IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オリエンタル鍍金株式会社の特許一覧

特許7117782めっき積層体の製造方法及びめっき積層体
<>
  • 特許-めっき積層体の製造方法及びめっき積層体 図1
  • 特許-めっき積層体の製造方法及びめっき積層体 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】めっき積層体の製造方法及びめっき積層体
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/10 20060101AFI20220805BHJP
   H01R 13/03 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
C25D5/10
H01R13/03 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019099374
(22)【出願日】2019-05-28
(65)【公開番号】P2020193366
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-11-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598098434
【氏名又は名称】オリエンタル鍍金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】特許業務法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏▲禎▼
(72)【発明者】
【氏名】岸本 泰典
(72)【発明者】
【氏名】中川 育美
(72)【発明者】
【氏名】小林 由希子
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-095139(JP,A)
【文献】特開2014-237883(JP,A)
【文献】特開2009-079250(JP,A)
【文献】特開2019-002074(JP,A)
【文献】特開2016-065316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/10
H01R 13/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材の表面の少なくとも一部に下地めっきを施して錫又は錫を含む合金からなる下地めっき層を形成する下地めっき工程と、
前記下地めっき工程の後に、前記下地めっき層の表面の少なくとも一部に銀ストライクめっきを施す銀ストライクめっき工程と、
前記銀ストライクめっきを施した後の表面の少なくとも一部に軟質銀めっき処理を施し、ビッカース硬さが60~90Hvの軟質銀めっき層を形成する軟質銀めっき工程と、
前記軟質銀めっき層の表面の少なくとも一部に硬質銀めっき処理を施し、ビッカース硬さが130Hv以上の硬質銀めっき層を形成する硬質銀めっき工程と、
含むこと、
を特徴とするめっき積層体の製造方法。
【請求項2】
前記下地めっき工程の前に、前記金属基材の表面の少なくとも一部に母材拡散防止めっき処理を施し、母材拡散防止めっき層を形成する母材拡散防止めっき工程を含むこと、
を特徴とする請求項1に記載のめっき積層体の製造方法。
【請求項3】
前記軟質銀めっき層の厚さが1.0~50.0μmであること、
を特徴とする請求項1または2に記載のめっき積層体の製造方法。
【請求項4】
金属基材と、
前記金属基材の表面の少なくとも一部に設けられた錫又は錫を含む合金からなる下地めっき層と、
前記下地めっき層の表面の少なくとも一部に設けられたビッカース硬さが60~90Hvの軟質銀めっき層と、
前記軟質銀めっき層の表面の少なくとも一部に設けられたビッカース硬さが130Hv以上の硬質銀めっき層と、
を含み、
前記下地めっき層と前記軟質めっき層との間に設けられた銀ストライクめっき層を含むこと、
を特徴とするめっき積層体。
【請求項5】
前記軟質銀めっき層の厚さが1.0~50.0μmであること、
を特徴とする請求項4に記載のめっき積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき積層体の製造方法及びめっき積層体に関し、より具体的には、耐摩耗性、耐腐食性、低接触抵抗性を有するめっき積層体の製造方法及びめっき積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用のコネクタ端子は、端子同士の嵌合によって接続する方法で用いられるが、高温化で長時間の低接触抵抗性が維持できるよう下地めっきとしてニッケルめっきが施されている。例えば、特許文献1(特開2017-14589号公報)に記載の銀めっき材においては、基材の下地めっきとしてニッケルめっきが用いられている。
【0003】
上記特許文献1の銀めっき材においては、ニッケルめっきを施すことで、基材と銀めっきとの密着性を向上させ、高温化において耐食性を維持できる、としている。
【0004】
また、車載用のコネクタ端子は、走行時の摺動に耐える必要があり、耐摩耗性が求められるため、ニッケルめっきの表面に硬質の銀めっきが施されるのが一般的である。例えば、特許文献2(再表2016-157713号公報)に記載の銀めっき材においては、コネクタ端子の最表面に銀めっきが施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-14589
【文献】再表2016-157713
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び2の記載の銀めっき材の構造では、加工性に問題があり、銀めっき処理の後に嵌合接合構造に加工する際、銀めっきが破損するなどして基材金属が露出してしまうことになる。基材金属の露出により、銀めっき加工がもたらす耐腐食性、低接触抵抗性等の効果が低下するため、銀めっきが破損することのない技術が必要であった。
【0007】
以上のような従来技術における問題点に鑑み、本発明の目的は、優れた加工性(高延性)を有し、耐腐食性、低接触抵抗性を有する硬質銀めっき積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく、金属基材に硬質銀めっきを施す方法について鋭意研究を重ねた結果、下地めっきと硬質銀めっきとの間に、軟質の金属めっきを施すことが、極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
即ち、本発明は、
金属基材に積層的にめっきを施しためっき積層体の製造方法であって、
金属基材の表面の少なくとも一部に下地めっきを施し、下地めっき層を形成する下地めっき工程と、
前記下地めっき層の表面の少なくとも一部に軟質銀めっき処理を施し、軟質銀めっき層を形成する軟質銀めっき工程と、
前記軟質銀めっき層の表面の少なくとも一部に硬質銀めっき処理を施し、硬質銀めっき層を形成する硬質銀めっき工程と、
を含むことを特徴とするめっき積層体の製造方法を提供する。
【0010】
本発明のめっき積層体の製造方法においては、金属基材と硬質銀めっき層との間に、軟質銀めっき層を形成させることで、軟質銀めっき層の延性により、銀めっきに外圧が加わることによって破損することを防ぎ、金属基材の一部が露出することを防ぐことができる。
【0011】
本発明のめっき積層体の製造方法においては、前記軟質銀めっき工程の前に、前記下地めっき層の表面の少なくとも一部に銀ストライクめっきを施す工程を有すること、が好ましい。銀ストライクめっきを施すことで、下地めっき層と軟質銀めっき層との密着性を十分に担保することができる。
【0012】
また、本発明のめっき積層体の製造方法においては、前記下地めっき工程の前に、前記金属基材の表面の少なくとも一部に母材拡散防止めっき処理を施し、母材拡散防止めっき層を形成する工程を有すること、が好ましい。母材拡散防止めっきを施すことで母材の拡散を抑制し、接触抵抗の上昇を抑制するという効果が得られる。
【0013】
本発明のめっき積層体の製造方法においては、前記硬質銀めっき工程の後に、変色防止処理を施すこと、ができる。変色防止処理を施すことで、美観性を有し、商品力を有するめっき積層体を形成することができる。
【0014】
また、本発明のめっき積層体の製造方法においては、前記軟質銀めっき層の厚さを1.0~50.0μmとすること、が好ましい。軟質銀めっき層の厚さを1.0μm以上とすることで、軟質銀めっきの弾性及び延性を十分に活用することでき、50.0μm以下とすることで、銀の使用量を抑制できる。
【0015】
また、本発明のめっき積層体の製造方法においては、前記硬質銀めっき層の厚さを1.0~50.0μmとすること、が好ましい硬質銀めっき層の厚さを1.0μm以上とすることで、硬質銀めっきの耐摩耗性を十分に活用することでき、50.0μm以下とすることで、銀の使用量を抑制できる。
【0016】
また、本発明は、
金属基材と、
前記金属基材の表面の少なくとも一部に設けられた下地めっき層と、
前記下地めっき層の表面の少なくとも一部に設けられた軟質銀めっき層と、
前記軟質銀めっき層の表面の少なくとも一部に設けられた硬質銀めっき層と、
を含むことを特徴とするめっき積層体、も提供する。
【0017】
本発明のめっき積層体においては、金属基材と硬質銀めっき層との間に、軟質銀めっき層が形成されていることで、軟質めっき層の弾性、延性により、外圧が加わることによって銀めっきが破損し金属基材の一部が露出することを防ぐことができる。
【0018】
また、本発明のめっき積層体の製造方法においては、前記下地めっき層と前記軟質銀めっき層との間に、銀ストライクめっき層を形成されていること、が好ましい。銀ストライクめっき層が形成されていることで、下地めっき層と軟質銀めっき層との密着性を十分に担保することができる。
【0019】
また、本発明のめっき積層体においては、下地めっき層と金属基材との間の少なくとも一部に、母材拡散防止めっき層が形成されていること、が好ましい。母材拡散防止めっき層が形成されていることで、上記したように、接触抵抗の上昇を抑制するという効果が得られる。
【0020】
また、本発明のめっき積層体においては、前記軟質銀めっき層の厚さが1.0~50.0μmであること、が好ましい。軟質銀めっき層の厚さが1.0μm以上であることで、軟質銀めっきの弾性及び延性を十分に活用することでき、50.0μm以下であることで、銀の使用量を抑制できる。
【0021】
また、本発明のめっき積層体においては、前記硬質銀めっき層の厚さが1.0~50.0μmであること、が好ましい。硬質銀めっき層の厚さを1.0μm以上とすることで、硬質銀めっきの耐摩耗性を十分に活用することでき、50.0μm以下とすることで、銀の使用量を抑制できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のめっき積層体及びその製造方法によれば、優れた耐腐食性、低接触抵抗性とともに、優れた加工性(高延性)を有するめっき積層体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明のめっき積層体の製造方法の一実施形態の工程図である。
図2】本発明のめっき積層体の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明のめっき積層体及びその製造方法の代表的な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する場合がある。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、表された各構成要素の寸法やそれらの比は実際のものとは異なる場合もある。
【0025】
≪めっき積層体の製造方法≫
図1は、本発明のめっき積層体の製造方法の一実施形態の工程図である。本実施形態のめっき積層体の製造方法は、金属基材に積層的にめっきを施しためっき積層体の製造方法であって、主として下記の工程を含む。
・金属基材の表面の少なくとも一部に下地めっきを施し、下地めっき層を形成する下地めっき工程(S02)
・下地めっき層の表面の少なくとも一部に軟質銀めっき処理を施し、軟質銀めっき層を形成する軟質銀めっき工程(S04)
・軟質銀めっき層の表面の少なくとも一部に硬質銀めっき処理を施し、硬質銀めっき層を形成する硬質銀めっき工程(S05)
【0026】
以下においては、上記の主となる工程(S02、S03及びS05)を含む本発明の代表的な実施形態の各工程(S01~S05)について詳細に説明する。
【0027】
(1)洗浄処理(S01)
全工程に先立って、予備処理として金属基材の洗浄処理を施すことが好ましい。金属基材の洗浄方法は、本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の洗浄方法を用いることができる。洗浄処理液としては、例えば、一般的な非鉄金属用の浸漬脱脂液又は電解脱脂液を使用することができる。
【0028】
ここで、金属基材に用いる金属としては、電導性を有している限り特に限定されず、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、鉄及び鉄合金(例えば、鉄-ニッケル合金)、チタン及びチタン合金、ステンレス、銅及び銅合金等を挙げることができるが、なかでも、電導性・熱伝導性・展延性に優れているという理由から、銅又は銅合金を用いることが好ましい。
【0029】
また、予備処理として、必要に応じてマスキングを行ってもよい。マスキングの方法としては、従来公知の方法にしたがえばよい。
【0030】
(2)母材拡散防止めっき処理(任意)
ここで、上記洗浄処理の後に、母材拡散防止めっき処理を施してもよい。この母材拡散防止めっき処理は、第一の下地めっき処理ともいうことができ、任意の工程であり、接触抵抗の上昇が好ましくないという場合は施すことが好ましい。
【0031】
母材拡散防止めっき処理としては、例えば、パラジウムめっき処理、ロジウムめっき処理、金めっき処理等を用いることができる。また、前記金属を含む合金類、及び、前述金属を施工しリフロー処理を行った層を使用してもよい。
【0032】
(3)下地めっき処理(S02)
下地めっき処理は、最終的に得られるめっき積層体の延性を向上させるためのものであり、第二の下地めっき処理ともいえる。任意の工程であるが、曲げ加工による母材の露出が無い方が良いという場合は施すことが好ましい。
【0033】
下地めっき処理に用いる金属としては、錫、亜鉛、金等を用いることができる。また、前記金属を含む合金類、及び、前述金属を施工しリフロー処理を行った層を使用してもよい。
【0034】
(4)銀ストライクめっき処理(S03)
銀ストライクめっき処理は、軟質銀めっき処理(S04)の予備処理ともいえ、下地めっき層と軟質銀めっき層との密着性を向上させる必要がある場合には施すことが好ましい。
【0035】
銀ストライクめっきは従来公知の方法で実施することができ、例えば、特許文献2(再表2016-157713号公報)に記載の銀ストライクめっき、浴温:15~50℃、電流密度:0.5~5.0A/dm、処理時間:5~60秒という条件で実施すればよい。
【0036】
(5)軟質銀めっき処理(S04)
軟質銀めっき浴としては、例えば、銀塩、シアン化アルカリ塩、電導塩を含むものを用いることができる。また、添加剤が添加されていてもよい。本発明における「軟質銀めっき層」とは、後述する「硬質銀めっき層」との対比されるものであり、60~90Hvのビッカース硬さを有し、「硬質銀めっき層」は130Hv以上のビッカース硬さを有する。
【0037】
銀塩には、例えば、シアン化銀、シアン化銀カリウム等を用いることができる。シアン化アルカリ塩には、例えば、シアン化カリウム、シアン化ナトリウム等を用いることができる。電導塩は、例えば、炭酸カリウム、塩化カリウム、ピロリン酸カリウム、チオ硫酸カリウム等を用いることができる。添加剤には、例えば、アンチモン、セレン、テルル、ベンゼンスルホン酸、メルカプタン類、エチレンジアミン四酢酸等を用いることができる。
【0038】
軟質銀めっき浴の浴温度、陽極材料、電流密度等の条件は、用いるめっき浴及び必要とするめっき厚さ等に応じて適宜設定することができる。例えば、陽極材料には、銀、ステンレス、チタン白金板、酸化イリジウム等を用いることが好ましい。また、好適なめっき条件としては、浴温:15~70℃、電流密度:0.1~10.0A/dm、pH:9.0~13.0を例示することができる。
【0039】
(6)硬質銀めっき処理(S05)
上記のとおり、「硬質銀めっき層」は130Hv以上のビッカース硬さを有する。これを形成するために用いる硬質銀めっき浴としては、例えば、銀塩、シアン化アルカリ塩、電導塩、硬化剤を含むものを用いることができる。
【0040】
銀塩には、例えば、シアン化銀、シアン化銀カリウム等を用いることができる。シアン化アルカリ塩には、例えば、シアン化カリウム、シアン化ナトリウム等を用いることができる。電導塩は、例えば、炭酸カリウム、塩化カリウム、ピロリン酸カリウム、チオ硫酸カリウム等を用いることができる。硬化剤には、例えば、アンチモン、セレン、テルル、ベンゼンスルホン酸、メルカプタン類、エチレンジアミン四酢酸等を用いることができる。
【0041】
硬質銀めっき浴の浴温度、陽極材料、電流密度等の条件は、用いるめっき浴及び必要とするめっき厚さ等に応じて適宜設定することができる。例えば、陽極材料には、銀、ステンレス、チタン白金板、酸化イリジウム等を用いることが好ましい。また、好適なめっき条件としては、浴温:15~70℃、電流密度:0.1~10.0A/dm、pH:9.0~13.0を例示することができる。
【0042】
≪めっき積層体≫
次に、図2は、本実施形態のめっき積層体の構造を示す概略断面図である。めっき積層体1は、図2に示すように、下から順に下記の層を含む構造を有する。
【0043】
金属基材2
母材拡散防止めっき層4
下地めっき層6
銀ストライクめっき層8
軟質銀めっき層10
硬質銀めっき層12
【0044】
即ち、金属基材2の表面に母材拡散防止めっき層4が形成され、母材拡散防止めっき層4の表面に下地めっき層6が形成され、下地めっき層6の表面に銀ストライクめっき層8が形成され、銀ストライクめっき層8の表面に軟質銀めっき層10が形成され、軟質銀めっき層10の表面に硬質銀めっき層12が形成されている。
【0045】
金属基材2に用いる金属としては、電導性を有している限り特に限定されず、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、鉄及び鉄合金(例えば、鉄-ニッケル合金)、チタン及びチタン合金、ステンレス、銅及び銅合金等を挙げることができるが、なかでも、電導性・熱伝導性・展延性に優れているという理由から、銅又は銅合金を用いることが好ましい。
【0046】
母材拡散防止めっき層4は、金属種として、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、金、ニッケル、亜鉛、錫等を利用できる。また、これらの金属を含む合金類でもよい。母材拡散防止めっき層4は形成されていなくてもよく、形成されていてもよい。厚さは0.005~1.0μmであることが好ましい。
【0047】
下地めっき層6は、金属種として、錫、亜鉛、金等を用いることができる。また、これらの金属を含む合金類でもよい。厚さは0.5~2.0μmであることが好ましい。
【0048】
銀ストライクめっき層8を形成することで、下地めっき層6と軟質銀めっき層10との密着性を向上させることができる。かかる銀ストライクめっき層8は、厚さ0.01~1.0μmであることが好ましい。
【0049】
軟質銀めっき層10は、厚さが1.0~50.0μmであることが好ましい。軟質銀めっき層の厚さが1.0μm以上であることで、軟質銀めっきの弾性及び延性を十分に活用することでき、50.0μm以下であることで、銀の使用量を抑制できる。なお、硬質銀めっき層に対し、2倍以上であることがより好ましい。
【0050】
硬質銀めっき層12は、厚さが1.0~50.0μmであることが好ましい。硬質銀めっき層の厚さが1.0μm以上であることで、硬質銀めっきの硬さを十分に活用することでき、50.0μm以下であることで、銀の使用量を抑制できる。なお、硬質銀めっき層の厚さは、1.0μm以上であることがより好ましい。
【0051】
めっき積層体1では、硬質銀めっき層と金属基材との間に軟質銀めっき層が形成されていることから、軟質めっき層の延性により、外圧が加わることによって銀めっきが破損し金属基材の一部が露出することを防ぐことができる。
【0052】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それら設計変更は全て本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例
【0053】
≪実施例≫
(1)図1に示す工程に沿って下記の実験を行った。まず、銅材をアルカリ脱脂液に入れ、電圧3Vで30秒間処理するという方法で洗浄した(S01)。ついで、100g/Lの硫酸第一錫、50mL/Lの硫酸、5mLの添加剤を含む錫めっき浴を用い、2.0μmの錫めっき層を形成させる下地めっき処理を施した(S02)。
次に、5g/Lのシアン化銀、100g/Lのシアン化カリウムを含むストライク銀めっき浴を用い、銀ストライクめっき処理を施した(S03)。
その後、40g/Lのシアン化銀カリウム、150g/Lのピロリン酸カリウムを含む軟質銀めっき浴を用いて、5μm及び60Hvの軟質銀めっき層を形成し(S04)、90g/Lのシアン化銀、150g/Lのシアン化カリウム、5g/Lの酸化アンチモンを含む硬質銀めっき浴を用い、5μm及び150Hvの硬質銀めっき層を形成させて(S05)、めっき積層体1を作製した。
【0054】
(2)錫めっき層の厚さを0.2μmとした以外は、上記(1)と同様にしてめっき積層体2を作製した。
【0055】
(3)錫めっき層の厚さを0.5μmとした以外は、上記(1)と同様にしてめっき積層体3を作製した。
【0056】
(4)錫めっき層の厚さを1.0μmとした以外は、上記(1)と同様にしてめっき積層体4を作製した。
【0057】
≪比較例1≫
銅材を洗浄し、300g/Lのスルファミン酸ニッケル、5g/Lの塩化ニッケル、10g/Lのホウ酸を含むニッケル浴を用い、1.0μmのニッケルめっき層を形成した。
ついで、5g/Lのシアン化銀、100g/Lのシアン化カリウムを含むストライク銀めっき浴を用い、銀ストライクめっきを施した。
次に、90g/Lのシアン化銀、150g/Lのシアン化カリウム、5g/Lの酸化アンチモンを含む硬質銀めっき浴を用い、10μm及び150Hvの硬質銀めっき層を形成させて、めっき積層体5を作製した。
【0058】
≪比較例2≫
銅材を洗浄し、300g/Lのスルファミン酸ニッケル、5g/Lの塩化ニッケル、10g/Lのホウ酸を含むニッケル浴を用い、1.0μmのニッケルめっき層を形成した。
ついで、5g/Lのシアン化銀、100g/Lのシアン化カリウムを含むストライク銀めっき浴を用い、銀ストライクめっきを施した。
次に、40g/Lのシアン化銀カリウム、150g/Lのピロリン酸カリウムを含む軟質銀めっき浴を用いて、10μm及び60Hvの軟質銀めっき層を形成させて、めっき積層体6を作製した。
【0059】
[評価試験]
(1)円筒形マンドレル試験
上記のようにして得られためっき積層体1~6について、円筒形マンドレル試験を行った。具体的には、径4.0mmのマンドレルを挟み込み、折曲げ部が径4.0mmとなるように、180°折曲げた。その後、50倍の顕微鏡にて折り曲げ部を観察した。折曲げ部のクラックより、金属基材である銅が観察されなかった場合は〇とし、観察された場合は×として、表1に結果を示した。
(2)断面観察
上記のめっき積層体1及び5、6について、断面観察を行った。具体的には、研磨紙にて断面研磨を行った後、SU1510形走査電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、元素マッピング分析を実施した。その結果を表2に示した。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
表1に示す結果から、本発明の実施例では、下地錫めっきを施した場合、銅基材の露出しにくいことが確認された。さらに、下地錫めっき層を0.5μm以上の厚さで形成させた場合には、めっき層の耐久性はより向上することが確認できた。
【0063】
また、表2に示す結果から、下地錫めっきを施した場合、クラック部は錫めっきで覆われており、銅基材の露出はないことが確認できた。軟質銀めっきでは、破断面が丸く伸びていることが分かる。これに対し、硬質銀めっきの場合は、破断面はフラットとなっており、銀めっきが全く伸びていないことが確認できた。
【符号の説明】
【0064】
1・・・めっき積層体
2・・・金属基材
4・・・母材拡散防止めっき層
6・・・下地めっき層
8・・・銀ストライクめっき層
10・・・軟質銀めっき層
12・・・硬質銀めっき層

図1
図2