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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】ハイスループットシーケンシング
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6858 20180101AFI20220805BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20220805BHJP
【FI】
C12Q1/6858 Z ZNA
C12N15/11 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2017519317
(86)(22)【出願日】2015-10-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-11-02
(86)【国際出願番号】 GB2015053023
(87)【国際公開番号】W WO2016059398
(87)【国際公開日】2016-04-21
【審査請求日】2018-09-11
【審判番号】
【審判請求日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】1418144.0
(32)【優先日】2014-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】504043462
【氏名又は名称】ユニバーシティ カレッジ カーディフ コンサルタンツ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】ベアード,ダンカン
(72)【発明者】
【氏名】ノリス,ケビン
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】上條 肇
【審判官】伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-524251(JP,A)
【文献】特表2004-536599(JP,A)
【文献】特表2005-515778(JP,A)
【文献】特表2010-505413(JP,A)
【文献】Nature Genetics,2003年,Vol.33,No.2,p.203-207
【文献】Fragment AnalyzerTM Automated CE System, Advanced Analytical,2012年,p.1-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00 - 3/00
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
CAplus/WPIDS/EMBASE/MEDLINE/BIOSIS/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト染色体DNAのテロメア長を決定するためのハイスループット方法(HT-STELA)であって、
i)テロメア反復配列TTAGGGの開始点から3843bp~30bpの間にある、XpYp、7q、12qまたは17p染色体DNAのテロメア反復配列に隣接する領域に、プライマーをアニーリングすることと;
ii)21~23サイクルを使用して、前記染色体DNA20ng~35ngをPCR増幅させ、増幅産物を生成させることと;
iii)キャピラリー電気泳動を用いた展開方法により増幅産物の長さを検出することとを含み、
前記プライマーは、7q染色体であって、以下の7q特異的ヌクレオチド:1115T(chr7:159334755 hg38)、551A(chr7:159335319 hg38)、および195G(chr7:159335675 hg38)テロメア反復配列の開始点、またはhg38ヒトゲノム参照配列に関する)のうちの少なくとも1つに結合するように設計される;
前記プライマーは、12q染色体であって、以下の12q特異的ヌクレオチド:350G(chr12:133264524 hg38)および550T(chr12:133264324 hg38)(テロメア反復配列の開始点、またはhg38ヒトゲノム参照配列に関する)のうちの少なくとも1つに結合するように設計される;
前記プライマーは、XpYp染色体であって、以下のXpYp特異的ヌクレオチド:397C(XpYpE5)(chrX:10432 hg38)および861C(XpYpC )(chrX:10896 hg38)(テロメア反復配列の開始点、またはhg38ヒトゲノム参照配列に関する)のうちの少なくとも1つに結合するように設計される;または
前記プライマーは、17p染色体であって、以下の17p特異的ヌクレオチド:292C(17pseq1rev)、1018T(17pseq2rev)、1837C(17 pseq4rev)、2559C(17p2)および3018G(17p7)(テロメア反復配列の開始点に関する)のうちの少なくとも1つに結合するように設計される、
ハイスループット方法。
【請求項2】
ii)の工程が、21~23サイクルを使用して、前記染色体DNA25ng~30ngをPCR増幅させ、増幅産物を生成させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
iii)の工程が、少なくとも25相対蛍光単位(RFU)のシグナル;または少なくとも25%の、0.5ng/μlのマーカーが10秒当たり1Kv値の注入量で使用される場合に生成されるマーカー産物の代表的な曲線下のマーカーピーク面積当たりの生成される産物の代表的な曲線下のテロメアピーク面積であるシグナルを提供する蛍光標識を、PCR増幅産物に結合させることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記染色体DNAを23回のPCRサイクルに供するか、または、30ngの染色体DNAを23回のPCRサイクルに供する、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記プライマーの濃度が、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7または0.8μMを含む群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記染色体DNAが少なくとも1つの細胞から自動抽出法を使用して抽出される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞が任意の生体試料またはそれらの処理された誘導体から抽出される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記生体試料が複雑な細胞試料または精製された細胞試料である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記生体試料が全血を含む、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
約6×10個の細胞または6×10個未満の細胞が抽出方法において使用される、 請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
2×10~6×10個の細胞が抽出方法において使用される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
4×10個の細胞が抽出方法において使用される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法を実施する前に、非テロメアDNAを切断する制限エンドヌクレアーゼで前記染色体DNAを消化することを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記制限エンドヌクレアーゼが、前記プライマーの5’末端とテロメア反復配列との間を切断しない、または前記プライマーの5’末端と染色体テロメア末端との間を切断しない、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
iii)の工程が、200bpよりも大きいが、HT-STELAを用いて同定されるテロメアの最小断片サイズよりも小さい低分子量マーカーの使用を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記低分子量マーカーが、882bp、881bp、880bp、879bp、878bp、877bp、876bp、875bp、874bp、873bp、872bp、871bp、870bp、410bp、409bp、408bp、407bp、406bp、405bp、404bp、403bp、402bp、401bp、400bp、399bp、398bp、397bp、396bp、395bp、394bp、393bp、392bp、391bp、および390bp含む群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
iii)の工程が、10kb、11kb、12kb、13kb、14kb、15kb、16kb、17kb、18kb、19kbおよび20kbを含む群であって、これらの間のすべての0.1kb含む群から選択される高分子量マーカーの使用を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記プライマーが、3’末端で、テロメア特異的ヌクレオチドに結合するように適合されている、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
がん、老化、アルツハイマー病、パーキンソン病および他の認知症を含む神経系障害、脳梗塞、心疾患、慢性HIV感染、慢性肝炎、皮膚疾患、潰瘍性大腸炎を含む慢性炎症性腸疾患、貧血、アテローム性動脈硬化、バレット食道および前がん症状を含むがん、不妊症、先天性異常角化症を含むテロメア症候群、再生不良性貧血、特発性肺線維症、家族性骨髄異形成症候群-急性骨髄性白血病、Hoyeraal-Hreidarsson症候群、レーベース症候群、コーツプラス症候群、骨髄機能不全、ならびに特発性肝硬変を含む群から選択される症状を発症するリスクを診断もしくは予後判定するため、または決定するために実施される、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
移植ドナーとなるための個体の適合性を評価するために実施される、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物染色体DNAのテロメア長を決定するハイスループット方法;前記方法で使用するためのプライマー;前記プライマーを含むキット;テロメア短縮疾患、例えば、がん、老化、アルツハイマー病、パーキンソン病および他の認知症を含む神経系障害、脳梗塞、心疾患、慢性HIV感染、慢性肝炎、皮膚疾患、潰瘍性大腸炎を含む慢性炎症性腸疾患、貧血、アテローム性動脈硬化、バレット食道および前がん症状を含むがん、不妊症、先天性異常角化症を含むテロメア症候群、再生不良性貧血、特発性肺線維症、家族性骨髄異形成症候群-急性骨髄性白血病、Hoyeraal-Hreidarsson症候群、レーベース症候群、コーツプラス症候群、骨髄機能不全、ならびに特発性肝硬変を発症するリスクを診断もしくは予後判定するため、または決定するための前記方法の使用に関する。さらに、本発明はまた、移植ドナー、例えば骨髄ドナーとなるための個体の適合性を評価する際の適用も有する。
【背景技術】
【0002】
テロメアは、線状の真核生物染色体の末端をキャップし、劣化または隣接する染色体との融合からそれらを保護する、反復DNA配列(テロメア反復配列と名付けられた、主として25kb以下のタンデムリピート配列TTAGGG)を含んでなる核タンパク質構造である。TTAGGG反復に加えて、ヒトテロメア反復配列の近位1~2kbもまた、特にTCAGGGおよびTGAGGGを含むテロメア変異体反復型(TVR)を含有している(例えば、Baird et al EMBO 1995、およびLetsolo et al NAR 2010)。DNA複製中に、テロメア配列は染色体末端から失われる。酵素テロメラーゼは、新しいテロメア反復を合成することによってこれを補うが、体細胞においてはこの酵素は不活性であるため、時間の経過とともにテロメアは短縮する。しかし、特定の細胞型、例えば、生殖細胞、幹細胞および特定の白血球などでは、テロメア末端は、テロメア反復のRNA鋳型付加を触媒作用するテロメラーゼによって維持されている。
【0003】
テロメア長はテロメア機能の重要な決定因子であり、短い機能不全のテロメアは、マウスモデルにおいてゲノムの不安定性および腫瘍形成を促進し得ることが明らかになっている。さらに、テロメラーゼの制御解除により腫瘍形成が促進されることが明らかになっている。加えて、体細胞におけるテロメアの消失は典型的には複製老化につながり、これはゲノム安定性をもたらし、がんを防ぐ。反対に、悪性細胞はこの老化を回避することができ、テロメラーゼの異常活性化によって不死化するようになることも明らかになっている。多くの疾患が遺伝的異常、特にテロメア短縮の結果として存在することが知られている。これらの疾患としては、アルツハイマー病、パーキンソン病および他の認知症、脳梗塞、心疾患、慢性HIV感染、慢性肝炎、皮膚疾患、潰瘍性大腸炎を含む慢性炎症性腸疾患、貧血、アテローム性動脈硬化、バレット食道および前がん症状を含むがん、不妊症、先天性異常角化症を含むテロメア症候群、再生不良性貧血、特発性肺線維症、家族性骨髄異形成症候群-急性骨髄性白血病、Hoyeraal-Hreidarsson症候群、レーベース症候群、コーツプラス症候群、骨髄機能不全、ならび特発性肝硬変が挙げられる。さらに、テロメア長の決定は、移植ドナー、例えば骨髄ドナーとなるための個体の適合性を評価する際の適用も有する。
【0004】
腫瘍進行におけるテロメア生物学の役割と一致して、テロメア長が慢性リンパ性白血病(CLL)を含む多くのヒト悪性腫瘍における予後判定情報を提供することができることを示すかなりの証拠が現在存在する。しかし、テロメア長を検出する現在利用可能な技術は解像度不足であり、このため、テロメアアッセイを臨床実施に移行するにあたっての進歩が妨げられている。例えば、乳がん進行中のテロメア機能障害の推定上の役割が示されているが、低解像度テロメア長解析だと限られた予後判定情報が提供されることが明らかであった。これらの技術に関する重要な問題は、DNAプローブのテロメア反復単位へのハイブリダイゼーションにそれらが基づくということである。結果的に、テロメアが短縮されるにつれて、プローブ標的は少なくなる。このことは、短縮されたテロメアが検出できないことを意味する。機能不全となって融合を起こし、ヒトがんの進行を促進し得るゲノム不安定性を引き起こすのは短縮されたテロメアであるという理由から、これは深刻である。また、Q-PCRに基づく方法も、テロメア反復含有量の推定について開示されている(WO 2004068110US)。しかし、これらの方法はハイスループット解析を行うことはできるが、短いテロメア(<4kb)の検出に関するそれらの直線性は確立されていない18。これは、報告されている28%までの高い変動係数(CV)値と関連付けると、Q-PCR方法は短いテロメアの検出には不適当であり、医療判断用の予後判定ツールとしては信頼性が低い19。まとめると、これまで、既存の低解像度技術を使用するテロメア解析は、十分に有益な予後判定ツールとはいえない。
【0005】
この問題に対処するため、本発明者らは、これまで、極端に短縮されたテロメアの存在を検出することが可能であり20、21、テロメア末端-末端融合を特徴づけることができる16、17単一分子技術を開発した。単一テロメア長解析(STELA)では、テロメア末端-末端融合を生じ得るテロメア長を含む、特定の染色体末端でのテロメア長を完全に展開することができる16、20。したがって、この方法は、潜在的機能不全であり融合を起こし得る短いテロメアを検出することができる。これらのテロメアは、他のいずれの方法を用いても確実に検出することはできない。
【0006】
STELAおよびテロメア融合解析22、23を使用し、本発明者らは、テロメア融合を検出することが可能な腫瘍細胞のテロメア長を定めた24、25。本発明者らは、STELAを融合性閾値と共に使用し、テロメア長に基づいてCLL罹患患者を階層化した。これらのデータは、融合性閾値未満のテロメア長は予後判定性が高く、融合性範囲の平均(2.26kb)が最適な予後判定解像度を提供することを示す。融合性閾値より下のテロメア長は、CLLにおける生存に関する最も強力な予測因子であり、これは特に初期段階の患者において予後判定的であった24。テロメア機能不全は多くの腫瘍タイプの進行に関係しており、本発明者らは、今回、同じ閾値が乳がんおよび骨髄異形成症候群において予後判定的であることを確立した。したがって、本発明者らは、我々の閾値が多くの様々な腫瘍タイプにおいて臨床上の有用性を提供することができると考えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らの知見の予後判定の有意性を鑑み、本発明者らは、テロメア長を決定するために、ソートして頑健なハイスループット方法を確立する。オリジナルのSTELA方法は煩雑であるため、多大な労働力を要し、時間も必要とする。さらに、この方法は、放射性標識したDNAプローブによるサザンハイブリダイゼーションを利用しており、このため、この方法は低スループットである。したがって、オリジナルのSTELA方法は、低スループットだが高解像度を必要とする研究室環境に最も適している。しかし、この方法は、がん患者の日常的なハイスループット評価には適していない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの問題を解決するため、本発明者らは、本明細書において、STELA方法の新規な改良版-ハイスループットSTELA(HT-STELA)を開示している。オリジナルのSTELA方法と同様に、HT-STELAは、リンカーオリゴヌクレオチドを必要とし、特定のヒトテロメアを増幅する、PCRに基づいた技術である。しかし、テロメア長分布の展開および検出がゲル電気泳動およびサザンハイブリダイゼーションによって行われないという点で異なる。代わりに、STELA PCR中に生成されたPCR産物は、キャピラリー電気泳動(Fragment Analyzer(商標)、Advanced Analyticalを使用)によって展開され、PCR産物への蛍光性挿入色素の取り込みをモニターするカメラによって検出される。この改良された展開および検出のステップは、テロメア長測定値の生成に要する時間を大幅に短くする。しかし、これらの異なる展開および検出の技術を使用する場合、それらを、テロメア長を確実に測定するのに必要とされる必要条件感度により作動させるのであれば、方法の変更が必要であり、したがって、本方法の感度を保証するための多くのステップが考案された。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、哺乳動物染色体DNAのテロメア長を決定するためのハイスループット方法であって、
i)テロメア反復配列から3843bp~30bpの間にある、染色体DNAのテロメア反復配列に隣接する領域に、プライマー配列をアニーリングすることと;
ii)21~23サイクルを使用して、前記染色体DNA20ng~35ngをPCR増幅させ、増幅産物を生成させることと;
iii)増幅産物の長さを検出することと
を含むハイスループット方法が提供される。
【0010】
記載したように、テロメアは、染色体のそれぞれの末端で(TTAGGG)を主として含んでなる反復ヌクレオチド配列の領域であり、したがって、前記テロメア反復配列から3843bp~30bpの領域への言及は、染色体末端をキャップするテロメア反復配列の開始位置から上流の領域(TTAGGG反復によって主として特徴付けされる)についての言及である。
【0011】
驚いたことに、本発明者らは、本方法が、分析に関して、バンドパターンとは対照的に、テロメア長分布の「スメア」を生成する場合、最も効果的に作用することを発見した。次の推察によって、本発明者らは、テロメア長分布スメアが有益である複数の理由が存在することを認めた。それは、(PROSize(商標))ソフトウェア内のデータ解析において人による操作がほとんど必要ないので、平均テロメア長をより迅速に分析できることであり;それは、試料当たりの反応が少なくて済むことであり;それは、産物の全量を増加させ、存在する非特異的バックグラウンドバンドがサイジング解析に組み込まれないようにすることである。このテロメア長分布「スメア」を達成するために、本発明者らは、最適なDNA量および最適なPCRサイクル数を使用する必要があることを発見した。これらの2つのパラメーターを定義することにより、本発明者らは、後の解析でテロメア長分布「スメア」を確実に得ることができることを見出した。典型的なテロメア長の分布バンドを図1aに示し、これに対し、典型的なテロメア長の分布スメアを図4に示す。
【0012】
さらに、本発明者らは、これらの最適化されたパラメーターが、テロメア短縮の代表的なテロメア長分布の特異的増幅と一致していることを理解した。したがって、最適化されたサイクル数およびDNA量の選択によって、テロメア長分布をより良好に表わすことが可能となる。実際、最適化されたPCRサイクル数によって、人工的増幅は少なくなり、異質性が減少し、したがって、テロメア長分布がより正確に表わされる。
【0013】
PCR増幅産物へ挿入される蛍光シグナルまたは標識を使用して、本発明者らは、PCRサイクル数21および23回が、システムにおいて、頑健なシグナル(27~65RFUの間)とテロメア長の信頼性の高い推定値をもたらすこと(図11)を発見した。このシステムにおいて、信頼性の高いテロメア長推定値を提供する最小シグナルは、25RFUまたは25%(Telピーク面積LMピーク面積、ここで、Telピーク面積はテロメア特異的産物の曲線下の面積であり、LM面積は低分子量マーカーの曲線下の面積である)であった。両方とも、ProSizeソフトウェアを使用して決定する。最も理想的には、23回のPCRサイクル数を使用する。
【0014】
本発明のよりさらに好ましい方法において、PCR増幅に使用される染色体DNAの量は、25~30ngである。
【0015】
より理想的には、PCR増幅に使用される染色体DNAの量は、25ng、26ng、27ng、28ng、29ngおよび30ngを含む群から選択される。最も理想的には、25ngの染色体DNAを使用し、22回のPCRサイクルを実施して増幅産物を得る。よりさらに好ましくは、30ngの染色体DNAを23回のPCRサイクルに供した。
【0016】
本発明のよりさらに好ましい方法において、前記プライマーは、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7または0.8μMの濃度で提供されるが、最も理想的には、0.1または0.2μMで提供される。
【0017】
本発明のよりさらに好ましい方法において、前記染色体DNAは、反応が行われる毎にPCR反応に等量のDNAを毎回提供する目的で自動抽出法を使用し、少なくとも1つの細胞、理想的には複数の細胞から抽出する。適切なDNA抽出システムの一例は、Promega DNA IQ(商標)システムである。このシステムを使用して、DNAを細胞懸濁液から抽出し、続いて、単一分子レベルまで希釈し、オリジナルのSTELA法と同数の増幅可能な分子を得た。次いで、本発明者らは、さらに、HT-STELAで使用するためのテロメア長分布スメアを確実に生成するためにこの方法を最適化したが、これは、Promega DNA IQ(商標)システムから最適溶出量を決定し、次にHT-STELA反応に加えるDNA溶液の容量を決定することにより行った。これによって、投入DNAの量を定量することなく、信頼性の高いテロメア長分布スメアが提供されることが分かった。これにより、STELA方法の速度および信頼度が向上し、DNA抽出、希釈およびPCRセットアップの自動化が可能となる。また、分析可能な試料の範囲も拡大し、例えば、指穿刺または口腔内綿棒によりFTA DNAカードを使用することができる。有利なことには、この技術によって、個人が自宅で試料を準備し、テロメア検査のために一般的な郵便でそれらを送ることができる。
【0018】
患者由来の試料の日常的な評価について、試験しようとする細胞の単離(例えばCD19+ CLL)およびその後のこれらの細胞からのDNA抽出、HT-STELA PCR、生成されたPCR産物の展開および検出、ならびにこれらの産物からの(例えば、XpYp染色体を使用する)平均テロメア長の測定は、すべて1日の作業内で行うことができるが、オリジナルのSTELA方法の場合、これは、終了するまで7日間の作業日を要する。したがって、HT-STELAは、迅速かつ正確にがん患者の予後判定を評価することができる有効なツールを提供する。
【0019】
本方法の好ましい実施形態において、前記細胞は、任意の生体試料から抽出することができる。本明細書における生体試料への言及は、テロメア長を解析しようとする対象から採取した任意の試料、またはそれらの処理された誘導体を意味する。これには、限定するものではないが、複雑な試料、例えば、全血、組織試料もしくは腫瘍試料、またはそれらの精製された細胞試料が含まれる。
【0020】
あるいは、生体試料を処理した誘導体、例えば、限定するものではないが、生体試料から採取し、予め単離、抽出し、必要に応じて適切な培地に再懸濁させた細胞などを使用することができる。例えば、FTAカードは、その後の下流でのDNA解析用の血液試料に都合のよいサンプリングおよび保存に一般に使用されているフォーマットである。これは、テロメア検査を必要とし得る患者に、臨床医または採血者を必要とすることなく、自宅で試料を準備するための迅速な方法を提供する。少量の血液試料をFTAカード上にスポットし、次いで、標準的な郵便サービスによって検査施設に返送される。
【0021】
本発明の好ましい実施形態において、DNA IQシステムは4×10個の細胞で飽和しているように考えられる。したがって、好ましい方法は、2×10~6×10個、好ましくは4×10個の細胞の使用を含む。
【0022】
場合によっては、テロメア長は、例えば、正常個体の末梢血由来の試料において、かなりの異質性が示され、好ましくないPCR増幅産物をもたらす可能性があることがわかった。これらの状況において、HT-STELAの実施前に、染色体DNAを予備消化することで、試料DNAの複雑性が低減し、増幅用のよりシンプルな標的が得られることが確認された。
【0023】
したがって、本発明のさらなる好ましい実施形態において、非テロメアDNAを切断する制限エンドヌクレアーゼで前記染色体DNAを消化する。当業者には理解されるように、ポリヌクレオチド鎖内のDNAホスホジエステル結合を切断する任意の酵素を、増幅しようとするテロメア内で切断しない限り、使用することができる。
【0024】
しかし、本発明者らがテロメア長を評価している状況から、テロメア領域を切断しない制限エンドヌクレアーゼを使用することが望ましく、したがって、より理想的には、前記制限酵素は、前記プライマーの5’末端とテロメア反復配列または染色体テロメア末端との間をそれが切断しないということに基づいて選択する。
【0025】
本発明のよりさらに好ましい実施形態において、増幅産物の長さの前記検出は、次のマーカーの使用を含む:大きなプライマー複合体およびプライマー二量体(200bp)のサイズよりも大きいが、HT-STELAで生成されるテロメアの最小断片サイズ(例えば、882bpまたは415bp)よりも小さい低分子量マーカー;および本発明者らのCLLのコホートで確認された最長平均テロメア長よりも大きい高分子量マーカー。したがって、理想的には、882bpまたは415bp未満の低分子量マーカーが選択された。理想的には、このマーカーは、882bp、881bp、880bp、879bp、878bp、877bp、876bp、875bp、874bp、873bp、872bp、871bp、870bp、410bp、409bp、408bp、407bp、406bp、405bp、404bp、403bp、402bp、401bp、400bp、399bp、398bp、397bp、396bp、395bp、394bp、393bp、392bp、391bp、および390bpを含む群から選択される。理想的には、市販の400bpのDNA断片をこの目的のために取得した(NoLimits,Thermo Scientific)。同様に、11kb、12kb、13kb、14kb、15kb、16kb、17kb、18kb、19kbおよび20kbの群であって、これらの間のすべての0.1kb整数を含む群から選択されるマーカーのような、10kbを超える高分子量マーカーがマーカーとして選択された。
【0026】
特定の染色体に対する特異性を得るためのよりさらに好ましい本発明の方法において、プライマーは、染色体XpYp、7q、12qおよび17pの染色体DNAのテロメア反復配列に隣接する領域とアニールするように設計される。さらにより理想的には、テロメアに隣接するプライマーは、3’末端にテロメア特異的ヌクレオチドを組み込むように設計される。
【0027】
好ましくは、7q染色体プライマーは、周辺で、すなわち、7q特異的ヌクレオチド(1115T(chr7:159334755 hg38)、551A(chr7:159335319 hg38)、195G(chr7:159335675 hg38)および、また少し程度は低いが、29G(chr7:159335841 hg38)(テロメア反復配列の開始点、またはhg38ヒトゲノム参照配列に関する)に相補的であるように設計される。これらのプライマーは、頑健なテロメア長分布スメアを生成した。
【0028】
好ましくは、12q染色体プライマーは、周辺で、すなわち、12q特異的ヌクレオチド350G(chr12:133264524 hg38)および550T(chr12:133264324 hg38)(テロメア反復配列の開始点、またはhg38ヒトゲノム参照配列に関する)に相補的であるように設計される。これらのプライマーは、頑健なテロメア長分布スメアを生成した。
【0029】
好ましくは、XpYp染色体プライマーは、周辺で、すなわち、XpYp特異的ヌクレオチド397C(XpYpE5)(chrX:10432 hg38)および861C(XpYpC)(chrX:10896 hg38)(テロメア反復配列の開始点、またはhg38ヒトゲノム参照配列に関する)に相補的であるように設計される。これらのプライマーは、頑健なテロメア長分布スメアを生成した。
【0030】
好ましくは、17p染色体プライマーは、周辺で、すなわち、17p特異的ヌクレオチド292C(17pseq1rev)、1018T(17pseq2rev)、1837C(17pseq4rev)、2559C(17p2)および3018G(17p7)(テロメア反復配列の開始点に関する)に相補的であるように設計される。これらのプライマーは、頑健なテロメア長分布スメアを生成した。
【0031】
好ましくは、さらにオリジナルのSTELA方法でテロメア特異的産物を生成する2p、4q、4p、5p、11q、16pおよび18qを含む、他の染色体テロメアを増幅するように設計されたプライマーもまた、HT-STELAで有用性を提供し得る。これらのプライマーとしては、2p2(chr2:10755 hg38)、4qK1(chr4:190122098 hg38)、4p4(chr4:10457 hg38)、5p3(chr5:12240 hg38)、11q13B(chr11:135076467 hg38)、16prev1(chr16:10241 hg38)、および18qrev4M(chr18:80262147 hg38)が挙げられる。
【0032】
実際、本発明者らは、テロメア反復配列の開始点から少なくとも3.843kbまでアニーリングするプライマーが頑健なテロメアプロファイルをもたらすことを見出した。しかし、テロメア反復配列の30bp内でアニーリングするプライマーが効果的増幅または特異的増幅を生じなかったことも明白であった。したがって、本発明を実施する場合、本発明者らは、テロメア反復TTAGGGの開始点から3843bp~30bpの間にある染色体の領域にアニーリングするプライマーを使用する。
【0033】
本明細書で使用する場合、「プライマー(複数可)」という用語は、染色体DNAの末端に生理学的条件または反応条件(HT-STELA PCR、20ページを参照)下でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを意味する。理想的には、オリゴヌクレオチドプライマーが少なくとも1つの、理想的には複数の前記染色体末端特異的ヌクレオチドに相補的であるように設計されるという事実にかかわらず、オリゴヌクレオチドの正確な長さ、およびその標的との相補性のその程度は、標的の配列、およびその配列を含む特定の塩基を含む、選択した特定の標的に依存するとことは、当業者には理解されよう。
【0034】
オリゴヌクレオチドは、生理学的条件/反応条件下で標的と選択的に結合するように、すなわち、生理学的条件/反応条件下で標的細胞の任意の別の配列よりも標的配列に対してより実質的にハイブリダイズするように、構築され配置されることが好ましい。
【0035】
十分に選択的で、かつ有効であるために、オリゴヌクレオチドは、標的に相補的である少なくとも7個26、より好ましくは、少なくとも15個の連続する塩基を含むものとする。最も好ましくは、オリゴヌクレオチドは、20~30塩基の相補配列を含む。
【0036】
本発明のよりさらに好ましい実施形態において、前記増幅産物(複数可)の検出は、キャピラリー電気泳動を使用する展開(または分離)方法を含み、この試験の実施に適切な装置の一例は、Fragment Analyzer(商標)(Advanced Analyticalから入手可能)である。他のキャピラリーゲルシステムは、Agilent and Lifetechnologiesから入手可能である。さらに、キャピラリー電気泳動を使用して増幅産物(複数可)を分離したら、これ/これらは、適切なシグナルまたは標識を使用して検出するが、本発明者らは、好ましくは、蛍光色素、理想的には増幅産物に挿入される蛍光色素を使用する。本発明の方法を使用して、本発明者らは、PCR増幅産物に挿入され、27~65RFU、理想的には少なくとも25RFUのシグナルを生成する蛍光シグナルまたは標識が、信頼性の高いテロメア長の推定値を提供する最小シグナルが25RFUであったシステムにおいて、テロメア長の推定にとって十分頑健であり信頼性が高い(図11)ことを発見した。25RFUは、25%の(図11で示した低分子量マーカーの曲線下面積で除算したHT-STELAシグナルの曲線下面積、すなわち、Telピーク面積/LMピーク面積)に等しいか、または25%として表すことができる。35ページ、品質管理を参照されたい。
【0037】
本発明のよりさらなる実施形態において、前記方法は、がん、老化、アルツハイマー病、パーキンソン病および他の認知症を含む神経系障害、脳梗塞、心疾患、慢性HIV感染、慢性肝炎、皮膚疾患、潰瘍性大腸炎を含む慢性炎症性腸疾患、貧血、アテローム性動脈硬化、バレット食道および前がん症状を含むがん、不妊症、先天性異常角化症を含むテロメア症候群、再生不良性貧血、特発性肺線維症、家族性骨髄異形成症候群-急性骨髄性白血病、Hoyeraal-Hreidarsson症候群、レーベース症候群、コーツプラス症候群、骨髄機能不全、ならびに特発性肝硬変を含む群から選択される症状を発症するリスクを診断もしくは予後判定するため、または決定するために実施される。
【0038】
本発明のよりさらなる実施形態において、前記方法は、移植ドナー、例えば骨髄ドナーとなるための個体の適合性を評価するために実施される。
【0039】
本発明のさらなる態様によれば、哺乳動物染色体DNAのテロメア長を決定するためのキットであって、テロメア反復配列から3843bp~30bpの間にある、染色体DNAのテロメア反復配列に隣接する領域にアニーリングし得る少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーを含むキットが提供される。
【0040】
本発明の好ましいキットにおいて、複数のプライマーが提供され、理想的には、前記プライマーは、以下の染色体7q、12q、17p、XpYp、2p、4q、4p、5p、11q、16pおよび18qのうちの少なくとも1つで少なくとも前記領域にアニーリングし得る。
【0041】
よりさらに好ましくは、前記キットは、前記方法を実施するための試薬を含む。
【0042】
本発明のよりさらなる態様において、以下を含む群から選択されるプライマーが提供される:
【0043】
【0044】
以下に示す特許請求の範囲および本発明の前述の説明において、文脈が言語または必要な意味を示すために必要とする場合を除いて、「含む(comprises)」という用語、またはその変化形、例えば「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」などは包括的な意味において使用され、すなわち、明示した特徴の存在を規定するが、本発明の様々な実施形態におけるさらなる特徴の存在または追加を妨げるものではない。
【0045】
本明細書に引用されているいずれかの特許または特許出願を含む、すべての参考文献は、参照によって本明細書に組み込まれる。いずれの先行文献も先行技術を構成することを容認するものではない。さらに、いずれかの先行技術が当技術分野における通常の一般知識の一部を構成することを容認するものではない。
【0046】
本発明のそれぞれの態様の好ましい特徴は、他のいずれかの態様に関連して記載されたものであり得る。
【0047】
本発明の他の特徴は、以下の実施例から明白になるであろう。概して言えば、本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲および図面を含む)に開示されている特徴のいずれかの新規なもの、またはいずれかの新規なものの組み合わせに及んでいる。したがって、本発明の特定の態様、実施形態または実施例に関連して記載されている特徴、整数、特性、化合物または化学成分は、それらと矛盾しない限り、本明細書に記載されている任意の他の態様、実施形態または実施例に適用することができるものと理解されたい。
【0048】
さらに、他に言及されていない限り、本明細書に記載されているいずれかの特徴は、同じ目的または類似の目的を果たす代替の特徴と置き換えることができる。
【0049】
本発明を、以下の表および図を参照し単なる例示としてここに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】フラグメントアナライザーでのSTELAによって生成されたPCR産物の電気泳動および検出を示す図である。250pgのHT1080 cl.2 DNAを30μlのSTELA PCR反応物に加え、65℃のアニール温度で22回PCRサイクルを繰り返した。(a)続いてそれぞれの反応物から4μlを取り、STELAプロトコルによって解析した。(b)(i)STELA PCR産物の残りを電気泳動にかけ、フラグメントアナライザーを使用してPCR産物を検出することが可能な陽性対照PCRと共に、フラグメントアナライザーを使用して検出した。(ii)1つのキャピラリーから生成された電気泳動図の例であり、それからPCR反応物の1つが展開された。LM=低分子量マーカー、UM=高分子量マーカー。
図2】PCRサイクル数の増加によって、生成されるHT-STELA PCR産物の量が増加し、フラグメントアナライザーでそれらを可視化することができることを示す図である。250pgのMRC5 cl.13 DNAを30μlのSTELA PCR反応物に加え、65℃のアニール温度で22、24、26または28回のPCRサイクルに供した。4μlの生成されたPCR産物を、従来のSTELA解析用(a)に取り、残りの26μlは、フラグメントアナライザーによるキャピラリー電気泳動および検出用(b)の96ウェルプレートにロードした。
図3-1】代替のXpYpテロメア隣接プライマーの設計および使用によるHT-STELA PCR産物収量の改善を示す図である。(a)多くの代替XpYpテロメア隣接プライマーを、XpYpE2と同じ領域周辺で設計した。(b)5つのXpYpテロメア隣接プライマーのすべてをSTELA PCRにおいて使用し、プライマーの性能を5つのプライマー間で比較し、さらにXpYpE2に対しても比較し、PCR効率に任意の増加があったか、またより多くのPCR産物が生成されたかどうかを判定した。(c)XpYpE2またはXpYpE5のいずれかを含有する三連のHT-STELA PCR反応物を、フラグメントアナライザーを使用する解析用の96ウェルプレートにロードした。相対蛍光単位(RFU)を使用し、それぞれの個別のPCR反応によって生成されたPCR産物の量を示した。次いで、それぞれの反応物セットの平均RFUを使用し、いずれかのプライマーを使用して生成されたPCR産物の量を決定した。
図3-2】同上。
図4】反応物当たりの投入DNAの量を増加させることにより、バンドパターンとは対照的なテロメア長分布スメアが形成されたことを示す図である。(a)1.25ng、6.25ngまたは12.5ngのHT1080 cl.5 DNAを、複製のためXpYpE5を含有する30μlのHT-STELA PCR反応物に加え、28回のPCRサイクルを行った。得られた生成PCR産物は、フラグメントアナライザーを使用して展開し、検出した。(b)DNAはCLL患者(患者ID-4408)から採取したものを使用する以外は、(a)の方法を繰り返したが、これは、より異質的なテロメア長分布を示した。1.25ng、3.125ng、6.25ng、12.5ng、25ngおよび47.5ngの4408 DNAを、複製のため30μl HT-STELA PCR反応物に加え、次いで、これを28のPCR断片に供した。生成されたPCR産物は、フラグメントアナライザーを使用して、展開し、検出した。
図5】XpYpE5およびtelテイルプライマー濃度を低下させると、生成されるHT-STELA PCR産物の量が増加することを示す図である。(a)30ngのHT1080 cl.5 DNAを、0.2μM、0.5μMまたは0.8μMのいずれかのテロメア隣接XpYpE5およびtelテイルプライマーを含有する複数の反応物に加えた。次いで、反応物から生成された、得られたPCR産物を、フラグメントアナライザーを使用して展開し、検出した。相対蛍光単位(RFU)をそれぞれの反応物について得た。それぞれの反応物セット内において、個々の反応物RFUを平均し、特定のプライマー濃度によって生成されるPCR産物の量の指標を得た。(b)HT STELA PCR反応物が異なるプライマー濃度を含む以外は、(a)の方法を繰り返した。0.05μM、0.1μMまたは0.2μMを含有する反応物セットから生成されたPCR産物を、フラグメントアナライザーで展開、検出し、反応物セットに対する平均RFUを計算した。
図6-1】従来の単一テロメア長解析(STELA)およびハイスループットSTELA(HT-STELA)によって測定された平均テロメア長の比較を示す図である。(a)HT1080およびMRC5のクローン個体群と共にCLL試料のパネルからの平均XpYpテロメア長を従来のSTELAによって解析した。平均テロメア長は、Phoretixソフトウェア(NonLinear dynamics)を使用してバンド定量によって測定し、すべての定量バンドを平均した。(b)また、同じ試料パネルからのXpYpテロメア長も、新たに最適化した条件を使用し、HT-STELAによって測定した。HT-STELAについては、平均テロメア長は、ProSizeソフトウェア(Advanced Analytical)のスメア解析機能によって個々のレーンごとに計算し、特定の試料について、すべての反応物にわたって平均テロメア長を計算した。(c)STELAおよびHT-STELAにより生成されたMTL推定値の比較である。
図6-2】同上。
図7】PCRサイクルの量を減少させると、HT-STELAにおける人工的短鎖分子の増幅と、より短いテロメアの優先的増幅が減少し、正確な平均XpYpテロメア長測定値が得られることを示す図である。(a)1μl(10.06ng)、2μl(20.12ng)および3μl(30.18ng)のHT1080 cl.5 DNAを複数のHT-STELA PCR反応物に加え、22、24、26または28回のPCRサイクルに供した。生成されたPCR産物をフラグメントアナライザーで展開し、検出した。(b)MRC5 cl.5 DNAが1μl(6.6ng)、2μl(13.2ng)または3μl(19.9ng)である以外、(a)と同じ方法を実施した。(c)30ngのHT1080 cl.2 DNAを複数のHT-STELA PCR反応物に加え、22回または23回のPCRサイクルのいずれかに供した。生成されたPCR産物をフラグメントアナライザーで展開し、検出した。平均RFU(相対蛍光単位)を使用し、それぞれのPCR反応物セットによって生成されるPCR産物の平均量を示す。それぞれの反応物セットに対する平均テロメア長(MTL)は、ProSizeソフトウェアでスメア解析を使用して計算した。UA/LA=高分子量テロメアアレルと低分子量テロメアアレルとの間のピーク高における比。
図8】最適なキャピラリー間正規化のための低分子量マーカー可視性の改善を示す図である。(a)DNF-930 dsDNA試薬キット(Advanced Analytical)に付属の0.5ng/μlの低分子量マーカー(75bp)および高分子量マーカー(20kb)と共に、単一キャピラリー内で展開された、未精製HT-STELA PCR産物の電気泳動図の例である。「UM」は高分子量マーカーの位置を示すが、200bp未満のPCRアーチファクトの存在によって、75bpの低分子量マーカー「LM」の位置がマスクされる。(b)PCR後にHT-STELA PCR産物を精製した以外は(a)と同じ電気泳動図である。(c)新しい400bpおよび15kbのNoLimits DNA断片(0.5ng/μl)と共に、キャピラリー内で展開したHT-STELA PCR産物の電気泳動図である。新しい400bpの低分子量マーカーは、望ましくないPCRアーチファクトから分離した一つの明瞭なピークを生じる。
図9】PCRサイクル数を減少させた後、ハイスループットSTELA(HT-STELA)によって測定した平均テロメア長の再解析を示す図である。(a)XpYp HT-STELA PCRを、CLL試料のパネル、ならびにHT1080およびMRC5のクローン個体群で実施した。各DNAの20~30ngDNAを30μlのHT-STELA PCR反応物に加え、次いで、これを22回のPCRサイクルに供した。得られた生成PCR産物をフラグメントアナライザーで展開し、検出した。平均XpYpテロメア長は、ProSizeソフトウェア(Advanced Analytical))のスメア解析機能によってそれぞれの個別のレーンについて計算し、特定の試料について、すべての反応物にわたり平均テロメア長を計算した。(b)STELAおよびHT-STELAにより生成されたMTL推定値の比較を示す。
図10-1】HT-STELAの変動係数の解析を示す図である(a、bおよびc)。30ngのMRC5 cl.5 DNAを、テロメア隣接プライマーXpYpE5を含有する、95×30μl複製HT-STELA PCR反応物に加え、23回のPCRサイクルに供した。生成されたPCR産物を96ウェルプレートにロードしてから、フラグメントアナライザーによって展開し、検出した。得られた提示のアウトプットゲルは、同じPCR反応物を使用したフラグメントアナライザーでの3回の独立した実行から得ている。両テロメアアレルに関するテロメア長は、ProSize(Advanced Analytical)のスメア解析ツールを使用して測定した。次いで、平均テロメア長を、全95のHT-STELA PCR反応物すべてについて計算した。変動係数(CV%)は、式CV%=(SD/MTL)*100を使用して計算し、同じ96ウェルプレート内のPCR反応物間で計算したか(それぞれのアウトプットゲルを下に記載)、または、同じPCR反応物について、3回の独立したフラグメントアナライザーの実行で展開し、検出した(表1)。
図10-2】同上。
図11】どのRFU値が不正確な平均テロメア長測定値をもたらすのかを決定するピーク高解析を示す図である。30ngのHT1080 cl.2 DNAをHT-STELA PCR反応物に加えた。次いで、これらの反応物を18、19、20、21、22または23回のPCRサイクルに供した。生成されたPCR産物をフラグメントアナライザーで展開し、検出した。相対蛍光単位(RFU)はPCR産物量を表わす。平均テロメア長は、ProSizeソフトウェア(Advanced Analytical)内のスメア解析ツールを使用して、それぞれのレーンについて計算した。Telピーク面積=ProSizeソフトウェアの電気泳動図上のテロメア長分布スメアピーク下の面積。LMピーク面積=ProSizeの電気泳動図上の低分子量マーカーピーク下のピーク面積。Telピーク面積は、Prosizeソフトウェアから得られたピーク面積値を使用し、式(Telピーク面積/LMピーク面積)*100でLMピーク面積の割合として示した。TL=テロメア長、MTL=平均テロメア長、CV%=変動係数。
図12】テロメア長分布スメアを生成するためのDNA IQプロトコルを使用するMaxwell 16装置での自動DNA抽出の最適化を示す図である。(a)STELAは、単離されたCLL細胞に対して実施した。(b)(a)と同じ細胞群の異なる量を1時間溶解させた後、DNA IQプロトコルを使用し、自動DNA抽出のMaxwell 16装置にロードした。DNAを80μlに溶出した。tel2オリゴヌクレオチド(250pM)を加えた後、このDNA/tel2混合物をHT-STELAによって解析した。生成されたPCR産物をフラグメントアナライザーで展開し、検出した。(c)DNAを、DNA IQプロトコルを使用して、4×10個の単離CLL細胞の8つの複製物から抽出した。複製物のうちの4つを40μl溶出バッファーに溶出させ(40-1~40-4)、残りの4つを80μlに溶出させた(80-1~80-4)。DNA濃度は、Nanodrop 3300蛍光分光計(Thermo scientific)を使用して測定した。(d)複製物80-4から抽出したDNAの漸増量(1μlおよび3μl& 5μl)を複数のHT-STELA PCR反応物に加え、テロメア長分布スメアを得た。(e)1μlの代わりに3μlの溶出DNAをHT-STELA PCR反応物に加える以外は、(c)の方法を繰り返した。
図13-1】慢性リンパ性白血病(CLL)患者の全血から単離したCD19+細胞の平均XpYpテロメア長の解析を示す図である。CD19+細胞は、MACS全血CD19マイクロビーズおよびAutoMACS Proセパレーター(Miltenyi Biotech)を使用して、全血から単離した。DNAは、Maxwell 16装置でDNA IQプロトコルを使用して、4×10個のCCD19+細胞から抽出した。次いで、溶出されたDNAを使用し、(a)STELAによって、または(b)HT-STELAによって、CLL患者の平均XpYpテロメア長を解析した。(c)2つの技術によって測定した平均XpYpテロメア長の比較である。
図13-2】同上。
図14-1】7q、12qおよび17p染色体末端に対するHT-STELAの開発を示す図である。多数の染色体特異的プライマーを(a)7qおよび(b)12qのテロメア隣接領域内で設計した。プライマーは、前に、(c)17pおよび(d)XpYpのテロメア隣接領域内で設計されている。HT-STELA PCRをこれらの代替テロメア隣接プライマーを用いて実施し、生成されたPCR産物をフラグメントアナライザーで展開し、検出した。平均RFU(相対蛍光単位)は、所定のテロメア隣接プライマーについてそれぞれのPCR反応物よって得られたRFUの算出平均である。プライマーの3’末端に組み込まれたテロメア特異的ヌクレオチドの識別および位置(TTAGGG反復開始に関する位置)は、それぞれのプライマーについて記載している。それぞれのプライマーのTTAGGG反復の開始位置からの距離(プライマーの長さを含む)は、フラグメントアナライザーによって生成された分子量から差し引き、テロメア隣接DNAに対して補正した実際のテロメア長を得る。またSTELAも、それぞれの染色体末端について実施した。再度、テロメア隣接DNAを差し引くことにより実際のテロメア長を計算した。
図14-2】同上。
図15-1】PCR産物収量を改善するためのHT-STELA PCRの最適化を示す図である。多数の異なる最適化実験を実施し、HT-STELA PCR産物収量を改善した。それぞれの最適化実験において、生成されたPCR産物をフラグメントアナライザーで展開し、検出した。(a)30ngのHT1080 cl.2 DNA/tel2混合物を、2mM、4mMまたは6mMのいずれかのMgClを含有するHT-STELA PCR反応物に加えた。(b)リンカーオリゴヌクレオチドtel2を、250pM、25pMまたは5pMのいずれかの最終濃度までHT1080 cl.2 DNA(10ng/μl)に加えた。30ngのそれぞれのDNA/tel2混合物をHT-STELA PCR反応に加えた。電気泳動および検出を行った後、RFU(相対蛍光単位)をProSizeソフトウェアによって測定した。RFUは、どれだけのPCR産物がフラグメントアナライザーによって検出されたかを示す。(c)30ngのHT1080 cl.2 DNA/tel2混合物を、Red Hot Taqポリメラーゼ(Thermo Scientific)またはチタニウムTaq(Clontech)のいずれかを含有するHT-STELA PCR反応物に加えた。(d)30μlのHT-STELA PCR反応物は、未希釈であるか、2×、5×および10×希釈であった。検出されたPCR産物の量は、RFU解析によって測定した。(e)30ngのHT1080 cl.2/tel2混合物を、30μlまたは60μlのいずれかの容量のHT-STELA PCR反応物に加えた。検出されたPCR産物の量は、RFU解析によって測定した。
図15-2】同上。
図16】新たに設計したプライマーを使用したHT1080 cl.2の7q、12qおよび17p染色体末端のSTELA解析を示す図である。従来のSTELAは、記載のテロメア特異的ヌクレオチドの周辺で設計されたプライマーを使用し、7qおよび12q染色体末端でHT1080 cl2.DNAを用いた。17p STELAは、以前に設計した17pseq1revを使用して実施した。PCR産物サイズの量は、Phoretixソフトウェア(Nonlinear Dynamics)を使用して定量し、続いて、平均テロメア長を計算した。
図17】HT-STELA PCRの前にEcoR1でDNAを消化すると、バックグラウンドノイズが減少し、よりクリアなHT-STELA電気泳動図が得られることを示す図である。(a)8つの末梢血試料から抽出したDNAを、2時間EcoR1で消化した。次いで、消化したDNAを三連のHT-STELA PCR反応物に加え、23回のPCRサイクルを繰り返した。同じ試料の未消化DNAを含有した並行の反応物も構築した。次いで、得られたPCR産物を、フラグメントアナライザーを使用してキャピラリー電気泳動により分離した。(b)(a)の試料3の(i)未消化DNAまたは(ii)消化DNAを増幅する1つのHT-STELA PCR反応物から生成された電気泳動図の比較を示す。
図18】PCRサイクル数およびDNA投入量の最適化を示す図である。3つの末梢血試料(1、9および11)から抽出したDNAを、2時間EcoR1で消化した。消化した後、DNAを定量し、消化したDNAの2ulまたは3ulのいずれかを3セットの三連HT-STELA反応物に加えた。三連の反応物のそれぞれのセットについて、21、22または23回のPCRサイクルを繰り返した。次いで、得られたPCR産物を、フラグメントアナライザーを使用してキャピラリー電気泳動によって展開した。平均テロメア長は、ProSizeソフトウェア(Advanced Analytical)内のスメア解析ツールを使用し、それぞれのレーンについて計算した。テロメア隣接DNA(PCRアッセイ開始位置とテロメア反復配列の開始位置との間の距離)を除き、最終平均テロメア長を得た。標準ピーク面積%は、式(Telピーク面積/LMピーク面積)*100を使用することにより計算した。式中、Telピーク面積は、ProSizeソフトウェアにおける電気泳動図上のテロメア長分布スメアピーク下の面積である。LMピーク面積は、ProSizeにおける電気泳動図の低分子量マーカーピーク下のピーク面積である。
図19】一定の強度でHT-STELAテロメア長分布スメアを得るためのDNA IQシステムのクリーンアップの最適化とDNA投入試料の正規化を示す図である。200、500、1000および2000ngのHT1080 cl.2 DNAを、DNA IQ casework proキットカートリッジ(CW)またはDNA IQ標準カートリッジ(RS)に加えた。DNAを50ul(CW)または300ul(RS)のいずれかに溶出させた。CWの精製試料については、3、6または9ulのいずれかの溶出DNAを個々のHT-STELA反応物に加えた。RS精製試料については、3、10または20ulの溶出DNAをそれぞれのHT-STELA反応物に加えた。次いで、HT-STELA反応物を23回のPCRサイクルに供し、生成されたPCR産物をフラグメントアナライザーで展開し、検出した。DNA濃度は、NanoDrop 3300蛍光分光計を使用して、ピコグリーンを用い三連で測定した。(Telピーク面積/LMピーク面積)%=(電気泳動図のテロメア長分布スメアピーク下の面積/電気泳動図の低分子量マーカーピーク下のピーク面積)*100。平均テロメア長(MTL)は、ProSizeソフトウェア(Advanced Analytical)内のスメア解析ツールを使用して、それぞれのHT-STELA反応物三連について計算した。
図20】DNA IQ Casework Proキットを使用するDNAクリーンアップと正規化手順の再現性試験を示す図である。(a)200、500または1000ngのDNAをDNA IQ casework proキットカートリッジに加えた。それぞれのDNA量の精製は4回実施した。DNAを80ul溶出バッファーに溶出させた。12ulの溶出DNAを三連のHT-STELA反応物に加え、23回のPCRサイクルに供した。PCR産物をフラグメントアナライザーで展開し、検出した。DNA濃度は、NanoDrop3300蛍光分光計を使用して、ピコグリーンを用い三連で測定した。(Telピーク面積/LMピーク面積)%=(電気泳動図のテロメア長分布スメアピーク下の面積/電気泳動図の低分子量マーカーピーク下のピーク面積)*100。平均テロメア長(MTL)は、ProSizeソフトウェア(Advanced Analytical)内のスメア解析ツールを使用して、それぞれのHT-STELA反応物三連について計算した。変動係数(CV%)は、式CV%=(SD/MTL)*100を使用して計算した。(b)個々のHT-STELA反応物から生成されたテロメア長分布スメアから計算した平均テロメア長の比較を示す。変動係数は、(a)と同様の方法で計算した。
図21-1】CLL患者の乾燥血液から抽出したDNAのFTA STELA解析を示す図である。(a)DNAは、それぞれの患者の125ul血液で飽和させたFTAカードサンプリング領域、または血液を含有していないFTAカードサンプリング領域(陰性対照)の2つの3mmパンチから抽出した。このパンチをCasework Extractionバッファー(Promega)中で振盪させながら(1400rpm)65℃で1時間インキュベートし、その後、DNAを、LEV血液カートリッジを使用して、溶出させた細胞溶解産物から抽出した。DNA濃度は、NanoDrop 3300蛍光分光計を使用して測定した。HT-STELA PCRは、反応物当たり3ulのDNAを使用して実施した。生成されたPCR産物は、フラグメントアナライザーを使用して、キャピラリー電気泳動によって展開した。平均テロメア長は、ProSizeソフトウェア(Advanced Analytical)内のスメア解析ツールを使用して、それぞれのレーンについて計算した。正規化telピーク面積%は、式(telピーク面積/低分子量マーカーピーク面積)×100を使用して計算した。ピーク面積は、ProSizeソフトウェアで明示される。(b)溶出された細胞溶解産物由来のDNAを、DNA IQ casework proカートリッジを使用して抽出する以外は(a)の方法を繰り返した。(c)(b)の方法を、回収された26名のCLL患者血液試料について繰り返した。また、STELAもこれらの患者について実施し、2つの解析方法によって計算されたMTLを比較した。
図21-2】同上。
【発明を実施するための形態】
【0051】
表-1。オリゴヌクレオチドのリスト。
【0052】
表-2。HT-STELAに関する変動係数解析。30ngのMRC5 cl5.DNAを95のHT-STELA PCR反応物に加え、23回のPCRサイクルに供した。得られたPCR産物を電気泳動にかけ、独立して3回フラグメントアナライザーで検出した。平均XpYpテロメア長は、各々のアレルの後、低分子量および高分子量アレルについて測定した。95のそれぞれのPCR反応物について、フラグメントアナライザーでのそれぞれのアッセイ後の平均XpYpテロメア長測定値間の変動を、式CV%=SD/平均MTLを使用して決定した。これは、低分子量および高分子量アレルについて実施した。
【0053】
材料および方法
オリゴヌクレオチド
オリゴヌクレオチドは、Wistar研究所(http:/www.wistar.upenn.edu/Reithman)のH.Reithmanおよび国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)から得たヒトDNA配列に基づいて設計した。オリゴヌクレオチドは、MWG-Biotech AG(Ebersberg、Germany)によって合成された。この試験で使用したすべてのプライマーを表1に示す。
【0054】
CLL細胞の単離
CD19+CLL細胞は、MACS全血CD19マイクロビーズを使用して単離した。2×10個の白血球を含有する全血の量を採取し、1×PBSで1000ulにした。次いで、20ulのMACS全血マイクロビーズを添加し、その後、完全混合し、室温で15分間インキュベートした。インキュベーション後、血液サンプルをAutoMACS Proセパレーター(Miltenyi Biotech)に充填し、CD19+細胞を、posselwbプログラムを使用して確実に選択した。
【0055】
DNA抽出
Maxwell
ゲノムDNAは、Maxwell 16 LEV DNA-IQ DNAキット(Promega)をMaxwell 16装置と共に使用し、細胞ペレットから抽出した。細胞融解は、少なくとも1時間56℃で、細胞ペレットを400μl溶解バッファーおよび10μlのプロテイナーゼKと共にインキュベーションすることによって行った。次いで、細胞溶解産物をカートリッジに充填し、Maxwell 16装置に入れた。LEVハードウェアによるフォレンジックモードを実行し、細胞溶解産物からDNAを抽出した。抽出したDNAは、40μlの溶出バッファーに溶出させた。
【0056】
フェノール/クロロホルム
3×10個を超える細胞を含有する細胞ペレットからのゲノムDNAは、標準のフェノール/クロロホルム抽出によって抽出した(Sambrook et al.、1989)。簡単に説明すると、細胞を、30μgのRNase A(Sigma;ストック10mg/ml)および60μgのプロテイナーゼK(Sigma;ストック20mg/ml)を含有する300~500μlの溶解バッファー(10mM Tris-HCl pH8、100mM NaCl、5mM EDTA pH8、0.5% SDS)中にて45℃で一晩溶解した。短時間遠心分離した後に、300~500μlのフェノール/クロロホルムを細胞溶解産物に添加し、室温で20分間回転した。混合物を5分間、13000rpmの遠心分離にかけて相を分離させ、水性相と相間相を除去し、300μlのフェノール/クロロホルムを含有するエッペンドルフに加えた。これを再度20分間回転させ、次いで、5分間、遠心分離にかけた(13000rpm)。水相を除去し、これに、30μlの3M酢酸ナトリウムpH5.3(Sigma)および900μlの氷冷100%エタノールを添加し、DNAを沈殿させた。混合物を少なくとも1時間、-20℃で静置した。短時間遠心分離した後に(13000rpm、1分)、DNAペレットを70%氷冷エタノールで洗浄し、マイクロフローフード中で風乾した。次いで、DNAを10mMのTris-HCl pH8に再懸濁させた。
【0057】
DNAの定量
DNA濃度は、以前開示されているHoechst 33258蛍光測定法(Baird et al.,2003)により、またはNanodrop 3300蛍光分光計(Thermo scientific)を使用することにより、三連で測定した。簡単に説明すると、等量のQuant-iT Picogreen dsDNA試薬(Life Technologies)2倍稀釈液とDNAを混合し、5分間、室温でインキュベートした。2ulを台座に載せ、蛍光を測定した。次いで、蛍光測定値は、既知の量のDNAを使用し構築した標準曲線を用いて、DNA濃度に変換した。
【0058】
STELA PCR
DNAを、250pMのTel2リンカーを含有する10mMのTris-HCl(pH8)中で250pg/μlに希釈した。複数の10μl反応物を、1×Taqバッファー(75mM Tris-HCl(pH8.8)、20mM (NH4)SO4、0.01%Tween-20)(Abgene)、2mM MgCl2、1.2mM dNTP、テロメア特異的プライマー(0.5μM)、telテイルプライマー(0.5μM)、および1U Taq/PWO(Abgene/Roche)をそれぞれ含有する試料ごとに(典型的には6試料)10:1の比でセットアップした。1μl DNA/tel2混合物(250pg)を各反応物に添加した。次いで、これらの反応物を次の条件:94℃(20秒)、65℃(30秒)、68℃(8分)で22サイクルを使用し、Bio-Rad DNA Engine Tetrad(登録商標)サーマルサイクラーにおいてサイクルを実施した。
【0059】
HT-STELA PCR
DNAを、250pMのTel2リンカーを含有する10mMのTris-HCl(pH8)中で10ng/μlに希釈した。複数の30ul反応物を、1×Taqバッファー(75mM Tris-HCl(pH8.8)、20mM (NH4)SO4、0.01%Tween-20(Abgene)、2mM MgCl2、1.2mM dNTP、テロメア特異的プライマー(0.2μM)、telテイルプライマー(0.2μM)、および1U Taq/PWO(Abgene/Roche)をそれぞれ含有する試料ごとに(典型的には3~5試料)10:1の比でセットアップした。3μlのDNA/tel2混合物(30ng)を各反応物に添加した。次いで、これらの反応物は、次の条件:94℃(20秒)、65℃(30秒)、68℃(5分)の23サイクルを使用し、Bio-Rad DNA Engine Tetrad(登録商標)サーマルサイクラーにおいてサイクルを実施した。
【0060】
ゲル電気泳動
DNA断片は、循環冷却系によって4℃に冷却された1×TAE中に浸漬した長さ40cmの0.5%Tris-アセテート-EDTAアガロースゲルを使用して展開した。1×フィコールベースのローディング色素(5%ブロモフェノールブルー、5%キシレン、15%フィコール)を含有する4ulのSTELA PCR反応物をゲルに充填し、16時間、120Vでゲルの距離を電気泳動させた。
【0061】
キャピラリー電気泳動
30ulのHT-STELA PCR反応物を、96ウェルプレート(試料プレート)に、1ウェル中75bp~15kbのラダーと共にロードした。すべてのウェル中に低分子量マーカー(400bp)および高分子量マーカー(15kb)マーカーをあわせたものが22ul入っている別の96ウェルプレート(マーカープレート)にもロードした。両プレートを、1.1mlの1×インレットバッファーが入ったディープ96ウェルプレートと共に、フラグメントアナライザーに入れた。次いで、マーカーDNA断片およびHT-STELA PCR断片の両方を、次の条件:プレラン(6kV、30秒)、マーカー注入(1kV、10秒)、試料注入(4kV、50秒)、分離(6kV、120分)を使用し、0.001×インターカレートゲルを含有するDNF-930 dsDNAゲルを通して展開した。
【0062】
サザンブロッティング
展開したSTELA PCR産物を6分間、脱プリンバッファー(0.25M HCl)中で2回ゲル洗浄することによって脱プリン化した。すすいだ後、次いで、ゲルを15分間、変性バッファー(1.5M NaCl/0.5M NaOH)で洗浄した。その後、DNAを、4~6時間、変性バッファーを用いるアルカリ性サザンブロッティングによって正荷電膜(Hybond XL,Amersham)上に移した。
【0063】
プローブ標識およびハイブリダイゼーション
プローブ合成
TEバッファー(10mM Tris-HClおよび1mM EDTA)中の25ngプローブDNAおよびラダー(1kb:2.5kbは1:1)を、Ready-To-Go DNA標識ビーズ(GE Healthcare)を使用し標識した。このキットは、[α-33P]dCTPで標識されているランダムヘキサプリン(hexaprime)を使用し、標識プローブを生成する。
【0064】
ハイブリダイゼーション
ブロッティングした後、膜をHOですすぎ、その後、チャーチバッファー(0.5Mリン酸ナトリウムバッファー(1Mリン酸水素二ナトリウムおよび1Mリン酸二水素ナトリウム)、1mM EDTA、1%BSA、7%SDS、pH7.2)中で15分間、プレハイブリダイゼーションを行った。放射性標識プローブ25μlをハイブリダイゼーションボトルに加え、次いで、これを60℃で一晩静置し、ハイブリダイズさせた。
【0065】
未結合プローブの除去
未結合プローブを除去するため、膜を60℃で数回、0.1×塩化ナトリウムクエン酸ナトリウム(SSC)/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を用いて洗浄した。次いで、洗浄したブロットを60℃で約30分間、ハイブリダイゼーションオーブンで乾燥させた。
【0066】
放射性標識ブロットの可視化
放射性標識したサザンブロットを、24時間、ホスホイメージャースクリーン(Amersham)を備えたカセットに置いた。次いで、ホスホイメージャースクリーンを、Typhoon 9410 biomolecular imager(GE healthcare)を使用してスキャンした。
【0067】
DNAテンプレート消化
末梢血は、接触活性化ランセット(BD)を使用して健常者から得た。DNAは、DNA IQ casework proキットカートリッジを使用して末梢血試料(300μl)から直接抽出し、50μl溶出バッファー(Promega)に溶出させた。抽出したDNAは、EcoR1を使用して消化した。簡単に説明すると、17.3μlのDNAを、RE 1×バッファー、アセチル化BSA(1ug/μl)およびEcoR1制限酵素(5U)を含有する20μl反応物に加えた。次いで、反応物を2時間37℃でインキュベートし、続いて65℃で5分間インキュベートして制限酵素を加熱不活性化した。消化後、次いで、NanoDrop 3300蛍光分光光度計(Thermo Scientific)を使用して定量し、約10ng/ulに希釈した。
【0068】
HT-STELA
250pMのTel2リンカーを、それぞれ消化したDNAに加えた。3つの30ul反応物を、1× Taqバッファー(75mM Tris-HCl(pH8.8)、20mM (NH4)SO4、0.01% Tween-20)(Abgene)、2mM MgCl2、1.2mM dNTP、XpYpCプライマー(0.2μM)、telテイルプライマー(0.2μM)、および1U Taq/PWO(Abgene/Roche)をそれぞれ含有する試料につき10:1の比率でセットアップした。2μlまたは3μlのDNA/tel2混合物のいずれかを、それぞれの反応物に加えた。次いで、これらの反応物を、次の条件:94℃(20秒)、65℃(30秒)、68℃(5分)の21、22または23サイクルを使用して、Bio-Rad DNA Engine Tetrad(登録商標)サーマルサイクラーでサイクルを実施した。
【0069】
キャピラリー電気泳動
30μlのHT-STELA PCR反応物を、96ウェルプレート(試料プレート)に、1ウェル中75bp~15kbのラダーと共にロードした。低分子量マーカー(400bp)および高分子量マーカー(15kbまたは20kb)マーカーをあわせたものが22ul入っている別の96ウェルプレート(マーカープレート)にもロードした。両プレートを、1.1mlの1×インレットバッファーが入ったディープ96ウェルプレートと共に、フラグメントアナライザー(AATI)に入れた。次いで、マーカーDNA断片およびHT-STELA PCR断片の両方を、次の条件:プレラン(6kV、30秒)、マーカー注入(1kV、10秒)、試料注入(4kV、75秒)、分離(6kV、120分)を使用し、0.001×インターカレートゲルを含有するDNF-930 dsDNAゲルを通して展開した。
【0070】
DNA IQシステムを使用するDNA正規化
ゲノムDNAを400μlの溶解バッファーに直接添加し、次いで、これをDNA IQ casework proキットカートリッジまたはDNA IQ標準試料キットカートリッジ(Promega)にロードし、Maxwell 16装置に置いた。DNA IQ casework proキットにおいては、DNAは、フォレンジックモードを使用し、低溶出量(LEV)ハードウェアで抽出した。DNAは、80μlの溶出バッファーに溶出させた。標準試料キットにおいては、DNAは、フォレンジックモードを使用し、標準溶出量(SEV)ハードウェアで抽出した。このキットにおいては、抽出DNAは、300μl溶出バッファーへ溶出させた。
【0071】
乾燥血液スポットからのDNA抽出
125μlの血液をFTAカード試料ターゲット上にピペットで移し、一晩静置して空気乾燥させた。2つの3mmパンチを各々の乾燥血液スポットからカットし、40μlの10mg/mlプロテイナーゼKおよび360μlのcasework抽出バッファー(Promega)を用いて振盪しながら(1400rpm)65℃でインキュベートした。パンチおよび上清の両方をエッペンドルフチューブに入れたスピンバスケット(Promega)に加え、これを2分間12000rpmで遠心分離することによって、溶出された細胞溶解産物をストリッピングされたFTAカードパンチから取り出した。次いで、細胞溶解産物をDNA IQ casework proキットカートリッジ(Promega)にロードし、Maxwell 16装置に置いた。LEVハードウェアによるフォレンジックモードを実行し、細胞溶解産物からDNAを抽出した。抽出したDNAは、50μl溶出バッファーに溶出させた。
【0072】
HT-STELAおよびFTA STELA
250pMのTel2リンカーを、それぞれの抽出DNAに加えた。3つの30μl反応物を、1× Taqバッファー(75mM Tris-HCl(pH8.8)、20mM (NH4)SO4、0.01%Tween-20)(Abgene)、2mM MgCl2、1.2mM dNTP、XpYpCプライマー(0.2μM)、telテイルプライマー(0.2μM)、および1U Taq/PWO(Abgene/Roche)をそれぞれ含有する試料ごとに10:1の比率でセットアップした。4μlのDNA/tel2混合物を各反応物に添加した。次いで、これらの反応物は、次の条件:94℃(20秒)、65℃(30秒)、68℃(5分)の23サイクルを使用して、Bio-Rad DNA Engine Tetrad(登録商標)サーマルサイクラーでサイクルを実施した。
【0073】
キャピラリー電気泳動
30μlのHT-STELA PCR反応物を、96ウェルプレート(試料プレート)に、1ウェル中75bp~15kbラダーと共にロードした。すべてのウェル中に低分子量マーカー(400bp)および高分子量マーカー(15kb)マーカーをあわせたものが22ul入っている別の96ウェルプレート(マーカープレート)にもロードした。両プレートを、1.1mlの1×インレットバッファーが入ったディープ96ウェルプレートと共に、フラグメントアナライザー(商標)に入れた。次いで、マーカーDNA断片およびHT-STELA PCR断片の両方を、次の条件:プレラン(6kV、30秒)、マーカー注入(1kV、10秒)、試料注入(4kV、75秒)、分離(6kV、120分)を使用し、0.001×インターカレートゲルを含有するDNF-930 dsDNAゲルを通して展開した。
【0074】
統計分析
STELAバンドの定量化
Typhoon 9410を使用してスキャンしたゲルは、続いて、Molecular dynamics ImageQuant 5.0(GE)を使用し解析した。各々のSTELAサザンブロット上の個々のテロメア分子量は、Phoretix 1D ソフトウェア(Nonlinear dynamics)を使用し、計算した。次いで、平均テロメア長測定値を計算した。
【0075】
HT-STELA - データ解釈および統計解析
フラグメントアナライザーからのアウトプットデータは、ProSizeソフトウェア(Advanced Analytical)で見られた。データを解析する際、以下のピーク解析設定を適用した:ピーク幅-50秒、最小のピーク高-25RFU、谷から谷までのベースラインなし。ベースライン設定値は、各々の試料について手動で決定した。平均テロメア長は、ProSizeソフトウェア内のスメア解析機能を使用して計算した。スメア範囲は、各々の試料について手動で設定した。平均テロメア長は、各々の試料反応物セット内のすべての反応物に対するスメア解析結果から計算した。
【0076】
結果
フラグメントアナライザー(商標)によるSTELA産物の検出
STELA PCRは、HT1080線維肉腫細胞株(HT1080 cl.2)のクローン個体群から抽出したDNAを使用して実施した。このDNAは、CLL患者において確認されているものと同様のXpYpでの同質テロメア長プロファイルを示すので使用した。XpYpテロメアに関するオリジナルのSTELA方法の反応条件に基づいて、250pgのDNAを30μlのSTELA PCR反応物に添加し、これを、65℃のアニール温度を使用する22回のPCRサイクルに供した。各反応物4μlを標準のSTELA解析に使用し、残りのPCR産物をフラグメントアナライザー(商標)(Advanced Analytical;図1)を使用して展開し、検出した。オリジナルの方法では、STELA PCR産物は、プローブを含有する放射性標識テロメアリピートのアニーリングによって容易に検出される(図1a)。しかし、PROSize(商標)ソフトウェア(Advanced Analytical)で生成されたデジタルゲル画像から明らかなように、これらの同じPCR産物は、フラグメントアナライザー(商標)で蛍光的に検出するのに十分であるほど豊富ではない(図1b(i))。生成されたPCR産物の電気泳動を行ったキャピラリーの1つの電気泳動図からは、STELA PCR産物から生成されるすべての蛍光シグナルが欠如していることがさらに確認される(図1b(ii))。低分子量マーカーおよび高分子量マーカーは、STELA PCRで形成される200bp未満の多量のアーチファクトとともにはっきりと目視される。したがって、STELA PCR条件では、テロメア長分布がキャピラリー電気泳動(フラグメントアナライザー(商標)を使用)によって確実に検出され得る改良が必要であった。
【0077】
フラグメントアナライザー(商標)でSTELA PCR産物を直接的に検出する条件の改良
オリジナルのSTELA条件ではフラグメントアナライザー(商標)によって検出しようとするPCR産物が十分ではなかったので、生成されるPCR産物の量を増加させ、それによってフラグメントアナライザー(商標)で測定されるシグナル強度を増加させるよう、多くの要因について最適化を行った。
【0078】
サイクル数の増加
生成されるSTELA PCR産物の量を増加させる最初の試みは、PCRサイクル数を増加させることであった。MRC5繊維芽細胞クローンの個体群から抽出した250pgのDNAを複数の30μlのPCR反応物に加え、22、24、26または28サイクルのいずれかに供した(図2)。反応物を22または24回のいずれかのPCRサイクルに供した場合、少量のSTELA-PCR産物が生成されたが、これらの産物の強度は、フラグメントアナライザー(商標)を使用してそれらを検出するのには十分ではなかった(図2aおよび図2b)。しかし、STELA PCR反応が26回繰り返された場合、多量のPCR産物が生成され、STELAサザンブロット上でより強くハイブリダイズするバンドが生じた。これは、フラグメントアナライザー(商標)を用いて多数のバンドを検出するのに十分であった(図2aおよび図2b)。28サイクルに供した反応物は、STELAブロットおよびフラグメントアナライザー(商標)アウトプットゲルの両方でより高い強度を示し(図2aおよび図2b)、オリジナルの方法を用いて検出したすべてのDNA断片を検出することができた。したがって、その後のHT-STELA PCR反応物は、22回のサイクルではなく、28回のサイクルを行った。
【0079】
代替XpYpテロメア-隣接プライマー
STELA PCR中に生成されるPCR産物の量を増加させるために行った別の手法は、PCR増幅効率を増加させることであった。これを実施するために、本発明者らは、オリジナルのSTELA方法のテロメアDNAを増幅させるために使用したテロメア隣接プライマーに注目した。XpYpE2は、XpYpテロメアの開始点から408ヌクレオチドに存在する。多数の同様のプライマーをこの領域の周辺で設計し、STELA PCRにおいてXpYpE2を置き換えて使用してPCR効率を高め、それによって、生成されるPCR産物の量を増加させようと試みた。5種類の追加プライマーを設計した(E3、E4、E5、E6およびE7)(図3a)。オリジナルのSTELA方法をこれらの各々のテロメア隣接プライマーを用いて実施したところ、すべてのテロメア隣接プライマーの中でXpYpE5が最も強いバンドパターンを生じ、このプライマーが最も高いPCR効率を付与することが示唆していることが明らかであった(図3b)。PCR効率におけるこの増加がフラグメントアナライザー(商標)によっても検出されるか否かを確認するため、XpYpE2およびXpYpE5によって生成されるPCR産物の差を比較する同様の実験を実施した。PROSize(商標)ソフトウェアによって得られる相対蛍光単位(RFU)は、PCR産物のシグナル強度を反映し、その結果、産生されるPCR産物の量を反映する。オリジナルのSTELA方法において確認されたように、XpYpE5プライマーは、XpYpE2と比べ、より効率的なPCRと、より多くのPCR産物の生成をもたらす(図3c)。XpYpE5を使用した場合、平均相対蛍光は430.3単位であり、XpYpE2を含有するSTELA PCR反応によって達成された相対蛍光(244.3RFU)のほぼ2倍であった。したがって、その後のHT STELA PCRは、XpYpE2に対してXpYpE5を使用し実施した。
【0080】
投入DNA量の増加
サイクル数の増加およびテロメア隣接プライマーの変更に加えて、PCR産物のシグナル強度を増加させるために行った別の手法は、各々のSTELA-PCR反応での投入DNA量を増加させることであった。この手法の目標は2通りであった。より容易な蛍光検出を可能にするより多くのPCR産物を生成するということだけでなく、バンドパターンとは対照的なテロメア長分布「スメア」を生成するということも試みた。テロメア長分布スメアが有益である理由は多数ある:PROSize(商標)ソフトウェア内のデータ解析において人間が介入する必要がほとんどないため、平均テロメア長の解析をより迅速に行うことができる;試料当たりの反応物がより少量ですむ;それによって、産物の全量が増加し、存在する非特異的バックグラウンドバンドがサイジング解析に組み込まれないことが確実である。
【0081】
DNA量滴定を使用し、STELA PCR反応に加えるDNAの最適量を決定した。オリジナルのSTELA方法においては、濃縮ストックDNA試料から10ng/μl希釈液が調製される。1μl(10ng)をこの希釈液から取り出し、tel2リンカーオリゴヌクレオチドを含有する40μlのTris-HCl(pH8)に加えた。次いで、このDNA/tel2混合物の1μl(250pg)を各PCR反応物に加えた。フラグメントアナライザー(商標)では、この手法によって、28回のPCRサイクル後にのみ、かすかなバンドパターンが得られた(図2b)。フラグメントアナライザー(商標)を使用してスメアとしてテロメア長分布を検出できるようにするため、DNA量を増加させてDNA tel2混合物に加えた。詳細に述べると、50ng/μl稀釈液をストックHT1080 cl.2 DNAから調製した。この希釈液の1μl(50ng)、5μl(250ng)または10μl(500ng)をDNA/tel2混合物に加えた。これらのDNA/tel2混合物の1μlを、複数の30μl HT-STELA反応物に加え、最終濃度がそれぞれ1.25、6.25および12.5ng/反応物となるようにした。生成されたSTELA PCR産物をフラグメントアナライザー(商標)によって展開、検出したところ、3つのすべての投入DNA量が可視性テロメア長分布スメアを生じた(図4a)。
【0082】
HT1080 cl.2 XpYpテロメア長分布は同質である。CLL患者由来のXpYpテロメア長分布が同質であることもまた予想されるが、STELAによるXpYpテロメア長分布がCLL患者のパネルで研究された以前の研究では、テロメア長の異質性が患者間で多少変動することが明らかであった。したがって、HT1080 cl2などの同質のテロメア長分布に対しテロメア長分布スメアを作成する投入DNAの量は、より異質なXpYpテロメア長分布を示す試料でスメアを必ずしも生じさせるものではない。このことを試験するため、異質性XpYpテロメア長分布を示すCLL患者(4408)由来のDNA試料を選択した。この患者由来のDNAを、1.25~47.5ng/反応物の範囲の投入DNA滴定に使用した(図4b)。HT1080 cl2細胞群においてテロメア長分布スメアを生じた投入DNA量は、患者4408に対して同様のスメアは生成せず、代わりに、明確なバンドパターンが確認された。反応物中のDNA量が25ng以上のDNAに増加された場合、テロメア長分布は、このCLL試料においてスメアとして展開された(図4b);このスメアはシグナルが強く頑健であり、再現可能であった。
【0083】
HT-STELA PCR反応物中のプライマー濃度の減少
多くの他の要因を、HT-STELA PCR産物のシグナル強度を高めるため変更した。これらは、さらにPCR反応量を増加させること、PCR反応物を希釈すること、MgCl2濃度を変化させること、およびTaqポリメラーゼを変更することを含んでいる(図15)。これらの変更はいずれもフラグメントアナライザー(商標)でのPCR産物の相対蛍光を増加させなかったが、PCR反応物中のプライマー濃度を減少させるとPCR産物の形成が増加した。オリジナルのSTELA反応条件において、最終プライマー濃度は0.5μMである。プライマー滴定は、0.2、0.5および0.8μMのプライマー濃度を使用して実施した。各々の反応物セットによって得られた平均相対蛍光を比較した場合、0.2μMのXpYpE5およびtelテイルを含有する反応物が0.5および0.8μMプライマーを含有する反応物よりも多くのPCR産物を生成することが明らかであった(図5a)。プライマー濃度が減少した場合にPCR産物形成の増加が確認されたので、プライマー滴定をさらに拡大し、より低いプライマー濃度を組み入れた(0.05~0.2μM)。しかし、プライマー濃度をさらに減少させた場合、PCR産物の形成は増加しなかった。0.1μM XpYpE5およびtelテイルを含有したPCR反応物は、0.2μMのプライマーを含有する反応物と同様のレベルでPCR産物を生成した。PCR産物の形成は、プライマー濃度が0.1μM未満に減少するにつれて低下し始めた(図5b)。したがって、その後のHT-STELA PCR反応は、0.2μMのXpYpE5濃度およびtelテイル濃度で実施した。
【0084】
フラグメントアナライザー(商標)を使用する平均テロメア長サイジング精度の最適化
フラグメントアナライザー(商標)で検出される頑健で再現可能なテロメア長分布スメアを得るための条件を最適化したら、次にHT-STELA技術のサイジング精度をオリジナルのSTELA方法と比較した。HT-STELAおよびSTELAは、CLL試料のパネル、ならびに、HT1080(cl5)細胞株およびMRC5(cl5)細胞株のクローン個体群に対して実施した(図6)。オリジナルのSTELA方法は、平均テロメア長と、試料間のXpYpテロメア長分布の異質性のレベルの両方において、予想した高い変動性を示した(図6a)。MRC5 cl.5 DNAの有用な特徴は、二頂性のXpYpテロメア長分布を示したことであり(Baird et al.,2003)、2つのアレルについてのテロメア長分布を個別に増幅し展開することが成功するかどうかの判定において、フラグメントアナライザー(商標)の展開試験を提供した(図6a)。
【0085】
STELA PCR産物の定量は、Phoretixソフトウェアを使用して実施し(図6c;NonLinear Dynamics)、平均テロメア長の計算により、1.29kb(CLL試料4065)から8.598kb(CLL試料4521)まで変動したことが明らかになった(図6c)。試料の同じパネルを、新たに最適化した条件を使用したHT-STELAによって解析した場合、すべての試料についてテロメア長分布スメアが生成された。しかし、テロメア長分布スメアの強度は試料間で異なり、反応物セット間におけるPCR効率の差が示唆された(図6b)。これに関する1つの解釈としては、PCR産物形成におけるこの変動が各々の反応物セットに対する投入DNA量の差に起因し得るという可能性があったことである。しかし、反応物当たりの投入DNA量を比較した場合、これは、フラグメントアナライザー(商標)アウトプットゲル上で確認されたシグナル強度の差とは相関していない(図6b)。別の解釈としては、パネルのDNA試料が、PCR産物形成に影響を及ぼし得る異なるレベルのPCR阻害物質を含有し得る可能性があるということである。
【0086】
HT-STELAとオリジナルのSTELA方法との相関は絶対ではなく、実際、最適な関係は線形ではなかった(R2=0.83;図6c)。結果を図6cにまとめている。特にCLL試料4521の場合のような長いテロメアに関して、平均テロメア長測定における大きな不一致がSTELAとHT-STELAの間に存在することが明らかであった(図6)。オリジナルのSTELA方法では、HT1080 cl5 XpYpテロメアは同質のテロメア長分布を示したが、この同じDNAをHT-STELAによって解析した場合、弱いけれどもかなり異質な分布が存在することが明らかであった(図6a~図6b)。さらに、MRC5 cl5は、明瞭な二頂性のXpYpテロメア長分布を示す(図6a)。しかし、HT-STELAによる解析では、アウトプットゲルで低分子量アレルのテロメアアレルのみが検出される。したがって、この試料について平均テロメア長を測定した場合、低分子量アレルのみが示された。平均テロメア長は、ProSizeソフトウェア(Advanced Analytical)内のスメア解析機能によって測定した。全体として、これらの不一致は、HT-STELAによって測定した場合、平均で892bpまでテロメア長が小さく評価された。これは、予後判定の設定においてこの技術を使用する場合に問題となる。
【0087】
フラグメントアナライザー(商標)でHT-STELAを使用してテロメア長分布を検出する能力は大幅に改良されたが、より長いテロメア長分布の喪失に対処する必要がある。正確に予後判定するためには、平均テロメア長を迅速に、しかし正確に決定する必要があり、したがって、HT-STELAの精度を改良するためのステップが取られた。
【0088】
サイクル滴定
10.06ng、20.12ngまたは30.18ngのHT1080 cl.5 DNAを含有するHT-STELA PCR反応物が22~28回のサイクルで繰り返されるサイクル滴定を実施した(図7a)。生成された産物サイズの異質性はPCRサイクルの回数に依存することが明白であった。3セットすべてのHT-STELA PCR反応物を22回のPCRサイクルに供した場合、オリジナルのSTELA方法によって測定された平均テロメア長に非常に類似した平均テロメア長(5.822kb)の同質テロメア長分布が確認された(図6a)。24サイクルのPCRでは、10.06ng、20.12ngまたは30.18ngの反応物セットに対して、それぞれ263bp、264bpおよび365bpの平均断片長の減少が生じた(図7a)。さらにPCRサイクル数を増加させた場合、平均テロメア長にさらに大幅な減少が生じ、28回のPCRサイクル後、1μl、2μlおよび3μlの反応物セットは、PCR反応が22回繰り返された場合よりも小さい1.741kb 1.659kbおよび2.079kbの平均テロメア長測定値を有していた。フラグメントアナライザー(商標)アウトプットゲルから、3つのすべての反応物セットにおいて、テロメア長分布スメアは、より小さなPCR産物の数が増加して生成されるにつれて下方に拡大され、これが平均テロメア長で著しく小さく評価されたことを引き起こしたことは明らかである。図7で確認された28回のPCRサイクル後の平均テロメア長測定値は、CLL4パネルと共に測定した際のHT1080 cl.5の平均テロメア長測定値(3.618kb)に非常に似ていた(図6c)。これが、前に試験した試料のパネルCLLで確認された平均テロメア長測定値の不正確であったことの原因であり得ることが、このことから示唆される(図6)。これらのデータは、サイクル数が多い非テロメア産物の増幅と一致している。
【0089】
さらに、本発明者らは、異なるDNA量を含有する異なる反応物セット間の平均テロメア長における変動量が、反応が繰り返されるほど増加することに留意した。22回のPCRサイクル後、10.06ngのDNA(図7aのi)および30.18ngのDNA(図7aのiii)を含有するHT-STELA PCR反応物間の差は、254bpである。しかし、28回のサイクル後、この差は592bpであった。この方法がCLL患者のDNAに対して試験される場合、HT-STELA反応物への投入DNAの濃度におけるこうした差は時々生じる可能性がある。28回とは対照的に22回のサイクルで使用する場合、システム内の変化は小さくなり、試料間の平均テロメア長の信頼性のより高い比較が得られた。
【0090】
また、MRC5繊維芽細胞株のクローン個体群(クローン5)由来のDNAを使用したサイクル滴定も試みたところ、このクローンは、二アレル性のテロメア長分布を示すが、HT-STELAを使用して解析した場合、単一のテロメア長分布が検出された(図6)。6.6ng、13.2ngまたは19.8ngのMRC5 cl.5 DNAを含有する3つの反応物セットを構築した。次いで、これらの反応物を22、24、26または28回のPCRサイクルに供した(図7b)。これらの実験から、サイクル数および投入DNA量の両方が、得られた分布に影響を及ぼしたことが明らかであった。2μlおよび3μlの反応物セットでは、28回から22回にサイクル数が減少すると、高分子量テロメアアレル(UA)と低分子量テロメアアレル(LA)との間のピーク高さの比が改善され、結果として、22回のサイクルでは予測した1:1のアレル比に近い比が得られたが、28回のサイクルでは、比は1:10であった。また、UA/LA比も、1μlの反応物セットにおいてサイクル数を28回から22回まで減少させることにより改善された。22回のサイクルでは、UA/LA比は1:1.282であった(図7b(i))。28回のサイクル後、比は1:2.522であり、これは2μlと3μlの反応物セットほど高くはなく、このことは、アレル間の比も、投入DNA量によって影響を受け、投入DNA量が減少するとアレル増幅の比が改善されることが示唆される。これらのデータは、サイクル数およびDNA濃度の増加に伴って明白になる、より短いテロメアの優先的増幅と一致している。したがって、サイクル数および投入DNAの両方を減少させることによって、テロメア長分布がより良好に表わされる。
【0091】
22回のサイクルによって頑健なテロメア長プロファイルが生じることは明らかであったが、総シグナルは比較的低く、テロメアサイジングが不正確になる下限に近かった(後で(図11)において定義したとおりである)。したがって、サイクル数は、平均テロメア長測定に影響を及ぼすことなく生成されるPCR産物の量を増加させるので、23回に増やした(図7c)。
【0092】
総合すれば、これらのデータは、PCRサイクル数を減少させると、人工的増幅は少なくなり、異質性は少なくなり、テロメア長分布がより正確に表わされることを示している。また、これは、投入DNA量を最適化することによって、よりさらに改良される可能性があることも示した。
【0093】
マーカー最適化
HT-STELA方法でのサイジングの不正確性をもたらし得るもう一つの原因は、キャピラリー間の正規化に使用されるDNF-930 dsDNAキット(Advanced Analytical)に付属の低分子量マーカー(75bp)および高分子量マーカー(20kb)である。STELA-PCR中に、サイズが200bp未満の多くの断片が生成されるが、これらはプライマー複合体およびプライマー二量体から構成されている。フラグメントアナライザー(商標)に対するこれらの断片の強度は、低分子量の75bpマーカーの位置をマスクし、このマーカーの同定を困難にしている(図8a)。これが、STELA産物の不正確な正規化、およびその後の不正確なテロメア長測定をもたらした。この問題を解決するために、多くの方策がとられた。まず、PCR精製を、試みとして96ウェルプレートQIAquickカラム(Qiagen)を使用して実施し、これらのより小さなDNA断片を除去した。この精製によって200bp未満のかなりの量の断片が除去されたが、完全にそれらを除去するには不十分であり、同じ問題がそのままである(図8b)。さらに、PCR精製は試料間で一貫しておらず、PCR産物由来の一部のテロメアも除去されるため、それらのシグナル強度が低下した。したがって、この低分子量マークの検出を妨げる断片を精製することは不可能であり、この方策はそれ以上追求されなかった。
【0094】
代替手法は、フラグメントアナライザー(商標)でHT-STELAに適するようにマーカーをカスタマイズすることであった。本発明者らは、大きなプライマー複合体および大きなプライマー二量体の200bpよりも大きなサイズであるが、XpYpE5プライマー(415bp)またはXpYpCプライマー(882bp)を使用するSTELAで生成されたテロメアの最小断片サイズよりも小さなサイズである低分子量マーカーを使用した。したがって、この目的のために、市販の400bp DNA断片(NoLimits,Thermo Scientific)を取得した。また、高分子量マーカーもSTELA用にカスタマイズした。本発明者らのCLLコホートまたは結腸直腸がん腫瘍試料24、27で確認された最長の平均テロメア長よりも5kb以上大きい、15kbを選択した。この15kbマーカーは、DNF-930キットに付属の20kbマーカーよりも小さいので、ゲルマトリックス中で良好に展開され、その結果、サイジングが改良される。これらのマーカーDNA断片を混合し、DNF-930キット内で供給されている75bpマーカーおよび20kbマーカーと同一濃度に希釈し(0.5ng/μl)、次いで、STELA PCR反応物と共にフラグメントアナライザー(商標)で展開した(図8c)。電気泳動図によって、新しい400bpマーカーは、プライマー複合体およびプライマー二量体とは異なる明確な単一ピークとして表されることが明らかであった(図6c)。15kbの断片の展開は、DNF-930キットで提供される20kbマーカーと比べ、改良された。これらのカスタムマーカーと一緒に、HT-STELA産物の展開に使用する場合、フラグメントアナライザー(商標)でのキャピラリー間の正規化が可能になる。
【0095】
最適化されたDNA投入、サイクル数およびカスタムマーカーを使用する平均テロメア長の再解析
HT-STELA PCR条件をこの方法のサイジング精度を改善するため変更したのち、CLL試料ならびにMRC5(cl.5)およびHT1080(cl.5)のクローン個体群の追加パネルの平均テロメア長を解析した(図9)。それらの試料に対し強く頑健なテロメア長分布スメアが得られた。MRC5 cl.5は明瞭な二アレル性テロメア長分布を示し、HT18080 XpYpテロメアは、オリジナルのSTELA方法で見られたものと同様の同質分布を形成した(図9a)。HT-STELAで決定した平均テロメア長を、オリジナルのSTELA方法と比較した。これによって、STELAとHT-STELAとの間に非常に有意な線形相関があり、2つの方法の間の変動は非常に小さいことが明らかになった(p<0.0001;R2=0.97;図9b)。HT-STELA条件を調整する前は、STELAとHT-STELAとの関係は直線的でなく(図6c)、2.5kbを超える平均テロメア長の正確な測定は不可能であった。しかし、条件の変更により、STELAとHT-STELAとの間の直線関係が得られ、解析したテロメア完全長範囲内のテロメア長を正確に決定することができた。
【0096】
変動係数
本発明者らは、アッセイ間およびアッセイ内の変動係数を計算することによって、HT-STELAシステム内の測定誤差を決定した。これを行うため、本発明者らは、同一のMRC5 cl.5 DNA試料にHT-STELAを適用した。各反応物は30ngのDNAを含有し、95の個別のSTELA反応物および1つの分子量マーカーを含有する1枚の96ウェルプレート全体にわたって、22回のPCRサイクルに供した。プレートは、フラグメントアナライザー(商標)を使用して3回解析した(図10)。アッセイ内変動係数は、フラグメントアナライザー(商標)の3回のそれぞれの泳動について決定し、1.04%から1.51%の範囲であり、平均は1.29%であった(図10)。アッセイ間変動係数は、1.23%と決定された(表2)。全体として、システム内の固有の変動は非常に少なく、この手法を使用して、頑健で再現可能なテロメア長測定を確実に行うことができることを意味する。
【0097】
品質管理
この技術がオリジナルのSTELA方法で確認された高レベルのテロメア長測定精度を維持していることを保証するため、HT-STELAアッセイに品質管理手段を組み込むことが重要であった。この点に関して、HT-STELAによって生成されたアウトプットデータの重要な局面は、それぞれのテロメア長分布スメアに対して付与されるフラグメントアナライザー(商標)で検出可能な相対蛍光単位(RFU)によって定義されるような、生成総シグナルであった。
【0098】
平均テロメア長測定の信頼性が低くなる下限のRFU限界を決定するため、PCRサイクル滴定を実施した:HT1080 cl.2 DNAをHT-STELA反応物に添加し、次いで、これを18~23回のPCRサイクルに供した。この実験の背後の論理的根拠は、PCRサイクル数が減少するにつれて、生成されたPCR産物の量が減少し、それによって、RFU値も減少するということであった。それゆえ、テロメア長測定が不正確になる点をモニターすることができる。HT1080 cl.2テロメアスメアのシグナル強度は、サイクル数減少の関数として減少し、18サイクル後にテロメアシグナルは検出することができなかった。サイクル数21と23の間で、頑健なシグナルが得られ(27~65RFUの間)、テロメア長の推定値は一致していた(図11)。シグナルは、19~20サイクルでよりさらに減少し、8~12RFUになった。テロメアスメアを検出することはできたが、スメアのピーク強度はバックグラウンドのピーク強度に類似しており、平均テロメア長推定値は没した(図11)。したがって、本発明者らは、信頼性の高いテロメア長推定値を提供する最低のシグナルは25RFUであると考えた。
【0099】
ピークRFU値は、生成および検出されたPCR産物の量を示すが、いくつかの理由により、これは必ずしも一致しているとは限らない:第1に、RFUは異なるフラグメントアナライザー装置間で変動が生じる。第2に、RFU測定は電気泳動図のピークの最高点から行われる。テロメア長分布の異質性、したがって、電気泳動図上のテロメアスメアピークの幅は考慮されない。したがって、RFUシグナルがより分散されている頑健な異質性テロメア長分布は、それらのピークの高さが同質性分布の場合よりも低いので、廃棄され得る。この疾患のXpYpテロメア長は同質であることが示されているので、これはCLL患者において問題を過度に提起しないかもしれないが、テロメア長の異質性をより多く示す他のがんに同一判定基準を適用する場合に、いっそう関係してくる。
【0100】
異質性テロメア長分布を識別することなく、HT-STELA中に許容可能なPCR産物形成の下限値を決定するために使用することができ、異なるフラグメントアナライザー間で一致し得る単位を同定することが必要であった。テロメア長分布ピーク下の面積(Telピーク面積)は、フラグメントアナライザーによって検出されるHT-STELAのPCR産物をすべて入れるので、より適切なPCR産物形成の手段を提供することができる。しかし、同一装置間の変動性の問題が依然として存在しており、正規化が必要であった。電気泳動工程および検出工程における不変物の1つはマーカーであった。任意のマーカーを選択し一貫して使用することができるが、低分子量マーカーピーク面積(LMピーク面積)などのマーカーピーク面積値によってテロメアスメアピーク面積値を正規化すると、フラグメントアナライザー間の試料プレートのシグナル検出の差がマーカープレート上の低分子量マーカー間と同じ検出差によって反映されるので、こうしたあらゆる変動は無効にされる。さらに、同一アッセイ内でのわずかなキャピラリー間のPCR産物の検出変動も解決される。この手法はサイクル滴定実験に適用され(図11)、前述のように、HT-STELA PCR反応物を21~23回のPCRサイクルに供した場合、テロメア長の一定の推定値が得られた。また、これらのPCR反応に対して、Telピーク面積/LMピーク面積の割合が高かった(25.87~61.02%の間)。20サイクル未満にサイクル数を減らすと、テロメア長推定値が低下し、Telピーク面積/LMピーク面積の割合も大幅に減少した(<8%)(図11)。したがって、品質管理手段として使用する場合、本発明者らは、システムにおいて使用される低分子量マーカーが0.5ng/μlの濃度であり、10秒間1kVのマーカー注入であるときに、信頼性の高いテロメア長推定値を提供する最低のTelピーク面積/LMピーク面積の割合が25%であると推定されると考察した。
【0101】
Maxwell DNA IQ - DNA抽出
フラグメントアナライザー(商標)を使用し、多くのCLL患者において平均テロメア長を測定する高速のハイスループット方法を提供する。STELAの重要な1つの局面は、DNAの抽出および正確な定量である。フェノール/クロロホルム抽出に基づいた標準プロトコルは時間を要するが、これは、DNAが迅速に自動抽出されるように開発された様々な方法によって大部分は解消されている。しかし、制約要因の1つは、それぞれ抽出したDNAの定量と、それに続く、この方法のPCR工程前の標準的の規定濃度への希釈に関する要件である。定量工程は、定められた量のDNAを抽出するように設計された抽出システムによって解消することができる。本発明者らは、Maxwell 16自動DNA抽出システム(Promega)で実行されるDNA IQ Casework Proキット(Promega)を試験した。このシステムは、細胞調製物から100ngのDNAを吸収するように較正される常磁性ビーズを利用する;したがって、このシステムが飽和される限り、等量のDNAが各々の試料から抽出されるはずである。
【0102】
本発明者らは、最初に、100ngのDNAが抽出することができ、一定のHT-STELAプロファイルを提供することができるCLL B細胞の最低数を決定した。CLL患者の血液試料から単離した様々な数のCLL B細胞(5×10、1×10、1.6×10、5×10、2×10、5×10、1×10および2×10)(図12a)を回収し、1時間溶解させ、DNA抽出用のMaxwell装置のDNA IQ Casework Proキットにロードした。DNAを溶出バッファー80μlに溶出させ、tel2オリゴヌクレオチドを250pMの最終濃度で溶出バッファーに直接添加した。HT-STELAをDNA/tel2混合物で実施し、PCR産物を展開し、フラグメントアナライザー(商標)で検出した(図12b)。より多くの細胞数から抽出されたDNAと比べ、1×10細胞および5×10細胞からの抽出DNAからはより少量のPCR産物が生成されたが、このことは、この細胞数がDNA IQシステムを飽和するのに十分なDNA(100ng)を含有していないことを示唆している。XpYp HT-STELAを2×10細胞~6×10細胞から抽出したDNAで実施した場合、比較的一定のテロメア長プロファイルが得られたが(図12b)、バンドの数、したがって8×10個以上から抽出したDNAの量は減少するようであり、この細胞数は、DNA IQシステムにとっては多すぎ、実際に、100ngのDNAの抽出を阻害することを示唆している。DNA IQシステムは、4×10細胞で飽和しているようである。この細胞量から十分なDNAが抽出され、頑健なHT-STELAプロファイルが提供されるので、この細胞数をその後の使用のために選択した。さらに、この細胞数は比較的少ないため、少量の試料を確実に解析することができる。
【0103】
DNA IQシステムが飽和される細胞数が決定されたなら、この細胞数から抽出したDNAを使用するHT-STELA方法の再現性を評価した。DNAは、4×10個のCLL細胞ペレットの8つの独立した複製物から抽出した。8つの複製物のうち、4つの複製物から得たDNAを40μlの溶出バッファーに溶出させ、他の4つは80μlに溶出させ、DNA濃度を1/2に低下させた。HT-STELAは、溶出したDNAを使用して実施した(図12c)。比較的一定したテロメア長分布プロファイルが40μlの溶出複製物間で、および80μlの溶出複製物間で確認され、80μlの溶出物に比べて、40μlの溶出物において、より強いバンドパターンが確認された。Nanodrop 3300(Thermo Scientific)によって得られた40μl溶出複製物に関するDNA濃度は全体的に高かったが、80μl溶出液の2倍の濃度ではなかった;このことから、DNAの溶出は、80μlと比べると、40μlでは効率がよくないことが示唆された。
【0104】
DNA IQシステムからの異なる溶出複製物から抽出したDNAを使用して得た、比較的一定したテロメア長分布は有望であったが、これらは、所望のテロメア長分布スメアとは対照的なバンドパターンを含有してなっていた。このスメアを達成する試みにおいて、投入DNA滴定は、複製物(80-4)の1つに由来するDNAを使用して実施した:1μl、3μlまたは5μlを複数のHT-STELA PCR反応物に添加した(図12d)。反応物当たり1μlのDNAを添加する場合、図12cに示したものと同様のバンドパターンであることが明らかであったが、投入DNAが3μlおよび5μlに増加した場合、頑健なテロメア長分布スメアが確認された(図12d)。次いで、1μlに対して3μlのDNAをPCR反応物に加える以外は、HT-STELAを4×10個の複製物のすべてについて繰り返した(図12e)。すべての複製物に関するすべてのPCR反応物にわたって、頑健なテロメア長スメアがバンドパターンの代わりに生成された。これらの実験によって、本発明者らは、DNA IQシステムを最適化し、頑健なHT-STELAスメアを提供することができた。
【0105】
CLL患者コホートにおけるHT-STELAの検証
本発明者らは、15のCLL試料のコホートにおいてHT-STELAシステムを試験した。血液試料を取得し、MACS全血CD19マイクロビーズおよびAutoMACS Proセパレーター(Miltenyi Biotech)を使用してCD19+細胞を精製した。次いで、単離細胞を、VI-細胞装置(Beckman Coulter)を使用してカウントし、4×10個の細胞ペレットにアリコートした。細胞ペレットを1時間溶解させ、DNAを、DNA IQプロトコルMaxwell 16装置(Promega)を使用して溶解産物から抽出し、40μl溶出バッファーに溶出させた。この溶出DNAの一部をSTELAによって解析するために取り(図13b)、残りをHT-STELA解析に使用した。簡単に説明すると、tel2リンカーオリゴヌクレオチドを溶出DNAに250pMの最終濃度で添加し、3μlのDNA/tel2混合物を、0.2uMのXpYpE5を含有する30μlのHT-STELA PCR反応物に加え、23回でサイクルを行った。PCR産物は、フラグメントアナライザー(商標)を使用して展開し検出した(図13a)。それぞれの反応物について、ProSizeソフトウェア内のスメア解析機能を使用して平均XpYpテロメア長を測定し、それぞれの患者につき3つの複製物について得られた平均テロメア長を合計し、平均して最終的なXpYp平均テロメア長を得た。オリジナルのSTELA方法については、Phoretixソフトウェア(Nonlinear Dynamics)を使用してバンド定量を実施し、続いて、平均XpYpテロメア長を計算した。次いで、両技術によって測定した平均テロメア長を比較した(図13c)。ProSizeソフトウェアからのアウトプットゲルは、XpYpテロメア長分布スメアが、試験した15の試料のうち14について生成されたことを示す。重要なことには、RFU値はすべて、本発明者らが正確で再現可能なテロメア長が測定され得る下限値として定義した、25RFU閾値よりも大きかった。HT-STELAとオリジナルのSTELA方法により生成されたテロメア長分布は、非常に類似しており(図13aおよび図13b)、長さの推定値は有意に相関していた(R2=0.97;図13c)。
【0106】
STELAをテロメア長融合性閾値と共に使用して決定されるXpYpテロメア長に基づく患者の階層化は、CLL患者に対して高解像度の予後判定情報を提供する(Lin et al.,2014)。CLL患者の血液試料から頑健なテロメア長プロファイルの生成までのHT-STELA方法は、全体で、7.5時間以内に実施することができる。HT-STELAの開発によって、CLL患者、ならびに予後判定閾値が有益である他の腫瘍タイプを有する患者の日常的な予後判定評価へのこの技術の適用が速やかに促進される。
【0107】
追加染色体末端でのHT-STELA
再現可能なHT-STELAアッセイがXpYp染色体末端に対して開発されると、この技術を追加染色体末端での平均テロメア長が測定できるように開発した。特定の染色体末端に対する特異性を得るために、テロメア隣接のプライマーは、3’末端にテロメア特異的ヌクレオチドを組み込むように設計した。プライマーが高レベルの配列相同性を示す他の染色体端の他のサブテロメア配列にアニールした場合には、ミスマッチが生じ、TaqポリメラーゼのPCR反応におけるプライマーからの伸長ができなくなり、それ故、他のテロメアからPCR産物を産生することができないので、これは、1つの染色体末端に特異性を付与する設計パラメーターである。このプライマーの設計手法を使用し、7q染色体末端および12q染色体末端のテロメア隣接領域に対して多数のプライマーを設計した。17pテロメア隣接領域に特異的ないくつかのプライマーは、追加のXpYp特異的プライマーのように既に利用可能であった。これらのプライマーをXpYpE5と同一条件下で試験し、それぞれの染色体末端に対してHT1080 cl.2 DNAを使用して、テロメア長分布スメアを生成することができるどうかを決定した(図14)。
【0108】
7q染色体末端では、7q特異的ヌクレオチドの1115T、551A、195G、および程度は低いが29Gの周辺で設計したプライマーは、頑健なテロメア長分布スメアを生成した(図14a)。ProSizeソフトウェアでスメア解析ツールを使用して計算した断片の平均分子量は、テロメア反復配列の開始位置から距離に依存した、想定される増加を示した。プライマーからテロメア反復配列の開始位置までの距離を差し引くことにより、これらのテロメア長分布スメアから平均テロメア長を計算した場合、テロメアの開始位置からの距離に関係なく、同様の平均テロメア長推定値が得られた。HT-STELAによる7qテロメア長の推定値は、オリジナルのSTELA方法により決定されたものと同程度であった(図14a;図16)。
【0109】
また、12q染色体末端のHT-STELAの開発も、設計したプライマーの一部で成功した。プライマー350Gおよび550T(それぞれ、TTAGGG反復から350ヌクレオチドおよび550ヌクレオチド)は、同程度のRFU値を有するテロメア長分布スメアを生成した。7qと同様に、HT-STELAによって計算した12qの平均テロメア長は、オリジナルのSTELA方法を使用し計算した平均テロメア長に非常に類似していた(図14b)。1388G 12q特異的ヌクレオチドの周辺で設計したプライマーは、非常に弱いテロメア分布を生じた。これに関するRFU値は、信頼性をもって提供する平均テロメア長測定値としては低すぎるので、今後の実験においては使用しない。
【0110】
17p染色体末端のテロメア隣接領域に特異的であるプライマーは、既に設計されているが、さらなる8つのプライマーを、テロメア反復配列から6877bpまで伸長して設計した。HT-STELAで試験したテロメア反復から3843bpまでのすべてのプライマーは、テロメア増幅と一致するスメアを生じた(図14c)。3843bp(17p8)を除き、HT-STELAスメアを定量することができた。17p8で生成されたスメアは、15kbの高分子量マーカーに近接しすぎていたので定量できなかった。再度、テロメア反復配列の開始位置からのプライマーの距離の関数として増幅産物の分子量に明らかな増加があり、これにテロメア-隣接配列の減算をした後、平均6.5kbの5つの異なる17pプライマーから17pテロメア長の一定の推定値が得られた(図14c)。興味深いことに、この推定値は、オリジナルのSTELA方法で得られた値よりも大きかったが、5つの個別のプライマーは同じ長さをもたらすので、本発明者らは、HT-STELAは、プライマー17pseq1revを使用するオリジナルのSTELA方法と比べ、より頑健なテロメア長の推定値を示すと考察した。本発明者らは、これが、オリジナルのSTELA方法でテロメアプロファイルを検出するのにサザンハイブリダイゼーションを使用することと、使用されるTTAGGG反復配列またはハイブリダイゼーションプローブにハイブリダイズしないテロメア変異体反復が存在することに関係している可能性があると推測している。またこれらのデータは、頑健なHT-STELAプロファイルが、テロメア反復配列の開始位置から少なくとも3.843kbまでのプライマーを使用して生成されることを示している。すべての17p特異的プライマーは、テロメア反復路から1ヌクレオチドに位置した17pseq1Bを除き、頑健なテロメア長分布を生じた。このプライマーをHT-STELAにおいて使用した場合、頑健なテロメアの増幅とは一致していない、ハシゴ状の分布が認められた(図14c)。興味深いことに、テロメア隣接プライマーの性能は、それがテロメア反復路から30ヌクレオチド未満に位置している場合に低下するようである。7q29Gおよび17pseq1Bは両方とも、それらのそれぞれの染色体末端のテロメア反復路からさらに離して設計された他のプライマーと比べ、性能が不十分であった。
【0111】
XpYpテロメア隣接プライマーの成功は、17pテロメアで確認されたものと比べ、より多様であった。XpYpMおよびXpYpO(それぞれTTAGGGから1653ntおよび1625nt)、またはテロメアから4.8kbよりも大きいプライマーXpYpD、XpYpF、XpYpHおよびXpYpIはすべて、PCR産物を少しも生成しなかった(図14d)。予想通り、XpYpE5は、オリジナルのSTELA方法を使用して生成されたものと同様の平均テロメア長を有するテロメア長分布スメアを生じた。XpYpB(テロメアから2539bp)は、予想されるサイズのスメアを生じる。また、XpYpCは同様のテロメア長分布を生じたが、RFU値はXpYpE5よりも高く、XpYpCはXpYpテロメア産物の生成においてより効果的であり、したがって、XpYpCは、その後のXpYp HT-STELAに、XpYpE5の代わりとして使用可能であることを示唆している(図14d)。XpYpJもまたテロメア長分布スメアを生成したが、それは非常に弱かった。7q29Gおよび17pseq1Bと同様に、XpYpJはテロメア反復路から30nt未満に位置し、頑健なテロメア長分布スメアは生成することができなかった。このことから、テロメアを十分に増幅することができるプライマーを設計することができないTTAGGG反復路からの下限距離が存在することが示唆される。
【0112】
これらのデータは、HT-STELAをさらなる染色体末端に適用することができ、テロメア反復配列の開始位置から少なくとも3.843kb以下のプライマーが頑健なテロメアプロファイルを生じることを示している。しかしまた、テロメアの30bp以内のプライマーでは、効果的増幅または特異的増幅が生じないことも明らかであった。
【0113】
標的増幅の簡素化
上記で詳述した正常個体の末梢血由来試料において確認されたテロメア長は、終了点から0~25kbまたはそれ以上の異なった範囲の長さであるという検討すべき異質性を示し得る。これは、時に、テロメアのPCRに基づく増幅に対して特定の問題を示すことがあり、その結果、より短いテロメアはより長いテロメアよりも効率的に増幅して平均テロメア長が過小評価される可能性がある。
【0114】
こうした状況において、本発明者らは、HT-STELAの前に、制限酵素を用いてDNAを予備消化するという概念を試験した。その考えは、非テロメアDNAを消化することによって投入DNAの煩雑性を低減し、増幅用の簡素な標的を提供するというものである。
【0115】
DNA試料を抽出し、材料および方法で詳述したように、制限酵素を用いて消化した。酵素の選択は、増幅しようとするテロメア反復配列の性質に依存し、オリゴヌクレオチドプライマーの5’末端と染色体テロメア末端との間をそれが切断しないことを保証する必要がある。原理の証明として、EcoR1は、HT-STELAに使用されるXpYpCプライマーの5’末端とテロメア反復配列との間のDNAを切断せず、それにより、非テロメア遺伝子座と他のテロメアは切断され得るが、XpYpテロメアは切断されないまま維持されるので、これを選択した。また他の酵素も、この特異的要件に適合し得る。
【0116】
EcoR1消化DNA試料、またはEcoR1未消化DNA試料をHT-STELAに供し、フラグメントアナライザー(AATI)で解析した(図17)。HT-STELAの前のEcoR1消化によって順調にバックグラウンドシグナルが減少し、テロメアスメアがより明確になることが明白であった。
【0117】
増幅に関する条件を試験するため、PCRサイクル数およびEcoR1で消化した投入DNA量を滴定することにより、さらなる実験を実施した(図18)。これらの実験から、25ngの投入DNA量および21~23回のPCRサイクルが最適であることが明らかであった。
【0118】
予備精製したDNA試料に対するHT-STELAの調節
上記の方法論は、血液学的腫瘍または固形腫瘍のいずれかから得られた、新鮮な細胞/凍結細胞および組織試料におけるテロメア長の解析のために確立された。本発明者らは、次に、代替のDNA試料プラットフォーム、特に予め抽出したDNA試料を使用して、この技術を探索する能力を探求した。予め抽出したDNA試料の解析能力によって、例えば、多くは入手可能な腫瘍DNA試料のみを有する臨床治験からの患者コホートの解析が可能になることにより、または、実際には、任意の保管されているDNA試料の解析が可能になることにより、HT-STELAの有用性が拡大する。
【0119】
DNA IQシステムがDNAによって飽和される条件を決定した。これを実施するため、漸増するHT1080 cl2 DNA量(200、500、1000および2000ng)をDNA IQ溶解バッファーに添加し、Maxwell装置(Promega)の標準プロトコルを使用してDNAを抽出した。これを2回実施した:1回はDNA IQ casework proキット(CLL細胞ペレットからDNAを抽出する際に使用)を使用し、また、DNA IQ標準キットを使用した(図19)。この2つのキットは、低溶出量(LEV)プロトコルがcasework proキットと共に使用されるのに対し、標準溶出量(SEV)プロトコルは標準試料キットと共に使用される点で異なる。DNAをcasework proキットを使用して80μlに溶出させ、標準試料キットを使用して300μlに溶出させる。
【0120】
次いで、異なる量の溶出DNAをHT-STELA反応で試験した。casework proキット試料に関しては、3、6または9μlのいずれかの溶出DNAを、DNA IQシステムに加えたそれぞれの投入DNA量に対して加えた。標準試料キットに関しては、溶出量がより大きいため、3、10および20μlの溶出されたDNAをHT-STELA反応物に加えた。再度、これをDNA IQシステムに加えたそれぞれのDNA量について実施した。次いで、HT-STELA反応物を前述の条件と同じ条件下でPCRに供し、得られたPCR産物をフラグメントアナライザー(商標)(Advanced Analytical;図19)を使用し、キャピラリー電気泳動によって展開した。
【0121】
DNA IQ casework proキットカートリッジに加えたDNAの量は、得られるテロメア長の分布スメアにほとんど影響を及ぼさなかった。システムに200、500、1000または2000ngを加えたかどうかにかかわらず、得られたテロメア長の分布スメアは、MTLおよび正規化telピーク面積%の両方の点で類似しているように思われた。このことは、200ngがシステムに加えられた時点で既に飽和点にあることを示唆している(図19a)。最終的なテロメア長分布スメアに対してより影響した要因は、HT-STELA反応物に加えた溶出DNAの量であった。HT-STELA反応物に加えたDNA量の増加は、それぞれのDNA量セット、および両キットのタイプに関するテロメア長分布スメアのシグナル強度の増加によって反映される。DNA IQ casework proキットに関しては、投入DNA量にかかわらず、6μl以下の量の溶出DNAをHT-STELA PCR反応に添加した場合、本発明者らが前に品質閾値として定義した下限25%閾値よりも高い正規化telピーク面積%を有するテロメア長分布スメアを生成するのには、十分といえない。9μlの溶出DNAをHT-STELA反応物に加えることによって、より頑健なテロメア長分布スメアが生成されたが、これは、500ngの試料を除き、下限正規化telピーク面積%閾値を上回った。9μlの複製物のすべてから得られたMTLは、6.368kbのHT1080 cl2陽性対照MTLに匹敵する、6.084~6.357kbの範囲であった。
【0122】
DNA IQ casework proキットとは異なり、DNA IQ標準試料カートリッジに加えた投入DNA量は、HT-STELAアウトプットゲル上で確認されるテロメア長分布スメアに影響を及ぼした(図19b)。200ngの投入DNAから溶出させたDNAをHT-STELA反応物に加えた場合、どのくらいの量のDNAを反応物に加えたかにかかわらず、かろうじて検出可能なテロメア長分布スメアが得られた。投入DNA量が500ng以上に増加した場合にのみ、テロメア長分布スメアが明瞭になった。しかし、これは、10μl以上の溶出DNAがHT-STELA反応物に含まれていた場合にのみ生じた。このことから、標準試料キットを使用するDNA IQシステムはこれらのDNA量の使用で飽和されないことが示唆される。25%の正規化telピーク面積下限閾値を超える十分なシグナルを生成した唯一のHT-STELA反応物は、2000ngのDNA投入から溶出されたDNAの20μlをHT-STELA反応物に加えた場合であった。これは、強度が十分で、正確なMTL(6.224kb)を有するHT-STELAシグナルを生成したが、信頼性の高いシグナルの生成に非常に多量のDNA(2000ng)を必要とするので、これらの条件は実用的ではない。したがって、DNA IQ casework proキットで実施したDNAの正規化が、DNA IQ標準試料キットに比べ好適であった。
【0123】
本発明者らのデータは、200ngを超える投入DNAを含んだDNA IQ casework proキットからの溶出DNA9μlを加えたところ、正確なMTLを生じ、25%下限telピーク面積%閾値を上回るテロメア長分布が生じたことを示した。しかし、telピーク面積%は、下限25%閾値をわずかにだけ上回っていた(平均26%)。こうした理由から、またシステムの再現性を試験するため、200ng、500ngまたは1000ngのDNAのいずれかをDNA IQ casework proシステムに加えたフォローアップ実験を実施した(図20a)。それぞれのDNA量は4回繰り返した。HT-STELAアッセイのシグナル強度を高め、それにより頑健性を高める試みにおいて、以前に使用した9μlの代わりに、12μlの溶出DNAをHT-STELA反応物に加えた。次いで、HT-STELA反応物をPCRにかけ、得られたPCR産物をキャピラリー電気泳動によって展開した。図20aは、DNAの増加が、telピーク面積%の増加とともに、アッセイをより頑健にしたことを示している。繰り返しのうちの2つ(200-3および200-4)については、この値は、下限25%閾値よりわずかに下であるが、残りの繰り返しについては、その値は閾値を超えている。telピーク面積%の範囲は、24.44~41.63%の範囲で増加し、平均は34%であったが、9μlの溶出DNAを反応物ごとに加えた場合、範囲は19.04~27.2%で、平均は26%であった。
【0124】
正規化DNA試料から生成されたPCR産物から測定したXpYpの平均テロメア長は、正確に5.868kb~6.106kbの範囲であり、これは、陽性対照HT1080 cl2 DNAの5.956kb測定MTLにかかっている。このMTL範囲は、全体の変動係数が1.65%であった(図20b)。投入DNA量の繰り返し間のCV%は同様に非常に低く、200ngでは1.397%、500ngでは2.152%、1000ngでは1.473%であった。
【0125】
これらの実験をまとめると、200ng以上のDNAを含有するDNA試料は、Maxwell 16 DNA抽出システムと併用のDNA IQ casework抽出キットを使用して正規化することができ、それにより、DNA定量に要する時間の必要性がなくなることを示している。さらに、12μlのこの溶出DNAをHT-STELA反応物に加えると、非常に正確な平均テロメア長が測定可能な、頑健で信頼性の高いテロメア長分布スメアを生成することができる。
【0126】
DNA試料カードに向けてのHT-STELAの調整
また本発明者らは、試料カード(例えば、Whatman(登録商標) FTA/FTA Eluteカード)に保存された血液試料を解析することができるHT-STELAの調整について検討した。FTAカードは、その後の下流でのDNA解析用の血液試料にとって都合のよいサンプリングと保存を行う、一般に用いられているフォーマットである。これは、テロメア検査を必要とし得る患者に、臨床医または採血者を必要とすることなく、自宅で試料を用意するための迅速な方法を提供する。少量の血液試料をFTAカード上にスポットし、次いで、標準の郵便サービスによって検査施設に返送する。またこれは、FTAカードに保存されている試料を有するトライアルコホートの解析においても有用性がある。
【0127】
システムを試験するため、3人のCLL患者由来の血液125μlをFTAカードにスポットし、一晩空気乾燥させた。3人の患者は、異なる白血球(WBC)数を有していた;患者71は、45×10細胞/mlのWBC数を有していたが、患者74は、6×10細胞/mlの数を有しており、患者75は、101×10細胞/mlのWBC数を有していた。異なるWBC数を有する患者でこの手順を試みる背景の論理的根拠は、十分な細胞、すなわち、信頼性が高く頑健なテロメア長分布スメアの生成に十分な抽出DNAを提供する、下限WBC数に関する指標を提供することであった。
【0128】
DNAは、casework抽出バッファー(Promega)を使用し、乾燥させた血液スポットの2つの3mmパンチから1400rpmで振盪しながら、65℃で1時間抽出した。次いで、溶出した血液細胞溶解産物を剥離パンチから分離し、LEV血液キットを使用し、Maxwell自動DNA抽出システムでDNAを抽出した。陰性対照のパンチも含んでいた(血液を含まないFTAカード)。プロトコル(Promega)に記載されているように、LEV血液カートリッジをDNA抽出に使用し、DNAを50μl溶出バッファーに溶出させた。3μlの溶出DNAを前述と同様の方法で、それぞれのHT-STELA反応物に加えた。次いで、これらの反応物を23回のPCR増幅に供し、フラグメントアナライザー(商標)(Advanced Analytical;図21a)でDNA断片を展開した。予想通りに、陰性対照はPCR産物を生成しなかった。しかし、テロメア長分布スメアが、患者71および患者75の乾燥血液から抽出したDNAから生成された。このFTA-STELA方法を使用したこれら患者の算出平均テロメア長(MTL)は、STELAによって測定したMTLに非常に類似していた:患者71では、FTA-STELAのMTLは、STELAにより測定した4.169kbと比べ、3.889kbであった。同様に、患者75では、FTA-STELAで得られたMTLの2.036kbは、STELA MTLの1.856kbと非常に類似していた。患者74では、テロメア長分布プロファイルを生成することができなかった。これは、頑健なテロメア長プロファイルの生成に必要とされる4×10細胞よりは少ないけれども、この乾燥血液スポットの2つの3mmパンチ上の細胞数が7.5×10細胞を含有すると推測されるため、低WBC数(6×10細胞/ml)によるものとは思われず、検出可能なプロファイルを生成するのに十分なDNAが存在していたはずである(図12b)。あるいは、この否定的な結果は、実験内に生じた技術的な問題によるものかもしれない。患者71および患者75の乾燥血液スポットの2つの3mmのパンチ上の細胞数は、5.63×10細胞および1.575×10細胞であると推測された。細胞数のこの差は、溶出DNAの濃度における差(71-8.793ng/μl、75-70.113ng/μl)だけでなく、2人の患者のテロメア長分布スメアのtelピーク面積%においても反映されている(71-44.79%、75-138.89%)。
【0129】
溶出DNAの濃度、およびテロメア長分布スメアから生成されたtelピーク面積%の両方における大きな差は、解析した異なる試料間で確認された(図21a)。したがって、本発明者らは、FTAカード抽出物からの溶出DNAを正規化する試みにおいて、DNA IQ Casework Proキットを試験した。本発明者らは、以前に、DNA IQシステムを飽和し、したがって、DNA濃度を正規化することがわかった細胞数は4×10であることを示した。本発明者らは、WBC数が32×10細胞/mlである患者由来の乾燥血液スポットの2つの3mmパンチ上にこの細胞数が存在するであろうと推測した。しかしまた、WBC数が16×10細胞/mlのように低い患者からもテロメア長分布スメアを生成することができる可能性があると思われ、こうした患者から得た2つの3mmFTAカードパンチが、本発明者らが以前に示したHT-STELAプロファイルを生成するための細胞数である2×10細胞を含有すると推測した(図12b)。これを試験するため、さらなる患者:WBC数が20×10細胞/mlの患者89を解析に入れた。DNAを、この患者の乾燥血液スポットから抽出するとともに、患者71および患者75と一緒に、患者91(WBC数-69×10細胞/ml)のFTA試料から抽出した。患者74は、テロメア長プロファイルがSTELA、HT-STELAまたはFTA STELAで達成されなかったので、除外した。
【0130】
溶出DNAの濃度は、DNA IQシステムがそれぞれの試料から溶出したDNAが順調に正規化されたことを示している(図21b)。そのDNA濃度は4.576~6.027ng/μlの範囲であり、LEV血液キットを使用してDNAを抽出した場合に確認された範囲よりも低い範囲であった。テロメア長分布スメアは、4つのすべての溶出DNA試料から生成された(図21b)。これら4つのテロメア長分布スメアのうち、3つは頑健で、telピーク面積%については25%下限閾値を超えていた。これらの頑健なテロメア長分布のうちの1つは、患者89(WBC数-20)の乾燥血液から抽出されたDNAから生成されており、このことは、WBC数が32×10未満の患者がFTA-STELAによって測定されるXpYp MTLを有し得ることを示唆している。FTA-STELAに関するWBC数の下限値は依然未知ではあるが、今後のアッセイで解明されることが期待される。患者89に対してFTA-STELAによって測定したMTLは2.962kbであり、STELAによって測定したMTL(2.75kb)と非常に類似していた。患者71および患者75のFTA-STELA MTLも同様に正確であった:患者71のFTA-STELA MTLは、STELAによって測定した4.169に対し、3.889kbであった。同様に、患者75の2.068kbのFTA-STELA MTLは、1.856kbのSTELA MTLと非常に類似していた。
【0131】
患者91の乾燥血液スポットから抽出されたDNAからは、低いtelピーク面積%を反映して、それほど強くないテロメア長分布スメアが生成された(図21b)。シグナル強度の低下によって、平均XpYpテロメア長を測定する際の精度が低下することと、生物学的な複製間の変動も大きくなることは前に示している(図11)。6.293kbのFTA-STELA MTLは、5.008kbのSTELA測定値と比べ著しい過大評価であるので、この試料では、実際、MTL測定での精度の低下が見られた。
【0132】
FTAカードに保存されたCLL患者血液試料から頑健なテロメア長プロファイルを生成することに成功したので、本発明者らは、CLL患者における平均XpYpテロメア長を精度よく測定するFTA-STELA能力を試験するため、より大がかりな研究に着手した。FTA STELAをSTELAと並行してCLL患者のコホートで実施し、両技術によって測定した平均XpYpテロメア長を比較した。合計で、DNAは26名のCLL患者の乾燥血液から抽出した。FTA-STELAを実施し、測定して得たMTLを、HT-STELAで生成したMTLと比較した(図21c)。両技術により決定したMTL間で明瞭な相関が確認され(R2=0.9084)、FTA-STELAを使用して、CLL患者での平均XpYpテロメア長を精度よく測定することができることが示唆された。
【0133】
本発明者らは、HT-STELA方法がFTAカードに保存された血液試料の解析に適用でき、この方法が他のカード系の試料保存システムにも適用可能であることを明らかにした。この適応は、患者が標準の自己サンプリングキットを使用し、解析のための検査施設にこれらを直接に送ることができることにより、HT-STELA方法にさらなる著しい有用性を提供する。これは、血液試料の取得および上流での処理の点において、大幅なコスト削減を提供する。
【0134】
要約
テロメア機能障害を表すテロメア長解析は、ヒト疾患における高度な予後判定ツールを提供し、処置後の臨床転帰についての重要な識別を可能にする。さらに、予後判定能力によって、臨床医は、これらの疾患の臨床経過を確信して予測し、それに応じて処置を調整することができるはずである。
【0135】
したがって、ハイスループット状況においてテロメア長を測定するための信頼性の高い方法は、臨床医がテロメア短縮疾患を決定、管理および処置する能力に大きく寄与するものである。
【0136】
参考文献
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【0137】
【表1-1】
【0138】
【表1-2】
【0139】
【表2】
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7
図8
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図10-2】
図11
図12
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図13-2】
図14-1】
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図15-1】
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図16
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【配列表】
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