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特許7117827モータ制御システム、モータ制御システムの制御方法、及びロボットシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】モータ制御システム、モータ制御システムの制御方法、及びロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/40 20160101AFI20220805BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20220805BHJP
   G05D 3/12 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
H02P29/40
B25J13/00 Z
G05D3/12 305Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017099192
(22)【出願日】2017-05-18
(65)【公開番号】P2018196266
(43)【公開日】2018-12-06
【審査請求日】2020-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪井 信高
【審査官】柏崎 翔
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-90692(JP,A)
【文献】特開2015-6705(JP,A)
【文献】国際公開第2007/099635(WO,A1)
【文献】特開昭63-153610(JP,A)
【文献】特開2011-204010(JP,A)
【文献】特開2003-223225(JP,A)
【文献】特開2014-136260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/40
B25J 13/00
G05D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位装置から入力された位置指令に基づきモータに供給される電流を制御して前記モータを制御し、且つ入力軸が前記モータの出力軸に接続され且つ出力軸が負荷に接続された減速機の動作を制御するモータ制御システムであって、
前記モータの出力軸の回転速度を検出するための事象を検知する検知部と、
前記位置指令に基づき速度指令を生成し、且つ前記速度指令と前記検知部が検知した事象に基づき検出された前記モータの出力軸の回転速度との偏差である速度偏差を算出する速度偏差生成部と、
前記減速機の角度伝達誤差を補償するための補償量であって、前記位置指令に基づき前記速度指令、前記速度偏差、又は前記検知部が検知した事象に基づき検出された前記モータの出力軸の回転速度である対象に加えるべき補償量を推定し、推定した前記補償量を前記対象に加える角度伝達誤差補償部と、
前記速度偏差に基づいて電流指令を生成する電流指令生成部と、
前記電流指令に基づいて前記モータに供給される電流を制御する電流制御部と、を含む、モータ制御システム。
【請求項2】
前記速度指令は、前記位置指令を時間微分した速度フィードフォワード指令である、請求項1に記載のモータ制御システム。
【請求項3】
前記角度伝達誤差補償部は、推定した前記補償量に基づいて前記速度フィードフォワード指令を補正することによって前記速度指令を補正する、請求項2に記載のモータ制御システム。
【請求項4】
前記検知部は、前記モータの出力軸の回転角及び回転速度を検出するための事象を検知し、
前記速度指令は、前記位置指令を時間微分した速度フィードフォワード指令と、前記位置指令と前記検知部が検知した事象に基づき検出された前記モータの出力軸の回転角との偏差に位置比例ゲインを乗じたゲイン速度指令とを加算した値である、請求項1に記載のモータ制御システム。
【請求項5】
前記角度伝達誤差補償部は、推定した前記補償量に基づいて前記速度フィードフォワード指令を補正することによって前記速度指令を補正する、請求項4に記載のモータ制御システム。
【請求項6】
前記角度伝達誤差補償部は、更に推定した前記補償量に基づいて前記位置指令を補正し、
前記速度指令は、上位装置から入力された前記位置指令を時間微分した速度フィードフォワード指令と、補正した前記位置指令と前記検知部が検知した事象に基づき検出された前記モータの出力軸の回転角との偏差に位置比例ゲインを乗じたゲイン速度指令とを加算した値である、請求項5に記載のモータ制御システム。
【請求項7】
前記角度伝達誤差補償部は、前記角度伝達誤差の周期的な変動をモデル化した周期関数に基づいて前記補償量を推定する、請求項1乃至6の何れかに記載のモータ制御システム。
【請求項8】
前記減速機は、波動歯車装置である、請求項1乃至7の何れかに記載のモータ制御システム。
【請求項9】
上位装置から入力された位置指令に基づきモータに供給される電流を制御して前記モータを制御し、且つ入力軸が前記モータの出力軸に接続され且つ出力軸が負荷に接続された減速機の動作を制御するモータ制御システムの制御方法であって、
前記モータ制御システムは、
前記モータの出力軸の回転速度を検出するための事象を検知する検知部と、
前記位置指令に基づき速度指令を生成し、且つ前記速度指令と前記検知部が検知した事象に基づき検出された前記モータの出力軸の回転速度との偏差である速度偏差を算出する速度偏差生成部と、
前記減速機の角度伝達誤差を補償するための補償量であって、前記位置指令に基づき前記速度指令、前記速度偏差、又は前記検知部が検知した事象に基づき検出された前記モータの出力軸の回転速度である対象に加えるべき補償量を推定し、推定した前記補償量を前記対象に加える角度伝達誤差補償部と、
前記速度偏差に基づいて電流指令を生成する電流指令生成部と、
前記電流指令に基づいて前記モータに供給される電流を制御する電流制御部と、を含む、モータ制御システムの制御方法。
【請求項10】
ロボットアームと、
前記ロボットアームの関節の駆動源であるモータと、
入力軸が前記モータの出力軸に接続され且つ出力軸が前記ロボットアームの前記関節に接続された減速機と、
位置指令を生成する指令部と、前記指令部が生成した前記位置指令に基づき前記モータに供給される電流を制御して前記モータの動作を制御するモータ制御システムと、を備え、
前記モータ制御システムは、
前記モータの出力軸の回転速度を検出するための事象を検知する検知部と、
前記位置指令に基づき速度指令を生成し、且つ前記速度指令と前記検知部が検知した事象に基づき検出された前記モータの出力軸の回転速度との偏差である速度偏差を算出する速度偏差生成部と、
前記減速機の角度伝達誤差を補償するための補償量であって、前記位置指令に基づき前記速度指令、前記速度偏差、又は前記検知部が検知した事象に基づき検出された前記モータの出力軸の回転速度である対象に加えるべき補償量を推定し、推定した前記補償量を前記対象に加える角度伝達誤差補償部と、
前記速度偏差に基づいて電流指令を生成する電流指令生成部と、
前記電流指令に基づいて前記モータに供給される電流を制御する電流制御部と、を含む、ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御システム、モータ制御システムの制御方法、及びロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から減速機の角度伝達誤差に起因した位置決め誤差を補正可能な位置決めシステムが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この位置決めシステムは、モータ及び減速機からなるアクチュエータの出力軸の位置決め誤差を補正するための誤差補正データに基づき位置指令に対して補正を施す誤差補正部を備え、補正後の位置指令をモータを駆動するドライバに供給する。これによって、アクチュエータの位置決め誤差を補正することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-223225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の位置決めシステムは、アクチュエータの出力軸の回転速度の変動の抑制が適切に行えず、アクチュエータの出力軸に接続された負荷の挙動が不安定になる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のある態様に係るモータ制御システムは、上位装置から入力された位置指令に基づきモータに供給される電流を制御して前記モータを制御し、且つ入力軸が前記モータの出力軸に接続され且つ出力軸が負荷に接続された減速機の動作を制御するモータ制御システムであって、前記モータの出力軸の回転速度を検出するための事象を検知する検知部と、前記位置指令に基づき速度指令を生成し、且つ前記速度指令と前記検知部が検知した事象に基づき検出された前記モータの出力軸の回転速度との偏差である速度偏差を算出する速度偏差生成部と、前記モータの出力軸の回転角と前記減速機の出力軸の回転角との間の角度伝達誤差を推定し、且つ推定した前記角度伝達誤差に基づいて前記速度指令、前記速度偏差、又は前記検知部が検知した事象に基づき検出された前記モータの出力軸の回転速度を補正する角度伝達誤差補償部と、前記速度偏差に基づいて電流指令を生成する電流指令生成部と、前記電流指令に基づいて前記モータに供給される電流を制御する電流制御部と、を含む。
【0007】
この構成によれば、角度伝達誤差の補償を簡易な構成で行うことができ、角度伝達誤差に起因する負荷の不安定な挙動を抑制することができる。
【0008】
前記速度指令は、前記位置指令を時間微分した速度フィードフォワード指令であってもよい。
【0009】
この構成によれば、モータの出力軸の回転速度を制御するための速度フィードフォワード指令に沿ってモータの速度を適切に制御することができる。
【0010】
前記角度伝達誤差補償部は、推定した前記角度伝達誤差に基づいて前記速度フィードフォワード指令を補正することによって前記速度指令を補正してもよい。
【0011】
この構成によれば、モータの出力軸の回転速度を制御するための速度フィードフォワード指令を補正することによって速度指令を適切に補正することができ、角度伝達誤差の補償を適切に行うことができる。
【0012】
前記検知部は、前記モータの出力軸の回転角及び回転速度を検出するための事象を検知し、前記速度指令は、前記位置指令を時間微分した速度フィードフォワード指令と、前記位置指令と前記検知部が検知した事象に基づき検出された前記モータの出力軸の回転角との偏差に位置比例ゲインを乗じたゲイン速度指令とを加算した値であってもよい。
【0013】
この構成によれば、モータの出力軸の回転速度を制御するための速度フィードフォワード指令に沿ってモータの速度を適切に制御することができ、且つゲイン速度指令に沿ってモータの回転角を適切に制御することができる。
【0014】
前記角度伝達誤差補償部は、推定した前記角度伝達誤差に基づいて前記速度フィードフォワード指令を補正することによって前記速度指令を補正してもよい。
【0015】
この構成によれば、モータの出力軸の回転速度を制御するための速度フィードフォワード指令を補正することによって速度指令を適切に補正することができ、角度伝達誤差の補償を適切に行うことができる。
【0016】
前記角度伝達誤差補償部は、更に推定した前記角度伝達誤差に基づいて前記位置指令を補正し、前記速度指令は、上位装置から入力された前記位置指令を時間微分した速度フィードフォワード指令と、補正した前記位置指令と前記検知部が検知した事象に基づき検出された前記モータの出力軸の回転角との偏差に位置比例ゲインを乗じたゲイン速度指令とを加算した値であってもよい。
【0017】
この構成によれば、角度伝達誤差の補償をより適切に行うことができる。
【0018】
前記角度伝達誤差補償部は、前記角度伝達誤差の周期的な変動をモデル化した周期関数に基づいて前記角度伝達誤差を推定してもよい。
【0019】
この構成によれば、周期的な誤差として表れる角度伝達誤差を適切に補償することができる。
【0020】
前記減速機は、波動歯車装置であってもよい。
【0021】
この構成によれば、波動歯車装置の角度伝達誤差に起因する負荷の不安定な挙動を抑制することができる。
【0022】
上記課題を解決するため、本発明のある態様に係るモータ制御システムの制御方法は、上位装置から入力された位置指令に基づきモータに供給される電流を制御して前記モータを制御し、且つ入力軸が前記モータの出力軸に接続され且つ出力軸が負荷に接続された減速機の動作を制御するモータ制御システムの制御方法であって、前記モータ制御システムは、前記モータの出力軸の回転速度を検出するための事象を検知する検知部と、前記位置指令に基づき速度指令を生成し、且つ前記速度指令と前記検知部が検知した事象に基づき検出された前記モータの出力軸の回転速度との偏差である速度偏差を算出する速度偏差生成部と、前記モータの出力軸の回転角と前記減速機の出力軸の回転角との間の角度伝達誤差を推定し、且つ推定した前記角度伝達誤差に基づいて前記速度指令、前記速度偏差、又は前記検知部が検知した事象に基づき検出された前記モータの出力軸の回転速度を補正する角度伝達誤差補償部と、前記速度偏差に基づいて電流指令を生成する電流指令生成部と、前記電流指令に基づいて前記モータに供給される電流を制御する電流制御部と、を含む。
【0023】
この構成によれば、角度伝達誤差の補償を簡易な構成で行うことができ、角度伝達誤差に起因する負荷の不安定な挙動を抑制することができる。
【0024】
上記課題を解決するため、本発明のある態様に係るロボットシステムは、ロボットアームと、前記ロボットアームの関節の駆動源であるモータと、入力軸が前記モータの出力軸に接続され且つ出力軸が前記ロボットアームの前記関節に接続された減速機と、位置指令を生成する指令部と、前記指令部が生成した前記位置指令に基づき前記モータに供給される電流を制御して前記モータの動作を制御するモータ制御システムと、を備え、前記モータ制御システムは、前記モータの出力軸の回転速度を検出するための事象を検知する検知部と、前記位置指令に基づき速度指令を生成し、且つ前記速度指令と前記検知部が検知した事象に基づき検出された前記モータの出力軸の回転速度との偏差である速度偏差を算出する速度偏差生成部と、前記モータの出力軸の回転角と前記減速機の出力軸の回転角との間の角度伝達誤差を推定し、且つ推定した前記角度伝達誤差に基づいて前記速度指令、前記速度偏差、又は前記検知部が検知した事象に基づき検出された前記モータの出力軸の回転速度を補正する角度伝達誤差補償部と、前記速度偏差に基づいて電流指令を生成する電流指令生成部と、前記電流指令に基づいて前記モータに供給される電流を制御する電流制御部と、を含む。
【0025】
この構成によれば、角度伝達誤差の補償を簡易な構成で行うことができ、角度伝達誤差に起因するロボットアームの振動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、角度伝達誤差に起因する負荷の不安定な挙動を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施の形態1に係るロボットシステムの構成例を概略的に示す図である。
図2図1のロボットシステムの制御系統の構成例を概略的に示すブロック図である。
図3図1のロボットシステムのサーボ制御部の制御系統の構成例を概略的に示すブロック図である。
図4】角度伝達誤差の説明図である。
図5】本発明の実施の形態2に係るロボットシステムの動作例における速度フィードフォワード指令値と速度フィードフォワード指令値の修正値との関係を示すグラフである。
図6】本発明の実施の形態3に係るロボットシステムのサーボ制御部の制御系統の構成例を概略的に示すブロック図である。
図7】本発明の実施の形態4に係るロボットシステムのサーボ制御部の制御系統の構成例を概略的に示すブロック図である。
図8】本発明の実施の形態5に係るロボットシステムのサーボ制御部の制御系統の構成例を概略的に示すブロック図である。
図9】本発明の実施の形態6に係るロボットシステムのサーボ制御部の制御系統の構成例を概略的に示すブロック図である。
図10】本発明の実施の形態7に係るロボットシステムのサーボ制御部の制御系統の構成例を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、全ての図を通じて、同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るロボットシステム100の構成例を概略的に示す図である。図2は、ロボットシステム100の制御系統の構成例を概略的に示すブロック図である。
【0030】
図1に示すように、ロボットシステム100は、例えば、産業用途に利用される。ロボットシステム100は、ロボットアームを備えるロボット1と、ロボット1の動作を制御するロボット制御装置2とを備える。
【0031】
ロボット1は、多関節型ロボットの産業用ロボット(多関節ロボット)であり、複数の関節10を有し、先端部にハンド14を有するロボットアームを有する。図2に示すように、各関節10には、関節10を駆動する駆動部が設けられ、駆動部はサーボモータ(モータ)11と、エンコーダ12と、減速機13とを含む。なお、ロボット1は多関節型ロボットに限定されない。本実施の形態において、ロボット1のロボットアームは、6つの関節が1列に並ぶように構成されている。
【0032】
エンコーダ(検知部)12は、サーボモータ11の出力軸11aの実際の回転角及び実際の回転速度を検出するための事象を検知する。本実施の形態において、エンコーダ12は、検知した事象に基づいてサーボモータ11の出力軸11aの実際の回転角を含む情報を出力する。そして、詳細は後述するエンコーダ値微分部37が、サーボモータ11の出力軸11aの実際の回転角を時間微分し、サーボモータ11の出力軸11aの実際の回転速度を算出する。
【0033】
減速機13は、サーボモータ11の出力軸11aに接続された入力軸13aと、ロボット1の関節10(負荷)に接続された出力軸13bとを含む。入力軸13aは、サーボモータ11の出力軸11aと一体であってもよい。また、減速機13は、1つの機器で構成されてもよく、複数の機器で構成されてもよい。減速機13は、入力軸13aに入力されたサーボモータ11の出力軸11aの回転を所定の減速比Rで減速し、出力軸13bから出力する。減速機13は、例えば波動歯車装置(ハーモニックドライブ(登録商標))である。しかし、これに限られるものではない。
【0034】
波動歯車装置は、サーキュラスプラインと、フレクスプラインと、ウェーブジェネレータとを備える。サーキュラスプラインは、剛性の内歯歯車であり、例えば筐体と一体的に設けられる。フレクスプラインは、可撓性を有する外歯歯車であり、サーキュラスプラインと歯合する。フレクスプラインは、サーキュラスプラインよりも歯数が少なく、出力軸13bと接続される。ウェーブジェネレータは、フレクスプラインの内側に接触する楕円状のカムであり、入力軸13aと接続されている。そして、入力軸13aを回転させることによって、ウェーブジェネレータがフレクスプラインとサーキュラスプラインとの噛み合い位置を移動させ、サーキュラスプラインとフレクスプラインの歯数差に応じてフレクスプラインが回転軸周りに回転し、出力軸13bが回転する。波動歯車装置は、小型・軽量、高減速比、高トルク容量、ノンバックラッシ等の特徴からロボットの駆動機構の減速機に適した特性を有する。
【0035】
[ロボット制御装置の構成例]
図2に示すように、ロボット制御装置2は、指令部21と、各関節に対応して設けられたサーボ制御部22と、各関節に対応して設けられたサーボアンプ23とを含む。サーボ制御部22及びサーボアンプ23がモータ制御システムを構成する。モータ制御システムは、上位装置である指令部21から入力された位置指令に基づきサーボモータ11に供給される電流を制御してサーボモータ11の動作を制御し、且つ入力軸13aがサーボモータ11の出力軸11aに接続され且つ出力軸13bが負荷に接続された減速機13の動作を制御する。本実施の形態において、負荷は、ロボット1のロボットアームの関節10であり、関節10を回動させることによってロボットアームの作業端(ハンドが設けられている端部)を移動させることができるように構成されている。
【0036】
指令部21は、動作プログラムに基づき位置指令を生成し、出力する。出力された位置指令は、サーボ制御部22に入力される。本実施の形態において、位置指令とは、サーボモータ11の出力軸11aの位置を制御するための制御量であり、サーボモータ11の出力軸11aの回転角である。
【0037】
図3は、ロボットシステムのサーボ制御部の制御系統の構成例を概略的に示すブロック図である。なお、位置指令に重力補償及び動力学補償を行ってもよい。
【0038】
サーボ制御部22は、指令部21が生成した位置指令に基づき電流指令を生成する。図3に示すように、サーボ制御部22は、速度偏差生成部31と、角度伝達誤差補償部34と、電流指令生成部36とを含む。
【0039】
速度偏差生成部31、角度伝達誤差補償部34、及び電流指令生成部36は、所定の制御プログラムを図示しない演算部が実行することにより実現される機能ブロックである。上記の演算部は、例えばマイクロコントローラ、CPU、ASIC、FPGA等のプログラマブルロジックデバイス(PLD)などの演算器で構成される。演算部は、集中制御する単独の制御器で構成されていてもよく、互いに協働して分散制御する複数の制御器で構成されてもよい。また、ロボット制御装置2は、各種プログラム及びデータを記憶する記憶装置(図示せず)を備えている。
【0040】
速度偏差生成部31は、位置指令に基づき速度指令を生成し、且つ速度指令とエンコーダ12が検知した事象に基づき検出されたサーボモータ11の出力軸11aの実際の回転速度との偏差である速度偏差を算出する。
【0041】
速度偏差生成部31は、速度フィードフォワード指令生成部32と、位置偏差算出部41と、ゲイン速度指令生成部42と、速度偏差算出部60と、エンコーダ値微分部37とを有する。
【0042】
速度フィードフォワード指令生成部32は、位置指令に基づいて速度フィードフォワード指令を生成する。速度フィードフォワード指令生成部32は、位置指令を時間微分する微分器を含み、位置指令を時間微分して速度フィードフォワード指令を生成する。
【0043】
位置偏差算出部41は、位置指令からサーボモータ11の実際の出力軸11aの回転角を減算し、位置指令とエンコーダ12から出力されるサーボモータ11の実際の出力軸11aの回転角との偏差である位置偏差を算出する。
【0044】
ゲイン速度指令生成部42は、位置偏差算出部41が算出した位置偏差に位置比例ゲインKpを乗じた値を算出する。この算出された値がゲイン速度指令を構成する。このように、ゲイン速度指令生成部42は、P制御(比例制御)を行う。
【0045】
エンコーダ値微分部37は、エンコーダ12から出力されるサーボモータ11の実際の出力軸11aの回転角に基づいてサーボモータ11の実際の出力軸11aの回転速度を算出する。エンコーダ値微分部37は、サーボモータ11の実際の出力軸11aの回転角を時間微分する微分器を含み、サーボモータ11の実際の出力軸11aの回転角を時間微分してサーボモータ11の実際の出力軸11aの回転速度を算出する。
【0046】
速度偏差算出部60は、速度フィードフォワード指令を補正した補正速度フィードフォワード指令(詳細は後述)とゲイン速度指令とを加算して速度指令を生成する。更に、速度偏差算出部60は、速度指令とエンコーダ値微分部37が算出したサーボモータ11の出力軸11aの回転速度との偏差である速度偏差を算出する。なお、速度偏差算出部60における補正速度フィードフォワード指令、ゲイン速度指令、及びサーボモータ11の出力軸11aの回転速度の加減算の順序はこれに限定されるものではない。
【0047】
角度伝達誤差補償部34は、サーボモータ11の出力軸11aの回転角(減速機13の入力軸13aの回転角)と減速機13の出力軸13bの回転角との間の角度伝達誤差を推定する。更に、角度伝達誤差補償部34は、推定した角度伝達誤差に基づいて前記速度フィードフォワード指令を補正し、補正速度フィードフォワード指令を生成する。角度伝達誤差補償部34は、角度伝達誤差推定部51と、補正部52とを含む。
【0048】
ところで、図4に示すように、波動歯車装置を含む減速機には、加工誤差等により、減速機に入力される入力回転角に減速比を乗じた理論上の出力回転角と、実際の出力回転角との差である角度伝達誤差が生じる。この角度伝達誤差は、モータの出力軸の回転に伴って周期的に変化する。このような減速機の出力軸の角度伝達誤差ATEは、以下の式(1)に係る関数を用いたモデルによって近似的に表現することが可能である。
【0049】
【数1】
【0050】
角度伝達誤差推定部51は、上記式(1)に係る角度伝達誤差の周期的な変動をモデル化した周期関数に基づいて、減速機13に対する入力回転角であるサーボモータ11の出力軸11aの回転角と減速機13の出力回転角である減速機13の出力軸13bの回転角との間の角度伝達誤差を推定し、角度伝達誤差を補償するため(角度伝達誤差をキャンセルするため)にサーボモータ11の出力軸11aに加えるべき補償量θ(・)compを決定する。ここでθ(・)は、θの上に符号・(ドット)が一つ付された記号であるとする。本実施の形態において、角度伝達誤差推定部51は、サーボモータ11の出力軸11aに加えるべき補償量θ(・)compを、以下の式(2)に基づいて算出する。
【0051】
【数2】
【0052】
式(2)は、式(1)を時間微分し、更に減速比に負号を付してこれを乗じたものであり、式(1)及び式(2)の振幅A及び位相差φは、予め規定されている。例えば、波動歯車装置の角度伝達誤差に特に大きな影響をあたえるのは周波数が2に係る成分であることが判っている。従って、減速機13が波動歯車装置である場合、周波数fを2と規定し、当該周波数fに対応する別途同定した振幅A,位相φを用いて上記関数に基づいて補償量θ(・)compを算出してもよい。このように、角度伝達誤差推定部51は、位置指令及び速度フィードフォワード指令の値(位置指令の時間微分値)に基づき角度伝達誤差の補償量を推定する。
【0053】
補正部52は、速度フィードフォワード指令値に補償量θ(・)compを加算し、補正速度フィードフォワード指令を生成する。
【0054】
このように、角度伝達誤差補償部34は、角度伝達誤差推定部51が推定した角度伝達誤差に基づいて補正部52が速度フィードフォワード指令値を補正し、補正速度フィードフォワード指令を生成する。そして、上述の通り、速度偏差算出部60が、補正速度フィードフォワード指令とゲイン速度指令とを加算して速度指令を生成する。
【0055】
このように、角度伝達誤差補償部34は、速度フィードフォワード指令を補正することによって、速度指令を間接的に補正し、更には補正偏差を間接的に補正している。
【0056】
電流指令生成部36は、速度偏差生成部31が生成した速度偏差に基づいて電流指令を生成する。電流指令とは、サーボモータ11の巻線に供給する電流を制御するための制御量である。
【0057】
例えば、電流指令生成部36は、速度比例ゲイン部62と、積分部63と、速度積分ゲイン部64と、加減算部65とを含む。速度比例ゲイン部62は、速度偏差算出部60が算出した速度偏差に速度比例ゲインKvpを乗じた第1指令の値を算出する。積分部63は、第1指令の値を積分する。速度積分ゲイン部64は、積分部63が積分した値に速度積分ゲインKviを乗じた第2指令の値を算出する。加減算部65は、速度比例ゲイン部62が算出した第1指令の値と、速度積分ゲイン部64が算出した第2指令の値を加算した値を算出し、この値を電流指令として出力する。すなわち、電流指令生成部36は、PI制御(比例積分制御)を行うように構成されている。出力された電流指令はサーボアンプ23に入力される。
【0058】
サーボアンプ(電流制御部)23は、電流指令生成部36が生成した電流指令に基づいてサーボモータ11に供給される電流を制御する。
【0059】
ところで、位置指令に角度伝達誤差を補償するための補正を加えて速度指令を生成すると、その下位の速度偏差を算出する過程においてこの補正が打ち消され、角度伝達誤差の補償を適切に行えない場合があった。しかし、本実施の形態において、角度伝達誤差補償部34は、サーボモータ11の出力軸11aの回転角と減速機13の出力軸13bの回転角との間の角度伝達誤差を推定し、位置指令よりも下位の指令、すなわち速度フィードフォワード指令を補正することによって速度指令を補正し、速度偏差を補正するので、角度伝達誤差の補償を適切に行うことができる。
【0060】
このように、サーボモータ11の出力軸11aの回転速度を制御するための速度フィードフォワード指令を角度伝達誤差補償部34が補正し、この補正された補正速度フィードフォワード指令に沿ってサーボモータ11の出力軸11aの回転速度が制御されるよう構成されている。すなわち、ロボット制御装置2は、サーボモータ11の出力軸11aを角度伝達誤差を補償した速度で回転するよう制御する。
【0061】
以上に説明したように、本発明のロボットシステム100は、角度伝達誤差補償部34が、速度フィードフォワード指令を補正することによって速度指令を補正し、速度偏差を補正するので、角度伝達誤差の補償を簡易な構成で行うことができ、角度伝達誤差に起因する負荷の不安定な挙動(振動など)を抑制することができる。
【0062】
特に垂直多関節ロボットであるロボット1においては、角度伝達誤差に起因する関節の回動速度の変動は、ハンド14の振動となって表れる。したがって、角度伝達誤差に起因する関節の回動速度の変動を抑制することによって、角度伝達誤差に起因するハンド14の振動を抑制することができ、位置決め精度を向上させることができる。
【0063】
また、角度伝達誤差補償部34は、速度フィードフォワード指令を補正することによって速度指令を補正し、速度偏差を補正するので、速度フィードフォワード指令を用いてサーボモータ11を制御するロボットシステム100において、速度指令を適切に補正することができ、角度伝達誤差の補償を適切に行うことができる。
【0064】
(実施の形態2)
以下では実施の形態2の構成、動作について、実施の形態1との相違点を中心に述べる。
【0065】
図5は、実施の形態2に係るロボットシステムの動作例における速度フィードフォワード指令と速度フィードフォワード指令の修正値との関係を示すグラフである。
【0066】
上記実施の形態1において、角度伝達誤差推定部51は、式(2)の通り、サーボモータ11の出力軸11aに加えるべき補償量θ(・)compを、速度フィードフォワード指令の値を用いて算出した。
【0067】
これに対し、本実施の形態において、角度伝達誤差推定部51は、まず、式(3)~式(5)に基づいて速度フィードフォワード指令θ(・)の値を修正し、θ(・)aを算出する。
【0068】
【数3】
【0069】
図5は式(3)~(5)をグラフ化した図であり、速度フィードフォワード指令値θ(・)がvlim以下の場合、式(3)に基づいて、速度フィードフォワード指令値θ(・)をそのまま速度フィードフォワード指令値の修正値θ(・)aとして設定する。
【0070】
そして、速度フィードフォワード指令値θ(・)がvlimを超えた場合、式(4)に基づいて、速度フィードフォワード指令値θ(・)が大きくなるにしたがって、速度フィードフォワード指令値の修正値θ(・)aが小さくなるように設定する。
【0071】
また、式(4)において速度フィードフォワード指令の修正値θ(・)aが0になる値をvlimが超えると、式(5)に基づいて速度フィードフォワード指令の修正値θ(・)aを0に設定する。
【0072】
次に、角度伝達誤差推定部51は、式(6)に基づいて、速度フィードフォワード指令値の修正値θ(・)aを用いて、サーボモータ11の出力軸11aに加えるべき補償量θ(・)compを算出する。
【0073】
【数4】
【0074】
すなわち、速度フィードフォワード指令値θ(・)がvlim以下であった場合は、本実施の形態における補償量θ(・)compは、上記実施の形態1の補償量θ(・)compと同一となるように構成されている。
【0075】
一方、速度フィードフォワード指令値θ(・)がvlimを超える場合は、本実施の形態における補償量θ(・)compは、上記実施の形態1の補償量θ(・)compよりも小さくなるように構成され、特に、式(5)に示す通り、速度フィードフォワード指令値θ(・)が所定以上の値になると補償量θ(・)compは0となるように構成されている。
【0076】
このように、速度フィードフォワード指令値θ(・)が所定の値を超える場合は、補償量θ(・)compを小さくするよう又は補償を行わないように構成されている。これによって、補償量θ(・)compが過度に大きくなることを防止することができ、制御に不具合が生じることを防止することができる。更に、通常、高い精度が求められない高速で動作させる領域における制御を簡素化することができる。
【0077】
また、本実施の形態において、式(4)に示す速度フィードフォワード指令値の範囲においては、速度フィードフォワード指令値θ(・)が大きくなるにしたがって、速度フィードフォワード指令値の修正値θ(・)aが小さくなるように設定するよう構成されているので、速度フィードフォワード指令値θ(・)がvlimを跨いで変化する場合において、ロボット1の動作が急激に変化することを防止することができる。
【0078】
(実施の形態3)
以下では実施の形態3の構成、動作について、実施の形態1との相違点を中心に述べる。
【0079】
図6は、実施の形態3に係るロボットシステムのサーボ制御部22の制御系統の構成例を概略的に示すブロック図である。
【0080】
本実施の形態において、サーボ制御部22は、重力補償部337を更に含む。
【0081】
重力補償部337は、ロボット1に作用する重力の影響をキャンセルする補償を行うための機能部である。重力補償部337は、重力補償値算出部341と、補正部342とを含む。重力補償値算出部341は、ロボット1の関節10に作用する重力トルクを相殺するための重力補償値Gを算出する。補正部342は、重力補償値Gを電流指令値に加算する。
【0082】
ところで、サーボモータ11の出力軸11aと減速機13の出力軸13bとの位相差は、減速機13の出力軸13bにかかるトルクに比例して変化する。したがって、当該変化は、以下の関数として表したモデルによって近似的に表現することが可能である。
【0083】
【数5】
【0084】
そして、本実施の形態において、角度伝達誤差推定部51は、サーボモータ11の出力軸11aに加えるべき補償量θ(・)compを式(2)に基づいて算出する際に用いるφを、重力補償値算出部341が算出した重力補償値Gを用いて上記の式(7)に基づいて算出する。なお、比例定数a及び位相φ0は予め同定される。そして、角度伝達誤差推定部51は、式(7)に基づいて用いたφを用いて、サーボモータ11の出力軸11aに加えるべき補償量θ(・)compを式(2)に基づいて算出する。これによって、サーボ制御部22は、角度伝達誤差補償をより精確におこなうことができる。
【0085】
(実施の形態4)
以下では実施の形態4の構成、動作について、実施の形態1との相違点を中心に述べる。
【0086】
図7は、実施の形態4に係るロボットシステムのサーボ制御部の制御系統の構成例を概略的に示すブロック図である。
【0087】
上記実施の形態1において、角度伝達誤差補償部34は、速度フィードフォワード指令を補正することによって速度指令を間接的に補正し、速度偏差を間接的に補正した。これに対し、本実施の形態において、角度伝達誤差補償部434は、図7に示すように、速度偏差を補正する。
【0088】
すなわち、速度偏差算出部60は、速度フィードフォワード指令とゲイン速度指令とを加算して速度指令を生成する。更に、速度偏差算出部60は、速度指令とサーボモータ11の出力軸11aの回転速度との偏差である速度偏差を算出する。
【0089】
そして、角度伝達誤差補償部434の補正部452は、速度偏差に補償量θ(・)compを加算し、補正速度偏差を算出する。
【0090】
また、電流指令生成部36は、角度伝達誤差補償部434が生成した補正速度偏差に基づいて電流指令を生成する。すなわち、速度比例ゲイン部62は、角度伝達誤差補償部434の補正部452が算出した補正偏差に速度比例ゲインKvpを乗じた第1指令を生成する。
【0091】
(実施の形態5)
以下では実施の形態5の構成、動作について、実施の形態1との相違点を中心に述べる。
【0092】
図8は、実施の形態5に係るロボットシステムのサーボ制御部の制御系統の構成例を概略的に示すブロック図である。
【0093】
上記実施の形態1において、角度伝達誤差補償部34は、速度フィードフォワード指令を補正することによって速度指令を間接的に補正し、速度偏差を間接的に補正した。これに対し、本実施の形態において、角度伝達誤差補償部534は、図8に示すように、ゲイン速度指令を補正することによって速度指令を間接的に補正し、速度偏差を間接的に補正する。
【0094】
すなわち、角度伝達誤差補償部534の補正部552は、ゲイン速度指令に補償量θ(・)compを加算し、補正ゲイン速度指令を算出する。そして、速度偏差算出部60は、速度フィードフォワード指令と補正ゲイン速度指令とを加算して速度指令を算出する。更に、速度偏差算出部60は、速度指令とサーボモータ11の出力軸11aの回転速度との偏差である速度偏差を算出する。
【0095】
(実施の形態6)
以下では実施の形態6の構成、動作について、実施の形態1との相違点を中心に述べる。
【0096】
図9は、実施の形態6に係るロボットシステムのサーボ制御部の制御系統の構成例を概略的に示すブロック図である。
【0097】
上記実施の形態1において、角度伝達誤差補償部34は、速度フィードフォワード指令を補正することによって速度指令を間接的に補正し、速度偏差を間接的に補正した。これに対し、本実施の形態において、角度伝達誤差補償部634は、図9に示すように、サーボモータ11の出力軸11aの回転速度を補正することによって速度偏差を間接的に補正する。
【0098】
すなわち、角度伝達誤差補償部634の補正部652は、サーボモータ11の出力軸11aの回転速度から補償量θ(・)compを減算し、補正回転速度を算出する。
【0099】
そして、速度偏差算出部60は、速度指令と補正回転速度との偏差である速度偏差を算出する。
【0100】
(実施の形態7)
以下では実施の形態7の構成、動作について、実施の形態1との相違点を中心に述べる。
【0101】
図10は、実施の形態7に係るロボットシステムのサーボ制御部の制御系統の構成例を概略的に示すブロック図である。
【0102】
上記実施の形態1において、角度伝達誤差補償部34は、速度フィードフォワード指令を補正することによって速度指令を間接的に補正し、速度偏差を間接的に補正した。これに対し、本実施の形態において、角度伝達誤差補償部734は、図10に示すように、推定した角度伝達誤差に基づいて位置指令及び速度フィードフォワード指令を補正する。角度伝達誤差補償部734は、角度伝達誤差推定部51と、第1補正部752と、第2補正部753とを含む。
【0103】
第1補正部752は、位置指令に補償量θ(・)compを加算し、補正位置指令を算出する。
【0104】
第2補正部753は、補正部52と同様であるのでその詳細な説明を省略する。
【0105】
速度フィードフォワード指令生成部32は、補正前の位置指令に基づいて速度フィードフォワード指令を生成する。
【0106】
位置偏差算出部41は、補正位置指令からサーボモータ11の出力軸11aの回転角を減算し、位置指令とサーボモータ11の出力軸11aの回転角との偏差である位置偏差を算出する。
【0107】
(実施の形態8)
以下では実施の形態8の構成、動作について、実施の形態1との相違点を中心に述べる。
【0108】
上記実施の形態1において、角度伝達誤差補償部34の角度伝達誤差推定部51は、式(2)に基づいてサーボモータ11の出力軸11aに加えるべき補償量θ(・)compを算出する際、角度伝達誤差に特に大きな影響を与える所定の周波数f及びこの周波数に対応する所定の振幅A及び所定の位相差φを用いて補償量θ(・)compを算出した。これに代えて、角度伝達誤差補償部34の角度伝達誤差推定部51は、サーボモータ11の出力軸11aに加えるべき補償量θ(・)compを、以下の式(8)に基づいて算出してもよい。
【0109】
【数6】
【0110】
すなわち、角度伝達誤差推定部51は、位置指令及び速度フィードフォワード指令の値(位置指令の時間微分値)に基づき、周波数のパターン毎に角度伝達誤差を算出し、これらを足し合わせた値を角度伝達誤差の補正に用いる。これによって、角度伝達誤差をより正確に補正することができる。
【0111】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【符号の説明】
【0112】
1 ロボット
2 ロボット制御装置
10 回動軸
11 サーボモータ
11a 出力軸
12 エンコーダ
13 減速機
13a 入力軸
13b 出力軸
22 サーボ制御部
23 サーボアンプ
31 速度偏差算出部
34 角度伝達誤差補償部
36 電流指令生成部
100 ロボットシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10