(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】靴底部材、及び、それを用いた靴
(51)【国際特許分類】
A43B 13/26 20060101AFI20220805BHJP
A43B 13/14 20060101ALI20220805BHJP
A43B 13/22 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
A43B13/26 A
A43B13/14 A
A43B13/22 B
(21)【出願番号】P 2020023096
(22)【出願日】2020-02-14
【審査請求日】2021-10-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ▲1▼開催日:令和1年9月11日~12日 展示会名:アサヒシューズ株式会社 2020年春夏新製品の展示会 ▲2▼開催日:令和1年9月18日~19日 展示会名:アサヒシューズ株式会社 2020年春夏新製品の展示会 ▲3▼開催日:令和1年9月25日~26日 展示会名:アサヒシューズ株式会社 2020年春夏新製品の展示会 ▲4▼発行日:令和1年11月9日~10日 展示会名:第33回日本靴医学会
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004433
【氏名又は名称】アサヒシューズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡 謙祐
(72)【発明者】
【氏名】金子 久光
(72)【発明者】
【氏名】塚本 裕二
(72)【発明者】
【氏名】江西 浩一郎
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-020953(JP,A)
【文献】登録実用新案第3150974(JP,U)
【文献】特開2001-275702(JP,A)
【文献】特許第3992724(JP,B2)
【文献】特開2013-005839(JP,A)
【文献】特開2003-079402(JP,A)
【文献】特開昭55-047804(JP,A)
【文献】特開2021-048910(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0072684(US,A1)
【文献】特開2009-240584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/26
A43B 13/14
A43B 13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴本体部の底面に取り付けられる靴底部材であって、
接地面の踵部の中央部に設けられている円形の凹部と、
前記接地面の踵部から突出し、前記
凹部の中央部から前記踵部の外縁部側に向かって延びるように立設されているメインリブと、
前記メインリブから分離されており、
前記接地面のメインリブよりも前記外縁部側となる領域で前記踵部から突出し、前記外縁部側に向かって延びるように立設されているサポートリブとを備え、
前記サポートリブの前記外縁部側の端部である第1先端部は、前記メインリブの前記外縁部側の端部である第2先端部よりも前記外縁部側に位置し、
前記メインリブ及び前記サポートリブは、前記
凹部の中心に規定されている中心点を中心とする周方向一方側に傾斜し、
前記メインリブの基端の周方向一方側又は周方向他方側の縁と、前記サポートリブの基端の周方向一方側又は周方向他方側の縁とは、前
記中心点から径方向に延びる線に沿って並んでいることを特徴とする靴底部材。
【請求項2】
靴本体部の底面に取り付けられる靴底部材であって、
接地面の踵部の中央部に設けられている円形の凹部と、
前記接地面の踵部から突出し、前記
凹部の中央部から前記踵部の外縁部側に向かって延びるように立設されているメインリブと、
前記メインリブから分離されており、
前記接地面のメインリブよりも前記外縁部側となる領域で前記踵部から突出し、前記外縁部側に向かって延びるように立設されているサポートリブとを備え、
前記サポートリブの前記外縁部側の端部である第1先端部は、前記メインリブの前記外縁部側の端部である第2先端部よりも前記外縁部側に位置し、
前記メインリブ及び前記サポートリブは、前記
凹部の中心に規定されている中心点を中心とする周方向一方側に傾斜し、
前記メインリブの先端の周方向一方側又は周方向他方側の縁と、前記サポートリブの先端の周方向一方側又は周方向他方側の縁とは、前
記中心点から径方向に延びる線に沿って並んでいることを特徴とする靴底部材。
【請求項3】
靴本体部の底面に取り付けられる靴底部材であって、
接地面の踵部の中央部に設けられている円形の凹部と、
前記接地面の踵部から突出し、前記
凹部の中央部から前記踵部の外縁部側に向かって延びるように立設されているメインリブと、
前記メインリブから分離されており、
前記接地面のメインリブよりも前記外縁部側となる領域で前記踵部から突出し、前記外縁部側に向かって延びるように立設されているサポートリブとを備え、
前記サポートリブの前記外縁部側の端部である第1先端部は、前記メインリブの前記外縁部側の端部である第2先端部よりも前記外縁部側に位置し、
前記メインリブ及び前記サポートリブは、前記
凹部の中心に規定されている中心点を中心とする周方向一方側に傾斜し、
前記サポートリブの傾斜の度合いは、前記メインリブの傾斜の度合いよりも大きいことを特徴とする靴底部材。
【請求項4】
請求項1~請求項
3のいずれか1項に記載の靴底部材において、
前記メインリブは、前記サポートリブよりも前記接地面から突出していることを特徴とする靴底部材。
【請求項5】
請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載の靴底部材において、
前記メインリブと前記サポートリブとは、前記
凹部の中央部から前記踵部の外縁部側に向かって延びる線に沿うように設けられ、
前記メインリブと前記サポートリブとの間には、間隙が形成されていることを特徴とする靴底部材。
【請求項6】
請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載の靴底部材において、
前記メインリブ及び前記サポートリブの少なくとも一方の、前
記中心点を中心とする周方向における幅は、前記踵部の外縁部側ほど大きくなっていることを特徴とする靴底部材。
【請求項7】
請求項1~請求項
6のいずれか1項に記載の靴底部材を備えていることを特徴とする靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の足を収容する靴本体部の底面に取り付けられて、靴本体部とともに靴を形成する靴底部材、及び、それを用いた靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、靴本体部とともに靴を形成する靴底部材の接地面(すなわち、靴の靴底)の構造によって、移動時(例えば、歩行、走行の際)に着地する際の衝撃を吸収及び分散して、使用者の脚部(例えば、膝関節等)に加わる衝撃を低減させる靴がある。
【0003】
この種の靴としては、移動時に地面に接する面(以下、この面を「接地面」という。)の踵部となる領域に、接地面から突出するように立設されている複数のリブを備えているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の靴の備えているリブは、踵部の中央部から踵部の外縁部側に向かって延び、且つ、中央部に規定されている所定の中心点を中心とする周方向一方側に傾斜するように形成されている。
【0005】
そのようなリブを備えている特許文献1の靴では、着地時にそのリブが傾斜するように変形して、使用者の脚部の外旋又は内旋を補助又は抑制するようなトルクが発生する。これにより、その靴は、着地時の衝撃を吸収するだけでなく、膝関節におけるスクリューホームムーブメントを補助するという効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、移動時に使用者の脚部に加わる衝撃の大きさは、動作の内容に応じて変化する。例えば、単に歩いている場合に比べ、走っている場合には、その衝撃は大きくなる。そのため、特許文献1のような靴底部材を用いた靴に対しては、着地する際に使用者の脚部に加わる衝撃をさらに効率よく低減させたいという要望があった。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、着地時に使用者の脚部に加わる衝撃を効率よく低減させることができる靴底部材、及び、それを用いた靴底を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の靴底部材は、
靴本体部の底面に取り付けられる靴底部材であって、
接地面の踵部の中央部に設けられている円形の凹部と、
前記接地面の踵部から突出し、前記凹部の中央部から前記踵部の外縁部側に向かって延びるように立設されているメインリブと、
前記メインリブから分離されており、前記接地面のメインリブよりも前記外縁部側となる領域で前記踵部から突出し、前記外縁部側に向かって延びるように立設されているサポートリブとを備え、
前記サポートリブの前記外縁部側の端部である第1先端部は、前記メインリブの前記外縁部側の端部である第2先端部よりも前記外縁部側に位置していることを特徴とする。
【0010】
一般に、着地時においては、靴の接地面の踵部においては、外縁部側から中央部側に向かって順次接地していく。そこで、本発明の靴底部材では、メインリブよりも外縁部側となる領域に、サポートリブを設けている。そのため、この靴底部材を用いて形成された靴では、着地時に、まず、サポートリブが接地して変形し始め、その後、メインリブが接地して変形し始める。
【0011】
ここで、メインリブとサポートリブとは、互いに分離したものである。なお、「分離」とは、リブ同士の間に間隙設けること、切込みを入れること等によって、各々のリブが独立して変形可能であることをいう。
【0012】
そのため、着地時には、サポートリブがある程度変形して、サポートリブによって衝撃がある程度吸収及び分散された段階で、サポートリブとは独立してメインリブが変形し始めて、その後は、まだ吸収及び分散されていない衝撃(すなわち、サポートリブでは吸収及び分散されにくい種類の衝撃)が、サポートリブとともにメインリブによって吸収及び分散されることになる。
【0013】
したがって、本発明の靴底部材を用いた靴によれば、互いに独立したサポートリブ及びメインリブの各々を十分に変形させて衝撃を吸収及び分散させることができるので、従来の靴よりも、使用者の脚部に加わる衝撃をさらに効率よく低減させることができる。
【0024】
また、本発明の靴底部材においては、
前記メインリブ及び前記サポートリブは、前記凹部の中心に規定されている中心点を中心とする周方向一方側に傾斜し、
前記メインリブの基端の周方向一方側又は周方向他方側の縁と、前記サポートリブの基端の周方向一方側又は周方向他方側の縁とは、前記中心点から径方向に延びる線に沿って並んでいることを特徴とする。
【0025】
このように構成すると、メインリブ及びサポートリブが、凹部の中心に規定されている中心点から径方向に延びる線に沿った一体的な外観形状を持つようになるので、その靴部材を用いて形成された靴の底面の美観を向上させることができる。
【0026】
また、本発明の靴底部材においては、
前記メインリブ及び前記サポートリブは、前記凹部の中心に規定されている中心点を中心とする周方向一方側に傾斜し、
前記メインリブの先端の周方向一方側又は周方向他方側の縁と、前記サポートリブの先端の周方向一方側又は周方向他方側の縁とは、前記中心点から径方向に延びる線に沿って並んでいることを特徴とする。
【0027】
このように構成すると、メインリブ及びサポートリブが、凹部の中心に規定されている中心点から径方向に延びる線に沿った一体的な外観形状を持つようになるので、その靴部材を用いて形成された靴の底面の美観を向上させることができる。
【0033】
また、本発明の靴底部材においては、
前記メインリブ及び前記サポートリブは、前記凹部の中心に規定されている中心点を中心とする周方向一方側に傾斜し、
前記サポートリブの傾斜の度合いは、前記メインリブの傾斜の度合いよりも大きいことを特徴とする。
【0034】
このように構成すると、メインリブに比べ、サポートリブが変形しやすくなる。これにより、小さい衝撃はサポートリブによって吸収及び分散されて、大きい衝撃はメインリブによって吸収及び分散されるようになる。その結果、メインリブとサポートリブにおいて、分担する衝撃が自然と分けられて、効率よく衝撃が吸収及び分散されるようになる。ひいては、使用者の脚部に加わる衝撃を、さらに効率よく低減させることができる。
【0035】
また、本発明の靴底部材においては、
前記メインリブは、前記サポートリブよりも前記接地面から突出していることが好ましい。
一般に、着地時においては、靴の接地面の踵部においては、外縁部側から中央部側に向かって順次接地していく。そのため、サポートリブがメインリブよりも接地面から突出している場合、着地時に、サポートリブがある程度変形するまでメインリブの変形が開始されない。すなわち、サポートリブによってメインリブの変形が阻害されて、メインリブによって十分に衝撃を吸収及び分散できなくなるおそれがある。
そこで、このように構成すると、着地する動作がある程度進行すれば、サポートリブの変形の進行具合に関わらず、メインリブも接地して変形し始めるようになる。これにより、サポートリブによってメインリブの変形が阻害されにくくなる。その結果、メインリブによる衝撃の吸収及び分散が、十分に行われるようになる。ひいては、使用者の脚部に加わる衝撃をさらに効率よく低減させることができる。
また、このように構成すると、着地時における衝撃は、接地面のサポートリブよりも踵部の外縁部側となる領域、サポートリブ、メインリブの順で、段階的に吸収及び分散されることになる。これにより、衝撃の吸収及び分散を行う部材を複数備えている構成であっても、吸収及び分散を受け持つ部材の切り換わりがスムーズに行われる。その結果、着地時に衝撃を吸収及び分散する際に使用者に対して与える違和感を抑制することができる。
また、本発明の靴底部材においては、
前記メインリブと前記サポートリブとは、前記凹部の中央部から前記踵部の外縁部側に向かって延びる線に沿うように設けられ、
前記メインリブと前記サポートリブとの間には、間隙が形成されていることが好ましい。
このように、メインリブとサポートリブとの間の間隙が形成されるように構成すると、その間隙を、メインリブ又はサポートリブの変形のためのスペースとすることができる。すなわち、その間隙が存在することによって、メインリブ及びサポートリブの一方が変形した際に他方に接触することを防止することができる。
これにより、変形したメインリブ及びサポートリブの一方が他方に接触することによって他方の変形が阻害されてしまうことを、防止することができる。その結果、メインリブ及びサポートリブの両方で、十分に着地時の衝撃を吸収及び分散することができるようになるので、使用者の脚部に加わる衝撃をさらに効率よく低減させることができる。
また、本発明の靴底部材においては、
前記メインリブ及び前記サポートリブの少なくとも一方の、前記中心点を中心とする周方向における幅は、前記踵部の外縁部側ほど大きくなっていることが好ましい。
リブの幅が大きいほど、そのリブは多くの衝撃を吸収及び分散することができる。また、リブの耐久性の向上も図ることができる。ただし、リブの幅が大きすぎると、リブが傾斜しにくくなるので、逆に十分に衝撃を吸収及び分散できなくなる場合もある。また、一般に、靴底の接地面の踵部では、外縁部側ほど(すなわち、踵部の中央部に設けられている円形の凹部の中心に規定された中心点から径方向に離れている位置ほど)、着地時において早く接地し、衝撃も大きい。
そこで、このように、踵部の外縁部側ほど幅が大きくなるようにリブを構成すると、リブの幅を適度な幅に維持しつつ、効率よく着地時の衝撃を吸収及び分散することができる。ひいては、使用者の脚部に加わる衝撃をさらに効率よく低減させることができる。
また、本発明の靴は、
上記いずれかの靴底部材を備えていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して、実施形態に係る靴Sについて、詳細に説明する。
【0038】
なお、本実施形態においては、短靴であるスニーカーを、本発明の靴底部材を適用した靴として説明している。しかし、本発明の靴底部材を適用し得る靴は、スニーカーに限定されるものではなく、また、本発明の靴底部材は、スニーカーにのみ適用し得るものでもない。
【0039】
具体的には、本発明の靴、及び、本発明の靴底部材を適用し得る靴は、踵部に後述するメインリブ及びサポートリブを立設し得る程度の領域を備えている靴であればよい。例えば、スニーカー以外の短靴(例えば、革靴等)、ブーツ型の長靴等の靴であってもよい。
【0040】
図1に示すように、靴Sは、使用者の足を収容する靴本体部1と、靴本体部1の底面に取り付けられて、靴本体部1とともに靴Sを形成する靴底部材2とを備えている。
【0041】
靴底部材2は、移動時に地面に接するアウトソール20と、アウトソール20と靴本体部1との間に配置されているミッドソール21とを有している。
【0042】
図2に示すように、アウトソール20の底面は、移動時に地面に接する面(以下、この面を「接地面20a」という。)となっている。アウトソール20は、この接地面20aの踵部となる領域の中央部に、円形の凹部20bを有している。
【0043】
図3に示すように、凹部20bには、円形のベース部材22が嵌め込まれている。
【0044】
なお、以下の説明においては、単に「径方向」という場合には、凹部20bの中心に規定されている中心点aを中心とする径方向を指す。また、単に「周方向」という場合には、ベース部材22の中心点aを中心とする周方向を指す。また、「周方向一方」という場合には、
図3において反時計回りとなる方向を指し、「周方向他方」という場合には、
図3において時計回りとなる方向を指す。
【0045】
ベース部材22は、接地面20aから、靴本体部1(
図1参照)から離れる方向(以下、この方向を「接地方向」という。)に向かって突出するように立設されている複数の第1メインリブ22a1及び複数の第2メインリブ22a2(以下、総称する場合には、「メインリブ22a」という。)を有している。第1メインリブ22a1と第2メインリブ22a2とは、周方向に間隔を存して、交互に全周に亘って配置されている。
【0046】
メインリブ22aの各々は、径方向外側(すなわち、踵部の外縁部側)に向かって、周方向他方側に湾曲しつつ延設されている。
【0047】
第2メインリブ22a2の径方向における長さは、第1メインリブ22a1の径方向における長さよりも短くなっている。また、第2メインリブ22a2の径方向外側の先端と第1メインリブ22a1の径方向外側の先端とは、周方向で一列に並んでいる。
【0048】
そのため、ベース部材22の中心部(中心点aの近傍領域)には、第1メインリブ22a1の径方向内側の先端部のみが存在している。これにより、第1メインリブ22a1の径方向内側の先端部の周辺にある程度のスペースを確保して、第1メインリブ22a1に後述する変形が生じた際に、その先端部が十分に変形できるようになっている。
【0049】
また、アウトソール20は、接地面20aの凹部20bの周縁部(すなわち、接地面20aのメインリブ22aよりも外縁部側となる領域)に、接地面20aから、接地方向に突出するように立設されている複数のサポートリブ20cを有している。サポートリブ20cは、凹部20bの周縁部全域ではなく、その周縁部のうち側方及び後方の領域(
図3において中心点a近傍から左右及び下方の領域)に形成されている。
【0050】
サポートリブ20cの各々は、ベース部材22の中心点aから、径方向外側(すなわち、踵部の外縁部側)に向かって、周方向他方側に湾曲しつつ延設されている。
【0051】
サポートリブ20cの周縁部には、サポートリブ20cの縁に沿って、溝20dが形成されている。この溝20dによって、サポートリブ20cの周辺にある程度のスペースを確保して、サポートリブ20cに後述する変形が生じた際に、サポートリブ20cが十分に変形できるようになっている。溝20dの径方向内側の部分は、凹部20bの内部の空間に連通している。
【0052】
また、サポートリブ20cの各々は、各々に対応する第1メインリブ22a1又は第2メインリブ22a2の径方向外側に位置している。すなわち、サポートリブ20cの各々は、各々に対応する第1メインリブ22a1又は第2メインリブ22a2とともに、中心点aから径方向外側に向かって延びる(すなわち、踵部の中央部から外縁部側に向かって延びる)仮想線Lに沿って一列に並ぶように配置されている。
【0053】
ここで、メインリブ22aの径方向外側の先端は、メインリブ22aの立設されているベース部材22が配置されている凹部20bの壁面には接触していない。そのため、その壁面に連設されている凹部20bの周縁部(ひいては、その周縁部に立設されているサポートリブ20c)と、メインリブ22aとの間には、間隙が形成されている。
【0054】
その間隙が存在することによって、メインリブ22a及びサポートリブ20cに後述する変形が生じた際に、メインリブ22aとサポートリブ20cとが接触してしまうことが防止されている。これにより、その接触によって、その変形が阻害されてしまうことが防止されている。
【0055】
メインリブ22a及びサポートリブ20cは、いずれも周方向一方側に向かって傾斜している。ここで、第1メインリブ22a1の傾斜角度と、第2メインリブ22a2の傾斜角度とは、ほぼ同じである。一方、サポートリブ20cの傾斜角度は、第1メインリブ22a1及び第2メインリブ22a2の傾斜角度よりも大きくなっている。
【0056】
メインリブ22aを形成している素材の硬度は、JIS規格におけるA70となっている。また、サポートリブ20cを形成している素材の硬度は、JIS規格におけるA60となっている。
【0057】
このような傾斜角度及び硬度に設定されていることにより、サポートリブ20cは、メインリブ22aよりも、変形しやすくなっている。
【0058】
メインリブ22aの周方向における幅は、中心点aから径方向に離れるほど(すなわち、踵部の外縁部側ほど)大きくなっている。具体的には、メインリブ22aの径方向内側の先端部における幅は、約3.0mmとなっており、径方向外側における先端部の幅は、約3.2mmとなっている。
【0059】
サポートリブ20cの周方向における幅は、中心点aからの径方向における距離によらず、ほぼ一定となっている。具体的には、サポートリブ20cの幅は、径方向のいずれの位置においても、約3.0mmとなっている。
【0060】
なお、これらの幅は、メインリブ22a又はサポートリブ20cを形成している素材の硬度に基づいて設定された値である。そのため、前述の硬度であれば、その幅は、3~4mmであればよく、好ましくは、3.2mmであるとよい。ただし、この幅は、リブを形成する素材の硬度等に応じて、適宜設定してよい。
【0061】
図4に示すように、サポートリブ20cは、接地面20aよりも接地方向に突出している。なお、靴Sでは、サポートリブ20cの高さは、溝20dの底面からは約2.5mm以上突出するように設定されており、接地面20aからは約1.0mm以上突出するように設定されている。
【0062】
また、メインリブ22aは、サポートリブ20cよりも接地方向に突出している。なお、靴Sでは、メインリブ22aの高さは、ベース部材22からは約5mm以上突出するように設定されており、接地面20aからは約2mm以上突出するように設定されている。
【0063】
なお、これらのメインリブ22a及びサポートリブ20cの突出する高さは、移動速度を、6~10km/h、より厳密には、7~9km/hと想定した場合に、前述の硬度、傾斜角度等を勘案して設定した値である。
【0064】
その条件においては、メインリブ22aが接地面20aから突出する高さは、1~3mm程度であればよく、好ましくは、2.0mm以上であるとよい。また、サポートリブ20cが接地面20aから突出する高さは、0.5~2mm程度であればよく、好ましくは、1.0mm以上であるとよい。ただし、これらの突出する高さは、想定される移動速度、荷重等に応じて、適宜設定してよい。
【0065】
図5に示すように、ミッドソール21は、ベース部材22の位置(
図3参照)に対応するように配置されているプレート部材21aを備えている。
【0066】
プレート部材21aの硬度は、ベース部材22に立設されているメインリブ22aの硬度よりも、高くなっている。これにより、メインリブ22aにそれらが変形するような衝撃が加わった場合に、メインリブ22aがプレート部材21aに埋没してしまい、メインリブ22aの変形が阻害されてしまうことが防止されている。
【0067】
このように構成されている靴底部材2を備えている靴Sによれば、歩行の際の着地時における衝撃が吸収及び分散される。以下においては、靴Sの構造に基づいた衝撃を吸収及び分散させる際の作用について説明する。
【0068】
まず、一般に、着地時においては、靴の接地面の踵部においては、外縁部側から中央部側に向かって順次接地していく。そして、前述のように、靴Sでは、接地面20aの踵部のメインリブ22aよりも外縁部側となる領域に、サポートリブ20cを設けている。そのため、靴Sでは、着地時に、まず、サポートリブ20cが接地して変形し始め、その後、メインリブ22aが接地して変形し始める。
【0069】
ここで、メインリブ22aとサポートリブ20cとは、互いに分離したものである。なお、「分離」とは、リブ同士の間に間隙設けること、切込みを入れること等によって、各々のリブが独立して変形可能であることをいう。
【0070】
そのため、靴Sでは、着地時に、サポートリブ20cがある程度変形して、サポートリブ20cによって衝撃がある程度吸収及び分散された段階で、サポートリブとは独立してメインリブ22aが変形し始めて、その後は、まだ吸収及び分散されていない衝撃(すなわち、サポートリブでは吸収及び分散されにくい種類の衝撃)が、サポートリブ20cとともにメインリブ22aによって吸収及び分散されることになる。
【0071】
このとき、仮に、サポートリブ20cがメインリブ22aよりも接地面20aから突出していると、サポートリブ20cがある程度変形するまでメインリブ22aの変形が開始されない。すなわち、サポートリブ20cによってメインリブ22aの変形が阻害されて、メインリブ22aによって十分に衝撃を吸収及び分散できなくなるおそれがある。
【0072】
しかし、靴Sにおいては、サポートリブ20cは、メインリブ22aよりも低く形成されている。そのため、着地する動作がある程度進行すれば、サポートリブ20cの変形の進行具合に関わらず、メインリブ22aも接地して変形し始めるようになる。これにより、サポートリブ20cによってメインリブ22aの変形が阻害されにくくなっている。その結果、メインリブ22aによる衝撃の吸収及び分散が、十分に行われるようになる。
【0073】
また、サポートリブ20cがメインリブ22aよりも低く形成されていると、着地時における衝撃は、接地面20aのサポートリブ20cよりも係路部の外縁部側となる領域、サポートリブ20c、メインリブ22aの順で、段階的に吸収及び分散されることになる。これにより、靴Sでは、吸収及び分散を受け持つ部材の切り換わりがスムーズに行われるようになっている。
【0074】
なお、メインリブ22aとサポートリブ20cとの高さの差は、前述の想定される移動速度、メインリブ22a及びサポートリブ20cの硬度及び傾斜角度等を勘案して設定された値である。その条件においては、この高さの差は、1.5mm程度であるとよい。ただし、この高さの差は、想定される移動速度等に応じて、適宜設定してよい。
【0075】
また、メインリブ22aの周方向の幅が大きいほど、メインリブ22aは多くの衝撃を吸収及び分散することができる。また、耐久性の向上も図ることができる。ただし、その幅が大きすぎると、メインリブ22aは傾斜しにくくなるので、逆に十分に衝撃を吸収及び分散できなくなる場合もある。また、一般に、接地面の踵部では、外縁部側ほど(すなわち、中央部から中心点aから径方向に離れている位置ほど)、着地時において早く接地し、衝撃も大きい。
【0076】
そこで、靴Sでは、踵部の外縁部側ほど幅が大きくなるようにメインリブ22aを構成している。これにより、メインリブ22aの幅を適度な幅に維持しつつ、効率よく着地時の衝撃を吸収及び分散することができるようになっている。
【0077】
また、靴Sでは、サポートリブ20cを形成する素材の硬度は、メインリブ22aを形成する素材の硬度よりも低い。また、サポートリブ20cの傾斜角度は、メインリブ22aの傾斜角度よりも大きい。そのため、メインリブ22aに比べ、サポートリブ20cは変形しやすくなっている。
【0078】
これにより、靴Sでは、小さい衝撃はサポートリブ20cによって吸収及び分散されて、大きい衝撃はメインリブ22aによって吸収及び分散されるようになっている。その結果、メインリブ22aとサポートリブ20cにおいて、分担する衝撃が自然と分けられて、効率よく衝撃が吸収及び分散されるようになっている。
【0079】
以上説明したように、靴Sによれば、互いに独立したサポートリブ20c及びメインリブ22aの各々を十分に変形させて衝撃を吸収及び分散させることができるようになっている。これにより、従来の靴よりも、使用者の脚部に加わる衝撃をさらに効率よく低減させることができるようになっている。
【0080】
なお、前述のように、メインリブ22a及びサポートリブ20cは、周方向一方側に傾斜している。そのため、靴Sによれば、着地時にそのメインリブ22a及びサポートリブ20cが傾斜するように変形して、使用者の脚部の外旋を補助するようなトルクが発生する。これにより、靴Sは、着地時の衝撃を吸収するだけでなく、走行時の衝撃を効果的に変換して、膝関節の正常回旋を促すことができるという効果を奏する。
【0081】
ところで、
図3に示すように、メインリブ22aと、そのメインリブ22aに対応するサポートリブ20cとは、仮想線Lに沿って並ぶように設けられている。ここで、仮想線Lは、中心点aから径方向外側に向かって、周方向他方側に湾曲しつつ延びている。
【0082】
また、メインリブ22a及びサポートリブ20cは、いずれも周方向一方側に傾いている。ただし、サポートリブ20cの傾斜角度は、メインリブ22aの傾斜角度よりも大きくなっている。また、サポートリブ20cの高さは、メインリブ22aの高さよりも低くなっている。
【0083】
これにより、メインリブ22aの基端の周方向他方側の縁と、サポートリブ20cの基端の周方向他方側の縁とは、底面側から見て、略一列に並び、且つ、仮想線Lと略平行となっている。
【0084】
同様に、メインリブ22aの先端の周方向一方側の縁と、サポートリブ20cの先端の周方向一方側の縁とは、底面側から見て、略一列に並び、且つ、仮想線Lと略平行となっている。
【0085】
すなわち、メインリブ22aと、そのメインリブ22aに対応するサポートリブ20cの接地する面の形状は、仮想線Lに沿った一体的な外観形状となっている。これにより、靴Sでは、底面側の美観の向上が図られている。
【0086】
なお、美観の向上を図るための構成としては、このような構成に限定されるものではない。例えば、基端の縁及び先端の縁のいずれか一方のみが一列に並ぶように配置されていてもよい。また、メインリブ及びサポートリブの一方の基端の縁と、他方の先端の縁とが、一列に並ぶように、メインリブとサポートリブとを周方向にずらして配置してもよい。
【0087】
以上、図示の実施形態について説明したが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。
【0088】
例えば、上記実施形態では、靴底部材2は、第1メインリブ22a1及び第2メインリブ22a2並びにサポートリブ20cを複数備えている。しかし、本発明の靴底部材は、そのような構成に限定されるものではなく、メインリブ及びサポート部材を、少なくとも1つずつ備えていればよい。また、単一種類のメインリブを備えるようにしてもよいし、複数種類のサポートリブを備えるようにしてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、メインリブ22aは、アウトソール20の凹部20bに配置されているベース部材に立設されている。また、サポートリブ20cは、アウトソール20の凹部20bの周縁部に立設されている。しかし、本発明のメインリブ及びサポートリブは、そのような構成に限定されるものではなく、靴底部材の接地面に立設されているものであればよい。
【0090】
例えば、ベース部材を介さずに、アウトソールに直接メインリブを立設してもよい。また、メインリブよりも踵部の外縁部側の領域に環状又は半環状のベース部材を配置して、そのベース部材にサポートリブを立設してもよい。
【0091】
また、上記実施形態においては、メインリブ22aは、中心点aを中心とする周方向において全周に亘って設けられている。一方、サポートリブ20cは、凹部20bの周縁部全域ではなく、その周縁部のうち側方及び後方の領域に形成されている。しかし、本発明のメインリブ及びサポートリブは、そのような構成に限定されるものではなく、接地面の踵部に設けられていればよい。
【0092】
例えば、メインリブを、後方、又は、左右方向一方側にのみ設けてもよいし、サポートリブを所定のメインリブの全周に亘って設けてもよい。
【0093】
また、上記実施形態においては、メインリブ22aとサポートリブ20cとの間には間隙が形成されている。また、サポートリブ20cの周囲には溝20dが形成されている。また、第2メインリブ22a2を、第1メインリブ22a1よりも短く形成して、中心点aの周辺においては、第1メインリブ22a1の先端部のみが存在するように構成されている。しかし、本発明の靴底部材は、このような構成に限定されるものではなく、他の構成に応じて適宜設定してよい。
【0094】
例えば、リブを形成する素材が、十分に硬度が低く柔らかいものである場合には、他のリブ等に当接しても、そのリブの変形は阻害されにくい。そのため、そのような場合には、他のリブ又は構成部材との間に、間隙又は溝を設けなくてもよい。
【0095】
また、上記実施形態においては、メインリブ22aの周方向における幅は、中心点aから径方向に離れるほど大きくなっている。一方、サポートリブ20cの周方向における幅は、中心点aからの距離を問わず一定になっている。しかし、本発明のリブは、そのような構成に限定されるものではなく、他の構成に応じて適宜設定してよい。
【0096】
例えば、メインリブの周方向における幅を、所定の中心点からの径方向における距離を問わず一定にしてもよい。また、サポートリブの周方向における幅を、所定の中心点からの径方向における距離に応じて変化させてもよい。
【0097】
また、上記実施形態においては、ミッドソール21は、ベース部材22の位置に対応するように配置されているプレート部材21aを備えている。そして、プレート部材21aの硬度は、ベース部材22に立設されているメインリブ22aの硬度よりも、高くなっている。しかし、本発明は、このような構成に限定されるものではなく、他の構成に応じて適宜設定してよい。
【0098】
例えば、プレート部材を省略してもよい。また、サポートリブに対応する位置に、プレート部材を配置してもよい。
【0099】
また、上記実施形態においては、メインリブ22a及びサポートリブ20cは、中心点aを中心とする周方向一方側に傾斜している。これは、着地時の衝撃を吸収するだけでなく、膝関節におけるスクリューホームムーブメントを補助するためである。しかし、本発明のリブは、このような構成に限定されるものではなく、他の構成に応じて適宜設定してよい。
【0100】
例えば、スクリューホームムーブメントを補助しなくてもよい場合には、リブを傾斜させなくてもよい。また、デザインのために、周方向一方側に傾斜しているリブと、周方向他方側に傾斜しているリブとを、混在させてもよい。各リブの傾斜角度も、適宜変更してよい。
【0101】
また、上記実施形態においては、メインリブ22aと、そのメインリブ22aに対応するサポートリブ20cは、中心点aから径方向外側に向かって、周方向一方側に湾曲しつつ延びる仮想線Lに沿って配置されている。これにより、靴Sは、着地時の衝撃を吸収するだけでなく、走行時の衝撃を効果的に変換して、膝関節の正常回旋を促すことができるという効果を奏するようになっている。しかし、本発明のメインリブ及びサポートリブは、必ずしもそのような構成に限定されるものではなく、他の構成に応じて適宜設定してよい。
【0102】
例えば、仮想線が直線状に延びるものである場合には、メインリブ及びサポートリブは、その仮想線に沿って直線状に配置されていてもよいし、メインリブ及びサポートリブの形状をその仮想線に応じた直線状にしても。また、メインリブの外周側となる位置であれば、仮想線を設定せずに、デザイン等を考慮して、メインリブの位置とは関係のない位置に、サポートリブを設けてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1…靴本体部、2…靴底部材、20…アウトソール、20a…接地面、20b…凹部、20c…サポートリブ、20d…溝、21…ミッドソール、21a…プレート部材、22…ベース部材、22a…メインリブ、22a1…第1メインリブ、22a2…第2メインリブ、L…仮想線、S…靴、a…中心点。