(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】機能性インナーシャツ
(51)【国際特許分類】
A41B 9/12 20060101AFI20220805BHJP
A41B 1/00 20060101ALI20220805BHJP
A41D 13/00 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
A41B9/12 Z
A41B1/00 Z
A41D13/00 115
(21)【出願番号】P 2020095796
(22)【出願日】2020-06-01
【審査請求日】2021-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】594056100
【氏名又は名称】フットマーク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】坂本 晶子
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-101106(JP,A)
【文献】特開平09-250008(JP,A)
【文献】特開2013-189743(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0364987(US,A1)
【文献】特表2015-506420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 9/12
A41B 1/00
A41D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性を有する生地によって成形され、着用者の動作サポートする機能性インナーシャツであって、
第1の伸長率を有する第1の領域と;
前記第1の伸長率よりも大きな伸長率を有する第2の領域とを備え、
前記第1の領域は、後身頃の両肩から肩甲骨の内側を通って、腸骨の上部に向かって延び、そこから前身頃の大腰筋に沿って股関節付近まで達する帯状の第1のサポートラインと;
左右の肩及び脇の下を通り、後身頃で左右の肩甲骨の中程で交差する、所謂「たすき掛け」状に延びる帯状の第2のサポートラインと;を含むことを特徴とする機能性インナーシャツ。
【請求項2】
前記第1の領域は、左右の肩部から左右の上腕二頭筋に沿って延びる帯状の第3のサポートラインを含むことを特徴とする請求項
1に記載の機能性インナーシャツ。
【請求項3】
前記第1の領域は、左右の肩部から左右の上腕三頭筋に沿って延びる帯状の第4のサポートラインを含むことを特徴とする請求項1
又は2に記載の機能性インナーシャツ。
【請求項4】
前記第1の領域は、左右の腕の円回内筋に沿って延びる帯状の第5のサポートラインを含むことを特徴とする請求項1
、2又は3に記載の機能性インナーシャツ。
【請求項5】
前記第1の領域および前記第2の領域の伸長率は、生地表面に形成される樹脂のパターンの粗密によって調整可能であることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の機能性インナーシャツ。
【請求項6】
前記第2の領域よりも大きな伸長率を有する第3の領域を更に備え、
前記第3の領域は、前身頃の袖部分を除いた胴体部分に対応することを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の機能性インナーシャツ。
【請求項7】
前記第3の領域の伸長率を1とした場合に、前記第1の領域の伸長率を約0.5~0.6、第2の領域の伸長率を約0.8~0.9とすることを特徴とする請求項
6に記載の機能性インナーシャツ。
【請求項8】
請求項1乃至
7の何れか1項に記載の機能性インナーシャツと、着用者の動作サポート機能を有する機能性タイツとを組み合わせて使用する機能性インナースーツであって、
前記タイツは、第1の締め付け力を有する第1の領域と;
前記第1の締め付け力よりも小さな締め付け力の第2の領域とを備え、
前記第1の領域は、腸骨の上部から大腰筋に沿って延びる帯状の第1のサポートラインを含み、
前記タイツの第1のサポートラインの上端部と、前記シャツの第1のサポートラインの下端部が重なり、当該ライン同士が連結されることを特徴とするインナースーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の動作をサポートする機能性インナーシャツに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本では超高齢社会に突入し、人生100年時代と云われるようになり久しい。長生きしても身体がついてこなければ、その人にとってはつらい日々になってしまう。スマートフォン、インターネット、ゲームの普及に伴い、現代人は身体を動かさなくなってしまった。合わせて中高年に多くみられる首、肩、腰、膝の痛みや故障には、日々の不適切な身体の動かし方や個々の癖が要因となっている事が多い。この点、正しい姿勢を保ち、美しく合理的な身体の動きをすることで、上記のような問題は解消される。
【0003】
ところで、スポーツの分野において、アスリートの動作を補助する機能的なインナーウエア(シャツ、タイツ等)が普及している。このようなスポーツ用のインナーウェアを着用することによって、パフォーマンスの向上に加えて姿勢の改善も期待できる。しかしながら、日常生活の中で下着のように長時間着用した場合には、強い圧迫感によって不快に感じることもあり、着心地が悪いものであった。また、スポーツ用のインナーウェアは、スポーツのパフォーマンス向上を目的としているため、日常生活における姿勢の矯正や動作のサポートとは、一致しない部分が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記のような状況に鑑みてなされたものであり、優れた着心地でありながら、着用者の身体の動作をサポートし、更には、正しい(美しい)動作に導くことが可能な画期的な機能性インナーシャツを提供することを目的とする。
【0005】
本発明の他の目的は、着用者の身体の動作をサポートすることで、美しい動きを促し、快適で健康的な生活に導くことができる画期的なインナーシャツとタイツのセット(機能性インナースーツ)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、伸縮性を有する生地によって成形され、着用者の動作サポートする機能性インナーシャツであって、第1の伸長率を有する第1の領域と;前記第1の領域よりも大きな伸長率を有する第2の領域とを備える。そして、前記第1の領域は、後身頃の両肩から肩甲骨の内側を通って、腸骨の上部に向かって延び、そこから前身頃の大腰筋に沿って股関節付近まで達する帯状の第1のサポートラインを含む。
【0007】
ここで、「着用者の動作をサポートする」とは、着用者の筋肉、関節の動きを補助することの他、該当部分を着用者に意識させることを含む意味である。サポートライン自体にも伸縮性があり、着用者の筋肉、関節の動きに追随しながらも、適度な着圧が特定の動きに対する可動域を制限することになる。また、サポートラインに対応する筋肉や関節へ刺激を与え、着用者に当該部分を意識付けさせることができる。
【0008】
また、「伸長率」とは、生地の伸びやすさ(ストレッチ性)を示す性能であり、引っ張り力を与えない平常時から一定の引っ張り力を与えた時の伸びの度合いを相対的に示すものである。例えば、JIS L 1096D法(湿潤時グラブ法)に規定された方法によれば、試験片(生地)に対して0.98N/cmの荷重を加えて、伸長率(%)を測定する。このような伸長率は、締め付け力と反比例するものであり、伸長率が大きいほど締め付け力が小さいことになる。
【0009】
上記のように、本発明に係る機能性インナーシャツは、相対的に伸長率の低い第1の領域が、後身頃の両肩から肩甲骨の内側を通って、腸骨の上部に向かって延び、そこから前身頃の大腰筋に沿って股関節付近まで達する帯状の第1のサポートラインを含む構成となっている。このため、第1のサポートラインが密着する部位の動きに当該サポートラインが追従し、着用者の身体(特に筋肉)に直接刺激を与えることができる。
【0010】
より、具体的には、肩甲骨の動きをサポートするとともに、肩甲骨と股関節との好ましい連動を促すことが可能となる。このように、第1のサポートラインによって着用者に身体の正しい動きを意識させ、習慣づけることができ、疲労の軽減を図ることができる。
【0011】
(肩甲骨と骨盤(股関節)の連動)
骨盤(こつばん)は、大腿骨と脊柱の間で体を支える、強固に一体化した一群の骨の解剖学的名称である。ヒトの場合、坐骨、腸骨、恥骨
をあわせて寛骨と呼ばれる。骨盤は、左右1対の寛骨、仙骨、尾骨で構成され、腸骨は骨盤最大の骨である。
肩甲骨と骨盤とは、背骨を通してつながっており、肩甲骨と骨盤の姿形は連動して変化するものである。人間が歩行する際に、右足が前に出るとき、右の肩が後ろに引っ張られる。左足は後ろにあるので、左の肩は前に出る。こうすることで人間は、左右の脊髄起立筋のバランスをとりながら歩くことになる。これが、肩甲骨と骨盤(股関節)の相互連動である。
【0012】
前記第1の領域は、左右の肩及び脇の下を通り、後身頃で左右の肩甲骨の中程で交差する、所謂「たすき掛け」状に延びる帯状の第2のサポートラインを含むことができる。
【0013】
第2のサポートラインが「たすき掛け」状に延びるため、着用者は背骨と肩甲骨を意識することができ、背筋を伸ばして胸を開くことが可能となる。その結果、深い深呼吸を行うことが容易となり、体内への酸素の取り込みをサポートすることができる。
【0014】
前記第1の領域は、左右の肩部から左右の上腕二頭筋に沿って延びる帯状の第3のサポートラインを含むことができる。
【0015】
第3のサポートラインが、左右の肩部から左右の上腕二頭筋に沿って延びるため、肩部を支点にして両腕が支えられることで、重い腕による頚部への負担が軽減されるとともに、両腕の動きをサポートすることができる。
【0016】
前記第1の領域は、左右の肩部から左右の上腕三頭筋に沿って延びる帯状の第4のサポートラインを含むことができる。
【0017】
第4のサポートラインが、左右の肩部から左右の上腕三頭筋に沿って延びるため、第3のサポートラインと相まって、肩部を支点とした両腕の支持が強化され、両腕の動きを更に強力にサポートすることができる。すなわち、両腕の曲げ伸ばしを少ない筋力で行うことが可能となる。
【0018】
前記第1の領域は、左右の腕の円回内筋に沿って延びる帯状の第5のサポートラインを含むことができる。円回内筋(えんかいないきん)は、人間の上肢の筋肉で肘関節の屈曲、前腕の回内を行う機能を有する筋肉である。
【0019】
前記第1の領域および前記第2の領域の伸長率は、生地表面に形成される樹脂のパターンの粗密によって調整可能である。樹脂のパターンとしては、ドット、ライン、格子等の種々のパターンを適宜採用することができる。なお、1つの樹脂のパターン(ドット等)を大きくすると、シャツ全体が「ゴワゴワ」した感じとなり、着心地が悪化するため、できるだけ細かなパターンを形成することが好ましい。
【0020】
前記第2の領域よりも大きな伸長率を有する第3の領域を更に備えることができる。そして、前記第3の領域は、前身頃の袖部分を除いた胴体部分に対応させることができる。着用者の胸部、腹部等の胴体部分の伸長率を大きくすることにより、他の領域とのメリハリがはっきりすると共に、皮膚が敏感な胴体部分の締め付け力を緩めることで、着心地の向上を図ることができる。
【0021】
前記第3の領域の伸長率を1とした場合に、前記第1の領域の伸長率を約0.5~0.6、第2の領域の伸長率を約0.8~0.9とすることが好ましい。例えば、JIS L 1096D法にしたがって測定した場合、第1の領域の伸長率が40.5、第2の領域の伸長率が70.0、第3の領域の伸長率が79.5とすることができる。
【0022】
また、第3の領域(生地)の経方向の引張伸度を、200%~300%、更には、210~220%とすることが好ましい。このような引張伸度の測定は、幅2.5cmの長方形の生地(試料)を用意し、この生地の一端を固定した状態で、他端に対して22.1Nの荷重を加えた時の伸び率を計測することで行われる。
【0023】
以上のように、本発明に係る機能性インナーシャツを着用するだけで、無理なく身体の動かし方を意識させ、身体への負担を軽減でき、疲れにくくなり、痛みや故障がおきにくくなる。その結果、介護につながる生活習慣病を防ぐことにつながる。すなわち、着用者の身体の動作をサポートすることで、美しい動きを促し、快適で健康的な生活に導くことができるという効果がある。
【0024】
本発明の他の態様は、上記のような機能性インナーシャツと、着用者の動作サポート機能を有する機能性タイツとを組み合わせて使用する機能性インナースーツである。前記タイツは、第1の伸長率を有する第1の領域と;前記第1の領域よりも大きな伸長率を有する第2の領域とを備える。また、前記第1の領域は、腸骨の上部から大腰筋に沿って延びる帯状の第1のサポートラインを含む。そして、前記タイツの第1のサポートラインの上端部と、前記シャツの第1のサポートラインの下端部が重なり、当該ライン同士が連結される。
【0025】
本発明に係る機能性インナースーツ(インナーシャツ+タイツ)においては、タイツの第1の領域が、腸骨の上部から大腰筋に沿って延びる帯状の第1のサポートラインを含み、タイツの第1のサポートラインの上端部と、シャツの第1のサポートラインの下端部が重なり、当該ライン同士が連結されるため、シャツ単独の場合に比べて、肩甲骨と股関節の適切な連動を促す効果が増大する。
【0026】
なお、本明細書及び特許請求の範囲では「サポートライン」という用語を使用しているが、本発明に係るサポートラインは、着用者の動作を単にサポート(補助)するだけでなく、積極的に正しい(美しい)動作に導く機能があり、「リーディングライン」や「ガイドライン」と言うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明に係る機能性インナーシャツの構成を示す正面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る機能性インナーシャツの構成を示す右側面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る機能性インナーシャツの構成を示す背面図である。
【
図4】
図4は、
図1~
図3に示す機能性インナーシャツの第1のサポートラインを示す正面図(A)、右側面図(B)、背面図(C)である。
【
図5】
図5は、
図1~
図3に示す機能性インナーシャツの第2のサポートラインを示す正面図(A)、右側面図(B)、背面図(C)である。
【
図6】
図6は、
図1~
図3に示す機能性インナーシャツの第3のサポートラインを示す正面図(A)、右側面図(B)、背面図(C)である。
【
図7】
図7は、
図1~
図3に示す機能性インナーシャツの第4のサポートラインを示す正面図(A)、右側面図(B)、背面図(C)である。
【
図8】
図8は、
図1~
図3に示す機能性インナーシャツの第5のサポートラインを示す正面図(A)、右側面図(B)、背面図(C)である。
【
図9】
図9は、
図1~
図3に示す機能性インナーシャツと組み合わせて使用される機能性タイツの構成を示す正面図である。
【
図10】
図10は、
図1~
図3に示す機能性インナーシャツと組み合わせて使用される機能性タイツの構成を示す右側面図である。
【
図11】
図11は、
図1~
図3に示す機能性インナーシャツと組み合わせて使用される機能性タイツの構成を示す背面図である。
【
図12】
図12は、
図9~
図11に示す機能性タイツの第1のサポートラインを示す正面図(A)、右側面図(B)、背面図(C)である。
【
図13】
図13は、
図9~
図11に示す機能性タイツの第2のサポートラインを示す正面図(A)、右側面図(B)、背面図(C)である。
【
図14】
図14は、
図9~
図11に示す機能性タイツの第3のサポートラインを示す正面図(A)、右側面図(B)、背面図(C)である。
【
図15】
図15は、
図9~
図11に示す機能性タイツの第4のサポートラインを示す正面図(A)、右側面図(B)、背面図(C)である。
【
図19】
図19は、
図4に示す機能性インナーシャツの第1のサポートラインと、
図12に示す機能性タイツの第1のサポートラインとの位置関係を示す正面図(A)、右側面図(B)、背面図(C)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、図においてサポートラインの流れ(機能的つながり)を明確に示すため、複数のラインが重なって示されている箇所が存在するが、実際には、重なって示した箇所は融合されており、その部分の強度が重なった分だけ大きくなるものではなく、重なっていないラインと同様の強度を有するものである。
- 機能性インナーシャツ -
図1~
図3は、本発明に係る機能性インナーシャツ100の構成を示す正面図、右側面図、背面図である。
図4は、
図1~
図3に示す機能性インナーシャツ100の第1のサポートライン102L,102Rを示す正面図(A)、右側面図(B)、背面図(C)である。
図5は、
図1~
図3に示す機能性インナーシャツ100の第2のサポートライン104を示す正面図(A)、右側面図(B)、背面図(C)である。
図6は、
図1~
図3に示す機能性インナーシャツ100の第3のサポートライン106を示す正面図(A)、右側面図(B)、背面図(C)である。
図7は、
図1~
図3に示す機能性インナーシャツ100の第4のサポートライン108L,108Rを示す正面図(A)、右側面図(B)、背面図(C)である。
図8は、
図1~
図3に示す機能性インナーシャツ100の第5のサポートライン110L,110Rを示す正面図(A)、右側面図(B)、背面図(C)である。
【0029】
本発明に係る機能性インナーシャツ100は、伸縮性を有する生地によって成形され、着用者の動作サポートする機能性インナーシャツである。そして、機能性インナーシャツ100は、、第1の伸長率を有する第1の領域としての第1~第5サポートライン(102L,102R;104;106;108L,108R;110L,110R)と、第1の領域よりも大きな伸長率を有する第2の領域103と;第2の領域よりも大きな伸長率を有する第3の領域101から構成することができる。
図1~
図3において、第1の領域は格子状に塗りつぶされ、第2の領域はドット状に塗りつぶされ、第3の領域101は塗りつぶしなしの状態で示されている。なお、
図4~
図8において、第1の領域(102L,102R;104;106;108L,108R;110L,110R)を強調するために、第2の領域103については、ドットによる塗りつぶしを省略して示すものとする。
【0030】
第3の領域101は、機能性シャツ100の生地そのものであり、第1の領域(102L,102R;104;106;108L,108R;110L,110R)及び第2の領域103は、第3の領域101に対して樹脂を塗布することによって成形される。第3の領域101は、前身頃の袖部分を除いた胴体部分に対応する領域となっている。着用者の胸部、腹部等の胴体部分の伸長率を大きくすることにより、他の領域とのメリハリがはっきりすると共に、皮膚が敏感な胴体部分の締め付け力を緩めることで、着心地の向上を図ることができる。
【0031】
機能性シャツ100の生地(101)としては、例えば、綿43%、ナイロン31%、ポリウレタン26%の伸縮性の高い生地を使用することができる。更に具体的には、目付163g/m3とし、糸として綿100番手、ナイロン20デニール、ポリウレタン30デニールを使用して作製されるベアスムース素材を採用する。ここで、ベアスムースとは、スパンデックスを一緒に編み込んだストレッチ性のある編物であり、天竺に比べて編目が細かくしっかりとしていて型崩れがしにくい生地である。
【0032】
第1の領域(102L,102R;104;106;108L,108R;110L,110R)と第2の領域103を形成する樹脂としては、ウレタン樹脂水性エマルジョン、界面活性剤、水等の配合物(例えば、ユニ化成株式会社製の「ユニバインダーBR-ZC(E)」)を使用することができる。第1の領域(102L,102R;104;106;108L,108R;110L,110R)の樹脂密度は、第2の領域の樹脂密度よりも大きくなる。
【0033】
第3の領域101の伸長率を1とした場合に、第1の領域(102L,102R;104;106;108L,108R;110L,110R)の伸長率を約0.5~0.6、第2の領域103の伸長率を約0.8~0.9とすることが好ましい。例えば、JIS L 1096D法にしたがって測定した場合、第1の領域の伸長率が40.5、第2の領域の伸長率が70.0、第3の領域の伸長率が79.5とすることができる。
【0034】
また、第3の領域101の経方向の引張伸度を、200%~300%、更には、210~220%とすることが好ましい。このような引張伸度の測定は、幅2.5cmの長方形の生地(試料)を用意し、この生地の一端を固定した状態で、他端に対して22.1Nの荷重を加えた時の伸び率を計測することで行われる。
【0035】
製造工程としては、生地(101)によってパターンを作成し、スクリーンプリント法によって樹脂プリント加工を行った後に、生地を裁断し、縫製を行う。
【0036】
第1の領域は、各々帯状に成形された第1のサポートライン102L,102Rと;第2のサポートライン104と;第3のサポートライン106と;第4のサポートライン108L,108Rと第5のサポートライン110L,110Rとを含んでいる。以下に、第1~第5の各サポートラインの構成及び機能について説明する。なお、本発明においては全てのサポートラインを使用することが最も好ましいが、1つ又はそれ以上を組み合わせて使用することもできる。特に、第1のサポートライン102L,102Rと、第2のサポートライン104との連携は重要である。
【0037】
(第1のサポートライン)
図4(A),(B),(C)に示すように、第1のサポートライン102L,102Rは、後身頃の両肩付近から肩甲骨の内側を通って、腸骨の上部に向かって延び、そこから前身頃の大腰筋に沿って股関節付近まで達している。
【0038】
これにより、第1のサポートライン102L,102Rが密着する部位の動きに当該サポートライン102L,102Rが追従し、着用者の身体(特に筋肉)に直接刺激を与えることができる。具体的には、肩甲骨の動きをサポートするとともに、肩甲骨と股関節の好ましい連動を促すことが可能となる。
【0039】
(第2のサポートライン)
図5(A),(B),(C)に示すように、第2のサポートライン104は、左右の肩(10L,10R)及び脇の下を通り、後身頃で左右の肩甲骨の中程で交差する、所謂「たすき掛け」状に伸びるように形成される。
【0040】
第2のサポートライン104が「たすき掛け」状に延びるため、着用者は背骨と肩甲骨を意識することができ、背筋を伸ばして胸を開くことが可能となる。その結果、深い深呼吸を行うことが容易となり、体内への酸素の取り込みをサポートすることができる。
【0041】
(第3のサポートライン)
図6(A),(B),(C)に示すように、第3のサポートライン106は、左右の肩部から左右の上腕二頭筋に沿って延びるように形成される。
【0042】
第3のサポートライン106により、肩部を支点にして両腕が支えられることで、重い腕による頚部への負担が軽減されるとともに、両腕の動きをサポートすることができる。
【0043】
(第4のサポートライン)
図7(A),(B),(C)に示すように、第4のサポートライン108L,108Rは、左右の肩部から左右の上腕三頭筋に沿って延びるように形成される。
【0044】
第4のサポートライン108L,108Rにより、第3のサポートライン106と相まって、肩部10L,10Rを支点とした両腕の支持が強化され、両腕の動きを更に強力にサポートすることができる。すなわち、両腕の曲げ伸ばしという動作を少ない筋力で行うことが可能となる。
【0045】
(第5のサポートライン)
図8(A),(B),(C)に示すように、第5のサポートライン110L,110Rは、左右の腕の円回内筋に沿って延びるように形成される。
【0046】
第5のサポートライン110L,110Rによって、円回内筋(えんかいないきん)の機能をサポートすることができる。
【0047】
- 機能性タイツ -
図9~
図11は、
図1~
図3に示す機能性インナーシャツ100と組み合わせて使用される機能性タイツ200の構成を示す正面図、右側面図、背面図である。
図12は、
図9~
図11に示す機能性タイツ200の第1のサポートライン204L,204Rを示す正面図(A)、右側面図(B)、背面図(C)である。
図13は、
図9~
図11に示す機能性タイツ200の第2のサポートライン206L,206Rを示す正面図(A)、右側面図(B)、背面図(C)である。
図14は、
図9~
図11に示す機能性タイツ200の第3のサポートライン208L,208Rを示す正面図(A)、右側面図(B)、背面図(C)である。
図15は、
図9~
図11に示す機能性タイツ200の第4のサポートライン202を示す正面図(A)、右側面図(B)、背面図(C)である。
【0048】
本発明に係る機能性タイツ200は、伸縮性を有する生地によって成形され、着用者の動作サポートするものである。そして、機能性タイツ200は、、第1の伸長率を有する第1の領域としての第1~第4サポートライン(204L,204R;206L,206R;208L,208R;202)と、第1の領域よりも大きな伸長率を有する第2の領域201から構成することができる。
図9~
図11において、第1の領域(204L,204R;206L,206R;208L,208R;202)は格子状に塗りつぶされ、第2の領域201はドット状に塗りつぶされた状態で示されている。なお、
図12~
図15において、第1の領域(204L,204R;206L,206R;208L,208R;202)を強調するために、第2の領域201については、ドットによる塗りつぶしを省略して示すものとする。
【0049】
第1の領域(204L,204R;206L,206R;208L,208R;202)及び第2の領域201は、伸縮性を有する生地に対して樹脂を塗布することによって成形される。
【0050】
機能性タイツ200の生地としては、例えば、綿43%、ナイロン31%、ポリウレタン26%の伸縮性の高い生地を使用することができる。更に具体的には、目付163g/m3とし、糸として綿100番手、ナイロン20デニール、ポリウレタン30デニールを使用して作製されるベアスムース素材を採用する。ここで、ベアスムースとは、スパンデックスを一緒に編み込んだストレッチ性のある編物であり、天竺に比べて編目が細かくしっかりとしていて型崩れがしにくい生地である。
【0051】
第1の領域(204L,204R;206L,206R;208L,208R;202)と第2の領域201を形成する樹脂としては、ウレタン樹脂水性エマルジョン、界面活性剤、水等の配合物(例えば、ユニ化成株式会社製の「ユニバインダーBR-ZC(E)」)を使用することができる。第1の領域(204L,204R;206L,206R;208L,208R;202)の樹脂密度は、第2の領域201の樹脂密度よりも大きくなる。
【0052】
本実施例においては、生地の伸長率を1とした場合に、第1の領域(204L,204R;206L,206R;208L,208R;202)の伸長率を約0.5~0.6、第2の領域201の伸長率を約0.8~0.9とすることが好ましい。例えば、JIS L 1096D法にしたがって測定した場合、第1の領域の伸長率が40.5、第2の領域の伸長率が70.0、生地の伸長率が79.5とすることができる。
【0053】
また、生地の経方向の引張伸度を、200%~300%、更には、210~220%とすることが好ましい。このような引張伸度の測定は、幅2.5cmの長方形の生地(試料)を用意し、この生地の一端を固定した状態で、他端に対して22.1Nの荷重を加えた時の伸び率を計測することで行われる。
【0054】
製造工程としては、伸縮性の生地によってパターンを作成し、スクリーンプリント法によって樹脂プリント加工によって第1の領域(204L,204R;206L,206R;208L,208R;202)と第2の領域201を形成した後に、生地を裁断し、縫製を行う。
【0055】
第1の領域は、各々帯状に成形された第1のサポートライン204L,204Rと;第2のサポートライン206L,206Rと;第3のサポートライン208L,208Rと;第4のサポートライン202とを含んでいる。以下に、第1~第4の各サポートラインの構成及び機能について説明する。なお、本発明においては全てのサポートラインを使用することが最も好ましいが、1つ又はそれ以上を組み合わせて使用することもできる。
【0056】
(第1のサポートライン)
図12(A),(B),(C)に示すように、第1のサポートライン204L,204Rは、前身頃側において左右の腸骨の上部から大腰筋に沿って延び、内股を通って、後身頃に達し、臀部を支えるように当該臀部の下部において横方向に帯状に延びる形状となっている。
【0057】
第1のサポートライン204L,204Rにより、股関節の屈曲外旋を促すとともに、大臀筋を引き上げることで、歩行時の身体バランスを安定させることができる。
【0058】
(第2のサポートライン)
図13(A),(B),(C)に示すように、第2のサポートライン206L,206Rは、腸骨(骨盤)の上部から左右の大腿部の外側部を通る部分と、膝の上部でクロスするように延びる部分と、腓腹筋(ふくらはぎ)上に延びる部分とを有する。
【0059】
第2のサポートライン206L,206Rは、各々、3本のラインに分けて考えることができる。両方のラインは、左右対称であるため、一方のライン206Rを例に説明する。右側のサポートライン206Rは、腸骨(骨盤)の右上部から大腿部の外側部を通り、膝の上部で大腿部の内側に向かって斜め下方向に延びるライン206R1(ドット塗りつぶし)と、膝の上部においてライン206R1と交差するように延びるライン206R2(格子塗りつぶし)と、後身頃の腓腹筋(ふくらはぎ)上を内から外に向かって斜め下方向に螺旋状に延び、前身頃側では外側から内側に向かって斜め下方向に延びるライン206R3(横線塗りつぶし)とに分けて考えることができる。
【0060】
そして、膝上部でクロスするライン(206R1,206R2;206L1,206L2)によって、膝の曲げ伸ばしをサポートすることができる。また、膝下脚部の外側から内側に向かって螺旋状に腓腹筋から前頸骨筋に向かって延びる部分(206L3,206R3)によって、脚部の内旋の動作を補助することができる。
【0061】
(第3のサポートライン)
図14(A),(B),(C)に示すように、第3のサポートライン208L,208Rは、腸骨の上部から左右の大腿部の外側部において腸脛靱帯に沿い、更に腓骨筋に沿って延び、足首まで達するように成形されている。
【0062】
第3のサポートライン208L,208Rにより、股関節から膝、更には下腿までが歪まず、ねじれずないように正しくアライメントされ、正しい起立と歩行姿勢を促すことができる。
【0063】
(第4のサポートライン)
図15(A),(B),(C)に示すように、第4のサポートライン202は、大転子を避けた上部に位置し、下腹部周辺を覆うようにベルト状に延びている。「大転子」とは、大腿骨(だいたいこつ)の上部、股関節の近傍で外側に出っ張った部分である。第4のサポートライン202は、大転子を避けた上方に位置し、後方(腰部側)から前方の下腹部側にかけて下に向かって傾斜している。
【0064】
第4のサポートライン202によって、骨盤を外側から締めることで骨盤を安定させ股関節を動かし易くするとともに、上半身と下半身の連動性が良くなるという効果がある。
【0065】
- 機能性インナースーツ -
図16~
図18は、
図1~
図3に示す機能性インナーシャツ100と、
図9~
図11に示す機能性タイツ200とを組み合わせた機能性インナースーツを示す正面図、右側面図、背面図である。また、
図19は、機能性インナーシャツ100の第1のサポートライン102L,102Rと、機能性タイツ200の第1のサポートライン204L,204Rとの位置関係を示す正面図(A)、右側面図(B)、背面図(C)である。
【0066】
機能性インナースーツにおける大きな特徴は、機能性インナーシャツ100の第1のサポートライン204L,204Rと機能性タイツ200の第1のサポートライン204L,204Rとの連結(接続)である。すなわち、本発明の機能性インナースーツ(上下)を着用した時に、機能性インナーシャツ100の第1のサポートライン204L,204Rの下端部と機能性タイツ200の第1のサポートライン204L,204Rの上端部とが重なり合って、締め付ける領域として連結されるものである。
【0067】
機能性インナースーツを着用することで、肩甲骨と股関節の適切な連動を促す効果が増大する。肩甲骨と骨盤とは、背骨を通してつながっており、肩甲骨と骨盤の姿形は連動して変化するものである。人間が歩行する際に、右足が前に出るとき、右の肩が後ろに引っ張られる。左足は後ろにあるので、左の肩は前に出る。こうすることで人間は、左右の脊髄起立筋のバランスをとりながら歩くことになる。このような肩甲骨と骨盤(股関節)の相互連動を促すことにより、着用者の体幹の部分において正しい動作が可能となる。
【0068】
本発明を上記の例示的な実施形態と関連させて説明してきたが、当業者には本開示により多くの等価の変更および変形が自明であろう。したがって、本発明の上記の例示的な実施形態は、例示的であるが限定的なものではないと考えられる。本発明の精神と範囲を逸脱することなく、記載した実施形態に様々な変化が加えられ得る。