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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】周辺認識装置及び車載カメラシステム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20220805BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20220805BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20220805BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60R11/02 C
G06T7/00 650B
H04N7/18 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018132674
(22)【出願日】2018-07-12
(65)【公開番号】P2020009386
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】薄井 勉
(72)【発明者】
【氏名】新舎 大昌
【審査官】佐田 宏史
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-262665(JP,A)
【文献】特開2017-135695(JP,A)
【文献】特開2009-217495(JP,A)
【文献】特開2014-182632(JP,A)
【文献】特開2015-130098(JP,A)
【文献】特開2002-144991(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130285(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015121114(DE,A1)
【文献】小林 淳、外3名,“車載カメラ映像を用いた側方他車両の検出”,電子情報通信学会2012年総合大会講演論文集 情報・システム2,日本,社団法人電子情報通信学会 ,2012年03月06日,p.186
【文献】Milos Vasic et al.,"An Overtaking Decision Algorithm for Networked Intelligent Vehicles based on Cooperative Perception",2016 IEEE Intelligent Vehicles Symposium (IV),米国,IEEE,2016年06月19日,pp.1054-1059
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60R 11/02
G06T 1/00,7/00-7/90
G06V 10/00-10/98
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方を撮像して前記車両の前方に位置する対象物を認識する前方認識部、及び前記車両の側方を撮像して前記車両の側方に位置する対象物を認識する側方認識部からの認識結果を受け入れる入力部と、
前記前方認識部による認識結果に基づいて、前記前方認識部が認識した前記対象物が前記側方認識部により認識される時間範囲を予測する予測部と、
前記予測部により予測された時間範囲内において前記側方認識部により前記対象物が認識されたら、前記対象物は前記車両に対向する方向に走行すると判定する判定部と
を有することを特徴とする周辺認識装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記予測部により予測された時間範囲以外において、前記側方認識部による認識結果にのみ基づいて前記対象物の走行方向を判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の周辺認識装置。
【請求項3】
前記予測部は、前記前方認識部による認識結果に基づいて、前記前方認識部が認識した前記対象物の前記車両に対する相対速度及び走行方向を求め、前記相対速度及び前記走行方向に基づいて前記前方認識部が認識した前記対象物が前記側方認識部により認識される時間範囲を予測する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の周辺認識装置。
【請求項4】
前記前方認識部が認識した前記対象物と前記側方認識部が認識した前記対象物とが同一の前記対象物であるか否かを判定する同一判定部を有し、
前記判定部は、前記予測部により予測された時間範囲内において前記側方認識部により前記対象物が認識されたら、前記同一判定部により同一であると判定された前記対象物は前記車両に対向する方向に走行すると判定する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の周辺認識装置。
【請求項5】
車両の前方を撮像して前記車両の前方に位置する対象物を認識する前方認識部と、
前記車両の側方を撮像して前記車両の側方に位置する対象物を認識する側方認識部と、
前記前方認識部による認識結果に基づいて、前記前方認識部が認識した前記対象物が前記側方認識部により認識される時間範囲を予測する予測部と、
前記予測部により予測された時間範囲内において前記側方認識部により前記対象物が認識されたら、前記対象物は前記車両に対向する方向に走行すると判定する周辺認識装置と
を有することを特徴とする車載カメラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の周囲を撮像して対象物を認識する認識部の認識結果に基づいて対象物の走行方向を判定する周辺認識装置及びこの周辺認識装置を有する車載カメラシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
前方用、後方用、周囲用といった車載用カメラの用途に応じて、様々な目的の車載カメラシステムが提案、実現されている。このような車載カメラシステムの一例として、自車の隣接車線を走行する他車を認識する車載カメラシステムが提案されている(例えば特許文献1参照)。例えば特許文献1に開示されている車載カメラシステムによれば、主に車線変更や進路変更等する際に障害となる車両が隣接車線等に存在しているかどうかを認識することができる。
【0003】
ここで、仮に、他車が自車と異なる方向に進行していた場合は、自車の車線変更等には悪影響は及ぼさない。一方、他車が自車と同一方向に進行している場合は、自車の車線変更により他車に接触する等の可能性が生じうる。従って、上述した車載カメラシステムにおいて、他車の進行方向が自車の進行方向と同じ方向であるか、異なる方向であるかの情報を入手することが重要である。
【0004】
他車の進行方向を判断する方法としては、車載カメラシステムで撮影した画像認識より、他車の正面が写っているか背面が写っているかを判定し、これにより、他車が自車と同一方向に進行しているか、あるいは反対方向に進行しているかを判断する手法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/017403号
【文献】特開2007-286873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した画像認識により他車の正面が写っているか、あるいは背面が写っているかを認識する手法では、車載カメラに他車が映ってから認識までに一定の時間を必要とする。この間、他車は車線を一定方向に走行しているので、画像認識に必要な時間に対応する走行範囲については他車及びその走行方向を認識しづらい。特に、他車が自車と反対方向に走行していると、自車と他車の相対速度が大きくなるため、認識しづらい範囲も拡大される傾向にある。
【0007】
車両を認識するまでの時間を短くする技術として、特許文献2に開示されている技術がある。すなわち、特許文献2には、近距離他車認識手段と遠距離四輪車認識手段という同一方向を撮影する画角の異なる複数のカメラを用いて、認識していた被写体の位置などの推移から、画角の狭い遠距離用のカメラが画角の広い近距離用のカメラで認識しづらい被写体の存在を推定し補うという技術が開示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献2に開示された技術は、自車から死角となる自動二輪車等の対象物を効率的に認識するためのものであり、カメラによって他車の走行方向を判定するものではない。
【0009】
そこで、本発明は、認識部により認識された対象物の走行方向をより短時間で判定することが可能な周辺認識装置及び車載カメラシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の周辺認識装置は、車両の前方を撮像して前記車両の前方に位置する対象物を認識する前方認識部、及び前記車両の側方を撮像して前記車両の側方に位置する対象物を認識する側方認識部からの認識結果を受け入れる入力部と、前方認識部による認識結果に基づいて、前方認識部が認識した対象物が側方認識部により認識される時間範囲を予測する予測部と、予測部により予測された時間範囲内において側方認識部により対象物が認識されたら、対象物は車両に対向する方向に走行すると判定する判定部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このように構成された本発明の周辺認識装置では、判定部が、予測部により予測された時間範囲内において側方認識部により対象物が認識されたら、対象物は車両に対向する方向に走行すると判定する。
【0012】
このようにすることで、認識部により認識された対象物の走行方向をより短時間で判定することが可能となる。予測部は、前方認識部による認識結果に基づいて、前方認識部が認識した対象物が側方認識部により認識される時間範囲を予測しているので、予測部による時間範囲予測をより精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態である車載カメラシステムの概略構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態である車載カメラシステムを構成するカメラの配置位置を示す図である。
図3】実施の形態である車載カメラシステムを構成するカメラの概略構成を示すブロック図である。
図4】実施の形態である周辺認識装置の機能の概略構成を示す機能ブロック図である。
図5】一般的な車載カメラシステムによる車両の走行方向の判定手法の一例を説明するための図である。
図6】実施の形態である車載カメラシステムによる車両の走行方向の判定手法の一例を説明するための図である。
図7】一般的な車載カメラシステムによる車両の走行方向の判定手法の別の例を説明するための図である。
図8】一般的な車載カメラシステムによる車両の走行方向の判定手法の別の例を説明するための図である。
図9】実施の形態である車載カメラシステムによる車両の走行方向の判定手法の別の例を説明するための図である。
図10】実施の形態である車載カメラシステムの動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態である周辺認識装置が適用される車載カメラシステムの概略構成を示すブロック図、図2は実施の形態である車載カメラシステムを構成するカメラの配置位置を示す図である。
【0015】
本実施の形態である車載カメラシステムSは、前方カメラ(前方認識部)1a、右側方カメラ(側方認識部)1b、左側方カメラ(側方認識部)1c及び周辺認識装置2を有する。
【0016】
図2に示すように、車両Vのフロントガラスの上部には、車両Vの前方に向けて前方カメラ1aが装着されている。車両Vの右ドアミラーには、車両Vの右側方に向けて右側方カメラ1bが装着されている。車両Vの左ドアミラーには、車両Vの左側方に向けて左側方カメラ1cが装着されている。
【0017】
前方カメラ1aは、車両Vの前方を撮像してこの車両Vの前方に位置する車両等の対象物を認識する。右側方カメラ1bは、車両Vの右後側方を撮像してこの車両Vの右後側方に位置する車両等の対象物を認識する。左側方カメラ1cは、車両Vの左後側方を撮像してこの車両Vの左後側方に位置する車両等の対象物を認識する。
【0018】
なお、以下の説明において、個々のカメラ1a~1cを区別せずに説明する際には、カメラ1として代表して説明する。
【0019】
前方カメラ1a、右側方カメラ1b及び左側方カメラ1cから出力される画像信号及び認識信号は周辺認識装置2に入力される。周辺認識装置2には、車両ECU3から車両Vに関する情報、一例として車速、舵角等の情報が入力される。
【0020】
周辺認識装置2は、これらカメラ1による対象物の認識結果に基づいて、対象物の走行方向を判定する。周辺認識装置2による対象物の走行方向の判定の詳細については後述する。
【0021】
図3は、本実施の形態である車載カメラシステムSを構成するカメラ1の概略構成を示すブロック図である。
【0022】
カメラ1は、レンズ10、撮像部11、信号検波部/処理部12、認識処理部13、センシング用外部インタフェース(I/F)14及びシステム制御部15を有する。
【0023】
車両Vの進行方向前方からレンズ10に入射する光はこのレンズ10により集光され、撮像部11に導かれる。撮像部11は、レンズ10により集光された光を所定の撮像間隔で光電変換して映像信号を生成し、この映像信号を後段の信号検波部/処理部12に送出する。
【0024】
撮像部11はCMOS、CCD等の撮像素子を有し、本実施の形態では、所定のフレームレート(例えば1/30秒、1/60秒)で車両前方からの光を撮像し、映像信号を信号検波部/処理部12に送出する。なお、撮像部11が備える撮像素子がCMOSであれば、光電変換後にA/D変換された映像信号が撮像部11から出力され、撮像素子がCCDであれば、撮像部11の後段に図略のA/D変換ブロックが設けられてこのA/D変換ブロックから映像信号が出力されるが、図3ではこれらをまとめて撮像部11として表示している。
【0025】
信号検波部/処理部12は、ゲイン処理部16、ガンマ処理部17、各種カメラ信号処理部18及び検波部19を有する。検波部19は撮像部11から入力された映像信号の輝度レベルなどを検波し、その検波情報に基づいて、ゲイン処理部16は映像信号のゲイン(利得)を調整し、ガンマ処理部17は規定のガンマカーブに基づいてガンマ処理を行い、各種カメラ信号処理部18はホワイトバランス処理、RGBベイヤー配列フィルタに対応した補間処理、色信号処理などを行う。信号検波部/処理部12が行う処理については周知のものであるので、ここではこれ以上の詳細な説明を省略する。
【0026】
信号検波部/処理部12により各種信号処理が行われた映像信号は、認識処理部13及びセンシング用外部インタフェース14を介して周辺認識装置2に送出される。
【0027】
認識処理部13は、信号検波部/処理部12により各種信号処理が行われた映像信号に基づいて、この映像信号内に他車等の対象物が撮像されているかどうかの認識を行う。さらに、認識処理部13は、映像信号内に対象物が撮像されていると認識した場合は、この映像信号に基づく画像内における撮像位置を認識する。そして、認識処理部13は、対象物が撮像されているか否か、及び、対象物が撮像されている場合はその撮像位置情報を認識情報として出力する。認識処理部13による認識処理自体は公知であるので、ここではこれ以上の説明を省略する。
【0028】
認識処理部13から出力される認識情報も、センシング用外部インタフェース14を介して周辺認識装置2に送出される。
【0029】
システム制御部15はカメラ1の全体制御を行う。具体的には、システム制御部15は、信号検波部/処理部12の検波部19による検波情報に基づいて、撮像部11のシャッター速度等の制御を行う。
【0030】
図4は、本実施の形態である周辺認識装置2の機能の概略構成を示す機能ブロック図である。
【0031】
周辺認識装置2は、CPU、FPGAなどのプログラマブルロジックデバイス、ASIC等の集積回路に代表される演算素子を備える制御部20、及び、ハードディスクドライブ等の大容量記憶媒体やROM、RAM等の半導体記憶媒体などの記憶媒体を備える記憶部21、さらには外部機器との間のインタフェース回路を備える入力部22、出力部23を有する。ここで、本実施の形態では、周辺認識装置2は一体の演算素子、記憶媒体及びインタフェース回路を有するものとして説明するが、これらが別体の演算素子等により構成されていてもよい。
【0032】
周辺認識装置2の記憶部21には図略の制御用プログラムが格納されており、この制御用プログラムが周辺認識装置2の起動時に制御部20により実行されて、周辺認識装置2は図4に示すような機能構成を備えたものとなる。特に、本実施形態の周辺認識装置2は、後述するように高速の画像処理を行うので、高速演算可能な演算素子、例えばFPGAなどを有することが好ましい。
【0033】
制御部20は、予測部24、同一判定部25及び判定部26を有する。
【0034】
予測部24は、前方カメラ(前方認識部)1aによる認識結果に基づいて、この前方カメラ1aが認識した対象物が右側方カメラ(側方認識部)1bまたは左側方カメラ(側方認識部)1cにより認識される時間範囲を予測する。
【0035】
特に本実施の形態では、予測部24は、前方カメラ1aによる認識結果に基づいて、前方カメラ1aが認識した対象物の車両Vに対する相対速度及び走行方向を求める。そして、予測部24は、これら相対速度及び走行方向に基づいて、前方カメラ1aが認識した対象物が右側方カメラ1bまたは左側方カメラ1cにより認識される時間範囲を予測する。
【0036】
同一判定部25は、前方カメラ1aが認識した対象物と右側方カメラ1bまたは左側方カメラ1cが認識した対象物とが同一の対象物であるか否かを判定する。
【0037】
同一判定部25による同一性の判定手法、つまり前方カメラ1aが認識した対象物と右側方カメラ1bまたは左側方カメラ1cが認識した対象物とが同一の対象物であるか否かの判定手法には種々のものが挙げられる。
【0038】
最も一般的であるのは、予測部24により求められた対象物の車両Vに対する相対速度及び走行方向に基づいて予測された時間範囲内において右側方カメラ1bまたは左側方カメラ1cが認識した対象物は、前方カメラ1aが認識した対象物と同一であると判定する手法である。
【0039】
また、同一判定部25が、前方カメラ1a及び右側方カメラ1bまたは左側方カメラ1cの認識結果に基づいて対象物のナンバープレートに記されている4桁の番号を認識し、これら番号が一致するか否かにより対象物の同一性を判定する手法もある。さらに、同一判定部25が、対象物の色、形状、車種を認識してその同一性に基づいて対象物の同一性を判定する手法もある。
【0040】
さらに、予測部24が、図略のナビゲーション装置からの情報に基づいて、ナビゲーション用マップ上の車両V及び対象物の座標情報を取得し、予測部24が求めた対象物の車両Vに対する相対速度及び走行方向を用いて所定時間後の対象物の座標位置を推測してもよい。そして、同一判定部25は、所定時間後において予測部24が予測した対象物の座標位置近傍において右側方カメラ1bまたは左側方カメラ1cが対象物を認識したら、同一の対象物であると判定する手法もある。
【0041】
さらに、同一判定部25は、前方カメラ1aの認識結果に基づいて対象物がどの車線を走行しているかを認識し、この対象物が同一車線を引き続き走行すると仮定した場合の右側方カメラ1bまたは左側方カメラ1cによる対象物の認識位置を推測する。そして、同一判定部25は、推測した認識位置において対象物が認識されたら、対象物が同一であると判定する手法もある。
【0042】
そして、同一判定部25は、車車間通信を用いて取得した他車である対象物のGPS位置情報などの走行情報に基づいて所定時間経過後の対象物の位置情報を推測する。そして、同一判定部25は、推測した位置情報に基づく位置において対象物が認識されたら、対象物が同一であると判定する手法もある。
【0043】
判定部26は、前方カメラ1a及び右側方カメラ1bの認識結果に基づいて車両Vの走行方向を判定する。好ましくは、判定部26は、予測部24により予測された時間範囲内において右側方カメラ1bまたは左側方カメラ1cにより対象物が認識されたら、対象物は車両Vに対向する方向に走行すると判定する。
【0044】
特に本実施の形態では、判定部26は、予測部24により予測された時間範囲内において右側方カメラ1bまたは左側方カメラ1cにより対象物が認識されたら、同一判定部25により同一であると判定された対象物は車両に対向する方向に走行すると判定する。
【0045】
また、判定部26は、予測部24により予測された時間範囲以外において、右側方カメラ1bまたは左側方カメラ1cによる認識結果にのみ基づいて対象物の走行方向を判定する。
【0046】
これら予測部24、同一判定部25及び判定部26を含む制御部20さらに詳細な動作については後述する。
【0047】
記憶部21には、制御部20における各種動作の際に用いられる各種データが一時的または非一時的に格納される。
【0048】
入力部22は、車両ECU3からの車両Vに関する情報、一例として車速、舵角等の情報を受け入れる。また、入力部22は、前方認識部(前方カメラ)1a及び側方認識部(右側方カメラまたは左側方カメラ)1b、1cから認識情報及び映像信号を受け入れる。そして、入力部22は、受け入れた情報等を制御部20に送出する。
【0049】
出力部23は、制御部20から出力される対象物の走行方向に関する情報を含む情報を受け入れ、これを外部機器に出力する。
【0050】
次に、本実施の形態である車載カメラシステムSの動作の概要について図5図9を参照して説明する。
【0051】
図5は、一般的な車載カメラシステムによる車両の走行方向の判定手法の一例を説明するための図である。ここに、一般的な車載カメラシステムでは、本実施の形態の車載カメラシステムSと異なり、前方カメラを用いずに側方カメラ(右側方カメラまたは左側方カメラ)によって他車の走行方向を判定している。
【0052】
また、図5及び図6に示す例では、車両Vは片側1車線の道路を走行しているものとする。従って、対象物は車両Vと同一方向を走行することを排除することができるので、車載カメラシステムは、主に対向車の存在を認識すればよい。
【0053】
図5、及び以降説明する図6図9において、図中上(例えば図5(a))から下に向かう(図5(c))に従って時間が進むように図示している。
【0054】
図5(a)に示すように、一般的な車載カメラシステムが搭載された車両(自車)Vは、側方カメラによって他車の走行方向を判定している。従って、自車と異なる方向に走行する対向車Aが車両Vの前方を走行していると、側方カメラの撮像範囲AR1内に対向車Aが進入していないので、一般的な車載カメラシステムでは対向車Aをまだ認識できない。よって、この時点では、一般的な車載カメラシステムは対向車Aの走行方向を判定することはできない。
【0055】
図5(b)に示すように、側方カメラの撮像範囲AR1内に対向車Aが進入した時点では、側方カメラにより認識された対象物が対向車Aであると直ちに認識することはできない。つまり、側方カメラは対象物を認識しても、その走行方向及び走行速度を求めるには、所定の時間(複数フレーム)にわたってこの対象物を認識する必要がある。従って、この時点でも一般的な車載カメラシステムは対向車Aの走行方向を判定することはできない。
【0056】
そして、図5(c)に示すように、側方カメラの撮像範囲AR1内に対向車Aが進入してから所定の時間が経過すると、一般的な車載カメラシステムは対象物の走行方向を判定し、この対象物が対向車Aであることを認識することができる。
【0057】
このように、一般的な車載カメラシステムでは、側方カメラにより対向車Aが撮像された時点(図5(b))から実際に対向車Aの走行方向を判定する時点(図5(c))までに一定の時間差が生じる。この時間差は、一般的な車載カメラシステムによる対向車Aの認識性能及び認識処理時間にも依存するものの、対向車Aと車両Vとの走行方向が逆であることから、時間差も大きくなる傾向にある。従って、この時間差に相当する範囲(図5(b)から図5(c)までの時間及びこの時間に対応する走行距離範囲)では、一般的な車載カメラシステムが対向車Aの走行方向を判定できないことになる。
【0058】
次に、図6は、本実施の形態である車載カメラシステムSによる車両Vの走行方向の判定手法の一例を説明するための図である。
【0059】
本実施の形態である車載カメラシステムSでは、図6(a)に示すように、前方認識部である前方カメラ1aが車両Vの前方を撮像している。前方カメラ1aは、その撮像範囲AR2内に進入した対象物(この場合は対向車B)の認識を行う。周辺認識装置2の予測部24は、前方カメラ1aの認識結果に基づいて、前方カメラ1aが認識した対向車Bの車両Vに対する相対速度及び走行方向を求める。そして、予測部24は、これら相対速度及び走行方向に基づいて、対向車Bが側方カメラ(この場合は右側方カメラ1b)により認識される時間範囲を予測する。
【0060】
次に、図6(b)に示すように、側方認識部である右側方カメラ1bの撮像範囲AR1内に対向車Bが進入すると、右側方カメラ1bはこの対向車Bを認識する。周辺認識装置2の同一判定部25は、右側方カメラ1bにより認識された対象物が前方カメラ1aにより認識された対象物(対向車B)であるか否かを判定する。図6(b)に示す例では、同一判定部25は前方カメラ1a及び右側方カメラ1bによりそれぞれ認識された対象物(対向車B)は同一であると判定する。
【0061】
そして、判定部26は、同一判定部25により同一と判定された対象物(対向車B)が、予測部24により予測された時間範囲内において右側方カメラ1bにより認識されたかどうかを判定する。その結果、対象物(対向車B)が予測時間範囲内に認識された場合は、判定部26は、対象物(対向車B)が車両Vに対向する方向に走行すると判定する。言い換えれば、判定部26は、対象物が対向車(B)であると判定する。
【0062】
従って、図6(b)に示す例では、前方カメラ1aにより認識された対向車Bが右側方カメラ1bの撮像範囲AR1内に進入してこの右側方カメラ1bにより認識されることにより、この対向車Bの走行方向を早期に判定することができる。つまり、図5(b)(c)に示す例のように、対向車Aが右側方カメラ1bにより認識されてから所定時間を経過することなく、対象物である対向車Bの走行方向を判定することができる。
【0063】
判定部26による判定結果は、自車の車線変更や進路変更の可否の判定等に用いることができる。つまり、対向車Bであると認識できれば、車線変更等の可否の判定等において、対向車Bが自車と接近、接触する可能性は低いと判断できるので、この対向車Bを判定対象から早期に除外することができる。
【0064】
次に、図7は、一般的な車載カメラシステムによる車両の走行方向の判定手法の別の例を説明するための図である。図7図9に示す例では、車両Vは片側2車線以上の車線を有する道路を走行しているものとする。従って、車載カメラシステムは、カメラにより認識した対象物が対向車線を走行しているか、あるいは隣接車線を走行しているかについても認識する必要がある。
【0065】
図7において、自車(車両V)の側方カメラは、自車と同一方向に走行する車両Dを継続的に撮像して認識している。従って、一般的な車載カメラシステムは、この車両Dが自車と同一方向に走行することを認識、判定している。また、図5に示す例と同様に、一般的な車載カメラシステムでは、図7に示す段階で対向車Cを認識することができない。
【0066】
図8も、一般的な車載カメラシステムによる車両の走行方向の判定手法の別の例を説明するための図である。
【0067】
図8(a)に示す例では、図5(a)に示す例と同様に、自車と異なる方向に走行する対向車Eが車両Vの前方を走行していると、側方カメラの撮像範囲AR1内に対向車Eが進入していないので、一般的な車載カメラシステムでは対向車Eをまだ認識できない。よって、この時点では、一般的な車載カメラシステムは対向車Eの走行方向を判定することはできない。
【0068】
そして、図8(b)に示すように、側方カメラの撮像範囲AR1内に対向車Eが進入してから所定の時間が経過すると、一般的な車載カメラシステムは対象物の走行方向を判定し、この対象物が車両Vと同一方向に走行している車両ではなく、車両Vに対向する方向に走行する対向車Eであることを認識することができる。
【0069】
次に、図9は、本実施の形態である車載カメラシステムSによる車両Vの走行方向の判定手法の別の例を説明するための図である。
【0070】
図9(a)に示すように、前方カメラ1aは、その撮像範囲AR2内に進入した対象物(この場合は対向車F)の認識を行う。予測部24は、前方カメラ1aが認識した対向車Fの車両Vに対する相対速度及び走行方向を求める。そして、予測部24は、これら相対速度及び走行方向に基づいて、対向車Fが側方カメラ(この場合は右側方カメラ1b)により認識される時間範囲を予測する。
【0071】
右側方カメラ1bが対向車Fを認識すると、同一判定部25は、右側方カメラ1bにより認識された対象物が前方カメラ1aにより認識された対象物(対向車F)であるか否かを判定する。そして、判定部26は、同一判定部25により同一と判定された対象物(対向車F)が、予測部24により予測された時間範囲内において右側方カメラ1bにより認識されたかどうかを判定する。その結果、対象物(対向車F)が予測時間範囲内に認識された場合は、判定部26は、対象物(対向車F)が車両Vに対向する方向に走行すると判定する。言い換えれば、判定部26は、対象物が対向車(F)であると判定する。
【0072】
従って、図9(b)に示すように、右側方カメラ1bが対象物(対向車F)を撮像して認識している間はずっと、周辺認識装置2はこの対象物の走行方向、言い換えれば、対象物が車両Vと同一方向を走行する車両か、あるいは対向する方向に走行する対向車Fであるかの判断を行う必要がなくなる。
【0073】
なお、図9(a)において、対向車Fに隣接する車線(図において対向車Fが走行する車線の上方にある車線)にも対向車が走行している。しかしながら、この対向車は前方カメラ1aの撮像範囲AR2内にないため、前方カメラ1aはこの対向車の認識を行わない。結果として、予測部24はこの対向車の車両Vに対する相対速度及び走行方向を求めず、さらには対向車が右側方カメラ1bにより認識される時間範囲も予測しない。
【0074】
この結果、この対向車が右側方カメラ1bの撮像範囲AR1内に進入したとしても、同一判定部25は対向車に対する同一性の判定を行わない。これにより、判定部26は対向車を走行方向の判定を行う必要がない対象物であると判定する。よって、周辺認識装置2全体の処理負担を軽減することができる。
【0075】
次に、本実施の形態である車載カメラシステムSの動作の詳細を図10のフローチャートを参照して説明する。
【0076】
図10は、本実施の形態である車載カメラシステムS、特に周辺認識装置2の動作の一例を説明するためのフローチャートである。図10に示すフローチャートは、図6及び図9に示す例に対応している。図10のフローチャートに示す動作は、周辺認識装置2の電源が入れられて動作が開始した時点で開始する。
【0077】
まず、ステップS10では、前方カメラ1aが対向車を認識したか否かが周辺認識装置2の制御部20により判定される。そして、対向車を認識したと判定されたら(ステップS10においてYES)、プログラムはステップS11に移行する。一方、対向車を認識していないと判定されたら(ステップS10においてNO)、プログラムはステップS18に移行する。
【0078】
ステップS11では、前方カメラ1aの認識結果に基づいて、予測部24が、ステップS10において前方カメラ1aにより認識された対向車が右側方カメラ1bにより認識される時間範囲を予測する。
【0079】
ステップS12では、制御部20が右側方カメラ1b及び左側方カメラ1cにより認識された対象物の走行方向及び走行速度の算出を行う。ステップS12により行われる動作は、既に説明したように、対象物の認識を所定時間継続して行うことで、その走行方向及び走行速度の算出を行うものである。
【0080】
ステップS13では、ステップS11で予測部24により算出された予測時間範囲に到達したか否かが制御部20により判定される。そして、予測時間範囲に到達したと判定されたら(ステップS13においてYES)、プログラムはステップS14に移行する。一方、まだ予測時間範囲に到達していないと判定されたら(ステップS13においてNO)、プログラムはステップS12に戻って、引き続き右側方カメラ1b及び左側方カメラ1cにより認識された対象物の走行方向及び走行速度の算出を行う。
【0081】
ステップS14では、右側方カメラ1bにより対象物が認識され、そして、認識された対象物がステップS10において認識された対象物と同一であるか否かが同一判定部25により判定される。そして、対象物が同一であると判定されたら(ステップS14においてYES)、プログラムはステップS15に進む。一方、対象物が認識されていない、または対象物が同一でないと判定されたら(ステップS14においてNO)、プログラムはステップS16に進む。
【0082】
ステップS15では、判定部26が、同一判定部25の判定結果及び右側方カメラ1bの認識結果との双方に基づいて、ステップS14で認識された対象物は車両Vと対向する方向に走行する対向車であると判定する。この後、プログラムはステップS10に戻る。
【0083】
ステップS15における判定部26の動作をより詳細に説明する。ステップS14における判定が肯定されているので、判定部26は、ステップS10において前方カメラ1aが認識した対象物と同一の対象物が右側方カメラ1bにおいて認識されることを予定、予測している。
【0084】
そこで、判定部26は、右側方カメラ1bによる認識結果を用いずに、右側方カメラ1bにより撮像された対象物に対する認識結果等の処理を実施し、これと並行して、右側方カメラ1bによる認識結果を用いて、右側方カメラ1bの撮像結果に基づく認識処理を行うことができる。ここに、「認識結果等の処理」とは、例えば対象物の周囲に枠を表示するといった認識結果の表示処理を行うこと、あるいは、表示には用いない車両制御を行うための認識結果情報の処理を行うことを指す。
【0085】
ステップS16ではステップS12と同様の処理が行われる。この後、プログラムはステップS17に移行する。
【0086】
ステップS17では、ステップS11で予測部24により算出された予測時間範囲を経過したか否かが制御部20により判定される。そして、予測時間範囲を経過したと判定されたら(ステップS17においてYES)、プログラムはステップS10に戻る。一方、まだ予測時間範囲を経過していないと判定されたら(ステップS17においてNO)、プログラムはステップS14に戻る。
【0087】
一方、ステップS18では、ステップS12、S16と同様の処理が行われる。この後、プログラムはステップS10に戻る。
【0088】
以上のように構成された本実施の形態である周辺認識装置2では、判定部26が、前方カメラ1a及び右側方カメラ1bの認識結果に基づいて対象物の走行方向を判定している。
【0089】
このようにすることで、右側方カメラ1bにより認識された対象物の走行方向をより短時間で判定することが可能となる。
【0090】
特に、本実施の形態である周辺認識装置2では、予測部24により予測された時間範囲内において右側方カメラ1bにより対象物が認識されたら、判定部26が対象物は車両Vに対向する方向に走行すると判定する。これにより、判定部26の判定動作をより高速にかつ確実に行うことができる。
【0091】
また、判定部26は、予測部24により予測された時間範囲以外において、右側方カメラ1bによる認識結果にのみ基づいて対象物の走行方向を判定しているので、対向車が認識されない状態においても適切な対象物の走行方向を判定することができる。
【0092】
また、予測部24は、前方カメラ1aによる認識結果に基づいて対象物の車両Vに対する相対速度及び走行方向を求め、この相対速度及び走行方向に基づいて、前方カメラ1aが認識した対象物が右側方カメラ1bにより認識される時間範囲を予測しているので、予測部24による時間範囲予測をより精度良く行うことができる。
【0093】
そして、同一判定部25が、前方カメラ1aが認識した対象物と右側方カメラ1bが認識した対象物とが同一の対象物であるか否かを判定し、判定部26が、予測部24により予測された時間範囲内において右側方カメラ1bにより対象物が認識されたら、同一判定部25により同一であると判定された対象物は車両に対向する方向に走行すると判定しているので、判定部26による判定制度をより向上させることができる。
【0094】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0095】
S 車載カメラシステム
V 車両
1 カメラ
1a 前方カメラ(前方認識部)
1b 右側方カメラ(側方認識部)
1c 左側方カメラ(側方認識部)
2 周辺認識装置
3 車両ECU
20 制御部
21 記憶部
22 入力部
24 予測部
25 同一判定部
26 判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10