IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハートサイン テクノロジーズ リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-除細動器の電極の検査 図1
  • 特許-除細動器の電極の検査 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】除細動器の電極の検査
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/39 20060101AFI20220805BHJP
【FI】
A61N1/39
【請求項の数】 23
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018100416
(22)【出願日】2018-05-25
(65)【公開番号】P2018198933
(43)【公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-05-21
(31)【優先権主張番号】1708354.4
(32)【優先日】2017-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】503338457
【氏名又は名称】ハートサイン テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ジョニー アンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】アリスター マッキンタイヤー
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0055478(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0299607(US,A1)
【文献】特表2007-515984(JP,A)
【文献】特表2010-501253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/39
A61N 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
除細動器の電極検査システムであって、
面どうしが向き合う検査配置にあり、キャパシタを形成する電極と、
前記電極に接続されたインピーダンス測定信号発生器であって、前記電極に交流信号を送るように構成されたインピーダンス測定信号発生器と、
前記電極に接続され、電極検査状態とすることができるインピーダンス測定信号プロセッサであって、前記電極から電極検査用交流信号を受信し、前記電極検査用交流信号を処理して処理済み電極検査用交流信号を得るように構成されたインピーダンス測定信号プロセッサと、
前記インピーダンス測定信号発生器および前記インピーダンス測定信号プロセッサに接続された除細動器プロセッサであって、前記インピーダンス測定信号プロセッサを電極検査状態とするように構成されるとともに、前記処理済み電極検査用交流信号を受信し、前記処理済み電極検査用交流信号を分析して電極検査用インピーダンス信号を取得し、前記電極検査用インピーダンス信号を分析して電極の合格状態または不合格状態を判定するように構成された除細動器プロセッサとを備えており、
各電極が、実質的に平面状であり、かつ第1の面および第2の面を含み、各電極の第1の面が、電極の誘電体ライナにより提供され、かつ面どうしが向き合う検査配置に置かれてキャパシタを形成する
電極の面どうしが向き合う検査配置における誘電体ライナ間の1またはそれ以上の空隙によって、更なる誘電体が提供されることを特徴とする除細動器の電極検査システム。
【請求項2】
請求項1に記載の除細動器の電極検査システムにおいて、
前記除細動器プロセッサが、少なくとも1の制御信号を前記インピーダンス測定信号発生器に送信し、それにより前記インピーダンス測定信号発生器から前記電極に交流信号を送信させるように構成されていることを特徴とする除細動器の電極検査システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の除細動器の電極検査システムにおいて、
前記除細動器プロセッサが、少なくとも1の制御信号を前記インピーダンス測定信号プロセッサに送信し、それにより前記インピーダンス測定信号プロセッサを電極検査状態とするように構成されていることを特徴とする除細動器の電極検査システム。
【請求項4】
請求項3に記載の除細動器の電極検査システムにおいて、
前記除細動器プロセッサが、少なくとも1の制御信号を前記インピーダンス測定信号プロセッサに送信し、それにより前記インピーダンス測定信号プロセッサの1またはそれ以上の特性を調整して前記インピーダンス測定信号プロセッサを電極検査状態とするように構成されていることを特徴とする除細動器の電極検査システム。
【請求項5】
請求項4に記載の除細動器の電極検査システムにおいて、
前記インピーダンス測定信号プロセッサが増幅器モジュールを備え、前記除細動器プロセッサが、少なくとも1の制御信号を前記インピーダンス測定信号プロセッサに送信し、それにより前記増幅器モジュールの1またはそれ以上の特性を調整して前記インピーダンス測定信号プロセッサを電極検査状態とするように構成されていることを特徴とする除細動器の電極検査システム。
【請求項6】
請求項5に記載の除細動器の電極検査システムにおいて、
前記除細動器プロセッサが、少なくとも1の制御信号を前記インピーダンス測定信号プロセッサに送信し、それにより前記増幅器モジュールの利得特性を調整して前記インピーダンス測定信号プロセッサを電極検査状態とするように構成されていることを特徴とする除細動器の電極検査システム。
【請求項7】
請求項4乃至6の何れか一項に記載の除細動器の電極検査システムにおいて、
前記インピーダンス測定信号プロセッサが信号調整モジュールを備え、前記除細動器プロセッサが、少なくとも1の制御信号を前記インピーダンス測定信号プロセッサに送信し、それにより前記信号調整モジュールの1またはそれ以上の特性を調整して前記インピーダンス測定信号プロセッサを電極検査状態とするように構成されていることを特徴とする除細動器の電極検査システム。
【請求項8】
請求項7に記載の除細動器の電極検査システムにおいて、
前記除細動器プロセッサが、少なくとも1の制御信号を前記インピーダンス測定信号プロセッサに送信し、それにより前記信号調整モジュールの1またはそれ以上の調整機能特性を調整して前記インピーダンス測定信号プロセッサを電極検査状態とするように構成されていることを特徴とする除細動器の電極検査システム。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の除細動器の電極検査システムにおいて、
前記信号調整モジュールは、フィルタリング、アナログ-デジタル変換、信号処理のうちの何れかを含む調整機能を実行するための調整機能特性を含むことを特徴とする除細動器の電極検査システム。
【請求項10】
請求項4乃至9の何れか一項に記載の除細動器の電極検査システムにおいて、
前記インピーダンス測定信号プロセッサがメモリユニットを備え、前記除細動器プロセッサが、少なくとも1の制御信号を前記インピーダンス測定信号プロセッサに送信し、それにより前記メモリユニットに記憶される1またはそれ以上の制御特性を調整して、前記インピーダンス測定信号プロセッサを電極検査状態とするように構成されていることを特徴とする除細動器の電極検査システム。
【請求項11】
請求項5または6を引用する請求項10に記載の除細動器の電極検査システムにおいて、
前記除細動器プロセッサが、少なくとも1の制御信号を前記インピーダンス測定信号プロセッサに送信し、それにより、前記増幅器モジュールの1またはそれ以上の特性を調整する前記メモリユニットに記憶される1またはそれ以上の制御特性を調整して、前記インピーダンス測定信号プロセッサを電極検査状態とするように構成されていることを特徴とする除細動器の電極検査システム。
【請求項12】
請求項7乃至9の何れか一項を引用する請求項10に記載の除細動器の電極検査システムにおいて、
前記除細動器プロセッサが、少なくとも1の制御信号を前記インピーダンス測定信号プロセッサに送信し、それにより、前記信号調整モジュールの1またはそれ以上の特性を調整する前記メモリユニットに記憶される1またはそれ以上の制御特性を調整して、前記インピーダンス測定信号プロセッサを電極検査状態とするように構成されていることを特徴とする除細動器の電極検査システム。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか一項に記載の除細動器の電極検査システムにおいて、
各電極が、実質的に平面状であり、かつ面どうしが向き合う検査配置に置かれてキャパシタを形成する少なくとも1の面を含むことを特徴とする除細動器の電極検査システム。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか一項に記載の除細動器の電極検査システムにおいて、
各電極が、実質的に平面状であり、かつ第1の面および第2の面を含み、各電極の第2の面が、電極の基板により提供され、かつ面どうしが向き合う検査配置に置かれてキャパシタを形成することを特徴とする除細動器の電極検査システム。
【請求項15】
請求項1乃至13の何れか一項に記載の除細動器の電極検査システムにおいて、
各電極が、実質的に平面状であり、かつ第1の面および第2の面を含み、第1の電極の第1の面が、電極の誘電体ライナにより提供され、第2の電極の第2の面が、電極の基板により提供され、第1の電極の第1の面および第2の電極の第2の面が、面どうしが向き合う検査配置に置かれてキャパシタを形成することを特徴とする除細動器の電極検査システム。
【請求項16】
請求項1乃至15の何れか一項に記載の除細動器の電極検査システムにおいて、
電極が、パウチ内で、面どうしが向き合う検査配置に置かれることを特徴とする除細動器の電極検査システム。
【請求項17】
請求項1乃至16の何れか一項に記載の除細動器の電極検査システムにおいて、
前記除細動器プロセッサは、電極検査用インピーダンス信号が予め設定された合格範囲内にある場合に合格状態を、電極検査用インピーダンス信号が前記予め設定された合格範囲を超えた場合に不合格状態を判定することを特徴とする除細動器の電極検査システム。
【請求項18】
請求項17に記載の除細動器の電極検査システムにおいて、
電極の接続性および電気的完全性が許容されるときの電極検査用インピーダンス信号の値の予測範囲を評価することによって、前記合格範囲が予め設定されることを特徴とする除細動器の電極検査システム。
【請求項19】
請求項17または18に記載の除細動器の電極検査システムにおいて、
前記予め設定された合格範囲が、接続性および電気的完全性の様々な状態において除細動器の電極を検査することにより設定されることを特徴とする除細動器の電極検査システム。
【請求項20】
請求項1乃至19の何れか一項に記載の除細動器の電極検査システムにおいて、
電極が不合格状態にあるとき、開回路を示す信号が前記除細動器プロセッサによって受信されることを特徴とする除細動器の電極検査システム。
【請求項21】
請求項1乃至20の何れか一項に記載の除細動器の電極検査システムにおいて、
自動除細動器の自己検査プロセスの一部として電極検査が除細動器で行われることを特徴とする除細動器の電極検査システム。
【請求項22】
請求項1乃至21の何れか一項に記載の除細動器の電極検査システムにおいて、
電極検査の後、前記除細動器プロセッサが電極の合格状態を判定したときに、前記除細動器プロセッサが電極検査用インピーダンス信号をさらに分析して電極の大凡の年数を判定することを特徴とする除細動器の電極検査システム。
【請求項23】
請求項1に記載の除細動器の電極検査システムを用いて除細動器の電極を検査する方法であって、
面どうしが向き合う検査配置に電極を置いてキャパシタを形成するステップと、
インピーダンス測定信号発生器を使用して電極に交流信号を送信するステップと、
電極検査状態とすることができるインピーダンス測定信号プロセッサを使用して、電極から電極検査用交流信号を受信するとともに、電極検査用交流信号を処理して、処理済み電極検査用交流信号を得るステップと、
除細動器プロセッサを使用して、インピーダンス測定信号プロセッサを電極検査状態にするとともに、電極検査用交流信号を受信し、処理済み電極検査用交流信号を分析して電極検査用インピーダンス信号を取得し、この電極検査用インピーダンス信号を分析して電極の合格状態または不合格状態を判定するステップとを備えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除細動器の電極の検査に関し、特に、除細動器への電極の接続および電極の電気的完全性、すなわち電気信号を伝達する電極の能力の検査に関する。
【背景技術】
【0002】
除細動器は、心停止の間に患者の心臓に「ショック」すなわち電気信号を供給するために使用される。心停止からの時間が増加するに連れてショックの有効性が著しく低下することが研究により示されている。したがって、可能な限り迅速に、除細動器を使用して患者の心臓に電気信号を印加することが重要である。このため、現在では、除細動器は病院だけでなく、様々な公共の場所で頻繁に使用されている。
【0003】
除細動器の電極は、通常、それらを保護するためにポーチ内に収容されている。各電極は、除細動器のプラグに接続される接続ワイヤを有する。多くの場所では、除細動器を長時間使用することはできない。除細動器電極、接続ワイヤおよび除細動器プラグの接続性、並びに、除細動器電極の電気的完全性がそれらの期間に亘って維持されること、あるいは、それが損なわれた場合、その情報が除細動器の潜在的ユーザに利用可能とされることは、極めて重要である。これは、除細動器の技術または操作の経験が全く無いか、殆ど無い一般市民が除細動器を使用する場合に特に当てはまる。したがって、電極の接続性および完全性を検査することができる手段を除細動器に提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、除細動器の電極検査システムが提供され、このシステムが、
面どうしが向き合う検査配置(face-to-face test arrangement)にあり、キャパシタを形成する電極と、
電極に接続されたインピーダンス測定信号発生器であって、電極に交流信号を送るように構成されたインピーダンス測定信号発生器と、
電極に接続され、電極検査状態とすることができるインピーダンス測定信号プロセッサであって、電極から電極検査用交流信号を受信し、電極検査用交流信号を処理して処理済み電極検査用交流信号を得るように構成されたインピーダンス測定信号プロセッサと、
インピーダンス測定信号発生器およびインピーダンス測定信号プロセッサに接続された除細動器プロセッサであって、インピーダンス測定信号プロセッサを電極検査状態とするように構成されるとともに、処理済み電極検査用交流信号を受信し、処理済み電極検査用交流信号を分析して電極検査用インピーダンス信号を取得し、電極検査用インピーダンス信号を分析して電極の合格状態または不合格状態を判定するように構成された除細動器プロセッサとを備える。
【0005】
除細動器プロセッサは、少なくとも1の制御信号をインピーダンス測定信号発生器に送信し、それによりインピーダンス測定信号発生器に、交流信号を電極へと送信させるように構成されるものであってもよい。
【0006】
除細動器プロセッサは、少なくとも1の制御信号をインピーダンス測定信号プロセッサに送信し、それによりインピーダンス測定信号プロセッサを電極検査状態とするように構成されるものであってもよい。除細動器プロセッサは、少なくとも1の制御信号をインピーダンス測定信号プロセッサに送信し、それによりインピーダンス測定信号プロセッサの1またはそれ以上の特性を調整してインピーダンス測定信号プロセッサを電極検査状態とするように構成されるものであってもよい。
【0007】
インピーダンス測定信号プロセッサは増幅器モジュールを備え、除細動器プロセッサは、少なくとも1の制御信号をインピーダンス測定信号プロセッサに送信し、それにより増幅器モジュールの1またはそれ以上の特性を調整してインピーダンス測定信号プロセッサを電極検査状態とするように構成されるものであってもよい。除細動器プロセッサは、少なくとも1の制御信号をインピーダンス測定信号プロセッサに送信し、それにより増幅器モジュールの利得特性を調整してインピーダンス測定信号プロセッサを電極検査状態とするように構成されるものであってもよい。
【0008】
インピーダンス測定信号プロセッサは信号調整モジュールを備え、除細動器プロセッサは、少なくとも1の制御信号をインピーダンス測定信号プロセッサに送信し、それにより信号調整モジュールの1またはそれ以上の特性を調整してインピーダンス測定信号プロセッサを電極検査状態とするように構成されるものであってもよい。除細動器プロセッサは、少なくとも1の制御信号をインピーダンス測定信号プロセッサに送信し、それにより信号調整モジュールの1またはそれ以上の調整機能特性を調整してインピーダンス測定信号プロセッサを電極検査状態とするように構成されるものであってもよい。信号調整モジュールは、フィルタリング、アナログ-デジタル変換、信号処理のうちの何れかを含む調整機能を実行するための調整機能特性を含むことができる。
【0009】
インピーダンス測定信号プロセッサはメモリユニットを備え、除細動器プロセッサは、少なくとも1の制御信号をインピーダンス測定信号プロセッサに送信し、それによりメモリユニットに記憶される1またはそれ以上の制御特性を調整して、インピーダンス測定信号プロセッサを電極検査状態とするように構成されるものであってもよい。除細動器プロセッサは、少なくとも1の制御信号をインピーダンス測定信号プロセッサに送信し、それにより、増幅器モジュールの1またはそれ以上の特性を調整するメモリユニットに記憶される1またはそれ以上の制御特性を調整して、インピーダンス測定信号プロセッサを電極検査状態とするように構成されるものであってもよい。除細動器プロセッサは、少なくとも1の制御信号をインピーダンス測定信号プロセッサに送信し、それにより、信号調整モジュールの1またはそれ以上の特性を調整するメモリユニットに記憶される1またはそれ以上の制御特性を調整して、インピーダンス測定信号プロセッサを電極検査状態とするように構成されるものであってもよい。
【0010】
インピーダンス測定信号プロセッサの増幅器モジュールは、ハードウェアで実現することができる。インピーダンス測定信号プロセッサの信号調整モジュールは、ハードウェアで実現することができる。インピーダンス測定信号プロセッサの増幅器モジュールは、ソフトウェアで実現することができる。インピーダンス測定信号プロセッサの信号調整モジュールは、ソフトウェアで実現することができる。増幅器モジュールおよび信号調整モジュールは、別々のソフトウェアモジュールまたは同じソフトウェアモジュールで実現することができる。
【0011】
各電極は、実質的に平面状であり、かつ少なくとも1の面を含むことができる。各電極の少なくとも1の面は、面どうしが向き合う検査配置に置かれてキャパシタを形成することができる。各電極は、実質的に平面状であり、かつ第1の面および第2の面を含むことができる。各電極の第1の面は、面どうしが向き合う検査配置に置かれてキャパシタを形成することができる。各電極の第1の面は、電極の誘電体ライナにより提供されるものであってもよい。電極の誘電体ライナは、電極の面どうしが向き合う検査配置において実質的に隣接して、キャパシタを形成することができる。電極の面どうしが向き合う検査配置における実質的に隣接する誘電体ライナ間の1またはそれ以上の空隙によって、更なる誘電体を提供することができる。
【0012】
代替的には、各電極の第2の面が、面どうしが向き合う検査配置に置かれてキャパシタを形成することができる。各電極の第2の面は、電極の基板により提供されるものであってもよい。代替的には、第1の電極の第1の面および第2の電極の第2の面が、面どうしが向き合う検査配置に置かれてキャパシタを形成することができる。
【0013】
第1の電極は、導体および誘電体ライナを備えることができ、第2の電極は、導体を備えることができる。第2の電極の導体は、電極の面どうしが向き合う検査配置において、第1の電極の誘電体ライナに実質的に隣接して、キャパシタを形成することができる。電極はそれぞれ導体を含むことができる。誘電体は、電極の面どうしが向き合う検査配置において、導体間に配置されて、キャパシタを形成することができる。
【0014】
各電極は、第1の面および第2の面を有する基板と、基板の第2の面に取り付けられた第1の面と第2の面とを有する導体と、導体の第2の面に取り付けられた第1の面と第2の面とを有するゲル要素と、ゲル要素の第2の面に取り付けられた第1の面と第2の面とを有する誘電体ライナとを含むことができる。
【0015】
基板は、プラスチック材料、特に実質的に透明なプラスチック材料を含むことができる。基板は発泡材料を含むことができる。
【0016】
導体は、基板の第2の面に印刷されるものであってもよい。導体は、銀インクを含むことができる。導体は、スズを含むことができる。
【0017】
誘電体ライナは、電極の使用時に除去される剥離ライナであってもよい。各電極の誘電体ライナは、互いに接合されるとともに、電極の面どうしが向き合う検査配置において、実質的に隣接するように折り畳まれるものであってもよい。
【0018】
電極は、パウチ内で、面どうしが向き合う検査配置に置かれるものとしてもよい。
【0019】
インピーダンス測定信号発生器は、予め設定された電圧で交流信号を生成するように構成することができる。交流信号は、正弦波、方形波のいずれかを含むことができる。交流信号は、約30kHz~約64kHzの範囲、好ましくは約32kHzの周波数を有することができる。
【0020】
除細動器プロセッサは、電極検査用インピーダンス信号が予め設定された合格範囲内にある場合に合格状態を、電極検査用インピーダンス信号が予め設定された合格範囲を超えた場合に不合格状態を判定するように構成されるものであってもよい。合格範囲は、電極の接続性および電気的完全性が許容されるときの電極検査用インピーダンス信号の値の予測範囲を評価することによって、予め設定することができる。予め設定された合格範囲は、約1kΩ~約5kΩとすることができる。予め設定された合格範囲は、接続性および電気的完全性の様々な状態において除細動器の電極を検査することにより設定されるものであってもよい。予め設定された合格範囲は、異なるタイプの除細動器電極に対して異なることがある。電極が不合格状態にあるとき、開回路を示す信号が除細動器プロセッサによって受信されるようにしてもよい。
【0021】
除細動器は、電極と、インピーダンス測定信号発生器と、インピーダンス測定信号プロセッサとの間に接続されて、それらが除細動器ショック信号を受信することを防止する保護回路を含むことができる。
【0022】
自動除細動器の自己検査プロセスの一部として、電極検査を行うことができる。電極検査は、一定間隔で行うことができる。一定間隔は、1日に1回、週に1回、月に1回の何れかを含むことができる。電極検査は除細動器の電源投入時に行うことができる。電極検査は、患者にショックを与える前に行うようにしてもよい。電極検査は、除細動器の使用者による開始により、例えば除細動器のスイッチを作動させることにより、行うようにしてもよい。
【0023】
電極検査の後、除細動器プロセッサが電極の合格状態を判定したときに、除細動器プロセッサが、電極検査用インピーダンス信号をさらに分析して電極の大凡の年数を判定するように構成することができる。
【0024】
除細動器プロセッサは、電極検査用インピーダンス信号を電極検査用インピーダンス信号用の予め設定された範囲と比較して、電極の大凡の年数を判定することができる。予め設定された範囲は、例えば、約1年未満の年数の電極、約1年と約2年の間の年数の電極、約2年と約3年の間の年数の電極、約3年と約4年の間の年数の電極、約4年を超える年数の電極を示すことができる。電極が古くなるとそのゲルが乾燥して電極の容量が変化するため、電極の大凡の年数の判定が可能である。
【0025】
除細動器は、電極合格状態または電極不合格状態を示すメッセージを発することができる。これは、可聴メッセージ、可視メッセージのいずれかを含むことができる。
【0026】
本発明の第2の態様によれば、除細動器の電極を検査する方法が提供され、この方法が、
面どうしが向き合う検査配置に電極を置いてキャパシタを形成するステップと、
インピーダンス測定信号発生器を使用して電極に交流信号を送信するステップと、
電極検査状態とすることができるインピーダンス測定信号プロセッサを使用して、電極から電極検査用交流信号を受信するとともに、電極検査用交流信号を処理して、処理済み電極検査用交流信号を得るステップと、
除細動器プロセッサを使用して、インピーダンス測定信号プロセッサを電極検査状態にするとともに、電極検査用交流信号を受信し、処理済み電極検査用交流信号を分析して電極検査用インピーダンス信号を取得し、この電極検査用インピーダンス信号を分析して電極の合格状態または不合格状態を判定するステップとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の一実施形態を、添付の図面を参照して、単なる例として以下に説明する。
図1図1は、本発明の第1の態様に係る除細動器の電極検査システムの概略図である。
図2図2は、図1の除細動器の電極の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1を参照すると、電極3、除細動信号発生器5、インピーダンス測定信号発生器7、保護回路9、インピーダンス測定信号プロセッサ11および除細動器プロセッサ13を含む除細動器1が示されている。
【0029】
インピーダンス測定信号発生器7は、予め設定された電圧で交流信号を生成するように構成されている。交流信号は、正弦波または方形波を含み、約30kHz~約64kHzの範囲、好ましくは約32kHzの周波数を有する。交流信号は、電極3に送信されて、電極3を検査するために使用される。同じ特性を有する信号は、電極3に接続された患者のインピーダンスの測定において、電極3に送信され得る。
【0030】
保護回路9は、除細動器信号保護回路である。この保護回路は、それがなければインピーダンス測定信号発生器7およびインピーダンス測定信号プロセッサ11に損傷を与える除細動器ショック信号を、それらが受信しないように保護すべく構成されている。
【0031】
インピーダンス測定信号プロセッサ11は、増幅器モジュール、信号調整モジュールおよびメモリユニット(図示省略)を備える。増幅器モジュールは、インピーダンス測定信号プロセッサ11を電極検査状態とするように調整可能な利得特性を含む。信号調整モジュールは、インピーダンス測定信号プロセッサを電極検査状態とするように調整可能な、フィルタリング範囲、ADCサンプルレート、分解能などの調整機能特性を含む。信号調整モジュールは、少なくともフィルタリング、アナログ/デジタル変換および信号処理を含む調整機能を実行する。メモリユニットは、増幅器モジュールおよび信号調整モジュールの特性の調整のために調整可能な制御特性を記憶する。
【0032】
本発明のこの実施形態では、インピーダンス測定信号プロセッサ11の増幅器モジュールおよび信号調整モジュールがハードウェアにより実現される。
【0033】
除細動器プロセッサ13は、マイクロプロセッサを含む。除細動器プロセッサ13は、インピーダンス測定信号発生器7に少なくとも1の制御信号を送信することにより、発生器7に交流信号を電極3へと送信させるように構成されている。除細動器プロセッサ13はさらに、インピーダンス測定信号プロセッサ11のメモリユニットに制御信号を送信することにより、インピーダンス測定信号プロセッサ11のモジュールの特性の調整を制御するように構成されている。
【0034】
この実施形態では、除細動器1は、除細動器の構成要素に電力を供給するバッテリ(図示省略)をさらに備える。除細動器1の様々な構成要素は、構成要素間で信号を送受信するために、図示のように互いに接続されている。なお、除細動器1の構成要素間に、図示されていないその他の接続部を設けることができることを理解されたい。
【0035】
図2を参照すると、図1の除細動器1の各電極3は、実質的に平面状であり、基板40、導体42、ゲル要素44および誘電体ライナ46を含む。図示のように、基板40は、第1の面および第2の面を有し、導体42は、基板40の第2の面に取り付けられた第1の面と、第2の面とを有し、ゲル要素44は、導体42の第2の面に取り付けられた第1の面と、第2の面とを有し、誘電体ライナ46は、ゲル要素44の第2の面に取り付けられた第1の面と、第2の面とを有する。
【0036】
基板40は、実質的に透明なプラスチック材料を含む。導体42は、基板40の第2の面上に印刷された銀インクを含む。電極の誘電体ライナ46は、図示のように互いに接合され、折り曲げられている。誘電体ライナ46は、電極3の使用時に除去される剥離ライナである。
【0037】
電極3は、パウチ(図示省略)内に配置されている。各電極3は、電極を除細動器1のプラグに接続するために、コネクタスタッド50および接続ワイヤ52を含む。
【0038】
この実施形態では、電極3はそれぞれ、導体42と、折り畳まれた誘電体ライナ46の形態の誘電体とを含む。各電極は、電極の誘電体ライナ46によって提供される第1の面と、電極の基板40によって提供される第2の面とを備える。誘電体ライナ46の第2の面を含む各電極の第1の面は、面どうしが向き合う検査配置とされてキャパシタを形成する。電極3は、誘電体ライナ46の一部が実質的に隣接する状態で、面どうしが向き合う検査配置とされて、キャパシタを形成する。別の誘電体が、電極の面どうしが向き合う検査配置において、実質的に隣接する誘電体ライナ46の間の空隙48の形態で設けられている。なお、空隙は、エアポケットによって置き換えることができ、あるいは存在しなくともよいことを理解されたい。また、電極の基板によって提供される各電極の第2の面は、面どうしが向き合う検査配置とされて、キャパシタを形成することができることを理解されたい。さらに、第1の電極の第1の面および第2の電極の第2の面が、面どうしが向き合う検査配置とされて、キャパシタを形成することができることを理解されたい。
【0039】
除細動器1を使用して患者の心臓に除細動信号を印加するためには、電極3は適切な接続性および電気的完全性、すなわち電気信号を伝達する能力を備えていなければならない。これは、電極3に交流信号を印加し、電極3から電極検査用交流信号を受け取り、電極検査用交流信号を分析して電極検査用インピーダンス信号を取得し、電極検査用インピーダンス信号を処理して電極の合格状態または不合格状態を判定することによって、電極3を検査することで判定される。電極3の検査は、インピーダンス測定信号発生器7およびインピーダンス測定信号分析器11、すなわち除細動器1に既に存在する機器を使用して行われる。
【0040】
この実施形態では、電極検査が実施されるときに、電極3が、それらのポーチ内で、面どうしが向き合う検査配置にあり、キャパシタを形成する。
【0041】
除細動器プロセッサ13は、インピーダンス測定信号プロセッサ11のメモリユニットに少なくとも1の制御信号を送信する。これにより、メモリユニットに記憶された1またはそれ以上の制御特性が調整または設定され、それによりインピーダンス測定信号プロセッサ11が電極検査状態とされる。メモリユニットに記憶された1またはそれ以上の制御特性を調整することにより、増幅器モジュールの利得特性の調整および信号調整モジュールの調整機能特性の調整が行われ、それによりインピーダンス測定信号プロセッサ11が電極検査状態とされる。
【0042】
除細動器プロセッサ13は、インピーダンス測定信号発生器7に少なくとも1の制御信号を送り、それにより、インピーダンス測定信号発生器に、正弦波または矩形波を含む、約30kHz~約64kHzの範囲、好ましくは約32kHzの周波数を有する交流信号を予め設定された電圧で生成させる。交流信号は電極3に送信され、その交流電流は、それら電極がキャパシタを形成するとき、電極3を通過する。電極3は、交流信号の変化を生じさせるように機能し、それにより変化した、電極検査用交流信号と称する交流信号が、保護回路9に送られ、そしてインピーダンス測定信号プロセッサ11に送られる。
【0043】
インピーダンス測定信号プロセッサ11の増幅器モジュールは、保護回路9を介して電極3から電極検査用交流信号を受信し、その信号を増幅し、インピーダンス測定信号プロセッサ11の信号調整モジュールに伝える。信号調整モジュールは、増幅した電極検査用交流信号に対して、フィルタリングやアナログ-デジタル変換などの複数の調整機能を実行する。電極検査用交流信号は、除細動器プロセッサ13に送られる。
【0044】
除細動器プロセッサ13は、インピーダンス測定信号プロセッサ11から電極検査用交流信号を受信し、この電極検査用交流信号を分析して電極検査用インピーダンス信号を得る。次に、除細動器プロセッサ13は、電極検査用インピーダンス信号を分析して、電極3の合否状態を判定する。電極3の合否状態を判定するために様々な方法を使用することができる。除細動器プロセッサ13は、電極検査用インピーダンス信号が予め設定された合格範囲内にある場合は合格状態、電極検査用インピーダンス信号が予め設定された合格範囲を超える場合は不合格状態と判定することができる。合格範囲は、電極の接続性および電気的完全性が許容可能であるときの電極検査用インピーダンス信号の値の予測範囲を評価することによって予め設定されるものであってもよい。予め設定された合格範囲は、約1kΩ~約5kΩとすることができる。電極3が不合格状態にあるとき、開回路を示す信号が除細動器プロセッサ13によって受信されるようにしてもよい。
【0045】
電極合格状態は、コネクタスタッド50および接続ワイヤ52を介した除細動器1のプラグまでの電極3の接続性が損なわれておらず、各電極3の電気的完全性が仕様内にあることを判定する。電極の不合格状態は、電極3の1またはそれ以上の不十分な接続性を示し得る。これは、例えば、電極、電極接続ワイヤおよび除細動器プラグの何れかの間の不適切な接続またはそれらのうちの何れかの故障に起因する可能性がある。電極の不合格の検査結果は、1またはそれ以上の電極の電気的完全性が不十分であることを示し得る。これは、例えば、電極断線と称される電極の1またはそれ以上のゲルの破壊、または、例えば不適切な保管による電極の1またはそれ以上の破損に起因する可能性がある。
【0046】
電極検査の後、電極3の合格状態が判定されると、除細動器プロセッサ13は、電極検査用インピーダンス信号をさらに処理して、電極3の大凡の年数を判定することができる。
【0047】
除細動器1は、電極合格状態または電極不合格状態を示す、可聴メッセージおよび/または可視メッセージのようなメッセージを発すること、例えば、除細動器1に設けられた発光ダイオード(LED)インジケータのようなライトを起動させることができる。
図1
図2