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特許7117893電気モータの回転子の電気抵抗を識別するための方法
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  • 特許-電気モータの回転子の電気抵抗を識別するための方法 図1
  • 特許-電気モータの回転子の電気抵抗を識別するための方法 図2
  • 特許-電気モータの回転子の電気抵抗を識別するための方法 図3A
  • 特許-電気モータの回転子の電気抵抗を識別するための方法 図3B
  • 特許-電気モータの回転子の電気抵抗を識別するための方法 図4
  • 特許-電気モータの回転子の電気抵抗を識別するための方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】電気モータの回転子の電気抵抗を識別するための方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/14 20160101AFI20220805BHJP
【FI】
H02P21/14
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018090644
(22)【出願日】2018-05-09
(65)【公開番号】P2018191506
(43)【公開日】2018-11-29
【審査請求日】2020-11-11
(31)【優先権主張番号】1754076
(32)【優先日】2017-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502363191
【氏名又は名称】シュネーデル、トウシバ、インベーター、ヨーロッパ、ソシエテ、パル、アクション、セプリフエ
【氏名又は名称原語表記】SCHNEIDER TOSHIBA INVERTER EUROPE SAS
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100096921
【弁理士】
【氏名又は名称】吉元 弘
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ、マルレ
(72)【発明者】
【氏名】トマ、ドボ
(72)【発明者】
【氏名】アル、カシーム、ジェバイ
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-056189(JP,A)
【文献】特開2014-096977(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0132200(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0177328(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0167674(US,A1)
【文献】特許第4189071(JP,B2)
【文献】中国特許出願公開第102510263(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気誘導モータ(M)の回転子の抵抗値(R)を識別するための方法であって、以下のステップ、すなわち、
a)前記電気誘導モータの前記回転子の前記抵抗に対して選択された値
【数1】
に基づいて、基準電圧
【数2】
を決定するステップと、
b)前記電気誘導モータに制御電圧(u)を印加するステップであり、前記制御電圧が前記基準電圧
【数3】
に基づいて決定される、ステップと、
c)前記電気誘導モータの固定子電流(I)を導出するように、前記電気誘導モータの3つの相において測定された電流(i、i、i)の値を取得するステップと、
d)前記得られた固定子電流(i)を所定の値
【数4】
と比較するステップと、
e)前記回転子の前記抵抗(R)に使用された前記値
【数5】
を補正して、前記所定の値と等しい固定子電流(i)を得るまでステップa)~d)を適用するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
電気誘導モータ(M)の回転子の抵抗値(R)を識別するための方法であって、
a)前記電気誘導モータの3つの相において測定された電流(i、i、i)を表す固定子電流(i)が所定の値
【数6】
と等しい測定電圧
【数7】
を決定するステップと、
b)前記電気誘導モータの前記回転子の前記抵抗に対して選択された値
【数8】
に基づいて基準電圧
【数9】
を決定するステップと、
c)前記基準電圧を前記測定電圧と比較するステップと、
d)前記回転子の前記抵抗(R)に使用された前記値
【数10】
を補正して、前記基準電圧と前記測定電圧との間の等価性を得るまでステップa)~c)を適用するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項3】
前記所定の値
【数11】
がゼロまたはゼロに近い値に対応することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
複数の連続する反復を備える二分法原理に従って実施され、各反復において、前記回転子の前記抵抗に対して求められた値の位置する間隔が、2で割られることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
複数の連続する反復を備える勾配原理に従って実施され、前記回転子の前記抵抗に対する前記選択された値
【数12】
が、前記比較ステップの結果の意味に応じて各反復で修正されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
電気誘導モータ(M)の回転子の抵抗値(R)を識別するためのシステムであって、
a)前記電気誘導モータの前記回転子の前記抵抗に対して選択された値
【数13】
に基づいて基準電圧
【数14】
を決定するためのモジュールと、
b)前記電気誘導モータに制御電圧(u)を印加するためのモジュールであり、前記制御電圧が前記基準電圧
【数15】
に基づいて決定される、モジュールと、
c)前記電気誘導モータの固定子電流(i)を導出するように、前記電気誘導モータの3つの相において測定された電流(i、i、i)の値を取得するためのモジュールと、
d)前記得られた固定子電流(i)を所定の値
【数16】
と比較するためのモジュールと、
e)前記回転子の前記抵抗(R)に使用された前記値
【数17】
を補正して、前記所定の値
【数18】
に等しい固定子電流を得るまでモジュールa)~d)を実行するためのモジュールと、
を含むことを特徴とする、システム。
【請求項7】
電気誘導モータ(M)の回転子の抵抗値(R)を識別するためのシステムであって、
a)前記電気誘導モータの3つの相において測定された電流(i、i、i)を表す固定子電流(i)が所定の値
【数19】
に等しい測定電圧
【数20】
を、決定するためのモジュールと、
b)前記電気誘導モータの前記回転子の前記抵抗に対して選択された値
【数21】
に基づいて、基準電圧
【数22】
を決定するためのモジュールと、
c)前記基準電圧を前記測定電圧と比較するためのモジュールと、
d)前記回転子の前記抵抗(R)に使用された前記値
【数23】
を補正して、前記基準電圧と前記測定電圧との間の等価性を得るまで、モジュールa)~c)を実行するためのモジュールと、
を含むことを特徴とする、システム。
【請求項8】
前記所定の値がゼロまたはゼロに近い値に対応することを特徴とする、請求項6または7に記載のシステム。
【請求項9】
複数の連続する反復を備える二分法原理に従って動作するように構成され、各反復において、前記回転子の前記抵抗に対して求められた値が位置する間隔が2で割られることを特徴とする、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
複数の連続する反復を備える勾配原理に従って動作するように構成され、前記回転子の前記抵抗に対する前記選択された値
【数24】
が前記比較ステップの結果の意味に応じて各反復において修正されることを特徴とする、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
電気誘導モータの制御が意図された可変速駆動装置であって、請求項6から10のいずれか1項に記載された識別システムに従った識別システムを備える制御システムを含むことを特徴とする、可変速駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気誘導モータの回転子の電気抵抗を識別するための方法に関する。
【0002】
本発明は、前記方法を実施することを可能にする識別システムにも関する。
【背景技術】
【0003】
電気モータは、適切な制御則を実施する可変速駆動装置によって制御される。電気モータを正確に制御するために、可変速駆動装置およびその処理ユニットは、制御される電気モータのある一定のパラメータを利用しなければならない。
【0004】
安定で効率的な制御を保証するためには、可変速駆動装置が、値が正確なパラメータを利用することが好ましい。このことは、特に電気モータの回転子の抵抗(「回転子抵抗」とも呼ばれる)に対して当てはまる。現在、回転子の抵抗のこの正確な値が、可変速駆動装置の処理ユニットには必ずしも知られていないことが判明している。その場合、処理ユニットは、例えば、制御動作においてデフォルト値を使用することがあり、そのために非常に多くの場合性能の低下をもたらす。特に、回転子抵抗は、処理ユニットによって過大評価または過小評価されることがあり、固定子の電流の変動、したがって制御則に対する電圧を計算するためのアルゴリズムの実施における誤差をもたらす。
【0005】
しかしながら、回転子の抵抗を決定するためのいくつかの解決策が既に提案されている。これらの解決策のいくつかは、回転子抵抗を導出するために回転子のインダクタンスを決定することにある。しかしながら、詳細には立ち入らないが、磁気飽和のために、回転子のインダクタンスの値は、必ずしも一定ではなく、そのために回転子抵抗の決定に誤差が生じる。
【0006】
欧州特許第1713173B1号は、この部分に対して電気モータのパラメータを調整することを含む解決策を記載している。この解決策は、作動中に、すなわち、モータの通常動作中に実施される。この解決策は、主として電流ループの積分項を使用してモータモデルのパラメータの値を調整することにある。
【0007】
この解決策は、特に負荷がモータに存在するときに実施されなければならず、速度センサ(閉ループ)を使用する必要があるため、やはり満足できるものではない。
【0008】
参考文献「DIAB AHMED A ZAKIら、「Parallel estimation of rotor resistance and speed for sensorless vector controlled induction motor drive」-2016 17TH International Conference of young specialists on Micro/nanotechnologies and electron devices(EDM)、IEEE、2016年6月30日、389-394ページ、XP032943052、DOI:10.1109/EDM.2016.7538763」は、適応システムを使用することによって、電気モータの回転子の抵抗値を識別するための方法を記載している。
【0009】
したがって、本発明の目的は、回転子の抵抗を識別するための新規の方法を提案することであり、本方法は、信頼性があり、速度センサ(閉ループ)の使用を必要とせず、モータに負荷が存在する場合に、または負荷が存在しない場合に、実施されることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許第1713173B1号
【非特許文献】
【0011】
【文献】DIAB AHMED A ZAKIら、「Parallel estimation of rotor resistance and speed for sensorless vector controlled induction motor drive」-2016 17TH International Conference of young specialists on Micro/nanotechnologies and electron devices(EDM)、IEEE、2016年6月30日、389-394ページ、XP032943052、DOI:10.1109/EDM.2016.7538763
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本目的は、電気誘導モータの回転子の抵抗値を識別するための方法によって達成され、前記方法は、以下のステップ、すなわち、
a)電気モータの回転子の抵抗に対して選択された値に基づいて基準電圧を決定するステップと、
b)電気モータに制御電圧を印加するステップであって、前記制御電圧が前記基準電圧に基づいて決定される、ステップと、
c)電気モータの固定子電流を導出するように、電気モータの3つの相において測定された電流の値を取得するステップと、
d)得られた固定子電流を所定の値と比較するステップと、
e)回転子の抵抗に使用された前記値を補正して、前記所定の値と等しい固定子電流を得るまでステップa)~d)を適用するステップと、
を含む。
【0013】
また、本目的は、電気誘導モータの回転子の抵抗値を識別するための方法によって達成され、前記方法は、以下のステップ、すなわち、
a)電気モータの3つの相において測定された電流を表す固定子電流が、所定の値と等しい測定電圧を決定するステップと、
b)電気モータの回転子の抵抗に対して選択された値に基づいて、基準電圧を決定するステップと、
c)前記基準電圧を測定電圧と比較するステップと、
d)回転子の抵抗に使用された前記値を補正して、前記基準電圧と測定電圧との間の等価性を得るまでステップa)~c)を適用するステップと、
を含む。
【0014】
1つの特定の特徴によると、前記所定の値は、ゼロまたはゼロに近い値に対応する。
【0015】
1つの特定の実施形態によると、本方法は、複数の連続する反復を備える二分法原理(dichotomic principle)に従って実施され、各反復において、回転子の抵抗に対して求められた値が位置する間隔が、2で割られる。
【0016】
別の特定の実施形態によると、本方法は、複数の連続する反復を備える勾配原理に従って実施され、回転子の抵抗に対して選択された値が、比較ステップの結果の意味に基づいて各反復で修正される。
【0017】
また、本目的は、電気誘導モータの回転子の抵抗値を識別するためのシステムによって達成され、本システムは、
a)電気モータの回転子の抵抗に対して選択された値に基づいて、基準電圧を決定するためのモジュールと、
b)電気モータに制御電圧を印加するためのモジュールであって、前記制御電圧が前記基準電圧に基づいて決定される、モジュールと、
c)電気モータの固定子電流を導出するように、電気モータの3つの相において測定された電流の値を取得するためのモジュールと、
d)得られた固定子電流を所定の値と比較するためのモジュールと、
e)回転子の抵抗に使用された前記値を補正して、前記所定の値と等しい固定子電流を得るまでモジュールa)~d)を実行するためのモジュールと、
を含む。
【0018】
また、本目的は、電気誘導モータの回転子の抵抗値を識別するためのシステムによって達成され、本システムは、
a)電気モータの3つの相において測定された電流を表す固定子電流が所定の値と等しい測定電圧を、決定するためのモジュールと、
b)電気モータの回転子の抵抗に対して選択された値に基づいて、基準電圧を決定するためのモジュールと、
c)前記基準電圧を測定電圧と比較するためのモジュールと、
d)回転子の抵抗に使用された前記値を補正して、前記基準電圧と測定電圧との間の等価性を得るまでステップa)~c)を適用するためのモジュールと、
を含む。
【0019】
1つの特定の特徴によると、前記所定の値は、ゼロまたはゼロに近い値に対応する。
【0020】
1つの特定の実施形態によると、本システムは、複数の連続する反復を備える二分法原理に従って動作するように構成され、各反復において、回転子の抵抗に対して求められた値が位置する間隔が2で割られる。
【0021】
別の特定の実施形態によると、本システムは、複数の連続する反復を備える勾配原理に従って動作するように構成され、回転子の抵抗に対して選択された値が、比較ステップの結果の意味に基づいて修正される。
【0022】
最後に、本発明は、電気モータの制御が意図された可変速駆動装置に関し、本可変速駆動装置は、上で規定された識別システムに従った識別システムを備える制御システムを含む。
【0023】
他の特徴および利点は、添付された図面を参照して以下の詳細な説明で明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の制御システムを含む従来の可変速駆動装置のレイアウトである。
図2】本発明の制御方法の動作原理を示す概要図である。
図3】本発明の識別方法の原理を示す概略図である。
図4】回転子抵抗の値の二分法探索の原理を示す図である。
図5】1つの特定の実施形態による、本発明の識別方法の動作原理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に記載される発明は、好ましくは三相電源による非同期(誘導)モータMの制御に適用される。本発明は、開ループ、すなわち電気モータの速度測定のフィードバックがない、または閉ループ、すなわち電気モータの速度測定のフィードバックがある従来のベクトルあるいはスカラー制御スキームにおいて実施される。
【0026】
本発明の識別方法は、処理ユニットUCを含む制御システムにおいて実施される。処理ユニットUCは、少なくともマイクロプロセッサおよびメモリを含む。本制御システムは、電気モータの制御が意図された可変速駆動装置に関連付けられている。本制御システムは、特に前記可変速駆動装置に統合化されてもよい。
【0027】
公知のように、可変速駆動装置は、一般に、
- AC電圧を供給する電気回路網に接続された入力相R、S、Tと、
- 電気回路網によって供給されたAC電圧をDC電圧に変換することが意図された、例えば、ダイオードブリッジなどのAC/DC整流器10と、
- 整流器の出力に接続され、2つの電源線を含み、この電源線間にDC電圧が印加されているDC電源バスと、
- バスの2つの電源線間に接続され、DC電圧を一定値に保持することが意図された、少なくとも1つのバス・コンデンサCbusと、
- DC電源バスに接続され、必要とされる電圧を、電気モータに接続された出力相に印加するように、処理ユニットによって制御される、例えば、IGBTタイプの複数のパワートランジスタを備えるDC/ACインバータ11と、
- 制御される電気モータMに接続されることが意図された出力相1、2、3と、
を含む。インバータ11は、例えば、PWM(パルス幅変調)またはDTC(直接トルク制御)タイプの従来の技法を使用して制御される。処理ユニットUCによって実行される制御則は、出力相に印加される電圧を決定することを可能にする。
【0028】
限定することなく、本発明は、開ループおけるU/Fスカラー制御則に対して記載される。以下に記載される方法は、使用される制御則にかかわらず同一であることを理解されたい。
【0029】
公知のように、図2を参照すると、開ループで非同期電気モータを制御するために処理ユニットによって実行される従来のU/Fスカラー制御則は、以下の主な特徴を含む。すなわち、
【数1】
【0030】
もちろん、他のモジュールが処理ユニットによって実施されてもよいが、これらは本出願では詳述されない。
【0031】
本制御則は、動作フェーズ中に、すなわち可変速駆動装置によって制御される電気モータMの通常の動作中に実施される。
【0032】
本発明は、より詳細には電気モータの回転子の抵抗を識別するための方法に関する。本識別は、モータの通常の動作に先立って、または可変速駆動装置を構成するフェーズ中の任意の他の時間に実施されてもよい。
【0033】
本識別方法は、識別システムによって実施され、好ましくは可変速駆動装置の処理ユニットUCによって実行される。本識別システムは、特に制御システムのモジュールM1~M4、および回転子の抵抗を識別するのを支援する追加のモジュールM5を利用する。電流および電圧測定手段は、有利には本発明の識別システムに統合化され、実施される測定ステップは、有利には、本発明の識別方法の一部を形成する。
【0034】
本識別方法は、実施されるために、以下の論証を利用し、ここで添え字「R」は、回転子にリンクしたパラメータを識別することを可能にし、添え字「S」は、固定子にリンクしたパラメータを識別することを可能にし、指数「ref」は、基準パラメータを識別することを可能にする。
【0035】
基準固定子電圧
【数2】
は、式
【数3】
を使用して計算され、ここで、構成によって、基準固定子電圧は、2つのd軸およびq軸成分に基づいて複素形式で以下のように書かれる。すなわち、
【数4】
【0036】
回転子との動的な関係は、以下の式によって与えられる。すなわち、
【数5】
【0037】
我々は、固定子電流、すなわち、
【数6】
を相殺する電圧を生成しようとしている。
【0038】
電圧と同一のやり方で、固定子電流は、複素形式で
【数7】
として書かれる。
【0039】
モータの磁気結合は、以下の関係を与える。すなわち、
【数8】
ここで
【数9】
【0040】
例えば、飽和関数は、以下の関数fによって表わされてもよい。すなわち、
【数10】
ここで、
【数11】
【0041】
【数12】
をその表式で置き換えることによって、次のようになる。すなわち、
【数13】
【0042】
磁気飽和関数fの導関数を計算することによって、
【数14】
を得る。
【0043】
アルゴリズムは、以下に記載されるステップに従う。
【数15】
の開方則は、式(2)および(3)から以下の通りである。すなわち、
【数16】
【0044】
次いで、固定子磁束でもある磁化磁束、
【数17】
を計算することができる。
【0045】
最終的に、電圧は、固定子磁束およびその導関数から計算される。すなわち、
【数18】
【0046】
また、固定子電圧は、値
【数19】
を有する。
【0047】
上記の関係から、回転子の抵抗と基準固定子電圧
【数20】
との間に関係があることが導出される。このことから、回転子の抵抗を変えることは、この電圧の値に影響を与えることが分かる。
【0048】
この関係から、
【数21】
【0049】
これから
【数22】
を導出する。
【0050】
角度θだけ回転させることによって、固定基準座標系で2つの電圧
【数23】
を得る。計算を簡単にするために、0に等しい第3の成分
【数24】
を導入する。この成分は、バランスのとれた標準モデルに対するモータの差異を表わす。Clarke変換を適用して電圧u、u、u
【数25】
を計算することが残されているだけである。
【0051】
対称的なやり方で、測定される電流i、i、iは、逆クラーク変換によって変換されてもよい。すなわち、
【数26】
【0052】
次に、逆回転および2つの電圧成分iα、iβから、2つの電流値iSdおよびiSqを得る。電流iは、これらの値の関数として計算される。
【0053】
本発明の一般的な原理は、回転子の抵抗Rの求められる値に向かって収束することを可能にする有効なアルゴリズムを導入することにある。
【0054】
図3Aおよび図3Bを参照すると、2つの選択肢が可能である。
【0055】
図3Aによって示される第1の選択肢は、以下のサイクルに従うことにある。すなわち、
【数27】
【0056】
3つのブロックB1、B2、B3は、特に、上述された制御システムのモジュールM1~M5に統合化されている。
【0057】
ブロックB1は、例えば、制御電圧を計算するためのモジュールM2において実行される。
【0058】
ブロックB2は、例えば、電圧を計算するためのモジュールM2において実行される。
【0059】
ブロックB3は、例えば、測定中に取得された固定子電流を処理して、この固定子電流から、選択された探索解(以下参照)に応じて、回転子の抵抗に割り当てられる新しい理論値
【数28】
を導出するためのモジュールM5において実行される。
【0060】
図3Bによって示される第2の選択肢は、以下のサイクルに従うことにある。すなわち、
【数29】
【0061】
電圧
【数30】
の最初の取得は、2つの別々の原理によって達成されることができる。すなわち、
- モータをフリーホイーリングモードにすることによって、すなわちモータに印加される電圧が制御されない。
- 固定子の電流をゼロの値に調整することによって、モータに印加される電圧が、電流に作用する制御ループによって計算される。
【0062】
理論では、回転子の抵抗Rの正確な値に対応した、得られる所定の固定子電流iの値
【数31】
は、ゼロに近く、好ましくはゼロに等しい。言いかえれば、回転子の抵抗がその正確な値にある場合、本発明の解決策を実施する際に得られる固定子電流iは、ゼロに近いこの値、典型的には、50で割られた名目上の電流であり、好ましくはゼロである。
【0063】
回転子の抵抗Rの正確な値の探索を最適化するために、回転子抵抗Rの正確な値に向かって収束するように複数のアルゴリズムが導入されてもよい。限定することなく、
- 第1の解決策は、二分法原理を使用することにあり、
- 第2の解決策は、勾配法と呼ばれるものを導入することにある。
【0064】
第1の解決策では、二分法原理を使用し、使用されるパラメータは、回転子抵抗の値が求められる各間隔の極値限界に対応するRMAX、RMIN、および反復回数Nである。原理として、それぞれの新しい反復(すなわち、新しい値
【数32】
を回転子抵抗に割り当てることから始まるそれぞれの新しいサイクル)において、回転子抵抗に割り当てられる可能な値の間隔の幅が、2で割られる。反復回数に達すると、回転子抵抗の値は、探索された最後の間隔に位置する。この間隔が狭いほど、値は、正確になる。本原理が、図4に、より正確に示されている。
【0065】
これらの2つの探索解決策は、上述された2つの選択肢に適用されてもよく、探索を停止するための制約だけが異なる(第1の選択肢に対する式
【数33】
である)。
【0066】
例として、限定することなく、図4を参照すると、図3Aに関連して上記された第1の選択肢に対して、二分法探索アルゴリズムは、様々な以下のブロックを含む。すなわち、
- 探索間隔を規定するように、決定された値に値が初期化されたパラメータRMAX、RMINが規定され、R0も、間隔RMAXとRMINの範囲内に含まれる値を有するように選択され、
- ブロックB100は、全体的な探索プロセスにおいて上記されたブロックB3に対応する処理ブロックである。固定子電流iの値と値
【数34】
との比較に基づいて、探索が継続されるかどうかが判定されるのはこのブロックにおいてであり、
- ブロックB200は、電流iの値がゼロよりも大きいかどうかテストするためのテストブロックに対応し、
- 電流iがゼロよりも大きい場合、ブロックB300は、RMAXの値をR0、すなわち、R0=(RMAX+RMIN)/2に置き換えることにあり、
- 電流iがゼロよりも小さい場合、ブロックB400は、RMINの値をR0、すなわち、R0=(RMAX+RMIN)/2に置き換えることにあり、
- ブロックB500は、R0に割り当てられた新しい値による新しい反復前の、反復の終了ブロックに対応する。
【0067】
したがって、図5は、二分法探索を使用して、本発明の識別方法の原理を示す。反復回数が横座標に示され、各反復後の更新された回転子抵抗Rに割り当てられた値が縦座標に示されている。5回の反復後に、回転子抵抗Rの正確な値に向かって収束しているのを見ることが可能である。
【0068】
上で概説した第2の探索解決策は、それぞれの新しい反復で得られる固定子電流Iの変化に基づいて回転子抵抗Rに割り当てる値を上下に変化させることにある。本方法は、容易に理解することができるため、本出願では詳述されない。
【0069】
電気モータの回転子の抵抗を識別するための本発明の解決策は、以下を含むいくつかの利点を有することが上記から理解される。すなわち、
- 本方法は、電気モータに対する制御則に容易に統合化されるため、ある一定の単純さがあり、
- 本方法は、電気モータで可変速駆動装置を構成するフェーズ中に一度だけ実行されることができ、
- 本解決策は、電気モータに速度センサを使用する必要がなく、したがって、開ループで動作することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 出力相
2 出力相
3 出力相
10 AC/DC整流器
11 インバータ
B1 ブロック
B2 ブロック
B3 ブロック
B10 ブロック
B20 ブロック
B30 ブロック
B100 ブロック
B200 ブロック
B300 ブロック
B400 ブロック
B500 ブロック
Cbus バス・コンデンサ
固定子電流
M モータ
M0~M5 モジュール
回転子抵抗
R 入力相
S 入力相
T 入力相
UC 処理ユニット
f 磁気飽和関数
電流
電流
電流
固定子電流
Sd 電流
Sq 電流
電圧
電圧
電圧
固定子電圧
θ 配向角
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5