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特許7117962一酸化炭素ガスの製造装置および一酸化炭素ガスの製造方法
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  • 特許-一酸化炭素ガスの製造装置および一酸化炭素ガスの製造方法 図1
  • 特許-一酸化炭素ガスの製造装置および一酸化炭素ガスの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】一酸化炭素ガスの製造装置および一酸化炭素ガスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/40 20170101AFI20220805BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20220805BHJP
   C01B 3/36 20060101ALI20220805BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20220805BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20220805BHJP
   B01D 53/047 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
C01B32/40
C01B3/38
C01B3/36
C01B32/50
B01J23/89 M
B01D53/047
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018185227
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020055700
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 彩香
(72)【発明者】
【氏名】貝川 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】田中 真子
(72)【発明者】
【氏名】深澤 暁
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-263199(JP,A)
【文献】特開2011-207741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
C01B 3/00-6/34
B01D 53/02-53/12
C10K 1/00-3/06
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素ガス、炭酸ガス、および炭化水素系ガスを含む原料ガスを触媒反応に供し、一酸化炭素ガスおよび水素ガスを主体とした改質ガスを得るための改質器と、
少なくとも前記改質ガスを含むガスである第1混合ガスを加圧し、加圧された前記第1混合ガスを得るための第1加圧手段と、
加圧された前記第1混合ガス中の少なくとも炭酸ガスを吸着除去し、第1精製ガスを得るための第1分離装置と、
炭酸ガスと一酸化炭素ガスとを含むガスである第1リサイクルガスを前記第1分離装置から導出すると共に、前記第1リサイクルガスを前記第1加圧手段の上流に導入し、前記第1リサイクルガスを前記改質ガスに合流させて前記第1混合ガスを得るための第1リサイクルガス配管と、
少なくとも前記第1精製ガスを含むガスである第2混合ガス中の少なくとも一酸化炭素ガスを吸着する第2分離装置と、
一酸化炭素ガスを主体としたガスである第2リサイクルガスを前記第2分離装置から導出する第2リサイクルガス導出配管と、
前記第2リサイクルガス導出配管を介して導出された前記第2リサイクルガスを加圧し、加圧された前記第2リサイクルガスを得るための第2加圧手段と、
加圧された前記第2リサイクルガスを前記第2分離装置の上流に導入し、加圧された前記第2リサイクルガスを前記第1精製ガスに合流させて前記第2混合ガスを得るための第2リサイクルガス導入配管と、
前記第2分離装置に吸着された一酸化炭素ガスを導出するための一酸化炭素ガス導出配管と、を備え
前記第2分離装置は、圧力スイング吸着装置(PSA)を備え、
前記第2分離装置は、一酸化炭素ガスを吸着するための吸着剤が充填された吸着塔に前記第2混合ガスを導入し、前記第2混合ガス中の少なくとも一酸化炭素ガスを吸着する吸着工程と、前記吸着工程を経た状態である前記吸着塔からガスを排出することにより、前記吸着塔の圧力を大気圧まで減圧する大気排気工程と、前記大気排気工程を経た状態である前記吸着塔を負圧まで減圧し、前記一酸化炭素ガスを吸着するための吸着剤に吸着させた一酸化炭素ガスを脱着させ、一酸化炭素ガスを回収する回収工程と、前記回収工程を経た状態である前記吸着塔に有圧のガスを導入し、前記吸着工程を行うための圧力まで復圧させる復圧工程と、を実施し、
前記第2リサイクルガスは、前記大気排気工程において排出されるガスである、一酸化炭素ガスの製造装置。
【請求項2】
前記第1分離装置において吸着除去された炭酸ガスを加圧し、加圧された炭酸ガスである第3リサイクルガスを得るための第3加圧手段と、
加圧された前記第3リサイクルガスを前記改質器の上流に導入する、第3リサイクルガス配管と、を備える請求項1に記載の一酸化炭素ガスの製造装置。
【請求項3】
前記第1分離装置は、圧力スイング吸着装置(PSA)を備える、請求項1または請求項2に記載の一酸化炭素ガスの製造装置。
【請求項4】
前記改質器は、前記触媒反応に用いる触媒としてRh修飾(Ni-CeO2)-Pt触媒を含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の一酸化炭素ガスの製造装置。
【請求項5】
前記改質器は、前記改質ガスを冷却するための冷却媒体を導入するための冷却媒体導入配管を備える、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の一酸化炭素ガスの製造装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の一酸化炭素ガスの製造装置を用いた一酸化炭素ガスの製造方法であって、
酸素ガス、炭酸ガス、および炭化水素系ガスを含む原料ガスを触媒反応に供し、一酸化炭素ガスおよび水素ガスを主体とした改質ガスを得る触媒反応工程と、
少なくとも前記改質ガスを含むガスである第1混合ガスを加圧し、加圧された前記第1混合ガスを得る第1加圧工程と、
加圧された前記第1混合ガス中の少なくとも炭酸ガスを吸着除去し、第1精製ガスを得る第1分離工程と、
炭酸ガスと一酸化炭素ガスとを含むガスである第1リサイクルガスを前記第1分離装置から導出すると共に、前記第1リサイクルガスを前記第1加圧手段の上流に導入し、前記第1リサイクルガスを前記改質ガスに合流させて前記第1混合ガスを得る第1リサイクル工程と、
少なくとも前記第1精製ガスを含むガスである第2混合ガス中の少なくとも一酸化炭素ガスを吸着する第2分離工程と、
一酸化炭素ガスを主体としたガスである第2リサイクルガスを前記第2分離装置から導出する第2リサイクルガス導出工程と、
前記第2リサイクルガス導出工程にて導出された前記第2リサイクルガスを加圧し、加圧された前記第2リサイクルガスを得る第2加圧工程と、
加圧された前記第2リサイクルガスを前記第2分離装置の上流に導入し、加圧された前記第2リサイクルガスを前記第1精製ガスに合流させて前記第2混合ガスを得る第2リサイクルガス導入工程と、
前記第2分離装置に吸着された一酸化炭素ガスを導出する一酸化炭素ガス導出工程と、を備え、
前記第2分離装置は、圧力スイング吸着装置(PSA)を備え、
前記第2分離装置は、一酸化炭素ガスを吸着するための吸着剤が充填された吸着塔に前記第2混合ガスを導入し、前記第2混合ガス中の少なくとも一酸化炭素ガスを吸着する吸着工程と、前記吸着工程を経た状態である前記吸着塔からガスを排出することにより、前記吸着塔の圧力を大気圧まで減圧する大気排気工程と、前記大気排気工程を経た状態である前記吸着塔を負圧まで減圧し、前記一酸化炭素ガスを吸着するための吸着剤に吸着させた一酸化炭素ガスを脱着させ、一酸化炭素ガスを回収する回収工程と、前記回収工程を経た状態である前記吸着塔に有圧のガスを導入し、前記吸着工程を行うための圧力まで復圧させる復圧工程と、を実施し、
前記第2リサイクルガスは、前記大気排気工程において排出されるガスである、一酸化炭素ガスの製造方法。
【請求項7】
前記第1分離装置において吸着除去された炭酸ガスを加圧し、加圧された炭酸ガスである第3リサイクルガスを得る第3加圧工程と、
前記第3リサイクルガスを前記改質器の上流に導入する、第3リサイクル工程と、を備える、請求項6に記載の一酸化炭素ガスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一酸化炭素ガスの製造装置および一酸化炭素ガスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、浸炭処理等の金属表面処理の雰囲気ガスや、ポリウレタン・ポリカーボネート等の製造原料として、一酸化炭素ガスが用いられている。
【0003】
特開2009-263199号公報(特許文献1)は、炭化水素系ガス、酸素系ガス、および水蒸気を含む原料ガスから、カーボンの析出を抑制しつつ一酸化炭素ガスを製造するための製造装置および製造方法を開示している。
【0004】
特開2014-024696号公報(特許文献2)は、炭化水素系ガスと酸素系ガスと炭酸ガスとを含む原料ガスを改質反応させ、一酸化炭素ガスと水素ガスとを主体とした合成ガスを製造する合成ガスの製造方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-263199号公報
【文献】特開2014-024696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の一酸化炭素ガス(以下、「COガス」とも記載され得る)の製造装置および製造方法は、原料ガスとRh修飾(Ni-CeO)-Pt触媒とを接触させ、燃焼反応および水蒸気改質反応を行う事により、水素ガスおよび一酸化炭素ガスを含む改質ガスを発生させている。該改質ガスを分離することにより、一酸化炭素ガスを得ることができる。しかしながら、以下の式(1)および(2)から明らかなように、該改質ガスに含まれる水素ガスと一酸化炭素ガスとの比は約3:1である。したがって、一酸化炭素ガスの発生量に改善の余地が有った。
【0007】
燃焼反応 CH+2O⇔2HO+CO …式(1)
水蒸気改質反応 CH+HO⇔CO+3H …式(2)
【0008】
特許文献2に記載の合成ガスの製造方法は、原料ガスに水蒸気が含まれていない。そのため、合成ガス(特許文献1における改質ガスに相当する)に含まれる一酸化炭素ガスの割合は、特許文献1と比較して高くなると考えられる。しかしながら、特許文献2には係る合成ガスから一酸化炭素ガスを分離する方法が開示されていない。
【0009】
本開示の目的は、一酸化炭素ガスの収率を向上させることが可能な一酸化炭素ガスの製造装置および一酸化炭素ガスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、以下に示す一酸化炭素ガスの製造装置および一酸化炭素ガスの製造方法を提供する。
【0011】
[1] 酸素ガス、炭酸ガス、および炭化水素系ガスを含む原料ガスを触媒反応に供し、一酸化炭素ガスおよび水素ガスを主体とした改質ガスを得るための改質器と、少なくとも前記改質ガスを含むガスである第1混合ガスを加圧し、加圧された前記第1混合ガスを得るための第1加圧手段と、加圧された前記第1混合ガス中の少なくとも炭酸ガスを吸着除去し、第1精製ガスを得るための第1分離装置と、炭酸ガスと一酸化炭素ガスとを含むガスである第1リサイクルガスを前記第1分離装置から導出すると共に、前記第1リサイクルガスを前記第1加圧手段の上流に導入し、前記第1リサイクルガスを前記改質ガスに合流させて前記第1混合ガスを得るための第1リサイクルガス配管と、少なくとも前記第1精製ガスを含むガスである第2混合ガス中の少なくとも一酸化炭素ガスを吸着する第2分離装置と、一酸化炭素ガスを主体としたガスである第2リサイクルガスを前記第2分離装置から導出する第2リサイクルガス導出配管と、前記第2リサイクルガス導出配管を介して導出された前記第2リサイクルガスを加圧し、加圧された前記第2リサイクルガスを得るための第2加圧手段と、加圧された前記第2リサイクルガスを前記第2分離装置の上流に導入し、加圧された前記第2リサイクルガスを前記第1精製ガスに合流させて前記第2混合ガスを得るための第2リサイクルガス導入配管と、前記第2分離装置に吸着された一酸化炭素ガスを導出するための一酸化炭素ガス導出配管と、を備える一酸化炭素ガスの製造装置。
【0012】
[2] 前記第1分離装置において吸着除去された炭酸ガスを加圧し、加圧された炭酸ガスである第3リサイクルガスを得るための第3加圧手段と、加圧された前記第3リサイクルガスを前記改質器の上流に導入する、第3リサイクルガス配管と、を備える[1]に記載の一酸化炭素ガスの製造装置。
【0013】
[3] 前記第1分離装置および前記第2分離装置は、圧力スイング吸着装置(PSA)を備える、[1]または[2]に記載の一酸化炭素ガスの製造装置。
【0014】
[4] 前記改質器は、前記触媒反応に用いる触媒としてRh修飾(Ni-CeO)-Pt触媒を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の一酸化炭素ガスの製造装置。
【0015】
[5] 前記改質器は、前記改質ガスを冷却するための冷却媒体を導入するための冷却媒体導入配管を備える、[1]~[4]のいずれかに記載の一酸化炭素ガスの製造装置。
【0016】
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の一酸化炭素ガスの製造装置を用いた一酸化炭素ガスの製造方法であって、酸素ガス、炭酸ガス、および炭化水素系ガスを含む原料ガスを触媒反応に供し、一酸化炭素ガスおよび水素ガスを主体とした改質ガスを得る触媒反応工程と、少なくとも前記改質ガスを含むガスである第1混合ガスを加圧し、加圧された前記第1混合ガスを得る第1加圧工程と、加圧された前記第1混合ガス中の少なくとも炭酸ガスを吸着除去し、第1精製ガスを得る第1分離工程と、炭酸ガスと一酸化炭素ガスとを含むガスである第1リサイクルガスを前記第1分離装置から導出すると共に、前記第1リサイクルガスを前記第1加圧手段の上流に導入し、前記第1リサイクルガスを前記改質ガスに合流させて前記第1混合ガスを得る第1リサイクル工程と、少なくとも前記第1精製ガスを含むガスである第2混合ガス中の少なくとも一酸化炭素ガスを吸着する第2分離工程と、一酸化炭素ガスを主体としたガスである第2リサイクルガスを前記第2分離装置から導出する第2リサイクルガス導出工程と、前記第2リサイクルガス導出工程にて導出された前記第2リサイクルガスを加圧し、加圧された前記第2リサイクルガスを得る第2加圧工程と、加圧された前記第2リサイクルガスを前記第2分離装置の上流に導入し、加圧された前記第2リサイクルガスを前記第1精製ガスに合流させて前記第2混合ガスを得る第2リサイクルガス導入工程と、前記第2分離装置に吸着された一酸化炭素ガスを導出する一酸化炭素ガス導出工程と、を備える一酸化炭素ガスの製造方法。
【0017】
[7] 前記第1分離装置において吸着除去された炭酸ガスを加圧し、加圧された炭酸ガスである第3リサイクルガスを得る第3加圧工程と、前記第3リサイクルガスを前記改質器の上流に導入する、第3リサイクル工程と、を備える、[6]に記載の一酸化炭素ガスの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、一酸化炭素ガスの収率を向上させることが可能な一酸化炭素ガスの製造装置および一酸化炭素ガスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、一酸化炭素ガスを製造するための装置構成の一例を示す概略図である。
図2図2は、実施例1に係る一酸化炭素ガスを製造するための装置構成の一部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施の形態を示しながら本開示について詳細に説明する。ただし以下の説明は特許請求の範囲を限定するものではない。
【0021】
<一酸化炭素ガスの製造装置>
図1は、本開示に係る一酸化炭素ガスを製造するための装置構成の一例を示す概略図である。一酸化炭素ガスの製造装置100は、改質器30と、第1加圧手段40と、第1分離装置50と、第1リサイクルガス配管41と、第2分離装置70と、第2リサイクルガス導出配管61と、第2加圧手段60と、第2リサイクルガス導入配管62と、一酸化炭素ガス導出配管64とを含む。
【0022】
《原料ガス》
本明細書において「原料ガス」とは、一酸化炭素ガスを製造するためのガスであり、酸素ガス、炭酸ガス、および炭化水素系ガスを含むガスを示す。図1を参照して、酸素ガスは酸素導入配管1を介して、炭酸ガスは炭酸ガス導入配管2を介して、炭化水素ガスは炭化水素系ガス導入配管3を介して一酸化炭素ガスの製造装置100に供給され得る。酸素ガスと炭酸ガスは合流した後、第1原料ヒータ4にて加熱される。炭化水素系ガスは第2原料ヒータ5にて加熱された後、脱硫器6に導入され付臭成分であるイオウ分が除去される。第1原料ヒータ4を経た酸素ガスおよび炭酸ガスと脱硫器6を経た炭化水素系ガスとが合流することにより、原料ガスが形成される。原料ガスは、改質器30へと導入される。
【0023】
《改質器》
改質器30は、上記原料ガスを触媒反応に供し、一酸化炭素ガスおよび水素ガスを主体とした改質ガスを得るための反応器である。すなわち、本開示に係る一酸化炭素ガスの製造装置100は、酸素ガス、炭酸ガス、および炭化水素系ガスを含む原料ガスを触媒反応に供し、一酸化炭素ガスおよび水素ガスを主体とした改質ガスを得るための改質器30を含んでいる。なお、「一酸化炭素ガスおよび水素ガスを主体とする」とは、改質ガスに占める一酸化炭素ガスおよび水素ガスの割合が50mol%以上であることを示す。上記触媒反応は、たとえば約350℃~900℃において行われてもよい。
【0024】
改質器30に含まれる触媒は制限されるべきではない。酸素ガス、炭酸ガス、および炭化水素系ガスを含む原料ガスを一酸化炭素ガスおよび水素ガスを主体とした改質ガスに転化することが可能な、あらゆる触媒が用い得る。改質器30に含まれる触媒は、たとえば四元系の改質触媒であってもよく、具体的にはRh修飾(Ni-CeO)-Pt触媒であってもよい。すなわち、改質器30は、触媒反応に用いる触媒としてRh修飾(Ni-CeO)-Pt触媒を含んでもよい。Rh修飾(Ni-CeO)-Pt触媒を用いることにより、炭化水素系ガスの燃焼反応と改質反応とを同じ反応領域内で同時に行ない得ると考えられる。
【0025】
改質器30の内部において、たとえば炭化水素系ガスがメタンガスである場合、以下式(3)に示す燃焼反応、および式(4)に示す炭酸改質反応が生じていると考えられる。式(4)に示されるように、改質器30の内部において一酸化炭素ガスと水素ガスとが1:1の割合で発生する。すなわち、改質ガスに含まれる一酸化炭素ガスの量は水素ガスの量とほぼ同等であると考えられる。係る改質ガスから一酸化炭素ガスが分離されるため、本開示に係る一酸化炭素ガスの製造装置100は、一酸化炭素ガスの収率を向上させ得ると期待される。
【0026】
燃焼反応 CH+2O⇔2HO+CO …式(3)
炭酸改質反応 CH+CO⇔2CO+2H …式(4)
【0027】
改質器30は、改質ガスを冷却するための冷却媒体を導入するための冷却媒体導入配管7を備えることが好ましい。改質反応で生じる改質ガス中の水素ガスや一酸化炭素ガスの含有比が高い場合、改質ガスからのカーボン析出が起こりやすい傾向にある。ここで、改質ガスからのカーボン析出は、下記の式(5)に表される平衡反応によって生じる。
【0028】
+CO⇔C+HO …式(5)
【0029】
式(5)における平衡を左辺に移動させるため、改質器30に改質ガスを冷却するための冷却媒体を導入するための冷却媒体導入配管7を備えることが好ましい。冷却媒体は、HOを主体とする冷却媒体であることが好ましく、HOからなる冷却媒体であることがさらに好ましい。これにより、カーボン析出が抑制されると期待される。
【0030】
改質器30を経たガスは、高温である。そのため、上述の冷却媒体導入配管7に加えて、改質ガスを冷却するための改質ガス冷却器8をさらに設けてもよい。これにより、改質ガスの温度はたとえば室温まで降温され得る。改質ガスの温度が降温されることにより、第1加圧手段40の選択肢の豊富化が期待される(すなわち、第1加圧手段40として通常の仕様の圧縮機等を用い得る)。
【0031】
室温まで降温された改質ガスは、水分等の液体を含んでいると考えられる。そのため、気液分離器9で水分等の液体を改質ガスから除去することが好ましい。これにより、水分量が低減された改質ガスを得ることができる。
【0032】
《第1加圧手段》
第1加圧手段40は、少なくとも改質ガスを含む第1混合ガスを加圧し、加圧された第1混合ガスを得るための手段である。すなわち、本開示に係る一酸化炭素ガスの製造装置100は、少なくとも改質ガスを含む第1混合ガスを加圧し、加圧された第1混合ガスを得るための第1加圧手段40を含んでいる。第1加圧手段40は、改質ガスを含む第1混合ガスを加圧できる限り特に制限されないが、たとえば圧縮機(コンプレッサ)であり得る。第1加圧手段40により加圧された第1混合ガスは、第1分離装置50へと導入される。
【0033】
《第1分離装置》
第1分離装置50は、加圧された第1混合ガス中の少なくとも炭酸ガスを吸着除去し、第1精製ガスを得るための装置である。すなわち、本開示に係る一酸化炭素ガスの製造装置100は、第1混合ガス中の少なくとも炭酸ガスを吸着除去し、第1精製ガスを得るための第1分離装置50を含んでいる。第1分離装置50は第1混合ガス中の少なくとも炭酸ガスを吸着除去できる限り特に制限されないが、たとえば圧力スイング吸着装置(PSA)であってもよい。以降は、第1分離装置50がPSAである場合についての説明を行う。
【0034】
図1においては、第1分離装置50は4つの吸着塔を含むPSA(PSA50a,PSA50b,PSA50c,PSA50d)により構成されている。第1分離装置50は、加圧された第1混合ガス中の少なくとも炭酸ガスを吸着除去するための吸着剤を含んでいる。吸着剤は特に限定されるべきではない。吸着剤としては、たとえばゼオライト、活性アルミナ、活性炭、シリカゲル等であってもよい。1種の吸着剤が単独で第1分離装置50(すなわち、PSA)に充填されてもよい。複数の吸着剤が組み合わされて第1分離装置50(すなわち、PSA)に充填されてもよい。なお、図1には、第1分離装置50として4つの吸着塔が並列に配置されているが、吸着塔の数は必ずしも4つである事を要しない。
【0035】
PSAは、典型的には(1)吸着工程、(2)大気排気工程、(3)回収工程、および(4)復圧工程を順次繰り返す。たとえば、PSA50aを吸着工程とし、PSA50bを大気排気工程とし、PSA50cを回収工程とし、PSA50dを復圧工程とし、それぞれのPSAにおいて上記(1)~(4)の工程を順次繰り返してもよい。以下に、上記(1)~(4)の工程、およびその他の工程を説明する。
【0036】
(1)吸着工程
吸着工程とは、吸着剤が充填されたPSA50aに対し、第1加圧手段40で所定の圧力まで昇圧された改質ガスを導入し、加圧された第1混合ガス中の少なくとも炭酸ガスを吸着除去し、第1精製ガスを得る工程である。すなわち第1分離装置50における吸着工程は、第1分離工程に該当する。第1精製ガスは、第1精製ガス導出配管45を介してPSA50aから導出される。吸着工程は、たとえば0.2MPaG以上0.9MPaG以下で行ってもよい。吸着剤が理論的に吸着可能な炭酸ガスがPSA50aに導入されるまでを、吸着工程としてもよい。
【0037】
(2)大気排気工程
大気排気工程は、上記吸着工程を経た状態であるPSA50bからガスを排出することにより、PSA50bの圧力を略大気圧まで減圧する工程である。たとえばPSA50bの圧力が略大気圧となるまでを大気排気工程としてもよい。なお、PSA50bから排出されるガスは、炭酸ガスと一酸化炭素ガスとを含んでいる。そのため、係るガスを回収し、再度第1分離装置50に導入することにより、製品としての一酸化炭素ガスの収率が向上するものと期待される。
【0038】
(3)回収工程
回収工程は、上記大気排気工程を経た状態であるPSA50cをたとえば第1真空ポンプ42により負圧まで減圧し、吸着剤に吸着させた炭酸ガスを脱着させ、炭酸ガスを回収する工程である。たとえば、PSA50cからの炭酸ガス流量が略0Nm/hとなるまでを回収工程としてもよい。
【0039】
(4)復圧工程
復圧工程は、上記回収工程を経た状態であるPSA50dに対し、有圧のガスを導入し、次に行われる工程である吸着工程を行うための圧力まで復圧させる工程である。有圧のガスとしては、たとえば吸着工程PSA50aから導出された第1精製ガスの一部を用いてもよいし、第1加圧手段40により昇圧された改質ガスの一部を用いてもよい。たとえばPSA50dの圧力が吸着工程における運転圧力に達するまでを復圧工程としてもよい。
【0040】
(5)その他の工程(炭酸ガスパージ工程)
本工程は、必要に応じて大気排気工程と回収工程との間に行われる工程である。本工程は、上記大気排気工程の後、PSA50b内に炭酸ガスを炭酸ガスパージ配管(図示せず)を介して導入することによりPSA50b内の炭酸ガス濃度を上昇させる工程である。本工程に用いる炭酸ガスは、たとえば回収工程において回収され、炭酸ガスホルダー(図示せず)に貯蔵された炭酸ガスを用い得る。本工程により、回収工程の前にPSA50b内の炭酸ガス濃度を向上させることができる。これにより、PSA50bが回収工程に移行した際、高純度の炭酸ガスがPSA50bより回収されるものと考えられる。
【0041】
《第1リサイクル配管》
上述の第1分離装置50の大気排気工程においてPSA50bから排出されるガスは、炭酸ガスと一酸化炭素ガスとを含んでいる。本開示に係る一酸化炭素ガスの製造装置100は、炭酸ガスと一酸化炭素ガスとを含むガスを第1リサイクルガスとしてPSA50b(すなわち、第1分離装置50)から導出すると共に、該第1リサイクルガスを第1加圧手段40の上流に導入し、第1リサイクルガスを改質ガスに合流させて第1混合ガスを得るための第1リサイクル配管41を備える。PSA50b(すなわち、第1分離装置50)から排出されるガスを第1リサイクルガスとして再利用することにより、製品としての一酸化炭素ガスの収率が向上するものと期待される。
【0042】
《第3加圧手段および第3リサイクルガス配管》
上述の第1分離装置50の回収工程においてPSA50cより回収された炭酸ガスは、第3加圧手段43により加圧され、加圧された炭酸ガスである第3リサイクルガスとされることが好ましい。該第3リサイクルガスは、改質器30の上流に導入されることが好ましい。これにより、原料としての炭酸ガスの供給量が抑制されると期待される。すなわち、本開示に係る一酸化炭素ガスの製造装置100は、第1分離装置50において吸着除去された炭酸ガスを加圧し、加圧された炭酸ガスである第3リサイクルガスを得るための第3加圧手段43と、加圧された第3リサイクルガスを改質器30の上流に導入する、第3リサイクルガス配管44と、を備えることが好ましい。
【0043】
《第2分離装置》
第2分離装置70は、少なくとも上述の第1精製ガスを含むガスである第2混合ガス中の少なくとも一酸化炭素ガスを吸着する装置である。すなわち、本開示に係る一酸化炭素ガスの製造装置100は、少なくとも第1精製ガスを含むガスである第2混合ガス中の少なくとも一酸化炭素ガスを吸着する第2分離装置70を含んでいる。第2分離装置70は第2混合ガス中の少なくとも一酸化炭素ガスを吸着できる限り特に制限されないが、たとえば圧力スイング吸着装置(PSA)であってもよい。以降は、第2分離装置70がPSAである場合についての説明を行う。
【0044】
図1においては、第2分離装置70は4つの吸着塔を含むPSA(PSA70a,PSA70b,PSA70c,PSA70d)により構成されている。第2分離装置70は、第2混合ガス中の少なくとも一酸化炭素ガスを吸着するための吸着剤を含んでいる。吸着剤は特に限定されるべきではない。吸着剤としては、たとえばゼオライトや塩化銅を添着した活性炭であってもよい。1種の吸着剤が単独で第2分離装置70(すなわち、PSA)に充填されてもよい。複数の吸着剤が組み合わされて第2分離装置70(すなわち、PSA)に充填されてもよい。なお、図1には、第2分離装置70として4つの吸着塔が並列に配置されているが、吸着塔の数は必ずしも4つである事を要しない。
【0045】
上述の通り、PSAは、典型的には(1)吸着工程、(2)大気排気工程、(3)回収工程、および(4)復圧工程を順次繰り返す。たとえば、PSA70aを吸着工程とし、PSA70bを大気排気工程とし、PSA70cを回収工程とし、PSA70dを復圧工程とし、それぞれのPSAにおいて上記(1)~(4)の工程を順次繰り返してもよい。以下に、上記(1)~(4)の工程、およびその他の工程を説明する。
【0046】
(1)吸着工程
吸着工程とは、吸着剤が充填されたPSA70aに対し、第1精製ガスを含むガスである第2混合ガスを導入し、第2混合ガス中の少なくとも一酸化炭素ガスを吸着する工程である。すなわち、第2分離装置70における吸着工程は、第2分離工程に該当する。吸着工程は、たとえば0.18MPaG以上0.88MPaG以下で行ってもよい。吸着剤が理論的に吸着可能な一酸化炭素ガスがPSA70aに導入されるまでを、吸着工程としてもよい。少なくとも一酸化炭素ガスが吸着された第2混合ガスは、オフガスとしてオフガス導出配管63を介して製造装置100の系外に排出される。
【0047】
(2)大気排気工程
大気排気工程は、上記吸着工程を経た状態であるPSA70bからガスを排出することにより、PSA70bの圧力を略大気圧まで減圧する工程である。たとえばPSA70bの圧力が略大気圧となるまでを大気排気工程としてもよい。なお、PSA70bから排出されるガスは、一酸化炭素ガスを主体とするガスである。そのため、係るガスを回収し、再度第2分離装置70に導入することにより、製品としての一酸化炭素ガスの収率が向上するものと期待される。
【0048】
(3)回収工程
回収工程は、上記大気排気工程を経た状態であるPSA70cをたとえば第2真空ポンプ65により負圧まで減圧し、吸着剤に吸着させた一酸化炭素ガスを脱着させ、一酸化炭素ガスを一酸化炭素ガス導出配管64を介して回収する工程である。すなわち、第2分離装置70における回収工程は、一酸化炭素ガス導出工程に該当する。回収された一酸化炭素ガスは、たとえば第4加圧手段66により加圧された後、図示しない一酸化炭素ガスホルダーに貯蔵されてもよい。たとえば、PSA70cからの一酸化炭素ガス流が略0Nm/hとなるまでを、回収工程としてもよい。
【0049】
(4)復圧工程
復圧工程は、上記回収工程を経た状態であるPSA70dに対し、有圧のガスを導入し、次に行われる工程である吸着工程を行うための圧力まで復圧させる工程である。有圧のガスとしては、たとえば吸着工程PSA70aから導出されたオフガスの一部を用いてもよいし、図示しない一酸化炭素ガスホルダーに貯蔵されている有圧の一酸化炭素ガスを用いてもよい。たとえばPSA70dの圧力が吸着工程における運転圧力に達するまでを復圧工程としてもよい。
【0050】
(5)その他の工程(パージ工程)
本工程は、必要に応じて大気排気工程と回収工程との間に行われる工程である。本工程は、上記大気排気工程の後、PSA70b内に有圧の一酸化炭素ガスを一酸化炭素ガスパージ配管(図示せず)を介して導入することにより、PSA70b内の一酸化炭素ガス濃度を上昇させる工程である。本工程に用いる一酸化炭素ガスは、たとえば回収工程において回収され、図示しない一酸化炭素ガスホルダーに貯蔵された一酸化炭素ガスであってもよい。本工程により、回収工程の前にPSA70b内の一酸化炭素ガス濃度を向上させることができる。これにより、PSA70bが回収工程に移行した際、高純度の一酸化炭素ガスがPSA70bより回収されるものと考えられる。
【0051】
《第2リサイクルガス導出配管》
上述の第2分離装置70の大気排気工程においてPSA70bから排出されるガスは、一酸化炭素ガスを主体とするガスである。本開示に係る一酸化炭素ガスの製造装置100は、一酸化炭素ガスを主体としたガスを第2リサイクルガスとしてPSA70bから導出し、再利用するための第2リサイクルガス導出配管61を備える。すなわち本開示に係る一酸化炭素ガスの製造装置100は、一酸化炭素ガスを主体としたガスである第2リサイクルガスを第2分離装置70から導出する第2リサイクルガス導出配管61を備える。PSA50b(すなわち、第2分離装置50)から排出される一酸化炭素ガスを主体としたガスを第2リサイクルガスとして再利用することにより、製品としての一酸化炭素ガスの収率が向上するものと期待される。
【0052】
《第2加圧手段》
上述の第2リサイクルガス導出工程においてPSA70bから導出される第2リサイクルガスは、第2分離装置70に導入される第2混合ガスと比して低圧である。そのため、第2リサイクルガスを再度第2分離装置70に導入するため、第2リサイクルガス導出工程にて導出された第2リサイクルガスを加圧し、加圧された第2リサイクルガスを得るための第2加圧手段60を備える。すなわち本開示に係る一酸化炭素ガスの製造装置100は、第2リサイクルガス導出配管61を介して導出された第2リサイクルガスを加圧し、加圧された第2リサイクルガスを得るための第2加圧手段60を備える。
【0053】
《第2リサイクルガス導入配管》
第2加圧手段60により加圧された第2リサイクルガスは、第2分離装置70の上流に第2リサイクルガス導入配管62を介して導入される。第2分離装置70の上流に導入された第2リサイクルガスは、第1分離装置50から第1精製ガス導出配管45を介して導出された第1精製ガスと合流し、第2混合ガスとなる。すなわち本開示に係る一酸化炭素ガスの製造装置100は、加圧された第2リサイクルガスを第2分離装置70の上流に導入し、加圧された第2リサイクルガスを第1精製ガスに合流させて第2混合ガスを得るための第2リサイクルガス導入配管62を備える。
【0054】
《一酸化炭素ガス導出配管》
上述の第2分離装置70の回収工程において、PSA70cから排出される一酸化炭素ガスは、一酸化炭素ガス導出配管64を介して排出される。すなわち本開示に係る一酸化炭素ガスの製造装置100は、第2分離装置70に吸着された一酸化炭素ガスを導出するための一酸化炭素ガス導出配管64を備える。
【0055】
<一酸化炭素ガスの製造方法>
本開示に係る精製ガスの製造方法は、以下の工程を含む。
(1)原料ガスを触媒反応に供し、改質ガスを得る触媒反応工程。
(2)第1混合ガスを加圧し、加圧された第1混合ガスを得る第1加圧工程。
(3)加圧された第1混合ガス中の少なくとも炭酸ガスを吸着除去し、第1精製ガスを得る第1分離工程。
(4)第1リサイクルガスを第1分離装置から導出すると共に、第1リサイクルガスを第1加圧手段の上流に導入し、第1リサイクルガスを改質ガスに合流させて第1混合ガスを得る第1リサイクル工程。
(5)第2混合ガス中の少なくとも一酸化炭素ガスを吸着する第2分離工程。
(6)第2リサイクルガスを第2分離装置から導出する第2リサイクルガス導出工程。
(7)第2リサイクルガス導出工程にて導出された第2リサイクルガスを加圧し、加圧された第2リサイクルガスを得る第2加圧工程。
(8)加圧された第2リサイクルガスを第2分離装置の上流に導入し、加圧された第2リサイクルガスを第1精製ガスに合流させて第2混合ガスを得る第2リサイクルガス導入工程。
(9)第2分離装置に吸着された一酸化炭素ガスを導出する一酸化炭素ガス導出工程。
以下、図1を参照して、一酸化炭素ガスの製造方法の各工程について詳細に説明する。
【0056】
《(1)触媒反応工程》
本工程は、改質器30に導入された原料ガスを触媒反応に供する工程である。図1を参照して、本工程は、たとえば所定の温度(たとえば、約350℃)まで昇温された原料ガスを改質器30に導入することにより触媒反応に供し、一酸化炭素ガスおよび水素ガスを主体とした改質ガスを得るため工程である。
【0057】
《(2)第1加圧工程》
本工程は、第1リサイクルガスと改質ガスとの混合ガスである第1混合ガスを、たとえば第1加圧手段40等の加圧手段にて加圧する工程である。第1混合ガスは、第1加圧工程によりたとえば0.2MPaG以上0.9MPaG以下まで加圧され得る。
【0058】
《(3)第1分離工程》
本工程は、加圧された第1混合ガス中の少なくとも炭酸ガスを吸着除去し、第1精製ガスを得る工程である。上述の通り、第1分離工程を行うための第1分離装置50は、4つの吸着塔を含むPSAから構成され得る。第1分離装置50において、4つの吸着塔からPSAが構成される場合の各吸着塔の挙動は、前述の通りである。
【0059】
《(4)第1リサイクル工程》
本工程は、炭酸ガスと一酸化炭素ガスとを含むガスである第1リサイクルガスを第1分離装置50から第1リサイクルガス配管41を介して導出すると共に、第1リサイクルガスを第1加圧手段40の上流に導入し、第1リサイクルガスを改質ガスに合流させて第1混合ガスを得る工程である。
【0060】
《(5)第2分離工程》
本工程は、少なくとも第1精製ガスを含むガスである第2混合ガス中の少なくとも一酸化炭素ガスを吸着する工程である。上述の通り、第2分離工程を行うための第2分離装置70は、4つの吸着塔を含むPSAから構成され得る。第2分離装置70において、4つ吸着塔からPSAが構成される場合の各吸着塔の挙動は、前述の通りである。
【0061】
《(6)~(8)第2リサイクルガス導出工程、第2加圧工程、および第2リサイクルガス導入工程》
第2リサイクルガス導出工程は、一酸化炭素ガスを主体としたガスである第2リサイクルガスを第2分離装置70から第2リサイクルガス導出配管61を介して導出する工程である。第2加圧工程は、第2リサイクルガス導出工程にて導出された第2リサイクルガスを第2加圧手段60にて加圧し、加圧された第2リサイクルガスを得る工程である。第2リサイクルガス導入工程は、加圧された第2リサイクルガスを第2分離装置70の上流に導入し、加圧された第2リサイクルガスを第1精製ガスに合流させて第2混合ガスを得る工程である。
【0062】
《(9)一酸化炭素ガス導出工程》
本工程は、第2分離装置70から製品としての一酸化炭素ガスを導出する工程である。本工程は、たとえば回収工程にある吸着塔から一酸化炭素ガス導出配管64を介して一酸化炭素ガスを導出することにより行うことができる。以上のように、本開示に係る一酸化炭素ガスの製造方法は、酸素ガス、炭酸ガス、および炭化水素系ガスを含む原料ガスから一酸化炭素ガスを製造することができる。
【0063】
<その他の工程>
本開示に係る一酸化炭素ガスの製造方法は、第1分離装置50において吸着除去された炭酸ガスを加圧し、加圧された炭酸ガスである第3リサイクルガスを得る第3加圧工程と、第3リサイクルガスを改質器30の上流に導入する第3リサイクル工程と、を更に備えてもよい。これにより、原料としての炭酸ガス供給量の抑制が期待される。
【実施例
【0064】
以下、実施例が説明される。ただし以下の例は、本開示の発明の範囲を限定するものではない。
【0065】
<一酸化炭素ガスの製造>
《実施例1》
図1および図2に記載の構成を有する装置が準備された。原料ガスが準備された。上述の一酸化炭素ガスの製造方法に従い、一酸化炭素ガスが製造された。図2における、ポイントA~ポイントFにおける組成等は、以下の表1に示されている。
【0066】
【表1】
【0067】
《比較例1》
第1加圧手段40に第1リサイクルガス41を導入しなかったこと、第2加圧手段60を設置しなかったこと、および第2加圧手段60に第2リサイクルガスを導入しなかったことを除いては、実施例1と同様に一酸化炭素ガスが製造された。
【0068】
<評価>
実施例1および比較例1の、第1分離装置50、第2分離装置70、および一酸化炭素ガスの製造装置100全体における一酸化炭素の最大回収率を評価した。結果は以下の表2に示されている。
【0069】
【表2】
【0070】
<結果>
表1に示されるように、実施例1に係る一酸化炭素ガスの製造装置100を用いることにより、純度99.1mol%の一酸化炭素ガスを得ることができた。表2に示されるように、実施例1は比較例1に比して第1分離装置50、第2分離装置70、および一酸化炭素ガスの製造装置100、の全てにおいて高い一酸化炭素回収率を有することが示された。すなわち、一酸化炭素ガスの収率を向上させることが可能な一酸化炭素ガスの製造装置100および一酸化炭素ガスの製造方法が提供されることが示された。
【0071】
表1に示されるように、第1リサイクルガスは12.77mol%の一酸化炭素ガスを含み、第2リサイクルガスは78.4mol%の一酸化炭素ガスを含んでいる。これらのリサイクルガスをPSAの大気排気工程において大気放出せず、再度第1分離装置50や第2分離装置70に導入することにより、一酸化炭素ガスの収率が向上したものと考えられる。
【0072】
実施例1に係る一酸化炭素ガスの製造装置100は、原料ガスとして酸素ガス、炭酸ガス、および炭化水素系ガスを含むガスを用いている。また、改質器30に含まれる触媒としてRh修飾(Ni-CeO)-Pt触媒を用いている。そのため、改質器30における触媒反応によって得られる改質ガスには、一酸化炭素ガスと水素ガスとがほぼ同等の量含まれている。結果として、一酸化炭素ガスの収率が向上したものと考えられる。
【0073】
加えて、第1分離装置50において回収工程により回収された炭酸ガスは、第3加圧手段43により加圧され、第3リサイクルガス配管44を介して炭酸ガス導入配管2に導入される。これにより、炭酸ガスをリサイクルしない場合と比して原料としての炭酸ガスの量を約65%低減することが可能となった。
【0074】
実施例1に係る一酸化炭素ガスの製造装置100において、改質器30は、改質ガスを冷却するための純水(冷却媒体)を導入するための冷却媒体導入配管7を備える。そのため、上述した式(5)に表される平衡反応が左辺に移動され、改質ガスからのカーボン析出が抑制されるものと考えられる。すなわち、一酸化炭素ガスの収率の向上と、改質ガスからのカーボン析出の抑制とが両立された一酸化炭素ガスの製造装置および一酸化炭素ガスの製造方法を提供することが可能であることが示された。
【0075】
今回開示された実施例および実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。特許請求の範囲の記載によって確定される技術的範囲は、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0076】
1 酸素導入配管、2 炭酸ガス導入配管、3 炭化水素系ガス導入配管、4 第1原料ヒータ、5 第2原料ヒータ、6 脱硫器、 7 冷却媒体導入配管、8 改質ガス冷却器、9 気液分離器、30 改質器、40 第1加圧手段、41 第1リサイクルガス配管、42 第1真空ポンプ、43 第3加圧手段、44 第3リサイクルガス配管、45 第1精製ガス導出配管、50 第1分離装置、60 第2加圧手段、61 第2リサイクルガス導出配管、62 第2リサイクルガス導入配管、63 オフガス導出配管、64 一酸化炭素ガス導出配管、65 第2真空ポンプ、66 第4加圧手段、70 第2分離装置、100 一酸化炭素ガスの製造装置。
図1
図2