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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】片脚立位計測システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20220805BHJP
   G01G 19/52 20060101ALI20220805BHJP
   G01G 19/44 20060101ALI20220805BHJP
   G01L 1/16 20060101ALI20220805BHJP
   H01L 41/113 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
A61B5/11 210
G01G19/52 E
G01G19/44 D
G01L1/16 G
H01L41/113
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018126197
(22)【出願日】2018-07-02
(65)【公開番号】P2020000811
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】500020287
【氏名又は名称】マイクロストーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 範生
(72)【発明者】
【氏名】宮本 一道
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 典彦
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 一也
(72)【発明者】
【氏名】遠山 県一
(72)【発明者】
【氏名】丸山 正俊
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 清
(72)【発明者】
【氏名】河内 耕市
(72)【発明者】
【氏名】小山 剛
(72)【発明者】
【氏名】森本 槙太郎
(72)【発明者】
【氏名】鍋田 知宏
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0191153(US,A1)
【文献】国際公開第2017/035696(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/103-5/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の右脚又は左脚のうちのいずれか一方の足が載置される踏板と、
該踏板の下方に所定間隔をあけて配置されたベースプレートと、
前記踏板と前記ベースプレートの間の複数個所に取り付けられた圧電素子と、
各前記圧電素子から出力される電圧信号に基づく振動値の大きさを被検者のぐらつきの状態値として数値化する計測回路と、
該計測回路によって算出されたぐらつきの状態値を表示する表示部と、を具備することを特徴とする片脚立位計測システム。
【請求項2】
各前記圧電素子は、被検者の足が載置される箇所の前後左右の4箇所に設けられていることを特徴とする請求項1記載の片脚立位計測システム。
【請求項3】
前記ベースプレートの下面には、重量センサが設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の片脚立位計測システム。
【請求項4】
前記計測回路は、
各前記圧電素子から出力される信号電圧の大きさを被検者のぐらつきの状態値として数値化する際に、前記重量センサによって計測された被検者の体重の基準体重に対する割合を用いて補正することを特徴とする請求項3記載の片脚立位計測システム。
【請求項5】
前記計測回路は、
予め設定された計測時間内に計測された各前記圧電素子から出力される電圧信号に基づく振動値の大きさ、又は、振動値の大きさが予め設定された値を基にした閾値を超えるまでの時間を被検者のぐらつきの状態値として数値化することを特徴とする請求項1~請求項4記載の片脚立位計測システム。
【請求項6】
前記重量センサは、
前記ベースプレートの四隅に設けられていることを特徴とする請求項3記載の片脚立位計測システム。
【請求項7】
前記計測回路に接続され、被検者が把持可能なスタートスイッチが設けられ、
前記計測回路は、各前記圧電素子から出力される電圧信号に基づく振動値の大きさを被検者のぐらつきの状態値として数値化の開始を、前記スタートスイッチが押下されたときから開始することを特徴とする請求項1~請求項6記載の片脚立位計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の片脚立位の状態を計測するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
転倒予防の観点から、被検者の身体バランスを見るため様々な方法が従来より知られている。代表的なものに開眼片脚立位時間の計測がある。
装置を用いずに開眼片脚立位時間を計測する場合、被検者に目を開けた状態で両手を腰に当て、片脚で立ってもらい、そのままの状態でどのくらいの時間維持できるか(手が腰から離れるか、支持脚がずれるか、支持脚以外の身体の一部が床に触れるか)をストップウオッチで計測していた。測定上限時間としては、60秒又は120秒が一般的である。
しかし、このような方法では、被検者は限界まで我慢して片脚で立ち続けなくてはならないため、被検者の転倒のおそれがあり危険である。また測定完了までに非常に時間がかかってしまう。
【0003】
一方、片脚立位の状態を測定可能な装置が特許文献1(特開2010-227234号公報)及び特許文献2(特開2012-176170号公報)に開示されている。
例えば、特許文献1に記載されている身体バランス計測装置は、両足それぞれにおける踵載置部と足先載置部が設けられており、これらの下方にはひずみゲージを用いたロードセルから構成される重量センサが配置されている。
【0004】
また、特許文献2に記載されている足部バランス評価装置では、両足又は片足で立った被検者の拇指部、拇指球部、小趾球部、踵部からの圧力変動を検出する計測部が設けられており、この計測部としてはひずみセンサを採用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-227234号公報
【文献】特開2012-176170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述してきた従来の技術によれば、ロードセルやひずみセンサを用いて被検者の足裏にかかる圧力の変化を計測していることが一般的である。
しかし、ロードセル、ひずみセンサは応答速度が遅く(~20Hz程度)、被検者の細かい振動やぐらつきを測定することができない。
【0007】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、応答速度を速くして細かい振動やぐらつきを測定可能な片脚立位計測システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成すべく、以下の構成を備える。
すなわち、本発明にかかる片脚立位計測システムによれば、被検者の右脚又は左脚のうちのいずれか一方の足が載置される踏板と、該踏板の下方に所定間隔をあけて配置されたベースプレートと、前記踏板と前記ベースプレートの間の複数個所に取り付けられた圧電素子と、各前記圧電素子から出力される電圧信号に基づく振動値の大きさを被検者のぐらつきの状態値として数値化する計測回路と、該計測回路によって算出されたぐらつきの状態値を表示する表示部と、を具備することを特徴としている。
この構成を採用することによって、複数の圧電素子による電圧信号により被検者のぐらつきの状態を計測するので、ロードセルやひずみセンサ等で計測する場合より高い周波数の振動・動揺を検出することができる。つまり、従来よりも細かい振動を計測するため、筋肉の収縮の状態などロードセルやひずみセンサ等では計測できない事象も把握できるため、被検者のバランスを維持しようとする筋肉の動きをとらえることができ、被検者のバランス維持の限界までの時間を計測しなくてもバランス能力を把握することができる。
また片脚分の測定を実行する構成としたため、部品コスト等の面で低価格に抑えることができる。
【0009】
また、各前記圧電素子は、被検者の足が載置される箇所の前後左右の4箇所に設けられていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、被検者の足の前側、後側、左側、右側のいずれかの方向に被検者が傾いているかを判定することができる。
【0010】
また、前記ベースプレートの下面には、重量センサが設けられていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、重量センサでは、被検者の体重を測定することができる。
【0011】
また、前記計測回路は、各前記圧電素子から出力される信号電圧の大きさを被検者のぐらつきの状態値として数値化する際に、前記重量センサによって計測された被検者の体重の基準体重に対する割合を用いて補正することを特徴としてもよい。
この構成によれば、圧電素子は圧力の大きさによって出力電圧が異なるため、被検者の体重で補正をかけることにより、体重の軽重によって異なる状態値とならないようにすることができる。
【0012】
また、前記計測回路は、予め設定された計測時間内に計測された各前記圧電素子から出力される電圧信号に基づく振動値の大きさ、又は、振動値の大きさが予め設定された値を基にした閾値を超えるまでの時間を被検者のぐらつきの状態値として数値化することを特徴としてもよい。
この構成によれば、例えば5秒間又は10秒間などの短い時間を設定しておくことで被検者は短時間で計測を終えることもできるし、大きくぐらつくまでを計測することも可能となる。
【0013】
また、前記重量センサは、前記ベースプレートの四隅に設けられていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、重量センサをシステム全体の脚として兼ねることができる。
【0014】
また、前記計測回路に接続され、被検者が把持可能なスタートスイッチが設けられ、前記計測回路は、各前記圧電素子から出力される電圧信号に基づく振動値の大きさを被検者のぐらつきの状態値として数値化の開始を、前記スタートスイッチが押下されたときから開始することを特徴としてもよい。
この構成によれば、被検者は片脚立位をしてから自分の準備(心の準備と体の準備の両方)が整ってから自分のタイミングで計測が開始されるので、安定した状態値の算出に寄与する。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる片脚立位計測システムによれば、片脚立位計測時に細かい振動やぐらつきを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】片脚立位計測システムの全体構成を示す斜視図である。
図2】本体部の組立分解図である。
図3】片脚立位計測システムの使用状態を示す説明図である。
図4】片脚立位計測システムの内部構成示すブロック図である。
図5】各圧電素子からの電圧信号の一例を示すグラフである。
図6】各圧電素子で検出した振動値と、状態値(点数)との関係を示すグラフであって、10秒間片脚立位できなかった例を示すグラフである。
図7】各圧電素子で検出した振動値と、状態値(点数)との関係を示すグラフであって、状態値(点数)が0点の例を示すグラフである。
図8】各圧電素子で検出した振動値と、状態値(点数)との関係を示すグラフであって、状態値(点数)が6点の例を示すグラフである。
図9】各圧電素子で検出した振動値と、状態値(点数)との関係を示すグラフであって、状態値(点数)が27点の例を示すグラフである。
図10】各圧電素子で検出した振動値と、状態値(点数)との関係を示すグラフであって、状態値(点数)が50点の例を示すグラフである。
図11】各圧電素子で検出した振動値と、状態値(点数)との関係を示すグラフであって、状態値(点数)が65点の例を示すグラフである。
図12】各圧電素子で検出した振動値と、状態値(点数)との関係を示すグラフであって、状態値(点数)が84点の例を示すグラフである。
図13】片脚立位計測システムと外部コンピュータやインターネットへの接続状態の例を示す説明図である。
図14】外部コンピュータによって作成される被検者の足のぐらつきを視覚的に表示するグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1に片脚立位計測システムの全体構成を、図2に本体部の組立分解図を示す。
片脚立位計測システム20は、本体部23と、表示ユニット25とを備えている。
本体部23は、被検者が実際に足を載せる部位であり、踏板21と、踏板21の下面に取り付けられた複数の圧電素子22(図1では図示されていない)とを備えている。踏板21の材質は被検者が乗っても変形しないような金属製の平板が好ましい。
【0018】
踏板21の上面には、足形が図示されており、この足形の向きに合わせて被検者が足を乗せることを促している。ただし、必ずしも足形が図されている必要はなく、被検者が足を載せる際に足の方向が分かるように、何等かの表示がされていればよい。
【0019】
圧電素子22は、圧電体に加えられた圧力を電圧変換して電圧信号を出力する素子であり、本実施形態では圧電セラミックスを採用している。
本実施形態では、被検者の足の前側、後側、左側、右側それぞれのふらつきを検出するため、圧電素子22を4つ用い、足の前後左右の4箇所に配置している。ただし、圧電素子の数は4つに限定するものではない。
【0020】
圧電素子22の下面にはベースプレート24が配置されている。すなわち、各圧電素子22は踏板21とベースプレート24との間に挟み込まれるようにして配置されている。
【0021】
踏板21の前方には表示ユニット25が設けられている。表示ユニット25の表面には表示部26及び操作部28が設けられ、内部には計測回路が設けられている。
表示部26は、計測された結果を表示するものであり、液晶その他のディスプレイを採用することができる。操作部28は、計測モードの変更、又は表示部26に表示させる内容の変更などの設定が可能となっている。
【0022】
また、表示ユニット25からは被検者が片脚立位姿勢をとったときに操作可能なスタートスイッチ30が設けられている。スタートスイッチ30は、スイッチボタン33が設けられている把持部31と、把持部31と表示ユニット25内の計測回路とを接続する信号線32とから構成される。ただし、スタートスイッチ30は計測回路に対してBluetooth(登録商標)等の無線によって接続されてもよい。
【0023】
また、本実施形態では、ベースプレート24の下面の四隅に重量センサ34が設けられている。重量センサ34としてはロードセルなどを採用することができ、四隅に配置することで重量センサ34を脚として用いることができる。
【0024】
図3に、使用中の例を示す。
図3に示すように、被検者は、片脚で踏板21の上面に立ち、スタートスイッチ30を持って自分の好きなタイミングでスイッチボタン33を押下する。スイッチボタン33が押下されることにより、計測回路は被検者のぐらつきの状態値を計測をスタートする。計測モードとしては、後述するように5秒間計測、10秒間計測、振動値が閾値を超えるまで計測など、複数のモードを選択可能としておくとよい。計測モードの選択は、表示ユニット25の操作部28を操作することで実行することができる。
【0025】
また、踏板21の大きさ(本体部23の大きさ)は、被検者の右脚又は左脚のうちのいずれか一方の足だけが乗る分だけの幅を有している。つまり、もともと両足分の幅を設けてしまうと装置全体が大型化し、部品点数も増加してしまうためコスト的に好ましくない。
本実施形態では、両脚ではなく片脚立位計測に特化することで無駄な機能を省き、コストダウンに寄与することができる。
【0026】
図4に、本実施形態の内部構成を説明するためのブロック図を示す。
4つの圧電素子22の信号電圧は、それぞれ計測回路36に入力される。計測回路36は、計装アンプ37と、プロセッサ(MPU)38とを備えている。
各圧電素子22から出力される信号電圧は、まず計測回路36の計装アンプ37に入力され増幅される。計装アンプ37で増幅された信号電圧は、MPU38に内蔵されているA/Dコンバータ39に入力されて、所定のサンプリング周波数に基づいてA/D変換される。
【0027】
図5に、計装アンプ37へ入力される各圧電素子22ごとの信号電圧波形を示す。
本実施形態ではch1を足の前側、ch2を足の後側、ch3を足の右側、ch4を足の左側としている。図5では、所定の電圧値に対して電圧が上下するように振動していることが観測されており、被検者の振動が高感度で検出されていることがわかる。
【0028】
MPU38では、各圧電素子22の信号電圧に基づく振動値の大きさを、被検者のぐらつきを表す状態値に変換する。
なお、本実施形態で用いている圧電素子22は、圧力変化による発電が一定時間蓄電されるため、振動波形に不要な発電波形が重畳する。
振動周波数が被測定者毎に異なり、ハードウェアによるフィルタリングで発電波形を除去することが困難なため、MPU38が、振動値として用いる値は、所定のサンプリング周期毎に計測した電圧値からソフトウェアにより前回サンプリング値との差分を抽出し加算したものとしている。
【0029】
MPU38は、各圧電素子22ごとに振動の大きさを加算して振動値とするが、さらに被検者の体重に基づく補正を行って状態値を算出する。なぜなら、圧電素子は、印加される圧力の大きさによって電圧信号の大きさが変わる。つまり体重が重い被検者ほど電圧信号の振幅が大きくなってしまうため、体重が重い被検者ほど振動値が大きくなってしまうためである。
そこで、MPU38は、複数の重量センサ34により構成される回路で被検者の体重を測定し、予め設定した基準値を被検者の体重で除算して得られた補正値を、振動値に乗算することで、体重補正された状態値を算出する。
【0030】
また、MPU38は、予め設定された制御プログラムによって計測モードの切り替えが可能である。計測モードの切り替えは上述したように操作部28の操作に基づいてMPU38が実行する。
計測モードとして5秒間計測モードの場合、MPU38はスタートスイッチ30が押下されてから5秒間の各圧電素子からの電圧信号に基づいて状態値を算出する。10秒間計測モードの場合、MPU38はスタートスイッチ30が押下されてから10秒間の各圧電素子からの電圧信号に基づいて状態値を算出する。
さらに、振動値が閾値を超えるまでの計測モードでは、MPU38は、予め振動値の閾値の基準値を設定しておき、被検者がスタートスイッチ30を押下してから体重で補正された振動値が閾値を超えるまでの時間を算出する。
【0031】
5秒間測定モード又は10秒間測定モードの場合、計測回路36が算出する状態値は、100点満点の何点という点数である。100点満点中の点数を表示することで、被検者にとっては自身の身体バランスの状態を簡単に把握できるので好ましい。
なお、本実施形態では、状態値の算出例として以下のような算出式を採用しているが、あくまで一例であってこの式に限定するものではない。
点数(状態値)=100-(振動値4chの合計/100)×(基準値/体重)
【0032】
振動値が閾値を超えるまでの計測モードでは、表示ユニット25の操作部28で設定された閾値を体重で補正された振動値が超えるまでの時間を計測する。体重で補正された振動値の算出例として以下のような算出式を採用しているが、あくまで一例であってこの式に限定するものではない。
体重で補正された振動値=振動値4chの合計×(基準値/体重)
時間計測は一定時間(例えば120秒)を限度とし、これを超えた場合は計測を終了し結果が良好である旨の表示を行なう。
【0033】
図6図12に、10秒間の計測モードにおける秒間被検者のふらつきの状態値(100点満点中の点数)と、各圧電素子(ch1~ch4)における振動値の関係について示している。
図6では、10秒間片脚で立てなかった例を示している。
この場合、両脚をついてしまうと、計測回路36で測定していた片脚分の各圧電素子22からの電圧信号の入力が0となり、且つ重量センサ34で計測していた体重も急激に減少する(ほぼ0になる)。計測回路36では、このように計測時間中に各圧電素子22からの圧力信号が0となり、且つ重量センサ34での重量も急激に減少した場合には、計測を中止し、表示部26に計測不能又は計測中断の旨の表示をさせ、状態値(点数)を算出しない。
【0034】
図7に、状態値(点数)が0点の例を示している。
この場合、すべての圧電素子22の振動値が最大1200程度にまで上昇しており、平均800程度である。
図8に、状態値(点数)が6点の例を示している。
この場合、最も振動値が大きい圧電素子22は、最大1100程度にまで上昇しており、平均500程度である。
【0035】
図9に、状態値(点数)が27点の例を示している。
この場合、最も振動値が大きい圧電素子22は最大700程度であり、平均400程度である。
図10に、状態値(点数)が50点の例を示している。
この場合、最も振動値が大きい圧電素子22は、最大600程度であり、平均300程度である。
【0036】
図11に、状態値(点数)が65点の例を示している。
この場合、最も振動値が大きい圧電素子22は最大400程度であり、平均200程度である。
図12に、状態値(点数)が84点の例を示している。
この場合、最も振動値が大きい圧電素子22は、最大200程度であり、平均100程度である。
【0037】
これらの結果からわかるように、前後左右の揺れが大きいと振動値が大きく状態値(点数)が低くなる。状態値(点数)が高い人の振動値は非常に小さく、姿勢制御のための筋肉の動きが小さいということがうかがえる。
【0038】
なお、片脚立位の際に使用される筋肉としては、以下のようなものであることが従来より知られている。
例えば両脚立ちの状態から右脚を上げて左脚のみで立つ場合、最初に右中殿筋と右腓腹筋が活動し、引き続いて左中殿筋、右縫工筋、右外側広筋、右外側ハムストリングが活動することが分かっている。
本実施形態では、これらの筋肉の細かい振動を計測できるので、従来にはない観点から被検者の健康状態を判定することができる。
【0039】
なお、本実施形態では、状態値(点数)を表示部に表示させる構成について説明してきたが、各圧電素子からの電圧信号を外部のコンピュータに出力してコンピュータにて電圧信号を処理し、また処理した電圧信号に基づいた被検者のぐらつきの度合いを表示するように構成してもよい。
この実施形態では、MPU38内の通信I/F41から計測回路36に設けた通信部46を経て電圧信号を外部にデータ出力可能とする。通信部46によるデータ送信は、ケーブル等の有線であっても、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)等の無線であってもよい。
【0040】
図13には外部のコンピュータやインターネットへの接続状態を示し、図14には外部のコンピュータにおけるデータ処理の結果の一例を示す。
コンピュータ40は、一般的な市販のコンピュータを採用することができ、MPUやメモリ等から構成される制御部42を有している。制御部42は、予め設定されたプログラムによって動作する。
また、コンピュータ40は、片脚立位計測システム20から送信されたデータを受信する受信部44を備えている。受信部44としては、例えばBluetooth(登録商標)の受信部であったりリLANボードなどが考えられる。
【0041】
コンピュータ40は、片脚立位計測システム20から送信されてきた複数の圧電素子22からの電圧信号に基づく振動値を受信すると、制御部42が予め設定されたプログラムによって、被検者の前後左右のぐらつき具合を可視化する。
ぐらつき具合の可視化は、例えば図14に示すように、グラフの中心を被検者の足の中心とし、x軸正方向を右、x軸負方向を左、y軸正方向を前、y軸負方向を後と設定し、制御部42は被検者の前後左右に相当する各圧電素子22の振動値の大きさをグラフ上にプロットする。
【0042】
図14の上2つのグラフは、状態値(点数)が悪い2人の被検者の例を示している。この場合、2人とも足の前側と左側が大きく振動しており、重心も左前側に偏っていることがわかる。
図14の下2つのグラフは、状態値(点数)が良い2人の被検者の例を示している。この場合、2人ともグラフの中心に振動値を表す点が集まっており、ぐらつきが極めて小さいだけでなく、重心が足の中心にあることがわかる。
【0043】
このように、本発明の片脚立位計測システムは、状態値(点数)を表示するだけでなく、収集したデータを外部のコンピュータに送信して外部のコンピュータによってそのデータを解析させることができる。
【0044】
なお、片脚立位計測システムは、上記のように収集したデータを外部の1台のコンピュータに送信して解析するだけでなく、インターネット上のデータサーバ48に、収集したデータを送信可能に設けてもよい。このデータサーバ48は、複数の片脚立位計測システム20と接続し、複数の片脚立位計測システム20からデータ集収できるように構成されている。
このような場合、複数の片脚立位計測システム20から、インターネット上のデータサーバ48にデータを収集し、このデータサーバ48では多数の情報を共有することができ、片脚立位において大量のデータに基づく分析を実行可能となる。また、これらの分析は、インターネットを介して接続された他のコンピュータや携帯端末等がデータサーバ48に接続して内容を把握することができる。
【0045】
また、複数の片脚立位計測システム20からの状態値(点数)の送信により、片脚立位計測システム同士で点数を競い合ったりするようなシステムも構築することができる。この場合、データサーバ48を介さずに、片脚立位計測システム同士が直接データ通信することも可能である。
【0046】
以上本発明につき好適な実施例を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【符号の説明】
【0047】
20 片脚立位計測システム
21 踏板
22 圧電素子
23 本体部
24 ベースプレート
25 表示ユニット
26 表示部
28 操作部
30 スタートスイッチ
31 把持部
32 信号線
33 スイッチボタン
34 重量センサ
36 計測回路
37 計装アンプ
38 MPU
39 A/Dコンバータ
40 コンピュータ
41 通信I/F
42 制御部
44 受信部
46 通信部
48 データサーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14