジルコニウム、水酸化ニッケル、水酸化ホウ素等の金属水酸化物;窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒素化合物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭化ケイ素等の炭素化合物;シリカ、タルク、マイカ、カオリン、ベントナイト、パイロフェライト等のセラミック類、セルロース、ホウ化チタン、チタン酸カルシウム等を挙げることができる。前記金属粒子には、例えば、金属ナノ粒子、金属マイクロ粒子、金属ナノロッド、金属繊維等が含まれる。前記熱伝導性フィラーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
前記熱伝導性フィラーの形状としては、種々の形状のものを使用することができ、例えば、板状、柱状、鱗片状、棒状、ロッド状、チューブ状、針状、ウィスカー状、繊維状、球状、楕円形状、不定形状等を挙げることができる。中でも前記熱伝導性フィラーは、より好ましくは非球状である。熱伝導性フィラーは、非球状であることによって配向することができる。熱伝導性フィラーが配向すれば、吸湿材中においてより効率よく熱を伝えることができる。
【0016】
前記熱伝導性フィラーの体積平均粒子径は、前記高分子ゲルに均一に分散しやすいことから、0.1μm~100μmであることが好ましく、1μm~50μmであることがより好ましい。なお、大きさまたは形状の異なる熱伝導性フィラーを組み合わせて使用してもよい。前記熱伝導性フィラーの体積平均粒子径が10μm以上であれば、高熱伝導距離を確保できるため好ましい。また、前記熱伝導性フィラーの体積平均粒子径が30μm以下であれば、分散が容易であるため好ましい。
【0017】
また、前記熱伝導性フィラーのアスペクト比は特に限定されないが、より好ましくは2~1000であり、より好ましくは10~100である。なお、本明細書においてアスペクト比とは、熱伝導性フィラーの短径の長さに対する熱伝導性フィラーの長径の長さの比(長径の長さ/短径の長さ)を意味する。アスペクト比の値が1に近いほど熱伝導性フィラーの形状は真球に近くなる。前記熱伝導性フィラーのアスペクト比が10以上であれば、熱伝導パスを形成する観点及び吸湿材中で配向しやすいという観点から好ましい。また、前記熱伝導性フィラーのアスペクト比が100以下であれば、分散および配向が比較的容易であるため好ましい。
【0018】
前記熱伝導性フィラーの平均長さは、より好ましくは0.1μm~1000μmであり、さらに好ましくは1μm~100μmである。前記熱伝導性フィラーの平均長さが1μm以上であれば、熱伝導に有利であるため好ましい。また、前記熱伝導性フィラーの平均長さが100μm以下であれば、吸湿材としての機能を比較的維持し易いため好ましい。
【0019】
熱伝導性フィラーの体積平均粒子径、アスペクト比、及び、平均長さは、吸湿材の高分子ゲル成分を適当な溶媒で溶解させ、残存した熱伝導性フィラーを観察し、任意に抽出した100個の熱伝導性フィラーの寸法を実測することにより算出することができる。実測する方法は特に限定されず、光学顕微鏡、レーザ変位顕微鏡、走査電子顕微鏡等を用いて得られる観察像から実測すればよい。
【0020】
また、前記熱伝導性フィラーは、シランカップリング処理、チタネートカップリング処理、エポキシ処理、ウレタン処理、酸化処理等の表面処理が施されていてもよい。かかる表面処理が施されていることにより、高分子ゲルとの接着性や親和性が向上したり、混錬等の作業性が向上したりする。
【0021】
(II)高分子ゲル
本発明の一実施形態において、高分子ゲルは、温度刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化する温度応答性高分子を含んでいればよい。
【0022】
前記高分子ゲルとしては、例えば、温度応答性高分子、温度応答性高分子を含有する混合物、温度応答性高分子を含有する共重合体、温度応答性高分子を含有する相互浸入高分子網目構造体、温度応答性高分子を含有するセミ相互浸入高分子網目構造体等を挙げることができる。本発明の一実施形態に係る吸湿材は、温度応答性高分子を含有していることにより、簡易な加熱装置を用いて温度を変化させることにより、空気中の水分(水蒸気)の吸湿と吸湿した水分の放出を可逆的に行える。このことから、本発明の一実施形態に係る吸湿材は、調湿機に特に好適に用いることができる。
【0023】
本発明の一実施形態に係る吸湿材では、前記高分子ゲルは、下記(a)~(d)のいずれかであることがより好ましい。
(a) 前記温度応答性高分子と親水性高分子との混合物
(b) 前記温度応答性高分子と親水性高分子との共重合体
(c) 前記温度応答性高分子と親水性高分子との相互浸入高分子網目構造体
(d) 前記温度応答性高分子と親水性高分子とのセミ相互浸入高分子網目構造体
また、本発明の一実施形態において、前記高分子ゲルは、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲で、前記温度応答性高分子及び親水性高分子以外の他の成分を含んでいてもよい。なお、吸湿材の形状は特に限定されるものではなく、例えば、板状、シート状、フィルム状、ブロック状等であってもよく、粒子状であってもよい。粒子状の吸湿材の形状も特に限定されるものではないが、例えば、略球状、棒状等の形状であり得る。また、本発明に係る吸湿材の大きさも特に限定されるものではなく、調湿機に用いる場合、調湿機の構成に応じて適宜選択すればよい。
【0024】
(温度刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化する温度応答性高分子)
温度応答性高分子とは、温度刺激に応答して、その性質を可逆的に変化させる高分子をいう。
【0025】
また、温度刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化するとは、温度刺激に応答して、その温度刺激に晒された高分子が、親水性と疎水性との間で可逆的に変化することをいう。
【0026】
温度応答性高分子は、簡易な加熱装置を用いて温度を変化させることにより、空気中の水分の吸湿と吸湿した水分の放出を可逆的に行えることから、調湿機に特に好適に用いることができる。
【0027】
かかる温度応答性高分子は、下限臨界溶液温度(LCST(Lower Critical Solution Temperature)、以下、本明細書において「LCST」と称することがある。)を持つ高分子であれば特に限定されるものではない。LCSTを持つ高分子は低温では親水性であるが、LCST以上になると疎水性となる。なお、ここで、LCSTとは、高分子を水に溶解したときに、低温では親水性で水に溶解するが、ある温度以上になると疎水性となって不溶化する場合の、その境となる温度をいう。
【0028】
前記温度応答性高分子としては、より具体的には、例えば、ポリ(N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N-ノルマルプロピル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N-メチル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N-エチル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N-ノルマルブチル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N-イソブチル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド)等のポリ(N-アルキル(メタ)アクリルアミド);ポリ(N-ビニルイソプロピルアミド)、ポリ(N-ビニルノルマルプロピルアミド)、ポリ(N-ビニルノルマルブチルアミド)、ポリ(N-ビニルイソブチルアミド)、ポリ(N-ビニル-t-ブチルアミド)等のポリ(N-ビニルアルキルアミド);ポリ(N-ビニルピロリドン);ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、ポリ(2-イソプロピル-2-オキサゾリン)、ポリ(2-ノルマルプロピル-2-オキサゾリン)等のポリ(2-アルキル-2-オキサゾリン);ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル等のポリビニルアルキルエーテル;ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドの共重合体;ポリ(オキシエチレンビニルエーテル);メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体等、および前記のポリマーの共重合体を挙げることができる。セルロース誘導体を前記温度応答性高分子として用いる場合には、重合を行う必要がないため吸湿材の製造が容易である。また、セルロース誘導体は、安全で且つ生分解性を有するため、環境負荷が小さいという利点がある。セルロース誘導体としてヒドロキシプロピルセルロースを用いる場合には、ヒドロキシプロピルセルロースの好ましい平均分子量は2,000~2000,000、同様に好ましい置換度は1~3である。温度応答性高分子は、これらの高分子の架橋体であることがより好ましい。
【0029】
なお、本発明の一実施形態において、温度応答性高分子と親水性高分子とが相互浸入高分子網目構造を形成する場合、温度応答性高分子および親水性高分子はいずれも架橋体である。また、本発明の一実施形態において、温度応答性高分子と親水性高分子とがセミ相互浸入高分子網目構造を形成する場合、温度応答性高分子および親水性高分子の何れか一方が架橋体である。
【0030】
温度応答性高分子が架橋体である場合、かかる架橋体としては、例えば、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ノルマルプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-ノルマルブチル(メタ)アクリルアミド、N-イソブチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N-ビニルイソプロピルアミド、N-ビニルノルマルプロピルアミド、N-ビニルノルマルブチルアミド、N-ビニルイソブチルアミド、N-ビニル-t-ブチルアミド等のN-ビニルアルキルアミド;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルアルキルエーテル;エチレンオキサイドとプロピレンオキサイド;2-エチル-2-オキサゾリン、2-イソプロピル-2-オキサゾリン、2-ノルマルプロピル-2-オキサゾリン等の2-アルキル-2-オキサゾリン等のモノマーまたはこれらのモノマーの2種類以上を、架橋剤の存在下で重合して得られる高分子を挙げることができる。
【0031】
前記架橋剤としては、従来公知のものを適宜選択して用いればよいが、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリレンジイソシアネート、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の重合性官能基を有する架橋性モノマー;グルタールアルデヒド;多価アルコール;多価アミン;多価カルボン酸;カルシウムイオン、亜鉛イオン等の金属イオン等を好適に用いることができる。これらの架橋剤は単独で用いてもよく、また2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
或いは、温度応答性高分子が架橋体である場合、かかる架橋体は、架橋されていない温度応答性高分子、例えば前記で例示した温度応答性高分子を、前記架橋剤と反応させて網目構造を形成させることによって得られた架橋体であってもよい。
【0033】
(親水性高分子)
前記親水性高分子としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基等の親水性基を側鎖または主鎖に有する高分子を挙げることができる。前記親水性高分子のより具体的な一例としては、例えば、アルギン酸、ヒアルロン酸等の多糖類;キトサン;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリマレイン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルベンゼンスルホン酸、ポリアクリルアミドアルキルスルホン酸、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、これらと(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等との共重合体、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドとポリビニルアルコールとの複合体、ポリビニルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸との複合体、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリアリルアミン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ-N,N’-ジメチル(メタ)アクリルアミド、ポリ-2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリ-アルキル(メタ)アクリレート、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリロニトリルおよび前記ポリマーの共重合体等を挙げることができる。また、親水性高分子は、これらの架橋体であることがより好ましい。
【0034】
本発明の一実施形態に係る吸湿材では、前記親水性高分子は、アルギン酸、ヒアルロン酸、キトサン、セルロース誘導体、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコール、およびこれらの共重合体からなる群より選択される少なくとも1種類の高分子またはその架橋体であってもよい。当該構成によれば、過冷却や大きな熱量を用いずに効率よく吸湿することができる。
【0035】
親水性高分子が架橋体である場合、かかる架橋体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、アリルアミン、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、マレイン酸、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、アクリルアミドアルキルスルホン酸、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等のモノマーを、架橋剤の存在下で重合して得られる高分子を挙げることができる。
【0036】
前記架橋剤としては、従来公知のものを適宜選択して用いればよいが、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリレンジイソシアネート、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の重合性官能基を有する架橋性モノマー;グルタールアルデヒド;多価アルコール;多価アミン;多価カルボン酸;カルシウムイオン、亜鉛イオン等の金属イオン等を好適に用いることができる。これらの架橋剤は単独で用いてもよく、また2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
((a):前記温度応答性高分子と親水性高分子との混合物)
前記高分子ゲルとしては、前記温度応答性高分子と親水性高分子との混合物を用いることができる。前記高分子ゲルに含まれる、前記温度応答性高分子と親水性高分子との割合は特に限定されるものではないが、架橋剤の重量を除いた重量の割合で、前記温度応答性高分子に対して、前記親水性高分子は、より好ましくは5重量%以上含まれ、さらに好ましくは20重量%以上含まれ、また、より好ましくは1000重量%以下含まれ、さらに好ましくは700重量%以下含まれる。
【0038】
((b):前記温度応答性高分子と親水性高分子との共重合体)
前記高分子ゲルとしては、前記温度応答性高分子と親水性高分子との共重合体を用いることができる。
【0039】
前記高分子ゲルに含まれる、総構成単位に対する、前記温度応答性高分子を構成する構成単位と前記親水性高分子を構成する構成単位との割合は特に限定されるものではないが、前記温度応答性高分子を構成する構成単位に対して、前記親水性高分子を構成する構成単位は、より好ましくは30モル%以上含まれ、さらに好ましくは50モル%以上含まれ、また、より好ましくは80モル%以下含まれ、さらに好ましくは70モル%以下含まれる。
【0040】
((c):前記温度応答性高分子と親水性高分子との相互浸入高分子網目構造体)
前記高分子ゲルとしては、前述した温度応答性高分子と、親水性高分子の相互浸入高分子網目構造体を用いることができる。ここで、相互浸入高分子網目構造とは、異なる種類の高分子が、いずれも架橋高分子であり、それぞれの高分子の架橋網目が化学的に結合することなく独立に存在する状態で相互に絡み合った構造をいう。即ち、前記相互浸入高分子網目構造体とは、前記温度応答性高分子と、前記親水性高分子とが、いずれも架橋高分子であり、前記親水性高分子の架橋網目と、前記温度応答性高分子の架橋網目とが、化学的に結合することなく独立に存在する状態で相互に絡み合った構造体をいう。前記相互浸入高分子網目構造体を用いることにより、前記温度応答性高分子と前記親水性高分子との混合物又は共重合体を用いる場合よりも、温度刺激に応答して水との親和性がより明確に可逆的に変化する。それゆえ、温度刺激を与えることにより、空気中の水分の吸湿と吸湿した水分の放出をより効率的に行えることから、調湿機に特に好適に用いることができる。
【0041】
前記高分子ゲルに含まれる、前記温度応答性高分子と前記親水性高分子との割合は特に限定されるものではないが、架橋剤の重量を除いた重量の割合で、前記温度応答性高分子に対して、前記親水性高分子は、より好ましくは5重量%以上含まれ、さらに好ましくは20重量%以上含まれ、また、より好ましくは1000重量%以下含まれ、さらに好ましくは700重量%以下含まれる。
【0042】
((d):前記温度応答性高分子と親水性高分子とのセミ相互浸入高分子網目構造体)
前記高分子ゲルとしては、前記温度応答性高分子と、前記親水性高分子とのセミ相互浸入高分子網目構造体を用いることができる。ここで、セミ相互浸入高分子網目構造とは、異なる種類の高分子の一方が架橋高分子であり、他方が直鎖状高分子又は非架橋高分子であり、それぞれの高分子が化学的に結合することなく、独立に存在する状態で相互に絡み合った構造をいう。即ち、前述した温度応答性高分子と前記親水性高分子とのセミ相互浸入高分子網目構造体とは、前記温度応答性高分子および前記親水性高分子の何れかが架橋高分子であり、他方が非架橋高分子であり、前記温度応答性高分子と、親水性高分子とが、化学的に結合することなく、独立に存在する状態で相互に絡み合った構造体をいう。前記セミ相互浸入高分子網目構造体を用いることにより、前記温度応答性高分子と前記親水性高分子との混合物又は共重合体を用いる場合よりも、外部刺激に応答して水との親和性がより明確に可逆的に変化する。それゆえ、外部刺激を与えることにより、空気中の水分の吸湿と吸湿した水分の放出をより効率的に行えることから、調湿機に特に好適に用いることができる。
【0043】
前記高分子ゲルに含まれる、前記温度応答性高分子と前記親水性高分子との割合は特に限定されるものではないが、架橋剤の重量を除いた重量の割合で、前記温度応答性高分子に対して、前記親水性高分子は、より好ましくは5重量%以上含まれ、さらに好ましくは20重量%以上含まれ、また、より好ましくは1000重量%以下含まれ、さらに好ましくは700重量%以下含まれる。
【0044】
(III)吸湿材
本発明の一実施形態に係る吸湿材では、前記吸湿材に対する、前記熱伝導性フィラーの含有率は、好ましくは0.1重量%~30重量%であり、より好ましくは0.5重量%~30重量%であり、さらに好ましくは5重量%~25重量%であり、最も好ましくは5重量%~20重量%である。前記吸湿材に対する、前記熱伝導性フィラーの含有率が1重量%以上であれば、温度応答性高分子を含む吸湿材中において、熱を効率的に伝えることができる。それゆえ、温度刺激に応答した水との親和性の変化が効率的に起こる。そのため、吸湿した水を液体のまま放出することができる優れた吸湿材を実現することができる。また、前記吸湿材に対する、前記熱伝導性フィラーの含有率が20重量%以下であれば、前記熱伝導性フィラーを添加しても吸湿性を保つことができるため好ましい。
【0045】
また、本発明の一実施形態に係る吸湿材では、前記高分子ゲルの乾燥重量に対する、前記吸湿材に含まれる前記熱伝導性フィラーの割合は、0.1重量%~30重量%であることが好ましく、0.5重量%~30重量%であることがより好ましく、5重量%~25重量%であることがさらに好ましく、5重量%~20重量%であることが最も好ましい。前記高分子ゲルの乾燥重量に対する前記熱伝導性フィラーの割合が5重量%以上であれば、熱伝導性が高くなるため、吸湿した水分の放水性を向上することができるため好ましい。前記熱伝導性フィラーの割合が25重量%以下であれば、吸湿性を保つことができるため好ましい。
【0046】
本発明の一実施形態に係る吸湿材では、前記熱伝導性フィラーの配向は、熱源からの熱を受ける前記吸湿材の面に対して垂直方向であることが好ましい。具体的には、前記熱伝導性フィラーの配向は、
図1中に矢印で示す方向であることが好ましい。前記吸湿材は、熱源に直接接触していても、熱源に直接接していなくてもよい。前記熱伝導性フィラーを
図1中に矢印で示す方向に配向させる方法としては、特に限定されるものではなく、どのような方法であってもよい。例えば、磁場または電場を印加することにより、前記熱伝導性フィラーを配向させることができる。当該構成によれば、吸湿材に含まれる水分を効率よく放水することができる。前記熱伝導性フィラーは、前記高分子ゲルに均一に分散していることが好ましい。当該構成により、前記吸湿材が局所的に高温になることなく、均一に熱伝導し、効率よく放水することができる。
【0047】
前記熱伝導性フィラーを前記高分子ゲルに添加する方法としては、前記熱伝導性フィラーを均一かつ安定に分散させることができればよく、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、温度応答性高分子を構成するモノマー、親水性高分子を構成するモノマー、親水性高分子、および/または、温度応答性高分子を含む溶液に前記熱伝導性フィラーを混合した後、前記高分子ゲルを製造する方法であってよい。また、前記熱伝導性フィラーに表面処理を施してから、温度応答性高分子を構成するモノマー、親水性高分子を構成するモノマー、親水性高分子、温度および/または、温度応答性高分子を含む溶液に表面処理された前記熱伝導性フィラーを混合する方法であってもよい。
【0048】
本発明の一実施形態に係る吸湿材の形状は特に限定されるものではなく、板状、シート状、フィルム状でもよいし、粒子状でもよい。粒子状の吸湿材の形状も特に限定されるものではないが、例えば、略球状、板状等の形状であり得る。また、本発明に係る吸湿材の大きさも特に限定されるものではなく、調湿機に用いる場合、調湿機の構成に応じて適宜選択すればよい。
【0049】
前記高分子ゲルは、乾燥体であることが好ましい。前記吸湿材は、前記高分子ゲルが乾燥体である場合に、空気中の水分を吸湿することができる。前記高分子ゲルは、例えば、減圧(真空)乾燥、熱乾燥、自然乾燥、およびそれらの組み合わせ等により乾燥させた乾燥体であることが好ましく、減圧乾燥または熱乾燥により乾燥させた乾燥体であることがより好ましい。減圧乾燥または熱乾燥によって、高分子ゲルは、重合に用いられる溶媒が昇華して外部に出る際に微細な孔を生じ、密な網目構造を有する高分子ゲルの乾燥体を形成することができる。密な網目構造を有する高分子ゲルは、空気と接触する面積が大きいため、空気中の水分を吸湿する量が多くなる。
【0050】
前記減圧乾燥により乾燥させる場合の減圧度は、10Pa~100Paであることが好ましく、20Pa~50Paであることがより好ましい。
【0051】
前記減圧乾燥は、高分子ゲルを凍結させてから行う、凍結乾燥であることがさらに好ましい。前記高分子ゲルを凍結後に減圧乾燥することによって、高分子ゲルは、重合に用いられる溶媒が昇華して外部に出る際に微細な孔を生じ、さらに密な網目構造を有する高分子ゲルの乾燥体を形成することができる。凍結温度は、-20℃~-60℃であることが好ましく、-30℃~-60℃であることがより好ましい。また、乾燥時間は20時間以上であることが好ましく、30時間以上であることがより好ましい。乾燥時間の上限は、50時間程度であることが好ましい。
【0052】
なお、本発明の一実施形態において、高分子ゲルの乾燥体は、高分子ゲルから水分が完全に除去されている必要はなく、空気中の水分を吸収することができれば、水分を含んでいてもよい。したがって、前記高分子ゲルの乾燥体の含水率は、当該乾燥体が空気中の水分を吸収することができれば、特に限定されるものではないが、例えば、20重量%~30重量%であることが好ましく、10重量%~25重量%であることがより好ましい。なお、ここで含水率とは、高分子ゲルの乾燥重量に対する水分の割合をいう。
【0053】
前記乾燥体に関する説明は、高分子ゲルに関するが、吸湿材についても同様である。
【0054】
〔実施の形態2:吸湿材の製造方法〕
本発明の一実施形態に係る吸湿材の製造方法は、温度刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化する温度応答性高分子を含む高分子ゲルと、熱伝導性フィラーとを含む吸湿材を製造する方法である。
【0055】
本発明の一実施形態における吸湿材の製造方法は、前記温度応答性高分子を含む高分子ゲルと、熱伝導性フィラーとを含む、熱伝導性フィラー含有ゲルを製造する熱伝導性フィラー含有ゲル製造工程と、前記熱伝導性フィラー含有ゲル製造工程で得られた前記熱伝導性フィラー含有ゲルを乾燥する乾燥工程とを少なくとも含んでいればよい。さらに、前記乾燥工程で乾燥した前記熱伝導性フィラー含有ゲルの乾燥体を粉砕する粉砕工程を含んでいてもよい。
【0056】
以下、本発明の一実施形態に係る吸湿材の製造方法を構成する各工程に関して説明する。但し、上述した吸湿材において説明した内容と重複する内容に関しては、その説明を省略する。
【0057】
(熱伝導性フィラー含有ゲル製造工程)
熱伝導性フィラー含有ゲル製造工程は、前記温度応答性高分子を含む高分子ゲルと、熱伝導性フィラーとを含む、熱伝導性フィラー含有ゲルを製造することができる工程であれば特に限定されるものではない。以下に、前記高分子ゲルが、前記温度応答性高分子と親水性高分子との相互浸入高分子網目構造体である場合と、前記温度応答性高分子と親水性高分子とのセミ相互浸入高分子網目構造体である場合を例に挙げて本工程について説明する。前記熱伝導性フィラー含有ゲルは、例えば、以下の方法により製造することができる。
【0058】
〔1〕前記温度応答性高分子を構成するモノマーと前記熱伝導性フィラーとを混合する工程(i)と、前記工程(i)で得られた、前記熱伝導性フィラーを含む前記温度応答性高分子を構成するモノマーを重合および架橋することにより、前記熱伝導性フィラーを含む前記温度応答性高分子の架橋体の架橋網目(a)を形成する工程(ii)と、
前記親水性高分子を構成するモノマーと前記熱伝導性フィラーを混合する工程(iii)と、架橋網目(a)の存在下で、前記工程(iii)で得られた、前記熱伝導性フィラーを含む前記親水性高分子を構成するモノマーを重合および架橋することにより、前記熱伝導性フィラーを含む架橋網目(a)と、前記熱伝導性フィラーを含む前記親水性高分子の架橋体の架橋網目(b)とからなる相互浸入高分子網目構造を形成する工程(iv)とを含む方法。
【0059】
〔2〕前記温度応答性高分子を構成するモノマーと前記熱伝導性フィラーとを混合する工程(i)と、前記工程(i)で得られた、前記熱伝導性フィラーを含む前記温度応答性高分子を構成するモノマーを重合および架橋することにより、前記熱伝導性フィラーを含む前記温度応答性高分子の架橋体の架橋網目(a)を形成する工程(ii)と、
架橋網目(a)の存在下で、前記親水性高分子を構成するモノマーを重合する工程(iii)と、前記工程(iii)で得られた高分子と、前記熱伝導性フィラーとを混合する工程(iv)と、前記工程(iv)で得られた前記熱伝導性フィラーを含む高分子を架橋することにより、架橋網目(a)と、前記熱伝導性フィラーを含む前記親水性高分子の架橋体の架橋網目(b)とからなる相互浸入高分子網目構造を形成する工程(v)とを含む方法。
【0060】
〔3〕前記温度応答性高分子を構成するモノマーを重合する工程(i)と、前記工程(i)で得られた前記温度応答性高分子と、前記熱伝導性フィラーとを混合する工程(ii)と、工程(ii)で得られた前記熱伝導性フィラーを含む温度応答性高分子を架橋することにより、前記熱伝導性フィラーを含む前記温度応答性高分子の架橋体の架橋網目(a)を形成する工程(iii)と、
前記親水性高分子を構成するモノマーと前記熱伝導性フィラーを混合する工程(iv)と、架橋網目(a)の存在下で、前記工程(iv)で得られた、前記熱伝導性フィラーを含む前記親水性高分子を構成するモノマーを重合および架橋することにより、架橋網目(a)と、前記熱伝導性フィラーを含む前記親水性高分子の架橋体の架橋網目(b)とからなる相互浸入高分子網目構造を形成する工程(v)とを含む方法。
【0061】
〔4〕前記温度応答性高分子を構成するモノマーを重合する工程(i)と、前記工程(i)で得られた前記温度応答性高分子と、前記熱伝導性フィラーとを混合する工程(ii)と、工程(ii)で得られた前記熱伝導性フィラーを含む温度応答性高分子を架橋することにより、前記熱伝導性フィラーを含む前記温度応答性高分子の架橋体の架橋網目(a)を形成する工程(iii)と、
架橋網目(a)の存在下で、前記親水性高分子を構成するモノマーを重合する工程(iv)と、前記工程(iv)で得られた高分子と、前記熱伝導性フィラーとを混合する工程(v)と、前記工程(v)で得られた前記熱伝導性フィラーを含む親水性高分子を架橋することにより、架橋網目(a)と、前記熱伝導性フィラーを含む前記親水性高分子の架橋体の架橋網目(b)とからなる相互浸入高分子網目構造を形成する工程(vi)とを含む方法。
【0062】
〔5〕前記温度応答性高分子を構成するモノマーと前記熱伝導性フィラーとを混合する工程(i)と、前記工程(i)で得られた、前記熱伝導性フィラーを含む前記温度応答性高分子を構成するモノマーを重合および架橋することにより、前記熱伝導性フィラーを含む前記温度応答性高分子の架橋体の架橋網目(a)を形成する工程(ii)と、
前記親水性高分子を構成するモノマーと前記熱伝導性フィラーを混合する工程(iii)と、架橋網目(a)の存在下で、前記工程(iii)で得られた、前記熱伝導性フィラーを含む前記親水性高分子を構成するモノマーを重合することにより、前記熱伝導性フィラーを含む架橋網目(a)と、非架橋の前記熱伝導性フィラーを含む前記親水性高分子とからなるセミ相互浸入高分子網目構造を形成する工程(iv)とを含む方法。
【0063】
〔6〕前記温度応答性高分子を構成するモノマーを重合する工程(i)と、前記工程(i)で得られた前記温度応答性高分子と、前記熱伝導性フィラーとを混合する工程(ii)と、前記工程(ii)で得られた前記熱伝導性フィラーを含む前記温度応答性高分子を架橋することにより、前記熱伝導性フィラーを含む前記温度応答性高分子の架橋体の架橋網目(a)を形成する工程(iii)と、
前記親水性高分子を構成するモノマーと前記熱伝導性フィラーを混合する工程(iv)と、架橋網目(a)の存在下で、前記工程(iv)で得られた、前記熱伝導性フィラーを含む前記親水性高分子を構成するモノマーを重合することにより、前記熱伝導性フィラーを含む架橋網目(a)と、非架橋の前記熱伝導性フィラーを含む前記親水性高分子とからなるセミ相互浸入高分子網目構造を形成する工程(v)とを含む方法。
【0064】
〔7〕前記温度応答性高分子を構成するモノマーと前記熱伝導性フィラーとを混合する工程(i)と、前記工程(i)で得られた、前記熱伝導性フィラーを含む前記温度応答性高分子を構成するモノマーを重合することにより、前記熱伝導性フィラーを含む非架橋の前記温度応答性高分子を製造する工程(ii)と、
前記親水性高分子を構成するモノマーと前記熱伝導性フィラーを混合する工程(iii)と、前記熱伝導性フィラーを含む非架橋の前記温度応答性高分子の存在下で、前記工程(iii)で得られた、前記熱伝導性フィラーを含む前記親水性高分子を構成するモノマーを重合および架橋することにより、前記熱伝導性フィラーを含む非架橋の前記温度応答性高分子と、前記熱伝導性フィラーを含む前記親水性高分子の架橋体の架橋網目(b)とからなるセミ相互浸入高分子網目構造を形成する工程(iv)とを含む方法。
【0065】
〔8〕前記温度応答性高分子を構成するモノマーと前記熱伝導性フィラーとを混合する工程(i)と、前記工程(i)で得られた、前記熱伝導性フィラーを含む前記温度応答性高分子を構成するモノマーを重合することにより、前記熱伝導性フィラーを含む非架橋の前記温度応答性高分子を製造する工程(ii)と、
前記熱伝導性フィラーを含む非架橋の前記温度応答性高分子の存在下で、前記親水性高分子を構成するモノマーを重合する工程(iii)と、前記工程(iii)で得られた前記親水性高分子と、前記熱伝導性フィラーとを混合する工程(iv)と、前記工程(iv)で得られた前記熱伝導性フィラーを含む前記親水性高分子を架橋することにより、前記熱伝導性フィラーを含む非架橋の前記温度応答性高分子と、前記熱伝導性フィラーを含む前記親水性高分子の架橋体の架橋網目(b)とからなるセミ相互浸入高分子網目構造を形成する工程(v)とを含む方法。
【0066】
なお、前記〔1〕~〔8〕の方法では、前記熱伝導性フィラーを含む親水性高分子と、前記熱伝導性フィラーを含む温度応答性高分子との相互浸入高分子網目構造またはセミ相互浸入高分子網目構造を形成しているが、親水性高分子と温度応答性高分子とのいずれか一方として、前記熱伝導性フィラーを含んでいないものを用いてもよい。
【0067】
前記温度応答性高分子と親水性高分子との混合物、及び、前記温度応答性高分子と親水性高分子との共重合体についても、同様に、モノマー又は架橋前の高分子溶液に、前記熱伝導性フィラーを混合すればよい。
【0068】
前記方法において、モノマーを重合するための重合方法としては、特に限定されるものではなく、ラジカル重合、イオン重合、重縮合、開環重合等を好適に用いることができる。また、重合に用いられる溶媒としても、モノマーに応じて適宜選択すればよいが、例えば、水、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、酢酸緩衝液、メタノール、エタノール等を好適に用いることができる。
【0069】
重合開始剤としても、特に限定されるものではなく、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;t-ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のパーオキシド類、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等を好適に使用することができる。これらの重合開始剤の中でも、特に、過硫酸塩やパーオキシド類等のような酸化性を示す開始剤は、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン等とのレドックス開始剤としても用いることができる。あるいは、光、放射線等を開始剤として用いてもよい。
【0070】
また、重合温度は特に限定されるものではないが、通常5℃~80℃である。また、重合時間も、特に限定されるものではないが、通常4時間~48時間である。
【0071】
重合の際の、モノマー、架橋剤等の濃度は、前記温度応答性高分子、前記親水性高分子またはこれらの架橋体が得られる濃度であれば特に限定されるものではない。また、前記重合開始剤の濃度も特に限定されるものではなく適宜選択すればよい。
【0072】
前記〔1〕~〔3〕、〔5〕および〔7〕の方法において、モノマーを重合および架橋することにより、前記熱伝導性フィラーを含む前記温度応答性高分子または前記熱伝導性フィラーを含む前記親水性高分子の架橋体の架橋網目を形成する方法とは、モノマーを架橋剤の存在下で重合する方法であってもよいし、モノマーを重合して高分子とした後に架橋剤により架橋する方法であってもよい。
【0073】
前記〔1〕〔5〕および〔7〕の工程(iv)では、工程(ii)で形成された高分子またはその架橋体との間に、架橋が形成されないような重合条件または架橋条件を適宜選択すればよい。また、前記〔2〕の工程(v)では、工程(ii)で形成された高分子またはその架橋体との間に、架橋が形成されないような重合条件または架橋条件を適宜選択すればよい。また、前記〔3〕および〔6〕の工程(v)では、工程(iii)で形成された高分子またはその架橋体との間に、架橋が形成されないような重合条件または架橋条件を適宜選択すればよい。また、〔4〕の工程(vi)では、工程(iii)で形成された高分子またはその架橋体との間に、架橋が形成されないような重合条件または架橋条件を適宜選択すればよい。また、〔8〕の工程(v)では、工程(ii)で形成された高分子またはその架橋体との間に、架橋が形成されないような重合条件または架橋条件を適宜選択すればよい。
【0074】
前記〔1〕~〔8〕の方法において、前記温度応答性高分子を構成するモノマー、前記親水性高分子を構成するモノマー、および架橋剤については、前記(I)で説明したとおりである。
【0075】
また、前記〔1〕~〔8〕の方法において、前記温度応答性高分子または前記親水性高分子が、最初から、例えばセルロース誘導体、多糖類等の高分子である場合は、「前記温度応答性高分子を構成するモノマーを重合および架橋する」は、「前記温度応答性高分子を架橋する」に、「前記親水性高分子を構成するモノマーを重合および架橋する」は、「前記親水性高分子を架橋する」に、読み替えるものとする。
【0076】
また、前記〔1〕~〔8〕の方法においては、前記温度応答性高分子またはその架橋体を製造した後に、得られた前記温度応答性高分子またはその架橋体の存在下で、前記親水性高分子またはその架橋体を製造しているが、前記親水性高分子またはその架橋体を製造した後に、得られた前記親水性高分子またはその架橋体の存在下で、前記温度応答性高分子またはその架橋体を製造してもよい。
【0077】
また、前記〔1〕~〔8〕の方法においては、相互浸入高分子網目構造またはセミ相互浸入高分子網目構造は、前記温度応答性高分子またはその架橋体を製造した後に、得られた前記温度応答性高分子またはその架橋体の存在下で、前記親水性高分子またはその架橋体を製造する2段階の工程で製造しているが、前記温度応答性高分子またはその架橋体と、前記親水性高分子またはその架橋体を、前記温度応答性高分子またはその架橋体と、前記親水性高分子またはその架橋体との間に架橋が形成されないような重合条件または架橋条件を選択すれば、1段階で同時に行うこともできる。例えば、前記親水性高分子またはその架橋体の製造に用いる重合方法と架橋剤と、前記親水性高分子またはその架橋体の製造に用いる重合方法と架橋剤とが、異なるような組合せを用いれば、前記高分子ゲルを1段階の工程により製造することができる。
【0078】
(乾燥工程)
乾燥工程では、前記熱伝導性フィラー含有ゲル製造工程で得られた熱伝導性フィラー含有ゲルを乾燥して、熱伝導性フィラー含有ゲルの乾燥体を得る。
【0079】
熱伝導性フィラー含有ゲルを乾燥する方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を適宜用いることができる。熱伝導性フィラー含有ゲルを乾燥する方法としては、例えば、加熱による乾燥、減圧下での乾燥、凍結乾燥、溶媒置換法等を挙げることができる。
【0080】
(粉砕工程)
乾燥工程によって得られた、前記熱伝導性フィラー含有ゲルの乾燥体は、必要に応じて、粉砕工程において、粉砕する。
【0081】
粉砕の方法としても、特に限定されるものではないが、例えば、ローター等の機械式粉砕機、ボールミル、気流式粉砕機等を用いて前記熱伝導性フィラー含有ゲルの乾燥体を粉砕し、必要に応じてさらに分級して粒子状の吸湿材とすることができる。
【0082】
また、粒子状の吸湿材は、熱伝導性フィラー含有ゲル製造工程において、乳化重合を用いることにより、熱伝導性フィラー含有ゲル微粒子を合成することによっても製造することができる。
【0083】
〔実施の形態3:調湿機〕
本発明の一実施形態に係る吸湿材は、空気中の水分の吸湿と吸湿した水分の放出を可逆的に行えることから、調湿機に特に好適に用いることができ、該吸湿材を用いた調湿機によれば、過冷却や大きな熱量を用いずに効率よく調湿を行うことができる。それゆえ、本発明の一実施形態に係る吸湿材を利用した調湿機も本発明に含まれる。以下、本発明の一実施形態に係る調湿機について説明する。本発明の一実施形態に係る調湿機は、温度刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化する温度応答性高分子を含む高分子ゲルと、熱伝導性フィラーとを含む吸湿材と、前記温度応答性高分子の水との親和性を低下させるための温度刺激を付与する刺激付与部とを備えている。前記吸湿材については、〔実施の形態1〕において説明した内容と重複する内容に関しては、その説明を省略する。
【0084】
本発明の一実施形態に係る調湿機は、吸気口と、排気口とを有する調湿機本体が備えられている。調湿機本体の内部には、本発明の吸湿材を担持した複数の調湿ユニットと、調湿ユニットが空気中の水分を吸収する領域である調湿エリアと、空気中の水分を吸収した調湿ユニットが吸湿した水分を水として放出する領域である脱水エリアと、放出された水を貯水する排水タンクと、吸湿される空気を吸気口から取り込み、吸湿された空気を排気口から排出するための送風ファンとが備えられている。なお、本実施の形態では、吸湿材として、温度刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化する温度応答性高分子を含む高分子ゲルと、熱伝導性フィラーとを含む吸湿材を用いている。
【0085】
複数の調湿ユニットは、調湿エリアと、脱水エリアとの間を移動可能となっている。前記脱水エリアには、前記温度応答性高分子の水との親和性を低下させるための温度刺激を付与する刺激付与部が備えられている。前記刺激付与部は、例えば加熱ヒーターである。
【0086】
調湿機に吸気された空気(湿り空気)は、調湿エリアを通過するときに、調湿ユニットの吸湿材と接触する。室温において親水性である吸湿材は、空気(湿り空気)中の水分を吸収し、これによって、調湿エリアを通過するときに湿り空気は吸湿され、吸湿された空気(乾燥空気)が排気口から排気される。
【0087】
空気(湿り空気)中の水分を吸収した調湿ユニットは、調湿エリアから脱水エリア内へと移動する。脱水エリア内で、脱水エリアへと移動した調湿ユニットは、刺激付与部により吸湿材に温度刺激が与えられることにより、吸湿材は疎水性となる。その結果、吸湿材が吸湿した水分は、水として吸湿材から放出される。そして、放出された水は排水タンクに排出される。
【0088】
このとき、本発明の一実施形態に係る調湿機では、前記高分子吸湿材にフィラーが含有されていることにより、熱伝導性が高く、放水性により優れる。
【0089】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【0090】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る吸湿材は、温度刺激に応答して水との親和性が可逆的に変化する温度応答性高分子を含む高分子ゲルと、熱伝導性フィラーとを含む構成を備えている。
【0091】
前記の構成によれば、熱伝導性が高く、放水性を備えた優れた吸湿材を実現することができるという効果を奏する。
【0092】
本発明の態様2に係る吸湿材は、前記態様1において、前記吸湿材に対する、前記熱伝導性フィラーの含有率は、0.1重量%~30重量%であってもよい。
【0093】
前記の構成によれば、吸湿性を保つとともに、熱伝導性を制御し、放水性を備えた優れた吸湿材を実現することができるという効果を奏する。
【0094】
本発明の態様3に係る吸湿材は、前記態様1または2において、前記熱伝導性フィラーは、熱源からの熱を受ける前記吸湿材の面に対して垂直方向に配向していてもよい。
【0095】
前記の構成によれば、吸湿材に含まれる水分を効率よく放水することができるという効果を奏する。
【0096】
本発明の態様4に係る吸湿材は、前記態様1~3のいずれかにおいて、前記熱伝導性フィラーは、炭素質材料、金属粒子、金属酸化物、金属水酸化物、窒素化合物、炭素化合物、セラミック類、及び、セルロースからなる群より選択される少なくとも1種の熱伝導性フィラーでありうる。
【0097】
前記の構成によれば、吸湿材に含まれる水分を効率よく放水することができるという効果を奏する。
【0098】
本発明の態様5に係る吸湿材は、前記態様1~4のいずれかにおいて、前記高分子ゲルは、下記(a)~(d)のいずれかであってもよい。
(a) 前記温度応答性高分子と親水性高分子との混合物
(b) 前記温度応答性高分子と親水性高分子との共重合体
(c) 前記温度応答性高分子と親水性高分子との相互浸入高分子網目構造体
(d) 前記温度応答性高分子と親水性高分子とのセミ相互浸入高分子網目構造体前記刺
前記の構成によれば、空気中の水分を吸収した吸湿材を、加熱するだけで吸湿した水分を、液体状態で直接取り出すことができるという効果を奏する。
【0099】
〔実施例1~3、比較例1〕
<実施例1:Alg/HPC セミ相互浸入高分子網目構造体と、Single wall CNTとを含む吸湿材の製造>
アルギン酸(Alg)ナトリウム100mgと、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)(和光純薬工業株式会社、ヒドロキシプロピルセルロース150~400cP)100mgとを超純水400mlに溶解し、Alg/HPC溶液を得た。得られたAlg/HPC溶液に、AlgとHPCとの合計重量に対して、シングルウォールカーボンナノチューブ(Single wall CNT)として0.5重量%となるように、シングルウォールカーボンナノチューブ(名城ナノカーボン製、eDIPS-INK)を添加して混合した。得られた混合液に、1Mの塩化カルシウム水溶液300mLを加えて24時間静置することにより、Alg/HPC セミ相互浸入高分子網目構造体と、Single wall CNTとの混合物を得た。得られた混合物を-30℃で凍結し、20Paの減圧条件下で30時間乾燥させて、Alg/HPC セミ相互浸入高分子網目構造体と、Single wall CNTとの混合物の乾燥体(吸湿材1)を得た。
【0100】
<実施例2>
Alg/HPC溶液に添加するSingle wall CNTの量を、AlgとHPCとの合計重量に対して1重量%とした以外は実施例1と同様にして、Alg/HPC セミ相互浸入高分子網目構造体と、Single wall CNTとの混合物の乾燥体(吸湿材2)を得た。
【0101】
<実施例3>
Alg/HPC溶液に添加するSingle wall CNTの量を、AlgとHPCとの合計重量に対して5重量%とした以外は実施例1と同様にして、Alg/HPC セミ相互浸入高分子網目構造体と、Single wall CNTとの混合物の乾燥体(吸湿材3)を得た。
【0102】
<比較例1:Alg/HPC セミ相互浸入高分子網目構造体の合成>
Alg/HPC溶液にSingle wall CNTを添加しなかった以外は実施例1と同様にして、Alg/HPC セミ相互浸入高分子網目構造体の乾燥体(比較吸湿材1)を得た。
【0103】
<吸湿材の熱伝導性評価>
吸湿材1~3および比較吸湿材1を、30℃環境下、加熱ヒーターの温度50℃の一定温度として加熱し、吸湿材の温度変化を経時的に測定することにより、これらの吸湿材の熱伝導について評価した。なお、評価に用いた吸湿材1~3および比較吸湿材1としては、吸湿させていないものを用いた。
【0104】
図2に吸湿材の熱伝導性評価に使用した装置を示す。加熱ヒーターの上に吸湿材を直接載せ、吸湿材の上に固定板としてガラス板を載せた。ヒーターと接する吸湿材の面と反対の吸湿材の面、すなわち、ガラス板と接する吸湿材の面の複数箇所の温度を熱電対にて測定し、それらの箇所での温度の平均値をその時点の温度とした。
【0105】
図3に時間-温度を示す。
図1中、縦軸は温度(単位:℃)を示し、横軸は時間(単位:分)を示す。
図3に示されるように、吸湿材1~3および比較吸湿材1に含まれるSingle wall CNTの、吸湿材に含まれるAlgとHPCとの合計重量に対する割合が高くなるほど、温度上昇が速く、到達温度も高くなり、熱伝導性が向上した。
【0106】
〔実施例4~6、比較例2〕
<実施例4>
実施例1と同様にして、Alg/HPC セミ相互浸入高分子網目構造体と、Single wall CNTとの混合物の乾燥体(吸湿材1)を得た。
【0107】
<実施例5>
実施例2と同様にして、Alg/HPC セミ相互浸入高分子網目構造体と、Single wall CNTとの混合物の乾燥体(吸湿材2)を得た。
【0108】
<実施例6>
実施例3と同様にして、Alg/HPC セミ相互浸入高分子網目構造体と、Single wall CNTとの混合物の乾燥体(吸湿材3)を得た。
【0109】
<比較例2>
比較例1と同様にして、Alg/HPC セミ相互浸入高分子網目構造体の乾燥体(比較吸湿材1)を得た。
【0110】
<吸湿材の吸湿挙動の評価>
吸湿材1~3および比較吸湿材1を、温度25℃、湿度80%RHの恒温恒湿条件下で静置し、重量変化を経時的に測定することにより、これらの吸湿材の吸湿挙動について検討した。
【0111】
図4に時間-吸湿率を示す。
図4中、縦軸は含水率(
図4中、「Amount of moisture absorption」と記載。含水率は、言い換えれば、空気中で吸湿した水分の量である。単位:g/g-乾燥体(
図4中、「g/g-dried gel」と記載。))を示し、横軸は時間(単位:時間)を示す。
図4に示されるように、吸湿材に含まれるSingle wall CNTの、吸湿材に含まれるAlgとHPCとの合計重量に対する割合が高くなるほど、吸湿速度が速くなった。また、吸湿材1~3は、Single wall CNTが含まれていても、0.9g/g乾燥体以上の吸湿量であった。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明に係る吸湿材は、吸湿材として非常に有用であり、調湿機に好適に用いることができる。