(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】掃除機用吸込みノズル
(51)【国際特許分類】
A47L 9/06 20060101AFI20220805BHJP
【FI】
A47L9/06 Z
A47L9/06 A
(21)【出願番号】P 2018145964
(22)【出願日】2018-08-02
【審査請求日】2021-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】593057263
【氏名又は名称】多田プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】小西 純子
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-087774(JP,A)
【文献】特開昭57-020238(JP,A)
【文献】特表2017-502773(JP,A)
【文献】特開平02-031721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁面(10)から下方突出状の複数の走行車輪(8)と、上記底壁面(10)に開設された横長状の吸込み口(5)と、該吸込み口(5)の開口前端縁(5a)の近傍で上記底壁面(10)から下方突出状に設けられた多数の前方弾性板片(7A)と、上記吸込み口(5)の開口後端縁(5b)の近傍で上記底壁面(10)から下方突出状に設けられた多数の後方弾性板片(7B)と、を有する掃除機用吸込みノズルに於て、
清掃床面非接触状態において、複数の上記走行車輪(8)の下端(8d)が接する水平面状の仮想基準平面(S)よりも、上記前方弾性板片(7A)及び上記後方弾性板片(7B)の下端(7d)は、下方へ突出し、
底面視において、上記吸込み口(5)は、左右中央部(50)から左右両端部(52)(52)夫々にゆくにしたがって前方に進む傾斜辺部(51)(51)を有するV字形状であって、
多数の上記前方弾性板片(7A)は、底面視V字形状の上記吸込み口(5)の開口前端縁(5a)に平行状として、底面視V字形状に並設され、
多数の上記後方弾性板片(7B)は、底面視V字形状の上記吸込み口(5)の開口後端縁(5b)に平行状として、底面視V字形状に並設され
、
上記底壁面(10)から下方突出状に多数の突条(6)が連設され、
上記多数の突条(6)は、上記吸込み口(5)の開口前端縁(5a)に対して直交状に配設される前側突条(6A)と、上記吸込み口(5)の開口後端縁(5b)に対して直交状に配設される後側突条(6B)と、を有し、上記前側突条(6A)及び上記後側突条(6B)は、上記吸込み口(5)に沿って千鳥状に配設され
ていることを特徴とする掃除機用吸込みノズル。
【請求項2】
清掃床面非接触状態において、上記前方弾性板片(7A)及び上記後方弾性板片(7B)の下端(7d)は、上記仮想基準平面(S)よりも0.2mm以上2.5mm以下で下方へ突出している請求項1記載の掃除機用吸込みノズル
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掃除機用吸込みノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、掃除機用吸込みノズルは、底壁面に開設された左右方向一文字状の吸込み口と、その吸込み口の開口前端縁の近傍で底壁面から下方突出状に設けられた多数の前方弾性板片と、吸込み口の開口後端縁の近傍で底壁面から下方突出状に設けられた多数の後方弾性板片と、を有していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の吸込みノズルでも、十分なゴミ吸引力を発揮していたが、掃除機使用者(ユーザー)から、吸引率の向上が望まれていた。
そこで、吸引率を高めるために、上記前方・後方弾性板片を下方へ大きく突出させて、吸込み口近傍の真空度や空気流の速度のさらなる向上を目指すことが考えられた。
ところが、清掃する際に、前方・後方弾性板片がフローリングや絨毯等の清掃床面に接触すると、抵抗が増加して操作性が悪くなるといった問題があった。特に、清掃床面と壁面による隅部に沿って吸込みノズルを左右方向へ横移動させる際に、掃除機使用者が重く感じてしまうという問題があった。
つまり、吸引率(吸引量)と操作性の両立が非常に困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、優れた吸引率を発揮しながらも、操作性にも優れ、使い勝手の良い吸込みノズルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の掃除機用吸込みノズルは、底壁面から下方突出状の複数の走行車輪と、上記底壁面に開設された横長状の吸込み口と、該吸込み口の開口前端縁の近傍で上記底壁面から下方突出状に設けられた多数の前方弾性板片と、上記吸込み口の開口後端縁の近傍で上記底壁面から下方突出状に設けられた多数の後方弾性板片と、を有する掃除機用吸込みノズルに於て、清掃床面非接触状態において、複数の上記走行車輪の下端が接する水平面状の仮想基準平面よりも、上記前方弾性板片及び上記後方弾性板片の下端は、下方へ突出し、底面視において、上記吸込み口は、左右中央部から左右両端部夫々にゆくにしたがって前方に進む傾斜辺部を有するV字形状であって、多数の上記前方弾性板片は、底面視V字形状の上記吸込み口の開口前端縁に平行状として、底面視V字形状に並設され、多数の上記後方弾性板片は、底面視V字形状の上記吸込み口の開口後端縁に平行状として、底面視V字形状に並設され、上記底壁面から下方突出状に多数の突条が連設され、上記多数の突条は、上記吸込み口の開口前端縁に対して直交状に配設される前側突条と、上記吸込み口の開口後端縁に対して直交状に配設される後側突条と、を有し、上記前側突条及び上記後側突条は、上記吸込み口に沿って千鳥状に配設されているものである。
【0007】
また、清掃床面非接触状態において、上記前方弾性板片及び上記後方弾性板片の下端は、上記仮想基準平面よりも0.2mm以上2.5mm以下で下方へ突出しているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フローリングや絨毯等の清掃床面に散乱しているゴミを、容易かつ確実に吸込むことができる。優れた吸引率を発揮しながらも、容易に(軽く)、左右水平状に横移動させることができ操作性に優れる。特に、清掃床面と壁面による隅部を清掃する際に使い勝手が良い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】作用簡略説明図であって、(A)は実施形態の作用説明図であり、(B)は参考例の作用説明図である。
【
図6】フローリングでの吸込み試験結果を説明するための図であって、(A)はデータ図であり、(B)は棒グラフ図である。
【
図7】絨毯での吸込み試験結果を説明するための図であって、(A)はデータ図であり、(B)は棒グラフ図である。
【
図8】シーツでの吸込み試験結果を説明するための図であって、(A)はデータ図であり、(B)は棒グラフ図である。
【
図9】横移動操作性の試験結果を説明するための図であって、(A)はデータ図であり、(B)は棒グラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示の実施形態に基づき本発明を詳説する。
本発明に係る掃除機用吸込みノズルは、
図1乃至
図3に示すように、左右横長状に形成されたノズル本体1と、ノズル本体1の左右中央部の後部1bに先端部9aが揺動(首振り)自在に連結される接続管9と、を備えている。そして、接続管9の基端部(後端部)に、図示省略するが、吸引ポンプ等の吸込み力発生手段を内有する掃除機本体が接続可能である。
【0011】
図2に示すように、ノズル本体1の底壁面10には、左右方向に長い横長状の吸込み口5が開設している。
吸込み口5は、左右中央部50から左右両端部52,52夫々にゆくにしたがって前方に進む傾斜辺部51,51を有する底面視V字形状である。図例においては、吸込み口5の左右中央部50と左右両端部52,52は、底面視で、左右方向に平行状に配設されている。
【0012】
そして、
図2及び
図3に示すように、ノズル本体1は、底壁面10から下方突出状に多数(10個以上の複数)の突条6,6を有している。
多数の突条6,6は、吸込み口5の開口前端縁5aに対して直交状に配設される前側突条6Aと、吸込み口5の開口後端縁5bに対して直交状に配設される後側突条6Bと、を有している。
【0013】
前側突条6A及び後側突条6Bは、吸込み口5に沿って千鳥状に配設している。つまり、前側突条6Aの後端と、後側突条6Bの前端とが、吸込み口5を挟んで対面状とならないように(非対面状となるように)配設している。言い換えると、前側突条6Aと後側突条6Bとの数を相違させ、かつ、開口前端縁5aに沿って隣合う前側突条6A,6Aの間隔寸法(ピッチ寸法)と、開口後端縁5bに沿って隣り合う後側突条6B,6Bの間隔寸法と、を相違させて、吸込み口5の開口前後端縁5a,5b夫々に沿った配設位置を、前側突条6Aと後側突条6Bとで相違させている。
【0014】
また、多数の前側突条6Aの内の複数(少なくとも2つ)は、底面視で、開口前端縁5aよりも後方へ突出する後方延長片部61を有している。複数の後方延長片部61は、ノズル本体1の左右方向中心線に関して左右対称位置に配設されている。また、後方延長片部61は、開口前端縁5aから第1突出寸法Eaだけ突出している。
また、多数の後側突条6Bの内の複数(少なくとも2つ)は、底面視で、開口後端縁5bよりも前方へ突出する前方延長片部62を有している。複数の前方延長片部62は、ノズル本体1の左右方向中心線に関して左右対称位置に配設されている。また、前方延長片部62は、開口後端縁5bから第2突出寸法Ebだけ突出している。
【0015】
第1突出寸法Ea及び第2突出寸法Ebは、夫々、吸込み口5の前後開口幅寸法Wを100%とすると、20%以上55%以下、好ましくは、25%以上50%以下に設定している。下限値未満であると、ノズル本体1を、掃除すべきシーツ等の布状体の上面に配設した場合に、布状体が吸い上げられて吸込み口5を閉塞する虞れが高まる。上限値を越えると、糸状のゴミ(糸くず)や、掃除すべき絨毯等の起毛(糸)が絡まって吸込み口5を閉塞する虞れが高まる。
【0016】
そして、吸込み口5の近傍に、ゴム製又は軟質の樹脂製の弾性板片7を、底壁面10から下方突出状に、多数、設けている。つまり、開口前端縁5aの近傍に多数の前方弾性板片7Aを設けると共に、開口後端縁5bの近傍に多数の後方弾性板片7Bを設けている。
【0017】
多数の前方弾性板片7Aは、開口前端縁5aに接近状かつ平行状に配設され、底面視V字形状に並設されている。
【0018】
前方弾性板片7Aは、隣り合う前側突条6A,6Aの間に、2片(枚)配設している。つまり、一方の前側突条6Aと一方の前方弾性板片7Aの間と、一方の前方弾性板片7Aと他方の前方弾性板片7Aの間と、他方の前方弾性板片7Aと他方の前側突条6Aの間と、に、狭い空気流入路を形成し、この狭い空気流入路を流れる強い(速い)空気流が粉塵のような細かいゴミを吹き飛ばして(吹き上げて)、吸引量(吸引力)を向上させる。
【0019】
多数の後方弾性板片7Bは、開口後端縁5bに接近状かつ平行状に配設され、底面視V字形状に並設されている。
また、後方弾性板片7Bは、開口後端縁5bに沿って隣り合う後側突条6B,6Bの間に配設されている。
吸込み口5の左右中央部50と傾斜辺部51とが接する近傍において隣り合う後側突条6B,6Bの間に、後方弾性板片7Bを、2片(枚)配設して、(前方側と同様に)空気流入路を形成している。
また、吸込み口5の傾斜辺部51に対応して隣り合う後側突条6B,6Bの間に、後方弾性板片7Bは、1片(枚)配設して、後側突条6Bとの間に、空気流入路を形成している。
【0020】
ここで、ノズル本体1は、底壁面10から下方突出状の複数の走行車輪8を有している。
そして、
図3に示すように、複数の走行車輪8の下端8dが接する水平面状の仮想面を、仮想基準平面Sと呼ぶ。この仮想基準平面Sは、走行車輪8の下端8dが、フローリングのような硬い清掃床面Gに接地した場合を想定した設計上の仮想車輪接地面とも呼べる。さらに、ノズル本体1(弾性板片7や走行車輪8等)を、清掃床面Gに接触させていない状態を、清掃床面非接触状態と呼ぶ。
【0021】
図3の清掃床面非接触状態において、弾性板片7(前方弾性板片7A及び後方弾性板片7B)は、垂下状姿勢であり、下端7dは、仮想基準平面Sよりも、下方へ突出している。
言い換えると、清掃床面Gに接地した場合を想定した走行車輪8の下端8dよりも、弾性板片7の下端7dを、所定の下方突出寸法Edだけ、下方へ突出させている。
なお、突条6(前側突条6A及び後側突条6B)は、仮想基準平面S(走行車輪8の下端8d)及び弾性板片7の下端7dよりも上方位置に配設されている。
【0022】
ここで、
図4に示すように、走行車輪8の下端8dがフローリング等の硬い水平面状の清掃床面(走行面)Gに当接した清掃床面接触状態で、弾性板片7の下端部は弯曲して清掃床面Gに当接(接触)する。そして、弾性板片7が垂下状姿勢(清掃床面非接触状態の姿勢)に戻ろうとする弾性的復元力によって、弾性板片7の下端部が清掃床面Gに圧接状に接触して、密封用シール材のような作用を発揮する。つまり、弾性板片7が清掃床面Gに接触していない場合に比べて、吸込み口5近傍の真空度が高まって、吸引力(吸込み力)が向上する。
【0023】
また、吸込み口5に沿って隣り合う弾性板片7,7同士の間や、弾性板片7と突条6の間といった、空気流入路(通気路)を流れる空気の速度が上がって、清掃床面Gを形成する絨毯や畳等の(被)清掃床材内部のゴミを吸い上げる力も増加する。
【0024】
ここで、
図3に示すように、接続管9の先端開口部90は、ノズル本体1のケーシング11の内部で、吸込み口5の左右中央部50近傍の上方位置に配設される。つまり、吸込み口5において、左右両端部52,52から左右中央部50に向かって吸込み力が強くなる。
さらに、多数の弾性板片7がV字形状に並設しているため、弾性板片7によって、空気が、複雑な乱流や渦流を発生させながら吸込み口5の左右中央部50へ向かって流れる。
したがって、吸込み力が最も強い左右中央部50に、空気流によって粉塵等のゴミが搬送され、確実に吸込む。
【0025】
また、弾性板片7をV字形状に並設しているため、清掃床面G上で、ノズル本体1を左右方向に滑らせるように横移動させることが容易である。
例えば、ノズル本体1を、
図5に矢印Yで示すように左右一方向に横移動させると、弾性板片7には、清掃床面Gから左右他方への反力Fが作用する。
ここで、
図5(A)に示すように、実施形態は、多数の弾性板片7が傾斜状姿勢であるため、左右他方への反力Fを受けると、弾性板片7が前方又は後方へ弯曲するように弾性変形して反力Fを受け流す、或いは、弾性変形することで反力Fを吸収することができる。
ところが、
図5(B)に示す参考例のように、横一文字状の弾性板片70であると、左右他方への反力Fに対して、対向するように受けるため、弾性変形しにくく(反力を軽減できず)、弾性板片70による摩擦抵抗が大きくなって、左右方向に滑らせるのが困難となる。つまり、
図5(A)は、弾性板片7による摩擦抵抗が軽減され、小さい力で(軽く容易に)ノズル本体1を左右方向に滑らせることが可能である。なお、参考例の弾性板片70は、材質や下方突出寸法Ed等の寸法は
図5(A)と同様である。
【0026】
また、下方突出寸法Edは、0.2mm以上2.5mm以下に設定している。
下限値未満であると、密封シール材のような作用が得られにくく、真空度や空気流速度の向上が望めない。また、上限値を越えると、弾性板片7と清掃床面Gとの間の摩擦力が増加して、走行車輪8による走行が困難になる虞れがある。
【0027】
さらに、前側突条6Aと後側突条6Bは吸込み口5に沿って千鳥状に配設しているので、清掃床面Gがシーツ等の軽い布状体で形成されている場合に、吸込み口5の前後近傍において、上記布状体が吸込み力によって浮き上がっても、前側突条6Aと後側突条6Bの何れかが、当接し、布状体によって空気流入路が塞がれるのを防止する。つまり、前側突条6Aと後側突条6Bとを、吸込み口5を挟んで対面状に配設(同ピッチで並設)した場合に比べて、布状体の浮き上がりを押さえていない空間(布状体が吸い付くことが可能な空間)を小さくできる。
【0028】
しかも、吸込み口5には、後方延長片部61と前方延長片部62とが配設されるため、シーツ等の布状体が吸込み口5に入り込みにくく、吸込み口5が布状体によって閉塞されるのを防止できる。即ち、吸引量の低下を防ぐと共に、布状体の清掃が容易となって使い勝手が良い。
【0029】
また、
図3に於て、弾性板片7は、横長状かつ横断面コの字状の棒状の基端部71の下面に垂下状に一体成形されている。基端部71はゴムや軟質な樹脂等の弾性材から成る。
言い換えると、横長状かつ横断面コの字状の棒状の第1基端部71Aと、第1基端部71Aの下面に下方突出状(垂下状)に設ける多数の前方弾性板片7A,7Aとを、有する弾性材から成る一体成形品の第1部材を備え、さらに、横長状かつ横断面コの字状の棒状の可撓性の第2基端部71Bと、第2基端部71Bの下面に下方突出状(垂下状)に設ける多数の後方弾性板片7B,7Bとを、有する弾性材から成る一体成形品の第2部材を備えている。横断面コの字状とすることで弾性変形しやすく、ノズル本体1のケーシング11を構成するケーシング上部材及びケーシング下部材の組み付けが容易になる。
【0030】
ここで、上述の実施形態に基づいて製作した実施例と、比較例の性能試験結果を説明する。
比較例は、図示省略するが、吸込み口5が横一文字状で、前方・後方弾性板片7A,7Bが吸込み口5に沿って横一文字に並設され、かつ、前突条6と後突条6が左右方向同位置であり、さらに、清掃床面接触状態で弾性板片7が清掃床面Gから上方へ離間している(清掃床面非接触状態で弾性板片7が仮想基準面Sよりも上方位置にある)ものである。
【0031】
先ず、
図6の性能試験結果は、フローリングの上面に、小麦粉25gを散布して、その小麦粉を、実施例と比較例夫々で、吸引したときの吸引量(吸引率)の結果である。
また、
図7の性能試験結果は、絨毯の上面に、小麦粉25gを散布して、その小麦粉を、実施例と比較例夫々で、吸引したときの吸引量(吸引率)の結果である。
図6と
図7の結果から明らかなように、実施例は、比較例に比べて、吸引量(吸引率)が優れていると言える。これは、弾性板片7のV字形状の配列によって、上述の左右中央部50にゴミを誘導して吸込んでいることや、弾性板片7による上述の真空度や空気流速度の向上によるものである。
【0032】
次に、
図8の性能試験結果は、フローリングの上面に、ベビーパウダー10gを散布して、その上からシーツを被せて、シーツの上面から、そのベビーパウダーを、実施例と比較例夫々で、吸引したときの吸引量(吸引率)の結果である。
図8の結果から明らかなように、実施例は、比較例に比べて、吸引量(吸引率)が優れていると言える。
図6と
図7の試験結果よりも実施例と比較例とで大きな差が生じた理由としては、実施例が、シーツの浮き上がりによる吸込み口5の閉塞や空気流入路の閉塞を、突条6,6で確実に、防止しているためである。
【0033】
次に、実施例と参考例の性能試験結果を説明する。
参考例は、図示省略するが、吸込み口5が横一文字状で、前方・後方弾性板片7A,7Bが吸込み口5に沿って横一文字に並設され、かつ、前側突条6Aと後側突条6Bが左右方向同位置であり、さらに、清掃床面接触状態で弾性板片7が清掃床面Gから下方へ突出している(弾性板片7の厚さや下方突出寸法Ed等の各寸法が実施例と同じ)ものである。
【0034】
図9の性能試験結果は、フローリングと絨毯夫々の上で、実施例と参考例を夫々、左右一方向へ引いて動かしたときの力(引張力)の大きさを測定したものである。なお、実施例と参考例には、1Kgの重り(押圧力)を付与した状態で試験を行った。
図9の結果から明らかなように、実施例は、フローリングと絨毯の両方に於て、参考例よりも小さい力で横移動できている。これは、弾性板片7をV字形状に並設したことで、摩擦抵抗が低減していると言える。
【0035】
なお、本発明は、設計変更可能であって、左右中央部50及び左右両端部52,52は、傾斜辺部51,51と同様の傾斜状に形成するも良い。ノズル本体1の全体形状は楕円形状や三角形状等自由である。走行車輪8の形状や数は自由である。清掃床面Gとは、フローリング、畳、タイル面等の硬い平面(床面)に限らず、柔軟な、絨毯、カーペット、シーツや布団等自由である。また、接続管9の基端部(後端部)に接続される掃除機本体は、車輪付牽引型、スティック型、ハンドクリーナー型等自由である。
【0036】
以上のように、本発明の掃除機用吸込みノズルは、底壁面10から下方突出状の複数の走行車輪8と、上記底壁面10に開設された横長状の吸込み口5と、該吸込み口5の開口前端縁5aの近傍で上記底壁面10から下方突出状に設けられた多数の前方弾性板片7Aと、上記吸込み口5の開口後端縁5bの近傍で上記底壁面10から下方突出状に設けられた多数の後方弾性板片7Bと、を有する掃除機用吸込みノズルに於て、清掃床面非接触状態において、複数の上記走行車輪8の下端8dが接する水平面状の仮想基準平面Sよりも、上記前方弾性板片7A及び上記後方弾性板片7Bの下端7dは、下方へ突出し、底面視において、上記吸込み口5は、左右中央部50から左右両端部52,52夫々にゆくにしたがって前方に進む傾斜辺部51,51を有するV字形状であって、多数の上記前方弾性板片7Aは、底面視V字形状の上記吸込み口5の開口前端縁5aに平行状として、底面視V字形状に並設され、多数の上記後方弾性板片7Bは、底面視V字形状の上記吸込み口5の開口後端縁5bに平行状として、底面視V字形状に並設されているので、フローリングや絨毯等の清掃床面Gに散乱しているゴミを、容易かつ確実に吸込むことができる。優れた吸引率を発揮しながらも、ノズル本体1を、容易に(軽く)、左右水平状に横移動させることができ操作性に優れる。特に、壁面と清掃床面Gとの隅部を清掃する際に使い勝手が良い。
【0037】
また、清掃床面非接触状態において、上記前方弾性板片7A及び上記後方弾性板片7Bの下端7dは、上記仮想基準平面Sよりも0.2mm以上2.5mm以下で下方へ突出しているので、シール性(密封性)が高く真空度や空気流速度を向上させながらも、弾性板片7と清掃床面Gとの間の摩擦力が少なく、走行車輪8による走行や、横移動を容易に行うことができて操作性に優れる。
【0038】
また、上記底壁面10から下方突出状に多数の突条6が連設され、上記多数の突条6は、上記吸込み口5の開口前端縁5aに対して直交状に配設される前側突条6Aと、上記吸込み口5の開口後端縁5bに対して直交状に配設される後側突条6Bと、を有し、上記前側突条6A及び上記後側突条6Bは、上記吸込み口5に沿って千鳥状に配設されているので、シーツ等の布状体の浮き上がりによる吸込み口5の閉塞や空気流入量の閉塞を、確実に防止でき、吸込み量が安定する。また、布状体の清掃を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0039】
5 吸込み口
5a 開口前端縁
5b 開口後端縁
6 突条
6A 前側突条
6B 後側突条
7A 前方弾性板片
7B 後方弾性板片
7d 下端
8 走行車輪
8d 下端
10 底壁面
50 左右中央部
51 傾斜辺部
52,52 左右両端部
S 仮想基準平面