(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】遠心機用ロータ及び遠心機
(51)【国際特許分類】
B04B 7/08 20060101AFI20220805BHJP
B04B 5/02 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
B04B7/08
B04B5/02 Z
(21)【出願番号】P 2018104656
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】520276604
【氏名又は名称】エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】根本 建一
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-011130(JP,A)
【文献】特表昭61-502243(JP,A)
【文献】特表平07-500534(JP,A)
【文献】実開平06-085046(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0023398(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B1/00-15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料容器を収納するための複数の保持穴と、駆動源の回転軸に装着される装着部を有し、前記保持穴が前記回転軸の軸線A1に対して固定角に傾けられている遠心機用ロータにおいて、
複数の前記保持穴の内周面であって前記軸線A1に近い側に、前記保持穴の開口面から底部側に向けて連続する縦溝をそれぞれ設けたことを特徴とする遠心機用ロータ。
【請求項2】
前記保持穴は半径R1の円筒面を有し、前記縦溝は前記円筒面の長手方向に向けて形成されるものであって前記半径R1より
も小さい
曲率半径R2
となる円弧状の窪みであることを特徴とする請求項1に記載の遠心機用ロータ。
【請求項3】
前記縦溝は、前記保持穴の最内側部分である開口面縁部から底面までの高さHの半分以上の長さとなるように前記開口面の縁部から下方向に形成されることを特徴とする請求項2に記載の遠心機用ロータ。
【請求項4】
前記保持穴は中心線B1に対して直交する底面を有し、前記円筒面と底面の交わり部分は断面形状が曲率半径R3となるような円弧面にて形成され、
前記縦溝の下端位置は前記円弧面に到達するように形成されることを特徴とする請求項3に記載の遠心機用ロータ。
【請求項5】
前記保持穴は曲率半径R4の半球状の底部を有し、前記縦溝の下端位置は前記底部に到達するように形成されることを特徴とする請求項3に記載の遠心機用ロータ。
【請求項6】
前記円筒面における前記縦溝の深さ
は一定で
あることを特徴とする請求項4又は5に記載の遠心機用ロータ。
【請求項7】
前記円筒面における前記縦溝の深さは、前記開口面に近い側から前記底部に向かって徐々に浅くなることを特徴とする請求項4又は5に記載の遠心機用ロータ。
【請求項8】
前記縦溝は前記保持穴の中心線B1と直交する断面位置において、前記回転軸A1に近い最内周位置を含む回転角±45度以内に配置されることを特徴とする請求項1から
7のいずれか一項に記載の遠心機用ロータ。
【請求項9】
試料容器を収納するための保持穴が複数形成され、駆動源の回転軸に装着される装着部を有し、前記保持穴が前記回転軸の軸線A1に対して固定角に傾けられている遠心機用ロータにおいて、
複数の前記保持穴の中心線B1に直交する断面形状は非円形であり、前記断面形状のうち前記回転軸の軸線A1に最も近い部分の曲面の半径R6を、前記保持穴に装着される試料容器の前記軸線A1に最も近い部分の曲率半径R5よりも小さくすることによって、前記試料容器と前記保持穴の壁面との間に隙間を形成することを特徴とする遠心機用ロータ。
【請求項10】
前記保持穴の水平な横断面形状は、3つの頂点部を有する略三角形であって、
最内周に前記頂点部の一つが位置し、前記回転軸の軸線A1から等距離の位置に前記頂点部の残りの2つが位置することを特徴とする請求項
9に記載の遠心機用ロータ。
【請求項11】
試料容器を収納するための保持穴が複数形成され、駆動源の回転軸に装着される装着部を有し、前記保持穴が前記回転軸の軸線A1に対して固定角に傾けられている遠心機用ロータにおいて、
前記試料容器は外径の半径がR5の円筒形であり、
前記保持穴の長手方向中心線B1と直交する断面形状のうち前記回転軸の軸線A1に最も近い部分の曲面の半径R6と、前記回転軸の軸線A1に最も遠い部分の曲面の半径R7との関係が、R6<R5≦R7となり、かつ前記外径の半径がR5の円筒形試料容器が収容できるように前記保持穴を形成したことを特徴とする遠心機用ロータ。
【請求項12】
請求項1から1
1のいずれか一項の遠心機用ロータと、
前記ロータを回転させる駆動部と、前記ロータを収容するロータ室を形成するチャンバを有する遠心機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠心機に関し、ロータの保持穴に装着された試料用容器を容易に取り出すことができるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
液体試料の分離に使用される遠心機は、液体試料を収容した複数の試料容器(チューブ)を円周上に均等配置された保持穴(チューブ穴)に保持するロータと、ロータをロータ室内で回転駆動するモータなどの駆動手段を備え、ロータ室内で大気圧下または減圧下でロータを高速回転することによって試料容器内の液体試料を遠心分離して目的物を収集する。本発明で主に対象とする遠心機(遠心分離機)は、例えば最高回転速度が5,000~100,000rpm程度のものに使用するのに好適なものである。
【0003】
遠心分離機用のロータは、例えば特許文献1にて知られている。特許文献1ではロータには、複数の試料容器用の保持穴が円周に沿って等角度ピッチで形成され、各保持穴には、液体試料が注入された円筒状の試料容器が挿入される。ロータの上面開口部にはロータカバーが取り付けられることによってロータの内部の空間が密閉される。ロータボディの中心軸下部には駆動軸穴が形成され、この駆動軸穴は遠心分離機のモータの駆動軸部に接続される。ロータは駆動手段によって所定の速度で回転される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示したような従来の遠心機では、試料容器の変形を抑え、遠心力によって発生する液圧によってボトルが変形や破損しないようにするため、試料容器用の保持穴の形状は試料容器の外形と相似形とされる。保持穴の大きさは、チューブやボトル等の試料容器の出し入れを容易にするため、試料容器の外形より若干大きく形成して隙間を設けるようにしている。しかしながら、この隙間が大きいと遠心分離運転時の遠心荷重によって試料容器が変形して破損に至る場合がある。また、遠心荷重によって試料容器が変形して隙間が無くなるまで試料容器が膨らんでしまう場合があるので、遠心分離運転後に試料容器が一層取り出し難くなってしまう虞がある。この現象を
図14及び
図15を用いて説明する。
【0006】
図14は従来のロータ130の保持穴140と試料容器50との関係を説明するための図である。ロータボディ131には保持穴140が形成され、保持穴140は中心線B1(ここではB1はロータ130側の保持穴140の中心位置である)を基準に断面が真円形状とされ、試料容器50は保持穴140とほぼ同じ径の真円状の円筒面を有する。実際には試料容器50の外径は、保持穴140の外形よりもわずかに小さくなるように形成される。同じ大きさであると試料容器50を保持穴140に装着及び取り外しができないためである。このように保持穴140の直径と試料容器50の直径が異なることにより遠心分離運転中は試料容器50が、図中の矢印150に示すように外周側に移動することになる、
図14では理解を容易にするために、試料容器50と保持穴140の直径の差が大きいようにあえて誇張して図示しているが、実際には目視してもほとんどわからない程度の径の違いである。
【0007】
図15は、
図14のロータ130において高速にて回転させた状態を示す図である。試料容器50の内部には試料54が収容されているため、試料54から矢印141~143のような遠心力による液圧がかかる。そのため試料容器50は膨張して内周側部分が保持穴140の内壁に密接する。一方、試料容器50の外周側部分は、矢印141~143のような液圧を受けるため、径方向外側に膨張して保持穴140の内壁面に密着する。一方、試料容器50の内周側は矢印144のような遠心力によって試料容器50の内側に向けて変形し、試料容器50の外側には三日月状の隙間146が生ずる。尚、
図15でも理解を容易にするため極端に変形したように誇張して図示しているが、実際の変形はわずかであって目視でもわからない程度である。そして、遠心荷重が無くなると元の形状に戻るが、試料容器50内の試料に加わる遠心力による液圧によって試料容器が変形し、試料容器50が膨らんでしまうと、わずかな空間に有った空気が押し出されてしまい試料容器5の外周部が保持穴140に密着し、取り出し難いことがあった。試料容器50と保持穴140の隙間を少なくするとこの現象は発生しやすくなる。また、試料容器50を保持穴140に挿入しにくくなってしまう。
【0008】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、遠心分離運転を行った後に、ロータの保持穴に装着されている試料容器を容易に取り外すことができるようにした遠心機用ロータ及びそれを用いた遠心機を提供することにある。
本発明の他の目的は、ロータの保持穴の内壁面に、保持穴の長手方向と平行に縦溝を設けて、試料容器を取り出す際に保持穴と試料容器の間に空気を出し入れしやすくした遠心機用ロータ及びそれを用いた遠心機を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、ロータの保持穴の低応力部に浅い縦溝を設けたとしても、試料容器の変形を抑えることができ、遠心荷重によって発生する試料から受ける圧力(液圧)によって試料容器の変形や破損の発生を防止できるようにした遠心機用ロータ及びそれを用いた遠心機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち代表的な特徴を説明すれば次のとおりである。
本発明の一つの特徴によれば、試料容器を収納するための複数の保持穴と、駆動源の回転軸に装着される装着部を有し、保持穴が回転軸の軸線A1に対して固定角にて所定の角度を有するように傾けられている遠心機用ロータにおいて、複数の保持穴の内周面であってロータの回転の回転軸線A1に近い側に、保持穴の開口面から底部側に向けて連続するように延びる縦溝をそれぞれ設けた。保持穴は、円筒形の試料容器(半径R)に対応する半径R1の円筒面を有する。縦溝は円筒面の長手方向に向けて形成されるものであって保持穴の半径R1よりも小さい半径R2の曲面状の溝とした。また、縦溝は、保持穴の最内側部分の開口面縁部から底面までの高さHに対して、半分以上の長さとなるように開口面の縁部から下方向に形成される。
【0010】
本発明の他の特徴によれば、保持穴は中心線B1に対して直交する底面を有し、円筒面から底面に至る接続部分の断面形状が曲率半径R3となるような円弧面にて形成し、縦溝の下端位置は円弧面に到達するように形成される。また、保持穴は平坦な底面を有する形状だけでなく、下端部が曲率半径R4の半球状の底部とされるものでも良い。円筒面における縦溝の深さは、開口面に近い側から底部に渡って一定とする。尚、円筒面における縦溝の深さは、開口面に近い側がから底部に向かって徐々に浅くなるように構成しても良い。
【0011】
本発明のさらに他の特徴によれば、保持穴は、鋳造又は鍛造に形成された金属製のロータボディに切削加工をすることによって形成され、保持穴として半径R1の円筒溝の切削加工をおこなう前に、半径R2のドリル穴をあけることによって保持穴の側面に沿って縦溝となる面を形成する。保持穴の中心線B1と直交する断面位置において、縦溝を設ける周方向位置は回転軸A1に近い最内周位置を含む回転角±45度以内に配置すると良く、好ましくは円周方向のうち最内周位置付近又はその近傍として、遠心荷重によって加わる局所的な応力変化が少ない部分に形成するのが好ましい。
【0012】
本発明のさらに他の特徴によれば、試料容器を収納するための保持穴が複数形成され、駆動源の回転軸に装着される装着部を有し、保持穴が回転軸の軸線A1に対して固定角に傾けられている遠心機用ロータにおいて、複数の保持穴の中心線B1に直交する断面形状は略三角形や楕円形等の非円形とし、断面形状のうち回転軸の軸線A1に最も近い部分の曲面の半径R6を、保持穴に装着される試料容器の軸線A1に最も近い部分の曲率半径R5と等しいか又はそれよりも小さくすることによって、試料容器と保持穴の壁面との間に隙間が形成されるようにした。この曲面の半径の相違によって断面形状のうち回転軸の軸線A1に最も近い部分において、中心線B1と同方向に延びる縦方向に連続する隙間を形成することができる。非円形の保持穴の一例として、保持穴の水平な横断面形状は3つの頂点部を有する略三角形であって、最内周に頂点部の一つが位置し、回転軸の軸線A1から等距離の位置に頂点部の残りの2つが位置するように構成できる。
【0013】
本発明のさらに他の特徴によれば、試料容器を収納するための保持穴が複数形成され、駆動源の回転軸に装着される装着部を有し、保持穴が回転軸の軸線A1に対して固定角に傾けられている遠心機用ロータにおいて、円筒形の試料容器の円筒部分の外縁の半径がR5の場合、それを保持する保持穴の長手方向中心線B1と直交する断面形状のうち回転軸の軸線A1に最も近い部分の曲面が半径R6で形成され、回転軸の軸線A1に最も遠い部分の曲面が半径R7で形成され、それらの曲面の曲率半径の大小関係が、R6<R5≦R7となるように保持穴を形成した。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ロータの保持穴のうち、遠心荷重の最も少ない最内周部分に、保持穴の開口部から連続する小さい縦溝(キー溝)を形成したので、遠心分離運転によって保持穴の内壁面と試料容器の外面が密着することによって空気の流入出がし難くなるという従来のロータの問題を解消できる。また、保持穴と試料容器の間であって部分的に領域(縦溝の部分)から効果的に空気を流入させることができるので、試料容器をロータから容易に出し入れができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例に係る遠心機1の正面図であり一部にその断面を示す。
【
図3】
図2の保持穴40の中心線B1に直交する部分断面図である。
【
図4】
図1のロータ30の縦断面図(左側半分)と側面図(右側半分)である。
【
図5】
図1のロータ30の保持穴40の切削加工手順を示す図である。
【
図6】本実施例に係るロータ30に形成される縦溝45の配置を示すための図であって、(A)は保持穴40の縦断面図であり、(B)は縦溝45の下端45b付近の拡大断面図である。
【
図7】本実施例の変形例1に係るロータ30Aに形成される縦溝55の配置を示すための図であって、(A)は保持穴40Aの縦断面図であり、(B)は縦溝55の下端55b付近の拡大断面図である。
【
図8】本実施例の変形例2に係るロータ30Bに形成される縦溝56の配置を示すための図であって、(A)は保持穴40Bの縦断面図であり、(B)は縦溝56の下端56b付近の拡大断面図である。
【
図10】本実施例の変形例2に係るロータ30Cに形成される縦溝57の配置を示すための図であって、(A)は保持穴40Cの縦断面図であり、(B)は(A)のC-C断面図である。
【
図11】本実施例の変形例4に係るロータ30Dに形成される縦溝58の配置を示すための図であって、(A)は保持穴40Dの縦断面図であり、(B)は(A)のD-D断面図である。
【
図12】本発明の第2の実施例に係るロータ60の保持穴70を中心軸E1上方から見た図である。
【
図13】従来例のロータ160の保持穴170を中心線E1上方から見た図である(回転停止時)。
【
図14】従来例のロータ130の保持穴140を中心線B1上方から見た図である(回転停止時)。
【
図15】従来例のロータ130の保持穴140を中心線B1上方から見た図である(回転時)。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、上下左右の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
【0017】
図1は本発明の遠心機1の正面図であり、一部を断面で示す図である。遠心機1は、矩形箱型の筐体2を備え、筐体2の内部には水平な仕切り板11によって上下2段の空間に仕切られる。仕切られた上段の空間には、上面が開口する円筒状のチャンバ3が設けられる。チャンバ3の外周部には図示しない冷媒循環用パイプが接着され、遠心機1内に設けられた図示しない冷却機から供給される冷媒を流すことによりチャンバ3の内部空間、即ち、ロータ室4を冷却する。チャンバ3の周囲には断熱材9が設けられる。チャンバ3は、上側に開口を有するボウル状に形成され、チャンバ3の上側には、開閉可能なドア10が設けられ、ドア10を閉じることによってロータ室4が密閉される。ロータ室4の内部にはロータ30が収容される。筐体2の上部の右側には操作表示部13が設けられる。操作表示部13は、タッチ式の液晶ディスプレイであって、ユーザがデータや操作指示の入力を行うための入力機器と、ユーザに対して情報を可視的に表示するための表示機器としての機能を果たす。尚、操作表示部13として、独立したキースイッチと、LED等の表示装置を用いても良い。また、タッチ式の液晶ディスプレイ以外の入出力機器を用いても良い。
【0018】
筐体2内の仕切り板11の下方には、モータ7を含む駆動部5が設けられる。駆動部5はモータハウジング6を含み、モータハウジング6の内部には駆動源としての電気式のモータ7が設けられる。モータハウジング6は、ダンパ8を介して仕切り板11に固定される。モータハウジング6の上方側には、モータハウジング6の軸支持部6Aがチャンバ3の底部に設けられた穴3Bを貫通してロータ室4内に達するように配置される。また、モータ7の回転軸7Aは、軸支持部6Aにより回転可能に軸支され、ロータ室4内にまで上方に延び、その上端部にクラウン12が設けられる。ロータ30はクラウン穴36(後述する
図2参照)が設けられ、クラウン穴36がクラウン12に固定される。このようにロータ30が、クラウン12に対して着脱可能に構成され、モータ7によって高速にて回転される。
【0019】
ロータ30は、使用する試料容器50に応じた保持穴40を有するものを選択してクラウン12に装着される。ロータ30に形成された試料容器50の保持穴40には、試料を充填した試料容器50が装着される。試料容器50は、ガラス、金属又は合成樹脂製のチューブ状の筒袋状容器やボトルであって、円筒部51の一方側端部(上側)が閉鎖されて底部52(符号は
図4参照)が形成された容器である。ロータ30の保持穴40に対して挿入又は取り外しができるように構成される。
図1の試料容器50は上側開口に蓋がないが、蓋付きの試料容器であっても良い。ロータ30の内部に複数の試料容器50を装着したら、ロータカバー47を被せてから、ロータ30を回転させる。ロータ30の回転方向と直交断面の直径は、チャンバ3の大きさの範囲内で小さいロータから大きいロータまで様々である。また、ロータ30に装着される試料容器50の装着本数は、2本から数十本まで様々な種類のロータ30を使用できる。尚、最初からロータカバー47を用いないロータ30もある。
【0020】
図2は
図1のロータ30の縦断面図である。ロータ30は、ロータボディ31と、ロータボディ31の上側の開口部32を塞ぐロータカバー47(
図1参照)によって構成される。ロータボディ31には、試料容器50を装着するために複数の円柱形の保持穴(チューブ穴)40が円周方向に等角度ピッチで設けられる。ここでは4つの保持穴40が設けられている。保持穴40は試料容器50の外形とほぼ同形の形状であり、その大きさは試料容器50を無理なく着脱でき、しかもできるだけ小さい隙間とすると好ましい。例えば、保持穴40の壁面と試料容器50の円柱状の外周面との隙間が0.1乃至1mm程度である。この隙間が大きすぎると遠心分離時に試料容器50に加わる液圧や遠心力による外周面の変形の度合いが大きくなるので、試料容器50の耐久性が低下する恐れがある。保持穴40は、円筒面41と底面42を有し、円筒面41と底面42を曲面43によって接続している。
【0021】
保持穴40は、試料容器50(
図1参照)の上側及び上側内周部を除いて、その外周面のほぼ全部と底部を覆うように形成される。このように保持穴40にて覆われる箇所を極力広くすることにより、遠心分離作業中の試料容器50自体の変形を防ぐことができる。保持穴40は、長手方向中心線B1が回転軸線A1に対して固定角にて傾けられているもので、ロータ30は、いわゆるアングルロータと呼ばれるものである。保持穴40は中心線B1の軸方向上側から見たときの形状が円形であって、保持穴40の一方(上側)が開口44となり、他方側(下側)が底面42となる。円筒面41と底面42の間は中心線B1を含む断面形状が円弧状に形成された円弧面43によってなめらかな形状にて接続される。
【0022】
ロータ30の上側内側部分には、開口部32より下方に窪むような窪み部33が設けられる。また窪み部33を設けることによって、ロータ30の軽量化及び、低重心化を図ることができる。ロータボディ31の回転軸線A1に沿った上下方向のほぼ中央付近には、径方向に連続するものであって上下方向の厚さdが厚い円盤状の基体部31aが形成され、基体部31aの上面が窪み部33の底面となる。ロータボディ31の中心であって、基体部31aの上方には、ハンドル48をネジ締めすることによってロータカバー47を固定するためのネジ穴34が形成される。ロータボディ31の下側には、円筒部37の外周側を上方向にえぐるようにして減肉した減肉部35が形成される。このように減肉部35を形成したことによりロータボディ31の軽量化に貢献できる。
【0023】
基体部31aの下方には、クラウン12(
図1参照)に装着するために下方に突出する部分(円筒部37)が形成され、突出する部分の内側にはクラウン12と対応するクラウン穴36が形成される。クラウン穴36は回転軸線A1方向にみて、下側に開口を有し、開口近傍には径が徐々に絞り込まれるようなテーパー部分を有し、テーパー部分から上方には同径部分となり、上側が閉鎖された非貫通穴である。クラウン穴36は、クラウン12に対して相対的に回転不能なように固定されることが重要であり、遠心機の分野で公知の固定方法を用いて装着できる。このようにして装着されたロータ30は、モータ7(
図1参照)によって所定速度で回転駆動される。
【0024】
すべての保持穴40には、中心線B1と直交する水平面で見た際にロータ30に対する最内周位置を通る部分に縦溝45が形成される。縦溝45は保持穴40の開口44と同位置の上端45aから底面近くの下端45bまで連続するように形成される。
【0025】
図3は、
図2の保持穴40の中心線B1に直交する部分断面図である。ここでは保持穴40のうち一つだけを図示している。保持穴40の内周側、即ち、ロータボディ31の回転軸線A1と保持穴40の中心線B1の双方を通る仮想面上とクロスするように、上下方向に延びる縦溝45が形成される。保持穴40は中心線B1の方向から見ると半径R1の真円形の内壁面(円筒面41)が形成され、縦溝45は円筒面41のうち最内周側の一部を内周側に窪ませたように形成される。縦溝45は、中心点をC1として半径R2の仮想円を形成するような円弧状の窪みである。つまり、ロータ30の保持穴40の低応力部(ここでは最内周位置を含む部分)に、保持穴40の半径R1よりも小さい半径R2の縦溝45を設けて、試料容器50を取り出し易くする。また、径方向深さがあまり深くない縦溝45を設けたことで、試料容器50の余計な変形を抑えることができ、ロータ30の高速回転時の遠心荷重によって発生する液圧によって、試料容器50が変形破損しないようにした。
【0026】
図3にはロータの回転軸線A1の位置を示しているが、ロータ30がアングルロータであるため、断面位置の決め方によって中心線B1と回転軸線A1の距離は変化する。しかしながら円筒面41のどの断面位置であっても、ロータボディ31の回転軸線A1と保持穴40の中心線B1を通る仮想線が縦溝45を通るように形成される。尚、縦溝45はロータボディ31の回転軸線A1と保持穴40の中心線B1を通る仮想線上に無くても、遠心荷重による応力をうける度合いが少ない周方向範囲内に配置しても良い。一番好ましい位置は
図3のように最内周位置を含むところであるが、後述する縦溝45の加工の関係、又はその他の理由から、仮想線から回転角θ=±45度以内に配置すると良く、回転軸A1に最も近い最内周位置を含む箇所が、遠心荷重によって加わる局所的な応力変化が最も少ないため縦溝45を設けるのに最も好ましい。
【0027】
図4はロータ30の縦断面図(左側半分)と側面図(右側半分)を示している。ロータカバー47は、ハンドル48によってネジ穴34にねじ締結されることによってロータ30の開口部32を閉鎖するようにして取りつけられる。保持穴40の内部に試料54を満たした試料容器50を装着した状態であって、ロータカバー47が装着され、ロータ30が高速回転している状態を示している。ロータ30が高速にて回転すると、遠心荷重によって試料容器50の内部に入れられた試料54の液面54aは鉛直方向になる。試料54の位置を見ればわかるように、縦溝45と接する試料容器50の壁面には、試料54が内周側から接しないので、その壁面部分には遠心荷重がほとんど加わらない。従って、試料54よって生ずる遠心荷重が試料容器50を変形させたとしても、縦溝45に試料容器50から受ける荷重が低いので、縦溝45を形成したことによる試料容器50の変形の影響はほとんどない。
【0028】
次に、
図5を用いて保持穴40に隣接して縦溝45を形成する方法を説明する。保持穴40の加工は、フライス盤を使用し、刃物としてドリルやエンドミルを使用することにより加工できる。
図5はロータ30の保持穴40の切削加工手順を示す図であって、(A)から(D)に至る工程を含んで製造される。ロータボディ31は、アルミ合金やチタン合金材料を用いて機械加工で製作された一体構造(中実型)である。また、CFRPコンポジット材で製作することも可能である。最初に、鍛造または鋳造によって、おおよその形状に形成された金属の塊を切削することにより外形を整え、開口部32から下側へ窪み部33を切削加工によって形成する。この形成後の状態を示すのが
図5(A)である。従来のロータにおいては、この後に
図5(C)に示すようにエンドミル202を用いて保持穴40を形成する。しかしながら、本実施例ではエンドミル202を用いる前に、
図5(B)で示すように先端が半円形状のドリル201などを用いることによって、縦穴46を形成する。縦穴46を形成するドリル201の回転中心(中心軸線C1)は、保持穴40の中心線B1と平行となるように形成する。
【0029】
図5(B)は、縦穴46の穿孔加工が終了してドリル201を上方に引き抜く途中の状態を示している。ここで、保持穴40の切削予定輪郭を点線40’で示していることから理解できるように、ロータボディ31を基準にみて、ドリル201の外周側部分と底面部分は、点線40’の内側領域に留まっている。一方、ドリル201の、ロータボディ31から見て内周側の一部分は点線40’をはみ出してロータボディ31の内側部分にはみ出す。ここでは、縦穴46の最内周側、即ち回転軸線A1に最も近い側において回転軸線A1に近づく方向に窪む部分が縦溝45となる。縦溝45は曲率半径がR2となる円弧状の窪みとなる。縦穴46の下端位置は
図2で示した円弧面43の近くに到達するように形成される。穿孔された縦穴46の直径は、中心軸線C1と直交方向に一定である。
【0030】
縦穴46の加工が終了したら、
図5(C)に示すようにエンドミル202を用いて保持穴40の削り出し加工を行う。ここでは保持穴40の内径(半径R1)よりも小さい径(先端半径R4)のエンドミル202を用いる。エンドミル202は、先端の正面にエンド刃202aが複数ついているもので、外径から中心に向かうに従って横から見ると『く』の字の様に勾配が付いている公知の工具である。エンドミル202の半径R4は保持穴40の半径R1よりも十分小さいので、回転するエンドミル202の軸線D1を中心線B1に対して公転するように移動させながら切削加工を行う。尚、エンドミル202を用いた保持穴40の切削方法は、従来と同様であるので、ここでの詳細な説明は省略する。以上のようにして切削加工を終了した状態が
図5(D)である。
【0031】
エンドミル202を用いて保持穴40を加工すると、
図5(D)に示すように保持穴40は中心線B1に対して直交する底面42を有し、円筒面41から底面42に至る接続部分の断面形状が曲率半径R3となるような円弧面43になる。一方、円筒面41の内周側(ロータ30の回転軸線A1に近い側)の一部に、ドリル201にて穿孔した縦穴46の一部が残ることになる。この結果、
図3に示したような中心線B1と直交する断面において、断面形状が円弧状となるような内周側に突出する縦溝45が形成できる。また、ドリル201として先端が半球状のものを用いたので、縦溝45の下端45bの形状が中心線B1に近づく方向になめらかに推移する曲面を形成できるので、下端45bにて局所的な応力集中を低減できる。このように保持穴40を切削加工する前に、ドリル201にて縦溝45部分を穿孔加工するようにすれば、ドリル201の太さを適宜選択することによって任意の大きさの縦溝45を形成できる。また、エンドミル202を用いた保持穴40の切削加工方法は、従来から行われている加工方法と同じであるので、保持穴40の良好な切削加工精度を維持することができる。さらに、縦穴46をエンドミル202による加工の前に穿孔することによって、保持穴40と縦穴46との境界部分を良好な接続面として仕上げることができるという利点がある。尚、保持穴40と縦穴46の金属加工方法は任意であり、
図5(A)~(D)の手順以外の加工方法を用いるようにしても良いことは言うまでも無い。
【0032】
図6は
図1~
図4に示すロータ30の縦溝45の縦方向長さを説明するための図である。
図6(A)に示すように、保持穴40の開口44は、ロータ30を基準に見て最内周側の開口44aから、保持穴40の中心線B1近くの開口44bまでは水平な輪郭を有し、中心線B1付近から上側に延びるような開口44cとなる。これら開口44(44a~44c)のうち、最内周側に位置する開口44aが縦溝45の上端45aと一致する。縦溝45は円筒面41の下端付近、即ち、曲率半径R3で湾曲する円弧面43に近接する下端45bまで延びるように形成される。ここで、上端45aから下端45bまで縦溝45が連続した溝として形成されることが重要である。溝を連続させずに断続的に形成すると下端45bと上端45aの間に空気が流れることができないからである。このように縦溝45を形成することによって、円弧面43付近において、試料容器50の外面と保持穴40の壁面との隙間の間にロータボディ31の外部から空気が入り易くなるので、試料容器50が保持穴40の壁面と密着してしまうことに起因する、試料容器50が取り出しにくい現象の発生を低減できる。さらに、保持穴40と試料容器50の底部52で仕切られる空間の空気が縦溝45から抜けるので、試料容器50が容易に入れることができる。
【0033】
図7は
図6の第一の変形例に係るロータ30Aの縦溝55を示す図であり、(A)は保持穴40Aの縦断面図であり、(B)は縦溝55の下端55b付近の拡大断面図である。縦溝55の形状は、
図6で示した縦溝45の形状と同じであり、上端55aの位置は
図6で示した上端45aの位置と同じである。一方、下端55bの位置は
図6で示した下端45bの位置よりも下側に延びており、円筒面41と円弧面43との境界付近、又は、境界よりもわずかに下側に位置する。このように下端55bを更に下方にすることによって、底面42への空気の流入がより容易となり、遠心分離終了後に試料容器50を容易に取り外すことが可能となる。さらに、保持穴40と試料容器50の底部52で仕切られる空間の空気が縦溝45から抜けるので、試料容器50が容易に入れることができる。
【0034】
図8は
図6の第二の変形例に係るロータ30Bの縦溝56を示す図であり、(A)は保持穴40Bの縦断面図であり、(B)は縦溝56の下端56b付近の拡大断面図である。縦溝56の水平断面形状は、
図6で示した縦溝45の形状と同じであり、上端56aの位置は
図6で示した上端45aの位置と同じである。一方、下端56bの位置は
図7で示した下端55bの位置よりも下側に延びており、円筒面41と円弧面43との境界41bよりもずっと下側に位置する。このように下端56bを更に下方にすることによって、底面42への空気の流入がより容易となり、遠心分離終了後に試料容器50を容易に取り外すことが可能となる。さらに、保持穴40と試料容器50の底部52で仕切られる空間の空気が縦溝45から抜けるので、試料容器50が容易に入れることができる。
【0035】
図9は、
図8(A)のB-B断面図である。この図では縦溝56の周方向幅Wが理解できるであろう。
図5で示した製造方法にて縦溝56を形成すると、円筒面41内における縦溝56の深さ(保持穴40の径方向に見た深さ)は、保持穴の中心線B1と直交方向に一定であって、保持穴の中心線B1と直交する断面形状が半円状に形成される。また、保持穴40の内部から縦溝56を見ると縦溝56の周方向幅Wは上端56aから下端56b近くまで下端部を除いてほぼ一定である。このように、縦溝56が試料容器50の装着及び取り外し方向と平行に延びるので、円弧面43に外気が入りやすくなり、試料容器50の取り外しをスムーズに行うことができる。さらに、保持穴40と試料容器50の底部52で仕切られる空間の空気が縦溝56から抜けるので、試料容器50が容易に入れることができる。
【0036】
図10は、本実施例の変形例2に係るロータ30Cに形成される縦溝57の配置を示すための図であって、(A)は保持穴40Cの縦断面図であり、(B)は(A)のC-C断面図である。ここでは
図5(2)のドリル201を用いて穿孔する際に、ドリル201の回転軸線C1を、保持穴40の中心線B1に対して平行でなく、やや斜めになるように形成した。つまり、
図5に示した回転軸線C1が上側において中心線B1との距離が大きく、下側において中心線B1側にわずかに近づくようにした。このように形成することで
図10(A)に示すように径方向にみた縦溝57の深さが上端57aから下端57bに至るまで徐々に小さくなるように構成できた。
【0037】
図10(B)のC-C断面図においては、縦溝57の周方向の横幅は、上端57a付近でW1であるが、下端57bに近い部分ではW2となって、W1>W2の関係にあることが理解できるであろう。尚、下端57bの位置が円筒面41と円弧面43の境界41bよりも下側に到達しているが、下端57bの位置は少なくとも開口44から下側において、円筒面41の内周側の占める高さHの半分以上確保すれば十分な効果を得ることができ、下端57bはどの位置まで到達させても、従来のロータ130に比べて十分な効果を得ることが可能となる。
【0038】
図11は本実施例の変形例4に係るロータ30Dに形成される縦溝58の配置を示すための図であって、(A)は保持穴40Dの縦断面図であり、(B)は(A)のD-D断面図である。ここでは径方向にみた縦溝58の深さが上端58aから下端58bに至るまで徐々に大きくなるように構成した。この加工は、
図5(2)のドリル201を用いて穿孔する際に、ドリル201の回転軸線C1が上側において中心線B1との距離が小さくなるようにして、下側において中心線B1側からわずかに遠ざかるようにして穿孔加工を行うことで形成できる。
図11(B)に示すD-D断面図においては、縦溝57の周方向の横幅は、上端57a付近でW3であるが、下端58bに近い部分ではW4となって、W3<W4の関係にあることが理解できるであろう。
【実施例2】
【0039】
以上、
図1~
図11を用いて本発明の実施例及びその変形例を説明してきたが、本発明は断面形状が円形の保持穴を有するアングルロータだけでなく、
図12、
図13に示すような中心線B1に直交する断面形状が非円筒形となる保持穴70を有するロータ60に対しても同様に適用できる。そのようなロータ60の詳細は、出願人が出願した特開2011-011131号公報に開示されている。最初に
図13を用いて従来の非円筒形となる保持穴170を有するロータ160の形状を示す。
図13において、ロータ160の保持穴170の横断面形状は、内周側に1つの頂点部175cを有する略三角形であり、前記略三角形の2つの頂点部175a、175bが前記ロータの回転軸から等距離となるように外周側に配置され、前記横断面でみて、保持穴170の最内周位置から外周側へ保持穴の径方向の長さの60%以上に渡って、その円周方向の間隔が徐々に拡大するように形成される。また、略三角形の内周側に位置する頂点部175a~175cを挟む3つの辺部の接線が成す角度は、略60°であって等しくなるように形成した。保持穴170と試料容器80の間にはわずかな隙間があり、ロータ160が高速にて回転すると
図13に示しているように試料容器80が外周側に移動して、保持穴170の最内周位置には図示のように径方向にわずかな隙間が生ずることになる。従って、ロータ160の最内周側部分の保持穴170の形状を変更して頂点部175c付近に縦溝を形成するか、又は縦溝に相当する隙間をあえて形成するように頂点部175cの曲率半径を変更しても遠心分離性能には影響ない。
【0040】
図12は本発明の第2の実施例に係るロータ60の保持穴70を中心線E1上方から見た図である。ロータ60の保持穴70の形状は外周側に2つの頂点部75a、75bを有し、内周側に1つの頂点部75cを有する略三角形である。試料容器80は、従来から用いられているものと同じであり、筒状部分の下側端部が閉鎖されて底部(図では見えない)が形成され、上側に断面形状が円形の開口と蓋部(共に図示せず)が設けられる。ここで、ロータ60を基準に見て、試料容器80の回転軸A1に近いところの頂点部75cの成す曲率半径R6とし、ロータの保持穴70の最内周側の頂点部75a又は75bの成す曲率半径をR7とすると、R6<R7の関係になるように形成される。このように形成すれば、試料容器80の辺部81cと、保持穴70の頂点部75cとの間に縦方向に連続する隙間が形成されることになり、
図2~
図6で示したような第一の実施例の縦溝45と同じ効果を得ることができ、遠心分離運転後に試料容器80を取り出しやすくなる。
【0041】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば上述の実施例では、収容チューブ穴が回転軸の軸線A1に対して固定角に傾けられているアングルロータで説明したが、固定角は0°のいわゆるバーチカルロータでも本実施例でいうアングルロータの範疇に含まれる。さらに保持穴の下端部が半球状の底部(例えば曲率半径R4)の場合は、縦溝の下端位置は半球状部に到達するように形成しても良い。
【符号の説明】
【0042】
1 遠心機 2 筐体 3 チャンバ 3B (チャンバの)穴
4 ロータ室 5 駆動部 6 モータハウジング 6A 軸支持部
7 モータ 7A 回転軸 8 ダンパ 9 断熱材
10 ドア 11 仕切り板 12 クラウン 13 操作表示部
30 ロータ 30A~30D ロータ 31 ロータボディ
31a 基体部 32 開口部 33 窪み部 34 ネジ穴
35 減肉部 36 クラウン穴 37 円筒部 40 保持穴
40A~40D 保持穴 40’ (保持穴の)切削予定輪郭
41 円筒面 41b 境界 42 底面 43 円弧面
44、44a~44c 開口 45 縦溝 45a 上端
45b 下端 46 縦穴 47 ロータカバー 48 ハンドル
50 試料容器 51 円筒部 51A 開口部 52 底部
53 円弧面 54 試料 54a 液面 55~58 縦溝
55a、56a、57a、58a 上端
55b、56b、57b、58b 下端
60 ロータ 61 ロータボディ 70 保持穴
75a~75c 頂点部 80 試料容器 130 ロータ
131 ロータボディ 140 保持穴 141~143 液圧
144 遠心力 146 隙間 160 ロータ 170 保持穴
175a~175c 頂点部 201 ドリル 202 エンドミル
202a エンド刃
A1 回転軸線 B1 中心線 C1 回転軸線
E1 中心線 R1~R7 曲率半径