(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】マスカラ塗布用ブラシ、マスカラ塗布用ブラシを収容する収容容器、および、マスカラ塗布用ブラシの使用方法
(51)【国際特許分類】
A45D 34/04 20060101AFI20220805BHJP
A45D 34/00 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
A45D34/04 515E
A45D34/00 510Z
(21)【出願番号】P 2018016539
(22)【出願日】2018-02-01
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000248602
【氏名又は名称】株式会社篠原
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】袴田 信子
【審査官】高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-009942(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0184512(US,A1)
【文献】特開2010-029567(JP,A)
【文献】特開2009-125160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
A45D 34/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスカラを付着させる多数の繊維の端により芯線の基端部の回りに
、前記芯線を中心に円弧を形成し、縦断面において
中心をオフセットしながら下方に連れて漸増する円弧の輪郭を有し、
前記円弧が連なって形成され
る面が前記芯線に沿って形成される第1の塗布部と、
前記第1の塗布部に連なり、前記芯線の基端部から離隔した位置で該芯線の回りに、横断面において前記
円弧の輪郭を有し、該
円弧が連なって形成され
、縦断面において所定の頂角を有す
る略円錐面が形成される第2の塗布部と、
前記芯線を挟んで前記第1の塗布部および前記第2の塗布部に向かい合い所定の傾斜角をもって前記芯線の基端部から先端部まで延びる直線に沿った輪郭を有する第3の塗布部と、
を含むマスカラ塗布用ブラシ。
【請求項2】
前記略円錐面の頂角は、10°以上45°以下の範囲の値に設定され、前記直線の傾斜角は、3°以上15°以下の範囲の値に設定されることを特徴とする請求項1記載のマスカラ塗布用ブラシ。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のマスカラ塗布用ブラシと、
前記マスカラ塗布用ブラシを支持するステムを有するキャップと、
前記マスカラ塗布用ブラシおよび前記キャップのステムが通過する開口部を有する首部と、該首部の開口部に連通しマスカラを収容する収容部とを備える容器本体と、
を具備して構成されるマスカラ塗布用ブラシを収容する収容容器。
【請求項4】
マスカラを付着させる多数の繊維の端により芯線の基端部の回りに
、前記芯線を中心に円弧を形成し、縦断面において
中心をオフセットしながら下方に連れて漸増する円弧の輪郭を有し、
前記円弧が連なって形成される面が前記芯線に沿って形成される第1の塗布部と、
前記第1の塗布部に連なり、前記芯線の基端部から離隔した位置で該芯線の回りに、横断面において前記円弧の輪郭を有し、該円弧が連なって形成され、縦断面において所定の頂角を有する略円錐面が形成される第2の塗布部と、前記芯線を挟んで前記第1の塗布部
および前記第2の塗布部に向かい合い所定の傾斜角をもって前記芯線の基端部から先端部まで延びる直線に沿った輪郭を有する第
3の塗布部とを備えるマスカラ塗布用ブラシにおける該第
2の塗布部の端部により上睫毛の根元を立ち上げながらマスカラを塗布し、前記第
3の塗布部を動かしながら下睫毛にマスカラを塗布することを含むマスカラ塗布用ブラシの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスカラ塗布用ブラシ、マスカラ塗布用ブラシを収容する収容容器、および、マスカラ塗布用ブラシの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マスカラを睫毛に塗布するためのブラシは、通常、取っ手部材に取り付けられたステムの先端部に固定されている。そのようなブラシは、例えば、特許文献1に示されるように、芯線としての2本の金属ワイヤ相互間に配された剛毛を、2本の金属ワイヤを捻ることにより、保持した構造を有するものである。マスカラを容易に睫毛に塗布するために三角形の横断面を形成するように3つの実質的に平らな切子面を有するブラシが提案されている(
図17参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1における
図17に示されるように、平らな切子面から離隔したブラシの先端部は、円柱状に形成されているのでその先端部を使ってブラシの先端部を目頭または目尻に近接させマスカラを塗布することは容易ではない。また、上述のブラシの薄くなる直線部分(三角形の横断面の頂点を形成する輪郭が金属ワイヤに対し平行に連なる部分)を使ってマスカラを塗布する場合、目尻近傍の睫毛を掴むことができず、しかも、ブラシの他の部分によりマスカラが地肌に付着する虞もある。
【0005】
以上の問題点を考慮し、本発明は、マスカラ塗布用ブラシ、マスカラ塗布用ブラシを収容する収容容器、および、マスカラ塗布用ブラシの使用方法であって、マスカラを簡単に睫毛に塗布することができ、しかも、ブラシの先端部を目頭または目尻に近接させマスカラを容易に塗布できるマスカラ塗布用ブラシ、マスカラ塗布用ブラシを収容する収容容器、および、マスカラ塗布用ブラシの使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明に係るマスカラ塗布用ブラシは、マスカラを付着させる多数の繊維の端により芯線の基端部の回りに横断面において所定の中心角を有する略扇形の輪郭を有し、扇形の弧が連なって形成される仮想の面が芯線に沿って形成される第1の塗布部と、第1の塗布部に連なり、芯線の基端部から離隔した位置で芯線の回りに横断面において略扇形の輪郭を有し、扇形の弧が連なって形成され所定の頂角を有する仮想の略円錐面が形成される第2の塗布部と、芯線を挟んで第1の塗布部および第2の塗布部に向かい合い所定の傾斜角をもって芯線の基端部から先端部まで延びる直線に沿った輪郭を有する第3の塗布部と、を含んでなる。略扇形の中心角は、0°を超え90°以下に設定され、略円錐面の頂角は、10°以上45°以下の範囲の値に設定され、直線の傾斜角は、3°以上15°以下の範囲の値に設定されてもよい。
【0007】
また、本発明に係るマスカラ塗布用ブラシを収容する収容容器は、上述のマスカラ塗布用ブラシと、マスカラ塗布用ブラシを支持するステムを有するキャップと、マスカラ塗布用ブラシおよびキャップのステムが通過する開口部を有する首部と、首部の開口部に連通しマスカラを収容する収容部とを備える容器本体と、を備えて構成される。
【0008】
さらに、本発明に係るマスカラ塗布用ブラシの使用方法は、マスカラを付着させる多数の繊維の端により芯線の基端部の回りに横断面において所定の中心角を有する略扇形の輪郭を有し、扇形の弧が連なって形成され所定の頂角を有する仮想の略円錐面が形成される第1の塗布部と、芯線を挟んで第1の塗布部に向かい合い所定の傾斜角をもって芯線の基端部から先端部まで延びる直線に沿った輪郭を有する第2の塗布部とを備えるマスカラ塗布用ブラシにおける第1の塗布部の端部により上睫毛の根元を立ち上げながらマスカラを塗布し、第2の塗布部を動かしながら下睫毛にマスカラを塗布することを含んでなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るマスカラ塗布用ブラシ、マスカラ塗布用ブラシを収容する収容容器、および、マスカラ塗布用ブラシの使用方法によれば、第1の塗布部に連なり、芯線の基端部から離隔した位置で芯線の回りに横断面において略扇形の輪郭を有し、扇形の弧が連なって形成され所定の頂角を有する仮想の略円錐面が形成される第2の塗布部と、芯線を挟んで第1の塗布部および第2の塗布部に向かい合い所定の傾斜角をもって芯線の基端部から先端部まで延びる直線に沿った輪郭を有する第3の塗布部と、を含むのでマスカラを簡単に睫毛に塗布することができ、しかも、ブラシの先端部を目頭または目尻に近接させマスカラを容易に塗布できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るマスカラ塗布用ブラシの一例の要部を拡大して示す図である。
【
図3】本発明に係るマスカラ塗布用ブラシの一例を備えるアプリケータの外観を示す図である。
【
図4】本発明に係るマスカラ塗布用ブラシを収容する収容容器の一例の構成を示す断面図である。
【
図5】(A)および(B)は、
図1に示されるマスカラ塗布用ブラシの使用方法の説明に供される図である。
【
図6】(A)および(B)は、
図1に示されるマスカラ塗布用ブラシの使用方法の説明に供される図である。
【
図7】(A)および(B)は、
図1に示されるマスカラ塗布用ブラシの使用方法の説明に供される図である。
【
図8】(A)および(B)は、
図1に示されるマスカラ塗布用ブラシの使用方法の説明に供される図である。
【
図9】(A)および(B)は、
図1に示されるマスカラ塗布用ブラシの使用方法の説明に供される図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図3は、本発明に係るマスカラ塗布用ブラシの一例を備えるアプリケータの外観を示す。アプリケータ10は、マスカラMS(
図4参照)を睫毛に塗布するブラシ16と、ブラシ16が一端部に固定される樹脂製のステム14と、ステム14の他端に固定される樹脂製のインナーキャップ12とを含んで構成されている。
【0012】
アプリケータ10は、
図4に示される本発明に係るマスカラ塗布用ブラシを収容する収容容器の一例の内部に収容される。その収容容器は、所定量のマスカラMSが満たされ、アプリケータ10のステム14の一部およびブラシ16全体が浸される収容部20Aを有する樹脂製の容器本体20と、容器本体20の首部20Nに取り外し可能に連結され、その開口端を塞ぐ樹脂製のキャップ18とを主な要素として含んで構成されている。
【0013】
キャップ18の内周部18Aにおける開口端は、容器本体20の首部20Nの雄ねじ部20MSにねじ込まれる雌ねじ部18FSを有している。また、キャップ18の内周部18Aには、上述のアプリケータ10のインナーキャップ12が圧入されている。これにより、アプリケータ10とキャップ18とが一体とされる。また、容器本体20の首部20Nの内周部には、アプリケータ10のブラシ16が容器本体20の首部20Nから抜き出されるとき、ブラシ16に付着したマスカラMSの一部を拭うワイパ20Bが設けられている。
【0014】
ブラシ16は、例えば、芯線としての捻られた2本の金属製ワイヤ22と、捻られた2本の金属製ワイヤ22相互間に保持された多数のブラシ用繊維16Biとから構成されている。2本の金属製ワイヤ22の基端部は、ステム14の一端の取付孔(不図示)に圧入され固定されている。ブラシ16のブラシ用繊維16Biは、例えば、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、エラストマー繊維のうちのいずれかの繊維で、あるいは、それらの繊維のうちから選択され混合された混合繊維で作られている。ブラシ用繊維16Biの端で形成される金属製ワイヤ22の回りのブラシ16のブランクの輪郭の直径は、例えば、約8mm以上10mm以下の範囲内の直径に設定されている。
【0015】
ブラシ16における多数のブラシ用繊維16Biの端により金属製ワイヤ22の回りに形成される塗布部は、その横断面において金属製ワイヤ22の基端部の回りに形成され略扇形の輪郭を有する第1の塗布部16Mと、第1の塗布部16Mよりも金属製ワイヤ22の基端部からさらに離隔されて形成され略扇形の輪郭を有する第2の塗布部16Tと、
図1において金属製ワイヤ22を挟んで第1の塗布部16Mおよび第2の塗布部16Tに向かい合い右斜め下に延びる直線に沿った輪郭を有する第3の塗布部16Sとを主な塗布部として構成されている。
【0016】
第1の塗布部16Mの横断面の輪郭における扇形の弧は、金属製ワイヤ22の中心軸線から所定の距離Dbだけ離隔した位置に形成されている。
図2に示されるように、その扇形の中心角θは、例えば、最大90°以内に設定されている。その扇形の弧は、第1の塗布部16Mにおける金属製ワイヤ22の基端部に近接した下端から金属製ワイヤ22の中心軸線に沿って所定距離、離隔した位置まで同様に金属製ワイヤ22の中心軸線から所定の距離Dbだけ離隔した位置に形成されている。その扇形の弧が連なって形成される仮想の面は、金属製ワイヤ22の中心軸線に沿って形成されることとなる。
【0017】
第2の塗布部16Tの横断面における扇形の弧は、金属製ワイヤ22の基端部から離隔するにつれて徐々に金属製ワイヤ22の中心軸線から所定の距離Dbよりも小なる距離だけ離隔した位置に形成されている。金属製ワイヤ22の基端部から最も離隔した位置に形成される第2の塗布部16Tの横断面における扇形の弧は、金属製ワイヤ22の中心軸線から所定の距離Daだけ離隔した位置に形成されている。その扇形の弧が連なって形成される仮想の略円錐面の頂角βは、例えば、好ましくは、約10°以上45°以下の範囲の値に設定されている。所望される頂角βは、例えば、所望されるブラシ16のブランクの輪郭の直径と、第2の塗布部16Tの先端から上述の第1の塗布部16Mとの境界(以下、角部16Cともいう)までの中心軸線に沿った所定の長さLaとに基づいて決定される。このように頂角βが約10°以上45°以下の範囲の値に設定されることにより、マスカラMSを目頭に塗布し易くなるとともに、部分的に睫毛を上げたい箇所に第2の塗布部16Tの先端をアプローチし易くなる。
【0018】
第3の塗布部16Sにおける多数のブラシ用繊維16Biの端により形成される輪郭の仮想の斜面の角度αは、例えば、金属製ワイヤ22の中心軸線に対し約3°以上15°以下に設定されている。これにより、輪郭の仮想の斜面は、金属製ワイヤ22を挟んで第1の塗布部16Mおよび第2の塗布部16Tに向かい合って細長く延びるように形成されることとなる。即ち、第3の塗布部16Sの厚みは、第1の塗布部16Mおよび第2の塗布部16Tの厚み比して薄くなる。このように角度αが約3°以上15°以下に設定されることにより、第3の塗布部16Sの下睫毛へのアプローチがし易く、下睫毛および目尻の睫毛をキャッチし易くなる。また、その扇形の中心角θは、最大90°以内の角度に設定されることにより、第3の塗布部16Sを使って睫毛をとかし易くなる。また、ブラシ16の厚みのある部分が扇型の輪郭に形成されることにより、上睫毛の根元に入り易くなり上睫毛を上げ易くなる。ブラシ16に第3の塗布部16S(薄い部分)が形成されるので更に睫毛の根元にアプローチし易くなり、上睫毛の根元から上睫毛を上げ易くなる。第3の塗布部16S(薄い部分)は、下睫毛にマスカラMSを塗布し易く、マスカラMSがブラシ16の他の部分により地肌に付き辛くなる。
【0019】
さらに、ブラシ16の横断面における扇形の輪郭における第3の塗布部16Sに隣接した扇の半径に対応する部分には、それぞれ、多数のブラシ用繊維16Biの端により形成される第4の塗布部16RAおよび第5の塗布部16RBが形成されている。
【0020】
斯かる構成において、本発明に係るマスカラ塗布用ブラシの使用方法の一例においては、
図5(A)および(B)に示されるように、先ず、マスカラMSが上睫毛UELに塗布される場合、ブラシ16の第2の塗布部16Tを浮かし、角部16Cを上睫毛の根元にしっかり当てながら、上睫毛をその根元から立ち上げながらマスカラMSが塗布される。上睫毛UELについての他の使用方法としては、例えば、
図6(A)および(B)に示されるように、第2の塗布部16Tの毛丈の短い部分を上睫毛の根元に当て、上睫毛を持ち上げ、ブラシ16を回転させ、上睫毛をとかしながらマスカラMSが塗布される。
【0021】
次に、
図7(A)および(B)に示されるように、マスカラMSが下睫毛LELに塗布される場合、ブラシ16の第3の塗布部16Sにおける毛丈の短い部分が横にされ、その短い部分を左右に動かしながら下睫毛にマスカラMSが塗布される。
【0022】
続いて、
図8(A)および(B)に示されるように、マスカラMSが目頭近傍の睫毛に塗布される場合、ブラシ16の第2の塗布部16Tが目頭近傍の睫毛に当てられ、マスカラMSが塗布される。
【0023】
続いて、
図9(A)および(B)に示されるように、マスカラMSが目尻近傍の睫毛に塗布される場合、ブラシ16の第2の塗布部16Tが目尻近傍の睫毛に当てられ、マスカラMSが塗布される。
【0024】
従って、左右非対称のブラシ16により、それぞれの形状で異なる使用感と仕上がりを演出でき、ブラシ16の各部位によりマスカラMSの付着量(バルク)が異なるので好みに合わせた仕上がりを実現できる。ブラシ16において、第3の塗布部16Sおよび第2の塗布部16Tによってブラシ16を部分的に薄くし、テーパー部の角度を変化させることで、下睫毛や細部(細かな毛、目尻・目頭・まつ毛の根元)へのマスカラMSの塗布が可能となる。螺旋状に形成されるブラシ16への睫毛のからみ付きを軽減しながら睫毛を扇型に延ばしていくので重ね塗りでも綺麗に仕上げられる。
【符号の説明】
【0025】
10 アプリケータ
16 ブラシ
16M 第1の塗布部
16T 第2の塗布部
16S 第3の塗布部
16RA 第4の塗布部
16RB 第5の塗布部
18 キャップ
20 容器本体
MS マスカラ