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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20220805BHJP
【FI】
H02M7/48 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019130182
(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公開番号】P2021016261
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】神宮 勲
(72)【発明者】
【氏名】増渕 展大
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-077519(JP,A)
【文献】特開平03-244001(JP,A)
【文献】特開2011-024287(JP,A)
【文献】特開2002-354825(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0176267(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42~ 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング素子を有し、前記複数のスイッチング素子のオン・オフにより、交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換の少なくとも一方の交直変換を行う主回路部と、
前記主回路部の動作を制御する第1制御装置と、
前記主回路部の動作を制御する第2制御装置と、
を備え、
前記第1制御装置及び前記第2制御装置は、一方を前記主回路部の動作を実際に制御する運転系とし、他方を前記運転系の予備の待機系とするとともに、前記運転系と前記待機系とを切り替えられるようにし、
前記第1制御装置は、前記主回路部の動作を制御するための第1制御信号と、前記運転系及び前記待機系を識別するための第1選択信号と、を前記主回路部に送信し、
前記第2制御装置は、前記主回路部の動作を制御するための第2制御信号と、前記運転系及び前記待機系を識別するための第2選択信号と、を前記主回路部に送信し、
前記主回路部は、前記第1選択信号及び前記第2選択信号を基に、前記第1制御信号及び前記第2制御信号から前記運転系の制御信号を選択し、選択した前記運転系の前記制御信号に基づいて前記複数のスイッチング素子のオン・オフを制御する制御回路を有し、
前記第1選択信号及び前記第2選択信号は、前記運転系であることを示す運転状態と、前記待機系であることを示す待機状態と、を有し、
前記第1制御装置及び前記第2制御装置は、前記運転系と前記待機系とを切り替える場合に、前記第1選択信号及び前記第2選択信号の双方を前記運転状態とするオーバーラップ期間を設け、
前記制御回路は、前記オーバーラップ期間において、前記第1制御信号と前記第2制御信号とが同じ状態となった際に、前記運転系と前記待機系とを切り替える電力変換装置。
【請求項2】
前記主回路部は、直列に接続された複数の変換器を有し、
前記複数の変換器のそれぞれが、前記複数のスイッチング素子と前記制御回路とを有する請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記複数の変換器は、所定の電圧を出力する出力状態と、前記所定の電圧の出力を停止した停止状態と、を有し、
前記制御回路は、前記オーバーラップ期間において、前記第1制御信号と前記第2制御信号とが前記変換器を前記停止状態とする状態となった際に、前記運転系と前記待機系とを切り替える請求項2記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換の少なくとも一方を行う主回路部と、主回路部の動作を制御する制御装置と、を備えた電力変換装置が知られている。こうした電力変換装置において、制御装置を待機2重系で構成することが行われている。すなわち、運転系の制御装置と待機系の制御装置との2つの制御装置を設け、運転系の制御装置に異常などが発生した際に、待機系の制御装置に切り替えられるようにする。これにより、電力変換装置において、より安定した動作を得ることができる。
【0003】
また、制御装置を待機2重系で構成する場合に、待機系の制御装置をホットスタンバイ構成とすることも検討されている。ホットスタンバイ構成では、運転系の制御装置及び待機系の制御装置が、主回路部の動作を制御するための制御信号と、運転系の制御信号を選択するための選択信号と、をそれぞれ主回路部に送信し、主回路部側で制御信号を選択させる。これにより、運転系の制御装置に異常などが発生した際に、即座に待機系の制御装置に切り替えることが可能になり、電力変換装置の動作をより安定させることができる。
【0004】
待機系の制御装置をホットスタンバイ構成とする場合には、制御量の合わせ込みや制御信号を生成するためのキャリア波形の同期などを運転系の制御装置と行い、運転系と待機系のそれぞれの制御信号がほぼ一致するようにする。
【0005】
しかしながら、制御信号を生成する回路の個体差や制御信号の伝送遅延などにより、運転系と待機系との制御信号は、完全には一致せず、誤差が発生する。この誤差のため、運転系の制御信号と待機系の制御信号との切り替えを瞬時に行うと、不要なジッタパルスが発生して不要なスイッチングを行ってしまう可能性などが生じてしまう。従って、運転系の制御信号と待機系の制御信号とを切り替える場合には、一時的に主回路部の動作を停止させる必要がある。一方で、運転系と待機系との切り替えのために主回路部の動作を停止させると、主回路部の出力に外乱が発生してしまう。
【0006】
このため、電力変換装置では、運転系の制御信号と待機系の制御信号との切り替えを行う場合にも、主回路部の動作の停止を抑制できるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-24287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施形態は、運転系の制御信号と待機系の制御信号との切り替えを行う場合にも、主回路部の動作の停止を抑制できる電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態によれば、複数のスイッチング素子を有し、前記複数のスイッチング素子のオン・オフにより、交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換の少なくとも一方の交直変換を行う主回路部と、前記主回路部の動作を制御する第1制御装置と、前記主回路部の動作を制御する第2制御装置と、を備え、前記第1制御装置及び前記第2制御装置は、一方を前記主回路部の動作を実際に制御する運転系とし、他方を前記運転系の予備の待機系とするとともに、前記運転系と前記待機系とを切り替えられるようにし、前記第1制御装置は、前記主回路部の動作を制御するための第1制御信号と、前記運転系及び前記待機系を識別するための第1選択信号と、を前記主回路部に送信し、前記第2制御装置は、前記主回路部の動作を制御するための第2制御信号と、前記運転系及び前記待機系を識別するための第2選択信号と、を前記主回路部に送信し、前記主回路部は、前記第1選択信号及び前記第2選択信号を基に、前記第1制御信号及び前記第2制御信号から前記運転系の制御信号を選択し、選択した前記運転系の前記制御信号に基づいて前記複数のスイッチング素子のオン・オフを制御する制御回路を有し、前記第1選択信号及び前記第2選択信号は、前記運転系であることを示す運転状態と、前記待機系であることを示す待機状態と、を有し、前記第1制御装置及び前記第2制御装置は、前記運転系と前記待機系とを切り替える場合に、前記第1選択信号及び前記第2選択信号の双方を前記運転状態とするオーバーラップ期間を設け、前記制御回路は、前記オーバーラップ期間において、前記第1制御信号と前記第2制御信号とが同じ状態となった際に、前記運転系と前記待機系とを切り替える電力変換装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
運転系の制御信号と待機系の制御信号との切り替えを行う場合にも、主回路部の動作の停止を抑制できる電力変換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図2】変換器を模式的に表すブロック図である。
図3】第1制御装置及び第2制御装置を模式的に表すブロック図である。
図4】制御信号生成部の動作の一例を模式的に表すグラフ図である。
図5】電力変換装置の動作の一例を模式的に表すタイミングチャートである。
図6】電力変換装置の動作の参考例を模式的に表すタイミングチャートである。
図7】変換器の変形例を模式的に表すブロック図である。
【0012】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0013】
図1は、実施形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、電力変換装置10は、第1制御装置11と、第2制御装置12と、主回路部14と、を備える。電力変換装置10は、例えば、直流送電システムに用いられる。電力変換装置10は、直流送電システムにおいて、交流電力系統2(交流回路)及び一対の直流送電線3、4(直流回路)に接続される。
【0014】
直流送電システムは、例えば、変圧器6を有する。電力変換装置10の主回路部14は、変圧器6を介して交流電力系統2に接続される。変圧器6は、交流電力系統2の交流電力を主回路部14に対応した交流電力に変換する。変圧器6は、主回路部14に合わせて交流電力の実効値を変化させる。変圧器6は、必要に応じて設けられ、省略可能である。主回路部14には、交流電力系統2の交流電力を直接供給してもよい。
【0015】
電力変換装置10は、交流電力系統2から供給された交流電力を直流電力に変換し、変換後の直流電力を直流送電線3、4に供給する。また、電力変換装置10は、直流送電線3、4から供給された直流電力を交流電力に変換し、変換後の交流電力を交流電力系統2に供給する。このように、電力変換装置10は、交流から直流への交直変換、及び、直流から交流への交直変換を行う。
【0016】
交流電力系統2の交流電力は、例えば、三相交流電力である。電力変換装置10は、例えば、三相交流電力から直流電力への変換、及び、直流電力から三相交流電力への変換を行う。交流電力系統2の交流電力は、単相交流電力などでもよい。
【0017】
例えば、直流送電線3は、直流電力の高圧側の送電線であり、直流送電線4は、直流電力の低圧側の送電線である。電力変換装置10は、直流送電線3側が高圧、直流送電線4側が低圧となるように、変換後の直流電力を直流送電線3、4に出力する。
【0018】
電力変換装置10は、直流送電システムに限ることなく、交流から直流への変換及び直流から交流への変換が必要な他の任意のシステムなどに適用してもよい。電力変換装置10による交直変換は、交流から直流及び直流から交流の双方に限ることなく、交流から直流又は直流から交流の一方のみでもよい。電力変換装置10は、交流から直流及び直流から交流の少なくとも一方の交直変換を実行可能であればよい。また、この例では、交流電力系統2を交流回路、各直流送電線3、4を直流回路として示している。交流回路は、例えば、交流負荷や交流電力源などでもよい。直流回路は、例えば、直流負荷や直流電力源などでもよい。
【0019】
主回路部14は、交流電力系統2と各直流送電線3、4との間に設けられる。主回路部14は、交流電力から直流電力への変換、及び、直流電力から交流電力への変換を行う。主回路部14は、例えば、MMC(Modular Multilevel Converter)型の電力変換器である。MMC型の主回路部14は、直列に接続された複数の変換器を有する。各変換器は、ハーフブリッジ接続又はフルブリッジ接続された複数のスイッチング素子と、各スイッチング素子に並列に接続された電荷蓄積素子と、を有する。主回路部14は、各スイッチング素子のスイッチングにより、交直変換を行う。
【0020】
第1制御装置11及び第2制御装置12は、主回路部14と接続されている。第1制御装置11及び第2制御装置12は、各スイッチング素子のオン・オフを制御することにより、主回路部14による交流電力から直流電力への変換、及び、直流電力から交流電力への変換を制御する。
【0021】
このように、電力変換装置10は、第1制御装置11及び第2制御装置12のいずれかで主回路部14の動作を制御する。すなわち、電力変換装置10は、第1制御装置11及び第2制御装置12を冗長構成としている。
【0022】
電力変換装置10は、第1制御装置11及び第2制御装置12の一方を運転系の制御装置とし、他方を待機系の制御装置とする。運転系の制御装置とは、主回路部14の動作を実際に制御する制御装置である。待機系の制御装置とは、運転系の制御装置の故障やメンテナンスの際などに、運転系の制御装置に代わって主回路部14の動作を制御する予備の制御装置である。電力変換装置10は、故障やメンテナンスなどに応じて、第1制御装置11及び第2制御装置12の運転系と待機系とを切り替える。すなわち、第1制御装置11が運転系の場合には、第2制御装置12が待機系となり、第2制御装置12が運転系の場合には、第1制御装置11が待機系となる。これにより、第1制御装置11及び第2制御装置12の一方が故障などを起こした場合にも、他方を用いて主回路部14の運転を継続することができ、電力変換装置10の信頼性を向上させることができる。
【0023】
また、電力変換装置10では、例えば、運転系の制御装置が正常に動作している間も、待機系の制御装置を運転系の制御装置と同期して動作させる。第1制御装置11及び第2制御装置12は、それぞれ制御信号を主回路部14に入力する。主回路部14は、第1制御装置11及び第2制御装置12のうち、運転系の制御装置の制御信号に基づいて動作する。すなわち、第1制御装置11及び第2制御装置12において、待機系の制御装置は、いわゆるホットスタンバイで動作する。これにより、運転系の制御装置に故障などが発生した場合に、即座に待機系の制御装置に切り替えることができる。運転系の制御装置から待機系の制御装置への切り替えの際に、主回路部14の動作が停止してしまうことを抑制し、電力変換装置10において、より安定した動作を得ることができる。
【0024】
第1制御装置11及び第2制御装置12は、例えば、ネットワークなどを介して上位のコントローラと通信を行い、上位のコントローラから入力される指令値などに基づいて主回路部14の動作を制御する。また、第1制御装置11及び第2制御装置12は、例えば、互いに通信を行い、運転系の制御装置の動作に待機系の制御装置の動作を同期させるとともに、互いの動作状況の確認を行う。なお、第1制御装置11と第2制御装置12との間の通信は、有線でもよいし、無線でもよい。
【0025】
主回路部14は、第1及び第2の一対の直流端子20a、20bと、第1~第3の3つの交流端子21a~21cと、第1~第6の6つのアーム部22a~22fと、を有する。
【0026】
第1直流端子20aは、高圧側の直流送電線3に接続される。第2直流端子20bは、低圧側の直流送電線4に接続される。これにより、主回路部14によって変換された直流電力が直流送電線3、4に供給されるとともに、直流送電線3、4から供給された直流電力が主回路部14に入力される。
【0027】
第1アーム部22aは、第1直流端子20aに接続される。第2アーム部22bは、第1アーム部22aと第2直流端子20bとの間に接続される。第1アーム部22a及び第2アーム部22bは、各直流端子20a、20bの間に直列に接続される。
【0028】
第3アーム部22cは、第1直流端子20aに接続される。第4アーム部22dは、第3アーム部22cと第2直流端子20bとの間に接続される。第3アーム部22c及び第4アーム部22dは、第1アーム部22a及び第2アーム部22bに対して並列に接続される。
【0029】
第5アーム部22eは、第1直流端子20aに接続される。第6アーム部22fは、第5アーム部22eと第2直流端子20bとの間に接続される。すなわち、第5アーム部22e及び第6アーム部22fは、第1アーム部22a及び第2アーム部22bに対して並列に接続されるとともに、第3アーム部22c及び第4アーム部22dに対して並列に接続される。
【0030】
主回路部14では、第1アーム部22a及び第2アーム部22bによって第1レグLG1が構成され、第3アーム部22c及び第4アーム部22dによって第2レグLG2が構成され、第5アーム部22e及び第6アーム部22fによって第3レグLG3が構成される。すなわち、この例において、主回路部14は、3レグ、6アームの三相インバータである。第1アーム部22a、第3アーム部22c及び第5アーム部22eは、上側アームである。第2アーム部22b、第4アーム部22d及び第6アーム部22fは、下側アームである。
【0031】
第1アーム部22aは、直列に接続された複数の変換器UP1、UP2…UPMを有する。第2アーム部22bは、直列に接続された複数の変換器UN1、UN2…UNMを有する。第3アーム部22cは、直列に接続された複数の変換器VP1、VP2…VPMを有する。第4アーム部22dは、直列に接続された複数の変換器VN1、VN2…VNMを有する。第5アーム部22eは、直列に接続された複数の変換器WP1、WP2…WPMを有する。第6アーム部22fは、直列に接続された複数の変換器WN1、WN2…WNMを有する。
【0032】
但し、以下では、各変換器UP1、UP2…UPM、UN1、UN2…UNM、VP1、VP2…VPM、VN1、VN2…VNM、WP1、WP2…WPM、WN1、WN2…WNMをまとめて呼称する場合に、「変換器CEL」と称す。
【0033】
各アーム部22a~22fにおいて、M、M、M、M、M、Mは、直列接続された変換器CELの台数を表す。各アーム部22a~22fにおいて、直列接続される変換器CELの台数は、例えば、100台~120台程度である。但し、直列接続される変換器CELの台数は、これに限ることなく、任意の台数でよい。
【0034】
各アーム部22a~22fに設けられる変換器CELの台数は、実質的に同じである。例えば、多数の各変換器CELが接続される場合には、主回路部14の動作に影響のない範囲において、各アーム部22a~22fに設けられる変換器CELの台数が異なってもよい。例えば、1つのアーム部に100台の変換器CELを直列に接続する場合、別のアーム部に設ける変換器CELの台数は、1~2台異なってもよい。
【0035】
各アーム部22a~22fのそれぞれは、バッファリアクトル23a~23fと、複数の電流検出器24a~24fと、をさらに有する。また、電力変換装置10は、電圧検出器25をさらに有する。
【0036】
各バッファリアクトル23a~23fは、各アーム部22a~22fのそれぞれにおいて、各変換器CELに直列に接続される。第1アーム部22aのバッファリアクトル23aは、交流端子21aと第1アーム部22a及び第2アーム部22bとの接続点と変換器UP1との間に設けられる。第2アーム部22bのバッファリアクトル23bは、交流端子21aと第1アーム部22a及び第2アーム部22bとの接続点と変換器UN1との間に設けられる。第3アーム部22cのバッファリアクトル23cは、交流端子21bと第3アーム部22c及び第4アーム部22dとの接続点と変換器VP1との間に設けられる。第4アーム部22dのバッファリアクトル23dは、交流端子21bと第3アーム部22c及び第4アーム部22dとの接続点と変換器VN1との間に設けられる。第5アーム部22eのバッファリアクトル23eは、交流端子21cと第5アーム部22e及び第6アーム部22fとの接続点と変換器WP1との間に設けられる。第6アーム部22fのバッファリアクトル23fは、交流端子21cと第5アーム部22e及び第6アーム部22fとの接続点と変換器WN1との間に設けられる。
【0037】
電流検出器24aは、第1アーム部22aに設けられ、第1アーム部22aに流れる電流を検出する。すなわち、電流検出器24aは、第1アーム部22aのアーム電流を検出する。電流検出器24aは、図示を省略した配線などを介して第1制御装置11及び第2制御装置12に接続されている。電流検出器24aは、検出した第1アーム部22aの電流値Ia1を第1制御装置11及び第2制御装置12に入力する。これにより、第1制御装置11及び第2制御装置12には、第1アーム部22aの電流値Ia1が入力される。
【0038】
以下同様に、電流検出器24bは、第2アーム部22bに流れる電流を検出し、検出した電流値Ia2を第1制御装置11及び第2制御装置12に入力する。電流検出器24cは、第3アーム部22cに流れる電流を検出し、検出した電流値Ia3を第1制御装置11及び第2制御装置12に入力する。電流検出器24dは、第4アーム部22dに流れる電流を検出し、検出した電流値Ia4を第1制御装置11及び第2制御装置12に入力する。電流検出器24eは、第5アーム部22eに流れる電流を検出し、検出した電流値Ia5を第1制御装置11及び第2制御装置12に入力する。電流検出器24fは、第6アーム部22fに流れる電流を検出し、検出した電流値Ia6を第1制御装置11及び第2制御装置12に入力する。
【0039】
電圧検出器25は、交流電力系統2の各相の交流電圧(相電圧)を検出し、検出値を第1制御装置11及び第2制御装置12に入力する。電圧検出器25は、変圧器6の一次側に接続してもよいし、二次側に接続してもよい。ここで、交流電力系統2の3つの相を、それぞれU相、V相、W相とする。電圧検出器25は、U相の交流電圧の電圧値Vuを検出して第1制御装置11及び第2制御装置12に入力し、V相の交流電圧の電圧値Vvを検出して第1制御装置11及び第2制御装置12に入力し、W相の交流電圧の電圧値Vwを検出して第1制御装置11及び第2制御装置12に入力する。
【0040】
主回路部14では、第1アーム部22aと第2アーム部22bとの接続点、第3アーム部22cと第4アーム部22dとの接続点、及び、第5アーム部22eと第6アーム部22fとの接続点のそれぞれが、交流出力点となる。
【0041】
第1交流端子21aは、第1アーム部22aと第2アーム部22bとの接続点に接続される。第2交流端子21bは、第3アーム部22cと第4アーム部22dとの接続点に接続される。第3交流端子21cは、第5アーム部22eと第6アーム部22fとの接続点に接続される。各交流端子21a~21cは、例えば、変圧器6に接続される。
【0042】
各変換器CELは、信号線26を介して第1制御装置11と接続される。また、各変換器CELは、信号線27を介して第2制御装置12と接続される。第1制御装置11は、信号線26を介して変換器CELに制御信号を入力することにより、変換器CELの動作を制御する。第2制御装置12は、信号線27を介して変換器CELに制御信号を入力することにより、変換器CELの動作を制御する。
【0043】
図2は、変換器を模式的に表すブロック図である。
図2に表したように、変換器CELは、第1接続端子30aと、第2接続端子30bと、第1スイッチング素子31と、第2スイッチング素子32と、電荷蓄積素子35と、制御回路40と、駆動回路41、42と、を有する。
【0044】
各スイッチング素子31、32のそれぞれは、一対の主端子と、制御端子と、を含む。制御端子は、一対の主端子間に流れる電流を制御する。各スイッチング素子31、32には、例えば、IGBTなどの自己消弧素子が用いられる。一対の主端子は、例えば、エミッタ及びコレクタであり、制御端子は、例えば、ゲートである。また、各スイッチング素子31、32には、例えば、ノーマリオフ型の半導体素子が用いられる。
【0045】
第2スイッチング素子32の一対の主端子は、第1スイッチング素子31の一対の主端子に対して直列に接続される。電荷蓄積素子35は、第1スイッチング素子31及び第2スイッチング素子32に対して並列に接続される。電荷蓄積素子35は、例えば、コンデンサである。第1接続端子30aは、第1スイッチング素子31と第2スイッチング素子32との間に接続される。第2接続端子30bは、第1スイッチング素子31の第2スイッチング素子32に接続された主端子と反対側の主端子に接続される。
【0046】
また、第1スイッチング素子31には、一対の主端子に対して逆並列に整流素子31dが接続されている。整流素子31dの順方向は、第1スイッチング素子31の一対の主端子間に流れる電流の向きに対して逆向きである。同様に、第2スイッチング素子32には、一対の主端子に対して逆並列に整流素子32dが接続されている。整流素子31d、32dは、いわゆる還流ダイオードである。
【0047】
変換器CELに対する電力の供給は、各接続端子30a、30bを介して行われる。変換器CELにおいて、各スイッチング素子31、32は、ハーフブリッジ接続されている。換言すれば、変換器CELは、双方向チョッパである。第1スイッチング素子31は、いわゆるローサイドスイッチであり、第2スイッチング素子32は、いわゆるハイサイドスイッチである。
【0048】
第1スイッチング素子31の制御端子は、駆動回路41に接続されている。第2スイッチング素子32の制御端子は、駆動回路42に接続されている。駆動回路41、42は、制御回路40に接続されている。制御回路40は、制御信号を駆動回路41、42に入力する。駆動回路41は、制御回路40から入力される制御信号に基づいて、第1スイッチング素子31のオン・オフを切り替える。同様に、駆動回路42は、制御回路40から入力される制御信号に基づいて、第2スイッチング素子32のオン・オフを切り替える。
【0049】
制御回路40は、信号線26を介して第1制御装置11と接続される。第1制御装置11は、第1制御信号と第1選択信号とを変換器CELの制御回路40に入力する。第1制御信号は、第1スイッチング素子31及び第2スイッチング素子32のオン・オフの切り替えを制御するための信号である。第1選択信号は、第1制御装置11が運転系か待機系かを識別するための信号である。
【0050】
また、制御回路40は、信号線27を介して第2制御装置12と接続される。第2制御装置12は、第2制御信号と第2選択信号とを変換器CELの制御回路40に入力する。第2制御信号は、第1制御信号と同様の信号であり、第2選択信号は、第1選択信号と同様の信号である。
【0051】
制御回路40は、選択回路40aを有する。制御回路40は、第1制御装置11から入力された第1制御信号及び第1選択信号を選択回路40aに入力するとともに、第2制御装置12から入力された第2制御信号及び第2選択信号を選択回路40aに入力する。
【0052】
選択回路40aは、入力された第1選択信号及び第2選択信号を基に、第1制御信号及び第2制御信号のどちらが運転系の制御信号かを選択する。そして、選択回路40aは、選択した運転系の制御信号を駆動回路41、42に入力することにより、運転系の制御信号に基づいて第1スイッチング素子31及び第2スイッチング素子32のオン・オフの切り替えを制御する。
【0053】
これにより、運転系の制御信号及び待機系の制御信号を変換器CEL側で選択し、運転系の制御装置の制御に基づいて主回路部14の動作を制御することができる。また、運転系の制御信号と待機系の制御信号とを変換器CEL側で容易に切り替えることができる。
【0054】
図3は、第1制御装置及び第2制御装置を模式的に表すブロック図である。
図3に表したように、第1制御装置11は、制御信号生成部50と、選択信号生成部52と、同期制御部54と、を有する。第2制御装置12は、制御信号生成部60と、選択信号生成部62と、同期制御部64と、を有する。
【0055】
なお、第2制御装置12の構成は、第1制御装置11の構成と実質的に同じである。制御信号生成部60の構成は、制御信号生成部50の構成と実質的に同じであり、選択信号生成部62の構成は、選択信号生成部52の構成と実質的に同じであり、同期制御部64の構成は、同期制御部54の構成と実質的に同じである。従って、以下では、第1制御装置11の構成を説明し、第2制御装置12の構成については、詳細な説明を省略する。
【0056】
制御信号生成部50には、各電流検出器24a~24fで検出された各電流値Ia1~Ia6と、電圧検出器25で検出された各電圧値Vu、Vv、Vwと、が入力される。また、制御信号生成部50には、電流指令値や電圧指令値などの各種の指令値が、上位コントローラなどから入力される。制御信号生成部50は、入力された電流値、電圧値、指令値などを基に、各変換器CELの第1制御信号を生成する。
【0057】
図4は、制御信号生成部の動作の一例を模式的に表すグラフ図である。
図4に表したように、制御信号生成部50は、電圧基準VRとキャリア信号CWとを基に、各スイッチング素子31、32のスイッチングを制御する第1制御信号を生成する。制御信号生成部50は、変換器CEL毎に電圧基準VRを設定する。1つのアーム部にM台の変換器CELが直列に接続されている場合、制御信号生成部50は、変換器CEL毎のM個の電圧基準VRを設定する。キャリア信号CWは、各変換器CELのそれぞれに共通に用いてもよいし、変換器CEL毎のM個のキャリア信号CWを設定してもよい。
【0058】
電圧基準VRは、例えば、正弦波状である。制御信号生成部50は、変換器CEL毎に電圧基準VRの振幅及び位相を調整する。電圧基準VRの周波数は、交流電力系統2の交流電圧の周波数に応じて設定される。すなわち、実際の使用状況に応じた周波数に設定される。電圧基準VRの周波数は、例えば、50Hzまたは60Hzである。キャリア信号CWは、例えば、三角波状である。キャリア信号CWは、鋸波などでもよい。キャリア信号CWの周波数は、電圧基準VRの周波数よりも高い。
【0059】
制御信号生成部50は、各変換器CELの電圧基準VRの位相をずらす。制御信号生成部50は、例えば、1つのアーム部において、360/M(度)ずつ位相をずらした電圧基準VRを変換器CEL毎に設定する。
【0060】
制御信号生成部50は、電圧基準VRとキャリア信号CWとを比較する。制御信号生成部50は、例えば、電圧基準VRがキャリア信号CW未満の時にLoとなり、電圧基準VRがキャリア信号CW以上の時にHiとなるパルス信号を第1制御信号として生成する。但し、第1制御信号のHi、Loの関係は、上記と反対でもよい。
【0061】
変換器CELの制御回路40は、例えば、第1制御信号がLoの時に、第1スイッチング素子31をオンにし、第2スイッチング素子32をオフにする。この場合、各接続端子30a、30b間が、第1スイッチング素子31で短絡され、各接続端子30a、30b間の電圧は、実質的に0Vになる。そして、制御回路40は、例えば、第1制御信号がHiの時に、第1スイッチング素子31をオフにし、第2スイッチング素子32をオンにする。この場合、各接続端子30a、30b間には、電荷蓄積素子35の電圧Vcが現れる。すなわち、第1制御信号がHiの時に、変換器CELが所定の電圧を出力する出力状態となり、第1制御信号がLoの時に、変換器CELが所定の電圧の出力を停止した停止状態となる。第1制御信号がHiの時は、換言すれば、変換器CELを出力状態とするための第1状態であり、第1制御信号がLoの時は、換言すれば、変換器CELを停止状態とするための第2状態である。
【0062】
このように、変換器CELは、各スイッチング素子31、32のスイッチングによって、+Vc、0の2レベルの電圧を出力する。変換器CELは、例えば、パワーセルと呼ばれる場合もある。
【0063】
電力変換装置10では、直列に接続された各変換器CELの出力電圧の合計が、各アーム部22a~22fの電圧となる。これにより、電力変換装置10では、各変換器CELの直列接続の数に応じたマルチレベルの電力変換が可能となる。
【0064】
制御信号生成部50は、例えば、主回路部14の直流側の電流値、電圧値、及び交流側の電流値、電圧値のそれぞれが、指令値に近付くように、電圧基準VRの振幅及び位相を調整する。これにより、指令値に基づいて、主回路部14の動作を制御することができる。
【0065】
選択信号生成部52は、第1制御装置11が運転系であることを示す運転状態と、第1制御装置11が待機系であることを示す待機状態と、を有する第1選択信号を生成する。選択信号生成部52は、例えば、待機状態をLo、運転状態をHiとする二値の第1選択信号を生成する。
【0066】
同期制御部54は、第2制御装置12の同期制御部64と互いに通信を行うことにより、第1制御装置11の動作と第2制御装置12の動作とを互いに同期させる。同期制御部54は、例えば、運転系である場合に、各変換器CELの電圧基準VRの情報及びキャリア信号CWの情報を待機系の第2制御装置12に送信することにより、制御量の合わせ込みを行い、電圧基準VR及びキャリア信号CWを同期させる。これにより、運転系の制御装置及び待機系の制御装置のそれぞれで実質的に同じ制御信号を生成することができる。
【0067】
また、同期制御部54は、第2制御装置12の同期制御部64と互いに通信を行うことにより、運転系と待機系との切り替えのタイミングを互いに確認する。同期制御部54は、例えば、運転系で動作している状態において、制御信号生成部50や選択信号生成部52が故障した場合や、メンテナンスの実行を指示された場合などに、第2制御装置12の同期制御部64と通信を行い、運転系及び待機系の切り替えのタイミングを確認する。
【0068】
選択信号生成部52は、同期制御部54からの指示に基づいて、第1選択信号の運転状態と待機状態とを切り替える。なお、運転系及び待機系の切り替え方法は、第1制御装置11と第2制御装置12との通信によって切り替える方法に限定されるものではない。例えば、上位コントローラや作業者(操作部)などから第1制御装置11及び第2制御装置12のそれぞれに指示を入力することによって、運転系と待機系とを切り替えてもよい。
【0069】
図5は、電力変換装置の動作の一例を模式的に表すタイミングチャートである。
図5では、運転系の制御装置を第1制御装置11から第2制御装置12に切り替える場合の電力変換装置10の動作の一例を模式的に表す。
【0070】
図5に表したように、第1制御装置11及び第2制御装置12は、第1選択信号及び第2選択信号の運転状態と待機状態とを切り替える場合に、第1選択信号及び第2選択信号の双方を運転状態とするオーバーラップ期間を設ける。
【0071】
オーバーラップ期間は、前述のように、第1制御装置11と第2制御装置12とで互いに通信を行うことなどにより、第1選択信号及び第2選択信号の切り替えのタイミングを調整することによって設定される。また、オーバーラップ期間は、各変換器CELのそれぞれにおいて運転系と待機系とを切り替えられるように設定する必要がある。従って、例えば、前述のように、各変換器CELの電圧基準VRの位相を一周期分(360度)ずらした場合には、オーバーラップ期間を一周期以上に設定する必要がある。
【0072】
変換器CELの制御回路40の選択回路40aは、第1選択信号及び第2選択信号のオーバーラップ期間において、第1制御信号と第2制御信号とが同じ状態となった際に、運転系と待機系とを切り替える。選択回路40aは、例えば、オーバーラップ期間において、第1制御信号と第2制御信号とのそれぞれが変換器CELを停止状態とするための第2状態(Loの時)となった際に、運転系と待機系とを切り替える。なお、これとは反対に、第1状態となった際に、運転系と待機系とを切り替えてもよい。
【0073】
図6は、電力変換装置の動作の参考例を模式的に表すタイミングチャートである。
第1制御信号及び第2制御信号は、電圧基準VRやキャリア信号CWの同期などを行ったとしても、電圧基準VRの情報などを待機側に送信する際の伝送遅延や、制御信号生成部50、60の個体差などにより、図5及び図6に表したように、完全には一致せず、僅かな誤差が発生してしまう場合がある。この誤差のため、運転系と待機系との切り替えを瞬時に行うと、不要なジッタパルスが発生して不要なスイッチングを行ってしまう可能性が生じる。
【0074】
例えば、図6において、第1選択信号を運転状態から待機状態に変化させたタイミングと同じタイミングで、第2選択信号を待機状態から運転状態に変化させてしまうと、第2制御信号が第1状態であるため、変換器CELが一瞬出力状態となり、すぐに停止状態となるように、不要なスイッチングを行ってしまう。
【0075】
このため、図6に表した参考例では、第1選択信号を運転状態から待機状態に変化させた後、所定期間の経過後に第2選択信号を待機状態から運転状態に変化させている。例えば、第2制御信号が第2状態になっているタイミングで、第2選択信号を待機状態から運転状態に変化させる。これにより、不要なスイッチングの発生を抑制することができる。
【0076】
第1選択信号及び第2選択信号の双方を待機状態とした場合、変換器CELの制御回路40は、各スイッチング素子31、32の双方をオフ状態とする。すなわち、各スイッチング素子31、32をゲートブロック(GB)した状態となる。このため、主回路部14の出力が一瞬停止する外乱が発生してしまう。
【0077】
特に、複数の変換器CELを直列に接続した主回路部14では、各変換器CELを適切に停止状態とするために、ゲートブロックの期間を一周期以上(各変換器CELの電圧基準VRの位相のずれの周期以上)に設定する必要があり、ゲートブロックの期間が比較的長くなってしまう。例えば、主回路部14の出力の外乱が大きくなってしまう。
【0078】
これに対し、本実施形態に係る電力変換装置10の動作では、図5に表したように、第1選択信号及び第2選択信号の双方を運転状態とするオーバーラップ期間を設け、オーバーラップ期間において、第1制御信号と第2制御信号とが同じ状態となった際に、運転系と待機系とを切り替える。
【0079】
これにより、運転系と待機系とを切り替える場合にも、ゲートブロックの期間を設けることなく、不要なスイッチングの発生を抑制することができる。例えば、主回路部14の出力の外乱を、第1制御信号と第2制御信号との誤差分の僅かな時間の変動に抑えることができる。従って、運転系の制御信号と待機系の制御信号との切り替えを行う場合にも、主回路部14の動作の停止を抑制できる電力変換装置10を提供することができる。
【0080】
図7は、変換器の変形例を模式的に表すブロック図である。
図7に表したように、この例において、変換器CELは、第3スイッチング素子33と、第4スイッチング素子34と、駆動回路43、44と、をさらに有する。第3スイッチング素子33、第4スイッチング素子34には、第1スイッチング素子31、第2スイッチング素子32と実質的に同じ素子が用いられる。
【0081】
第4スイッチング素子34の一対の主端子は、第3スイッチング素子33の一対の主端子に対して直列に接続される。また、第3スイッチング素子33及び第4スイッチング素子34は、第1スイッチング素子31及び第2スイッチング素子32に対して並列に接続される。電荷蓄積素子35は、第1スイッチング素子31及び第2スイッチング素子32に対して並列に接続されるとともに、第3スイッチング素子33及び第4スイッチング素子34に対して並列に接続される。
【0082】
第3スイッチング素子33には、一対の主端子に対して逆並列に整流素子33dが接続されている。第4スイッチング素子34には、一対の主端子に対して逆並列に整流素子34dが接続されている。
【0083】
変換器CELの第1接続端子30aは、第1スイッチング素子31と第2スイッチング素子32との間に接続されている。第2接続端子30bは、第3スイッチング素子33と第4スイッチング素子34との間に接続されている。この例において、第2接続端子30bは、第3スイッチング素子33を介して第1スイッチング素子31の第2スイッチング素子32に接続された主端子と反対側の主端子に接続される。すなわち、この例において、各スイッチング素子31~34は、フルブリッジ接続されている。この例において、変換器CELは、フルブリッジ回路である。
【0084】
駆動回路43は、制御回路40から入力される制御信号に基づいて、第3スイッチング素子33のオン・オフを切り替える。駆動回路44は、制御回路40から入力される制御信号に基づいて、第4スイッチング素子34のオン・オフを切り替える。
【0085】
このように、MMC型の主回路部14に用いられる変換器CELは、ハーフブリッジ回路でもよいし、フルブリッジ回路でもよい。
【0086】
フルブリッジ回路の変換器CELでは、第2スイッチング素子32及び第3スイッチング素子33をオン状態にし、第1スイッチング素子31及び第4スイッチング素子34をオフ状態にした場合に、各接続端子30a、30b間に+Vcが出力される。
【0087】
第1スイッチング素子31及び第4スイッチング素子34をオン状態にし、第2スイッチング素子32及び第3スイッチング素子33をオフ状態にした場合に、各接続端子30a、30b間に-Vcが出力される。
【0088】
そして、第1スイッチング素子31及び第3スイッチング素子33をオン状態にし、第2スイッチング素子32及び第4スイッチング素子34をオフ状態にした場合、または、第2スイッチング素子32及び第4スイッチング素子34をオン状態にし、第1スイッチング素子31及び第3スイッチング素子33をオフ状態にした場合に、各接続端子30a、30b間に0Vが出力される。
【0089】
このように、フルブリッジ回路の変換器CELでは、オン・オフする各スイッチング素子31~34の組み合わせによって、+Vc、0、-Vcの3レベルの電力を出力することができる。
【0090】
この変換器CELでは、例えば、+Vcを出力する状態が第1出力状態であり、-Vcを出力する状態が第2出力状態であり、0Vを出力する状態が停止状態である。この変換器CELの各状態の切り替えは、例えば、第1制御信号及び第2制御信号を3レベルに対応する三値の信号とすることで実現可能である。そして、この変換器CELにおいても、第1選択信号及び第2選択信号のオーバーラップ期間において、第1制御信号と第2制御信号とが同じ状態となった際に、運転系と待機系とを切り替えることで、不要なスイッチングの発生を抑制しつつ、主回路部14の動作の停止を抑制することができる。
【0091】
なお、上記実施形態では、第1制御信号及び第2制御信号を、変換器CELの各状態に対応させた信号としている。第1制御信号及び第2制御信号は、これに限ることなく、各スイッチング素子31~34のオン・オフに対応した信号としてもよい。第1制御信号及び第2制御信号は、例えば、第1スイッチング素子31のオン・オフを表す信号、第2スイッチング素子32のオン・オフを表す信号、第3スイッチング素子33のオン・オフを表す信号、及び第4スイッチング素子34のオン・オフを表す信号の4つの信号で構成してもよい。
【0092】
上記各実施形態では、主回路部14にMMC型の電力変換器を用いている。主回路部14は、MMC型に限ることなく、例えば、MV(Medium Voltage)型の電力変換器など、複数の変換器CELを直列に接続する他の方式の電力変換器でもよい。また、主回路部14は、複数の変換器CELを直列に接続した多段方式の電力変換器に限ることなく、例えば、2レベルインバータや3レベルインバータなどでもよい。
【0093】
電力変換装置10は、直流送電システムに限ることなく、交流から直流への変換及び直流から交流への変換が必要な他の任意のシステムなどに適用してもよい。電力変換装置10による交直変換は、交流から直流及び直流から交流の双方に限ることなく、交流から直流又は直流から交流の一方のみでもよい。
【0094】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0095】
2…交流電力系統、 3、4…直流送電線、 6…変圧器、 10…電力変換装置、 11…第1制御装置、 12…第2制御装置、 14…主回路部、 20a、20b…直流端子、 21a~21c…第1~第3交流端子、 22a~22f…第1~第6アーム部、 23a~23f…バッファリアクトル、 24a~24f…電流検出器、 25…電圧検出器、 26、27…信号線、 30a、30b…第1、第2接続端子、 31~34…第1~第4スイッチング素子、 35…電荷蓄積素子、 CEL…変換器 40…制御回路、 41~44…駆動回路、 50…制御信号生成部、 52…選択信号生成部、 54…同期制御部、 60…制御信号生成部、 62…選択信号生成部、 64…同期制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7