(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】ジアセチレン誘導体
(51)【国際特許分類】
C07C 321/28 20060101AFI20220805BHJP
C09K 19/18 20060101ALN20220805BHJP
【FI】
C07C321/28 CSP
C09K19/18
(21)【出願番号】P 2018084511
(22)【出願日】2018-04-25
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(72)【発明者】
【氏名】荒川 優樹
(72)【発明者】
【氏名】乾 敏祥
(72)【発明者】
【氏名】辻 秀人
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-167068(JP,A)
【文献】米国特許第05457235(US,A)
【文献】特開2004-244637(JP,A)
【文献】特表平07-501850(JP,A)
【文献】Okada, Shuji et al.,Preparation and nonlinear optical property of polydiacetylenes from unsymmetrical diphenylbutadiynes with trifluoromethyl substituents,Molecular Crystals and Liquid Crystals,1990年,(1990), 183, 81-90
【文献】Neto, Jose S. S. et al.,Iron-Promoted Tandem Cyclization of 1,3-Diynyl Chalcogen Derivatives with Diorganyl Dichalcogenides for the Synthesis of Benzo[b]furan-Fused Selenophenes,Advanced Synthesis & Catalysis,2016年,(2016), 358(22), 3572-3585
【文献】Jacubert, Maud et al.,,MPHT-Promoted bromocyclization of ortho-substituted arylalkynes: application to the synthesis of 2-substituted 3-bromobenzofurans and -benzo[b]thiophenes,European Journal of Organic Chemistry,2010年,(2010), (23), 4492-4500
【文献】Jacubert, Maud et al.,p-Toluenesulfonic acid-promoted selective functionalization of unsymmetrical arylalkynes: a regioselective access to various arylketones and heterocycles,Tetrahedron,2010年,(2010), 66(21), 3775-3787
【文献】Mehta, Saurabh et al.,Iodine/palladium approaches to the synthesis of polyheterocyclic compounds,Journal of Organic Chemistry,2010年,(2010), 75(5), 1652-1658
【文献】荒川優樹,末端にアルキルチオ基を有する棒状液晶分子,液晶,2017年,Vol.21, No.4, Page.312-316 (2017)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C09K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表されるジアセチレン誘導体。
【化1】
(式中、R
1は、置換基を備えていても良い炭素数
2~8、又は12のアルキル基、R
2は置換基を備えていても良い炭素数6のアルキル基、A
1は非置換の1,4-フェニレン基である。)
【請求項2】
前記R
1は、非置換のアルキル基でもよい請求項1記載のジアセチレン誘導体。
【請求項3】
前記R
1のアルキル基の炭素数は、偶数であることを特徴とする請求項1または2に記載のジアセチレン誘導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なジアセチレン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子の一層の高機能化が求められている。液晶表示素子の性能は、その構成物質である液晶物質やこれを含む液晶組成物の物性に大きく依存する。一般に、液晶物質は、液晶分子の長軸方向の誘電率とそれに直行方向の誘電率とが異なる誘電異方性を備えている。また、液晶分子の長軸方向に平行になる場合の屈折率と、垂直になる場合の屈折率が異なる屈折率異方性(複屈折)を有している。
【0003】
液晶表示素子においては、例えば、二枚のガラス基板の間にネマチック液晶を封入し、液晶分子の配向方向が二枚のガラス基板の間で90°捩じれるように作製されたねじれネマチック液晶セル(TN液晶セル)が良く知られている。このTN液晶セルでは、電圧印加により液晶分子の配向方向が操作され透過光強度を変化させるが、液晶分子の誘電異方性が大きくなると、透過光強度が変化し始める閾値電圧を小さくすることができ、液晶表示素子の駆動電圧を低電圧化することができる。
【0004】
また、液晶分子の複屈折が大きくなれば、光が透過する際の位相差が大きくなる。この複屈折の大きな液晶分子を位相差フィルムにドープすれば、高い位相差発現性を有する薄い位相差フィルムを形成することができる。このため、複屈折や、誘電異方性のより大きな液晶物質や液晶組成物が必要とされている。
【0005】
液晶セルにおいては、液晶状態となる温度範囲や誘電異方性等の特性を所望の状態とするため、単一の液晶物質を使用するよりも、数種類以上の液晶物質や非液晶性の化合物を混合した液晶組成物が使用されていることが多い。複屈折の大きな物質を配合すれば、液晶組成物全体としての複屈折や誘電異方性を向上させることができるので、複屈折の大きな物質について、液晶物質のみならず非液晶性の物質についても開発が進められている。
【0006】
ここで、複屈折の大きな物質として、例えば、ジアセチレン骨格の両端に、アルキル基やアルコキシ基を結合したフェニレン基やナフチレン基が結合されたジアセチレン系化合物が提案されており、大きい複屈折を利用して液晶表示素子の応答性能を向上するための液晶部材として使用することが述べられている(特許文献1,2,3,4、非特許文献1参照)。しかしながら、当該複屈折の値は不明であり、また熱や光に対する安定性も不明である。
【0007】
また、近年、硫黄原子を含む分子構造を有する物質が、複屈折や誘電率、更には誘電異方性を向上させ得ることが知られており、かかる物質として、硫黄原子を含むジアセチレン系化合物が提案されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平11-001445号公報
【文献】特開平06-211704号公報
【文献】米国特許 第5338481号公報
【文献】特表2004-518608号公報
【文献】特開2012-167068号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】B. Grant, Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1978, vol. 48, 175-182
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、複屈折や誘電異方性が十分に大きく且つ化学的に安定な物質はそれ程多くないのが現状である。また、従来から、液晶組成物の特性の改善を行うために複数の物質を混合することが行われているが、配合する物質の種類が多くなりがちで、調整が煩雑になっている。複屈折や誘電異方性が十分に大きな物質を用いることできれば、少ない材料種で広範囲の特性調整が可能となるが、このような物質についての選択肢が少ないため、煩雑な調整作業を回避できないばかりか、実用的に使用可能な液晶組成物の配合設計に限界が生じているという問題点があった。
【0011】
また、配合する物質の混和性(相溶性)が不良であると、液晶組成物が光学的に不均一となり、液晶セルの光学特性が低下してしまう。このため、複屈折や誘電異方性が十分に大きな物質について、相溶性の観点からも自由度の高い選択ができることが望ましい。しかし、その要求を十分に満足する程、多様な物質が提供されていないという問題点があった。
【0012】
ここで、非液晶性のものよりも液晶性のものの方が液晶物質との混和性が良好な傾向にある。このため、高複屈折性、高誘電異方性の液晶物質がより強く望まれている。一方で、複屈折や誘電異方性を向上させるには、その分子構造が異方性を有し、かつ電子状態が密であることが必要条件となるため、大きな分子間力による相転移温度(特に、結晶相から液晶相への相転移温度、液晶物質の融点(以下、適宜「Tm」と称す。))の上昇が生じてしまう。故に、複屈折、誘電異方性といった特性を向上させ、且つ室温近傍で液晶状態となる液晶物質を創出することは困難となっていた。
【0013】
更には、上述の硫黄原子を含む分子構造は、複屈折や誘電異方性を向上させ得るものであるが、液晶性を発現させることが難しく、特許文献5に開示される硫黄原子を含むジアセチレン化合物は、従来の化合物に比べて大きな複屈折を有するものの、必ずしも単体で液晶性を示すもの(液晶物質)ではない。
【0014】
このため、室温近傍の温度領域で液晶性を発現し、且つ複屈折や誘電異方性のより大きな液晶物質も十分に提供されていないという問題点があった。
【0015】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、複屈折、誘電異方性が比較的大きく且つ化学的に安定な新規のジアセチレン誘導体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的を達成するために、請求項1記載のジアセチレン誘導体は、下記の一般式(1)で表されるジアセチレン誘導体である。
【0017】
【化1】
(式中、R
1は、置換基を備えていても良い炭素数
2~8、又は12のアルキル基、R
2は置換基を備えていても良い炭素数6のアルキル基、A
1は非置換の1,4-フェニレン基である。)
【0018】
請求項2記載のジアセチレン誘導体は、請求項1記載のジアセチレン誘導体において、R
1
は、非置換のアルキル基でもよい。
【0021】
請求項3記載のジアセチレン誘導体は、請求項1または2に記載のジアセチレン誘導体において、前記R1のアルキル基の炭素数は偶数である。
【発明の効果】
【0022】
請求項1記載のジアセチレン誘導体によれば、比較的大きな複屈折および誘電異方性を有するので、光学デバイスや電子光学的デバイス等に好適に用いることができ、例えば、液晶表示素子(液晶組成物)の材料として用いることができる。また、本ジアセチレン誘導体を用いることで、液晶組成物の複屈折や誘電異方性を向上させることができるという効果がある。
【0023】
また、A
1
が芳香族である場合は、非芳香族系の複素環基を構造中に導入する場合に比べて容易に合成できるという効果がある。
【0024】
さらに、本発明のジアセチレン誘導体によれば、液晶性を備えるものであるので、本ジアセチレン誘導体単体で液晶物質として用いることができるという効果がある。また、例えば、液晶組成物を形成する場合に本ジアセチレン誘導体を用いれば、非液晶性のものに比べて混和性に優れるので、濁りが生じることを抑制でき、光学特性の低下を抑制することができるという効果がある。
【0026】
請求項3記載のジアセチレン誘導体によれば、R
1のアルキル基の炭素数は、偶数であるので、ネマチック液晶相を形成する温度範囲をより広くすることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】ジフェニルジアセチレン誘導体の相転移挙動を説明する図である。
【
図2】実施例1および比較例1のジアセチレン誘導体の測定波長550nmにおける複屈折の温度依存性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0029】
本発明は、下記の一般式(1)で表されるジアセチレン誘導体である。
【0030】
【化2】
本発明のジアセチレン誘導体は、分子構造の中央部にジアセチレン(以下、適宜「1,3-ブタジイン」と称することがある。)骨格を備えている。ジアセチレン骨格部分は、本発明の一般式(1)の化合物の特徴である。これらの化合物は化学的及び熱的に安定である。また、一般的に、ジアセチレン骨格を有する化合物は高い異方性を発現する。
【0031】
更に、本発明のジアセチレン誘導体は、ジアセチレン骨格の両端に環状基A1を備えている。A1の分子構造は、ジアセチレン骨格との間で共鳴構造を取り得るものが好適であり、芳香族の炭素環式基やヘテロ原子を有する複素環基があげられる。A1は単環であっても縮合環であってもよい。
【0032】
複素環基としては、好ましくは5員もしくは6員の複素環基、あるいは複素環基を含む2個または3個の縮合環を含む基であり、複素環基を構成する原子は1個または2個以上のヘテロ原子、特にN、O、SおよびSeから選択されるヘテロ原子が好ましい。
【0033】
かかる複素環基としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、オキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、セレノフェン、イミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン等から誘導される基を挙げることができる。特に好ましくは、フラン-2,5-ジイル、チオフェン-2,5-ジイル、ピロール-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイルである。
【0034】
これらの基は、置換基を備えていても良く、かかる置換基としては、F、Cl、Br、I、CN、CH3、C2H5、OCH3、OC2H5、CF3、OCF3、OCHF2、OC2F5またはSCF3を例示できる。
【0035】
芳香族環基としては、例えば、フェニレン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセンおよびフェナントレン等から誘導される基が例示される。この芳香族環基は、置換基を備えていても良く、かかる置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基や、ハロゲン化アルキル基、メトキシ基若しくはエトキシ基等の炭素数1~20のアルコキシ基が例示されるが、これに限られない。また、置換基の数は1つであっても2以上であってもよい。
【0036】
本発明のジアセチレン誘導体において、A1が1,4-フェニレンである場合は、特に好適である。係る場合は、下記一般式(2)で示されるジフェニルジアセチレン構造を備えた化合物となる。
【0037】
【0038】
尚、1,4-フェニレンは、置換基を備えていても良く、かかる1,4-フェニレンとして、例えば、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、3-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2-クロロ-1,4-フェニレン、2-シアノ-1,4-フェニレン、2-メチル-1,4-フェニレン、3-メチル-1,4-フェニレンなどを挙げることができる。
【0039】
特に本アセチレン誘導体を液晶性とする場合には、上記の環状基は、無置換の1,4-フェニレンが好適であり、一般式(2)で示された分子構造を有するジアセチレン誘導体は、その構造に従いネマチック液晶性やスメクチック液晶性を示すものとなる。
【0040】
また、本発明のジアセチレン誘導体は、環状基の夫々に結合する末端基R1,R2Sを備えている。即ち、本アセチレン誘導体は、その両側の末端基が異なる原子団で構成された非対称の分子構造を有している。
【0041】
一方の環状基に結合する末端基R1は、好適には置換基を備えていてもよいアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基である。
【0042】
R1が備える置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、メトキシ基若しくはエトキシ基等のアルコキシ基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基、ニトロ基などが例示されるが、これに限られるものではない。また、これらの基によって、R1は、一置換若しくは多置換されていても良い。
【0043】
具体的なR1としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル基等の直鎖状のアルキル基や、2-メチルプロピル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、3-メチルペンチル、2-メチルヘキシル、2-メチルデシル基等の分岐鎖を備えたアルキル基が例示される。また、2-フルオロエチル、3-フルオロプロピル、4-フルオロブチル、6-フルオロヘキシル、4,4-ジフルオロブチル、6,6-ジフルオロヘキシル、2-クロロエチル、3-クロロプロピル、4-クロロブチル、6-クロロヘキシル、ペルフルオロエチル、ペルフルオロブチル、1-シアノエチル、1-シアノブチル、2-シアノブチル、1-トリフルオロメチルエチル、1-トリフルオロメチルブチルなどの置換基を備えたアルキル基や、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、トリフルオロメトキシ、2-フルオロブトキシ、2-フルオロヘキシルオキシ基等のアルコキシ基および置換基を備えたアルコキシ基が例示される。
【0044】
更に、R1として、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル基等、炭素数が2~20のアルケニル基や、前述の置換基を有するこれらのアルケニル基が例示される。
【0045】
ここで、R1の炭素数は、1以上であれば良いが、好適には2以上である。また、R1の炭素数は、30以下であってよく、合成原料の入手の容易さから20以下であることが望ましく、より好適には16以下である。特に、本アセチレン誘導体を液晶性とするためには、R1は、アルキル基またはアルコキシ基であることが望ましく、その場合、炭素数は2以上が好ましい。このR1の分子鎖長を変更することで、スメクチック相およびネマチック相の発現状態を制御することができる。また、R1をアルケニル基とする場合、その炭素数は2以上である。R1(即ち末端基)に不飽和結合が含まれると平均屈折率が増大する傾向となり、その結果、複屈折を向上させ得る。
【0046】
他方の末端基R2Sは硫黄原子を分子構造中に備えたものであり、硫黄原子を介して環状基に結合する構造となっている。この硫黄原子が分子構造中に導入されることにより、本発明のジアセチレン誘導体の複屈折、誘電率、誘電異方性を向上させるものとなっている。
【0047】
この末端基R2Sは置換基を備えていてもよいアルキルチオ基またはアルケニルチオ基である。置換基としては、上述したR1の置換基と同様であり、また、これら置換基によって、R2が一置換若しくは多置換されていても良い。
【0048】
具体的なR2としては、上述したR1と同様のアルキル基、アルケニル基が例示される。
【0049】
このR2の炭素数は1以上、30以下であってよく、合成原料の入手の容易さから20以下であることが望ましい。R2がアルキル基の場合であれば、より好適にはR2の炭素数は1以上で、6以下であることが好ましく、特に好適には、炭素数1以上、2以下である。
【0050】
また、上述したように末端基への不飽和結合の導入は複屈折を向上させ得るものであるが、合成の容易さから、R1よりもR2に導入される方が望ましい。その場合は、即ち、R2がアルケニル基の場合であり、炭素数は2以上となる。
【0051】
尚、R1およびR2の炭素数はそれぞれ異なっていても同じでも良く、好ましくは、本ジアセチレン誘導体の分子構造中の非対称性が大きくなるよう選択される。
【0052】
上述したように、本ジアセチレン誘導体では、両末端基の構造は異なっており、硫黄原子を含む末端基は、一方の環状基にのみ備えられており、他方の環状基に結合する末端基には硫黄原子は含まれない。例えば、硫黄原子を含むアルキルチオ基等は分極率が高く、複屈折の向上に有効な原子団である。一方で、アルキルチオ基を導入した棒状分子は液晶性となり難い。例えば、ジフェニルジアセチレン骨格の末端基が、共にアルキルチオ基であると液晶性を発現しない。しかし、一方の末端基のみを硫黄原子が含まれる原子団とすることで、本ジアセチレン誘導体はその構造に従いネマチック液晶性やスメクチック液晶性を発現するものとなっているのである。その結果、本ジアセチレン誘導体は、硫黄原子に起因した高い複屈折を備えつつもその融点の低温化を実現し、室温近傍にて液晶性を発現するものとなっている。
【0053】
R1とR2は、直鎖状であっても分岐鎖を有していてもよいが、本ジアセチレン誘導体を液晶性とする場合には、直鎖状の無置換のアルキル基であることが好適である。
【0054】
更には、R1,R2は、その末端に分極性の大きな置換基や熱や光によって反応して重合する反応性基を具有していても良い。
【0055】
図1は、本発明のジアセチレン誘導体の一態様であるジフェニルジアセチレン誘導体を用いてジフェニルジアセチレン誘導体の相転移挙動を説明する図である。具体的には、
図1には、アルキル基(R
1)の炭素数が2~12であるジフェニルジアセチレン誘導体の液晶相の相転移挙動が示されている。
【0056】
図1(a)は、ネマチック液晶相またはスメクチック液晶相を形成する温度範囲と末端基R
1の炭素数との関係を表した図である。横軸はR
1の炭素数(アルキル基の炭素数(n))を示し、縦軸は温度(℃)を示している。また、白抜きの四角(□)は、等方相から液晶相への相転移温度(以下、適宜「T
N」と称す。)を示すものであり、白抜きの丸(○)は、液晶相(ネマチック液晶相とスメクチック液晶相との両者を含む)から結晶相への相転移温度(以下、適宜「T
Cr」と称す。)を示している。
【0057】
図1(a)において、白抜きの四角(□)を目安としてこれより上方は等方相の領域であり、白抜きの丸(○)を目安としてこれより下方は結晶相の領域となる。そして、白抜きの四角(□)と白抜きの丸(○)との間の領域が液晶相となる。
【0058】
この
図1(a)の各相転移温度(T
N,T
Cr)のそれぞれを、マイクロソフト社のエクセル(登録商標)を用い、線形近似により近似直線を算出すると、ジフェニルジアセチレン誘導体の等方相-ネマチック相転移ラインが、y=-0.5885n+79.945で求められる。また、同様に液晶相-結晶相転移点の相転移ラインが、y=-2.9203n+58.482と求められる。その結果、炭素数16(n=16)の場合、T
N=70.5℃、T
Cr=11.8℃となる。つまり、R
1の炭素数が16までの範囲において、本ジフェニルジアセチレン誘導体は室温において液晶相を形成するものとなること、さらには期待される液晶相温度範囲は58.7℃となることが示されている。
【0059】
図1(b)は、ネマチック液晶相を形成する温度範囲と末端基R
1の炭素数との関係を表した図であり、
図1(a)と同様に、横軸はR
1の炭素数を示し、縦軸は温度(℃)を示している。また、白抜きの四角(□)はT
Nを示しており、白抜きの丸(○)は、T
Crまたは、ネマチック液晶相からスメクチック液晶相への相転移温度(以下、適宜「T
Sm」と称す。)を示している。尚、
図1(b)に、参考として、スメクチック液晶相から結晶相への相転移温度(T
Cr)は、白抜きの三角(△)にて示している。
【0060】
図1(b)に示したように、白抜きの四角(□)と白抜きの丸(○)との間の領域がネマチック液晶相となる領域である。
図1(a)と同様に近似直線を算出すると、等方相-ネマチック相転移点ラインがy=-0.5885n+79.945であり、ネマチック相-結晶相転移(炭素数12においてはネマチック相-スメクチック相転移)ラインがy=0.1303n+44.972と求められる。つまり、R
1の炭素数が16までの範囲において、本ジフェニルジアセチレン誘導体は、T
N=70.5℃、T
Cr若しくはT
Sm転移=47.1℃となり、R
1の炭素数が16までの範囲において、本ジフェニルジアセチレン誘導体が十分にネマチック相を形成し得ることが示されている。
【0061】
また、R
1の炭素数は、奇数であるよりも偶数であることが好ましい。
図1に示すように炭素数が偶数である場合、奇数である場合に比べて、ネマチック相を形成する温度範囲を広くすることができるからである。
【0062】
次に、本発明のジアセチレン誘導体の合成方法について説明する。本発明のジアセチレン誘導体は、それ自体公知の反応を適宜組み合わせることで製造することができる。
【0063】
具体的には、例えば、Jacs,2016,138(38),PP.12348-12351に記載されたように、Glaser-Hay Coupling反応を用いて製造することができる。
【0064】
かくして得られる本発明のジアセチレン誘導体は、液晶物質に混合して複屈折を向上させることができる。更には、ジフェニルジアセチレン骨格を備えた場合にあっては、単独で液晶性を示すものとできる。液晶性を示す場合は当該誘導体に導入された基や全体の構造により液晶相挙動(相転移温度)や複屈折が異なるが、液晶相から等方相へ転移する等方相転移温度(以下、適宜「Ti」と称す。)より10℃低い液晶相温度で測定した複屈折Δn(550nmで測定)は好ましくは0.25以上、特に0.30以上を示すことが好ましい。
【0065】
本発明のジアセチレン誘導体を含む液晶組成物としては、構成する他の成分にネマチック相を示す化合物を用いて構成することが好ましい。かかる物質としては、例えば、アゾキシベンゼン類等の公知の液晶物質やこれらの混合物を挙げることができる。
【実施例】
【0066】
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが本発明はこれらの例に制限されるものではない。
【0067】
以下の実施例および比較例では、下記の機器を用いて観察、分析、測定を行った。
1H NMR:JNM-ECS 400(日本電子株式会社製)
13C NMR:Avans III 400(BRUKER ANALYTIK 社製)
FT-IR:FT/IR-4200(日本分光株式会社製)
偏光顕微鏡:BX50(オリンパス株式会社製)
ホットステージ:LK-600PM(リンカム社製)
熱分析装置:DSC-60(株式会社島津製作所社製)
評価用液晶セル:KSRP-03/B311PINSS05(EHC社製)
分光器:USB4000(Ocean optics,Inc.製)
【0068】
(実施例1)1-Heptyl-4-[4-(4-hexylthiophenyl)-1,3-butadiynyl]benzeneの合成
下記合成スキームに従って、1-Heptyl-4-[4-(4-hexylthiophenyl)-1,3-butadiynyl]benzeneの合成を行った。尚、説明を簡便にするために、本化合物について、以下、適宜、「6S‐DPDA‐7」と称すことがある。
【0069】
【化4】
(1)1-Bromo-4-hexylthiobenzene(化合物1)の合成
100 mLなす型フラスコに4‐ブロモベンゼンチオール3.00 g(15.9 mmol)、1‐ブロモヘキサン2.62 g(15.9 mmol)、炭酸カリウム6.55 g(47.4 mmol)、アセトニトリル50 mLを加えて90℃のオイルバスで24時間撹拌した。有機層に酢酸エチルを用いて3回分液抽出を行い、飽和食塩水を用いた洗浄を行った。得られた有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水し、ろ過により硫酸マグネシウムを取り除いた後、エバポレーターとダイヤフラム真空ポンプによって酢酸エチルを取り除き、4.29 g(収率99%) の目的化合物を得た。得られた化合物の
1H-NMRのスペクトルデータにより、得られた目的化合物は、化合物1であることが確認された。以下に、その
1H-NMRのスペクトルデータを示す。
<スペクトルデータ>
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.38 (d, J = 8.4 Hz , 2H), 7.17 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 2.88 (t, J =7.2 Hz, 2H), 1.62 (tt, J = 7.2 and 7.6 Hz, 2H), 1.41 (tt, J = 6.8 and 7.6 Hz, 2H), 1.34‐1.23 (m, 4H), 0.88 (t, J = 6.4 Hz, 3H) ppm.
【0070】
(2)1-Hexylthio-4-(2-trimethylsilylethynyl)benzene(化合物2)の合成
100 mL二口なす型フラスコに化合物1を2.00 g(7.32 mmol)、トリメチルシニルアセチレン2.1 mL(15.6 mmol)、TEA(テトラエチルアミン):THF(テトラヒドロフラン) = 3:1(v/v)の混合溶媒30 mLを加え、アルゴンガスを用いたバブリングにより溶存酸素の脱気を行った。別の100 mL二口なす型フラスコにトリフェニルホスフィン97.8 mg(373 μmol)、ヨウ化銅69.9 mg(367 μmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム424 mg(366 μmol)を量りとり、アルゴン置換を行った後、前述のバブリングした混合溶液を加えて60℃で24時間撹拌した。有機層に酢酸エチルを用いて3回抽出を行い、2M塩酸による中和と飽和食塩水を用いた洗浄を行った。得られた有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水し、ろ過により硫酸マグネシウムを取り除いた後、エバポレーターとダイヤフラム真空ポンプによって酢酸エチルを取り除いた。ヘキサン:ジクロロメタン=6:1(v/v)の展開溶媒を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって単離し、エバポレーターで溶媒を取り除き、ダイヤフラム真空ポンプで減圧乾燥を行い、0.99 g(収率47%)の目的化合物を得た。得られた化合物の1H-NMRのスペクトルデータにより、得られた目的化合物は、化合物2であることが確認された。以下に、その1H-NMRのスペクトルデータを示す。
<スペクトルデータ>
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.35 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.20 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 2.92 (t, J =7.6 Hz, 2H), 1.64 (tt, J = 7.2 and 7.6 Hz, 2H), 1.42 (tt, J = 7.2 and 7.2 Hz, 2H), 1.35‐1.22 (m, 4H), 0.88 (t, J = 6.4 Hz, 3H), 0.24 (s, 9H) ppm.
【0071】
(3)1-Ethynyl-4-hexylthiobenzene(化合物3)の合成
100 mLなす型フラスコに化合物2を0.980 g(3.37 mmol)、炭酸カリウム0.986 g(7.13 mmol)、THF:メタノール=1:1の混合溶媒14 mLを加え、室温で3時間撹拌した。有機層に酢酸エチルを用いて3回抽出を行い、飽和食塩水を用いた洗浄を行った。得られた有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水し、ろ過により硫酸マグネシウムを取り除いた後、エバポレーターとダイヤフラム真空ポンプによって酢酸エチルを取り除いた。展開溶媒にヘキサンを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行い、エバポレーターとダイヤフラム真空ポンプによってヘキサンを取り除き、0.70 g(収率95%)の目的化合物を得た。得られた化合物の1H-NMRのスペクトルデータにより、得られた目的化合物は、化合物3であることが確認された。以下に、その1H-NMRのスペクトルデータを示す。
<スペクトルデータ>
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.38 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.22 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 3.07 (s, 1H), 2.93 (t, J =7.2 Hz, 2H), 1.65 (tt, J = 7.2 and 7.6 Hz, 2H), 1.43 (tt, J = 7.2 and 7.6 Hz, 2H), 1.36‐1.23 (m, 4H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 3H) ppm.
【0072】
(4)1-Heptyl-4-[4-(4-hexylthiophenyl)-1,3-butadiynyl]benzene(6S‐DPDA‐7)の合成
100 mLなす型フラスコに1-エチニル-4-ヘキシルチオベンゼンを0.200 g(0.916 mmol)、1‐エチニル‐4‐ヘプチルベンゼン0.184 g(0.918 mmol)、銅3.10 mg(48.8 μmol)、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を30 μL、クロロホルム:1,4-ジオキサン=3:1の混合溶媒4 mLを加え、50℃で24時間撹拌した。有機層にクロロホルムを用いて3回分液抽出を行い、2M塩酸による中和と飽和食塩水を用いた洗浄を行った。得られた有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて脱水し、ろ過により硫酸マグネシウムを取り除いた後、エバポレーターとダイヤフラム真空ポンプによってクロロホルムを取り除いた。ヘキサン:クロロホルム=9:1の展開溶媒を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、目的物を単離し、エバポレーターで溶媒を取り除いた。貧溶媒にメタノール、良溶媒にクロロホルムを用いて再結晶を行った。1H-NMR、13C-NMR、FT-IRのスペクトルデータから、得られた生成物は、1-Heptyl-4-[4-(4-hexylthiophenyl)-1,3-butadiynyl]benzene(6S‐DPDA‐7)であることが確認された。
<スペクトルデータ>
6S‐DPDA‐7: 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.43 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.41 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.21 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.14 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 2.94 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 2.60 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 1.67 (tt, J = 7.4 and 7.8 Hz, 2H), 1.60 (tt, J = 7.6 and 7.6 Hz, 2H), 1.43 (tt, J = 7.4 and 7.8 Hz, 2H), 1.36‐1.20 (m, 12H), 0.89 (t, J = 6.4 Hz, 3H), 0.88 (t, J = 7.2 Hz, 3H) ppm.
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 144.6, 139.7, 132.7×2, 132.4×2, 128.6×2, 127.4×2, 118.9, 118.4, 82.1, 81.1, 74.3, 73.4, 36.0, 32.7, 31.8, 31.4, 31.2, 29.2, 29.1, 28.9, 28.6, 22.7, 22.5, 14.1, 14.0 ppm. Yield: 31% (120 mg).
FTIR (KBr): 2212, 2141 cm-1.
【0073】
得られた6S‐DPDA‐7を、ホットステーシ゛にセットし、等方相からの冷却過程において相状態の変化を偏光顕微鏡にて偏光観察したところ、ネマチック液晶となることが観察された。また、本最終生成物について、示差走査熱量計を用い、窒素雰囲気下、室温から等方相転移温度を超える温度まで昇温速度3℃/分で昇温した後、3℃/分で冷却し、TNと、TCrとをDSC曲線の変化に基づき検出した。6S‐DPDA‐7のTN,TCrを表1に示す。
【0074】
また、得られた6S‐DPDA‐7について、等方相から液晶相への相転移を偏光顕微鏡にて確認し、液晶相温度における波長400~900nmの範囲でのスペクトルを測定し、得られた値から複屈折Δn求めた。
【0075】
具体的には、まず、液晶を封入しない状態で評価用液晶セルの下方から光を当て、透過干渉光を分光器で測定することにより、空気層の厚さを下記数式(1)から求め、その空気層の厚さをセルギャップとした。
【0076】
【数1】
ここで、上記数式(1)において、dはセルギャップ、mは整数、λは波長である。
【0077】
次いで、このセルギャップが既知となった評価用液晶セルに6S‐DPDA‐7を封入し、ホモジニアス配向させて作製した複屈折体を、偏光軸が互いに直交する2枚の偏光子の間に挟持して、測定される分光透過率が最大または最小となる波長の値(下記数式(2))と、各波長における複屈折体のリタデーション(下記数式(3))を、4次まで展開したコーシーの分散式(下記数式(4))でフィッテングを行い、6S‐DPDA‐7の複屈折ΔnおよびリタデーションRの波長分散を決定した。
【0078】
尚、数式(2)において、I0=初期の透過光強度、I=透過光強度、A=振幅強度、d=セルギャップ、λ=波長、Δn=複屈折である。また、数式(3)において、R=リタデーション、d=セルギャップ、Δn=複屈折であり、数式(4)においてΔn=複屈折、λ=波長である。
【0079】
【0080】
このようにして得られた6S‐DPDA‐7の複屈折Δnを
図2に示す。
【0081】
(実施例2)1-Hexylthio-4-(4-phenyl-1,3-butadiyn-1-yl)benzeneの合成
実施例2では、実施例1における1-エチニル-4-ヘプチルベンゼンに代えてエチニルベンゼンを用いた以外は、実施例1と同様の手法によりジアセチレン誘導体を合成した。得られたジアセチレン誘導体は、1H-NMRおよび13C-NMRにて構造解析を行い、この最終生成物が、目的の1-Hexylthio-4-(4-phenyl-1,3-butadiyn-1-yl)benzeneであることを確認した。尚、説明を簡便にするために、実施例2の本化合物について、以下、適宜、「6S‐DPDA‐0」と称すことがある。
【0082】
これにより、本実施例においては、上述した一般式(2)に示されるジフェニルジアセチレン骨格を有し、一方の末端基が炭素数6のアルキルチオ基で、他方の末端基を備えないジアセチレン誘導体を得た。以下に1H-NMR、13C-NMR、FT-IRのスペクトルデータを示す。
<スペクトルデータ>
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.52 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 7.42 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.35 (dd, J = 7.0 and 7.0 Hz, 1H), 7.35 (dd, J = 7.8 and 7.0 Hz, 2H), 7.22 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 2.94 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 1.67 (tt, J = 7.2 and 7.6 Hz, 2H), 1.44 (tt, J = 7.2 and 7.4 Hz, 2H), 1.36‐1.24 (m, 4H), 0.89 (t, J = 6.8 Hz, 3H) ppm.
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 139.7, 139.6, 132.7×2, 132.4×2, 129.2×2, 127.4×2, 118.7, 118.4, 82.1, 81.2, 74.3, 73.4, 32.7, 31.4, 28.9, 28.6, 22.5, 14.0 ppm. Yield: 22% (78 mg).
FTIR (KBr): 2214, 2147 cm-1
【0083】
得られた6S‐DPDA‐0についても実施例1と同様に、偏光顕微鏡観察と示差走査熱量測定とを行い液晶相の発現について観察および測定を行った。結果を表1に示す。
【0084】
(実施例3)1-[4-(4-Hexylthiophenyl)-1,3-butadiyn-1-yl]-4-methylbenzeneの合成
実施例3では、実施例1における1-エチニル-4-ヘプチルベンゼンに代えて1-エチニル-4-メチルベンゼンを用いた以外は、実施例1と同様の手法によりジアセチレン誘導体を合成した。得られたジアセチレン誘導体は、NMRにて構造解析を行い、この最終生成物が、目的の1-[4-(4-Hexylthiophenyl)-1,3-butadiyn-1-yl]-4-methylbenzeneであることを確認した。尚、説明を簡便にするために、実施例3の本化合物について、以下、適宜、「6S‐DPDA‐1」と称すことがある。
【0085】
これにより、本実施例においては、上述した一般式2に示されるジフェニルジアセチレン骨格を有し、一方の末端基が炭素数6のアルキルチオ基で、他方の末端基がメチル基であるジアセチレン誘導体を得た。以下に1H-NMR、13C-NMR、FT-IRのスペクトルデータを示す。
<スペクトルデータ>
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.41 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.41 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.22 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.14 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 2.94 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.37 (s, 3H), 1.67 (tt, J = 7.6 and 7.6 Hz, 2H), 1.43 (tt, J = 7.2 and 7.6 Hz, 2H), 1.36‐1.27 (m, 4H), 0.89 (t, J = 6.8 Hz, 3H) ppm.
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 139.7, 139.6, 132.7×2, 132.4×2, 129.2×2, 127.4×2, 118.7, 118.4, 82.1, 81.2, 74.3, 73.4, 32.7, 31.3, 28.9, 28.6, 22.5, 21.6, 14.0 ppm. Yield: 36% (136 mg).
FTIR (KBr): 2140 cm-1.
【0086】
この得られた6S‐DPDA‐1についても実施例1と同様に、偏光顕微鏡観察と示差走査熱量測定とを行い液晶相の発現について観察および測定を行った。結果を表1に示す。
【0087】
(実施例4)1-Ethyl-4-[4-(4-hexylthiophenyl)-1,3-butadiyn-1-yl]benzeneの合成
実施例4では、実施例1における1-エチニル-4-ヘプチルベンゼンに代えて1-エチニル-4-エチルベンゼンを用いた以外は、実施例1と同様の手法によりジアセチレン誘導体を合成した。得られたジアセチレン誘導体は、NMRにて構造解析を行い、この最終生成物が、目的の1-Ethyl-4-[4-(4-hexylthiophenyl)-1,3-butadiyn-1-yl]benzeneであることを確認した。尚、説明を簡便にするために、実施例4の本化合物について、以下、適宜、「6S‐DPDA‐2」と称すことがある。
【0088】
これにより、本実施例においては、上述した一般式(2)に示されるジフェニルジアセチレン骨格を有し、一方の末端基が炭素数6のアルキルチオ基で、他方の末端基が炭素数2のエチル基であるジアセチレン誘導体を得た。以下に1H-NMR、13C-NMR、FT-IRのスペクトルデータを示す。
<スペクトルデータ>
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.44 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.41 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.21 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.17 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 2.94 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 2.66 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 1.67 (tt, J = 7.4 and 7.4 Hz, 2H), 1.43 (tt, J = 7.0 and 7.4 Hz, 2H), 1.36‐1.27 (m, 4H), 1.23 (t, J = 7.6 Hz, 3H), 0.89 (t, J = 6.6 Hz, 3H) ppm.
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 145.8, 139.7, 132.7×2, 132.5×2, 128.1×2, 127.4×2, 119.0, 118.4, 82.1, 81.1, 74.3, 73.4, 32.7, 31.3, 28.9×2, 28.6, 22.5, 15.2, 14.0 ppm. Yield: 33% (129 mg).
FTIR (KBr): 2210, 2131 cm-1.
【0089】
この得られた6S‐DPDA‐2についても実施例1と同様に、偏光顕微鏡観察と示差走査熱量測定とを行い液晶相の発現について観察および測定を行った。結果を表1に示す。
【0090】
(実施例5)1-[4-(4-Hexylthiophenyl)-1,3-butadiyny-1-yl]-4-propylbenzeneの合成
実施例5では、実施例1における1-エチニル-4-ヘプチルベンゼンに代えて1-エチニル-4-プロピルベンゼンを用いた以外は、実施例1と同様の手法によりジアセチレン誘導体を合成した。得られたジアセチレン誘導体は、NMRにて構造解析を行い、この最終生成物が、目的の1-[4-(4-Hexylthiophenyl)-1,3-butadiyny-1-yl]-4-propylbenzeneであることを確認した。尚、説明を簡便にするために、実施例5の本化合物について、以下、適宜、「6S‐DPDA‐3」と称すことがある。
【0091】
これにより、本実施例においては、上述した一般式(2)に示されるジフェニルジアセチレン骨格を有し、一方の末端基が炭素数6のアルキルチオ基で、他方の末端基が炭素数3のプロピル基であるジアセチレン誘導体を得た。以下に1H-NMR、13C-NMR、FT-IRのスペクトルデータを示す。
<スペクトルデータ>
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.43 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.41 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.22 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.15 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 2.94 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.59 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 1.67 (tt, J = 7.6 and 7.6 Hz, 2H), 1.64 (tq, J = 7.2 and 7.6 Hz, 2H), 1.44 (tt, J = 7.4 and 7.6 Hz, 2H), 1.37‐1.22 (m, 4H), 0.94 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 0.89 (t, J = 6.8 Hz, 3H) ppm.
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 144.3, 139.7, 132.7×2, 132.4×2, 128.7×2, 127.4×2, 119.0, 118.4, 82.1, 81.2, 74.3, 73.4, 38.1, 32.7, 31.4, 28.9, 28.6, 24.3, 22.5, 14.0, 13.8 ppm. Yield: 34% (141 mg).
FTIR (KBr): 2137 cm-1.
【0092】
この得られた6S‐DPDA‐3についても実施例1と同様に、偏光顕微鏡観察と示差走査熱量測定とを行い液晶相の発現について観察および測定を行った。結果を表1に示す。
【0093】
(実施例6)1-Butyl-4-[4-(4-hexylthiophenyl)-1,3-butadiyn-1yl]benzeneの合成
実施例6では、実施例1における1-エチニル-4-ヘプチルベンゼンに代えて1-エチニル-4-ブチルベンゼンを用いた以外は、実施例1と同様の手法によりジアセチレン誘導体を合成した。得られたジアセチレン誘導体は、NMRにて構造解析を行い、この最終生成物が、目的の1-Butyl-4-[4-(4-hexylthiophenyl)-1,3-butadiyn-1yl]benzeneであることを確認した。尚、説明を簡便にするために、実施例6の本化合物について、以下、適宜、「6S‐DPDA‐4」と称すことがある。
【0094】
これにより、本実施例においては、上述した一般式(2)に示されるジフェニルジアセチレン骨格を有し、一方の末端基が炭素数6のアルキルチオ基で、他方の末端基が炭素数4のブチル基であるジアセチレン誘導体を得た。以下に1H-NMR、13C-NMR、FT-IRのスペクトルデータを示す。
<スペクトルデータ>
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.43 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.41 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.22 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.15 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 2.94 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.62 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 1.67 (tt, J = 7.2 and 7.2 Hz, 2H), 1.59 (tt, J = 7.6 and 7.6 Hz, 2H), 1.44 (tt, J = 7.2 and 7.2 Hz, 2H), 1.33 (tq, J = 6.8 and 7.6 Hz, 2H), 1.36‐1.27 (m, 4H), 0.92 (t, J = 6.8 Hz, 3H), 0.89 (t, J = 6.6 Hz, 3H) ppm.
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 144.6, 139.7, 132.7×2, 132.4×2, 128.6×2, 127.4×2, 118.9, 118.4, 82.1, 81.1, 74.3, 73.4, 35.7, 33.3, 32.7, 31.4, 28.9, 28.6, 22.5, 22.3, 14.0, 13.9 ppm. Yield: 37% (159 mg).
FTIR (KBr): 2140 cm-1.
【0095】
この得られた6S‐DPDA‐4についても実施例1と同様に、偏光顕微鏡観察と示差走査熱量測定とを行い液晶相の発現について観察および測定を行った。結果を表1に示す。
【0096】
(実施例7)1-[4-(4-Hexylthiophenyl)-1,3-butadiyn-1yl]-4-pentylbenzeneの合成
実施例7では、実施例1における1-エチニル-4-ヘプチルベンゼンに代えて1-エチニル-4-ペンチルベンゼンを用いた以外は、実施例1と同様の手法によりジアセチレン誘導体を合成した。得られたジアセチレン誘導体は、NMRにて構造解析を行い、この最終生成物が、目的の1-[4-(4-Hexylthiophenyl)-1,3-butadiyn-1yl]-4-pentylbenzeneであることを確認した。尚、説明を簡便にするために、実施例7の本化合物について、以下、適宜、「6S‐DPDA‐5」と称すことがある。
【0097】
これにより、本実施例においては、上述した一般式(2)に示されるジフェニルジアセチレン骨格を有し、一方の末端基が炭素数6のアルキルチオ基で、他方の末端基が炭素数5のペンチル基であるジアセチレン誘導体を得た。以下に1H-NMR、13C-NMR、FT-IRのスペクトルデータを示す。
<スペクトルデータ>
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.43 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.41 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.22 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.14 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 2.94 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.61 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 1.67 (tt, J = 7.6 and 7.6 Hz, 2H), 1.59 (tt, J = 7.6 and 7.6 Hz, 2H), 1.43 (tt, J = 7.2 and 7.6 Hz, 2H), 1.38‐1.25 (m, 8H), 0.89 (t, J = 6.8 Hz, 3H), 0.89 (t, J = 6.8 Hz, 3H) ppm.
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 144.6, 139.7, 132.7×2, 132.4×2, 128.6×2, 127.4×2, 118.9, 118.4, 82.1, 81.1, 74.3, 73.4, 36.0, 32.7, 31.4, 31.3, 30.8, 28.9, 28.6, 22.5×2, 14.0×2 ppm. Yield: 34% (120 mg).
FTIR (KBr): 2136 cm-1.
【0098】
この得られた6S‐DPDA‐5についても実施例1と同様に、偏光顕微鏡観察と示差走査熱量測定とを行い液晶相の発現について観察および測定を行った。結果を表1に示す。
【0099】
(実施例8)1-Hexyl-4-[4-(4-hexylthiophenyl)-1,3-butadiyn-1-yl]benzeneの合成
実施例8では、実施例1における1-エチニル-4-ヘプチルベンゼンに代えて1-エチニル-4-ヘキシルベンゼンを用いた以外は、実施例1と同様の手法によりジアセチレン誘導体を合成した。得られたジアセチレン誘導体は、NMRにて構造解析を行い、この最終生成物が、目的の1-Hexyl-4-[4-(4-hexylthiophenyl)-1,3-butadiyn-1-yl]benzeneであることを確認した。尚、説明を簡便にするために、実施例8の本化合物について、以下、適宜、「6S‐DPDA‐6」と称すことがある。
【0100】
これにより、本実施例においては、上述した一般式(2)に示されるジフェニルジアセチレン骨格を有し、一方の末端基が炭素数6のアルキルチオ基で、他方の末端基が炭素数6のヘキシル基であるジアセチレン誘導体を得た。以下に1H-NMR、13C-NMR、FT-IRのスペクトルデータを示す。
<スペクトルデータ>
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.43 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.41 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.22 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.14 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 2.94 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.61 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 1.67 (tt, J = 7.2 and 7.6 Hz, 2H), 1.60 (tt, J = 7.2 and 7.6 Hz, 2H), 1.44 (tt, J = 7.4 and 7.6 Hz, 2H), 1.36‐1.25 (m,10H), 0.89 (t, J = 6.8 Hz, 3H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 3H) ppm.
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 144.6, 139.7, 132.7×2, 132.4×2, 128.6×2, 127.4×2, 118.9, 118.4, 82.1, 81.1, 74.3, 73.4, 36.0, 32.7, 31.7, 31.3, 31.1, 28.9×2, 28.6, 22.6, 22.5, 14.1, 14.0 ppm. Yield: 27% (100 mg).
FTIR (KBr): 2212, 2141 cm-1.
【0101】
この得られた6S‐DPDA‐6についても実施例1と同様に、偏光顕微鏡観察と示差走査熱量測定とを行い液晶相の発現について観察および測定を行った。結果を表1に示す。
【0102】
(実施例9)1-[4-(4-Hexylthiophenyl)-1,3-butadiyn-1yl]-4-octylbenzeneの合成
実施例9では、実施例1における1-エチニル-4-ヘプチルベンゼンに代えて1-エチニル-4-オクチルベンゼンを用いた以外は、実施例1と同様の手法によりジアセチレン誘導体を合成した。得られたジアセチレン誘導体は、NMRにて構造解析を行い、この最終生成物が、目的の1-[4-(4-Hexylthiophenyl)-1,3-butadiyn-1yl]-4-octylbenzeneであることを確認した。尚、説明を簡便にするために、実施例9の本化合物について、以下、適宜、「6S‐DPDA‐8」と称すことがある。
【0103】
これにより、本実施例においては、上述した一般式(2)に示されるジフェニルジアセチレン骨格を有し、一方の末端基が炭素数6のアルキルチオ基で、他方の末端基が炭素数8のオクチル基であるジアセチレン誘導体を得た。以下に1H-NMR、13C-NMR、FT-IRのスペクトルデータを示す。
<スペクトルデータ>
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.43 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.41 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.22 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.14 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 2.94 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 2.60 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 1.67 (tt, J = 7.0 and 7.4 Hz, 2H), 1.60 (tt, J = 7.0 and 7.2 Hz, 2H), 1.43 (tt, J = 7.0 and 7.2 Hz, 2H), 1.37‐1.21 (m, 14H), 0.89 (t, J = 6.8 Hz, 3H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 3H) ppm.
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 144.6, 139.7, 132.7×2, 132.4×2, 128.6×2, 127.4×2, 118.9, 118.4, 82.1, 81.1, 74.3, 73.4, 36.0, 32.7, 31.9, 31.3, 31.2, 29.4, 29.3, 29.2, 28.9, 28.6, 22.7, 22.5, 14.1, 14.0 ppm. Yield: 39% (152 mg).
FTIR (KBr): 2216, 2146 cm-1.
【0104】
この得られた6S‐DPDA‐8についても実施例1と同様に、偏光顕微鏡観察と示差走査熱量測定とを行い液晶相の発現について観察および測定を行った。結果を表1に示す。
【0105】
(実施例10)1-Dodecyl-4-[4-(4-hexylthiophenyl)-1,3-butadiyn-1-yl]benzeneの合成
実施例10では、実施例1における1-エチニル-4-ヘプチルベンゼンに代えて1-エチニル-4-ドデシルベンゼンを用いた以外は、実施例1と同様の手法によりジアセチレン誘導体を合成した。得られたジアセチレン誘導体は、NMRにて構造解析を行い、この最終生成物が、目的の1-Dodecyl-4-[4-(4-hexylthiophenyl)-1,3-butadiyn-1-yl]benzeneであることを確認した。尚、説明を簡便にするために、実施例10の本化合物について、以下、適宜、「6S‐DPDA‐12」と称すことがある。
【0106】
これにより、本実施例においては、上述した一般式(2)に示されるジフェニルジアセチレン骨格を有し、一方の末端基が炭素数6のアルキルチオ基で、他方の末端基が炭素数12のドデシル基であるジアセチレン誘導体を得た。以下に1H-NMR、13C-NMR、FT-IRのスペクトルデータを示す。
<スペクトルデータ>
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.43 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.41 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.22 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.14 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 2.94 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 2.60 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 1.67 (tt, J = 7.4 and 7.4 Hz, 2H), 1.60 (tt, J = 7.0 and 7.6 Hz, 2H), 1.44 (tt, J = 7.4 and 7.4 Hz, 2H), 1.37‐1.20 (m, 22H), 0.89 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 0.88 (t, J = 7.0 Hz, 3H) ppm.
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 144.6, 139.7, 132.7×2, 132.4×2, 128.6×2, 127.4×2, 118.9, 118.4, 82.1, 81.1, 74.3, 73.4, 36.0, 32.7, 31.9, 31.4, 31.2, 29.7×3, 29.6, 29.5, 29.4, 29.3, 28.9, 28.6, 22.7, 22.5, 14.1, 14.0 ppm. Yield: 27% (121 mg).
FTIR (KBr): 2211, 2141 cm-1.
【0107】
この得られた6S‐DPDA‐12についても実施例1と同様に、偏光顕微鏡観察と示差走査熱量測定とを行い液晶相の発現について観察および測定を行った。結果を表1に示す。
【0108】
(実施例11)1-Hexyloxy-4-[4-(4-hexylthiophenyl)-1,3-butadiynyl]benzeneの合成
実施例11では、実施例1における1-エチニル-4-ヘプチルベンゼンに代えて1-エチニル-1,4-ヘキシロキシベンゼンを用いた以外は、実施例1と同様の手法によりジアセチレン誘導体を合成した。得られたジアセチレン誘導体は、NMRにて構造解析を行い、この最終生成物が、目的の1-Hexyloxy-4-[4-(4-hexylthiophenyl)-1,3-butadiynyl]benzeneであることを確認した。尚、説明を簡便にするために、実施例11の本化合物について、以下、適宜、「6S‐DPDA‐O6」と称すことがある。
【0109】
これにより、本実施例においては、上述した一般式(2)に示されるジフェニルジアセチレン骨格を有し、一方の末端基が炭素数6のアルキルチオ基で、他方の末端基が炭素数6のアルコキシ基であるジアセチレン誘導体を得た。以下に1H-NMR、13C-NMR、FT-IRのスペクトルデータを示す。
<スペクトルデータ>
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.45 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.40 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.21 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.84 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 3.96 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 2.93 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 1.78 (tt, J = 6.4 and 7.2 Hz, 2H), 1.67 (tt, J = 7.4 and 7.4 Hz, 2H), 1.45 (tt, J = 7.2 and 7.2 Hz, 2H), 1.43 (tt, J = 7.4 and 7.4 Hz, 2H), 1.38‐1.25 (m, 8H), 0.91 (t, J = 7.0 Hz,3H), 0.89 (t, J = 7.0 Hz, 3H) ppm.
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 160.0, 139.5, 134.1×2, 132.7×2, 127.4×2, 118.6×2, 114.7, 113.5, 82.2, 80.9, 74.5, 72.7, 68.2, 32.7, 31.6, 31.3, 29.1, 28.9, 28.6, 25.7, 22.6, 22.5, 14.0×2 ppm.
FTIR (KBr): 2139 cm-1. Yield: 96 mg (25%).
【0110】
この得られた6S‐DPDA‐O6についても実施例1と同様に、偏光顕微鏡観察と示差走査熱量測定とを行い液晶相の発現について観察および測定を行った。結果を表1に示す。
【0111】
表1は、上記各実施例におけるDSC測定結果から得た各ジフェニルジアセチレン誘導体(サンプル)の液晶相の挙動、即ち相転移温度を一覧で示した表である。
【0112】
【0113】
表1においては、実施例1~11のサンプルを上から順に表示しており、各サンプル名に対応付けてその右側にそれぞれのTCr(℃)、TSm(℃)、TN(℃)を表示している。また、それぞれの相転移温度の右側に示す括弧内にはその転移のエンタルピーを示している。尚、相転移温度が検出されなかった場合は、表1において「-」で表示している。
【0114】
この表1からもわかるように、実施例1、4~11のジアセチレン誘導体は液晶性を発現することが示された。
【0115】
(比較例1)
実施例1における化合物3に代えて1-エチニル-4-ヘプチルベンゼンを用いた以外は、実施例1と同様の手法によりジアセチレン誘導体を合成した。これにより、上述した一般式2に示されるジフェニルジアセチレン骨格を有し、両方の末端基が炭素数7のアルキル基を有するジアセチレン誘導体を得た。比較例1のジアセチレン誘導体は、説明を簡便にするために、以下、適宜、「7‐DPDA‐7」と称すことがある。この得られた7‐DPDA‐7は実施例1と同様の手法により複屈折Δnを求めた。結果を
図2に示す。
【0116】
図2は、実施例1および比較例1のジアセチレン誘導体の測定波長550nmにおける複屈折の温度依存性を示したグラフである。横軸は温度(℃)を、縦軸は複屈折(Δn)を示している。また、黒丸(●)は実施例1のジアセチレン誘導体(6S‐DPDA‐7)におけるネマチック液晶状態での複屈折を示しており、黒三角(▲)は、比較例1のジアセチレン誘導体(7‐DPDA‐7)のネマチック液晶状態での複屈折を示している。
図2からもわかるように、実施例1のジアセチレン誘導体は、比較例1のジアセチレン誘導体に比べて、ネマチック液晶相を形成する温度範囲が広く、且つ、より低温側となっている上、複屈折もより大きいものとなっている。なお、ディスプレイ用途においては、通常、複屈折が0.1前後よりも大きい場合に、複屈折が大きいとされているが、実施例1のジアセチレン誘導体は、0.2以上の非常に大きな複屈折を有することが示された。