(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】田植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20220805BHJP
【FI】
A01C11/02 350H
A01C11/02 350G
A01C11/02 350B
(21)【出願番号】P 2018128513
(22)【出願日】2018-07-05
【審査請求日】2020-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】直本 哲
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-000022(JP,U)
【文献】特開平01-141517(JP,A)
【文献】実開昭55-110012(JP,U)
【文献】特開2006-087361(JP,A)
【文献】特開昭61-285916(JP,A)
【文献】特開平04-058808(JP,A)
【文献】米国特許第05402740(US,A)
【文献】特開昭53-075014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の後方に設けられ、複数の苗を集めてマット状にした苗マットが載置され、前記車体の幅方向に沿った第1幅に亘ってスライド移動する苗載台、及び前記スライド移動する前記苗載台の前記苗マットから苗を取り出して圃場に植え付ける苗植付機構を有する苗植付装置と、
前記苗植付装置の前方において前記車体の幅方向に沿った前記第1幅より狭い第2幅内に設けられ、前記車体の前後方向に並べて複数の苗マットが貯留可能であって、貯留された前記苗マットを前記苗載台に供給する供給位置まで搬送する第1制御状態と前記供給位置にある前記苗マットを前記苗載台に供給する第2制御状態とで切り換え可能な搬送ユニットを有する予備苗供給装置と、
前記苗マットが供給される前記苗載台が被供給位置にある場合に、当該苗載台に前記苗マットを供給する搬送ユニットを前記第2制御状態にさせ、前記苗載台への前記苗マットの供給後、当該搬送ユニットを前記第1制御状態にさせる制御部と、
を備え、
前記予備苗供給装置及び前記苗植付装置は、互いの位置関係が、前記搬送ユニットの搬送終端部と前記苗載台の上端部とが互いに寄り合う苗補給状態と、前記搬送終端部と前記上端部とが互いに離間し合う作業状態とに切り換え可能であり、
前記搬送ユニットが前記第1制御状態に切り換えられる前に、前記搬送ユニットを前記車体の前方側に設定された第1位置に移動させ、前記搬送ユニットが前記第2制御状態に切り換えられる前に、前記搬送ユニットを前記第1位置よりも前記車体の後方側に設定された第2位置に移動させる移動装置を備える田植機。
【請求項2】
車体の後方に設けられ、複数の苗を集めてマット状にした苗マットが載置され、前記車体の幅方向に沿った第1幅に亘ってスライド移動する苗載台、及び前記スライド移動する前記苗載台の前記苗マットから苗を取り出して圃場に植え付ける苗植付機構を有する苗植付装置と、
前記苗植付装置の前方において前記車体の幅方向に沿った前記第1幅より狭い第2幅内に設けられ、前記車体の前後方向に並べて複数の苗マットが貯留可能であって、貯留された前記苗マットを前記苗載台に供給する供給位置まで搬送する第1制御状態と前記供給位置にある前記苗マットを前記苗載台に供給する第2制御状態とで切り換え可能な搬送ユニットを有する予備苗供給装置と、
前記苗マットが供給される前記苗載台が被供給位置にある場合に、当該苗載台に前記苗マットを供給する搬送ユニットを前記第2制御状態にさせ、前記苗載台への前記苗マットの供給後、当該搬送ユニットを前記第1制御状態にさせる制御部と、
を備え、
前記搬送ユニットが、前記車体の前方側の第1搬送ユニットと、前記車体の後方側の第2搬送ユニットとを有して構成され、
前記第1搬送ユニットが、前記第1制御状態及び前記第2制御状態の双方において、前下がりで傾斜する前下がり姿勢で構成され、
前記第2搬送ユニットが、前記第1制御状態及び前記第2制御状態の双方において、後下がりで傾斜する後下がり姿勢で構成され
、
前記予備苗供給装置及び前記苗植付装置は、互いの位置関係が、前記搬送ユニットの搬送終端部と前記苗載台の上端部とが互いに寄り合う苗補給状態と、前記搬送終端部と前記上端部とが互いに離間し合う作業状態とに切り換え可能であり、
前記搬送ユニットが前記第1制御状態に切り換えられる前に、前記搬送ユニットを前記車体の前方側に設定された第1位置に移動させ、前記搬送ユニットが前記第2制御状態に切り換えられる前に、前記搬送ユニットを前記第1位置よりも前記車体の後方側に設定された第2位置に移動させる移動装置を備える田植機。
【請求項3】
前記苗植付装置は、前記車体の上下方向における下側に位置する作業位置と前記上下方向における上側に位置する非作業位置とに亘って昇降可能に支持され、
前記予備苗供給装置が前記第2位置に移動され、前記苗植付装置が前記非作業位置に上昇されることにより、前記予備苗供給装置及び前記苗植付装置は、前記苗補給状態になり、前記予備苗供給装置が前記第1位置に移動され、前記苗植付装置が前記作業位置に下降されることにより、前記予備苗供給装置及び前記苗植付装置は、前記作業状態になる請求項1又は
2に記載の田植機。
【請求項4】
前記苗植付装置は、前記苗補給状態と前記作業状態との双方において前記苗植付機構が前記圃場に前記苗の植え付け可能な状態で支持され、
前記予備苗供給装置及び前記苗植付装置は、前記搬送ユニットが前記第1位置から前記第2位置に移動されることで前記苗補給状態となる請求項1又は
2に記載の田植機。
【請求項5】
前記搬送ユニットが、前記車体の前方側の第1搬送ユニットと、前記車体の後方側の第2搬送ユニットとを有して構成され、
前記第1搬送ユニットが、後下がりで傾斜する後下がり姿勢及び前下がりで傾斜する前下がり姿勢のうちの一方の姿勢で構成され、
前記第2搬送ユニットが、前記後下がり姿勢及び前記前下がり姿勢のうちの他方の姿勢で構成されている請求項1に記載の田植機。
【請求項6】
前記車体は、運転座席を有し、
前記搬送ユニットは、前記運転座席の両側方に設けられ、
前記苗植付機構は、前記搬送ユニットが前記車体の幅方向に沿って並ぶ列の数よりも多く設けられている請求項1から
5のいずれか一項に記載の田植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に苗を植え付ける田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場へ苗を受け付ける際に田植機が利用されてきた。この種の田植機では、植え付ける苗を集めて構成された苗マットを載せておく苗載台と、この苗載台に供給する予備の苗マットを載せておく予備苗載台とが備えられている。予備苗載台から苗載台への苗マットの供給を手動で行うと、田植機を利用するオペレータの負担が増大するため、予備苗載台から苗載台に自動で供給する技術が検討されてきた(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の田植機における苗自動補給装置は、複数の苗案内面を備えた、左右方向に移動する複数の苗載台と、苗載台の苗案内面に整合し得る位置に設置された補助苗載台とを有している。この苗自動補給装置は、苗載台の案内面と補助苗載台の苗案内面とを整合し、補助苗載台の苗案内面から苗載台の案内面に苗を補給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、苗載台と補助苗載台とは同じ列数、すなわち、補助苗載台の苗案内面の夫々と、苗載台の案内面の夫々とが互いに同じ数で構成されている。ここで、苗載台は田植機が苗を植え付ける条数に応じた分だけ横方向(幅方向)に並べて設けられるが、特許文献1に記載の技術の場合、苗載台が並ぶ数が増大すると、その分だけ補助苗載台のスペースを確保する必要があり、車体の幅方向に沿った長さが長くなる。
【0006】
そこで、車体の幅方向に沿った長さを抑制した予備苗を貯留する予備苗供給装置を備えた田植機が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る田植機の特徴構成は、車体の後方に設けられ、複数の苗を集めてマット状にした苗マットが載置され、前記車体の幅方向に沿った第1幅に亘ってスライド移動する苗載台、及び前記スライド移動する前記苗載台の前記苗マットから苗を取り出して圃場に植え付ける苗植付機構を有する苗植付装置と、前記苗植付装置の前方において前記車体の幅方向に沿った前記第1幅より狭い第2幅内に設けられ、前記車体の前後方向に並べて複数の苗マットが貯留可能であって、貯留された前記苗マットを前記苗載台に供給する供給位置まで搬送する第1制御状態と前記供給位置にある前記苗マットを前記苗載台に供給する第2制御状態とで切り換え可能な搬送ユニットを有する予備苗供給装置と、前記苗マットが供給される前記苗載台が被供給位置にある場合に、当該苗載台に前記苗マットを供給する搬送ユニットを前記第2制御状態にさせ、前記苗載台への前記苗マットの供給後、当該搬送ユニットを前記第1制御状態にさせる制御部と、を備え、前記予備苗供給装置及び前記苗植付装置は、互いの位置関係が、前記搬送ユニットの搬送終端部と前記苗載台の上端部とが互いに寄り合う苗補給状態と、前記搬送終端部と前記上端部とが互いに離間し合う作業状態とに切り換え可能であり、前記搬送ユニットが前記第1制御状態に切り換えられる前に、前記搬送ユニットを前記車体の前方側に設定された第1位置に移動させ、前記搬送ユニットが前記第2制御状態に切り換えられる前に、前記搬送ユニットを前記第1位置よりも前記車体の後方側に設定された第2位置に移動させる移動装置を備えている点にある。
このような特徴構成とすれば、予備苗を貯留する予備苗供給装置の方が苗植付装置よりも幅が狭く構成されるので、予備苗供給装置の幅方向をコンパクトに構成できる。したがって、予備苗供給装置の車体の幅方向に沿った長さを抑制することができ、このような予備苗供給装置を備えた田植機を実現することが可能となる。また、搬送ユニットに予備の苗マットを載置でき、この苗マットを苗載台に自動で供給することができる。したがって、田植機を利用するオペレータの負担を軽減できる。更には、同時に複数の苗載台に対して苗マットを供給できるので、苗マットの供給に要する時間を短縮することが可能となる。
また、上記構成とすれば、予備苗供給装置から苗載台に苗を供給する時には苗載台と予備苗供給装置とが互いに接近するように配置し、苗を供給しない時には予備苗供給装置と苗載台とを離間させて、互いに干渉しないようにすることが可能となる。
更に、上記構成とすれば、搬送ユニットから苗植付装置の苗載台に予備苗を補給するために苗植付装置を上昇させる時には搬送ユニットを車体の前方側に移動させておくことで、予備苗供給装置との干渉を防止できる。また、このような構成は、移動装置により、例えば平行リンク機構を介して搬送ユニットを油圧や電動で車体の前後方向に移動させることが可能である。
【0008】
本発明に係る田植機の特徴構成は、車体の後方に設けられ、複数の苗を集めてマット状にした苗マットが載置され、前記車体の幅方向に沿った第1幅に亘ってスライド移動する苗載台、及び前記スライド移動する前記苗載台の前記苗マットから苗を取り出して圃場に植え付ける苗植付機構を有する苗植付装置と、前記苗植付装置の前方において前記車体の幅方向に沿った前記第1幅より狭い第2幅内に設けられ、前記車体の前後方向に並べて複数の苗マットが貯留可能であって、貯留された前記苗マットを前記苗載台に供給する供給位置まで搬送する第1制御状態と前記供給位置にある前記苗マットを前記苗載台に供給する第2制御状態とで切り換え可能な搬送ユニットを有する予備苗供給装置と、前記苗マットが供給される前記苗載台が被供給位置にある場合に、当該苗載台に前記苗マットを供給する搬送ユニットを前記第2制御状態にさせ、前記苗載台への前記苗マットの供給後、当該搬送ユニットを前記第1制御状態にさせる制御部と、を備え、前記搬送ユニットが、前記車体の前方側の第1搬送ユニットと、前記車体の後方側の第2搬送ユニットとを有して構成され、前記第1搬送ユニットが、前記第1制御状態及び前記第2制御状態の双方において、前下がりで傾斜する前下がり姿勢で構成され、前記第2搬送ユニットが、前記第1制御状態及び前記第2制御状態の双方において、後下がりで傾斜する後下がり姿勢で構成され、前記予備苗供給装置及び前記苗植付装置は、互いの位置関係が、前記搬送ユニットの搬送終端部と前記苗載台の上端部とが互いに寄り合う苗補給状態と、前記搬送終端部と前記上端部とが互いに離間し合う作業状態とに切り換え可能であり、前記搬送ユニットが前記第1制御状態に切り換えられる前に、前記搬送ユニットを前記車体の前方側に設定された第1位置に移動させ、前記搬送ユニットが前記第2制御状態に切り換えられる前に、前記搬送ユニットを前記第1位置よりも前記車体の後方側に設定された第2位置に移動させる移動装置を備える点にある。
このような特徴構成とすれば、予備苗を貯留する予備苗供給装置の方が苗植付装置よりも幅が狭く構成されるので、予備苗供給装置の幅方向をコンパクトに構成できる。したがって、予備苗供給装置の車体の幅方向に沿った長さを抑制することができ、このような予備苗供給装置を備えた田植機を実現することが可能となる。また、搬送ユニットに予備の苗マットを載置でき、この苗マットを苗載台に自動で供給することができる。したがって、田植機を利用するオペレータの負担を軽減できる。更には、同時に複数の苗載台に対して苗マットを供給できるので、苗マットの供給に要する時間を短縮することが可能となる。
また、上記構成とすれば、搬送ユニットの前後方向の長さを、平坦に構成した場合に比べて短縮できる。したがって、搬送ユニットに多数の苗マットを予備として載置することができると共に、コンパクトに構成できる。
【0009】
【0010】
また、このような構成とすれば、予備苗供給装置から苗載台に苗を供給する時には苗載台と予備苗供給装置とが互いに接近するように配置し、苗を供給しない時には予備苗供給装置と苗載台とを離間させて、互いに干渉しないようにすることが可能となる。
【0011】
【0012】
また、このような構成とすれば、搬送ユニットから苗植付装置の苗載台に予備苗を補給するために苗植付装置を上昇させる時には搬送ユニットを車体の前方側に移動させておくことで、予備苗供給装置との干渉を防止できる。また、このような構成は、移動装置により、例えば平行リンク機構を介して搬送ユニットを油圧や電動で車体の前後方向に移動させることが可能である。
【0013】
また、前記苗植付装置は、前記車体の上下方向における下側に位置する作業位置と前記上下方向における上側に位置する非作業位置とに亘って昇降可能に支持され、前記予備苗供給装置が前記第2位置に移動され、前記苗植付装置が前記非作業位置に上昇されることにより、前記予備苗供給装置及び前記苗植付装置は、前記苗補給状態になり、前記予備苗供給装置が前記第1位置に移動され、前記苗植付装置が前記作業位置に下降されることにより、前記予備苗供給装置及び前記苗植付装置は、前記作業状態になると好適である。
【0014】
このような構成とすれば、予備苗供給装置から苗載台に苗を供給する時には上昇された苗載台に隣接するように予備苗供給装置を配置し、苗を供給しない時には予備苗供給装置と苗載台とが互いに干渉しないように予備苗供給装置の位置を変更することが可能となる。
【0015】
あるいは、前記苗植付装置は、前記苗補給状態と前記作業状態との双方において前記苗植付機構が前記圃場に前記苗の植え付け可能な状態で支持され、前記予備苗供給装置及び前記苗植付装置は、前記搬送ユニットが前記第1位置から前記第2位置に移動されることで前記苗補給状態となるように構成することも可能である。
【0016】
このような構成とすれば、苗植付装置の苗植付機構が圃場に苗の植え付けを行っている最中であっても、予備苗供給装置と苗載台とが互いに干渉することなく、予備苗供給装置を苗載台に隣接するように移動させることができる。したがって、作業効率を悪化することなく、苗載台に苗マットを供給することが可能となる。
【0017】
また、前記搬送ユニットが、前記車体の前方側の第1搬送ユニットと、前記車体の後方側の第2搬送ユニットとを有して構成され、前記第1搬送ユニットが、後下がりで傾斜する後下がり姿勢及び前下がりで傾斜する前下がり姿勢のうちの一方の姿勢で構成され、前記第2搬送ユニットが、前記後下がり姿勢及び前記前下がり姿勢のうちの他方の姿勢で構成されていると好適である。
【0018】
このような構成とすれば、搬送ユニットの前後方向の長さを、平坦に構成した場合に比べて短縮できる。したがって、搬送ユニットに多数の苗マットを予備として載置することができると共に、コンパクトに構成できる。
【0019】
また、前記車体は、運転座席を有し、前記搬送ユニットは、前記運転座席の両側方に設けられ、前記苗植付機構は、前記搬送ユニットが前記車体の幅方向に沿って並ぶ列の数よりも多く設けられていると好適である。
【0020】
このような構成とすれば、同時に多数の苗を植え付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る田植機は、複数の苗を集めてマット状にした苗マットを苗植付装置に自動で供給できるように構成される。以下、本実施形態の田植機1として8条植え乗用田植機を例に挙げて説明する。
【0023】
ここで、理解を容易にするために、本実施形態では前後方向を定義するときは、作業状態における田植機1の進行方向に沿って定義し、左右方向を定義するときは、田植機1の進行方向視で(進行方向前側を見た状態)で左右を定義する。
【0024】
図1には田植機1の側面図が示され、
図2には田植機1の上面図が示される。
図1及び
図2に示されるように、田植機1は、4輪駆動型に構成した走行車体(「車体」の一例)2の後部に、単動型の油圧シリンダを採用した昇降シリンダ3の作動で上下揺動する平行四連リンク式のリンク機構4を装備し、このリンク機構4の後端部に8条用の苗植付装置5が連結されている。また、走行車体2の後端部には施肥装置6も搭載されている。
【0025】
走行車体2は、前車軸ケース7よりも車体前側に配備した前部フレーム8にエンジン9を防振搭載してあり、エンジン9からの動力を主変速装置としての静油圧式無段変速装置(図示せず)にベルト伝動し、静油圧式無段変速装置による変速後の動力を、トランスミッションケース(以下、T/Mケースと称する)10の内部において走行用と作業用とに分岐する。
【0026】
走行用の動力は、T/Mケース10に副変速装置として内蔵される走行用のギア式変速装置(図示せず)などを介して左右の前輪11及び左右の後輪12に伝達される。また、作業用の動力は、T/Mケース10に株間変速装置として内蔵した作業用のギア式変速装置(図示せず)及び植付クラッチ(図示せず)などを介して苗植付装置5に伝達される。施肥装置6には、走行用のギア式変速装置による変速後の動力が施肥作業用として伝達される。
【0027】
走行車体2の後方には苗植付装置5が備えられる。苗植付装置5は苗載台30及び苗植付機構31を有する。苗載台30は、複数の苗を集めてマット状にした苗マットが載置される。本実施形態では、田植機1は8条植え乗用田植機であることから、苗載台30には最大8条分の苗マットが載置可能である。苗載台30は、走行車体2の幅方向に沿った第1幅に亘ってスライド移動するように構成される。走行車体2の幅方向とは、田植機1の左右方向である。苗載台30は、走行車体2からの作業用の動力により、横送り機構(図示せず)の作動で左右方向に一定ストロークで往復移動するように構成されている。
図2には、往復移動する最大幅が符号Aを付して示され、この幅Aが第1幅に相当する。
【0028】
苗植付機構31は、スライド移動する苗載台30の苗マットから苗を取り出して圃場に植え付ける。本実施形態では、苗載台30の各苗マットに対応して左右方向に一定間隔をあけて並ぶようにロータリ式の8基の苗植付機構31が備えられる。苗植付機構31は、苗載台30の下端から苗(植付苗)を所定量ずつ取り出して、左右方向に並ぶ整地フロート32で整地した圃場の泥土部に植え付け供給するように構成されている。
【0029】
苗載台30が左右のストローク端に到達するごとにベルト式の縦送り機構13が作動して、苗載台30に載置した各苗マットを苗載台30の下端に向けて所定ピッチで縦送りするように構成されている。
【0030】
また、走行車体2には搭乗運転部20が設けられている。搭乗運転部20には、前輪操舵用のステアリングホイール21及び運転座席22が設けられている。搭乗運転部20において、エンジン9を覆うボンネット23の後方箇所には施肥装置6よりも左右幅の狭い搭乗ステップ24が敷設されている。
【0031】
また、ボンネット23の左右の横外側には、走行車体2の前端部からの乗降を可能にする乗降ステップ25が搭乗ステップ24と同じ高さで搭乗ステップ24に連なる状態で敷設されている。走行車体2の後部には、苗載台30への苗補給時や施肥装置6への肥料補給時に踏み台として使用可能な後部ステップ26も敷設されている。
【0032】
搭乗ステップ24及び乗降ステップ25に対する横方向の車体外側には、搭乗領域の左右幅を施肥装置6よりも幅広に拡張する拡張ステップ(図示せず)を、それらのステップ面が同じ高さになる状態で配備されている。左右の拡張ステップの後方には、苗載台30へのアクセス時や施肥装置6への肥料補給時に踏み台として使用可能な補助ステップ28が配備されている。
【0033】
苗植付装置5の前方には予備苗供給装置40が備えられる。予備苗供給装置40は搬送ユニット41を有する。搬送ユニット41は、ベルト搬送機構であるベルトコンベヤ42を有する。本実施形態では、搬送ユニット41は走行車体2の前後方向に延出するように4列で設けられる。夫々の搬送ユニット41には、前後方向に並べて複数の苗マットが貯留できるようになっている。
【0034】
本実施形態では、搬送ユニット41は、運転座席22の両側方に設けられる。具体的には、運転座席22の左側方において、運転座席22に隣接して第1左側搬送ユニット41L1が設けられ、更に第1左側搬送ユニット41L1に隣接して第2左側搬送ユニット41L2が設けられる。また、運転座席22の右側方において、運転座席22に隣接して第1右側搬送ユニット41R1が設けられ、更に第1右側搬送ユニット41R1に隣接して第2右側搬送ユニット41R2が設けられる。
【0035】
搬送ユニット41は、車体の幅方向に沿った第1幅よりも狭い第2幅内に設けられる。第1幅とは符号Aで付した幅である。第2幅とは、搬送ユニット41の車体幅方向の一方の端部から他方の端部までの幅である。すなわち、
図2において符号Bが付された第2左側搬送ユニット41L2の左端から第2右側搬送ユニット41R2の右端までの幅である。
【0036】
上述したように、本実施形態では、8基の苗植付機構31が左右方向に並べて設けられる。一方、搬送ユニット41は、左右方向に4列で設けられる。したがって、本実施形態では、苗植付機構31は、搬送ユニット41が走行車体2の幅方向に沿って並ぶ列の数よりも多く設けられる。
【0037】
搬送ユニット41は、走行車体2の前方側の第1搬送ユニット45と、走行車体2の後方側の第2搬送ユニット46とを有して構成される。第1搬送ユニット45と第2搬送ユニット46とは、夫々、独立してベルトコンベヤ42が駆動するように構成される。第1搬送ユニット45が、前下がりで傾斜する前下がり姿勢で構成され、第2搬送ユニット46が、後下がりで傾斜する後下がり姿勢で構成される。本実施形態では、第2搬送ユニット46は、全領域が後下がり姿勢で構成されるのではなく、後部側が後下がり姿勢で構成される。
【0038】
搬送ユニット41は、第1制御状態と第2制御状態に切り換え可能に構成される。第1制御状態とは、貯留された苗マットを苗載台30に供給する供給位置Cまで搬送する制御状態である。貯留された苗マットとは、夫々の搬送ユニット41のベルトコンベヤ42上に載置された苗マットである。供給位置Cとは、ベルトコンベヤ42における苗載台30側の位置である。すなわち、ベルトコンベヤ42から見て苗載台30は車体後方に設けられているので、苗マットを苗載台30に供給する供給位置Cとは、ベルトコンベヤ42における後方端が相当する。この供給位置Cは夫々の搬送ユニット41に設定される。したがって、第1制御状態では、ベルトコンベヤ42における前側に載置された苗マットが、ベルトコンベヤ42により供給位置Cまで搬送することが可能となる。
【0039】
第2制御状態とは、供給位置Cにある苗マットを苗載台30に供給する制御状態である。搬送ユニット41は、上述した第1制御状態とされることによりベルトコンベヤ42上の苗マットが供給位置Cまで搬送される。第2制御状態では、第1制御状態後において、更にベルトコンベヤ42が駆動される。これにより、第1制御状態時に供給位置Cに搬送された苗マットを苗載台30に供給することが可能となる。
【0040】
田植機1には制御部50が備えられる。制御部50は苗植付装置5、及び予備苗供給装置40を制御する。特に本実施形態では、制御部50は、苗マットが供給される苗載台30が被供給位置D(
図3参照)にある場合に、当該苗載台30に苗マットを供給する搬送ユニット41を第2制御状態にさせ、苗載台30への苗マットの供給後、当該搬送ユニット41を第1制御状態にさせる。
【0041】
上述したように苗載台30には苗マットが供給される。苗載台30は苗植付装置5に備えられ、載置された苗マットから所定量ずつ苗が苗植付機構31により取り出されて圃場に植え付けられる。この時、苗の植え付け作業の効率化の観点から、
図1に示されるように苗載台30は苗植付機構31と共に圃場近くに位置し、搬送ユニット41と離間した状態となる。一方、苗載台30に苗マットが供給される時には、
図3に示されるように苗載台30は搬送ユニット41から苗マットが供給され易くするために搬送ユニット41に近づけられる。このように搬送ユニット41から苗マットが供給され易くするために搬送ユニット41に近づけられた苗載台30が位置するワールド座標系における位置(領域)が被供給位置Dに相当する。
【0042】
制御部50は、苗載台30に載置された苗マットが小さくなると(苗が少なくなると)、まず、苗載台30が被供給位置Dに位置するように移行させる。苗載台30に載置された苗マットが小さくなったか否か(苗が少なくなったか否か)は、例えば苗載台30にセンサを設けておき、このセンサの検出結果により検出可能である。また、苗載台30を被供給位置Dに移行させる際には、苗植付機構31による苗の植え付けを停止し、苗植付機構31と共に、すなわち苗植付装置5全体をリンク機構4を介して圃場に対して持ち上げると良い。苗載台30に苗マットを供給する際に、
図3に示されるように苗植付装置5を持ち上げた状態における苗載台30の位置が被供給位置Dにあたる。
【0043】
このように苗植付装置5は、走行車体2の上下方向における下側に位置する作業位置(
図1に示される位置)と上下方向における上側に位置する非作業位置(
図3に示される位置)とに亘って制御部50(制御部50の指示)により昇降可能に支持される。
【0044】
図3のように、被供給位置Dに苗載台30が移動されると、制御部50は苗載台30に苗マットを供給する搬送ユニット41を第2制御状態にさせる。
図1及び
図2に示されるように、苗植付機構31が苗の植え付けを行っている時には、搬送ユニット41は走行車体2の前方側に設定された位置(本願「第1位置」に相当)に位置する。この場合、搬送ユニット41における供給位置Cが被供給位置Dから離間しているので、制御部50は、搬送ユニット41の供給位置Cが被供給位置Dの上方に位置するように、搬送ユニット41をリンク機構4により持ち上げられた苗植付装置5に近づける(
図3参照)。具体的には、搬送ユニット41が第2制御状態に切り換えられる前に、搬送ユニット41を第1位置よりも走行車体2の後方側に設定された第2位置に移動させる。この移動は、搬送ユニット41を支持する支持機構61をアクチュエータ(「移動装置」の一例)62により駆動させて行うように構成すると良い。これにより、
図3に示されるように、搬送ユニット41の供給位置Cを被供給位置Dの上方に位置させることが可能となる。
【0045】
ここで、上述したように苗載台30は、苗植付機構31が苗の植え付けを行う際に、左右方向に一定ストロークで往復移動している。このため、
図3のように供給位置Cを被供給位置Dの上方に位置するようにした場合であっても、走行車体2の左右方向の位置がずれている可能性がある(すなわち、苗マットが供給される苗載台30と当該苗載台30に苗マットを供給する搬送ユニット41の供給位置Cとが走行車体2の前後方向に沿って並んでいない可能性がある)。そこで、制御部50は、当該苗載台30と供給位置Cとが走行車体2の前後方向に沿って並ぶように、苗植付装置5の左右方向の位置合わせを行う。このように左右方向の位置合わせが行われた状態の田植機1の上面視が
図4に示される。
【0046】
本実施形態では上述したように8つの苗載台30が走行車体2の横方向に並べて設けられるが、ここでは理解を容易にするために走行車体2の右側から順に第1苗載台71、第2苗載台72、第3苗載台73、第4苗載台74、第5苗載台75、第6苗載台76、第7苗載台77、第8苗載台78として説明する。
図4の例では、上記制御部50による左右方向の位置合わせにより、第2右側搬送ユニット41R2における供給位置Cと被供給位置Dに上昇された第1苗載台71とが前後方向に沿って並び、第1右側搬送ユニット41R1における供給位置Cと被供給位置Dに上昇された第2苗載台72とが前後方向に沿って並ぶ。また、第1左側搬送ユニット41L1における供給位置Cと被供給位置Dに上昇された第6苗載台76とが前後方向に沿って並び、第2左側搬送ユニット41L2における供給位置Cと被供給位置Dに上昇された第7苗載台77とが前後方向に沿って並ぶ。これにより、第1苗載台71、第2苗載台72、第6苗載台76、及び第7苗載台77の少なくともいずれか一つにおいて苗マットの供給が要求された場合には対応する搬送ユニット41から苗マットを供給することが可能となる。
【0047】
また、第2左側搬送ユニット41L2における供給位置Cと被供給位置Dに上昇された第8苗載台78とが前後方向に沿って並ぶように左右方向の位置合わせを行うことも可能である。係る場合には、
図5に示されるように、第2右側搬送ユニット41R2における供給位置Cと被供給位置Dに上昇された第2苗載台72とが前後方向に沿って並び、第1右側搬送ユニット41R1における供給位置Cと被供給位置Dに上昇された第3苗載台73とが前後方向に沿って並ぶ。また、第1左側搬送ユニット41L1における供給位置Cと被供給位置Dに上昇された第7苗載台77とが前後方向に沿って並び、第2左側搬送ユニット41L2における供給位置Cと被供給位置Dに上昇された第8苗載台78とが前後方向に沿って並ぶ。これにより、第2苗載台72、第3苗載台73、第7苗載台77、及び第8苗載台78の少なくともいずれか一つにおいて苗マットの供給が要求された場合には対応する搬送ユニット41から苗マットを供給することが可能となる。
【0048】
制御部50は、苗マットを供給する苗載台30に応じて
図4や
図5の状態にすると良い。このように位置合わせをした後、制御部50は搬送ユニット41を第2制御状態にする。すなわち、苗マットを供給する苗載台30と位置合わせが行われた搬送ユニット41のベルトコンベヤ42を駆動し、当該位置合わせが行われた苗載台30に苗マットを供給する。
【0049】
制御部50は、上記のように苗載台30へ苗マットを供給すると、まず、搬送ユニット41を、走行車体2の前方側に設定された第1位置(
図1のおける位置)に移動させる。この移動は、搬送ユニット41を支持する支持機構61をアクチュエータ62により駆動させて、搬送ユニット41が第1制御状態に切り換えられる前に行うように構成すると良い。
【0050】
この時、苗載台30に苗マットを供給した搬送ユニット41の供給位置Cには、苗マットが載置されていない。そこで、制御部50は、搬送ユニット41を第1制御状態にさせる。これにより、苗マットを供給した搬送ユニット41の供給位置Cに苗マットを搬送(補充)することが可能となる。
【0051】
このように、予備苗供給装置40及び苗植付装置5は、互いの位置関係が苗補給状態と作業状態とに切り換え可能に構成される。予備苗供給装置40が第2位置に移動され、苗植付装置5が非作業位置に上昇されることにより、搬送ユニット41の搬送終端部、すなわち供給位置Cと、苗載台30の上端部とが互いに寄り合うことになる。これにより、予備苗供給装置40及び苗植付装置5は、搬送ユニット41から苗載台30へ苗マットを補給することが可能な苗補給状態となる。
【0052】
一方、予備苗供給装置40が第1位置に移動され、苗植付装置5が作業位置に下降されることにより、搬送ユニット41の搬送終端部、すなわち供給位置Cと、苗載台30の上端部とが互いに離間し合うことになる。これにより、予備苗供給装置40及び苗植付装置5は、苗植付機構31が苗を植え付けることが可能な作業状態となる。このように、本実施形態では予備苗供給装置40及び苗植付装置5は、互いに相対移動可能に支持される。
【0053】
搬送ユニット41のベルトコンベヤ42は、スイッチで苗マットの有無を検出して駆動タイミングを制御すると好適である。第1搬送ユニット45及び第2搬送ユニット46の夫々について、苗マットを検出するセンサ(例えば苗マットが存在している場合に苗マットにより押下されるスイッチ等)を設けておき、このセンサの出力結果に応じて、ベルトコンベヤ42の駆動を制御するように構成すると好適である。
【0054】
このセンサは、例えば第1搬送ユニット45及び第2搬送ユニット46の苗マットを搬送する側(以下「表側」とする)における搬送始端側と搬送終端側とに夫々設けると良い。また、第1搬送ユニット45及び第2搬送ユニット46の苗マットを搬送しない側(以下「裏側」とする)にも設けても良い。
【0055】
以上のように田植機1を構成することで、予備苗供給装置40の走行車体2の幅方向に沿った長さを抑制でき、且つ、多数の苗載台30に対して苗マットを自動で供給することが可能となる。したがって、田植機1を利用するオペレータの負担を軽減することが可能となる。
【0056】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、搬送ユニット41がベルト搬送機構であるベルトコンベヤ42を有するとして説明したが、チェーン式の搬送機構であっても良い。
【0057】
上記実施形態では、第1苗載台71、第2苗載台72、第6苗載台76、及び第7苗載台77の少なくともいずれか一つにおいて苗マットの供給が要求された場合には対応する搬送ユニット41から苗マットを供給することが可能となり、第2苗載台72、第3苗載台73、第7苗載台77、及び第8苗載台78の少なくともいずれか一つにおいて苗マットの供給が要求された場合には対応する搬送ユニット41から苗マットを供給することが可能となるとして説明したが、第4苗載台74、第5苗載台75に対しても自動で苗マットを供給できるように構成することも可能である。係る場合、例えば第4苗載台74や第5苗載台75が、走行車体2の左右方向に沿って
図4や
図5より大きくスライド移動できるように構成し、第4苗載台74や第5苗載台75が第1左側搬送ユニット41L1、第2左側搬送ユニット41L2、第1右側搬送ユニット41R1、第2右側搬送ユニット41R2の何れかと走行車体2の前後方向に沿って並ぶことができるように構成すると良い。
【0058】
また、上記実施形態では、苗植付装置5が8条用のものとして説明したが、8条未満のものであっても良いし、8条より大きいものであっても良い。また、搬送ユニット41は走行車体2の幅方向に4列で並んでいるものを例に挙げて説明したが、4列未満であっても良いし、4列より大きいものであっても良い。
【0059】
上記実施形態では、予備苗供給装置40及び苗植付装置5は、互いに相対移動可能に支持され、苗補給状態と作業状態とに切り換え可能であるとして説明したが、予備苗供給装置40及び苗植付装置5は、互いに連結固定され、一体で移動可能に構成することも可能である。
【0060】
上記実施形態では、搬送ユニット41が第1制御状態に切り換えられる前に、アクチュエータ62が搬送ユニット41を走行車体2の前方側に設定された第1位置に移動させ、搬送ユニット41が第2制御状態に切り換えられる前に、搬送ユニット41を第1位置よりも走行車体2の後方側に設定された第2位置に移動させるとして説明したが、アクチュエータ62が搬送ユニット41を第1位置に移動させた後に、搬送ユニット41が第1制御状態に切り換えられるように構成することも可能である。
【0061】
上記実施形態では、苗植付装置5は、走行車体2の上下方向における下側に位置する作業位置と上下方向における上側に位置する非作業位置とに亘って昇降可能に支持されるとして説明したが、苗植付装置5は昇降できないように構成することも可能である。係る場合、苗植付装置5は、苗補給状態と作業状態との双方において苗植付機構31が圃場に苗の植え付け可能な状態で支持され、予備苗供給装置40及び苗植付装置5は、搬送ユニット41が第1位置から第2位置に移動されることで苗補給状態となるように構成すると良い。このように構成すると、作業位置にある苗植付装置5に、予備苗供給装置40が近付くことで、予備苗供給装置40と苗植付装置5との位置関係を苗補給状態に切り換えることができる。すなわち、例えば予備苗供給装置40の搬送ユニット41が第2位置に達した時には、搬送ユニット41の搬送終端部と苗載台30の上端部とが互いに寄り合うように構成できるので、苗植付機構31が圃場に苗の植え付けを行っている最中でも苗載台30に苗マットを供給することができる。したがって、田植機1の作業効率を悪化することなく苗マットの補給を行うことが可能となる。なお、搬送ユニット41が第2位置に達したか否かは、アクチュエータ62による制御量に基づき検知しても良いし、別途、センサを設けて搬送ユニット41の位置を検知するように構成しても良い。
【0062】
上記実施形態では、搬送ユニット41が、走行車体2の前方側の第1搬送ユニット45と、走行車体2の後方側の第2搬送ユニット46とを有して構成されると説明したが、搬送ユニット41は単一の搬送ユニットで構成することも可能であるし、3つ以上の搬送ユニットから構成することも可能である。
【0063】
上記実施形態では、第1搬送ユニット45が、前下がりで傾斜する前下がり姿勢で構成され、第2搬送ユニット46が、後下がりで傾斜する後下がり姿勢で構成されているとして説明したが、第1搬送ユニット45が、後下がりで傾斜する後下がり姿勢で構成され、第2搬送ユニット46が、前下がりで傾斜する前下がり姿勢で構成することも可能である。
【0064】
上記実施形態では、搬送ユニット41は、運転座席22の両側方に設けられるとして説明したが、搬送ユニット41は、運転座席22の両側方のうちの一方にのみ設けるように構成することも可能であるし、搬送ユニット41は、運転座席22の両側方に設けずに、運転座席22の後方側に設けるように構成することも可能である。また、搬送ユニット41とは別に予備苗マットを貯留しておく貯留ユニットを設けておき、当該貯留ユニットから自動及び手動の少なくともいずれか一方で搬送ユニット41に苗マットを補給するように構成することも可能である。このような貯留ユニットは、例えば搬送ユニット41の前部側に積層するように設けると良い。
【0065】
上記実施形態では、苗植付機構31は、搬送ユニット41が走行車体2の幅方向に沿って並ぶ列の数よりも多く設けられているとして説明したが、苗植付機構31は、搬送ユニット41が走行車体2の幅方向に沿って並ぶ列の数以下に設けることも可能である。
【0066】
上記実施形態では、田植機1として8条植え乗用田植機を例に挙げて説明したが、乗用型でない田植機に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、圃場に苗を植え付ける田植機に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1:田植機
2:走行車体(車体)
5:苗植付装置
22:運転座席
30:苗載台
31:苗植付機構
40:予備苗供給装置
41:搬送ユニット
45:第1搬送ユニット
46:第2搬送ユニット
50:制御部
62:アクチュエータ(移動装置)
A:第1幅
B:第2幅
C:供給位置
D:被供給位置