(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20220805BHJP
H01M 50/474 20210101ALI20220805BHJP
H01M 50/477 20210101ALI20220805BHJP
H01M 50/486 20210101ALI20220805BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20220805BHJP
H01M 10/0587 20100101ALN20220805BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M50/474
H01M50/477
H01M50/486
H01M50/531
H01M10/0587
(21)【出願番号】P 2018161007
(22)【出願日】2018-08-30
【審査請求日】2020-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】505083999
【氏名又は名称】ビークルエナジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 佳士
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-078008(JP,A)
【文献】特開2014-007064(JP,A)
【文献】特開2016-178025(JP,A)
【文献】特開2013-077484(JP,A)
【文献】特開2007-073317(JP,A)
【文献】特開2009-199974(JP,A)
【文献】特開2016-091787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/04
H01M 50/40-50/497
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回軸方向の一端と他端に正極集電部と負極集電部が位置するように配置した正極電極と負極電極とを第1セパレータと第2セパレータを介在させて巻回軸を中心に巻回した巻回体を備えた二次電池であって、
前記巻回体は、最外周に前記第1セパレータの終端部が巻回され、前記第1セパレータの前記終端部の内側に前記負極電極の終端部が巻回され、前記負極電極の前記終端部の内側に前記第2セパレータの終端部を介在させて前記正極電極の終端部が巻回されており、
少なくとも前記第1セパレータと前記正極集電部との間を跨いで前記巻回体の外表面の一部を覆う熱可塑性成形材からなる被覆部を有し、
前記被覆部は、熱可塑性接着剤であることを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記巻回体は、前記正極集電部が巻回された前記巻回軸方向の端部において、前記第1セパレータが前記負極電極よりも前記巻回軸方向に突出しており、前記正極集電部が前記第1セパレータよりも前記巻回軸方向に突出していることを特徴とする請求項
1に記載の二次電池。
【請求項3】
正極外部端子および正極集電板と、負極外部端子および負極集電板とを備え、
前記正極集電部と前記負極集電部は、それぞれ、前記正極集電板と前記負極集電板を介して、前記正極外部端子と前記負極外部端子に接続され、
前記被覆部は、前記正極集電板に接合された前記正極集電部の外形に沿う形状に成形されていることを特徴とする請求項
2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記巻回体は、扁平な形状に成形され、平板状の平坦部と、該平坦部の両端に設けられた半円筒状の湾曲部とを有し、
前記被覆部は、前記平坦部に位置していることを特徴とする請求項
3に記載の二次電池。
【請求項5】
前記被覆部は、前記正極電極の終端部の巻回方向の端縁を該巻回方向に跨ぐように配置されていることを特徴とする請求項
4に記載の二次電池。
【請求項6】
前記正極電極は、帯状の正極集電体と、該正極集電体の幅方向の一側を除いて該正極集電体に塗工された正極合剤層と、前記正極集電体の前記一側を露出させた前記正極集電部とを有し、
前記負極電極は、帯状の負極集電体と、該負極集電体の幅方向の一側を除いて該負極集電体に塗工された負極合剤層と、前記負極集電体の前記一側を露出させた前記負極集電部とを有することを特徴とする請求項
1に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からセパレータの収縮に基づく短絡の発生を防止した安全性の高い非水二次電池に関する発明が知られている(下記特許文献1を参照。)。特許文献1に記載された発明は、厚みが20μm以下のセパレータを用いる場合に生じる問題点を解決し、セパレータの収縮に基づく内部短絡の発生を防止した安全性の高い非水二次電池を提供することを目的としている(同文献、第0005段落-第0011段落等を参照。)。
【0003】
上記目的を達成するために、特許文献1は、以下の発明を開示している(同文献、請求項1等を参照。)。非水二次電池は、導電性基体上に正極合剤層が形成された正極と、導電性基体上に負極合剤層が形成された負極とを、厚みが20μm以下のセパレータを介して巻回した電極巻回体を有する。セパレータの周辺部の一部または全部は、正極または負極の一部分に固定されている。
【0004】
この従来の発明によれば、セパレータの周辺部の一部を正極に固定しているので、加熱時のセパレータの収縮による内部短絡を防止することができる(同文献、第0047段落等を参照。)。したがって、この従来の発明によれば、セパレータの収縮による内部短絡の発生を防止した安全性の高い非水二次電池を提供することができる(同文献、第0048段落等を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記した従来の非水二次電池のような電極巻回体を備える二次電池では、一般に、正極の終端部の外側にセパレータを介して負極の終端部が巻回され、その外側の電極巻回体の最外周にセパレータの終端部が巻回される場合がある。この場合、最外周のセパレータの終端部の内周側に巻回された負極の終端部と、その負極の終端部の内周側にセパレータを介して巻回された正極の終端部との間に、隙間が生じやすくなる。電極巻回体の負極と正極との間に隙間が生じると、その隙間から電解液とともに異物が流入し、二次電池の性能を低下させるおそれがある。
【0007】
本開示は、負極電極と正極電極とをセパレータを介在させて巻回した巻回体に流入する異物を抑制することが可能な二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、巻回軸方向の一端と他端に正極集電部と負極集電部が位置するように配置した正極電極と負極電極とを第1セパレータと第2セパレータを介在させて巻回軸を中心に巻回した巻回体を備えた二次電池であって、前記巻回体は、最外周に前記第1セパレータの終端部が巻回され、前記第1セパレータの前記終端部の内側に前記負極電極の終端部が巻回され、前記負極電極の前記終端部の内側に前記第2セパレータの終端部を介在させて前記正極電極の終端部が巻回されており、少なくとも前記第1セパレータと前記正極集電部との間を跨いで前記巻回体の外表面の一部を覆う熱可塑性成形材からなる被覆部を有することを特徴とする二次電池である。
【発明の効果】
【0009】
上記一態様によれば、被覆部によって第1セパレータと正極集電部との間を跨いで巻回体の外表面の一部を覆うことで、巻回体の最外周に位置する第1セパレータの終端部を、正極集電部に近接させることができる。これにより、第1セパレータの終端部の内周に巻回された負極電極と第2セパレータとを正極電極の終端部に近接させ、巻回体の負極電極と正極電極との間に隙間が生じるのを抑制することができる。したがって、上記一態様によれば、負極電極と正極電極とを第1セパレータと第2セパレータを介在させて巻回した巻回体に流入する異物を抑制することが可能な二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態1に係る二次電池の一例を示す斜視図。
【
図4】
図2に示す二次電池の集電板が巻回体に接合された状態を示す正面図。
【
図5A】
図4に示す巻回体および正極集電板のVA‐VA線に沿う模式的な断面図。
【
図5B】
図5Aに示す巻回体の変形部の一点鎖線で囲まれたVB部の模式的な拡大図。
【
図6】
図4に示す巻回体のVI‐VI線に沿う模式的な拡大断面図。
【
図7】
図4に示す巻回体に被覆部を形成した状態を示す正面図。
【
図8A】
図7に示す巻回体のVIIIA‐VIIIA線に沿う模式的な拡大断面図。
【
図8B】
図8Aに示す巻回体の変形部のVIIIB部の模式的な拡大図。
【
図9】実施形態1に係る二次電池の変形例を示す
図7に対応する正面図。
【
図10A】本開示の実施形態2に係る二次電池の
図7に対応する正面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示に係る二次電池の実施形態を説明する。
【0012】
[実施形態1]
図1は、本開示の実施形態1に係る二次電池100の一例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す二次電池100の分解斜視図である。
図3は、
図2に示す二次電池100の電池容器10の内部に収容された巻回体30の一部を展開した状態を示す分解斜視図である。
【0013】
本実施形態の二次電池100は、たとえば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の蓄電装置に使用される角形二次電池であり、より詳細には、たとえば、角形のリチウムイオン二次電池である。詳細については後述するが、本実施形態の二次電池100は、次の構成を主要な特徴としている。
【0014】
二次電池100は、巻回体30を備えている。巻回体30は、正極電極31と、負極電極32と、第1セパレータ33と、第2セパレータ34とを備えている。巻回体30は、正極電極31と負極電極32とを、巻回軸方向Dの一端と他端に正極集電部31cと負極集電部32cが位置するように配置し、第1セパレータ33と第2セパレータ34を介在させて巻回軸30Aを中心に巻回することによって構成されている。巻回体30は、最外周に第1セパレータ33の終端部33eが巻回され、その内側に負極電極32の終端部32eが巻回され、その内側に第2セパレータ34の終端部34eを介在させて正極電極31の終端部31eが巻回されている。二次電池100は、少なくとも第1セパレータ33と正極集電部31cとの間を跨いで巻回体30の外表面の一部を覆う熱可塑性成形材からなる被覆部37を有する(
図7、
図8Aおよび
図8Bを参照。)。
【0015】
以下、本実施形態の二次電池100の各部の構成を詳細に説明する。なお、各図面では、扁平角形の二次電池100の幅方向に平行なX軸、厚さ方向に平行なY軸、高さ方向に平行なZ軸からなるXYZ直交座標系を用いて、二次電池100の各部の構成を説明する場合がある。また、以下の説明における上下左右の方向は、図面に基づいて二次電池100の各部の構成を説明するための便宜的な方向であり、鉛直方向や水平方向に限定されない。
【0016】
電池容器10は、たとえば扁平な矩形箱形の形状を有する金属製の容器である。電池容器10は、幅方向(X方向)に沿う一対の広側面10wと、厚さ方向(Y方向)に沿う一対の狭側面10nと、細長い長方形の上面10tおよび底面10bを有している。これら広側面10w、狭側面10n、上面10tおよび底面10bのうち、広側面10wが最大の面積を有している。
【0017】
電池容器10は、たとえば、高さ方向(Z方向)の一端が開放された扁平角形の電池缶11と、その電池缶11の開口部11aを閉塞する長方形板状の電池蓋12とを有している。電池容器10は、電池缶11の開口部11aから蓄電要素である巻回体30が内部に挿入されている。電池容器10は、たとえば、レーザ溶接によって電池缶11の開口部11aの全周にわたって電池蓋12が溶接されることで、電池缶11の開口部11aが電池蓋12によって封止されている。
【0018】
電池蓋12は、二次電池100の幅方向(X方向)である長手方向の両端部に外部端子20の一部を挿通させる貫通孔12aを有している。また、電池蓋12は、長手方向の中央部にガス排出弁15を有している。ガス排出弁15は、たとえば、電池蓋12の一部をプレス加工して薄肉化し、スリットを形成した部分であり、電池蓋12と一体的に設けられている。ガス排出弁15は、電池容器10の内圧が所定の圧力まで上昇したときに開裂して、電池容器10の内部のガスを排出することで、電池容器10の内圧を低減して二次電池100の安全性を確保する。
【0019】
電池蓋12は、たとえば貫通孔12aとガス排出弁15との間に注液孔16を有している。注液孔16は、電池蓋12の内部に電解液を注入するために設けられ、電解液の注入後に、たとえばレーザ溶接によって注液栓17を接合することによって封止される。電池容器10内に注入される電解液としては、たとえば、エチレンカーボネート等の炭酸エステル系の有機溶媒に6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等のリチウム塩が溶解された非水電解液を使用することができる。
【0020】
一対の外部端子20は、電池蓋12の外面すなわち電池容器10の上面10tの長手方向に離隔して配置され、電池蓋12を貫通して電池容器10の内部でそれぞれ一対の集電板40の基部41に接続されている。外部端子20は、正極外部端子20Pと負極外部端子20Nを含んでいる。正極外部端子20Pの素材は、たとえばアルミニウムまたはアルミニウム合金である。負極外部端子20Nの素材は、たとえば銅または銅合金である。
【0021】
外部端子20は、たとえばバスバーに接合される接合部21と、集電板40に接続される接続部22とを有している。接合部21は、おおむね直方体形状の矩形のブロック状の形状を有し、電気絶縁性を有するガスケット13を介して電池蓋12の外面すなわち電池容器10の上面10tに配置される。接続部22は、電池蓋12に対向する接合部21の底面から電池蓋12を貫通する方向に延びる円柱状または円筒状の部分である。
【0022】
集電板40は、
図2に示すように、所定の形状に屈曲された板状の部材であり、巻回体30に接続されている。集電板40は、正極電極31と正極外部端子20Pとを接続する正極集電板40Pと、負極電極32と負極外部端子20Nとを接続する負極集電板40Nとを含む。正極集電板40Pの素材は、たとえばアルミニウムまたはアルミニウム合金である。負極集電板40Nの素材は、たとえば銅または銅合金である。
【0023】
集電板40は、外部端子20に接続された基部41と、その基部41に交差する方向に延びる延在部42と、巻回体30に接合された延在部42の接合部42aと基部41との間に設けられた屈曲部43と、を有している。基部41は、電池蓋12の内面に沿って配置され、延在部42は、電池蓋12の内面に直交する方向へ向けて延びている。延在部42の接合部42aは、巻回体30の正極集電部31cまたは負極集電部32cが巻回されて扁平に積層された積層部35に対して、たとえば、超音波接合によって接合されている。
【0024】
巻回体30は、たとえば、正極電極31と、負極電極32と、これらの電極を絶縁する絶縁体である第1セパレータ33と、第2セパレータ34とを備えている。巻回体30は、第1セパレータ33、正極電極31、第2セパレータ34、および負極電極32が積層されて巻回された構成を有する巻回電極群である。巻回体30において、たとえば、最内周と最外周に巻回された電極は負極電極32であり、最外周に巻回された負極電極32の外周にさらに第1セパレータ33が巻回されている。
【0025】
負極電極32は、負極集電体32aと、その表裏両面に形成された負極合剤層32bと、その負極合剤層32bから負極集電体32aが露出した部分である負極集電部32cとを有している。負極電極32の負極集電部32cは、長尺帯状の負極電極32の幅方向(X方向)、すなわち巻回体30の巻回軸方向Dの一側に設けられている。負極集電体32aは、たとえば厚さが約10μm程度の銅箔である。
【0026】
負極合剤層32bは、たとえば、負極集電体32aの表裏両面に、負極集電部32cを除いてスラリー状の負極合剤を塗布し、塗布された負極合剤を乾燥させてプレスすることで形成されている。その後、負極合剤層32bが形成された負極集電体32aを、適宜、裁断することによって負極電極32を製作することができる。負極集電体32aを含まない負極合剤層32bの厚さは、たとえば約70μm程度である。負極合剤のスラリーとしては、たとえば、負極活物質である100重量部の非晶質炭素粉末に対し、結着剤である10重量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を添加し、さらに分散溶媒としてN-メチルピロリドン(NMP)を添加して混練したものを用いることができる。
【0027】
なお、負極合剤層32bに含まれる負極活物質は、前述の非晶質炭素に限定されない。たとえば、負極活物質として、リチウムイオンを挿入、脱離可能な天然黒鉛や、人造の各種黒鉛材、コークスなどの炭素質材料やSiやSnなどの化合物(たとえば、SiO、TiSi2など)、またはこれらの複合材料を用いてもよい。また、負極活物質の粒子形状は特に制限されず、たとえば、鱗片状、球状、繊維状、塊状などであってもよい。
【0028】
正極電極31は、正極集電体である正極集電体31aと、その表裏両面に形成された正極合剤層31bと、その正極合剤層31bから正極集電体31aが露出した部分である正極集電部31cとを有している。正極電極31の正極集電部31cは、長尺帯状の正極電極31の幅方向(X方向)、すなわち巻回体30の巻回軸方向Dにおいて、負極電極32の負極集電部32cと反対側の一側に設けられている。正極集電体31aは、たとえば厚さが約20μm程度のアルミニウム箔である。
【0029】
正極合剤層31bは、たとえば、正極集電体31aの表裏両面に、正極集電部31cを除いてスラリー状の正極合剤を塗布し、塗布された正極合剤を乾燥させてプレスすることで形成されている。その後、正極合剤層31bが形成された正極集電体31aを、適宜、裁断することによって正極電極31を製作することができる。正極集電体31aを含まない正極合剤層31bの厚さは、たとえば約90μm程度である。正極合剤のスラリーとしては、たとえば、正極活物質である100重量部のマンガン酸リチウム(化学式LiMn2O4)に対し、導電材である10重量部の鱗片状黒鉛と、結着剤である10重量部のPVDFとを添加し、さらに分散溶媒としてNMPを添加して混練したものを用いることができる。
【0030】
なお、正極合剤層31bに含まれる正極活物質は、前述のマンガン酸リチウムに限定されない。たとえば、正極活物質として、スピネル結晶構造を有する他のマンガン酸リチウム、一部を金属元素で置換またはドープしたリチウムマンガン複合酸化物を用いることができる。また、正極活物質として、層状結晶構造を有するコバルト酸リチウムやチタン酸リチウム、一部を金属元素で置換またはドープしたリチウム-金属複合酸化物を用いてもよい。
【0031】
また、負極合剤および正極合剤に用いられる結着剤は、PVDFに限定されない。結着剤としては、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ブチルゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、多硫化ゴム、ニトロセルロース、シアノエチルセルロース、各種ラテックス、アクリロニトリル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、フッ化プロピレン、フッ化クロロプレン、アクリル系樹脂などの重合体およびこれらの混合体などを用いることができる。
【0032】
図示は省略するが、巻回体30は、負極電極32、第1セパレータ33、正極電極31、および第2セパレータ34を積層させて巻回するための軸芯を有してもよい。軸芯としては、たとえば、正極集電体31a、負極集電体32a、第1セパレータ33および第2セパレータ34よりも曲げ剛性の高い樹脂シートを巻回したものを用いることができる。また、巻回体30は、巻回軸方向D(X方向)において負極合剤層32bの寸法が正極合剤層31bの寸法よりも大きく、正極合剤層31bが必ず負極合剤層32bの間に挟まれるように構成されている。
【0033】
巻回体30において、正極電極31の正極集電部31cと負極電極32の負極集電部32cは、それぞれ、
図3に示すように巻回軸方向D(X方向)の一端と他端で巻回されて積層されている。さらに、正極集電部31c、負極集電部32cは、それぞれ、
図2に示すように扁平に束ねられ、たとえば超音波接合や抵抗溶接によって集電板40の延在部42の接合部42aに接合されている。
【0034】
なお、巻回軸方向D(X方向)において、第1セパレータ33、第2セパレータ34の寸法は、負極合剤層32bの寸法よりも大きい。しかし、第1セパレータ33、第2セパレータ34の端部は、それぞれ、正極集電部31c、負極集電部32cの端部よりも、巻回軸方向D(X方向)における内側の位置に配置されている。そのため、正極集電部31cおよび負極集電部32cを束ねて、それぞれ、正極集電板40Pおよび負極集電板40Nの延在部42の接合部42aに接合する際に支障はない。
【0035】
集電板40の基部41は、板状の絶縁部材14を介して電池蓋12に固定され、外部端子20に電気的に接続されている。より詳細には、外部端子20の接続部22が、たとえば、ガスケット13の貫通孔13aと、電池蓋12の貫通孔12aと、絶縁部材14の貫通孔14aと、集電板40の基部41の貫通孔41aに挿通され、集電板40の基部41の下面で先端を拡径させるように塑性変形させてかしめられている。
【0036】
これにより、外部端子20と集電板40とが、互いに電気的に接続され、電池蓋12に対してガスケット13と絶縁部材14を介して電気的に絶縁された状態で固定されている。また、集電板40の延在部42の接合部42aが、巻回体30の正極集電部31c、負極集電部32cのそれぞれの積層部35に接合されることで、巻回体30を構成する正極電極31および負極電極32が、集電板40を介して外部端子20に電気的に接続されている。ガスケット13および絶縁部材14の素材は、たとえばポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂などの電気絶縁性を有する樹脂である。
【0037】
図4は、
図2に示す電池蓋12に外部端子20および集電板40がガスケット13および絶縁部材14を介して固定され、集電板40が巻回体30に接合された状態を示す正面図である。集電板40は、巻回体30を構成する正極電極31の正極集電部31cと負極電極32の負極集電部32cに対し、超音波接合される場合がある。この場合、アンビルの上に正極集電板40Pおよび負極集電板40Nを配置し、その上に正極集電部31cおよび負極集電部32cをそれぞれ配置する。
【0038】
そして、ホーンによって、正極集電部31cおよび負極集電部32cを、それぞれ、正極集電板40Pおよび負極集電板40Nに対して押し当てて、ホーンに超音波振動を発生させる。これにより、正極集電板40Pと正極集電部31cの積層部35との間、および、負極集電板40Nと負極集電部32cの積層部35との間が冶金結合によって接合され、それぞれ接合部Jが形成される。
【0039】
たとえば、この超音波接合の過程で、集電板40、正極集電部31c、負極集電部32cが削られることなどにより、金属異物が発生する場合がある。発生した金属異物の一部は、たとえば、電池容器10に電解液を注入する過程で、電解液とともに巻回体30の内部に流入するおそれがある。金属異物は、巻回体30の内部に侵入すると、大きさや形状によっては、第1セパレータ33または第2セパレータ34を貫通して、正極電極31と負極電極32を短絡させるおそれがある。
【0040】
たとえば、巻回体30の内部に侵入した金属異物が、負極集電体32aや負極集電板40Nを構成する銅または銅合金であるとする。この場合、金属異物が正極電位で酸化されて電解液中に拡散し、負極電極32で還元析出することで、正極電極31と負極電極32との間に微小な短絡回路が形成されるおそれがある。金属異物の析出や成長形態は、金属の種類などによって異なる。たとえば、金属異物は、多孔質の第1セパレータ33または第2セパレータ34の空隙内を樹枝状に成長する場合がある。この場合、物理的にセパレータを貫通しない小さな金属異物であっても、正極電極31と負極電極32との間に短絡を生じさせるおそれがある。
【0041】
すなわち、異物に起因する二次電池100の内部短絡の要因としては、以下の二つの要因がある。第1の要因は、二次電池100の負極側の金属部材から発生した金属異物が電解液中を移動して正極側から巻回体30の内部へ流入し、第1セパレータ33または第2セパレータ34を貫通することによるものである。第2の要因は、二次電池100の正極側の金属部材から発生した金属異物が、巻回体30の正極側の端部から巻回体30の内部へ流入し、第1セパレータ33または第2セパレータ34を貫通することによるものである。このような巻回体30の内部への異物の流入を防止する対策は容易ではない。
【0042】
図5Aは、
図4に示す巻回体30および正極集電板40PのVA-VA線に沿う模式的な断面図である。
図5Bは、
図5Aに示す巻回体30の変形部36の一点鎖線で囲まれたVB部の模式的な拡大図である。
【0043】
巻回体30を構成する正極電極31の正極集電部31cは、巻回軸方向Dの一端で巻回軸30Aを中心に巻回されて積層され、扁平な形状に成形されている。巻回体30は、正極集電部31cが巻回された巻回軸方向Dの端部において、第1セパレータ33が負極電極32よりも巻回軸方向Dに突出しており、正極集電部31cが第1セパレータ33よりも巻回軸方向Dに突出している。巻回されて積層した正極集電部31cは、
図2に示すように、平坦部30aに対応する部分が厚さ方向(Y方向)に圧縮されて束ねられ、巻回体30の他の部分よりも厚さが薄い積層部35が形成されている。
【0044】
これにより、巻回体30の平坦部30aと、正極集電部31cの積層部35との間に、湾曲した形状の変形部36が形成される。すなわち、正極電極31の正極集電部31cは、巻回体30の内周側の巻き始め部分である始端部から、巻回体30の外周側の巻き終わり部分である終端部31eまで巻回され、扁平に成形されて巻回軸方向Dの先端部の積層部35で束ねられ、巻回体30の巻回軸方向Dの一端に変形部36を形成している。
【0045】
これにより、変形部36において、正極電極31の終端部31eの内周側に巻回された第1セパレータ33、負極電極32、および第2セパレータ34は、正極集電部31cとともに、巻回軸方向Dに積層部35に近づくほど、電池容器10の厚さ方向(Y方向)に巻回軸30Aに近づくように集束されている。これにより、正極集電部31cを含む変形部36においては、正極電極31の終端部31eおよびその内周側で、正極電極31と負極電極32との間の隙間Gが狭くなる。
【0046】
一方、変形部36において、正極電極31の終端部31eの外周側に巻回された第2セパレータ34、負極電極32、および最外周の第1セパレータ33は、巻回および積層された正極集電部31cを集束させて積層部35で束ねることによる影響をほとんど受けない。そのため、正極集電部31cを含む変形部36において、正極電極31の終端部31eの外周側に巻回された第2セパレータ34、負極電極32、および最外周の第1セパレータ33は、巻回軸30Aに向けて集束せず、おおむね巻回軸方向Dに沿う方向に延びている。これにより、正極集電部31cを含む変形部36においては、正極電極31の終端部31eの外周側で、正極電極31と負極電極32との間の隙間Gが広くなる。
【0047】
さらに、正極電極31の終端部31eの正極集電部31cとその外周に巻回された第2セパレータ34との間には、広い隙間Gwが形成される。この隙間Gwは、巻回軸方向Dに開放されている。そのため、この隙間Gwを介して正極電極31と負極電極32との間に金属異物が流入および侵入しやすくなるおそれがある。
【0048】
図6は、
図4に示す巻回体30のVI‐VI線に沿う模式的な拡大断面図である。正極電極31の巻き終わり端部である終端部31eの外周には、第2セパレータ34、負極電極32および第1セパレータ33が巻回されている。そのため、正極電極31の終端部31eの巻回方向Rの末端において、正極電極31の終端部31eの内周側に巻回された第1セパレータ33および負極電極32と、正極電極31の終端部31eの外周側に巻回された第2セパレータ34および負極電極32との間に隙間Gaが形成される。この隙間Gaに、巻回体30の巻回軸方向D(X方向)の端部から金属異物が流入および侵入するおそれがある。
【0049】
図7は、
図4に示す巻回体30に被覆部37を形成した状態を示す正面図である。
図8Aは、
図7に示す巻回体30のVIIIA‐VIIIA線に沿う模式的な拡大断面図である。
図8Bは、
図8Aに示す巻回体30の変形部36の一点鎖線で囲まれたVIIIB部の模式的な拡大図である。
【0050】
たとえば、
図5Bに示す隙間Gwや、
図6に示す隙間Gaを介した巻回体30の内部への金属異物の流入および侵入を抑制するために、本実施形態の二次電池100は、少なくとも第1セパレータ33と正極集電部31cとの間を跨いで巻回体30の外表面の一部を覆う熱可塑性成形材からなる被覆部37を有している。
【0051】
被覆部37は、たとえば、熱可塑性接着剤、すなわちホットメルト接着剤である。熱可塑性接着剤は、たとえば、エチレン酢酸ビニル(EVA)などの熱可塑性樹脂を含む。被覆部37は、たとえば、グルーガンによって加熱されて可塑化した状態で、巻回体30の最外周の第1セパレータ33と正極集電部31cとの間を跨ぐように巻回体30の外表面に塗布される。
【0052】
このとき、正極電極31の終端部31eの外周側に巻回された第2セパレータ34、負極電極32、および最外周の第1セパレータ33の巻回軸方向Dの端部は、熱可塑性接着剤の重量により、正極電極31の終端部31eの正極集電部31cへ向けて変形する。その結果、たとえば、巻回体30の最外周に巻回された第1セパレータ33の終端部33eの巻回軸方向Dの端部が、その内周側に巻回された第2セパレータ34の終端部34eの巻回軸方向Dの端部に接する。
【0053】
また、第2セパレータ34の終端部34eの巻回軸方向Dの端部が、その内周側に巻回された正極電極31の正極集電部31cの巻回軸方向Dの端部に接近し、または接する。その後、熱可塑性接着剤が冷却されて固化することで、変形部36の形状に倣う形状の被覆部37が形成される。すなわち、被覆部37は、集電板40に接合された正極集電部31cの外形に沿う形状に成形されている。
【0054】
また、前述のように、巻回体30は、扁平な形状に成形され、平板状の平坦部30aと、その平坦部30aの両端に設けられた半円筒状の湾曲部30bとを有している。被覆部37は、たとえば、巻回体30の平坦部30aに位置している。また、被覆部37は、たとえば、巻回体30の正極集電部31cが積層された積層部35において、正極集電板40Pの延在部42の接合部42aが接合された面に設けられている。
【0055】
また、被覆部37は、巻回体30の巻回軸方向Dの正極集電部31cが巻回された端部において、正極電極31の正極合剤層31bおよび負極電極32の巻回軸方向Dの端部を覆う位置に配置されている。また、被覆部37は、正極電極31の終端部31eの巻回方向Rの端縁を正極電極31の巻回方向Rに跨ぐように配置されている。また、被覆部37は、正極電極31の巻回方向Rにおいて、正極集電板40Pと正極集電部31cの積層部35との間に接合部Jが形成されている範囲に位置している。
【0056】
集電板40に接合され、被覆部37が設けられた巻回体30は、集電板40を介して電池蓋12に固定された状態で、電気絶縁性を有する樹脂製の絶縁シート50によって覆われて、電池缶11の開口部11aから電池缶11内に挿入される。絶縁シート50は、たとえばポリプロピレンなどの合成樹脂を素材とする一枚のシートまたは複数のフィルム部材からなる。絶縁シート50は、集電板40が接合された巻回体30のおおむね全体を集電板40とともに覆うことができる寸法および形状を有している。
【0057】
巻回体30は、巻回軸方向Dが二次電池100の幅方向(X方向)に沿うように、一方の湾曲部30bから電池缶11内に挿入され、他方の湾曲部30bが電池蓋12に対向して配置される。その後、前述のように、電池蓋12を電池缶11の開口部11aの全周にわたって接合して電池容器10を構成する。その後、注液孔16を介して電池容器10内に電解液を注入し、注液孔16に注液栓17を接合して封止する。このとき、電池容器10の内部の圧力と外部の圧力とを適切に調整すると、巻回体30内の空気と電解液の置換が促進されて、電池容器10内に電解液を効率的に注入することができる。
【0058】
以上の構成により、二次電池100は、外部端子20と外部機器とが、外部端子20に接合された図示を省略するバスバーを介して接続される。二次電池100は、外部端子20と集電板40を介して巻回体30の正極電極31および負極電極32に電力を供給することで充電され、巻回体30の正極電極31および負極電極32から集電板40および外部端子20を介して外部へ電力を供給することができる。
【0059】
以下、本実施形態の二次電池100の作用について説明する。
【0060】
本実施形態の二次電池100は、前述のように、巻回軸方向Dの一端と他端に正極集電部31cと負極集電部32cが位置するように配置した正極電極31と負極電極32とを第1セパレータ33と第2セパレータ34を介在させて巻回軸30Aを中心に巻回した巻回体30を備えている。巻回体30は、最外周に第1セパレータ33の終端部33eが巻回され、第1セパレータ33の終端部33eの内側に負極電極32の終端部32eが巻回されている。さらに、負極電極32の終端部32eの内側に第2セパレータ34の終端部34eを介在させて正極電極31の正極電極31が巻回されている。二次電池100は、少なくとも第1セパレータ33と正極集電部31cとの間を跨いで巻回体30の外表面の一部を覆う熱可塑性成形材からなる被覆部37を有している。
【0061】
この構成により、前述のように、たとえば、巻回体30の最外周に巻回された第1セパレータ33の終端部33eの巻回軸方向Dの端部が、その内周側に巻回された第2セパレータ34の終端部34eの巻回軸方向Dの端部に接する。また、第2セパレータ34の終端部34eの巻回軸方向Dの端部が、その内周側に巻回された正極電極31の正極集電部31cの巻回軸方向Dの端部に接近し、または接する。
【0062】
これにより、
図5Bに示す正極電極31の終端部31eの正極集電部31cとその外周に巻回された第2セパレータ34の終端部34eとの間の広い隙間Gwが縮小する。また、この隙間Gwは、正極電極31の終端部31eの正極集電部31cとその外周の第2セパレータ34の終端部34eとが接近し、または接することで、
図8Bに示すように閉鎖された狭い隙間Gnとなる。したがって、巻回体30の内部の正極電極31と負極電極32との間への金属異物の流入および侵入を抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態の二次電池100の巻回体30は、正極集電部31cが巻回された巻回軸方向Dの端部において、第1セパレータ33が負極電極32よりも巻回軸方向Dに突出している。また、正極集電部31cが第1セパレータ33よりも巻回軸方向Dに突出している。
【0064】
この構成により、第1セパレータ33と正極集電部31cとの間を跨ぐ被覆部37を設けることで、巻回体30の最外周に巻回された第1セパレータ33の終端部33eを正極集電部31cへ向けて変形させることができる。さらに、変形させた第1セパレータ33の終端部33eによって、負極電極32の終端部32eおよび第2セパレータ34の終端部34eを正極集電部31cへ向けて変形させることができる。したがって、巻回体30の内部への金属異物の流入および侵入をより効果的に抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態の二次電池100は、正極外部端子20Pおよび正極集電板40Pと、負極外部端子20Nおよび負極集電板40Nとを備えている。正極集電部31cと負極集電部32cは、それぞれ、正極集電板40Pと負極集電板40Nを介して、正極外部端子20Pと負極外部端子20Nに接続されている。そして、被覆部37は、正極集電板40Pに接合された正極集電部31cの外形に沿う形状に成形されている。
【0066】
この構成により、巻回体30において、正極電極31の終端部31eよりも外周に巻回された第1セパレータ33の終端部33e、負極電極32の終端部32e、および第2セパレータ34の終端部34eを正極集電部31cへ向けて変形させることができる。これにより、正極電極31の終端部31eの正極集電部31cとその外周に巻回された第2セパレータ34の終端部34eとの間の広い隙間Gwを縮小させ、閉鎖された狭い隙間Gnとすることができる。
【0067】
また、本実施形態の二次電池100の巻回体30は、扁平な形状に成形され、平板状の平坦部30aと、その平坦部30aの両端に設けられた半円筒状の湾曲部30bとを有している。そして、被覆部37は、平坦部30aに位置している。
【0068】
この構成により、巻回体30の正極集電部31cが巻回された端部において、平坦部30aで束ねられて圧縮された積層部35に連続する変形部36の最外周に生じやすい隙間Gwを効果的に縮小させることができる。
【0069】
また、本実施形態の二次電池100において、被覆部37は、正極電極31の終端部31eの巻回方向Rの端縁を正極電極31の巻回方向Rに跨ぐように配置されている。
【0070】
この構成により、巻回体30の巻回軸方向Dの正極集電部31cが巻回された端部において、
図6に示すような正極電極31の終端部31eの巻回方向Rの端縁に生じる隙間Gaを、被覆部37によって縮小させ、隙間Gaの巻回軸方向Dの端部を閉鎖することができる。したがって、この隙間Gaに、巻回体30の巻回軸方向D(X方向)の端部から金属異物が流入および侵入するのを抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態の二次電池100において、被覆部37は、熱可塑性接着剤である。
【0072】
この構成により、熱可塑性接着剤を加熱して可塑化させ、巻回体30の最外周の第1セパレータ33と正極集電部31cとの間を跨ぐように巻回体30の外表面に塗布して被覆部37を形成することができる。これにより、たとえば粘着テープを用いる場合と比較して、正極集電部31cを含む変形部36の外形に沿う被覆部37を容易に形成することができ、被覆部37を形成する工程の生産性を向上させ、コストを低減することができる。
【0073】
また、本実施形態の二次電池100において、正極電極31は、帯状の正極集電体31aと、その正極集電体31aの幅方向の一側を除いてその正極集電体31aに塗工された正極合剤層31bと、正極集電体31aの一側を露出させた正極集電部31cとを有している。負極電極32は、帯状の負極集電体32aと、その負極集電体32aの幅方向の一側を除いてその負極集電体32aに塗工された負極合剤層32bと、負極集電体32aの一側を露出させた負極集電部32cとを有している。
【0074】
この構成により、巻回軸方向Dの一端と他端に正極集電部31cと負極集電部32cが位置するように配置した正極電極31と負極電極32とを、第1セパレータ33と第2セパレータ34を介在させて巻回軸30Aを中心に巻回することができる。これにより、巻回軸方向Dの一端と他端に、それぞれ、正極集電部31cと負極集電部32cが巻回された巻回体30を構成することができる。
【0075】
以上説明したように、本実施形態によれば、内部短絡を生じさせるおそれがある上記二つの要因に対処することができ、負極電極32と正極電極31とをセパレータ33、34を介在させて巻回した巻回体30に流入する異物を抑制することが可能な二次電池100を提供することができる。なお、本開示に係る二次電池は、本実施形態の二次電池100に構成に限定されない。
【0076】
図9は、実施形態1に係る二次電池100の変形例を示す
図7に対応する正面図である。本変形例において、被覆部37は、巻回体30の最外周に巻回された第1セパレータ33の終端部33eの巻回方向Rにおいて、巻回体30の平坦部30aの全域にわたって設けられている。
【0077】
この構成により、巻回体30の平坦部30aの全域にわたって巻回体30の最外周に巻回された第1セパレータ33の終端部33eの巻回軸方向Dの端部が、正極集電部31cに接近するように変形する。これにより、前述の実施形態1に係る二次電池100と同様の効果を奏することができるだけでなく、
図8Bに示すような閉鎖された隙間Gnを巻回体30の平坦部30aの全域にわたって形成することができる。したがって、巻回体30の内部の正極電極31と負極電極32との間への金属異物の流入および侵入をより確実に抑制することができる。
【0078】
[実施形態2]
次に、
図1から
図6を援用し、
図10Aおよび
図10Bを参照して、本開示に係る二次電池の実施形態2を説明する。
図10Aは、実施形態2に係る二次電池の
図7に対応する正面図である。
図10Bは、
図10Aに示す巻回体30のXB‐XB線に沿う模式的な断面図である。
【0079】
本実施形態の二次電池は、被覆部37が熱収縮フィルムである点で、前述の実施形態1に係る二次電池100と異なっている。本実施形態の二次電池のその他の点は、前述の実施形態1に係る二次電池100と同様であるので、同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0080】
被覆部37は、たとえば、柔軟性を有する薄い筒状に形成されている。被覆部37は、たとえば、加熱前の非収縮状態の周長が、正極電極31、負極電極32、第1セパレータ33、および第2セパレータ34の巻回方向Rと直交する方向の巻回体30の周長よりも長い。そのため、集電板40に接合されて電池蓋12に固定された巻回体30の一方の湾曲部30bを筒状の被覆部37に挿入し、被覆部37を巻回体30の周囲に被せることができる。被覆部37は、たとえば、電池容器10の高さ方向(Z方向)の寸法が、同方向の巻回体30の平坦部30aの寸法とおおむね等しく、平坦部30aの全体を覆っている。
【0081】
被覆部37の熱収縮フィルムの素材としては、たとえば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリオレフィン(PO)などの樹脂材料を用いることができる。特に、PVCは、低温で収縮させることができるため、被覆部37の素材として好適である。
【0082】
被覆部37は、たとえば、前述のように巻回体30の周囲に被せた後に、熱風を吹き付けたり、金型の内部に配置して加熱したりすることによって、収縮させることができる。このとき、正極電極31の終端部31eの外周側に巻回された第2セパレータ34、負極電極32、および最外周の第1セパレータ33の巻回軸方向Dの端部は、熱収縮フィルムの収縮により、正極電極31の終端部31eの正極集電部31cへ向けて変形する。
【0083】
その結果、たとえば、巻回体30の最外周に巻回された第1セパレータ33の終端部33eの巻回軸方向Dの端部が、その内周側に巻回された第2セパレータ34の終端部34eの巻回軸方向Dの端部に接する。また、第2セパレータ34の終端部34eの巻回軸方向Dの端部が、その内周側に巻回された正極電極31の正極集電部31cの巻回軸方向Dの端部に接近し、または接する。被覆部37は、熱収縮することによって集電板40に接合された正極集電部31cの外形に沿う形状に成形されている。
【0084】
このように、本実施形態の二次電池は、前述の実施形態1に係る二次電池100と同様に少なくとも第1セパレータ33と正極集電部31cとの間を跨いで巻回体30の外表面の一部を覆う熱可塑性成形材からなる被覆部37を有している。したがって、本実施形態の二次電池によれば、前述の実施形態1に係る二次電池100と同様の効果を奏することができる。
【0085】
また、本実施形態の二次電池によれば、被覆部37によって、巻回体30の平坦部30aを、正極電極31、負極電極32、第1セパレータ33、および第2セパレータ34の巻回方向Rと直交する方向の全周にわたって覆うことができる。この構成により、巻回体30の平坦部30aの巻回軸方向Dの両端部を被覆部37によって全体的に覆うことができ、巻回体30の内部への異物の流入および侵入をより確実に抑制することができる。
【0086】
以上、図面を用いて本開示に係る二次電池の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【0087】
たとえば前述の実施形態では、正極電極と負極電極とがセパレータを介して巻回された巻回体を有する二次電池を例示した。しかし、本開示は、矩形シート状の正極電極と矩形シート状の負極電極とを、セパレータを介して平坦状に積層した電極群を備える二次電池に適用することができる。また、前述の実施形態では、二次電池をリチウムイオン二次電池として例示した。しかし、本開示は、ニッケル・カドミウム電池やニッケル水素電池等、他の二次電池に適用することができる。
【符号の説明】
【0088】
20N 負極外部端子
20P 正極外部端子
30 巻回体
30a 平坦部
30b 湾曲部
30A 巻回軸
31 正極電極
31a 正極集電体
31b 正極合剤層
31c 正極集電部
31e 終端部
32 負極電極
32a 負極集電体
32b 負極合剤層
32c 負極集電部
32e 終端部
33 第1セパレータ
33e 終端部
34 第2セパレータ
34e 終端部
37 被覆部
40N 負極集電板
40P 正極集電板
100 二次電池
D 巻回軸方向
R 巻回方向