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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】ガスメータ、及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 3/22 20060101AFI20220805BHJP
   G01F 15/06 20220101ALI20220805BHJP
【FI】
G01F3/22 Z
G01F3/22 B
G01F15/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018182529
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020051934
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】越智 毅
(72)【発明者】
【氏名】川口 圭史
(72)【発明者】
【氏名】談議 康晴
(72)【発明者】
【氏名】安田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】萱場 貴士
(72)【発明者】
【氏名】中田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】木場 康雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 廣純
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-037459(JP,A)
【文献】特開平08-121761(JP,A)
【文献】特開平06-174505(JP,A)
【文献】特開2002-168663(JP,A)
【文献】特開平11-183211(JP,A)
【文献】特開平04-164220(JP,A)
【文献】特開平06-331408(JP,A)
【文献】特開2002-039872(JP,A)
【文献】特開平11-325400(JP,A)
【文献】特開平06-186110(JP,A)
【文献】特開平06-139473(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0031958(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 3/22,15/00-15/18
G01M 3/26,
F23K 5/00,
F23N 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部のガス通流路を通流するガスの流量を計測する流量計測部と、前記ガス通流路を通流するガスの圧力を計測する圧力計測部と、前記ガス通流路の開放状態と閉止状態とを切り換える遮断弁と、前記圧力計測部にて計測される圧力が遮断判定閾値を超える状態が圧力遮断判定時間以上継続する場合に前記遮断弁を開放状態から閉止状態へ移行する圧力遮断制御を実行する制御部とを備えたガスメータであって、
前記ガス通流路を通流するガスの温度を計測する温度計測部を備え、
前記制御部は、
前記温度計測部により計測される温度の経時変化を監視する温度変化監視制御を実行すると共に、前記圧力計測部により計測される圧力の経時変化を監視する圧力変化監視制御を実行している状態で、
前記圧力計測部にて計測される圧力が前記遮断判定閾値を超えたときに、前記圧力計測部にて計測される圧力が前記遮断判定閾値を超えるまでの所定の時間である判定期間において、前記圧力変化監視制御で監視された圧力変化が前記温度変化監視制御で監視された温度変化に基づくものであるという第1判定条件を満たしている場合、前記圧力遮断制御を禁止する圧力遮断禁止制御を実行するとともに、前記第1判定条件を満たしている場合であっても、前記圧力計測部にて計測される圧力が前記遮断判定閾値を超える状態が前記圧力遮断判定時間よりも長い温度遮断判定時間以上継続するという第2判定条件を満たす場合、前記遮断弁を開放状態から閉止状態へ移行する温度遮断制御を実行するガスメータ。
【請求項2】
前記温度遮断判定時間は、可変に設定可能に構成されている請求項に記載のガスメータ。
【請求項3】
前記制御部は、
前記流量計測部にて計測されるガスの流量の経時変化を監視する流量変化監視制御を実行している状態で、
前記圧力計測部にて計測される圧力が前記遮断判定閾値を超えたときに、前記第1判定条件を満たした場合であっても、前記圧力計測部にて計測される圧力が前記遮断判定閾値を超える直前での前記流量変化監視制御にて監視された流量が零より大きい場合、前記圧力遮断禁止制御に優先して前記圧力遮断制御を実行する請求項1又は2に記載のガスメータ。
【請求項4】
前記制御部は、前記判定期間における前記圧力変化監視制御にて監視された圧力変化の割合が、前記温度変化監視制御にて監視された温度変化の割合に対応する場合に前記第1判定条件を満たすと判定する請求項1~の何れか一項に記載のガスメータ。
【請求項5】
前記ガス通流路のガス受入部に連通接続されるガス配管のうち前記ガス受入部の近傍で、ガス圧力を調整すると共にガスの上流への逆流を防止する整圧機構を含む請求項1~の何れか一項に記載のガスメータ。
【請求項6】
内部のガス通流路を通流するガスの流量を計測する流量計測部と、前記ガス通流路を通流するガスの圧力を計測する圧力計測部と、前記ガス通流路の開放状態と閉止状態とを切り換える遮断弁とを備えたガスメータにおいて、前記圧力計測部にて計測される圧力が遮断判定閾値を超える状態が圧力遮断判定時間以上継続する場合に前記遮断弁を開放状態から閉止状態へ移行する圧力遮断制御を実行する前記ガスメータの制御方法であって、
前記ガス通流路を通流するガスの温度を計測する温度計測部を備える構成において、
前記温度計測部により計測される温度の経時変化を監視する温度変化監視制御を実行すると共に、前記圧力計測部により計測される圧力の経時変化を監視する圧力変化監視制御を実行している状態で、
前記圧力計測部にて計測される圧力が前記遮断判定閾値を超えたときに、前記圧力計測部にて計測される圧力が前記遮断判定閾値を超えるまでの所定の時間である判定期間において、前記圧力変化監視制御で監視された圧力変化が前記温度変化監視制御で監視された温度変化に基づくものであるという第1判定条件を満たしている場合、前記圧力遮断制御を禁止する圧力遮断禁止制御を実行するとともに、前記第1判定条件を満たしている場合であっても、前記圧力計測部にて計測される圧力が前記遮断判定閾値を超える状態が前記圧力遮断判定時間よりも長い温度遮断判定時間以上継続するという第2判定条件を満たす場合、前記遮断弁を開放状態から閉止状態へ移行する温度遮断制御を実行する、ガスメータの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部のガス通流路を通流するガスの流量を計測する流量計測部と、前記ガス通流路を通流するガスの圧力を計測する圧力計測部と、前記圧力計測部にて計測される圧力が遮断判定閾値を超える状態が圧力遮断判定時間以上継続する場合に前記ガス通流路に設けられた遮断弁を開放状態から閉止状態へ移行する圧力遮断制御を実行する制御部とを備えたガスメータ、
及び内部のガス通流路を通流するガスの流量を計測する流量計測部と、前記ガス通流路を通流するガスの圧力を計測する圧力計測部とを備えたガスメータで、前記圧力計測部にて計測される圧力が遮断判定閾値を超える状態が圧力遮断判定時間以上継続する場合に前記ガス通流路に設けられた遮断弁を開放状態から閉止状態へ移行する圧力遮断制御を実行する、前記ガスメータの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスメータには、ガス供給源から供給される高圧のガス(例えば、都市ガス13A)を整圧装置により徐々に降圧された低圧のガスが供給されるようになっている。
ここで、ガスメータより上流側の整圧装置が種々の理由によりガス圧を適切に降圧できず、所定の通常供給圧(例えば、供給約款に記載された供給圧力1.0~2.5KPa)より高い圧力(以下、異常圧と呼ぶ場合がある)のガスがガスメータに供給される可能性がある。このような場合に、当該通常供給圧よりも高い圧力のガスが、ガスメータ下流の各戸に供給されることを防止するべく、ガスメータには、内部のガス通流部の圧力を計測する圧力計測部が設けられると共に、当該圧力計測部にて計測される圧力が遮断判定閾値を超える状態が圧力遮断判定時間以上継続する場合にガス通流路に設けられた遮断弁を開放状態から閉止状態へ移行する圧力遮断制御を実行する制御部が設けられている(特許文献1を参照)。
これにより、異常圧のガスがガスメータへ供給された場合、遮断弁を閉止することで、異常圧によるガスメータやガス機器の故障を防止したり、各戸内に異常圧のガスが供給されることによる異常燃焼を防止したりできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-180753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガスメータの近傍で上流側のガス配管(以下、上流側ガス配管と呼ぶ場合がある)の昇圧は、上述したように、上流側ガス配管に設けられる整圧装置の異常が原因の場合以外に、上流側ガス配管が直射日光を受けて昇温し、ボイルシャルルの法則により昇圧する場合等がある。この場合にあっては、ガスの昇圧は、温度(気温)低下により復元したり、ガスメータの近傍の上流側ガス配管で起きたりすることが多いため、ガスを各戸へ供給したときには、すぐにガス圧が低下するから、継続した着火不良等の問題は生じない。このため、各戸でのガス利用の利便性を考慮して、ガス供給を維持することが好ましい。しかしながら、従来のガスメータでは、後者の場合であっても、遮断弁がガス通流路を閉止してガス利用の利便性を損っていたため、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、上流側ガス配管の整圧装置の異常により異常圧に昇圧する場合にはガス流通路を遮断して安全性を確保しながらも、ガスの昇温により異常圧に昇圧する場合にはガス流通路へのガスの流通を許容して使用者の利便性の向上を図ることができるガスメータ、及びその制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためのガスメータは、
内部のガス通流路を通流するガスの流量を計測する流量計測部と、前記ガス通流路を通
流するガスの圧力を計測する圧力計測部と、前記ガス通流路の開放状態と閉止状態とを切
り換える遮断弁と、前記圧力計測部にて計測される圧力が遮断判定閾値を超える状態が圧
力遮断判定時間以上継続する場合に前記遮断弁を開放状態から閉止状態へ移行する圧力遮
断制御を実行する制御部とを備えたガスメータであって、その特徴構成は、
前記ガス通流路を通流するガスの温度を計測する温度計測部を備え、
前記制御部は、
前記温度計測部により計測される温度の経時変化を監視する温度変化監視制御を実行す
ると共に、前記圧力計測部により計測される圧力の経時変化を監視する圧力変化監視制御
を実行している状態で、
前記圧力計測部にて計測される圧力が前記遮断判定閾値を超えたときに、前記圧力計測
部にて計測される圧力が前記遮断判定閾値を超えるまでの所定の時間である判定期間にお
いて、前記圧力変化監視制御で監視された圧力変化が前記温度変化監視制御で監視された
温度変化に基づくものであるという第1判定条件を満たしている場合、前記圧力遮断制御
を禁止する圧力遮断禁止制御を実行するとともに、前記第1判定条件を満たしている場合であっても、前記圧力計測部にて計測される圧力が前記遮断判定閾値を超える状態が前記圧力遮断判定時間よりも長い温度遮断判定時間以上継続するという第2判定条件を満たす場合、前記遮断弁を開放状態から閉止状態へ移行する温度遮断制御を実行する点にある。
【0007】
上記目的を達成するためのガスメータの制御方法は、
内部のガス通流路を通流するガスの流量を計測する流量計測部と、前記ガス通流路を通
流するガスの圧力を計測する圧力計測部と、前記ガス通流路の開放状態と閉止状態とを切
り換える遮断弁とを備えたガスメータにおいて、前記圧力計測部にて計測される圧力が遮
断判定閾値を超える状態が圧力遮断判定時間以上継続する場合に前記遮断弁を開放状態か
ら閉止状態へ移行する圧力遮断制御を実行する前記ガスメータの制御方法であって、その
特徴構成は、
前記ガス通流路を通流するガスの温度を計測する温度計測部を備える構成において、
前記温度計測部により計測される温度の経時変化を監視する温度変化監視制御を実行す
ると共に、前記圧力計測部により計測される圧力の経時変化を監視する圧力変化監視制御
を実行している状態で、
前記圧力計測部にて計測される圧力が前記遮断判定閾値を超えたときに、前記圧力計測
部にて計測される圧力が前記遮断判定閾値を超えるまでの所定の時間である判定期間にお
いて、前記圧力変化監視制御で監視された圧力変化が前記温度変化監視制御で監視された
温度変化に基づくものであるという第1判定条件を満たしている場合、前記圧力遮断制御
を禁止する圧力遮断禁止制御を実行するとともに、前記第1判定条件を満たしている場合であっても、前記圧力計測部にて計測される圧力が前記遮断判定閾値を超える状態が前記圧力遮断判定時間よりも長い温度遮断判定時間以上継続するという第2判定条件を満たす場合、前記遮断弁を開放状態から閉止状態へ移行する温度遮断制御を実行する点にある。
【0008】
上記特徴構成を有するガスメータにあっては、制御部が、圧力計測部にて計測される圧力が遮断判定閾値を超えるときに、圧力計測部にて計測される圧力が遮断判定閾値を超えるまでの判定期間において、圧力変化監視制御で監視された圧力変化が温度変化監視制御で監視された温度変化に基づくものであるという第1判定条件を満たすか否かを判定する。
ここで、当該第1判定条件を満たす場合、ガスメータのガス通流路での圧力上昇が温度変化に基づくものであると言え、ガスメータの上流側の上流側ガス配管の整圧装置に故障等が原因でない可能性が高く、ガスメータの近傍のみで昇圧している可能性が高く、第1判定条件を満たした後に、ガスメータの下流側の各戸においてガスが使用された場合であっても、通常供給圧よりも高圧のガスが連続的に供給されることはなく、継続的な立ち消えが発生する虞もない。
そこで、制御部は、第1判定条件が満たされる場合、圧力遮断禁止制御により、遮断弁によるガス通流路を遮断する圧力遮断制御を禁止することで、不必要なガス遮断を禁止して、使用者の利便性を向上できる。
一方、第1判定条件が満たされない場合、ガス通流路の圧力が遮断判定閾値を超えているため、制御部が圧力遮断制御を実行するから、高圧のガスが連続的に供給され異常燃焼等が発生することを防止し、使用者の安全性を確保できる。
以上より、上流側ガス配管の整圧装置の異常等により、ガスの供給圧が異常圧に昇圧する場合にはガス流通路を遮断して使用者の安全性を確保しながらも、ガスの昇温により異常圧に昇圧する場合にはガス流通路へのガスの流通を許容して使用者の利便性の向上を図ることができるガスメータ、及びその制御方法を提供できる。
尚、本発明においては、現時点より判定期間だけ前のガス通流路の圧力及び温度の経時変化を記憶部に記憶しており、当該判定期間におけるガス通流路の圧力及び温度の経時変化に基づいて、第1判定条件を満たすか否かの判断が行われる。即ち、判定期間とは、例えば、圧力が遮断判定閾値を超えた時点(遮断判定開始時点)を終了時点とし、当該終了時点から所定の時間だけ前を開始時点とする期間である。
上記特徴構成の如く、制御部は、遮断判定開始時点が更新される毎に、判定期間を更新設定し、当該設定された判定期間に基づいて、圧力遮断禁止制御を実行するか否かを判定するから、温度変化にリアルタイムで追従した判定を実行できる。
また、更なる安全性を確保するため、一定圧力以上であった場合には温度変化の確認を行わず遮断する機能を有しても良い。
【0010】
圧力計測部にて計測される圧力が、遮断判定閾値を超える状態が圧力遮断判定時間よりも長い温度遮断判定時間以上継続するという第2判定条件を満たす場合、ガスメータの上流側の上流側ガス管やガス通流路におけるガス圧が昇温により通常供給圧より高い状態が長く継続し過ぎていると判定し、圧力遮断禁止制御に優先して、安全性の観点から遮断弁を閉止状態へ移行させる温度遮断制御を実行する。
これにより、不必要なガス遮断の発生を抑制しつつも、過昇温による昇圧に伴う危険を好適に回避することができるように、遮断弁によるガス通流路の遮断が実行される。
【0011】
因みに、前記温度遮断判定時間は、可変に設定可能に構成されていることが好ましい。
【0012】
ガスメータの更なる特徴構成は、
前記制御部は、前記流量計測部にて計測されるガスの流量の経時変化を監視する流量変化監視制御を実行している状態で、
前記圧力計測部にて計測される圧力が前記遮断判定閾値を超えたときに、前記第1判定条件を満たした場合であっても、前記圧力計測部にて計測される圧力が前記遮断判定閾値を超える直前での前記流量変化監視制御にて監視された流量が零より大きい場合、前記圧力遮断禁止制御に優先して前記圧力遮断制御を実行する点にある。
【0013】
上述の流量変化監視制御にて監視された流量が零より大きい場合、ガスが通流状態にあるから、ガスメータ近傍でのガスの昇温による圧力上昇である可能性は低いため、圧力遮断禁止制御を実行することで、安全性を優先した制御にできる。
【0014】
ガスメータの更なる特徴構成は、
前記制御部は、前記判定期間における前記圧力変化監視制御にて監視された圧力変化の割合が、前記温度変化監視制御にて監視された温度変化の割合に対応する場合に前記第1判定条件を満たすと判定する点にある。
【0015】
制御部は、第1判定条件を満たす場合として、例えば、判定期間における圧力変化監視制御にて監視された圧力変化の割合が、温度変化監視制御にて監視された温度変化の割合に対応する場合、換言すると、判定期間における圧力変化の割合が温度変化の割合と正の相関を有する場合、第1判定条件を満たすと判定することで、ガスの圧力上昇が、温度上昇が原因である場合を適切に峻別し、圧力遮断禁止制御を実行できる。
尚、第1判定条件を満たす場合は、より好ましくは、判定期間における圧力変化の増加率と温度変化の増加率とが等しい場合とすることができる。
【0016】
ガスメータの更なる特徴構成は、
前記ガス通流路のガス受入部に連通接続されるガス配管のうち前記ガス受入部の近傍で、ガス圧力を調整すると共にガスの上流への逆流を防止する整圧機構を含む点にある。
【0017】
例えば、高層マンションの上層階にあっては、各戸へのガス圧力を適切な圧力に保つべく、ガスメータの夫々に、ガス受入部の近傍においてガス圧力を調整すると共にガスの上流側への逆流を防止する整圧機構が設けられている。
このような構成にあっては、ガスの使用がない場合、整圧機構より下流側の比較的小さい体積のガス配管内に、閉じた空間が形成されるため、当該空間が直射日光の照射により加熱されることで、比較的短時間に温度上昇に基づく圧力上昇が発生する場合がある。
本発明によれば、このような場合において、圧力上昇に基づくガス通流路の遮断が不必要に発生することを防止でき、使用者の利便性が阻害されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係るガスメータの概略構成図
図2】実施形態に係るガスメータのマンションへの設置状態を示す図
図3】実施形態に係るガスメータの制御方法を示すフロー図
図4】制御を説明するためのグラフ図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係るガスメータ100、及びその制御方法は、上流側ガス配管の整圧装置の異常により異常圧に昇圧する場合にはガス流通路を遮断して安全性を確保しながらも、ガスの昇温により異常圧に昇圧する場合にはガス流通路へのガスの流通を許容して使用者の利便性の向上を図ることができるものに関する。以下、当該ガスメータ100、及びその制御方法について、図面に基づいて説明する。
【0020】
ガスメータ100は、超音波流量計として構成されており、ガス管から住居等のガス供給箇所(図示せず)へ供給されるガスの流量を計測するものである。
当該ガスメータ100には、図1の一部断面図に示すように、一次側のガス配管に連通接続されるガス受入部11と、二次側のガス配管に連通接続されるガス流出口12と、当該ガス受入部11とガス流出口12とを接続する形でガス通流路Lが形成されている。
ガス通流路Lには、整流流路を形成する筒状部材20が配設されると共に、当該筒状部材20の内部には、筒軸心に沿って延びる整流板21が複数設けられている。
詳細な図示は省略するが、当該ガスメータ100には、筒状部材20の内部に形成される整流流路に超音波を伝播させる一対の送受波器SJ1、SJ2とが備えられている。
より詳細には、ガス通流路Lを通流するガスの流れ方向に対して、当該流れ方向に沿った第1方向及び当該第1方向とは逆方向の第2方向に超音波を伝搬させて、第1方向の所定伝搬距離を伝搬した超音波を受信すると共に第2方向の所定伝搬距離を伝搬した超音波を受信する一対の送受波器SJ1、SJ2を備えると共に、第1方向で所定伝搬距離を超音波が伝搬する第1伝搬時間と第2方向で所定伝搬距離を超音波が伝搬する第2伝搬時間とを計測し、計測された第1伝搬時間及び第2伝搬時間と所定伝搬距離とからガス流路を通流するガスのガス流速を導出し、当該ガス流速とガス通流路L(整流流路)の流路断面積とからガス流量を導出する制御装置Cを備え、これらが流量計測部として機能する。
制御装置Cは、ガスメータ100の内部の中央に形成される中央空間Kに制御基板として実装されており、ソフトウェア群とCPU等の演算装置及び記憶部等から成るハードウェア群とが協働する状態で設けられている。制御装置Cでは、ガスメータ100において、ガス流量の演算等を行う制御部C1や、制御部C1からの各種信号をガスメータ100の外部の監視センターCS(図2に図示)へ無線ネットワーク回線N(図2に図示)等を介して送信する通信部C2等の機能部位が備えられる。図2に示すように、監視センターCSは、通信部CS1を介して複数のガスメータ100(M1~M3)との間で各種情報を送受信可能に構成されている。
また、図示は省略するが、ガスメータ100には、制御部C1にて演算されたガス流量を外部から視認可能な状態で表示する7セグメントディスプレイ等から成る表示部が設けられている。
【0021】
筒状部材20にて構成される整流流路の上流側には、ガスメータ100の上流側のガス圧が著しく低下したときに安全上の観点からガス通流路Lを遮断する遮断弁30が設けられており、当該遮断弁30は、弁体31がガス通流路L内に突出形成される弁座部32に着座する形態で、ガス通流路Lの開閉部位LKを閉止して、ガス通流路Lを閉止する。
【0022】
ガス通流路Lとしての整流流路には、その流路軸心に略直交する方向に開口LRが形成されると共に、整流流路の内部と連通する状態で連通空間SKが併設されている。当該連通空間SKは、整流流路の流れを阻害しない状態で、整流流路から外れた位置で且つガスメータ100の内部に形成されている。当該連通空間SKの内部には、ガス通流路Lを通流するガスの温度を計測する温度センサS1(温度計測部の一例)及びガス通流路Lのガスの圧力を計測する圧力センサS2(圧力計測部の一例)が配設されており、当該温度センサS1及び圧力センサS2にて計測される温度及び圧力は、制御装置Cの制御部C1が受信する。
【0023】
尚、本発明のガスメータ100(M1)は、図1に示すように、ガス通流路Lのガス受入部11に連通接続されるガス配管のうちガス受入部11の近傍で、ガス圧力を調整すると共にガスの上流側への逆流を防止する整圧機構としてのガバナV1を含んで構成されている。
このような整圧機構を有するガスメータ100は、図2に示すように、高層マンションB等の上層階において、各戸へのガス圧力を適切な圧力に保つべく、採用される場合が多い。
整圧機構としてのガバナV1は、図1に示すように、ダイヤフラムDに区画される第1室R1と第2室R2とを有する。大気開放される第1室R1には、第1室R1の側から第2室R2の側へダイヤフラムDを付勢する付勢バネSが設けられている。更に、ガス通流路Lの一次側と二次側とを区画する区画壁に形成された開口を開閉する弁体V1aが設けられ、当該弁体V1aは、連結軸ShにてダイヤフラムDに連結され当該ダイヤフラムDの変位量に追従する形態で、開状態と閉状態とを切り換えられる。第2室R2には、ガス通流路Lの二次側と連通路LV1にて連通接続されている。
ガバナV1は、当該構成により、付勢バネSの付勢力を調整する形態で、二次側のガス圧力を所望の圧力に調整可能となる。尚、ガバナV1とガス受入部11との間のガス通流路Lには、二次側から一次側への逆止弁RV1が設けられている。
尚、図2に示す例では、高層階の各戸(R1,R2,R3)の夫々に対して、ガバナV1を含むガスメータM1、ガバナV2を含むガスメータM2、ガバナV3を含むガスメータM3が記載の順に設けられている例を示している。因みに、当該構成においては、ガス通流路Lの上流においてガス圧を中圧から低圧に減圧制御する整圧装置Vsが設けられる例を示している。
【0024】
さて、以下の説明では、当該実施形態に係るガスメータ100の制御構成の理解を容易にするべく、温度センサS1にて計測される温度T及び圧力センサS2にて計測される圧力Pが、図4に示すグラフ図に例示するように変化する場合を例として、図4を参酌しながら、説明する。
図2に示すような構成の場合、例えば、上流側の整圧装置Vsの異常等により、ガス供給圧が通常圧力よりも高い異常圧となったときには、異常圧のガスが戸内に供給されることになり、ガス機器(図示せず)での立ち消え等が発生する恐れがある。そこで、制御部C1は、ガスメータ100では、圧力センサS2にて計測される圧力が遮断判定閾値(図4でP1:通常供給圧よりも高い圧力で各ガスメータにて可変に設定される値)を超える状態が圧力遮断時間(図4でT1:各ガスメータにて可変に設定される時間)以上継続する場合に遮断弁30を開放状態から閉止状態へ移行する圧力遮断制御を実行するように構成されている。
しかしながら、例えば、図2に示す構成において、逆止弁RV1より下流側に閉じた空間が形成されるため、整圧機構としてのガバナV1(逆止弁RV1)より下流側のガス通流路Lに太陽光等が照射され加熱される場合、ボイルシャルルの法則により、ガス通流路Lの内部のガスが昇温に伴って昇圧することになる。このような場合、ガス圧の昇圧は、逆止弁RV1より下流側の体積の小さい流路で起きているに過ぎないため、各戸でガスが使用されたとしても異常圧のガスが連続して供給されることはなく、ガスの立ち消えが連続して発生することもないため、使用者の利便性の観点から遮断弁30によりガス通流路Lが遮断されないことが好ましい。
【0025】
そこで、制御部C1では、以下のように構成されている。
制御部C1は、温度センサS1により計測される温度の経時変化を監視する温度変化監視制御を実行すると共に、圧力センサS2により計測される圧力の経時変化を監視する圧力変化監視制御を実行している状態で、圧力センサS2にて計測される圧力が遮断判定閾値P1を超えたときに、圧力センサS2にて計測される圧力が遮断判定閾値P1を超えるまでの所定の時間である判定期間T2において、圧力変化監視制御で監視された圧力変化が温度変化監視制御で監視された温度変化に基づくものであるという第1判定条件を満たしている場合、圧力遮断制御を禁止する圧力遮断禁止制御を実行する。即ち、図4において、遮断判定終了時点t3以降において、圧力遮断が禁止される圧力遮断禁止状態となる。
説明を追加すると、制御部C1は、現時点より判定期間だけ前のガス通流路Lの圧力及び温度の経時変化を記憶部(図示せず)に記憶しており、当該判定期間におけるガス通流路Lの圧力及び温度の経時変化に基づいて、第1判定条件を満たすか否かの判定を行う。即ち、判定期間とは、例えば、圧力が遮断判定閾値P1を超えた時点(遮断判定開始時点:t2)を終了時点とし、当該終了時点から所定の時間(例えば、数秒程度の時間で各ガスメータにて可変に設定される時間)だけ前を開始時点とする期間である。更に、当該判定期間は、遮断判定開始時点が更新される毎に、更新設定され、制御部C1は、当該設定された判定期間に基づいて、圧力遮断禁止制御を実行するか否かを判定する。
更に、制御部C1による第1判定について、説明を追加すると、制御部C1は、判定期間T2における圧力変化監視制御にて監視された圧力変化の割合が、温度変化監視制御にて監視された温度変化の割合に対応する場合に第1判定条件を満たすと判定する。より具体的には、例えば、判定期間T2における圧力変化の割合が温度変化の割合と正の相関を有する場合、第1判定条件を満たすと判定することで、ガスの圧力上昇が、温度上昇が原因である場合を適切に峻別し、圧力遮断禁止制御を実行できる。尚、第1判定条件を満たす場合は、より好ましくは、判定期間T2における圧力変化の増加率と温度変化の増加率とが等しい場合とすることができる。
【0026】
さて、温度上昇に基づく圧力上昇であっても、圧力センサS2にて計測される圧力が遮断判定閾値P1を超える時間が圧力遮断判定時間T1よりも十分に長い温度遮断判定時間T3(各ガスメータにて可変に設定可能な値)以上継続する第2判定条件を満たす場合、安全性を優先すべく、制御部C1は、遮断弁30を開放状態から閉止状態へ移行する温度遮断制御を実行する。
【0027】
更に、圧力センサS2にて計測される圧力が遮断判定閾値P1を超えたときに、第1判定条件を満たした場合であっても、上述の流量変化監視制御にて監視された流量が零より大きい場合、ガスが通流状態にあるから、ガスメータ100近傍でのガスの昇温による圧力上昇である可能性は低いと考えられるため、圧力遮断制御を実行することで、安全性を優先した制御にできる。
即ち、制御部C1は、流量計測部(ガスメータ100)にて計測されるガスの流量の経時変化を監視する流量変化監視制御を実行している状態で、圧力センサS2にて計測される圧力が遮断判定閾値P1を超えたときに、第1判定条件を満たした場合であっても、圧力センサS2にて計測される圧力が遮断判定閾値P1を超える直前での流量変化監視制御にて監視された流量が零より大きい場合、圧力遮断禁止制御に優先して圧力遮断制御を実行する。
【0028】
次に、ガスメータ100の制御方法に関し、図3の制御フローに基づいて説明する。
制御部C1は、温度センサS1により計測される温度の経時変化を監視する温度変化監視制御を実行すると共に(#01)、圧力センサS2により計測される圧力の経時変化を監視する圧力変化監視制御を実行している状態で(#02)、圧力センサS2にて計測される圧力が遮断判定閾値P1を超えるか否かの判定を所定時間毎に実行する(#03、#04)。
制御部C1は、#03の判定において、圧力センサS2にて計測される圧力が遮断判定閾値P1を超えた場合、圧力センサS2にて計測される圧力が遮断判定閾値P1を超えるまでの所定の時間である判定期間T2において、圧力変化監視制御で監視された圧力変化が温度変化監視制御で監視された温度変化に基づくものであるという第1判定条件を満たしているか否かを判定する(#05)。
【0029】
制御部C1は、#05の判定において、第1判定条件が満たされていなかった場合、遮断弁30にてガス通流路Lを遮断する圧力遮断制御を実行する(#09)。一方、#05の判定において、第1判定条件が満たされた場合、制御部C1は、更に、圧力センサS2にて計測される圧力が遮断判定閾値P1を超える時間が圧力遮断判定時間T1よりも十分に長い温度遮断判定時間T3以上継続する第2判定条件を満たすか否かを判定する(#06)。
【0030】
制御部C1は、第2判定条件が満たされなかった場合、使用者の利便性を優先するべく、圧力遮断禁止制御を実行し遮断弁30の遮断を禁止し(#07)、第2判定条件が満たされた場合、使用者の安全性を優先すべく、温度遮断制御を実行して遮断弁30を遮断する(#08)。
【0031】
制御部C1は、#09の圧力遮断制御及び#08の温度遮断制御が実行された場合、当該遮断が実行されていることを表示部(図示せず)等により外部に報知する遮断報知制御(#10)を実行後に制御を終了する。一方、#07の圧力遮断禁止制御が実行された場合、遮断弁30は遮断されていないので、#10の遮断報知制御を実行することなく、制御を終了する。
【0032】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態において、ガスメータ100は、超音波メータである例を示したが、膜式メータ等の他のメータであっても、本発明の機能は良好に発揮される。
【0033】
(2)上記実施形態において、温度センサS1は、相対湿度を計測する相対湿度センサとして構成しても構わない。この場合、制御部C1は、相対湿度センサにて計測される温度に基づいて、各種制御を実行することになる。
尚、当該相対湿度センサによる計測は、ガスメータ100の復帰後、一定流量以上の通流があった後に開始される。
【0034】
(3)上記実施形態では、ガスメータ100は、整圧機構として逆止弁を有するガバナを有する例を示したが、当該整圧機構を備えない構成を採用しても構わない。
【0035】
(4)上記実施形態では、第2判定条件を満たすか否かの判定を行うと共に温度遮断制御を実行する制御例を示したが、当該第2判定条件の判定及び温度遮断制御については、実行しなくても本発明の目的を達成することができる。
【0036】
(5)上記実施形態では、判定期間とは、圧力が遮断判定閾値P1を超えた時点(遮断判定開始時点:t2)を終了時点とし、当該終了時点から所定の時間だけ前を開始時点とする期間であるとした。
しかしながら、当該判定期間は、圧力が遮断判定閾値P1を超えた時点(遮断判定開始時点:t2)よりも所定時間(例えば、数秒~数十秒程度の時間)前を終了時点とするものであっても構わない。
【0037】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のガスメータ、及びその制御方法は、上流側ガス配管の整圧装置の異常により異常圧に昇圧する場合にはガス流通路を遮断して安全性を確保しながらも、ガスの昇温により異常圧に昇圧する場合にはガス流通路へのガスの流通を許容して使用者の利便性の向上を図ることができるガスメータ、及びその制御方法として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
11 :ガス受入部
30 :遮断弁
100、M1、M2、M3:ガスメータ
B :高層マンション
C1 :制御部
L :ガス通流路
P1 :遮断判定閾値
RV1 :逆止弁
S1 :温度センサ
S2 :圧力センサ
T1 :圧力遮断判定時間
T2 :判定期間
T3 :温度遮断判定時間
V1、V2、V3:ガバナ
Vs :整圧装置
t3 :遮断判定終了時点
図1
図2
図3
図4