(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】船舶、及び船舶の操船システム
(51)【国際特許分類】
B63H 20/00 20060101AFI20220805BHJP
B63H 21/21 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
B63H20/00 803
B63H21/21
(21)【出願番号】P 2018093723
(22)【出願日】2018-05-15
【審査請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100094145
【氏名又は名称】小野 由己男
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149102
【氏名又は名称】松山 習
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 琢真
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】林 卓哉
【審査官】岩本 薫
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-029183(JP,A)
【文献】特開2006-298233(JP,A)
【文献】特開2004-052697(JP,A)
【文献】特許第3386521(JP,B2)
【文献】特開2006-347499(JP,A)
【文献】特開2013-163439(JP,A)
【文献】特開2007-099175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 20/00-20/36,21/21,21/22,
25/02-25/04,25/42
F02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体と、
前記船体に取り付けられ、電気的な操作信号を受け、前記電気的な操作信号に応じて制御される第1の船外機と、
前記船体に取り付けられ、機械的な操作量を受け、前記機械的な操作量に応じて制御される第2の船外機と、
前記第1の船外機と前記第2の船外機とのシフトとスロットル開度とを操作する操作子と、
前記第1の船外機から前記第1の船外機の外部へ延び、前記操作子の操作に基づいて、前記電気的な操作信号を前記第1の船外機に伝達する第1の伝達経路と、
前記第2の船外機から前記第2の船外機の外部へ延び、前記操作子の操作に基づいて、前記機械的な操作量を前記第2の船外機に伝達する第2の伝達経路と、
を備える船舶。
【請求項2】
前記第2の伝達経路に接続されるアクチュエータと、前記アクチュエータを制御する制御部と、を含むアクチュエータユニットをさらに備え、
前記操作子は、前記シフトと前記スロットル開度との操作を示す前記電気的な操作信号を出力し、
前記制御部は、
前記操作子から前記電気的な操作信号を受信し、
前記電気的な操作信号に応じて前記機械的な操作量を出力するように前記アクチュエータを制御する、
請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記制御部は、前記電気的な操作信号と前記機械的な操作量との関係を規定する操作量情報を有する、
請求項2に記載の船舶。
【請求項4】
前記操作子による前記第1の船外機と前記第2の船外機との操作の切換を行う操作切換部をさらに備える、
請求項2に記載の船舶。
【請求項5】
前記操作切換部は、前記アクチュエータユニットに接続されている、
請求項4に記載の船舶。
【請求項6】
前記制御部は、
前記操作切換部によって前記第1の船外機の操作がアクティブにされているときには、前記操作子からの前記電気的な操作信号を、前記第1の伝達経路を介して前記第1の船外機に出力し、
前記操作切換部によって前記第2の船外機の操作がアクティブにされているときには、前記操作子からの前記電気的な操作信号に応じた前記機械的な操作量を算出し、前記機械的な操作量を前記第2の伝達経路を介して前記第2の船外機に出力するように前記アクチュエータを制御する、
請求項4に記載の船舶。
【請求項7】
前記第1の船外機と前記第2の船外機とのシフトとスロットル開度とを操作する第2の操作子をさらに備え、
前記第2の操作子は、前記アクチュエータユニットに接続されており、前記シフトと前記スロットル開度との操作を示す電気的な操作信号を出力し、
前記制御部は、
前記第2の操作子から前記電気的な操作信号を受信し、
前記第2の操作子からの前記電気的な操作信号に応じて前記機械的な操作量を出力するように前記アクチュエータを制御する、
請求項2に記載の船舶。
【請求項8】
電気的な操作信号を受け、前記電気的な操作信号に応じて制御される第1の船外機と、
機械的な操作量を受け、前記機械的な操作量に応じて制御される第2の船外機と、
前記第1の船外機と前記第2の船外機とのシフトとスロットル開度とを操作する操作子と、
前記第1の船外機から前記第1の船外機の外部へ延び、前記操作子の操作に基づいて、前記電気的な操作信号を前記第1の船外機に伝達する第1の伝達経路と、
前記第2の船外機から前記第2の船外機の外部へ延び、前記操作子の操作に基づいて、前記機械的な操作量を前記第2の船外機に伝達する第2の伝達経路と、
を備える操船システム。
【請求項9】
前記第2の伝達経路に接続されるアクチュエータと、前記アクチュエータを制御する制御部と、を含むアクチュエータユニットをさらに備え、
前記操作子は、前記シフトと前記スロットル開度との操作を示す前記電気的な操作信号を出力し、
前記制御部は、
前記操作子から前記電気的な操作信号を受信し、
前記電気的な操作信号に応じて前記機械的な操作量を出力するように前記アクチュエータを制御する、
請求項8に記載の操船システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記電気的な操作信号と前記機械的な操作量との関係を規定する操作量情報を有する、
請求項9に記載の操船システム。
【請求項11】
前記操作子による前記第1の船外機と前記第2の船外機との操作の切換を行う操作切換部をさらに備える、
請求項9に記載の操船システム。
【請求項12】
前記操作切換部は、前記アクチュエータユニットに接続されている、
請求項11に記載の操船システム。
【請求項13】
前記制御部は、
前記操作切換部によって前記第1の船外機の操作がアクティブにされているときには、前記操作子からの前記電気的な操作信号を、前記第1の伝達経路を介して前記第1の船外機に出力し、
前記操作切換部によって前記第2の船外機の操作がアクティブにされているときには、前記操作子からの前記電気的な操作信号に応じた前記機械的な操作量を算出し、前記機械的な操作量を前記第2の伝達経路を介して前記第2の船外機に出力するように前記アクチュエータを制御する、
請求項11に記載の操船システム。
【請求項14】
前記第1の船外機と前記第2の船外機とのシフトとスロットル開度とを操作する第2の操作子をさらに備え、
前記第2の操作子は、前記アクチュエータユニットに接続されており、前記シフトと前記スロットル開度との操作を示す電気的な操作信号を出力し、
前記制御部は、
前記第2の操作子から前記電気的な操作信号を受信し、
前記第2の操作子からの前記電気的な操作信号に応じて前記機械的な操作量を出力するように前記アクチュエータを制御する、
請求項9に記載の操船システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶、及び船舶の操船システムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶には、種類の異なる複数の船外機を備えるものがある。例えば、大馬力の第1の船外機を主機として備え、小馬力の第2の船外機を補機として備える船舶がある。第1の船外機と第2の船外機との制御システムが異なる場合、それぞれの船外機は、それぞれの船外機を操作するための操作子とセットで船舶に取り付けられる。従って、船舶は、第1の船外機と、第1の船外機用の第1の操作子と、第2の船外機と、第2の船外機用の第2の操作子とを備えている。
【0003】
例えば、第1の船外機が電気的な操作信号により制御される場合、第1の操作子は、第1の船外機のシフトとスロットル開度との操作を示す電気信号を、電気ケーブルを介して第1の船外機に出力する。また、第2の船外機が機械的な操作量により制御される場合、第2の操作子は、第2の船外機のシフトとスロットル開度との操作を示す機械的な操作量を、例えばケーブルの押し引きの動作を介して第2の船外機に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のように、複数の船外機のそれぞれに対して複数の操作子が船舶に設けられると、操船システムの構成が複雑となり、各船外機の操作が煩雑となる。そこで、よりシンプルな操船システムによって複数の船外機を操作することができる船舶及び操船システムの改良が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る船舶は、船体と、第1の船外機と、第2の船外機と、操作子と、第1の伝達経路と、第2の伝達経路とを備える。第1の船外機は、船体に取り付けられ、電気的な操作信号を受け、電気的な操作信号に応じて制御される。第2の船外機は、船体に取り付けられ、機械的な操作量を受け、機械的な操作量に応じて制御される。操作子は、第1の船外機と第2の船外機とのシフトとスロットル開度とを操作する。第1の伝達経路は、操作子の操作に基づいて、電気的な操作信号を第1の船外機に伝達する。第2の伝達経路は、操作子の操作に基づいて、機械的な操作量を第2の船外機に伝達する。
【0007】
第2の態様に係る操船システムは、第1の船外機と、第2の船外機と、操作子と、第1の伝達経路と、第2の伝達経路とを備える。第1の船外機は、電気的な操作信号を受け、電気的な操作信号に応じて制御される。第2の船外機は、機械的な操作量を受け、機械的な操作量に応じて制御される。操作子は、第1の船外機と第2の船外機とのシフトとスロットル開度とを操作する。第1の伝達経路は、操作子の操作に基づいて、電気的な操作信号を第1の船外機に伝達する。第2の伝達経路は、操作子の操作に基づいて、機械的な操作量を第2の船外機に伝達する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シンプルな操船システムによって複数の船外機を操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図8】第1変形例に係る操船システムを示す模式図である。
【
図10】第2変形例に係る操船システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る船舶1を示す模式図である。
図1に示すように、船舶1は、船体2と、第1の船外機3aと、第2の船外機3bとを備える。船体2は、操船席5を有している。操船席5には、ステアリングホイール11などの操船装置6が配置されている。第1の船外機3aと第2の船外機3bとは、船舶1を推進させる推進力を発生させる。第1の船外機3aと第2の船外機3bとは、船体2の船尾に取り付けられている。
【0011】
図2は、第1の船外機3aの側面図である。第1の船外機3aは、エンジン21aと、ドライブ軸22aと、プロペラ軸23aと、シフト機構24aと、エンジンカバー25aと、ハウジング26aとを含む。エンジン21aは、船舶1を推進させる推進力を発生させる。エンジン21aは、エンジンカバー25a内に配置されている。エンジン21aは、クランク軸27aを含む。クランク軸27aは鉛直方向に延びている。ドライブ軸22aは、クランク軸27aに接続されている。ドライブ軸22aは、鉛直方向に延びている。
【0012】
プロペラ軸23aは、前後方向に延びている。プロペラ軸23aは、シフト機構24aを介して、ドライブ軸22aに接続されている。プロペラ軸23aには、プロペラ28aが接続される。ハウジング26aは、エンジンカバー25aの下方に配置されている。ドライブ軸22aとプロペラ軸23aとシフト機構24aとは、ハウジング26a内に配置されている。
【0013】
シフト機構24aは、ドライブ軸22aからプロペラ軸23aへ伝達される動力の回転方向を切り換える。シフト機構24aは、複数のギアと、ギアの噛み合いを変更するクラッチとを含む。例えば、シフト機構24aは、前進ギア29aと後進ギア30aとクラッチ31aとを含む。前進ギア29aと後進ギア30aとは、ドライブ軸22aに取り付けられたベベルギア36aと噛み合っている。クラッチ31aは、前進ギア29aと後進ギア30aとを選択的にプロペラ軸23aに係合させる。クラッチ31aは、前進位置と後進位置と中立位置とに移動可能に設けられる。
【0014】
クラッチ31aは、前進位置において、前進ギア29aとプロペラ軸23aとを係合させる。それにより、プロペラ軸23aを前進方向に回転させるように、ドライブ軸22aの回転がプロペラ軸23aに伝達される。クラッチ31aは、後進位置において、後進ギア30aとプロペラ軸23aとを係合させる。それにより、プロペラ軸23aを後進方向に回転させるように、ドライブ軸22aの回転がプロペラ軸23aに伝達される。クラッチ31aが中立位置では、前進ギア29a及び後進ギア30aは共にプロペラ軸23aに対して解放される。そのため、ドライブ軸22aの回転はプロペラ軸23aに伝達されない。
【0015】
第1の船外機3aは、シフト部材32aとシフトアクチュエータ33aとを含む。シフト部材32aは、クラッチ31aに接続されている。シフト部材32aは、シフトアクチュエータ33aによって駆動されることで、クラッチ31aを前進位置と後進位置と中立位置とに移動させる。例えば、シフト部材32aはロッドであり、シフト部材32aが所定方向に回転することで、クラッチ31aは、前進位置から中立位置を通り後進位置に移動する。シフト部材32aが反対方向に回転することで、クラッチ31aは、後進位置から中立位置を通り前進位置に移動する。ただし、シフト部材32aはロッドに限らず、ワイヤなどの他の部材であってもよい。
【0016】
シフトアクチュエータ33aは、シフト部材32aに接続されており、シフト部材32aを駆動する。シフトアクチュエータ33aは、例えば電動モータである。シフトアクチュエータ33aは、シフト部材32aを駆動することで、クラッチ31aを前進位置と後進位置と中立位置とに切り換える。すなわち、シフトアクチュエータ33aは、シフト機構24aを前進状態と後進状態と中立状態とに切り換える。
【0017】
第1の船外機3aは、スロットルバルブ34aとスロットルアクチュエータ35aとを備える。スロットルバルブ34aは、エンジン21aの吸気量を調整する。スロットルアクチュエータ35aは、スロットルバルブ34aの開度を制御する。スロットルアクチュエータ35aは、例えば電動モータである。
【0018】
第1の船外機3aは、エンジンECU(Electronic Control Unit)39aを備える。エンジンECU39aは、CPUなどのプロセッサと、RAMやROMなどのメモリとを含む。エンジンECU39aは、第1の船外機3aを制御するためのプログラム及びデータを記憶している。エンジンECU39aは、シフトアクチュエータ33a及びスロットルアクチュエータ35aと通信可能に接続されている。エンジンECU39aは、シフトアクチュエータ33aを制御することで、第1の船外機3aのシフト機構24aを前進状態と後進状態と中立状態とに切り換える。エンジンECU39aは、スロットルアクチュエータ35aを制御することで、エンジン21aの回転速度を制御する。
【0019】
図3は、第2の船外機3bの側面図である。第2の船外機3bは、エンジン21bと、ドライブ軸22bと、プロペラ軸23bと、シフト機構24bと、エンジンカバー25bと、ハウジング26bと、プロペラ28bとを含む。第2の船外機3bは、第1の船外機3bよりも小馬力の船外機である。例えば、第2の船外機3bのエンジン21bの排気量は、第1の船外機3aのエンジン21aの排気量よりも小さい。
【0020】
第2の船外機3bのシフト機構24bは、前進ギア29bと後進ギア30bとクラッチ31bとベベルギア36bとを含む。第2の船外機3bのこれらの構成は、上述した第1の船外機3aと基本的には同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。
【0021】
第2の船外機3bは、シフト部材32bとシフトリンク機構33bとを含む。シフト部材32bは、シフト機構24bのクラッチ31bに接続されている。シフトリンク機構33bは、後述するシフトケーブル18に接続される。シフトリンク機構33bは、シフトケーブル18の動作をシフト部材32bに伝達する。シフトリンク機構33bは、カム、或いはギアなどの機械要素を含み、機械的な動作によって、シフトケーブル18の動作をシフト部材32bに伝達する。第2の船外機3bでは、シフト部材32bは、シフトケーブル18によって駆動されることで、クラッチ31bを前進位置と後進位置と中立位置とに移動させる。
【0022】
第2の船外機3bは、スロットルバルブ34bを備える。スロットルバルブ34bは、エンジン21bの吸気量を調整する。スロットルバルブ34bは、スロットルケーブルに接続されている。第2の船外機3bでは、スロットルケーブルの動作によってスロットルバルブ34bの開度が制御される。
【0023】
図4は、船舶1の操船システム7を示す模式図である。
図4に示すように、操船システム7は、リモコン装置12と、アクチュエータユニット13と、操作切換部14とを備える。リモコン装置12は、操船席5に配置される。リモコン装置12は、操作子15を含む。操作子15は、第1の船外機3aと第2の船外機3bとのシフトとスロットル開度とをオペレータが操作するための部材である。
【0024】
操作子15は、前進位置と中立位置と後進位置との間で移動可能に設けられる。リモコン装置12は、操作子15の位置に応じて、シフトとスロットル開度との操作を示す電気的な操作信号を出力する。操作子15は、例えばレバーである。ただし、操作子15はレバーに限らず、スイッチ、ジョイスティック、或いはタッチパネルなどの他の装置であってもよい。
【0025】
リモコン装置12は、第1の船外機3aのエンジンECU39aと通信可能に接続されている。リモコン装置12は、第1の船外機3aのエンジンECU39aと第1の伝達経路16で接続されている。例えば、第1の伝達経路16は、電気信号を伝達する電線である。
【0026】
第1の伝達経路16は、リモコン装置12から出力される電気的な操作信号を第1の船外機3aのエンジンECU39aに伝達する。第1の船外機3aは、第1の伝達経路16を介してリモコン装置12から電気的な操作信号を受け、電気的な操作信号に応じて制御される。
【0027】
アクチュエータユニット13は、第1の伝達経路16を介して、リモコン装置12に接続されている。アクチュエータユニット13は、第2の伝達経路17を介して、第2の船外機3bに接続されている。第2の伝達経路17は、上述したシフトケーブル18とスロットルケーブル19とを含む。第2の伝達経路17は、操作子15の操作に基づいて、機械的な操作量を第2の船外機3bに伝達する。
【0028】
機械的な操作量は、シフトケーブル18の動作量によって示される。機械的な操作量は、スロットルケーブル19の動作量によって示される。例えば、機械的な操作量は、シフトケーブル18及びスロットルケーブル19のそれぞれの押し引きの動作量によって示される。ただし、機械的な操作量は、シフトケーブル18及びスロットルケーブル19の回転等の他の動作量によって示されてもよい。
【0029】
アクチュエータユニット13は、リモコン装置12から第1の伝達経路16を介して受信した電気的な操作量を機械的な操作量に変換して、機械的な操作量を第2の伝達経路17を介して第2の船外機3bに伝達する。第2の船外機3bは、第2の伝達経路17を介して、機械的な操作量を受け、機械的な操作量に応じて制御される。
【0030】
詳細には、アクチュエータユニット13は、アクチュエータ41と、アクチュエータECU42とを含む。アクチュエータ41は、第2の伝達経路17に接続されている。アクチュエータECU42は、CPUなどのプロセッサと、RAMやROMなどのメモリとを含む。アクチュエータECU42は、アクチュエータ41を制御するためのプログラム及びデータを記憶している。アクチュエータECU42は、アクチュエータ41と通信可能に接続されている。アクチュエータECU42は、アクチュエータ41を制御する。
【0031】
図5は、アクチュエータ41の構成を示す図である。アクチュエータ41は、第1可動部材43と第1モータ44とを含む。第1可動部材43は、シフトケーブル18に接続されている。第1モータ44は、図示しないギアを介して、第1可動部材43に接続されており、第1可動部材43を駆動する。第1モータ44は、例えば電動モータである。第1可動部材43は、第1モータ44によって駆動されることで、シフトケーブル18を動作させる。例えば、第1可動部材43は、第1モータ44によって駆動されることで、回転軸48回りに回転し、それによりシフトケーブル18を押し引きする。
【0032】
アクチュエータ41は、第2可動部材45と第2モータ46とを含む。第2可動部材45は、スロットルケーブル19に接続されている。第2モータ46は、図示しないギアを介して、第2可動部材45に接続されており、第2可動部材45を駆動する。第2モータ46は、例えば電動モータである。第2可動部材45は、第2モータ46によって駆動されることで、スロットルケーブル19を動作させる。例えば、第2可動部材45は、第2モータ46によって駆動されることで、回転軸49回りに回転し、それによりスロットルケーブル19を押し引きする。
【0033】
ただし、第1可動部材43、及び/又は、第2可動部材45は、線形的に移動可能に設けられてもよい。シフトケーブル18及びスロットルケーブル19の動作は、押し引きに限らず、回転等の他の動作であってもよい。
【0034】
操作切換部14は、操作子15による第1の船外機3aと第2の船外機3bとの操作の切換を行う。操作切換部14は、アクチュエータユニット13に接続されている。
図6は、操作切換部14を示す図である。
図6に示すように、操作切換部14は、選択スイッチ47を含む。オペレータは、選択スイッチ47を操作することで、第1の船外機3aの操作をアクティブにするか、第2の船外機3bの操作をアクティブにするかを選択することができる。
【0035】
選択スイッチ47は、第1スイッチ51と第2スイッチ52とを含む。第1スイッチ51が押されると、操作切換部14は、第1の船外機3aの操作をアクティブにする指令信号を出力する。第2スイッチ52が押されると、操作切換部14は、第2の船外機3bの操作をアクティブにする指令信号を出力する。操作切換部14からの指令信号は、アクチュエータECU42に送信される。
【0036】
操作切換部14は、第1インジケータ53と第2インジケータ54とを含む。第1の船外機3aの操作がアクティブにされているときには、第1インジケータ53が点灯する。第2の船外機3bの操作がアクティブにされているときには、第2インジケータ54が点灯する。
【0037】
なお、選択スイッチ47は、押しボタンスイッチに限らず、スライド式、或いは回転式などの他の形態のスイッチであってもよい。選択スイッチ47は、第1の船外機3aの操作をアクティブにする第1位置と、第2の船外機3bの操作をアクティブにする第2位置とに移動可能なスイッチであってもよい。或いは、選択スイッチ47は、タッチパネル式のスイッチであってもよい。
【0038】
第1の船外機3aの操作がアクティブにされているときには、操作子15からの電気的な操作信号は、第1の伝達経路16を介して第1の船外機3aのエンジンECU39aに伝達される。例えば、第1の船外機3aの操作がアクティブにされているときに操作子15が中立位置から前進位置側に操作されると、第1の船外機3aのエンジンECU39aは、リモコン装置12からの電気的な操作信号に応じて、第1の船外機3aのシフト機構24aが中立状態から前進状態に切り換えられるように、シフトアクチュエータ33aを制御する。また、エンジンECU39aは、操作子15の操作量に応じたスロットル開度となるように、スロットルアクチュエータ35aを制御する。
【0039】
第1の船外機3aの操作がアクティブにされているときに操作子15が中立位置から後進位置側に操作されると、エンジンECU39aは、リモコン装置12からの電気的な操作信号に応じて、第1の船外機3aのシフト機構24aが中立状態から後進状態に切り換えられるように、シフトアクチュエータ33aを制御する。また、前進時と同様に後進時においても、エンジンECU39aは、操作子15の操作量に応じたスロットル開度となるように、スロットルアクチュエータ35aを制御する。
【0040】
なお、第1の船外機3aの操作がアクティブにされているときには、第2の船外機3bの操作は非アクティブとされる。例えば、第2の船外機3bの操作が非アクティブであるときには、第2の船外機3bのシフト機構24bは中立状態に維持される。
【0041】
アクチュエータECU42は、第2の船外機3bの操作をアクティブにする指令信号を操作切換部14から受信すると、リモコン装置12からの電気的な操作信号に応じた機械的な操作量を算出し、機械的な操作量を第2の伝達経路17を介して第2の船外機3bに出力するようにアクチュエータ41を制御する。
【0042】
アクチュエータECU42は、電気的な操作信号と機械的な操作量との関係を規定する操作量情報を有している。アクチュエータECU42は、操作量情報を参照して、電気的な操作信号を機械的な操作量に変換する。
図7は、操作量情報の一例を示す図である。
図7において、横軸は、リモコン装置12の操作子15の操作量を示している。操作量は、中立位置からの操作子15の回転角度で表される。ただし、操作量は、中立位置からの操作子15のストローク量などの他のパラメータであってもよい。縦軸はスロットル開度を示しており、スロットル開度はスロットルケーブル19の動作量に対応している。
【0043】
以下、操作切換部14によって第2の船外機3bの操作がアクティブにされている場合のアクチュエータユニット13の制御について説明する。例えば、操作子15が中立位置から前進位置側に操作されると、アクチュエータECU42は、第2の船外機3bのシフト機構24aが中立状態から前進状態に切り換えられるように、アクチュエータ41によってシフトケーブル18を動作させる。
図7に示すように、操作子15の操作量が“a1”であるときには、アクチュエータECU42は、操作量情報を参照して、操作量“a1”に対応する値“b1”をスロットル開度として決定する。アクチュエータECU42は、第2の船外機3bのエンジン21bのスロットル開度が“b1”となるように、アクチュエータ41によってスロットルケーブル19を動作させる。
【0044】
操作子15が中立位置から後進位置側に操作されると、アクチュエータECU42は、第2の船外機3bのシフト機構24aが中立状態から後進状態に切り換えられるように、アクチュエータ41によってシフトケーブル18を動作させる。
図7に示すように、操作子15の操作量が“a2”であるときには、アクチュエータECU42は、操作量情報を参照して、操作量“a2”に対応する値“b2”をスロットル開度として決定する。アクチュエータECU42は、第2の船外機3bのエンジン21aのスロットル開度が“b2”となるように、アクチュエータ41によってスロットルケーブル19を動作させる。
【0045】
なお、第2の船外機3bの操作がアクティブにされているときには、第1の船外機3aの操作は非アクティブとされる。例えば、第1の船外機3aの操作が非アクティブであるときには、第1の船外機3aのシフト機構24aは中立状態に維持される。
【0046】
以上説明した本実施形態に係る船舶1及び操船システム7では、電子制御式の第1の船外機3aと、機械制御式の第2の船外機3bとを、共通のリモコン装置12で操作することができる。そのため、船外機ごとに異なるリモコン装置を船舶1に配置する必要が無く、操船席5の構成をシンプルにすることができる。
【0047】
例えば、第1の船外機3aを主機、第2の船外機3bを補機として備える船舶1では、船舶1を長距離、移動させるときには、第1の船外機3aの操作をアクティブにして、リモコン装置12によって第1の船外機3aを操作することができる。そして、船舶1の位置の微調整、或いは船舶1を近距離で移動させるときには、第2の船外機3bの操作をアクティブにして、リモコン装置12によって第2の船外機3bを操作することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る船舶1及び操船システム7では、アクチュエータユニット13によって機械制御式の第2の船外機3bを電子制御することができる。従って、上述した操作量情報を第2の船外機3bに適合したものとすることで、電子制御による第2の船外機3bの効果的な制御が可能となる。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0050】
上記の実施形態では、船舶1が備える電子制御式の船外機の数は、第1の船外機3aの1つのみであるが、2以上であってもよい。上記の実施形態では、船舶1が備える機械制御式の船外機の数は、第2の船外機3bの1つのみであるが、2以上であってもよい。第2の船外機3bは、第1の船外機3aよりも小馬力のものに限らず、同等以上のものであってもよい。
【0051】
アクチュエータユニット13の構造は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。第1の伝達経路16は、電線に限らず、変更されてもよい。例えば、第1の伝達経路16は、無線通信であってもよい。第2の伝達経路17は、ケーブルに限らず、変更されてもよい。例えば、第2の伝達経路17は、ロッド、ギア、カムなどの他の機械要素を含んでもよい。
【0052】
第1の伝達経路16を介して第1の船外機3aに伝達される電気的な操作信号は、シフト及びスロットル開度に限らず、シフトのみ、スロットルのみ、或いは第1の船外機3aのステアリング角度などの他のパラメータを示すものであってもよい。同様に、第2の伝達経路17を介して第2の船外機3bに伝達される機械的な操作量は、シフト及びスロットル開度に限らず、シフトのみ、スロットルのみ、或いは第2の船外機3bのステアリング角度などの他のパラメータを示すものであってもよい。
【0053】
アクチュエータユニット13による第2の船外機3bの制御は、上記の実施形態のものに限らない。例えば、アクチュエータユニット13は、電子制御式の船外機で可能とされている操船モードを第2の船外機3bで実行させてもよい。操船モードは、例えば、定点保持モード、及び/又は、オートパイロットモードを含む。定点保持モードは、船舶1を所定位置に保持するモードである。オートパイロットモードは、船舶1の船速を所定速度野に維持するモードである。
【0054】
図8は、第1変形例に係る操船システム7aを示す模式図である。第1変形例に係る操船システム7aは、操船モードの選択装置55を含む。オペレータは、選択装置55を操作することで、操船モードを選択する。選択装置55は、選択された操船モードを示す信号を出力する。選択された操船モードを示す信号は、第1の船外機3aのエンジンECU39aに入力される。また。選択された操船モードを示す信号は、アクチュエータユニット13に入力される。
【0055】
選択装置55は、機械的なスイッチを含んでもよく、或いはタッチパネル式の装置であってもよい。選択装置55は、リモコン装置12と一体的に設けられてもよく、或いは、リモコン装置12と別体に設けられてもよい。
【0056】
第2の船外機3bの操作がアクティブにされており、且つ、選択装置55によって定点保持モードが選択されたときには、アクチュエータユニット13は、船舶1を所定位置に保持するように、第2の伝達経路17を介して第2の船外機3bに機械的な操作量を出力して、第2の船外機3bのシフトとスロットル開度とを制御する。第2の船外機3bの操作がアクティブにされており、且つ、選択装置55によってオートパイロットモードが選択されたときには、アクチュエータユニット13は、船速が所定速度に維持されるように、第2の伝達経路17を介して第2の船外機3bに機械的な操作量を出力して、第2の船外機3bのシフトとスロットル開度とを制御する。
【0057】
操作量情報は、上述した
図7に示すものに限らず、変更されてもよい。例えば、
図9は、変形例に係る操作量情報を示す図である。
図7に示す操作量情報では、前進時及び後進時共に、スロットル開度は操作子15の操作量の増減に対して線形的に増減する。それに対して、
図9に示す操作量情報では、前進時の低速域では、高速域よりも、操作量の増減に対するスロットル開度の増減が小さい。アクチュエータユニット13がこのような操作量情報を参照することで、低速域での船速の微調整が容易になる。
【0058】
なお、アクチュエータユニット13は、
図7に示す操作量情報に代えて
図9に示す操作量情報を有してもよい。或いは、アクチュエータユニット13は、
図7に示す操作量情報(第1の操作量情報)と
図9に示す操作量情報(第2の操作量情報)とを共に有してもよい。アクチュエータユニット13は、第1の操作量情報と第2の操作量状態とを選択的に参照してもよい。第1の操作量情報と第2の操作量状態とは、上述した操船モードと同様に、
図8に示す選択装置55によって選択されてもよい。
【0059】
上記の実施形態では、リモコン装置12の数は1つであるが、2つ以上であってもよい。
図10は、第2変形例に係る操船システム7bを示す模式図である。第2変形例に係る操船システム7bは、第1のリモコン装置12aと、第2のリモコン装置12bとを備える。第1のリモコン装置12aと第2のリモコン装置12bとは、それぞれ異なる場所に配置されてもよい。例えば、第1のリモコン装置12aが船舶1の室内に配置され、第2のリモコン装置12bが船舶1の室外に配置されてもよい。
【0060】
第1のリモコン装置12aは、第1の操作子15aを含む。第2のリモコン装置12bは、第2の操作子15bを含む。第1のリモコン装置12a及び第2のリモコン装置12bは、上述したリモコン装置12と同様の構成である。第1の操作子15a及び第2の操作子15bは、上述した操作子15と同様の構成である。第1のリモコン装置12aと第2のリモコン装置12bとは、第1の伝達経路16を介して、第1の船外機3a及びアクチュエータユニット13と接続されている。
【0061】
アクチュエータユニット13は、第1のリモコン装置12a、又は、第2のリモコン装置12bから第1の伝達経路16を介して受信した電気的な操作量を、機械的な操作量に変換して、機械的な操作量を、第2の伝達経路17を介して第2の船外機3bに伝達してもよい。アクチュエータユニット13による第2の船外機3bの制御の詳細については、上述した実施形態と同様である。
【0062】
上記の実施形態では、第1の船外機3aの操作がアクティブにされているときには、第2の船外機3bの操作は非アクティブとされ、第2の船外機3bのシフト機構24bは中立状態に維持される。しかし、第1の船外機3aの操作がアクティブにされているときに、第2の船外機3bのエンジン21bを停止させた状態でシフト機構24bを前進状態としてもよい。それにより、第2の船外機3bのプロペラ28bが連れ回りすることを抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、シンプルな操船システムによって複数の船外機を操作することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 船舶
2 船体
3a 第1の船外機
3b 第2の船外機
13 アクチュエータユニット
14 操作切換部
15 操作子
15b 第2の操作子
16 第1の伝達経路
17 第2の伝達経路
41 アクチュエータ
42 アクチュエータECU(制御部)