(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】プラチナ薬剤の毒性の予防方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5365 20060101AFI20220805BHJP
A61K 31/40 20060101ALI20220805BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20220805BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220805BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20220805BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20220805BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220805BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220805BHJP
A61P 39/02 20060101ALI20220805BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
A61K31/5365
A61K31/40
A61K31/282
A61P35/00
A61P1/00
A61P1/18
A61P11/00
A61P35/02
A61P39/02
A61P25/00
(21)【出願番号】P 2021033324
(22)【出願日】2021-03-03
(62)【分割の表示】P 2018521498の分割
【原出願日】2016-07-15
【審査請求日】2021-04-02
(32)【優先日】2015-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518014944
【氏名又は名称】ゾミクス バイオファーマ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ヨン ファン
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ピー. ブライドン
(72)【発明者】
【氏名】シュエシャン チャン
(72)【発明者】
【氏名】チェン-ミン リ
【審査官】吉川 阿佳里
(56)【参考文献】
【文献】特許第6851639(JP,B2)
【文献】Annals of Oncology,2000年,Vol. 11, Issue 9,p. 1191-1194
【文献】PNAS,2013年,Vol. 110, No. 27,p. 11199-11204
【文献】Clin Pharmacokinet.,2013年,Vol. 52, No. 11,p. 981-994
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性神経毒性を減少させるための方法において使用するための、有効投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を含む組成物であって、前記方法は、
オキサリプラチンであるプラチナ薬剤を前記被検者に投与する工程と、
有効投与量の選択的OCT2阻害剤を前記被検者に投与する工程と
を含み、前記被検者が、胃癌、膵腺癌、食道または食道胃接合部癌、肺癌、頭頸部癌、またはリンパ腫を有し、
前記選択的OCT2阻害剤が、ブフロメジル、ブフロメジル塩、ドルテグラビル、及びドルテグラビル塩からなる群から選択される、組成物。
【請求項2】
必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性神経毒性を減少させるための方法において使用するための、有効投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を含む組成物であって、前記方法は、
シスプラチンであるプラチナ薬剤を前記被検者に投与する工程と、
有効投与量の選択的OCT2阻害剤を前記被検者に投与する工程と
を含み、前記神経毒性が、腎毒性、耳毒性、または末梢神経障害であり、
前記被検者が、胃癌、膵腺癌、食道または食道胃接合部癌、肺癌、頭頸部癌、またはリンパ腫を有し、
前記選択的OCT2阻害剤が、ブフロメジルもしくはブフロメジル塩、またはドルテグラビル、及びドルテグラビル塩からなる群から選択される、組成物。
【請求項3】
前記方法が、前記被検者における胃癌、膵腺癌、食道または食道胃接合部癌、肺癌、頭頸部癌、またはリンパ腫の治療に対する患者コンプライアンスを増加させるためのものであり、それによって、前記被検者が少なくとも100mg/m
2の前記プラチナ薬剤の蓄積投与量で治療を完了し、必要に応じて、それによって、前記被検者が少なくとも500mg/m
2の前記プラチナ薬剤の蓄積投与量で治療を完了することを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記選択的OCT2阻害剤がブフロメジルまたはブフロメジル塩であり、ブフロメジルまたはブフロメジル塩の前記投与量が、少なくとも0.43mg/l、0.86mg/l、1.29mg/l、1.72mg/l、または2.15mg/lの、プラチナ投与期間中のその血漿レベルをもたらす、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記胃癌、膵腺癌、食道または食道胃接合部癌、肺癌、頭頸部癌、またはリンパ腫が、有機カチオントランスポーター1(OCT1)または有機カチオントランスポーター3(OCT3)のうち少なくとも一方を発現する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記選択的OCT2阻害剤が、経腸、静脈内、筋肉内、腹腔内、経口、または腸管外投与されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記神経毒性が、末梢神経毒性であり、必要に応じて、グレード3またはグレード4末梢神経障害であるか;または
感覚ニューロンへの損傷であるか;または
慢性神経毒性であるか;または
背根神経節(DRG)への損傷である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記選択的OCT2阻害剤がブフロメジルまたはブフロメジル塩である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記選択的OCT2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビル塩である、請求項1~3または5~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
必要としている前記被検者が胃癌を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
必要としている前記被検者が膵腺癌を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
必要としている前記被検者が食道または食道胃接合部癌を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
必要としている前記被検者が肺癌を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
必要としている前記被検者が頭頸部癌を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
必要としている前記被検者がリンパ腫を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発
性毒性を減少させるためのキットであって、前
記毒性が腎毒性
または耳毒
性であり、前記キットが、治療有効量のオキサリプラチ
ンであるプラチナ薬剤、ブフロメジルもしくはブフロメジル塩、またはドルテグラビルもしくはドルテグラビル塩である選択的OCT2阻害剤、及び被検者における胃癌、膵腺癌、食道または食道胃接合部癌、肺癌、頭頸部癌、またはリンパ腫の治療において使用するための指示書を含む、キット。
【請求項17】
必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させるためのキットであって、前記毒性が腎毒性、耳毒性、または末梢神経障害であり、前記キットが、治療有効量のシスプラチンであるプラチナ薬剤、ブフロメジルもしくはブフロメジル塩、またはドルテグラビルもしくはドルテグラビル塩である選択的OCT2阻害剤、及び被検者における胃癌、膵腺癌、食道または食道胃接合部癌、肺癌、頭頸部癌、またはリンパ腫の治療において使用するための指示書を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラチナ薬剤の毒性を減少することのできる化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラチナ薬剤、例えばオキサリプラチン及びシスプラチン及びカルボプラチンなどは、
様々な癌を治療するために広く用いられている非常に有効な化学療法薬である。
【0003】
しかし、プラチナ薬剤は深刻な副作用を引き起こし、これが患者の生活の質を悪化させ
、早期の治療終了につながり、重度の機能障害及び死亡の原因となる。血液毒性の他に、
腎毒性、末梢神経障害及び耳毒性が、プラチナ薬剤に関連する3つの最も一般的な毒性で
ある。
【0004】
腎毒性はシスプラチンで治療された患者において頻繁に見られる。50~100mg/
m2の初期投与量のシスプラチンを受けているヒト患者の28%~36%が急性腎不全を
発症すると推定されており、ある程度のシスプラチン誘発性腎障害を発症したほとんどの
患者は完全に回復することはない[Barabas 2008]。対照的に、腎毒性はオ
キサリプラチン及びカルボプラチンで治療された患者においてはめったに見られない。プ
ラチナ誘発性腎毒性の臨床的特徴、機序及び管理(診断、予防及び治療を含む)は、[B
arabas 2008, Yao 2007, Miller 2010, Kara
sawa 2015]で細部にわたって総説されている。
【0005】
耳毒性は、シスプラチン及びカルボプラチンに関連することが多いが、オキサリプラチ
ン治療患者ではめったに見られない。全シスプラチン誘発性耳毒性の発生率は42%~6
2%の範囲である[Langer 2013]。プラチナ誘発性耳毒性の臨床的特徴、機
序及び管理(診断、予防及び治療を含む)は、[Langer 2013, Barab
as 2008, Karasawa 2015]で細部にわたって総説されている。
【0006】
末梢神経障害(PN)または末梢神経毒性は、オキサリプラチン及びシスプラチンを含
む多くの化学療法薬に関連する非常に一般的な有害作用である。異なる化学療法薬によっ
て引き起こされる末梢神経障害は、異なる病態生理及び臨床的特徴を有することが多い[
Miltenburg 2014, Hershman 2014, Wolfgang
2014]。例えば、主に軸索損傷を引き起こすビンクリスチンとは異なり、背根神経
節(DRG)がシスプラチン及びオキサリプラチンによって引き起こされる神経損傷の原
発部位であると思われる[Miltenburg 2014, Holmes 1998
]。シスプラチンPNは蓄積投与量及び投与量強度に関係している。シスプラチン治療の
全過程(通常の蓄積投与量300~450mg/m2)を完了したほとんどの患者は、治
療が中止された後で数か月から数年継続し得る、重度の錯感覚及び異常感覚、感覚喪失及
び感覚性運動失調などの衰弱性の症状を伴う中等度~重度(グレード2以上)のPNを発
症する。シスプラチンPNとは対照的に、オキサリプラチン誘発性PN(OXAIPN)
は急性及び慢性の両形態を有する。慢性形態はシスプラチンPNに類似した病因及び臨床
的特徴を有する。重度のPN(グレード3以上)は、患者の最大10%において510~
765mg/m2の範囲のオキサリプラチンの蓄積投与量で観察されている。1000m
g/m2を超える蓄積投与量のオキサリプラチンを受けている患者のおよそ50%が重度
のPNを発症すると報告されている[Argriou 2012]。急性OXAIPNは
、独特な急性の一過性末梢神経過剰興奮症候群であり、ほぼすべて(最大90%まで)の
患者が経験する。末梢部及び口周囲の低温誘発性錯感覚及び異常感覚が急性OXAIPN
の最も一般的に報告されている症状である。急性及び慢性のOXAIPNは異なる病態生
理を有すると思われるが、研究では、より多くの急性症状がある患者は最終的により重度
の慢性OXAIPNを発症することが示された[Argyriou 2013]。プラチ
ナ誘発性末梢神経障害及びCIPN(化学療法誘発性末梢神経障害)の臨床的特徴、機序
及び管理(診断、予防及び治療を含む)は、[Hershman 2014, Argr
iou 2015, Argriou 2012, Avan 2015, Milte
nburg 2014, Han 2013, Seretny 2014]で細部にわ
たって総説されている。患者報告アウトカム(PRO)ベースの基準、例えばNCI-C
TC v3.0、EORTC QLQ-CIPN20及びTNScなど、ならびに主観的
な定量的測定、例えば神経伝導検査及び定量的感覚試験(QST)などを用いたCIPN
評価は、[Cavaletti 2013, Griffth 2014]で総説されて
いる。
【0007】
様々な薬剤がCIPNを予防及び/または治療するために提案されている。これらとし
ては、抗酸化剤、ナトリウムチャネル遮断剤、オピオイド受容体鎮痛薬、神経成長因子(
NGF)調節剤、三環系抗うつ薬、神経栄養剤、金属キレート剤、抗痙攣薬([Avan
2015]でまとめて総説されている)、シグマ受容体リガンド[US2011/00
52723]及びEGFR阻害剤[US 2015/0320861]が挙げられる。
【0008】
CIPNは、病態生理及び症状をはじめとして多くの点で神経障害性疼痛の他の形態と
は比較的異なるにもかかわらず[Hershman 2014, Wolf 2012]
、上記の薬剤の多くは、いくつかの神経障害性疼痛病態に対する効力の記録があるか、ま
たは疼痛シグナル伝達経路を標的とするかのいずれかである。例えば、三環系抗うつ薬ア
ミトリプチリン及びノルトリプチリンは、強力なシグマ受容体リガンドでもあり[US2
011/0052723, Werling 2007]、様々な形態の神経障害性疼痛
に有効であるが、シスプラチン及びオキサリプラチンを含めた化学療法薬によって誘発さ
れるPN症状を予防または治療する効果はない[Kautio 2008, Kauti
o 2008]。
【0009】
他の臨床研究において、抗酸化剤ビタミンEは、DRGにおけるプラチナの攻撃に対す
る予防剤であると考えられていたが、プラチナ薬剤で治療された患者における感覚神経障
害の発生率を減少させることができなかった[Pace 2003, Kottscha
de 2011]。
【0010】
CIPNを管理するための薬剤についてのほとんどの臨床研究の綿密な精査の後、米国
臨床腫瘍学会(ASCO)は、CIPN予防及び管理についての決定的な2014ガイド
ライン[Hershman 2014]において、「神経毒性の薬剤での治療を受けてい
る癌患者におけるCIPNの予防のために推奨される確立された薬剤はない」と結論付け
た。
【0011】
DRGにおける毒性プラチナ薬剤の望ましくない高蓄積がDRG神経損傷、ひいてはプ
ラチナ薬剤での治療に関連したCIPNの主要な機序であると発見されて久しく、一般に
受け入れられている[Miltenburg 2014, Holmes 1998]。
最近の研究では、オキサリプラチンが、DRGニューロン中で高度に発現される有機カチ
オントランスポーター2(OCT2、SLC22A2)を介してDRG細胞中に蓄積し得
ることを示唆している[Sprowl 2013]。研究によって、いくつかのプラチナ
薬剤、例えばシスプラチン、オキサリプラチン及びテトラプラチンなどはOCT2基質で
あることが示された。OCT2は腎近位尿細管上皮及び蝸牛上皮においても高度に発現さ
れ[Hellberg 2015]、潜在的にプラチナ薬剤取込みを促進し、ひいては、
これらの細胞におけるシスプラチンの細胞傷害性を悪化させる。
OCT2に加えて、他のトランスポーターによってもシスプラチン及びオキサリプラチ
ンが輸送される。これらのトランスポーターの中には抗腫瘍効果を増強し得るものもあれ
ば、プラチナ毒性から非腫瘍性組織を保護し得るものもある[Burger 2011,
Harrach 2015, Tashima 2015, Li 2014, Na
kanishi 2007]。したがって、抗腫瘍有効性を損なうことなく、正常組織に
おけるシスプラチン及びオキサリプラチン毒性を最小限にするために臨床において用いる
ために、望ましい薬物動態及び安全性プロファイルを有する選択的OCT2阻害剤を得る
ことが不可欠である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許出願公開第2011/0052723号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0320861号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示は、有機カチオントランスポーター2(OCT2)を発現する細胞におけるプラ
チナ薬剤誘発性毒性を減少させるための方法、被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を
減少させるための方法、被検者における癌を治療するための方法、及び被検者におけるプ
ラチナ治療の効力を増加させるための方法を提供することによって、プラチナ薬剤誘発性
毒性の減少に対する要求を満足するが、これらの方法は、OCT2を発現する細胞に、ま
たはOCT2を発現する細胞を含む被検者にOCT2阻害剤を与えるステップを含む。本
開示は、プラチナ薬剤及びOCT2阻害剤を含む医薬組成物を提供することによっても、
プラチナ薬剤誘発性毒性の減少に対する要求を満足する。
【0014】
本明細書の教示は、OCT2の阻害剤が、癌細胞、及び癌細胞に対するプラチナ薬剤の
治療的毒性作用には影響を及ぼさずに、健康な非癌細胞中へのプラチナ薬剤の取込みを減
少させることができるという発見を実証する。
図14で本発明の概念を図解する。OCT
2は、腎細胞、神経細胞、より具体的には求心性神経細胞上の背根神経節、及び蝸牛細胞
をはじめとする特定の細胞型におけるプラチナ誘導体の細胞内取込みに重要である。した
がって、非癌性の腎近位尿細管細胞に与えられたOCT2阻害剤は、OCT2を介したプ
ラチナ薬剤の取込みを阻害することによって、細胞内に入るプラチナ薬剤の量を減少させ
、ひいては、細胞におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させる。CTR1のような他の
トランスポーターの、腎近位尿細管細胞によるプラチナ誘導体の取込みへの寄与はまだ実
証されていない。他のトランスポーターからの寄与が不明であり、OCT2がプラチナ蓄
積及び神経毒性の原因であると考えられる背根神経節において、同様のシナリオが生じる
と予想される。対照的に、大腸癌細胞がOCT2を発現しなければ、OCT2阻害剤はこ
の細胞には影響を及ぼさない。むしろ、大腸癌細胞は典型的に、細胞内へのプラチナ薬剤
の取込みを媒介し得る2つの他のトランスポーターOCT1及びOCT3を発現し、その
ため、プラチナ薬剤は癌細胞に対して治療的に有効なままとなる。OCT2が癌細胞上に
存在し、OCT2阻害剤によって遮断される場合、OCT1及び3の寄与がともにプラチ
ナ誘導体の取込み、ひいては、抗腫瘍活性を維持するのに十分となることが予想される。
他のトランスポーターが腫瘍細胞におけるプラチナ誘導体の取込みに重要であるかどうか
は知られていない。
【0015】
したがって、本開示の一態様は、有機カチオントランスポーター2(OCT2)を発現
する細胞にプラチナ薬剤を与えること;及び細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込み
を減少させるOCT2阻害剤を与えることを含み、OCT2阻害剤がブフロメジルまたは
ブフロメジル塩であり、細胞におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させる、OCT2を
発現する細胞におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を含む。
【0016】
別の態様は、有機カチオントランスポーター2(OCT2)を発現する細胞にプラチナ
薬剤を与えること;及び細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させるOCT
2阻害剤を与えることを含み、OCT2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビル塩
であり、細胞におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させる、OCT2を発現する細胞に
おけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を含む。
【0017】
別の態様は、有機カチオントランスポーター2(OCT2)を発現する細胞にプラチナ
薬剤を与えること;及び細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させるOCT
2阻害剤を与えることを含み、OCT2阻害剤がイミダゾールを含み、細胞におけるプラ
チナ薬剤誘発性毒性を減少させる、OCT2を発現する細胞におけるプラチナ薬剤誘発性
毒性の減少方法を含む。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はミコナゾールま
たはその塩である。
【0018】
上記態様のいくつかの実施形態において、プラチナ薬剤及びOCT2阻害剤を同時に与
える。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤をプラチナ薬剤の前に与える。いく
つかの実施形態において、OCT2阻害剤をプラチナ薬剤の後に与える。いくつかの実施
形態において、OCT2を発現する細胞は、腎細胞、ニューロン細胞、耳細胞、及び血液
細胞からなる群から選択される細胞である。いくつかの実施形態において、細胞は感覚ニ
ューロン細胞である。いくつかの実施形態において、細胞は腎細胞である。いくつかの実
施形態において、プラチナ薬剤はオキサリプラチンである。いくつかの実施形態において
、プラチナ薬剤はシスプラチンである。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はテ
トラプラチンである。いくつかの実施形態において、OCT2を発現する細胞内へのOC
T2媒介プラチナ薬剤取込みは、OCT2阻害剤の不在下での細胞内へのOCT2媒介プ
ラチナ薬剤取込みと比較して、少なくとも50%、少なくとも70%または少なくとも9
0%阻害される。
【0019】
本開示の別の態様は、有機カチオントランスポーター2(OCT2)を発現する細胞を
含む被検者にプラチナ薬剤を与えること;及び被検者にOCT2阻害剤を与えることを含
み、OCT2阻害剤がブフロメジルまたはブフロメジル塩であり、OCT2を発現する細
胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させ、それによって被検者におけるプラ
チナ薬剤誘発性毒性を減少させる、被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を
含む。
【0020】
別の態様は、有機カチオントランスポーター2(OCT2)を発現する細胞を含む被検
者にプラチナ薬剤を与えること;及び被検者にOCT2阻害剤を与えることを含み、OC
T2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビル塩であり、OCT2を発現する細胞内
へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させ、それによって被検者におけるプラチナ
薬剤誘発性毒性を減少させる、被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を含む
。
【0021】
別の態様は、有機カチオントランスポーター2(OCT2)を発現する細胞を含む被検
者にプラチナ薬剤を与えること;及び被検者にOCT2阻害剤を与えることを含み、OC
T2阻害剤がイミダゾールを含み、OCT2を発現する細胞内へのOCT2媒介プラチナ
薬剤取込みを減少させ、それによって被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させ
る、被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を含む。いくつかの実施形態にお
いて、OCT2阻害剤はミコナゾールまたはその塩である。
【0022】
本開示の別の態様は、OCT2を発現する細胞を含む被検者にOCT2阻害剤を与える
ことを含み、OCT2阻害剤がブフロメジルまたはブフロメジル塩であり、被検者がプラ
チナ薬剤を与えられているか与えられることになり、OCT2阻害剤がOCT2を発現す
る細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させ、それによって被検者における
プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させる、被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方
法を含む。
【0023】
別の態様は、OCT2を発現する細胞を含む被検者にOCT2阻害剤を与えることを含
み、OCT2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビル塩であり、被検者がプラチナ
薬剤を与えられているか与えられることになり、OCT2阻害剤がOCT2を発現する細
胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させ、それによって被検者におけるプラ
チナ薬剤誘発性毒性を減少させる、被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を
含む。
【0024】
別の態様は、OCT2を発現する細胞を含む被検者にOCT2阻害剤を与えることを含
み、OCT2阻害剤がイミダゾールを含み、被検者がプラチナ薬剤を与えられているか与
えられることになり、OCT2阻害剤がOCT2を発現する細胞内へのOCT2媒介プラ
チナ薬剤取込みを減少させ、それによって被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少
させる、被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を含む。いくつかの実施形態
において、OCT2阻害剤はミコナゾールまたはその塩である。
【0025】
上記態様のいくつかの実施形態において、プラチナ薬剤及びOCT2阻害剤を同時に与
える。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤をプラチナ薬剤の前に与える。いく
つかの実施形態において、OCT2阻害剤をプラチナ薬剤の後に与える。いくつかの実施
形態において、プラチナ薬剤はオキサリプラチンである。いくつかの実施形態において、
プラチナ薬剤はシスプラチンである。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はテト
ラプラチンである。いくつかの実施形態において、被検者に与えられるOCT2阻害剤の
量は治療有効投与量未満である。いくつかの実施形態において、被検者に与えられるOC
T2阻害剤の量は1日当たり10mg~2000mgである。いくつかの実施形態におい
て、1回の治療期間の間に被検者に与えられるプラチナ薬剤の量は、標準的な臨床診療の
下で与えられるものよりも多い。いくつかの実施形態において、治療の全過程にわたって
被検者に与えられるプラチナ薬剤の蓄積量は、標準的な臨床診療の下で与えられるものよ
りも多い。いくつかの実施形態において、標準的な臨床診療下よりも高い頻度でプラチナ
薬剤を与える。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤誘発性毒性は、腎毒性、神経
毒性、血液毒性、及び耳毒性からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、
プラチナ薬剤誘発性毒性は神経毒性である。いくつかの実施形態において、神経毒性は末
梢神経障害である。いくつかの実施形態において、末梢神経障害はグレード3またはグレ
ード4末梢神経障害である。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤誘発性毒性は腎
毒性である。いくつかの実施形態において、被検者はヒトまたは非ヒト動物である。いく
つかの実施形態において、OCT2阻害剤を、経腸、静脈内、筋肉内、腹腔内、経口、ま
たは腸管外で与える。いくつかの実施形態において、一群の被検者におけるプラチナ薬剤
誘発性毒性の有病率は、OCT2阻害剤を与えられていない一群の被検者におけるプラチ
ナ薬剤誘発性毒性の有病率と比較して、少なくとも10%減少される。
【0026】
本開示の別の態様は、癌を有する被検者に治療有効量のプラチナ薬剤を与えること;及び
被検者に有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を与えることを含み、被検
者が、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現
する癌細胞を含み、OCT2阻害剤がブフロメジルまたはブフロメジル塩であり、これに
よって被検者の癌を治療する、被検者における癌の治療方法を含む。
【0027】
別の態様は、癌を有する被検者に治療有効量のプラチナ薬剤を与えること;及び被検者
に有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を与えることを含み、被検者が、
OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現する癌
細胞を含み、OCT2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビル塩であり、これによ
って被検者の癌を治療する、被検者における癌の治療方法を含む。
【0028】
別の態様は、癌を有する被検者に治療有効量のプラチナ薬剤を与えること;及び被検者
に有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を与えることを含み、被検者が、
OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現する癌
細胞を含み、OCT2阻害剤がイミダゾールを含み、これによって被検者の癌を治療する
、被検者における癌の治療方法を含む。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤は
ミコナゾールまたはその塩である。
【0029】
別の態様は、癌を有する被検者に治療有効量のプラチナ薬剤を与えること;及び被検者
にOCT2阻害剤を与えることを含み、被検者が、OCT2阻害剤によって阻害されない
プラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現する癌細胞を含み、OCT2阻害剤がブフロ
メジルまたはブフロメジル塩であり、これによってプラチナ薬剤治療の効力を増加させる
、被検者におけるプラチナ薬剤治療の効力の増加方法を含む。
【0030】
別の態様は、癌を有する被検者に治療有効量のプラチナ薬剤を与えること;及び被検者
にOCT2阻害剤を与えることを含み、被検者が、OCT2阻害剤によって阻害されない
プラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現する癌細胞を含み、OCT2阻害剤がドルテ
グラビルまたはドルテグラビル塩であり、これによってプラチナ薬剤治療の効力を増加さ
せる、被検者におけるプラチナ薬剤治療の効力の増加方法を含む。
【0031】
別の態様は、癌を有する被検者に治療有効量のプラチナ薬剤を与えること;及び被検者
にOCT2阻害剤を与えることを含み、被検者が、OCT2阻害剤によって阻害されない
プラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現する癌細胞を含み、OCT2阻害剤がイミダ
ゾールを含み、これによってプラチナ薬剤治療の効力を増加させる、被検者におけるプラ
チナ薬剤治療の効力の増加方法を含む。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤は
ミコナゾールまたはその塩である。
【0032】
上記態様のいくつかの実施形態において、プラチナ薬剤及びOCT2阻害剤を同時に与
える。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤をプラチナ薬剤の前に与える。いく
つかの実施形態において、OCT2阻害剤をプラチナ薬剤の後に与える。いくつかの実施
形態において、プラチナ薬剤はオキサリプラチンである。いくつかの実施形態において、
プラチナ薬剤はシスプラチンである。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はテト
ラプラチンである。いくつかの実施形態において、被検者に与えられるOCT2阻害剤の
量は治療有効投与量未満である。いくつかの実施形態において、被検者に与えられるOC
T2阻害剤の量は1日当たり10mg~2000mgである。いくつかの実施形態におい
て、1回の治療期間の間に被検者に与えられるプラチナ薬剤の量は、標準的な臨床診療の
下で与えられるものよりも多い。いくつかの実施形態において、治療の全過程にわたって
被検者に与えられるプラチナ薬剤の蓄積量は、標準的な臨床診療の下で与えられるものよ
りも多い。いくつかの実施形態において、標準的な臨床診療下よりも高い頻度でプラチナ
薬剤を与える。
【0033】
いくつかの実施形態において、癌は、膵腺癌、膨大部及び膨大部周囲癌、肛門腺癌、虫
垂癌、肝細胞癌、結腸癌または直腸癌、上皮性卵巣癌、ファロピウス管癌、原発性腹膜癌
、食道または食道胃接合部癌、胃癌、小腸癌、精巣癌、胆管癌、膵腺癌、原発不明癌、慢
性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、成人T細胞白血病/リ
ンパ腫、AIDS関連B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ
腫、胃MALTリンパ腫、非胃MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、菌状息肉症/
セザリー症候群、脾辺縁帯リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、原発性皮膚B細胞リンパ腫、
原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、肺癌、肝癌、ならびに胆嚢癌からなる群
から選択される。いくつかの実施形態において、癌は結腸癌または直腸癌である。いくつ
かの実施形態において、癌は肝癌である。いくつかの実施形態において、癌は肺癌である
。
【0034】
いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込
みトランスポーターは、有機カチオントランスポーター1(OCT1)取込みトランスポ
ーターである。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤によって阻害されないプラ
チナ薬剤取込みトランスポーターは、有機カチオントランスポーター3(OCT3)取込
みトランスポーターである。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤によって阻害
されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターは、銅トランスポーターI(CTR1)取
込みトランスポーターである。
【0035】
いくつかの実施形態において、この方法は、癌細胞がOCT2阻害剤によって阻害され
ないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現するかどうか判定するステップをさらに
含む。いくつかの実施形態において、この方法は、プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の
1つ以上の追加の化学療法剤を被検者に与えることをさらに含む。いくつかの実施形態に
おいて、1つ以上の追加の化学療法剤は、5-フルオロウラシル、ベバシズマブ、カペセ
タビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及びロイコボリン
からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、被検者はヒトまたは非ヒト動
物である。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤を、経腸、静脈内、筋肉内、腹
腔内、経口、または腸管外で与える。
【0036】
別の態様において、本開示は、プラチナ薬剤、ブフロメジルまたはブフロメジル塩であ
るOCT2阻害剤、及び医薬品として許容可能な担体を含む医薬組成物を含む。別の態様
は、プラチナ薬剤、ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩であるOCT2阻害剤、及び
医薬品として許容可能な担体を含む医薬組成物を含む。別の態様は、プラチナ薬剤、イミ
ダゾールを含むOCT2阻害剤、及び医薬品として許容可能な担体を含む医薬組成物を含
む。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はミコナゾールまたはその塩である。
【0037】
上記態様のいくつかの実施形態において、プラチナ薬剤の量は、プラチナ薬剤を含む標
準的な医薬組成物中に存在するものよりも多い。いくつかの実施形態において、医薬組成
物は、プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の化学療法剤をさらに含む。
いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の化学療法剤は、5-フルオロウラシル、
ベバシズマブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカ
ン、及びロイコボリンからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、プラチ
ナ薬剤はオキサリプラチンである。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はシスプ
ラチンである。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はテトラプラチンである。
【0038】
OCT2阻害剤がイミダゾールを含む態様のいくつかの実施形態において、OCT2阻
害剤は、少なくとも1のCmax,u/IC50またはCmax/IC50,appを有
する。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤は、少なくとも3のCmax,u/
IC50またはCmax/IC50,appを有する。いくつかの実施形態において、O
CT2阻害剤はその臨床濃度では細胞にとって毒性でない。いくつかの実施形態において
、OCT2阻害剤は、OCT2阻害剤の不在下における臨床濃度のプラチナ薬剤の抗癌活
性と比較して、20%を超えて臨床濃度のプラチナ薬剤の抗癌活性を減少させない。いく
つかの実施形態において、OCT2阻害剤は、OCT2阻害剤の不在下における他のトラ
ンスポーターを介した臨床濃度のプラチナ薬剤の取込みと比較して、20%を超えて他の
トランスポーターを介した細胞内への臨床濃度のプラチナ薬剤の取込みを減少させない。
いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤は、OCT2阻害剤の不在下における臨床
濃度のプラチナ薬剤の流出と比較して、20%を超えて臨床濃度のプラチナ薬剤の流出を
減少させない。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤は2時間を超える平均半減
期を有する。
【0039】
本開示の別の態様は、少なくとも1つの癌細胞を含むサンプルを取得すること;及び癌
細胞が有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤によって阻害されないプラチ
ナ薬剤取込みトランスポーターを発現するかどうか判定することを含む、癌を有する被検
者におけるプラチナ薬剤及びOCT2阻害剤療法の効力の予測方法を含み、ここで、プラ
チナ薬剤及びOCT2阻害剤療法は、癌細胞がOCT2阻害剤によって阻害されないプラ
チナ薬剤取込みトランスポーターを発現する被検者において有効な可能性があるものであ
る。
【0040】
別の態様は、少なくとも1つの癌細胞を含むサンプルを取得すること;及び癌細胞が有
機カチオントランスポーター2(OCT2)を発現するかどうか判定することを含む、癌
を有する被検者におけるプラチナ薬剤及びOCT2阻害剤療法の効力の予測方法を含み、
ここで、プラチナ薬剤及びOCT2阻害剤療法は、癌細胞が主にOCT2を発現する被検
者において有効である可能性がないものである。
【0041】
上記態様のいくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はオキサリプラチンである。い
くつかの実施形態において、プラチナ薬剤はシスプラチンである。いくつかの実施形態に
おいて、プラチナ薬剤はテトラプラチンである。いくつかの実施形態において、OCT2
阻害剤療法はブフロメジルまたはブフロメジル塩を投与することを含む。いくつかの実施
形態において、OCT2阻害剤療法はドルテグラビルまたはドルテグラビル塩を投与する
ことを含む。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤療法はイミダゾールを含むO
CT2阻害剤を投与することを含む。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤療法
はミコナゾールまたはその塩を含むOCT2阻害剤を投与することを含む。
【0042】
本開示は、オキサリプラチンであるプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与するこ
と;及び有効投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要
としている被検者に投与することを含み、必要としている被検者が癌を有する、必要とし
ている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性神経毒性の減少方法を提供する。
【0043】
本開示は、治療有効量のオキサリプラチンであるプラチナ薬剤を必要としている被検者
に投与すること;及び有効投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)
阻害剤を必要としている被検者に投与することを含む、必要としている被検者における癌
の治療方法を提供する。
【0044】
本開示は、治療有効量のオキサリプラチンであるプラチナ薬剤を必要としている被検者
に投与すること;及び上記必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性神経毒性を
減少させるのに有効な投与量で、選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻
害剤を必要としている被検者に投与し、それによって、上記被検者が少なくとも500m
g/m2の蓄積投与量で治療を完了することを含む、必要としている被検者における癌の
治療に対する患者コンプライアンスの増加方法を提供する。
【0045】
いくつかの実施形態において、投与されるプラチナ薬剤の治療有効量は、被検者におい
てプラチナ薬剤誘発性神経毒性を引き起こすと知られている。いくつかの実施形態におい
て、神経毒性は末梢神経毒性である。いくつかの実施形態において、神経毒性は感覚ニュ
ーロンへの損傷である。いくつかの実施形態において、神経毒性は運動ニューロンへの損
傷である。いくつかの実施形態において、神経毒性は慢性神経毒性である。いくつかの実
施形態において、神経毒性は急性症候群一過性神経毒性である。いくつかの実施形態にお
いて、神経毒性は最初の治療の1時間~7日後に生じる。いくつかの実施形態において、
神経毒性は、被検者が少なくとも500mg/m2の蓄積投与量で治療を完了した後に生
じる。いくつかの実施形態において、神経毒性は背根神経節(DRG)への損傷である。
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤の投与量は、上記必要としている被
検者におけるプラチナ薬剤誘発性神経毒性を最小限にするのに有効である。
【0046】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤の投与量は、少なくとも100m
g/m2の蓄積投与量で治療された患者において、米国国立癌研究所-共通毒性規準(N
CI-CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CTC)運
動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN
限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL-CIPN20)から選択される方法
によって評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有効であ
る。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤の投与量は、少なくとも30m
g/週/m2のプラチナ薬剤投与量強度で治療された患者において、米国国立癌研究所-
共通毒性規準(NCI-CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所-共通毒性規準(N
CI-CTC)運動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究
治療機関CIPN限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL-CIPN20)か
ら選択される方法によって評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防
するのに有効である。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤の投与量は、
少なくとも80mg/m2のプラチナ薬剤投与量で治療された患者において、米国国立癌
研究所-共通毒性規準(NCI-CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所-共通毒性
規準(NCI-CTC)運動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧
州癌研究治療機関CIPN限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL-CIPN
20)から選択される方法によって評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒
性を予防するのに有効である。
【0047】
いくつかの実施形態において、この方法は、プラチナ薬剤の投与後に被検者におけるプ
ラチナ薬剤誘発性神経毒性を評価することをさらに含む。いくつかの実施形態において、
神経毒性は、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CTC)知覚性スケール、米国
国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CTC)運動性スケール、総合神経障害スコア臨
床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報告アンケート調査(EOR
TC QOL-CIPN20)から選択される方法によって評価される。いくつかの実施
形態において、神経毒性は、感覚神経活動電位、感覚神経伝導速度、冷痛閾値、温痛閾値
、機械的疼痛閾値、冷知覚閾値、温知覚閾値、機械的触覚閾値、振動知覚閾値、電流知覚
閾値、刺針感度、深部腱反射及び握力から選択される測定値によって評価される。いくつ
かの実施形態において、神経毒性は、橈骨、背側腓腹、腓腹及び尺骨神経の1つにおける
感覚神経活動電位を測定することによって評価される。いくつかの実施形態において、こ
の方法は、プラチナ薬剤の投与前に被検者のベースラインを確立することをさらに含む。
いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤誘発性神経毒性は治療の中間点付近で評価さ
れる。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤誘発性神経毒性は200mg/m2の
蓄積投与量での治療後に評価される。
【0048】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤は、ブフロメジル、ブフロメジル
塩、ドルテグラビル、及びドルテグラビル塩からなる群から選択される。いくつかの実施
形態において、選択的OCT2阻害剤はブフロメジル、またはブフロメジル塩である。い
くつかの実施形態において、被検者に投与されるブフロメジルまたはブフロメジル塩の投
与量は、上記被検者の因子である、体重、体表面積、身長、年齢、性別、アルコール使用
、タバコ使用、生活様式、腎機能、肝機能、遺伝子多型及び併用薬の少なくとも1つに基
づいて調節される。いくつかの実施形態において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩の
投与量は、少なくとも0.43mg/l、0.86mg/l、1.29mg/l、1.7
2mg/lまたは2.15mg/lのプラチナ投与期間中の血漿レベルをもたらす。いく
つかの実施形態において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量は少なくとも10
0mg、200mg、300mg、400mg、500mgまたは600mgである。い
くつかの実施形態において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量は少なくとも1
mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg
、8mg/kgまたは10mg/kgである。
【0049】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤はドルテグラビルまたはドルテグ
ラビル塩である。いくつかの実施形態において、ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩
の投与量は、少なくとも1.4mg/l、2.8mg/l、4.2mg/l、5.6mg
/lまたは7.0mg/lのプラチナ投与期間中の血漿レベルをもたらす。いくつかの実
施形態において、ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩の投与量は少なくとも50mg
、100mg、150mg、200mg、250mg、300mgまたは400mgであ
る。いくつかの実施形態において、ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩の投与量は少
なくとも1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kgまた
は6mg/kgである。
【0050】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤はプラチナ薬剤の効力を減少させ
ない。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤は、最大許容血漿濃度(MT
C)未満、かつ、ヒト血清もしくは4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイバッファ
ー中で評価した20μMのオキサリプラチンのOCT2媒介輸送についてのIC50値の
1倍、2倍、3倍、4倍を超えるプラチナ薬剤投与期間中の血漿濃度をもたらす投与量で
投与される。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤は、2μM以下の、ヒ
ト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での20μMのオキサリ
プラチンのOCT2媒介輸送に対するIC50を有する。いくつかの実施形態において、
選択的OCT2阻害剤は、OCT1-、OCT-3、及びMATE-1によって媒介され
る、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での20μMのオ
キサリプラチン輸送に対する選択的OCT2阻害剤のIC50よりも少なくとも15倍小
さい、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での20μMの
オキサリプラチンのOCT2媒介輸送に対するIC50を有する。
【0051】
いくつかの実施形態において、必要としている被検者は、有機カチオントランスポータ
ー1(OCT1)または有機カチオントランスポーター3(OCT3)のうち少なくとも
一方を発現する癌を有する。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤はブフ
ロメジル、またはブフロメジル塩である。いくつかの実施形態において、選択的OCT2
阻害剤はドルテグラビル、またはドルテグラビル塩である。いくつかの実施形態において
、プラチナ薬剤及び選択的OCT2阻害剤を同時に投与する。いくつかの実施形態におい
て、選択的OCT2阻害剤をプラチナ薬剤の前に投与する。いくつかの実施形態において
、選択的OCT2阻害剤をプラチナ薬剤の後に投与する。いくつかの実施形態において、
1回の治療期間の間に被検者に投与されるプラチナ薬剤の量は、標準的な臨床診療の下で
投与されるものよりも多い。いくつかの実施形態において、必要としている被検者に治療
の全過程にわたって投与されるプラチナ薬剤の蓄積量は、標準的な臨床診療の下で投与さ
れるものよりも多い。いくつかの実施形態において、標準的な臨床診療下よりも高い頻度
でプラチナ薬剤を投与する。
【0052】
いくつかの実施形態において、神経毒性は末梢神経障害である。いくつかの実施形態に
おいて、末梢神経障害はグレード3またはグレード4末梢神経障害である。いくつかの実
施形態において、必要としている被検者はヒトまたは非ヒト動物である。
【0053】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤を、経腸、静脈内、筋肉内、腹腔
内、経口、または腸管外投与する。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤
は2つ以上の投与経路を介して投与される。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤
及び選択的OCT2阻害剤は同じ投与経路を介して投与される。いくつかの実施形態にお
いて、選択的OCT2阻害剤は静脈内点滴によって投与される。いくつかの実施形態にお
いて、選択的OCT2阻害剤は静脈内注入及び静脈内点滴によって投与される。いくつか
の実施形態において、静脈内点滴は少なくとも1時間にわたる。いくつかの実施形態にお
いて、静脈内点滴の速度は一定である。いくつかの実施形態において、静脈内点滴の速度
は一定でない。
【0054】
いくつかの実施形態において、癌はOCT1を発現する。いくつかの実施形態において
、癌はOCT3を発現する。いくつかの実施形態において、癌はOCT1及びOCT3を
発現する。いくつかの実施形態において、癌は、膵腺癌、膨大部及び膨大部周囲癌、肛門
腺癌、虫垂癌、肝細胞癌、結腸癌または直腸癌、上皮性卵巣癌、ファロピウス管癌、原発
性腹膜癌、食道または食道胃接合部癌、胃癌、小腸癌、精巣癌、胆管癌、膵腺癌、原発不
明癌、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、成人T細胞白
血病/リンパ腫、AIDS関連B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞
性リンパ腫、胃MALTリンパ腫、非胃MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、菌状
息肉症/セザリー症候群、脾辺縁帯リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、原発性皮膚B細胞リ
ンパ腫、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、肺癌、肝癌、頭頸部癌、前立腺
癌、平滑筋癌ならびに胆嚢癌からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、
癌は卵巣癌である。いくつかの実施形態において、癌は頭頸部癌である。いくつかの実施
形態において、癌は前立腺癌である。いくつかの実施形態において、癌はリンパ腫である
。いくつかの実施形態において、癌は平滑筋癌である。いくつかの実施形態において、癌
は結腸癌または直腸癌である。いくつかの実施形態において、癌は肝癌である。いくつか
の実施形態において、癌は肺癌である。
【0055】
いくつかの実施形態において、この方法は、プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ
以上の追加の癌化学療法剤を必要としている被検者に投与することをさらに含む。いくつ
かの実施形態において、1つ以上の追加の化学療法剤は、5-フルオロウラシル、ベバシ
ズマブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及
びロイコボリンからなる群から選択される。
【0056】
本開示は、オキサリプラチンであるプラチナ薬剤、ブフロメジル、ブフロメジル塩、ド
ルテグラビル、及びドルテグラビル塩からなる群から選択される選択的OCT2阻害剤、
ならびに医薬品として許容可能な担体を含む、静脈内投与のために製剤化された医薬組成
物を提供する。
【0057】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤はブフロメジル、またはブフロメ
ジル塩である。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はドルテグラビル、または
ドルテグラビル塩である。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤の量は、プラチナ
薬剤を含む標準的な医薬組成物中に存在するものよりも多い。いくつかの実施形態におい
て、医薬組成物は、プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の癌化学療法剤
をさらに含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の化学療法剤は、5-フル
オロウラシル、ベバシズマブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビ
ン、イリノテカン、及びロイコボリンからなる群から選択される。
【0058】
本開示は、治療有効量のオキサリプラチンであるプラチナ薬剤;選択的OCT2阻害剤
及び使用のための指示書を含むキットを提供する。いくつかの実施形態において、キット
は、必要としている被検者に対する選択的OCT2阻害剤の望ましい投与量を決定するた
めの指示書をさらに含む。いくつかの実施形態において、投与量は、体重、体表面積、身
長、年齢、性別、アルコール使用、タバコ使用、生活様式、腎機能、肝機能、遺伝子多型
及び併用薬から選択される被検者の少なくとも1つの因子に基づいて決定される。いくつ
かの実施形態において、投与量は、上記被検者におけるOCT2阻害剤の血漿レベルを監
視することによって決定される。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤は
ブフロメジルまたはブフロメジル塩である。いくつかの実施形態において、ブフロメジル
またはブフロメジル塩は300mg、450mg、600mg、800mgまたは100
0mgよりも多い量で存在する。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤は
ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩である。いくつかの実施形態において、ドルテグ
ラビルまたはドルテグラビル塩は50mg、75mg、100mg、150mg、200
mgまたは300mgよりも多い量で存在する。いくつかの実施形態において、キットが
プラチナ薬剤誘発性神経毒性を減少させる用途のために意図されていることが指示書に明
記されている。いくつかの実施形態において、キットが癌を治療する用途のために意図さ
れていることが指示書に明記されている。いくつかの実施形態において、キットは、プラ
チナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の癌化学療法剤をさらに含む。いくつか
の実施形態において、1つ以上の追加の化学療法剤は、5-フルオロウラシル、ベバシズ
マブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及び
ロイコボリンからなる群から選択される。
【0059】
本開示は、シスプラチンであるプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与すること;
及び有効投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要とし
ている被検者に投与することを含み、毒性が腎毒性、耳毒性または末梢神経障害であり、
必要としている被検者が癌を有する、必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性
毒性の減少方法を提供する。
【0060】
本開示は、治療有効量のシスプラチンであるプラチナ薬剤を必要としている被検者に投
与すること;及び有効投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害
剤を必要としている被検者に投与することを含む、必要としている被検者における癌の治
療方法を提供する。
【0061】
本開示は、治療有効量のシスプラチンであるプラチナ薬剤を必要としている被検者に投
与すること;及び上記必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させ
るのに有効な投与量で、選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必
要としている被検者に投与し、それによって、上記被検者が少なくとも100mg/m2
の蓄積投与量で治療を完了することを含む、必要としている被検者における癌の治療に対
する患者コンプライアンスの増加方法を提供する。
【0062】
本開示は、必要としている被検者において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である
選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤のIC50の2~5倍である
、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(O
CT2)阻害剤の血漿レベルを達成するための有効投与量を決定すること;オキサリプラ
チン及びシスプラチンからなる群から選択されるプラチナ薬剤を必要としている被検者に
投与すること;ならびに有効投与量のブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有
機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与するこ
とを含み、毒性が腎毒性、耳毒性または末梢神経障害であり、必要としている被検者が癌
を有する、必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供する
。
【0063】
本開示は、必要としている被検者において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である
選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤のIC50の2~5倍である
、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(O
CT2)阻害剤の血漿レベルを達成するための有効投与量を決定すること;オキサリプラ
チン及びシスプラチンからなる群から選択される治療有効量のプラチナ薬剤を必要として
いる被検者に投与すること;ならびに有効投与量のブフロメジルまたはブフロメジル塩で
ある選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者
に投与することを含む、必要としている被検者における癌の治療方法を提供する。
【0064】
本開示は、必要としている被検者において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である
選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤のIC50の2~5倍である
、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(O
CT2)阻害剤の血漿レベルを達成するための有効投与量を決定すること;オキサリプラ
チン及びシスプラチンからなる群から選択される治療有効量のプラチナ薬剤を必要として
いる被検者に投与すること;ならびに上記必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘
発性毒性を減少させるのに有効な投与量で、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選
択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与
し、それによって、上記被検者が少なくとも100mg/m2の蓄積投与量で治療を完了
することを含む、必要としている被検者における癌の治療に対する患者コンプライアンス
の増加方法を提供する。
【0065】
いくつかの実施形態において、選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻
害剤の血漿レベルを達成するための有効投与量を決定するステップは、予備投与量の選択
的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を投与することによって行われる
。いくつかの実施形態において、選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻
害剤の血漿レベルを達成するための有効投与量を決定するステップは、被検者特性に基づ
く参照データチャートによって決定される。
【0066】
本開示は、必要としている被検者における癌の治療に用いるための選択的OCT2阻害
剤を提供するが、OCT2阻害剤はオキサリプラチンであるプラチナ薬剤との併用のため
のものである。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤は、プラチナ薬剤誘発性毒
性を減少させることができる投与量での投与のためのものである。
【0067】
本開示は、必要としている被検者における癌の治療に用いるための選択的OCT2阻害
剤を提供するが、OCT2阻害剤はシスプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのも
のである。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤は、プラチナ薬剤誘発性毒性を
減少させることができる投与量での投与のためのものである。
【0068】
本開示は、必要としている被検者における癌の治療に用いるためのブフロメジルまたは
ブフロメジル塩である選択的OCT2阻害剤を提供するが、OCT2阻害剤はオキサリプ
ラチンまたはシスプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。いくつかの
実施形態において、OCT2阻害剤は、プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させることができ
る投与量での投与のためのものである。
【0069】
本開示は、癌の治療のための医薬品の調製における選択的OCT2阻害剤の使用を提供
するが、医薬品はオキサリプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。い
くつかの実施形態において、OCT2阻害剤は、プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させるこ
とができる投与量での投与のためのものである。
【0070】
本開示は、癌の治療のための医薬品の調製における選択的OCT2阻害剤の使用を提供
するが、医薬品はシスプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。いくつ
かの実施形態において、OCT2阻害剤は、プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させることが
できる投与量での投与のためのものである。
【0071】
本開示は、癌の治療のための医薬品の調製におけるブフロメジルまたはブフロメジル塩
である選択的OCT2阻害剤の使用を提供するが、医薬品はオキサリプラチンまたはシス
プラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。いくつかの実施形態において
、OCT2阻害剤は、プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させることができる投与量での投与
のためのものである。
本開示において、例えば、以下の項目が提供される。
(項目1)
必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性神経毒性の減少方法であって、
オキサリプラチンであるプラチナ薬剤を前記必要としている被検者に投与すること;及び
有効投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を前記必要とし
ている被検者に投与することを含む、前記方法。
(項目2)
必要としている被検者における癌の治療方法であって、
治療有効量のオキサリプラチンであるプラチナ薬剤を前記必要としている被検者に投与す
ること;及び
有効投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を前記必要とし
ている被検者に投与することを含む、前記方法。
(項目3)
必要としている被検者における癌の治療に対する患者コンプライアンスの増加方法であ
って、
治療有効量のオキサリプラチンであるプラチナ薬剤を前記必要としている被検者に投与す
ること;及び
前記必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性神経毒性を減少させるのに有効な
投与量で、選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を前記必要として
いる被検者に投与し、それによって、前記被検者が少なくとも500mg/m2の蓄積投
与量で治療を完了することを含む、前記方法。
(項目4)
投与されるプラチナ薬剤の前記治療有効量が被検者においてプラチナ薬剤誘発性神経毒
性を引き起こすと知られている、項目2または3に記載の方法。
(項目5)
前記神経毒性が末梢神経毒性である、項目1または3~4のいずれか1項に記載の方法
。
(項目6)
前記神経毒性が感覚ニューロンへの損傷である、項目1または3~4のいずれか1項に
記載の方法。
(項目7)
前記神経毒性が運動ニューロンへの損傷である、項目1または3~4のいずれか1項に
記載の方法。
(項目8)
前記神経毒性が慢性神経毒性である、項目1~7のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
前記神経毒性が急性症候群一過性神経毒性である、項目1~7のいずれか1項に記載の
方法。
(項目10)
前記神経毒性が最初の治療の1時間~7日後に生じる、項目1~7のいずれか1項に記
載の方法。
(項目11)
被検者が少なくとも500mg/m2の蓄積投与量で治療を完了した後に前記神経毒性
が生じる、項目1~7のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
前記神経毒性が背根神経節(DRG)への損傷である、項目1または3~4のいずれか
1項に記載の方法。
(項目13)
選択的OCT2阻害剤の前記投与量が前記必要としている被検者におけるプラチナ薬剤
誘発性神経毒性を最小限にするのに有効である、項目1~12のいずれか1項に記載の方
法。
(項目14)
少なくとも100mg/m2の蓄積投与量で治療された患者において、選択的OCT2
阻害剤の前記投与量が、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CTC)知覚性スケ
ール、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CTC)運動性スケール、総合神経障
害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報告アンケート調
査(EORTC QOL-CIPN20)から選択される方法によって評価したグレード
3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有効である、項目1~12のいずれ
か1項に記載の方法。
(項目15)
少なくとも30mg/週/m2のプラチナ薬剤投与量強度で治療された患者において、
選択的OCT2阻害剤の前記投与量が、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CT
C)知覚性スケール、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CTC)運動性スケー
ル、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報
告アンケート調査(EORTC QOL-CIPN20)から選択される方法によって評
価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有効である、項目1
~12のいずれか1項に記載の方法。
(項目16)
少なくとも80mg/m2のプラチナ薬剤投与量で治療された患者において、選択的O
CT2阻害剤の前記投与量が、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CTC)知覚
性スケール、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CTC)運動性スケール、総合
神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報告アンケ
ート調査(EORTC QOL-CIPN20)から選択される方法によって評価したグ
レード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有効である、項目1~12の
いずれか1項に記載の方法。
(項目17)
前記プラチナ薬剤の投与後に被検者におけるプラチナ薬剤誘発性神経毒性を評価するこ
とをさらに含む、項目1~16のいずれか1項に記載の方法。
(項目18)
前記神経毒性が、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CTC)知覚性スケール
、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CTC)運動性スケール、総合神経障害ス
コア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報告アンケート調査(
EORTC QOL-CIPN20)から選択される方法によって評価される、項目17
に記載の方法。
(項目19)
前記神経毒性が感覚神経活動電位、感覚神経伝導速度、冷痛閾値、温痛閾値、機械的疼
痛閾値、冷知覚閾値、温知覚閾値、機械的触覚閾値、振動知覚閾値、電流知覚閾値、刺針
感度、深部腱反射及び握力から選択される測定値によって評価される、項目17に記載の
方法。
(項目20)
前記神経毒性が、橈骨、背側腓腹、腓腹及び尺骨神経の1つにおける感覚神経活動電位
を測定することによって評価される、項目17に記載の方法。
(項目21)
前記プラチナ薬剤の投与前に前記被検者のベースラインを確立することをさらに含む、
項目17~20のいずれか1項に記載の方法。
(項目22)
前記プラチナ薬剤誘発性神経毒性が治療の中間点付近で評価される、項目17~20の
いずれか1項に記載の方法。
(項目23)
前記プラチナ薬剤誘発性神経毒性が200mg/m2の蓄積投与量での治療後に評価さ
れる、項目17~20のいずれか1項に記載の方法。
(項目24)
前記選択的OCT2阻害剤が、ブフロメジル、ブフロメジル塩、ドルテグラビル、及び
ドルテグラビル塩からなる群から選択される、項目1~23のいずれか1項に記載の方法
。
(項目25)
前記選択的OCT2阻害剤がブフロメジル、またはブフロメジル塩である、項目24に
記載の方法。
(項目26)
被検者に投与されるブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量が、前記被検者の因子
である、体重、体表面積、身長、年齢、性別、アルコール使用、タバコ使用、生活様式、
腎機能、肝機能、遺伝子多型及び併用薬の少なくとも1つに基づいて調節される、項目2
5に記載の方法。
(項目27)
ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量が、少なくとも0.43mg/l、0.8
6mg/l、1.29mg/l、1.72mg/lまたは2.15mg/lの、プラチナ
投与期間中の血漿レベルをもたらす、項目25または26に記載の方法。
(項目28)
ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量が少なくとも100mg、200mg、3
00mg、400mg、500mgまたは600mgである、項目25~26のいずれか
1項に記載の方法。
(項目29)
ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量が少なくとも1mg/kg、2mg/kg
、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、8mg/kgまたは10
mg/kgである、項目25~28のいずれか1項に記載の方法。
(項目30)
前記選択的OCT2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビル塩である、項目24
に記載の方法。
(項目31)
ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩の投与量が、少なくとも1.4mg/l、2.
8mg/l、4.2mg/l、5.6mg/lまたは7.0mg/lの、プラチナ投与期
間中の血漿レベルをもたらす、項目30に記載の方法。
(項目32)
ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩の投与量が少なくとも50mg、100mg、
150mg、200mg、250mg、300mgまたは400mgである、項目30ま
たは31に記載の方法。
(項目33)
ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩の投与量が少なくとも1mg/kg、2mg/
kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kgまたは6mg/kgである、項目30
~32のいずれか1項に記載の方法。
(項目34)
前記選択的OCT2阻害剤が前記プラチナ薬剤の効力を減少させない、項目1~33の
いずれか1項に記載の方法。
(項目35)
最大許容血漿濃度(MTC)未満、かつ、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含
有するアッセイバッファー中で評価した20μMのオキサリプラチンのOCT2媒介輸送
についてのIC50値の1倍、2倍、3倍、4倍を超える、プラチナ薬剤投与期間中の血
漿濃度をもたらす投与量で、前記選択的OCT2阻害剤が投与される、項目1~34のい
ずれか1項に記載の方法。
(項目36)
前記選択的OCT2阻害剤が、2μM以下の、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミン
を含有するアッセイ溶液中での20μMのオキサリプラチンのOCT2媒介輸送に対する
IC50を有する、項目1~19、34または35のいずれか1項に記載の方法。
(項目37)
前記選択的OCT2阻害剤が、OCT-1、OCT-3、及びMATE-1によって媒
介される、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での20μ
Mのオキサリプラチン輸送に対する前記選択的OCT2阻害剤のIC50よりも少なくと
も15倍小さい、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での
20μMのオキサリプラチンのOCT2媒介輸送に対するIC50を有する、項目36に
記載の方法。
(項目38)
前記必要としている被検者が、有機カチオントランスポーター1(OCT1)または有
機カチオントランスポーター3(OCT3)のうち少なくとも一方を発現する癌を有する
、項目1~37のいずれか1項に記載の方法。
(項目39)
前記選択的OCT2阻害剤がブフロメジル、またはブフロメジル塩である、項目1~2
9または34~38のいずれか1項に記載の方法。
(項目40)
前記選択的OCT2阻害剤がドルテグラビル、またはドルテグラビル塩である、項目1
~24または30~38のいずれか1項に記載の方法。
(項目41)
前記プラチナ薬剤及び前記選択的OCT2阻害剤が同時に投与される、項目1~40の
いずれか1項に記載の方法。
(項目42)
前記選択的OCT2阻害剤が前記プラチナ薬剤の前に投与される、項目1~40のいず
れか1項に記載の方法。
(項目43)
前記選択的OCT2阻害剤が前記プラチナ薬剤の後に投与される、項目1~40のいず
れか1項に記載の方法。
(項目44)
1回の治療期間の間に前記被検者に投与されるプラチナ薬剤の量が標準的な臨床診療の
下で投与されるものよりも多い、項目1~43のいずれか1項に記載の方法。
(項目45)
前記必要としている被検者に治療の全過程にわたって投与されるプラチナ薬剤の蓄積量
が、標準的な臨床診療の下で投与されるものよりも多い、項目1~44のいずれか1項に
記載の方法。
(項目46)
標準的な臨床診療下よりも高い頻度で前記プラチナ薬剤が投与される、項目1~45の
いずれか1項に記載の方法。
(項目47)
前記神経毒性が末梢神経障害である、項目1または3~46のいずれか1項に記載の方
法。
(項目48)
前記末梢神経障害がグレード3またはグレード4末梢神経障害である、項目47に記載
の方法。
(項目49)
前記必要としている被検者がヒトまたは非ヒト動物である、項目1~48のいずれか1
項に記載の方法。
(項目50)
前記選択的OCT2阻害剤が、経腸、静脈内、筋肉内、腹腔内、経口、または腸管外投
与される、項目1~49のいずれか1項に記載の方法。
(項目51)
前記選択的OCT2阻害剤が2つ以上の投与経路を介して投与される、項目1~50の
いずれか1項に記載の方法。
(項目52)
前記プラチナ薬剤及び前記選択的OCT2阻害剤が同じ投与経路を介して投与される、
項目1~50のいずれか1項に記載の方法。
(項目53)
前記選択的OCT2阻害剤が静脈内点滴によって投与される、項目1~49のいずれか
1項に記載の方法。
(項目54)
前記選択的OCT2阻害剤が静脈内注入及び静脈内点滴によって投与される、項目1~
49のいずれか1項に記載の方法。
(項目55)
静脈内点滴が少なくとも1時間にわたる、項目53または54に記載の方法。
(項目56)
静脈内点滴の速度が一定である、項目53または54に記載の方法。
(項目57)
静脈内点滴の速度が一定でない、項目53または54に記載の方法。
(項目58)
前記癌がOCT1を発現する、項目1~57のいずれか1項に記載の方法。
(項目59)
前記癌がOCT3を発現する、項目1~58のいずれか1項に記載の方法。
(項目60)
前記癌がOCT1及びOCT3を発現する、項目1~59のいずれか1項に記載の方法
。
(項目61)
前記癌が、膵腺癌、膨大部及び膨大部周囲癌、肛門腺癌、虫垂癌、肝細胞癌、結腸癌ま
たは直腸癌、上皮性卵巣癌、ファロピウス管癌、原発性腹膜癌、食道または食道胃接合部
癌、胃癌、小腸癌、精巣癌、胆管癌、膵腺癌、原発不明癌、慢性リンパ性白血病/小リン
パ球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫、AIDS関連B細
胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、胃MALTリンパ腫、
非胃MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、菌状息肉症/セザリー症候群、脾辺縁帯
リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、原発性皮膚B細胞リンパ腫、原発性皮膚未分化大細胞リ
ンパ腫(ALCL)、肺癌、肝癌、頭頸部癌、前立腺癌、平滑筋癌ならびに胆嚢癌からな
る群から選択される、項目1~60のいずれか1項に記載の方法。
(項目62)
前記癌が卵巣癌である、項目61に記載の方法。
(項目63)
前記癌が頭頸部癌である、項目61に記載の方法。
(項目64)
前記癌が前立腺癌である、項目61に記載の方法。
(項目65)
前記癌がリンパ腫である、項目61に記載の方法。
(項目66)
前記癌が平滑筋癌である、項目61に記載の方法。
(項目67)
前記癌が結腸癌または直腸癌である、項目61に記載の方法。
(項目68)
前記癌が肝癌である、項目61に記載の方法。
(項目69)
前記癌が肺癌である、項目61に記載の方法。
(項目70)
前記プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の癌化学療法剤を前記必要と
している被検者に投与することをさらに含む、項目1~69のいずれか1項に記載の方法
。
(項目71)
前記1つ以上の追加の化学療法剤が5-フルオロウラシル、ベバシズマブ、カペセタビ
ン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及びロイコボリンから
なる群から選択される、項目70に記載の方法。
(項目72)
オキサリプラチンであるプラチナ薬剤、
ブフロメジル、ブフロメジル塩、ドルテグラビル、及びドルテグラビル塩からなる群から
選択される選択的OCT2阻害剤、ならびに
医薬品として許容可能な担体
を含む、静脈内投与のために製剤化された医薬組成物。
(項目73)
前記選択的OCT2阻害剤がブフロメジル、またはブフロメジル塩である、項目72に
記載の医薬組成物。
(項目74)
前記OCT2阻害剤がドルテグラビル、またはドルテグラビル塩である、項目72に記
載の医薬組成物。
(項目75)
前記プラチナ薬剤の量が、前記プラチナ薬剤を含む標準的な医薬組成物中に存在するも
のよりも多い、項目72~74のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目76)
前記プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の癌化学療法剤をさらに含む
、項目72~75のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目77)
前記1つ以上の追加の化学療法剤が5-フルオロウラシル、ベバシズマブ、カペセタビ
ン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及びロイコボリンから
なる群から選択される、項目76に記載の医薬組成物。
(項目78)
治療有効量のオキサリプラチンであるプラチナ薬剤;選択的OCT2阻害剤及び使用の
ための指示書を含むキット。
(項目79)
必要としている被検者に対する前記選択的OCT2阻害剤の望ましい投与量を決定する
ための指示書をさらに含む、項目78に記載のキット。
(項目80)
前記投与量が、体重、体表面積、身長、年齢、性別、アルコール使用、タバコ使用、生
活様式、腎機能、肝機能、遺伝子多型及び併用薬から選択される前記被検者の少なくとも
1つの因子に基づいて決定される、項目79に記載のキット。
(項目81)
前記投与量が、前記被検者における前記OCT2阻害剤の血漿レベルを監視することに
よって決定される、項目79に記載のキット。
(項目82)
前記選択的OCT2阻害剤がブフロメジルまたはブフロメジル塩である、項目78~8
1のいずれか1項に記載のキット。
(項目83)
ブフロメジルまたはブフロメジル塩が300mg、450mg、600mg、800m
gまたは1000mgよりも多い量で存在する、項目82に記載のキット。
(項目84)
前記選択的OCT2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビル塩である、項目78
~81のいずれか1項に記載のキット。
(項目85)
ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩が50mg、75mg、100mg、150m
g、200mgまたは300mgよりも多い量で存在する、項目84に記載のキット。
(項目86)
前記キットがプラチナ薬剤誘発性神経毒性を減少させる用途のために意図されているこ
とが前記指示書に明記されている、項目78~85のいずれか1項に記載のキット。
(項目87)
前記キットが癌を治療する用途のために意図されていることが前記指示書に明記されて
いる、項目78~86に記載のキット。
(項目88)
前記プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の癌化学療法剤をさらに含む
、項目78~87のいずれか1項に記載のキット。
(項目89)
前記1つ以上の追加の化学療法剤が5-フルオロウラシル、ベバシズマブ、カペセタビ
ン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及びロイコボリンから
なる群から選択される、項目88に記載のキット。
(項目90)
必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法であって、
シスプラチンであるプラチナ薬剤を前記必要としている被検者に投与すること;及び
有効投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を前記必要とし
ている被検者に投与することを含み、
前記毒性が腎毒性、耳毒性または末梢神経障害であり、前記必要としている被検者が癌を
有する、前記方法。
(項目91)
必要としている被検者における癌の治療方法であって、
治療有効量のシスプラチンであるプラチナ薬剤を前記必要としている被検者に投与するこ
と;及び
有効投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を前記必要とし
ている被検者に投与することを含む、前記方法。
(項目92)
必要としている被検者における癌の治療に対する患者コンプライアンスの増加方法であ
って、
治療有効量のシスプラチンであるプラチナ薬剤を前記必要としている被検者に投与するこ
と;及び
前記必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させるのに有効な投与
量で、選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を前記必要としている
被検者に投与し、それによって、前記被検者が少なくとも100mg/m2の蓄積投与量
で治療を完了することを含む、前記方法。
(項目93)
必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法であって、
前記必要としている被検者において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有
機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤のIC50の2~5倍である、ブフロ
メジルまたはブフロメジル塩である前記選択的有機カチオントランスポーター2(OCT
2)阻害剤の血漿レベルを達成するための有効投与量を決定すること;
オキサリプラチン及びシスプラチンからなる群から選択されるプラチナ薬剤を前記必要と
している被検者に投与すること;ならびに
有効投与量のブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポー
ター2(OCT2)阻害剤を前記必要としている被検者に投与すること
を含み、
前記毒性が腎毒性、耳毒性または末梢神経障害であり、
前記必要としている被検者が癌を有する、前記方法。
(項目94)
必要としている被検者における癌の治療方法であって、
前記必要としている被検者において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有
機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤のIC50の2~5倍である、ブフロ
メジルまたはブフロメジル塩である前記選択的有機カチオントランスポーター2(OCT
2)阻害剤の血漿レベルを達成するための有効投与量を決定すること;
オキサリプラチン及びシスプラチンからなる群から選択される治療有効量のプラチナ薬剤
を前記必要としている被検者に投与すること;ならびに
有効投与量のブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポー
ター2(OCT2)阻害剤を前記必要としている被検者に投与すること
を含む、前記方法。
(項目95)
必要としている被検者における癌の治療に対する患者コンプライアンスの増加方法であ
って、
前記必要としている被検者において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有
機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤のIC50の2~5倍である、ブフロ
メジルまたはブフロメジル塩である前記選択的有機カチオントランスポーター2(OCT
2)阻害剤の血漿レベルを達成するための有効投与量を決定すること;
オキサリプラチン及びシスプラチンからなる群から選択される治療有効量のプラチナ薬剤
を前記必要としている被検者に投与すること;ならびに
前記必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させるのに有効な投与
量で、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2
(OCT2)阻害剤を前記必要としている被検者に投与し、それによって、前記被検者が
少なくとも100mg/m2の蓄積投与量で治療を完了すること
を含む、前記方法。
(項目96)
前記選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤の血漿レベルを達成す
るための有効投与量を決定するステップが、予備投与量の前記選択的有機カチオントラン
スポーター2(OCT2)阻害剤を投与することによって行われる、項目93~95のい
ずれか1項に記載の方法。
(項目97)
前記選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤の血漿レベルを達成す
るための有効投与量を決定するステップが、被検者特性に基づく参照データチャートによ
って決定される、項目92~95のいずれか1項に記載の方法。
(項目98)
オキサリプラチンであるプラチナ薬剤との併用のための、必要としている被検者におけ
る癌の治療に用いるための選択的OCT2阻害剤。
(項目99)
プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させることができる投与量での投与のための、項目98
に記載の選択的OCT2阻害剤。
(項目100)
シスプラチンであるプラチナ薬剤との併用のための、必要としている被検者における癌
の治療に用いるための選択的OCT2阻害剤。
(項目101)
プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させることができる投与量での投与のための、項目10
0に記載の選択的OCT2阻害剤。
(項目102)
オキサリプラチンまたはシスプラチンであるプラチナ薬剤との併用のための、必要とし
ている被検者における癌の治療に用いるためのブフロメジルまたはブフロメジル塩である
選択的OCT2阻害剤。
(項目103)
プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させることができる投与量での投与のための、項目10
2に記載の選択的OCT2阻害剤。
(項目104)
癌の治療のための医薬品の調製における選択的OCT2阻害剤の使用であって、前記医
薬品がオキサリプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである、前記使用。
(項目105)
前記選択的OCT2阻害剤が、プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させることができる投与
量での投与のためのものである、項目104に記載の使用。
(項目106)
前記癌の治療のための医薬品の調製における選択的OCT2阻害剤の使用であって、前
記医薬品がシスプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである、前記使用。
(項目107)
前記選択的OCT2阻害剤が、プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させることができる投与
量での投与のためのものである、項目106に記載の使用。
(項目108)
前記癌の治療のための医薬品の調製におけるブフロメジルまたはブフロメジル塩である
選択的OCT2阻害剤の使用であって、前記医薬品がオキサリプラチンまたはシスプラチ
ンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである、前記使用。
(項目109)
前記OCT2阻害剤が、プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させることができる投与量での
投与のためのものである、項目108に記載の使用。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1】
図1A~Eは、(
図1A)2時間の静脈内点滴後のオキサリプラチン[6];(
図1B)静脈内注入後のミコナゾール[7];(
図1C)300mg錠剤q12h(1)または600mg徐放性錠剤qd(2)の経口投与後のブフロメジル[9];(
図1D)150mg qdの経口投与後のエルロチニブ[10];及び(
図1E)経口投与後のドルテグラビル[15]の臨床的血漿曝露を示す。
【
図2】MDCK細胞中で発現した異なるトランスポーターによるオキサリプラチンの輸送を示す。(左:タンパク質不含HBSS中オキサリプラチン20μM;右:100%ヒト血清中オキサリプラチン20μM)
【
図3】異なるトランスポーターによるヒト血清または同様のアッセイバッファー中でのオキサリプラチン輸送に対するブフロメジル(
図3A)、エルロチニブ(
図3B)、ミコナゾール(
図3C)、及びドルテグラビル(
図3D)の阻害を示す。
【
図4】ブフロメジル(
図4A)及びエルロチニブ(
図4B)による、OCT2、またはOCT2及びMATE1を共発現させた細胞におけるオキサリプラチンの細胞内含有量の阻害を示す。
【
図5】ブフロメジルがOCT2発現細胞において100μMオキサリプラチンの細胞傷害性を投与量依存的に減少させたことを示す。
【
図6】3μm及び6μMのブフロメジル(
図6A、
図6B)、ならびに10μMのドルテグラビル(DTG)(
図6C、
図6D)は、OCT2発現細胞においてオキサリプラチン(OXA)誘発性細胞傷害性を顕著に減少させたが、6μMのエルロチニブ(
図6B)及び6μMのシメチジン(
図6B)は減少させなかったことを示す。
【
図7】ブフロメジルが、OCT2、MATE1及びMATE2Kを発現するMDCK細胞において、シスプラチンの1mMからの細胞傷害性を有意に減少させたことを示す(
*はp<0.05を示す)。
【
図8】6uMのエルロチニブ(
図8A)は、HT-29細胞においてオキサリプラチンの抗腫瘍効果を大幅に減少させたが(約8×)、3μM及び6μMのブフロメジル(
図8A)、3uM、6uM及び9uMのドルテグラビル(
図8B)は、オキサリプラチンの効力に影響を及ぼさなかったことを示す。
【
図9】3μMのエルロチニブがHT-29細胞においてオキサリプラチンの抗腫瘍効果を有意に減少させたことを示す(p<0.05)。一方で、6μMのブフロメジル及び6μMシメチジンはオキサリプラチンの抗腫瘍活性に影響を及ぼさなかった。
【
図10】エルロチニブはHepG2細胞においてオキサリプラチンの抗腫瘍効果を大幅に減少させたが(約10×)、ブフロメジルもシメチジンも減少させなかったことを示す。
【
図11】HT-29細胞におけるシスプラチンの抗腫瘍効果が、ブフロメジル、エルロチニブ、またはシメチジンでの併用処理の影響を受けなかったことを示す。
【
図12】6uMのブフロメジル(BFMD)(
図12A)ならびに3uM、6μM及び9μMのドルテグラビル(DTG)(
図12B)が、HT-29細胞において5-FUの抗腫瘍効果に影響を及ぼさなかったことを示す。
【
図13】6μMのブフロメジルがHT-29細胞においてゲムシタビンの抗腫瘍効果に影響を及ぼさなかったことを示す。
【
図14】選択的OCT2阻害剤による、腎近位尿細管細胞または背根神経節細胞内へのプラチナ薬剤の取込みの阻害、及びプラチナ薬剤を取り込むのに主にOCT2以外の機構/トランスポーターに依存する癌細胞内へのプラチナ薬剤の取込みの最小限の阻害を示す。様々な細胞におけるプラチナ誘導体の取込みへの、CTR1のようないくつかのトランスポーターの寄与はまだ実証されていない。癌細胞上のOCT2の存在は腫瘍の性質に応じて異なるであろうが、OCT1及び/またはOCT3の存在は細胞内へのプラチナ薬剤の取込みを保証することになる。
【
図15】メトホルミンが基質の場合には、ブフロメジルはOCT2とMATE1との間で選択性を示さなかったが(
図15A)、シスプラチンまたはオキサリプラチンのいずれかを基質として用いた場合には、ブフロメジルはOCT2に対して大きな選択性を示し、さらに、オキサリプラチンまたはシスプラチンを基質として用いることの間でそのIC
50に差はなかったか、最小限であった(
図15B)ことを示す。
【
図16】流出トランスポーターMATE1及びMATE2Kが、MDCK細胞においてオキサリプラチン細胞傷害性の重大度及び効力の減少に有効であったことを示す。
【
図17】異なる投与量及び投与経路の下での、balb/cマウスにおけるブフロメジル(
図17A)及びドルテグラビル(
図17B)の血漿レベルを示す。
【
図18】確立されたマウスOXAIPNモデルにおける末梢神経障害へのブフロメジルの影響を評価する1つの研究デザインを示す。
【
図19】背根神経節(DRG)サンプルの形態計測評価に基づいて、ブフロメジルが、8サイクルの3.5mg/kgのオキサリプラチンで治療したマウスにおけるDRG神経細胞損傷の予防に有効であったことを示す。
【
図20】溶媒対照(左上)、オキサリプラチン(左下)、ブフロメジル(右上)及びオキサリプラチン+ブフロメジル(右下)での8サイクルの治療後の、マウスの組織病理学的サンプルからのDRG神経細胞の形態を示す。
【
図21】坐骨神経サンプルの形態計測評価に基づいて、ブフロメジルが、8サイクルの3.5mg/kgのオキサリプラチンで治療したマウスにおける坐骨神経損傷の軽減に有効であったことを示す。
【
図22】ブフロメジルが、8サイクルのオキサリプラチン治療後のマウスにおける機械的アロディニアの予防に有効であったことを示す。
【
図23】ブフロメジルが、3及び8サイクルのオキサリプラチン治療後のマウスにおける低温アロディニアの軽減に有効であったことを示す。
【
図24】尾神経活動電位の電気生理学的評価に基づいて、ブフロメジルが、8サイクルのオキサリプラチン治療後のマウスにおける末梢神経毒性の減少に有効であったことを示す。
【
図25】尾神経伝導速度(NCV)の電気生理学的評価に基づいて、ブフロメジルが、8サイクルのオキサリプラチン治療後のマウスにおける末梢神経障害の減少に有効であることを示す。
【
図26】8サイクル目のオキサリプラチン(3.5mg/kg)治療の15分後のマウスにおけるブフロメジル及びオキサリプラチンの血漿レベルを示す。
【
図27】1回のオキサリプラチン投与後の末梢神経毒性の減少に対するドルテグラビル及びクロフェネシン(chlophenesin)カルバメートの影響についての研究のデザインを示す。
【
図28】機械的疼痛閾値の測定に基づいて、ドルテグラビル(
図28A)は1回のオキサリプラチン治療後のマウスにおける機械的過敏症の軽減に有効であったが、クロフェネシン(chlophenesin)(
図28B)は有効でなかったことを示す。
【
図29】ドルテグラビルが1回のオキサリプラチン治療後のマウスにおける低温過敏症の軽減に有効であったことを示す。
【
図30】ブフロメジル(80mg/kg po(経口))が、8サイクルのオキサリプラチン治療後のマウス(n=3/群)における機械的(
図30A)及び低温(
図30B)アロディニアの減少に有効であったことを示す。
【
図31】ブフロメジル(80mg/kg po)が、8サイクルのオキサリプラチン治療後のマウス(n=3/群)における尾NCVによって評価した神経損傷の減少に有効であったことを示す。
【
図32】ブフロメジルは、DRG(
図32A)及び腎臓(
図32C)においてプラチナ蓄積の減少に有効であったが、坐骨神経(
図32B)においては有効でなかったことを示す。
【
図33】プラチナ薬剤の毒性を減少させると同時にそれ自体による有害作用を最小限とするための、選択的OCT2阻害剤の望ましい血漿レベルプロファイルを示す。
【
図34】同じブフロメジル治療(150mg/時間の一定速度で3時間の静脈内点滴)の下での、異なる薬物クリアランス速度が報告された2つの異なる被検者群におけるシミュレーションによるブフロメジル血漿レベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下の説明は、当業者が様々な実施形態を作製及び使用することを可能にするために提
供する。具体的な装置、技術、及び用途の記載は例としてのみ提供する。本明細書に記載
の実施例への様々な変更が当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義した一般原理
は、様々な実施形態の精神及び範囲から逸脱することなく他の実施例及び用途に適用され
得る。したがって、様々な実施形態は、本明細書に記載して示した例に限定することを意
図しておらず、請求項に合致する範囲が認められるべきである。
【0074】
特許出願及び刊行物をはじめとする本明細書で引用するすべての参考文献は、その全体
を参照によりここに援用する。
【0075】
プラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法
本開示の一態様において、OCT2を発現する細胞にプラチナ薬剤を与えるステップ;
及び細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させるOCT2阻害剤を与えるス
テップを含み、OCT2阻害剤が細胞におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させる、O
CT2を発現する細胞におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供する。
【0076】
別の態様において、本開示は、OCT2を発現する細胞を有する被検者にプラチナ薬剤
を与えるステップ、及び被検者にOCT2阻害剤を与えるステップを含み、OCT2阻害
剤がOCT2を発現する細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させ、それに
よって被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させる、被検者におけるプラチナ薬
剤誘発性毒性の減少方法を提供する。別の態様において、本開示は、OCT2を発現する
細胞を有する被検者にOCT2阻害剤を与えるステップを含み、被検者がプラチナ薬剤を
与えられているか与えられることになり、OCT2阻害剤がOCT2を発現する細胞内へ
のOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させ、それによって被検者におけるプラチナ薬
剤誘発性毒性を減少させる、被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供す
る。いくつかの実施形態において、被検者はヒトである。他の実施形態において、被検者
は非ヒト動物である。
【0077】
別の態様において、本開示は、オキサリプラチンであるプラチナ薬剤を必要としている
被検者に投与すること;及び有効投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OC
T2)阻害剤を必要としている被検者に投与することを含み、必要としている被検者が癌
を有する、必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性神経毒性の減少方法を提供
する。いくつかの実施形態において、選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2
)阻害剤はブフロメジルでない。いくつかの実施形態において、この方法は、癌がOCT
1またはOCT3の少なくとも一方を発現するかどうか判定するステップをさらに含む。
いくつかの実施形態において、癌はOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現する
。
【0078】
別の態様において、本開示は、シスプラチンであるプラチナ薬剤を必要としている被検
者に投与すること;及び有効投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2
)阻害剤を必要としている被検者に投与することを含み、毒性が腎毒性、耳毒性または末
梢神経障害であり、必要としている被検者が癌を有する、必要としている被検者における
プラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供する。いくつかの実施形態において、選択的有
機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤はブフロメジルでない。いくつかの実
施形態において、この方法は、癌がOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現する
かどうか判定するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、癌はOCT1ま
たはOCT3の少なくとも一方を発現する。
【0079】
別の態様において、本開示は、必要としている被検者において、ブフロメジルまたはブ
フロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤のIC5
0の2~5倍である、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントラ
ンスポーター2(OCT2)阻害剤の血漿レベルを達成するための有効投与量を決定する
こと;オキサリプラチン及びシスプラチンからなる群から選択されるプラチナ薬剤を必要
としている被検者に投与すること;ならびに有効投与量のブフロメジルまたはブフロメジ
ル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としている
被検者に投与することを含み、毒性が腎毒性、耳毒性または末梢神経障害であり、必要と
している被検者が癌を有する、必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の
減少方法を提供する。いくつかの実施形態において、この方法は、癌がOCT1またはO
CT3の少なくとも一方を発現するかどうか判定するステップをさらに含む。いくつかの
実施形態において、癌はOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現する。
【0080】
別の態様において、本開示は、ブフロメジル、ブフロメジル塩、ドルテグラビル、及び
ドルテグラビル塩からなる群から選択される選択的有機カチオントランスポーター2(O
CT2)阻害剤を必要としている被検者に投与することを含み、必要としている被検者が
、有機カチオントランスポーター1(OCT1)または有機カチオントランスポーター3
(OCT3)のうち少なくとも一方を発現する癌を有し、必要としている被検者が、プラ
チナ薬剤、例えばシスプラチンまたはオキサリプラチンなどを投与されているか投与され
ることになる、必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供
する。いくつかの実施形態において、この方法は、癌がOCT1またはOCT3の少なく
とも一方を発現するかどうか判定するステップをさらに含む。いくつかの実施形態におい
て、プラチナ薬剤はオキサリプラチンであり、プラチナ薬剤誘発性毒性は神経毒性である
。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はシスプラチンであり、プラチナ薬剤誘発
性毒性は神経毒性、腎毒性または耳毒性である。
【0081】
いくつかの実施形態において、投与されるプラチナ薬剤の治療有効量は、被検者におい
てプラチナ薬剤誘発性毒性を引き起こすと知られている。いくつかの実施形態において、
選択的OCT2阻害剤の投与量は、必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒
性を、選択的OCT2阻害剤の投与がない以外は同じ治療プロトコールで治療される被検
者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性と比較して、少なくとも10%減少させるのに有効で
ある。
【0082】
プラチナ薬剤誘発性毒性
本開示の方法はプラチナ薬剤誘発性毒性の減少をもたらす。プラチナ薬剤誘発性毒性は
プラチナ薬剤での癌の治療の副作用である。被検者に投与した場合、プラチナ薬剤は典型
的に腫瘍細胞において治療的抗癌活性を有するが、健康な細胞に対して望ましくない毒性
作用を有し得る。この望ましくないプラチナ薬剤誘発性毒性は、少なくとも部分的には、
OCT2を介した健康な細胞内へのプラチナ薬剤の輸送によって媒介される。
【0083】
細胞におけるプラチナ薬剤誘発性毒性は、一般に細胞に対する細胞傷害作用の形態をと
る。細胞におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少は、当業者にとって公知の任意の関連す
る技術またはアッセイによって測定され得る。例えば、細胞における毒性は、細胞傷害性
化合物の一般的な効果である細胞膜完全性の低下を評価することによってアッセイされ得
る。そのようなアッセイの1つのLDHアッセイは、通常であれば細胞内に隔離されてい
る乳酸脱水素酵素の細胞からの放出を測定する。細胞におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の
減少は、関連するアッセイによって測定して任意の量の減少が生じる場合に生じる。例え
ば、細胞における毒性は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少な
くとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも7
0%、少なくとも80%、または少なくとも90%減少され得る。
【0084】
被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性は被検者の異なる生理系における毒性として発
現し得る。被検者における毒性は、被検者にOCT2阻害剤及びプラチナ薬剤が与えられ
る期間の前及びその全体にわたって、被検者の全身健康状態のパラメータを評価すること
によって監視することができる。こうした全身健康状態のパラメータとしては、例えば、
体重、脱毛、歩行、皮膚状態、ならびに食欲の喪失及び他の胃腸の問題が挙げられ得る。
毒性は、同じプラチナ薬剤治療を受けている被検者群の中の毒性の有病率または頻度を測
定することによっても評価され得る。毒性の減少は、経時的にそのような被検者群におけ
る毒性の有病率または頻度を比較することによって評価され得る。
【0085】
プラチナ薬剤誘発性毒性は、腎毒性、神経毒性、血液毒性、または耳毒性として発現し
得る。腎毒性は、クレアチニンクリアランス、血清クレアチニンレベル、または血中尿素
窒素レベルを測定する血液検査で監視され得る。クレアチニンクリアランスの減少、血清
クレアチニンレベルの増加、及び血中尿素窒素レベルの増加が腎機能の不良を示す。神経
毒性は、神経毒性症状、例えば四肢の弱さまたは麻痺、記憶、視力、または知性の喪失、
制御不能な強迫的行動、妄想、頭痛、認知的及び行動的問題ならびに性機能不全などを評
価することによって監視され得る。プラチナ薬剤誘発性毒性が神経毒性であるいくつかの
実施形態において、神経毒性は末梢神経障害である。いくつかの実施形態において、末梢
神経障害はグレード3またはグレード4末梢神経障害である。耳毒性としては、高周波数
聴力損失及び耳鳴によって特徴づけられる蝸牛毒性が挙げられ得る。耳毒性は聴性脳幹反
応を測定することによって分析され得る。化学療法誘発性血液毒性は複数の機序が関与す
る複合症状である。しかし、当該技術分野において、神経毒性の減少は血液毒性も減少し
得ることが知られている。例えば、プラチナ誘導体での化学療法誘発性神経損傷(神経毒
性)は、骨髄における危険な病変を発生させ、造血再生を損なうことが知られている。し
たがって、神経細胞を保護する薬剤を用いて、造血細胞を損傷から間接的に防護すること
が可能である。
【0086】
被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少は、関連するアッセイまたは試験によっ
て測定して任意の量の減少が生じる場合に生じる。いくつかの実施形態において、一群の
被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の有病率は、OCT2阻害剤を与えられていない
一群の被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の有病率と比較して、少なくとも10%、
少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%減少
される。
【0087】
プラチナ薬剤誘発性神経毒性
本開示の方法はプラチナ薬剤誘発性神経毒性の減少をもたらす。本開示の方法は、プラ
チナ薬剤誘発性神経毒性の発症の遅延をもたらす。いくつかの実施形態において、神経毒
性はグレード0(正常)、1、2、3、または4である。いくつかの実施形態において、
遅延はグレード3以上の発症のものである。いくつかの実施形態において、遅延はグレー
ド2以上の発症のものである。いくつかの実施形態において、神経毒性は運動ニューロン
または感覚ニューロンへの損傷である。いくつかの実施形態において、神経毒性は運動ニ
ューロンへの損傷である。いくつかの実施形態において、神経毒性は感覚ニューロンへの
損傷である。いくつかの実施形態において、損傷はDRGへのものである。
【0088】
プラチナ薬剤誘発性毒性が神経毒性であるいくつかの実施形態において、神経毒性は末
梢神経毒性である。いくつかの実施形態において、末梢神経毒性はグレード3またはグレ
ード4末梢神経障害である。いくつかの実施形態において、末梢神経毒性はグレード2末
梢神経障害である。
【0089】
神経毒性は、下表に示すNCI-CTCAE(米国国立癌研究所-有害事象共通用語規準
)によって評価することができる。いくつかの実施形態において、神経毒性は、米国国立
癌研究所-共通毒性規準(NCI-CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所-共通毒
性規準(NCI-CTC)運動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び
欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL-CIP
N20)から選択される方法によって評価される。
【表A-1】
【表A-2】
【0090】
末梢神経障害において、症状は、麻痺もしくはひりひりする感覚から刺すような感覚(
錯感覚)、または筋力低下に及び得る。体の部位が異常に敏感になり、その結果、接触の
強度が誇張されるか歪められて感じる場合がある(アロディニア)。そのような場合では
、通常であれば痛みを引き起さない刺激に反応して痛みが生じ得る。重度の症状としては
、灼熱痛(特に夜)、筋肉消耗、麻痺、または臓器もしくは腺機能障害が挙げられ得る。
内臓に伸びる神経への損傷により、消化、発汗、性機能、及び排尿が損なわれ得る。最も
極端な場合では、呼吸が困難となり得るか、または臓器不全が生じ得る。
【0091】
いくつかの実施形態において、神経毒性は、感覚神経活動電位、感覚神経伝導速度、冷
痛閾値、温痛閾値、機械的疼痛閾値、冷知覚閾値、温知覚閾値、機械的触覚閾値、振動知
覚閾値、電流知覚閾値、刺針感度、深部腱反射及び握力から選択される測定値によって評
価される。これらの方法は、Griffith, K. et. al., Suppo
rt Care Cancer 2014, 22(5): 1161-1169及びC
hong, PS. and Cros, DP, Technology liter
ature review: quantitative sensory testi
ng, Muscle & nerve [0148-639X] Chong, Pe
ter Siao Tick yr:2004 vol:29 issue:5 pg:
734-747に記載されている。
【0092】
プラチナ薬剤誘発性毒性が神経毒性であるいくつかの実施形態において、神経毒性は慢
性末梢神経障害である。ある場合において、慢性末梢神経障害では、症状は約2、3、4
、6、7、8、9、10、11または12か月以上の間生じるであろう。いくつかの実施
形態において、神経毒性は慢性神経毒性である。いくつかの実施形態において、神経毒性
は急性症候群一過性神経毒性である。いくつかの実施形態において、神経毒性は最初の治
療の1時間~7日後に生じる。いくつかの実施形態において、神経毒性は最初の治療の1
、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17
、18、19、20、21、22、23時間後に生じる。いくつかの実施形態において、
神経毒性は最初の治療の1、2、3、4、5、6、または7日後に生じる。いくつかの実
施形態において、神経毒性は、被検者が少なくとも500mg/m2の蓄積投与量で治療
を完了した後に生じる。いくつかの実施形態において、神経毒性は、被検者が少なくとも
500、600、700、または800mg/m2の蓄積投与量で治療を完了した後に生
じる。
【0093】
末梢神経障害は軸索への損傷に起因するものもあれば、軸索を被覆及び絶縁する脂肪タ
ンパク質である髄鞘への損傷に起因するものもある。末梢神経障害は軸索損傷及び脱髄の
両方の組合せによっても引き起こされ得る。電気診断検査は、関与している損傷の種類を
医療提供者が判定するのに役立ち得る。
【0094】
いくつかの実施形態において、神経毒性は背根神経節への損傷である。背根神経節(ま
たは脊髄神経節)(後根神経節としても知られる)は、脊髄神経の後根における神経細胞
体のクラスター(神経節)である。背根神経節は感覚(求心性)ニューロンの細胞体を含
有する。
【0095】
末梢神経障害の形態
オキサリプラチンは、「低温誘発性の末梢部または口周囲の錯感覚及び咽喉頭異常感覚
によって特徴づけられるニューロミオトニア様急性一過性症候群、ならびにほとんどの場
合、靴下手袋型分布の純粋な感覚軸索神経障害である慢性形態という末梢神経障害の2つ
の臨床的に異なる形態を誘発する。」(Argyriou, A., et. al.,
Cancer January 2013, 438-444)。シスプラチンは主に
慢性末梢神経障害を誘発する。慢性末梢神経障害の形態はオキサリプラチン及びシスプラ
チンで類似している。
【0096】
急性OXAIPNは、オキサリプラチンの点滴の直後に生じる一過性末梢神経過剰興奮
症候群である。この形態の神経障害は一般に低い全蓄積投与量で生じ、低温刺激への曝露
によって引き起こされ得るか、または悪化し得る。患者は一般に手及び足、ならびに喉頭
及び顎の錯感覚及び異常感覚を経験する。これらの症状は曝露から数時間以内に生じる傾
向にあり、時間の経過で、特にその後数時間及び数日の間に可逆的である。
【0097】
慢性OXAIPNは主に四肢において生じ、シスプラチン誘発性神経障害のものに類似
した症状を伴う。慢性OXAIPNの発症は蓄積オキサリプラチン投与量と相関があると
報告されている。数サイクルのオキサリプラチンベースの治療の後で、感覚の喪失、異常
感覚、さらには機能障害までもが進行的に発症し得る。これらの作用はたいてい時間の経
過で可逆的であるが、数か月継続する場合もあり、これらの苦痛な症状は化学療法スケジ
ュールを妨害することが多いので、オキサリプラチンベースの治療の継続に大きな影響を
及ぼしている。
【0098】
プラチナ薬剤の提供
本開示の方法のいくつかの態様において、OCT2を発現する細胞にプラチナ薬剤を与
えるか、またはOCT2を発現する細胞を含む被検者にプラチナ薬剤を与える。プラチナ
薬剤は、プラチナ(II)または(IV)中心、2つの置換または非置換シス-アミン及
び2つの脱離基を含有する任意の化合物であり得る。いくつかの実施形態において、プラ
チナ薬剤はオキサリプラチンである。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はシス
プラチンである。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はテトラプラチンである。
【0099】
OCT2を発現する細胞(複数可)としては、例えば、腎細胞、ニューロン細胞、感覚
ニューロン細胞、耳細胞、または血液細胞が挙げられ得る。細胞におけるOCT2発現は
、細胞中のoct2遺伝子の転写を測定するアッセイ、細胞中のOCT2タンパク質の存
在を測定するアッセイ、及び様々な細胞型についてのそのような測定値を含む公開された
データの分析をはじめとする、当業者が有用であると考える任意の方法によって評価され
得る。
【0100】
プラチナ薬剤は、研究室または医療現場において細胞または被検者に薬物を投与するた
めに一般に行われる任意の方法によって、OCT2を発現する細胞に、またはOCT2を
発現する細胞を含む被検者に与えられ得る。例えば、細胞はプラチナ薬剤と共にインキュ
ベートされ得るか、または被検者に薬物を投与するために用いられるのと同じ方法によっ
て細胞にプラチナ薬剤が与えられ得る。プラチナ薬剤は、例えば、経腸、静脈内、筋肉内
、腹腔内、経口、または腸管外で被検者に与えられ得る。
【0101】
いくつかの実施形態において、1回の治療期間の間に被検者に与えられるプラチナ薬剤
の量は、標準的な臨床診療の下で与えられるものよりも多い。例えば、標準的な臨床診療
の下で与えられるオキサリプラチンの典型的な投与量は、治療サイクル当たり60~13
0mg/m2である。いくつかの実施形態において、治療の全過程にわたって被検者に与
えられるプラチナ薬剤の蓄積量は、標準的な臨床診療の下で与えられるものよりも多い。
例えば、標準的な臨床診療の下での治療の全過程にわたるオキサリパラチン(oxali
palatin)の典型的な蓄積投与量は、780~850mg/m2、または稀な場合
では、>1000mg/m2である。いくつかの実施形態において、標準的な臨床診療下
よりも高い頻度でプラチナ薬剤を与える。例えば、標準的な臨床診療の下で、典型的には
、6か月にわたる8~12サイクルの間、2または3週間ごとにオキサリプラチンを被検
者に与える。
【0102】
OCT2阻害剤の提供
本開示の方法のいくつかの態様において、OCT2を発現する細胞内へのOCT2媒介
プラチナ薬剤取込みを減少させるOCT2阻害剤を提供する。OCT2を発現する細胞内
へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みは、当業者が適切だと考える任意の方法によって測
定され得る。例えば、下記の実施例1及び2に記載の方法が用いられ得る。いくつかの実
施形態において、OCT2を発現する細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みは、O
CT2阻害剤の不在下での細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みと比較して、少な
くとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なく
とも90%阻害される。
【0103】
本開示の方法のいくつかの態様において、被検者にOCT2阻害剤を与える。いくつか
の実施形態において、OCT2阻害剤はブフロメジルまたはブフロメジル塩である。他の
実施形態において、OCT2阻害剤はイミダゾールを含む。いくつかの実施形態において
、OCT2阻害剤はミコナゾールまたはその塩である。いくつかの実施形態において、O
CT2阻害剤はドルテグラビルまたはその塩である。
【0104】
OCT2阻害剤は、例えば、経腸、静脈内、筋肉内、腹腔内、経口、または腸管外で被
検者に与えられ得る。与えられるOCT2阻害剤の量は様々であるが、典型的にはプラチ
ナ薬剤誘発性毒性を減少させるのに過不足のないものである。いくつかの実施形態におい
て、被検者に与えられるOCT2阻害剤の量は治療有効投与量未満である。OCT2阻害
剤に関して、治療有効投与量は、プラチナ薬剤誘発性毒性の減少以外の所望の治療的また
は予防的結果を達成するのに有効な投与量である。例えば、ブフロメジルは典型的には跛
行または末梢動脈疾患の症状を治療するために用いられる。したがって、例えば、いくつ
かの実施形態において、被検者に与えられるOCT2阻害剤の量は、跛行の治療に対して
治療的に有効な可能性のあるものよりも少ない投与量である。いくつかの実施形態におい
て、被検者に与えられるOCT2阻害剤の量は1日当たり10mg~2000mgである
。OCT2阻害剤がブフロメジルまたはブフロメジル塩であるいくつかの実施形態におい
て、被検者に与えられるブフロメジルまたはブフロメジル塩の量は1日当たり150mg
~900mgである。OCT2阻害剤がミコナゾールまたはミコナゾール塩であるいくつ
かの実施形態において、被検者に与えられるミコナゾールまたはミコナゾール塩の量は1
日当たり最大2000mgである。OCT2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビ
ル塩であるいくつかの実施形態において、被検者に与えられるドルテグラビルまたはドル
テグラビル塩の量は1日当たり10mg~200mgである。
【0105】
プラチナ薬剤及びOCT2阻害剤は、任意の順序で、または任意の量でオーバーラップ
させて被検者に与えられ得る。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤及びOCT2
阻害剤を同時に与える。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤をプラチナ薬剤の
前に被検者に与える。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤をプラチナ薬剤の後
で被検者に与える。薬物動態は、異なる投与手順及び/または異なる製剤を用いて調整す
ることができる。例えば、プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させる目的で、プラチナ薬剤点
滴の間に、ミコナゾール、ドルテグラビル、及びブフロメジルをはじめとするOCT2阻
害剤の望ましい血漿濃度を維持するために、点滴ポンプまたは類似の方法を用いるゆっく
りとした静脈内点滴を用いることができる。
【0106】
OCT2阻害剤がイミダゾールを含む本開示の実施形態において、OCT2阻害剤は特
定の特徴及び機能的性質を有し得る。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤は、
少なくとも1のCmax,u/IC50またはCmax/IC50,appを有する。い
くつかの実施形態において、OCT2阻害剤は、少なくとも3のCmax,u/IC50
またはCmax/IC50,appを有する。Cmax及びCmax,uは、それぞれ薬
物の最大全血漿濃度及び最大遊離血漿濃度を表す。IC50は、タンパク質不含アッセイ
バッファー中でインビトロにて評価した50%阻害濃度を表す。IC50,appは、血
清またはアルブミンなどの血清結合性タンパク質(複数可)を含有するアッセイバッファ
ー中でインビトロにて評価した50%阻害濃度を表す。
【0107】
いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はその臨床濃度では細胞にとって毒性で
ない。細胞へのOCT2阻害剤の毒性は、当業者にとって公知の任意の方法によって測定
可能な、細胞に対する任意の細胞傷害作用のことをいう。いくつかの実施形態において、
OCT2阻害剤は、OCT2阻害剤の不在下における臨床濃度のプラチナ薬剤の抗癌活性
と比較して、20%を超えて臨床濃度のプラチナ薬剤の抗癌活性を減少させない。抗癌活
性は、癌細胞に対するプラチナ薬剤の化学療法効果のことをいう。プラチナ薬剤は典型的
に癌細胞DNA中で架橋を生じさせ、アポトーシス及び細胞成長阻害につながる。抗癌活
性は、例えば、癌細胞に対する細胞傷害性アッセイによって測定され得る。
【0108】
いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤は、OCT2阻害剤の不在下におけるO
CT2以外のトランスポーターを介した臨床濃度のプラチナ薬剤の取込みと比較して、2
0%を超えてOCT2以外のトランスポーターを介した細胞内への臨床濃度のプラチナ薬
剤の取込みを減少させない。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤は、OCT2
阻害剤の不在下における臨床濃度のプラチナ薬剤の流出と比較して、20%を超えて臨床
濃度のプラチナ薬剤の流出を減少させない。OCT2以外のトランスポーターを介した細
胞へのプラチナ薬剤の取込み及びプラチナ薬剤の流出は、例えば実施例3及び4に記載の
インビトロトランスポーターアッセイをはじめとする、当業者が好適だと考える任意のア
ッセイによって測定され得る。「臨床濃度」は、薬物が臨床的に意味のある範囲で投与さ
れる場合の薬物の血漿または血清濃度のことをいい、薬物の最大耐量(MTD)未満であ
る。
【0109】
いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤は2時間を超える平均半減期を有する。
半減期は、物質、例えば薬物または他の分子などがその薬理学的、生理学的、または放射
線学的活性の半分を失うのにかかる時間のことをいう。半減期は、物質の血漿濃度が半分
まで低下するのにかかる時間も表す。
【0110】
癌の治療方法及びプラチナ薬剤治療の効率の増加方法
一態様において、本開示は、癌を有する被検者に治療有効量のプラチナ薬剤を与えるス
テップ;及び被検者に有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を与えるステ
ップを含み、被検者が、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトラン
スポーターを発現する癌細胞を含み、それによって被検者の癌を治療する、被検者におけ
る癌の治療方法を提供する。いくつかの実施形態において、癌は、オキサリプラチン及び
/またはシスプラチンなどのプラチナ薬剤をはじめとする、標準的な治療プロトコールに
おけるプラチナ薬剤での治療が可能である/プラチナ薬剤で治療されることが多いと当業
者に知られている種類の癌である。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はブフ
ロメジルまたはブフロメジル塩である。他の実施形態において、OCT2阻害剤はイミダ
ゾールを含む。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はミコナゾールまたはその
塩である。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はドルテグラビルまたはその塩
である。いくつかの実施形態において、被検者はヒトである。他の実施形態において、被
検者は非ヒト動物である。いくつかの実施形態において、被検者は癌を有し、プラチナ薬
剤、例えばオキサリプラチンまたはシスプラチンなどの投与を含む癌治療を受けているか
、または受けることになる。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はブフロメジ
ルまたはブフロメジル塩でない。
【0111】
別の態様において、本開示は、治療有効量のオキサリプラチンであるプラチナ薬剤を必
要としている被検者に投与すること;及び有効投与量の選択的有機カチオントランスポー
ター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与することを含む、必要としてい
る被検者における癌の治療方法を提供する。いくつかの実施形態において、選択的有機カ
チオントランスポーター2(OCT2)阻害剤はブフロメジルでない。いくつかの実施形
態において、この方法は、癌がOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現するかど
うか判定するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、癌はOCT1または
OCT3の少なくとも一方を発現する。
【0112】
別の態様において、本開示は、治療有効量のシスプラチンであるプラチナ薬剤を必要と
している被検者に投与すること;及び有効投与量の選択的有機カチオントランスポーター
2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与することを含む、必要としている被
検者における癌の治療方法を提供する。いくつかの実施形態において、選択的有機カチオ
ントランスポーター2(OCT2)阻害剤はブフロメジルでない。いくつかの実施形態に
おいて、この方法は、癌がOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現するかどうか
判定するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、癌はOCT1またはOC
T3の少なくとも一方を発現する。
【0113】
別の態様において、本開示は、必要としている被検者において、ブフロメジルまたはブ
フロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤のIC5
0の2~5倍である、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントラ
ンスポーター2(OCT2)阻害剤の血漿レベルを達成するための有効投与量を決定する
こと;オキサリプラチン及びシスプラチンからなる群から選択される治療有効量のプラチ
ナ薬剤を必要としている被検者に投与すること;ならびに有効投与量のブフロメジルまた
はブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必
要としている被検者に投与することを含む、必要としている被検者における癌の治療方法
を提供する。いくつかの実施形態において、この方法は、癌がOCT1またはOCT3の
少なくとも一方を発現するかどうか判定するステップをさらに含む。いくつかの実施形態
において、癌はOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現する。
【0114】
癌の治療は、臨床病理の経過中の治療されている被検者または細胞の自然な経過を変化
させようとする試みにおける臨床的介入のことをいう。治療の望ましい効果としては、疾
患進行速度の減少、病状の改善または緩和、及び寛解または予後の改善が挙げられるが、
これらに限定されない。例えば、限定はしないが、癌細胞の増殖の減少(もしくは破壊)
、疾患に起因する症状の減少、疾患を患っているものの生活の質の増加、疾患を治療する
のに必要とされる他の医薬品の投与量の減少、及び/または被検者の生存期間の延長をは
じめとして、癌に関連する1つ以上の症状が緩和または解消された場合に、個体の「治療
」が成功する。
【0115】
別の態様において、本開示は、癌を有する被検者に治療有効量のプラチナ薬剤を与える
ステップ;及び被検者にOCT2阻害剤を与えるステップを含み、被検者が、OCT2阻
害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現する癌細胞を含み
、これによってプラチナ薬剤治療の効力を増加させる、被検者におけるプラチナ薬剤治療
の効力の増加方法を提供する。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はブフロメ
ジルまたはブフロメジル塩である。他の実施形態において、OCT2阻害剤はイミダゾー
ルを含む。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はミコナゾールまたはその塩で
ある。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はドルテグラビルまたはその塩であ
る。
【0116】
プラチナ薬剤治療の効力は、被検者において所望の化学療法効果をもたらすプラチナ薬
剤治療の能力のことをいう。効力は典型的に、患者が疾患を抱えて生きているが悪化はし
ていない治療の間または後の時間の長さである無憎悪生存期間(PFS)によって、また
は診断の日もしくは疾患の治療の開始のいずれかからの、疾患を有する患者がまだ生存し
ている時間の長さである全生存期間(OS)によって評価される。
【0117】
プラチナ薬剤及びOCT2阻害剤は、任意の順序で、または任意の量でオーバーラップ
させて被検者に与えられ得る。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤及びOCT2
阻害剤を同時に与える。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤をプラチナ薬剤の
前に被検者に与える。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤をプラチナ薬剤の後
で被検者に与える。薬物動態は、異なる投与手順及び/または異なる製剤を用いて調整す
ることができる。例えば、被検者における癌を治療する目的で、または被検者におけるプ
ラチナ薬剤治療の効力を増加させる目的で、プラチナ薬剤点滴の間に、ミコナゾール、ド
ルテグラビル、及びブフロメジルをはじめとするOCT2阻害剤の望ましい血漿濃度を維
持するために、点滴ポンプまたは類似の方法を用いるゆっくりとした静脈内点滴を用いる
ことができる。
【0118】
OCT2阻害剤は、例えば、経腸、静脈内、筋肉内、腹腔内、経口、または腸管外で被
検者に与えられ得る。与えられるOCT2阻害剤の量は様々であるが、典型的には被検者
におけるプラチナ薬剤治療の効力を増加せるのに過不足のないものである。いくつかの実
施形態において、被検者に与えられるOCT2阻害剤の量は治療有効投与量未満である。
OCT2阻害剤に関して、治療有効投与量は、癌の治療または被検者におけるプラチナ薬
剤治療の効力の増加以外の所望の治療的または予防的結果を達成するのに有効な投与量で
ある。例えば、ブフロメジルは典型的には跛行または末梢動脈疾患の症状を治療するため
に用いられる。したがって、例えば、いくつかの実施形態において、被検者に与えられる
OCT2阻害剤の量は、跛行の治療に対して治療的に有効な可能性のあるものよりも少な
い投与量である。いくつかの実施形態において、被検者に与えられるOCT2阻害剤の量
は1日当たり10mg~2000mgである。
【0119】
プラチナ薬剤は、平面四角形プラチナ(II)または(IV)中心、2つの置換または
非置換シス-アミン及び2つの脱離基を含有する任意の化合物であり得る。いくつかの実
施形態において、プラチナ薬剤はオキサリプラチンである。いくつかの実施形態において
、プラチナ薬剤はシスプラチンである。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はテ
トラプラチンである。プラチナ薬剤は、例えば、経腸、静脈内、筋肉内、腹腔内、経口、
または腸管外で被検者に与えられ得る。
【0120】
プラチナ薬剤の治療有効量は、所望の治療的または予防的結果を達成するのに有効な薬
物の量のことをいう。典型的には、被検者にプラチナ薬剤を与えた際の所望の治療的結果
は、被検者における癌細胞への毒性である。いくつかの実施形態において、1回の治療期
間の間に被検者に与えられるプラチナ薬剤の量は、標準的な臨床診療の下で与えられるも
のよりも多い。例えば、標準的な臨床診療の下で与えられるオキサリプラチンの典型的な
投与量は、治療サイクル当たり60~130mg/m2である。いくつかの実施形態にお
いて、治療の全過程にわたって被検者に与えられるプラチナ薬剤の蓄積量は、標準的な臨
床診療の下で与えられるものよりも多い。例えば、標準的な臨床診療の下での治療の全過
程にわたるオキサリプラチンの典型的な蓄積投与量は、780~850mg/m2、また
は稀な場合では、>1000mg/m2である。いくつかの実施形態において、標準的な
臨床診療下よりも高い頻度でプラチナ薬剤を与える。例えば、標準的な臨床診療の下で、
典型的には、6か月にわたる8~12サイクルの間、2または3週間ごとにオキサリプラ
チンを被検者に与える。
【0121】
いくつかの実施形態において、この方法は、プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ
以上の追加の化学療法剤を被検者に与えるステップをさらに含む。1つ以上の追加の化学
療法剤は、例えば、5-フルオロウラシル、ベバシズマブ、カペセタビン(capece
tabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及びロイコボリンであり得る。
【0122】
癌の種類
癌を治療するための及びプラチナ薬剤治療の効力を増加させるための本開示の方法は、
プラチナ薬剤治療に反応する任意の種類の癌を有する被検者において用いられ得る。例え
ば、癌は、膵腺癌、膨大部及び膨大部周囲癌、肝細胞癌、肛門腺癌、虫垂癌、結腸癌また
は直腸癌、上皮性卵巣癌、ファロピウス管癌、原発性腹膜癌、食道または食道胃接合部癌
、胃癌、小腸癌、精巣癌、胆管癌、膵腺癌、原発不明癌、慢性リンパ性白血病/小リンパ
球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫、AIDS関連B細胞
リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、胃MALTリンパ腫、非
胃MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、菌状息肉症/セザリー症候群、脾辺縁帯リ
ンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、原発性皮膚B細胞リンパ腫、原発性皮膚未分化大細胞リン
パ腫(ALCL)、肺癌、肝癌、及び胆嚢癌であり得る。
【0123】
いくつかの実施形態において、癌は、膵腺癌、膨大部及び膨大部周囲癌、肝細胞癌、肛
門腺癌、虫垂癌、結腸癌もしくは直腸癌、上皮性卵巣癌、ファロピウス管癌、原発性腹膜
癌、食道もしくは食道胃接合部癌、胃癌、小腸癌、精巣癌、胆管癌、膵腺癌、原発不明癌
、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、成人T細胞白血病
/リンパ腫、AIDS関連B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リ
ンパ腫、胃MALTリンパ腫、非胃MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、菌状息肉
症/セザリー症候群、脾辺縁帯リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、原発性皮膚B細胞リンパ
腫、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、肺癌、肝癌、頭頸部癌、前立腺癌、
または平滑筋癌、または胆嚢癌であり得る。
【0124】
ある実施形態において、癌は結腸癌または直腸癌である。ある実施形態において、癌は
肝癌である。ある実施形態において、癌は肺癌である。ある実施形態において、癌は卵巣
癌である。ある実施形態において、癌は頭頸部癌である。ある実施形態において、癌は前
立腺癌である。ある実施形態において、癌はリンパ腫である。ある実施形態において、癌
は平滑筋癌である。
【0125】
いくつかの実施形態において、癌はオキサリプラチンで治療可能である。いくつかの実
施形態において、癌はシスプラチンで治療可能である。
【0126】
いくつかの実施形態において、癌を治療するための及びプラチナ薬剤治療の効力を増加
させるための本開示の方法は、有機カチオントランスポーター1(OCT1)または有機
カチオントランスポーター3(OCT3)のうち少なくとも一方を発現する癌を有する被
検者において用いられ得る。いくつかの実施形態において、癌はOCT1を発現する。い
くつかの実施形態において、癌はOCT3を発現する。いくつかの実施形態において、癌
はOCT1及びOCT3を発現する。
【0127】
プラチナ薬剤取込みトランスポーター
癌を治療するための及びプラチナ薬剤治療の効率を増加させるための本開示の方法にお
いて、被検者は、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポー
ターを発現する癌細胞を含む。いくつかの実施形態において、この方法は、癌細胞がOC
T2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現するかどう
か判定するステップをさらに含む。プラチナ薬剤取込みトランスポーターがOCT2阻害
剤によって阻害されるか否かは、当業者にとって公知のアッセイによって判定され得る。
癌細胞がOCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発
現するかどうか判定するステップは、様々な癌細胞型からの公開された遺伝子及び/また
はタンパク質発現データを精査することによっても行われ得る。いくつかの実施形態にお
いて、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターは、有
機カチオントランスポーター1(OCT1)取込みトランスポーターである。いくつかの
実施形態において、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポ
ーターは、有機カチオントランスポーター3(OCT3)取込みトランスポーターである
。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込
みトランスポーターは、銅トランスポーターI(CTR1)取込みトランスポーターであ
る。
【0128】
効力の予測方法
一態様において、本開示は、少なくとも1つの癌細胞を含むサンプルを取得するステッ
プ;及び癌細胞が有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤によって阻害され
ないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現するかどうか判定するステップを含む、
癌を有する被検者におけるプラチナ薬剤及びOCT2阻害剤療法の効力の予測方法を提供
するが、ここで、プラチナ薬剤及びOCT2阻害剤療法は、癌細胞がOCT2阻害剤によ
って阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現する被検者において有効な
可能性があるものである。
【0129】
別の態様において、本開示は、少なくとも1つの癌細胞を含むサンプルを取得するステ
ップ;及び癌細胞が有機カチオントランスポーター2(OCT2)を発現するかどうか判
定するステップを含む、癌を有する被検者におけるプラチナ薬剤及びOCT2阻害剤療法
の効力の予測方法を提供するが、ここで、プラチナ薬剤及びOCT2阻害剤療法は、癌細
胞が主にOCT2を発現する被検者において有効である可能性がないものである。
【0130】
別の態様において、本開示は、癌が選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2
)阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現するかどうか
判定することを含む、癌を有する被検者におけるプラチナ薬剤及びOCT2阻害剤療法の
効力の予測方法を提供するが、ここで、プラチナ薬剤及び選択的OCT2阻害剤療法は、
癌細胞が選択的OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポータ
ーを発現する被検者において有効な可能性があるものである。いくつかの実施形態におい
て、取込みトランスポーターはOCT1またはOCT3である。
【0131】
別の態様において、本開示は、癌細胞が有機カチオントランスポーター2(OCT2)
を発現するかどうか判定することを含む、癌を有する被検者におけるプラチナ薬剤及びO
CT2阻害剤療法の効力の予測方法を提供するが、ここで、プラチナ薬剤及び選択的OC
T2阻害剤療法は、癌が主にOCT2を発現する被検者において有効である可能性がない
ものである。いくつかの実施形態において、取込みトランスポーターはOCT1またはO
CT3である。
【0132】
プラチナ薬剤及び選択的OCT2阻害剤療法の効力の予測は、プラチナ薬剤及び選択的
OCT2阻害剤療法が被検者において所望の化学療法効果をもたらす可能性のことをいう
。効力は典型的に、患者が疾患を抱えて生きているが悪化はしていない治療の間または後
の時間の長さである無憎悪生存期間(PFS)によって、または診断の日もしくは疾患の
治療の開始のいずれかからの、疾患を有する患者がまだ生存している時間の長さである全
生存期間(OS)によって評価される。
【0133】
本明細書に開示したような効力の予測方法は、任意の種類の癌を有する被検者において
用いられ得る。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はオキサリプラチンである。
いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はシスプラチンである。いくつかの実施形態
において、プラチナ薬剤はテトラプラチンである。いくつかの実施形態において、選択的
OCT2阻害剤療法はブフロメジルまたはブフロメジル塩を投与することを含む。いくつ
かの実施形態において、選択的OCT2阻害剤療法はイミダゾールを含むOCT2阻害剤
を投与することを含む。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤療法はミコ
ナゾールまたはその塩を投与することを含む。いくつかの実施形態において、OCT2阻
害剤療法はドルテグラビルまたはドルテグラビル塩を投与することを含む。
【0134】
サンプルの取得
本明細書に記載したような効力の予測方法は、少なくとも1つの癌細胞を含むサンプル
を取得するステップを含む。サンプルは、生検、吸引、手術、または被検者からの体液、
例えば血液、脳脊髄液、羊水、腹腔液もしくは間質液などのサンプリングをはじめとする
、当該技術分野において公知の任意の方法によって取得され得る。典型的には、サンプル
は疾患組織または臓器から取得される。例えば、顕微鏡下でサンプルを分析することによ
って、またはサンプル中の特定の癌マーカーの発現もしくは存在を検出することによって
、少なくとも1つの癌細胞が検出され得る。
【0135】
判定ステップ
一態様において、本明細書に記載したような効力の予測方法は、癌細胞がOCT2阻害
剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現するかどうか判定す
るステップを含む。癌細胞がOCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みト
ランスポーターを発現するかどうかの判定は、細胞内の特定のプラチナ薬剤取込みトラン
スポーターの存在またはその発現を検出するための当業者にとって公知の任意のアッセイ
を伴い得る。癌細胞がOCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランス
ポーターを発現するかどうか判定するステップは、様々な癌細胞型からの公開された遺伝
子及び/またはタンパク質発現データを精査することによっても行われ得る。いくつかの
実施形態において、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポ
ーターは、有機カチオントランスポーター1(OCT1)取込みトランスポーターである
。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込
みトランスポーターは、有機カチオントランスポーター3(OCT3)取込みトランスポ
ーターである。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤によって阻害されないプラ
チナ薬剤取込みトランスポーターは、銅トランスポーターI(CTR1)取込みトランス
ポーターである。
【0136】
一態様において、本明細書に記載したような効力の予測方法は、癌細胞がOCT2を発
現するかどうか判定するステップを含む。癌細胞がOCT2を発現するかどうかの判定は
、細胞内のOCT2の存在またはその発現を検出するための当業者にとって公知の任意の
アッセイを伴い得る。癌細胞がOCT2を発現するかどうか判定するステップは、様々な
癌細胞型からの公開された遺伝子及び/またはタンパク質発現データを精査することによ
っても行われ得る。
【0137】
プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させるための化合物のスクリーニング
プラチナ保護剤、組成物及び/またはレジメンの理想的な特性としては、(i)プラチ
ナ関連毒性の発症の最大限の減少、予防、緩和、及び/または遅延(及びそのような毒性
に起因する関連した治療の中断、遅延、または投与量変更);(ii)抗腫瘍活性への干
渉がないこと及びプラチナ療法の細胞傷害作用に対する腫瘍脱感作がないこと;(iii
)医学的に許容可能な安全性プロファイル;(iv)プラチナ関連毒性を減少、予防、緩
和、及び/または遅延させるための生化学的及び薬理学的機序の利用;ならびに(v)主
要なプラチナ治療の投与量、頻度、及び/または継続時間を増加させることによる化学療
法指数の増加が挙げられる。
【0138】
本明細書で用いる場合、選択的OCT2阻害剤は、5μM以下の、ヒト血清または4%
ウシ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での20μMのオキサリプラチンのOCT
2媒介輸送に対するIC50を有し、OCT-1、OCT-3、及びMATE-1によっ
て媒介される、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での2
0μMのオキサリプラチン輸送に対する選択的OCT2阻害剤のIC50よりも少なくと
も10倍小さい、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での
20μMのオキサリプラチンのOCT2媒介輸送に対するIC50を有する。
【0139】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤は、2、3、または4μM以下の
、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での20μMのオキ
サリプラチンのOCT2媒介輸送に対するIC50を有する。
【0140】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤は、OCT-1、OCT-3、及
びMATE-1によって媒介される、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有する
アッセイ溶液中での20μMのオキサリプラチン輸送に対する選択的OCT2阻害剤のI
C50よりも少なくとも15、20、25倍小さい、ヒト血清または4%ウシ血清アルブ
ミンを含有するアッセイ溶液中での20μMのオキサリプラチンのOCT2媒介輸送に対
するIC50を有する。
【0141】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤は以下の追加の基準の1つ以上を
有する。
1)標準的または現在の使用の下でのCmaxがOCT2のIC50の2倍であること;
及び
2)最大許容血漿濃度(MTC)がOCT2のIC50の15倍、または計算によるOC
T2のIC90の4倍を超えて高いこと。
【0142】
いくつかの実施形態において、別の基準は、選択的OCT2阻害剤がプラチナ薬剤の効
力を減少させないことである。
【0143】
プラチナ保護剤が、活性であるがそれ以外では毒性のプラチナ薬剤、組成物、及び/ま
たはレジメンの治療指数を増加させることができる場合、腫瘍反応率を増加させること、
腫瘍進行までの期間、及び全患者生存期間を増加させることによって、被検者にとって非
常に有益となり得る。OXA-IPNの予防には完全または部分的な予防が含まれる。部
分的な予防が得られる場合、薬物の存在下で何らかの臨床的改善を観察するのに十分であ
るべきである。長期毒性がDRGにおけるプラチナレベルに関係している場合、予防は、
腫瘍におけるOXAの取込みを一定に維持しながらDRGにおけるプラチナ取込みを減少
させることも意味し得る。予防の成功を判断する別の方法は、腫瘍とDRGとの間の取込
みの比(腫瘍/DRG)を改善し、薬物の不在下で測定したその元の値を超える比を維持
することである。
【0144】
OCTはオキサリプラチンの取込みに関与するトランスポーターであり、OCT2はD
RG及び腎細胞内へのオキサリプラチンの取込みを担う一方で、OCT1は主に腫瘍細胞
内へのオキサリプラチンの取込みを担う。比OCT2/OCT1取込み比を計算すること
によるDRG/腫瘍と呼ぶ遮断の比を規定することができ、これはスクリーニングに有用
である。
【0145】
細胞におけるオキサリプラチンのOCT2媒介取込みを遮断するが、OCT1媒介取込
みは遮断しない(そのため、選択的OCT2阻害剤である)化合物を見つけるために、多
くの一連の化合物をスクリーニングした。好ましくは、試験した化合物は、OCT2/O
CT1結合比の観点で表されるそれらのDRG/腫瘍比について調べた。
【0146】
OCT2トランスポーターの詳細はBelzerによる文献(Belzer, M.,
et. al, J Pharmacol Exp Ther. 2013 Aug;
346(2): 300-310)に記載されている。実際に、OCT2は複数の結合
部位を有することが知られており、そのため、OCT2トランスポーターの阻害剤は基質
依存的であることが知られている。精選された基質に対する複数の阻害剤の効果を比較す
ることによってBelzerの所見を試験した。Belzerの結果と一致して、OCT
2媒介輸送に対する化合物の阻害効力は、調査されているOCT2基質に依存して著しく
異なる。したがって、当業者は、オキサリプラチンが基質として用いられていない限り、
公開されているOCT2阻害値に依拠するべきではない。
【0147】
プラチナ薬剤
プラチナ薬剤は、プラチナ(II)または(IV)中心、2つの置換または非置換シス
-アミン及び2つの脱離基を含有する化合物である。これらは、DNA中の求核性基に結
合する高反応性荷電プラチナ錯体を形成し、アポトーシス及び細胞成長阻害をもたらす鎖
内及び鎖間DNA架橋を誘導する。一般に用いられるプラチナ薬剤としては、シスプラチ
ン(構造:平面四角形プラチナ(II)中心、2つのシス-アミン及び2つの塩化物基を
含有)、カルボプラチン(構造:平面四角形プラチナ(II)中心、2つのシス-アミン
及び二座配位ジカルボキシレートを含有)、ならびにオキサリプラチン(構造:平面四角
形プラチナ(II)中心、二座配位子1,2-ジアミノシクロヘキサン及び二座配位オキ
サレート基)が挙げられる。別のプラチナ薬剤としては、リポプラチン、ネダプラチン、
エプタプラチン(ヘプタプラチン)、ピコプラチン、サトラプラチン、テトラプラチン、
イプロプラチン、ロバプラチン、及びトリプラチンが挙げられる。
【0148】
プラチナ薬剤の構造としては例えば以下が挙げられる。
【化1】
【0149】
これらのプラチナ薬剤のいくつかは様々な世界市場に出回っている薬物である。他のも
のはヒト臨床試験が現在行われている薬物候補である。いくつかの実施形態において、プ
ラチナ薬剤は、臨床試験において投与したところ、毒性が忍容不能レベルという結果とな
ったものである。例えば、テトラプラチン(オルマプラチン)は、忍容不能レベルの神経
毒性のためにヒト臨床試験に失敗した。そのような薬物での抗癌療法は、本明細書に開示
の方法から大きな恩恵を受けるであろう。
【0150】
いくつかの実施形態において、オキサリプラチンは粉末または溶液として提供される。
オキサリプラチンは静脈内点滴または注入として投与され得る。オキサリプラチンは民間
の供給元から入手することができる(Ranbaxy Limited, Mumbai
, India; Accord Healthcare Limited, Durh
am, NC; Actavis, Parsippany-Troy Hills,
NJ;及びHospira, San Jose, CA)。
【0151】
いくつかの実施形態において、シスプラチンは溶液として提供される。シスプラチンは
静脈内点滴として投与され得る。シスプラチンは民間の供給元から入手することができる
(Accord Healthcare Limited, Durham, NC;
Hospira, San Jose, CA;及びSandoz, Holzkirc
hen, Upper Bavaria, Germany)。
【0152】
トランスポーターによるプラチナ薬剤の取込みは、典型的に薬物の代謝産物の取込みを
伴う。プラチナ薬剤は代謝されてから、これらの代謝産物が細胞内に輸送される。例えば
、OCT2は、シスプラチンそのものを輸送するよりも効率的にシスプラチンアナログ(
複数可)を輸送し得る。
【0153】
OCT2阻害剤
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤はブフロメジルまたはブフロメジ
ル塩である。ブフロメジルの構造は以下である。
【化2】
そのIUPAC名は4-ピロリジン-1-イル-1-(2,4,6-トリメトキシフェニ
ル)ブタン-1-オンである。いくつかの実施形態において、ブフロメジルは溶液として
提供される。ブフロメジルは経口または静脈内投与され得る。ブフロメジルは民間の供給
元から入手することができる(Loftyl(商標), Abbott, Chicag
o, IL)。
【0154】
ブフロメジルは血管作動性薬であり、跛行または末梢動脈疾患の症状を治療するために
用いられてきた。ブフロメジルの標準治療は、患者1人につき経口により1日300mg
、最大で1日600mg;または1日最大200mgの静脈内ボーラスである。MTC(
最大許容濃度)は10mg/lである。
【0155】
いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はイミダゾールを含む。イミダゾールは
式(CH)2N(NH)CHを有する有機化合物であり、平面複素環(5員環)であり、
水溶性である。イミダゾールはアゾール抗真菌薬のクラスの一部である。これらには、例
えば、ビホナゾール、ブトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、フェンチコナ
ゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ルリコナゾール、ミコナゾール、オモコナゾ
ール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、チオコナゾール、イミダ
ゾール抗生物質(ニトロイミダゾール)、例えば6-アミノPA824、アザニダゾール
、ベンズニダゾール、ジメトリダゾール、メガゾール、メトロニダゾール、ニモラゾール
、オルニダゾール、チニダゾールなど、及びイミダゾール鎮静剤、ミダゾラムが含まれる
。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤はイミダゾールの塩である。
【0156】
いくつかの実施形態において、イミダゾールは以下の構造を含有する。
【化3】
【0157】
いくつかの実施形態において、イミダゾールは以下の構造を含有する。
【化4】
【0158】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤はドルテグラビルまたはドルテグ
ラビルの塩である。ドルテグラビルの構造は以下である。
【化5】
いくつかの実施形態において、ドルテグラビル(Trivicay(商標), Viiv
Healthcare, UK)は錠剤として提供される。ドルテグラビルは経口投与
され得る。ドルテグラビルは民間の供給元から入手することができる(Trivicay
(商標), Viiv Healthcare, UK)。
【0159】
選択的OCT2阻害剤の有効投与量
選択的OCT2阻害剤の有効投与量は、細胞内へのプラチナ薬剤のOCT2輸送を十分
に減少させることのできる選択的OCT2阻害剤の量のことをいう。いくつかの実施形態
において、選択的OCT2阻害剤の量は、細胞内へのプラチナ薬剤の輸送を完全に遮断す
るか、または細胞内へのプラチナ薬剤の輸送の99、98、97、96、95、94、9
3、92、91、90、85、80、75、または70%を遮断することができる。いく
つかの実施形態において、判定のための基質であるプラチナ薬剤はオキサリプラチンであ
る。測定は、OCT2を発現する細胞及びOCT2発現がない細胞(対照細胞)内のプラ
チナ蓄積を比較することによって行う。100%遮断は、OCT2細胞及び対照細胞中の
プラチナ量が同じであることを意味する。
【0160】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤の投与量は、上記必要としている
被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を、選択的OCT2阻害剤の投与がない以外は同
じ治療プロトコールで治療される被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性と比較して、少
なくとも10%減少させるのに有効である。
【0161】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤の投与量は、上記必要としている
被検者におけるプラチナ薬剤誘発性神経毒性を最小限にするのに有効である。
【0162】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤の投与量は、少なくとも100m
g/m2の蓄積投与量で治療された患者において、米国国立癌研究所-共通毒性規準(N
CI-CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CTC)運
動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN
限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL-CIPN20)からなる群から選択
される方法によって評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するの
に有効である。いくつかの実施形態において、蓄積投与量は、少なくとも100mg/m
2、200mg/m2、300mg/m2、400mg/m2または500mg/m2で
ある。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤の投与量は、グレード2以上
のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有効である。いくつかの実施形態において
、予防は、神経毒性の発症の遅延または次のグレードへの昇級の遅延である。
【0163】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤の投与量は、少なくとも30mg
/週/m2のプラチナ薬剤投与量強度で治療された患者において、米国国立癌研究所-共
通毒性規準(NCI-CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NC
I-CTC)運動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治
療機関CIPN限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL-CIPN20)から
選択される方法によって評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防す
るのに有効である。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤投与量強度は、少なくと
も30mg/週/m2、40mg/週/m2、50mg/週/m2または60mg/週/
m2である。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤投与量強度は、少なくとも30
mg/週/m2~50mg/週/m2である。いくつかの実施形態において、選択的OC
T2阻害剤の投与量は、グレード2以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有
効である。いくつかの実施形態において、予防は、神経毒性の発症の遅延または次のグレ
ードへの昇級の遅延である。
【0164】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤の投与量は、少なくとも80mg
/m2のプラチナ薬剤投与量で治療された患者において、米国国立癌研究所-共通毒性規
準(NCI-CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CT
C)運動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関C
IPN限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL-CIPN20)から選択され
る方法によって評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有
効である。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤投与量は、少なくとも80mg/
m2、90mg/m2、100mg/m2、110mg/m2、120mg/m2、13
0mg/m2、または140mg/m2である。いくつかの実施形態において、選択的O
CT2阻害剤の投与量は、グレード2以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに
有効である。いくつかの実施形態において、予防は、神経毒性の発症の遅延または次のグ
レードへの昇級の遅延である。
【0165】
予防は、本明細書で用いる場合、病態もしくは疾患の発症の回避または病態もしくは疾
患の1つ以上の症状の減少をはじめとする、病態または疾患を患うリスクのある被検者に
恩恵をもたらす任意の処置をいうことができる。あるグレードのプラチナ薬剤誘発性神経
毒性の予防に関しては、被検者にとっての次のグレードへの昇級または進行が回避される
。
【0166】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤は、神経毒性を減少させるのに有
効な投与量で投与される。神経毒性は、冷たい物への接触に対する敏感性、冷たい液体の
飲み込みの困難、喉の不快感、及び筋痙攣をもたらし得る。いくつかの実施形態において
、神経毒性はグレード0、1、2、3、または4である。いくつかの実施形態において、
神経毒性は運動ニューロンまたは感覚ニューロンへの損傷である。いくつかの実施形態に
おいて、選択的OCT2阻害剤は、背根神経節(DRG)への損傷を最小限にするのに有
効な投与量で投与される。
【0167】
いくつかの実施形態において、神経毒性は神経伝導を測定することによって評価される
。いくつかの実施形態において、神経伝導検査は橈骨、背側腓腹、腓腹及び尺骨神経の1
つにおいて行われる。これらの方法は、Velasco, R., et. al, J
Neurol Neurosyrg Psychiatry 2014; 85:39
2-398で説明されている。
【0168】
いくつかの実施形態において、神経伝導検査は感覚神経活動電位(SNAP)の測定を
含む。いくつかの実施形態において、神経状態検査は神経伝導速度(NCV)の測定を含
む。いくつかの実施形態において、神経毒性は低温に対する感度を測定することによって
評価される。いくつかの実施形態において、神経毒性は機械的刺激に対する感度を測定す
ることによって評価される。
【0169】
いくつかの実施形態において、神経毒性は、熱知覚閾値、機械的触覚閾値、振動知覚閾
値、電流知覚閾値、刺針感度、深部腱反射及び握力から選択される試験方法によって評価
される。これらの方法は、Griffith, K. et. al., Suppor
t Care Cancer 2014, 22(5): 1161-1169で説明さ
れている。
【0170】
いくつかの実施形態において、神経毒性は米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-
CTC)知覚性スケールによって評価される。いくつかの実施形態において、神経毒性は
総合神経障害スコア臨床版(TNSc)によって評価される。いくつかの実施形態におい
て、神経毒性は欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報告アンケート調査(EORTC
QOL-CIPN20)によって評価される。これらの方法は、Kauto et al
. “Oxaliplatin and National Cancer Insti
tute-Common Toxicity Criteria in the Ass
essment of Chemotherapy-induced Peripher
al Neuropathy” Anticancer Research 31: 3
493-3496 (2011);及びCavaletti, G., et. al.
, European Journal of Cancer 46 (2010) 4
79-494で説明されている。
【0171】
臨床状況下での選択的OCT2阻害剤の時間-濃度プロファイル
臨床的に、オキサリプラチン及びシスプラチンをはじめとするプラチナ系抗癌剤は、治
療サイクルにおいてある時間(典型的には2~4時間、
図A中のT
PD)にわたって静脈
内点滴によって投与されるが、この間にプラチナ薬剤は高血漿レベルに達し、末梢神経障
害及び腎毒性をはじめとする有害作用を引き起こす可能性が高い。したがって、プラチナ
薬剤投与の間(T
PD)、望ましい保護作用を得ると同時に、OCT2阻害剤そのものの
有害作用を最小限にするために、選択的OCT2阻害剤の血漿レベルが、2つの所定のレ
ベル(
図33中のC
L及びC
H)の間に維持されることが重要である。この治療濃度域を
図A中に斜線部として示す。このような薬物動態プロファイルの別の表現方法は、OCT
2阻害剤の血漿レベルがC
LとC
Hとの間に維持される予防時間(T
prev)を定義す
ることによるものであり、T
prevは
図Aに示すようにプラチナ薬剤投与の時間(T
P
D)全体を包含するべきである。T
prevの外側では、有害作用をはじめとする他の薬
理学的作用を最小限にするために、阻害剤レベルを可能な限り低く維持することが望まし
い。そのような望ましい時間-血漿レベルプロファイルは、一般に実施されている薬物投
与技術、例えば経口、静脈内注入、静脈内点滴、またはこれらの組合せなどを適用するこ
とによって、及び持続放出のように選択的OCT2阻害剤の製剤を最適化することによっ
て達成することができる。
【0172】
薬物の治療効果は主に蓄積血漿曝露量(一般に曲線下面積/AUCと呼ばれる、典型的
には12~24時間の時間で積分した薬物血漿レベル)[Benet, L. and
Hoener, B., Clin Pharmacol Ther 2002;71:
115-21]によって発揮されるが、プラチナ薬剤誘発性毒性に対する選択的OCT2
阻害剤の最適な保護作用を引き出すための上記のアプローチは、ほとんどの他の治療介入
とは対照的であることに留意することが重要である。
【0173】
選択的OCT2阻害剤の望ましい血漿濃度範囲は以下のように決定することができる。
CLは、100%ヒト血清または生理的レベルの血清アルブミンを含有するアッセイバッ
ファー中で測定される、阻害剤のインビトロOCT2 IC50値に基づいて決定するこ
とができる。プラチナ薬剤投与の間のOCT2阻害のレベルに応じて、CLは、インビボ
におけるプラチナ薬剤のOCT2媒介輸送の推定による50%減少に相当するインビトロ
OCT2 IC50値以上の値に設定され得る。より好ましくは、CLはインビトロOC
T2 IC50値の2倍または4倍に設定され得るが、これらはそれぞれ推定による70
%及び90%のOCT2阻害に相当する。例えば、IC50値が1.4±0.2uM(表
4)と測定されたブフロメジルについて、CLは、1.4uM(0.43mg/l)、ま
たはより好ましくは、より大きな保護作用を引き出すために2.8uM(0.86mg/
l)もしくは5.6uM(1.72mg/l)に設定され得る。ドルテグラビルの場合、
測定されたIC50値は3.4±1.0uM(表4)であり、そのため、CLは、IC5
0値の1倍(3.4uMもしくは1.4mg/l)、2倍(6.8uMもしくは2.8m
g/l)または4倍(13.6uMもしくは5.6mg/l)に設定され得る。
【0174】
CHは、選択的OCT2阻害剤の臨床及び前臨床毒性検査に基づいて決定することがで
き、例えば臨床最大耐量(MTD)の下での薬物のCmaxなどである。例えば、ブフロ
メジルの過量投与は致死性の心毒性及び神経毒性につながり得ることが文書で十分に立証
されており[European Medicines Agency 2012, Bu
colo 2012]、欧州及び多くの他の国での販売中止の一因となった。重篤な毒性
は10mg/l(32.5uM)を超えるブフロメジル血漿レベルに関連することが文書
で報告されている[European Medicines Agency 2012,
Bourguignon 2012]。したがって、CHを10mg/l以下に設定す
ることによって、ブフロメジル血漿濃度を確実に毒性誘発レベル未満に留めることが不可
欠である。ドルテグラビルの場合、サルにおける前臨床14週間毒性研究で、NOAEL
(無有害作用量)投与量では、雌における平均血漿Cmaxが23.5mg/l(54.
8uM)である[PMDA 2012]ことが報告されており、そのため、CHはこの値
以下に設定することができる。
【0175】
選択的OCT2阻害剤の投与量調整
薬物の血漿レベルは、限定はしないが、体重、性別、年齢ならびに主要な薬物排泄臓器
の機能、例えば腎機能及び肝機能などをはじめとする多くの因子の影響を受ける[FDA
, Guidance for Industry: Population Phar
macokinetics, 1999]。したがって、同じ薬物投与量及び投与経路の
下での被検者において、薬物血漿レベルの大きなばらつきが見られることが多い。そのよ
うな個体間のばらつきは、選択的OCT2阻害剤の保護作用に影響を与え得るだけでなく
、より重要なことに、阻害剤が安全レベルC
Hを超えたままの場合に重篤な有害作用につ
ながる恐れがある。このことは、高血漿曝露量が重度の毒性及び死亡の原因であると報告
されているので、ブフロメジルなどの薬物で特に重要である[European Med
icines Agency, Procedure number: EMEA/H/
A-107/1293(http://www.ema.europa.eu/docs
/en_GB/document_library/Referrals_docume
nt/Buflomedil_107/WC500128578.pdf) 2012;
Bucolo, C., et. al., pharmacoepidemiolo
gy and drug safety 2012; 21: 1190-1196]。
投与量調整の必要性を実証するために、本発明者らは、定速静脈内(IV)点滴(3時間
にわたって150mg/時)によって450mgのブフロメジルを投与した2つの被検者
群において薬物動態シミュレーションを行った。シミュレーションに用いた薬物動態パラ
メータは、(体重、年齢及び身長が)異なる2つの患者群からのものであり、平均ブフロ
メジルクリアランスにおいて有意差を示した(A群の292ml/分に対してB群の99
.5ml/分)[Gundert-Remy, U., et. al., Eur J
Clin Pharmacol (1981) 20: 459-463; Bour
guignon, L., et. al., Fundam Clin Pharma
col. 2012 Apr;26(2):279-85]。
図34に示すように、A群
の被検者のブフロメジルの血漿レベルはC
L及びC
Hによって定義される望ましい範囲内
であるにもかかわらず、腎クリアランスが低下した高齢者(平均年齢82歳)であるB群
の被検者では、同じ投与量でブフロメジルのレベルが危険なほどに高くなる(>10mg
/l)。PKシミュレーションは、A群の被検者とほぼ同等のブフロメジルの血漿レベル
を達成するために、B群の被検者に対するほぼ70%の投与量減少も示唆している。PK
シミュレーションは、定速でのブフロメジルのIV点滴が時間経過に伴う血漿レベルのゆ
っくりとした変化をもたらすことも実証している。投与の間で選択的OCT2阻害剤のよ
り安定した血漿レベルを達成するために、IVボーラス注入及びIV点滴の組合せ、また
は可変速IV点滴の使用、または[Shargel, L., et. al, App
lied Biopharmaceutics and Pharmacokineti
cs, 6
th, 2012]に記載されている他の方法の使用が適用され得る。
【0176】
個体に対して薬物投与量を調整するために多くのアプローチを用いることができる[K
lotz, U., J Clin Chem Clin Biochem. 1983
Nov;21(11):649-58; Jelliffe, R., Ther D
rug Monit. 2000 Jun;22(3):325-9]。例えば、臨床的
アプローチは被検者に低いまたは通常の投与量を適用し、その後、血漿薬物レベルを測定
することを伴い得るが、これを必要に応じてその被検者に対する投与量調整の指針とする
ために用いることができる。別の例として、投与量調整は、母集団薬物動態解析[FDA
, Guidance for Industry: Population Phar
macokinetics, 1999]を指針とすることもでき、これは、薬物レベル
のばらつきに関連する測定可能な因子を特定するために一般に実施されている。そのよう
な因子としては、体重、体表面積、身長、年齢、性別、アルコール使用、喫煙、生活様式
、腎機能(一般にクレアチニンクリアランス検査によって評価される)、肝機能(一般に
インドシアニングリーンクリアランス検査によって評価される)、遺伝子多型及び併用薬
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0177】
OCT2阻害剤濃度の薬物動態プロファイル
本開示は、最大許容血漿濃度(MTC)未満、かつ、ヒト血清または4%ウシ血清アル
ブミンを含有するアッセイバッファー中で評価した20μMのオキサリプラチンのOCT
2媒介輸送についてのIC50値の1倍、2倍、3倍、4倍を超えるプラチナ薬剤投与期
間中の血漿濃度をもたらす投与量で、選択的OCT2阻害剤が投与される、開示の方法を
提供する。
【0178】
いくつかの実施形態において、被検者に投与されるブフロメジルまたはブフロメジル塩
の投与量は、体重、体表面積、身長、年齢、性別、アルコール使用、タバコ使用、生活様
式、腎機能、肝機能、遺伝子多型及び併用薬をはじめとする被検者の因子の少なくとも1
つに基づいて調節される。いくつかの実施形態において、ブフロメジルまたはブフロメジ
ル塩の投与量は、少なくとも0.43mg/l、0.86mg/l、1.29mg/l、
1.72mg/lまたは2.15mg/lのプラチナ投与期間中の血漿レベルをもたらす
。いくつかの実施形態において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量は、少なく
とも50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、
300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、
550、575、または600mgである。いくつかの実施形態において、ブフロメジル
またはブフロメジル塩の投与量は少なくとも100mg、200mg、400mgまたは
600mgである。いくつかの実施形態において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩の
投与量は少なくとも300mg、450mg、600mg、800mgまたは1000m
gである。いくつかの実施形態において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量は
少なくとも1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、
6mg/kg、8mg/kgまたは10mg/kgである。
【0179】
いくつかの実施形態において、ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩の投与量は、少
なくとも1.4mg/l、2.8mg/l、4.2mg/l、5.6mg/lまたは7.
0mg/lのプラチナ投与期間中の血漿レベルをもたらす。いくつかの実施形態において
、ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩の投与量は少なくとも50mg、100mg、
150mg、200mg、250mg、300mgまたは400mgである。いくつかの
実施形態において、ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩の投与量は少なくとも50m
g、75mg、100mg、150mg、200mgまたは300mgである。いくつか
の実施形態において、ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩の投与量は少なくとも1m
g/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kgまたは6mg/k
gである。
【0180】
いくつかの実施形態において、投与量調整は、個々の薬物の開発として本明細書に記載
したデータチャートを参照した上記のような被検者の特性に基づく。
【0181】
医薬組成物
一態様において、本開示は、プラチナ薬剤、OCT2阻害剤、及び医薬品として許容可
能な担体を含有する医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、OCT2阻害
剤はブフロメジルまたはブフロメジル塩である。他の実施形態において、OCT2阻害剤
はイミダゾールを含む。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はミコナゾールま
たはその塩である。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はドルテグラビルまた
はその塩である。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はオキサリプラチンまたは
シスプラチンである。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はオキサリプラチンで
ある。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はシスプラチンである。いくつかの実
施形態において、医薬組成物は、静脈内投与のために製剤化されており、オキサリプラチ
ンであるプラチナ薬剤、ブフロメジル、ブフロメジル塩、ドルテグラビル、及びドルテグ
ラビル塩からなる群から選択される選択的OCT2阻害剤、ならびに医薬品として許容可
能な担体を含む。
【0182】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、静脈内投与のために製剤化されており、
オキサリプラチンまたはシスプラチンであるプラチナ薬剤、ブフロメジル、ブフロメジル
塩、ドルテグラビル、及びドルテグラビル塩からなる群から選択される選択的OCT2阻
害剤、ならびに医薬品として許容可能な担体を含む。
【0183】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、静脈内投与のために製剤化されており、
オキサリプラチンまたはシスプラチンであるプラチナ薬剤、ブフロメジルまたはブフロメ
ジル塩である選択的OCT2阻害剤、ならびに医薬品として許容可能な担体を含む。
【0184】
いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はオキサリプラチンである。いくつかの実
施形態において、プラチナ薬剤はシスプラチンである。いくつかの実施形態において、プ
ラチナ薬剤はテトラプラチンである。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤の量は
、プラチナ薬剤を含む標準的な医薬組成物中に存在するものよりも多い。例えば、オキサ
リプラチンを含む標準的な医薬組成物は、一般に水で再構成する粉末として次の強度:5
0mg/バイアル、100mg/バイアル、または200mg/バイアルで投与される。
シスプラチンを含む標準的な医薬組成物は、一般に200mg/200mlを含有する大
きなバイアル中の即注入可能な1mg/ml溶液として提供される。テトラプラチンは承
認薬ではないが、注入量は同様の製剤でシスプラチン(5mg/kg)と同様であると予
想される。
【0185】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1
つ以上の追加の化学療法剤をさらに含む。追加の化学療法剤は、例えば、5-フルオロウ
ラシル、ベバシズマブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イ
リノテカン、またはロイコボリンであり得る。
【0186】
任意の医薬品として許容可能な担体が用いられ得る。いくつかの実施形態において、本
開示の組成物は、例えば、医薬品用途に適した調製物への活性化合物の加工を容易にする
添加物及び助剤を含む1つ以上の生理学的に許容可能な担体を用いて従来の方法で製剤化
される。好適な医薬品として許容可能な担体としては、限定はしないが、生理食塩水、バ
ッファー水溶液、注射用水、デキストロース溶液、溶媒及び/または分散媒が挙げられる
。こうした担体の使用は当該技術分野において公知である。担体は無菌であることが好ま
しい。いくつかの実施形態において、担体は、製造及び保管の条件下で安定であり、例え
ば、限定はしないがパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、または
チメロサールを用いて、微生物、例えば細菌及び真菌などの汚染作用を防ぐように保存さ
れる。
【0187】
医薬品として許容可能な担体として機能することのできる材料及び溶液の例としては、
限定はしないが、(1)糖、例えばラクトース、グルコース及びスクロースなど;(2)
デンプン、例えばトウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなど;(3)セルロース
、及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及
び酢酸セルロースなど;(4)粉末状トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7
)タルク;(8)添加物、例えばカカオバター及び座薬ワックスなど;(9)油、例えば
ピーナツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油;(10
)グリコール、例えばプロピレングリコールなど;(11)ポリオール、例えばグリセリ
ン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールなど;(12)エステル、
例えばエチルオレエート及びエチルラウレートなど;(13)寒天;(14)緩衝剤、例
えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなど;(15)アルギン酸;(16)発
熱性物質不含水;(17)等張食塩水;(18)リンガー液;(19)エチルアルコール
;(20)pH緩衝液;(21)ポリエステル、ポリカーボネート及び/またはポリ無水
物;ならびに(22)医薬製剤に用いられる他の非毒性の相溶性物質が挙げられる。
【0188】
本開示の組成物の適切な製剤は選択された投与経路に依存し得る。本明細書に記載の医
薬組成物の概要は、例えば、Remington: The Science and
Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Eas
ton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995)
; Hoover, John E., Remington’s Pharmaceu
tical Sciences, Mack Publishing Co., Eas
ton, Pa. 1975; Liberman, H. A. and Lachm
an, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Form
s, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980;及
びPharmaceutical Dosage Forms and Drug De
livery Systems, Seventh Ed. (Lippincott
Williams & Wilkins 1999)に見出される。いくつかの実施形態
において、医薬組成物は、経腸、静脈内、筋肉内、腹腔内、経口、または腸管外投与のた
めに製剤化される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は静脈内投与のために製剤
化される。ある実施形態において、複数の組成物が提供され、異なる投与経路のために製
剤化される。
【0189】
製品
本開示は、オキサリプラチンまたはシスプラチンであるプラチナ薬剤;選択的OCT2
阻害剤;及び使用のための指示書を含むキットに関する。キットは、例えばプラチナ薬剤
誘発性神経毒性を減少させる;癌を治療する;または癌の治療に対する患者コンプライア
ンスを増加させる使用のための指示書をさらに含み得る。使用のための指示書は一般に書
面による指示書であるが、指示書を含む電子記憶媒体(例えば磁気ディスケットまたは光
ディスク)も許容可能である。
【0190】
本開示は、オキサリプラチンであるプラチナ薬剤;選択的OCT2阻害剤;及び使用の
ための指示書を含むキットに関する。いくつかの実施形態において、本開示は、オキサリ
プラチンであるプラチナ薬剤;ブフロメジル、ブフロメジル塩、ドルテグラビル、及びド
ルテグラビル塩からなる群から選択される選択的OCT2阻害剤;ならびに使用のための
指示書を含むキットに関する。キットは、例えばプラチナ薬剤誘発性神経毒性を減少させ
る;癌を治療する;または癌の治療に対する患者コンプライアンスを増加させる使用のた
めの指示書をさらに含み得る。使用のための指示書は一般に書面による指示書であるが、
指示書を含む電子記憶媒体(例えば磁気ディスケットまたは光ディスク)も許容可能であ
る。
【0191】
本開示は、シスプラチンであるプラチナ薬剤;選択的OCT2阻害剤;及び使用のため
の指示書を含むキットに関する。いくつかの実施形態において、本開示は、シスプラチン
であるプラチナ薬剤;ブフロメジル、ブフロメジル塩、ドルテグラビル、及びドルテグラ
ビル塩からなる群から選択される選択的OCT2阻害剤;ならびに使用のための指示書を
含むキットに関する。キットは、例えばプラチナ薬剤誘発性神経毒性を減少させる;癌を
治療する;または癌の治療に対する患者コンプライアンスを増加させる使用のための指示
書をさらに含み得る。使用のための指示書は一般に書面による指示書であるが、指示書を
含む電子記憶媒体(例えば磁気ディスケットまたは光ディスク)も許容可能である。
【0192】
本開示は、オキサリプラチンまたはシスプラチンであるプラチナ薬剤;ブフロメジル及
びブフロメジル塩からなる群から選択される選択的OCT2阻害剤;ならびに使用のため
の指示書を含むキットに関する。キットは、例えばプラチナ薬剤誘発性神経毒性を減少さ
せる;癌を治療する;または癌の治療に対する患者コンプライアンスを増加させる使用の
ための指示書をさらに含み得る。使用のための指示書は一般に書面による指示書であるが
、指示書を含む電子記憶媒体(例えば磁気ディスケットまたは光ディスク)も許容可能で
ある。
【0193】
いくつかの実施形態において、キットは、プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以
上の追加の癌化学療法剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の
化学療法剤は、5-フルオロウラシル、ベバシズマブ、カペセタビン(capeceta
bine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及びロイコボリンからなる群から選択される
。
【0194】
本開示は、オキサリプラチンまたはシスプラチンであるプラチナ薬剤を含む1つ以上の
容器;ならびにブフロメジル、ブフロメジル塩、ドルテグラビル、及びドルテグラビル塩
からなる群から選択される選択的OCT2阻害剤を含む1つ以上の容器を含む医薬品キッ
トにも関する。任意により、そのような容器(複数可)に、医薬品の製造、使用または販
売を規制する政府機関によって規定された形態の通知を添付することができ、その通知は
ヒト投与に向けた製造、使用または販売についての機関による承認を表す。各構成要素(
2つ以上の構成要素がある場合)は別々の容器に入れることができるか、または交差反応
性及び貯蔵寿命が許せば、いくつかの構成要素を1つの容器にまとめることができる。キ
ットは、単位剤形、バルクパッケージ(例えば複数回投与パッケージ)または亜単位投与
量であり得る。キットは、複数の単位投与量の化合物及び使用のための指示書も含み、薬
局(例えば病院薬局及び調剤薬局)での保管及び使用に十分な量で包装され得る。ある実
施形態において、複数の剤形が提供され、異なる投与経路のために製剤化される。
【0195】
本明細書に記載の方法における使用に好適な包装の単位投与量の組成物を含む製品も開
示する。好適な包装は当該技術分野において公知であり、例えば、バイアル、容器、アン
プル、ボトル、ジャー、フレキシブル包装などが挙げられる。製品はさらに滅菌及び/ま
たは密封され得る。ある実施形態において、複数の組成物が提供され、異なる投与経路の
ために製剤化される。
【0196】
投与が併用のための2つ以上の活性剤を伴う場合、一般に、薬剤は、関係している薬剤
のそれぞれにとっての処方される最も好適な投与レジームに応じて、別々にまたは単一剤
形に製剤化され得る。
【0197】
指示書は、必要としている被検者に対する選択的OCT2阻害剤の望ましい投与量を決
定するための指示書を含むことができる。例えば、指示書は、限定はしないが、体重、体
表面積、身長、年齢、性別、アルコール使用、タバコ使用、生活様式、腎機能、肝機能、
遺伝子多型及び併用薬をはじめとする被検者の少なくとも1つの因子に基づいて投与量を
決定することを含むことができる。いくつかの実施形態において、指示書は、上記被検者
におけるOCT2阻害剤の血漿レベルを監視することによって投与量を決定することを含
む。
【0198】
プラチナ薬剤の投与及びOCT2
いくつかの実施形態において、本方法は、薬物の投与の前に、必要としている被検者に
おいて、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター
2(OCT2)阻害剤のIC50の2~5倍である、ブフロメジルまたはブフロメジル塩
である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤の血漿レベルを達成す
るための有効投与量を決定するステップを含む。
【0199】
いくつかの実施形態において、選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻
害剤の血漿レベルを達成するための有効投与量を決定するステップは、予備投与量の選択
的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を投与することによって行われる
。予備投与量は通常または低い投与量である。したがって、血漿レベルは投与される特定
の被検者について決定することができる。
【0200】
いくつかの実施形態において、選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻
害剤の血漿レベルを達成するための有効投与量を決定するステップは、被検者特性に基づ
く参照データチャートによって決定される。被検者特性は個体に特有のものであり、体重
、腎機能、肝機能、及び体表面積を挙げることができる。被検者特性に基づく参照データ
チャートは、FDAのガイドライン[FDA, Guidance for Indus
try: Population Pharmacokinetics, 1999]に
よって作成することができる。
【0201】
いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤及び選択的OCT2阻害剤を同時に投与す
る。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤をプラチナ薬剤の前に投与する
。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤をプラチナ薬剤の後に投与する。
【0202】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤は2つ以上の投与経路を介して投
与される。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤及び選択的OCT2阻害剤は同じ
投与経路を介して投与される。
【0203】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤は静脈内点滴によって投与される
。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤は静脈内注入及び静脈内点滴によ
って投与される。いくつかの実施形態において、静脈内点滴は少なくとも1時間にわたり
、例えば、少なくとも1、2、3、4、5または6時間などである。いくつかの実施形態
において、静脈内点滴の速度は一定である。いくつかの実施形態において、静脈内点滴の
速度は一定でない。
【0204】
いくつかの実施形態において、必要としている被検者に投与される選択的OCT2阻害
剤の量は、選択的OCT2阻害剤のOCT2 IC50の少なくとも1~5倍である。
【0205】
いくつかの実施形態において、必要としている被検者に投与される選択的OCT2阻害
剤の量は1日当たり50mg~600mgである。
【0206】
いくつかの実施形態において、1回の治療期間の間に被検者に投与されるプラチナ薬剤
の量は、標準的な臨床診療の下で投与されるものよりも多い。
【0207】
いくつかの実施形態において、必要としている被検者に治療の全過程にわたって投与さ
れるプラチナ薬剤の蓄積量は、標準的な臨床診療の下で投与されるものよりも多い。
【0208】
いくつかの実施形態において、標準的な臨床診療下よりも高い頻度でプラチナ薬剤を投
与する。
【0209】
患者コンプライアンスの向上
本開示は患者コンプライアンスの向上方法を提供する。いくつかの実施形態において、
被検者へのプラチナ薬剤の投与は痛みをもたらすであろう。いくつかの実施形態において
、投与されるプラチナ薬剤の治療有効量は、被検者においてプラチナ薬剤誘発性毒性を引
き起こすと知られている。本組成物は被検者の痛みを減少させるのに有用であるので、本
組成物を用いる方法は患者コンプライアンスの増加を達成することができる。
【0210】
いくつかの実施形態において、本開示は、治療有効量のオキサリプラチンであるプラチ
ナ薬剤を必要としている被検者に投与すること;及び上記必要としている被検者における
プラチナ薬剤誘発性神経毒性を減少させるのに有効な投与量で、選択的有機カチオントラ
ンスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与し、それによって、上
記被検者が少なくとも500mg/m2の蓄積投与量で治療を完了することを含む、必要
としている被検者における癌の治療に対する患者コンプライアンスの増加方法を提供する
。いくつかの実施形態において、被検者は少なくとも500、600、700、または8
00mg/m2の蓄積投与量で治療を完了する。いくつかの実施形態において、被検者は
少なくとも500~800mg/m2の蓄積投与量で治療を完了する。いくつかの実施形
態において、選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤はブフロメジル
でない。いくつかの実施形態において、この方法は、癌がOCT1またはOCT3の少な
くとも一方を発現するかどうか判定するステップをさらに含む。いくつかの実施形態にお
いて、癌はOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現する。
【0211】
いくつかの実施形態において、本開示は、治療有効量のシスプラチンであるプラチナ薬
剤を必要としている被検者に投与すること;及び上記必要としている被検者におけるプラ
チナ薬剤誘発性毒性を減少させるのに有効な投与量で、選択的有機カチオントランスポー
ター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与し、それによって、上記被検者
が少なくとも100mg/m2の蓄積投与量で治療を完了することを含む、必要としてい
る被検者における癌の治療に対する患者コンプライアンスの増加方法を提供する。いくつ
かの実施形態において、被検者は、100mg/m2、200mg/m2、300mg/
m2、400mg/m2、500mg/m2または600mg/m2の蓄積投与量で治療
を完了する。いくつかの実施形態において、被検者は少なくとも100mg/m2の蓄積
投与量で治療を完了する。いくつかの実施形態において、被検者は少なくとも300mg
/m2の蓄積投与量で治療を完了する。いくつかの実施形態において、被検者は少なくと
も100~300mg/m2の蓄積投与量で治療を完了する。いくつかの実施形態におい
て、選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤はブフロメジルでない。
いくつかの実施形態において、この方法は、癌がOCT1またはOCT3の少なくとも一
方を発現するかどうか判定するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、癌
はOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現する。
【0212】
いくつかの実施形態において、本開示は、必要としている被検者において、ブフロメジ
ルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害
剤のIC50の2~5倍である、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カ
チオントランスポーター2(OCT2)阻害剤の血漿レベルを達成するための有効投与量
を決定すること;オキサリプラチン及びシスプラチンからなる群から選択される治療有効
量のプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与すること;ならびに上記必要としている
被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させるのに有効な投与量で、ブフロメジル
またはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤
を必要としている被検者に投与し、それによって、上記被検者が少なくとも100mg/
m2の蓄積投与量で治療を完了することを含む、必要としている被検者における癌の治療
に対する患者コンプライアンスの増加方法を提供する。いくつかの実施形態において、被
検者は少なくとも200、300、400、500、600、700、または800mg
/m2の蓄積投与量で治療を完了する。いくつかの実施形態において、被検者は少なくと
も500~800mg/m2の蓄積投与量で治療を完了する。いくつかの実施形態におい
て、被検者は少なくとも100mg/m2の蓄積投与量で治療を完了する。いくつかの実
施形態において、被検者は少なくとも300mg/m2の蓄積投与量で治療を完了する。
いくつかの実施形態において、被検者は少なくとも100~300mg/m2の蓄積投与
量で治療を完了する。いくつかの実施形態において、この方法は、癌がOCT1またはO
CT3の少なくとも一方を発現するかどうか判定するステップをさらに含む。いくつかの
実施形態において、癌はOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現する。
【0213】
選択的OCT2阻害剤への曝露の不必要な継続を避けるためのCIPNに対する保護の中
間評価
プラチナ薬剤(例えばオキサリプラチン及びシスプラチン)に起因するCIPN及び神
経細胞の損傷または死の予防において、固有の毒性を有し得るブフロメジル及びドルテグ
ラビルなどの保護剤の最大曝露量を制限することが重要である。これらの毒性は、選択的
OCT2阻害剤の血漿レベルが
図33中のC
Hとして定義される安全レベルを超えた場合
、特に繰り返し超過した場合に最もよく明らかとなる。これらの毒性を制限するために、
選択的OCT2阻害剤の血漿レベルを監視して決してC
Hを超えないようにするか、また
はある中間の時点でプラチナ薬剤(例えばオキサリプラチンまたはシスプラチン)毒性の
減少に有効でないと分かった場合に阻害剤での治療を中断することが重要である。患者は
数か月にわたって多くのサイクル(典型的には、オキサリプラチンで10~12、シスプ
ラチンで4~8)の治療を必要とするので、高血漿レベルの選択的OCT2阻害剤(例え
ばブフロメジル及びドルテグラビル)への不必要な曝露を避けることが重要である。
【0214】
幸運にも、予防療法がオキサリプラチン及びシスプラチンによって引き起こされる末梢
神経障害を軽減するかどうか推定するために用いることのできる、認知されており、十分
に実証された中間の客観的尺度が存在し、Velasco(Velasco R, Br
una J, Briani C, et al. J Neurol Neurosu
rg Psychiatry 2014;85:392-398.)に記載されている方
法を用いる。こうした評価を行う中間の時点は、プラチナ薬剤(例えばオキサリプラチン
)治療のわずか3または4サイクル後である。これらの尺度に保護が見られなければ、選
択的OCT2阻害剤、例えばブフロメジルまたはドルテグラビルなどを継続しても効果が
ない。この方法はVelasco 2014に記載されているような方法を用いるであろ
う。Velascoは、中間フォローアップで得られた3つの変数、すなわち、急性症状
の数(OR 1.9;CI95% 1.2~3.2;p=0.012)ならびに橈骨神経
(OR 41.4;CI95% 4.98~343.1;p=0.001)及び背側腓腹
神経(OR 24.96;CI95% 2.6~239.4;p=0.005)における
感覚神経活動電位振幅のベースライン値からの30%を超える減少が、独立して重度のO
XA-IPNを発症するリスクと関連することを見出した。そのため、3、4または6回
のプラチナ薬剤(例えばオキサリプラチン)サイクルの後でこれらのパラメータに顕著な
悪化があった場合(選択的OCT2阻害剤で治療されているにもかかわらず)、不必要で
潜在的に有害な薬剤へのさらなる曝露を避けるために、中間の時点で選択的OCT2阻害
剤(例えばブフロメジルまたはドルテグラビル)の投与を中断する。同様のアプローチを
、典型的に250~350mg/m2の投与後に末梢神経障害を引き起こすシスプラチン
に適用することができる(Argyriou, et. al., Critical
Reviews in Oncology/Hematology 82(2012)5
1-77)。
【0215】
本開示は、OCT2阻害剤の投与後にプラチナ薬剤誘発性毒性を評価する開示の方法を
提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、プラチナ薬剤の投与前に被検者の感
覚神経活動電位または感覚神経伝導のベースラインを確立することによってプラチナ薬剤
誘発性毒性を評価する開示の方法を提供する。いくつかの実施形態において、プラチナ薬
剤誘発性毒性は治療の中間点付近で評価される。いくつかの実施形態において、プラチナ
薬剤誘発性毒性は200mg/m2の蓄積投与量での治療後に評価される。いくつかの実
施形態において、プラチナ薬剤誘発性毒性は、200mg/m2、300mg/m2、4
00mg/m2、500mg/m2、600mg/m2、700mg/m2または800
mg/m2の蓄積投与量での治療後に評価される。
【0216】
医療での使用
本明細書に記載するように、選択的OCT2阻害剤は、必要としている被検者の癌の治
療における使用についての本明細書の教示に従って、及び本明細書で教示した方法につい
て記載したような変形形態に関して用いられ得るが、このOCT2阻害剤はオキサリプラ
チン及びシスプラチンからなる群から選択されるプラチナ薬剤との併用のためのものであ
る。
【0217】
癌の治療のための医薬品の調製における選択的OCT2阻害剤の使用も、本明細書で提
供した教示に基づいて、及び本明細書で教示した方法について記載したような変形形態に
関して企図されるが、この医薬品はオキサリプラチン及びシスプラチンからなる群から選
択されるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0218】
癌の治療のための医薬品の調製におけるオキサリプラチン及びシスプラチンからなる群
から選択されるプラチナ薬剤の使用も、本明細書で提供した教示に基づいて、及び本明細
書で教示した方法について記載したような変形形態に関して企図されるが、この医薬品は
選択的OCT2阻害剤との併用のためのものである。
【0219】
上記の使用のある実施形態において、OCT2阻害剤は、プラチナ薬剤誘発性毒性を減
少させることができる投与量での投与のためのものである。ある実施形態において、OC
T2阻害剤は、1日当たりX~Ymg/kgの投与量での投与のためのものである。
【0220】
例示的実施形態
実施形態I-1:一実施形態において、本開示は、
有機カチオントランスポーター2(OCT2)を発現する細胞にプラチナ薬剤を与えるこ
と;及び
細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させるOCT2阻害剤を与えること
を含み、
OCT2阻害剤がブフロメジルまたはブフロメジル塩であり、細胞におけるプラチナ薬剤
誘発性毒性を減少させる、OCT2を発現する細胞におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減
少方法を提供する。
【0221】
実施形態I-2:一実施形態において、本開示は、
有機カチオントランスポーター2(OCT2)を発現する細胞にプラチナ薬剤を与えるこ
と;及び
細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させるOCT2阻害剤を与えること
を含み、
OCT2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビル塩であり、細胞におけるプラチナ
薬剤誘発性毒性を減少させる、OCT2を発現する細胞におけるプラチナ薬剤誘発性毒性
の減少方法を提供する。
【0222】
実施形態I-3:一実施形態において、本開示は、
有機カチオントランスポーター2(OCT2)を発現する細胞にプラチナ薬剤を与えるこ
と;及び
細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させるOCT2阻害剤を与えること
を含み、
OCT2阻害剤がイミダゾールを含み、細胞におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させ
る、OCT2を発現する細胞におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供する。
【0223】
実施形態I-4:実施形態I-3のさらなる実施形態において、OCT2阻害剤はミコ
ナゾールまたはその塩である。
【0224】
実施形態I-5:実施形態I-1~I-4のいずれかのさらなる実施形態において、プ
ラチナ薬剤及びOCT2阻害剤は同時に与えられる。
【0225】
実施形態I-6:実施形態I-1~I-4のいずれかのさらなる実施形態において、O
CT2阻害剤はプラチナ薬剤の前に与えられる。
【0226】
実施形態I-7:実施形態I-1~I-4のいずれかのさらなる実施形態において、O
CT2阻害剤はプラチナ薬剤の後に与えられる。
【0227】
実施形態I-8:実施形態I-1~I-7のいずれかのさらなる実施形態において、O
CT2を発現する細胞は、腎細胞、ニューロン細胞、耳細胞、及び血液細胞からなる群か
ら選択される細胞である。
【0228】
実施形態I-9:実施形態I-8のさらなる実施形態において、細胞は感覚ニューロン
細胞である。
【0229】
実施形態I-10:実施形態I-8のさらなる実施形態において、細胞は腎細胞である
。
【0230】
実施形態I-11:実施形態I-1~I-10のいずれかのさらなる実施形態において
、プラチナ薬剤はオキサリプラチンである。
【0231】
実施形態I-12:実施形態I-1~I-10のいずれかのさらなる実施形態において
、プラチナ薬剤はシスプラチンである。
【0232】
実施形態I-13:実施形態I-1~I-10のいずれかのさらなる実施形態において
、プラチナ薬剤はテトラプラチンである。
【0233】
実施形態I-14:実施形態I-1~I-13のいずれかのさらなる実施形態において
、OCT2を発現する細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みは、OCT2阻害剤の
不在下での細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みと比較して、少なくとも50%、
少なくとも70%または少なくとも90%阻害される。
【0234】
実施形態I-15:一実施形態において、本開示は、
有機カチオントランスポーター2(OCT2)を発現する細胞を含む被検者にプラチナ薬
剤を与えること;及び
被検者にOCT2阻害剤を与えること
を含み、
OCT2阻害剤がブフロメジルまたはブフロメジル塩であり、OCT2を発現する細胞内
へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させ、それによって被検者におけるプラチナ
薬剤誘発性毒性を減少させる、被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供
する。
【0235】
実施形態I-16:一実施形態において、本開示は、
有機カチオントランスポーター2(OCT2)を発現する細胞を含む被検者にプラチナ薬
剤を与えること;及び
被検者にOCT2阻害剤を与えること
を含み、
OCT2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビル塩であり、OCT2を発現する細
胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させ、それによって被検者におけるプラ
チナ薬剤誘発性毒性を減少させる、被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を
提供する。
【0236】
実施形態I-17:一実施形態において、本開示は、
有機カチオントランスポーター2(OCT2)を発現する細胞を含む被検者にプラチナ薬
剤を与えること;及び
被検者にOCT2阻害剤を与えること
を含み、
OCT2阻害剤がイミダゾールを含み、OCT2を発現する細胞内へのOCT2媒介プラ
チナ薬剤取込みを減少させ、それによって被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少
させる、被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供する。
【0237】
実施形態I-18:実施形態I-17のさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は
ミコナゾールまたはその塩である。
【0238】
実施形態I-19:一実施形態において、本開示は、
OCT2を発現する細胞を含む被検者にOCT2阻害剤を与えること;
を含み、
OCT2阻害剤がブフロメジルまたはブフロメジル塩であり、被検者がプラチナ薬剤を与
えられているか与えられることになり、OCT2阻害剤がOCT2を発現する細胞内への
OCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させ、それによって被検者におけるプラチナ薬剤
誘発性毒性を減少させる、被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供する
。
【0239】
実施形態I-20:一実施形態において、本開示は、
OCT2を発現する細胞を含む被検者にOCT2阻害剤を与えること;
を含み、
OCT2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビル塩であり、被検者がプラチナ薬剤
を与えられているか与えられることになり、OCT2阻害剤がOCT2を発現する細胞内
へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させ、それによって被検者におけるプラチナ
薬剤誘発性毒性を減少させる、被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供
する。
【0240】
実施形態I-21:一実施形態において、本開示は、
OCT2を発現する細胞を含む被検者にOCT2阻害剤を与えること;
を含み、
OCT2阻害剤がイミダゾールを含み、被検者がプラチナ薬剤を与えられているか与えら
れることになり、OCT2阻害剤がOCT2を発現する細胞内へのOCT2媒介プラチナ
薬剤取込みを減少させ、それによって被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させ
る、被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供する。
【0241】
実施形態I-22:実施形態I-21のさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は
ミコナゾールまたはその塩である。
【0242】
実施形態I-23:実施形態I-15~I-22のいずれかのさらなる実施形態におい
て、プラチナ薬剤及びOCT2阻害剤は同時に与えられる。
【0243】
実施形態I-24:実施形態I-15~I-22のいずれかのさらなる実施形態におい
て、OCT2阻害剤はプラチナ薬剤の前に与えられる。
【0244】
実施形態I-25:実施形態I-15~I-22のいずれかのさらなる実施形態におい
て、OCT2阻害剤はプラチナ薬剤の後に与えられる。
【0245】
実施形態I-26:実施形態I-15~I-25のいずれかのさらなる実施形態におい
て、プラチナ薬剤はオキサリプラチンである。
【0246】
実施形態I-27:実施形態I-15~I-25のいずれかのさらなる実施形態におい
て、プラチナ薬剤はシスプラチンである。
【0247】
実施形態I-28:実施形態I-15~I-25のいずれかのさらなる実施形態におい
て、プラチナ薬剤はテトラプラチンである。
【0248】
実施形態I-29:実施形態I-15~I-28のいずれかのさらなる実施形態におい
て、被検者に与えられるOCT2阻害剤の量は治療有効投与量未満である。
【0249】
実施形態I-30:実施形態I-15~I-29のいずれかのさらなる実施形態におい
て、被検者に与えられるOCT2阻害剤の量は1日当たり10mg~2000mgである
。
【0250】
実施形態I-31:実施形態I-15~I-30のいずれかのさらなる実施形態におい
て、1回の治療期間の間に被検者に与えられるプラチナ薬剤の量は標準的な臨床診療の下
で与えられるものよりも多い。
【0251】
実施形態I-32:実施形態I-15~I-31のいずれかのさらなる実施形態におい
て、治療の全過程にわたって被検者に与えられるプラチナ薬剤の蓄積量は、標準的な臨床
診療の下で与えられるものよりも多い。
【0252】
実施形態I-33:実施形態I-15~I-32のいずれかのさらなる実施形態におい
て、標準的な臨床診療下よりも高い頻度でプラチナ薬剤を与える。
【0253】
実施形態I-34:実施形態I-15~I-33のいずれかのさらなる実施形態におい
て、プラチナ薬剤誘発性毒性は、腎毒性、神経毒性、血液毒性、及び耳毒性からなる群か
ら選択される。
【0254】
実施形態I-35:実施形態I-34のさらなる実施形態において、プラチナ薬剤誘発
性毒性は神経毒性である。
【0255】
実施形態I-36:実施形態I-35のさらなる実施形態において、神経毒性は末梢神
経障害である。
【0256】
実施形態I-37:実施形態I-36のさらなる実施形態において、末梢神経障害はグ
レード3またはグレード4末梢神経障害である。
【0257】
実施形態I-38:実施形態I-34のさらなる実施形態において、プラチナ薬剤誘発
性毒性は腎毒性である。
【0258】
実施形態I-39:実施形態I-15~I-38のいずれかのさらなる実施形態におい
て、被検者はヒトまたは非ヒト動物である。
【0259】
実施形態I-40:実施形態I-15~I-39のいずれかのさらなる実施形態におい
て、OCT2阻害剤は、経腸、静脈内、筋肉内、腹腔内、経口、または腸管外で与えられ
る。
【0260】
実施形態I-41:実施形態I-15~I-40のいずれかのさらなる実施形態におい
て、一群の被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の有病率は、OCT2阻害剤を与えら
れていない一群の被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の有病率と比較して、少なくと
も10%減少される。
【0261】
実施形態I-42:一実施形態において、本開示は、
癌を有する被検者に治療有効量のプラチナ薬剤を与えること;及び
被検者に有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を与えること
を含み、
被検者が、OCT2阻害剤によって阻害されていないプラチナ薬剤取込みトランスポータ
ーを発現する癌細胞を含み、
OCT2阻害剤がブフロメジルまたはブフロメジル塩であり、
それによって被検者の癌を治療する、被検者における癌の治療方法を提供する。
【0262】
実施形態I-43:一実施形態において、本開示は、
癌を有する被検者に治療有効量のプラチナ薬剤を与えること;及び
被検者に有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を与えること
を含み、
被検者が、OCT2阻害剤によって阻害されていないプラチナ薬剤取込みトランスポータ
ーを発現する癌細胞を含み、
OCT2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビル塩であり、
それによって被検者の癌を治療する、被検者における癌の治療方法を提供する。
【0263】
実施形態I-44:一実施形態において、本開示は、
癌を有する被検者に治療有効量のプラチナ薬剤を与えること;及び
被検者に有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を与えること
を含み、
被検者が、OCT2阻害剤によって阻害されていないプラチナ薬剤取込みトランスポータ
ーを発現する癌細胞を含み、
OCT2阻害剤がイミダゾールを含み、
それによって被検者の癌を治療する、被検者における癌の治療方法を提供する。
【0264】
実施形態I-45:実施形態I-44のさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は
ミコナゾールまたはその塩である。
【0265】
実施形態I-46:一実施形態において、本開示は、
癌を有する被検者に治療有効量のプラチナ薬剤を与えること;及び
被検者にOCT2阻害剤を与えること
を含み、
被検者が、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを
発現する癌細胞を含み、
OCT2阻害剤がブフロメジルまたはブフロメジル塩であり、
それによってプラチナ薬剤治療の効力を増加させる、被検者におけるプラチナ薬剤治療の
効力の増加方法を提供する。
【0266】
実施形態I-47:一実施形態において、本開示は、
癌を有する被検者に治療有効量のプラチナ薬剤を与えること;及び
被検者にOCT2阻害剤を与えること
を含み、
被検者が、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを
発現する癌細胞を含み、
OCT2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビル塩であり、
それによってプラチナ薬剤治療の効力を増加させる、被検者におけるプラチナ薬剤治療の
効力の増加方法を提供する。
【0267】
実施形態I-48:一実施形態において、本開示は、
癌を有する被検者に治療有効量のプラチナ薬剤を与えること;及び
被検者にOCT2阻害剤を与えること
を含み、
被検者が、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを
発現する癌細胞を含み、
OCT2阻害剤がイミダゾールを含み、
それによってプラチナ薬剤治療の効力を増加させる、被検者におけるプラチナ薬剤治療の
効力の増加方法を提供する。
【0268】
実施形態I-49:実施形態I-48のさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は
ミコナゾールまたはその塩である。
【0269】
実施形態I-50:実施形態I-42~I-49のいずれかのさらなる実施形態におい
て、プラチナ薬剤及びOCT2阻害剤は同時に与えられる。
【0270】
実施形態I-51:実施形態I-42~I-49のいずれかのさらなる実施形態におい
て、OCT2阻害剤はプラチナ薬剤の前に与えられる。
【0271】
実施形態I-52:実施形態I-42~I-49のいずれかのさらなる実施形態におい
て、OCT2阻害剤はプラチナ薬剤の後に与えられる。
【0272】
実施形態I-53:実施形態I-42~I-52のいずれかのさらなる実施形態におい
て、プラチナ薬剤はオキサリプラチンである。
【0273】
実施形態I-54:実施形態I-42~I-52のいずれかのさらなる実施形態におい
て、プラチナ薬剤はシスプラチンである。
【0274】
実施形態I-55:実施形態I-42~I-52のいずれかのさらなる実施形態におい
て、プラチナ薬剤はテトラプラチンである。
【0275】
実施形態I-56:実施形態I-42~I-54のいずれかのさらなる実施形態におい
て、被検者に与えられるOCT2阻害剤の量は治療有効投与量未満である。
【0276】
実施形態I-57:実施形態I-42~I-56のいずれかのさらなる実施形態におい
て、被検者に与えられるOCT2阻害剤の量は1日当たり10mg~2000mgである
。
【0277】
実施形態I-58:実施形態I-42~I-57のいずれかのさらなる実施形態におい
て、1回の治療期間の間に被検者に与えられるプラチナ薬剤の量は標準的な臨床診療の下
で与えられるものよりも多い。
【0278】
実施形態I-59:実施形態I-42~I-58のいずれかのさらなる実施形態におい
て、治療の全過程にわたって被検者に与えられるプラチナ薬剤の蓄積量は、標準的な臨床
診療の下で与えられるものよりも多い。
【0279】
実施形態I-60:実施形態I-42~I-59のいずれかのさらなる実施形態におい
て、標準的な臨床診療下よりも高い頻度でプラチナ薬剤を与える。
【0280】
実施形態I-61:実施形態I-42~I-60のいずれかのさらなる実施形態におい
て、癌は、膵腺癌、膨大部及び膨大部周囲癌、肛門腺癌、虫垂癌、肝細胞癌、結腸癌また
は直腸癌、上皮性卵巣癌、ファロピウス管癌、原発性腹膜癌、食道または食道胃接合部癌
、胃癌、小腸癌、精巣癌、胆管癌、膵腺癌、原発不明癌、慢性リンパ性白血病/小リンパ
球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫、AIDS関連B細胞
リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、胃MALTリンパ腫、非
胃MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、菌状息肉症/セザリー症候群、脾辺縁帯リ
ンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、原発性皮膚B細胞リンパ腫、原発性皮膚未分化大細胞リン
パ腫(ALCL)、肺癌、肝癌、ならびに胆嚢癌からなる群から選択される。
【0281】
実施形態I-62:実施形態I-61のさらなる実施形態において、癌は結腸癌または
直腸癌である。
【0282】
実施形態I-63:実施形態I-61のさらなる実施形態において、癌は肝癌である。
【0283】
実施形態I-64:実施形態I-61のさらなる実施形態において、癌は肺癌である。
【0284】
実施形態I-65:実施形態I-42~I-64のいずれかのさらなる実施形態におい
て、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターは、有機
カチオントランスポーター1(OCT1)取込みトランスポーターである。
【0285】
実施形態I-66:実施形態I-42~I-64のいずれかのさらなる実施形態におい
て、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターは、有機
カチオントランスポーター3(OCT3)取込みトランスポーターである。
【0286】
実施形態I-67:実施形態I-42~I-64のいずれかのさらなる実施形態におい
て、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターは、銅ト
ランスポーターI(CTR1)取込みトランスポーターである。
【0287】
実施形態I-68:実施形態I-42~I-67のいずれかのさらなる実施形態におい
て、この方法は、癌細胞がOCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトラ
ンスポーターを発現するかどうか判定するステップをさらに含む。
【0288】
実施形態I-69:実施形態I-42~I-68のいずれかのさらなる実施形態におい
て、プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の化学療法剤を被検者に与える
ことをさらに含む。
【0289】
実施形態I-70:実施形態I-69のさらなる実施形態において、1つ以上の追加の
化学療法剤は、5-フルオロウラシル、ベバシズマブ、カペセタビン(capeceta
bine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及びロイコボリンからなる群から選択される
。
【0290】
実施形態I-71:実施形態I-42~I-70のいずれかのさらなる実施形態におい
て、被検者はヒトまたは非ヒト動物である。
【0291】
実施形態I-72:実施形態I-42~I-71のいずれかのさらなる実施形態におい
て、OCT2阻害剤は、経腸、静脈内、筋肉内、腹腔内、経口、または腸管外で与えられ
る。
【0292】
実施形態I-73:一実施形態において、本開示は、
プラチナ薬剤、
ブフロメジルまたはブフロメジル塩であるOCT2阻害剤、及び
医薬品として許容可能な担体
を含む医薬組成物を提供する。
【0293】
実施形態I-74:一実施形態において、本開示は、
プラチナ薬剤、
ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩であるOCT2阻害剤、及び
医薬品として許容可能な担体
を含む医薬組成物を提供する。
【0294】
実施形態I-75:一実施形態において、本開示は、
プラチナ薬剤、
イミダゾールを含むOCT2阻害剤、及び
医薬品として許容可能な担体
を含む医薬組成物を提供する。
【0295】
実施形態I-76:実施形態I-75のさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は
ミコナゾールまたはその塩である。
【0296】
実施形態I-77:実施形態I-73~I-76のいずれかのさらなる実施形態におい
て、プラチナ薬剤の量は、プラチナ薬剤を含む標準的な医薬組成物中に存在するものより
も多い。
【0297】
実施形態I-78:実施形態I-73~I-77のいずれかのさらなる実施形態におい
て、プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の化学療法剤をさらに含む。
【0298】
実施形態I-79:実施形態I-78のさらなる実施形態において、1つ以上の追加の
化学療法剤は、5-フルオロウラシル、ベバシズマブ、カペセタビン(capeceta
bine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及びロイコボリンからなる群から選択される
。
【0299】
実施形態I-80:実施形態I-73~I-79のいずれかのさらなる実施形態におい
て、プラチナ薬剤はオキサリプラチンである。
【0300】
実施形態I-81:実施形態I-73~I-79のいずれかのさらなる実施形態におい
て、プラチナ薬剤はシスプラチンである。
【0301】
実施形態I-82:実施形態I-73~I-79のいずれかのさらなる実施形態におい
て、プラチナ薬剤はテトラプラチンである。
【0302】
実施形態I-83:実施形態I-3、I-17、I-21、I-44、またはI-48
のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は、少なくとも1のCmax,
u/IC50またはCmax/IC50,appを有する。
【0303】
実施形態I-84:実施形態I-3、I-17、I-21、I-44、またはI-48
のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は、少なくとも3のCmax,
u/IC50またはCmax/IC50,appを有する。
【0304】
実施形態I-85:実施形態I-3、I-17、I-21、I-44、I-48、I-
83、またはI-84のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤はその臨
床濃度では細胞にとって毒性でない。
【0305】
実施形態I-86:実施形態I-3、I-17、I-21、I-44、I-48、また
はI-83~I-85のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は、OC
T2阻害剤の不在下における臨床濃度のプラチナ薬剤の抗癌活性と比較して、20%を超
えて臨床濃度のプラチナ薬剤の抗癌活性を減少させない。
【0306】
実施形態I-87:実施形態I-3、I-17、I-21、I-44、I-48、また
はI-83~I-86のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は、OC
T2阻害剤の不在下における他のトランスポーターを介した臨床濃度のプラチナ薬剤の取
込みと比較して、20%を超えて他のトランスポーターを介した細胞内への臨床濃度のプ
ラチナ薬剤の取込みを減少させない。
【0307】
実施形態I-88:実施形態I-3、I-17、I-21、I-44、I-48、また
はI-83~I-87のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は、OC
T2阻害剤の不在下における臨床濃度のプラチナ薬剤の流出と比較して、20%を超えて
臨床濃度のプラチナ薬剤の流出を減少させない。
【0308】
実施形態I-89:実施形態I-3、I-17、I-21、I-44、I-48、また
はI-83~I-88のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は2時間
を超える平均半減期を有する。
【0309】
実施形態I-90:実施形態I-75のさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は
、少なくとも1のCmax,u/IC50またはCmax/IC50,appを有する。
【0310】
実施形態I-91:実施形態I-75のさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は
、少なくとも3のCmax,u/IC50またはCmax/IC50,appを有する。
【0311】
実施形態I-92:実施形態I-75、I-90、またはI-91のいずれかのさらな
る実施形態において、OCT2阻害剤はその臨床濃度では細胞にとって毒性でない。
【0312】
実施形態I-93:実施形態I-75またはI-90~I-92のいずれかのさらなる
実施形態において、OCT2阻害剤は、OCT2阻害剤の不在下における臨床濃度のプラ
チナ薬剤の抗癌活性と比較して、20%を超えて臨床濃度のプラチナ薬剤の抗癌活性を減
少させない。
【0313】
実施形態I-94:実施形態I-75またはI-90~I-93のいずれかのさらなる
実施形態において、OCT2阻害剤は、OCT2阻害剤の不在下における他のトランスポ
ーターを介した臨床濃度のプラチナ薬剤の取込みと比較して、20%を超えて他のトラン
スポーターを介した細胞内への臨床濃度のプラチナ薬剤の取込みを減少させない。
【0314】
実施形態I-95:実施形態I-75またはI-90~I-94のいずれかのさらなる
実施形態において、OCT2阻害剤は、OCT2阻害剤の不在下における臨床濃度のプラ
チナ薬剤の流出と比較して、20%を超えて臨床濃度のプラチナ薬剤の流出を減少させな
い。
【0315】
実施形態I-96:実施形態I-75またはI-90~I-95のいずれかのさらなる
実施形態において、OCT2阻害剤は2時間を超える平均半減期を有する。
【0316】
実施形態I-97:一実施形態において、本開示は、
少なくとも1つの癌細胞を含むサンプルを取得すること;及び
癌細胞が有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤によって阻害されないプラ
チナ薬剤取込みトランスポーターを発現するかどうか判定すること
を含む、癌を有する被検者におけるプラチナ薬剤及びOCT2阻害剤療法の効力の予測方
法を提供するが、
ここで、プラチナ薬剤及びOCT2阻害剤療法は、癌細胞がOCT2阻害剤によって阻害
されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現する被検者において有効な可能性が
あるものである。
【0317】
実施形態I-98:一実施形態において、本開示は、
少なくとも1つの癌細胞を含むサンプルを取得すること;及び
癌細胞が有機カチオントランスポーター2(OCT2)を発現するかどうか判定すること
を含む、癌を有する被検者におけるプラチナ薬剤及びOCT2阻害剤療法の効力の予測方
法を提供するが、
ここで、プラチナ薬剤及びOCT2阻害剤療法は、癌細胞が主にOCT2を発現する被検
者において有効である可能性がないものである。
【0318】
実施形態I-99:実施形態I-97またはI-98のいずれかのさらなる実施形態に
おいて、プラチナ薬剤はオキサリプラチンである。
【0319】
実施形態I-100:実施形態I-97またはI-98のいずれかのさらなる実施形態
において、プラチナ薬剤はシスプラチンである。
【0320】
実施形態I-101:実施形態I-97またはI-98のいずれかのさらなる実施形態
において、プラチナ薬剤はテトラプラチンである。
【0321】
実施形態I-102:実施形態I-97またはI-98のいずれかのさらなる実施形態
において、OCT2阻害剤療法はブフロメジルまたはブフロメジル塩を投与することを含
む。
【0322】
実施形態I-103:実施形態I-97またはI-98のいずれかのさらなる実施形態
において、OCT2阻害剤療法はドルテグラビルまたはドルテグラビル塩を投与すること
を含む。
【0323】
実施形態I-104:実施形態I-97またはI-98のいずれかのさらなる実施形態
において、OCT2阻害剤療法はイミダゾールを含むOCT2阻害剤を投与することを含
む。
【0324】
実施形態I-105:実施形態I-104のさらなる実施形態において、OCT2阻害剤
療法はミコナゾールまたはその塩を含むOCT2阻害剤を投与することを含む。
【0325】
オキサリプラチン及び神経毒性の例示的実施形態
実施形態II-1:一実施形態において、本開示は、
オキサリプラチンであるプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与すること;及び
有効投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としてい
る被検者に投与すること
を含み、
必要としている被検者が癌を有する、必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性
神経毒性の減少方法を提供する。
【0326】
実施形態II-2:一実施形態において、本開示は、
治療有効量のオキサリプラチンであるプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与するこ
と;及び
有効投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としてい
る被検者に投与すること
を含む、必要としている被検者における癌の治療方法を提供する。
【0327】
実施形態II-3:一実施形態において、本開示は、
治療有効量のオキサリプラチンであるプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与するこ
と;及び
上記必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性神経毒性を減少させるのに有効な
投与量で、選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としている
被検者に投与し、それによって、被検者が少なくとも500mg/m2の蓄積投与量で治
療を完了すること
を含む、必要としている被検者における癌の治療に対する患者コンプライアンスの増加方
法を提供する。
【0328】
実施形態II-4:投与されるプラチナ薬剤の治療有効量が被検者においてプラチナ薬
剤誘発性神経毒性を引き起こすと知られている、実施形態II-2または3の方法。
【0329】
実施形態II-5:神経毒性が末梢神経毒性である、実施形態II-1または3~4の
いずれかの方法。
【0330】
実施形態II-6:神経毒性が感覚ニューロンへの損傷である、実施形態II-1また
は3~4のいずれかの方法。
【0331】
実施形態II-7:神経毒性が運動ニューロンへの損傷である、実施形態II-1また
は3~4のいずれかの方法。
【0332】
実施形態II-7a:神経毒性が慢性神経毒性である、実施形態II-1~7のいずれ
かの方法。
【0333】
実施形態II-7b:神経毒性が急性症候群一過性神経毒性である、実施形態II-1
~7のいずれかの方法。
【0334】
実施形態II-7c:神経毒性が最初の治療の1時間~7日後に生じる、実施形態II
-1~7のいずれかの方法。
【0335】
実施形態II-7d:被検者が少なくとも500mg/m2の蓄積投与量で治療を完了
した後に神経毒性が生じる、実施形態II-1~7のいずれかの方法。
【0336】
実施形態II-8:神経毒性が背根神経節(DRG)への損傷である、実施形態II-
1または3~4のいずれかの方法。
【0337】
実施形態II-9:選択的OCT2阻害剤の投与量が上記必要としている被検者におけ
るプラチナ薬剤誘発性神経毒性を最小限にするのに有効である、実施形態II-1~8の
いずれかの方法。
【0338】
実施形態II-10:少なくとも100mg/m2の蓄積投与量で治療された患者にお
いて、選択的OCT2阻害剤の投与量が、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-C
TC)知覚性スケール、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CTC)運動性スケ
ール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自己
報告アンケート調査(EORTC QOL-CIPN20)から選択される方法によって
評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有効である、実施
形態II-1~8のいずれかの方法。
【0339】
実施形態II-11:少なくとも30mg/週/m2のプラチナ薬剤投与量強度で治療
された患者において、選択的OCT2阻害剤の投与量が、米国国立癌研究所-共通毒性規
準(NCI-CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CT
C)運動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関C
IPN限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL-CIPN20)から選択され
る方法によって評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有
効である、実施形態II-1~8のいずれかの方法。
【0340】
実施形態II-12:少なくとも80mg/m2のプラチナ薬剤投与量で治療された患
者において、選択的OCT2阻害剤の投与量が、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NC
I-CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CTC)運動
性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限
定自己報告アンケート調査(EORTC QOL-CIPN20)から選択される方法に
よって評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有効である
、実施形態II-1~8のいずれかの方法。
【0341】
実施形態II-13:プラチナ薬剤の投与後に被検者におけるプラチナ薬剤誘発性神経
毒性を評価することをさらに含む、実施形態II-1~12のいずれかの方法。
【0342】
実施形態II-14:神経毒性が、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CTC
)知覚性スケール、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CTC)運動性スケール
、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報告
アンケート調査(EORTC QOL-CIPN20)から選択される方法によって評価
される、実施形態II-13の方法。
【0343】
実施形態II-15:神経毒性が感覚神経活動電位、感覚神経伝導速度、冷痛閾値、温
痛閾値、機械的疼痛閾値、冷知覚閾値、温知覚閾値、機械的触覚閾値、振動知覚閾値、電
流知覚閾値、刺針感度、深部腱反射及び握力から選択される測定値によって評価される、
実施形態II-13の方法。
【0344】
実施形態II-16:神経毒性が、橈骨、背側腓腹、腓腹及び尺骨神経の1つにおける
感覚神経活動電位を測定することによって評価される、実施形態II-13の方法。
【0345】
実施形態II-17:プラチナ薬剤の投与前に被検者のベースラインを確立することを
さらに含む、実施形態II-13~16のいずれかの方法。
【0346】
実施形態II-18:プラチナ薬剤誘発性神経毒性が治療の中間点付近で評価される、
実施形態II-13~16のいずれかの方法。
【0347】
実施形態II-19:プラチナ薬剤誘発性神経毒性が200mg/m2の蓄積投与量で
の治療後に評価される、実施形態II-13~16のいずれかの方法。
【0348】
実施形態II-20:選択的OCT2阻害剤が、ブフロメジル、ブフロメジル塩、ドル
テグラビル、及びドルテグラビル塩からなる群から選択される、実施形態II-1~8の
いずれかの方法。
【0349】
実施形態II-21:選択的OCT2阻害剤がブフロメジル、またはブフロメジル塩で
ある、実施形態II-20の方法。
【0350】
実施形態II-22:被検者に投与されるブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量
が、上記被検者の因子である、体重、体表面積、身長、年齢、性別、アルコール使用、タ
バコ使用、生活様式、腎機能、肝機能、遺伝子多型及び併用薬の少なくとも1つに基づい
て調節される、実施形態II-21の方法。
【0351】
実施形態II-23:ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量が、少なくとも0.
43mg/l、0.86mg/l、1.29mg/l、1.72mg/lまたは2.15
mg/lの、プラチナ投与期間中の血漿レベルをもたらす、実施形態II-21または2
2の方法。
【0352】
実施形態II-24:ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量が少なくとも100
mg、200mg、300mg、400mg、500mgまたは600mgである、実施
形態II-21~23のいずれかの方法。
【0353】
実施形態II-25:ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量が少なくとも1mg
/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、8
mg/kgまたは10mg/kgである、実施形態II-21~24のいずれかの方法。
【0354】
実施形態II-26:選択的OCT2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビル塩
である、実施形態II-20の方法。
【0355】
実施形態II-27:ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩の投与量が、少なくとも
1.4mg/l、2.8mg/l、4.2mg/l、5.6mg/lまたは7.0mg/
lの、プラチナ投与期間中の血漿レベルをもたらす、実施形態II-26の方法。
【0356】
実施形態II-28:ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩の投与量が少なくとも5
0mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mgまたは400m
gである、実施形態II-26または27の方法。
【0357】
実施形態II-29:ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩の投与量が少なくとも1
mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kgまたは6mg/
kgである、実施形態II-26~28のいずれかの方法。
【0358】
実施形態II-30:選択的OCT2阻害剤がプラチナ薬剤の効力を減少させない、実
施形態II-1~29のいずれかの方法。
【0359】
実施形態II-31:最大許容血漿濃度(MTC)未満、かつ、ヒト血清または4%ウ
シ血清アルブミンを含有するアッセイバッファー中で評価した20μMのオキサリプラチ
ンのOCT2媒介輸送についてのIC50値の1倍、2倍、3倍、4倍を超えるプラチナ
薬剤投与期間中の血漿濃度をもたらす投与量で、選択的OCT2阻害剤が投与される、実
施形態II-1~30のいずれかの方法。
【0360】
実施形態II-32:選択的OCT2阻害剤が、2μM以下の、ヒト血清または4%ウ
シ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での20μMのオキサリプラチンのOCT2
媒介輸送に対するIC50を有する、実施形態II-1~19、30または31のいずれ
かの方法。
【0361】
実施形態II-33:選択的OCT2阻害剤が、OCT1-、OCT-3、及びMAT
E-1によって媒介される、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイ
溶液中での20μMのオキサリプラチン輸送に対する選択的OCT2阻害剤のIC50よ
りも少なくとも15倍小さい、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセ
イ溶液中での20μMのオキサリプラチンのOCT2媒介輸送に対するIC50を有する
、実施形態II-32の方法。
【0362】
実施形態II-34:必要としている被検者が、有機カチオントランスポーター1(O
CT1)または有機カチオントランスポーター3(OCT3)のうち少なくとも一方を発
現する癌を有する、実施形態II-1~33のいずれかの方法。
【0363】
実施形態II-35:選択的OCT2阻害剤がブフロメジル、またはブフロメジル塩で
ある、実施形態II-1~25または30~34のいずれかの方法。
【0364】
実施形態II-36:選択的OCT2阻害剤がドルテグラビル、またはドルテグラビル
塩である、実施形態II-1~20または26~34のいずれかの方法。
【0365】
実施形態II-37:プラチナ薬剤及び選択的OCT2阻害剤が同時に投与される、実
施形態II-1~36のいずれかの方法。
【0366】
実施形態II-38:選択的OCT2阻害剤がプラチナ薬剤の前に投与される、実施形
態II-1~36のいずれかの方法。
【0367】
実施形態II-39:選択的OCT2阻害剤がプラチナ薬剤の後に投与される、実施形
態II-1~36のいずれかの方法。
【0368】
実施形態II-40:1回の治療期間の間に被検者に投与されるプラチナ薬剤の量が標
準的な臨床診療の下で投与されるものよりも多い、実施形態II-1~39のいずれかの
方法。
【0369】
実施形態II-41:必要としている被検者に治療の全過程にわたって投与されるプラ
チナ薬剤の蓄積量が、標準的な臨床診療の下で投与されるものよりも多い、実施形態II
-1~40のいずれかの方法。
【0370】
実施形態II-42:標準的な臨床診療下よりも高い頻度でプラチナ薬剤が投与される
、実施形態II-1~41のいずれかの方法。
【0371】
実施形態II-43:神経毒性が末梢神経障害である、実施形態II-1または3~4
2のいずれかの方法。
【0372】
実施形態II-44:末梢神経障害がグレード3またはグレード4末梢神経障害である
、実施形態II-43の方法。
【0373】
実施形態II-45:必要としている被検者がヒトまたは非ヒト動物である、実施形態
II-1~44のいずれかの方法。
【0374】
実施形態II-46:選択的OCT2阻害剤が、経腸、静脈内、筋肉内、腹腔内、経口
、または腸管外投与される、実施形態II-1~45のいずれかの方法。
【0375】
実施形態II-47:選択的OCT2阻害剤が2つ以上の投与経路を介して投与される
、実施形態II-1~46のいずれかの方法。
【0376】
実施形態II-48:プラチナ薬剤及び選択的OCT2阻害剤が同じ投与経路を介して
投与される、実施形態II-1~46のいずれかの方法。
【0377】
実施形態II-49:選択的OCT2阻害剤が静脈内点滴によって投与される、実施形
態II-1~45のいずれかの方法。
【0378】
実施形態II-50:選択的OCT2阻害剤が静脈内注入及び静脈内点滴によって投与
される、実施形態II-1~45のいずれかの方法。
【0379】
実施形態II-51:静脈内点滴が少なくとも1時間にわたる、実施形態II-49ま
たは50の方法。
【0380】
実施形態II-52:静脈内点滴の速度が一定である、実施形態II-49または50
の方法。
【0381】
実施形態II-53:静脈内点滴の速度が一定でない、実施形態II-49または50
の方法。
【0382】
実施形態II-54:癌がOCT1を発現する、実施形態II-1~53のいずれかの
方法。
【0383】
実施形態II-55:癌がOCT3を発現する、実施形態II-1~54のいずれかの
方法。
【0384】
実施形態II-56:癌がOCT1及びOCT3を発現する、実施形態II-1~55
のいずれかの方法。
【0385】
実施形態II-57:癌が、膵腺癌、膨大部及び膨大部周囲癌、肛門腺癌、虫垂癌、肝
細胞癌、結腸癌または直腸癌、上皮性卵巣癌、ファロピウス管癌、原発性腹膜癌、食道ま
たは食道胃接合部癌、胃癌、小腸癌、精巣癌、胆管癌、膵腺癌、原発不明癌、慢性リンパ
性白血病/小リンパ球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫、
AIDS関連B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、胃M
ALTリンパ腫、非胃MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、菌状息肉症/セザリー
症候群、脾辺縁帯リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、原発性皮膚B細胞リンパ腫、原発性皮
膚未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、肺癌、肝癌、頭頸部癌、前立腺癌、平滑筋癌なら
びに胆嚢癌からなる群から選択される、実施形態II-1~56のいずれか1つの方法。
【0386】
実施形態II-58:癌が卵巣癌である、実施形態II-57の方法。
【0387】
実施形態II-59:癌が頭頸部癌である、実施形態II-57の方法。
【0388】
実施形態II-60:癌が前立腺癌である、実施形態II-57の方法。
【0389】
実施形態II-61:癌がリンパ腫である、実施形態II-57の方法。
【0390】
実施形態II-62:癌が平滑筋癌である、実施形態II-57の方法。
【0391】
実施形態II-63:癌が結腸癌または直腸癌である、実施形態II-57の方法。
【0392】
実施形態II-64:癌が肝癌である、実施形態II-57の方法。
【0393】
実施形態II-65:癌が肺癌である、実施形態II-57の方法。
【0394】
実施形態II-66:プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の癌化学療
法剤を必要としている被検者に投与することをさらに含む、実施形態II-1~65のい
ずれかの方法。
【0395】
実施形態II-67:1つ以上の追加の化学療法剤が5-フルオロウラシル、ベバシズ
マブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及び
ロイコボリンからなる群から選択される、実施形態II-66の方法。
【0396】
実施形態II-68:オキサリプラチンであるプラチナ薬剤、
ブフロメジル、ブフロメジル塩、ドルテグラビル、及びドルテグラビル塩からなる群か
ら選択される選択的OCT2阻害剤、ならびに
医薬品として許容可能な担体
を含む、静脈内投与のために製剤化された医薬組成物。
【0397】
実施形態II-69:選択的OCT2阻害剤がブフロメジル、またはブフロメジル塩で
ある、実施形態II-68の医薬組成物。
【0398】
実施形態II-70:OCT2阻害剤がドルテグラビル、またはドルテグラビル塩であ
る、実施形態II-68の医薬組成物。
【0399】
実施形態II-71:プラチナ薬剤の量が、プラチナ薬剤を含む標準的な医薬組成物中
に存在するものよりも多い、実施形態II-68~70のいずれかの医薬組成物。
【0400】
実施形態II-72:プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の癌化学療
法剤をさらに含む、実施形態II-68~71のいずれかの医薬組成物。
【0401】
実施形態II-73:1つ以上の追加の化学療法剤が5-フルオロウラシル、ベバシズ
マブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及び
ロイコボリンからなる群から選択される、実施形態II-72の医薬組成物。
【0402】
実施形態II-74:治療有効量のオキサリプラチンであるプラチナ薬剤;選択的OC
T2阻害剤及び使用のための指示書を含むキット。
【0403】
実施形態II-75:必要としている被検者に対する選択的OCT2阻害剤の望ましい
投与量を決定するための指示書をさらに含む、実施形態II-74のキット。
【0404】
実施形態II-76:投与量が、体重、体表面積、身長、年齢、性別、アルコール使用
、タバコ使用、生活様式、腎機能、肝機能、遺伝子多型及び併用薬から選択される上記被
検者の少なくとも1つの因子に基づいて決定される、実施形態II-75のキット。
【0405】
実施形態II-77:投与量が、上記被検者におけるOCT2阻害剤の血漿レベルを監
視することによって決定される、実施形態II-75のキット。
【0406】
実施形態II-78:選択的OCT2阻害剤がブフロメジルまたはブフロメジル塩であ
る、実施形態II-74~77のいずれか1つのキット。
【0407】
実施形態II-79:ブフロメジルまたはブフロメジル塩が300mg、450mg、
600mg、800mgまたは1000mgよりも多い量で存在する、実施形態II-7
8のキット。
【0408】
実施形態II-80:選択的OCT2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビル塩
である、実施形態II-74~77のいずれかのキット。
【0409】
実施形態II-81:ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩が50mg、75mg、
100mg、150mg、200mgまたは300mgよりも多い量で存在する、実施形
態II-80のキット。
【0410】
実施形態II-82:キットがプラチナ薬剤誘発性神経毒性を減少させる用途のために
意図されていることが指示書に明記されている、実施形態II-74~81のいずれかの
キット。
【0411】
実施形態II-83:キットが癌を治療する用途のために意図されていることが指示書
に明記されている、実施形態II-74~80のキット。
【0412】
実施形態II-84:プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の癌化学療
法剤をさらに含む、実施形態II-74~83のいずれかのキット。
【0413】
実施形態II-85:1つ以上の追加の化学療法剤が5-フルオロウラシル、ベバシズ
マブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及び
ロイコボリンからなる群から選択される、実施形態II-84のキット。
【0414】
シスプラチン及び毒性の例示的実施形態
実施形態III-1:一実施形態において、本開示は、
シスプラチンであるプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与すること;及び
有効投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としてい
る被検者に投与すること
を含み、
毒性が腎毒性、耳毒性または末梢神経障害であり、
必要としている被検者が癌を有する、必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性
毒性の減少方法を提供する。
【0415】
実施形態III-2:一実施形態において、本開示は、
治療有効量のシスプラチンであるプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与すること;
及び
有効投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としてい
る被検者に投与すること
を含む、必要としている被検者における癌の治療方法を提供する。
【0416】
実施形態III-3:一実施形態において、本開示は、
治療有効量のシスプラチンであるプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与すること;
及び
上記必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させるのに有効な投与
量で、選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検
者に投与し、それによって、上記被検者が少なくとも100mg/m2の蓄積投与量で治
療を完了すること
を含む、必要としている被検者における癌の治療に対する患者コンプライアンスの増加方
法を提供する。
【0417】
実施形態III-4:投与されるプラチナ薬剤の治療有効量が被検者においてプラチナ
薬剤誘発性神経毒性を引き起こすと知られている、実施形態III-2または3の方法。
【0418】
実施形態III-5:神経毒性が末梢神経毒性である、実施形態III-4の方法。
【0419】
実施形態III-6:神経毒性が感覚ニューロンへの損傷である、実施形態III-4
の方法。
【0420】
実施形態III-7:神経毒性が運動ニューロンへの損傷である、実施形態III-4
の方法。
【0421】
実施形態III-7a:神経毒性が慢性神経毒性である、実施形態III-1~7のい
ずれかの方法。
【0422】
実施形態III-7b:神経毒性が急性症候群一過性神経毒性である、実施形態III
-1~7のいずれかの方法。
【0423】
実施形態III-7c:神経毒性が最初の治療の1時間~7日後に生じる、実施形態I
II-1~7のいずれかの方法。
【0424】
実施形態III-7d:被検者が少なくとも500mg/m2の蓄積投与量で治療を完
了した後に神経毒性が生じる、実施形態III-1~7のいずれかの方法。
【0425】
実施形態III-8:神経毒性が背根神経節(DRG)への損傷である、実施形態II
I-4の方法。
【0426】
実施形態III-9:選択的OCT2阻害剤の投与量が上記必要としている被検者にお
けるプラチナ薬剤誘発性神経毒性を最小限にするのに有効である、実施形態III-1~
8のいずれかの方法。
【0427】
実施形態III-10:少なくとも100mg/m2の蓄積投与量で治療された患者に
おいて、選択的OCT2阻害剤の投与量が、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-
CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CTC)運動性ス
ケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自
己報告アンケート調査(EORTC QOL-CIPN20)から選択される方法によっ
て評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有効である、実
施形態III-1~8のいずれかの方法。
【0428】
実施形態III-11:少なくとも30mg/週/m2のプラチナ薬剤投与量強度で治
療された患者において、選択的OCT2阻害剤の投与量が、米国国立癌研究所-共通毒性
規準(NCI-CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-C
TC)運動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関
CIPN限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL-CIPN20)から選択さ
れる方法によって評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに
有効である、実施形態III-1~8のいずれかの方法。
【0429】
実施形態III-12:少なくとも80mg/m2のプラチナ薬剤投与量で治療された
患者において、選択的OCT2阻害剤の投与量が、米国国立癌研究所-共通毒性規準(N
CI-CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CTC)運
動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN
限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL-CIPN20)から選択される方法
によって評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有効であ
る、実施形態III-1~8のいずれかの方法。
【0430】
実施形態III-13:プラチナ薬剤の投与後に被検者におけるプラチナ薬剤誘発性神
経毒性を評価することをさらに含む、実施形態III-1~12のいずれかの方法。
【0431】
実施形態III-14:神経毒性が、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CT
C)知覚性スケール、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CTC)運動性スケー
ル、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報
告アンケート調査(EORTC QOL-CIPN20)から選択される方法によって評
価される、実施形態III-13の方法。
【0432】
実施形態III-15:神経毒性が感覚神経活動電位、感覚神経伝導速度、冷痛閾値、
温痛閾値、機械的疼痛閾値、冷知覚閾値、温知覚閾値、機械的触覚閾値、振動知覚閾値、
電流知覚閾値、刺針感度、深部腱反射及び握力から選択される測定値によって評価される
、実施形態III-13の方法。
【0433】
実施形態III-16:神経毒性が、橈骨、背側腓腹、腓腹及び尺骨神経の1つにおけ
る感覚神経活動電位を測定することによって評価される、実施形態III-13の方法。
【0434】
実施形態III-17:プラチナ薬剤の投与前に被検者のベースラインを確立すること
をさらに含む、実施形態III-13~16のいずれかの方法。
【0435】
実施形態III-18:プラチナ薬剤誘発性神経毒性が治療の中間点付近で評価される
、実施形態III-13~16のいずれかの方法。
【0436】
実施形態III-19:プラチナ薬剤誘発性神経毒性が200mg/m2の蓄積投与量
での治療後に評価される、実施形態III-13~16のいずれかの方法。
【0437】
実施形態III-20:毒性が腎毒性である、実施形態III-1の方法。
【0438】
実施形態III-21:選択的OCT2阻害剤が、ブフロメジル、ブフロメジル塩、ド
ルテグラビル、及びドルテグラビル塩からなる群から選択される、実施形態III-1~
8のいずれかの方法。
【0439】
実施形態III-22:選択的OCT2阻害剤がブフロメジル、またはブフロメジル塩
である、実施形態III-21の方法。
【0440】
実施形態III-23:被検者に投与されるブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与
量が、上記被検者の因子である、体重、体表面積、身長、年齢、性別、アルコール使用、
タバコ使用、生活様式、腎機能、肝機能、遺伝子多型及び併用薬の少なくとも1つに基づ
いて調節される、実施形態III-22の方法。
【0441】
実施形態III-24:ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量が、少なくとも0
.43mg/l、0.86mg/l、1.29mg/l、1.72mg/lまたは2.1
5mg/lのプラチナ投与期間中の血漿レベルをもたらす、実施形態III-22または
23の方法。
【0442】
実施形態III-25:ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量が少なくとも10
0mg、200mg、300mg、400mg、500mgまたは600mgである、実
施形態III-22~24のいずれかの方法。
【0443】
実施形態III-26:ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量が少なくとも1m
g/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、
8mg/kgまたは10mg/kgである、実施形態III-22~25のいずれかの方
法。
【0444】
実施形態III-27:選択的OCT2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビル
塩である、実施形態III-21の方法。
【0445】
実施形態III-28:ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩の投与量が、少なくと
も1.4mg/l、2.8mg/l、4.2mg/l、5.6mg/lまたは7.0mg
/lのプラチナ投与期間中の血漿レベルをもたらす、実施形態III-27の方法。
【0446】
実施形態III-29:ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩の投与量が少なくとも
50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mgまたは400
mgである、実施形態III-27または28の方法。
【0447】
実施形態III-30:ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩の投与量が少なくとも
1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kgまたは6mg
/kgである、実施形態III-27~29のいずれかの方法。
【0448】
実施形態III-31:選択的OCT2阻害剤がプラチナ薬剤の効力を減少させない、
実施形態III-1~30のいずれかの方法。
【0449】
実施形態III-32:最大許容血漿濃度(MTC)未満、かつ、ヒト血清または4%
ウシ血清アルブミンを含有するアッセイバッファー中で評価した20μMのオキサリプラ
チンのOCT2媒介輸送についてのIC50値の1倍、2倍、3倍、4倍を超えるプラチ
ナ薬剤投与期間中の血漿濃度をもたらす投与量で、選択的OCT2阻害剤が投与される、
実施形態III-1~31のいずれかの方法。
【0450】
実施形態III-33:選択的OCT2阻害剤が、5μM以下の、ヒト血清または4%
ウシ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での20μMのオキサリプラチンのOCT
2媒介輸送に対するIC50を有する、実施形態III-1~19、31または32のい
ずれかの方法。
【0451】
実施形態III-34:選択的OCT2阻害剤が、OCT1-、OCT-3、またはM
ATE-1の1つ以上によって媒介される、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含
有するアッセイ溶液中での20μMのオキサリプラチン輸送に対する選択的OCT2阻害
剤のIC50よりも少なくとも10倍小さい、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを
含有するアッセイ溶液中での20μMのオキサリプラチンのOCT2媒介輸送に対するI
C50を有する、実施形態III-33の方法。
【0452】
実施形態III-35:必要としている被検者が、有機カチオントランスポーター1(
OCT1)または有機カチオントランスポーター3(OCT3)のうち少なくとも一方を
発現する癌を有する、実施形態III-1~34のいずれかの方法。
【0453】
実施形態III-36:選択的OCT2阻害剤がブフロメジル、またはブフロメジル塩
である、実施形態III-1~26または31~35のいずれかの方法。
【0454】
実施形態III-37:選択的OCT2阻害剤がドルテグラビル、またはドルテグラビ
ル塩である、実施形態III-1~20または27~35のいずれかの方法。
【0455】
実施形態III-38:プラチナ薬剤及び選択的OCT2阻害剤が同時に投与される、
実施形態III-1~37のいずれかの方法。
【0456】
実施形態III-39:選択的OCT2阻害剤がプラチナ薬剤の前に投与される、実施
形態III-1~37のいずれかの方法。
【0457】
実施形態III-40:選択的OCT2阻害剤がプラチナ薬剤の後に投与される、実施
形態III-1~37のいずれかの方法。
【0458】
実施形態III-41:1回の治療期間の間に被検者に投与されるプラチナ薬剤の量が
標準的な臨床診療の下で投与されるものよりも多い、実施形態III-1~40のいずれ
かの方法。
【0459】
実施形態III-42:必要としている被検者に治療の全過程にわたって投与されるプ
ラチナ薬剤の蓄積量が、標準的な臨床診療の下で投与されるものよりも多い、実施形態I
II-1~41のいずれかの方法。
【0460】
実施形態III-43:標準的な臨床診療下よりも高い頻度でプラチナ薬剤が投与され
る、実施形態III-1~42のいずれかの方法。
【0461】
実施形態III-44:神経毒性が末梢神経障害である、実施形態III-1または3
~43のいずれかの方法。
【0462】
実施形態III-45:末梢神経障害がグレード3またはグレード4末梢神経障害であ
る、実施形態III-44の方法。
【0463】
実施形態III-46:必要としている被検者がヒトまたは非ヒト動物である、実施形
態III-1~45のいずれかの方法。
【0464】
実施形態III-47:選択的OCT2阻害剤が、経腸、静脈内、筋肉内、腹腔内、経
口、または腸管外投与される、実施形態III-1~46のいずれかの方法。
【0465】
実施形態III-48:選択的OCT2阻害剤が2つ以上の投与経路を介して投与され
る、実施形態III-1~47のいずれかの方法。
【0466】
実施形態III-49:プラチナ薬剤及び選択的OCT2阻害剤が同じ投与経路を介し
て投与される、実施形態III-1~47のいずれかの方法。
【0467】
実施形態III-50:選択的OCT2阻害剤が静脈内点滴によって投与される、実施
形態III-1~47のいずれかの方法。
【0468】
実施形態III-51:選択的OCT2阻害剤が静脈内注入及び静脈内点滴によって投
与される、実施形態III-1~47のいずれかの方法。
【0469】
実施形態III-52:静脈内点滴が少なくとも1時間にわたる、実施形態III-5
0または51の方法。
【0470】
実施形態III-53:静脈内点滴の速度が一定である、実施形態III-50または
51の方法。
【0471】
実施形態III-54:静脈内点滴の速度が一定でない、実施形態III-50または
51の方法。
【0472】
実施形態III-55:癌がOCT1を発現する、実施形態III-1~54のいずれ
かの方法。
【0473】
実施形態III-56:癌がOCT3を発現する、実施形態III-1~55のいずれ
かの方法。
【0474】
実施形態III-57:癌がOCT1及びOCT3を発現する、実施形態III-1~
56のいずれかの方法。
【0475】
実施形態III-58:癌が、膵腺癌、膨大部及び膨大部周囲癌、肛門腺癌、虫垂癌、
肝細胞癌、結腸癌または直腸癌、上皮性卵巣癌、ファロピウス管癌、原発性腹膜癌、食道
または食道胃接合部癌、胃癌、小腸癌、精巣癌、胆管癌、膵腺癌、原発不明癌、慢性リン
パ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫
、AIDS関連B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、胃
MALTリンパ腫、非胃MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、菌状息肉症/セザリ
ー症候群、脾辺縁帯リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、原発性皮膚B細胞リンパ腫、原発性
皮膚未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、肺癌、肝癌、頭頸部癌、前立腺癌、平滑筋癌な
らびに胆嚢癌からなる群から選択される、実施形態III-1~57のいずれか1つの方
法。
【0476】
実施形態III-59:癌が卵巣癌である、実施形態III-58の方法。
【0477】
実施形態III-60:癌が頭頸部癌である、実施形態III-58の方法。
【0478】
実施形態III-61:癌が前立腺癌である、実施形態III-58の方法。
【0479】
実施形態III-62:癌がリンパ腫である、実施形態III-58の方法。
【0480】
実施形態III-63:癌が平滑筋癌である、実施形態III-58の方法。
【0481】
実施形態III-64:癌が結腸癌または直腸癌である、実施形態III-58の方法
。
【0482】
実施形態III-65:癌が肝癌である、実施形態III-58の方法。
【0483】
実施形態III-66:癌が肺癌である、実施形態III-58の方法。
【0484】
実施形態III-67:プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の癌化学
療法剤を必要としている被検者に投与することをさらに含む、実施形態III-1~66
のいずれかの方法。
【0485】
実施形態III-68:1つ以上の追加の化学療法剤が5-フルオロウラシル、ベバシ
ズマブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及
びロイコボリンからなる群から選択される、実施形態III-67の方法。
【0486】
実施形態III-69:シスプラチンであるプラチナ薬剤、
ブフロメジル、ブフロメジル塩、ドルテグラビル、及びドルテグラビル塩からなる群か
ら選択される選択的OCT2阻害剤、ならびに
医薬品として許容可能な担体
を含む、静脈内投与のために製剤化された医薬組成物。
【0487】
実施形態III-70:選択的OCT2阻害剤がブフロメジル、またはブフロメジル塩
である、実施形態III-69の医薬組成物。
【0488】
実施形態III-71:OCT2阻害剤がドルテグラビル、またはドルテグラビル塩で
ある、実施形態III-69の医薬組成物。
【0489】
実施形態III-72:プラチナ薬剤の量が、プラチナ薬剤を含む標準的な医薬組成物
中に存在するものよりも多い、実施形態III-69~71のいずれかの医薬組成物。
【0490】
実施形態III-73:プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の癌化学
療法剤をさらに含む、実施形態III-69~72のいずれかの医薬組成物。
【0491】
実施形態III-74:1つ以上の追加の化学療法剤が5-フルオロウラシル、ベバシ
ズマブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及
びロイコボリンからなる群から選択される、実施形態III-73の医薬組成物。
【0492】
実施形態III-75:治療有効量のシスプラチンであるプラチナ薬剤;選択的OCT
2阻害剤及び使用のための指示書を含むキット。
【0493】
実施形態III-76:必要としている被検者に対する選択的OCT2阻害剤の望まし
い投与量を決定するための指示書をさらに含む、実施形態III-75のキット。
【0494】
実施形態III-77:投与量が、体重、体表面積、身長、年齢、性別、アルコール使
用、タバコ使用、生活様式、腎機能、肝機能、遺伝子多型及び併用薬から選択される上記
被検者の少なくとも1つの因子に基づいて決定される、実施形態III-76のキット。
【0495】
実施形態III-78:投与量が、上記被検者におけるOCT2阻害剤の血漿レベルを
監視することによって決定される、実施形態III-76のキット。
【0496】
実施形態III-79:選択的OCT2阻害剤がブフロメジルまたはブフロメジル塩で
ある、実施形態III-75~78のいずれか1つのキット。
【0497】
実施形態III-80:ブフロメジルまたはブフロメジル塩が300mg、450mg
、600mg、800mgまたは1000mgよりも多い量で存在する、実施形態III
-79のキット。
【0498】
実施形態III-81:選択的OCT2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビル
塩である、実施形態III-75~78のいずれかのキット。
【0499】
実施形態III-82:ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩が50mg、75mg
、100mg、150mg、200mgまたは300mgよりも多い量で存在する、実施
形態III-81のキット。
【0500】
実施形態III-83:キットがプラチナ薬剤誘発性神経毒性を減少させる用途のため
に意図されていることが指示書に明記されている、実施形態III-75~82のいずれ
かのキット。
【0501】
実施形態III-84:キットが癌を治療する用途のために意図されていることが指示
書に明記されている、実施形態75~83のいずれかのキット。
【0502】
実施形態III-85:プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の癌化学
療法剤をさらに含む、実施形態III-75~84のいずれかのキット。
【0503】
実施形態III-86:1つ以上の追加の化学療法剤が5-フルオロウラシル、ベバシ
ズマブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及
びロイコボリンからなる群から選択される、実施形態III-85のキット。
【0504】
決定ステップを含む方法の例示的実施形態
実施形態IV-1:一実施形態において、本開示は、
必要としている被検者において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カ
チオントランスポーター2(OCT2)阻害剤のIC50の2~5倍である、ブフロメジ
ルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害
剤の血漿レベルを達成するための有効投与量を決定すること;
オキサリプラチン及びシスプラチンからなる群から選択されるプラチナ薬剤を必要として
いる被検者に投与すること;ならびに
有効投与量のブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポー
ター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与すること
を含み、
毒性が腎毒性、耳毒性または末梢神経障害であり、
必要としている被検者が癌を有する、必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性
毒性の減少方法を提供する。
【0505】
実施形態IV-2:一実施形態において、本開示は、
必要としている被検者において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カ
チオントランスポーター2(OCT2)阻害剤のIC50の2~5倍である、ブフロメジ
ルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害
剤の血漿レベルを達成するための有効投与量を決定すること;
オキサリプラチン及びシスプラチンからなる群から選択される治療有効量のプラチナ薬剤
を必要としている被検者に投与すること;ならびに
有効投与量のブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポー
ター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与すること
を含む、必要としている被検者における癌の治療方法を提供する。
【0506】
実施形態IV-3:一実施形態において、本開示は、
必要としている被検者において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カ
チオントランスポーター2(OCT2)阻害剤のIC50の2~5倍である、ブフロメジ
ルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害
剤の血漿レベルを達成するための有効投与量を決定すること;
オキサリプラチン及びシスプラチンからなる群から選択される治療有効量のプラチナ薬剤
を必要としている被検者に投与すること;ならびに
必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させるのに有効な投与量で
、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(O
CT2)阻害剤を必要としている被検者に投与し、それによって、上記被検者が少なくと
も100mg/m2の蓄積投与量で治療を完了すること
を含む、必要としている被検者における癌の治療に対する患者コンプライアンスの増加方
法を提供する。
【0507】
実施形態IV-4:選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤の血漿
レベルを達成するための有効投与量を決定するステップが、予備投与量の選択的有機カチ
オントランスポーター2(OCT2)阻害剤を投与することによって行われる、実施形態
IV-1~3のいずれか1つの方法。
【0508】
実施形態IV-5:選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤の血漿
レベルを達成するための有効投与量を決定するステップが、被検者特性に基づく参照デー
タチャートによって決定される、実施形態IV-1~3のいずれか1つの方法。
【0509】
実施形態IV-6:投与されるプラチナ薬剤の治療有効量が被検者においてプラチナ薬
剤誘発性神経毒性を引き起こすと知られている、実施形態IV-2または3~5のいずれ
か1つの方法。
【0510】
実施形態IV-7:神経毒性が末梢神経毒性である、実施形態IV-6の方法。
【0511】
実施形態IV-8:神経毒性が感覚ニューロンへの損傷である、実施形態IV-6の方
法。
【0512】
実施形態IV-9:神経毒性が運動ニューロンへの損傷である、実施形態IV-6の方
法。
【0513】
実施形態IV-9a:神経毒性が慢性神経毒性である、実施形態IV-1~9のいずれ
かの方法。
【0514】
実施形態IV-9b:神経毒性が急性症候群一過性神経毒性である、実施形態IV-1
~9のいずれかの方法。
【0515】
実施形態IV-9c:神経毒性が最初の治療の1時間~7日後に生じる、実施形態IV
-1~9のいずれかの方法。
【0516】
実施形態IV-9d:被検者が少なくとも500mg/m2の蓄積投与量で治療を完了
した後に神経毒性が生じる、実施形態II-1~9のいずれかの方法。
【0517】
実施形態IV-10:神経毒性が背根神経節(DRG)への損傷である、実施形態IV
-6の方法。
【0518】
実施形態IV-11:選択的OCT2阻害剤の投与量が必要としている被検者における
プラチナ薬剤誘発性神経毒性を最小限にするのに有効である、実施形態IV-1~10の
いずれかの方法。
【0519】
実施形態IV-12:少なくとも100mg/m2の蓄積投与量で治療された患者にお
いて、選択的OCT2阻害剤の投与量が、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-C
TC)知覚性スケール、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CTC)運動性スケ
ール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自己
報告アンケート調査(EORTC QOL-CIPN20)から選択される方法によって
評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有効である、実施
形態IV-1~10のいずれかの方法。
【0520】
実施形態IV-13:少なくとも30mg/週/m2のプラチナ薬剤投与量強度で治療
された患者において、選択的OCT2阻害剤の投与量が、米国国立癌研究所-共通毒性規
準(NCI-CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CT
C)運動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関C
IPN限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL-CIPN20)から選択され
る方法によって評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有
効である、実施形態IV-1~10のいずれかの方法。
【0521】
実施形態IV-14:少なくとも80mg/m2のプラチナ薬剤投与量で治療された患
者において、選択的OCT2阻害剤の投与量が、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NC
I-CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CTC)運動
性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限
定自己報告アンケート調査(EORTC QOL-CIPN20)から選択される方法に
よって評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有効である
、実施形態IV-1~10のいずれかの方法。
【0522】
実施形態IV-15:プラチナ薬剤の投与後に被検者におけるプラチナ薬剤誘発性神経
毒性を評価することをさらに含む、実施形態IV-1~14のいずれかの方法。
【0523】
実施形態IV-16:神経毒性が、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CTC
)知覚性スケール、米国国立癌研究所-共通毒性規準(NCI-CTC)運動性スケール
、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報告
アンケート調査(EORTC QOL-CIPN20)から選択される方法によって評価
される、実施形態IV-15の方法。
【0524】
実施形態IV-17:神経毒性が感覚神経活動電位、感覚神経伝導速度、冷痛閾値、温
痛閾値、機械的疼痛閾値、冷知覚閾値、温知覚閾値、機械的触覚閾値、振動知覚閾値、電
流知覚閾値、刺針感度、深部腱反射及び握力から選択される測定値によって評価される、
実施形態IV-15の方法。
【0525】
実施形態IV-18:神経毒性が、橈骨、背側腓腹、腓腹及び尺骨神経の1つにおける
感覚神経活動電位を測定することによって評価される、実施形態IV-15の方法。
【0526】
実施形態IV-19:プラチナ薬剤の投与前に被検者のベースラインを確立することを
さらに含む、実施形態IV-15~18のいずれかの方法。
【0527】
実施形態IV-20:プラチナ薬剤誘発性神経毒性が治療の中間点付近で評価される、
実施形態IV-15~18のいずれかの方法。
【0528】
実施形態IV-21:プラチナ薬剤誘発性神経毒性が200mg/m2の蓄積投与量で
の治療後に評価される、実施形態IV-15~18のいずれかの方法。
【0529】
実施形態IV-22:毒性が腎毒性である、実施形態IV-1の方法。
【0530】
実施形態IV-23:被検者に投与されるブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量
が、上記被検者の因子である、体重、体表面積、身長、年齢、性別、アルコール使用、タ
バコ使用、生活様式、腎機能、肝機能、遺伝子多型及び併用薬の少なくとも1つに基づい
て調節される、実施形態IV-1~22のいずれかの方法。
【0531】
実施形態IV-24:ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量が、少なくとも0.
43mg/l、0.86mg/l、1.29mg/l、1.72mg/lまたは2.15
mg/lのプラチナ投与期間中の血漿レベルをもたらす、実施形態IV-1~23のいず
れかの方法。
【0532】
実施形態IV-25:ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量が少なくとも100
mg、200mg、300mg、400mg、500mgまたは600mgである、実施
形態IV-1~24のいずれかの方法。
【0533】
実施形態IV-26:ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量が少なくとも1mg
/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、8
mg/kgまたは10mg/kgである、実施形態IV-1~25のいずれかの方法。
【0534】
実施形態IV-27:選択的OCT2阻害剤がプラチナ薬剤の効力を減少させない、実
施形態IV-1~26のいずれかの方法。
【0535】
実施形態IV-28:最大許容血漿濃度(MTC)未満、かつ、ヒト血清または4%ウ
シ血清アルブミンを含有するアッセイバッファー中で評価した20μMのオキサリプラチ
ンのOCT2媒介輸送についてのIC50値の1倍、2倍、3倍、4倍を超えるプラチナ
薬剤投与期間中の血漿濃度をもたらす投与量で、選択的OCT2阻害剤が投与される、実
施形態IV-1~27のいずれかの方法。
【0536】
実施形態IV-29:選択的OCT2阻害剤が、5μM以下の、ヒト血清または4%ウ
シ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での20μMのオキサリプラチンのOCT2
媒介輸送に対するIC50を有する、実施形態IV-1~28のいずれかの方法。
【0537】
実施形態IV-30:選択的OCT2阻害剤が、OCT1-、OCT-3、またはMA
TE-1の1つ以上によって媒介される、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有
するアッセイ溶液中での20μMのオキサリプラチン輸送に対する選択的OCT2阻害剤
のIC50よりも少なくとも10倍小さい、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含
有するアッセイ溶液中での20μMのオキサリプラチンのOCT2媒介輸送に対するIC
50を有する、実施形態IV-29の方法。
【0538】
実施形態IV-31:必要としている被検者が、有機カチオントランスポーター1(O
CT1)または有機カチオントランスポーター3(OCT3)のうち少なくとも一方を発
現する癌を有する、実施形態IV-1~30のいずれかの方法。
【0539】
実施形態IV-32:プラチナ薬剤及び選択的OCT2阻害剤が同時に投与される、実
施形態IV-1~31のいずれかの方法。
【0540】
実施形態IV-33:選択的OCT2阻害剤がプラチナ薬剤の前に投与される、実施形
態IV-1~31のいずれかの方法。
【0541】
実施形態IV-34:選択的OCT2阻害剤がプラチナ薬剤の後に投与される、実施形
態IV-1~31のいずれかの方法。
【0542】
実施形態IV-35:1回の治療期間の間に被検者に投与されるプラチナ薬剤の量が標
準的な臨床診療の下で投与されるものよりも多い、実施形態IV-1~34のいずれかの
方法。
【0543】
実施形態IV-36:必要としている被検者に治療の全過程にわたって投与されるプラ
チナ薬剤の蓄積量が、標準的な臨床診療の下で投与されるものよりも多い、実施形態IV
-1~35のいずれかの方法。
【0544】
実施形態IV-37:標準的な臨床診療下よりも高い頻度でプラチナ薬剤が投与される
、実施形態IV-1~36のいずれかの方法。
【0545】
実施形態IV-38:神経毒性が末梢神経障害である、実施形態IV-1または3~3
7のいずれかの方法。
【0546】
実施形態IV-39:末梢神経障害がグレード3またはグレード4末梢神経障害である
、実施形態IV-38の方法。
【0547】
実施形態IV-40:必要としている被検者がヒトまたは非ヒト動物である、実施形態
IV-1~39のいずれかの方法。
【0548】
実施形態IV-41:選択的OCT2阻害剤が、経腸、静脈内、筋肉内、腹腔内、経口
、または腸管外投与される、実施形態IV-1~40のいずれかの方法。
【0549】
実施形態IV-42:選択的OCT2阻害剤が2つ以上の投与経路を介して投与される
、実施形態IV-1~41のいずれかの方法。
【0550】
実施形態IV-43:プラチナ薬剤及び選択的OCT2阻害剤が同じ投与経路を介して
投与される、実施形態IV-1~42のいずれかの方法。
【0551】
実施形態IV-44:選択的OCT2阻害剤が静脈内点滴によって投与される、実施形
態IV-1~43のいずれかの方法。
【0552】
実施形態IV-45:選択的OCT2阻害剤が静脈内注入及び静脈内点滴によって投与
される、実施形態IV-1~43のいずれかの方法。
【0553】
実施形態IV-46:静脈内点滴が少なくとも1時間にわたる、実施形態IV-44ま
たは45の方法。
【0554】
実施形態IV-47:静脈内点滴の速度が一定である、実施形態IV-44または45
の方法。
【0555】
実施形態IV-48:静脈内点滴の速度が一定でない、実施形態IV-44または45
の方法。
【0556】
実施形態IV-49:癌がOCT1を発現する、実施形態IV-1~48のいずれかの
方法。
【0557】
実施形態IV-50:癌がOCT3を発現する、実施形態IV-1~49のいずれかの
方法。
【0558】
実施形態IV-51:癌がOCT1及びOCT3を発現する、実施形態IV-1~50
のいずれかの方法。
【0559】
実施形態IV-52:癌が、膵腺癌、膨大部及び膨大部周囲癌、肛門腺癌、虫垂癌、肝
細胞癌、結腸癌または直腸癌、上皮性卵巣癌、ファロピウス管癌、原発性腹膜癌、食道ま
たは食道胃接合部癌、胃癌、小腸癌、精巣癌、胆管癌、膵腺癌、原発不明癌、慢性リンパ
性白血病/小リンパ球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫、
AIDS関連B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、胃M
ALTリンパ腫、非胃MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、菌状息肉症/セザリー
症候群、脾辺縁帯リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、原発性皮膚B細胞リンパ腫、原発性皮
膚未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、肺癌、肝癌、頭頸部癌、前立腺癌、平滑筋癌なら
びに胆嚢癌からなる群から選択される、実施形態IV-1~51のいずれか1つの方法。
【0560】
実施形態IV-53:癌が卵巣癌である、実施形態IV-52の方法。
【0561】
実施形態IV-54:癌が頭頸部癌である、実施形態IV-52の方法。
【0562】
実施形態IV-55:癌が前立腺癌である、実施形態IV-52の方法。
【0563】
実施形態IV-56:癌がリンパ腫である、実施形態IV-52の方法。
【0564】
実施形態IV-57:癌が平滑筋癌である、実施形態IV-52の方法。
【0565】
実施形態IV-58:癌が結腸癌または直腸癌である、実施形態IV-52の方法。
【0566】
実施形態IV-59:癌が肝癌である、実施形態IV-52の方法。
【0567】
実施形態IV-60:癌が肺癌である、実施形態IV-52の方法。
【0568】
実施形態IV-61:プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の癌化学療
法剤を必要としている被検者に投与することをさらに含む、実施形態IV-1~60のい
ずれかの方法。
【0569】
実施形態IV-62:1つ以上の追加の化学療法剤が5-フルオロウラシル、ベバシズ
マブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及び
ロイコボリンからなる群から選択される、実施形態IV-61の方法。
【0570】
実施形態IV-63:オキサリプラチンまたはシスプラチンであるプラチナ薬剤、
ブフロメジル及びブフロメジル塩からなる群から選択される選択的OCT2阻害剤、な
らびに
医薬品として許容可能な担体
を含む、静脈内投与のために製剤化された医薬組成物。
【0571】
実施形態IV-64:プラチナ薬剤の量が、プラチナ薬剤を含む標準的な医薬組成物中
に存在するものよりも多い、実施形態IV-63の医薬組成物。
【0572】
実施形態IV-65:プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の癌化学療
法剤をさらに含む、実施形態IV-63または64の医薬組成物。
【0573】
実施形態IV-66:1つ以上の追加の化学療法剤が5-フルオロウラシル、ベバシズ
マブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及び
ロイコボリンからなる群から選択される、実施形態IV-65の医薬組成物。
【0574】
実施形態IV-67:治療有効量のオキサリプラチンまたはシスプラチンであるプラチ
ナ薬剤;選択的OCT2阻害剤及び使用のための指示書を含むキット。
【0575】
実施形態IV-68:必要としている被検者に対する選択的OCT2阻害剤の望ましい
投与量を決定するための指示書をさらに含む、実施形態IV-67のキット。
【0576】
実施形態IV-69:投与量が、体重、体表面積、身長、年齢、性別、アルコール使用
、タバコ使用、生活様式、腎機能、肝機能、遺伝子多型及び併用薬から選択される上記被
検者の少なくとも1つの因子に基づいて決定される、実施形態IV-67または68のキ
ット。
【0577】
実施形態IV-70:投与量が、上記被検者におけるOCT2阻害剤の血漿レベルを監
視することによって決定される、実施形態IV-67~69のいずれかのキット。
【0578】
実施形態IV-71:ブフロメジルまたはブフロメジル塩が300mg、450mg、
600mg、800mgまたは1000mgよりも多い量で存在する、実施形態IV-6
7~70のいずれかのキット。
【0579】
実施形態IV-72:キットがプラチナ薬剤誘発性神経毒性を減少させる用途のために
意図されていることが指示書に明記されている、実施形態IV-67~71のいずれかの
キット。
【0580】
実施形態IV-73:キットが癌を治療する用途のために意図されていることが指示書
に明記されている、実施形態IV-67~72のキット。
【0581】
実施形態IV-74:プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の癌化学療
法剤をさらに含む、実施形態IV-67~73のいずれかのキット。
【0582】
実施形態IV-75:1つ以上の追加の化学療法剤が5-フルオロウラシル、ベバシズ
マブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及び
ロイコボリンからなる群から選択される、実施形態IV-74のキット。
【0583】
例示的実施形態-治療に用いるための選択的OCT2阻害剤
実施形態V-1:一実施形態において、本開示は、必要としている被検者における癌の
治療に用いるための選択的OCT2阻害剤を提供するが、OCT2阻害剤はオキサリプラ
チンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0584】
実施形態V-2:プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させることができる投与量での投与の
ための、実施形態V-1に記載の選択的OCT2阻害剤。
【0585】
実施形態V-3:一実施形態において、本開示は、必要としている被検者における癌の
治療に用いるための選択的OCT2阻害剤を提供するが、OCT2阻害剤はシスプラチン
であるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0586】
実施形態V-4:プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させることができる投与量での投与の
ための、実施形態V-3に記載の選択的OCT2阻害剤。
【0587】
実施形態V-5:一実施形態において、本開示は、必要としている被検者における癌の
治療に用いるためのブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的OCT2阻害剤を提
供するが、OCT2阻害剤はオキサリプラチンまたはシスプラチンであるプラチナ薬剤と
の併用のためのものである。
【0588】
実施形態V-6:プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させることができる投与量での投与の
ための、実施形態V-5に記載の選択的OCT2阻害剤。
【0589】
実施形態V-7:一実施形態において、本開示は、必要としている被検者におけるプラ
チナ薬剤毒性の減少に用いるための選択的OCT2阻害剤を提供するが、OCT2阻害剤
はオキサリプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0590】
実施形態V-8:一実施形態において、本開示は、必要としている被検者におけるプラ
チナ薬剤毒性の減少に用いるための選択的OCT2阻害剤を提供するが、OCT2阻害剤
はシスプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0591】
実施形態V-9:一実施形態において、本開示は、必要としている被検者におけるプラ
チナ薬剤毒性の減少に用いるためのブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的OC
T2阻害剤を提供するが、OCT2阻害剤はオキサリプラチンまたはシスプラチンである
プラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0592】
実施形態V-10:一実施形態において、本開示は、必要としている被検者の癌の治療
における患者コンプライアンスの増加に用いるための選択的OCT2阻害剤を提供するが
、OCT2阻害剤はオキサリプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0593】
実施形態V-11:一実施形態において、本開示は、必要としている被検者の癌の治療
における患者コンプライアンスの増加に用いるための選択的OCT2阻害剤を提供するが
、OCT2阻害剤はシスプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0594】
実施形態V-12:一実施形態において、本開示は、必要としている被検者の癌の治療
における患者コンプライアンスの増加に用いるためのブフロメジルまたはブフロメジル塩
である選択的OCT2阻害剤を提供するが、OCT2阻害剤はオキサリプラチンまたはシ
スプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0595】
例示的実施形態-選択的OCT2阻害剤の使用
実施形態VI-1:一実施形態において、本開示は、癌の治療のための医薬品の調製に
おける選択的OCT2阻害剤の使用を提供するが、医薬品はオキサリプラチンであるプラ
チナ薬剤との併用のためのものである。
【0596】
実施形態VI-2:OCT2阻害剤が、プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させることがで
きる投与量での投与のためのものである、実施形態VI-1に記載の使用。
【0597】
実施形態VI-3:一実施形態において、本開示は、癌の治療のための医薬品の調製に
おける選択的OCT2阻害剤の使用を提供するが、医薬品はシスプラチンであるプラチナ
薬剤との併用のためのものである。
【0598】
実施形態VI-4:OCT2阻害剤が、プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させることがで
きる投与量での投与のためのものである、実施形態VI-3に記載の使用。
【0599】
実施形態VI-5:一実施形態において、本開示は、癌の治療のための医薬品の調製に
おけるブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的OCT2阻害剤の使用を提供する
が、医薬品はオキサリプラチンまたはシスプラチンであるプラチナ薬剤との併用のための
ものである。
【0600】
実施形態VI-6:OCT2阻害剤が、プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させることがで
きる投与量での投与のためのものである、実施形態VI-5に記載の使用。
【0601】
実施形態VI-7:一実施形態において、本開示は、プラチナ薬剤毒性を減少させるた
めの医薬品の調製における選択的OCT2阻害剤の使用を提供するが、医薬品はオキサリ
プラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0602】
実施形態VI-8:一実施形態において、本開示は、プラチナ薬剤毒性を減少させるた
めの医薬品の調製における選択的OCT2阻害剤の使用を提供するが、医薬品はシスプラ
チンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0603】
実施形態VI-9:一実施形態において、本開示は、プラチナ薬剤毒性を減少させるた
めの医薬品の調製におけるブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的OCT2阻害
剤の使用を提供するが、医薬品はオキサリプラチンまたはシスプラチンであるプラチナ薬
剤との併用のためのものである。
【0604】
実施形態VI-10:一実施形態において、本開示は、癌の治療における患者コンプラ
イアンスを増加させるための医薬品の調製における選択的OCT2阻害剤の使用を提供す
るが、医薬品はオキサリプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0605】
実施形態VI-11:一実施形態において、本開示は、癌の治療における患者コンプラ
イアンスを増加させるための医薬品の調製における選択的OCT2阻害剤の使用を提供す
るが、医薬品はシスプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0606】
実施形態VI-12:一実施形態において、本開示は、癌の治療における患者コンプラ
イアンスを増加させるための医薬品の調製におけるブフロメジルまたはブフロメジル塩で
ある選択的OCT2阻害剤の使用を提供するが、医薬品はオキサリプラチンまたはシスプ
ラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0607】
本発明のある特徴は、明瞭化のために別個の実施形態との関連で記載されるが、単一の
実施形態において組み合わせて提供されてもよいと理解される。反対に、本発明の様々な
特徴は、簡潔のために、単一の実施形態との関連で記載されるが、別々にまたは任意の好
適な部分的組合せで提供されてもよい。
【0608】
実施形態V-1~V-6及びVI-1~VI-6は、実施形態I-1~I-105;I
I-1~II-85;III-1~III-86;またはIV-1~IV-75のいずれ
かと組み合わせて用いることができると理解される。
【実施例】
【0609】
以下の実施例は例示にすぎず、決して本開示のいかなる態様も限定することを意図して
いない。
【0610】
実施例A-オキサリプラチン誘発性末梢神経障害のBalb/cマウスモデルにおけるO
PV-3003の保護作用の評価のためのプロトコール
この実施例のプロトコールは、Renn, C.L.; Carozzi, V.A.
; Rhee, P.; Gallop, D.; Dorsey, S.G.; Ca
valetti, G., Multimodal assessment of pa
inful peripheral neuropathy induced by c
hronic oxaliplatin-based chemotherapy in
mice. Mol Pain, 2011, 7, 29;及びBoehmerle
, W., et. al., Scientific Reports 4:6370
, p1-9, 2014で説明されている。
【0611】
目的
目的は、オキサリプラチン(OHP)での慢性治療を施したBalb/cマウスにおけ
るOPV-3003の神経保護作用を評価することである。
【0612】
動物
雄Balb/cマウス、入荷時20グラム(Envigo, Italy)
【0613】
飼育及び取扱い
動物の世話及び飼育は、国内の(D.L. n. 26/2014)及び国際間の(E
EC Council Directive 86/609, OJ L 358, 1
, Dec.12, 1987; Guide for the Care and U
se of Laboratory Animals, U.S. National
Research Council, 1996)法律及び政策に従う施設のガイドライ
ンに準拠した。
【0614】
薬物
オキサリプラチン(OHP)、3.5mg/kg、静脈内、週2回で4週間。
【0615】
OPV-3003(OPV)、OHP投与の15分前に30mg/kg腹腔内、及びO
HPと共に15mg/kg静脈内共投与、週2回で4週間。
【0616】
実験プロトコール
ランダム化
1群:未治療(N=12)
2群:OPV(N=12)
3群:OHP(N=12)
4群:OHP+OPV(n=12)
動物の総数:48
図18中のフローチャートに示すように
【0617】
- ベースライン、治療の終了時及びフォローアップ期間の終了時に、神経伝導速度及
び行動試験をすべての動物で実施する。
【0618】
- 最初及び最後のiv投与の15分後、血清サンプルを薬物動態解析のために収集す
る。
【0619】
- 最初のiv投与の24時間後、コールドプレートテストを実施する。
【0620】
- 治療の終了時及びフォローアップ期間の終了時に、坐骨神経、尾神経、L4-L5
DRG及び皮膚生検を4つの動物群で収集する。
【0621】
- 体重は週2回測定し、死亡及び臨床徴候は毎日監視する。
【0622】
実験計画
第1段階:薬物治療
【0623】
OHP及びOPVを4週間投与する。OHP及びOPVを共投与する群では、OHP及
びOPVの静脈内共投与の15分前にOPVを腹腔内注入する。
【0624】
最後の薬物投与の4日後に、各群中4匹を屠殺する。
【0625】
第2段階:フォローアップ期間
【0626】
最後の投与の後、4及び8週間動物を観察する。4週間のフォローアップの後、NCV
の分析を実施して動物を屠殺するか、またはさらに4週間動物を観察するか決定する。
【0627】
評価及び時期
神経伝導速度
ベースライン、薬物治療の終了時ならびにフォローアップの4及び8週間後に、尾及び
指NCVを評価する。感覚/運動及び感覚神経伝導速度(NCV)は、筋電図検査装置(
Myto2 ABN Neuro, Firenze, Italy)を用いることによ
って、それぞれ尾及び指神経を刺激して測定する。尾NCVは、2つの記録針電極を尾根
部に、2つの刺激針電極を記録点の3.5cm遠位に配置することによって測定する。指
NCVは、正の記録電極を大腿に、負の記録電極を距骨の近くに、そして、正及び負の刺
激電極をそれぞれ指神経に近い第4趾の近く及び足裏に配置することによって測定する。
【0628】
刺激の強度、継続時間及び周波数は、最適の結果が得られるように設定する。
【0629】
すべての神経生理学的測定は、温度制御室(22+/-2℃)において標準条件下で実
施する。
【0630】
行動試験
プランターテスト、ダイナミックプランターエステシオメータテスト及びコールドプレ
ートテストを用いて、痛みの知覚における変化及び薬物治療によるその変遷を判定する。
これらの行動試験は、ベースライン、薬物治療の終了時及びフォローアップの4及び8週
間後に実施する。
【0631】
プランターテスト(モデル37370; Ugo Basile Biologica
l Instruments, Comerio, Italy)を用いて、後足の裏の
熱痛覚閾値を評価する。赤外線光源をガラスの床の下に置き、マウスの後足の中央の下に
配置する。位置決めが完了したら、熱源を作動させ、光電池が熱源を自動的に遮断し、引
っ込めるまでの時間(引っ込め潜時)が記録された。動物が自発的に足を引っ込めなかっ
た場合に熱傷を引き起こすのを回避するため、30秒の上限カットオフがあり、その後で
は熱は自動的に停止された。
【0632】
機械的痛覚閾値は、一次関数的に増加する機械的力を発生させるダイナミックエステシ
オメータテスト(モデル37450; Ugo Basile Biological
Instruments, Comerio, Italy)を用いて評価する。
【0633】
各時点で、馴化期間後に、先が尖った金属フィラメント(0.5mm直径)を後足の足
底表面に当て、漸増する断続的な圧力を15秒のうちに15gまで達するように加える。
明らかな自発的に後足を引っ込める反応を誘発する圧力が自動的に記録され、機械的痛覚
閾値指数を表すものとみなす。結果は動物が耐えた最大圧力(グラムで表される)を表す
。30秒の上限カットオフがあり、その後では機械的刺激は自動的に停止された。
【0634】
コールドプレートテストは、プレキシグラスシリンダー及び温度を調節可能なサーモス
タットプレートで構成された装置(35100-ホット/コールドプレート、Ugo B
asile instruments)を用いて実施する。移動及び歩行が自由な+4℃
に設定したプレート上に動物を載せる。2人の盲検化した実験者が同時に、5分間の試験
中の痛みのサイン(例えば、跳ぶ、舐める、不安が増加するなど)の数を測定する。
【0635】
DRG、坐骨及び尾神経の形態解析
左坐骨神経、尾神経、L4-L5 DRGを採取し、形態解析のために処理する。パラ
ホルムアルデヒド4%/グルタルアルデヒド2%中(DRG)またはグルタルアルデヒド
3%中(末梢神経)において、組織を室温で3時間固定し、OsO4中で後固定してエポ
キシ樹脂包埋する。トルイジンブルーで染色した1μm厚の準薄片で形態解析を行う。各
動物について少なくとも2つの組織ブロックを薄切し、その後、光学顕微鏡で検査する。
【0636】
DRG及び神経の形態計測解析
採取したDRGを、トルイジンブルー染色した1μm厚の準薄片での形態計測検査に用
いる。DRGをコンピュータ支援画像解析器(ImageJ NIHソフトウェア)で解
析し、ランダムに選択された切片で、少なくとも300DRGニューロン/マウスについ
て、DRG感覚ニューロンの細胞体、核及び核小体のサイズを測定する。
【0637】
有髄線維の形態計測解析では、顕微鏡写真撮影装置(Nikon Eclipse E
200; Leica Microsystems GmbH, Wetzlar, G
ermany)によって60倍の倍率で切片を観察し、QWin自動画像解析器(Lei
ca Microsystems GmbH)を用いて形態計測解析を実施した。すべて
の検体から収集したランダムに選択された切片において、解析空間中の評価可能なすべて
の有髄線維を計数し、少なくとも500有髄線維/神経で有髄線維の外径(全)及び内径
(軸索)を測定する。軸索径及び全線維径の両方から、線維分布のヒストグラムが計算さ
れ、2つの直径の間の比であるg比(有髄化度の十分に確立された尺度[Boehmer
le 2014])が、個々の軸索径及び線維径の組それぞれについて自動的に計算され
る。
【0638】
実施例1
以下の実施例は、OCT2トランスポーターを介したオキサリプラチン細胞内取込みの
阻害剤の同定に関する。
オキサリプラチンは、特に大腸癌において、最も積極的に用いられている腫瘍化学療法
薬の1つである。しかし、その抗腫瘍効果に加えて、オキサリプラチンは、末梢神経障害
、耳毒性及び腎毒性をはじめとする有害作用に関連付けられてきた。これらの毒性の正確
な機序はよく理解されていないままであるが、OCT2媒介細胞蓄積が原因であり得るこ
とが提唱されている[1]。OCT2発現細胞におけるオキサリプラチン取込みに対する
処方薬のライブラリーをスクリーニングし、OCT2媒介オキサリプラチン細胞内取込み
の阻害剤としての複数の薬物を同定した。
【0639】
材料及び方法
ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中に維持したメイディン・ダービー・イヌ腎
臓II型(MDCK-II)細胞を、形質移入の24時間前に、96ウェルPCF多孔質
メンブレンインサートにウェル当たり60±10Kで播種した。完全にコンフルエントな
MDCK細胞単層を、試験しようするヒトトランスポーターをコードするcDNAプラス
ミドまたはGFP対照のいずれかで形質移入した。48時間後に、様々な濃度の試験薬と
混合したプローブ基質と共に細胞を37℃で5または30分間インキュベーションするこ
とによって、輸送アッセイを開始した。その後、細胞を氷冷PBSで洗浄し、50:50
のアセトニトリル:H2Oで溶解した。基質の細胞内含有量をLC/MS/MSまたはM
icroBeta放射測定プレートリーダーによって定量した。
【0640】
15種の薬物を選抜し、それらの5及び50μMでのOCT2媒介オキサリプラチン取
込みを阻害する効力について評価して、推定IC
50値を得た(表1)。
【表1】
【0641】
様々な細胞株において発現したヒトOCT2に対して、異なるOCT2基質を用いて多
くの処方薬がスクリーニングされてきた。例えば、OCT2基質としてASP+を用いて
、Giacominiのグループ[2]は244種の処方薬をOCT2阻害剤として同定
しており、その中のいくつかは表1に記載されている。しかし、個々の阻害剤が他の基質
、例えばメトホルミン及びオキサリプラチンなどのOCT2媒介輸送を減少させる程度は
大きくばらついており、これはおそらく、これらの基質がOCT2の異なる結合部位と相
互作用するということに起因する[3]。したがって、OCT2媒介ASP+取込みの阻
害効力とオキサリプラチン及びメトホルミンのOCT2媒介取込みの阻害効力との間に直
接的な相関関係は存在しない。例えば、Giacominiのグループによってクロルフ
ェネシンカルバメート及びイマチニブはOCT2媒介ASP+取込みの強力な阻害剤であ
ると示されたが、OCT2で媒介されるメトホルミン及びオキサリプラチンの取込みの阻
害剤としての効力は、それぞれ100分の1及び30分の1未満である。別の例では、ミ
コナゾールはASP+及びオキサリプラチンのOCT2輸送に対して同様の効力を示した
が、OCT2媒介メトホルミン輸送の阻害においてはおよそ70分の1の効力である(表
1)。
【0642】
メトホルミンはより一般に用いられるOCT2に対するプローブ基質である。OCT2
を介したメトホルミン輸送の阻害も、OCT2媒介オキサリプラチン取込みに対する薬物
の効果を予測するものではなかった。出願人らはメトホルミンのOCT2媒介輸送につい
て70種の化合物をスクリーニングした。例えば、ミコナゾール、エルロチニブ、ペンタ
ミジン、エピナスチン、エキセメストラン(exemestrane)、チオトロピウム
及びプロパンセリンは、オキサリプラチンのOCT2媒介輸送の阻害においてメトホルミ
ンの場合の10倍を超える効力を示した(表1)。例えば、ロイプロリド及びミコナゾー
ルは、メトホルミン輸送において約39倍の差(IC50=3.62及び141.60μ
M)を示したが、オキサリプラチン取込みの阻害においては同様の効力(それぞれIC5
0=1.57及び1.55μM)を示した。
【0643】
このデータから、OCT2媒介オキサリプラチン輸送に対する薬物の阻害効力を判定す
るためには、オキサリプラチンがOCT2基質として用いられなければならないことが示
された。したがって、以前に報告されたオキサリプラチン以外の基質を用いたインビトロ
OCT2アッセイに基づく研究[2,3]は、化合物がOCT2媒介オキサリプラチン輸
送を阻害するかどうか判定するのに用いることができない。
【0644】
オキサリプラチンをOCT2基質として用いて、ブフロメジルをはじめとして複数の薬
物をOCT2媒介オキサリプラチン輸送の強力な阻害剤(IC
50<2μM)として同定
した。インビボ条件下では、血清タンパク質への阻害剤の非特異的結合が血漿中でのそれ
らの見掛けの阻害効力に影響を与え得る。IC
50,appで表される血漿中でのそれら
の効力をさらに確認するために、100%ヒト血清、または薬物のタンパク質結合の観点
では血清にほぼ相当する4%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するHBSSのいずれ
かにおいて、一連の濃度のこれらの薬物をOCT2で媒介される20μMまたは100μ
Mのオキサリプラチン輸送に対して試験した。薬物の一部の回帰IC
50値及び見掛けの
血清IC
50,app値を表2に示す。
【表2】
【0645】
実施例2
以下の実施例は、OCT2媒介オキサリプラチン取込みの臨床的に意味のある阻害剤の
同定に関する。
FDAは、インビトロモデルで得られたデータを用いることによって、薬物が臨床にお
いてトランスポーター阻害剤となる可能性があるかどうか予測するガイダンスを公開して
いる[4]。Cmax,uは薬物の最大遊離非結合血漿濃度を表す。Cmax,u及びタ
ンパク質不含バッファー中で評価したインビトロIC50の間の比が<0.1であれば、
薬物はインビボでトランスポーターを阻害する可能性がない。このように、インビトロモ
デルの特性がインビボ有効性を予測するために用いられ得る。
【0646】
したがって、上記のインビトロ法を用いて同定した適格な阻害剤で、これらの薬物の公
開されている臨床薬物動態データを用いて臨床的にOCT2媒介オキサリプラチン細胞内
取込みへの潜在的効果について調査した。このデータを用いて、7つの化合物で>0.1
のCmax,u/IC50比が算出された(表2)。これらの薬物はブフロメジル、ミコ
ナゾール、エルロチニブ、プロパンセリン、エピナスチン、ペンタミジン、ドルテグラビ
ル、及びシメチジンである。それらの中で、ペンタミジン、ブフロメジル及びエルロチニ
ブが最も高いCmax,u/IC50比を有しており(>1)、最大臨床血漿濃度で、こ
れらの薬物はインビボで50%を超えてOCT2媒介オキサリプラチン細胞内取込みを阻
害し得ることを示唆していた。しかし、ペンタミジンの臨床投与量は患者の25%近くで
腎毒性を引き起こすおそれがあり、そのため、プラチナ薬剤毒性を減少させるにはあまり
望ましくないOCT2阻害剤であり得る。
【0647】
他の薬物について、それらの低い(<1)Cmax,u/IC50比は、これらの薬物
が、インビボで>50%のOCT2媒介オキサリプラチン取込みを達成するために、それ
らの通常の臨床投与量よりもはるかに高い投与量で投与される必要があり得ることを示唆
している。例えば、チオトロピウム及びエピナスチンは、IC50がそれぞれ0.12μ
M及び0.19μMと測定され、非常に強力なOCT2阻害剤と証明された点眼剤である
。しかし、それらの全身/血漿レベルも非常に低く(表2)、そのため、それらの承認さ
れた臨床投与量で投与した場合、眼以外の臓器におけるそれらのOCT2活性への阻害作
用はおそらく最小限となる。あるいは、それらの製剤及び/または投与経路を変更するこ
とでそれらの血漿曝露量が増加し得るが、これにより、低い血漿曝露量では観察されなか
った予想外の全身毒性を誘発し得る。
【0648】
さらに、別の方法を用いて、臨床において潜在的にOCT2媒介オキサリプラチン細胞
内取込みに影響を及ぼすことのできる化合物を同定した。Cmax,u/IC50比の代
わりに、Cmax/IC50,app比を用いたが、ここで、Cmaxは薬物の全血漿濃
度を表し、IC50,appは、100%血清、または生理的濃度の血清結合性タンパク
質、例えばアルブミンなどを含有するアッセイバッファー中でインビトロにて測定した見
掛けの50%阻害定数を表す。このアプローチは、高度にタンパク質に結合した(>90
%)化合物のインビボトランスポーター阻害作用をより正確に予測できると実証されたも
のである[17]。
【0649】
Cmax/IC50,app比を用いることで、ブフロメジル及びエルロチニブは、O
CT2媒介オキサリプラチン細胞内取込みの臨床的に意味のある阻害剤の可能性があるこ
とがさらに実証された。さらに、2つの高度に血清タンパク質に結合した薬物であるミコ
ナゾール及びドルテグラビルは、1未満のCmax,u/IC50(表2)を有していた
が、高いCmax/IC50,app比(それぞれ4.52及び3.23、表2)のため
に、インビボでOCT2媒介オキサリプラチン細胞内取込みのより高い阻害を示し得るこ
とが実証された。
【0650】
C
max,u/IC
50またはC
max/IC
50,app比に注目することに加えて
、OCT2媒介オキサリプラチン取込みを阻害する場合に最大限の臨床効果を有する阻害
剤を発見するために、他の薬物動態(PK)パラメータを考慮に入れることも重要である
。
【表3】
【0651】
臨床腫瘍学において、オキサリプラチンは典型的に静脈内点滴によって数時間かけて投
与される。
図1Aに示すように、オキサリプラチンの血漿濃度は2時間の点滴の開始後か
ら3時間の間高いままである。薬物の効力及び毒性は典型的にはその血漿濃度と密接に関
係しているので、オキサリプラチンはこの期間中に毒性を誘発する可能性が高い。したが
って、OCT2媒介細胞内取込みに起因するオキサリプラチン毒性を最大限に減少させる
ために、少なくともこの期間中はOCT2媒介オキサリプラチン取込みの阻害剤を十分な
血漿濃度に維持すべきである。ミコナゾールの場合、IVボーラス投与した600mg(
図1B)は高い最大血漿濃度を有するが、その血漿濃度は0.4時間の半減期(初期相)
で急速に低下し、結果として3時間で5倍近い減少となる。そのような半減期が短いPK
プロファイルは、ミコナゾールを長時間にわたって点滴しない限り、またはシスプラチン
/オキサリプラチンの投与がより短くない限り、臨床現場においてOCT2媒介オキサリ
プラチン取込みの阻害(ひいては毒性の阻害)を持続させるには理想的でない場合がある
。例えば、シスプラチン及びオキサリプラチンの両方をボーラスによって、またはより短
い点滴時間で投与することが可能である。ミコナゾールIV注入と対照的に、ブフロメジ
ル、ドルテグラビル及びエルロチニブ経口投与は長い半減期を有し(表3)、それらの血
漿濃度はより長い時間望ましい濃度に維持することができることを意味する(
図1C、図
1D及び
図1E)。ブフロメジル600mg徐放性錠剤qd(
図1C(2))は、プラチ
ナ誘導体の2時間の点滴、特にオキサリプラチン点滴からの保護に特によく適合している
ように思われる。
【0652】
実施例3
以下の実施例は、オキサリプラチン運搬に関与する他の主要なトランスポーターに優先
するOCT2に対する阻害選択性に関する。
OCT2に加えて、オキサリプラチンは他の取込みトランスポーター、主にOCT1及
びOCT3とも相互作用すると考えられる。MATE1及びMATE2Kをはじめとする
流出トランスポーターもオキサリプラチンの細胞蓄積を制御するのに関与している。出願
人らは、OCT1、OCT2、OCT3ならびにMATE1及びMATE2Kをはじめと
するトランスポーターによるオキサリプラチンの輸送性を確認した(
図2)。
【0653】
これらのトランスポーターは、オキサリプラチン効力及び毒性の調節において異なる役
割を有する。例えば、OCT1及びOCT3は、腫瘍細胞におけるオキサリプラチン効力
に関連付けられている。しかし、MATE1及びMATE2Kは、腎臓におけるオキサリ
プラチン及びシスプラチンの毒性を減少させると考えられている。したがって、オキサリ
プラチン効力に影響を及ぼさない、及び/またはオキサリプラチン腎毒性を悪化させない
ように、OCT2を特異的に阻害する薬物を得ることが重要である。
【0654】
ブフロメジルを例として用いて、オキサリプラチントランスポーターとの相互作用にお
ける選択性が重要であることを実証した。エルロチニブ及びシメチジンは、臨床試験でプ
ラチナ薬剤誘発性毒性から患者を保護する能力について試験済みの2つのOCT2阻害剤
であり、これを比較として用いた。上記と同様のインビトロトランスポーター法を用いて
、OCT1、OCT2、OCT3、MATE1及びMATE2Kに対するこれらの薬物の
IC50を求めた。表4に、これらのトランスポーターによって媒介されるオキサリプラ
チン(100%ヒト血清中20μMまたは4%BSAを含有するHBSS中100μM)
輸送に対する、ブフロメジル、エルロチニブ、シメチジン、ミコナゾール、及びドルテグ
ラビルの測定または推定の血清見掛けIC50,app値を記載する。
【0655】
ブフロメジルは、効力がOCT1、OCT3、MATE1及びMATE2Kよりも少な
くとも20倍高く、オキサリプラチンの輸送におけるOCT2の選択的阻害剤であると実
証された(
図3A、表4)。ドルテグラビルも、効力がOCT1、OCT3及びMATE
1よりも少なくとも10倍高く、オキサリプラチンの輸送におけるOCT2の強力な選択
的阻害剤であると実証された(
図3D、表4)。ミコナゾールは、効力がOCT1、OC
T3、MATE1及びMATE2Kよりも少なくとも2倍高く、オキサリプラチンの輸送
におけるOCT2の強力な阻害剤であると実証された(
図3C、表4)。エルロチニブも
OCT2に加えてOCT1を抑制する効力があると実証された(
図3B、表4)。シメチ
ジンは、OCT2の阻害剤ではあるが、MATE1によるオキサリプラチン輸送の阻害が
より優先されると示された(表3)。これらのデータは、エルロチニブ及びシメチジンと
比較して、ブフロメジル、ミコナゾール及びドルテグラビルの方が、OCT2媒介オキサ
リプラチン輸送の選択性が高い阻害剤であるので、より優れた薬剤であることを示唆して
いた。特に、ブフロメジル及びドルテグラビルは、OCT2と他の関連するトランスポー
ター(OCT1、OCT3、MATE1)との間で10倍を超える選択性を示した。
【0656】
ブフロメジル及びドルテグラビルと比較して、ミコナゾールはOCT2とOCT1との
間で低い(<2×)選択性を有し、OCT1発現腫瘍、例えば結腸癌及び肝癌などにおい
て他の2つの薬物よりもオキサリプラチン効力を妨げる可能性が高いことを示唆している
。それでも、ミクロナゾール(micronazole)はOCT2と他の関連するトラ
ンスポーター(OCT3、MATE1及びMATE2K)との間で高い選択性(>10×
)を有するので、OCT1が治療効力において最小限の役割しか果たさない場合(例えば
、化学療法薬がOCT2基質であるがOCT1基質ではない場合、及び/または腫瘍が低
いレベルでOCT1を発現する場合)には依然として有望な候補であり得る。
【0657】
同じ方法を用いてイミダゾール及び他の薬物のトランスポーター阻害選択性を判定する
ことができる。
【0658】
ブフロメジルは本発明者らによって初めてOCT2媒介オキサリプラチン輸送の強力か
つ選択性のある阻害剤であると発見されたにもかかわらず、
図15Aは、メトホルミンを
基質として用いた場合、ブフロメジルがOCT2とMATE1との間で阻害選択性を有し
ないことを示す。この結果は、OCT2媒介オキサリプラチン毒性を最小限にするための
適切な薬物をスクリーニングするためには、トランスポーター基質としてオキサリプラチ
ンを用いることが極めて重要であることをさらに実証している。
【0659】
対照的に、シスプラチンをトランスポーター基質として用いて、ブフロメジルのOCT
2及びMATE1阻害効力についてさらに評価した。
図15Bは、OCT2またはMAT
E1で媒介されるオキサリプラチン及びシスプラチンの輸送に対して、ブフロメジルがほ
ぼ同一のIC
50を有することを示す。この結果は、シスプラチン及びオキサリプラチン
が同じトランスポーター結合部位と相互作用し、実証されたような基質に全くまたはほと
んど依存しない(オキサリプラチン対シスプラチン)ブフロメジル効力及び選択性がもた
らされ得ることを示唆している。
【表4-1】
【表4-2】
【0660】
実施例4
以下の実施例は、取込み及び流出トランスポーターを共発現する細胞におけるブフロメ
ジルによる細胞内オキサリプラチン蓄積の阻害に関する。
【0661】
ほとんどの自然発生細胞において、取込みトランスポーターは流出トランスポーターと
共存する。基質の正味細胞内蓄積を決めるのは取込みトランスポーターと流出トランスポ
ーターとの間の相互作用である。1つの例は腎臓における近位尿細管上皮細胞で、そこで
は、基底側に発現されるトランスポーター、主にOCT2は、頂端側に発現されるMAT
E1及びMATE2Kと共同して働く[5]。どの程度ブフロメジルがオキサリプラチン
の正味細胞内含有量に影響を与えることができるのか測定するために、OCT2及びMA
TE1をそれぞれ40及び10ng/μLのcDNAプラスミド濃度で同時に形質移入し
て発現させることによって、多重トランスポーター細胞系を構築した。4% BSA H
BSS中で、様々な濃度のブフロメジルと混合したオキサリプラチン100μMを90分
間細胞に投与した。実験の最後に、オキサリプラチンの細胞内含有量をLC/MS/MS
で定量した。OCT2を単一発現した細胞またはGFPモックも対照として用いた。
【0662】
図4に示すように、OCT2発現細胞の細胞内含有量はGFPモック対照を発現する細
胞よりも有意に高く、OCT2がオキサリプラチン腎毒性を増強し得ることを示唆してい
た。しかし、MATE1及びOCT2を両方発現する細胞では、OCT2のみと比較して
オキサリプラチンの細胞含有量が顕著に減少されており、MATE1がオキサリプラチン
攻撃から尿細管細胞を保護する役割を果たすことを示唆していた。ブフロメジル及びエル
ロチニブは両方ともMATE1よりもOCT2に対して強力な阻害剤であるので(表4)
、OCT2及びMATE1を共発現する細胞においてオキサリプラチンの細胞蓄積を減少
させており、オキサリプラチンによって誘発される腎毒性を減少させる可能性も秘めてい
るはずであることを示唆している。これは、OCT2よりもMATE1に対して強力な阻
害剤のシメチジンと対照的であり、こちらは、MATE1の優先的阻害によって尿細管細
胞におけるオキサリプラチン蓄積を増加させ得るため、オキサリプラチン誘発性腎毒性を
悪化させる可能性がある。
【0663】
実施例5
以下の実施例は、ブフロメジルはOCT2媒介取込みを阻害することによってオキサリ
プラチンの細胞傷害性を減少させるという発見に関する。
【0664】
これまでの研究では、ブフロメジルがオキサリプラチンのOCT2媒介取込みの強力な
阻害剤であることを実証した。ここでは、OCT2、MATE1及びMATE2Kを過剰
発現するインビトロMDCK(イヌ近位上皮細胞)モデルで、ブフロメジルでのオキサリ
プラチン細胞傷害性の減少を試験した。
【0665】
材料及び方法
完全にコンフルエントなMDCK-II細胞単層に、OCT2、MATE1、及びMA
TE-2Kをコードするプラスミドをそれぞれ40、15、及び5ng/μlの濃度で含
有するDNA混合物を形質移入することによって、OCT2(SLC22A2)、MAT
E1(SLC47A1)、及びMATE2-K(SLC47A2)の三重トランスポータ
ーモデルを作製した。OCT2は基底側細胞膜上に発現され、MATE1及びMATE2
-Kは細胞の頂端側で発現された。MATE1/MATE2K流出トランスポーターの作
用を実証するために、同様のレベルのOCT2を発現するモデルも用いた。フェニルレッ
ドを含まず10%ウシ胎児血清を含むダルベッコ改変イーグル培地からなる完全培地中で
、5%CO2-95%空気の雰囲気下、37℃にて、これらの系を培養した。頂端側培地
は25mMの2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)でpH6.7に調整し
た。
【0666】
処理中、3~1000μMの範囲の様々な濃度のブフロメジルで基底側及び頂端側の両
方を処理し、オキサリプラチンは基底側のみに添加し、100μMに固定した。細胞を阻
害剤と共にまたは無しで30分間プレインキュベーションし、その後、オキサリプラチン
をさらに4時間共投与した。培地を除去した後、薬物不含培地を両側に加えた。24時間
のインキュベーション後、培地を収集し、LDH細胞傷害性アッセイキット(G-Bio
sciences, St. Louis, MO;またはBiochain, New
ark, CA)を用いて、製造業者の指示に従い、培地中の乳酸脱水素酵素(LDH)
活性を測定した。培地中のLDH活性を測定することによって細胞傷害性を評価した。
【0667】
さらに、OCT2阻害剤の濃度を薬物の臨床Cmaxに近い濃度に固定し、1~100
0μMの範囲の様々な濃度のオキサリプラチンと共投与した。ブフロメジルは3μ及び6
μMで試験した。ドルテグラビルは10μMで試験した。これまでの研究においてオキサ
リプラチンのOCT2取込みを阻害する効力が優れていたため、競合阻害物質の1つにエ
ルロチニブを選択した。別の競合阻害物質としてシメチジンも試験したが、その理由は、
広く知られている非選択的OCT2阻害剤であり、腎毒性及び神経毒性をはじめとするプ
ラチナ誘発性毒性の減少についてインビトロ及びインビボ両方で研究されているためであ
る。上記と同じ手順を用いて細胞傷害性を試験した。加えて、シスプラチンがOCT2ト
ランスポーターの基質として報告されていた。したがって、シスプラチンもこの三重モデ
ルにおいて6μMのブフロメジルと共にまたは無しで100、300及び1000μMで
試験した。別の同様の実験で、MATE1及びMATE2Kトランスポーターを含む及び
含まないOCT2発現細胞においてオキサリプラチン細胞傷害性を評価したところ、これ
らの流出トランスポーターの保護的役割が実証された。
【0668】
結果及び考察
図5及び6は、OCT2を発現する細胞において、ブフロメジル及びドルテグラビルが
オキサリプラチン誘発性細胞傷害性を効果的に減少したことを示す。100μMのオキサ
リプラチンを異なる濃度のブフロメジルと共に適用した場合、ブフロメジルはオキサリプ
ラチン誘発性細胞傷害性を投与量依存的に減少させ、臨床的に意味のあるIC
50値は6
μMであった(
図5)。
【0669】
オキサリプラチン細胞傷害性EC
50値を求めるために、一定濃度のブフロメジル、ブ
フロメジル、シメチジンまたはエルロチニブの存在下及び不在下において、様々な濃度の
オキサリプラチンで細胞を処理した。
図6A~Bは、オキサリプラチン処理単独と比較し
て、3μM及び6μMのブフロメジルとの共処理が、OCT2、MATE1及びMATE
2Kを発現する細胞におけるオキサリプラチン細胞傷害性を大幅に減少させ、EC
50値
がそれぞれ4.5倍及び10倍増加したことを示し、臨床的に意味のある濃度のブフロメ
ジルがOCT2発現細胞におけるオキサリプラチン誘発性毒性を顕著に緩和することがで
きることを示唆している。同様に、10μMのドルテグラビルは、MATE1及びMAT
E2Kを有する及び有しない、OCT2を発現する細胞におけるオキサリプラチン細胞傷
害性を大幅に減少させ(
図6C~D)、EC
50値がそれぞれ17.3倍及び27.4倍
増加した。
【0670】
エルロチニブはオキサリプラチンを添加しなくてもそれ自身で細胞傷害性を示した(図
6B)。6μMのエルロチニブの存在下で高濃度オキサリプラチン(>100μM)の毒
性の減少が観察されたが、そのEC50値は曖昧なフィッティングのために得ることがで
きなかった。ブフロメジル及びドルテグラビルと対照的に、6μMのシメチジンは、三重
トランスポーターモデルにおいてオキサリプラチン細胞傷害性を減少しなかったが、その
理由はおそらくOCT2ではなくMATE1及びMATE2Kの強力な阻害剤であるため
である。全体として、ブフロメジル及びドルテグラビルは、エルロチニブ及びシメチジン
と比較して、OCT2発現細胞におけるオキサリプラチン細胞傷害性の減少において優れ
た効果を示した。
【0671】
三重トランスポーターモデルは、基底側/血漿側にはOCT2が、頂端側/尿細管側に
はMATE1及びMATE2-Kが豊富に発現されている尿細管細胞におけるプラチナ薬
剤の動態及び毒性を模擬するのに特に有用であるということに留意すべきである。したが
って、これらの研究は特に、オキサリプラチンに関連する腎毒性を減少させるために、O
CT2媒介オキサリプラチン輸送の選択的阻害剤、例えばブフロメジルなどを用いること
ができると示唆している。
【0672】
さらに、
図7は、ブフロメジルが、OCT2、MATE1及びMATE2Kを発現する
細胞におけるシスプラチン誘発性細胞傷害性を減少させることができることも示唆してい
る。シスプラチン誘発性毒性は、30μM処理(データは図示せず)以降で投与量-反応
関係を示した。100、300、及び1000μMという3つの濃度のシスプラチンを比
較した。シスプラチン単独と比較して、6μMのブフロメジルは1mMのシスプラチンの
細胞傷害性を有意に減少させており、シスプラチン誘発性腎毒性を減少させるためにブフ
ロメジルを用いることができることを示唆していた。
【0673】
図16は、MATE1及びMATE2KがOCT2発現細胞におけるオキサリプラチオ
ン(oxaliplation)細胞傷害性の減少に有効であったことを示す。MATE
1及びMATE2Kの存在は、オキサリプラチン細胞傷害性のEC50を3倍増加させた
だけでなく、細胞損傷の最大レベルも減少させた。これらの結果は、実施例4及び
図4で
示したオキサリプラチン蓄積研究と一致しており、MATEトランスポーターは、オキサ
リプラチン及びシスプラチンによって誘発される毒性に対して、臓器、特に腎臓を保護す
るという仮説をさらに実証した。
【0674】
実施例6
以下の実施例は、腫瘍細胞株における化学療法剤のインビトロ抗腫瘍効果に対するブフ
ロメジル、ドルテグラビル及び他の薬物の影響に関する。
【0675】
ブフロメジル及びドルテグラビルがオキサリプラチン、シスプラチン及びオキサリプラ
チンとともに用いられる化学療法薬の抗腫瘍効果を損ない得るかどうか評価するために、
腫瘍細胞株において細胞傷害性アッセイを実施した。
【0676】
材料及び方法
HT-29及びHepG2細胞の抗増殖研究
ブフロメジル、ドルテグラビル、シメチジンまたはエルロチニブと共投与された場合の
オキサリプラチンの効力を調べるために、HT-29(大腸癌細胞株)及びHepG2(
肝癌細胞株)細胞を選択した。96ウェルプレートにおいてスルホローダミンB(SRB
)アッセイによって効力を測定した。HT-29細胞及びHepG2細胞を、5%CO2
-95%空気の雰囲気下、37℃で、それぞれ10%ウシ胎児血清を含むマッコイ5A及
びイーグルMEM培地中に維持した。播種密度は両細胞株とも3000細胞/ウェルとし
た。一晩のインキュベーション後、3μMもしくは6μMのブフロメジル、3μM~9μ
Mのドルテガビル(dolutegavir)、3μMもしくは6μMのエルロチニブ、
または6μMのシメチジンを細胞に添加して30分間プレインキュベーションし、その後
、0.1~100μMの範囲の様々な濃度のオキサリプラチンを培養培地に添加してさら
に72時間インキュベーションした。
【0677】
結果及び考察
抗増殖研究によって試験したところ、エルロチニブを除いて、ブフロメジル、ドルテグ
ラビル及びシメチジンは、HT-29(ヒト大腸腺癌)及びHepG2(ヒト肝癌)細胞
においてオキサリプラチンの効力を維持した:抗増殖研究で、3または6μMのブフロメ
ジル、3μMまたは6μMまたは9μMのドルテグラビルは、オキサリプラチン単独での
処理と比較して、HT-29においてオキサリプラチン抗増殖IC
50値に影響を与えな
いことが示された(
図8)。対照的に、6μMのエルロチニブはオキサリプラチンIC
5
0を8.4倍に変化させており、エルロチニブがHT-29細胞においてオキサリプラチ
ンの細胞傷害性を減少させ得ることを示唆していた(
図8A)。ブフロメジル(6μM)
、エルロチニブ(3μM)、またはシメチジン(6μM)とのオキサリプラチンの共投与
を並べて比較することも行った。オキサリプラチンを伴うエルロチニブの処理のみがオキ
サリプラチンの効力を顕著に減少させた(
図9)。さらに、同じ結果がHepG2細胞で
得られており、オキサリプラチン単独での処理と比較して、エルロチニブ及びオキサリプ
ラチンを共投与した場合、IC
50値は10倍に変化した(
図10)。理論に縛られるこ
とを望むものではないが、HT-29及びHepG2細胞は両方とも高レベルのOCT1
を発現するという仮説が立てられる。したがって、オキサリプラチン効力は、強力なOC
T1阻害剤であるエルロチニブによって減少した。
【0678】
以前の研究で、ブフロメジル及びドルテグラビルがOCT1でもOCT3でもなくOC
T2の強力な阻害剤であると示されたことに注目すべきである。そのため、ブフロメジル
またはドルテグラビルを共投与した場合でもオキサリプラチンの効力は同じままであった
。シメチジンは、オキサリプラチンと共投与した場合にオキサリプラチン効力を減少させ
ていないが、OCT2に対するその弱い阻害作用のために、OCT2によって媒介される
細胞傷害性を効果的に減少させていない可能性がある。全体として、データは、ブフロメ
ジル及びドルテグラビルは、HT-29及びHepG2細胞におけるOCT1またはOC
T3の弱いまたは無視できるほどの阻害のために、これらの癌細胞に対するオキサリプラ
チンの抗増殖効力に影響を与えなかったことを示唆していた。
【0679】
シスプラチンもOCTの基質として報告されている。したがって、これらの阻害剤がH
T-29におけるシスプラチンの効力を減少させるかどうか試験した。3つの阻害剤のい
ずれもHT-29細胞におけるシスプラチン抗増殖効力を減少させなかった(
図11)。
興味深いことに、エルロチニブは、おそらく腫瘍細胞におけるOCT1媒介オキサリプラ
チン取込みを阻害することによって、オキサリプラチンの効力を減少させ得ると以前に示
された。これらの結果は、OCT1媒介シスプラチン輸送がHT-29細胞におけるシス
プラチン蓄積の重要な機序でない可能性があることを示唆していた。そのため、エルロチ
ニブはHT-29細胞におけるシスプラチン細胞傷害性に対して無視できるほどの影響し
か及ぼさない。
【0680】
オキサリプラチン及びシスプラチンに加えて、大腸癌及び肝細胞癌をはじめとする様々
な腫瘍の治療において一般にオキサリプラチンと併用される2つの化学療法薬である5-
FU及びゲムシタビンに干渉する可能性について、ブフロメジルを試験した。この場合も
、
図12及び13に示すように、ブフロメジル及びドルテグラビルは、HT-29細胞に
おいて5-FU及びゲムシタビンの抗腫瘍効果に影響を与えておらず、ブフロメジル及び
ドルテグラビルの共投与が5-FU及びゲムシタビンの効力を減少させないであろうこと
を示唆していた。
【0681】
実施例7
以下の実施例はプラチナ誘発性神経障害に関する。
【0682】
当該技術分野において公知の一般的な方法論を用いて、厳選した神経障害マウスモデル
においてプラチナ薬剤による様々な毒性の誘発後のブフロメジルの活性を評価する。他の
方法も利用可能である。これらの方法を修正したものも同様に利用可能である。
【0683】
材料及び方法
全身毒性の評価
ベースライン、各薬物投与の前及び8週目まで毎週マウスの体重を測定する。さらに、
脱毛、立毛、全体的な歩行の弱さ、後足及び尾の皮膚の状態、ならびに胃腸障害の徴候の
観察をはじめとする全身健康状態の評価のために、マウスの検査も毎日行った。
【0684】
行動試験を実施する前のベースラインならびに1、3、6、及び8週目に、赤外温度計
(モデルIRT303HACCP, National Product, MD)を用
いて耳腔内温度を測定する。ベースラインならびに1、3、及び6週目に、各薬物治療群
からの2匹のマウスにおいて、イソフルランまたは等価物での簡単な麻酔の後、直腸プロ
ーブ(Thermalert TH-5及びTCAT-1Aコントローラ, Physi
temp Instruments, Inc.)を用いて深部体温を測定する。
【0685】
シスプラチン及びオキサリプラチンの腎毒性は、3週間の薬物治療の終了時に収集した
サンプル中の血中尿素窒素(BUN)レベルによって評価する。正常なマウスBUN値(
the University of MinnesotaのResearch Ani
mal Resources-http://www.ahc.umn.edu/rar
/refvalues.htmlからの正常参考実験値によれば8~33mg/dL;正
常な未治療C57BL/6マウスについて報告された値)に基づいて、BUNレベル>4
0mg/dLを腎毒性発症の指標として用いた。
【0686】
行動試験
試験の順番は、必ず最もストレスの少ない試験が最初に行われ、ある試験による次の試
験への影響が最小限となるように設計する。2週間の馴化の後、研究に入る前に試験手順
に慣れさせるために、特定の訓練プロトコールで1週間にわたってマウスを5回訓練した
。フォンフレイ及び足放射熱試験では、試験を開始する前にマウスを20分間装置内で自
由に走らせる。尾浸漬試験では、各マウスを部分的に巻かれた湿った紙タオルで1分間ゆ
るく包み、この練習1回分を3~4回繰り返す。握力試験では、3~4回握力計のトラピ
ーズを5分間引くように各マウスを誘導する。コールドプレート装置では訓練を行わない
。すべての行動試験は、ベースライン、1及び3週目の各薬物治療サイクルの完了後、な
らびに6及び8週目のフォローアップ評価で、4~6匹の実験用マウスの群で行う。すべ
ての行動試験は、室温(25℃)で0900時~1600時の間に、薬物治療条件に対し
て盲検化されている1人の実験者によって行われる。
【0687】
活動の監視
ベースライン、1、2、3週目の薬物治療中、ならびに6、8、及び10週目の治療後
に、VersaMax動物活動監視装置(AccuScanモデルRXYZCM-16,
Columbus, OH)を用いて歩行活動の監視を行う。6匹のマウスの活動を6
つの個別のオープンチャンバー内で同時に評価する。ウッドチップを敷いたプレキシガラ
スの箱(42×42×30cm)でできたオープンチャンバー内で、20分間の行動記録
の前にマウスを5分間自由に走らせる。VersaMax監視装置には、赤外センサーが
周囲に沿って2.54cmごとに(各面に沿って16個の赤外ビーム)、床から2.5c
m上に配置されている。VersaMax監視装置は21種の行動カテゴリーにおける情
報を収集するが、移動距離を1分間隔で収集し、10個の2分間ブロックに分割し、平均
して群平均±SEMとして提示する。
【0688】
握力試験
上述したように握力計(Stoelting, Wood Dale, Il)を用い
て握力を測定する。握力計は、デジタルディスプレイを備える力変換器及びトラピーズを
備える金属プレートからなる。各マウスをプレート上に載せ、トラピーズを掴んでいるこ
とができなくなり握りを離すまで力を増加させながらその尾を引く。測定器は達成された
ピーク引張力をデジタル的に捕捉して表示する。筋力はディスプレイに示されるピーク重
さ(g)として定義する。値は3回の試験の平均として個別に求め、群平均±SEMとし
て提示する。
【0689】
コールドプレートアッセイ
1℃間隔で-5℃~4℃の範囲の温度を用いて、マウスにおける冷痛覚過敏の閾値を調
べる。所定時間中に足を上げる回数を数えると、優れた再現性が得られる。予備投与研究
において、オキサリプラチン治療マウスは-5℃~-3℃で著しい冷痛覚過敏を発症した
。正確な温度を確実に読み取るために、温度センサーを金属プレートの表面上に直接に設
置する(TECA, Chicago, IL)。各コールド試験セッションでは、マウ
スを試験室に連れてきて、上蓋を備えた8cmW×14cmD×14cmHの透明プレキ
シガラス隔壁内に囲われた低温金属表面上に個別に載せる前に、10分間馴化させた。足
上げ計数の正確性を確保するために、各コールドプレート試験セッションはビデオカムコ
ーダー(Sony DCR-PC1000)を用いて録画し、ビデオをスローモーション
で再生する。いずれかの後足の急な持ち上げまたは跳躍の総数を冷痛覚過敏に対する反応
として計数する。歩行に関連する運動はすべての四肢の協調運動を伴うので明確であり、
これらは除外すべきである。マウスは、低温表面への繰り返し曝露によってもたらされ得
るあらゆる可能性のある麻酔作用または組織損傷作用を回避するために、所与の試験日に
1回のみ試験する。組織損傷を防止するために5分の最大カットオフ時間を用いる。3回
の別々の試験をベースラインで3つの別々の日に行い、1、3、6、及び8週目の薬物治
療の最中及び後における2回の別々の試験を平均して、足上げの平均回数として提示する
。
【0690】
フォンフレイフィラメントアッセイ
機械的アロディニアの評価では、フォンフレイフィラメント原理を用いたUgo Ba
sileダイナミックプランターエステシオメータ(Stoelting, Wood
Dale, Il)を用いる。どこにいても足に接触可能な金網床の上の透明プラスチッ
ク箱の下にマウスを置く。マウスが落ち着いてほとんど動かなくなるまで馴化及び探索行
動を最大2時間観察する。その後、作業者は接触刺激装置を各マウスの後足の下に配置し
、後足の標的部位の下に較正済みの金属フィラメントを位置決めする。スタートキーを押
すと、装置の動電アクチュエータが金属フィラメント(0.5mmの直径)を上昇させる
。フィラメントは足底表面に接触し、後足を引っ込めて停止シグナルが作動するまで10
秒間隔で0から5gまでの連続的な鉛直力を印加する。測定器は、足の引っ込めを誘発す
る重さ強度閾値(g)を自動的に記録する。5分間の間隔をあけて各後足を交互に4回試
験する。歩行または体重移動に関連する足の動きは引っ込め反応として数えない。各マウ
スの両後足での8回の試験の足引っ込め閾値を平均して平均±SEMとして記録する。
【0691】
放射熱アッセイ
熱痛覚過敏の評価では、プランターUgo Basile装置(Stoelting,
Wood Dale, Il)を用いてハーグリーブス試験[16]を行った。マウス
は、上蓋としてプラスチック箱を上に備えた高架ガラス表面上のこの装置内で自由に動く
ことができる。マウスが落ち着いて動かなくなるまで試験の前に2時間の馴化期間を与え
る。高強度の較正した赤外光源を各マウスの後足の足底表面上に垂直に当てる。後足の裏
の温度が上昇するとマウスは足を動かし、足の位置が変わることで反射光が変化してタイ
マーを停止させる。各試験で足を引っ込めるまでの潜時が自動的に記録される。15秒以
内にマウスが後足を引っ込めない場合、組織損傷を防止するために試験を終了して15秒
と記録する。5分間の間隔をあけて各後足を交互に4回試験する。各マウスの両後足での
8回の試験の足引っ込め潜時を平均して平均±SEMとして記録する。
【0692】
尾浸漬アッセイ
尾熱痛覚過敏の評価では、修正を加えて上述したように尾浸漬試験を行った。各試験セ
ッションで、試験室にマウスを連れてきて、1匹ずつ個別に3~4回湿った紙タオル中で
1分間尾を浸漬せずに馴化させる。次に、各マウスをわずかに湿った紙タオル中に素早く
かつ優しく包み、調査者の手で最小限に拘束して保定して尾の先端から3分の1を水浴中
に浸漬させる。水浴は50.5℃±0.5℃に事前に設定し、温度は独立した別の温度セ
ンサーで確認する。マウスが落ち着き、尾が弛緩してはじめて次のステップである尾の浸
漬を行う。マウスが興奮し出したら、包みを解いて試験プロトコールをやり直す。少なく
とも30分間隔てた3回の試験中に力強いテールフリックまでの潜時を記録し、3回の試
験を平均して平均±SEMとして提示する。カットオフ時間を20秒に設定し、その後で
は行動反応にかかわらずマウスを取り出した。
【0693】
マウスにおけるオキサリプラチンの神経毒性を予防または治療するためのブフロメジルの
使用
上記のように及びTa et al 2009[18]に記載されている完全な方法論
を用いて、どの程度ブフロメジルがマウスのオキサリプラチン誘発性末梢神経障害モデル
における神経毒性を予防または治療するか測定する。
【0694】
雄の野生型マウスにおけるオキサリプラチン(40または5mg/kg)の単回IP投
与に関連する熱感度をコールドプレートテストによって評価する。オキサリプラチンを与
える120及び24時間前に、-4、4、または30℃の温度に5分間曝露した場合の足
を上げる及び舐める回数を各マウスについて取得し、ベースラインイベントの回数を測定
する。オキサリプラチンの投与の24または48時間後に同じ温度に曝露した場合の、ベ
ースライン値と比較した足を上げるまたは足を舐める回数の変化率としてデータを記録す
る。フォンフレイヘア試験によって機械的アロディニアを測定する。メッシュプラットフ
ォーム上及び100×60mm円筒管中でマウスを馴化させておいた後、剛性フォンフレ
イヘアフィラメント(IITC Life Science)が後肢の足引っ込めを誘発
するのに必要な力を、オキサリプラチンを与える120及び24時間前に各マウスについ
て評価してベースラインイベントを測定する。各マウスで試験を繰り返して左足から右足
へと交互に行う間に5分間の間隔をあけて、各後足について3回足引っ込めを評価する。
オキサリプラチンの投与の前及び後の足引っ込めを引き起こすのに必要な力(グラム)の
変化率としてもデータを記録する。次の実験では、オキサリプラチン(5mg/kg)の
投与の前に、いくつかの投与量でのブフロメジルのIV注入を行う。あるいは、ブフロメ
ジルを経口投与することもできる。他の実験において、予防特性が観察され得るように、
実際にブフロメジルをオキサリプラチンの投与の24時間前に投与する。
【0695】
実施例8
以下の実施例は、Oct1/2(-/-)マウスにおけるオキサリプラチンの神経毒性
を予防または治療するためのブフロメジルの使用に関する。
【0696】
実施例7に上記した材料及び方法を用いて、野生型及びOct1/2(-/-)マウス
の両方のマウスのオキサリプラチン誘発性末梢神経障害モデルにおいて、ブフロメジルが
神経毒性を予防または治療するかどうかを測定するが、その完全な方法論は[18]に記
載されている。
【0697】
雄の野生型マウス及び同齢の雄のOct1/2(-/-)マウスにおけるオキサリプラ
チン(40または5mg/kg)の単回IP投与に関連する熱感度をコールドプレートテ
ストによって評価する。オキサリプラチンを与える120及び24時間前に、-4、4、
または30℃の温度に5分間曝露した場合の足を上げる及び舐める回数を各マウスについ
て取得し、ベースラインイベントの回数を測定する。オキサリプラチンの投与の24また
は48時間後に同じ温度に曝露した場合の、ベースライン値と比較した足を上げるまたは
足を舐める回数の変化率としてデータを記録する。フォンフレイヘア試験によって機械的
アロディニアを測定する。メッシュプラットフォーム上及び100×60mm円筒管中で
マウスを馴化させておいた後、剛性フォンフレイヘアフィラメント(IITC Life
Science)が後肢の足引っ込めを誘発するのに必要な力を、オキサリプラチンを
与える120及び24時間前に各マウスについて評価してベースラインイベントを測定す
る。各マウスで試験を繰り返して左足から右足へと交互に行う間に5分間の間隔をあけて
、各後足について3回足引っ込めを評価する。オキサリプラチンの投与の前及び後の足引
っ込めを引き起こすのに必要な力(グラム)の変化率としてもデータを記録する。次の実
験では、オキサリプラチン(5mg/kg)の投与の前に、いくつかの投与量でのブフロ
メジルのIV注入を行う。あるいは、ブフロメジルを経口投与することもできる。他の実
験において、予防特性が観察され得るように、実際にブフロメジルをオキサリプラチンの
投与の24時間前に投与する。
【0698】
実施例9
以下の実施例は、シスプラチン腎毒性に対して保護するためのブフロメジルの使用に関
する。
【0699】
PBS、シスプラチン(11mg/kg)、ブフロメジル(測定しようとする投与量)
+シスプラチン(11mg/kg)またはブフロメジル(5.5mg/kg)単独で雄の
ウィスターラットを全身的(IV)に治療した。治療の72時間後、血液を収集して血清
BUN(血中尿素窒素)及び血清クレアチニン値を分析する。
【0700】
血清BUN値はシスプラチン治療で増加するが、シスプラチンと併せたブフロメジルの
共投与はBUN値を低下させることが予想される。血清クレアチニン値もシスプラチン治
療で顕著に増加するはずであるが、シスプラチンとのブフロメジル共投与ではクレアチニ
ンレベルが低下するはずである。ブフロメジル治療単独では、血清クレアチニン値は対照
PBS治療値と比較して顕著に変化しないはずである。
【0701】
実施例10
以下の実施例は、経鼓膜ラットモデルにおけるオキサリプラチン及びシスプラチンの両
方に対して耳毒性を予防するためのブフロメジルの使用に関する。
【0702】
プラチナ薬剤は耳毒性を引き起こす。聴性脳幹反応(ABR)が、シスプラチンまたは
オキサリプラチン投与の前(治療前ABR)及びシスプラチン投与の72時間後(治療後
ABR)に測定されている。異なる治療条件の下で観察される聴性脳幹反応(ABR)閾
値シフト(dB)の棒グラフが他者によって示されており、これは、閾値の20~35d
Bのシフトによって立証されるようにシスプラチンが聴力損失を引き起こすことを示して
いる。ブフロメジル治療によってすべての試験した周波数でこうした閾値シフトが消失し
得ることが予想される。ブフロメジル単独での治療はABR閾値に影響を及ぼさないはず
である。
【0703】
プラチナ薬剤の抗癌効果を損ない得る懸念を限定するために、ブフロメジルを経鼓膜投
与することができる。薬物の経鼓膜投与は、聴力損失を予防するための薬物の局所適用に
よる使用である。この薬物投与経路は、薬物が体循環中に入り、副作用をもたらすか、ま
たは薬物-薬物相互作用を引き起こす可能性を減少させる。経鼓膜経路を介した薬物送達
の容易さは、外来診療で個人に容易に実施することができることを意味する。鼓膜におけ
る換気チューブの使用は、オキサリパチン(oxalipatin)での化学療法レジメ
ンを施す前の小児におけるブフロメジルのより偶発的な投与を可能にするであろう。
【0704】
ウィスターラットで治療前ABRを行い、その後、溶媒または経鼓膜ブフロメジル(測
定しようとする濃度の溶液)で前治療し、続いてシスプラチン(11mg/kg、IP)
またはオキサリプラチンを30分間にわたって点滴する。72時間後に治療後ABRを行
う。
【0705】
経鼓膜ブフロメジルは、溶媒で前治療した群において試験した3つの周波数すべてで、
ラットモデルにおけるシスプラチン及びオキサリプラチン誘発性聴力損失を解消すること
が予想される。走査型電子顕微鏡写真でコルチ器の3列の外有毛細胞の形態解析を行い、
実質的な外有毛細胞損傷を検出する。この損傷はブフロメジルの経鼓膜投与によって解消
されるはずである。
【0706】
実施例11
以下の実施例は、骨肉腫細胞におけるシスプラチンの腎毒性の減少及びシスプラチン活
性の保持の両方が、結腸癌及び肝癌由来の細胞株をはじめとする他の細胞株にも当てはま
ることを示す異種移植片に関する。
【0707】
材料及び方法
7週齢の雄フィッシャーラット及び雄ウィスターラットを、生理食塩水注入対照群(生
理食塩水)、軽いエーテル麻酔の下、ボーラス注入(測定しようとする投与量mg/kg
)及びマイクロシリンジポンプを用いた連続点滴によって頚静脈を介してブフロメジルを
静脈内(IV)注入するブフロメジル単独群(ブフロメジル単独)、腫瘍を有するラット
については1.75mg/kgのシスプラチンまたは腫瘍のないラットについては7mg
/kgのシスプラチンを腹腔内(IP)注入するシスプラチン単独群(シスプラチン単独
)、ならびにブフロメジル注入の直前にシスプラチン注入する併用治療群(シスプラチン
・ブフロメジル)の4群(1群に3~5匹のラット)に分ける。腫瘍を有する動物及び腫
瘍のない動物に対するシスプラチンの投与量は、予備実験の結果に基づいた、SOSN2
骨肉腫に対する中等度の抗腫瘍効果及び顕著な腎毒性を示す投与量である。結腸癌につい
てはHT-29及び肝細胞癌については選択した肝癌細胞株(完全な総説についての参考
文献[1]を参照)をはじめとする、様々な細胞株に効果を発揮するのにどれだけの投与
量のシスプラチンが必要とされるか判定するために、同様の研究を行うことができる。
【0708】
動物は、気候及び光制御環境中で水及び餌を自由摂取として飼育する。雄フィッシャー
ラットの背部にSOSN2腫瘍ブロック(約10mm3)を皮下接種する。あるいは、結
腸癌または肝癌の細胞株を接種する。腫瘍サイズが約300mm3に達したら、薬物治療
(シスプラチン;1.75mg/kg、IP、ブフロメジルはプロトコールに従う)を実
施する。腫瘍サイズは以下のように毎日16日間測定する。
腫瘍サイズ(mm3)=1/2×長軸×(短径)2
【0709】
腫瘍のない雄ウィスターラットをシスプラチン(7mg/kg)及びブフロメジル(プ
ロトコールの指示に従う)で治療し、血液サンプル(400ml)を軽麻酔下で尾静脈か
ら毎日収集し、5日目に深いエーテル麻酔下での頚椎脱臼によってラットを屠殺する。実
験の最終日に尿を24時間収集する。クレアチニン及び血中尿窒素(BUN)を本発明者
らの研究所内で市販のキットを用いて測定し、他の生化学的分析も実施する。
【0710】
ブフロメジル血清濃度の測定
100マイクロリットルの血清サンプル、25mlの内部標準ラニチジン(100mg
/ml)、及び100mlのNaOH(5N)を混合して、ブフロメジルを3mlの塩化
メチレンで抽出し、100mlの移動相(5%アセトニトリル/0.002Mトリエチル
アミン及び0.025%酢酸)に溶解して、高速液体クロマトグラフィーを用いて228
nmで測定した。10%ウシ胎児血清(Sigma)及び600mg/mlカナマイシン
硫酸塩(Meiji Seika Co., Tokyo, Japan)を補添したR
PMI-1640培地(Sigma)中で、5%CO2の雰囲気下、37℃にて細胞を培
養する。96ウェルプレート上に細胞(2.5~5103細胞/100ml/ウェル)を
播種し、24時間後、ブフロメジル(0.5、1mM)またはNAC(3mM)の存在下
または不在下において様々な濃度のシスプラチンで48時間処理する。処理後に、Cel
l Counting Kit-8を用いて製造業者の指示に従い、ミトコンドリアデヒ
ドロゲナーゼの活性の減少に基づいた細胞生存率を測定する。
【0711】
シスプラチンの細胞内取込み
シスプラチン取込みの測定のために、100mm培養皿中のコンフルエントに成長して
いる細胞を、ブフロメジル(1mM)と共にまたは無しでシスプラチン(500mM)を
含有する培地で2時間インキュベーションする。処理後、細胞をリン酸緩衝生理食塩水で
2回素早く洗浄してから、0.5NのNaOHによって可溶化し、細胞のタンパク質含有
量をDCプロテインアッセイキット(Bio-Rad Laboratories, R
ichmond, CA, U.S.A.)で測定する。NaOHで可溶化した細胞液を
脱イオンMilli-Q水(Millipore, Billerica, MA, U
.S.A.)で5倍に希釈する。プラチナ元素濃度をモデルAA-6800原子吸光分光
光度計(Shimadzu Corporation, Kyoto, Japan)で
フレーム原子吸光分析法によって測定する。原子化されたプラチナの吸光度を0.5nm
のスリット幅で14mA及び265.9nmの波長にて測定する。5秒の読取り時間で積
分した吸光度を記録する。標準曲線は0.5~50mg/mlの範囲にわたって直線であ
る。すべての測定を3回実施する。細胞内プラチナレベルはプラチナ(mg)/タンパク
質(mg)として表す。プラチナキレートを用いた質量分析をはじめとする他の技術も同
様に、プラチナ濃度を測定するために用いられ得る。
【0712】
インビボ実験
他者[14]によって記載された実験において、ラットへのIP注入(3.5mg/k
g)後のシスプラチンの血清濃度から半減期が24時間という結果が得られたが、シスプ
ラチンは腎臓に48時間蓄積した。ラットにおけるこの急速なクリアランスゆえに、IV
ボーラス注入及び4時間の連続点滴によって、シスプラチン注入後のブフロメジルの高い
血清濃度が維持されるはずである。ブフロメジルの血清濃度は、この注入プロトコールを
用いて適切なレベルに4時間維持することができる。
【0713】
初めに、このブフロメジル投与量がシスプラチンの抗腫瘍効果に影響を及ぼすかどうか
調べる。典型的には、シスプラチンは腫瘍成長を顕著に阻害し、治療の16日後において
、シスプラチン単独群の腫瘍塊は対照群のものの3分の1である。対照群またはシスプラ
チンとの併用において、ブフロメジルは腫瘍成長にほとんど影響を及ぼさないはずである
と予想する。
【0714】
次に、腎毒性投与量のシスプラチン(7mg/kg、IP)を非腫瘍ラットに投与し、
腎機能へのブフロメジルの効果を調べる。シスプラチンを投与した後、腎臓重量は典型的
に顕著に増加し、この増加はブフロメジルの添加によって抑制されるはずであるが、ブフ
ロメジルは単独で投与した場合には腎臓重量に影響を及ぼさないはずである。血清クレア
チニン及びBUNレベルは、シスプラチン注入の3日目の後に顕著に増加するはずであり
、ブフロメジル共投与はこれらのバイオマーカーの増加を顕著に阻害するはずである。結
果として、ラットはシスプラチンでの治療の5日後に重篤な腎損傷を被ると予想され、ブ
フロメジルとの併用治療は損傷を明らかに減少させるはずである。
【0715】
組織病理において、シスプラチン治療群における尿細管の上皮細胞の壊死性及びアポトー
シス性変化を分析すべきであり、損傷の程度及び範囲はブフロメジルの併用によって減少
するはずである。
【0716】
実施例12
以下の実施例は、ブフロメジルの存在下または不在下でオキサリプラチンによって治療
した腫瘍を有するマウスにおける神経毒性の評価に関する。ドルテグラビルまたはミコナ
ゾールもしくは任意の他のイミダゾール誘導体でも同様の実験が行われ得る。
【0717】
マウスモデルの使用
いくつかの研究で、ラットモデルを用いてオキサリプラチン誘発性末梢神経毒性の神経
生理学的、行動的及び病理学的特徴が調査されており(Authier N, et a
l. Neurotherapeutics. 2009; 6:620-629)、オ
キサリプラチン誘発性疼痛研究のほとんどは薬物の単回注入の後に行われてきた。ラット
はオキサリプラチンの単回投与の後で著しい低温及び機械的アロディニアを発症したが、
こうしたモデルは臨床診療において経験される慢性神経毒性を表すものではない(Jos
eph EK, Levine JD. J Pain. 2009;10:534-5
41)。Cavalettiら(Eur J Cancer. 2001;37:245
7-2463)は、ラットにおける慢性オキサリプラチン治療が、背根神経節(DRG)
ニューロンの萎縮を誘発し、末梢感覚神経伝導速度(NCV)を低下させることを実証し
た。さらに、慢性オキサリプラチン治療は、薬物治療が終了した後3週間持続した機械的
アロディニアと共に低温及び高温過敏症を誘発した(Ling B et al.Pai
n. 2007;128:225-234)。オキサリプラチン誘発性神経毒性を研究す
るためのラットモデルの使用は非常に参考になる。しかし、ラットに腫瘍を移植すること
は困難であるので、オキサリプラチンの抗癌特性のほとんどの研究はマウスを用いている
。したがって、オキサリプラチンの抗癌活性を評価するために用いられた同じ実験パラダ
イムにおける末梢神経毒性の調査に対して、ラットモデルの有効性は限定的である。
【0718】
高度神経障害マウスモデルの使用はヒトにおいて観察される病理をよりよく表している
最近、オキサリプラチン誘発性疼痛のいくつかのマウスモデルが、オキサリプラチンの
急性単回投与または慢性反復投与を用いて開発された(Gauchan P et al
.Neurosci Lett.2009;458:93-95)。これらの研究は、オ
キサリプラチン治療後の機械的及び低温アロディニアの発症を実証したが、末梢神経毒性
の特性評価は限定的であった。これらの限界に対処して、オキサリプラチンのスケジュー
ルで治療したBALB/cマウスにおいて実施した様々な研究で、慢性治療によって誘発
される末梢及び中枢神経系イベントのより完全な特性評価を得ることを目的として、疼痛
性神経障害の発症を誘発することができた(Renn, C.L.et al., Mo
l Pain, 2011, 7, 29)。
【0719】
以下の実験は、オキサリプラチンの抗腫瘍特性を維持しながら神経毒性を減少させるこ
とを目的に、腫瘍を有するマウスにおいて、ブフロメジルまたは他のOCT-2阻害剤の
存在下及び不在下の両方で行うことができる。
【0720】
全身外観及び体重の変化
この研究で用いるオキサリプラチン誘発性疼痛性末梢神経障害のモデルを作製するため
に、マウスにオキサリプラチンの尾静脈注入(3.5mg/kg)を週2回(3または4
日隔てて)4週間行う。対照群は薬物または溶媒注入を受けない未治療マウスである。こ
の研究の期間は21日、好ましくは30日であり、この間、マウスはオキサリプラチンを
受けた後で継続的にアロディニアを発症する。オキサリプラチンは一般にマウスにおいて
忍容性が良好である。薬物投与日にマウスの体重を測定するが、研究の経過とともに、オ
キサリプラチン治療マウスは、未治療マウスと比較して体重が顕著に減少し、研究の完了
までに約15%に達することになるであろう。
【0721】
神経病理学的解析
最後のオキサリプラチン投与の4日後に、神経伝導速度(NCV)及び活動電位振幅を
尾及び指神経において測定する。慢性オキサリプラチン治療は、未治療群と比較して、活
動電位振幅の顕著な低下を伴って尾NCVの顕著な低下を引き起こすはずである。
【0722】
DRG及び坐骨神経の形態解析
オキサリプラチン後における末梢ニューロンの機能の異常がDRG細胞体及び坐骨神経
の軸索の構造変化を伴うかどうか判定するために、4週目における最後の薬物投与の2日
後に、未治療及びオキサリプラチン治療マウス由来のL4-L5 DRG及び坐骨神経の
薄片を光学顕微鏡レベル及び電子顕微鏡レベルで検査する。オキサリプラチン治療動物と
未治療動物との間の差に特に注目する。光学顕微鏡による坐骨神経の検査によって、未治
療動物と比較したオキサリプラチン治療マウスの坐骨神経における有髄線維の状態がはっ
きりと観察されるであろう。
【0723】
ラットモデルにおけるこれまでの研究では、プラチナ誘導化合物がDRGニューロン細
胞体の縮小を誘発することが実証された(Carozzi VA et al, Exp
Neurol. 2010;226:301-309)。オキサリプラチンはマウスモ
デルにおいてDRGニューロンの核小体に変化をもたらすことが発見されたので、ラット
において見られたのと同様の細胞体縮小の証拠のために、形態計測解析を実施して、オキ
サリプラチン治療(3.5mg/kg/iv、週2回、4週間)及び未治療対照マウス由
来のDRGニューロンの細胞体を調べた。形態計測解析によって、オキサリプラチン治療
マウス由来のDRGニューロンは、未治療マウス(黒色の棒)由来のDRGニューロンと
比較して、核では違うが細胞体及び核小体の面積(mm2)が有意に減少したことが明ら
かとなった。したがって、オキサリプラチン毒性からの保護の可能性を実証するために、
ブフロメジル、ドルテグラビル及びミコナゾールのようなOCT2阻害剤の存在下及び不
在下の両方において、形態解析が推奨される。
【0724】
オキサリプラチンで治療した腫瘍を有するマウスモデルにおける抗腫瘍活性を維持しなが
らのブフロメジルによる神経毒性の減少
前述の実施例で示したように、ブフロメジルは、いくつかのマウスモデルにおいてオキ
サリプラチンによって誘発される神経毒性を明らかに減少させた。ここでの趣旨は、その
ような神経毒性の減少が、結腸及び肝臓異種移植片マウスモデルの両方においてオキサリ
プラチンの抗腫瘍活性を損なわないことを実証することである。
【0725】
特にこの実験については4週齢の雄BALB/cヌードマウスを用いる。マウスは特殊
な無病原体条件下で飼育し、餌及び水を自由摂取として供給する。動物を1週間検疫した
後、HT-29のようなヒト大腸腫瘍細胞株またはHepG2(ヒト肝癌)細胞を皮下移
植するが、その体積はおよそ8mm3である。
【0726】
抗腫瘍活性を評価するために、平均腫瘍体積が約150~200mm3に達した時点で
マウスを腫瘍体積に応じて群分けする(0日目)。各群は7~9匹のマウスからなってい
た。
【0727】
腫瘍直径を21日目まで週2回測定し、腫瘍体積を0.5×長さ×幅2として推定する
。相対腫瘍体積(RTV)を、次の式:RTV=(測定日の腫瘍体積)/(0日目の腫瘍
体積)を用いて計算する。15日目に、腫瘍成長阻害率(TGI)を、次の式:TGI=
[1-(治療群の平均腫瘍体積)/(対照群の平均腫瘍体積)]×100を用いて計算す
る。体重変化(BWC;%)を[(15日目の体重)-(0日目の体重)]/(0日目の
体重)×100(%)として計算する。RTVが4(21日目の終了時点での対照腫瘍の
サイズの50%に相当する)となるまでの期間の差を示す成長遅延期間(GDP)を、こ
れまでに報告されている手順に従って求める(Balin-Gauthier D,et
al, Cancer Chemother Pharmacol 7: 709-7
18, 2006)。
【0728】
毒性は20%以上の体重減少または中毒死と定義する。腫瘍を有するマウスでのマウス
のオキサリプラチン誘発性末梢神経障害モデルにおいて、ブフロメジルが神経毒性を予防
または治療するかどうかを、実施例7及び8に上記した材料及び方法を用いて測定する。
神経毒性は、この実施例の初めに記載した、DRG及びニューロンの形態解析、神経病理
学的解析、体重の測定、ならびに全身外観を含む実験方法のいずれかによって測定するこ
ともできる。
【0729】
より具体的には、神経毒性は、コールドプレートテストを用いて、腫瘍を有するマウス
におけるオキサリプラチン(40または5mg/kg)の単回IP投与に関連する熱感度
によって評価され得る。オキサリプラチンを与える120及び24時間前に、-4、4、
または30℃の温度に5分間曝露した場合の足を上げる及び舐める回数を各マウスについ
て取得し、ベースラインイベントの回数を測定する。動物をオキサリプラチンの投与の2
4または48時間後に同じ温度に曝露した場合の、ベースライン値と比較した足を上げる
または足を舐める回数の変化率としてデータを記録する。フォンフレイヘア試験によって
機械的アロディニアを測定する。メッシュプラットフォーム上及び100×60mm円筒
管中でマウスを馴化させておいた後、剛性フォンフレイヘアフィラメント(IITC L
ife Science)が後肢の足引っ込めを誘発するのに必要な力を、オキサリプラ
チンを与える120及び24時間前に各マウスについて評価してベースラインイベントを
測定する。各マウスで試験を繰り返して左足から右足へと交互に行う間に5分間の間隔を
あけて、各後足について3回足引っ込めを評価する。オキサリプラチンの投与の前及び後
の足引っ込めを引き起こすのに必要な力(グラム)の変化率としてもデータを記録する。
次の実験では、オキサリプラチン(5mg/kg)の投与の前に、いくつかの投与量での
ブフロメジルのIV注入を行う。あるいは、ブフロメジルを経口投与することもできる。
他の実験において、予防特性が観察され得るように、実際にブフロメジルをオキサリプラ
チンの投与の24時間前に投与する。神経毒性の評価は腫瘍減少の評価と並行して実施す
るので、オキサリプラチンを添加する前に実施する測定に加えて、24、48、72時間
ならびに7、14及び21日目にそのような評価を実施することが推奨される。最初の治
療の後、腫瘍体積は21日目まで継続的に週2回測定する。
【0730】
オキサリプラチンの投与は、結腸及び肝臓異種移植片モデルの両方に対して顕著な抗腫
瘍活性を示すことが予想される。何匹かのマウスが神経毒性への影響とは関係なくオキサ
リプラチン曝露で死亡し得ることも予想される。最後に、ブフロメジルの不在下で測定し
た結腸及び肝臓腫瘍細胞の両方の腫瘍体積及び体重の変化を測定することによって観察さ
れるオキサリプラチンの抗腫瘍活性は、ブフロメジルの存在下におけるオキサリプラチン
の抗腫瘍活性と同様になるが、優先的に、上記の実施例及びこの実施例の初めで定義した
ような神経毒性の測定可能な減少を伴うことが予想される。
【0731】
実施例13
以下の実施例は、Balb/Cマウスにおける静脈内(IV)及び腹腔内(IP)投与
を介したブフロメジル血漿濃度の測定に関する。
【0732】
実験
被験物のブフロメジルを2mg/mL(IV用)または4mg/ml(IP用)で5%
グルコース製剤中に調製した。7~8週齢の雄マウスを6日間馴化させた。3匹のマウス
に静脈内注入を介して10mg/kgのブフロメジルを投与した。腹腔内注入で、3匹の
マウスに20mg/kgのブフロメジルを投与し、3匹のマウスに40mg/kgのブフ
ロメジルを投与した。血液を0.083、0.5、及び1時間の時点でヘパリンチューブ
中に収集した。4℃において4000rpmでの血液の遠心分離によって血漿を得た。
【0733】
血漿サンプル分析のために、サンプルを解凍してよく混合した後、タンパク質沈降を用
いて、5:95(v/v)のメタノール:アセトニトリルの有機溶液を含有する内部標準
(ベラパミル)によって20μLアリコートを処理した。激しいボルテックス及び400
0rpmでの冷凍遠心分離の後、各サンプルからの50μLの抽出液を70μLの0.1
%ギ酸水溶液で再構成した。較正標準は、最初に70%アセトニトリルで2mg/mLブ
フロメジル原液を段階希釈し、その後、ブランク血漿中にその溶液を加えることによって
調製した。較正曲線は血漿サンプルと同様にして求めた。ブフロメジルの検出のために、
LC-MS/MSによってポジティブエレクトロスプレーイオン化を用いて多重反応モニ
タリング(MRM)モードの下で最終抽出液を分析した。線形回帰によってフィッティン
グした標準曲線を用いて、Analyst1.5.2ソフトウェア(AB Sciex)
を用いてマトリックス中のアナライトを定量した。
【0734】
結果
マウス血漿中のブフロメジル濃度を測定する生物学的分析法の確立に成功した。定量下
限(LLOQ)は0.5ng/mLであった。ブフロメジル血漿レベルを
図17Aに示す
。結果は、各群のマウスにおける平均ブフロメジル血漿濃度がIV/IP投与の10分後
で2mg/lより高いままであったことを示す。結果はさらに、IP投与の推定生物学的
利用能が40~60%であることを示唆している。
【0735】
実施例15
以下の実施例は、Balb/Cマウスにおける経口(PO)、静脈内(IV)及び腹腔
内(IP)投与を介したドルテグラビル血漿濃度の測定に関する。
【0736】
実験
被験物のドルテグラビルを1mg/mLでDMSO:3%マンニトール含有50mM
N-メチルグルカミン製剤(1:19v/v)中に調製した。6~7週齢の雄マウスをC
harles Riverから入手し、3~5日間馴化させた。マウスの体重を測定し、
個別に識別した(尾に印をつけた)。経口(PO)群のマウス(n=3)を一晩絶食させ
、10mg/kgのドルテグラビルを強制経口投与した。第2群のマウス(n=3)に4
mg/kgのドルテグラビルを静脈内(IV)注入した。第3群のマウス(n=3)に4
mg/kgのドルテグラビルを腹腔内(IP)注入した。投与の10分、0.5時間、1
時間後、約120μLの血液サンプルを眼窩静脈叢採血によってIV及びIPマウスから
収集した。投与の1時間、2時間、4時間後、約120μLの血液サンプルを眼窩静脈叢
採血によってPOマウスから収集した。4000rpm、4℃、10分間の血液サンプル
の遠心分離によって血漿を採取し、ドライアイス中で保存した。
【0737】
分析のために、必要に応じて血漿サンプルを較正範囲に希釈した。5:95(v/v)
のメタノール:アセトニトリルの有機溶液を含有する100μLの内部標準(ベラパミル
)で各血漿サンプルの20μLのアリコートを処理した。激しいボルテックス及び400
0rpmでの冷凍遠心分離の後、各サンプルからの50μLの上清を注入プレートに移し
、70μLの0.1%ギ酸水溶液で再構成した。較正標準は、最初に70%アセトニトリ
ルで2mg/mLドルテグラビル原液を段階希釈し、その後、ブランク血漿中にその溶液
を加えることによって調製した。較正曲線は未知サンプルと同様にして求めた。ドルテグ
ラビルの検出のために、LC-MS/MSによってポジティブエレクトロスプレーイオン
化を用いて多重反応モニタリング(MRM)モードの下で最終抽出液を分析した。線形回
帰によってフィッティングした標準曲線を用いて、Analyst1.6.2ソフトウェ
ア(AB Sciex)を用いてマトリックス中のアナライトを定量した。
【0738】
結果
ドルテグラビル血漿レベルを
図17Bに示す。結果は、投与経路がマウスにおけるドル
テグラビル血漿曝露量に顕著に影響を及ぼしたことを実証している。
【0739】
実施例14
以下の実施例は、オキサリプラチンでの慢性治療を施したBalb/cマウスにおける
、IV及びIP注入を介して投与したブフロメジルの神経保護作用の評価に関する。
【0740】
概要
研究の最初に、48匹の雄Balb/cマウスを4つの実験群にランダム化した:1つ
の群は未治療のままとし(CTRL、n=12)、1つの群はブフロメジルで治療し(B
FMD、n=12)、1つの群はオキサリプラチンで治療し(OXA、n=12)、1つ
の群はオキサリプラチン及びブフロメジルで併用治療した(OXA+BFMD、n=12
)。
【0741】
ベースライン(薬物治療前)及び治療の最後に、尾神経伝導検査(NCS)、行動試験
(ダイナミック及びコールドプレート)、組織病理検査を実施した。治療の最後に血清サ
ンプルを収集した。
【0742】
この研究で、DRG神経損傷(
図19~20)、坐骨神経損傷(
図21)、機械的アロ
ディニア(
図22)、低温アロディニア(
図23)、ならびに尾神経活動電位(
図24)
及び神経伝導速度(
図25)の減少によって立証されるように、オキサリプラチンで繰り
返し治療したマウスの群において、オキサリプラチンが末梢神経障害を誘発したことが示
された。ブフロメジルは、OXAのみの群と比較してOXA+BFMD群におけるOXA
IPNを減少させるのに有効であった。特に、DRG神経の形態検査及び形態計測評価は
、BFMDがOXAIPNの特徴であるOXA誘発性DRGニューロン損傷をほぼ完全に
予防したことを示していた。行動試験及びNCS試験もブフロメジルがOXAIPNを減
少させるのに有効であることを実証していた。
【0743】
ブフロメジル及びオキサリプラチンの血漿レベル分析によって、ブフロメジルはOCT
2媒介オキサリプラチン輸送を有意に阻害すると予想された有効レベルであり、オキサリ
プラチン血漿レベルはブフロメジルによる影響を受けなかったことが確認された。これら
の結果はすべて、この研究においてブフロメジルが、少なくともDRGにおける神経損傷
を最小限にすることによって、DRGにおけるOCT2媒介オキサリプラチン蓄積を解消
し、ひいては、OXAIPNの急性(低温アロディニア)ならびに慢性(機械的アロディ
ニア及びNCS)形態の両方を緩和するのに有効であり得ることを示唆していた。
【0744】
研究目的
ブフロメジルは本発明者らによってOCT2媒介OXA輸送の強力な特異的阻害剤とし
て発見された(実施例1);そのため、この研究の目的は、確立されたOXAIPNモデ
ル(Renn CL., Mol Pain, 2011, 7, 29)において、ブ
フロメジルによるOCT2媒介OXA輸送の阻害がOXA誘発性神経障害の重症度を減少
させることができるかどうか検証することであった。
【0745】
材料及び方法
動物は入荷直後に身体検査(健康診断)を行った。
【0746】
動物の世話及び飼育は、国内の(D.L. n. 26/2014)及び国際間の(E
EC Council Directive 86/609, OJ L 358, 1
, Dec.12, 1987; Guide for the Care and U
se of Laboratory Animals, U.S. National
Research Council, 1996)法律及び政策に従う施設のガイドライ
ンに準拠した。
【0747】
研究デザイン
研究デザインを
図18に示す。
【表5】
【0748】
OXAは尾静脈を介して(iv)投与した。腹腔内ブフロメジル(ip)はOXA及び
BFMDの静脈内(iv)共投与の15分前に注入した。
【0749】
投与量選択の正当化
ブフロメジルの投与量及び投与経路は、実施例13から得られたデータに基づいて、オ
キサリプラチン投与の間に1.72mg/lを超える目標ブフロメジアル(buflom
edial)血漿濃度を達成するように決定した。そのような濃度では、ブフロメジルは
実施例1からのインビトロデータに基づくと>90%のOCT2阻害を達成すると推定さ
れる。オキサリプラチンの投与量はこれまでの実験及び文献データ(Renn CL.,
Mol Pain, 2011, 7, 29)に基づいて選択した。
【表6-1】
【表6-2】
【0750】
試験方法
神経伝導速度
筋電図検査装置(Myto2 ABN Neuro, Firenze, Italy
)を用いて尾及び指神経で神経伝導速度(NCV)を評価することによって、薬物の慢性
投与後における末梢神経障害の発症を評価した。尾NCVは、2つの記録針電極を尾根部
に、2つの刺激針電極を記録点の3.5cm遠位に配置することによって測定した。同様
に、指NCVは、記録電極を距骨の近くに、そして、刺激電極を指神経に近い第4趾の近
くに配置することによって測定した。刺激の強度、継続時間及び周波数は、最適の結果が
得られるように設定した。すべての神経生理学的測定は、バイタルサインを継続的に監視
しながら、手順全体にわたって温度制御室(22+/-2℃)において標準条件下で、か
つ、動物にイソフルラン麻酔を施して実施した。
【0751】
行動試験:ダイナミックプランターエステシオメータテスト
ダイナミックプランターエステシオメータテストを用いて、機械的疼痛の知覚における
変化及び薬物治療によるその変遷を測定した。試験を実施する3日前にマウスを装置に慣
れさせておき、1時間の馴化期間の後、試験を実施した。一次関数的に増加する機械的力
を発生させるダイナミックエステシオメータテスト(モデル37450; Ugo Ba
sile Biological Instruments, Comerio, It
aly)を用いて、機械的痛覚閾値を評価した。各時点で、馴化期間後に、サーボ制御機
械的刺激(先が尖った金属フィラメント、0.5mm直径)を後足の足底表面に当て、漸
増する断続的な圧力を15秒のうちに15gまで達するように加えた。明らかな自発的に
後足を引っ込める反応を誘発する圧力が自動的に記録され、機械的痛覚閾値指数を表すも
のとみなした。機械的閾値は常に2分ごとにそれぞれの側を交互に3回評価して平均値を
求めた。結果は動物が耐えた最大圧力(グラムで表される)を表す。30秒の上限カット
オフがあり、その後では機械的刺激は自動的に停止された。
【0752】
行動試験:コールドプレートテスト
コールドプレートテストを用いて、低温関連疼痛の知覚における変化及び薬物治療によ
るその変遷を測定した。コールドプレートテストは、プレキシグラスシリンダー及び温度
を調節可能なサーモスタットプレートで構成された装置(35100-ホット/コールド
プレート、Ugo Basile instruments)を用いて実施した。移動及
び歩行が自由な+4℃に設定したプレート上にマウスを載せた。2人の盲検化した実験者
が同時に、5分間の試験中の痛みのサイン(例えば、跳ぶ、舐める、など)の数を測定す
る。
【0753】
DRG及び坐骨神経の神経病理学的解析
調査者はこれらの解析の神経及びDRG条件に対して盲検化されていた。最後のオキサ
リプラチン投与の4日後に各群から3匹の動物を屠殺した。光学及び電子顕微鏡解析のた
めに、左坐骨神経及びL4-L5 DRGを採取して以前に報告したプロトコールに従っ
て処理し、樹脂包埋して薄切した。光学顕微鏡解析では、1μm準薄片をトルイジンブル
ーで染色し、Nikon Eclipse E200光学顕微鏡(Nikon, Fir
enze, Italy)を用いて検査した。電子顕微鏡解析では、酢酸ウラニル及びク
エン酸鉛で対比染色した超薄片(80nm)をPhilips CM 10透過型電子顕
微鏡で検査した(Philips, Eindhoven, Netherlands)
。
【0754】
DRGニューロンの形態計測解析
調査者はこれらの実験における組織の実験条件に対して盲検化されていた。トルイジン
ブルーで染色した1ミクロン厚の準薄片を対照(n=3)及びオキサリプラチン治療マウ
ス(n=3)由来のDRGの形態計測検査に用いた。(Renn et al. Mol
ecular Pain 2011, 7:29)。同じ細胞体の重複を避けるために、
50μmの間隔をあけた切片の薄切面に核小体が含まれていた細胞のみを考慮し、コンピ
ュータ支援画像解析器(ImageJ NIH)で解析して、マウス1匹につき少なくと
も300DRGニューロンの細胞体及び核小体のサイズを測定した。
【0755】
坐骨神経組織像の解析:G比の測定
行動解析及び電気生理学的解析の完了後、動物を屠殺し、坐骨神経を解剖して固定し、
ミエリンを染色して準薄片に切断した。光学顕微鏡検査を実施して神経全体の画像を取り
込み、そして、軸索径及びミエリン厚20を評価するために、この画像で半自動ソフトウ
ェアベースの神経形態計測を行った。
【0756】
統計学的評価
体重、NCV、感覚電位振幅及び行動試験の差は、分散分析(ANOVA)及びテュー
キー・クレーマー事後検定(有意水準はp<0.05に設定)を用いて統計学的に評価し
た。
【0757】
データ取得
すべての調査のデータは、可能な場合は常に、試験施設/現場の目的に向けて専用に設
計されたソフトウェアパッケージを用いてオンラインで記録した。オンライン記録が不可
能であった場合には手書きの生データシートを用いた。データは後で手作業によりコンピ
ュータに入力しており、生データシートは保管してある。
【0758】
結果
死亡
最初の投与の後に2匹(BFMD及びOXA+BFMD群)が死亡し、最後の投与の後
に1匹(OXA+BFMD群)が死亡した。
【0759】
臨床所見
試験化合物の投与は忍容性が良好であった。
【0760】
体重
体重は研究を通して変化した。治療中、すべての治療群は未治療動物と比較した場合に
体重に有意差を示さなかった。
【0761】
形態計測及び組織病理学的解析
形態計測解析によって、オキサリプラチン治療マウス(OXA、濃灰色)由来のDRG
ニューロンは、未治療マウス(CTRL、淡灰色の棒)由来のDRGニューロンと比較し
て、細胞体(
図19A)及び核小体(
図19B)の面積(μm
2)が有意に減少したこと
が明らかとなった。さらに、BFMDの存在は細胞体及び核小体の両方についてDRGを
明らかに保護しており、OXAでの4週間の治療の後でCTRL群との差を示さなかった
(OXA+BFMD、黒色の棒)。
【0762】
4週目における最後の薬物投与の2日後に、未治療マウス、BFMD治療有りまたは無
しのオキサリプラチン治療マウス由来のL4-L5 DRG及び坐骨神経の薄片を光学顕
微鏡レベル及び電子顕微鏡レベルで検査した(
図20)。(
図20:OXA)にはっきり
と示されるように、オキサリプラチン後における末梢ニューロンの機能の異常はDRG細
胞体の構造変化を伴っていた。光学顕微鏡検査によって、オキサリプラチン治療マウス由
来のDRGニューロンは、未治療DRGニューロンと比較して、核小体が複数あり、偏心
性核小体を有する細胞体の発生率が高いことが明らかとなった。すべての実験群において
、ニューロン及び衛星細胞の細胞質は正常であるように見えた。OXAの存在下または不
在下のBFMD群は明らかに対照と同様に見えるので、OXAでの治療中のBFMDの保
護特性がさらに立証される。
【0763】
つまり、OXAでの治療中のBFMDの存在は、細胞形態計測及び組織病理検査の両方
で観察されたようにDRGを明らかに保護する。
【0764】
坐骨神経の神経病理学的解析
神経細胞髄鞘形成の変化を評価するために、本発明者らは神経線維のg比を計算した(
g比は、軸索の直径と有髄線維の外径との間の数値的比率で表示され、したがって、プラ
チナ神経毒性に関連する坐骨神経の髄鞘形成不全(Boehmerle, W., et
al. Sci. Rep. 4, 6370)はg比の増加を引き起こす)。
図21
に示すように、軽度の髄鞘形成不全は、G比の小さいが統計的には有意な増加として現れ
、CTRLと比較してOXA群において明らかであった。BFMDでの治療はそのような
損傷を最小限にしており、OXA群と比較したOXA+BFMD群のG比の低下として示
された。このデータにより、OXAに起因する神経損傷に対するBFMDの保護作用がさ
らに確証された。
【0765】
ダイナミックエステシオメータテスト
ベースライン及び研究の終了時でのダイナミックエステシオメータテストの結果(
図2
2)を
図Oで報告する。治療の終了時では、OXA単独で治療した群のみ機械的アロディ
ニアの発症を示し、CTRL、BFMD及びOXA+BFMDと比較して引っ込めまでの
潜時が減少した(p<0.001)。
【0766】
コールドプレートテスト
ベースライン、3回目の注入後及び研究の終了時(8回の注入)でのコールドプレート
テストの結果を
図23で報告する。3回目の注入後、OXA単独で治療した群のみが、C
TRL及びすべての治療群と比較して痛みのサインの有意な増加を示した(p<0.00
1)。治療の終了時には、OXA単独で治療した群またはBFMDを共投与した群の両方
が、CTRL及びBFMDと比較して痛みのサインの有意な増加を示した(p<0.00
1)。併用治療群は、OXA単独と比較して痛みのサインの有意な減少を示した(p<0
.05)。
【0767】
神経生理学的結果
オキサリプラチンの投与は、対照マウスと比較して尾神経伝導速度の有意な低下を誘発
し、OXA+BFMDで治療した群は、CTRL及びBFMD群と比較して低下を示した
が、OXA単独と比較した場合には小さいが統計的には有意な増加を示した(
図24)。
OXA群のみ尾振幅の有意な減少を示したが(CTRLと比較してp<0.01)(
図2
5)、CTRL、BFMD及びOXA+BFMD群の間では統計的に有意な差はなかった
。
【0768】
血漿レベル
OXA及びBFMDの両方の血漿レベルを研究の終了時に測定した。BFMDの血漿レ
ベルは一貫して期待されるレベル(1.72mg/l)よりも高かった(
図26A)。図
26Aに示すように、インビボにおいてBFMDとOXAとの間で薬物動態学的相互作用
は観察されず、そのため、BFMD及びOXAの存在下でのBFMDの両方のレベルは顕
著なほどに同等である。さらに、OXAの血漿レベルはBFMDの存在に影響されないよ
うに思われる(
図26B)。
【0769】
実施例16
以下の実施例は、オキサリプラチンの単回投与によって引き起こされる急性末梢神経障
害に対するドルテグラビル(DTG)及びクロルフェネシン(CTC)の効果の評価及び
比較に関する。
【0770】
目的
この研究の目的は、オキサリプラチン(OXA)での急性治療を施したBalb/cマ
ウスにおけるドルテグラビル及びクロルフェネシンカルバメートの効果を評価することで
ある。ドルテグラビル及びクロルフェネシンは両方とも公知のOCT2阻害剤である。し
かし、本発明者らの実験において、ドルテグラビルは選択的OCT2阻害剤であるが、一
方で、クロルフェネシンは、非プラチナ化合物ASP+のOCT2媒介輸送の非常に強力
な阻害剤と報告されているにもかかわらず、OCT2媒介オキサリプラチン輸送を阻害し
ないことをすでに立証した(実施例1)。実施例15からの知見に基づいて、ドルテグラ
ビルはDRGにおけるオキサリプラチン取込みを遮断するはずであるが、クルロフェネシ
ン(Chrlophenesin)はしないはずであると予想される。したがって、急性
的に誘発された末梢神経障害において、ドルテグラビル及びクロルフェネシス(Chlo
rphenesis)で雄Balb/cマウスの保護がどの程度異なり得るのか観察する
ことが本発明者らの目的である。
【0771】
研究デザイン
研究の最初に、30匹の雄Balb/cマウスを6つの実験群にランダム化した(
図2
7):1つの群は未治療のままとし(CTRL、n=5)、1つの群はオキサリプラチン
iv3.5mg/kgで治療し(OXA、n=5)、1つの群はドルテグラビル4mg/
kg ipで治療し(DTG、n=5)、1つの群はクロルフェネシン4mg/kg i
pで治療し(CPC、n=5)、1つの群はオキサリプラチン3.5mg/kg iv及
びOXA投与の60分前のip投与によるドルテグラビルで併用治療し(OXA+BFM
D、n=12)、最後の群はクロルフェネシン4mg/kg ip、オキサリプラチン3
.5mg/kg及びOXA投与の60分前のip投与によるドルテグラビルで治療した(
OXA+CPC)。
【0772】
この研究に用いたドルテグラビルの投与量及び投与経路は、実施例14のPK研究に基
づいて、DTG血漿レベルがOCT2を顕著に(>90%)遮断するのに十分となるよう
に決定した。
【0773】
ベースライン及び治療の終了時に、行動試験(ダイナミック及びコールドプレート)な
らびに血清収集を実施した。行動試験はOXA単独で治療した動物におけるアロディニア
の発症を立証していた。
【0774】
薬物投与量及び製剤
オキサリプラチン(OXA)、3.5mg/kga、静脈内、グルコセート5%中に溶
解
【0775】
ドルテグラビ(Dolutegravi)(DTG)、4mg/kgb、腹腔内、50
mMのN-メチルグルカミンの3%マンニトール水溶液で希釈したDMSO溶液(1/1
9v/v)として製剤化
【0776】
クロルフェネシンカルバメート(CPC)、4mg/kgc、静脈内、グルコセート5
%中に溶解
【0777】
薬物治療
OXA溶媒、OXA、CPC、DTG、DTG+OXA及びCPC+OXAを1回投与
した。OXA及びDTGを共投与した群では、OXAの投与の1時間前にDTGを腹腔内
注入した。OXA及びCPCを共投与した群では、CPCをOXAと静脈内共投与した。
実施例15に記載した方法を用いて、機械的アロディニア及び冷知覚閾値(ダイナミック
テスト及びコールドプレートテスト)をそれぞれ治療の24及び48時間後に実施した。
【0778】
血漿サンプル収集
オキサリプラチンのiv投与の15分後、各群から薬物動態解析のために血清サンプル
を収集した。
【0779】
結果
図28Aは、3.5mg/kgのオキサリプラチンの単回注入が、CTRL群、ならび
にDTG単独及びOXA+DTGと比較して、OXA群において機械的疼痛閾値(MPT
)の有意な減少によって立証される機械的アロディニアを誘発したことを示す。CTRL
、DRG及びOXA+DTG群の間では統計的に有意な差はなく、DTGがオキサリプラ
チンによって急性的に誘発される機械的過敏症のほぼ完全な軽減に有効であったことを示
唆している。対照的に、
図28Bに示すように、CPCはそのような効果を有しないこと
が示されたが、これは、DRGにおけるOCT2媒介プラチナ取込みに対して保護しない
化合物で予想される結果であった。
【0780】
同様に、コールドプレートアッセイ結果は、OXAに追加されたDTG(
図29)が低
温アロディニアから動物を保護することをはっきりと示す。
【0781】
これらの結果は、DTGが予想通り、両タイプのアロディニアに対して保護作用を有し
ており、そのため、急性及び慢性両方のCIPN、より具体的にはOXA-IPNの副作
用を最小限にするために用いることができたことをはっきりと示す。
【0782】
実施例16
以下の実施例は、ブフロメジルの経口投与有り及び無しとした、8サイクルのオキサリ
プラチンで治療したマウスにおけるOXAIPNと相関があるオキサリプラチン蓄積に関
する。
【0783】
研究デザイン
この研究のデザインは、ブフロメジルをオキサリプラチン投与の2時間前に強制経口投
与(PO)、80mg/kgで投与したことを除いて、実施例15に記載したものと同じ
であった。
【0784】
8サイクルの治療の終了時に、コールドプレートテスト、ダイナミックテスト及びNC
Sテストをすべてのマウスで行った。以下の方法を用いて、OXA及びOXA+BFMD
群それぞれの3匹のマウスのDRG、坐骨神経及び腎臓におけるプラチナ含有量を測定し
た。
【0785】
プラチナ蓄積測定
最後の薬物投与の24時間後に屠殺した3匹/群から収集した凍結坐骨神経、DRG、
腎臓、及び血漿検体で組織全プラチナ濃度を測定した。各組織について、対照標準組織で
の較正を作成した。すべての凍結試験サンプル及び標準試料を消化プロセスのために特殊
なHNO3:HCl溶液(1:3)で処理した。消化後に得られたサンプルを「原子吸光
」(Analyst 600 Perkin Elmer, Monza, Italy
)によって分析し、プラチナ組織濃度を適宜計算した。
【0786】
結果
実施例15で提示した結果と同様に、80mg/kgの経口投与されたブフロメジルは
、行動試験(機械的疼痛閾値及びコールドプレートテスト)(
図30)ならびに神経伝導
速度測定(
図31)の両方に基づくと、OXAIPNに対する保護作用を示した。さらに
、ブフロメジル治療の結果、DRGにおけるオキサリプラチン蓄積が有意に減少したが(
図32A)、OCT2を高いレベルで発現していない可能性のある坐骨神経ではそのよう
な減少は見られなかった。この結果は、ブフロメジルが、OCT2を介したオキサリプラ
チン蓄積を減少させることによってオキサリプラチン誘発性DRG損傷を保護し得ること
をさらに裏付けている。興味深いことに、ブフロメジルは腎臓におけるオキサリプラチン
蓄積も減少させており、この研究において、ブフロメジルが腎臓のOCT2を遮断するこ
とができたことを示唆している。この結果は、前述の実施例で示したものと併せて、ブフ
ロメジル及び他の選択的OCT2阻害剤、例えばドルテグラビルなどが、腎臓におけるシ
スプラチン蓄積を減少させることによって、シスプラチン誘発性腎毒性に対して保護する
役割を有する可能性が非常に高いことをさらに示唆している。
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