(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】手摺取付方法及び手摺取付用治具
(51)【国際特許分類】
E04F 11/18 20060101AFI20220805BHJP
【FI】
E04F11/18
(21)【出願番号】P 2018124470
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】添田 勝也
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-108724(JP,A)
【文献】特開2000-064589(JP,A)
【文献】特開2008-038517(JP,A)
【文献】特開2001-073524(JP,A)
【文献】特開2014-114650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/18
E04G 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手摺部材の取付高さを特定する手摺部材高さ特定工程と、
特定された前記手摺部材の取付高さに合わせて長尺な手摺取付用治具を壁部に仮固定する治具固定工程と、
前記手摺部材の長手方向の両端部の位置に対応する一対の手摺端部印を前記手摺取付用治具に記入する手摺端部印記入工程と、
前記手摺部材を支持する手摺ブラケットの前記壁部への取付位置である手摺ブラケット取付印を前記手摺取付用治具に記入する手摺ブラケット取付印記入工程と、
前記手摺ブラケットを前記手摺ブラケット取付印に近接配置して前記壁部に固定する手摺ブラケット固定工程と、
前記手摺部材を前記手摺ブラケットに固定する手摺部材固定工程と、
を有することを特徴とする手摺取付方法。
【請求項2】
前記一対の手摺端部印間の距離に応じて前記手摺部材を切断する手摺部材切断工程をさらに有する
請求項1に記載の手摺取付方法。
【請求項3】
前記手摺部材固定工程後、前記手摺取付用治具を前記壁部から取り外す治具取外し工程をさらに有する
請求項1または請求項2に記載の手摺取付方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の手摺取付方法で用いる手摺取付用治具であって、
帯形状を有する長尺部材であり、
長手方向に直交する方向の幅が、壁部に取り付けられる手摺部材の上端部の位置から前記手摺部材を取り付ける手摺ブラケットの前記壁部への取付基準位置までの長さと等し
く、
平面部に前記長手方向に沿って設けられるガイド線を有し、
ロール状に巻回されており、前記ガイド線が、巻回された内側面に形成されていることを特徴とする手摺取付用治具。
【請求項5】
前記取付基準位置は前記手摺ブラケットの前記壁部への固定部の上端であり、
前記幅が、前記手摺部材の上端部の位置から前記固定部の上端までの長さと等しい請求項4に記載の手摺取付用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手摺取付方法及び手摺取付用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行者の歩行を補助するため、廊下や階段の壁部に棒状の手摺が取り付けられている。また、近年、高齢の居住者が既存の住居の廊下や階段に手摺を設置するリフォームを行う需要がある。階段やスロープに手摺を設置する場合、階段やスロープの傾斜に応じて高さが異なる位置に複数の手摺ブラケットを取り付け、手摺ブラケット間に手摺部材を架設する。階段は、上下階を直線状に結ぶ直階段や、平面視L字状の折れ階段や、途中で平面視U字状に折り返される折り返し階段等、建物によって態様が異なる。また、階段の傾斜角度や寸法も建物によって異なる。そのため、階段に手摺を設置する際、施工現場において手摺の取付位置及び手摺の長さを実測しながら施工している。
【0003】
歩行者は、手摺の上方から手を載せるようにして手摺を使用している。そのため、手摺の取付位置は、床面から手摺の上端までの高さを基準として手摺の高さで位置決めする。一方、手摺は、壁部に固定された手摺ブラケットに固定され、壁部から離間した位置に配置される。そのため、施工者は手摺の上端の位置に基づいて手摺ブラケットの壁部への取付位置を算出し、手摺ブラケットの取付位置を壁面に墨出している(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、リフォーム工事の場合等、壁紙等の仕上げ材が設けられている壁部に手摺を設置する場合がある。特許文献1の手摺ブラケット取付方法では、壁紙に墨出しラインを付して手摺ブラケットを取り付ける必要がある。しかし、壁紙に墨出しラインを付して壁紙を汚すことは敬遠される。一方、墨出しを行わずに、手摺や手摺ブラケットの設置位置の位置決め作業を行うことは難しい。
【0006】
上記事情を踏まえ、本発明は、壁部を汚すことなく手摺部材及び手摺ブラケットを取り付ける作業が容易に行える手摺取付方法及び手摺取付用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る手摺取付方法は、手摺部材の取付高さを特定する手摺部材高さ特定工程と、特定された前記手摺部材の取付高さに合わせて長尺な手摺取付用治具を壁部に仮固定する治具固定工程と、前記手摺部材の長手方向の両端部の位置であるに対応する一対の手摺端部印を前記手摺取付用治具に記入する手摺端部印記入工程と、前記手摺部材を支持する手摺ブラケットの壁部への取付位置である手摺ブラケット取付印を前記手摺取付用治具に記入する手摺ブラケット取付印記入工程と、前記手摺ブラケットを前記手摺取付用治具の前記手摺ブラケット取付印に近接配置して前記手摺ブラケットを前記壁部に固定する手摺ブラケット固定工程と、前記手摺部材を前記手摺ブラケットに固定する手摺部材固定工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、手摺部材及び手摺ブラケットを取り付ける作業が容易に行える。具体的には、手摺部材高さ特定工程により特定された手摺部材の取付高さに合わせて長尺な手摺取付用治具を壁部に仮固定し、手摺取付用治具の位置に合わせて手摺ブラケット及び手摺部材を固定するため、壁部に墨出し線を引く必要がない。その結果、例えば、壁紙等の仕上げ材で覆われた壁部に手摺を取り付ける場合であっても、墨出し線等で壁部を汚すことなく、容易に手摺部材及び手摺ブラケットを取り付けることができる。
【0009】
本発明に係る手摺取付方法は、前記一対の手摺端部印間の距離に応じて前記手摺部材を切断する手摺部材切断工程をさらに有してもよい。
【0010】
この発明によれば、手摺端部印記入工程において手摺取付用治具に記入した一対の手摺端部印間の距離に応じて手摺部材を切断できる。この結果、手摺部材の寸法の計測が容易であり、且つ、手摺部材を設置寸法に対応させて容易に切断できる。
【0011】
本発明に係る手摺取付方法は、前記手摺部材固定工程後、前記手摺取付用治具を前記壁部から取り外す治具取外し工程をさらに有してもよい。
【0012】
この発明によれば、手摺部材及び手摺ブラケットの取付位置を示す印を手摺取付用治具に記入し、手摺ブラケット及び手摺部材を固定した後、手摺取付用治具を壁部から取り外すことができる。したがって、壁部に直接墨出し線を付す従来の方法に比べて、壁部を汚すことなく手摺部材及び手摺ブラケットを取り付けられる。この結果、壁紙等の仕上げ材が設けられている壁部であっても容易に手摺を取り付けられる。
【0013】
本発明に係る手摺取付用治具は、上記手摺取付方法で用いる手摺取付用治具であって、帯形状を有する長尺部材であり、長手方向に直交する方向の幅が、壁部に取り付けられる手摺部材の上端部の位置から前記手摺部材を取り付ける手摺ブラケットの前記壁部への取付基準位置までの長さと等しく、平面部に前記長手方向に沿って設けられるガイド線を有し、ロール状に巻回されており、前記ガイド線が、巻回された内側面に形成されていることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、手摺取付用治具が長尺な帯形状を有し、長手方向に直交する方向の幅が、手摺部材の上端部から手摺部材が取り付けられる手摺ブラケットの壁部への取付位置までの長さと等しいため、手摺取付用治具を壁部に仮固定することにより、手摺部材の取付位置に応じた手摺ブラケットの取付基準位置を容易に特定できる。また、壁部に墨出し線を引く必要がない。さらに、手摺取付用治具により手摺ブラケットの取り付け位置を容易に視認できる。したがって、手摺部材及び手摺ブラケットを取り付ける作業が容易に行える。
この発明によれば、帯形状の手摺取付用治具の長手方向に沿って設けられたガイド線により、手摺部材の下端の高さまたは手摺ブラケットにおける手摺部材の固定位置を容易に視認できる。
この発明によれば、手摺取付用治具がロール状に巻回されているため、治具固定工程において壁部に手摺取付用治具を仮固定する作業が行いやすい。
【0015】
本発明に係る手摺取付用治具は、前記取付基準位置は前記手摺ブラケットの前記壁部への固定部の上端であり、前記幅が、前記手摺部材の上端部の位置から前記固定部の上端までの長さと等しくてもよい。
【0016】
この発明によれば、手摺取付用治具を壁部に仮固定すると、第一端部により手摺部材の取り付け位置が容易に位置決めされ、第二端部により手摺ブラケットの取り付け位置が容易に位置決めできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、壁部を汚すことなく手摺部材及び手摺ブラケットを取り付ける作業が容易に行える手摺取付方法及び手摺取付用治具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る手摺取付方法及び手摺取付用治具を使用して手摺ユニットを階段に取り付けた施工例を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る手摺取付方法を示す縦断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る手摺取付方法を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る手摺取付方法を示す模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る手摺取付用治具を示す正面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る手摺取付方法を示す模式図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る手摺取付方法を示す模式図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る手摺取付方法を示す模式図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る手摺取付方法を示す模式図である。
【
図10】本発明の一実施形態の手摺ユニットの態様を示す模式図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る手摺取付方法を示す模式図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る手摺取付用治具の変形例を示す斜視図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る手摺取付方法の変形例を示す縦断面図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係る手摺取付方法の変形例を示す模式図である。
【
図15】本発明の一実施形態に係る手摺取付方法の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る手摺取付方法及び手摺取付用治具について説明する。
図1は、本実施形態に係る実施形態に係る手摺取付方法及び手摺取付用治具を使用して手摺ユニットを階段に取り付けた施工例を示す斜視図である。
図2は、本実施形態に係る手摺取付方法を示す縦断面図である。本実施形態に係る手摺取付方法及び手摺取付用治具を、
図1に示す階段Sに手摺ユニット100を取り付ける例を用いて説明する。
【0024】
まず、階段Sに取り付ける手摺ユニット100について説明する。
図1及び
図2に示すように、手摺ユニット100は、手摺部材40と、手摺ブラケット20とを備えている。手摺部材40は、互いに離間配置されて壁部Wに固定された一対の手摺ブラケット20により支持、固定され、壁部Wに固定される。本実施形態の手摺ユニット100では、手摺部材40は壁部Wから離間した位置で固定される。手摺部材40は、階段Sの壁部Wに複数設けられる。各手摺部材40は床面Fから所定の高さに設置される。階段Sに手摺を設ける場合、手摺部材40は、階段Sの踏板SFから所定の高さH1に設置される。このため、手摺部材40は階段Sの傾斜角度に応じて踏板SFに対して傾斜して設置される。階段Sに踊り場SLが設けられる場合、踊り場SLに面した壁部Wに取り付けられる手摺部材40は、踊り場SLの床面から所定の高さで略水平方向に設置される。
【0025】
手摺部材40は、木製、樹脂製、アルミニウム合金製等の長尺部材である。本実施形態では、長手方向に直交する断面形状が略長方形状の手摺部材40を例示する。
【0026】
手摺ブラケット20は、公知の手摺ブラケットであり、樹脂製、アルミニウム合金製等の型材である。
図2に示すように、手摺ブラケット20は、アーム部21と、壁部Wに固定される壁固定端部(固定部)22と、手摺部材40が支持固定される手摺固定端部23とを備えている。壁固定端部22は、アーム部21の端部に設けられ、鉛直方向に延びる固定面221を有し、固定面221には、手摺ブラケット20を壁部Wに固定するためのネジ孔(不図示)が形成されている。手摺固定端部23は、アーム部21の上端部に設けられ、手摺部材40を載置する載置面231を有し、載置面231には、手摺部材40を固定するためのネジ孔(不図示)が形成されている。アーム部21は、固定面221及び載置面231の各ネジ孔が露出する凹部を備え、この凹部を覆うネジ隠しカバー26を更に備える。
【0027】
図3は、本実施形態に係る手摺取付方法を示すフローチャートである。
図3に示すフローチャートを参照して本実施形態に係る手摺取付方法を説明する。本実施形態に係る手摺取付方法は、手摺部材高さ特定工程S1と、治具固定工程S2と、手摺端部印記入工程S3と、手摺ブラケット取付印記入工程S4と、手摺ブラケット固定工程S5と、手摺部材固定工程S6とを備える。
【0028】
まず、壁部Wにおける手摺部材40の取付高さ位置を特定する(手摺部材高さ特定工程S1)。
図4は、手摺部材高さ特定工程S1の態様を示す模式図である。踏板SF及び踊り場SLの床面からの手摺部材40の上端の取付高さH1は、手摺を使用する歩行者に応じて任意に設定される。手摺部材40の取付高さH1は、
図4に示すように、踏板SFの段鼻から鉛直方向上方にメジャー等を用いて取付高さH1を測定し、手摺部材40の上端の位置P1を特定する。特定された手摺部材40の上端の位置P1を示す点を壁部Wに鉛筆等により書いてもよい。階段Sの下側の踏板SFにおいても同様に手摺部材40の上端の位置P1を特定する。
【0029】
次に、特定された手摺部材40の位置P1に合わせて手摺取付用治具1を壁部Wに仮固定する(治具固定工程S2)。本実施形態に係る手摺取付方法は、手摺取付用治具1を用いる点が特徴の一つである。
【0030】
手摺取付用治具1について説明する。
図5は本実施形態に係る手摺取付用治具1を示す正面図である。
図6は、手摺取付用治具1の使用態様を示す断面図である。手摺取付用治具1は、手摺部材40及び手摺ブラケット20の取付位置をガイドするための治具である。手摺取付用治具1は、帯形状を有する長尺部材である。手摺取付用治具1は、例えば、紙製、樹脂繊維製等のテープである。手摺取付用治具1は、ロール状に巻回されており、使用時に引き出す。手摺取付用治具1は、後述する手摺端部印M10,M11、手摺ブラケット取付印M20,M21が墨出し用具により記入可能な平面を有する。
【0031】
図5に示すように、手摺取付用治具1は、長手方向Lに沿って延びる両端部11,12が平行に延びて形成されている。手摺取付用治具1は、長手方向Lに直交する方向の幅Aが、壁部Wに取り付けられる手摺部材40の上端部41の位置から手摺ブラケット20の壁部Wへの取付基準位置までの長さと等しく設定されている。具体的には、
図2に示すように、手摺取付用治具1の幅Aは、手摺部材40を手摺ブラケット20に固定した状態における手摺部材40の上端部41の位置から手摺ブラケット20の壁固定端部22の上端24(取付基準位置)までの長さH2と等しく設定されている。
【0032】
図6から
図8は、手摺取付方法における治具固定工程S2の態様を示す模式図である。治具固定工程S2では、
図6及び
図7に示すように、手摺部材高さ特定工程S1にて特定された手摺部材40の上端の位置P1に手摺取付用治具1の幅A方向の第一端部11を合わせて、壁部Wに手摺取付用治具1を仮固定する。例えば、
図6に示すように、手摺取付用治具1の第一端部11を手摺部材40の位置P1に位置合わせした状態で、手摺取付用治具1の長手方向Lの一端部14を低粘着性のシール材5により壁部Wに仮固定する。一端部14がシール材5により壁部Wに仮固定された状態で、手摺取付用治具1をロールから引き出し、階段Sの下側で特定した手摺部材40の位置P1に、手摺取付用治具1の幅A方向の第一端部11を合わせる。このとき、施工者は、手摺取付用治具1のロール部分を把持し、壁部Wに押し当てながら手摺取付用治具1をロールから引き出してもよい。手摺取付用治具1を下側の手摺部材40の位置P1よりも長く引き出したら、その位置で手摺取付用治具1を切断し、シール材5により壁部Wに仮固定する。
【0033】
なお、上述の通り、手摺部材高さ特定工程S1にて手摺部材40の位置P1を2か所特定した後、治具固定工程S2を行う方法に限定されない。例えば、手摺部材高さ特定工程S1で一つの位置P1を特定した後、治具固定工程S2で手摺取付用治具1の一端部14を仮固定し、その後、階段Sの下側において、再び手摺部材高さ特定工程S1と治具固定工程S2とを行い、手摺取付用治具1を壁部Wへ仮固定してもよい。
【0034】
階段Sの場合、手摺取付用治具1は、階段Sの傾斜角度に沿って水平方向に対して傾斜させて壁部Wに仮固定する。踊り場SLの場合床面Fが水平であるため、手摺取付用治具1は、壁部Wに略水平に仮固定される。治具固定工程S2では、
図8に示すように、階段Sの壁部Wに設ける手摺用の手摺取付用治具1と、踊り場SLに設ける手摺取付用治具1とを順に壁部Wに仮固定する。2つの手摺取付用治具1,1は、長手方向Lの端部同士が重なるように壁部Wに仮固定する。
【0035】
手摺取付用治具1が壁部Wに仮固定されると、施工者は、第一端部11により手摺部材40の上端部41の位置が認識でき、第二端部12により、手摺ブラケット20の壁固定端部22の上端24の位置が認識できる。
【0036】
次に、手摺取付用治具1に手摺端部印M10、M11を記入する(手摺端部印記入工程S3)。
図8は、手摺端部印記入工程S3及び手摺ブラケット取付印記入工程S4の態様を示す模式図である。手摺端部印記入工程S3では、壁部Wに仮固定された手摺取付用治具1に、手摺部材40の長手方向Lの両端部の位置に対応する一対の手摺端部印M10、M11を記入する。
【0037】
手摺端部印M10,M11は、後の工程で取り付ける手摺部材40の長手方向Lの両端部の位置を示す印である。施工者は、手摺取付用治具1により手摺部材40の取付位置を容易にイメージできる。施工者は、手摺部材40の両端部の位置を特定し、手摺取付用治具1の第一端部11に直交する方向、すなわち、幅A方向に沿って手摺取付用治具1上に直線を引いて手摺端部印M10、M11を記入する。本実施形態では、手摺部材40の両端部にエンドキャップ30,30を設けるが、手摺端部印M10,M11は、エンドキャップを除いた手摺部材40の両端部の位置とする。
【0038】
ここで、複数の手摺部材40を設ける手摺ユニット100の場合、長手方向Lに隣り合う位置に設けられる各手摺部材40,40の配置は、手摺の使用者の利便性及び手摺として外観上一体感を持たせた配置とすることが望ましい。
図10は、本実施形態の手摺ユニット100の態様を示す模式図である。例えば、
図10に示すように、隣り合う手摺部材40,40の端部に設けられたエンドキャップ30,30の下端同士の離間距離L2を所定距離に設定する。複数の手摺部材40,40のそれぞれの上記離間距離L2を統一する。したがって、手摺端部印記入工程S3では、上記離間距離L2及びエンドキャップ30の寸法を考慮して手摺端部印M10、M11を記入する。具体的には、手摺部材40の高さ方向の長さH3(
図2参照)に基づき、手摺取付用治具1の第一端部11から長さH3となる位置に手摺部材40の下端の位置を示す下端部印M30,M31を記入する。隣り合う手摺取付用治具1,1の下端部印M30,M31に交差するようにメジャーを当て、下端部印M30,M31間の長さが離間距離L2と略等しい位置を手摺部材40の端部位置とし、手摺端部印M10、M11を記入する。つまり、下端部印M30,M31と手摺端部印M10、M11との交点間の長さが上記離間距離L2と等しくなるように、手摺端部印M10、M11を記入する。
【0039】
なお、踊り場SLよりも上方の階段に手摺を取り付ける場合、
図15に示すように、隣り合う手摺部材40の長手方向Lの端部間の離間距離L2は、手摺部材40の長手方向Lの端部の上端部間の距離で設定する。この場合、隣り合う手摺取付用治具1,1の各第一端部11,11間の長さをメジャーで測定し、上記離間距離L2と略等しくなる位置の第一端部11,11が手摺部材40の端部となる。
【0040】
次に、手摺ブラケット取付印M20,M21を手摺取付用治具1に記入する(手摺ブラケット取付印記入工程S4)。手摺ブラケット取付印M20,M21は、壁部Wに手摺ブラケット20を取付ける位置を示す印である。手摺部材40の長手方向Lの両端部の位置が決まったら、手摺ブラケット20の取付位置が特定できる。本実施形態では、一本の手摺部材40を2つの手摺ブラケット20,20で支持する。そのため、施工者は、手摺端部印M10,M11から、長手方向Lの中央部側に向かって所定長さの位置に手摺ブラケット20の取付位置となる手摺ブラケット取付印M20,M21を手摺取付用治具1上に記入する。上述の通り、手摺ブラケット20は、手摺取付用治具1の第二端部12に近接配置するため、手摺ブラケット取付印M20,M21は、第二端部12近傍に記入する。
【0041】
手摺端部印記入工程S3後、または手摺ブラケット取付印記入工程S4後に、一対の手摺端部印M10,M11間の距離L1に応じて手摺部材40を切断する(手摺部材切断工程)。手摺部材40は、施工現場の設置寸法に合わせて施工現場で切断する。施工者は、手摺端部印M10,M11間の距離L1を計測し、計測結果に応じて、手摺部材40を公知の方法により切断する。
【0042】
次に、手摺ブラケット20を手摺ブラケット取付印M20,M21に近接配置して壁部Wに固定する(手摺ブラケット固定工程S5)。
図9は、本実施形態に係る手摺取付方法の手摺ブラケット固定工程S5を示す模式図である。具体的には、
図2に示すように、手摺ブラケット20の壁固定端部22の上端24を手摺取付用治具1の第二端部12の線に沿って近接配置し、固定面221を壁部Wに当接させて、ネジ90をネジ孔に挿通して手摺ブラケット20を壁部Wに固定する。
【0043】
次に、手摺部材40を手摺ブラケット20に固定する(手摺部材固定工程S6)。
図11は、手摺部材固定工程S6の態様を示す模式図である。具体的には、手摺部材40の両端部を手摺端部印M10、M11に位置合わせし、壁部Wに固定された一対の手摺ブラケット20,20の各載置面231,231に載置する。手摺ブラケット20の下方からネジ90をネジ孔に挿通して手摺部材40を手摺ブラケット20に固定する。その後、
図2に示すように、ネジ隠しカバー26を手摺ブラケット20に係合させて凹部を覆う。手摺部材40の両端部にエンドキャップ30,30を外嵌する。
【0044】
以上で手摺部材40が壁部Wに取り付けられる。複数の手摺ブラケット20及び手摺部材40を上記手摺ブラケット固定工程S5及び手摺部材固定工程S6により壁部Wに固定する。手摺部材固定工程S6の後、手摺取付用治具1を壁部Wから取り外し(治具取外し工程)、手摺ユニットの取付作業が終了する。
【0045】
なお、本発明に係る手摺取付方法は、壁紙等の仕上げ材が設けられている壁部Wに手摺ユニット100を取り付ける場合や仕上げ材が設けられる前の段階で、壁部Wに手摺ユニット100を取り付ける場合に適用できる。仕上げ材が設けられる前に手摺ユニット100を取り付ける作業を行う場合は、手摺ブラケット固定工程S5において、手摺ブラケット20を壁部Wに仮固定し、手摺部材固定工程S6において、手摺部材40を手摺ブラケット20に仮固定する。その後、手摺ブラケット20を壁部Wから取り外す。その後、仕上げ材が壁部Wに設けられた後に手摺ブラケット20を本固定すればよい。
【0046】
本実施形態に係る手摺取付方法によれば、手摺部材40及び手摺ブラケット20を取り付ける作業が容易に行える。具体的には、手摺部材高さ特定工程S1により特定された手摺部材40の取付高さH1に合わせて長尺な手摺取付用治具1を壁部Wに仮固定し、手摺取付用治具1の位置に合わせて手摺ブラケット20及び手摺部材40を固定するため、壁部Wに墨出し線を引く必要がない。その結果、例えば、壁紙等の仕上げ材で覆われた壁部Wに手摺を取り付ける場合であっても、墨出し線等で壁部を汚すことなく、容易に手摺部材40及び手摺ブラケット20を位置決めして取り付けることができる。この結果、壁部Wを汚すことなく手摺部材40及び手摺ブラケット20を取り付ける作業が容易に行える手摺取付方法を提供できる。
【0047】
本実施形態に係る手摺取付方法によれば、手摺端部印記入工程S3において手摺取付用治具1に記入した一対の手摺端部印M10,M11間の距離に応じて手摺部材40を切断できる。この結果、施工現場毎に異なる手摺部材40の寸法の計測が容易であり、且つ、手摺部材40を設置寸法に対応させて容易に切断できる。
【0048】
本実施形態に係る手摺取付方法によれば、手摺部材40及び手摺ブラケット20の取付位置を示す印M10,M11,M20,M21を手摺取付用治具1に記入し、手摺ブラケット20及び手摺部材40を固定した後、手摺取付用治具1を壁部Wから取り外すことができる。したがって、壁部Wに直接墨出し線を付す従来の方法に比べて、壁部Wを汚すことなく手摺部材40及び手摺ブラケット20を容易に位置決めして取り付けられる。この結果、壁紙等の仕上げ材が設けられている壁部Wであっても容易に手摺を取り付けられる。
【0049】
本実施形態に係る手摺取付方法によれば、手摺取付用治具1が長尺な帯形状を有し、長手方向Lに直交する方向の幅Aが、手摺部材40の上端部から手摺部材40が取り付けられる手摺ブラケット20の壁部Wへの取付位置までの長さH2と等しい。このため、手摺取付用治具1を壁部Wに仮固定することにより、手摺部材40の取付位置に応じた手摺ブラケット20の取付基準位置を容易に特定できる。また、壁部Wに墨出し線を引く必要がない。さらに、手摺取付用治具1により手摺ブラケット20の取り付け位置を容易に視認できる。したがって、手摺部材40及び手摺ブラケット20を取り付ける作業が容易に行える手摺取付用治具1を提供できる。
【0050】
本実施形態に係る手摺取付用治具1によれば、帯形状の手摺取付用治具の長手方向に沿って設けられたガイド線13により、手摺部材40の下端の高さまたは手摺ブラケット20における手摺部材40の固定位置を容易に視認できる。
【0051】
本実施形態に係る手摺取付用治具1によれば、手摺取付用治具1を壁部Wに仮固定すると、第一端部11により手摺部材40の取り付け位置が容易に位置決めされ、第二端部12により手摺ブラケット20の取り付け位置が容易に位置決めできる。
【0052】
手摺取付用治具1は上記実施形態の構成に限定されない。
図12に、手摺取付用治具の変形例を示す。
図13に手摺取付方法の変形例の縦断面図を示す。なお、以下の説明において、上記実施形態と同様の構成には実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図12に示すように、手摺取付用治具1Aにさらにガイド線13が設けられていてもよい。ガイド線13は、手摺取付用治具1Aの平面部に直線状に印刷されている。
【0053】
図14は、変形例の手摺取付用治具1Aを用いた手摺取付方法を示す模式図である。例えば、手摺部材40の高さ方向の長さH3と、第一端部11からガイド線13までの長さが等しくなる位置にガイド線13を設け、ガイド線13を手摺部材40の下端位置を示すガイド線としてもよい。この場合、上記実施形態で行った、下端部印M30,M31を記入する作業が不要となる。
図14に示すように、治具固定工程S2により隣り合う手摺部材40,40用の手摺取付用治具1A,1Aと壁部Wに仮固定した後、各手摺取付用治具1A,1Aの各ガイド線13,13に交差するようにメジャーを配置し、ガイド線13,13間の長さが、上述の手摺部材40の長手方向Lの端部間の離間距離L2と略等しい位置が手摺部材40の長手方向Lの端部位置である。その位置に、手摺端部印M10,M11を記入する。
【0054】
この他、手摺ブラケット20の固定面221の上端部の位置を示すガイド線としてもよい。すなわち、手摺部材40と手摺ブラケット20との高さ方向(長手方向Lに直交する方向)の相対位置は、手摺ユニット100の設置場所に関わらず一定である。そこで、ガイド線13は、手摺部材40と手摺ブラケット20との位置関係が一定である箇所の寸法に応じて手摺取付用治具1Aに設ける。また、ガイド線13は複数設けてもよい。
【0055】
手摺取付用治具にガイド線13を設けてロール状に巻回する場合、
図12に示すように、ロールの内側となる面(内側面)にガイド線13を設けると、手摺取付用治具1Aのロールの外側を壁部Wに当接させながら手摺取付用治具1Aを引き出して壁部Wに仮固定することができる。この結果、治具固定工程S2が円滑に行える。
【0056】
ガイド線13は、手摺取付用治具1Aの両面に設けられていてもよい。また、本変形例では、ガイド線13は、第一端部11及び第二端部12に平行に設けられている例を示しているが、例えば、手摺ブラケットの形状に沿ったガイド線を設けてもよい。
【0057】
本実施形態では、手摺部材40の長手方向Lに直交する断面形状が略矩形の例を示したが、手摺部材40の形状はこれに限定されず、長尺な部材であればよい。例えば、
図13に示すように、長手方向Lに直交する断面形状が略円形の手摺部材40Aであってもよい。この場合、手摺ブラケット20Aの手摺固定端部23Aは、手摺部材40Aの外周面の形状に対応する円弧形状の凹部となる。
【0058】
また、上記実施形態では、取付基準位置を手摺ブラケット20の壁固定端部22の上端24である例を示したが、取付基準位置はこれに限定されない。例えば、
図13に示すように、手摺ブラケット20Aを壁部Wにネジ固定するネジ孔25Aの位置を取付基準位置としてもよい。この場合、手摺取付用治具1の第二端部12がネジ孔25Aに重なる位置に手摺ブラケット20Aを配置し、ねじ90で手摺ブラケット20Aを壁部Wに固定する。
【0059】
この変形例の場合、
図12に示す変形例のように、ガイド線13が設けられる手摺取付用治具1を使用すれば、手摺取付用治具1の第二端部12とガイド線13との間の長さをが、ネジ孔25Aと固定面221Aの上端との間の長さとなるようにガイド線13を設定すれば、手摺ブラケット20Aをさらに容易に位置決めできる。すなわち、ガイド線13と固定面221Aの上端とが一致するように手摺ブラケット20Aを壁部Wに配置し、ネジ90で手摺ブラケット20Aを固定する方法であってもよい。
【0060】
なお、
図13に示す変形例では、手摺ブラケット20Aの固定面221Aの上部が手摺取付用治具1の第二端部12近傍を覆うように手摺ブラケット20Aが取り付けられるが、手摺取付用治具1は厚さが薄いため、手摺ブラケット20Aの壁部Wへの取付の支障とならない。
【0061】
上記実施形態では、各手摺部材40の両端部同士が離間して設けられる手摺ユニット100の例を示したが、手摺部材40及び手摺ブラケット20の構成は上記実施形態の態様に限定されない。本発明に係る手摺取付方法は、壁部に公知の手摺部材及び手摺ブラケットを取り付ける場合に適用できる。例えば、長手方向に隣り合う手摺部材間を連結ブラケットで連結する手摺ユニットや、長手方向に隣り合う手摺部材間に手摺部材の連結と支持を兼ねる一つの手摺ブラケットを設ける構成の手摺ユニットであってもよい。
【0062】
上記実施形態では、階段S及び踊り場SLの壁部Wに手摺を設ける例を示したが、手摺ユニット100を取り付ける場所はこれに限定されない。本発明に係る手摺取付方法は、例えば、廊下の壁部やスロープの壁部に手摺を取り付ける場合にも好適に使用できる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
また、上述の実施形態及び各変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 手摺取付用治具
11 第一端部(手摺部材位置決め部)
12 第二端部(ブラケット位置決め部)
20,20A 手摺ブラケット
22 壁固定端部(固定部)
40 手摺部材
M10,M11 手摺端部印
M20,M21 手摺ブラケット取付印